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特許7057669養子細胞療法において投薬するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】養子細胞療法において投薬するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/12 20150101AFI20220413BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20220413BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20220413BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220413BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220413BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220413BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220413BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALN20220413BHJP
【FI】
A61K35/12
A61K31/675
A61K31/7076
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
C12Q1/68 ZNA
【請求項の数】 39
(21)【出願番号】P 2017521100
(86)(22)【出願日】2015-10-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-11-16
(86)【国際出願番号】 US2015056532
(87)【国際公開番号】W WO2016064929
(87)【国際公開日】2016-04-28
【審査請求日】2018-10-18
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】62/168,710
(32)【優先日】2015-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/162,647
(32)【優先日】2015-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/066,279
(32)【優先日】2014-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/215,732
(32)【優先日】2015-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516316897
【氏名又は名称】ジュノー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ギルバート マーク ジェイ.
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】田中 耕一郎
【審判官】渕野 留香
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-507118(JP,A)
【文献】Science Translational Medicine,2013年,Vol.5,177ra38(pp.142-150)
【文献】Blood,2010年,Vol.116, No.21,pp.1179-1180 Abstract2865
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K35/00-35/768
A61K31/33-33/44
A61K45/00
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白血病またはリンパ腫を処置するための方法において使用するための医薬の製造におけるキメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞を含む組成物の使用であって、
該方法が、
(a)白血病またはリンパ腫が形態学的疾患(MD)状態を示す時点で、第1の用量のCAR発現T細胞を含む組成物を、白血病またはリンパ腫を有する対象に投与する工程であって、該第1の用量が、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下のCAR発現T細胞(細胞/kg)該用量中合計で約1x108個以下のCAR発現T細胞または対象1m2あたり約1x108個以下のCAR発現T細胞(細胞/m 2 )を含む、工程と、
(b)前記第1の用量の投与後に白血病またはリンパ腫がMD状態から非形態学的疾患(非MD)状態に変化し、かつ(a)の投与開始後少なくとも14日かつ28日より短い時点で、連続用量のCAR発現T細胞を含む組成物を対象に投与する工程であって、該連続用量が、第1の用量の後に同じ対象に投与される用量であり、かつ前記第1の用量と比較して増加した数のCAR発現T細胞を含む、工程と、を含み、
ここで、MDは骨髄中5%を超える芽細胞であり、非MDは骨髄中5%未満の芽細胞である、
使用。
【請求項2】
第1の用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞の投与後に対象において形態学的疾患(MD)状態から非形態学的疾患(非MD)状態に変化した白血病またはリンパ腫を処置するための方法において連続用量として使用するための、CAR発現T細胞を含む組成物であって、
該連続用量が、第1の用量の後に同じ対象に投与される用量であり、
MDは骨髄中5%を超える芽細胞であり、非MDは骨髄中5%未満の芽細胞であり、
第1の用量の投与時に白血病またはリンパ腫はMD状態を示し、第1の用量の投与が、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下のCAR発現T細胞(細胞/kg)該用量中合計で約1x108個以下のCAR発現T細胞または対象1m2あたり約1x108個以下のCAR発現T細胞(細胞/m 2 )を含み;かつ
連続用量が、前記第1の用量の投与後に白血病またはリンパ腫がMD状態から非MD状態に変化し、かつ第1の用量の投与開始後少なくとも14日かつ28日より短い時点で投与するためのものであり、かつ、該連続用量が前記第1の用量と比較して増加した数のCAR発現T細胞を含む、組成物。
【請求項3】
第1の用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞の対象への投与後に対象において形態学的疾患(MD)状態から非形態学的疾患(非MD)状態に変化した白血病またはリンパ腫を処置するための連続用量として投与するための医薬を製造するための、CAR発現T細胞を含む組成物の使用であって、
該連続用量が、第1の用量の後に同じ対象に投与される用量であり、
MDは骨髄中5%を超える芽細胞であり、非MDは骨髄中5%未満の芽細胞であり、
組成物が、白血病またはリンパ腫がMD状態から非MD状態に変化し、かつ前記第1の用量の投与の14~28日後の時点で使用するためのものであり;かつ
組成物が、第1の用量のCAR発現T細胞があらかじめ投与された対象における白血病またはリンパ腫の負荷を低減するために十分な量で連続用量を投与するために製剤化され、かつ、
該連続用量が前記第1の用量と比較して増加した数のCAR発現T細胞を含む、使用。
【請求項4】
第1の用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞の対象への投与後に対象において形態学的疾患(MD)状態から非形態学的疾患(非MD)状態に変化した白血病またはリンパ腫を処置するための方法において連続用量として使用するための、CAR発現T細胞を含む組成物であって、
該連続用量が、第1の用量の後に同じ対象に投与される用量であり、
MDは骨髄中5%を超える芽細胞であり、非MDは骨髄中5%未満の芽細胞であり、
該組成物が、白血病またはリンパ腫がMD状態から非MD状態に変化し、かつ前記第1の用量の投与の14~28日後の時点で使用するためのものであり;
該組成物が、第1の用量のCAR発現T細胞があらかじめ投与された対象における白血病またはリンパ腫の負荷を低減するために十分な量で連続用量を投与するために製剤化され、かつ、
該連続用量が前記第1の用量と比較して増加した数のCAR発現T細胞を含む、前記組成物。
【請求項5】
前記第1の用量が、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下のCAR発現T細胞(細胞/kg)該用量中合計で約1x108個以下のCAR発現T細胞または対象1m2あたり約1x108個以下のCAR発現T細胞(細胞/m 2 )を含む、請求項3記載の使用。
【請求項6】
連続用量のCAR発現T細胞を含む組成物が、
(i)対象において重度のCRSを誘導しないか、もしくは対象においてCRSを誘導しない量;または
(ii)対象においてグレード3以上の神経毒性を誘導しない量
で投与するために製剤化される、請求項1、3、および5のいずれか一項記載の使用。
【請求項7】
増加した数が、第1の用量における数の少なくとも2倍、5倍、または10倍である、請求項5または6記載の使用。
【請求項8】
組成物が、
(a)対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、第1の用量のCAR発現T細胞の投与直前の対象における血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、もしくは約50倍より少なく、
(b)対象がグレード3以上の神経毒性を示さず、
(c)第1の用量のCAR発現T細胞の投与後の対象におけるCRS関連アウトカムもしくは神経毒性の症状が、第1の用量のCAR発現T細胞の投与後にピークレベルに達して低下し始めており、または
(d)対象が、第1の用量のCAR発現T細胞によって発現されるCARに対して検出可能な体液性免疫応答も細胞性免疫応答も示していない、時点
で対象に使用するためのものである、請求項1、3、および5のいずれか一項記載の使用。
【請求項9】
第1の用量の細胞の数が、該用量中合計で1x106~1x108個のCAR発現T細胞であるか;または
第1の用量の細胞の数が、該用量中合計で2x106個以下のCAR発現T細胞該用量中合計で5x106個以下のCAR発現T細胞該用量中合計で1x107個以下のCAR発現T細胞該用量中合計で5x107個以下のCAR発現T細胞、もしくは該用量中合計で1x108個以下のCAR発現T細胞である、
請求項1、3、および5~8のいずれか一項記載の使用。
【請求項10】
連続用量のCAR発現T細胞を含む組成物が、
対象体重1キログラムあたり約2x106個のCAR発現T細胞(細胞/kg)~約6x106 CAR発現T細胞/kg、約2.5x106 CAR発現T細胞/kg~約5.0x106 CAR発現T細胞/kg、もしくは約3.0x106 CAR発現T細胞/kg~約4.0x106 CAR発現T細胞/kg;
該用量中合計で約1.5x108個のCAR発現T細胞該用量中合計で4.5x108個のCAR発現T細胞該用量中合計で約1.5x108個のCAR発現T細胞該用量中合計で3.5x108個のCAR発現T細胞、もしくは該用量中合計で約2x108個のCAR発現T細胞該用量中合計で3x108個のCAR発現T細胞;または
対象1m 2 あたり約1.5x108 CAR発現T細胞(細胞/m 2 )~4.5x108 CAR発現T細胞/m2、約1.5x108 CAR発現T細胞/m2~3.5x108 CAR発現T細胞/m2、もしくは約2x108 CAR発現T細胞/m2~3x108 CAR発現T細胞/m2
である細胞の数を投与するために製剤化される、請求項1、3、および5~9のいずれか一項記載の使用。
【請求項11】
連続用量のCAR発現T細胞を含む組成物が、該用量中合計で約5x107個のCAR発現T細胞該用量中合計で約5x108個のCAR発現T細胞該用量中合計で約5x107個のCAR発現T細胞該用量中合計で約2.5x108個のCAR発現T細胞、または該用量中合計で約2.5x108個のCAR発現T細胞該用量中合計で4x108個のCAR発現T細胞である細胞の数を投与するために製剤化される、請求項1、3、および5~10のいずれか一項記載の使用。
【請求項12】
第1の用量CAR発現T細胞を含む組成物が、1単位用量もしくは複数の単位用量で投与するために製剤化され、各単位用量が、約5x107個のCAR発現T細胞~約5x108個のCAR発現T細胞、約5x107個のCAR発現T細胞~約2.5x108個のCAR発現T細胞、もしくは約2.5x108個のCAR発現T細胞~4x108個のCAR発現T細胞を含むか;または
第1の用量CAR発現T細胞を含む組成物が、約5x107個以下のCAR発現T細胞、約1x108個以下のCAR発現T細胞、約2x108個以下のCAR発現T細胞、約2.5x108個以下のCAR発現T細胞、約3.0x108個以下のCAR発現T細胞、もしくは約4x108個以下のCAR発現T細胞を含む単位用量で製剤化される、
請求項1、3、および5~11のいずれか一項記載の使用。
【請求項13】
連続用量CAR発現T細胞を含む組成物が、1単位用量もしくは複数の単位用量で投与するために製剤化され、各単位用量が、約5x107個のCAR発現T細胞~約5x108個のCAR発現T細胞、約5x107個のCAR発現T細胞~約2.5x108個のCAR発現T細胞、もしくは約2.5x108個のCAR発現T細胞~4x108個のCAR発現T細胞を含むか;または
連続用量CAR発現T細胞を含む組成物が、約5x107個以下のCAR発現T細胞、約1x108個以下のCAR発現T細胞、約2x108個以下のCAR発現T細胞、約2.5x108個以下のCAR発現T細胞、約3.0x108個以下のCAR発現T細胞、もしくは約4x108個以下のCAR発現T細胞を含む単位用量で製剤化される、
請求項1、3、および5~12のいずれか一項記載の使用。
【請求項14】
組成物が、急性リンパ芽球性白血病の処置において使用するためのものである、請求項1、3、および5~13のいずれか一項記載の使用。
【請求項15】
組成物が、非ホジキンリンパ腫(NHL)の処置において使用するためのものである、請求項1、3、および5~13のいずれか一項記載の使用。
【請求項16】
CAR発現T細胞が対象に対して自己由来である、請求項1、3、および5~15のいずれか一項記載の使用。
【請求項17】
第1の用量においてCAR発現T細胞によって発現されるCARに結合する抗原と、連続用量においてCAR発現T細胞によって発現されるCARに結合する抗原が、同一の抗原であるか、もしくは第1の用量においてCAR発現T細胞によって発現されるCARと、連続用量においてCAR発現T細胞によって発現されるCARが、同一の抗原結合ドメインを含む;または
連続用量においてCAR発現T細胞によって発現されるCARが、第1の用量においてCAR発現T細胞によって発現されるCARと同一である
請求項1、3、および5~16のいずれか一項記載の使用。
【請求項18】
連続用量においてCAR発現T細胞によって発現されるCARが、白血病またはリンパ腫の細胞もしくは組織または白血病またはリンパ腫に関連する細胞もしくは組織によって発現される抗原に特異的に結合する、請求項1、3、および5~17のいずれか一項記載の使用。
【請求項19】
対象が、第1の用量の投与前に化学療法剤であらかじめ処置されている、請求項1、3、および5~18のいずれか一項記載の使用。
【請求項20】
対象が、連続用量の投与前に化学療法剤であらかじめ処置されている、請求項1、3、および5~19のいずれか一項記載の使用。
【請求項21】
化学療法剤が、シクロホスファミドフルダラビン、およびその組み合わせからなる群より選択される薬剤を含む、請求項19または20記載の使用。
【請求項22】
組成物が、ヒトである対象に使用するためのものである、請求項1、3、および5~21のいずれか一項記載の使用。
【請求項23】
連続用量のCAR発現T細胞を含む組成物が、
(i)対象において重度のCRSを誘導しないか、もしくは対象においてCRSを誘導しない量;または
(ii)対象においてグレード3以上の神経毒性を誘導しない量;
で投与するために製剤化される、請求項2または4記載の組成物。
【請求項24】
増加した数が、第1の用量における数の少なくとも2倍、5倍、または10倍である、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
組成物が、
(a)対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、第1の用量のCAR発現T細胞の投与直前の対象における血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、もしくは約50倍より少なく、
(b)対象がグレード3以上の神経毒性を示さず、
(c)第1の用量のCAR発現T細胞の投与後の対象におけるCRS関連アウトカムもしくは神経毒性の症状が、第1の用量のCAR発現T細胞の投与後にピークレベルに達して低下し始めており、または
(d)対象が、第1の用量のCAR発現T細胞によって発現されるCARに対して検出可能な体液性免疫応答も細胞性免疫応答も示していない、時点
で対象に使用するためのものである、請求項2、4、23、および24のいずれか一項記載の組成物。
【請求項26】
第1の用量の細胞の数が、1x106~1x108個のCAR発現T細胞であるか;または
第1の用量の細胞の数が、2x106個以下のCAR発現T細胞、5x106個以下のCAR発現T細胞、1x107個以下のCAR発現T細胞、5x107個以下のCAR発現T細胞、もしくは1x108個以下のCAR発現T細胞である、
請求項2、4、および23~25のいずれか一項記載の組成物。
【請求項27】
連続用量のCAR発現T細胞を含む組成物が、
対象体重1キログラムあたり約2x106個のCAR発現T細胞(細胞/kg)~約6x106 CAR発現T細胞/kg、約2.5x106 CAR発現T細胞/kg~約5.0x106 CAR発現T細胞/kg、もしくは約3.0x106 CAR発現T細胞/kg~約4.0x106 CAR発現T細胞/kg;
該用量中合計で約1.5x108個のCAR発現T細胞該用量中合計で4.5x108個のCAR発現T細胞該用量中合計で約1.5x108個のCAR発現T細胞該用量中合計で3.5x108個のCAR発現T細胞、もしくは該用量中合計で約2x108個のCAR発現T細胞該用量中合計で3x108個のCAR発現T細胞;または
対象1m 2 あたり約1.5x108 CAR発現T細胞(細胞/m 2 )~4.5x108 CAR発現T細胞/m2、約1.5x108 CAR発現T細胞/m2~3.5x108 CAR発現T細胞/m2、もしくは約2x108CAR CAR発現T細胞/m2~3x108 CAR発現T細胞/m2
である細胞の数を投与するために製剤化される、請求項2、4、および23~26のいずれか一項記載の組成物。
【請求項28】
連続用量のCAR発現T細胞を含む組成物が、該用量中合計で約5x107個のCAR発現T細胞該用量中合計で約5x108個のCAR発現T細胞該用量中合計で約5x107個のCAR発現T細胞該用量中合計で約2.5x108個のCAR発現T細胞、または該用量中合計で約2.5x108個のCAR発現T細胞該用量中合計で約4x108個のCAR発現T細胞である細胞の数を投与するために製剤化される、請求項2、4、および23~27のいずれか一項記載の組成物。
【請求項29】
第1の用量CAR発現T細胞を含む組成物が、1単位用量もしくは複数の単位用量で投与するために製剤化され、各単位用量が、約5x107個のCAR発現T細胞~約5x108個のCAR発現T細胞、約5x107個のCAR発現T細胞~約2.5x108個のCAR発現T細胞、もしくは約2.5x108個のCAR発現T細胞~4x108個のCAR発現T細胞を含むか;または
第1の用量CAR発現T細胞を含む組成物が、約5x107個以下のCAR発現T細胞、約1x108個以下のCAR発現T細胞、約2x108個以下のCAR発現T細胞、約2.5x108個以下のCAR発現T細胞、約3.0x108個以下のCAR発現T細胞、もしくは約4x108個以下のCAR発現T細胞を含む単位用量で製剤化される、
請求項2、4、および23~28のいずれか一項記載の組成物。
【請求項30】
連続用量CAR発現T細胞を含む組成物が、1単位用量もしくは複数の単位用量で投与するために製剤化され、各単位用量が、約5x107個のCAR発現T細胞~約5x108個のCAR発現T細胞、約5x107個のCAR発現T細胞~約2.5x108個のCAR発現T細胞、もしくは約2.5x108個のCAR発現T細胞~4x108個のCAR発現T細胞を含むか;または
連続用量CAR発現T細胞を含む組成物が、約5x107個以下のCAR発現T細胞、約1x108個以下のCAR発現T細胞、約2x108個以下のCAR発現T細胞、約2.5x108個以下のCAR発現T細胞、約3.0x108個以下のCAR発現T細胞、もしくは約4x108個以下のCAR発現T細胞を含む単位用量で製剤化される、
請求項2、4、および23~29のいずれか一項記載の組成物。
【請求項31】
組成物が、急性リンパ芽球性白血病の処置において使用するためのものである、請求項2、4、および23~30のいずれか一項記載の組成物。
【請求項32】
組成物が、非ホジキンリンパ腫(NHL)の処置において使用するためのものである、請求項2、4、および23~30のいずれか一項記載の組成物。
【請求項33】
CAR発現T細胞が対象に対して自己由来である、請求項2、4、および23~32のいずれか一項記載の組成物。
【請求項34】
第1の用量においてCAR発現T細胞によって発現されるCARに結合する抗原と、連続用量においてCAR発現T細胞によって発現されるCARに結合する抗原が、同一の抗原であるか、もしくは第1の用量においてCAR発現T細胞によって発現されるCARと、連続用量においてCAR発現T細胞によって発現されるCARが、同一の抗原結合ドメインを含む;または
連続用量においてCAR発現T細胞によって発現されるCARが、第1の用量においてCAR発現T細胞によって発現されるCARと同一である
請求項2、4、および23~33のいずれか一項記載の組成物。
【請求項35】
連続用量においてCAR発現T細胞によって発現されるCARが、白血病またはリンパ腫の細胞もしくは組織または白血病またはリンパ腫に関連する細胞もしくは組織によって発現される抗原に特異的に結合する、請求項2、4、および23~34のいずれか一項記載の組成物。
【請求項36】
対象が、第1の用量の投与前に化学療法剤であらかじめ処置されている、請求項2、4、および23~35のいずれか一項記載の組成物。
【請求項37】
対象が、連続用量の投与前に化学療法剤であらかじめ処置されている、請求項2、4、および23~36のいずれか一項記載の組成物。
【請求項38】
化学療法剤が、シクロホスファミドフルダラビン、およびその組み合わせからなる群より選択される薬剤を含む、請求項36または37記載の組成物。
【請求項39】
組成物が、ヒトである対象に使用するためのものである、請求項2、4、および23~38のいずれか一項記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2014年10月20日に出願された米国特許仮出願第62/066,279号、発明の名称「Methods and Compositions for Dosing in Adoptive Cell Therapy」、2015年5月15日に出願された米国特許仮出願第62/162,647号、発明の名称「Methods and Compositions for Dosing in Adoptive Cell Therapy」、2015年5月29日に出願された米国特許仮出願第62/168,710号、発明の名称「Methods and Compositions for Dosing in Adoptive Cell Therapy」、および2015年9月8日に出願された米国特許仮出願第62/215,732号、発明の名称「Methods and Compositions for Dosing in Adoptive Cell Therapy」からの優先権を主張する。これらの内容は、その全体が参照により組み入れられる。
【0002】
参照による配列表の組み入れ
本願は電子形式の配列表と一緒に出願されている。配列表は、2015年10月20日に作成された、サイズが16キロバイトの735042001040seqlist.txtという名称のファイルとして提供されている。電子形式の配列表の情報は、その全体が参照により組み入れられる。
【0003】
分野
本発明は、複数の用量の細胞の投与を伴う養子細胞療法、ならびに前記養子細胞療法において使用するための方法、組成物、および製造品に関する。前記細胞は通常、組換え受容体、例えば、キメラ受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)または、他のトランスジェニック受容体、例えば、T細胞受容体(TCR)を発現する。用量のタイミングおよび投与される細胞の数を含む前記方法の特徴は、例えば、投与された細胞への対象の曝露が増加するために、低い毒性および/または改善した効力などの様々な利点をもたらす。一部の態様において、第1の用量は、他の方法において投与される投与量と比較して比較的少ない細胞数を伴う。一部の態様において、第1の用量によって腫瘍または疾患の負荷(burden)が低減し、それによって、連続用量または後続用量の効力が改善される。一部の態様において、連続用量のタイミングは、毒性および/または対象による前記細胞に対する宿主免疫応答のリスクを最小にし、それによって持続性および効力を改善するように設計される。
【背景技術】
【0004】
背景
組換え受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する操作された細胞を用いた養子細胞療法のために、様々な方法を利用することができる。改善された方法、例えば、投与された細胞への対象の曝露を増やすことによって、例えば、投与された細胞の増殖および/または持続性を改善することによって、例えば、毒性のリスクを小さくする、および/または効力を高める改善された方法が必要とされる。このようなニーズを満たす方法、組成物、および製造品が提供される。
【発明の概要】
【0005】
概要
養子細胞療法において、例えば、対象における疾患および/または状態を処置するために、遺伝子操作された(組換え)細胞表面受容体を発現する細胞を対象に投与する方法が提供される。前記方法は、一般的に、複数の用量のこのような細胞を投与する工程、および/または以前に、事前用量(例えば、第1の用量)のこのような細胞で処置されたことがある対象に連続用量を投与する工程を伴う。一部の態様において、前記用量は、第1の用量と、1つまたは複数の連続用量である。一部の態様において、第1の用量は比較的少ない用量である、および/またはコンディショニング(conditioning)用量もしくは減量用量である、ならびに/あるいは連続用量は強化用量である。このような方法において使用するための細胞、組成物、および製造品も提供される。一部の態様において、前記組換え受容体は、遺伝子操作された抗原受容体、例えば、機能的な非TCR抗原受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)および他の組換え抗原受容体、例えば、トランスジェニックT細胞受容体(TCR)である。前記受容体の中には、他の組換えキメラ受容体、例えば、リガンドもしくは受容体または他の結合パートナーに特異的に結合する細胞外部分と、細胞内シグナル伝達部分、例えば、CARの細胞内シグナル伝達部分を含有する組換えキメラ受容体もある。前記用量は、一部の態様では、比較的少ない第1の用量を含む。
【0006】
一部の態様において、前記方法は、(a)第1の用量の組換え受容体(例えば、キメラ抗原受容体(CAR))発現細胞を、疾患または状態を有する対象に投与する工程であって、第1の用量が前記細胞を含有する、工程と、(b)連続用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞を対象に投与する工程を伴う。他の態様では、例えば、強化処置を提供するために、前記方法は、(a)のような第1の用量が以前に投与されたことのある対象に、(b)のような連続用量を対象に投与することによって行われる。
【0007】
一部の態様において、前記方法は、(a)第1の用量の組換え受容体(例えば、キメラ抗原受容体(CAR))発現細胞を、疾患または状態を有する対象に投与する工程を伴う。一部の態様において、第1の用量は、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下の前記細胞、約1x108個以下の前記細胞、および/または対象1m2あたり約1x108個以下の前記細胞を含有する。一部の態様において、さらに、前記方法は、(b)(a)の投与開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ(a)の投与開始後約28日より短い時点で、連続用量の組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞を対象に投与する工程を伴う。
【0008】
一部の態様において、(b)の投与時に、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルは、前記(a)の投与直前の対象における血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/または約50倍より少ない。一部の態様において、対象はグレード3以上の神経毒性を示さない。一部の態様において、第1の用量の投与後の対象におけるCRS関連アウトカムまたは神経毒性の症状は、(a)の投与後にピークレベルに達して低下し始めた。一部の態様において、対象は、前記第1の用量の細胞によって発現される受容体(例えば、CAR)に対して検出可能な体液性免疫応答も細胞性免疫応答も示さない。
【0009】
一部の態様において、さらに、前記方法は、第1の用量および複数の連続用量が、例えば、第1の用量および連続用量について特定の投薬量およびタイミングスケジュールに従って投与されるような、追加の連続用量または後続用量の投与を伴う。一部の態様において、1つまたは複数の後続用量の1番目のものが、連続用量の投与開始後少なくとも14日または14日を超えた時期に投与される。一部の態様において、第1の用量、連続用量、および後続用量の投与は、28日以内または約28日以内に、前記用量の少なくとも3つを投与する工程を含む。一部の態様において、連続用量は、第1の用量の投与開始後、約14日目に投与され、追加の連続用量または後続用量は、第1の用量の投与開始後、28日目に投与される。一部の態様において、追加の後続用量は、第1の用量の投与開始後、42日目および/または56日目に投与される。
【0010】
一部の態様において、第1の用量は、対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分な量で投与される。一部の態様において、第1の用量は、低用量、例えば、減量用量、例えば、疾患または状態を根絶するのに必要な用量より少ないが、このような疾患または状態の負荷または容積を低減し得る用量である。一部の態様において、第1の用量の投与は対象において重度のサイトカイン放出症候群(CRS)を誘導しない。一部の態様において、第1の用量の投与は対象においてCRSを誘導しない。一部の態様において、臨床データに基づいて、第1の用量の投与は対象の大多数において重度のCRSを誘導しない。一部の態様において、第1の用量の投与は、(1)持続性の発熱(少なくとも3日にわたる少なくとも38℃の発熱)と、(2)少なくとも20mg/dLもしくは少なくとも約20mg/dLのC反応性タンパク質(CRP)血清レベルの組み合わせを含むCRSを誘導しない、および/または2種類以上の昇圧剤の使用を必要とする低血圧、もしくは機械的換気を必要とする呼吸不全を含むCRSを誘導しない。
【0011】
一部の態様において、第1の用量の投与は対象においてグレード3以上の神経毒性を誘導しない。一部の態様において、臨床データに基づいて、第1の用量の投与は対象の大多数においてグレード3以上の神経毒性を誘導しない。一部の態様において、神経毒性の臨床リスクおよび/またはグレード3以上の神経毒性に関連する症状には、錯乱、せん妄、表出性失語、鈍麻、ミオクローヌス、嗜眠、精神状態変化、痙攣、発作様活動、発作(任意で、脳波[EEG]によって確認される)、高レベルのβアミロイド(Aβ)、高レベルのグルタミン酸、および高レベルの酸素ラジカルが含まれる。
【0012】
一部の態様において、第1の用量は、対象においてCRSまたは重度のCRSを引き起こす用量より少ない。一部の態様において、第1の用量は、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下の前記細胞、対象体重1キログラムあたり5x105個以下の前記細胞、約1x108個以下の前記細胞、または対象1m2あたり約1x108個以下の前記細胞を含む。
【0013】
一部の態様において、連続用量は、神経毒性、サイトカイン放出症候群(CRS)、マクロファージ活性化症候群、もしくは腫瘍溶解症候群の臨床リスクが第1の用量(もしくは事前用量)の投与後に存在していない時期か、または去ったか、もしくは弱まった時期に投与される。一部の態様において、連続用量は、CRS、神経毒性、マクロファージ活性化症候群、もしくは腫瘍溶解症候群を証明する生化学的読み取り値が第1の用量(もしくは事前用量)の投与後に存在していない時期か、または去ったか、もしくは弱まった時期に投与される。一部の態様において、連続用量は、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)または神経毒性を示す因子の血清レベルが、第1の用量の投与直前の対象における指標の血清レベルの約10倍より少ない、約25倍より少ない、かつ/または約50倍より少ない時期に投与される。一部の態様において、連続用量は、対象における神経毒性および/もしくはCRS関連アウトカムまたはCRSを示す血清因子が、前記投与後にピークレベルに達して低下し始めた時期に投与される。例えば、連続用量の投与時に、CRS関連アウトカムまたはCRSを示す血清因子のレベルはピークレベルの50%以下であるか、ピークレベルの20%以下であるか、ピークレベルの5%以下であるか、または第1の用量の投与直前のレベルであるかもしくはほぼ該レベルである。
【0014】
一部の態様において、対象は、第1の用量の投与後および/または連続用量の投与後に、サイトカイン放出症候群(CRS)を示さないか、重度のCRSを示さないか、神経毒性を示さないか、重度の神経毒性を示さないか、グレード3を上回る神経毒性を示さない。
【0015】
CRS関連アウトカムの中には、発熱、低血圧、低酸素、神経障害(neurologic disturbance)、または、炎症性サイトカイン、例えば、インターフェロンγ(IFNγ)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、IL-6、IL-10、IL-1β、IL-8、IL-2、MIP-1、Flt-3L、フラクタルカイン、およびIL-5、ならびにC反応性タンパク質(CRP)の血清レベルがある。CRSを示す因子、例えば、血清因子の中には、炎症性サイトカイン、例えば、IFNγ、GM-CSF、TNFα、IL-6、IL-10、IL-1β、IL-8、IL-2、MIP-1、Flt-3L、フラクタルカイン、およびIL-5、ならびにCRPがある。
【0016】
一部の局面において、さらに、連続用量を投与する時期は、対象が免疫応答を示さない、例えば、前記第1の用量(または事前用量)の前記細胞によって発現される受容体(例えば、CAR)に特異的な検出可能な適応性宿主免疫応答を示さない時期である。
【0017】
一部の態様において、第1の用量の投与、例えば、第1の用量または事前用量の投与開始と、連続用量の投与開始(例えば、連続用量の投与開始)との間の期間は、約4日より長く、例えば、約5日、約6日、約7日、約8日、または約9日より長く、例えば、約20日より長く、例えば、約9~約35日であるか、約14~約28日であるか、15~27日であるか、または17日~約21日であり;および/あるいは15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、もしくは27日であるか、または約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、約24日、約25日、約26日、もしくは約27日である。一部の態様において、連続用量の投与(例えば、その開始)は、第1の用量または事前用量の投与(例えば、その開始)後約14日より長くかつ約28日より短い。一部の態様において、連続用量の投与は、第1の用量を開始して21日後に開始する。一部の態様において、第1の用量の投与(例えば、その開始)と、連続用量の投与(例えば、その開始)との間の期間、または事前用量と次の連続用量の投与との間の期間は、約14日より長くかつ約28日より短い、例えば、15~27日、例えば、約21日である。一部の態様において、第1の用量の投与(例えば、その開始)と連続用量の投与(例えば、その開始)との間の期間は約17日である。
【0018】
一部の態様において、連続用量の投与時の対象におけるCRSを示す因子の血清レベルは、第1の用量の投与直前の対象における血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/もしくは約50倍より少ない;ならびに/または第1の用量の投与後の対象におけるCRS関連アウトカムは、(a)の投与後にピークレベルに達して低下し始めた;ならびに/または対象は、前記第1の用量の細胞によって発現される受容体(例えば、CAR)に対して検出可能な体液性免疫応答も細胞性免疫応答も示さない。一部の態様において、(b)または連続用量の投与時の前記CRSを示す因子の血清レベルは、(a)または第1の用量の投与直前のレベルの10倍以下である。
【0019】
一部の態様において、対象には、(a)の投与前に、第1の用量において前記細胞によって発現される受容体(例えば、CAR)を発現する、ある用量の細胞が与えられたことがない。一部の態様において、連続用量において前記細胞によって発現される受容体(例えば、CAR)は、第1の用量において前記細胞によって発現される受容体(例えば、CAR)に存在する少なくとも1つの免疫反応性エピトープを含有する。一部の態様において、連続用量の細胞にある受容体は、第1の用量において前記細胞によって発現される受容体(例えば、CAR)と同一であるか、または実質的に同一である。一部の態様において、第1の用量の細胞によって発現される前記受容体は、疾患もしくは状態の細胞もしくは組織または疾患もしくは状態に関連する細胞もしくは組織によって発現される抗原に特異的に結合する。一部の態様において、連続用量の細胞によって発現される受容体は、第1の用量と同じ抗原、例えば、同じエピトープに結合する、および/または第1の用量と同じ抗原結合ドメインを含有する。
【0020】
一部の態様において、疾患または状態は腫瘍である。一部の態様において、疾患または状態は、癌、悪性腫瘍、新生物、または他の増殖性の疾患もしくは障害、例えば、白血病、リンパ腫、例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)、ALL、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、難治性濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、無痛性B細胞リンパ腫、B細胞悪性腫瘍、結腸癌、肺癌、肝臓癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、皮膚癌、メラノーマ、骨癌、および脳癌、卵巣癌、上皮癌、腎細胞癌、膵臓腺癌、ホジキンリンパ腫、子宮頸癌、結腸直腸癌、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、髄芽腫、骨肉腫、滑膜肉腫、ならびに/または中皮腫である。一部の態様において、疾患または状態は白血病またはリンパ腫である。一部の態様において、疾患または状態は急性リンパ芽球性白血病である。一部の態様において、疾患または状態は非ホジキンリンパ腫(NHL)である。
【0021】
一部の態様において、疾患は癌であり、対象は、連続用量の投与開始時に形態学的疾患を示さない。一部の態様において、疾患は白血病またはリンパ腫であり、対象は、連続用量の投与時に、骨髄中に5%を超える芽細胞を示さない。一部の態様において、対象は、連続用量の投与時に、検出可能な分子的疾患および/または微小残存病変を示している。
【0022】
一部の態様において、第1の用量の投与は、例えば、第1の用量の投与後、例えば、(a)の投与後の疾患負荷を示す1種または複数種の因子の低減により示されるような、対象における疾患または状態の負荷の低減につながる。一部の態様において、(b)の投与時に、または連続用量の投与時に、対象は再発していない、および/または疾患負荷を示す1種類もしくは複数種の因子は、第1の用量の後に経験した初回低減後に増加していない。一部の態様において、連続用量の細胞は、対象における疾患または状態の負荷の低減に十分な量の細胞を含有する。一部の態様において、連続用量の投与は、対象における疾患または状態の負荷のさらなる低減につながる。一部の態様において、連続用量の投与開始直前と比較して、連続用量の投与は対象における疾患または状態の負荷の低減につながる。一部の態様において、前記方法は、対象に単一用量で第1の用量において前記細胞が投与されかつ連続用量において前記細胞が投与される代替の投与計画を用いる方法と比較してより大きな程度までおよび/またはより長い期間にわたって、疾患または状態の負荷を低減する。負荷の低減および/または負荷のさらなる低減は、対象における、対象の臓器における、対象の組織における、または対象の体液における疾患の細胞、例えば、腫瘍細胞の総数の低減を含んでもよい。低減は、フローサイトメトリーもしくは定量PCRによる分子的検出の低減、腫瘍の質量もしくは体積の低減、ならびに/または転移の数および/もしくは程度の低減を含んでもよい。一部の態様において、低減は、対象の生存の改善、例えば、生存または無事故生存、無進行生存、または無再発生存(relapse-free survival)の期間の延長を含む。
【0023】
一部の態様において、第1の用量の投与後に疾患もしくは状態は持続する、および/または第1の用量の投与は対象における疾患もしくは状態を根絶するのに十分でない。一部の態様において、連続用量の投与開始直前と比較して、前記連続用量の投与は対象における疾患または状態の負荷の低減につながる。
【0024】
一部の態様において、前記方法は、対象に単一用量で(a)(または第1の用量)において前記細胞が投与されかつ(b)(または連続用量)において前記細胞が投与される代替の投与計画を含む方法と比較してより大きな程度までおよび/またはより長い期間にわたって、疾患または状態の負荷を低減する。一部の態様において、連続用量の投与後(または(b)の投与後)の対象における、ある期間にわたる組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞の曲線下面積(AUC)および/または検出可能な受容体発現細胞の持続期間は、対象に単一用量で(a)(または第1の用量)において前記細胞が投与されかつ(b)(または連続用量)において前記細胞が投与される代替の投与計画を含む方法により得られたものと比較して、大きい。一部の態様において、前記方法は、対象の血液中の最大濃度または最大数の受容体発現(例えば、CAR発現)細胞である、1マイクロリットルあたり少なくとも10個もしくは少なくとも約10個の受容体発現細胞、1マイクロリットルあたり少なくとも100個もしくは少なくとも約100個の受容体発現細胞、末梢血単核球(PBMC)の総数の少なくとも50%、少なくとも少なくとも約1x105個の受容体発現細胞、またはDNA 1マイクログラムあたり少なくとも5,000コピーの組換え受容体コード(例えば、CARコード)DNA、またはDNA 1マイクログラムあたり少なくとも10,000コピーの組換え受容体コードDNAをもたらす。一部の態様において、(a)または第1の用量の投与開始後90日目に、対象の血液中もしくは血清中に組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞を検出することができ、例えば、対象の血液は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、もしくは少なくとも50%の受容体(例えば、CAR)発現細胞、1マイクロリットルあたり少なくとも10個の受容体(例えば、CAR)発現細胞、または少なくとも1x104個の受容体(例えば、CAR)発現細胞を含有する。
【0025】
一部の態様において、(a)の投与後または第1の用量の投与後、ある期間にわたる受容体発現(例えば、CAR発現)細胞の血中濃度のAUCは、対象に単一用量で(a)または第1の用量において前記細胞が投与されかつ(b)または第2の用量において前記細胞が投与される代替の投与計画を含む方法により得られたものと比較して、大きい。
【0026】
一部の態様において、CRS関連アウトカムは、(b)または連続用量の投与後、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、または14日目に対象において検出不可能であるか、または対象に第1の用量が投与されずに (b)もしくは連続用量において前記細胞が投与される代替の投与計画を含む方法と比較して、低減している。
【0027】
一部の態様において、(b)の投与または連続用量の後に対象において、ある期間にわたるCRSを示す因子の血清レベルのAUCは、対象に第1の用量が投与されずに (b)または連続用量において前記細胞が投与される代替の投与計画を含む方法のものと比較して、小さい。
【0028】
一部の態様において、対象は、第1の用量の投与前に、腫瘍を標的とする治療剤で処置されたことがある。一部の局面において、対象は、第1の用量および/または連続用量の投与時に前記治療剤に対して抵抗性または非応答性である。一部の態様において、(a)もしくは第1の用量の投与後かつ(b)もしくは連続用量の投与前に、または(a)もしくは第1の用量の投与前に、前記方法は、対象において、CRSを示す因子、疾患負荷を示す因子、および/または宿主抗組換え受容体(例えば、抗CAR)免疫応答、例えば、体液性免疫応答もしくは細胞性免疫応答の指標の血清レベルを評価する工程をさらに含む。このような一部の態様では、検出される疾患負荷を示す因子は、対象、対象の臓器、対象の組織、もしくは対象の体液における疾患の細胞の総数、フローサイトメトリーもしくは定量PCRによる分子的検出、固形腫瘍の質量もしくは体積、または転移の数もしくは程度であるか、またはこれを含む。
【0029】
一部の態様において、前記方法は、連続用量の投与前に、疾患負荷を示す因子を評価する工程と、評価の結果に基づいて、対象に投与される細胞の連続用量を決定する工程を含む。一部の態様において、評価によって、対象が形態学的疾患を有すると決定されたら、第1の用量における組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞の数より少ないか、またはこれとほぼ同じ数の組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞を含む連続用量が対象に投与される。一部の態様において、評価によって対象が微小残存病変(minimal residual disease)を有すると決定されたら、第1の用量と比較して増加した数の受容体(例えば、CAR)発現細胞を含む連続用量が対象に投与される。一部の態様において、連続用量は、第1の用量の数とほぼ同じ数の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞を含む。一部の態様において、連続用量において投与される1キログラムあたりの受容体(例えば、CAR)発現細胞の数は、第1の用量において投与される1キログラムあたりの受容体(例えば、CAR)発現細胞の数より少ないか、もしくはほぼこれより少ないか、または第1の用量において投与される1キログラムあたりの受容体(例えば、CAR)発現細胞の数と同じであるかもしくはほぼ同じである。他の態様において、連続用量において投与される1キログラムあたりの受容体発現(例えば、CAR発現)細胞の数は、第1の用量において投与される1キログラムあたりの受容体発現(例えば、CAR発現)細胞の数より多い。一部の態様において、連続用量は、第1の用量と比較して増加した数のこのような細胞、例えば、第1の用量の数の少なくとも2倍、5倍、または10倍の、このような細胞を含む。一部の態様において、連続用量において投与される1キログラムあたりの受容体発現(例えば、CAR発現)細胞の数は、少なくとも、第1の用量において投与される1キログラムあたりの受容体発現(例えば、CAR発現)細胞の数の2倍もしくは約2倍または3倍もしくは約3倍である。
【0030】
一部の態様において、第1の用量の投与後および/または連続用量の投与後に、第1の用量における受容体発現(例えば、CAR発現)細胞は対象において増殖する。一部の態様において、増殖は、第1の用量および/または連続用量の投与の直前と比較した、該投与後の血清CRPレベルの増加によって証明される。一部の態様において、増殖は、第1の用量および/または連続用量の投与の直前と比較した、該投与後の、qPCRによって測定される血清中の受容体(例えば、CAR)コード核酸レベルの増加によって証明される。一部の態様において、増加は少なくとも1倍、2倍、または3倍である。
【0031】
一部の態様において、第1の用量および/または連続用量は分割用量ではない。例えば、一部の態様において、第1の用量の細胞は、第1の用量の細胞を含む単一の薬学的組成物の状態で投与される、および/または連続用量の細胞は、連続用量の細胞を含む単一の薬学的組成物の状態で投与される。他の態様において、第1の用量および/または連続用量は分割用量であり、例えば、この場合、第1の用量の細胞は3日以下の期間にわたって、合計で第1の用量の細胞を含む複数の組成物の状態で投与され、および/または連続用量は分割用量であり、連続用量の細胞は3日以下の期間にわたって、合計で連続用量の細胞を含む複数の組成物の状態で投与される。
【0032】
一部の態様において、前記方法は、第1の用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞が以前に投与された対象に、連続用量の組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞を投与する工程を含む。一部の態様において、連続用量の細胞は、第1の用量の開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ約28日より短い時点で投与される。一部の態様において、連続用量において投与される受容体(例えば、CAR)発現細胞の数は第1の用量と比較して増加している。
【0033】
一部の態様において、第1の用量において投与される細胞の数は、約0.5x106細胞/kg対象体重~3x106細胞/kg、約0.75x106細胞/kg~2.5x106細胞/kg、または約1x106細胞/kg~2x106細胞/kgである。
【0034】
一部の態様において、受容体(例えば、CAR)発現細胞の連続用量において投与される細胞の数は、体重1キログラムあたり約2x106個の細胞(細胞/kg)~約6x106細胞/kg、約2.5x106細胞/kg~約5.0x106細胞/kg、または約3.0x106細胞/kg~約4.0x106細胞/kgである。
【0035】
一部の態様において、第1の用量において投与される受容体(例えば、CAR)発現細胞の数は、対象1キログラムあたり1x106個もしくは約1x106個または1x106個以下もしくは約1x106個以下であり、かつ/あるいは、連続用量において投与される受容体(例えば、CAR)発現細胞の数は、対象1キログラムあたり3x106個または約3x106個である。
【0036】
一部の態様において、前記方法は、(a)の投与前もしくは第1の用量の前および/または(b)の投与前もしくは連続用量の前に化学療法剤を投与する工程をさらに含む。一部の態様において、対象は(a)の投与前に化学療法剤であらかじめ処置されたことがある。一部の態様において、化学療法剤は、第1の用量および/または連続用量の前に対象における疾患または状態の負荷を低減するコンディショニング化学療法であるか、またはこれを含む。一部の態様において、化学療法剤は、シクロホスファミド、フルダラビン、および/またはその組み合わせである。一部の態様において、化学療法剤の投与は第1の用量の投与前の化学療法剤の投与を含み、任意で、連続用量の投与前の化学療法剤の投与を含まない。一部の態様において、化学療法剤は第1の用量の投与の2~5日前に投与される。一部の態様において、化学療法剤は第2の用量の投与の2~5日前に投与される。一部の態様において、化学療法剤は第1の用量の投与の2~5日前に、および第2の用量の投与の2~5日前に投与される。一部の態様において、化学療法剤は、対象1m2あたり1gまたは約1gから、対象1m2あたり3gまたは約3gの用量で投与される。
