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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】乗用草刈り機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/835 20060101AFI20220413BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20220413BHJP
   A01D 34/74 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
A01D34/835
A01D34/64 A
A01D34/74
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017208833
(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公開番号】P2019080506
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】592226729
【氏名又は名称】和同産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 俊博
(72)【発明者】
【氏名】平井 大輔
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-158108(JP,A)
【文献】実公昭50-012810(JP,Y1)
【文献】特開2008-168870(JP,A)
【文献】特開平07-207705(JP,A)
【文献】特開2002-027814(JP,A)
【文献】特開2012-070673(JP,A)
【文献】特開2012-165711(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01671837(EP,A2)
【文献】特開昭52-121219(JP,A)
【文献】特開2000-139157(JP,A)
【文献】特開平01-148118(JP,A)
【文献】特開2014-185005(JP,A)
【文献】特開2002-331956(JP,A)
【文献】特開2005-001585(JP,A)
【文献】実開昭58-126237(JP,U)
【文献】実開昭54-007127(JP,U)
【文献】実公昭43-000441(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/835
A01D 34/64
A01D 34/74
A01D 34/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、この機体に昇降可能に吊され草を刈る刈刃と、前記機体の上に設けた運転席と、この運転席より前方位置にて前記機体の上に設けたステアリングハンドルと、前記運転席より後方位置にて前記機体に設けた駆動源と、前記機体に設けられ前記駆動源で駆動される駆動輪とを備えている乗用草刈り機において、
前記運転席より前方に運転盤が設けられ、
この運転盤に、前記機体の走行停止と前進及び前進速度と後進及び後進速度を操作する走行操作子と、この走行操作子の操作量を電気信号に変換する第1センサと、前記刈刃を作動状態/停止状態の何れかにする刈刃運転操作子と、この刈刃運転操作子の操作情報を電気信号に変換する第2センサと、前記刈刃の地面からの高さを設定する刈刃高さ操作子と、この刈刃高さ操作子の操作情報を電気信号に変換する第3センサとを備え、
前記機体と前記運転席との間に、この運転席を前記機体の幅方向に左と右の両方向へ移動可能に支えるシート支持機構が設けられていることを特徴とする乗用草刈り機。
【請求項2】
機体と、この機体に昇降可能に吊され草を刈る刈刃と、前記機体の上に設けた運転席と、この運転席より前方位置にて前記機体の上に設けたステアリングハンドルと、前記運転席より後方位置にて前記機体に設けた駆動源と、前記機体に設けられ前記駆動源で駆動される駆動輪とを備えている乗用草刈り機において、
前記ステアリングハンドルの側方に、前記機体の走行停止と前進及び前進速度と後進及び後進速度を操作する足踏み式の走行操作子と、この走行操作子の操作量を電気信号に変換する第1センサが配置され、
前記運転席より前方に運転盤が設けられ、
この運転盤に、前記刈刃を作動状態/停止状態の何れかにする刈刃運転操作子と、この刈刃運転操作子の操作情報を電気信号に変換する第2センサと、前記刈刃の地面からの高さを設定する刈刃高さ操作子と、この刈刃高さ操作子の操作情報を電気信号に変換する第3センサとを備え、
