(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 107/02 20060101AFI20220413BHJP
C10M 111/04 20060101ALI20220413BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20220413BHJP
C10M 105/06 20060101ALN20220413BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20220413BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20220413BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20220413BHJP
【FI】
C10M107/02
C10M111/04
C09K5/04 B
C10M105/06
C10N30:02
C10N30:08
C10N40:30
(21)【出願番号】P 2017248952
(22)【出願日】2017-12-26
【審査請求日】2020-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2016255912
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】山口 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】新保 紘子
(72)【発明者】
【氏名】大城戸 武
(72)【発明者】
【氏名】澤田 健
(72)【発明者】
【氏名】今野 聡一郎
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101070503(CN,A)
【文献】特開2016-033222(JP,A)
【文献】国際公開第98/058042(WO,A1)
【文献】特開昭62-039694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00 - 177/00
C10N 10/00 - 80/00
C09K 5/00 - 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンとα-オレフィンとの共重合体であって、
100℃における動粘度が10mm
2
/s以上、粘度指数が100以上、かつ流動点が-10℃以下である共重合体を基油として含有し、炭化水素冷媒と共に用いられる冷凍機油。
【請求項2】
前記共重合体の100℃における動粘度が20mm
2
/s以上である、請求項1に記載の冷凍機油。
【請求項3】
アルキルベンゼンを前記基油として更に含有する、請求項1
又は2に記載の冷凍機油。
【請求項4】
前記アルキルベンゼンの含有量に対する前記共重合体の含有量の質量比が、10/90~90/10である、請求項
3に記載の冷凍機油。
【請求項5】
前記アルキルベンゼンの含有量に対する前記共重合体の含有量の質量比が、10/90~50/50である、請求項
3又は4に記載の冷凍機油。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の冷凍機油と、炭化水素冷媒とを含有する冷凍機用作動流体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍庫、空調等の冷凍機に用いられてきた冷媒として、R410A等の飽和フッ化炭化水素冷媒が挙げられる。しかし、飽和フッ化炭化水素冷媒の中にはGWP(地球温暖化係数)が高いものがあり、地球温暖化防止の観点から、飽和フッ化炭化水素冷媒は規制される方向にある。そこで、GWPの低い冷媒として、炭化水素冷媒が注目されている。
【0003】
例えば特許文献1には、飽和フッ化炭化水素冷媒、炭化水素冷媒等の冷媒と共に用いられる冷凍機油として、含酸素有機化合物を含む基油と、所定のリン系化合物とを含有する冷凍機油が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、冷凍機の冷媒循環サイクル内では冷凍機油と冷媒とが共に循環するため、冷凍機油には冷媒との適合性が要求される。例えば、冷媒循環サイクル内では、冷凍機油及び冷媒が低温(例えば-40℃程度)まで冷却されるため、冷凍機油には、低温かつ冷媒共存下で析出しない(低温析出性に優れる)ことが求められる。このような冷凍機油の特性は、ある冷媒に対して良好であっても別の冷媒に対して必ずしも良好であるとは限らず、所望の特性に応じて冷媒ごとに冷凍機油を開発する必要がある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、炭化水素冷媒共存下での低温析出性に優れる冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エチレンとα-オレフィンとの共重合体を基油として含有し、炭化水素冷媒と共に用いられる冷凍機油を提供する。