【0037】
一部の態様において、投与もしくは第1の用量の前に対象が細胞減少(cryoreductive)化学療法を受けている。一部の態様において、前記方法は、第1の用量の投与前に細胞減少化学療法の投与をさらに含む。
【0038】
対象における疾患または状態、例えば、腫瘍または癌を処置するための細胞および組成物を使用するための細胞および組成物であって、前記細胞が、対象における疾患もしくは状態を処置するための組換え受容体(例えば、キメラ抗原受容体(CAR))発現細胞、または組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞であらかじめ処置されたことのある対象における疾患もしくは状態を処置するための医薬を製造するための組換え受容体(例えば、キメラ抗原受容体(CAR))発現細胞を含有する、細胞および組成物も提供される。一部の態様において、使用または医学的使用のための前記組成物または細胞は、以前の処置の14~28日後に使用するためのものである。一部の態様において、使用するための前記組成物または細胞は、組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞であらかじめ処置されたことがある対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分な量で連続用量を投与するために製剤化される。
【0039】
このような医学的使用の一部の態様において、前記組成物または細胞は、第1の用量の受容体(例えば、CAR)発現細胞を、疾患または状態を有する対象に投与する工程を含む使用のためのものである。一部の態様において、第1の用量は、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下の前記細胞、約1x108個以下の前記細胞、および/または対象1m2あたり約1x108個以下の前記細胞を含有する。一部の態様において、前記組成物または細胞は、第1の用量の投与開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ約28日より短い時点で、連続用量の受容体(例えば、CAR)発現細胞を対象に投与する工程を含む使用のためのものである。
【0040】
一部の態様において、使用するための前記細胞は、組換え受容体(例えば、キメラ抗原受容体(CAR))を発現する細胞であり、受容体(例えば、CAR)発現細胞であらかじめ処置された対象において疾患を処置する方法において使用するためのものである。一部の態様において、前記細胞は、以前の処置の約14~28日後に使用するためのものである。一部の態様において、使用するための前記細胞は、受容体(例えば、CAR)発現細胞であらかじめ処置されたことがある対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分な量で連続用量を投与するために製剤化される。
【0041】
使用または医学的使用のための任意のこのような組成物または細胞の一部の態様において、対象は形態学的疾患を示さない、および/または対象は骨髄中に5%を超える芽細胞を示さない。
【0042】
一部の態様において、前記組成物または細胞は、第1の用量の受容体(例えば、CAR)発現細胞を、疾患または状態を有する対象に投与する工程を含む方法において使用するためのものである。一部の態様において、第1の用量は、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下の前記細胞、約1x108個以下の前記細胞、および/または対象1m2あたり約1x108個以下の前記細胞を含有する。一部の態様において、前記細胞は、第1の用量の投与開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ約28日より短い時点で、連続用量の受容体(例えば、CAR)発現細胞を対象に投与する工程を含む方法において使用するためのものである。
【0043】
一部の態様において、使用するための前記組成物または細胞は、対象において重度のCRSを誘導しないか、または対象においてCRSを誘導しない量で投与するために製剤化される。一部の態様において、使用するための前記細胞は、対象においてグレード3以上の神経毒性を誘導しない量で投与するために製剤化される。一部の態様において、使用するための前記細胞は、臨床データに基づいて、そのように処置された対象の大多数において重度のCRSを誘導しない量で投与するために製剤化される。一部の態様において、使用するための前記細胞は、臨床データに基づいて、そのように処置された対象の大多数においてグレード3以上の神経毒性を誘導しない量で投与するために製剤化される。
【0044】
一部の態様において、対象における疾患または状態を処置するための医薬を製造するための受容体(例えば、キメラ抗原受容体(CAR))発現細胞の使用は、第1の用量および連続用量において対象に投与するために製剤化および/または包装される細胞を含む。一部の態様において、前記処置は、第1の用量および連続用量において前記細胞を対象に投与する工程を含み、第1の用量は、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下の前記細胞、約1x108個以下の前記細胞、および/または対象1m2あたり約1x108個以下の前記細胞を含む。
【0045】
使用または医学的使用のための任意のこのような組成物または細胞の一部の態様において、連続用量は、第1の投与の開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ約28日より短い時点で投与するためのものである。一部の態様において、連続用量は、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、前記第1の投与直前の対象における血清レベルの約10倍より少ない、約25倍より少ない、かつ/または約50倍より少ない時点で投与するためのものである。一部の態様において、連続用量は、対象がグレード3以上の神経毒性を示さない時点で投与するためのものである。一部の態様において、連続用量は、前記第1の用量の前記投与後の対象におけるCRS関連アウトカムもしくは神経毒性の症状が、第1の投与の投与後にピークレベルに達して低下し始めた時点で投与するためのものである。一部の態様において、連続用量は、対象が、前記第1の用量の細胞によって発現される受容体(例えば、CAR)に対して検出可能な体液性免疫応答も細胞性免疫応答も示さない時点で投与するためのものである。
【0046】
一部の態様において、使用するための前記細胞は、第1の用量および連続用量において対象に投与するために製剤化および/もしくは包装される、ならびに/または前記処置は、第1の用量および連続用量において前記細胞を対象に投与する工程を含む。一部の態様において、第1の用量は、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下の前記細胞、約1x108個以下の前記細胞、および/または対象1m2あたり約1x108個以下の前記細胞を含有する。
【0047】
一部の態様において、前記使用は、第1の投与および連続投与が1または複数の単位用量で前記細胞を投与する工程を含み、それぞれの単位用量が、約5x107個の前記細胞~約5x108個の細胞、約5x107個の前記細胞~約2.5x108個の細胞、または約2.5x108個の細胞~4x108個の細胞を含む場合を含む。一部の態様において、前記細胞は、約5x107個以下の細胞、約1x108個以下の細胞、約2x108個以下の前記細胞、約2.5x108個以下の前記細胞、約3.0x108個以下の前記細胞、または約4x108個以下の前記細胞を含む単位用量で製剤化される。
【0048】
一部の態様において、前記細胞または使用は、第1の投与が1単位用量を投与する工程を含む場合を含む。一部の態様において、前記細胞または使用は、連続投与が2以上の単位用量の投与を含む場合を含む。一部の態様において、前記細胞または使用は、連続投与が1単位用量の投与を含む場合を含む。
【0049】
一部の態様において、使用するための前記細胞組成物は、疾患または状態が腫瘍または癌である場合を含む。一部の態様において、使用するための前記細胞または組成物は、腫瘍または癌が白血病またはリンパ腫である場合を含む。一部の態様において、前記組成物または細胞は急性リンパ芽球性白血病の処置において使用するためのものである。一部の態様において、前記組成物または細胞は非ホジキンリンパ腫(NHL)の処置において使用するためのものである。
【0050】
一部の態様において、前記細胞、組成物、または使用は、連続用量が、事前用量における組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞の数より少ないか、またはこれとほぼ同じ数の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞を投与するために製剤化される場合を含む。一部の態様において、連続用量の細胞を含有する組成物は、第1の用量または事前用量と比較して増加した数の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞を投与するために製剤化される。
【0051】
前記方法を実施するための製造品も提供される。一部の態様において、製造品は、複数の容器、例えば、密閉可能な容器であって、それぞれの容器が個々に、対象に投与するための、単位用量の、組換え受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞を含む複数の容器、包装材料、および/またはラベルもしくは添付文書を備える。
【0052】
一部の態様において、単位用量は、前記方法において最も少ない用量で与えられる細胞の量、例えば、第1の用量のサイズを含む。一部の態様において、単位用量は、対象1kgあたり約1x108個以下の前記細胞、約5x107個以下の前記細胞、約1x106個以下の前記細胞、または対象1kgあたり約5x105個以下の前記細胞を含む。
【0053】
一部の態様において、ラベルまたは添付文書は、例えば、第1の用量の投与において、ある特定の数のこのような単位用量、例えば、1つの単位用量を投与し、次いで、1または複数の単位用量を含む連続用量を投与することによって、複数の単位用量を対象に投与するための説明書を備える。一部の態様において、説明書は、前記単位用量の1つを対象に送達する工程を含む第1の投与を行うことと、1または複数の前記単位用量を対象に送達する工程を含む連続投与を行うべきであることを規定している。一部の態様において、説明書は、第1の投与の約15日~約27日後の時期に連続投与を行うべきであることを規定している。一部の態様において、説明書は、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、事前用量直前の対象における指標の血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/または約50倍より少ないと決定された後の時期に、あるいはCRSの指標がピークに達してから低下している最中である、例えば、ピーク値の40%、30%、20%、もしくは10%より少ない、または約40%、約30%、約20%、もしくは約10%より少ないと、および/または対象が、事前用量の細胞によって発現される受容体(例えば、CAR)に特異的な検出可能な適応性宿主免疫応答を示していないと決定された後の時期に連続投与を行うべきであることを規定している。一部の態様において、前記容器は、可撓性のある細胞注入バッグであるか、または該バッグを備える。一部の態様において、投与される、および/または前記容器の中に入っている、もしくは単位用量の前記細胞は自家移入のためのものである。従って、一部の態様において、前記細胞は、前記細胞を投与される対象から得られたものである。一部の態様において、前記方法は同種異系投与のためのものである。一部の態様において、ラベルおよび/または包装材料は、対象に特有の識別子をさらに備え、それにより、前記細胞が対象から得られたこと、および/または対象に厳密に投与される必要があることを示している。
【0054】
一部の態様において、前記細胞は、初代細胞、例えば、初代ヒト免疫細胞、例えば、PBMC、T細胞、および/またはNK細胞である。一部の態様において、前記細胞はCD8+T細胞および/またはCD4+T細胞を含む。一部の態様において、T細胞は対象に対して自己由来である。
[本発明1001]
(a)第1の用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞を、疾患または状態を有する対象に投与する工程であって、該第1の用量が、対象体重1キログラムあたり約1x10 6 個以下の該細胞、約1x10 8 個以下の該細胞、および/または対象1m 2 あたり約1x10 8 個以下の該細胞を含む、工程と、
(b)(a)の投与開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ(a)の投与開始後約28日より短い時点で、連続用量のCAR発現細胞を対象に投与する工程と
を含む、処置方法。
[本発明1002]
(b)の投与時に、
(i)対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、(a)の投与直前の対象における血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/もしくは約50倍より少ない;ならびに/または
(ii)対象がグレード3以上の神経毒性を示さない;ならびに/または
(iii)第1の用量の投与後の対象におけるCRS関連アウトカムもしくは神経毒性の症状が、(a)の投与後にピークレベルに達して低下し始めた;ならびに/または
(iv)対象が、該第1の用量の細胞によって発現されるCARに対して検出可能な体液性免疫応答も細胞性免疫応答も示していない、
本発明1001の方法。
[本発明1003]
(a)第1の用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞を対象に投与する工程であって、第1の用量が、対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分な量の該細胞を含む、工程と、
(b)(i)神経毒性、サイトカイン放出症候群(CRS)、マクロファージ活性化症候群、もしくは腫瘍溶解症候群の臨床リスクが、(a)の投与後に存在していないか、または去ったか、もしくは弱まった、(ii)(CRS)、神経毒性、マクロファージ活性化症候群、もしくは腫瘍溶解症候群を証明する生化学的読み取り値が、(a)の投与後に存在していないか、または去ったか、もしくは弱まった、ならびに/あるいは(iii)対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)または神経毒性を示す因子の血清レベルが、(a)の投与直前の対象における前記指標の血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/または約50倍より少ない、かつ
対象が、該第1の用量の細胞によって発現されるCARに特異的な検出可能な適応性宿主免疫応答を示していない
時期に、連続用量のCAR発現細胞を対象に投与する工程と
を含む、処置方法。
[本発明1004]
(a)第1の用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞を対象に投与する工程であって、該第1の用量が、対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分な量の該細胞を含む、工程と、
(b)対象における神経毒性および/またはCRS関連アウトカムが、(a)の投与後にピークレベルに達して低下し始めた後の時期であり、かつ対象が、該第1の用量の細胞によって発現されるCARに対して検出可能な体液性免疫応答も細胞性免疫応答も示していない時期に、連続用量のCAR発現細胞を対象に投与する工程と
を含む、処置方法。
[本発明1005]
(i)(a)の投与が、対象において重度のCRSを誘導しないか、もしくは対象においてCRSを誘導しない;
(ii)(a)の投与が、対象においてグレード3以上の神経毒性を誘導しない;
(iii)臨床データに基づいて、(a)における前記用量の細胞の投与が、そのように処置された対象の大多数において重度のCRSを誘導しない;および/または
(iv)臨床データに基づいて、(a)における該用量の細胞の投与が、そのように処置された対象の大多数においてグレード3以上の神経毒性を誘導しない、
本発明1003または本発明1004の方法。
[本発明1006]
(a)の投与の開始と(b)の投与の開始との間の期間が、約9~約35日、約14~約28日、15~27日、もしくは17日~約21日である;および/または
第1の用量が、対象体重1キログラムあたり約1x10 6 個以下の細胞、約1x10 8 個以下の細胞、もしくは対象1m 2 あたり約1x10 8 個以下の細胞を含む、本発明1003~1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
CRS関連アウトカムが、発熱、低血圧、低酸素、神経障害、または、炎症性サイトカインもしくはC反応性タンパク質(CRP)の血清レベルからなる群より選択される、本発明1002~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
CRSを示す因子が、インターフェロンγ(IFNγ)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、IL-6、IL-10、IL-1β、IL-8、IL-2、MIP-1、Flt-3L、フラクタルカイン、およびIL-5からなる群より選択される炎症性サイトカインであるか、またはCRPである、本発明1002~1006のいずれかの方法。
[本発明1009]
(b)の投与時に、
CRS関連アウトカムのレベルがピークレベルの50%以下であるか、ピークレベルの20%以下であるか、もしくはピークレベルの5%以下であるか、または(a)の投与直前のレベルであるかもしくはほぼ該レベルである;あるいはCRSを示す因子の血清レベルが(a)の投与直前のレベルの10倍以下である、
本発明1002~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
神経毒性の臨床リスクおよび/またはグレード3以上の神経毒性に関連する症状が、錯乱、せん妄、表出性失語、鈍麻、ミオクローヌス、嗜眠、精神状態変化、痙攣、発作様活動、発作(任意で、脳波[EEG]によって確認される)、高レベルのβアミロイド(Aβ)、高レベルのグルタミン酸、および高レベルの酸素ラジカルの中から選択される、本発明1002~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
第1の用量において細胞によって発現されるCARを発現する、ある用量の細胞が、(a)の投与前に、対象に与えられたことがない、本発明1001~1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
連続用量において細胞によって発現されるCARが、第1の用量において細胞によって発現されるCARに存在する少なくとも1つの免疫反応性エピトープを含有する、本発明1001~1011のいずれかの方法。
[本発明1013]
連続用量において細胞によって発現されるCARが、第1の用量において細胞によって発現されるCARと同一であるか、または第1の用量において細胞によって発現されるCARと実質的に同一である、本発明1012の方法。
[本発明1014]
第1の用量において細胞によって発現されるCARが、疾患もしくは状態の細胞もしくは組織または疾患もしくは状態に関連する細胞もしくは組織によって発現される抗原に特異的に結合する、本発明1001~1013のいずれかの方法。
[本発明1015]
疾患または状態が腫瘍または癌である、本発明1014の方法。
[本発明1016]
(a)の投与が、(a)の投与後の疾患負荷を示す1種または複数種の因子の低減により示されるような、対象における疾患または状態の負荷の低減につながる、本発明1015の方法。
[本発明1017]
(b)の投与時に、対象が再発していない、および/または疾患負荷を示す1種または複数種の因子が前記低減後に増加していない、本発明1016の方法。
[本発明1018]
連続用量の細胞が、対象における疾患または状態の負荷の低減に十分な量の細胞を含む、本発明1001~1017のいずれかの方法。
[本発明1019]
(b)の投与が、対象における疾患または状態の負荷のさらなる低減につながる、本発明1016~1018のいずれかの方法。
[本発明1020]
連続用量の投与開始直前と比較して、該連続用量の投与が、対象における疾患または状態の負荷の低減につながる、本発明1001~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
対象に単一用量で(a)において前記細胞が投与されかつ(b)において前記細胞が投与される代替の投与計画を含む方法と比較してより大きな程度までおよび/またはより長い期間にわたって、疾患または状態の負荷を低減する、本発明1001~1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
負荷の低減および/または負荷のさらなる低減が、対象、対象の臓器、対象の組織、もしくは対象の体液における疾患の細胞の総数の低減、腫瘍の質量もしくは体積の低減、ならびに/または転移の数および/もしくは程度の低減を含む、本発明1016~1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
疾患が癌であり、対象が(b)の投与の開始時に形態学的疾患を示さない;および/または
疾患が白血病もしくはリンパ腫であり、対象が、(b)の投与時に、骨髄中に5%を超える芽細胞を示さない、
本発明1001~1022のいずれかの方法。
[本発明1024]
第1の用量の投与後に疾患または状態が持続する、および/または第1の用量の投与が、対象における疾患もしくは状態を根絶するのに十分でない、本発明1001~1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
対象が、(b)の投与時に、検出可能な分子的疾患および/または微小残存病変を示している、本発明1001~1024のいずれかの方法。
[本発明1026]
(b)の投与後の対象における(i)CAR発現細胞の最大数、(ii)ある期間にわたるCAR発現細胞の曲線下面積(AUC)、および/または(iii)検出可能なCAR発現細胞の持続期間が、対象に単一用量で(a)において該細胞が投与されかつ(b)において該細胞が投与される代替の投与計画を含む方法により得られたものと比較して大きい、本発明1001~1025のいずれかの方法。
[本発明1027]
前記方法が、対象の血液中の最大濃度または最大数のCAR発現細胞である1マイクロリットルあたり少なくとも10個もしくは約10個のCAR発現細胞、末梢血単核球(PBMC)の総数に対して少なくとも50%、少なくとも約1x10 5 個のCAR発現細胞、またはDNA 1マイクログラムあたり少なくとも5,000コピーのCARコードDNAをもたらし;および/または
(a)の投与開始後90日目に、対象の血液中もしくは血清中でCAR発現細胞が検出可能であり;および/または
(a)の投与開始後90日目に、対象の血液が、少なくとも20%のCAR発現細胞、1マイクロリットルあたり少なくとも10個のCAR発現細胞、もしくは少なくとも1x10 4 個のCAR発現細胞を含有する、本発明1001~1026のいずれかの方法。
[本発明1028]
(a)の投与後、ある期間にわたるCAR発現細胞の血中濃度の曲線下面積(AUC)が、対象に単一用量で(a)において該細胞が投与されかつ(b)において該細胞が投与される代替の投与計画を含む方法により得られたものと比較して大きい、本発明1001~1027のいずれかの方法。
[本発明1029]
(b)の投与後、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、もしくは14日目の対象におけるCRS関連アウトカムが検出不可能であるか、または、対象に第1の用量が投与されずに(b)において前記細胞が投与される代替の投与計画を含む方法と比較して低減している、本発明1001~1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
(b)の投与後の対象における、ある期間にわたるCRSを示す因子の血清レベルの曲線下面積(AUC)が、対象に第1の用量が投与されずに(b)において前記細胞が投与される代替の投与計画を含む方法と比較して小さい、本発明1001~1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
対象が、(a)の投与前に、腫瘍または癌を標的とする治療剤で処置されたことがあり、(a)の投与時に、該治療剤に対して抵抗性または非応答性である、本発明1015~1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
(a)の投与後で(b)の投与前に、または(a)の投与前に、対象におけるCRSを示す因子の血清レベル、神経毒性を示す因子、疾患負荷を示す因子、および/または宿主抗CAR免疫応答の前記指標の血清レベルを評価する工程をさらに含む、本発明1001~1031のいずれかの方法。
[本発明1033]
疾患負荷を示す因子が測定され、該因子が、対象、対象の臓器、対象の組織、もしくは対象の体液における疾患の細胞の総数、フローサイトメトリーもしくは定量PCRによる分子検出、固形腫瘍の質量もしくは体積、または転移の数もしくは程度を含む、本発明1032の方法。
[本発明1034]
(i)(b)の投与前に疾患負荷を示す因子を評価する工程と、
(ii)評価の結果に基づいて、対象に投与される細胞の連続用量を決定する工程と、
(iii)評価によって対象が形態学的疾患を有すると決定されたら、第1の用量におけるCAR発現細胞の数より少ないかもしくは該数とほぼ同じ数のCAR発現細胞を含む連続用量を対象に投与する工程;および/または、評価によって対象が微小残存病変を有すると決定されたら、第1の用量と比較して増加した数のCAR発現細胞を含む連続用量を対象に投与する工程と
を含む、本発明1032または本発明1033の方法。
[本発明1035]
連続用量が、第1の用量におけるCAR発現細胞の数とほぼ同じ数のCAR発現細胞を含む、本発明1001~1033のいずれかの方法。
[本発明1036]
連続用量が、第1の用量と比較して増加した数のCAR発現細胞を含む、本発明1001~1033のいずれかの方法。
[本発明1037]
第1の用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞が以前に投与された対象に、連続用量のCAR発現細胞を投与する工程を含む、処置方法であって、
連続用量の細胞が、第1の用量の開始後少なくとも約14日もしくは約14日より長くかつ約28日より短い時点で投与される;および/または
連続用量において投与されるCAR発現細胞の数が第1の用量と比較して増加している、処置方法。
[本発明1038]
第1の用量において投与される細胞の数が、約0.5x10 6 細胞/kg対象体重~3x10 6 細胞/kg、約0.75x10 6 細胞/kg~2.5x10 6 細胞/kg、または約1x10 6 細胞/kg~2x10 6 細胞/kgである、本発明1001~1037のいずれかの方法。
[本発明1039]
増加した数が、第1の用量における数の少なくとも2倍、5倍、または10倍である、本発明1034、1036、または1037の方法。
[本発明1040]
CAR発現細胞の連続用量において投与される細胞の数が、体重1キログラムあたり約2x10 6 個の細胞(細胞/kg)~約6x10 6 細胞/kg、約2.5x10 6 細胞/kg~約5.0x10 6 細胞/kg、または約3.0x10 6 細胞/kg~約4.0x10 6 細胞/kgを含む、本発明1001~1039のいずれかの方法。
[本発明1041]
対象が、第1の用量の投与後および/または連続用量の投与後に、サイトカイン放出症候群(CRS)を示さないか、重度のCRSを示さないか、神経毒性を示さないか、重度の神経毒性を示さないか、またはグレード3を超える神経毒性を示さない、本発明1001~1040のいずれかの方法。
[本発明1042]
第1の用量におけるCAR発現細胞が、第1の用量の投与後および/または連続用量の投与後に対象において増殖する、本発明1001~1041のいずれかの方法。
[本発明1043]
増殖が、
(i)第1の用量および/もしくは連続用量の投与の直前と比較した、該投与後の血清CRPレベルの増加、ならびに/または
(ii)第1の用量および/もしくは連続用量の投与の直前と比較した、該投与後の、qPCRによって測定される血清中のCARコード核酸レベルの増加
によって証明され、該増加が任意で少なくとも1倍、2倍、または3倍である、本発明1042の方法。
[本発明1044]
第1の用量と連続用量との間の期間が15~27日である、本発明1001~1043のいずれかの方法。
[本発明1045]
第1の用量と連続用量との間の期間が約21日である、本発明1044の方法。
[本発明1046]
第1の用量と連続用量との間の期間が約17日である、本発明1044の方法。
[本発明1047]
第1の用量の細胞が、第1の用量の細胞を含む単一の薬学的組成物の状態で投与される、および/または連続用量の細胞が、連続用量の細胞を含む単一の薬学的組成物の状態で投与される、本発明1001~1046のいずれかの方法。
[本発明1048]
第1の用量が分割用量であり、第1の用量の細胞が3日以下の期間にわたって、合計で第1の用量の細胞を含有する複数の組成物の状態で投与される;および/または
連続用量が分割用量であり、連続用量の細胞が3日以下の期間にわたって、合計で連続用量の細胞を含有する複数の組成物の状態で投与される、本発明1001~1047のいずれかの方法。
[本発明1049]
前記方法が(a)の投与前および/もしくは(b)の投与前に化学療法剤を投与する工程をさらに含むか、または対象が第1の用量の投与前に化学療法剤であらかじめ処置されたことがある、本発明1001~1048のいずれかの方法。
[本発明1050]
化学療法剤が、シクロホスファミド、フルダラビン、および/またはその組み合わせからなる群より選択される薬剤を含む、本発明1049の方法。
[本発明1051]
化学療法剤の投与が、(a)の投与前の化学療法剤の投与を含み、任意で(b)の投与前の化学療法剤の投与を含まない、本発明1049または1050の方法。
[本発明1052]
化学療法剤が(a)の投与の2~5日前に投与され、かつ/または(b)の投与の2~5日前に投与される、本発明1049~1051のいずれかの方法。
[本発明1053]
化学療法剤が対象1m 2 あたり1gまたは約1gから対象1m 2 あたり3gまたは約3gの用量で投与される、本発明1049~1052のいずれかの方法。
[本発明1054]
第1の用量の投与前に対象が細胞減少化学療法を受けているか、または前記方法が第1の用量の投与前に細胞減少化学療法の投与をさらに含む、本発明1001~1053のいずれかの方法。
[本発明1055]
化学療法剤が、対象における疾患または状態の負荷を低減するコンディショニング化学療法を含む、本発明1049~1054のいずれかの方法。
[本発明1056]
連続用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞を対象に投与する工程を含む、強化処置を提供する方法であって、
該投与の前に、対象が、対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分な量の事前用量のCAR発現を受けており、
投与時に、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、該事前用量の直前の対象における前記指標の血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/もしくは約50倍より少なく、対象が、該事前用量の細胞によって発現されたCARに特異的な検出可能な適応性宿主免疫応答を示していない;ならびに/または事前用量と連続用量との間の期間が約14日より長く約28日より短い、方法。
[本発明1057]
CAR発現細胞の連続用量における細胞の数が、体重1キログラムあたり約2x10 6 個の細胞(細胞/kg)~約6x10 6 細胞/kg、約2.5x10 6 細胞/kg~約5.0x10 6 細胞/kg、または約3.0x10 6 細胞/kg~約4.0x10 6 細胞/kgを含む、本発明1056の方法。
[本発明1058]
疾患または状態が白血病またはリンパ腫である、本発明1001~1057のいずれかの方法。
[本発明1059]
疾患または状態が急性リンパ芽球性白血病である、本発明1001~1058のいずれかの方法。
[本発明1060]
連続用量において投与される1キログラムあたりのCAR + 細胞の数が、第1の用量において投与される1キログラムあたりのCAR + 細胞の数より多い、本発明1059の方法。
[本発明1061]
連続用量において投与される1キログラムあたりのCAR + 細胞の数が、第1の用量において投与される1キログラムあたりのCAR + 細胞の数の少なくとも2倍または約2倍または3倍または約3倍である、本発明1060の方法。
[本発明1062]
疾患または状態が非ホジキンリンパ腫(NHL)である、本発明1001~1058のいずれかの方法。
[本発明1063]
第1の用量において投与されるCAR + 細胞の数が対象1キログラムあたり1x10 6 個もしくは約1x10 6 個または1x10 6 個以下もしくは約1x10 6 個以下である、および/あるいは連続用量において投与されるCAR + 細胞の数が対象1キログラムあたり3x10 6 個または約3x10 6 個である、本発明1001~1062のいずれかの方法。
[本発明1064]
連続用量において投与される1キログラムあたりのCAR + 細胞の数が、第1の用量において投与される1キログラムあたりのCAR + 細胞の数より少ないかもしくはほぼ少ないか、または第1の用量において投与される1キログラムあたりのCAR + 細胞の数と同じであるかもしくはほぼ同じである、本発明1062の方法。
[本発明1065]
1つまたは複数の追加の後続用量を対象に投与する工程をさらに含み、該1つまたは複数の追加の後続用量の1番目のものが、連続用量の投与開始後少なくとも14日または14日を超えた時期に投与される、本発明1001~1064のいずれかの方法。
[本発明1066]
第1の用量、連続用量、および後続用量の投与が、28日以内または約28日以内に該用量の少なくとも3つを投与する工程を含む、本発明1065の方法。
[本発明1067]
連続用量が、第1の用量の投与開始後、約14日目に投与され、少なくとも1つの追加の後続用量の1つが、第1の用量の投与開始後、28日目に投与され、任意で、追加の後続用量が、第1の用量の投与開始後、42日目および/または56日目に投与される、本発明1065または1066の方法。
[本発明1068]
細胞がT細胞である、本発明1001~1067のいずれかの方法。
[本発明1069]
T細胞が対象に対して自己由来である、本発明1001~1068のいずれかの方法。
[本発明1070]
キメラ抗原受容体(CAR)発現細胞であらかじめ処置された対象における疾患または状態を処置するための医薬を製造するための、CAR発現細胞を含む組成物の使用であって、
組成物が、以前の処置の14~28日後に使用するためのものであり、
組成物が、CAR発現細胞であらかじめ処置されたことがある対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分な量で連続用量を投与するために製剤化される、使用。
[本発明1071]
キメラ抗原受容体(CAR)発現細胞であらかじめ処置された対象における疾患の処置において使用するためのCAR発現細胞を含む組成物であって、
細胞が、以前の処置の約14~28日後に使用するためのものであり、
細胞が、CAR発現細胞であらかじめ処置されたことがある対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分な量で連続用量を投与するために製剤化される、組成物。
[本発明1072]
以前の処置におけるCAR発現細胞の用量が、連続用量の使用の前に対象における腫瘍負荷を低減した、および/または対象が形態学的疾患を示さない、および/または対象が骨髄中に5%を超える芽細胞を示さない、本発明1070の使用または本発明1071の組成物。
[本発明1073]
疾患または状態を処置するための方法において使用するための医薬の製造におけるキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞の使用であって、
該方法が、
(a)第1の用量のCAR発現細胞を、疾患または状態を有する対象に投与する工程であって、該第1の用量が、対象体重1キログラムあたり約1x10 6 個以下の細胞、約1x10 8 個以下の細胞、および/または対象1m 2 あたり約1x10 8 個以下の細胞を含む、工程と、
(b)(a)の投与開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ(a)の投与開始後約28日より短い時点で、連続用量のCAR発現細胞を対象に投与する工程と
を含む、使用。
[本発明1074]
疾患または状態を処置するための方法において使用するための、キメラ抗原受容体(CAR)発現細胞を含む組成物であって、該方法が、
(a)第1の用量のCAR発現細胞を、疾患または状態を有する対象に投与する工程であって、該第1の用量が、対象体重1キログラムあたり約1x10 6 個以下の細胞、約1x10 8 個以下の細胞、および/または対象1m 2 あたり対象1m 2 あたり約1x10 8 個以下の細胞を含む、工程と、
(b)(a)の投与開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ(a)の投与開始後約28日より短い時点で、連続用量のCAR発現細胞を対象に投与する工程と
を含む、組成物。
[本発明1075]
(i)対象において重度のCRSを誘導しないか、もしくは対象においてCRSを誘導しない;(ii)対象においてグレード3以上の神経毒性を誘導しない;(iii)臨床データに基づいて、そのように処置された対象の大多数において重度のCRSを誘導しない;および/または(iv)臨床データに基づいて、そのように処置された対象の大多数においてグレード3以上の神経毒性を誘導しない
量で投与するために、細胞が製剤化される、本発明1070~1074のいずれかの使用または組成物。
[本発明1076]
対象における疾患または状態を処置するための医薬を製造するためのキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞の使用であって、細胞が、第1の用量および連続用量において対象に投与するために製剤化および/もしくは包装される、ならびに/または処置が、第1の用量および連続用量において該細胞を対象に投与する工程を含み、
第1の用量が、対象体重1キログラムあたり約1x10 6 個以下の細胞、約1x10 8 個以下の細胞、および/または対象1m 2 あたり約1x10 8 個以下の細胞を含み、
連続用量が、
(i)(a)第1の投与の開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ約28日より短い時点、ならびに/あるいは
(b)(i)対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、該第1の投与の直前の対象における血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/もしくは約50倍より少ない時点;(ii)対象がグレード3以上の神経毒性を示さない時点;(iii)該第1の用量の該投与後の対象におけるCRS関連アウトカムもしくは神経毒性の症状が、第1の投与の投与後にピークレベルに達して低下し始めた時点、ならびに/または(iv)対象が、該第1の用量の細胞によって発現されるCARに対して検出可能な体液性免疫応答も細胞性免疫応答も示していない時点
で投与するための、連続用量;ならびに
(ii)第1の用量におけるCAR発現細胞の数とほぼ同じ数のCAR発現細胞、または第1の用量と比較して増加した数のCAR発現細胞を含む、連続用量
の中から選択される、使用。
[本発明1077]
対象における疾患または状態の処置において使用するためのキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞を含む組成物であって、細胞が、第1の用量および連続用量において対象に投与するために製剤化および/もしくは包装される、ならびに/または処置が、第1の用量および連続用量において細胞を対象に投与する工程を含み、
第1の用量が、対象体重1キログラムあたり約1x10 6 個以下の細胞、約1x10 8 個以下の該細胞、および/または対象1m 2 あたり約1x10 8 個以下の細胞を含み、
連続用量が、
(i)(a)第1の投与の開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ約28日より短い時点、ならびに/あるいは
(b)(i)対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、該第1の投与の直前の対象における血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/もしくは約50倍より少ない時点;(ii)対象がグレード3以上の神経毒性を示さない時点;(iii)該第1の用量の該投与後の対象におけるCRS関連アウトカムもしくは神経毒性の症状が、第1の投与の投与後にピークレベルに達して低下し始めた時点、ならびに/または(iv)対象が、該第1の用量の細胞によって発現されるCARに対して検出可能な体液性免疫応答も細胞性免疫応答も示していない時点
で投与するための、連続用量;ならびに
(ii)第1の用量におけるCAR発現細胞の数とほぼ同じ数のCAR発現細胞、または第1の用量と比較して増加した数のCAR発現細胞を含む、連続用量
の中から選択される、組成物。
[本発明1078]
増加した数が、第1の用量における数の少なくとも2倍、5倍、または10倍である、本発明1076の使用または本発明1077の組成物。
[本発明1079]
CAR発現細胞の連続用量において投与される細胞の数が、
体重1キログラムあたり約2x10 6 個の細胞(細胞/kg)~約6x10 6 細胞/kg、約2.5x10 6 細胞/kg~約5.0x10 6 細胞/kg、もしくは約3.0x10 6 細胞/kg~約4.0x10 6 細胞/kg、
約1.5x10 8 個の細胞~4.5x10 8 個の細胞、約1.5x10 8 個の細胞~3.5x10 8 個の細胞、もしくは約2x10 8 個の細胞~3x10 8 個の細胞;または
約1.5x10 8 細胞/m 2 ~4.5x10 8 細胞/m 2 、約1.5x10 8 細胞/m 2 ~3.5x10 8 細胞/m 2 、もしくは約2x10 8 細胞/m 2 ~3x10 8 細胞/m 2
を含む、本発明1076~1078のいずれかの組成物の使用。
[本発明1080]
第1の投与および連続投与が細胞を1または複数の単位用量で投与する工程を含み、各単位用量が、約5x10 7 個の細胞~約5x10 8 個の細胞、約5x10 7 個の細胞~約2.5x10 8 個の細胞、もしくは約2.5x10 8 個の細胞~4x10 8 個の細胞を含むか、または細胞が、約5x10 7 個以下の細胞、約1x10 8 個以下の細胞、約2x10 8 個以下の細胞、約2.5x10 8 個以下の細胞、約3.0x10 8 個以下の細胞、もしくは約4x10 8 個以下の細胞を含む単位用量で製剤化される、本発明1073~1079のいずれかの使用または組成物。
[本発明1081]
第1の用量および/または連続用量が1単位用量を投与する工程を含む、本発明1080の使用または組成物。
[本発明1082]
第1の用量および/または連続用量が2以上の単位用量の投与を含む、本発明1080または本発明1081の使用または組成物。
[本発明1083]
疾患または状態が腫瘍または癌である、本発明1068~1082のいずれかの使用または組成物。
[本発明1084]
腫瘍または癌が白血病またはリンパ腫である、本発明1083の使用または組成物。
[本発明1085]
連続用量が、第1の用量または事前用量と比較して増加した数のCAR発現細胞を投与するために製剤化される、本発明1068~1084のいずれかの使用または組成物。
[本発明1086]
組成物が急性リンパ芽球性白血病の処置において使用するためのものである、本発明1085の使用または組成物。
[本発明1087]
連続用量が、事前用量におけるCAR発現細胞の数より少ないかまたはほぼ同じ数のCAR発現細胞を投与するために製剤化される、本発明1068~1086のいずれかの使用または組成物。
[本発明1088]
組成物が非ホジキンリンパ腫(NHL)の処置において使用するためのものである、本発明1085または本発明1087の使用または組成物。
[本発明1089]
対象に投与するための単位用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞をそれぞれが個別に含む複数の密閉可能な容器であって、該単位用量が、対象1kgあたり約1x10 8 個の細胞、約1x10 8 個以下の細胞、約5x10 7 個の細胞、約5x10 7 個以下の細胞、約1x10 6 個の細胞、または対象1kgあたり約1x10 6 個以下の細胞を含む、複数の密閉可能な容器と、
包装材料と、
第1の投与および連続投与を行うことによって複数の該単位用量を対象に投与するための説明書を含むラベルまたは添付文書であって、該第1の投与が該単位用量の1つを対象に送達する工程を含み、該連続投与が、1または複数の該単位用量を対象に投与する工程を含む、ラベルまたは添付文書と
を備える、製造品。
[本発明1090]
第1の投与の約14日後または15日後から27日後の時期に、任意で第1の投与後約17日目または約21日目に、連続投与を行うべきであることを説明書が規定している、本発明1089の製造品。
[本発明1091]
対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、第1の投与の直前の対象における前記指標の血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/または約50倍より少ないと決定された後に連続投与を行うべきであることを説明書が規定している、本発明1089または本発明1090の製造品。
[本発明1092]
CRSの指標がピークに達してから低下している最中であると、および/または対象が、第1の用量の細胞によって発現されるCARに特異的な検出可能な適応性宿主免疫応答を示していないと決定された後に、連続投与を行うべきであることを説明書が規定している、本発明1089~1091のいずれかの製造品。
[本発明1093]
細胞が対象から得られたものである、本発明1089~1092のいずれかの製造品。
[本発明1094]
ラベルおよび/または包装材料が、対象に特有の識別子をさらに備え、それにより、細胞が対象から得られたこと、および/または対象に厳密に投与される必要があることを示している、本発明1089~1093のいずれかの製造品。
[本発明1095]
容器が、可撓性のある細胞注入バッグであるか、または該バッグを備える、本発明1089~1094のいずれかの製造品。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1A】様々な用量のCAR発現T細胞の単回注入で処置した、形態学的疾患または分子的疾患(処置開始時の疾患負荷)を有する対象の疾患応答を示す。MRD-CR=微小残存病変なし、完全寛解;MRD+CR=微小残存病変、完全寛解;NR=応答なし。
図1B】様々な用量のCAR発現T細胞の単回注入で処置した、形態学的疾患または分子的疾患(処置開始時の疾患負荷)を有する対象における重度のサイトカイン放出症候群(CRS)の存在(Y)または非存在(N)を示す。
図1C】様々な用量のCAR発現T細胞の単回注入で処置した、形態学的疾患または分子的疾患(処置開始時の疾患負荷)を有する対象における重度の神経毒性の存在(Y)または非存在(N)を示す。
図2】CAR発現T細胞の第1の用量の投与時に形態学的疾患または分子的疾患を示した対象(注入=番号1)(左側パネル)と、連続用量の投与時に形態学的疾患または分子的疾患を示した対象(注入=番号2)(右側パネル)におけるピークC反応性タンパク質(CRP)レベルを示す。個々のデータポイントの隣に示した数字および文字/略語(例えば、「MRD-CR」、「MRD+CR」など)は、示された注入後の患者の数および疾患負荷を示している。MRD+=微小残存病変;MRD-=微小残存病変なし;CR=完全寛解。
図3A】実施例8に記載のように様々な条件(培地、K562-tCD19、K562-tROR1、aCD3/aCD28)下で24時間インキュベートした後の、フローサイトメトリーによって検出した時の、CD4および抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)の陽性表面発現についてゲーティングしたT細胞集団上でのPD-1、PD-L1、およびPD-L2の表面発現を図示する(ゲーティング戦略を上パネルに示した)。
図3B】実施例8に記載のように様々な条件(培地、K562-tCD19、K562-tROR1、aCD3/aCD28)下で24時間インキュベートした後の、フローサイトメトリーによって検出した時の、CD4の陽性表面発現および抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)の陰性表面発現についてゲーティングしたT細胞集団上でのPD-1、PD-L1、およびPD-L2の表面発現を図示する(ゲーティング戦略を上パネルに示した)。
図4A】実施例8に記載のように様々な条件(培地、K562-tCD19、K562-tROR1、aCD3/aCD28)下で24時間インキュベートした後の、フローサイトメトリーによって検出した時の、CD8および抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)の陽性表面発現についてゲーティングしたT細胞集団上でのPD-1、PD-L1、およびPD-L2の表面発現を図示する(ゲーティング戦略を上パネルに示した)。
図4B】実施例8に記載のように様々な条件(培地、K562-tCD19、K562-tROR1、aCD3/aCD28)下で24時間インキュベートした後の、フローサイトメトリーによって検出した時の、CD8の陽性表面発現および抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)の陰性表面発現についてゲーティングしたT細胞集団上でのPD-1、PD-L1、およびPD-L2の表面発現を図示する(ゲーティング戦略を上パネルに示した)。
図5A】CAR発現T細胞の単回注入で処置した対象において観察された神経毒性の程度(グレード0~2、グレード3、グレード4~5)を示す。データを、腫瘍負荷(パーセント骨髄芽細胞)対末梢血1μLあたりのCAR発現T細胞(CD8+/EGFR+、上パネル;またはCD4+/EGFR+、下パネル)の数としてプロットした。
図5B】CAR発現T細胞の単回注入で処置した対象における集中治療室(ICU)で治療するための要件を示す。データを、腫瘍負荷(パーセント骨髄芽細胞)対末梢血1μLあたりのCD8+/EGFR+(上パネル)の数またはCD4+/EGFR+(下パネル)細胞の数としてプロットした。
図6A】フローサイトメトリーによって測定した時の、注入後28日の期間にわたる、2x105個または2x106個のCAR発現T細胞の単回注入で処置した対象の末梢血1μLあたりのCD8+CAR発現T細胞(CD8+/EGFR+)の数を示す。注入前に、対象を、3用量の100mg/m2エトポシドと共に、もしくは3用量の100mg/m2エトポシドを伴わずに2g/m2シクロホスファミドでプレコンディショニング(pre-condition)したか(Fluなし)、または60mg/kg(約2g/m2)シクロホスファミドおよび3~5用量の25mg/m2フルダラビンで処置した(Flu)。