前記機体と前記運転席との間に、この運転席を前記機体の幅方向に左と右の両方向へ移動可能に支えるシート支持機構が設けられていることを特徴とする乗用草刈り機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の乗用草刈り機であって、
前記ステアリングハンドルから下へ延びるステアリング軸は、前記運転盤を貫通していることを特徴とする乗用草刈り機。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の乗用草刈り機であって、
前記シート支持機構は、前端が前記機体に回転自在に止められ前記機体の後方へ延びる平行リンクと、この平行リンクの後端に連結され前記運転席を支える中間部材とを備えることを特徴とする乗用草刈り機。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項記載の乗用草刈り機であって、
前記シート支持機構は、前端が前記機体に回転自在に止められ前記機体の後方へ延びるハの字リンクと、このハの字リンクの後端に連結され前記運転席を支える中間部材とを備え、
前記ハの字リンクは、前端のリンク間隔よりも後端のリンク間隔が広くなっていることを特徴とする乗用草刈り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果樹園に好適な乗用草刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
果樹園では、地面に果樹(樹木)が所定のピッチ(間隔)で植えられている。隣り合う樹木間において、地面には雑草が生える。この雑草は適宜刈る必要がある。果樹園での草刈りに適した乗用草刈り機が、知られている(例えば、特許文献1(図2図6図5)参照)。
【0003】
特許文献1の図2は、乗用草刈り機の平面図であり、運転席(4)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)に座った運転者から見て左に、収納ボックス(41)が配置されている。この収納ボックス(41)に、刈刃昇降スイッチ(27)と、デフロックレバー(43)と、刈刃の高さ設定レバー(45)とが配置される。
運転者は、運転席(4)に座り、右手で操向ハンドル(6)を握り、左手で刈刃昇降スイッチ(27)と、デフロックレバー(43)と、刈刃の高さ設定レバー(45)とを操作する。
【0004】
特許文献1の図6において、実線で示す運転席(4)が想像線で示す位置まで移動する。すなわち、収納ボックス(41)とは反対の側に、運転席(4)を移動することができる。
この移動により、特許文献1の図5に示すように、運転者(16)は樹木の枝や葉に身体が接触しないようにすることができる。
【0005】
特許文献1の図5では、乗用草刈り機を図面手前から奥へ走行させることで、樹木(47)の右側の草(49)を刈り、Uターンして、乗用草刈り機を図面奥から手前へ走行させることで、樹木(47)の左側の草(49)を刈ることとなる。
【0006】
ただし、樹木(47)の左側の草(49)を、図面手前から奥へ刈るような要求が発生することがある。しかし、特許文献1の乗用草刈り機では、運転席(4)の移動が左右の一方のみであるため、上記要求には対応できない。
すなわち、特許文献1の乗用草刈り機では、使用方法に制約がある。
【0007】
乗用草刈り機の使い勝手の向上が求められる中、運転席が左と右の両方へ移動可能な乗用草刈り機が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4126549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、運転席が左と右の両方へ移動可能な乗用草刈り機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、機体と、この機体に昇降可能に吊され草を刈る刈刃と、前記機体の上に設けた運転席と、この運転席より前方位置にて前記機体の上に設けたステアリングハンドルと、前記運転席より後方位置にて前記機体に設けた駆動源と、前記機体に設けられ前記駆動源で駆動される駆動輪とを備えている乗用草刈り機において、
前記運転席より前方に運転盤が設けられ、
この運転盤に、前記機体の走行停止と前進及び前進速度と後進及び後進速度を操作する走行操作子と、この走行操作子の操作量を電気信号に変換する第1センサと、前記刈刃を作動状態/停止状態の何れかにする刈刃運転操作子と、この刈刃運転操作子の操作情報を電気信号に変換する第2センサと、前記刈刃の地面からの高さを設定する刈刃高さ操作子と、この刈刃高さ操作子の操作情報を電気信号に変換する第3センサとを備え、