【0008】
冷凍機油は、好ましくはアルキルベンゼンを基油として更に含有する。
【0009】
アルキルベンゼンの含有量に対する共重合体の含有量の質量比は、好ましくは10/90~90/10である。
【0010】
アルキルベンゼンの含有量に対する共重合体の含有量の質量比は、好ましくは10/90~50/50である。
【0011】
本発明はまた、上記冷凍機油と、炭化水素冷媒とを含有する冷凍機用作動流体組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、炭化水素冷媒共存下での低温析出性に優れる冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(a)~(c)は、低温流動性の評価方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
冷凍機油は、エチレンとα-オレフィンとの共重合体(以下、単に「共重合体」ともいう)を基油として含有する。α-オレフィンは、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。α-オレフィンの炭素数は、例えば、3~10であってよい。炭素数3~10のα-オレフィンは、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等である。α-オレフィンは、これらのうちの1種単独であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
【0016】
共重合体を構成するエチレン単位の含有量は、共重合体を構成するモノマー単位の全量を基準として、30モル%以上、35モル%以上、又は40モル%以上であってよく、80モル%以下、75モル%以下、又は70モル%以下であってよい。共重合体を構成するα-オレフィン単位の含有量は、共重合体を構成するモノマー単位の全量を基準として、20モル%以上、25モル%以上、又は30モル%以上であってよく、70モル%以下、65モル%以下、又は60モル%以下であってよい。
【0017】
共重合体の数平均分子量(Mn)は、500以上、600以上、又は700以上であってよく、12000以下、11000以下、又は10000以下であってよい。共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、3以下、2.7以下、又は2.5以下であってよい。本発明におけるMn及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC分析により測定される標準ポリスチレン換算の値を意味する。
【0018】
共重合体の40℃における動粘度は、100mm2/s以上、1000mm2/s以上、又は10000mm2/s以上であってよく、100000mm2/s以下、70000mm2/s以下、又は50000mm2/s以下であってよい。共重合体の100℃における動粘度は、10mm2/s以上、15mm2/s以上、又は20mm2/s以上であってよく、5000mm2/s以下、4000mm2/s以下、3000mm2/s以下であってよい。共重合体の粘度指数は、100以上、140以上、又は200以上であってよく、500以下、400以下、又は300以下であってよい。本発明における動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定された動粘度及び粘度指数をそれぞれ意味する。
【0019】
共重合体の流動点は、-40℃以下、-25℃以下、又は-10℃以下であってよい。本発明における流動点は、JIS K2269-1987に準拠して測定された流動点を意味する。
【0020】
共重合体の引火点は、160℃以上、200℃以上、又は240℃以上であってよい。本発明における引火点は、JIS K2265-4:2007に準拠して測定された引火点を意味する。
【0021】
本実施形態に係る冷凍機油は、エチレンとα-オレフィンとの共重合体に加えて、その他の基油を更に含有していてもよい。その他の基油としては、例えば、エチレンとα-オレフィンとの共重合体以外の炭化水素油、含酸素油等が挙げられる。炭化水素油としては、鉱油系炭化水素油及び合成系炭化水素油が例示される。含酸素油としては、エステル、エーテル、カーボネート、ケトン、シリコーン、ポリシロキサン等が例示される。合成系炭化水素油は、例えば、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリα-オレフィン(PAO)等である。
【0022】
重合体の含有量は、基油全量基準で、5質量%以上、10質量%以上、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。
【0023】
冷凍機油は、炭化水素冷媒共存下での低温流動性に優れる観点から、その他の基油として、好ましくはアルキルベンゼンを更に含有する。
【0024】