図6B】フローサイトメトリーによって測定した時の、注入後28日の期間にわたる、2x105個または2x106個のCAR発現T細胞の単回注入で処置した対象の末梢血1μLあたりのCD4+CAR発現T細胞(CD4+/EGFR+)の数を示す。注入前に、対象を、3用量の100mg/m2エトポシドと共に、もしくは3用量の100mg/m2エトポシドを伴わずに2g/m2シクロホスファミドでプレコンディショニングしたか(Fluなし)、または60mg/kg(約2g/m2)シクロホスファミドおよび3~5用量の25mg/m2フルダラビンで処置した(Flu)。
図6C】2x105個または2x106個のCAR発現T細胞の単回注入で処置した対象のパーセント無病生存曲線を示す。注入前に、対象を、3用量の100mg/m2エトポシドと共に、もしくは3用量の100mg/m2エトポシドを伴わずに2g/m2シクロホスファミドでプレコンディショニングしたか(Fluなし)、または60mg/kg(約2g/m2)シクロホスファミドおよび3~5用量の25mg/m2フルダラビンで処置した(Flu)。
図7A】フローサイトメトリーによって測定した時の、注入後28日の期間にわたる、2x107個のCAR発現T細胞の単回注入で処置した対象の末梢血1μLあたりのCD8+CAR発現T細胞(CD8+/EGFR+)の数(上パネル)およびパーセント(下パネル)を示す。注入前に、対象を、3用量の100~200mg/m2エトポシドと共に、もしくは3用量の100~200mg/m2エトポシドを伴わずに2~4g/m2シクロホスファミドでプレコンディショニングしたか(Fluなし)、または30~60mg/kg(約1~2g/m2)シクロホスファミドおよび3~5用量の25mg/m2フルダラビンで処置した(Cy/Flu)。
図7B】フローサイトメトリーによって測定した時の、注入後28日の期間にわたる、2x107個のCAR発現T細胞の単回注入で処置した対象の末梢血1μLあたりのCD4+CAR発現T細胞(CD4+/EGFR+)の数(上パネル)およびパーセント(下パネル)を示す。注入前に、対象を、3用量の100~200mg/m2エトポシドと共に、もしくは3用量の100~200mg/m2エトポシドを伴わずに、2~4g/m2シクロホスファミドでプレコンディショニングしたか(Fluなし)、または30~60mg/kg(約1~2g/m2)シクロホスファミドおよび3~5用量の25mg/m2フルダラビンで処置した(Cy/Flu)。
【発明を実施するための形態】
【0056】
詳細な説明
I.組換え受容体発現細胞を用いた処置方法
様々な腫瘍を含む疾患または状態を処置するための細胞療法において使用するための方法、組成物、および製造品が提供される。前記方法は、疾患もしくは状態に関連する分子を認識し、および/または疾患もしくは状態に関連する分子に特異的に結合し、このような分子に結合した時に、このような分子に対する応答、例えば、免疫応答をもたらすように設計された組換え受容体を発現する操作された細胞を投与する工程を伴う。前記受容体には、キメラ受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)、およびトランスジェニックT細胞受容体(TCR)を含む他のトランスジェニック抗原受容体が含まれ得る。
【0057】
特に、前記方法は、1つもしくは複数の連続用量の細胞を、第1の用量が与えられたことがある対象に投与する工程、ならびに/または第1の用量および1つもしくは複数の連続用量を投与する工程を伴う。前記用量は、一般的に、特定の量で、および特定のタイミングパラメータに従って投与される。一部の態様において、前記方法は、一般的に、第1の用量の細胞を投与し、それによって疾患負荷を低減した後に、第1の用量に対して特定の時間枠の間に連続用量の細胞が投与されるか、またはこのような第1の用量が与えられたことのある対象に連続用量が投与される。第1の用量は、多くの場合、比較的少ない用量である。一部の態様では、次いで、追加の連続用量が、例えば、連続用量に対して同じ、または類似する時間枠内で投与される。一部の態様において、投与される細胞の数および複数の用量のタイミングは、1つまたは複数のアウトカムを改善するように、例えば、対象に対する毒性の可能性もしくは程度を低減するように、投与される細胞への対象の曝露および/もしくは投与される細胞の持続性を改善するように、ならびに/または治療効力を改善するように設計される。前記細胞を含有し、このような投与計画に従って投与するように設計された製造品も提供される。
【0058】
一部の態様において、提供される方法は、養子細胞療法において、投与される細胞への対象の曝露を増やすと(例えば、細胞数を増やすか、またはある期間にわたる持続期間を延ばすと)、効力および治療アウトカムを改善できるという本明細書における観察に基づいている。複数の臨床試験において、異なるCD19標的化CAR発現T細胞を、様々なCD19発現癌を有する対象に投与した後に行った予備分析から、CAR発現細胞への曝露の程度を大きく、および/または長期間にすることと処置アウトカムとの間には相関関係があることが明らかになった。このようなアウトカムは、重度の腫瘍負荷を有する個体であっても、患者が生存および寛解することを含んだ。
【0059】
しかし、初回高用量の組換え免疫賦活性細胞を送達しても、必ず曝露が増大するとは限らない。特に、高疾患負荷(従って、多量の抗原)の状況では、高用量を投与しても、必ず効力が強化されるとは限らず、前記細胞の増殖が増大するか、または速くなり、その結果、毒性が生じる可能性がある。ある報告では、用量と毒性との間には相関関係が無いことが示されている。Park et al, Molecular Therapy 15(4):825-833 (2007)を参照されたい。他方で、初回高用量は、特に、高疾患負荷の状況では、サイトカイン放出症候群(CRS)などの毒性アウトカムを促進する可能性がある。さらに、高用量は、必ず、投与される細胞の持続性の延長につながるとは限らず、従って、必ず、ある期間にわたって曝露を増やすとは限らない。Park et al, Molecular Therapy 15(4):825-833 (2007)を参照されたい。同様に、処置の初めに存在することが多い、高疾患負荷の状況での細胞の投与は、移入された細胞を枯渇させ、それによって、臨床的有効性を低減する可能性がある。Davila & Brentjens、Hematol Oncol Clin North Am. 27(2):341-53 (2013)を参照されたい。
【0060】
特に、再発後に、および/または対象が、前記細胞または前記細胞が発現する組換え受容体に特異的な免疫応答を開始してしまっている場合には、後続用量の投与は有効でない場合がある。毒性アウトカムを避けながら、ある期間にわたって細胞曝露を増やすために、改善された方法が必要とされる。
【0061】
提供される方法は、毒性アウトカムのリスクに対処する、および/または効力を改善することをねらいとした他のアプローチを上回る利点を提供する。このような多くのアプローチが、例えば、毒性の下流作用を標的とすること、例えば、サイトカイン遮断によって毒性の下流作用を標的とすること、および/または薬剤、例えば、投与された細胞の排除もしくは投与された細胞の機能の低下ももたらすことができる高用量ステロイドを送達することに焦点をおいてきた。これらの他のアプローチの多くはまた、養子細胞療法に関連する可能性がある他の形態の毒性、例えば、神経毒性も防がない。他方で、比較的少ない用量の細胞(例えば、CAR発現細胞)の投与はリスクを下げることがあるが、完全に有効でないことがある。例えば、初回投与後の再発後に、後続用量の細胞を送達することも完全に満足の行くものではなかった。このような投薬アプローチは、初回用量に対して開始した宿主免疫応答に起因した、後続用量の限られた応答または無効な応答につながる可能性がある。
【0062】
毒性のリスクを最小にし、効力を最大にするように、連続用量の細胞療法の投与を伴う方法が提供される。本明細書において観察されるように、異なるタイプのCD19標的化CAR T細胞が、B細胞癌を有するヒト対象に投与された後に、腫瘍負荷を低減するには、体重1キログラムあたり1x106個の細胞に等しいか、または1x106個の細胞より少ない初回用量が有効であった。これらの低用量はまた、高用量と比較して頻度が少ない重度のCRS、神経毒性、および他の有害事象とも関連付けられた。一部の態様において、提供される方法は、このような低用量の安全な初回投与と、それに続く、曝露を増大させるための連続用量を伴い、用量の量およびタイミングは、毒性のリスクを最小にしながら、宿主免疫応答による効力の低下を避けるように設計された。
【0063】
場合によっては、特定の疾患または状況において所望または必要であれば、提供される方法は、第1の用量の細胞より増加した数で、従って、高用量で投与される連続用量の細胞を伴う。本明細書において示されるように、一部の局面では、高用量の細胞の投与は低用量と比較して有利である。一部の態様において、高用量、例えば、2.5x106細胞/kgを超えるか、またはこれに等しい用量の細胞の投与は、対象、特に、処置前に形態学的疾患を示す対象における全生存期間の延長と関連付けられる。しかしながら、一部の態様では、これらの高用量は、特に、処置前に形態学的疾患を有する対象では、毒性アウトカム、特に、神経毒性、例えば、重度の神経毒性、例えば、グレード3以上の神経毒性と関連付けることができる。場合によっては、疾患負荷が低減した対象、特に、分子的に検出可能な疾患を有する微小残存病変をもつ対象が処置される時に、高用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞が投与された後に毒性アウトカムは観察されないか、または大きく観察されない。一部の態様において、最初に低用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞を投与する方法は、後で高用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞が対象に投与されても、処置された対象の大多数において毒性アウトカムが起こる可能性が低くなるように、対象における疾患負荷を、例えば、形態学的疾患状態から微小残存病変に低減することができる。一部の態様において、提供される方法は、多数の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞が投与された時に生じることができる処置の効力を最大にしながら、高用量を用いた投与に関連する毒性の問題を回避する。
【0064】
一部の態様において、前記方法は、疾患関連抗原の存在下で増殖し、高用量に関連することがある同程度の毒性アウトカムなく疾患負荷を低減することができる初回用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞を投与する工程を含む。一部の局面において、第1の用量は、低用量、例えば、対象体重1キログラムあたり細胞1x106個(細胞/kg)より少ない、0.5x106細胞/kgより少ない、もしくは1x105細胞/kgより少ない用量、または約1x106細胞/kgより少ない、約0.5x106細胞/kgより少ない、もしくは約1x105細胞/kgより少ない用量、または1x106細胞/kg以下、0.5x106細胞/kg以下、もしくは1x105細胞/kg以下の用量、または約1x106細胞/kg以下、約0.5x106細胞/kg以下、もしくは約1x105細胞/kg以下の用量である。一部の局面において、第1の用量は、疾患もしくは状態または対象において毒性アウトカム、例えば、一部の態様ではCRSまたは神経毒性を引き起こさないことが観察されている量または数の細胞である。一部の態様において、第1の用量は、例えば、臨床データに基づいて、比較的少ないパーセントの患者にだけ、例えば、50パーセント以下、40パーセント以下、25パーセント以下、20パーセント以下、15パーセント以下、10パーセント以下、5パーセント以下、またはこれより少ないパーセントの対象において、このようなアウトカムと関連付けられた量または数の細胞である。
【0065】
一部の態様において、第1の用量はまた、一般的に、疾患負荷を低減するのに有効になるのに十分な大きさである。場合によっては、前記細胞用量がインビボで増殖し、疾患を減量するのに十分であれば、第1の用量は疾患負荷を低減するのに十分な大きさである。一部の態様では、それによって、第1の用量の細胞は、重度の望まれないアウトカムをもたらすことなく、疾患負荷、例えば、腫瘍サイズを減量または低減する。場合によっては、第1の用量は、腫瘍負荷を低減するのに、例えば、疾患を形態学的状況から微小残存病変および/または臨床寛解もしくは完全寛解に低減することによって腫瘍負荷を低減するのに有効な細胞の量である。一部の局面において、初回用量は低用量である。一部の局面において、例えば、比較的少ない疾患負荷の状況では、第1の用量はこれより多くてもよい。
【0066】
一部の局面において、前記用量における細胞または組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞の適切な数もしくは量または相対的な数もしくは量を決定するために、リスクに合わせた(risk-adapted)投与計画が用いられる。例えば、一部の局面では、組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞が注入される前に対象の疾患負荷が決定され、該疾患負荷に基づいて、毒性を最小にしかつ効力を最大にすることができる、組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞の第1の用量(例えば、低用量または高用量)が選択される。これは、例えば、高用量の組換え受容体発現細胞(例えば、CAR発現細胞、例えば、CAR発現T細胞)が、形態学的疾患負荷を有する対象において、毒性アウトカム、例えば重度の神経毒性を伴う可能性があり、この毒性アウトカム、例えば重度の神経毒性は、比較的少ない疾患負荷を有する対象では必ずしも観察されるとは限らないかまたは顕著な程度までは観察されないという、前述の知見および本明細書の他の場所に記載した知見に基づいている。例えば、処置前に骨髄腫瘍負荷が多い対象は、場合によっては処置後の多量のCAR T細胞増殖と関連付けることができ、ICUでの治療を必要とする場合がある重度の神経毒性を発症するリスクが高いことが観察された。
【0067】
一部の態様において、組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞が注入された後に、例えば、CAR-T細胞が注入された後に毒性アウトカムに対する感受性がないか、または毒性アウトカムに対する感受性が低い対象(例えば、形態学的疾患を示さない対象(すなわち、非形態学的疾患を有する対象)または実質的な形態学的疾患を示さない対象)における効力を最大にするために、比較的高用量の細胞、例えば、1x106細胞/kg、2x106細胞/kg、5x106細胞/kgまたは1x107細胞/kgを超える細胞を投与することができる。逆に、一部の局面では、例えば、形態学的疾患または実質的な形態学的疾患が存在することで、比較的多い疾患負荷を有すると決定された対象には、形態学的疾患を示さないか、または実質的な形態学的疾患を示さない対象に投与される用量より比較的少ない用量、例えば、1x106細胞/kgより少ないか、もしくはこれに等しいか、または約1x106細胞/kg、あるいは0.5x106細胞/kgより少ないか、もしくはこれに等しいか、または約0.5x106細胞/kgの用量の細胞を投与することができる。一部の態様において、1つまたは複数のさらなる連続用量を投与することができ、任意で、1つまたは複数のさらなる連続用量は、前記のように疾患負荷の度合いまたは程度に基づいて投与されてもよく、疾患負荷に関係なく一定の用量でもよい。一部の態様において、骨髄中に5%を超える、または5%に等しい、または約5%の芽細胞が存在すれば、対象は形態学的疾患または実質的な形態学的疾患負荷を示す。一部の態様において、多量の相対疾患負荷、例えば、多量の骨髄腫瘍負荷を有する対象には、骨髄中に10%を超える、もしくは10%に等しい、もしくは約10%を超える芽細胞、または骨髄中に約20%を超える、もしくは約20%に等しい、もしくは約20%を超える芽細胞がある。
【0068】
一部の態様において、対象は処置前に疾患負荷について評価され、対象が5%未満の骨髄芽細胞を示すのであれば、対象に、1x106細胞/kg、2x106細胞/kg、5x106細胞/kg、もしくは1x107細胞/kgを超える用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現細胞、例えば、CAR発現T細胞)を投与することができる。または、対象が、5%を超える、もしくは5%に等しい骨髄芽細胞を示すのであれば、対象に、1x106細胞/kg未満の、もしくは1x106細胞/kgに等しいか、もしくは約1x106細胞/kgの、または0.5x106細胞/kg未満の、もしくは0.5x106細胞/kgに等しいか、もしくは約0.5x106細胞/kgの用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現細胞、例えば、CAR発現T細胞)を投与することができる。一部の態様において、対象は処置前に疾患負荷について評価され、対象が10%未満の骨髄芽細胞を示すのであれば、対象に、1x106細胞/kg、2x106細胞/kg、5x106細胞/kg、もしくは1x107細胞/kgを超える用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現細胞、例えば、CAR発現T細胞)を投与することができる。または、対象が、10%を超えるか、もしくは10%に等しい骨髄芽細胞を示すのであれば、対象に、1x106細胞/kg未満の、もしくは1x106細胞/kgに等しいか、もしくは約1x106細胞/kgの、または0.5x106細胞/kg未満の、もしくは0.5x106細胞/kgに等しいか、もしくは約0.5x106細胞/kgの用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現細胞、例えば、CAR発現T細胞)を投与することができる。一部の態様において、対象は処置前に疾患負荷について評価され、対象が20%未満の骨髄芽細胞を示すのであれば、対象に、1x106細胞/kg、2x106細胞/kg、5x106細胞/kg、もしくは1x107細胞/kgを超える用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現細胞、例えば、CAR発現T細胞)を投与することができる。または、対象が、20%を超える、もしくは20%に等しい骨髄芽細胞を示すのであれば、対象に、1x106細胞/kg未満の、もしくは1x106細胞/kgに等しいか、もしくは約1x106細胞/kgの、または0.5x106細胞/kg未満の、もしくは0.5x106細胞/kgに等しいか、もしくは約0.5x106細胞/kgの用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現細胞、例えば、CAR発現T細胞)を投与することができる。一部の態様において、組換え受容体発現(例えば、CAR発現細胞、例えば、CAR発現T細胞)の第1の用量の前に、疾患負荷は評価され、リスクに合わせた用量が選択される。一部の態様において、組換え受容体発現(例えば、CAR発現細胞、例えば、CAR発現T細胞)の1つまたは複数の連続用量の前に、疾患負荷は評価され、リスクに合わせた用量が選択される。
【0069】
一部の態様において、第1の用量または初回用量の細胞が投与された後、対象の腫瘍負荷が第1の用量によって低減した可能性が高い時期に、連続用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞が対象に投与される。一部の態様において、腫瘍負荷は、連続用量の投与前に全対象において実際に低減している必要はないが、腫瘍負荷は、例えば、臨床データに基づいて、概して、処置された対象において低減していることが必要である。この場合、このような第1の用量で処置した対象の大多数は低減した腫瘍負荷を示し、例えば、第1の用量または初回用量で処置した対象の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはこれより多くが低減した腫瘍負荷を示す。一般的に、疾患負荷が第1の用量によって低減した後の時点で、または第1の用量によって低減した可能性が高い時点で、連続用量が対象に投与され、それによって、疾患またはその症状もしくはアウトカムがさらに低減する、および/もしくは無くなるか、またはその増殖もしくは進行が妨げられる。連続投与の時の、低減した疾患負荷の状況は、一部の局面では、移入された細胞が枯渇する可能性を小さくし、それによって、効力を改善する。連続用量は第1の用量と比較して同じ用量でもよく、少ない用量でもよく、多い用量でもよい。一部の態様において、第1の用量の後に、複数の連続用量が投与される。
【0070】
一部の態様において、連続用量によって、増加した数の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞が対象に投与されるように、連続用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞は第1の用量より多い用量で投与される。一部の態様において、高用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞は、低用量または少ない数の細胞の投与によって成し遂げられるものと比較して、増大した応答または効力、例えば、腫瘍負荷の改善された、もしくはさらに大きな低減、および/または対象の改善された、もしくはさらに長い全生存期間を促進することができるものである。一部の態様では、第1の用量の細胞の投与が対象において腫瘍負荷を低減することができるので、これより多い数の細胞の連続用量の投与は、形態学的疾患を有する対象において別の方法で行うことができる連続用量の投与後の対象におけるCRSおよび/または神経毒性を避ける、または最小にすることができる。
【0071】
一部の態様において、連続用量の投与前には、対象は、非形態学的疾患、例えば、分子的に検出可能な疾患および/または微小残存病変を示している対象である。一部の態様において、第1の用量を用いた処置の前に存在した腫瘍負荷と比較して腫瘍負荷が低減したことを確認するために、第1の用量の投与後で連続用量の投与前に対象を腫瘍負荷について評価することができる。一部の態様において、対象の評価によって、腫瘍負荷が低減している、ならびに/または対象が非形態学的疾患、例えば、分子的に検出可能な疾患および/もしくは微小残存病変を示していることが分かったら、提供される方法は、第1の用量または初回用量より多い連続用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞を投与する工程を含む。一部の態様において、対象の評価によって、腫瘍負荷が低減していない、および/または対象が形態学的疾患を示すことが分かったら、提供される方法は、第1の用量もしくは初回用量と同じか、またはそれより少ない連続用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞を投与する工程を含む。
【0072】
一部の態様において、第1の用量に対する連続用量のタイミングおよび/または相互に関係したタイミングは、望まれない毒性アウトカムのリスクを小さくし、最大効力を促進するように設計される。一部の態様において、疾患負荷が対象において低減したままであるか、または例えば、臨床データに基づいて、概して患者において低減したままであるが、CRSおよび/または神経毒性のリスクが小さいままである時期に、連続用量、例えば、同じか、さらに少ないか、またはさらに多い連続用量が投与される。一部の態様において、最初に、疾患または腫瘍負荷を非形態学的疾患まで低減するために、例えば、微小残存病変または分子の検出可能な疾患状態を実現するために低用量のCAR+T細胞を投与し、その後に、連続用量の組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞を投与することによって、対象におけるCRSおよび/または神経毒性を阻止、最小化、または低減することができる方法が提供される。
【0073】
一部の態様において、連続用量は、一般的に、毒性アウトカムもしくは症状のリスク、あるいはその生化学的指標、例えば、CRSもしくは神経毒性、マクロファージ活性化症候群、または腫瘍溶解症候群が許容されるレベルにあるか、または許容されるレベルより小さい、第1の用量または事前用量を基準にした時点で与えられる。例えば、連続用量は、初回用量の後に、毒性アウトカムがピークに達してから低下している最中であるか、または許容されるレベルを下回って低下した後に投与されてもよい。従って、一部の態様において、連続用量は、第1の用量もしくは事前用量を開始して少なくとも4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後、15日後、16日後、17日後、18日後、19日後、20日後、21日後、22日後、23日後、24日後、25日後、26日後、もしくは27日後に、または第1の用量もしくは事前用量の開始後、約14日または約15日または約21日を超えて投与される。一部の態様において、適切なタイミングは、毒性事象に関連する1つまたは複数の症状またはアウトカムの存在をモニタリングおよび/または評価し、症状またはアウトカムが許容されるレベルにあるかまたは許容されるレベルを下回ると決定された後に連続用量を送達することによって決定される。
【0074】
一部の態様において、連続用量のタイミングは、後続用量が投与された時に、第1の用量が投与された後に開始した宿主免疫応答によって誘導され得る効力低減を避けるようなタイミングである。一部の局面において、連続用量は、投与された細胞および/もしくは投与された細胞が発現する組換え受容体に対する宿主免疫応答、例えば、適応性の、もしくは特異的な、例えば、体液性免疫応答もしくは細胞性免疫応答が発生する前に、ならびに/またはこのような応答が、例えば、1つもしくは複数の特定の検出方法によって検出可能になる前に投与される。一般的に、前記細胞に対する宿主適応免疫応答が検出されない、確立していない、および/またはある特定のレベルもしくは程度もしくはステージに達していない時期に、連続用量は投与される。この点に関して、前記方法は、再発時に後続用量を提供するのと比較して有利であり、再発は、一般的に、抗トランスジーン応答が発生した後である。一部の態様において、連続用量は、第1の用量または事前用量の後、約28日前もしくは約35日前または約28日以内または約35日以内に、あるいは第1の用量または事前用量の開始後、約24日前、約25日前、約26日前、または約27日前に投与される。
【0075】
従って、提供される方法は、一部の態様では、第1の用量を用いた疾患負荷の減量後または低減後、毒性のリスクの時間枠後であるが免疫応答の開始前に、1つまたは複数の連続用量を投与する工程を伴う。この環境において、かつ適切なタイミングで、連続用量は免疫監視機構を安全かつ効果的に提供して、標準的な分析方法または研究グレードの分析方法によって測定可能かどうかに関係なく、残存疾患細胞の増殖または転移を無くすか、または阻止することができる。従って、一部の態様では、連続用量は疾患強化用量である。
【0076】
特定の態様において、第1の用量は、対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分な量の前記細胞を含み、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが第1の用量の投与直前の対象における指標の血清レベルの10倍以下もしくは25倍以下である時期に、および/または対象におけるCRS関連アウトカムが、第1の投与の投与後にピークレベルに達して低下し始めた時期に、および対象が、第1の用量の細胞によって発現される組換え受容体に特異的な検出可能な適応性宿主免疫応答を示していない時期に、連続用量は投与される。
【0077】
特定の態様において、第1の用量は、対象体重1キログラムあたり1x106個未満もしくは約1x106個未満の前記細胞、1x108個未満もしくは約1x108個未満の前記細胞、および/または対象1m2あたり1x108個未満もしくは約1x108個未満の前記細胞を含有し、連続用量は、第1の用量の投与開始後約14日より長くかつ約28日より短い時点で投与される。一部の態様において、連続用量は、第1の用量または事前用量の14日後、15日後、16日後、17日後、18日後、19日後、20日後、21日後、22日後、23日後、24日後、25日後、26日後、27日後、もしくは28日後、または約14日後、約15日後、約16日後、約17日後、約18日後、約19日後、約20日後、約21日後、約22日後、約23日後、約24日後、約25日後、約26日後、約27日後、もしくは約28日後に投与される。特定の態様において、連続用量は、第1の用量または事前用量の約17日後または約21日後に投与される。
【0078】
従って、提供される方法は、特に、高疾患負荷の状況では、重度の毒性、望まれないアウトカム、および/または弱い効力につながる可能性のある単一用量投与を上回る利点を提供する。提供される方法はまた、初回用量後、あまりに早く後続用量を投与し、望まれない副作用のリスクを高める方法、またはあまりに遅く、例えば、事前用量に対する免疫応答が確立した後に後続用量を投与する方法を上回る利点もある可能性がある。提供される方法は、治療用細胞に対する曝露を延長して、毒性アウトカムを低減しながら、臨床応答および/または患者生存の永続性および度合いを改善する。このような方法において使用するための用量を提供する組成物および製造品も提供される。
【0079】
II.養子細胞療法における細胞の投与
提供される方法は、一般的に、複数の用量の、組換え受容体、例えば、CAR、または他の抗原受容体、例えば、トランスジェニックTCRを発現する細胞を、前記受容体によって特異的に認識される疾患または状態を有する対象に投与する工程を伴う。投与は、一般的に、疾患もしくは状態の1つもしくは複数の症状に改善をもたらす、および/あるいは疾患もしくは状態またはその症状を処置または予防する。
【0080】
本明細書で使用する、「対象」とは、哺乳動物、例えば、ヒトまたは他の動物であり、典型的にはヒトである。一部の態様において、対象は、第1の用量の投与前に、および/または連続用量の投与前に、疾患または状態、例えば、腫瘍を標的とする治療剤で処置されたことがある。一部の局面において、対象は他の治療剤に対して抵抗性または非応答性である。
【0081】
一部の態様において、例えば、化学療法、放射線、および/または造血幹細胞移植(HSCT)、例えば、同種異系HSCTを含む別の治療介入による処置後に、対象が持続性の疾患または再発した疾患を有する。一部の態様において、対象が別の療法に対して耐性になったのにもかかわらず、前記投与によって対象は効果的に処置される。
【0082】
一部の態様において、対象は他の治療剤に対して応答性であり、この治療剤による処置は疾患負荷を低減する。一部の局面において、対象は、最初、治療剤に対して応答性であるが、時間が経つにつれて疾患または状態の再発を示す。一部の態様において、対象は再発していない。このような一部の態様では、対象は、再発のリスクがある、例えば、再発のリスクが高いと決定され、従って、前記細胞は、予防的に、例えば、再発の可能性を小さくするために、または再発を阻止するために投与される。
【0083】
一部の局面において、対象は、別の治療剤による前処置を受けたことがない。一部の態様において、対象が、第1の用量の投与前に、ある用量のCAR発現細胞を受けたことがなく、かつ/あるいはある用量の、CARを発現する細胞もしくはこのような細胞によって発現される他の受容体を発現する細胞、または同じ分子もしくは抗原を標的とする任意の組換え受容体を発現する細胞を受けたことがない。一部の局面において、対象は、第1の用量の投与前に、ある用量の、第1の用量のCAR発現細胞を受けたことがない。
【0084】
疾患、状態、および障害の中には、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、およびメラノーマを含み、局所および転移性の腫瘍を含む腫瘍、感染症、例えば、ウイルスまたは他の病原体、例えば、HIV、HCV、HBV、CMVによる感染、ならびに寄生生物疾患、ならびに自己免疫性疾患および炎症性疾患がある。一部の態様において、疾患または状態は、腫瘍、癌、悪性腫瘍、新生物、または他の増殖性の疾患もしくは障害である。このような疾患には、白血病、リンパ腫、例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、難治性濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、無痛性B細胞リンパ腫、B細胞悪性腫瘍、結腸癌、肺癌、肝臓癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、皮膚癌、メラノーマ、骨癌、および脳癌、卵巣癌、上皮癌、腎細胞癌、膵臓腺癌、ホジキンリンパ腫、子宮頸癌、結腸直腸癌、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、髄芽腫、骨肉腫、滑膜肉腫、ならびに/または中皮腫が含まれるが、これに限定されない。一部の態様において、対象は急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する。一部の態様において、対象は非ホジキンリンパ腫を有する。
【0085】
一部の態様において、用量のサイズまたはタイミングは、対象における特定の疾患または状態の関数として決定される。提供された説明を考慮して、特定の疾患に対する用量のサイズまたはタイミングを経験的に決定することは当業者の水準内にある。場合によっては、例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する対象は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する対象より、組換え受容体発現細胞(例えば、CAR発現細胞、例えば、CAR発現T細胞)を用いた処置に対して応答性が低く、部分的にしか応答しなくてもよい。場合によっては、NHLを有する対象に投与された低用量の細胞は対象における腫瘍負荷を低減せず、それによって、連続用量が投与された時に、対象において毒性アウトカム、例えば、CRSおよび/または神経毒性のリスクを高める場合がある。一部の態様において、NHLを有する対象に、第1の用量において投与される組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞の用量と同じか、またはこれより少ない連続用量が投与され、それによって、連続用量の投与の際に起こる可能性のある毒性副作用のリスクを最小にする、または小さくする方法が提供される。
【0086】
一部の態様において、疾患または状態は腫瘍または癌であり、第1の用量の投与前に、対象の腫瘍負荷が多いか、例えば、固形腫瘍が大きいか、または疾患に関連する、例えば、腫瘍もしくは癌の細胞の数が多いか、もしくは容積が大きい。一部の局面において、対象の転移数が多い、および/または転移が広範囲に局在している。一部の局面において、対象の初期腫瘍負荷は少なく、対象に転移はほとんどない。
【0087】
一部の態様において、用量のサイズまたはタイミングは対象における初期疾患負荷、例えば、腫瘍負荷によって決定される。例えば、場合によっては、対象には、一般的に、第1の用量において比較的少ない数の細胞が投与されるが、低疾患負荷、例えば、分子的に検出可能な疾患および/または微小残存病変の状況では、初回用量が多くてもよい。他の場合では、第1の用量の投与後に多疾患負荷を示す対象では、連続用量は第1の用量と同じでもよく、第1の用量より少なくてもよい。一部の態様において、対象は、本明細書に記載の方法、例えば、フローサイトメトリーまたはqPCR法によって骨髄中の芽細胞または分子的疾患を評価する方法を用いて疾患負荷について評価される。
【0088】
一部の態様において、疾患または状態は、ウイルス感染、レトロウイルス感染、細菌感染、および原生動物感染、免疫不全症、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、アデノウイルス、BKポリオーマウイルスなどがあるが、これに限定されない感染性の疾患または状態である。一部の態様において、疾患または状態は自己免疫性または炎症性の疾患または状態、例えば、関節炎、例えば、慢性関節リウマチ(RA)、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患、乾癬、硬皮症、自己免疫性甲状腺疾患、グレーブス病、クローン病、多発性硬化症、喘息、および/または移植に関連する疾患もしくは状態である。
【0089】
一部の態様において、疾患または障害に関連する抗原は、オーファンチロシンキナーゼ受容体RORl、tEGFR、Her2、Ll-CAM、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CEA、およびB型肝炎表面抗原、抗葉酸受容体、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、EGFR、EGP-2、EGP-4、0EPHa2、ErbB2、3、もしくは4、FBP、胎児アセチコリンe(acethycholine e)受容体、GD2、GD3、HMW-MAA、IL-22R-α、IL-13R-α2、kdr、κ軽鎖、ルイス(Lewis)Y、L1-細胞接着分子、MAGE-A1、メソテリン、MUC1、MUC16、PSCA、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、MART-1、gp100、癌胎児性抗原、ROR1、TAG72、VEGF-R2、癌胎児抗原(CEA)、前立腺特異的抗原、PSMA、Her2/neu、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、CS-1、c-Met、GD-2、およびMAGEA3、CE7、Wilms' Tumor 1(WT-1)、サイクリン、例えば、サイクリンA1(CCNA1)、ならびに/またはビオチン化分子、ならびに/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体が発現する分子からなる群より選択される。
【0090】
本明細書で使用する「処置」(およびその文法上の語尾変化、例えば、「処置する(treat)」または「処置する(treating)」)とは、疾患もしくは状態もしくは障害、あるいはこれらに関連する症状、副作用もしくはアウトカム、または表現型の完全または部分的な寛解または低減を指す。処置の望ましい治療効果には、疾患の発生または再発の阻止、症状の緩和、疾患のあらゆる直接的または間接的な病理学的結果の減少、転移の阻止、疾患進行速度の減少、疾患状態の寛解または軽減、および寛解または予後の改善が含まれるが、これに限定されない。この用語は、疾患の完治、またはあらゆる症状の完全な除去、または全ての症状もしくはアウトカムに及ぼす影響を意味しない。
【0091】
本明細書で使用する「疾患の発症を遅らせる」とは、疾患(例えば、癌)の発症を延ばす、邪魔する、遅くする、減速する、安定化する、抑制する、および/または延期することを意味する。この遅れは、病歴および/または処置されている個体に応じて様々な長さの時間でよい。当業者に明らかなように、十分な、または大きな遅れは、実際には、個体が疾患を発症しない点では予防を含む。例えば、転移の発症などの末期癌を遅らせることができる。
【0092】
本明細書で使用する「予防する」は、疾患の素因がある可能性があるがまだ疾患と診断されていない対象における疾患の発生または再発に関する予防を提供することを含む。一部の態様において、提供される細胞および組成物は、疾患の発症を遅らせるのに、または疾患の進行を遅くするのに用いられる。
【0093】
本明細書で使用する、機能または活性を「抑制する」ということは、関心対象の条件もしくはパラメータ以外は同じ条件と比較した時に、または別の条件と比較した時に機能または活性を低減することである。例えば、腫瘍成長を抑制する細胞は、前記細胞の非存在下での腫瘍成長の速度と比較して腫瘍成長の速度を低減する。
【0094】
投与の文脈において、薬剤、例えば、薬学的製剤、細胞、または組成物の「有効量」とは、望ましい結果、例えば、治療結果または予防結果を成し遂げるのに、必要な投与量/量で、かつ期間にわたって、有効な量を指す。
【0095】
薬剤、例えば、薬学的製剤または細胞の「治療的有効量」とは、望ましい治療結果、例えば、疾患、状態、もしくは障害を処置するための望ましい治療結果、および/または処置の薬物動態学的効果もしくは薬力学的効果を成し遂げるのに、必要な投与量で、かつ期間にわたって、有効な量を指す。治療的有効量は、対象の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに投与される細胞集団などの要因に応じて変化する場合がある。一部の態様において、提供される方法は、有効量、例えば、治療的有効量の前記細胞および/または組成物を投与する工程を伴う。
【0096】
「予防的有効量」とは、望ましい予防結果を成し遂げるのに、必要な投与量で、かつ期間にわたって、有効な量を指す。典型的には、疾患の前に、または疾患の初期段階に対象において予防用量が用いられるので、予防的有効量は治療的有効量より少ないが、必ず治療的有効量より少ないとは限らない。少ない腫瘍負荷の状況では、予防的有効量は一部の局面では治療的有効量より多い。
【0097】
養子細胞療法のために細胞を投与するための方法は公知であり、提供される方法および組成物に関連して用いられる場合がある。例えば、養子T細胞療法方法は、例えば、Gruenbergらへの米国特許出願公開第2003/0170238号; Rosenbergへの米国特許第4,690,915号; Rosenberg (2011) Nat Rev Clin Oncol. 8(10):577-85)に記載されている。例えば、Themeli et al. (2013) Nat Biotechnol. 31(10): 928-933; Tsukahara et al. (2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1): 84-9; Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338.を参照されたい。
【0098】
一部の態様において、細胞療法、例えば、養子細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、細胞療法を受けようとする対象から、またはこのような対象に由来する試料から細胞が単離される、および/または別の方法で調製される自家移入によって行われる。従って、一部の局面において、前記細胞は、対象、例えば、処置および細胞を必要とする患者に由来し、単離および処理された後に同じ対象に投与される。
【0099】
一部の態様において、細胞療法、例えば、養子細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、細胞療法を受けようとする対象、または細胞療法を最終的に受ける対象、例えば、第1の対象以外の対象から細胞が単離される、および/または別の方法で調製される同種異系移入によって行われる。このような態様では、次いで、前記細胞は、同じ種の異なる対象、例えば、第2の対象に投与される。一部の態様において、第1の対象および第2の対象は遺伝的に同一である。一部の態様において、第1の対象および第2の対象は遺伝的に似ている。一部の態様において、第2の対象は第1の対象と同じHLAクラスまたはスーパータイプを発現する。
【0100】
前記細胞は、任意の適切な手段によって、例えば、大量瞬時注入によって、注射、例えば、静脈内注射または皮下注射、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、眼房内(intracameral)注射、結膜下(subconjectval)注射、結膜下(subconjuntival)注射、テノン嚢下注射、眼球後注射、眼球周囲注射、または後強膜近傍(posterior juxtascleral)送達によって投与することができる。一部の態様において、前記細胞は、非経口投与、肺内投与、および鼻腔内投与によって、所望であれば、局所処置の場合、病巣内投与によって投与される。非経口注入には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、または皮下投与が含まれる。一部の態様において、ある特定の用量が前記細胞の単回大量瞬時投与によって投与される。一部の態様において、ある特定の用量が、前記細胞の複数回大量瞬時投与によって、例えば、3日以下の期間にわたって送達されるか、または前記細胞の連続注入投与によって送達される。
【0101】
疾患の予防または処置のために、適切な投与量は、治療される疾患のタイプ、細胞または組換え受容体のタイプ、疾患の重症度および経過、細胞が治療目的または予防目的で投与されるかどうか、以前の療法、患者の病歴、細胞に対応する応答、ならびに主治医の判断に左右されることがある。前記組成物および細胞は、一部の態様では、一度に、または一連の処置にわたって対象に適切に投与される。
【0102】
一部の態様において、前記細胞は、組み合わせ処置の一部として、例えば、別の治療介入、例えば、抗体または操作された細胞または受容体または薬剤、例えば、細胞傷害剤または治療剤と同時に、または任意の順番で連続して投与される。前記細胞は、一部の態様では、1種類もしくは複数種のさらなる治療剤と一緒に、または別の治療介入と共に、同時に、または任意の順番で連続して同時投与される。ある状況では、前記細胞は、前記細胞集団が1種類もしくは複数種のさらなる治療剤の効果を強化するような十分に短い期間で別の療法と一緒に同時投与されるか、または逆もまた同じである。一部の態様において、前記細胞は、1種または複数種のさらなる治療剤の前に投与される。一部の態様において、前記細胞は、1種または複数種のさらなる治療剤の後に投与される。一部の態様において、1種または複数種のさらなる薬剤は、例えば、持続性を強化するために、サイトカイン、例えば、IL-2を含む。
【0103】
一部の態様において、前記方法は、例えば、第1の用量または連続用量の投与前に腫瘍負荷を低減するために、化学療法剤、例えば、コンディショニング化学療法剤を投与することを含む。
【0104】
対象を免疫枯渇(immunodepleting)(例えば、リンパ球枯渇(lymphodepleting))療法を用いてプレコンディショニングすると、養子細胞療法(ACT)の効果を改善することができる。移入された細胞の応答および/または持続性の改善を含めて、細胞療法における移入された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)細胞の効力を改善するのに、シクロスポリンとフルダラビンの組み合わせを含むリンパ球枯渇剤を用いたプレコンディショニングが有効であった。例えば、Dudley et al., 2002 Science, 298, 850-54; Rosenberg et al., Clin Cancer Res 2011, 17(13):4550-4557を参照されたい。同様に、CAR+T細胞の状況では、いくつかの研究が、リンパ球枯渇剤、最も一般的にはシクロホスファミド、フルダラビン、ベンダムスチン、またはその組み合わせを、時として低線量放射線照射を伴って取り入れている。Han et al. Journal of Hematology & Oncology 2013, 6:47; Kochenderfer et al., Blood 2012; 119 : 2709-2720;; Kalos et al., Sci Transl Med 2011, 3(95):95ra73; Clinical Trial Study Record Nos.: NCT02315612; NCT01822652を参照されたい。このようなプレコンディショニングは、療法の効力を弱める可能性のある様々なアウトカムの1つまたは複数のリスクを小さくすることを目標にして実施することができる。これらは、ホメオスタシスサイトカインおよび活性化サイトカイン、例えば、IL-2、IL-7、および/またはIL-15においてT細胞、B細胞、NK細胞がTILと競合する「サイトカインシンク(cytokine sink)」として知られる現象;調節性T細胞、NK細胞、または他の免疫系細胞によるTILの抑止;腫瘍微小環境における負の制御因子の影響を含む。Muranski et al., Nat Clin Pract Oncol. 2006 December; 3(12): 668-681。
【0105】
従って、一部の態様において、前記方法は、第1の用量または後続用量の前に、プレコンディショニング薬剤、例えば、リンパ球枯渇剤または化学療法剤、例えば、シクロホスファミド、フルダラビン、またはその組み合わせを対象に投与する工程を含む。例えば、第1の用量または後続用量の少なくとも2日前に、例えば、少なくとも3日前、4日前、5日前、6日前、または7日前に、対象にプレコンディショニング薬剤が投与されてもよい。一部の態様において、第1の用量または後続用量の7日前を超えずに、例えば、6日前、5日前、4日前、3日前、または2日前を超えずに、対象にプレコンディショニング薬剤が投与される。
【0106】
一部の態様において、リンパ球枯渇剤がシクロホスファミドを含む場合、0.5g/m2~5g/m2もしくは約0.5g/m2~約5g/m2、例えば、1g/m2~4g/m2もしくは約1g/m2~約4g/m2、1g/m2~3g/m2もしくは約1g/m2~約3g/m2、または2g/m2~4g/m2もしくは約2g/m2~約4g/m2のシクロホスファミドが対象に投与される。一部の局面において、2g/m2シクロホスファミドまたは約2g/m2シクロホスファミドが対象に投与される。一部の態様において、対象は、20mg/kg~100mg/kgまたは約20mg/kg~約100mg/kg、例えば、40mg/kg~80mg/kgまたは約40mg/kg~約80mg/kgの用量のシクロホスファミドを用いてプレコンディショニングされる。一部の局面において、対象は、60mg/kgまたは約60mg/kgのシクロホスファミドを用いてプレコンディショニングされる。
【0107】
一部の態様において、リンパ球枯渇剤がフルダラビンを含む場合、1g/m2~100g/m2もしくは約1g/m2~約100g/m2、例えば、10g/m2~75g/m2もしくは約10g/m2~約75g/m2、15g/m2~50g/m2もしくは約15g/m2~約50g/m2、20g/m2~30g/m2もしくは約20g/m2~約30g/m2、または24g/m2~26g/m2もしくは約24g/m2~約26g/m2の用量のフルダラビンが対象に投与される。場合によっては、25g/m2のフルダラビンが対象に投与される。一部の態様において、フルダラビンは単一用量で投与されてもよく、複数の用量で投与されてもよく、例えば、毎日、1日おきに、または2日おきに与えられてもよい。例えば、場合によっては、薬剤、例えば、フルダラビンは、1~5回または約1~約5回、例えば、3~5回または約3~約5回、投与される。一部の態様において、このような複数の用量は、同じ日に、例えば、1日に1~5回または3~5回、投与される。
【0108】
一部の態様において、リンパ球枯渇剤は、薬剤の組み合わせ、例えば、シクロホスファミドとフルダラビンの組み合わせを含む。従って、薬剤の組み合わせは、任意の用量または投与計画、例えば、前記の用量または投与計画のシクロホスファミドと、任意の用量または投与計画、例えば、前記の用量または投与計画のフルダラビンを含んでもよい。例えば、一部の局面において、第1の用量または後続用量の前に、60mg/kg(約2g/m2)のシクロホスファミドと3~5用量の25mg/m2フルダラビンが対象に投与される。
【0109】
一部の態様において、第1の用量または後続用量が注入される前にプレコンディショニング薬剤が投与されると、処置のアウトカムが改善される。例えば、一部の局面において、プレコンディショニングは、対象における第1の用量もしくは後続用量を用いた処置の効力を改善するか、または組換え受容体発現細胞(例えば、CAR発現細胞、例えば、CAR発現T細胞)の持続性を増大させる。一部の態様において、プレコンディショニング処置は、無病生存率、例えば、第1の用量または後続用量に続く所与の期間の後に生きておりかつ微小残存病変も分子的に検出可能な疾患も示さない対象のパーセントを増大させる。一部の態様において、無病生存中央値までの期間が増大する。
【0110】