前記機体と前記運転席との間に、この運転席を前記機体の幅方向に左と右の両方向へ移動可能に支えるシート支持機構が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、機体と、この機体に昇降可能に吊され草を刈る刈刃と、前記機体の上に設けた運転席と、この運転席より前方位置にて前記機体の上に設けたステアリングハンドルと、前記運転席より後方位置にて前記機体に設けた駆動源と、前記機体に設けられ前記駆動源で駆動される駆動輪とを備えている乗用草刈り機において、
前記ステアリングハンドルの側方に、前記機体の走行停止と前進及び前進速度と後進及び後進速度を操作する足踏み式の走行操作子と、この走行操作子の操作量を電気信号に変換する第1センサが配置され、
前記運転席より前方に運転盤が設けられ、
この運転盤に、前記刈刃を作動状態/停止状態の何れかにする刈刃運転操作子と、この刈刃運転操作子の操作情報を電気信号に変換する第2センサと、前記刈刃の地面からの高さを設定する刈刃高さ操作子と、この刈刃高さ操作子の操作情報を電気信号に変換する第3センサとを備え、
前記機体と前記運転席との間に、この運転席を前記機体の幅方向に左と右の両方向へ移動可能に支えるシート支持機構が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の乗用草刈り機であって、
前記ステアリングハンドルから下へ延びるステアリング軸は、前記運転盤を貫通していることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1~3のいずれか1項記載の乗用草刈り機であって、
前記シート支持機構は、前端が前記機体に回転自在に止められ前記機体の後方へ延びる平行リンクと、この平行リンクの後端に連結され前記運転席を支える中間部材とを備えることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1~3のいずれか1項記載の乗用草刈り機であって、
前記シート支持機構は、前端が前記機体に回転自在に止められ前記機体の後方へ延びるハの字リンクと、このハの字リンクの後端に連結され前記運転席を支える中間部材とを備え、
前記ハの字リンクは、前端のリンク間隔よりも後端のリンク間隔が広くなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、運転席より前方に運転盤を設けた。運転席の左側及び右側には運転盤がない。よって、運転席を左と右の両方へ移動することができる。
本発明により、運転席が左と右の両方へ移動可能な乗用草刈り機が提供される。
【0016】
請求項2に係る発明では、運転席より前方のステアリングハンドルの側方に走行を操作する走行操作子を設けた。操作子は足で操作する。走行制御中は、ステアリングハンドルから手を離す必要がない。加えて、運転席より前方に運転盤を設けた。運転席の左側及び右側には運転盤がない。よって、運転席を左と右の両方へ移動することができる。
本発明により、運転席が左と右の両方へ移動可能な乗用草刈り機が提供される。
【0017】
請求項3に係る発明では、ステアリング軸は、運転盤を貫通している。
運転盤は、運転席より前方にあればよく、ステアリング軸とは別に配置することは差し支えないが、請求項3では、運転盤はステアリング軸と同位置にした。
ステアリングハンドルの近くに運転盤が配置されるため、運転者は運転盤の操作が容易になる。
【0018】
請求項4に係る発明は、シート支持機構は、平行リンクと、この平行リンクの後端に連結され運転席を支える中間部材とからなる。
平行リンクを採用したので、運転席は鉛直軸回りに回転することはない。運転者は常に前を向くことができる。
【0019】
また、平行リンクは、前端が機体に止められ、機体の後方へ延びているため、中立位置にある運転席に対して、左又は右へ移動した運転席は前へも移動する。
中立位置から左又は右へ移動すると、運転席はステアリングハンドルから離れる。しかし、運転席が前へも移動するため、離れ現象は相殺又は緩和される。
【0020】
請求項5に係る発明は、シート支持機構は、ハの字リンクと、このハの字リンクの後端に連結され運転席を支える中間部材とからなる。
ハの字リンクを採用したので、運転席は鉛直軸回りに回転する。運転者が常に樹木側を向くようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明係る乗用草刈り機の平面図である。
図2】運転盤と制御系統とを説明する図である。
図3】シート支持機構の構造を説明する図である。
図4】運転席の位置を説明する図である。
図5】変更例に係るハの字リンクを説明する図である。
図6】更なる変更例に係る乗用草刈り機の平面図である。
図7】更なる変更例に係る運転盤と制御系統とを説明する図である。
図8】更なる変更例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例
【0023】