アルキルベンゼンは、ベンゼン環に結合したアルキル基が分岐アルキル基である分岐型アルキルベンゼンであってもよく、ベンゼン環に結合したアルキル基が直鎖アルキル基である直鎖型アルキルベンゼンであってもよい。アルキルベンゼンは、炭化水素冷媒との相溶性に優れる点では、好ましくは分岐型アルキルベンゼンであり、温度による粘度変化が小さく低温特性に優れる点では、好ましくは直鎖型アルキルベンゼンである。アルキルベンゼンは、エチレンとα-オレフィンとの共重合体と混合した場合に、炭化水素冷媒共存下での低温流動性により優れる点で、特に好ましくは直鎖型アルキルベンゼンである。
【0025】
アルキルベンゼンのアルキル基の炭素数は、好適な粘度を有する基油を得る観点から、好ましくは1~30、より好ましくは4~20である。アルキルベンゼン1分子が有するアルキル基の数は、アルキル基の炭素数にもよるが、好適な粘度を有する基油を得る観点から、好ましくは1~4、より好ましくは1~3である。
【0026】
上記のようなアルキルベンゼンの具体例としては、下記アルキルベンゼン(A)、アルキルベンゼン(B)等が挙げられる。
アルキルベンゼン(A):炭素数1~19のアルキル基を1~4個有し、かつアルキル基の合計炭素数が9~19であるアルキルベンゼン(好ましくは、炭素数1~15のアルキル基を1~4個有し、かつアルキル基の合計炭素数が9~15であるアルキルベンゼン)
アルキルベンゼン(B):炭素数1~40のアルキル基を1~4個有し、かつアルキル基の合計炭素数が20~40であるアルキルベンゼン(好ましくは、炭素数1~30のアルキル基を1~4個有し、かつアルキル基の合計炭素数が20~30であるアルキルベンゼン)
【0027】
アルキルベンゼン(A)が有する炭素数1~19のアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(すべての異性体を含む、以下同様)、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。
【0028】
アルキルベンゼン(B)が有する炭素数1~40のアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(すべての異性体を含む、以下同様)、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基、ヘキサトリアコンチル基、ヘプタトリアコンチル基、オクタトリアコンチル基、ノナトリアコンチル基、テトラコンチル基が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。
【0029】
アルキルベンゼン(A),(B)中のアルキル基の個数は、1~4個であり、安定性及び入手可能性の点から、好ましくは1個又は2個である。すなわち、アルキルベンゼン(A),(B)は、好ましくは、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、又はこれらの混合物である。
【0030】
アルキルベンゼン(A),(B)は、単一構造のアルキルベンゼンのみを含有していてもよく、上記の各条件を満たすアルキルベンゼンであれば、互いに異なる構造を有するアルキルベンゼンの混合物であってもよい。
【0031】
アルキルベンゼンの40℃における動粘度は、3mm2/s以上、4mm2/s以上、又は5mm2/s以上であってよく、100mm2/s以下、80mm2/s以下、又は70mm2/s以下であってよい。
【0032】
アルキルベンゼンの流動点は、-40℃以下、-30℃以下、又は-20℃以下であってよい。
【0033】
アルキルベンゼンの引火点は、140℃以上、150℃以上、155℃以上、又は160℃以上であってよい。
【0034】
冷凍機油がエチレンとα-オレフィンとの共重合体に加えてアルキルベンゼンを更に含有する場合、アルキルベンゼンの含有量に対するエチレンとα-オレフィンとの共重合体の含有量の質量比(エチレンとα-オレフィンとの共重合体/アルキルベンゼン)は、低温流動性により優れる観点から、好ましくは10/90以上、20/80以上、又は30/70以上であり、また、好ましくは90/10以下、より好ましくは、80/20以下、70/30以下、60/40以下、又は50/50以下である。当該比は、低温流動性により優れる観点から、好ましくは、10/90~90/10、10/90~80/20、10/90~70/30、10/90~60/40、10/90~50/50、20/80~90/10、20/80~80/20、20/80~70/30、20/80~60/40、20/80~50/50、30/70~90/10、30/70~80/20、30/70~70/30、30/70~60/40、又は30/70~50/50である。
【0035】
基油の40℃における動粘度は、好ましくは3mm2/s以上、より好ましくは4mm2/s以上、更に好ましくは5mm2/s以上である。基油の40℃における動粘度は、好ましくは1000mm2/s以下、より好ましくは500mm2/s以下、更に好ましくは400mm2/s以下である。基油の100℃における動粘度は、好ましくは1mm2/s以上、より好ましくは2mm2/s以上である。基油の100℃における動粘度は、好ましくは100mm2/s以下、より好ましくは50mm2/s以下である。