前記細胞が対象(例えば、ヒト)に投与されたら、操作された細胞集団の生物学的活性は、一部の局面では、多数の公知の方法のどの方法でも測定される。評価するパラメータには、インビボでは、例えば、画像化による、またはエクスビボでは、例えば、ELISAもしくはフローサイトメトリーによる、操作された、もしくは天然のT細胞または他の免疫細胞と抗原との特異的結合が含まれる。ある特定の態様において、操作された細胞が標的細胞を破壊する能力は、当技術分野において公知の任意の適切な方法、例えば、細胞傷害アッセイ、例えば、Kochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7): 689-702 (2009)およびHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1): 25-40 (2004)に記載の細胞傷害アッセイを用いて測定することができる。ある特定の態様において、前記細胞の生物学的活性はまた、ある特定のサイトカイン、例えば、CD107a、IFNγ、IL-2、およびTNFの発現および/または分泌をアッセイすることでも測定することができる。一部の局面において、生物学的活性は、臨床アウトカム、例えば、腫瘍負荷(tumor burden)または腫瘍量(tumor load)の低減を評価することによって測定される。一部の局面において、毒性アウトカム、細胞の持続性および/もしくは増殖、ならびに/または宿主免疫応答の存在もしくは非存在が評価される。
【0111】
ある特定の態様では、操作された細胞は、治療効力または予防効力が向上するように任意の数のやり方で改変される。例えば、集団によって発現される操作されたCARまたはTCRは、リンカーを介して標的化部分と直接的または間接的に結合体化することができる。化合物、例えば、CARまたはTCRを標的化部分に結合体化する手法は当技術分野において公知である。例えば、Wadwa et al., J. Drug Targeting 3: 111 (1995)および米国特許第5,087,616号を参照されたい。
【0112】
III.投薬
細胞の複数の用量のタイミングおよびサイズは、一般的に、例えば、細胞に対する対象の曝露を増やすことによって、例えば、ある期間にわたって細胞に対する対象の曝露を増やすことによって、毒性アウトカムのリスクを小さくするか、もしくは最小にするように、および/または効力を改善するように設計される。前記方法は、第1の用量を投与し、一般的には、その後に1つまたは複数の連続用量を投与する工程を伴い、異なる用量の間には特定の時間枠がある。
【0113】
養子細胞療法の状況では、所与の「用量」の投与とは、所与の量または数の細胞を、単回組成物投与および/またはとぎれない(uninterrupted)単回投与として、例えば単回注射または連続注入として投与することを包含し、かつまた、所与の量または数の細胞を、複数の個々の組成物または注入の形で提供される分割用量として3日以内の特定の期間にわたって投与することも包含する。従って、ある状況では、第1の用量または連続用量は、1つの時点で与えられるか、または開始する、特定の数の細胞の単回投与または連続投与である。しかしながら、ある状況では、第1の用量または連続用量は、3日以内の期間にわたる、例えば、3日もしくは2日にわたる1日1回の、複数回の注射もしくは注入の形で投与されるか、または1日にわたる複数回の注入によって投与される。
【0114】
従って、一部の局面において、第1の用量の細胞は単一の薬学的組成物の状態で投与される。一部の態様において、連続用量の細胞は単一の薬学的組成物の状態で投与される。
【0115】
一部の態様において、第1の用量の細胞は複数の組成物の状態で投与され、複数の組成物は、合計で第1の用量の細胞を含有する。一部の態様において、連続用量の細胞は複数の組成物の状態で投与され、複数の組成物は、合計で連続用量の細胞を含有する。一部の局面において、追加の連続用量は、3日以下の期間にわたって複数の組成物の状態で投与されてもよい。
【0116】
「分割用量」という用語は、数日にわたって投与されるように分割された用量を指す。このタイプの投薬は本発明の方法に包含され、単一用量とみなされる。
【0117】
従って、第1の用量および/または連続用量は一部の局面では分割用量として投与されてもよい。例えば、一部の態様において、用量は2日または3日にわたって対象に投与されてもよい。分割投薬のための例示的な方法は、初日に用量の25%を投与する工程と、2日目に用量の残りの75%を投与する工程を含む。他の態様において、初日に第1の用量の33%が投与されてもよく、2日目に残りの67%が投与されてもよい。一部の局面において、初日に用量の10%が投与され、2日目に用量の30%が投与され、3日目に用量の60%が投与される。一部の態様において、分割用量は3日を超えて広がらない。
【0118】
事前用量、例えば第1の用量に関連して、「連続用量」という用語は、事前用量、例えば第1の用量の後に同じ対象に投与される用量であって、その合間にいかなる介在用量(intervening dose)も対象に投与されていない、用量を指す。しかしこの用語は、単一の分割用量の中に含まれる一連の注入または注射における第2の、第3の、またはそれ以降の注射または注入を包含しない。従って、他で特定しない限り、1日、2日、または3日の期間内での第2の注入は、本明細書で使用する「連続」用量とみなされない。同様に、分割用量に含まれる一連の複数の用量における2回目、3回目なども、「連続」用量の意味に関連しては、「介在」用量とみなされない。従って、他で特定しない限り、第1の用量または事前用量の開始後、3日を超える、ある特定の期間に投与される用量は、第1の用量の開始後に第2の、またはその後の細胞の注射または注入が対象に与えられたとしても、第2の、またはその後の注射または注入が第1の用量または事前用量の開始後、3日の期間内に行われている限り、「連続」用量とみなされる。
【0119】
従って、他で特定しない限り、3日までの期間にわたって同じ細胞を複数回投与することは単一用量とみなされ、初回投与の3日以内に細胞を投与することは、第2の用量が第1の用量と「連続」しているかどうかを決定する目的では連続用量とみなされず、介在用量とみなされない。
【0120】
一部の態様において、複数の連続用量が与えられ、一部の局面では、第1の用量と第1の連続用量との間のタイミングに関するものと同じタイミングガイドラインを用いて、例えば、第1の用量と複数の連続用量を投与することによって与えられる。それぞれの連続用量は、第1の用量または直前の用量の投与の後約14日より長くかつ約28日より短い期間内に、例えば、第1の用量または直前の用量を投与して約21日後に与えられる。追加の複数の追加の連続用量はまた、後続用量またはその後の連続用量とも呼ばれる。
【0121】
本明細書で使用する「第1の用量」は、ある特定の用量のタイミングが、連続用量または後続用量の投与前に行われることを説明するのに用いられる。この用語は、対象に、ある用量の細胞療法が今までに与えられたことがないこと、あるいはさらに、対象に、ある用量の同じ細胞または同じ組換え受容体を発現する細胞もしくは同じ抗原を標的化する細胞が今までに与えられたことがないことを意味するとは限らない。
【0122】
投与量またはサイズ
細胞の第1の用量および/または1つもしくは複数の連続用量のサイズは、一般的に、効力を改善する、および/または毒性のリスクを小さくするように設計される。一部の態様において、第1の用量における細胞の数は、約0.5x106細胞/kg対象体重~3x106細胞/kg、約0.75x106細胞/kg~2.5x106細胞/kg、または約1x106細胞/kg~2x106細胞/kgである。
【0123】
一部の態様において、第1の用量は低用量である。特定の態様において、第1の用量は、対象体重1キログラムあたり約105~約106個のこのような細胞の範囲内の数の細胞、組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞、T細胞、もしくは末梢血単核球(PBMC)、および/または対象体重1キログラムあたり約105個以下もしくは約106個以下のこのような細胞の数のこのような細胞を含有する。例えば、一部の態様において、第1の用量は、対象体重1キログラムあたり1x105個もしくは約1x105個より少ないもしくはそれ以下、2x105個もしくは約2x105個より少ないもしくはそれ以下、5x105個もしくは約5x105個より少ないもしくはそれ以下、または1x106個もしくは約1x106個より少ないもしくはそれ以下のこのような細胞を含む。一部の態様において、第1の用量は、対象体重1キログラムあたり1x105個もしくは約1x105個、2x105個もしくは約2x105個、5x105個もしくは約5x105個、または1x106個もしくは約1x106個のこのような細胞、あるいは前述の値のいずれか2つの間の範囲内にある値を含む。特定の態様において、細胞の数および/または濃度は組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞の数を指す。他の態様において、細胞の数および/または濃度は、投与される全ての細胞、T細胞、または末梢血単核球(PBMC)の数または濃度を指す。
【0124】
一部の態様において、例えば、対象がヒトの場合、第1の用量は、約1x108個より少ないか、もしくはこれに等しい全組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞、T細胞、もしくは末梢血単核球(PBMC)、例えば、約1x106~1x108個の範囲のこのような細胞、例えば、2x106個以下、5x106個以下、1x107個以下、5x107個以下、もしくは1x108個以下のこのような細胞、または前述の値のいずれか2つの間の範囲を含む。
【0125】
一部の態様において、第1の用量は、対象1m2あたり約1x108個より少ないか、もしくはこれに等しい全組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞、T細胞、もしくは末梢血単核球(PBMC)細胞、例えば、対象1m2あたり約1x106~1x108個の範囲のこのような細胞、例えば、対象1m2あたり2x106個以下、5x106個以下、1x107個以下、5x107個以下、もしくは1x108個以下のこのような細胞、または前述の値のいずれか2つの間の範囲を含有する。
【0126】
ある特定の態様において、例えば、対象における毒性および/または疾患負荷のリスクが小さいと決定されている場合、第1の用量は、比較的多い用量、例えば、1x106細胞/kgより多いか、または1x108個より多い細胞、例えば、T細胞もしくはPBMC、または対象1m2あたり1x108個より多い、このような細胞を含む用量でもよい。一部の態様において、対象が実質的な形態学的疾患を示さない、もしくは形態学的疾患を示さないか、または骨髄中に20%未満の芽細胞、骨髄中に15%未満の芽細胞、骨髄中に10%満の芽細胞、もしくは骨髄中に5%未満の芽細胞を示すのであれば、疾患負荷は少ない。一部の態様において、対象が非形態学的疾患を示すのであれば、例えば、微小残存病変または分子的に検出可能な疾患を示すが、他の場所で説明される当技術分野において公知の形態学的疾患に関連する特徴を示さなければ、例えば、骨髄中に5%を超える芽細胞を示さなければ、疾患負荷は少ない。一部の態様において、第1の用量における細胞、組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞、T細胞、または末梢血単核球(PBMC)の数は、対象体重1キログラムあたり約1x106個より多いこのような細胞、例えば、体重1キログラムあたり2x106個、3x106個、5x106個、1x107個、5x107個、1x108個、1x109個、もしくは1x1010個のこのような細胞、および/または対象1m2あたり1x108個、1x109個、1x1010個のこのような細胞、もしくは合計、あるいは前述の値のいずれか2つの間の範囲である。
【0127】
一部の態様において、連続用量において投与される細胞の数は、本明細書中の任意の態様の第1の用量において投与される細胞の数と同じまたは同等である、例えば、対象体重1キログラムあたりのそのような細胞1x105個もしくは約1x105個より少ないもしくはそれ以下、2x105個もしくは約2x105個より少ないもしくはそれ以下、5x105個もしくは約5x105個より少ないもしくはそれ以下、または1x106個もしくは約1x106個より少ないもしくはそれ以下である。一部の態様において、連続用量は、対象体重1キログラムあたりのそのような細胞1x105個もしくは約1x105個、2x105個もしくは約2x105個、5x105個もしくは約5x105個、または1x106個もしくは約1x106個、あるいは前述の値のいずれか2つの間の範囲内にある値を含有する。
【0128】
細胞数について、一部の態様では、このような値は組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞の数を指し、他の態様では、投与されるT細胞またはPBMCまたは全細胞の数を指す。
【0129】
一部の局面において、連続用量は第1の用量より多い。例えば、一部の態様において、連続用量は、対象体重1キログラムあたり約1x106個を超える細胞、組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞、T細胞、および/またはPBMC、例えば、対象体重1キログラムあたり約2x106個、約3x106個、約5x106個、約1x107個、約1x108個、もしくは約1x109個、または少なくとも約2x106個、約3x106、約5x106個、約1x107個、約1x108個、もしくは約1x109個のこのような細胞を含有する。一部の態様において、連続用量における細胞の数は、約2x106細胞/kg対象体重~6x106細胞/kg、約2.5x106細胞/kg~5.0x106細胞/kg、または約3.0x106細胞/kg~約4.0x106細胞/kgである。一部の態様において、連続用量の量またはサイズは、疾患負荷もしくはその指標、および/または疾患もしくは状態の1つもしくは複数の症状を低減するのに十分である。一部の態様において、前記用量は、対象の生存を改善するのに、例えば、少なくとも6ヶ月、または少なくとも1年、2年、3年、4年、もしくは5年にわたって対象の生存、無再発生存、または無事象生存を誘導するのに有効なサイズの用量である。一部の態様において、連続用量において投与される、細胞、組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞、T細胞、および/もしくはPBMCの数、ならびに/または対象体重あたりの投与される、このような細胞の数は、第1の用量において投与される数の少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、もしくは100倍であるか、またはこれより多い。一部の態様において、連続用量の後に、疾患負荷、腫瘍サイズ、腫瘍体積、腫瘍質量、および/または腫瘍量もしくは腫瘍容積は、第1の用量または連続用量の投与直前と比較して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、もしくはこれより多く、または少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、もしくはこれより多く低減する。
【0130】
他の態様において、連続用量において投与される細胞の数は、第1の用量において投与される細胞の数より少ない。
【0131】
一部の態様において、連続用量の投与後に、追加の用量が投与されるように、第1の用量の後に複数の連続用量が投与される。一部の局面において、追加の用量(すなわち、第3、第4、第5など)において対象に投与される細胞の数は第1の用量および/もしくは連続用量と同じまたは同等である。一部の態様において、追加の用量は事前用量より多い。
【0132】
一部の局面において、第1の用量および/または連続用量のサイズは、1つまたは複数の判断基準、例えば、前処置、例えば、化学療法に対する対象の応答、対象における疾患負荷、例えば、腫瘍量、容積、サイズ、もしくは程度、転移の度合いもしくはタイプ、ステージ、ならびに/または対象が毒性アウトカム、例えば、CRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍溶解症候群、神経毒性を発症する可能性もしくは発生率、ならびに/または投与されている細胞および/もしくは組換え受容体に対する宿主免疫応答に基づいて決定される。
【0133】
一部の局面において、第1の用量および/または連続用量のサイズは、対象における疾患または状態の負荷によって決定される。例えば、一部の局面において、第1の用量において投与される細胞の数は、第1の用量の投与直前の対象に存在する腫瘍負荷に基づいて決定される。一部の態様において、第1の用量および/または連続用量のサイズは疾患負荷と逆相関がある。一部の局面では、多疾患負荷の状況のように、少数の細胞、例えば、対象体重1キログラムあたり約1x106個未満の細胞が対象に投与される。他の態様では、低疾患負荷の状況のように、多数の細胞、例えば、対象体重1キログラムあたり約1x106個を超える細胞、例えば、1キログラムあたり約2x106個、約2.5x106個、または約3x106個を超える細胞が対象に投与される。
【0134】
一部の局面において、連続用量において投与される細胞の数は、第1の用量の投与後の、対象に存在する腫瘍負荷に基づいて決定される。一部の態様において、例えば、第1の用量によって疾患負荷が低減もしくは減少した場合、または特定の閾値量もしくはレベルよりかなり少なく、例えば、上回ると毒性アウトカムのリスクが高まる閾値量もしくはレベルより少なく低減もしくは減少した場合、連続用量は高いか、または多く、例えば、体重1キログラムあたり1x106個を超える細胞(例えば、全細胞、受容体発現細胞、T細胞、もしくはPBMC)である、例えば、2.0x106、2.5x106、もしくは3.0x106細胞/kgを超える、および/または第1の用量より多い。一部の態様において、対象は、処置前に形態学的疾患を示し、処置後に、例えば、フローサイトメトリーまたは定量PCRによって検出された時に分子的に検出可能な分子的疾患(例えば、微小残存病変(MRD))を伴って、または伴わずに完全寛解(例えば、骨髄中に5%未満の芽細胞)を示すのであれば、低減または減少した疾患負荷を示す。一部の態様において、対象は、処置前に分子的疾患を示し、処置後に分子的疾患を示さなければ低減または減少した疾患負荷を示す。
【0135】
他の局面では、第1の用量が腫瘍負荷をわずかに低減したか、または第1の用量が腫瘍負荷の検出可能な低減につながらなかった場合、連続用量において投与される細胞の数は少なく、例えば、約1x106個未満であり、第1の用量と同じであるか、または第1の用量より少ない。場合によっては、第1の用量が与えられた後に対象において腫瘍負荷が低減しなくても、連続用量は高いか、または多くてもよく、例えば、体重1キログラムあたり1x106個を超える細胞(例えば、全細胞、受容体発現細胞、T細胞、もしくはPBMC)である、例えば、2.0x106細胞/kg、2.5x106細胞/kg、もしくは3.0x106細胞/kgを超える、および/または第1の用量より多い。
【0136】
一部の態様において、第1の用量は、毒性または毒性アウトカム、例えば、サイトカイン放出症候群(CRS)、重度のCRS(sCRS)、マクロファージ活性化症候群、腫瘍溶解症候群、3日以上にわたる少なくとも38℃もしくは少なくとも約38℃の発熱、および少なくとも20mg/dLもしくは少なくとも約20mg/dLのCRPの血漿レベル、神経毒性ならびに/または神経毒性の可能性を引き起こさない、または低減しない量で前記細胞を含む。一部の局面において、第1の用量において投与される細胞の数は、前記細胞の投与後に、対象が、毒性または毒性アウトカム、例えば、CRS、sCRS、および/またはCRS関連アウトカムを示す可能性に基づいて決定される。例えば、一部の態様において、対象において毒性アウトカムが発生する可能性は腫瘍負荷に基づいて予測される。一部の態様において、前記方法は、用量の投与前に、毒性アウトカムおよび/または疾患負荷を検出または評価する工程を含む。
【0137】
一部の局面では、連続用量において投与される細胞の数は、第1の用量の投与後の毒性または毒性アウトカム、例えば、CRS関連アウトカムのレベルに基づいて決定される。例えば、一部の態様において、対象が、第1の用量の投与後に、検出可能なレベルの毒性または毒性アウトカム、例えば、CRS関連アウトカムを示すのであれば、連続用量において投与される細胞の数は少なく、例えば、体重1キログラムあたり1x106個未満の細胞であり、例えば、第1の用量と同じであるか、またはこれより少ない。
【0138】
一部の態様において、第1の用量の後、対象が毒性または毒性アウトカム、例えば、CRS関連アウトカムを示す時には、例えば、CRSの指標または毒性の他の生化学的指標の血清レベルがベースラインまたは処置前レベル、例えば、第1の用量の投与直前の指標の血清レベルの10倍もしくは約10倍を超える、15倍もしくは約15倍を超える、20倍もしくは約20倍を超える、25倍もしくは約25倍を超える、50倍もしくは約50倍を超える、75倍もしくは約75倍を超える、100倍もしくは約100倍を超える、125倍もしくは約125倍を超える、150倍もしくは約150倍を超える、200倍もしくは約200倍を超える、または250倍もしくは約250倍を超えるのであれば、連続用量は対象に投与されない。
【0139】
一部の態様において、第1の用量の後、毒性アウトカムの生化学的指標または他の指標、例えば、CRSの指標の血清レベルが、ある特定のレベル、例えば、許容されるレベルを上回って、例えば、第1の用量の投与直前の指標の血清レベルの10倍、15倍、20倍、25倍、50倍、75倍、もしくは100倍を超えて、または約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約50倍、約75倍、もしくは約100倍を超えて増加していなければ、または許容されるレベルを上回って増加したが、許容されるレベルまで、もしくは許容されるレベルを下回って低下しているのであれば、かつそのような時には、連続用量は対象に投与される。一部の局面において、指標が、第1の用量を投与して10日以内、11日以内、12日以内、13日以内、14日以内、15日以内、16日以内、17日以内、18日以内、19日以内、20日以内、21日以内、22日以内、23日以内、24日以内、25日以内、26日以内、27日以内、28日以内、29日以内、30日以内、31日以内、32日以内、33日以内、34日以内、または35日以内に許容されるレベルを下回って低下しているのであれば、例えば、21日以内、および/または15~27日以内、21日以内、28日以内、または35日以内に許容されるレベルを下回って低下しているのであれば、かつそのような時に連続用量は投与されるが、指標のレベルが前記の期間内に、許容されるレベルを下回って低下しなければ投与されない。
【0140】
一部の態様において、第1の投与後に、サイトカイン放出症候群(CRS)、マクロファージ活性化症候群、または腫瘍溶解症候群、または神経毒性を発症する臨床リスクが存在していないか、または去ったか、または弱まっていたら、例えば、特定の疾患または状態を有する対象の例えば60%、70%、80%、90%、または95%においてこのような事象が概して弱まっているおよび/または発生する可能性が低い臨界時間枠(critical window)後に、連続用量は投与される。
【0141】
一部の態様において、連続用量が投与されるかどうかは、連続用量がいつ投与されるかは、および/または連続用量において投与される前記細胞の数は、第1の用量の細胞または第1の用量の細胞によって発現される組換え受容体に対する対象における免疫応答または検出可能な免疫応答の存在、非存在、または程度に基づいて決定される。一部の局面において、検出可能な宿主適応免疫応答を有するか、あるいは確立したか、またはある特定のレベル、ステージ、もしくは程度に達した免疫応答を有する対象には、第1の用量の細胞の受容体を発現する細胞を含有する連続用量は投与されない。
【0142】
用量のタイミング
一部の局面において、連続用量のタイミングは、第1の用量の開始から連続用量の開始まで測定される。他の態様において、連続用量のタイミングは第1の用量の終了から測定されるか、または例えば、数日にわたって、例えば、2日もしくは3日にわたって用量が投与される本明細書に記載の分割投薬(split dosing)の状況では、第1の用量の投与の中間の日から測定される。
【0143】
一部の態様において、対象におけるCRSを示す因子の血清レベルが、第1の用量の投与直前の対象における前記指標の血清レベルの10倍以下、25倍以下、50倍以下、または100倍以下である時期に、連続用量は投与される。
【0144】
一部の態様において、連続用量は、対象におけるCRS関連アウトカム、例えば、CRSに関連する血清因子もしくはCRSを示す血清因子またはその臨床徴候もしくは症状、例えば発熱、低酸素、低血圧、もしくは神経学的障害が第1の投与の投与後にピークレベルに達して低下し始めた後の時期に、投与される。一部の態様において、投与後に測定された、このようなアウトカムの最高レベルと比較してアウトカムが低下していると観察された後の時期に、または投与後にアウトカムの最大値もしくは最大レベルに達した後に前記レベルが低下している時期に、もしくは前記レベルが低下した後の時期に、連続用量は時期に投与される。
【0145】
一部の態様において、毒性アウトカムの指標、例えば、CRSの血清指標のレベルが第1の用量の直前の指標のレベルの25倍を下回って低下した時に、連続用量は投与される。一部の局面において、対象がCRSを示さないか、または重度のCRSを示さない時期に、連続用量は投与される。
【0146】
一部の局面において、患者における疾患負荷が、第1の用量の投与直前の疾患負荷と比較して減少している時点で、連続用量は投与される。一部の態様において、対象は、処置前に形態学的疾患を示し、処置後に、分子的疾患(分子的に検出可能な、例えば、フローサイトメトリーまたは定量PCRによって検出された時に分子的に検出可能な分子的疾患(例えば、微小残存病変(MRD)))を伴って、または伴わずに完全寛解(例えば、骨髄中に5%未満の芽細胞)を示すのであれば、低減または減少した疾患負荷を示す。一部の態様において、対象は、処置前に分子的疾患を示し、処置後に分子的疾患を示さなければ、低減または減少した疾患負荷を示す。一部の態様において、第1の用量の投与後に、対象の血液、他の流体、臓器、もしくは組織における疾患負荷もしくはその指標、例えば、疾患(例えば、腫瘍)細胞の容積もしくは数もしくはパーセント、または腫瘍のサイズが10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%、またはこれより多く減少した時期に、連続用量は投与される。
【0147】
一部の態様において、対象における疾患または状態が第1の用量または事前用量に応答して低減した後に再発していない時点で、連続用量は投与される。一部の態様において、疾患負荷の低減は、1つまたは複数の因子、例えば、対象またはその流体もしくは臓器もしくは組織における疾患細胞の量もしくは数、腫瘍の質量もしくは体積、あるいは転移の程度もしくは度合いの低減によって示される。このような因子は初回処置または初回投与に応答して低減した後に増加するのであれば、再発したとみなされる。一部の態様において、再発は、一般的に、1種類の因子または1種類もしくは複数種の因子あるいは疾患負荷の再発である。一部の局面において、対象、疾患負荷、またはその因子が、第1の投与または先の投与の後に測定されたか、または到達した最も低い点と比較して再発しているが、第1の用量の直前の時期と比較してなお低い時点で、連続用量は投与される。一部の態様において、疾患負荷またはそれを示す因子が変化していない時点で、例えば、疾患負荷の増加が阻止されている時点で、連続用量は対象に投与される。
【0148】
一部の態様において、宿主適応免疫応答が検出されないか、確立していないか、またはある特定のレベル、程度、もしくはステージに達していない時期に、連続用量は投与される。一部の局面において、対象において記憶免疫応答が発生する前に、連続用量は投与される。
【0149】
一部の局面において、第1の用量の投与と連続用量の投与との間の期間は、約9~約35日、約14~約28日、または15~27日である。一部の態様において、連続用量の投与は、第1の用量の投与後約14日より長くかつ約28日より短い時点である。一部の態様において、連続用量の投与は、第1の用量の投与後、約14日以下、約15日以下、約16日以下、約17日以下、約18日以下、約19日以下、約20日以下、約21日以下、約22日以下、約23日以下、約24日以下、約25日以下、約26日以下、約27日以下、または約28日以下である。一部の局面において、第1の用量と連続用量との間の期間は約14日、約17日、または約21日である。
【0150】
一部の態様において、連続用量の投与後に、追加のまたは後続用量、例えば、さらなる連続用量が投与される。一部の局面において、追加の連続用量は、事前用量、例えば、事前連続用量の投与後少なくとも約14日、かつ約28日より短い時点で投与される。一部の態様において、例示的な投与計画は、組換え受容体発現細胞(例えば、CAR発現細胞、例えば、CAR発現T細胞)の投与計画を含む。一部の態様において、追加の用量は、事前用量の後、約14日未満で、例えば、事前用量の後、4日未満、5日未満、6日未満、7日未満、8日未満、9日未満、10日未満、11日未満、12日未満、または13日未満で投与される。一部の態様において、事前用量の後、約14日未満で投与されない、および/または事前用量の後、約28日を超えて投与されない。
【0151】
任意の態様において、前記方法は、場合によっては、第1の用量または事前用量および連続用量の投与を含み、他の場合では、以前に第1の用量または事前用量が与えられたことがある対象への連続用量の投与を含むが、第1の用量または事前用量それ自体の投与を含まない。従って、前記方法は、場合によっては、強化処置を投与すること、例えば、連続した強化用量を、ある用量、例えば、減量用量の組換え受容体発現細胞、例えば、CAR発現細胞が以前に与えられたことがある対象に投与することによって強化処置を投与することを伴う。一部の局面において、対象に第1の用量が与えられることなく、この用量が投与されるのと比べて、連続用量における前記細胞の投与の効力および/または安全性が改善されるように、受容体発現細胞、例えば、CAR発現細胞の事前用量は対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分であった。
【0152】
一部の態様において、連続用量の後に、疾患負荷、腫瘍サイズ、腫瘍体積、腫瘍質量、および/または腫瘍量もしくは腫瘍容積は、第1の用量または連続用量の投与直前と比較して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、もしくはこれより多く、または少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、もしくはこれより多く低減する。
【0153】
IV.毒性および毒性アウトカム
一部の態様において、例えば、単一用量と同じ、または類似する総数の細胞が投与されること、対象に第1の用量が以前に与えられずに連続用量が投与されること、第1の用量と比べて異なる時間で連続用量が投与されること、および/または前記用量の1つもしくは複数において異なる量が投与されることと比較して、前記用量のタイミングまたは量は毒性またはそのアウトカムもしくは症状を低減または阻止する。
【0154】
養子T細胞療法の投与、例えば、キメラ抗原受容体を発現するT細胞による処置は、毒性作用またはアウトカム、例えば、サイトカイン放出症候群および神経毒性を誘導することがある。一部の例では、このような作用またはアウトカムは、観察された毒性の根底をなし得る高レベルの循環サイトカインに対応する。
【0155】
一部の態様において、提供される方法は、例えば、単一用量と同じ、または類似する総数の細胞が投与されること、対象に第1の用量が以前に与えられずに連続用量が投与されること、第1の用量と比べて異なる時間で連続用量が投与されること、および/または前記用量の1つもしくは複数において異なる量が投与されることと比較して低い程度の毒性、毒性アウトカムもしくは症状、毒性を促すプロファイル、毒性を促す因子、もしくは毒性を促す特性、例えば、サイトカイン放出症候群(CRS)に関連する症状もしくはアウトカムまたはサイトカイン放出症候群(CRS)を示す症状もしくはアウトカムをもたらすように、あるいはこれをもたらす特徴を含むように設計される。
【0156】
一部の局面において、毒性アウトカムはサイトカイン放出症候群(CRS)もしくは重度のCRS(sCRS)であるか、サイトカイン放出症候群(CRS)もしくは重度のCRS(sCRS)に関連するか、またはサイトカイン放出症候群(CRS)もしくは重度のCRS(sCRS)を示す。CRS、例えば、sCRSは、場合によっては、養子T細胞療法後に、および他の生物製品が対象に投与された後に起こることがある。Davila et al., Sci Transl Med 6, 224ra25 (2014); Brentjens et al., Sci. Transl. Med. 5, 177ra38 (2013); Grupp et al., N. Engl. J. Med. 368, 1509-1518 (2013);およびKochenderfer et al., Blood 119, 2709-2720 (2012); Xu et al., Cancer Letters 343 (2014) 172-78を参照されたい。
【0157】
典型的に、CRSは、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、単球、および/またはマクロファージによって媒介される悪化した全身免疫応答によって引き起こされる。このような細胞は、多量の炎症メディエーター、例えば、サイトカインおよびケモカインを放出することがある。サイトカインは急性炎症応答を誘発することがある、および/または微小血管漏出、心不全、もしくは死亡の原因となり得る内皮臓器損傷を誘導することがある。重度の、命に関わるCRSは、肺浸潤および肺損傷、腎不全、または播種性血管内凝固につながる可能性がある。他の重度の、命に関わる毒性には、心毒性、呼吸窮迫、神経毒性、および/または肝不全が含まれ得る。
【0158】
CRSは、抗炎症性療法、例えば、抗IL-6療法、例えば、抗IL-6抗体、例えば、トシリズマブ、または抗生物質を用いて治療されることがある。一部の態様において、第1の投与の後に、対象はこのような療法で処置され、このような処置の後に、CRS関連症状が低減したか、もしくは低下している最中であるか、許容されるレベルを下回って低下した場合および時にだけ、連続用量が投与される。
【0159】
CRSのアウトカム、徴候、および症状は公知であり、本明細書に記載のものを含む。一部の態様において、特定の投与計画もしくは投与が、ある特定のCRS関連アウトカム、徴候、もしくは症状をもたらす場合、または特定の投与計画もしくは投与が、ある特定のCRS関連アウトカム、徴候、もしくは症状をもたらさない場合、特定のアウトカム、徴候、および症状、ならびに/またはその数量もしくは程度が指定されることがある。
【0160】
CAR発現細胞の投与の状況では、CRSは、典型的には、CARを発現する細胞を注入して6~20日後に起こる。Xu et al., Cancer Letters 343 (2014) 172-78を参照されたい。場合によっては、CRSは、CAR T細胞の注入後、6日未満または20日を超える時点で起こる。CRSの発生率およびタイミングは注入時のベースラインサイトカインレベルまたは腫瘍負荷と関係する場合がある。一般的に、CRSは、インターフェロン(IFN)-γ、腫瘍壊死因子(TNF)-α、および/またはインターロイキン(IL)-2の血清レベルの上昇を伴う。CRSにおいて迅速に誘導され得る他のサイトカインは、IL-1β、IL-6、IL-8、およびIL-10である。
【0161】
一部の局面において、前記細胞が本方法の投与計画によって投与された対象では、例えば、単一用量と同じ、または類似する総数の細胞が投与されること、対象に第1の用量が以前に与えられずに連続用量が投与されること、第1の用量と比べて異なる時間で連続用量が投与されること、および/または前記用量の1つもしくは複数において異なる量が投与されることと比較して低い程度の毒性、アウトカム、症状、プロファイル、因子、または特性が観察される。例えば、一部の態様において、対象に第1の用量が投与された後に、対象は、もっと多い数の細胞が対象に投与された時と比較して低い程度のCRS関連アウトカムを示す、および/または低い、炎症性サイトカインまたはCRSを示す因子の血清レベルを示す。一部の態様において、連続用量が対象に投与された後に、対象は、対象に第1の用量が与えられたことがなく連続用量が対象に投与されるのと比較して、または単一用量として第1の用量および連続用量が投与されるのと比較して、または特定の期間より前もしくは後の時間で連続用量が投与されるのと比較して低い程度のCRS関連アウトカムを示す、および/または低い、炎症性サイトカインもしくはCRSを示すアウトカムの血清レベルを示す。一部の態様において、第1の用量が投与された後および/または連続用量が投与された後に、対象はCRSも重度のCRSも示さない。
【0162】
例示的なCRS関連アウトカムには、発熱、硬直、悪寒、低血圧、呼吸困難、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、脳症、ALT/ASTの上昇、腎不全、心臓障害、低酸素、神経障害、および死亡が含まれる。神経学的合併症には、せん妄、発作様活動、錯乱、喚語困難(word-finding difficulty)、失語症、および/または昏迷状態が含まれる。他のCRS関連アウトカムには、疲労、悪心、頭痛、発作、頻拍、筋肉痛、発疹、急性血管漏出症候群、肝機能低下、および腎不全が含まれる。一部の局面において、CRSは、1種または複数種の因子、例えば、血清フェリチン、d-ダイマー、アミノトランスフェラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、およびトリグリセリドの増加に関連するか、または低フィブリノゲン血症もしくは肝脾腫に関連する。
【0163】
一部の態様において、CRS関連アウトカムには以下の1つまたは複数が含まれる:持続性の発熱、例えば、2日以上、例えば、3日以上、例えば、4日以上にわたる、または少なくとも3日間連続した、特定の温度の、例えば、38℃を超えるまたは約38℃を超える持続性の発熱;38℃を超えるまたは約38℃を超える発熱;サイトカインの上昇、例えば、少なくとも2種類のサイトカイン(例えば、インターフェロンγ(IFNγ)、GM-CSF、IL-6、IL-10、Flt-3L、フラクタルカイン、およびIL-5、ならびに/もしくは腫瘍壊死因子α(TNFα)からなる群のうちの少なくとも2つ)の処置前レベルと比較した最大倍率変化、例えば、少なくとも75もしくは少なくとも約75の最大倍率変化、またはこのようなサイトカインの少なくとも1つの最大倍率変化、例えば、少なくとも250もしくは少なくとも約250の最大倍率変化;ならびに/あるいは毒性の少なくとも1つの臨床徴候、例えば、低血圧(例えば、少なくとも1種類の静脈内血管作動性昇圧薬(intravenous vasoactive pressor)によって測定した時);低酸素(例えば、90%未満または約90%未満の血漿酸素(PO2)レベル);ならびに/あるいは1つまたは複数の神経障害(精神状態変化、鈍麻、および発作を含む)。
【0164】
例示的なCRS関連アウトカムには、サイトカインおよびケモカイン、ならびにCRSに関連する他の因子を含む1種または複数種の因子の増大した、または高い血清レベルが含まれる。さらに、例示的なアウトカムには、このような因子の1つまたは複数の合成または分泌の増加が含まれる。このような合成または分泌は、T細胞、またはT細胞と相互作用する細胞、例えば、自然免疫細胞もしくはB細胞によるものでもよい。
【0165】
一部の態様において、CRS関連血清因子またはCRS関連アウトカムには、インターフェロンγ(IFN-γ)、TNF-a、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、sIL-2Ra、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)-1、腫瘍壊死因子α(TNFα)、IL-6、およびIL-10、IL-1β、IL-8、IL-2、MIP-1、Flt-3L、フラクタルカイン、および/またはIL-5を含む、炎症性サイトカインおよび/またはケモカインが含まれる。一部の態様において、前記因子またはアウトカムにはC反応性タンパク質(CRP)が含まれる。CRPはCRSの早期に、かつ容易に測定可能な危険因子であることに加えて、細胞増殖マーカーでもある。一部の態様において、高レベル、例えば、≧15mg/dLのCRPがあると測定された対象はCRSを有する。一部の態様において、高レベルのCRPがあると測定された対象はCRSを有さない。一部の態様において、CRSの測定は、CRPおよびCRSを示す別の因子の測定を含む。
【0166】
一部の態様において、CAR処置の前、間、または後に、1種または複数種の炎症性サイトカインまたはケモカインがモニタリングされる。一部の局面において、1種または複数種のサイトカインまたはケモカインには、IFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-1β、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、sIL-2Rα、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、またはマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)が含まれる。一部の態様において、IFN-γ、TNF-α、およびIL-6がモニタリングされる。
【0167】
どの患者が、sCRSを発症するリスクがある可能性が高いかを予測するために、CRSの発症と相関するように思われるCRS判断基準が開発されている(Davilla et al. Science translational medicine. 2014;6(224):224ra25を参照されたい)。因子には、発熱、低酸素、低血圧、神経変化、炎症性サイトカイン、例えば、処置によって誘導される上昇が処置前の腫瘍負荷およびsCRS症状とよい相関を示すことができる7種類一組のサイトカイン(IFNγ、IL-5、IL-6、IL-10、Flt-3L、フラクタルカイン、およびGM-CSF)の血清レベルの上昇が含まれる。CRSの診断および管理に関する他のガイドラインは公知である(例えば、Lee et al, Blood. 2014;124(2):188-95を参照されたい)。一部の態様において、CRSグレードを反映する判断基準は、以下の表1に詳述した判断基準である。
【0168】
(表1)CRSの例示的なグレード分類基準
【0169】
本明細書において用いられる場合、対象は、投与後に、(1)少なくとも3日にわたる少なくとも38℃の発熱;(2)(a)投与直後のレベルと比較して、以下の7種類のサイトカイン:インターフェロンγ(IFNγ)、GM-CSF、IL-6、IL-10、Flt-3L、フラクタルカイン、およびIL-5のグループの少なくとも2つについて少なくとも75の最大倍率変化、ならびに/あるいは(b)投与直後のレベルと比較して、以下の7種類のサイトカイン:インターフェロンγ(IFNγ)、GM-CSF、IL-6、IL-10、Flt-3L、フラクタルカイン、およびIL-5のグループの少なくとも1つについて少なくとも250の最大倍率変化;ならびに(c)毒性の少なくとも1つの臨床徴候、例えば、低血圧(少なくとも1種類の静脈内血管作動性昇圧薬を必要とする)または低酸素(PO2<90%)または1つもしくは複数の神経障害(精神状態変化、鈍麻、および/もしくは発作を含む)のいずれかを含むサイトカイン上昇を示すのであれば、細胞療法の投与またはその用量の細胞に応答または付随して「重度のCRS」(「sCRS」)を発症しているとみなされる。一部の態様において、重度のCRSは、グレード3以上のCRS、例えば、表1に示したCRSを含む。
【0170】
一部の態様において、CRSは、(1)持続性の発熱(少なくとも3日にわたる少なくとも38℃の発熱)と、(2)少なくとも20mg/dLまたは少なくとも約20mg/dLのCRP血清レベルの組み合わせを含む。
【0171】
一部の態様において、CRSは、2種類以上の昇圧剤の使用を必要とする低血圧、または機械的換気を必要とする呼吸不全を含む。
【0172】
様々なアウトカムを測定または検出するための方法を特定することができる。
【0173】
一部の局面において、第1の用量の投与前に、第1の用量の投与後で連続用量の投与前に、または連続用量の投与後に、CRS関連アウトカムが対象において評価される。一部の態様において、毒性アウトカム、例えば、CRS関連アウトカムのレベル、例えば、CRSの指標の血清レベルがELISAによって測定される。一部の態様において、発熱および/またはCRPのレベルを測定することができる。一部の態様において、発熱があり、CRP≧15mg/dLの対象が、重度のCRSを発症するリスクが高いとみなされることがある。
【0174】
一部の態様において、毒性アウトカム、毒性、または症状は、投与後、特定の時点で測定される。一部の態様において、毒性アウトカム、例えば、CRS、重度のCRS、および/またはCRS関連アウトカムもしくは血清レベル、またはさらに低い程度のアウトカムもしくは血清レベルは、投与して24時間後に、投与後、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目、17日目、18日目、19日目、20日目、もしくは21日目に、または1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、または21日の期間にわたって測定される。一部の態様において、CRPは3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、または9日目に測定される。一部の態様において、1種類の因子または複数種の因子、例えば、サイトカインの倍率変化は、処置前のレベルと、処置後、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、14日目、または20日目もしくは21日目のレベルとの間の倍率変化として測定される。
【0175】
一部の態様において、連続用量の投与時のCRS関連アウトカムのレベルは、ピークレベルの50%以下であるか、ピークレベルの40%以下であるか、ピークレベルの30%以下であるか、ピークレベルの20%以下であるか、ピークレベルの15%以下であるか、ピークレベルの10%以下であるか、ピークレベルの5%以下であるか、または第1の用量の投与直前のレベルであるか、もしくはほぼ該レベルであるか、もしくは該レベルより少ないか、またはベースラインであるか、もしくはほぼベースラインであるか、もしくはベースラインより少ない。
【0176】
一部の局面において、連続用量の投与時のCRS関連アウトカムのレベルは、第1の用量の投与直前のレベルの10倍以下である。
【0177】
一部の態様において、連続用量の投与後、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、または14日目の対象におけるCRS関連アウトカムは検出することができないか、あるいは第1の用量が投与されずに連続用量が対象に投与される方法、ならびに/または第1の用量および第2の用量の細胞が単一用量で投与される方法、ならびに/または連続用量が、前記方法によって特定の第1の用量と連続用量との間の時間より早い時間で与えられる方法と比較して低減している。
【0178】
一部の態様において、第1の用量の投与後、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、または14日目の対象におけるCRS関連アウトカムは検出することができないか、または2倍、5倍、10倍、もしくは100倍の数の用量の細胞、T細胞、前記組換え受容体を発現する細胞、またはPBMCが対象に投与された後と比較して低減している。
【0179】
一部の態様において、連続用量が投与された後の対象における、ある期間にわたるCRS関連アウトカムまたはCRSを示す因子の血清レベルの曲線下面積(AUC)は、第1の用量が投与されずに連続用量が対象に投与される方法、ならびに/または第1の用量および連続用量の細胞が単一用量で投与される方法、ならびに/または連続用量が、前記方法によって特定された第1の用量と連続用量との間の時間より早い時間で与えられる方法と比較して小さい。
【0180】
一部の態様において、第1の用量が投与された後の対象における、ある期間にわたるCRS関連アウトカムまたはCRSを示す因子の血清レベルの曲線下面積(AUC)は、2倍、5倍、10倍、もしくは100倍の数の用量の細胞、T細胞、前記組換え受容体を発現する細胞、またはPBMCが対象に投与された後と比較して小さい。
【0181】
一部の局面において、毒性アウトカムは神経毒性であるか、または神経毒性に関連する。一部の態様において、神経毒性の臨床リスクに関連する症状には、錯乱、せん妄、表出性失語、鈍麻、ミオクローヌス、嗜眠、精神状態変化、痙攣、発作様活動、発作(任意で、脳波[EEG]によって確認される)、高レベルのβアミロイド(Aβ)、高レベルのグルタミン酸、および高レベルの酸素ラジカルが含まれる。一部の態様において、神経毒性は(例えば、グレード1~5スケールを用いて)重症度に基づいてグレード分類される(例えば、Guido Cavaletti & Paola Marmiroli Nature Reviews Neurology 6, 657-666 (December 2010); National Cancer Institute-Common Toxicity Criteria version 4.03 (NCI-CTCAE v4.03)を参照されたい)。
【0182】
場合によっては、神経症状はsCRSの最初期の症状でもよい。一部の態様において、神経症状は細胞療法注入の5~7日後に始まることが認められた。一部の態様において、神経変化の持続期間は3~19日でもよい。場合によっては、sCRSの他の症状が消散した後に神経変化の回復が起こる。一部の態様において、神経変化の消散の時間または程度は、抗IL-6および/またはステロイドを用いた処置によって早まらない。
【0183】
本明細書において用いられる場合、投与後に、対象が、1)末梢運動神経の炎症または変性を含む末梢性運動ニューロパチーの症状;2)末梢感覚神経の炎症または変性を含む末梢性感覚ニューロパチーの症状、ジセステジア、例えば、異常な感覚および不快な感覚の原因となる感覚認知のゆがみ、神経痛、例えば、神経もしくは神経群に沿った激しく痛い感覚、ならびに/またはパレステジア、例えば、刺激の非存在下での刺痛、しびれ、圧力、冷感、および温感の異常な皮膚感覚の原因となる感覚ニューロンの機能障害の中から、セルフケア(例えば、入浴、衣服の着脱、食事、トイレの使用、服薬)を制限する症状を示すのであれば、細胞療法の投与またはその用量の細胞に応答または付随して「重度の神経毒性」を発症しているとみなされる。一部の態様において、重度の神経毒性は、グレードが3以上の神経毒性、例えば、表2に示した神経毒性を含む。
【0184】
(表2)神経毒性の例示的なグレード分類基準
【0185】
一部の態様において、前記方法は、他の方法と比較して神経毒性に関連する症状を低減する。例えば、本方法に従って処置された対象は、他の方法によって処置された対象と比較して、神経毒性の症状、例えば、四肢の脱力またはしびれ、記憶、視力、および/または知性の喪失、制御不能な強迫行動および/または強制行動、妄想、頭痛、運動制御の喪失を含む認知問題および行動問題、認知衰退、ならびに自律神経系機能不全、ならびに性機能不全を低減している可能性がある。一部の態様において、本発明の方法に従って処置された対象は、末梢性運動ニューロパチー、末梢性感覚ニューロパチー、ジセステジア(dysethesia)、神経痛、またはパレステジアに関連する症状を低減している可能性がある。
【0186】
一部の態様において、前記方法は、神経系および/または脳に対する損傷、例えば、ニューロン死を含む、神経毒性に関連するアウトカムを低減する。一部の局面において、前記方法は、神経毒性に関連する因子、例えば、βアミロイド(Aβ)、グルタミン酸、および酸素ラジカルのレベルを低減する。
【0187】
一部の態様において、第1の用量の後に連続用量が投与された対象は、第1の用量の非存在下での連続用量が投与されること、単一用量で第1の用量および第2の用量の細胞が投与されること、ならびに/または前記方法によって特定された第1の用量と連続用量との間の時間より早い時間で連続用量が投与されることと比較して、神経毒性に関連する症状、アウトカム、または因子を低減した。
【0188】
V.移入された細胞に対する宿主免疫応答