図1に示すように、乗用草刈り機10は、機体11の中央に、運転者が座る運転席12を有し、この運転席12の前方にステアリングハンドル13を有し、このステアリングハンドル13と同位置にステアリング軸14が貫通するようにして運転盤20を有し、運転席12の後方に駆動源(エンジン又はモータ)を収納する駆動源ハウジング15を有し、機体11の中央に刈刃を覆うカッターハウジング16を有し、このカッターハウジング16の前方にステアリングハンドル13で操舵される操舵輪17を有し、カッターハウジング16の後方に駆動源で駆動される駆動輪18を有している。
【0024】
実施例では、前輪を操舵輪17とし、後輪を駆動輪18としたが、前輪を駆動輪18とし、後輪を操舵輪17とすることは差し支えない。
【0025】
運転盤20及び駆動系統を、図2に基づいて説明する。
図2(a)に示すように、運転盤20は、上面に走行操作子21を備えている。この走行操作子21は、N、F、Rのマークが付された長穴22に沿って押し引きされる。N位置では、乗用草刈り機10は走行を停止する。このN位置からF側へ倒すと乗用草刈り機10は前進を始め、倒し量が増すほど前進速度が高まる。また、N位置からR側へ引くと乗用草刈り機10は後進を始め、引き量が増すほど後進速度が高まる。
【0026】
また、運転盤20は、押しボタン状の刈刃運転操作子24及びダイヤル状の刈刃高さ操作子26を備える。この例では操作子24、26を運転盤20の側面に設けたが、この側面は、水平面に対して傾斜する傾斜面としてもよい。また、操作子24、26を運転盤20の上面に設けてもよい。
走行操作子21、刈刃運転操作子24及び刈刃高さ操作子26は、スライドスイッチや鍵盤型押しボタンスイッチでもよく、その形態や種類は任意である。
【0027】
ステアリグハンドル(図1、符号13)を右手で操作するときに、走行操作子21、刈刃運転操作子24及び刈刃高さ操作子26は、左手で操作することができるように、何れもステアリング軸14より左に配置されている。
【0028】
図2(b)に示すように、走行操作子21の操作量を電気信号に変換した第1センサ27の電気情報は制御部30に送られる。第1センサ27は、機械変量を電圧変量に変換するポテンショメータが好適である。
【0029】
また、刈刃運転操作子24の操作情報を電気信号に変換する第2センサ28の電気情報は制御部30に送られる。刈刃運転操作子24が押しボタンスイッチの場合は、第2センサ28は押しボタンスイッチに内蔵される。押しボタンスイッチは、いわゆるプッシュプッシュスイッチが好適である。
【0030】
また、刈刃高さ操作子26の操作情報を電気信号に変換する第3センサ29の電気信号は制御部30に送られる。第3センサ29は、例えばポテンショメータである。
制御部30は、運転盤20の外に配置することは可能であるが、好ましくは、運転盤20に内蔵する。内蔵することで、第1~第3センサ27、28、29から制御部30までの信号線31を短くすることができる。
【0031】
左右の駆動輪18の間に、HSTと略称される流体変速機33が配置される。この流体変速機33のケース34に、駆動源35で回される入力軸36と、駆動輪18に連結される出力軸37と、レバー38とを備える。ケース34に、斜板とピストンポンプとピストンモータとを内蔵する。入力軸36によりピストンポンプが液圧を発生し、この液圧でピストンモータが作動し出力軸37を回す。
斜板を立ててピストンポンプが液圧を発生しないようにすると、ピストンモータは非作動状態になり、出力軸37は停止する。
斜板を一方へ傾けると出力軸37は正転する。傾斜角を大きくすると増速する。
斜板を他方へ傾けると出力軸37は逆転する。傾斜角を大きくすると増速する。
【0032】
走行操作子21の操作情報に基づいて制御部30は、第1アクチュエータ41を作動させ、この第1アクチュエータ41でレバー38の角度を変更し、このレバー38で斜板の傾きを変更し、駆動輪18の正転、停止、逆転及び速度変更を実施する。第1アクチュエータ41は電動シリンダが好適である。
【0033】
平面視した刈刃42は、プーリ43とベルト44とプーリ45とを介して、駆動源35で回される。ベルト44はテンショナー46で、タイト状態とルーズ状態との何れかとされる。テンショナー46は、プーリ47と第2アクチュエータ48とからなる。第2アクチュエータ48は例えばソレノイドである。
【0034】
刈刃運転操作子24が押されると、この情報に基づいて制御部30は、第2アクチュエータ48を伸動させ、ベルト44をタイト状態にする。すると、プーリ43の回転力がプーリ45に伝達され刈刃42が回転する。この回転により、草を刈ることができる。
刈刃運転操作子24が再度押されると、この情報に基づいて制御部30は、第2アクチュエータ48を縮動させ、ベルト44をルーズ状態にする。すると、プーリ43の回転力がプーリ44に伝達されなくなり、刈刃42は停止する。
【0035】
また、側面視した刈刃42は、機体11にリンク51で吊り下げられている。リンク51は第3アクチュエータ52で昇降される。