【0036】
基油の含有量は、冷凍機油全量基準で、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよい。
【0037】
冷凍機油は、添加剤を更に含有していてもよい。添加剤としては、例えば、酸捕捉剤、酸化防止剤、極圧剤、油性剤、消泡剤、金属不活性化剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤などが挙げられる。これらの添加剤の含有量は、冷凍機油全量基準で、10質量%以下又は5質量%以下であってよい。
【0038】
摩耗防止剤としては、例えば、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステルなどのリン系摩耗防止剤が挙げられる。これらのリン系摩耗防止剤化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
リン酸エステルは、例えば、トリアルキルホスフェート、トリアルケニルホスフェート、トリアリールホスフェート等であってよい。トリアルキルホスフェートは、例えば、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート等であってよい。トリアルケニルホスフェートは、例えば、トリオレイルホスフェート等であってよい。
【0040】
トリアリールホスフェートは、例えば、下記式(1)で表される化合物等であってよい。
【化1】
式(1)中、Rは炭素数1~10、好ましくは1~4のアルキル基を表し、nは0~5、好ましくは0~2の整数を表し、より好ましくは1である。ただし、複数存在するRは互いに同一であっても異なってもよい。複数存在するnは互いに同一であっても異なってもよい。
【0041】
Rで表される炭素数1~10のアルキル基は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等である。式(1)で表される化合物は、例えば、トリフェニルホスフェート(n=0)、トリクレジルホスフェート(R:メチル基、n=1)、トリキシレニルホスフェート(R:メチル基、n=2)、クレジルジフェニルホスフェート(1つのアリール基がクレジル基(R:メチル基、n=1)、2つのアリール基がフェニル基(n=0))、キシレニルジフェニルホスフェート(1つのアリール基がキシレニル基(R:メチル基、n=2)、2つのアリール基がフェニル基(n=0))、イソプロピル化トリフェニルホスフェート(R:イソプロピル基、n=0~5)、イソブチル化トリフェニルホスフェート(R:ブチル基、n=0~5)等であってよい。
【0042】
リン系摩耗防止剤の含有量は、冷凍機油全量基準で、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってよく、5質量%以下、4質量%以下、又は3質量%以下であってよい。
【0043】
冷凍機油の40℃における動粘度は、好ましくは3mm2/s以上、より好ましくは4mm2/s以上、更に好ましくは5mm2/s以上である。冷凍機油の40℃における動粘度は、好ましくは500mm2/s以下、より好ましくは400mm2/s以下、更に好ましくは300mm2/s以下である。
【0044】
冷凍機油の100℃における動粘度は、好ましくは1mm2/s以上、より好ましくは2mm2/s以上である。冷凍機油の100℃における動粘度は、好ましくは100mm2/s以下、より好ましくは50mm2/s以下である。
【0045】
冷凍機油の流動点は、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃以下である。
【0046】
冷凍機油の体積抵抗率は、好ましくは1.0×109Ω・m以上、より好ましくは1.0×1010Ω・m以上、更に好ましくは1.0×1011Ω・m以上である。本発明における体積抵抗率は、JIS C2101:1999に準拠して測定した25℃での体積抵抗率を意味する。
【0047】
冷凍機油の水分含有量は、冷凍機油全量基準で、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。
【0048】
冷凍機油の酸価は、好ましくは1.0mgKOH/g以下、より好ましくは0.1mgKOH/g以下である。本発明における酸価は、JIS K2501:2003に準拠して測定された酸価を意味する。
【0049】
冷凍機油の灰分は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。本発明における灰分は、JIS K2272:1998に準拠して測定された灰分を意味する。
【0050】
本実施形態に係る冷凍機油は、炭化水素冷媒と共に用いられる。本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、上記冷凍機油と、炭化水素冷媒とを含有する。冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油の含有量は、冷媒100質量部に対して、好ましくは1~500質量部、より好ましくは2~400質量部である。