一部の態様において、前記用量、例えば、連続用量の1つまたは複数は、対象におけるトランスジェニック受容体または細胞に対する免疫応答、例えば、適応性の、または特異的な免疫応答が存在しないか、検出することができないか、またはある特定のレベルを上回って検出することができない時期に投与される。トランスジーンに対する特異的免疫応答の存在または程度は、一般的に、前記細胞によって発現される受容体、例えば、CARもしくはトランスジェニックTCRの免疫原性、および/または対象が前記細胞に曝露された期間に関係する。例えば、一部の態様では、前記受容体に対する免疫応答、例えば、特異的な体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答は、前記受容体発現細胞に対する対象の最初の曝露の後、28日前、35日前、または42日前に検出されない。従って、一部の態様では、組換え受容体または細胞に対する免疫応答、適応性の、もしくは特異的な免疫応答、検出可能な免疫応答、および/または記憶応答が対象において発生する前に、連続用量は投与される。この点に関して、連続用量の細胞が対象において増殖および/または持続する能力は、事前用量または第1の用量と比べて後の時点で、連続用量が与えられる他の方法と比較して改善される。
【0189】
前記方法は、このような免疫応答またはその指標の存在もしくは非存在またはレベルを、例えば、第1の用量または連続用量の投与後、および連続用量または次の連続用量の投与前に検出することを伴ってもよい。
【0190】
一部の態様において、連続用量をいつ投与するか、および/または連続用量を投与するかどうかの決断は、対象が、このような免疫応答またはその検出可能な読み取り値、例えば、第1の用量の細胞、もしくは第1の用量の細胞によって発現される組換え受容体、例えば、CARに特異的な、検出可能な特異的な、もしくは適応性の宿主免疫応答を示すかどうか、ならびに/またはこのような応答が、ある特定のレベルを上回って検出されたかどうかに左右される。一部の態様において、このような応答が検出された場合、対象には連続用量が投与されない。
【0191】
一般的に、対象が、第1の用量の細胞によって発現される受容体、例えば、CARに対する特異的な、もしくは適応性の、例えば、体液性免疫応答も細胞性免疫応答も示していないか、またはこのような応答もしくはその指標を、検出可能なレベルで、もしくは許容されるレベルを上回って示していない時期に、連続用量は投与される。一部の局面において、連続用量が投与される時には、対象は、初回用量がさらに多い時と比較して低減した、第1の用量の細胞によって発現されるCARに対する体液性免疫応答または細胞性免疫応答を示す。
【0192】
一部の態様において、宿主免疫応答は体液性免疫応答であるか、または体液性免疫応答を含む。体液性免疫応答は、対象の血清、他の体液、および/または臓器もしくは組織の中にある、前記細胞またはそれによって発現される受容体に特異的な抗体の存在によって示されてもよい。一部の態様において、特定のアイソタイプのこのような抗体、例えば、IgMまたはIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4が存在する。一部の態様において、このような抗体はIgEを含む。
【0193】
一部の態様において、免疫応答は細胞性成分であるか、または細胞性成分を含む。細胞性応答は、T細胞受容体を介して、組換え受容体の1つもしくは複数のエピトープまたは細胞を特異的に認識する細胞、例えば、T細胞、例えば、ヘルパー細胞または細胞傷害性T細胞の存在によって示されてもよい。
【0194】
一部の態様において、免疫応答は一次免疫応答である。一部の局面において、免疫応答は記憶応答である。
【0195】
上述の任意の態様の一部において、検出可能な免疫応答とは、特定の抗原および細胞に対する特異的免疫応答を評価するための多数の公知の方法のうちのどの方法でも検出することができる量を指す。例えば、一部の態様において、特定のタイプの免疫応答は、前記細胞上に存在する抗原に特異的に結合する、および/または前記細胞上に存在する抗原を中和する抗体、例えば、組換え受容体、例えば、CARのエピトープに結合する抗体の存在を検出するために、対象に由来する血清に対して、ELISpot、ELISA、または細胞に基づく抗体検出方法を行うことによって、例えば、フローサイトメトリーによって検出することができる。このような一部のアッセイでは、検出される抗体のアイソタイプが決定され、応答のタイプ、および/または応答が記憶応答かどうかを示し得る。
【0196】
一部の態様において、特定の免疫応答は、組換え受容体中のエピトープに特異的に結合し、これに応答して細胞傷害性を誘導するCD8+T細胞を検出するための細胞傷害性T-リンパ球(CTL)アッセイ、および/または組換え受容体を発現する細胞、例えば、放射線照射済み細胞をスティミュレーター(stimulator)細胞として用いる混合リンパ球反応によって検出することができる。
【0197】
一部の局面において、検出可能な免疫応答は、対照試料、例えば、コーティングされていないウェル、または対照ペプチド、もしくは組換え受容体を発現しない細胞でコーティングされたウェルのレベル、および/または組換え受容体発現細胞を用いた処置前の対象に由来する処置前の血清もしくは血液試料に基づいて検出されたレベルを上回るか、または有意に上回る、このような方法によって検出された免疫応答である。
【0198】
一部の局面において、このような宿主免疫応答の存在もしくは非存在、および/またはその数量、程度、もしくは度合いは、例えば、第1の用量または連続用量の投与後に検出または測定される。
【0199】
体液性免疫応答は、結合アッセイ、イムノアッセイ、および細胞に基づくアッセイを含む、特定の抗原または細胞に特異的な抗体を検出するための多数の周知のアッセイのうちのどのアッセイでも検出することができる。前記アッセイには、抗体の特定の機能、例えば、抗原に結合した時に特定のエフェクター機能を行う能力の存在または非存在を評価するように設計されたアッセイ、例えば、中和抗体アッセイが含まれ得る。一部の態様では、細胞に基づくアッセイを用いて、例えば、対象に由来する処置前および処置後の細胞を、組換え受容体発現細胞(および対照細胞)とインキュベートし、抗原特異的結合および/または他のアウトカム、例えば、中和アウトカムを、例えば、フローサイトメトリーまたは酵素アッセイで検出することによって、体液性免疫応答のアウトカム、例えば、抗原特異的抗体、例えば、中和抗体が検出される。一部の態様では、組換え受容体、例えば、CAR、および公知の技法を用いてマッピングされたエピトープ、例えば、前記受容体の一部に相当する個々のペプチドを用いたエピトープに特異的な抗体を検出および定量するために、ELISAおよび/またはELISpotアッセイが用いられる。例えば、Jensen et al. Biol Blood Marrow Transplant. 2010 September; 16(9): 1245-1256を参照されたい。一部の態様において、検出された抗体のアイソタイプは、例えば、特定のアイソタイプ、例えば、ヒトアイソタイプに特異的な検出抗体を用いて評価される。
【0200】
前記細胞および/または受容体に対する細胞免疫応答または細胞に基づく免疫応答は、多数の周知の技法のうちのどの技法でも検出および/または測定することができる。このような技法には、投与された組換え受容体、例えば、CAR、および/または細胞の中にあるエピトープに特異的に結合し、これに応答して細胞傷害性を誘導するCD8+T細胞を検出するための細胞傷害性T-リンパ球(CTL)アッセイが含まれ得る。一部の態様において、前記アッセイは、混合リンパ球反応、例えば、レスポンダー(responder)細胞として、血液または他の臓器もしくは組織に由来するPBMCまたは他の宿主由来細胞と、スティミュレーター細胞として組換え受容体を発現するように誘導された細胞、例えば、放射線照射済みCAR発現T細胞を使用する混合リンパ球反応である。スティミュレーター細胞は一般的に自己由来であり、対象に投与される同じ細胞でもよく、放射線照射されてもよい。関心対象のトランスジーンを発現しない形質導入されていない細胞が、対照試料中で、スティミュレーター細胞の代わりに負の対照として用いられてもよい。同様に、処置前の時点または他の対象からのレスポンダー細胞試料が対照試料中に用いられてもよい。一部の局面において、このようなアッセイでは、宿主細胞が1つまたは複数のエフェクター機能、例えば、抗原特異的細胞溶解を行う能力を、例えば、投与された細胞の表面または投与された細胞の中に存在する抗原を特異的に認識し、細胞傷害応答を誘導する、対象に存在する細胞傷害性T細胞を検出するクロム放出アッセイを用いて評価する。一部の態様において、前記細胞の投与前および投与後に対象から末梢血細胞、例えば、PBMCが得られ、それぞれが、組換え受容体を発現するように改変された、一般的に放射線照射済みの自己由来T細胞を用いたアッセイ、例えば、細胞溶解アッセイにおいて用いられる。特異的溶解は、受容体特異的な細胞性免疫応答が存在することを示す。エピトープマッピングは、前記組換え受容体の一部に相当するペプチドのパネルを用いて行われてもよい。例えば、Riddell et al., Nature Medicine 2, 216-223 (1996); Lamers, Blood 2011 117: 72-82を参照されたい。抗原特異的T細胞を数え上げるためにHLA四量体結合アッセイが用いられてもよい。一部の局面において、トランスジーン特異的CD4+T細胞を検出するために、リンパ球増殖アッセイ(LPA)および/または分泌型サイトカインを評価するアッセイ、例えば、ELISAおよび/または細胞内染色、ならびにフローサイトメトリーによる評価が用いられる。
【0201】
一部の態様において、前記方法は、前記受容体に対する抗体、例えば、抗CAR抗体の誘導を阻止するか、または前記受容体に対する抗体、例えば、抗CAR抗体のレベルを低減する。例えば、連続用量が、第1の用量の投与に対して異なる時期に、例えば、後になって、例えば、再発後に投与される方法と比較して、抗受容体抗体、例えば、抗CAR抗体の抗体価、例えば、ELISAによって対象の血清中に測定されるような抗体価は連続用量の投与後に減少する。従って、一部の態様において、前記方法は、前記方法がなければ、投与された細胞の増殖を無くすか、または阻止する宿主免疫応答を阻止または低減することによって、投与された細胞に対する対象の曝露を増大させることによって効力を改善する。
【0202】
VI.疾患負荷
例えば、前記用量の1つまたは複数の投与は、一般的には、対象における疾患または状態の増殖または負荷を低減または阻止する。例えば、疾患または状態が腫瘍の場合、前記方法は、一般的には、腫瘍サイズ、容積、転移、骨髄中にある芽細胞のパーセント、もしくは分子的に検出可能な癌を低減する、および/または予後もしくは生存または腫瘍負荷に関連する他の症状を改善する。一部の態様において、連続用量の投与の時間は、第1の用量または事前用量の後の負荷の減少および/または再発に関連して決められる。
【0203】
疾患負荷は、対象における、または対象の臓器、組織、もしくは体液における、例えば、腫瘍の臓器もしくは組織または別の位置、例えば、転移を示す位置における疾患の細胞の総数を包含してもよい。例えば、腫瘍細胞は、ある特定の血液腫瘍の状況では血液中または骨髄中で検出および/または定量されてもよい。疾患負荷は、一部の態様では、腫瘍の質量、転移の数もしくは程度、および/または骨髄に存在する芽細胞のパーセントを含んでもよい。
【0204】
一部の態様において、対象は白血病を有する。疾患負荷の度合いは、血液または骨髄の中にある残存白血病を評価することによって決定することができる。一部の態様において、例えば、光学顕微鏡によって検出された時に、骨髄中に5%を超えるか、または5%に等しい芽細胞があれば、対象は形態学的疾患を示す。一部の態様において、骨髄中に5%未満の芽細胞があれば、対象は完全寛解または臨床寛解を示す。
【0205】
一部の態様において、対象は完全寛解を示す場合があるが、(光学顕微鏡法によって)形態学的に検出不可能な残存白血病細胞の小さな割合が存在する。対象が骨髄中に5%未満の芽細胞を示し、分子的に検出可能な癌を示すのであれば、対象は微小残存病変(MRD)を示すと言われる。一部の態様において、分子的に検出可能な癌は、少数の細胞の高感度検出を可能にする様々な分子的技法のうちのどの技法でも評価することができる。一部の局面において、このような技法には、固有のIg/T細胞受容体遺伝子再編成、または染色体転位置によって生じた融合転写物を測定することができるPCRアッセイが含まれる。一部の態様では、フローサイトメトリーを用いて、白血病特異的免疫表現型に基づいて癌細胞を特定することができる。一部の態様では、癌の分子的検出では、100,000個の正常細胞に1個という少ない白血病細胞を検出することができる。一部の態様では、例えば、PCRまたはフローサイトメトリーによって、100,000個の細胞に少なくとも1個の、または1個より多くの白血病細胞が検出されれば、対象は、分子的に検出可能なMRDを示している。一部の態様では、場合によっては、PCRまたはフローサイトメトリー法を用いて対象において白血病細胞を検出することができないように、対象の疾患負荷は分子的に検出不可能であるか、またはMRD-である。
【0206】
一部の態様において、前記方法および/または第1の用量の投与は、第1の用量の投与直前の疾患負荷と比較して疾患負荷を減少させる。一部の局面において、第1の用量の投与は、疾患負荷、例えば、腫瘍負荷を低減させる。一部の態様において、連続用量は、疾患負荷を低減させる、例えば、疾患負荷をさらに低減させる。
【0207】
一部の態様において、第1の用量は、対象における疾患または状態の負荷、例えば、腫瘍負荷を低減するのに有効な量で前記細胞を含有する。一部の態様において、例えば、疾患または状態が腫瘍である場合、第1の用量の投与は、腫瘍を減量させるものである。本明細書で使用する、「減量用量」とは、対象における疾患または状態の負荷、例えば、腫瘍負荷を少なくとも部分的に低減するのに有効な用量を指す。一部の局面において、減量用量は疾患または状態を完全に根絶しなくてもよい。
【0208】
一部の局面において、第1の用量および/または連続用量の投与は疾患負荷の増加を阻止する場合があり、これは、疾患負荷が変化しないことで証明される場合がある。
【0209】
一部の局面において、第1の用量の投与後に疾患または状態は持続する、および/または第1の用量の投与は対象における疾患もしくは状態を根絶するのに十分でない。
【0210】
一部の局面において、連続用量の投与は、第1の用量の直前または連続用量の直前の疾患負荷と比較して疾患負荷を低減する。一部の局面において、例えば、再発の状況では、連続用量の投与は、第1の用量の投与後の疾患負荷のピークレベルと比較して疾患負荷の低減をもたらす。
【0211】
一部の態様において、前記方法は、代替の投与計画、例えば、対象に単一用量、例えば、単一高用量の細胞が与えられる代替の投与計画、例えば、単一用量の代わりに、提供される方法において、第1の用量および連続用量において投与される細胞の総数が一括して投与されるか、あるいは複数の高用量、または約14日より短いか、もしくは約28日より長く互いに間隔を空けた複数の用量が投与される代替の投与計画を用いた同等の方法を用いて観察される低減と比較して大きな程度までおよび/または長い期間にわたって、疾患または状態の負荷、例えば、腫瘍細胞の数、腫瘍のサイズ、患者生存または無事象生存の持続期間を低減する。一部の態様において、連続用量の後に、疾患負荷は、第1の用量が与えられたことがない対象に連続用量を投与することによって生じる低減と比較して大きな度合いで、または長い期間にわたって、低減する。
【0212】
一部の態様において、対象における疾患または状態の負荷は検出、評価、または測定される。疾患負荷は、一部の局面では、対象における、または対象の臓器、組織、もしくは体液、例えば、血液もしくは血清における疾患細胞または疾患関連細胞、例えば、腫瘍細胞の総数を検出することによって検出されてもよい。一部の態様において、疾患負荷、例えば、腫瘍負荷は、固形腫瘍の質量および/または転移の数もしくは程度を測定することによって評価される。一部の局面において、対象の生存、ある特定の期間内での生存、生存の度合い、無事象生存もしくは無症状生存(symptom-free survival)または無再発生存の存在もしくは持続期間が評価される。一部の態様において、疾患または状態の任意の症状が評価される。一部の態様において、疾患または状態の負荷の判断基準が指定される。
【0213】
一部の局面において、第1の用量の投与前に、第1の用量の投与後であるが連続用量の投与前に、および/または連続用量の投与後に、疾患負荷が測定または検出される。複数の連続用量の状況では、疾患負荷は、一部の態様では、任意の連続用量の前もしくは後に、または連続用量の投与の間の期間において測定されてもよい。
【0214】
一部の態様において、第1の用量の投与後、負荷は少なくとも、10パーセント、20パーセント、30パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、70パーセント、90パーセント、もしくは100パーセント、または約10パーセント、約20パーセント、約30パーセント、約40パーセント、約50パーセント、約60パーセント、約70パーセント、約90パーセント、もしくは約100パーセント減少する。一部の局面において、連続用量の投与は、疾患負荷、例えば、腫瘍負荷のさらなる低減、例えば、連続用量の投与直前と比較して負荷の10パーセント、20パーセント、30パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、70パーセント、90パーセント、もしくは100パーセント、または約10パーセント、約20パーセント、約30パーセント、約40パーセント、約50パーセント、約60パーセント、約70パーセント、約90パーセント、もしくは約100パーセントの減少、あるいは第1の用量の直前と比較して全体的な減少をもたらす。一部の態様において、連続用量の後に、疾患負荷、腫瘍サイズ、腫瘍体積、腫瘍質量、および/または腫瘍量もしくは腫瘍容積は、第1の用量または連続用量の投与直前と比較して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、もしくはそれより多く、または少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、もしくはそれより多く、低減する。
【0215】
一部の態様において、前記方法による疾患負荷の低減は、例えば、第1の用量または連続用量を投与して、例えば、開始して1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後に、または3ヶ月を超えた後に評価された時の、形態学的な完全寛解の誘導を含む。一部の局面において、例えば、マルチパラメトリックフローサイトメトリー(multiparametric flow cytometry)によって評価された時の、微小残存病変アッセイは陰性であるか、または微小残存病変のレベルは約0.3%未満、約0.2%未満、約0.1%未満、もしくは約0.05%未満である。
【0216】
一部の態様において、対象の無事象生存率または全生存率は、前記方法によって、他の方法と比較して改善される。例えば、一部の態様において、第1の用量の6ヶ月後の、前記方法で処置した対象の無事象生存率または確率は、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、または約95%超である。一部の局面において、全生存率は、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、または約95%超である。一部の態様において、前記方法で処置した対象は、無事象生存、無再発生存、または少なくとも6ヶ月、または少なくとも1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、もしくは10年までの生存を示す。一部の態様において、例えば、6ヶ月を超える、もしくは約6ヶ月を超える、または少なくとも1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、もしくは10年の腫瘍増殖停止時間(time to progression)など腫瘍増殖停止時間が改善される。
【0217】
一部の態様において、前記方法による処置後に再発確率は他の方法と比較して低下する。例えば、一部の態様において、第1の用量の6ヶ月後の再発確率は、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10%未満である。
【0218】
一部の局面において、第1の用量の後の疾患負荷の低減、例えば、腫瘍の減量は、連続用量後の毒性または毒性アウトカムを低減する。腫瘍負荷の低減後の毒性アウトカムは本明細書に記載のように評価することができる。
【0219】
一部の局面において、本方法に起因する疾患負荷の低減、例えば、腫瘍の減量は対象における前記細胞の持続性を改善する。例えば、一部の局面において、連続用量において投与された前記細胞が、第1の用量の細胞が投与されたことのない対象に連続用量を投与するなどの他の投与計画によって投与された細胞より長く持続するように、第1の用量の投与は疾患負荷、例えば、腫瘍負荷を低減する。
【0220】
VII.細胞曝露および持続性
一部の態様において、前記用量の量および/またはそのタイミングは、前記細胞への対象の曝露を促進するように、例えば、前記細胞の増殖および/またはある期間にわたる持続性を促進することによって前記細胞への対象の曝露を促進するように設計される。
【0221】
一部の態様において、提供される方法は、投与された細胞への対象の曝露を増大させる(例えば、細胞数を増やすか、もしくはある期間にわたる持続期間を延ばす)、ならびに/または養子細胞療法における効力および治療アウトカムを改善する。一部の局面において、前記方法は、組換え受容体発現細胞、例えば、CAR発現細胞への曝露の程度を大きく、および/または長期間にすることで、他の方法と比較して処置アウトカムが改善される点で有利である。このようなアウトカムには、重度の腫瘍負荷を有する個体であっても、患者が生存および寛解することが含まれることがある。
【0222】
一部の態様において、第1の用量、例えば、第1の低用量の投与は、初回高用量の前記細胞の投与と比較して、対象における前記細胞に対する曝露の最大値、合計、および/または持続期間を増大させる。一部の局面では、高疾患負荷(従って、多量の抗原)の状況における第1の用量の投与は、前記細胞の増殖および/または持続性を阻止する可能性のある枯渇の原因となり得る、同じ状況での高用量の投与と比較して効力を強化する。一部の態様において、高疾患負荷の状況における第1の用量の投与は、他の方法、例えば、初回高用量が投与される方法と比較して、移入された細胞の枯渇を低減し、それによって臨床的有効性を増大させる。
【0223】
一部の態様において、第1の用量の後および/または連続用量の後に、対象における組換え受容体発現細胞(例えば、CAR発現細胞)の存在および/または量が検出される。一部の局面において、対象の血液もしくは血清または臓器もしくは組織(例えば、疾患部位)における組換え受容体発現細胞(例えば、CAR発現細胞)の量を評価するために定量PCR(qPCR)が用いられる。一部の局面において、持続性は、DNA 1マイクログラムあたりの、受容体、例えば、CARをコードするDNAもしくはプラスミドのコピーとして、あるいは試料、例えば、血液もしくは血清1マイクロリットルあたりの受容体発現細胞、例えば、CAR発現細胞の数として、または試料1マイクロリットルあたりの末梢血単核球(PBMC)もしくは白血球もしくはT細胞の総数あたりの受容体発現細胞、例えば、CAR発現細胞の数として定量される。
【0224】
一部の態様において、前記細胞は、第1の用量を投与して4日後、14日後、15日後、27日後、もしくは28日後、または少なくとも4日後、14日後、15日後、27日後、もしくは28日後に対象において検出される。一部の局面において、前記細胞は、第1の用量または連続用量を投与して2週間後、4週間後、もしくは6週間後または少なくとも2週間後、4週間後、もしくは6週間後、あるいは3ヶ月後、6ヶ月後、または12ヶ月後、18ヶ月後、または24ヶ月後、または30ヶ月後、または36ヶ月後、あるいは1年後、2年後、3年後、4年後、5年後、またはこれより後で検出される。
【0225】
一部の態様において、連続用量の後および/または第1の用量の投与後の、前記方法による対象における受容体発現細胞、例えば、CAR発現細胞の持続性は、代替の方法、例えば、単一用量、例えば、第1の用量より多くの数の細胞を含有する単一用量が投与されること、単一用量として一括用量(collective dose)の前記細胞が投与されること、対象に第1の用量が与えられたことがなく連続用量の前記細胞が投与されること、および/または特定の時間枠外の時間に、例えば、特定の時間より後に、もしくは受容体、例えば、CARに対して対象が免疫応答を開始した後に連続用量が投与されることを伴う方法によって成し遂げられるものと比較して大きい。
【0226】
一部の態様において、連続用量の投与後の対象における組換え受容体発現細胞、例えば、CAR発現細胞の持続性および/または増殖および/または存在は、代替の投与計画を用いる方法、例えば、対象に第1の用量の細胞が投与されたことがなく連続用量の前記細胞が投与されることを伴う方法、または単一用量で第1の用量および連続用量において一括して投与される前記細胞が対象に投与される方法により得られたものと比較して、大きい。
【0227】
曝露、例えば、増殖および/または持続性を示す細胞の数は、対象が曝露される前記細胞の最大数、ある特定の数もしくはパーセントを上回る検出可能な細胞の持続期間、ある期間にわたる細胞の数の曲線下面積、ならびに/またはその組み合わせおよびその指標で述べられてもよい。このようなアウトカムは、公知の方法、例えば、特定の試料、例えば、血液もしくは血清における核酸もしくはDNAの全量と比較して、組換え受容体をコードする核酸のコピー数を検出するqPCR、および/または受容体発現細胞を、一般的に、その受容体に特異的な抗体を用いて検出するフローサイトメトリーアッセイを用いて評価されてもよい。細胞に基づくアッセイも、機能細胞、例えば、疾患もしくは状態の細胞、または受容体によって認識される抗原を発現する細胞に結合することができる、および/あるいはこれを中和ことができる、および/あるいはこれに対する応答、例えば、細胞傷害応答を誘導することができる細胞の数またはパーセントを検出するのに用いられてもよい。
【0228】
一部の局面において、前記細胞に対する対象の曝露の増加は、前記細胞の増殖の増加を含む。一部の態様において、受容体(例えば、CAR)発現細胞は、第1の用量の投与後および/または連続用量の投与後に増殖する。一部の局面において、前記方法は、他の方法、例えば、単一用量としての前記細胞が投与されること、さらに多い第1の用量が投与されること、第1の用量が投与されることなく連続用量が投与されることを伴う方法、および/または、例えば、連続用量の投与前に免疫応答が発生するように、特定の時間枠もしくは時点の前もしくは後に連続用量が投与される方法と比較して前記細胞の増殖を増やす。
【0229】
一部の局面において、前記方法は、例えば、フローサイトメトリーによって測定された時に、投与された細胞の多量のインビボ増殖をもたらす。一部の局面において、前記細胞の高いピーク割合が検出される。例えば、一部の態様において、第1の投与後または連続投与後のピークまたは最大レベルにおいて、対象の血液もしくは疾患部位、またはその白血球画分、例えば、PBMC画分もしくはT細胞画分における、前記細胞の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%は、前記組換え受容体、例えば、CARを発現する。
【0230】
一部の態様において、前記方法は、対象の血液もしくは血清もしくは他の体液または臓器もしくは組織において、DNA 1マイクログラムあたり少なくとも100、500、1000、1500、2000、5000、10,000、もしくは15,000コピーの最大濃度の、前記受容体、例えば、CARをコードする核酸、または末梢血単核球(PBMC)の総数、単核細胞の総数、T細胞の総数、もしくはマイクロリットルの総数あたり少なくとも0.1個、0.2個、0.3個、0.4個、0.5個、0.6個、0.7個、0.8個、もしくは0.9個の受容体発現細胞、例えば、CAR発現細胞をもたらす。一部の態様において、前記受容体発現細胞は、対象の血液中に、総PBMCの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、または60%として検出される、および/あるいは第1の投与または連続投与の後少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、24週間、36週間、48週間、または52週間にわたって、あるいはこのような投与の後1年、2年、3年、4年、もしくは5年、またはこれより長く、このようなレベルで検出される。
【0231】
一部の局面において、前記方法は、例えば、対象の血清中にある、DNA 1マイクログラムあたりの前記組換え受容体、例えば、CARをコードする核酸のコピーの少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも10倍、または少なくとも20倍の増加をもたらす。
【0232】
一部の態様において、前記受容体発現細胞は、第1の用量を投与して、または連続用量を投与して少なくとも、20日後、21日後、22日後、23日後、24日後、25日後、26日後、27日後、28日後、29日後、30日後、31日後、32日後、33日後、34日後、35日後、36日後、37日後、38日後、39日後、40日後、41日後、42日後、43日後、44日後、45日後、46日後、47日後、48日後、49日後、50日後、51日後、52日後、53日後、54日後、55日後、56日後、57日後、58日後、59日後、もしくは60日後、またはこれより後に、第1の用量または連続用量を投与して少なくとも、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、9週間後、10週間後、11週間後、12週間後、13週間後、14週間後、15週間後、16週間後、17週間後、18週間後、19週間後、20週間後、21週間後、22週間後、23週間後、もしくは24週間後、またはこれより後に、あるいは約2週間後、約3週間後、約4週間後、約5週間後、約6週間後、約7週間後、約8週間後、約9週間後、約10週間後、約11週間後、約12週間後、約13週間後、約14週間後、約15週間後、約16週間後、約17週間後、約18週間後、約19週間後、約20週間後、約21週間後、約22週間後、約23週間後、もしくは約24週間後、またはこれより後に、例えば、特定の方法、例えば、qPCRまたはフローサイトメトリーに基づく検出方法によって、対象の血液中または血清中で検出することができる。
【0233】
一部の局面において、対象もしくは流体、組織、またはその区画において、例えば、血液中、例えば、末梢血中に、またはその疾患部位において、少なくとも約1x102個、少なくとも約1x103個、少なくとも約1x104個、少なくとも約1x105個、もしくは少なくとも約1x106個、もしくは少なくとも約5x106個、もしくは少なくとも約1x107個、もしくは少なくとも約5x107個、もしくは少なくとも約1x108個の組換え受容体発現細胞、例えば、CAR発現細胞、および/あるいは1マイクロリットルあたり少なくとも10個、25個、50個、100個、200個、300個、400個、もしくは500、または1000個の受容体発現細胞、例えば、1マイクロリットルあたり少なくとも10個が検出可能であるか、または存在する。一部の態様において、このような数または濃度の細胞は、第1の用量の投与後または連続用量の投与後少なくとも約20日間、少なくとも約40日間、もしくは少なくとも約60日間、または少なくとも約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間、約7ヶ月間、約8ヶ月間、約9ヶ月間、約10ヶ月間、約11ヶ月間、もしくは約12ヶ月間、または少なくとも2年もしくは3年にわたって対象において検出可能である。このような細胞数は、フローサイトメトリーに基づく方法または定量PCRに基づく方法と、公知の方法を用いた総細胞数への外挿によって検出されてもよい。例えば、Brentjens et al., Sci Transl Med. 2013 5(177), Park et al, Molecular Therapy 15(4):825-833 (2007), Savoldo et al., JCI 121(5):1822-1826 (2011), Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4):e61338, Davila et al., Oncoimmunology 1(9):1577-1583 (2012), Lamers, Blood 2011 117:72-82, Jensen et al. Biol Blood Marrow Transplant 2010 September; 16(9): 1245-1256, Brentjens et al., Blood 2011 118(18):4817-4828を参照されたい。
【0234】
一部の局面において、前記細胞を投与して、例えば、第1の用量または連続用量を投与して約1週間後、約2週間後、約3週間後、約4週間後、約5週間後、もしくは少なくとも約6週間後、または少なくとも約2ヶ月後、約3ヶ月後、約4ヶ月後、約5ヶ月後、約6ヶ月後、約7ヶ月後、約8ヶ月後、約9ヶ月後、約10ヶ月後、約11ヶ月後、もしくは約12ヶ月後、または少なくとも2年後もしくは3年後に、免疫組織化学、PCR、および/またはフローサイトメトリーによって測定された時の、100個の細胞あたりの、例えば、末梢血もしくは骨髄または他の区画にある100個の細胞あたりの、前記組換え受容体をコードする核酸のコピー数、例えば、ベクターコピー数は、少なくとも0.01、少なくとも0.1、少なくとも1、または少なくとも10である。一部の態様において、第1の用量または連続用量の受容体発現細胞、例えば、CAR発現細胞を投与して約1週間後、約2週間後、約3週間後、または少なくとも約4週間後、あるいはこのような投与の少なくとも2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後、7ヶ月後、8ヶ月後、9ヶ月後、10ヶ月後、11ヶ月後、もしくは12ヶ月後、または少なくとも2年後もしくは3年後の時期に、ゲノムDNA 1マイクログラムあたりの前記受容体、例えば、CARを発現するベクターのコピー数は少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも5000、または少なくとも10,000、または少なくとも15,000、または少なくとも20,000である。
【0235】
一部の局面において、前記細胞によって発現される受容体、例えば、CARは、前記細胞を投与して、例えば、第1の用量または連続用量もしくはその後の連続用量の投与を開始して、少なくとも約3ヶ月後、少なくとも約6ヶ月後、少なくとも約12ヶ月後、少なくとも約1年後、少なくとも約2年後、少なくとも約3年後、または3年を超えた時期に、対象、その血液、および/またはその疾患部位において定量PCR(qPCR)またはフローサイトメトリーによって検出することができる。
【0236】
一部の態様において、第1の用量の投与後、ある期間にわたる、対象の流体、組織、または臓器、例えば、血液における受容体(例えば、CAR)発現細胞の濃度の曲線下面積(AUC)は、単一用量で第1の用量および連続用量の細胞が対象に投与される代替の投与計画により得られたものと比較して、大きい。
【0237】
一部の局面において、連続用量の投与後、ある期間にわたる、対象の流体、組織、または臓器、例えば、血液における受容体(例えば、CAR)発現細胞の濃度の曲線下面積(AUC)は、第1の用量が投与されずに連続用量が対象に投与されるかまたは単一用量で第1の用量および第2の用量の細胞が投与される代替の投与計画により得られたものと比較して、大きい。
【0238】
VIII.前記細胞が発現する組換え受容体
前記細胞は通常、抗原受容体、例えば、機能的な非TCR抗原受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)、および他の抗原結合受容体、例えば、トランスジェニックT細胞受容体(TCR)を含む組換え受容体を発現する。前記受容体の中には他のキメラ受容体もある。
【0239】
CARを含む例示的な抗原受容体ならびにこのような受容体を操作するための方法およびこのような受容体を細胞に導入するための方法には、例えば、国際特許出願公開番号WO200014257、WO2013126726、WO2012/129514、WO2014031687、WO2013/166321、WO2013/071154、WO2013/123061、米国特許出願公開第US2002131960号、US2013287748、US20130149337、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号、同第8,339,645号、同第8,398,282号、同第7,446,179号、同第6,410,319号、同第7,070,995号、同第7,265,209号、同第7,354,762号、同第7,446,191号、同第8,324,353号、および同第8,479,118号、ならびに欧州特許出願第EP2537416号に記載のもの、ならびに/またはSadelain et al., Cancer Discov. 2013 April; 3(4): 388-398; Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338; Turtle et al., Curr. Opin. Immunol., 2012 October; 24(5): 633-39; Wu et al., Cancer, 2012 March 18(2): 160-75に記載のものが含まれる。一部の局面において、前記抗原受容体には、米国特許第7,446,190号に記載のCARおよび国際特許出願公開番号WO/2014055668A1に記載のCARが含まれる。CARの例には、上述の任意の刊行物、例えば、WO2014031687、US8,339,645、US7,446,179、US2013/0149337、米国特許第7,446,190号、米国特許第8,389,282号、Kochenderfer et al., 2013, Nature Reviews Clinical Oncology, 10, 267-276 (2013); Wang et al. (2012) J. Immunother. 35(9): 689-701、およびBrentjens et al., Sci Transl Med. 2013 5(177)に開示されるCARが含まれる。WO2014031687、US8,339,645、US7,446,179、US2013/0149337、米国特許第7,446,190号、および米国特許第8,389,282号も参照されたい。
【0240】
キメラ受容体の中にはキメラ抗原受容体(CAR)がある。キメラ受容体、例えば、CARは、一般的に、細胞外抗原結合ドメイン、例えば、抗体分子の一部、一般的に、抗体の可変重(VH)鎖領域および/または可変軽(VL)鎖領域、例えば、scFv抗体断片を含む。
【0241】
一部の態様において、組換え受容体、例えば、CARの抗体部分は、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部またはその変種もしくは改変されたバージョン、例えば、ヒンジ領域、例えば、IgG4ヒンジ領域、および/もしくはCH1/CLおよび/もしくはFc領域でもよく、それを含んでもよいスペーサーをさらに含む。一部の態様において、定常領域または一部はヒトIgG、例えば、IgG4またはIgG1の定常領域または一部である。一部の局面において、定常領域の一部は、抗原認識成分、例えば、scFvと、膜貫通ドメインとの間にあるスペーサー領域として役立つ。スペーサーは、スペーサーが存在しない場合と比較して抗原結合後の前記細胞の応答性を高める長さのスペーサーでよい。一部の例では、スペーサーは長さが12アミノ酸もしくは約12アミノ酸であるか、または長さが12アミノ酸以下である。例示的なスペーサーには、少なくとも約10~229アミノ酸、約10~200アミノ酸、約10~175アミノ酸、約10~150アミノ酸、約10~125アミノ酸、約10~100アミノ酸、約10~75アミノ酸、約10~50アミノ酸、約10~40アミノ酸、約10~30アミノ酸、約10~20アミノ酸、または約10~15アミノ酸を有し、列挙された任意の範囲の端点間の任意の整数を含むスペーサーが含まれる。一部の態様において、スペーサー領域には、約12アミノ酸もしくはこれより少ないアミノ酸、約119アミノ酸もしくはこれより少ないアミノ酸、または約229アミノ酸もしくはこれより少ないアミノ酸がある。例示的なスペーサーには、IgG4ヒンジのみ、CH2およびCH3ドメインと連結したIgG4ヒンジ、またはCH3ドメインと連結したIgG4ヒンジが含まれる。例示的なスペーサーには、Hudecek et al. (2013) Clin. Cancer Res., 19:3153、国際特許出願公開番号WO2014031687、米国特許第8,822,647号、または米国特許出願公開第US2014/0271635号に記載のスペーサーが含まれるが、これに限定されない。
【0242】
一部の態様において、定常領域または一部は、ヒトIgG、例えば、IgG4またはIgG1の定常領域または一部である。一部の態様において、スペーサーは、配列
(SEQ ID NO:1に示した)を有し、SEQ ID NO:2に示した配列によってコードされる。一部の態様において、スペーサーは、SEQ ID NO:3に示した配列を有する。一部の態様において、スペーサーは、SEQ ID NO:4に示した配列を有する。一部の態様において、定常領域または一部はIgDの定常領域または一部である。一部の態様において、スペーサーは、SEQ ID NO:5に示した配列を有する。一部の態様において、スペーサーは、SEQ ID NO:1、3、4、または5のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはこれより多い配列同一性を示すアミノ酸配列を有する。
【0243】
この抗原認識ドメインは、一般的に、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分、例えば、CARの場合は抗原受容体複合体、例えば、TCR複合体を通じた活性化、および/または別の細胞表面受容体を介したシグナルを模倣するシグナル伝達成分に連結される。従って、一部の態様において、抗原結合成分(例えば、抗体)は1つまたは複数の膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインに連結される。一部の態様において、膜貫通ドメインは細胞外ドメインに融合される。一態様において、前記受容体、例えば、CARにおいて前記ドメインの1つと天然で結合している天然膜貫通ドメインが用いられる。場合によっては、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小にするために、このようなドメインと、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインとの結合を避けるように選択されるか、またはアミノ酸置換によって改変される。
【0244】
膜貫通ドメインは、一部の態様では、天然供給源または合成供給源のいずれかに由来する。供給源が天然の場合、前記ドメインは、一部の局面では、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域は、T細胞受容体のα鎖、β鎖、もしくはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154に由来する膜貫通領域を含む(すなわち、少なくとも、その膜貫通領域を含む)、および/またはその機能的変種を含有する膜貫通領域、例えば、その構造特性、例えば、膜貫通特性のかなりの部分を保持している膜貫通領域を含む。一部の態様において、膜貫通ドメインは、CD4、CD28、もしくはCD8、例えば、CD8αに由来する膜貫通ドメイン、またはその機能的変種である。または、膜貫通ドメインは一部の態様では合成である。一部の局面において、合成膜貫通ドメインは、主に疎水性の残基、例えば、ロイシンおよびバリンを含む。一部の局面において、フェニルアラニン、トリプトファン、およびバリンのトリプレットが合成膜貫通ドメインの各末端に見られる。一部の態様において、連結は、リンカー、スペーサー、および/または膜貫通ドメインによるものである。
【0245】
細胞内シグナル伝達ドメインの中には、天然抗原受容体を介したシグナル、このような受容体と補助刺激受容体の組み合わせを介したシグナル、および/または補助刺激受容体だけを介したシグナルを模倣するか、またはこれに似せる細胞内シグナル伝達ドメインがある。一部の態様において、短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカー、例えば、長さが2~10アミノ酸のリンカー、例えば、グリシンおよびセリン、例えば、グリシン-セリンダブレット(doublet)を含有するリンカーが、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間に存在し、連結を形成する。
【0246】
前記受容体、例えば、CARは、一般的には、少なくとも1種類の細胞内シグナル伝達成分を含む。一部の態様において、前記受容体は、TCR複合体の細胞内成分、例えば、T細胞活性化および細胞傷害性を媒介するTCR CD3鎖、例えば、CD3ζ鎖を含む。従って、一部の局面において、抗原結合部分は1つまたは複数の細胞シグナル伝達モジュールに連結される。一部の態様において、細胞シグナル伝達モジュールには、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または他のCD膜貫通ドメインが含まれる。一部の態様において、前記受容体、例えば、CARは、1種または複数種のさらなる分子、例えば、Fc受容体γ、CD8、CD4、CD25、またはCD16の一部をさらに含む。例えば、一部の局面において、CARまたは他のキメラ受容体には、CD3-ゼータ(CD3-ζ)またはFc受容体γと、CD8、CD4、CD25、またはCD16とのキメラ分子が含まれる。
【0247】
一部の態様において、CARまたは他のキメラ受容体が連結されると、前記受容体の細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫細胞、例えば、CARを発現するように操作されたT細胞の正常なエフェクター機能または応答の少なくとも1つを活性化する。例えば、ある状況では、CARは、T細胞の機能、例えば、細胞溶解活性またはTヘルパー活性、例えば、サイトカインまたは他の因子の分泌を誘導する。一部の態様において、抗原受容体成分または補助刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分は、例えば、エフェクター機能シグナルを伝達するのであれば、インタクトな免疫賦活性鎖の代わりに用いられる。一部の態様において、細胞内シグナル伝達ドメインはT細胞受容体(TCR)の細胞質配列を含み、一部の局面では、天然の状況では、このような受容体と協調して、抗原受容体結合後にシグナル伝達を開始するように働く補助受容体の細胞質配列も含む。
【0248】
天然TCRの状況では、完全活性化には、一般的に、TCRを介したシグナル伝達だけでなく補助刺激シグナルも必要とされる。従って、一部の態様において、完全活性化を促進するには、二次シグナルまたは補助刺激シグナルを発生させるための成分もCARに含まれる。他の態様において、CARは、補助刺激シグナルを発生させるための成分を含まない。一部の局面において、さらなるCARが同じ細胞において発現され、二次シグナルまたは補助刺激シグナルを発生させるための成分を提供する。
【0249】
T細胞活性化は、一部の局面では、2種類の細胞質シグナル伝達配列:TCRを介して抗原依存的一次活性化を開始する細胞質シグナル伝達配列(一次細胞質シグナル伝達配列)、および抗原非依存的に二次シグナルまたは補助刺激シグナルを供給するように働く細胞質シグナル伝達配列(二次細胞質シグナル伝達配列)によって媒介されると説明される。一部の局面において、CARは、このようなシグナル伝達成分の一方または両方を含む。
【0250】
一部の局面において、CARは、TCR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列を含む。刺激するように働く一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含有してもよい。ITAMを含有する一次細胞質シグナル伝達配列の例には、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CDS、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来する一次細胞質シグナル伝達配列が含まれる。一部の態様において、CARにある細胞質シグナル伝達分子は、CD3ζに由来する細胞質シグナル伝達ドメイン、その一部、または配列を含有する。
【0251】
一部の態様において、CARは、補助刺激受容体、例えば、CD28、4-1BB、OX40、DAP10、およびICOSのシグナル伝達ドメインおよび/または膜貫通部分を含む。一部の局面において、同じCARが活性化成分と補助刺激成分を両方とも含む。
【0252】
一部の態様において、あるCARには活性化ドメインが含まれるのに対して、別の抗原を認識する別のCARによって補助刺激成分が提供される。一部の態様において、CARは活性化CARまたは刺激CAR、補助刺激CARを含み、両方とも同じ細胞上に発現される(WO2014/055668を参照されたい)。一部の局面において、前記細胞は、1種または複数種の刺激CARもしくは活性化CARおよび/または補助刺激CARを含む。一部の態様において、前記細胞は、阻害CAR(iCAR、Fedorov et al., Sci. Transl. Medicine, 5(215)(December, 2013)を参照されたい)、例えば、疾患もしくは状態に関連するおよび/または疾患もしくは状態に特異的な抗原以外の抗原を認識するCARをさらに含み、ここで、疾患標的化CARを通じて送達された活性化シグナルは、例えば、オフターゲット効果を小さくするための阻害性CARとそのリガンドとの結合によって、減弱または阻害される。
【0253】
一部の態様において、組換え受容体、例えば、CARの細胞内シグナル伝達成分は、CD3ζ細胞内ドメインと補助刺激シグナル伝達領域を含む。ある特定の態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3(例えば、CD3-ζ)細胞内ドメインと連結した、CD28膜貫通ドメインおよびシグナル伝達ドメインを含む。一部の態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ細胞内ドメインと連結した、キメラCD28および/またはCD137(4-1BB、TNFRSF9)補助刺激ドメインを含む。
【0254】
一部の態様において、CARは、細胞質部分に、1種または複数種の、例えば、2種類以上の補助刺激ドメインおよび活性化ドメイン、例えば、一次活性化ドメインを含む。例示的なCARには、CD3-ζ、CD28、および4-1BBの細胞内成分が含まれる。
【0255】
一部の態様において、CARまたは他の抗原受容体は、受容体、例えば、切断型バージョンの細胞表面受容体、例えば、切断型EGFR(tEGFR)を発現させるための細胞の形質導入または操作を確認するために用いられ得るマーカー、例えば、細胞表面マーカーをさらに含む。一部の局面において、マーカーは、CD34、NGFR、または上皮増殖因子受容体の全てまたは一部(例えば、切断型)(例えば、tEGFR)を含む。一部の態様において、マーカーをコードする核酸は、リンカー配列、例えば、切断可能なリンカー配列、例えば、T2Aをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結される。例えば、マーカー、任意で、リンカー配列は、公開された特許出願番号WO2014031687に開示されるような任意のものでよい。例えば、マーカーは、任意で、リンカー配列、例えば、T2A切断可能なリンカー配列に連結された切断型EGFR(tEGFR)でもよい。切断型EGFR(例えば、tEGFR)の例示的なポリペプチドは、SEQ ID NO:15に示したアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:15と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはこれより多い配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。例示的なT2Aリンカー配列は、SEQ ID NO:14に示したアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはこれより多い配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