刈刃高さ操作子26が回されると、この回転角度に対応した電気信号が制御部30に送られる。この電気信号に基づいて制御部30は、第3アクチュエータ52を伸動又は縮動して、地面53から刈刃42までの距離H(刈刃42の地上高H)を変更する。
【0036】
制御部30と第1~第3アクチュエータ41、48、52とを各々結ぶ信号線54は、十分に細く、可撓性に富む。
信号線54は、図1において、機体11の内部に通す。すなわち、機体11上に露出させない。結果、運転席12の左右には、信号線54や運転盤20などの障害物が皆無となる。
【0037】
次に、運転席12を支えるシート支持機構の構造を説明する。
図3は分解図であり、機体11を図3(a)で示し、その上の中間部材63を図3(b)で示し、その上の運転席12を図3(c)で示す。
【0038】
図3(a)に示すように、機体11に左右一対の平行リンク61の先端61aが止められている。これらの平行リンク61は機体11の後方へ延びている。
平行リンク61の後端61bは、図3(b)に示す中間部材63にボルト64で下から止められる。中間部材63は板のほか、フレーム枠体であってもよい。
【0039】
中間部材63は、平行リンク61を介して機体11に繋がれているため、平行リンク61の後端61bの移動軌跡65に沿って左又は右へ移動する。
中間部材63から一対のアーム66が前方へ延びており、こられのアーム66の先端にロッド67が渡されている。ロッド67は機体11の幅方向に延びる。
【0040】
運転席12は、着座部12aと、背もたれ部12bとからなる。着座部12aの底にアタッチメント68が固定されており、このアタッチメント68がロッド67を介してアーム66に連結される。
すなわち、運転席12は前方へ倒すことができる。
【0041】
以上に説明したように、シート支持機構60は、一端が機体11に回転自在に止められ機体11の後方へ延びる平行リンク61と、この平行リンク61の後端に連結され運転席12を支える中間部材63とを備える。
【0042】
図3(a)に示すように、機体11にロックレバー71を図面表裏方向に揺動可能に止め、平行リンク61に穴あき板72を止め、この穴あき板72に設けた穴73にロックレバー71を噛み込ませることで、運転席12の移動を不能にする。なお、このロック機構は、車両に常用されるシートスライドロック機構と同様の機構であればよく、この実施例に限定されるものではない。
【0043】
以上の構成からなるシート支持機構60の作用を、図4に基づいて説明する。
図4(a)では、運転席12は、機体11の幅方向中央にある。ステアリングハンドル13の中心と運転席12の前端中央との距離はL1である。
【0044】
運転席12を右に押すと、運転席12は、図4(b)に示すように、右に移動する。平行リンク61の平行作用により、運転席12は鉛直軸回りに回転することはない。
また、平行リンク61の円弧運動により、運転席12は、hだけ前へ移動する。
運転席12を単に右へ移動すると、ステアリングハンドル13の中心と運転席12の前端中央との距離は、L1より大きくなる。
この点、平行リンク61の円弧運動により、運転席12がhだけ前へ移動するため、距離L2は距離L1と大差なくなる。結果、運転フィーリングの変化を少なくすることができる。
【0045】
図4(a)の運転席12を左に押すと、運転席12は、図4(c)に示すように、左に移動する。
運転席12を、中立位置、右位置、左位置に変更することは、乗用草刈り機10が走行を停止しているとき、任意に実施することができる。この移動は、運転者が運転席12に座った状態でも実施できる。
【0046】
樹木の間の下草を刈る場合、樹木の左側の草を刈るときには運転席12を左位置に移動し、樹木の右側の草を刈るときに運転席12を右位置に移動すれば、運転者の身体が樹木に当たりにくくなる。
納屋から果樹園へ向かう(又は戻る)ときは、中立位置に運転席12を移動し、路上走行すればよい。
【0047】
次に、本発明に係る変更例を図5に基づいて説明する。
図5(a)に示すように、平行リンク61をハの字リンク69に置き換える。
ハの字リンク69は、図5(b)に示すように、前端のリンク間隔P1よりも後部のリンク間隔P2が広くなっている(P1<P2)。
【0048】
図5(c)に示すように、運転席12を右へ移動すると、運転席12が鉛直軸回りに回転する。
すなわち、図5(d)に示すように、ハの字リンク69は非平行リンクであって、運転席12を平行に移動する作用は発揮しない。結果として、運転席12は、ステアリングハンドル13の回りを擬似的に旋回する。
【0049】
図5(c)では、想像線で示す樹木74の右側を乗用草刈り機10が進む。運転席12が図反時計回りに旋回しているため、運転者は、図5(a)の形態に比較して、樹木74を視野に入れやすい。反面、走行方向前方を見る場合には、身体を右に捻る必要がある。