【0051】
炭化水素冷媒は、好ましくは炭素数1~5の炭化水素、より好ましくは炭素数2~4の炭化水素である。炭化水素としては、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン(R290)、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2-メチルブタン、ノルマルペンタン又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。炭化水素冷媒は、これらの中でも好ましくは、25℃、1気圧で気体の炭化水素冷媒であり、より好ましくは、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2-メチルブタン又はこれらの混合物である。
【0052】
冷凍機油と共に用いる冷媒、及び冷凍機用作動流体組成物が含有する冷媒は、炭化水素冷媒を含む限りにおいて特に制限はなく、例えば、炭化水素冷媒のみからなっていてもよく、炭化水素冷媒に加えてその他の冷媒を更に含有していてもよい。その他の冷媒としては、飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒、パーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ビス(トリフルオロメチル)サルファイド冷媒、3フッ化ヨウ化メタン冷媒、及び、アンモニア、二酸化炭素等の自然系冷媒が例示される。冷媒がその他の冷媒を更に含有する場合、冷媒総量に対する炭化水素冷媒の含有割合は、例えば0.5質量%以上であってよく、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0053】
本実施形態に係る冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、開放型又は密閉型のカーエアコン、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷凍機、遠心式の圧縮機を有する冷凍機等に好適に用いられる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例及び比較例においては、以下に示す基油及び添加剤を用いて表1~5に記載の組成(冷凍機油全量基準での質量%)を有する冷凍機油を調製した。
【0056】
(基油)
A1:エチレンとα-オレフィンとの共重合体(製品名:ルーカントHC-40、三井化学(株)社製、40℃における動粘度:380mm
2/s、100℃における動粘度:40mm
2/s、粘度指数:155、流動点:-40.0℃、引火点:250℃)
A2:直鎖型アルキルベンゼン(JXエネルギー(株)社製、40℃における動粘度:19.4mm
2/s、流動点:<-50.0℃、引火点:200℃、密度:0.873g/cm
3)
(添加剤)
b1:トリクレジルホスフェート
b2:下記式(2)で表される化合物(n=0~2、iPr:イソプロピル基)
【化2】
【0057】
実施例及び比較例の各冷凍機油について、以下に示す手順で低温析出性を評価した。結果を表1~5に示す。
【0058】
(低温析出性)
10mL耐圧ガラス管に、冷凍機油/冷媒の比率(質量比)が90/10となるように冷凍機油及び下記の冷媒を封入し、攪拌後-40℃で1時間静置した。その後、析出(懸濁及び分離)の有無を観察した。析出がなかった場合を「A」、析出があった場合を「B」として評価した。
冷媒:R290(プロパン)
R410A(ジフルオロメタン(R32)とペンタフルオロエタン(R125)との混合冷媒、R32/R125=50/50(質量比))
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
実施例及び比較例の各冷凍機油について、以下に示す手順で低温流動性を評価した。結果を表6~11に示す。
【0065】
(低温流動性)
図1は、低温流動性の評価方法を説明するための模式図である。
図1(a)に示すように、10mL耐圧ガラス管1に、冷凍機油/冷媒の比率(質量比)が90/10となるように冷凍機油及び冷媒を封入し、攪拌後-40℃で1時間静置した。このときのガラス管1の底面1aと、冷凍機油及び冷媒からなる作動流体組成物2の液面2aとの距離をHとした。その後、
図1(b)に示すように、ガラス管1を逆さにしたところ、作動流体組成物2の液面2aが徐々に上昇した。ガラス管1を逆さにしてから、ガラス管1の底面1aと作動流体組成物2の液面2aとの距離hが高さHの20%(h/H=0.2)になるまでの時間Tを計測した。Tが30秒以下であった場合を「A」、Tが30秒を超え45秒以下であった場合を「B」、Tが45秒を超えたか又は冷凍機油と冷媒とが互いに分離した場合を「C」として評価した。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【符号の説明】
【0072】
1…ガラス管、1a…底面、2…作動流体組成物、2a…液面。