【0256】
一部の態様において、マーカーは、T細胞上に天然で見出されないか、もしくはT細胞の表面に天然で見出されない分子、例えば、細胞表面タンパク質、またはその一部である。
【0257】
一部の態様において、前記分子は、非自己分子、例えば、非自己タンパク質、すなわち、前記細胞が養子移入される宿主の免疫系が「自己」と認識しない分子である。
【0258】
一部の態様において、マーカーは治療機能を果たさない、および/または遺伝子操作するための、例えば、首尾良く操作された細胞を選択するためのマーカーとして使用する以外の効果を生じない。他の態様において、マーカーは治療用分子でもよく、何らかの望ましい効果を別の方法で発揮する分子、例えば、細胞がインビボで遭遇するリガンド、例えば、養子移入時に前記細胞の応答を強める、および/または弱めるための、ならびにリガンドに遭遇するための補助刺激分子または免疫チェックポイント分子でもよい。
【0259】
場合によっては、CARは、第一世代CAR、第二世代CAR、および/または第三世代CARと呼ばれる。一部の局面において、第一世代CARは、抗原が結合した時に、CD3鎖によって誘導されるシグナルしか生じないCARである。一部の局面において、第二世代CARは、このようなシグナルと補助刺激シグナルを生じるCAR、例えば、CD28またはCD137などの補助刺激受容体に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARである。一部の局面において、第三世代CARは、異なる補助刺激受容体の複数の補助刺激ドメインを含むCARである。
【0260】
一部の態様において、キメラ抗原受容体は、抗体または抗体断片を含有する細胞外部分を含む。一部の局面において、キメラ抗原受容体は、抗体または断片を含有する細胞外部分と、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の態様において、抗体または断片はscFvを含み、細胞内ドメインはITAMを含有する。一部の局面において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖のζ鎖のシグナル伝達ドメインを含む。一部の態様において、キメラ抗原受容体は、細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインを連結する膜貫通ドメインを含む。一部の局面において、膜貫通ドメインはCD28の膜貫通部分を含有する。一部の態様において、キメラ抗原受容体はT細胞補助刺激分子の細胞内ドメインを含有する。細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインは直接的または間接的に連結することができる。一部の態様において、細胞外ドメインおよび膜貫通は、スペーサー、例えば、本明細書に記載の任意のスペーサーによって連結される。一部の態様において、前記受容体は、膜貫通ドメインが得られた分子の細胞外部分、例えば、CD28細胞外部分を含有する。一部の態様において、キメラ抗原受容体は、例えば、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に、T細胞補助刺激分子に由来する細胞内ドメインまたはその機能的変種を含有する。一部の局面において、T細胞補助刺激分子はCD28または41BBである。
【0261】
例えば、一部の態様において、CARは、抗体、例えば、抗体断片と、CD28の膜貫通部分もしくはその機能的変種であるか、またはそれを含有する膜貫通ドメインと、CD28のシグナル伝達部分またはその機能的変種およびCD3ζのシグナル伝達部分またはその機能的変種を含有する細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。一部の態様において、CARは、抗体、例えば、抗体断片と、CD28の膜貫通部分もしくはその機能的変種であるか、またはそれを含有する膜貫通ドメインと、4-1BBのシグナル伝達部分またはその機能的変種およびCD3ζのシグナル伝達部分またはその機能的変種を含有する細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。このような一部の態様において、前記受容体は、Ig分子、例えば、ヒトIg分子の一部、例えば、Igヒンジ、例えば、IgG4ヒンジを含有するスペーサー、例えば、ヒンジのみのスペーサーをさらに含む。
【0262】
一部の態様において、組換え受容体、例えば、CARの膜貫通ドメインは、ヒトCD28の膜貫通ドメイン(例えば、アクセッション番号P01747.1)またはその変種、例えば、SEQ ID NO:6に示したアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:6と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはこれより多い配列同一性を示すアミノ酸配列を含む膜貫通ドメインであるか、あるいはこれを含む。一部の態様において、組換え受容体の一部を含有する膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:7に示したアミノ酸配列、あるいはSEQ ID NO:7と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはこれより多い配列同一性、または少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、もしくはこれより多い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0263】
一部の態様において、組換え受容体、例えば、CARの細胞内シグナル伝達成分は、ヒトCD28の細胞内補助刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変種もしくは部分、例えば、天然CD28タンパク質の位置186-187においてLL→GG置換のあるドメインを含有する。例えば、細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:8もしくは9に示したアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8もしくは9と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはこれより多い配列同一性を示すアミノ酸配列を含んでもよい。一部の態様において、細胞内ドメインは、4-1BBの細胞内補助刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、(アクセッション番号Q07011.1)またはその機能的変種もしくは部分、例えば、SEQ ID NO:10に示したアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはこれより多い配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
【0264】
一部の態様において、組換え受容体、例えば、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ζ刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変種、例えば、ヒトCD3ζのアイソフォーム3の112 AA細胞質ドメイン(アクセッション番号: P20963.2)、または米国特許第7,446,190号もしくは米国特許第8,911,993号に記載のCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。例えば、一部の態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:11、12、もしくは13に示したアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:11、12、もしくは13と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはこれより多い配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
【0265】
一部の局面において、スペーサーは、IgGのヒンジ領域しか含有せず、例えば、IgG4またはIgG1のヒンジ領域しか含有せず、例えば、SEQ ID NO:1に示した、ヒンジだけのスペーサーである。他の態様において、スペーサーは、任意で、CH2ドメインおよび/またはCH3ドメインに連結された、Igヒンジ、例えば、IgG4由来ヒンジであるか、これを含有する。一部の態様において、スペーサーは、例えば、SEQ ID NO:4に示した、CH2ドメインおよびCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えば、IgG4ヒンジである。一部の態様において、スペーサーは、例えば、SEQ ID NO:3に示した、CH3ドメインだけに連結されたIgヒンジ、例えば、IgG4ヒンジである。一部の態様において、スペーサーは、グリシン-セリンリッチ配列もしくは他の可動性リンカー、例えば、公知の可動性リンカーであるか、またはこれを含む。
【0266】
例えば、一部の態様において、CARは、抗体、例えば、scFvを含む、抗体断片と、スペーサー、例えば、免疫グロブリン分子の一部、例えば、重鎖分子のヒンジ領域および/または1つもしくは複数の定常領域を含有するスペーサー、例えば、Ig-ヒンジ含有スペーサーと、CD28由来膜貫通ドメインの全てまたは一部を含有する膜貫通ドメインと、CD28由来細胞内シグナル伝達ドメインと、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む。一部の態様において、CARは、抗体または断片、例えば、scFvと、スペーサー、例えば、任意のIg-ヒンジ含有スペーサーと、CD28由来膜貫通ドメインと、4-1BB由来細胞内シグナル伝達ドメインと、CD3ζ由来シグナル伝達ドメインを含む。
【0267】
一部の態様において、このようなCAR構築物は、例えば、CARの下流に、T2Aリボソームスキップエレメントおよび/もしくはtEGFR配列、例えば、それぞれ、SEQ ID NO:14および/もしくは15に示したT2Aリボソームスキップエレメントおよび/もしくはtEGFR配列、またはSEQ ID NO:14もしくは15に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはこれより多い配列同一性を示すアミノ酸配列をさらに含む。
【0268】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために同義に用いられ、最小の長さに限定されない。提供される受容体を含むポリペプチドおよび他のポリペプチド、例えば、リンカーまたはペプチドは、天然および/または非天然アミノ酸残基を含むアミノ酸残基を含んでもよい。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、およびリン酸化も含む。一部の局面において、ポリペプチドは、タンパク質が望ましい活性を維持する限り、自然または天然の配列に対して修飾を含有してもよい。これらの修飾は、部位特異的変異誘発を介した修飾のように意図的なものでもよく、タンパク質を産生する宿主の変異またはPCR増幅によるエラーを介した修飾のように偶発的なものでもよい。
【0269】
一部の態様において、連続用量において細胞によって発現される受容体、例えば、CARは、第1の用量の細胞によって発現される受容体、例えば、CARとして、少なくとも1つの免疫反応性エピトープを含有する。一部の局面において、連続用量において投与される細胞によって発現される受容体、例えば、CARは、第1の用量において投与される細胞によって発現される受容体、例えば、CARと同一であるか、または第1の用量において投与される細胞によって発現される受容体、例えば、CARと実質的に同一である。
【0270】
様々な用量で対象に投与される細胞によって発現される組換え受容体、例えば、CARは、一般的に、処置されている疾患もしくは状態またはその細胞において発現している分子、それに関連する分子、および/またはそれに特異的な分子を認識するか、またはそれに特異的に結合する。この分子、例えば、抗原に特異的に結合すると、受容体は、一般的に、免疫賦活性シグナル、例えば、ITAMによって伝達されるシグナルを細胞に送達し、それによって、疾患または状態に標的化された免疫応答を促進する。例えば、一部の態様において、第1の用量における細胞は、疾患または状態の細胞もしくは組織によって発現される抗原または疾患もしくは状態に関連する抗原に特異的に結合するCARを発現する。
【0271】
連続用量の細胞によって発現される受容体、例えば、CARは、一般的に、第1の用量のCARと同じ抗原に特異的に結合し、多くの場合、第1の用量の細胞にある受容体と同じ受容体であるか、またはこれと極めて似ている。一部の態様において、連続用量の細胞上にある受容体は第1の用量の細胞にある受容体と同じであるか、またはこれと大きな程度の同一性を有する。
【0272】
一部の態様において、連続用量の細胞によって発現されるCARは、第1の用量の細胞によって発現されるCARと同じscFv、同じシグナル伝達ドメイン、および/または同じ接合部を含有する。一部の態様において、さらに、連続用量の細胞によって発現されるCARは、第1の用量の細胞によって発現されるCARと同じ補助刺激ドメイン、刺激ドメイン、膜貫通ドメイン、および/または他のドメインを含有する。一部の態様において、連続用量のCARの1つまたは複数の成分は第1の用量のCARとは別個のものである。
【0273】
IX.操作された細胞
提供される方法によって受容体を発現し、提供される方法によって投与される細胞の中には、操作された細胞がある。
【0274】
前記細胞は通常、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞であり、典型的にはヒト細胞である。一部の態様において、前記細胞は血液、骨髄、リンパ、またはリンパ系臓器に由来し、免疫系の細胞、例えば、自然免疫または適応免疫の細胞、例えば、リンパ球、典型的にはT細胞および/またはNK細胞を含む骨髄系細胞またはリンパ系細胞である。他の例示的な細胞には、幹細胞、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む多分化能性幹細胞および多能性幹細胞が含まれる。前記細胞は、典型的には、初代細胞、例えば、対象から直接単離された、および/または対象から単離され、凍結された細胞である。一部の態様において、前記細胞には、T細胞または他の細胞タイプの1つまたは複数のサブセット、例えば、全T細胞集団、CD4+細胞、CD8+細胞、およびその部分母集団、例えば、機能、活性化状態、成熟度、分化能、増殖、再循環、局在化、および/もしくは持続能力、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定の臓器もしくは区画における存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロファイル、ならびに/または分化の程度によって規定されるT細胞または他の細胞タイプの1つまたは複数のサブセットが含まれる。処置しようとする対象に関して、前記細胞は同種異系および/または自己由来でもよい。前記方法の中には既製の方法が含まれる。一部の局面において、例えば、既製の技術の場合、前記細胞は多能性および/または多分化能性であり、例えば、幹細胞、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)である。一部の態様において、前記方法は、対象から細胞を単離する工程、細胞を調製、処理、培養、および/または操作する工程、ならびに凍結保存前または凍結保存後に細胞を同じ対象に再導入する工程を含む。
【0275】
T細胞ならびに/またはCD4+T細胞および/もしくはCD8+T細胞のサブタイプおよび部分母集団の中には、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそのサブタイプ、例えば、幹細胞メモリーT(TSCM)、セントラルメモリー(central memory)T(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)、または高度に分化したエフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアント(mucosa-associated invariant)T(MAIT)細胞、天然および適応性の調節性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えば、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞ヘルパーT細胞、α/βT細胞、ならびにδ/γT細胞がある。
【0276】
一部の態様において、前記細胞はナチュラルキラー(NK)細胞である。一部の態様において、前記細胞は、単球または顆粒球、例えば、骨髄系細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、マスト細胞、好酸球、および/または好塩基球である。
【0277】
一部の態様において、前記細胞は、遺伝子操作を介して導入された1種または複数種の核酸を含み、それによって、このような核酸の組換え産物または遺伝子操作された産物を発現する。一部の態様において、前記核酸は異種である、すなわち、細胞または細胞から得られた試料に通常は存在せず、例えば、別の生物または細胞から得られたもの、例えば、操作されている細胞、および/またはこのような細胞が得られた生物に普通は見られないものである。一部の態様において、前記核酸は非天然であり、例えば、複数の異なる細胞タイプに由来する様々なドメインをコードする核酸のキメラ組み合わせを含む核酸を含む、天然に見られない核酸である。
【0278】
遺伝子操作のためのベクターおよび方法
遺伝子操作された組換え受容体発現細胞を生成するための方法、組成物、およびキットも提供される。遺伝子操作は、一般的に、例えば、レトロウイルス形質導入、トランスフェクション、または形質転換によって、組換え成分または操作された成分をコードする核酸を細胞に導入することを伴う。
【0279】
一部の態様において、遺伝子移入は、最初に、細胞を刺激し、例えば、細胞を、例えば、サイトカインまたは活性化マーカーの発現によって測定されるような増殖、生存、および/または活性化などの応答を誘導する刺激と組み合わせ、その後に、活性化された細胞に形質導入し、臨床用途に十分な数まで培養で増殖させることによって成し遂げられる。
【0280】
ある状況では、刺激因子(例えば、リンホカインまたはサイトカイン)の過剰発現が対象に対して毒性をもつ場合がある。従って、ある状況では、操作された細胞は、例えば、養子免疫治療において投与された時に、インビボで細胞を負の選択に対して感受性にする遺伝子セグメントを含む。例えば、一部の局面において、前記細胞は、細胞が投与された対象のインビボ状態が変化した結果として排除可能になるように操作される。負の選択が可能な表現型は、投与された薬剤、例えば、化合物に対する感受性を付与する遺伝子の挿入に起因してもよい。負の選択が可能な遺伝子には、ガンシクロビル感受性を付与する単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-I TK)遺伝子(Wigler et al., Cell II :223, 1977);細胞ヒポキサンチンホスフリボシルトランスフェラーゼ(phosphribosyltransferase)(HPRT)遺伝子、細胞アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)遺伝子、細菌シトシンデアミナーゼ、(Mullen et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 89:33 (1992))が含まれる。
【0281】
一部の局面において、前記細胞は、サイトカインまたは他の因子の発現を促進するようにさらに操作される。遺伝子操作された成分、例えば、抗原受容体、例えば、CARを導入するための様々な方法は周知であり、提供される方法および組成物と共に使用することができる。例示的な方法には、ウイルス、例えば、レトロウイルスまたはレンチウイルス、形質導入、トランスポゾン、およびエレクトロポレーションを介した方法を含む、受容体をコードする核酸を移入するための方法が含まれる。
【0282】
一部の態様において、組換え核酸は、組換え感染性ウイルス粒子、例えば、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターを用いて細胞に移入される。一部の態様において、組換え核酸は、組換えレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター、例えば、γ-レトロウイルスベクターを用いてT細胞に移入される(例えば、Koste et al. (2014) Gene Therapy 2014 Apr 3. doi: 10.1038/gt.2014.25; Carlens et al. (2000) Exp Hematol 28(10): 1137-46; Alonso-Camino et al. (2013) Mol Ther Nucl Acids 2, e93; Park et al., Trends Biotechnol. 2011 November; 29(11): 550-557を参照されたい)。
【0283】
一部の態様において、レトロウイルスベクター、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(myeloproliferative sarcoma virus)(MPSV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するレトロウイルスベクターには末端反復配列(LTR)がある。ほとんどのレトロウイルスベクターはマウスレトロウイルスに由来する。一部の態様において、レトロウイルスには、任意の鳥類細胞供給源または哺乳動物細胞供給源に由来するレトロウイルスが含まれる。レトロウイルスは典型的に両種指向性である。両種指向性とは、レトロウイルスが、ヒトを含む、いくつかの種の宿主細胞に感染できることを意味する。一態様において、発現させようとする遺伝子はレトロウイルスgag配列、pol配列、および/またはenv配列に取って代わる。多数の例示的なレトロウイルス系が述べられている(例えば、米国特許第5,219,740号;同第6,207,453号;同第5,219,740号; Miller and Rosman(1989) BioTechniques 7:980-990; Miller, A. D. (1990) Human Gene Therapy 1:5-14; Scarpa et al. (1991) Virology 180:849-852; Burns et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8033-8037;およびBoris-Lawrie and Temin (1993) Cur. Opin. Genet. Develop. 3: 102-109)。
【0284】
レンチウイルス形質導入法は公知である。例示的な方法は、例えば、Wang et al. (2012) J. Immunother. 35(9): 689-701; Cooper et al. (2003) Blood. 101: 1637-1644; Verhoeyen et al. (2009) Methods Mol Biol. 506: 97-114;およびCavalieri et al. (2003) Blood. 102(2): 497-505に記載されている。
【0285】
一部の態様において、組換え核酸はエレクトロポレーションを介してT細胞に移入される(例えば、Chicaybam et al, (2013) PLoS ONE 8(3): e60298およびVan Tedeloo et al. (2000) Gene Therapy 7(16): 1431-1437)を参照されたい)。一部の態様において、組換え核酸は転位を介してT細胞に移入される(例えば、Manuri et al. (2010) Hum Gene Ther 21(4): 427-437; Sharma et al. (2013) Molec Ther Nucl Acids 2, e74およびHuang et al. (2009) Methods Mol Biol 506: 115-126を参照されたい)。免疫細胞において遺伝物質を導入および発現する他の方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York. N.Y.に記載)、プロトプラスト融合、カチオン性リポソームを介したトランスフェクション;タングステン粒子によって促進されるマイクロパーティクルボンバードメント(microparticle bombardment)(Johnston, Nature, 346: 776-777 (1990));およびリン酸ストロンチウムDNA共沈殿(Brash et al., Mol. Cell Biol., 7: 2031-2034 (1987))が含まれる。
【0286】
組換え産物をコードする核酸を移入するための他のアプローチおよびベクターは、例えば、国際特許出願公開番号WO2014055668および米国特許第7,446,190号に記載のものである。
【0287】
さらなる核酸、例えば、導入用の遺伝子の中には、Lupton S. D. et al., Mol. and Cell Biol., 11:6 (1991);およびRiddell et al., Human Gene Therapy 3:319-338 (1992)に記載のように、療法の効力を改善するための、例えば、移入された細胞の生存および/または機能を促進することによって療法の効力を改善するための遺伝子;細胞を選択および/または評価するための、例えば、インビボ生存または局在化を評価するための遺伝子マーカーを提供するための遺伝子;安全性を改善する、例えば、細胞をインビボで負の選択に対して感受性にすることによって安全性を改善する遺伝子がある。ドミナントポジティブ選択マーカーと負の選択マーカーとの融合から得られた二機能性の選択可能な融合遺伝子の使用について説明している、LuptonらによるPCT/US91/08442およびPCT/US94/05601の公報も参照されたい。例えば、Riddell et al., 米国特許第6,040,177号の縦列14~17を参照されたい。
【0288】
操作のための細胞の調製
一部の態様において、操作された細胞の調製は、1つまたは複数の培養工程および/または調製工程を含む。トランスジェニック受容体、例えば、CARをコードする核酸を導入するための細胞は、試料、例えば、生物学的試料、例えば、対象から得られた、または対象に由来する生物学的試料から単離されてもよい。一部の態様において、細胞が単離される対象は、疾患もしくは状態を有する対象、または細胞療法を必要とするか、もしくは細胞療法が投与される対象である。対象は、一部の態様では、特定の治療介入、例えば、細胞が単離、処理、および/または操作される養子細胞療法を必要とするヒトである。
【0289】
従って、前記細胞は、一部の態様では、初代細胞、例えば、初代ヒト細胞である。前記試料には、対象から直接採取した組織、液体、および他の試料、ならびに1つまたは複数の処理工程、例えば、分離、遠心分離、遺伝子操作(例えば、ウイルスベクターを用いた形質導入)、洗浄、および/またはインキュベーションに起因する試料が含まれる。生物学的試料は、生物学的供給源から直接得られた試料でもよく、処理された試料でもよい。生物学的試料には、体液、例えば、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗、組織および臓器試料が、これらから得られた処理済み試料を含めて含まれるが、これに限定されない。
【0290】
一部の局面において、前記細胞が得られる、または単離される試料は血液もしくは血液由来試料であるか、アフェレーシスもしくは白血球搬出法による生成物であるか、またはこれから得られる。例示的な試料には、全血、末梢血単核球(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検材料、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、消化管に関連するリンパ系組織、粘膜に関連するリンパ系組織、脾臓、他のリンパ系組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃腺、もしくは他の臓器、および/またはこれらに由来する細胞が含まれる。試料には、細胞療法、例えば、養子細胞療法の状況では、自己供給源および同種異系供給源に由来する試料が含まれる。
【0291】
一部の態様において、前記細胞は細胞株、例えば、T細胞株に由来する。前記細胞は、一部の態様では、異種供給源から、例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、およびブタから得られる。
【0292】
一部の態様において、前記細胞の単離には、1つまたは複数の調製工程および/または親和性に基づかない細胞分離工程が含まれる。一部の例では、例えば、望ましくない成分を除去するために、望ましい成分を濃縮するために、細胞を溶解するか、または特定の試薬に対して感受性のある細胞を除去するために、1種または複数種の試薬の存在下で細胞が洗浄、遠心分離、および/またはインキュベートされる。一部の例では、細胞は、密度、粘着性、サイズ、特定の成分に対する感受性および/または耐性などの1つまたは複数の特性に基づいて分離される。
【0293】
一部の例では、対象の循環血に由来する細胞は、例えば、アフェレーシスまたは白血球搬出法によって得られる。試料は、一部の局面では、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球を含むリンパ球、赤血球、および/または血小板を含有し、一部の局面では、赤血球および血小板以外の細胞を含有する。
【0294】
一部の態様において、例えば、血漿画分を除去するために、および後の処理工程のために前記細胞を適切な緩衝液または培地に入れるために、対象から収集した血球は洗浄される。一部の態様において、前記細胞はリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。一部の態様において、洗浄溶液には、カルシウムおよび/もしくはマグネシウムならびに/または多くの、もしくは全ての二価カチオンが無い。一部の局面において、洗浄工程は半自動「フロースルー」遠心機(例えば、Cobe 2991 cell processor, Baxter)によって製造業者の説明書に従って成し遂げられる。一部の局面において、洗浄工程はタンジェント流(tangential flow)濾過(TFF)によって製造業者の説明書に従って成し遂げられる。一部の態様において、洗浄後に、前記細胞は、様々な生体適合性緩衝液、例えば、Ca++/Mg++を含まないPBSで再懸濁される。ある特定の態様において、血球試料の成分は除去され、前記細胞は培養培地に直接、再懸濁される。
【0295】
一部の態様において、前記方法には、密度に基づく細胞分離方法、例えば、赤血球溶解による末梢血からの白血球の調製、およびPercoll勾配またはFicoll勾配による遠心分離が含まれる。
【0296】
一部の態様において、単離方法には、細胞における、1種または複数種の特定の分子、例えば、表面マーカー、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸の発現または存在に基づく様々な細胞タイプの分離が含まれる。一部の態様において、このようなマーカーに基づいて分離するための任意の公知の方法を使用することができる。一部の態様において、分離は親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、単離は、一部の局面では、例えば、このようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとインキュベートし、その後に、一般的に洗浄工程を行い、抗体または結合パートナーに結合している細胞を、抗体または結合パートナーに結合していない細胞から分離することによって、1種または複数種のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞発現または発現レベルに基づいて細胞および細胞集団を分離することを含む。
【0297】
このような分離工程は、さらに使用するために、試薬に結合した細胞が保持される正の選択に基づいてもよく、および/または抗体または結合パートナーに結合していない細胞が保持される負の選択に基づいてもよい。一部の例では、さらに使用するために両画分とも保持される。一部の局面において、不均質な集団の中にある細胞タイプを特異的に特定する抗体が利用できない場合、望ましい集団以外の細胞によって発現されるマーカーに基づいて分離が最も良く行われるように、負の選択が特に有用な場合がある。
【0298】
分離によって、特定のマーカーを発現する特定の細胞集団または細胞が100%濃縮または除去される必要はない。例えば、特定のタイプの細胞、例えば、マーカーを発現する細胞の正の選択または濃縮とは、このような細胞の数またはパーセントが増加することを指すが、このマーカーを発現しない細胞が完全に無くなる必要はない。同様に、特定のタイプの細胞、例えば、マーカーを発現する細胞の負の選択、除去、または枯渇とは、このような細胞の数またはパーセントが減少することを指すが、このような細胞が全て完全に取り除かれる必要はない。
【0299】
一部の例では、複数回の分離工程が行われ、この場合、ある工程に由来する正に選択された画分または負に選択された画分は別の分離工程、例えば、後の正の選択または負の選択に供される。一部の例では、1回の分離工程で、例えば、それぞれが負の選択のために標的化されたマーカーに特異的な複数種の抗体または結合パートナーと細胞をインキュベートすることによって、同時に、複数種のマーカーを発現する細胞を枯渇することができる。同様に、様々な細胞タイプの表面に発現している複数種の抗体または結合パートナーと細胞をインキュベートすることによって、複数の細胞タイプを同時に正に選択することができる。
【0300】
例えば、一部の局面において、特定のT細胞部分母集団、例えば、1種類もしくは複数種の表面マーカーが陽性の細胞または高レベルの1種類もしくは複数種の表面マーカーを発現する細胞、例えば、CD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+、および/またはCD45RO+T細胞が正の選択法または負の選択法によって単離される。
【0301】
例えば、CD3+、CD28+T細胞は、CD3/CD28結合磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander)を用いて正に選択することができる。
【0302】
一部の態様において、単離は、特定の細胞集団を正の選択によって濃縮することによって、または特定の細胞集団を負の選択によって枯渇させることによって行われる。一部の態様において、正の選択または負の選択は、それぞれ、正に選択された細胞または負に選択された細胞の表面に発現している1種類もしくは複数種の表面マーカー(マーカー+)または比較的高いレベルで発現している1種類もしくは複数種の表面マーカー(マーカーhigh)に特異的に結合する1種または複数種の抗体または他の結合剤と細胞をインキュベートすることによって成し遂げられる。
【0303】
一部の態様において、T細胞は、非T細胞、例えば、B細胞、単球、または他の白血球の表面に発現しているマーカー、例えば、CD14の負の選択によってPBMC試料から分離される。一部の局面において、CD4+ヘルパーおよびCD8+細胞傷害性T細胞を分離するために、CD4+選択工程またはCD8+選択工程が用いられる。このようなCD4+集団およびCD8+集団は、1つまたは複数のナイーブ、メモリー、および/またはエフェクターT細胞部分母集団の表面において発現しているか、または比較的多量に発現しているマーカーを対象にした正の選択または負の選択によって部分母集団にさらに選別することができる。
【0304】
一部の態様において、さらに、CD8+細胞は、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、および/またはセントラルメモリー幹細胞について、例えば、それぞれの部分母集団に関連する表面抗原に基づいた正の選択または負の選択によって濃縮または枯渇される。一部の態様において、効力を高めるために、例えば、長期生存、増殖、および/または投与後の生着を改善するために、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮が行われる。一部の局面において、この効力は、このような部分母集団において特にロバストである。Terakura et al.(2012) Blood.1:72-82; Wang et al.(2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照されたい。一部の態様において、TCMが濃縮されたCD8+T細胞およびCD4+T細胞を組み合わせると効力がさらに高まる。
【0305】
態様において、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+サブセットおよびCD62L-サブセットの両方に存在する。PBMCは、例えば、抗CD8抗体および抗CD62L抗体を用いて、CD62L-CD8+画分および/またはCD62L+CD8+画分について濃縮または枯渇することができる。
【0306】
一部の態様において、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、および/またはCD127の正の、または多量の表面発現に基づいている。一部の局面において、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD45RAおよび/またはグランザイムBを発現するか、または多量に発現する細胞を対象にした負の選択に基づいている。一部の局面において、TCM細胞が濃縮されたCD8+集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現する細胞の枯渇と、CD62Lを発現する細胞を対象にした正の選択または濃縮によって行われる。一局面において、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD4発現に基づいて選択された細胞の負の画分から開始して行われ、この画分は、CD14およびCD45RAの発現に基づく負の選択と、CD62Lに基づく正の選択に供される。このような選択は一部の局面では同時に行われ、他の局面では連続して、どちらの順序でも行われる。一部の局面において、CD4に基づく分離から正の画分および負の画分が両方とも保持され、この方法の後の工程において、任意で、1つまたは複数のさらなる正の選択工程または負の選択工程の後に用いられるように、CD8+細胞集団または部分母集団の調製において用いられた同じCD4発現に基づく選択工程が、CD4+細胞集団または部分母集団を作製するのにも用いられる。
【0307】
特定の例では、PBMC試料または他の白血球試料はCD4+細胞の選択に供される。この場合、負の画分および正の画分が両方とも保持される。次いで、負の画分は、CD14およびCD45RAまたはCD19の発現に基づく負の選択と、セントラルメモリーT細胞に特徴的なマーカー、例えば、CD62LまたはCCR7に基づく正の選択に供される。この場合、正の選択および負の選択はどちらの順序でも行われる。
【0308】
CD4+Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を特定することによってナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクター細胞に選別される。CD4+リンパ球は標準的な方法によって得ることができる。一部の態様において、ナイーブCD4+Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+T細胞である。一部の態様において、セントラルメモリーCD4+細胞はCD62L+およびCD45RO+である。一部の態様において、エフェクターCD4+細胞はCD62L-およびCD45RO-である。
【0309】
一例では、負の選択によってCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。一部の態様において、正の選択および/または負の選択のために細胞の分離を可能にするために、抗体または結合パートナーは固体支持体またはマトリックス、例えば、磁気ビーズまたは常磁性ビーズに結合される。例えば、一部の態様において、前記細胞および細胞集団は、免疫磁気(または親和性磁気(affinitymagnetic))分離法を用いて分離または単離される(Methods in Molecular Medicine, vol. 58: Metastasis Research Protocols, Vol.2: Cell Behavior In Vitro and In Vivo, p 17-25 Edited by: S. A. Brooks and U. Schumacher(著作権)Humana Press Inc., Totowa, NJにおいて概説される)。
【0310】
一部の局面において、分離しようとする細胞の試料または組成物は、小さな、磁化可能な、または磁気に反応する材料、例えば、磁気に反応する粒子または微粒子、例えば、常磁性ビーズ(例えば、DynalbeadsまたはMACSビーズ)とインキュベートされる。磁気に反応する材料、例えば、粒子は、一般的に、分離することが望ましい細胞または細胞集団、例えば、負に選択する、または正に選択することが望ましい細胞または細胞集団の表面に存在する分子、例えば、表面マーカーに特異的に結合する結合パートナー、例えば、抗体に直接的または間接的に取り付けられる。
【0311】
一部の態様において、磁性粒子または磁気ビーズは、抗体または他の結合パートナーなどの特異的結合メンバーに結合される、磁気に反応する材料を含む。磁気分離方法において用いられる多くの周知の磁気に反応する材料がある。適切な磁性粒子には、参照により本明細書に組み入れられる、Molday,米国特許第4,452,773号、および欧州特許明細書EP452342Bに記載の磁性粒子が含まれる。コロイドサイズの粒子、例えば、Owen 米国特許第4,795,698号およびLiberti et al.,米国特許第5,200,084号に記載のコロイドサイズの粒子が他の例である。
【0312】
インキュベーションは、一般的に、磁性粒子または磁気ビーズに取り付けられている、抗体または結合パートナーまたはこのような抗体もしくは結合パートナーに特異的に結合する分子、例えば、二次抗体もしくは他の試薬が、もし細胞表面分子が試料中の細胞の表面に存在すれば細胞表面分子に特異的に結合する条件下で行われる。
【0313】
一部の局面において、試料は磁場の中に置かれ、磁気に反応する粒子または磁化可能な粒子が取り付けられている細胞は磁石に引き付けられるか、非標識細胞から分離される。正の選択の場合、磁石に引き付けられた細胞が保持される。負の選択の場合、引き付けられなかった細胞(非標識細胞)が保持される。一部の局面において、同じ選択工程の間に正の選択と負の選択の組み合わせが行われ、正の画分および負の画分が保持され、さらに処理されるか、またはさらなる分離工程を受ける。
【0314】
ある特定の態様において、磁気に反応する粒子は一次抗体または他の結合パートナー、二次抗体、レクチン、酵素、もしくはストレプトアビジンでコーティングされる。ある特定の態様において、磁性粒子は、1種または複数種のマーカーに特異的な一次抗体のコーティングを介して細胞に取り付けられる。ある特定の態様において、前記細胞はビーズではなく、一次抗体または結合パートナーで標識され、次いで、細胞タイプ特異的な二次抗体または他の結合パートナー(例えば、ストレプトアビジン)でコーティングされた磁性粒子が添加される。ある特定の態様において、ストレプトアビジンでコーティングされた磁性粒子が、ビオチン化した一次抗体または二次抗体と一緒に用いられる。
【0315】
一部の態様において、後でインキュベート、培養、および/または操作される細胞に、磁気に反応する粒子を取り付けたままにしておく。一部の局面において、患者に投与するために、前記粒子を細胞に取り付けたままにしておく。一部の態様において、磁化可能な粒子または磁気に反応する粒子は細胞から取り除かれる。磁化可能な粒子を細胞から取り除くための方法は公知であり、例えば、競合する非標識競合抗体、磁化可能な粒子、または切断可能なリンカーと結合体化した抗体などの使用を含む。一部の態様において、磁化可能な粒子は生分解性である。
【0316】
一部の態様において、親和性に基づく選択は、磁気活性化細胞選別(MACS)(Miltenyi Biotech, Auburn, CA)を介した選択である。磁気活性化細胞選別(MACS)システムは、磁化粒子が取り付けられている細胞を高純度で選択することができる。ある特定の態様において、MACSは、外部磁場が印加された後に、非標的種および標的種が連続して溶出されるモードで動作する。すなわち、取り付けられなかった種が溶出される間に、磁化粒子に取り付けられた細胞は所定の位置に保たれる。次いで、この第1の溶出工程が完了した後に、磁場に閉じ込められ、溶出しないようにされていた種は、このような種が溶出および回収が可能なように何らかのやり方で遊離される。ある特定の態様において、非標的細胞は標識され、不均質な集団細胞から枯渇される。
【0317】
ある特定の態様において、単離または分離は、前記方法の単離工程、細胞調製工程、分離工程、処理工程、インキュベーション工程、培養工程、および/または製剤化工程の1つまたは複数を行うシステム、装置、または器具を用いて行われる。一部の局面において、前記システムは、例えば、誤り、使用者の操作、および/または汚染を最小限にするために、これらの各工程を閉じた、または無菌の環境において行うのに用いられる。一例では、システムは、国際特許出願公開番号WO2009/072003またはUS20110003380A1に記載のシステムである。
【0318】
一部の態様において、システムまたは器具は、統合システム型もしくは自立型システムにおいて、および/または自動的に、もしくはプログラム可能なやり方で、単離工程、処理工程、操作工程、および製剤化工程の1つまたは複数、例えば、全てを行う。一部の局面において、システムまたは器具は、使用者が、処理工程、単離工程、操作工程、および製剤化工程の様々な局面をプログラムする、制御する、そのアウトカムを評価する、および/または調整するのを可能にする、システムまたは器具と通信するコンピュータおよび/またはコンピュータプログラムを備える。
【0319】
一部の局面において、例えば、閉じた無菌のシステムにおいて細胞を臨床規模レベルで自動分離するために、分離工程および/または他の工程はCliniMACSシステム(Miltenyi Biotic)を用いて行われる。構成要素には、内蔵型マイクロコンピュータ、磁気分離ユニット、蠕動ポンプ、および様々なピンチ弁が含まれる場合がある。内蔵型コンピュータは一部の局面では機器の全構成要素を制御し、反復手順を統一された順序で行うようにシステムを命令する。磁気分離ユニットは、一部の局面では、可動性の永久磁石および選択カラム用のホルダを備える。蠕動ポンプはチューブセット全体にわたる流速を制御し、ピンチ弁と一緒に、緩衝液がシステムを制御されて流れ、細胞が絶え間なく懸濁されるのを確かなものにする。
【0320】
CliniMACSシステムは、一部の局面では、滅菌した非発熱性の溶液に溶解して供給される、抗体に結合した磁化可能な粒子を使用する。一部の態様において、細胞は磁性粒子で標識された後に、余分な粒子を除去するために洗浄される。次いで、細胞調製バッグがチューブセットに接続され、そして次にチューブセットは緩衝液含有バックおよび細胞収集バッグに接続される。チューブセットは、プレカラムおよび分離カラムを含む予め組み立てられた滅菌チューブからなり、使い捨て専用である。分離プログラムが開始した後に、システムは分離カラムに細胞試料を自動的にアプライする。標識された細胞はカラム内に保持されるのに対して、標識されなかった細胞は一連の洗浄工程によって除去される。一部の態様において、本明細書に記載の方法と共に使用するための細胞集団は標識されず、カラム内に保持されない。一部の態様において、本明細書に記載の方法と共に使用するための細胞集団は標識され、カラム内に保持される。一部の態様において、磁場が取り除かれた後に、本明細書に記載の方法と共に使用するための細胞集団はカラムから溶出され、細胞収集バッグ内に収集される。
【0321】
ある特定の態様において、分離工程および/または他の工程はCliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)を用いて行われる。CliniMACS Prodigyシステムには、一部の局面では、細胞を自動洗浄し、遠心分離によって分画する細胞処理ユニット(cell processing unity)が付いている。CliniMACS Prodigyシステムはまた、内蔵カメラと、供給源の細胞産物の巨視的な層を識別することによって最適な細胞分画エンドポイントを決定する画像認識ソフトウェアも備えている場合がある。例えば、末梢血は赤血球、白血球、および血漿の層に自動的に分離される。CliniMACS Prodigyシステムはまた、細胞培養プロトコール、例えば、細胞分化および増殖、抗原添加、ならびに長期細胞培養を行う内臓型細胞発育チャンバーも備えている場合がある。インプットポートを用いると、培地を無菌的に取り出し、補充することができる。細胞は、内臓型顕微鏡を用いてモニタリングすることができる。例えば、Klebanoff et al.(2012) J Immunother. 35(9): 651-660, Terakuraet al.(2012) Blood.1:72-82、およびWang et al.(2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照されたい。
【0322】
一部の態様において、本明細書に記載の細胞集団はフローサイトメトリーを介して収集および濃縮(または枯渇)される。フローサイトメトリーでは、複数種の細胞表面マーカーについて染色された細胞は流体の流れに入って運ばれる。一部の態様において、本明細書に記載の細胞集団は、分取スケール(preparative scale)(FACS)選別を介して収集および濃縮(または枯渇)される。ある特定の態様において、本明細書に記載の細胞集団は、FACSに基づく検出系と組み合わせて微小電気機械システム(MEMS)チップを用いることによって収集および濃縮(または枯渇)される(例えば、WO2010/033140, Cho et al.(2010) Lab Chip 10, 1567-1573;および Godin et al.(2008) J Biophoton. 1(5):355-376を参照されたい)。どちらの場合でも、細胞は複数種のマーカーで標識することができ、それによって、詳細に明らかにされたT細胞サブセットを高純度で単離することが可能になる。
【0323】
一部の態様において、正の選択および/または負の選択のために分離を容易にするために、抗体または結合パートナーは1種または複数種の検出可能なマーカーで標識される。例えば、分離は蛍光標識抗体との結合に基づいてもよい。一部の例では、1種または複数種の細胞表面マーカーに特異的な抗体または他の結合パートナーの結合に基づく細胞の分離は、流体の流れの中で、例えば、分取スケール(FACS)および/または微小電気機械システム(MEMS)チップを備える蛍光標識細胞分取(FACS)によって、例えば、フローサイトメトリー検出系と組み合わせて行われる。このような方法を用いると、複数種のマーカーに基づいて正の選択および負の選択を同時に行うことができる。
【0324】