この点、図4では、走行方向前方は見やすい。反面、樹木を見るには身体を捻る必要がある。
このように、平行リンク61とハの字リンク69とは長所、短所が異なるため、運転者の好みなどによって、平行リンク61とハの字リンク69との一方を選択すればよい。
【0050】
図面は省略するが、シート支持機構60は、平行リンク61、ハの字リンク69の他、ステアリングハンドル13の中心を中心とする円弧レールを機体11に敷設し、運転席12の底にスライダを設け、このスライダを円弧レールに沿ってスライドさせるようにしてもよい。
よって、シート支持機構60の構成は適宜変更可能である。
【0051】
次に、本発明の更なる変更例を説明する。
図6に示すように、乗用草刈り機10は、運転席12の前方に且つステアリングハンドル13の側方(この例では右側)に、足踏み式の走行操作子21を備えている。その他の構成要素は、図1と共通であるため、図1の符号を流用して、詳細な説明は省略する。
【0052】
図7(a)に示すように、運転盤20は、押しボタン状の刈刃運転操作子24及びダイヤル状の刈刃高さ操作子26を備える。この例では操作子24、26を運転盤20の側面に設けたが、この側面は、水平面に対して傾斜する傾斜面としてもよい。また、操作子24、26を運転盤20の上面に設けてもよい。
【0053】
ステアリグハンドル(図1、符号13)を右手で操作するときに、刈刃運転操作子24及び刈刃高さ操作子26は、左手で操作することができるように、何れもステアリング軸14より左に配置されている。
【0054】
図7(b)に示すように、ペダル状の走行操作子21を足で踏むと、その操作量は第1センサ27で電気信号に変換され、電気情報は制御部30に送られ、前進、停止、後進が実施される。
その他の構成要素の作用は、図2と同じであるため、図2の符号を流用して、詳細な説明は省略する。
【0055】
図6に示す乗用草刈り機10では、走行制御(前進、停止、後進)は足で踏むペダル状の走行操作子21で実施される。すなわち、走行制御中はステアリングハンドル13から手を離す必要が無い。
【0056】
次に、更なる変更例を、図8に基づいて説明する。
図7と異なる点は、次の通りである。
図8(a)に示すように、運転盤20に、前進、後進を決めるシフトレバー75を備える。
足踏み式の走行操作子21は、乗用車等のアクセルペダルと同様のペダルであって、踏まない状態では走行を停止し、踏むとシフトレバー75で設定された方向へ前進(又は後進)し始め、踏み量が増すと増速する。
【0057】
図8(b)に示すように、シフトレバー75の操作情報は、第4センサ76を介して制御部30に送られる。
制御部30では、第3センサ27からの情報と、第4センサ76からの情報に基づいて、第1アクチュエータ41を制御する。結果、乗用草刈り機10は、前進、停止、後進及び速度制御される。
【0058】
図8において、その他の構成要素は、図7と同じであるため、図7の符号を流用して詳細な説明は省略する。
すなわち、足踏み式の走行操作子21を備える乗用草刈り機10は、シフトレバー75を有する図8の形態と、シフトレバー75を有しない図7の形態の何れであってもよい。
【0059】
尚、本発明の乗用草刈り機10は、果樹園の他、植物園での草刈り、山林での下草刈りに使用することは差し支えない。
また、図1にて、運転盤20はステアリングハンドル13と同位置に設けたが、ステアリングハンドル13の左側又は右側に配置してもよい。
【0060】
また、刈刃42は、操舵輪17と駆動輪18との間に配置する他、操舵輪17の前方に配置してもよい。操舵輪17の前方に配置する場合は、機体11から延ばしたアームで刈刃42が吊される。アームは機体11側の支点を中心に上下に円弧運動しつつ、刈刃42を昇降する。
よって、機体11に昇降可能に吊され草を刈る刈刃42の取り付け位置は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、果樹園で雑草を刈る乗用草刈り機に好適である。
【符号の説明】
【0062】
10…乗用草刈り機、11…機体、12…運転席、13…ステアリングハンドル、14…ステアリング軸、17…操舵輪、18…駆動輪、20…運転盤、21…走行操作子、24…刈刃運転操作子、26…刈刃高さ操作子、27…第1センサ、28…第2センサ、29…第3センサ、30…制御部、31、54…信号線、35…駆動源、41…第1アクチュエータ、42…刈刃、48…第2アクチュエータ、52…第3アクチュエータ、60…シート支持機構、61…平行リンク、61a…平行リンクの先端、61b…平行リンクの後端、63…中間部材、65…移動軌跡、69…ハの字リンク、P1…前端のリンク間隔、P2…後端のリンク間隔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8