一部の態様において、調製方法は、単離、インキュベーション、および/または操作の前または後に細胞を凍結、例えば、凍結保存するための工程を含む。一部の態様において、凍結工程およびその後の解凍工程によって、細胞集団の中にある顆粒球が取り除かれ、単球がある程度まで取り除かれる。一部の態様において、例えば、血漿および血小板を取り除く洗浄工程の後に、前記細胞は凍結溶液に懸濁される。様々な任意の公知の凍結溶液およびパラメータを一部の局面で使用することができる。一例は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS、または他の適切な細胞凍結培地を使用することを伴う。次いで、DMSOおよびHSAの最終濃度がそれぞれ10%および4%になるように、これを培地で1:1に希釈する。次いで、細胞は通常、1分につき1°の速度で-80℃まで凍結され、液体窒素貯蔵タンクの気相の中で保管される。
【0325】
一部の態様において、提供される方法は、発育工程、インキュベーション工程、培養工程、および/または遺伝子操作工程を含む。例えば、一部の態様において、枯渇された細胞集団および培養開始組成物をインキュベートおよび/または操作するための方法が提供される。
【0326】
従って、一部の態様において、前記細胞集団は培養開始組成物中でインキュベートされる。インキュベーションおよび/または操作は、培養容器、例えば、ユニット、チャンバー、ウェル、カラム、チューブ、チューブセット、弁、バイアル、培養皿、バック、または細胞を培養もしくは発育するための他の容器の中で行われてもよい。
【0327】
一部の態様において、前記細胞は遺伝子操作の前に、または遺伝子操作に関連してインキュベートおよび/または培養される。インキュベーション工程は、培養、発育、刺激、活性化、および/または増殖を含んでもよい。一部の態様において、前記組成物または細胞は刺激条件または刺激薬剤の存在下でインキュベートされる。このような条件は、遺伝子操作のために、例えば、組換え抗原受容体を導入するために、集団内の細胞の増殖(proliferation)、増殖(expansion)、活性化、および/もしくは生存を誘導するように、抗原曝露を模倣するように、ならびに/または細胞を初回刺激(prime)するように設計された条件を含む。
【0328】
条件は、特定の培地、温度、酸素含有量、二酸化炭素含有量、時間、薬剤、例えば、栄養分、アミノ酸、抗生物質、イオン、および/または刺激因子、例えば、サイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、ならびに細胞を活性化するように設計された他の任意の薬剤のうち1つまたは複数を含んでもよい。
【0329】
一部の態様において、刺激条件または刺激薬剤には、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる1種または複数種の薬剤、例えば、リガンドが含まれる。一部の局面において、この薬剤は、T細胞におけるTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードをオンにするか、または開始する。このような薬剤には、例えば、ビーズなどの固体支持体に結合した、抗体、例えば、TCR成分および/もしくは共刺激受容体に特異的な抗体、例えば、抗CD3、抗CD28、ならびに/または1種類もしくは複数種のサイトカインが含まれ得る。任意で、増殖方法は、抗CD3および/または抗CD28の抗体を(例えば、少なくとも約0.5ng/mlの濃度で)培養培地に添加する工程をさらに含んでもよい。一部の態様において、刺激薬剤には、IL-2および/またはIL-15、例えば、少なくとも約10単位/mLの濃度のIL-2が含まれる。
【0330】
一部の局面において、インキュベーションは、Riddellらへの米国特許第6,040,177号、Klebanoff et al.(2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakuraet al.(2012) Blood.1:72-82、および/またはWang et al.(2012) J Immunother. 35(9):689-701に記載の技法などの技法に従って行われる。
【0331】
一部の態様において、T細胞は、(例えば、結果として生じた細胞集団が、増殖させようとする初期集団内でTリンパ球1個につき少なくとも約5個、10個、20個、もしくは40個またはそれより多いPBMCフィーダー細胞を含有するように)フィーダー細胞、例えば、非分裂末梢血単核球(PBMC)を培養開始組成物に添加し、培養物を(例えば、T細胞の数を増やすのに十分な時間にわたって)インキュベートすることによって増殖される。一部の局面において、非分裂フィーダー細胞はγ線を照射したPBMCフィーダー細胞を含んでもよい。一部の態様において、細胞分裂を阻止するために、PBMCに約3000~3600ラドの範囲のγ線が照射される。一部の局面において、フィーダー細胞が培養培地に添加された後に、T細胞の集団が添加される。
【0332】
一部の態様において、刺激条件は、ヒトTリンパ球の増殖に適した温度、例えば、少なくとも約25℃、一般的には少なくとも約30度、および一般的には37℃または約37℃を含む。任意で、インキュベーションは、フィーダー細胞として非分裂性のEBV形質転換リンパ芽球様細胞(LCL)を添加する工程をさらに含んでもよい。LCLに、約6000~10,000ラドの範囲のγ線を照射することができる。LCLフィーダー細胞は、一部の局面では、LCLフィーダー細胞と初回Tリンパ球との比が少なくとも約10:1などの任意の適切な量で提供される。
【0333】
態様において、抗原特異的T細胞、例えば、抗原特異的CD4+および/またはCD8+T細胞は、ナイーブまたは抗原特異的なTリンパ球を抗原で刺激することによって得られる。例えば、サイトメガロウイルス抗原に対する抗原特異的T細胞株またはクローンは、感染対象からT細胞を単離し、前記細胞をインビトロで同じ抗原で刺激することによって作製することができる。
【0334】
X.組成物および製剤
投与するための細胞を含む組成物も、薬学的組成物および製剤、例えば、ある特定の用量で投与するための、またはある特定の用量を分けて投与するための数の細胞を含む単位剤形組成物を含めて提供される。薬学的組成物および製剤は、一般的に、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。一部の態様において、前記組成物は、少なくとも1種類のさらなる治療剤を含む。
【0335】
「薬学的製剤」という用語とは、「薬学的製剤」に含まれる活性成分の生物学的活性が有効になるような形をとり、製剤が投与される対象に対して容認できないほどの毒性がある、さらなる成分を含有しない調製物を指す。
【0336】
「薬学的に許容される担体」とは、対象に無毒な、活性成分以外の、薬学的製剤中にある成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これに限定されない。
【0337】
一部の局面において、担体の選択は、一つには、特定の細胞および/または投与方法によって決定される。従って、様々な適切な製剤がある。例えば、薬学的組成物は防腐剤を含有してもよい。適切な防腐剤には、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムが含まれ得る。一部の局面において、2種類以上の防腐剤の混合物が用いられる。防腐剤またはその混合物は典型的には全組成物の重量に対して約0.0001%~約2%の量で存在する。担体は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に記載されている。薬学的に許容される担体は、一般的に、使用される投与量および濃度でレシピエントに無毒であり、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン;単糖、二糖、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール;塩を形成する対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を含むが、これに限定されない。
【0338】
一部の局面では、緩衝剤が前記組成物に含まれる。適切な緩衝剤には、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、ならびに様々な他の酸および塩が含まれる。一部の局面において、2種類以上の緩衝剤の混合物が用いられる。緩衝剤またはその混合物は典型的には全組成物の重量に対して約0.001~約4重量%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は公知である。例示的な方法は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed. (May 1, 2005)において、さらに詳細に説明されている。
【0339】
前記製剤は水溶液を含んでもよい。前記製剤または組成物はまた、前記細胞で処置されている特定の適応症、疾患、または状態に有用な複数種の活性成分、好ましくは、前記細胞を補う活性を有する活性成分も含有してよく、この場合、それぞれの活性は互いに悪影響を及ぼさない。このような活性成分は、所期の目的に有効な量で組み合わせられて適切に存在する。従って、一部の態様において、薬学的組成物は、他の薬学的に活性な薬剤または薬物、例えば、化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキセート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、および/またはビンクリスチンをさらに含む。
【0340】
薬学的組成物は、一部の態様では、疾患または状態を処置または予防するのに有効な量、例えば、治療的有効量または予防的有効量の細胞を含む。治療効力または予防効力は、一部の態様では、処置される対象を定期的に評価することによってモニタリングされる。望ましい投与量は細胞の単回大量瞬時投与によって送達されてもよく、細胞の複数回大量瞬時投与によって送達されてもよく、細胞の連続注入投与によって送達されてもよい。
【0341】
一部の態様において、前記組成物は、対象における疾患もしくは状態の負荷を低減するのに有効な量で、ならびに/または対象においてCRSもしくは重度のCRSをもたらさない量で、ならびに/または本明細書に記載の方法の他のどのアウトカムももたらさない量で前記細胞を含む。
【0342】
前記の細胞および組成物は、標準的な投与技法、製剤、および/または装置を用いて投与され得る。前記細胞の投与は自家投与でもよく、または異種投与でもよい。例えば、ある対象から免疫応答性細胞または前駆細胞を入手し、同じ対象または異なる適合性の対象に投与することができる。末梢血に由来する免疫応答性細胞またはその子孫(例えば、インビボ、エクスビボ、またはインビトロで得られる)を、カテーテル投与を含む局所注射、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を介して投与することができる。治療用組成物(例えば、遺伝子組換えされた免疫応答性細胞を含有する薬学的組成物)が投与される時に、一般的に、注射用単位剤形(溶液、懸濁液、エマルジョン)の形で製剤化される。
【0343】
製剤には、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、肺投与、経皮投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、頬投与、舌下投与、または坐剤投与のための製剤が含まれる。一部の態様において、前記細胞集団は非経口投与される。本明細書で使用する「非経口」という用語は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、腟投与、および腹腔内投与を含む。一部の態様において、前記細胞は、静脈内注射、腹腔内注射、または皮下注射による末梢全身送達を用いて対象に投与される。
【0344】
組成物は、一部の態様では、滅菌した液体調製物、例えば、等張性水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液として提供されるか、または粘性のある組成物として提供され、これらは、一部の局面では、選択されたpHまで緩衝化されてもよい。液体調製物は、通常、ゲル、他の粘性のある組成物、および固体組成物より調製しやすい。さらに、液体組成物の方が、投与するのに、特に、注射によって投与するのに若干便利である。他方で、粘性のある組成物は、特定の組織との長い接触期間をもたらすように適切な粘性の範囲内で製剤化することができる。液体組成物または粘性のある組成物は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(polyoi)(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびその適切な混合物を含有する、溶媒または分散媒でもよい担体を含んでもよい。
【0345】
滅菌注射液は、細胞を溶媒の中に取り入れて、例えば、適切な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどと混合して調製することができる。前記組成物は、望ましい投与経路および調製物に応じて、補助物質、例えば、湿潤剤、分散剤、または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化または粘性を高める添加物、防腐剤、着香剤、および/または染料を含有することができる。一部の局面では、適切な調製物を調製するために標準的な教科書が調べられる場合がある。
【0346】
抗菌性防腐剤、抗酸化物質、キレート剤、および緩衝液を含む、前記組成物の安定性および無菌性を向上させる様々な添加物を添加することができる。微生物の作用は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸によって防止することができる。注射用薬学的剤形の長期吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによって引き起こすことができる。
【0347】
インビボ投与のために使用しようとする製剤は一般的に無菌である。無菌性は、例えば、滅菌濾過膜で濾過することによって、容易に成し遂げられ得る。
【0348】
XII.製造品
養子細胞療法のために、提供される方法に従って対象に前記細胞を投与するための、ならびに前記細胞および組成物を保管および投与するための製造品、例えば、キットおよび装置製造品も提供される。
【0349】
製造品は、1つまたは複数の容器、典型的には、複数の容器と、包装材料と、前記容器および/もしくはパッケージの表面にあるか、または前記容器および/もしくはパッケージに付けられたラベルまたは添付文書を備え、一般的には、ラベルまたは添付文書は前記細胞を対象に投与するための説明書を含む。
【0350】
前記容器は、一般的に、投与される前記細胞、例えば、その1つまたは複数の単位用量を収容する。製造品は典型的には複数の容器を備え、それぞれの容器には1単位用量の前記細胞が入っている。単位用量は、第1の用量において対象に投与される前記細胞の量または数でもよく、第1の用量または連続用量において投与される前記細胞の数の2倍(以上)でもよい。単位用量は、投与方法に関連して対象に投与される、前記細胞の最も少ない用量または可能性のある最も少ない用量でもよい。一部の態様において、単位用量は、最小数の細胞であるか、あるいは特定の疾患もしくは状態を有する任意の対象または本明細書における方法に従う任意の対象に単一用量で投与される最小数の細胞である。例えば、一部の局面では、例えば、提供される方法に従って、1の、場合によっては複数の単位用量が第1の用量として、ある特定の対象に投与され、1または複数の単位用量が1つまたは複数の連続用量において、ある特定の対象に投与されるように、単位用量は、体重が比較的軽い、および/または疾患負荷が比較的少ない患者に投与される最小数の細胞を含んでもよい。一部の態様において、単位用量の細胞の数は、第1の用量において、特定の対象、例えば、前記細胞が得られた対象に投与することが望ましい細胞の数、または組換え受容体発現細胞もしくはCAR発現細胞の数である。一部の態様において、前記細胞は、本明細書において提供される方法によって処置しようとする対象、または本明細書において提供される方法を必要とする対象から得られたものである。
【0351】
一部の態様において、前記容器はそれぞれ個々に、例えば、同じ数または実質的に同じ数の細胞を含む、単位用量の前記細胞を含む。従って、一部の態様において、前記容器はそれぞれ、同じ数もしくはほぼ同じ数もしくは実質的に同じ数の細胞、または同じ数もしくはほぼ同じ数もしくは実質的に同じ数の組換え受容体発現細胞を含む。一部の態様において、単位用量は、処置しようとする対象および/または前記細胞が得られた対象1kgあたり、約1x108個未満、約5x107個未満、約1x106個未満、または約5x105個未満の操作された細胞、全細胞、T細胞、またはPBMCを含む。一部の態様において、それぞれの単位用量は、2x106個、5x106個、1x107個、5x107個、もしくは1x108個、または約2x106個、約5x106個、約1x107個、約5x107個、もしくは約1x108個の操作された細胞、全細胞、T細胞、またはPBMCを含有する。
【0352】
適切な容器には、例えば、瓶、バイアル、注射器、および可撓性のあるバッグ、例えば、注入バッグが含まれる。特定の態様において、前記容器は、バッグ、例えば、可撓性のあるバッグ、例えば、対象に細胞を注入するのに適した可撓性のあるバッグ、例えば、可撓性のあるプラスチックバッグもしくはPVCバッグ、および/またはIV溶液バッグである。前記バッグは、一部の態様では、前記細胞および組成物の無菌溶液および無菌送達を提供するように密閉することができる、および/または滅菌することができる。一部の態様において、前記容器、例えば、バッグの容量は、10ml、20ml、30ml、40ml、50ml、60ml、70ml、80ml、90ml、100ml、200ml、300ml、400ml、500ml、もしくは1000ml、または約10ml、約20ml、約30ml、約40ml、約50ml、約60ml、約70ml、約80ml、約90ml、約100ml、約200ml、約300ml、約400ml、約500ml、もしくは約1000ml容量、または少なくとも10ml、20ml、30ml、40ml、50ml、60ml、70ml、80ml、90ml、100ml、200ml、300ml、400ml、500ml、もしくは1000ml、または少なくとも約10ml、約20ml、約30ml、約40ml、約50ml、約60ml、約70ml、約80ml、約90ml、約100ml、約200ml、約300ml、約400ml、約500ml、もしくは約1000ml容量、例えば、10mLもしくは約10mLから100mLもしくは約100mL、または10mLもしくは約10mLから500mLもしくは約500mL容量である。一部の態様において、前記容器、例えば、バッグは、安定な、ならびに/あるいは様々な温度の1つまたは複数において、例えば、低温、例えば、-20℃未満もしくは約-20℃未満、-80℃未満もしくは約-80℃未満、-120℃未満もしくは約-120℃未満、-135℃未満もしくは約-135℃未満、または-20℃もしくは約-20℃、-80℃もしくは約-80℃、-120℃もしくは約-120℃、-135℃もしくは約-135℃、ならびに/あるいは凍結保存に適した温度、ならびに/あるいは他の温度、例えば、前記細胞を解凍するのに適した温度、および体温、例えば、37℃または約37℃、例えば、処置の直前に、例えば、対象の場所または処置の場所、例えば、ベッドサイドで解凍が可能な温度で、細胞を安定して保管および/もしくは維持する材料である、ならびに/あるいはこのような材料から作られる。
【0353】
前記容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。一部の態様において、前記容器は、例えば、チューブを接続するための、または1つもしくは複数のチューブにカニューレ挿入するための、例えば、静脈内注入もしくは他の注入のためにカニューレ挿入するための、ならびに/あるいは他の容器、例えば、細胞培養バッグおよび/もしくは保管バッグまたは他の容器に移入する目的で、ならびにこれから移入する目的で接続するための1つまたは複数のポート、例えば、無菌のアクセスポートを有する。例示的な容器には、注射用に針で穴を開けることができる栓が付いたものを含む、注入バッグ、静脈内溶液バッグ、バイアルが含まれる。
【0354】
さらに、製造品は、1つもしくは複数の識別情報および/または使用のための説明書が付いた添付文書またはラベルを備えてもよい。一部の態様において、情報または説明書は、特定の状態もしくは疾患を処置するために、その内容を使用することができるか、もしくは使用しなければならならいこと、および/またはそのために説明書を提供することを示す。ラベルまたは添付文書は、疾患または状態を処置するために製造品の中身が用いられることを示してもよい。一部の態様において、ラベルまたは添付文書は、例えば、提供される方法の任意の態様に従って、第1の用量および1つまたは複数の連続用量の前記細胞を投与することを伴う方法を介して、対象、例えば、前記細胞が得られた対象を処置するための説明書を提供する。一部の態様において、説明書は、第1の用量において1単位用量、例えば、製造品の中にある1個の個別容器の内容物を投与し、それに続いて、特定の時点で、もしくは特定の時間枠内で、および/あるいは対象において1つもしくは複数の因子もしくはアウトカムの存在もしくは非存在または量もしくは程度が検出された後に、1つまたは複数の連続用量を投与することを規定している。
【0355】
一部の態様において、説明書は、第1の投与および連続投与を行うことによって対象に複数の単位用量を投与することを規定している。一部の態様において、第1の投与は、前記単位用量の1つを対象に送達する工程を含み、連続投与は、1または複数の前記単位用量を対象に投与する工程を含む。
【0356】
一部の態様において、説明書は、第1の投与の、例えば、第1の投与または先の投与が開始して、約15~約27日後または約9~約35日後、例えば、21日後または約21日後の時期に、連続投与を行うべきであることを規定している。一部の態様において、説明書は、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、前記第1の投与の直前の対象における指標の血清レベルの約10倍以下、約25倍以下、および/もしくは約50倍以下である、ならびに/またはCRSの指標がピークに達してから低下している最中である、ならびに/または対象が、前記細胞によって発現される受容体、例えば、CARに特異的な検出可能な適応性宿主免疫応答を示していないことが決定された後の時期に、連続用量を行うべきであることを規定している。
【0357】
一部の態様において、ラベルまたは添付文書またはパッケージは、前記細胞が得られた、および/または前記細胞が投与される対象の具体的な身元を示す識別子を備える。自家移入の場合、前記細胞が得られた対象の身元は、前記細胞が投与される対象の身元と同じである。従って、識別情報は、前記細胞が特定の患者、例えば、前記細胞が最初に得られた患者に投与されることを指定することがある。このような情報は、バーコードまたは他のコード化した識別子の形で包装材料および/またはラベルの中に存在してもよく、対象の名前および/または他の識別特性を示してもよい。
【0358】
製造品は、一部の態様では、前記細胞を含む組成物、例えば、その個々の単位剤形を収容する、1つまたは複数の、典型的には複数の容器を備え、1つまたは複数のさらなる容器と、その中に収容される、さらなる薬剤、例えば、細胞傷害剤またはそうでない場合は治療剤、例えば、前記細胞と一緒に、組み合わせて投与される、例えば、同時に、または任意の順番で連続して投与される、さらなる薬剤を含む組成物をさらに備える。代わりに、または加えて、製造品は、薬学的に許容される緩衝液を収容する別の容器または同じ容器をさらに備えてもよい。製造品は、緩衝液、希釈剤、フィルター、チューブ、針、および/または注射器などの他の材料をさらに備えてもよい。
【0359】
「添付文書」という用語は、適応症、用法、投与量、投与、併用療法、禁忌症についての情報、および/またはこのような治療製品の使用に関する警告を収めている、市販の治療製品パッケージに慣例に従って入れられている説明書を指すために用いられる。
【0360】
特に定義のない限り、本明細書において用いられる専門用語、注釈、ならびに他の技術用語および科学用語または専門語は全て、クレームされた対象が属する当業者に一般的に理解するものと同じ意味を有することが意図される。場合によっては、理解しやすいように、および/または容易に参照できるように、一般的に理解されている意味を有する用語が本明細書において定義される。本明細書における、このような定義の記載が、必ず、当技術分野において一般的に理解されているものと、かなり大きく異なると解釈することはしてはならない。
【0361】
本明細書で使用する単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、特に文脈によってはっきり示されていない限り複数の指示物を含む。例えば、「1つの(a)」または「1つの(an)」は「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味する。本明細書に記載の局面およびバリエーションは、「からなる」および/または「から本質的になる」局面およびバリエーションを含むことが理解される。
【0362】
本開示全体を通じて、クレームされた対象の様々な局面が範囲の形で示される。範囲の形での説明は単なる便宜および簡略のためであり、クレームされた対象の範囲に対する融通の利かない限定として解釈してはならないと理解されるはずである。従って、範囲の説明は、可能性のある全ての部分範囲(sub-range)ならびにその範囲内にある個々の数値を具体的に開示したとみなされるはずである。例えば、値の範囲が示された場合、その範囲の上限と下限との間の、間にあるそれぞれの値と、その述べられた範囲内にある他の任意の述べられた値または間にある値が、クレームされた対象に包含されると理解される。これらのさらに小さな範囲の上限および下限は、独立して、その小さな範囲に含まれてもよく、その述べられた範囲内にある、明確に除外されるあらゆる限界を条件としてクレームされた対象にも包含される。述べられた範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、クレームされた対象に含まれる。このことは範囲の幅に関係なく適用される。
【0363】
本明細書で使用する「約」という用語は、この技術分野の当業者に容易に分かる、それぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」のついた値またはパラメータについての言及は、その値またはパラメータそのものに向けられた態様を含む(およびその態様について説明している)。例えば、「約X」についての説明は「X」の説明を含む。
【0364】
本明細書で使用する組成物とは、細胞を含む、2種類以上の産物、物質、または化合物の任意の混合物を指す。組成物は、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、またはその任意の組み合わせでもよい。
【0365】
本明細書で使用する、細胞または細胞集団が特定のマーカーについて「陽性」であるという記載は、特定のマーカー、典型的には表面マーカーが細胞の表面に、または細胞の中に検出可能に存在することを指す。表面マーカーを指している場合、この用語は、フローサイトメトリーによって、例えば、マーカーに特異的に結合する抗体で染色し、この抗体を検出することによって検出される時に表面発現が存在することを指す。ここで、染色は、フローサイトメトリーによって、他の点では同一の条件下で、アイソタイプが一致する対照を用いた同じ手順を行って検出される染色をかなり上回るレベルで、および/またはマーカーが陽性であることが分かっている細胞のレベルと実質的に類似するレベルで、および/またはマーカーが陰性であることが分かっている細胞のレベルよりかなり高いレベルで検出することができる。
【0366】
本明細書で使用する、細胞または細胞集団が特定のマーカーについて「陰性」であるという記載は、特定のマーカー、典型的には表面マーカーが細胞の表面に、または細胞の中に実質的に検出可能に存在することが無いことを指す。表面マーカーを指している場合、この用語は、フローサイトメトリーによって、例えば、マーカーに特異的に結合する抗体で染色し、この抗体を検出することによって検出される時に表面発現が存在しないことを指す。ここで、染色は、フローサイトメトリーによって、他の点では同一の条件下で、アイソタイプが一致する対照を用いた同じ手順を行って検出される染色をかなり上回るレベルで、および/またはマーカーが陽性であることが分かっている細胞のレベルよりかなり低いレベルで、および/またはマーカーが陰性であることが分かっている細胞のレベルと比較して実質的に類似するレベルで検出されない。
【0367】
本明細書で使用する「ベクター」という用語とは、連結されている別の核酸を増やすことができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造であるベクター、ならびに導入されている宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、機能的に連結されている核酸の発現を起こすことができる。このようなベクターは本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。
【0368】
本願において言及された、特許文書、科学文献、およびデータベースを含む刊行物は全て、それぞれ個々の刊行物が個々に参照により組み入れられるのと同じ程度に、全ての目的のためにその全体が参照により組み入れられる。本明細書において示された定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開された出願、および他の刊行物に示された定義と相違するか、または他の点で一致しない場合、参照により本明細書に組み入れられる定義ではなく、本明細書において示された定義が優先される。
【0369】
本明細書において用いられるセクションの見出しは、系統立ててまとめることだけを目的とし、説明された対象を限定すると解釈してはならない。
【0370】
XIII.例示的な態様
1. (a)第1の用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞を、疾患または状態を有する対象に投与する工程であって、該第1の用量が、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下の該細胞、約1x108個以下の該細胞、および/または対象1m2あたり約1x108個以下の該細胞を含む、工程と、
(b)(a)の投与開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ(a)の投与開始後約28日より短い時点で、連続用量のCAR発現細胞を対象に投与する工程と
を含む、処置方法。
2. (b)の投与時に、
(i)対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、(a)の投与直前の対象における血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/もしくは約50倍より少ない;ならびに/または
(ii)対象がグレード3以上の神経毒性を示さない;ならびに/または
(iii)第1の用量の投与後の対象におけるCRS関連アウトカムもしくは神経毒性の症状が、(a)の投与後にピークレベルに達して低下し始めた;ならびに/または
(iv)対象が、該第1の用量の細胞によって発現されるCARに対して検出可能な体液性免疫応答も細胞性免疫応答も示していない、
態様1の方法。
3. (a)第1の用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞を対象に投与する工程であって、第1の用量が、対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分な量の該細胞を含む、工程と、
(b)(i)神経毒性、サイトカイン放出症候群(CRS)、マクロファージ活性化症候群、もしくは腫瘍溶解症候群の臨床リスクが、(a)の投与後に存在していないか、または去ったか、もしくは弱まった、(ii)(CRS)、神経毒性、マクロファージ活性化症候群、もしくは腫瘍溶解症候群を証明する生化学的読み取り値が、(a)の投与後に存在していないか、または去ったか、もしくは弱まった、ならびに/あるいは(iii)対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)または神経毒性を示す因子の血清レベルが、(a)の投与直前の対象における前記指標の血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/または約50倍より少ない、かつ
対象が、該第1の用量の細胞によって発現されるCARに特異的な検出可能な適応性宿主免疫応答を示していない
時期に、連続用量のCAR発現細胞を対象に投与する工程と
を含む、処置方法。
4. (a)第1の用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞を対象に投与する工程であって、該第1の用量が、対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分な量の該細胞を含む、工程と、
(b)対象における神経毒性および/またはCRS関連アウトカムが、(a)の投与後にピークレベルに達して低下し始めた後の時期であり、かつ対象が、該第1の用量の細胞によって発現されるCARに対して検出可能な体液性免疫応答も細胞性免疫応答も示していない時期に、連続用量のCAR発現細胞を対象に投与する工程と
を含む、処置方法。
5. (i)(a)の投与が、対象において重度のCRSを誘導しないか、もしくは対象においてCRSを誘導しない;
(ii)(a)の投与が、対象においてグレード3以上の神経毒性を誘導しない;
(iii)臨床データに基づいて、(a)における前記用量の細胞の投与が、そのように処置された対象の大多数において重度のCRSを誘導しない;および/または
(iv)臨床データに基づいて、(a)における該用量の細胞の投与が、そのように処置された対象の大多数においてグレード3以上の神経毒性を誘導しない、
態様3または態様4の方法。
6. (a)の投与の開始と(b)の投与の開始との間の期間が、約9~約35日、約14~約28日、15~27日、もしくは17日~約21日である;および/または
第1の用量が、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下の細胞、約1x108個以下の細胞、もしくは対象1m2あたり約1x108個以下の細胞を含む、態様3~5のいずれかの方法。
7. CRS関連アウトカムが、発熱、低血圧、低酸素、神経障害、または、炎症性サイトカインもしくはC反応性タンパク質(CRP)の血清レベルからなる群より選択される、態様2~6のいずれかの方法。
8. CRSを示す因子が、インターフェロンγ(IFNγ)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、IL-6、IL-10、IL-1β、IL-8、IL-2、MIP-1、Flt-3L、フラクタルカイン、およびIL-5からなる群より選択される炎症性サイトカインであるか、またはCRPである、態様2~6のいずれかの方法。
9. (b)の投与時に、
CRS関連アウトカムのレベルがピークレベルの50%以下であるか、ピークレベルの20%以下であるか、もしくはピークレベルの5%以下であるか、または(a)の投与直前のレベルであるかもしくはほぼ該レベルである;あるいはCRSを示す因子の血清レベルが(a)の投与直前のレベルの10倍以下である、
態様2~8のいずれかの方法。
10. 神経毒性の臨床リスクおよび/またはグレード3以上の神経毒性に関連する症状が、錯乱、せん妄、表出性失語、鈍麻、ミオクローヌス、嗜眠、精神状態変化、痙攣、発作様活動、発作(任意で、脳波[EEG]によって確認される)、高レベルのβアミロイド(Aβ)、高レベルのグルタミン酸、および高レベルの酸素ラジカルの中から選択される、態様2~9のいずれかの方法。
11. 第1の用量において細胞によって発現されるCARを発現する、ある用量の細胞が、(a)の投与前に、対象に与えられたことがない、態様1~10のいずれかの方法。
12. 連続用量において細胞によって発現されるCARが、第1の用量において細胞によって発現されるCARに存在する少なくとも1つの免疫反応性エピトープを含有する、態様1~11のいずれかの方法。
13. 連続用量において細胞によって発現されるCARが、第1の用量において細胞によって発現されるCARと同一であるか、または第1の用量において細胞によって発現されるCARと実質的に同一である、態様12の方法。
14. 第1の用量において細胞によって発現されるCARが、疾患もしくは状態の細胞もしくは組織または疾患もしくは状態に関連する細胞もしくは組織によって発現される抗原に特異的に結合する、態様1~13のいずれかの方法。
15. 疾患または状態が腫瘍または癌である、態様14の方法。
16. (a)の投与が、(a)の投与後の疾患負荷を示す1種または複数種の因子の低減により示されるような、対象における疾患または状態の負荷の低減につながる、態様15の方法。
17. (b)の投与時に、対象が再発していない、および/または疾患負荷を示す1種または複数種の因子が前記低減後に増加していない、態様16の方法。
18. 連続用量の細胞が、対象における疾患または状態の負荷の低減に十分な量の細胞を含む、態様1~17のいずれかの方法。
19. (b)の投与が、対象における疾患または状態の負荷のさらなる低減につながる、態様16~18のいずれかの方法。
20. 連続用量の投与開始直前と比較して、該連続用量の投与が、対象における疾患または状態の負荷の低減につながる、態様1~19のいずれかの方法。
21. 対象に単一用量で(a)において前記細胞が投与されかつ(b)において前記細胞が投与される代替の投与計画を含む方法と比較してより大きな程度までおよび/またはより長い期間にわたって、疾患または状態の負荷を低減する、態様1~20のいずれかの方法。
22. 負荷の低減および/または負荷のさらなる低減が、対象、対象の臓器、対象の組織、もしくは対象の体液における疾患の細胞の総数の低減、腫瘍の質量もしくは体積の低減、ならびに/または転移の数および/もしくは程度の低減を含む、態様16~22のいずれかの方法。
23. 疾患が癌であり、対象が(b)の投与の開始時に形態学的疾患を示さない;および/または
疾患が白血病もしくはリンパ腫であり、対象が、(b)の投与時に、骨髄中に5%を超える芽細胞を示さない、
態様1~22のいずれかの方法。
24. 第1の用量の投与後に疾患または状態が持続する、および/または第1の用量の投与が、対象における疾患もしくは状態を根絶するのに十分でない、態様1~23のいずれかの方法。
25. 対象が、(b)の投与時に、検出可能な分子的疾患および/または微小残存病変を示している、態様1~24のいずれかの方法。
26. (b)の投与後の対象における(i)CAR発現細胞の最大数、(ii)ある期間にわたるCAR発現細胞の曲線下面積(AUC)、および/または(iii)検出可能なCAR発現細胞の持続期間が、対象に単一用量で(a)において該細胞が投与されかつ(b)において該細胞が投与される代替の投与計画を含む方法により得られたものと比較して大きい、態様1~25のいずれかの方法。
27. 前記方法が、対象の血液中の最大濃度または最大数のCAR発現細胞である1マイクロリットルあたり少なくとも10個もしくは約10個のCAR発現細胞、末梢血単核球(PBMC)の総数に対して少なくとも50%、少なくとも約1x105個のCAR発現細胞、またはDNA 1マイクログラムあたり少なくとも5,000コピーのCARコードDNAをもたらし;および/または
(a)の投与開始後90日目に、対象の血液中もしくは血清中でCAR発現細胞が検出可能であり;および/または
(a)の投与開始後90日目に、対象の血液が、少なくとも20%のCAR発現細胞、1マイクロリットルあたり少なくとも10個のCAR発現細胞、もしくは少なくとも1x104個のCAR発現細胞を含有する、態様1~26のいずれかの方法。
28. (a)の投与後、ある期間にわたるCAR発現細胞の血中濃度の曲線下面積(AUC)が、対象に単一用量で(a)において該細胞が投与されかつ(b)において該細胞が投与される代替の投与計画を含む方法により得られたものと比較して大きい、態様1~27のいずれかの方法。
29. (b)の投与後、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、もしくは14日目の対象におけるCRS関連アウトカムが検出不可能であるか、または、対象に第1の用量が投与されずに(b)において前記細胞が投与される代替の投与計画を含む方法と比較して低減している、態様1~28のいずれかの方法。
30. (b)の投与後の対象における、ある期間にわたるCRSを示す因子の血清レベルの曲線下面積(AUC)が、対象に第1の用量が投与されずに(b)において前記細胞が投与される代替の投与計画を含む方法と比較して小さい、態様1~29のいずれかの方法。
31. 対象が、(a)の投与前に、腫瘍または癌を標的とする治療剤で処置されたことがあり、(a)の投与時に、該治療剤に対して抵抗性または非応答性である、態様15~30のいずれかの方法。
32. (a)の投与後で(b)の投与前に、または(a)の投与前に、対象におけるCRSを示す因子の血清レベル、神経毒性を示す因子、疾患負荷を示す因子、および/または宿主抗CAR免疫応答の前記指標の血清レベルを評価する工程をさらに含む、態様1~31のいずれかの方法。
33. 疾患負荷を示す因子が測定され、該因子が、対象、対象の臓器、対象の組織、もしくは対象の体液における疾患の細胞の総数、フローサイトメトリーもしくは定量PCRによる分子検出、固形腫瘍の質量もしくは体積、または転移の数もしくは程度を含む、態様32の方法。
34. (i)(b)の投与前に疾患負荷を示す因子を評価する工程と、
(ii)評価の結果に基づいて、対象に投与される細胞の連続用量を決定する工程と、
(iii)評価によって対象が形態学的疾患を有すると決定されたら、第1の用量におけるCAR発現細胞の数より少ないかもしくは該数とほぼ同じ数のCAR発現細胞を含む連続用量を対象に投与する工程;および/または、評価によって対象が微小残存病変を有すると決定されたら、第1の用量と比較して増加した数のCAR発現細胞を含む連続用量を対象に投与する工程と
を含む、態様32または態様33の方法。
35. 連続用量が、第1の用量におけるCAR発現細胞の数とほぼ同じ数のCAR発現細胞を含む、態様1~33のいずれかの方法。
36. 連続用量が、第1の用量と比較して増加した数のCAR発現細胞を含む、態様1~33のいずれかの方法。
37. 第1の用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞が以前に投与された対象に、連続用量のCAR発現細胞を投与する工程を含む、処置方法であって、
連続用量の細胞が、第1の用量の開始後少なくとも約14日もしくは約14日より長くかつ約28日より短い時点で投与される;および/または
連続用量において投与されるCAR発現細胞の数が第1の用量と比較して増加している、処置方法。
38. 第1の用量において投与される細胞の数が、約0.5x106細胞/kg対象体重~3x106細胞/kg、約0.75x106細胞/kg~2.5x106細胞/kg、または約1x106細胞/kg~2x106細胞/kgである、態様1~37のいずれかの方法。
39. 増加した数が、第1の用量における数の少なくとも2倍、5倍、または10倍である、態様34、36、または37の方法。
40. CAR発現細胞の連続用量において投与される細胞の数が、体重1キログラムあたり約2x106個の細胞(細胞/kg)~約6x106細胞/kg、約2.5x106細胞/kg~約5.0x106細胞/kg、または約3.0x106細胞/kg~約4.0x106細胞/kgを含む、態様1~39のいずれかの方法。
41. 対象が、第1の用量の投与後および/または連続用量の投与後に、サイトカイン放出症候群(CRS)を示さないか、重度のCRSを示さないか、神経毒性を示さないか、重度の神経毒性を示さないか、またはグレード3を超える神経毒性を示さない、態様1~40のいずれかの方法。
42. 第1の用量におけるCAR発現細胞が、第1の用量の投与後および/または連続用量の投与後に対象において増殖する、態様1~41のいずれかの方法。
43. 増殖が、
(i)第1の用量および/もしくは連続用量の投与の直前と比較した、該投与後の血清CRPレベルの増加、ならびに/または
(ii)第1の用量および/もしくは連続用量の投与の直前と比較した、該投与後の、qPCRによって測定される血清中のCARコード核酸レベルの増加
によって証明され、該増加が任意で少なくとも1倍、2倍、または3倍である、態様42の方法。
44. 第1の用量と連続用量との間の期間が15~27日である、態様1~43のいずれかの方法。
45. 第1の用量と連続用量との間の期間が約21日である、態様44の方法。
46. 第1の用量と連続用量との間の期間が約17日である、態様44の方法。
47. 第1の用量の細胞が、第1の用量の細胞を含む単一の薬学的組成物の状態で投与される、および/または連続用量の細胞が、連続用量の細胞を含む単一の薬学的組成物の状態で投与される、態様1~46のいずれかの方法。
48. 第1の用量が分割用量であり、第1の用量の細胞が3日以下の期間にわたって、合計で第1の用量の細胞を含有する複数の組成物の状態で投与される;および/または
連続用量が分割用量であり、連続用量の細胞が3日以下の期間にわたって、合計で連続用量の細胞を含有する複数の組成物の状態で投与される、態様1~47のいずれかの方法。
49. 前記方法が(a)の投与前および/もしくは(b)の投与前に化学療法剤を投与する工程をさらに含むか、または対象が第1の用量の投与前に化学療法剤であらかじめ処置されたことがある、態様1~48のいずれかの方法。
50. 化学療法剤が、シクロホスファミド、フルダラビン、および/またはその組み合わせからなる群より選択される薬剤を含む、態様49の方法。
51. 化学療法剤の投与が、(a)の投与前の化学療法剤の投与を含み、任意で(b)の投与前の化学療法剤の投与を含まない、態様49または50の方法。
52. 化学療法剤が(a)の投与の2~5日前に投与され、かつ/または(b)の投与の2~5日前に投与される、態様49~51のいずれかの方法。
53. 化学療法剤が、対象1m2あたり1gもしくは約1gから1m2あたり100gもしくは約100g、対象1m2あたり15gから対象1m2あたり50g、対象1m2あたり0.5gから対象1m2あたり5g、または、対象1m2あたり1gから対象1m2あたり3gもしくは約3gの用量で投与される、態様49~52のいずれかの方法。
54. 第1の用量の投与前に対象が細胞減少化学療法を受けているか、または前記方法が第1の用量の投与前に細胞減少化学療法の投与をさらに含む、態様1~53のいずれかの方法。
55. 化学療法剤が、対象における疾患または状態の負荷を低減するコンディショニング化学療法を含む、態様49~54のいずれかの方法。
56. 連続用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞を対象に投与する工程を含む、強化処置を提供する方法であって、
該投与の前に、対象が、対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分な量の事前用量のCAR発現を受けており、
投与時に、対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、該事前用量の直前の対象における前記指標の血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/もしくは約50倍より少なく、対象が、該事前用量の細胞によって発現されたCARに特異的な検出可能な適応性宿主免疫応答を示していない;ならびに/または事前用量と連続用量との間の期間が約14日より長く約28日より短い、方法。
57. CAR発現細胞の連続用量における細胞の数が、体重1キログラムあたり約2x106個の細胞(細胞/kg)~約6x106細胞/kg、約2.5x106細胞/kg~約5.0x106細胞/kg、または約3.0x106細胞/kg~約4.0x106細胞/kgを含む、態様56の方法。
58. 疾患または状態が白血病またはリンパ腫である、態様1~57のいずれかの方法。
59. 疾患または状態が急性リンパ芽球性白血病である、態様1~58のいずれかの方法。
60. 連続用量において投与される1キログラムあたりのCAR+細胞の数が、第1の用量において投与される1キログラムあたりのCAR+細胞の数より多い、態様59の方法。
61. 連続用量において投与される1キログラムあたりのCAR+細胞の数が、第1の用量において投与される1キログラムあたりのCAR+細胞の数の少なくとも2倍または約2倍または3倍または約3倍である、態様60の方法。
62. 疾患または状態が非ホジキンリンパ腫(NHL)である、態様1~58のいずれかの方法。
63. 第1の用量において投与されるCAR+細胞の数が対象1キログラムあたり1x106個もしくは約1x106個または1x106個以下もしくは約1x106個以下である、および/あるいは連続用量において投与されるCAR+細胞の数が対象1キログラムあたり3x106個または約3x106個である、態様1~62のいずれかの方法。
64. 連続用量において投与される1キログラムあたりのCAR+細胞の数が、第1の用量において投与される1キログラムあたりのCAR+細胞の数より少ないかもしくはほぼ少ないか、または第1の用量において投与される1キログラムあたりのCAR+細胞の数と同じであるかもしくはほぼ同じである、態様62の方法。
65. 1つまたは複数の追加の後続用量を対象に投与する工程をさらに含み、該1つまたは複数の追加の後続用量の1番目のものが、連続用量の投与開始後少なくとも14日または14日を超えた時期に投与される、態様1~64のいずれかの方法。
66. 第1の用量、連続用量、および後続用量の投与が、28日以内または約28日以内に該用量の少なくとも3つを投与する工程を含む、態様65の方法。
67. 連続用量が、第1の用量の投与開始後、約14日目に投与され、少なくとも1つの追加の後続用量の1つが、第1の用量の投与開始後、28日目に投与され、任意で、追加の後続用量が、第1の用量の投与開始後、42日目および/または56日目に投与される、態様65または66の方法。
68. 細胞がT細胞である、態様1~67のいずれかの方法。
69. T細胞が対象に対して自己由来である、態様1~68のいずれかの方法。
70. キメラ抗原受容体(CAR)発現細胞であらかじめ処置された対象における疾患または状態を処置するための医薬を製造するための、CAR発現細胞を含む組成物の使用であって、
組成物が、以前の処置の14~28日後に使用するためのものであり、
組成物が、CAR発現細胞であらかじめ処置されたことがある対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分な量で連続用量を投与するために製剤化される、使用。
71. キメラ抗原受容体(CAR)発現細胞であらかじめ処置された対象における疾患の処置において使用するためのCAR発現細胞であって、
細胞が、以前の処置の約14~28日後に使用するためのものであり、
細胞が、CAR発現細胞であらかじめ処置されたことがある対象における疾患または状態の負荷を低減するのに十分な量で連続用量を投与するために製剤化される、組成物。
72. 対象が形態学的疾患を示さない、および/または対象が骨髄中に5%を超える芽細胞を示さない、態様70の使用または態様71の細胞。
73. 疾患または状態を処置するための方法において使用するための医薬の製造におけるキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞の使用であって、
該方法が、
(a)第1の用量のCAR発現細胞を、疾患または状態を有する対象に投与する工程であって、該第1の用量が、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下の細胞、約1x108個以下の細胞、および/または対象1m2あたり約1x108個以下の細胞を含む、工程と、
(b)(a)の投与開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ(a)の投与開始後約28日より短い時点で、連続用量のCAR発現細胞を対象に投与する工程と
を含む、使用。
74. 疾患または状態を処置するための方法において使用するための、キメラ抗原受容体(CAR)発現細胞であって、該方法が、
(a)第1の用量のCAR発現細胞を、疾患または状態を有する対象に投与する工程であって、該第1の用量が、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下の細胞、約1x108個以下の細胞、および/または対象1m2あたり対象1m2あたり約1x108個以下の細胞を含む、工程と、
(b)(a)の投与開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ(a)の投与開始後約28日より短い時点で、連続用量のCAR発現細胞を対象に投与する工程と
を含む、組成物。
75. (i)対象において重度のCRSを誘導しないか、もしくは対象においてCRSを誘導しない;(ii)対象においてグレード3以上の神経毒性を誘導しない;(iii)臨床データに基づいて、そのように処置された対象の大多数において重度のCRSを誘導しない;および/または(iv)臨床データに基づいて、そのように処置された対象の大多数においてグレード3以上の神経毒性を誘導しない
量で投与するために、細胞が製剤化される、態様70~74のいずれかの使用または細胞。
76. 対象における疾患または状態を処置するための医薬を製造するためのキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞の使用であって、
前記細胞が、第1の用量および連続用量において対象に投与するために製剤化および/もしくは包装される、ならびに/または処置が、第1の用量および連続用量において前記細胞を対象に投与する工程を含み、
第1の用量が、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下の前記細胞、約1x108個以下の前記細胞、および/または対象1m2あたり約1x108個以下の前記細胞を含み、
連続用量が、(a)第1の投与の開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ約28日より短い時点、ならびに/あるいは(b)(i)対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、前記第1の投与の直前の対象における血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/もしくは約50倍より少ない;(ii)対象がグレード3以上の神経毒性を示さない;(iii)前記第1の用量の前記投与後の対象におけるCRS関連アウトカムもしくは神経毒性の症状が、第1の投与の投与後にピークレベルに達して低下し始めていた、ならびに/または(iv)対象が、前記第1の用量の細胞によって発現されるCARに対して検出可能な体液性免疫応答も細胞性免疫応答も示していない時点で投与するためのものである、使用。
77. 対象における疾患または状態の処置において使用するためのキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞であって、
前記細胞が、第1の用量および連続用量において対象に投与するために製剤化および/もしくは包装される、ならびに/または処置が、第1の用量および連続用量において前記細胞を対象に投与する工程を含み、
第1の用量が、対象体重1キログラムあたり約1x106個以下の前記細胞、約1x108個以下の前記細胞、および/または対象1m2あたり約1x108個以下の前記細胞を含み、
連続用量が、(a)第1の投与の開始後少なくとも約14日または約14日より長くかつ約28日より短い時点、ならびに/あるいは(b)(i)対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、前記第1の投与の直前の対象における血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/もしくは約50倍より少ない;(ii)対象がグレード3以上の神経毒性を示さない;(iii)前記第1の用量の前記投与後の対象におけるCRS関連アウトカムもしくは神経毒性の症状が、第1の投与の投与後にピークレベルに達して低下し始めていた、ならびに/または(iv)対象が、前記第1の用量の細胞によって発現されるCARに対して検出可能な体液性免疫応答も細胞性免疫応答も示していない時点で投与するためのものである、キメラ抗原受容体(CAR)発現細胞。
78. 第1の投与および連続投与が、1もしくは複数の単位用量で細胞を投与する工程を含み、それぞれの単位用量が、約5x107個の前記細胞~約5x108個の細胞、約5x107個の前記細胞~約2.5x108個の細胞、もしくは約2.5x108個の細胞~4x108個の細胞を含むか、または前記細胞が約5x107個以下の細胞、約1x108個以下の細胞、約2x108個以下の前記細胞、約2.5x108個以下の前記細胞、約3.0x108個以下の前記細胞、もしくは約4x108個以下の前記細胞を含む単位用量で製剤化される、態様73~77のいずれか一項記載の使用または細胞。
79. 第1の投与が1単位用量を投与する工程を含む、態様78記載の使用または細胞。
80. 連続投与が2以上の単位用量の投与を含む、態様78または態様79記載の使用または細胞。
81. 連続投与が1単位用量の投与を含む、態様78または態様79記載の使用または細胞。
82. 疾患または状態が腫瘍または癌である、態様68~81のいずれか一項記載の使用、組成物、または細胞。
83. 腫瘍または癌が白血病またはリンパ腫である、態様82記載の使用、組成物、または細胞。
84. 連続用量が、第1の用量または事前用量と比較して増加した数のCAR発現細胞を投与するために製剤化される、態様68~83のいずれか一項記載の使用、組成物、または細胞。
85. 組成物が急性リンパ芽球性白血病の処置において使用するためのものである、態様84記載の使用、組成物、または細胞。
86. 連続用量が、事前用量におけるCAR発現細胞の数より少ないかまたは該数とほぼ同じ数のCAR発現細胞を投与するために製剤化される、態様68~83のいずれか一項記載の使用、組成物、または細胞。
87. 組成物が非ホジキンリンパ腫(NHL)の処置において使用するためのものである、態様84または態様86記載の使用、組成物、または細胞。
88.対象に投与するための単位用量のキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞をそれぞれが個別に含む複数の密閉可能な容器であって、前記単位用量が、対象1kgあたり約1x108個の前記細胞、約1x108個以下の前記細胞、約5x107個の前記細胞、約5x107個以下の前記細胞、約1x106個の細胞、または対象1kgあたり約1x106個以下の前記細胞を含む、複数の密閉可能な容器と、
包装材料と、
第1の投与および連続投与を行うことによって複数の前記単位用量を対象に投与するための説明書を含むラベルまたは添付文書であって、前記第1の投与が前記単位用量の1つを対象に送達する工程を含み、前記連続投与が1または複数の前記単位用量を対象に送達する工程を含む、ラベルまたは添付文書と
を備える、製造品。
89. 第1の投与の約14日後または15日後から27日後の時期に、任意で第1の投与後約17日目または約21日目に、連続投与を行うべきであることを説明書が規定している、態様88記載の製造品。
90. 対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、第1の投与の直前の対象における指標の血清レベルの約10倍より少なく、約25倍より少なく、かつ/または約50倍より少ないと決定された後の時期に連続投与を行うべきであることを説明書が規定している、態様88または態様89記載の製造品。
91. CRSの指標がピークに達して低下している最中である、および/または対象が、第1の用量の細胞によって発現されるCARに特異的な検出可能な適応性宿主免疫応答を示していないと決定された後の時期に連続投与を行うべきであることを説明書が規定している、態様88~90のいずれか一項記載の製造品。
92. 細胞が対象から得られたものである、態様88~91のいずれか一項記載の製造品。
93. ラベルおよび/または包装材料が、対象に特有の識別子をさらに備え、それにより、細胞が対象から得られたこと、および/または対象に厳密に投与される必要があることを示している、態様88~92のいずれか一項記載の製造品。
94. 容器が可撓性のある細胞注入バッグであるか、または該バッグを備える、態様88~93のいずれか一項記載の製造品。
95. (a)腫瘍があるか、または腫瘍があると疑われる対象における疾患負荷を示す因子を評価する工程と、
(b)評価の結果に基づいて、対象に投与されるキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞の用量を決定する工程であって、
(i)評価によって、対象に形態学的疾患がないか、実質的な形態学的疾患がないか、または閾値レベルの、もしくは閾値レベルを上回る疾患負荷がないと決定されたら、1X106細胞/kgを超える用量のCAR発現細胞を対象に投与する工程と、
(ii)評価によって、対象が形態学的疾患を有するか、実質的な形態学的疾患を有するか、または閾値レベルの、もしくは閾値レベルを上回る疾患負荷を有すると決定されたら、(ii)と比較して比較的少ない用量のCAR発現細胞を対象に投与する工程と
を含む、処置方法。
96. 対象が形態学的疾患を示さないか、または実質的な形態学的疾患を示さないか、または閾値レベルの、もしくは閾値レベルを上回る疾患負荷を示さず、2x106細胞/kg、3x106細胞/kg、4x106細胞/kg、5x106細胞/kg、6x106細胞/kg、7x106細胞/kg、8x106細胞/kg、9x106細胞/kg、1x107細胞/kg、もしくは2x107細胞/kgを超える、または約2x106細胞/kg、約3x106細胞/kg、約4x106細胞/kg、約5x106細胞/kg、約6x106細胞/kg、約7x106細胞/kg、約8x106細胞/kg、約9x106細胞/kg、約1x107細胞/kg、もしくは約2x107細胞/kgの用量の細胞が投与される;および/あるいは
対象が形態学的疾患を示すか、または実質的な形態学的疾患を示すか、または閾値レベルを上回る疾患負荷を有し、1x106細胞/kg未満もしくは5x106細胞/kg未満または約1x106細胞/kg未満もしくは約5x106細胞/kg未満の用量の細胞が投与される、態様95記載の方法。
97. 骨髄中に5%を超える、または5%に等しい、もしくは約5%の芽細胞、骨髄中に10%を超える、もしくは10%に等しい、もしくは約10%の芽細胞、骨髄中に15%を超える、もしくは15%に等しい、もしくは約15%の芽細胞、または骨髄中に20%を超える、もしくは20%に等しい、もしくは約20%の芽細胞があれば、対象が形態学的疾患および/もしくは実質的な形態学的疾患を示す、ならびに/または疾患負荷が閾値レベルであるか、もしくは閾値レベルを上回る、態様95または態様96記載の方法。
98. 対象が5%未満または約5%未満の芽細胞を示すのであれば、1x106細胞/kg、2x106細胞/kg、3x106細胞/kg、4x106細胞/kg、5x106細胞/kg、6x106細胞/kg、7x106細胞/kg、8x106細胞/kg、9x106細胞/kg、1x107細胞/kg、もしくは2x107細胞/kgを超える、または約1x106細胞/kg、約2x106細胞/kg、約3x106細胞/kg、約4x106細胞/kg、約5x106細胞/kg、約6x106細胞/kg、約7x106細胞/kg、約8x106細胞/kg、約9x106細胞/kg、約1x107細胞/kg、もしくは約2x107細胞/kgの用量の細胞が投与される、および/あるいは対象が5%を超えるか、もしくは5%に等しいか、もしくは約5%の芽細胞を示すのであれば、約1x106細胞/kg未満または約5x106細胞/kg未満の用量の細胞が投与される;
対象が10%未満または約10%未満の芽細胞を示すのであれば、1x106細胞/kg、2x106細胞/kg、3x106細胞/kg、4x106細胞/kg、5x106細胞/kg、6x106細胞/kg、7x106細胞/kg、8x106細胞/kg、9x106細胞/kg、1x107細胞/kg、もしくは2x107細胞/kgを超える、または約1x106細胞/kg、約2x106細胞/kg、約3x106細胞/kg、約4x106細胞/kg、約5x106細胞/kg、約6x106細胞/kg、約7x106細胞/kg、約8x106細胞/kg、約9x106細胞/kg、約1x107細胞/kg、もしくは約2x107細胞/kgの用量の細胞が投与される、および/あるいは対象が10%を超えるか、もしくは10%に等しいか、もしくは約10%の芽細胞を示すのであれば、約1x106細胞/kg未満または約5x106細胞/kg未満の用量の細胞が投与される;
対象が15%未満または約15%未満の芽細胞を示すのであれば、1x106細胞/kg、2x106細胞/kg、3x106細胞/kg、4x106細胞/kg、5x106細胞/kg、6x106細胞/kg、7x106細胞/kg、8x106細胞/kg、9x106細胞/kg、1x107細胞/kg、もしくは2x107細胞/kgを超えるか、または約1x106細胞/kg、約2x106細胞/kg、約3x106細胞/kg、約4x106細胞/kg、約5x106細胞/kg、約6x106細胞/kg、約7x106細胞/kg、約8x106細胞/kg、約9x106細胞/kg、約1x107細胞/kg、もしくは約2x107細胞/kgの用量の細胞が投与される、および/あるいは対象が15%を超えるか、もしくは15%に等しいか、もしくは約15%の芽細胞を示すのであれば、約1x106細胞/kg未満または約5x106細胞/kg未満の用量の細胞が投与される;
対象が20%未満または約20%未満の芽細胞を示すのであれば、1x106細胞/kg、2x106細胞/kg、3x106細胞/kg、4x106細胞/kg、5x106細胞/kg、6x106細胞/kg、7x106細胞/kg、8x106細胞/kg、9x106細胞/kg、1x107細胞/kg、もしくは2x107細胞/kgを超えるか、または約1x106細胞/kg、約2x106細胞/kg、約3x106細胞/kg、約4x106細胞/kg、約5x106細胞/kg、約6x106細胞/kg、約7x106細胞/kg、約8x106細胞/kg、約9x106細胞/kg、約1x107細胞/kg、もしくは約2x107細胞/kgの用量の細胞が投与される、および/あるいは対象が20%を超えるか、もしくは20%に等しいか、もしくは約20%の芽細胞を示すのであれば、約1x106細胞/kg未満または約5x106細胞/kg未満の用量の細胞が投与される、
態様95~97のいずれか一項記載の方法。
99. 腫瘍が、白血病またはリンパ腫、任意で、B細胞に由来する白血病またはリンパ腫である、態様95~98のいずれか一項記載の方法。
100. 前記用量の細胞の投与後に、対象がサイトカイン放出症候群(CRS)を示さないか、重度のCRSを示さないか、神経毒性を示さないか、重度の神経毒性を示さないか、またはグレード3を超える神経毒性を示さない、態様95~99のいずれか一項記載の方法。
101. (a)の投与が、(a)の投与後の疾患負荷を示す1種または複数種の因子の低減により示されるような、対象における疾患または状態の負荷の低減につながる、態様95~100のいずれか一項記載の方法。
102. 1つまたは複数の連続用量を対象に投与する工程をさらに含む、態様95~101のいずれか一項記載の方法。
【実施例
【0371】
以下の実施例は例示のためだけに含まれ、本発明の範囲を限定することを目的としない。
【0372】
実施例1:第1の用量および連続用量のCAR発現自己由来T細胞を用いた癌患者の処置
免疫親和性に基づく濃縮によって、癌を有するヒト対象の末梢血からT細胞を単離し、前記細胞を培養し、対象にある癌によって発現される抗原に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)をコードするウイルスベクターを形質導入する。この抗原は腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原である。前記細胞を1つ1つの可撓性のある注入バッグの中に入っている注入用培地に入れて凍結保存する。可撓性のある注入バッグにはそれぞれ1単位用量の前記細胞が入っている。1単位用量の前記細胞は、対象体重1キログラムあたり約1x106個の細胞、または対象体重1キログラムあたり約5x105個の細胞である。注入前に、前記細胞を-130℃より低い温度で維持する。
【0373】
細胞療法を開始する前に、対象から血液を入手し、任意で、血清中にある、サイトカイン放出症候群(CRS)を示す1種または複数種の血清因子、例えば、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターフェロンγ(IFNγ)、およびIL-6のレベルをELISAによって評価する。任意で、処置が始まる前に、固形腫瘍のサイズまたは質量を、例えば、PETもしくはCTスキャンで測定することによって、または癌に関連する患者の細胞、例えば、骨髄中または末梢血中にある癌に関連する患者の細胞の数を評価することによって腫瘍負荷を評価する。
【0374】
前記細胞をベッドサイドで約37℃まで温めることで解凍し、対象に、第1の用量の前記細胞を単回注入によって投与する。第1の用量の量は1単位用量である。腫瘍負荷が少ないと思われた対象については、第1の用量において2単位用量が投与されてもよい。第1の用量は、連続注入によって約15~30分間にわたって静脈内(IV)投与される。
【0375】
第1の用量の投与後、対象は理学的検査を受け、毒性または毒性アウトカムの任意の症状、例えば、発熱、低血圧、低酸素、神経障害、または、炎症性サイトカインもしくはC反応性タンパク質(CRP)の高い血清レベルについてモニタリングされる。任意で、第1の用量の投与後に、1回または複数回、患者から血液を入手し、CRSを示す血清因子のレベルをELISAによって評価する。血清因子のレベルを、第1の用量の投与直前に入手した血清因子のレベルと比較する。必要であれば、CRSの徴候を低減するために、抗IL6または他のCRS療法を投与する。
【0376】
任意で、対象における抗CAR免疫応答の存在または非存在を、第1の用量の投与後に、例えば、投与を開始して1週間後、2週間後、3週間後、および/または4週間後に、例えば、ELISA、ELISpot、細胞に基づく抗体アッセイ、および/または混合リンパ球反応によって検出する。
【0377】
第1の用量によって成し遂げられる腫瘍負荷のパーセント低減は、任意で、固形腫瘍を有する患者では、第1の用量の投与後に1回または複数回、スキャン、例えば、PETおよびCTスキャンを行うことによって、ならびに/または、例えば、血液癌を有する対象では、血液中もしくは腫瘍部位にある疾患陽性細胞を定量し、その値と第1の用量の直前に観察された値を比較することによって測定する。
【0378】
連続用量を投与する。一部の対象では、第1の用量の投与を開始して21日後に、連続用量を投与する。場合によっては、第1の用量を投与して21日後に、試験したCRS関連アウトカムまたは血清因子のレベルが、許容されるレベルを下回っており、抗CAR免疫応答が対象において検出されなかった場合にのみ、連続用量を投与する。他の対象では、第1の用量を投与して3日より後であり、かつ対象にCRSまたは重度のCRSがないとみなされた時期に、または試験したCRSを示す血清因子が全て、第1の用量の投与後に、ピークで観察されるレベルの20%未満であり、対象に検出可能な抗CAR免疫応答がないとみなされた時期に、連続用量を投与する。
【0379】
連続用量のサイズは患者に特有のものであり、腫瘍負荷、抗CAR免疫応答の存在、およびCRS関連アウトカムのレベルに基づく。患者の中には、1、2、3、またはさらに多くの単位用量の前記細胞を含有する連続用量が投与されるものもいる。連続用量を約15~30分にわたってIV連続注入によって投与する。
【0380】
第1の用量の後に開始して、数年まで継続して、対象を定期的にモニタリングする。抗CAR免疫応答の発生を評価し、腫瘍負荷を測定する。任意で、再診中に、投与された細胞のインビボ増殖および持続性を測定するためにフローサイトメトリーおよび定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって、CAR発現細胞を検出する。
【0381】
実施例2:処置前に形態学的疾患を有する対象におけるCAR-T細胞処置の神経毒性の評価
CD19+B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する対象に、抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)発現自己由来T細胞を投与した。CARはマーカーとして切断型EGFR(EGFRt)部分を含んだ。前記細胞を投与する前に、患者を白血球除去し、化学療法で処置した。自己由来CAR発現T細胞を作製するために、免疫親和性に基づく濃縮によって、1人1人の対象に由来する白血球除去試料からT細胞を単離し、活性化し、抗CD19 CARをコードするウイルスベクターを形質導入した。前記細胞を増殖し、凍結し、投与前にベッドサイドで解凍した。
【0382】
処置前に、骨髄を評価することによって腫瘍負荷を評価し、骨髄芽細胞のパーセントを求めた。骨髄中に少なくとも5%の芽細胞がある対象が形態学的疾患(MD)を有するとみなされた。骨髄中に5%未満の芽細胞を含むが、(フローサイトメトリーによって)骨髄中に分子的に検出可能な疾患を示している、下記で定義するような完全寛解(CR)を示した対象は微小残存病変(MRD)を有するとみなされた。CAR発現T細胞を、約0.9x106CAR+細胞/kgまたはおよそ0.9x106CAR+細胞/kg~約5.6x106CAR+細胞/kgまたはおよそ5.6x106CAR+細胞/kgの様々な用量で約15~30分にわたって単回静脈内(IV)連続注入によって対象に投与した(図1A~Cを参照されたい)。細胞注入の2~7日前に、プレコンディショニング化学療法処置としてシクロホスファミドを対象に投与した。
【0383】
処置に対する応答を評価するために、CAR発現T細胞を投与した後に、対象の疾患状態(MRDまたはMD)を評価した。好中球数>1,000x106/L、血小板数>100,000x106/L、ヘモグロビン>10g/dL;処置後の骨髄分画(bone marrow differential)に存在する芽細胞が<5%で、正常造血が回復し、かつ最低4週間にわたって白血病の臨床証拠が無ければ、対象における完全寛解(CR)と決定された。処置後に、対象を、神経毒性(錯乱、失語症、発作、痙攣、嗜眠、および/または精神状態変化の症状を含む神経学的合併症)についても評価およびモニタリングし、重症度に基づいて、グレード1~5スケール(例えば、Guido Cavaletti & Paola Marmiroli Nature Reviews Neurology 6, 657-666 (December 2010)を参照されたい)を用いてグレード分類した。グレード3(重度の症状)、4(命に関わる症状)、または5(死亡)が重度の神経毒性とみなされた。サイトカイン放出症候群(CRS)も測定してモニタリングし、重症度に基づいてグレード分類した。
【0384】
投与量と比較した、様々な用量のCAR発現T細胞の単回注入を用いて処置した後の応答、重度のCRSの存在、および重度の神経毒性の存在を、処置前の疾患負荷に基づいて分けた対象群において評価した。結果を図1A~Cに示した。
【0385】
図1Aに示したように、処置前の疾患負荷(形態学的疾患または分子的に検出可能な疾患)に関係なく、試験した全用量において、CAR発現T細胞で処置した対象の大多数において完全寛解(CR)が観察された。CRSは、主に、処置前に形態学的疾患を有すると分類された対象において観察された。しかしながら、図1Bに図示した結果から、この群の中で、様々な投与量レベルのCAR発現T細胞が与えられた対象にCRSが存在すると観察されたことが分かる。
【0386】
図1Cに示したように、CRSの結果に対して、重度の神経毒性も、処置前の微小残存病変と比較した時に形態学的疾患を有する対象において最も頻繁に観察された。しかしながら、高用量が与えられた対象にしか神経毒性は観察されなかった。約3.5x106細胞/kgより少ない用量のCAR発現T細胞が与えられた、本研究において分析した対象は、処置後、重度の神経毒性を示さなかった。1つの例外を除いて、重度の神経毒性は、一般的に、処置前に、分子的に検出可能な疾患を有すると分類された対象では観察されなかった。従って、低用量の投与T細胞が与えられた、および/または処置前に疾患負荷が少なかった対象は、一般的に、重度の神経毒性を示さなかった。
【0387】
これらの結果は、毒性を最小にし、かつ効力を最大にするためには、形態学的疾患を有する対象を含む対象に、疾患負荷を低減するための第1の低用量のCAR発現T細胞(全対象またはほとんどの対象において疾患を根絶するのに十分とは限らない場合がある)と、それに続いて、腫瘍負荷が低減した後に、連続用量または後続用量の細胞を投与する工程を含む投与計画を使用することを裏付けている。これらの結果はまた、(例えば、増大した応答または効力を促進するために)特定の疾患または状況において所望または必要とされれば、細胞の連続投与またはその後の投与(腫瘍負荷が低減した後に与えられる。この時点では全対象またはほとんどの対象は微小病変を示すはずである)、連続用量を、もっと高い用量で、重度の神経毒性の最低限のリスクが無いか、または重度の神経毒性の最低限のリスクを伴って行うことができるという結論も裏付けている。
【0388】
実施例3:CAR + 自己由来T細胞の第1の用量および連続用量の後の効力および毒性の評価
複数の用量のCAR+T細胞を投与した実施例2に記載の研究における対象のサブセットにおいて、処置効力および毒性作用を評価した。以下の表3は、様々な複数の用量において投与した細胞の特定の投与量と、いずれの場合でも、第1の用量と連続用量との間に経過した時間を示す。表3はまた、実施例2に記載の判断基準に基づいて各用量の投与前に評価した時の、各対象の腫瘍負荷(MRDまたはMD、骨髄中にある芽細胞の%;「疾患負荷」と表示した縦列の下に列挙した)も示す。表3はまた、実施例2に記載のように、(投与後の腫瘍負荷を列挙した縦列「応答」の下に、投与前の疾患負荷と比較した処置に対する応答を示す)各投与に対する応答、重度のCRSおよび重度の神経毒性の存在または非存在(Y/N)についての各患者の結果も列挙する。
【0389】
(表3)CAR+T細胞の第1の用量および連続用量の安全性および効力
*第3の用量;第1の用量および第2の用量後のCR対象
ID:対象の数
MRD:微小残存病変
CR:完全寛解
Cri:不完全な血球数回復を伴う完全寛解
NR:応答なし
N/A:入手できなかった
N:はい
Y:いいえ
【0390】
表3の結果から、対象における腫瘍負荷の低減、例えば、>5%の芽細胞の存在からMRD+もしくは場合によってはMRD-への、またはMRD+からMRD-への腫瘍負荷の低減によって証明されたように、処置した対象の大多数が第1の用量の細胞に応答したことが分かる。一部の対象の完全寛解(CR)も観察された。表3に示したように、MRDの存在を対象にしたフローサイトメトリー分析から評価した時の完全寛解または疾患低減によって証明されたように、腫瘍低減はまた、連続用量の細胞を投与した後の対象についても観察された(患者識別番号1、2、7、8、および9を参照されたい)。従って、この結果から、連続用量の細胞の投与も有効だったことが証明される。ほとんどの対象は、どの用量でも重度のCRSを示さなかった。さらに、実施例2と一致して、重度の神経毒性は、高用量のCAR発現細胞が与えられたことのある対象にだけ、概して、形態学的疾患を有する対象にだけ投与後に生じることが観察された。
【0391】
場合によっては、表3は、一部の対象が第1の用量に応答せず(NR)(患者識別番号5および識別番号2*を参照されたい)、その結果、疾患負荷または腫瘍負荷レベルが低減しなかったことを証明している。さらに、これらの結果から、これらの対象のどちらでも、連続した高用量が与えた後に重度の神経毒性が検出されなかったので、このように第1の用量を注入した後に臨床寛解を成し遂げることができなくても、連続した高用量を投与した時に対象において神経毒性のリスクまたは頻度は増加しなかったことが分かる。
【0392】
一部の態様において、対象における応答性または毒性の程度が無いこと(または比較的小さいこと)は、対象がCAR+T細胞療法に良好に応答しなかったかもしれないが、もう1回の注入時には、ある特定の毒性有害事象のリスクがないことも示している。このことは、そうでなければ、その後の投与のために高用量を避ける必要があることを示しているかもしれない。従って、これらの結果は、(例えば、効力を最大にするために、または効力を改善するために所望であれば、または必要であれば)、第1の低用量を投与した後に(例えば、比較的短い期間で)第1の用量と比較して高用量を用いて行われる連続投与が続く投与計画を裏付けている。ここに示した結果から、ある特定の対象が第1の用量に良好に応答しなくても(従って、連続用量の時に腫瘍負荷が少なくなくても)、連続用量の投与時の重度の神経毒性のリスクは、これらの非応答対象についても小さいことが分かる。
【0393】
第1の用量および連続用量において投与した細胞の効力をさらに評価するために、投与した細胞の生物学的活性を、C反応性タンパク質(CRP)の血清レベルの測定値のピークレベルに基づいて比較した。血清中にあるCRPのピークレベルの上昇は、注入後にT細胞が増殖した証拠とみなされた。結果を図2に示した。これらの結果は、第1の用量および連続用量のT細胞が注入された後に細胞が増殖した証拠を示している。従って、これらの結果から、対象が、CAR+T細胞の第1の投与とは対照的に、連続用量の後にCRSおよび神経毒性の低減を示したが、投与した細胞の生物学的活性および投与した細胞が増殖する能力は各投与において同等であったことが分かる。
【0394】
本研究の対象はまた理学的検査も受け、表4に示した症状を含む他の有害事象(AE)の症状もモニタリングされた。対象におけるCAR+T細胞の第1の投与と連続投与との違いを評価するために、これらのデータを比較した。第1の用量の注入後の、治療下で発現したAE(TEAE)とは、第1の用量を与えてから30日後以内だが連続用量を与える前に起こった任意のAEとして定義された。連続用量の注入後のTEAEとは、連続用量を与えてから30日後以内であるが任意の後続用量より前に起こった任意のAEとして定義された。表4は、TEAEを示した対象の数と、同じTEAEについて評価した全対象の数と比較した、このようなTEAEを示した対象のパーセント(括弧の中)とを示す。これらの結果から、第1の用量および連続用量を注入した後の有害事象のパーセントは同等だったことが分かる。
【0395】
(表4)有害事象
【0396】
実施例4:様々な対象集団の全生存期間に及ぼすCAR + T細胞用量の影響
対象の処置全体に対するCAR+T細胞用量の効果をさらに評価するために、実施例2に記載の研究における対象の全生存期間を小さな対象群間で比較し、投与した細胞の数と、投与時の疾患状態に基づいて分けた。積極限(product-limit)生存は、打切り観測値(censored observation)、例えば、発生した観測値、例えば、患者が研究から離脱した場合に発生した観測値を用いてカプラン・マイヤー推定を計算することによって求めた。
【0397】
2.5x106CAR+細胞/kgより少ない用量が投与された対象群の全対象と、2.5x106CAR+T細胞/kgより多い用量が投与された別の対象群の全対象を比較すると、結果から、高用量が投与された対象群について全生存期間の利点があることが分かった。投与時に形態学的疾患を有する対象を見ただけでも、高用量を用いた全生存期間に対する観察された効果の方がかなり大きかった。まとめると、本明細書において示された結果は、疾患負荷が概して患者において低減したままであるが、CRSおよび/または神経毒性のリスクが小さいままの時期に連続用量が与えられる時に、(第1の用量と比較して)高用量が連続投与において用いられる投与計画を裏付けている。本実施例における結果は、連続した高用量の使用が、増大した効力を促進するという結論を裏付けている。さらに、述べたように、実施例2に示した結果は、(対象に低疾患負荷があり、それ以外には毒性のリスクがない)その後の投与の時に高用量を使用しても毒性リスクの上昇にはつながらないという結論を裏付けている。
【0398】
実施例5:急性リンパ芽球性白血病(ALL)を処置するためのCAR + T細胞の複数回投与計画
例示的な投与計画では、CD19+B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する対象を、第1の低用量の細胞および連続した高用量の細胞の投与を含む2用量のCAR発現T細胞で処置した。処置前に、実質的に実施例2に記載のように自己由来CAR発現T細胞を作製した。対象には、CAR発現T細胞の第1の用量の2~5日前に、1.0~3.0g/m2の単回静脈内リンパ球枯渇用量のシクロホスファミドを含むプレコンディショニング化学療法を与えた。第1の用量は、約1×106細胞/kg患者体重を含んだ。第1の用量の14~28日後に、一用量で、連続用量のCAR発現細胞(約3×106個のこのような細胞/kg患者体重)を投与した。
【0399】
疾患負荷(形態学的疾患のレベルおよび存在または非存在ならびに分子的に検出可能な疾患の程度を含む)、CRSおよび神経毒性を含む有害事象の証拠、ならびに生存を評価およびモニタリングするために、骨髄、末梢血、および脳脊髄液(CSF)検査、中枢神経系(CNS)症状の評価を含めて処置の効力について対象をモニタリングした。
【0400】
実施例6:急性リンパ芽球性白血病(ALL)を処置するためのCAR + T細胞の反復投与計画
例示的な投与計画では、再発した、または難治性のB細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する対象を、最初の28日以内に少なくとも3用量の細胞を投与する工程を含むCAR発現T細胞の反復投与で処置する。処置前に、実質的に実施例2に記載のように自己由来CAR発現T細胞を作製する。任意で、シクロホスファミドおよび/またはフルダラビン(CY/Flu)のプレコンディショニング免疫抑制化学療法を対象に与える。このプレコンディショニング免疫抑制化学療法は、CAR発現細胞の第1の用量前の少なくとも2日の時点で投与され、一般的には、細胞投与前の5日または7日を超えて投与されない。
【0401】
対象に、約1×106細胞/kg患者体重より少ないか、またはこれに等しい、例えば、約0.4×106細胞/kg~約1×106細胞/kgの第1の用量のCAR発現細胞を与える。第1の用量の投与後、14~28日以内に、および/またはCARに対する免疫応答が発生する前に、対象に、2つの追加の高用量の細胞を注入する。一部の態様では、第1の用量の約14日後に、第1の用量より多い用量、例えば、約2.5×106細胞/kg~約4.5×106細胞/kg、例えば、約3×106細胞/kg患者体重の用量で連続用量のCAR発現細胞を投与し、それに続いて、第1の用量の約28日後に、第1の用量より多い用量、例えば、約2.5×106細胞/kg~約4.5×106細胞/kg、例えば、約3×106細胞/kg患者体重の用量で第3の用量のCAR発現細胞を投与する。一部の態様では、1つまたは複数の後続用量の細胞を投与する。一部の態様では、第1の用量の後、約42~56日以内に、第4の用量のCAR発現細胞を、第1の用量より多い用量、例えば、約2.5×106細胞/kg~約4.5×106細胞/kg、例えば、約3×106細胞/kg患者体重の用量で投与する。
【0402】
対象における最終用量の細胞の後の全寛解率(ORR)を測定することによって、処置の効力について対象をモニタリングする。一部の態様では、処置前に疾患の形態学的な証拠があった(骨髄中にある、5%超または5%の細胞が芽細胞であった)対象における効力をモニタリングする。ORRは、骨髄、末梢血、および脳脊髄液(CSF)の検査ならびに理学的検査および中枢神経系(CNS)症状の評価によって判定される、不完全な血球数の回復を伴うCR(CRi)の対象の割合として求める。
【0403】
実施例7:非ホジキンリンパ腫(NHL)を処置するためのCAR + T細胞の複数回投与計画とリンパ球枯渇化学療法プレコンディショニング
CD19+B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)を処置するための例示的な投与計画では、対象を処置するためにCAR発現T細胞の複数回投与計画を使用する。処置前に、実質的に実施例2に記載のように自己由来CAR発現T細胞を作製する。NHLを有する対象を少なくとも2つの用量のCAR発現T細胞で処置する。対象は、約1×106細胞/kg患者体重より少ないか、またはこれに等しい、例えば、約0.4×106細胞/kg~約1×106細胞/kgの第1の用量のCAR発現細胞を受けている。例示的な投与計画では、第1の用量の14~28日後に、連続用量のCAR発現T細胞を投与する。
【0404】
例示的な一投与計画では、NHLを有する対象には、連続用量のCAR発現T細胞を、第1の用量のCAR発現T細胞と同じであるか、またはこれより少ない用量、例えば、約1×106細胞/kg患者体重より少ないか、またはこれに等しい用量、例えば、約0.4×106細胞/kg~約1×106細胞/kgの用量で与える。任意で、先の投与の14~28日後に、さらなる反復用量を、先の投与において投与した用量より少ないか、またはこれに等しい用量で投与する。
【0405】
例示的な一投与計画では、連続用量を与える前に、任意で、腫瘍負荷について対象をモニタリングする。形態学的疾患からMRDへの腫瘍低減によって証明されるように分子的寛解が検出されたら、連続用量のCAR発現T細胞を、第1の用量より多い用量、例えば、約2.5×106細胞/kg~約4.5×106細胞/kg、例えば、約3×106細胞/kg患者体重の用量で対象に投与する。分子的寛解が起こっていなければ、連続用量のCAR発現T細胞を、第1の用量のCAR発現T細胞と同じであるか、またはこれより少ない用量、例えば、約1×106細胞/kg患者体重より少ないか、またはこれに等しい用量、例えば、約0.4×106細胞/kg~約1×106細胞/kgの用量で対象に投与する。任意で、先の投与の14~28日後に、さらなる反復用量を投与し、分子的寛解が起こっていれば高用量を投与し、分子的寛解が起こっていなければ低用量を投与する。
【0406】
例示的な一投与計画では、第1の用量を与える前に、シクロホスファミドおよびフルダラビン(CY/Flu)の免疫枯渇プレコンディショニング化学療法を対象に与える。この免疫枯渇プレコンディショニング化学療法をCAR発現細胞の第1の用量前の少なくとも2日の時点で投与し、一般的には、細胞投与前の7日を超えて投与しない。プレコンディショニング処置の後、前記の第1の用量を、約1×106細胞/kg患者体重より少ないか、またはこれに等しい、例えば、約0.4×106細胞/kg~約1×106細胞/kgのCAR発現T細胞の用量で対象に投与する。連続用量のCAR発現T細胞を、第1の用量より多い用量、例えば、約2.5×106細胞/kg~約4.5×106細胞/kg、例えば、約3×106細胞/kg患者体重の用量で対象に投与する。任意で、先の投与の14~28日後に、さらなる反復用量を約2.5×106細胞/kg~約4.5×106細胞/kg、例えば、約3×106細胞/kg患者体重の用量で投与する。
【0407】
実施例8:キメラ抗原受容体(CAR)を通じて刺激されたT細胞におけるPD1/PD-L1発現の評価
免疫親和性に基づく濃縮によって、ヒト対象に由来する白血球除去試料からT細胞を単離し、活性化し、ヒトCD28由来細胞内シグナル伝達ドメインおよびヒトCD3ζ由来シグナル伝達ドメインを含有する抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)をコードするウイルスベクターを形質導入した。組成物中にある、全T細胞の中でのCAR+細胞のパーセントおよびT細胞サブセットの中でのCAR+細胞のパーセントと、CD4+ T細胞とCD8+T細胞との比を求めるために、結果として生じた単離された組成物における(CARおよびある特定のT細胞マーカーの)表面発現をフローサイトメトリーによって評価した(表5を参照されたい)。
【0408】
(表5)形質導入されたT細胞上での抗CD19 CAR発現
【0409】
次いで、1)CARに特異的な抗原を発現するK562細胞(K562-tCD19細胞)(抗原特異的共培養);2)無関係の抗原を発現するK562細胞(K562-ROR1細胞)(非特異的共培養対照);または3)最初にプレート結合抗CD3および可溶性抗CD28を使用し、該当する場合には3日目にインキュベートする、プレート結合抗CD3抗体および可溶性抗CD28抗体(TCR複合体を介した刺激のため)とインキュベートすることによって、前記組成物を様々な試料に細分した。(1)および(2)のために、それぞれ、CD19およびROR1を発現するようにK562(不死化骨髄性白血病株)細胞を操作し、CAR発現T細胞と1:1比でインキュベートした。それぞれの条件について、CAR発現T細胞を24時間刺激した。未刺激試料(K562細胞または刺激用抗体がない「培地」)を、さらなる負の対照として使用した。
【0410】
培養して24時間後に、各試料中の細胞上でのPD1、PD-L1、PD-L2、T細胞マーカー、およびCAR(CARのマウス可変領域部分を検出するヤギ抗マウス(「GAM」)染色に基づく)の表面発現を評価するために、フローサイトメトリーを行った。分析のために、リンパ球と一致する前方散乱光プロファイルおよび側方散乱光プロファイルをもつ単一生細胞をゲーティングした。ゲーティングされた様々なT細胞集団(CD4+/CAR+、CD4+/CAR-、CD8+/CAR+、およびCD8+/CAR-)上でのPD1、PD-L1、およびPD-L2の発現を、様々なマーカーの表面発現に基づいて設定したゲートを用いて、適切なゲーティングを決定するために負の対照(「培地」)試料用の値を用いて評価した。
【0411】
図3Aおよび図4Aに示したように、CARに特異的な抗原を発現する細胞(K562-tCD19)と共に培養した時に、PD1およびPD-L1発現はCD4+/CAR+T細胞およびCD8+/CAR+T細胞の両方で24(24)時間以内に増加した。このPD1およびPD-L1の発現増加は、無関係の抗原を発現する同じタイプの細胞(K562-ROR1)とインキュベートしたCAR+細胞でも、TCR複合体(抗CD3抗体および抗CD28抗体)を介して刺激するように設計された条件下でインキュベートしたCD4+細胞集団またはCD8+細胞集団のいずれにおいても、この時間枠内で観察されなかった。PD-L2の発現は、試験したどの刺激条件下でも、この時間枠内でアップレギュレートされなかった。
【0412】
図3Bおよび図4Bに示したように、CD19発現細胞とインキュベートした細胞におけるPD-1発現およびPD-L1発現の増加は、主に、抗CD19 CARの発現によるものであることが観察された。CARを発現しない(「CAR-」)CD4+ゲーティングT細胞もCD8+ゲーティングT細胞も、CD19発現細胞とインキュベートした後に、PD-1表面発現の大幅な増加を示さず、PD-L1表面発現の大幅な増加を示さなかった。
【0413】
ヒト4-1BB由来細胞内シグナル伝達ドメインおよびヒトCD3ζ由来シグナル伝達ドメインを含有する抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)を用いて遺伝子操作されたT細胞の存在下で同様の結果が得られた。従って、これらの結果から、CD28または4-1BB補助刺激シグナル伝達ドメインのいずれかを含有するCAR構築物を形質導入したT細胞上ではPD-1およびPD-L1のアップレギュレーションが起こったことが分かった。これらのデータから、PD1およびPD-L1の表面発現はキメラ抗原受容体を介した刺激後、24時間以内にアップレギュレートされたが、古典的なT細胞抗原受容体複合体(CD3/CD28抗体)を介してシグナルを模倣するように設計された条件下の刺激後ではアップレギュレートされなかったことが証明される。
【0414】
これらのデータは、対象への投与時に、そのCARに特異的な抗原にインビボで曝露されると、ある状況では、PD-L1および/またはPD-1がアップレギュレートされる可能性があり、これは、内因性TCRを通じたコグネイト抗原と相互作用した後に生じるものより大きな程度で、および/もしくは速く(または内因性TCRを通じたコグネイト抗原と相互作用した後に生じるものとは区別して)生じる可能性があるという結論をさらに裏付けている。
【0415】
このような分子および他の阻害性マーカーのアップレギュレーションはT細胞の機能喪失および/または枯渇の一因となる場合があり、例えば、前記細胞に対する長期曝露を損なう場合がある。阻害性分子、例えば、PD-1および/もしくはPD-L1をまだ発現していない細胞または対象に存在する細胞と比較して低レベルで発現する細胞を送達するために、反復用量または連続用量の細胞が用いられてもよい。従って、これらのデータは、初回用量の後に、例えば、標的抗原に対する曝露後に、PD-L1またはPD-1が初回用量の細胞上にアップレギュレートされているか、またはアップレギュレートされる時に、連続用量のT細胞が対象に投与される複数回投与計画をさらに裏付ける。
【0416】
一部の態様において、連続用量において、阻害性分子は、その中にある前記細胞上に発現していないか、または実質的に発現していない(または参照細胞集団と同じ程度で発現していない)(またはその中にある前記細胞の50%超、40%超、30%超、20%超、10%超、もしくは5%超で発現していない)。一部の態様において、阻害性分子、例えば、PD-1およびPD-L1を発現しないか、または実質的に発現しない細胞を反復投与することによって、機能的なCAR発現T細胞またはロバストな機能を有するCAR発現T細胞が対象に存在する期間を延長することができる。一部の態様において、1つまたは複数の連続用量を投与することによって、多数の遺伝子操作されたT細胞を補充すると、抗原受容体(例えば、CAR)発現細胞に対する曝露の程度を大きく、および/または長期間にし、処置アウトカムを改善することができる。一部の態様において、PD-L1またはPD-1が、参照レベルまたは集団と比較して、例えば、対象に投与する直前の第1の用量の組成物中の細胞と比較してアップレギュレートされた、例えば、参照集団と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%多い表面発現の程度までアップレギュレートされた時期に、連続用量が投与される。
【0417】
実施例9:腫瘍負荷に基づいた対象における神経毒性の評価
CD19+B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する対象に、抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)発現自己由来T細胞を投与した。処置前に、自己由来CAR発現T細胞を、実質的に実施例2に記載のように作製した。
【0418】
2x105細胞/kg(N=13)、2x106細胞/kg(N=15)、または2x107細胞/kg(N=2)の用量でCAR発現T細胞を単回IV連続注入した後に、神経毒性が患者コホートにおいて観察された(図5Aおよび5Bを参照されたい)。場合によっては、注入前に、シクロホスファミド(約2g/m2)、シクロホスファミド(2g/m2)およびエトポシド(100mg/m2、1日3回投与)、またはシクロホスファミド(60mg/kg)およびフルダラビン(25mg/m2、1日3回~5回投与)のプレコンディショニング化学療法処置を対象に投与した。
【0419】
処置後に、EGFRt(CAR特異的マーカー)およびCD4またはCD8の表面発現を対象にしたフローサイトメトリーを行うことによって、処置した対象の末梢血に存在するCAR-T細胞の数を求めた。神経毒性も測定してモニタリングし、前記のように重症度に基づいてグレード分類した。
【0420】
図5Aに示したように、本研究において処置した対象で観察された神経毒性の程度は、処置前の比較的多い腫瘍負荷の存在と相関した。図5Aに示したように、グレード3以上の神経毒性の重度の症状を示した対象はまた、評価した時に、処置後に、末梢血中に多数のCD8+ CAR-T細胞またはCD4+ CAR-T細胞も示した。このことは、腫瘍負荷と、CAR+T細胞の増殖の程度と、神経毒性の間に相関関係があることを示している。図5Bは、処置前に骨髄芽細胞のパーセントが比較的高かった対象の中には、処置後に集中治療室(ICU)での治療が必要であると決定された対象がいたことを示している。
【0421】
実施例10:CAR+T細胞のリスクに合わせた投薬
実施例9に記載のように処置した対象のうち5人の対象に、腫瘍負荷に基づいて合わせた用量で抗CD19 CAR-T細胞を投与した。
【0422】
処置前に、骨髄に存在する骨髄芽細胞のパーセントを評価することによって腫瘍負荷を評価した。20%未満または20%に等しい芽細胞がある対象に投与した用量と比較して比較的少ない用量のCAR-T細胞(2x105T細胞/kg)を投与するために、骨髄中に20%を超える(>20%)芽細胞がある対象を選択した。比較的高用量(2x106CAR-T細胞/kg)を投与するために、20%未満または20%に等しい(≦20%)芽細胞がある対象を選択した。CAR発現T細胞を単回静脈内(IV)連続注入によって対象に投与した。
【0423】
処置後、0日目、1日目、3日目、7日目、10日目、14日目、21日目、および28日目に、EGFRt(CAR特異的マーカー)およびCD4またはCD8の表面発現を対象にした細胞試料のフローサイトメトリーを行うことによって、処置した対象の末梢血に存在するCAR-T細胞の数を求めた。集中治療室(ICU)での治療を必要とする重度の毒性アウトカムを含む毒性についても対象をモニタリングした。
【0424】
CAR-T細胞は全対象において増殖することが観察された。同様の処置を受けたが、投与した投与量が腫瘍負荷に基づいていなかった対象群と比較して、リスクに合わせた投薬は重大な毒性の発生率を低下させた。例えば、投与した投与量が腫瘍負荷に基づいていなかった対象では、11人の対象のうち7人がICU治療を必要とした。対照的に、リスクに合わせた投薬を用いた5人の対象のうちICU治療を必要とした対象はいなかった(0%)。
【0425】
実施例11:B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する対象にCAR-T細胞を投与する前にフルダラビンでプレコンディショニングする
CD19+B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する対象に、2x106細胞/kgの抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)発現自己由来T細胞を投与した。処置前に、自己由来CAR発現T細胞を、実質的に実施例2に記載のように作製した。
【0426】
CAR発現T細胞を投与する前に、対象を、1)2g/m2シクロホスファミド(100mg/m2エトポシド1日3回の投与あり、もしくは投与なし)(N-=5、Fluなし処置群)で処置したか、または60mg/kg(約2g/m2)シクロホスファミドおよび3~5用量の25mg/m2フルダラビン(N=10、Flu処置群と名付けた)で処置した。
【0427】
処置後、0日目、1日目、3日目、7日目、10日目、14日目、21日目、および28日目に、EGFRt(CAR特異的マーカー)およびCD4またはCD8の表面発現を対象にした細胞試料のフローサイトメトリーを行うことによって、処置した対象の末梢血に存在するCAR-T細胞の数を求めた。
【0428】
図6Aおよび図6Bに示したように、末梢血中にあるCD8+(図6A)またはCD4+(図6B)CAR-T細胞の存在によって測定された時に、シクロホスファミド/フルダラビンでプレコンディショニングした対象では、CAR-T細胞を投与する前にフルダラビンを与えなかった対象と比較して高い程度のCAR-T細胞の増殖および/または持続性が、処置後、7~28日目から観察された。この結果から、シクロホスファミド/フルダラビンを用いたプレコンディショニングはインビボCAR-T細胞の増殖に影響を及ぼすことができると証明された。
【0429】
図6Cに示したように、シクロホスファミドとフルダラビンの両方で前処置した対象の中に、示された期間にわたって無病生存を示した高いパーセントの患者が観察された。
【0430】
実施例12:非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する対象にCAR-T細胞を投与する前にフルダラビンでプレコンディショニングする
非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する対象に、2x107細胞/kgの抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)発現自己由来T細胞を投与した。処置前に、自己由来CAR発現T細胞を、実質的に実施例2に記載のように作製した。
【0431】
CAR発現T細胞を投与する前に、対象を、1)2~4g/m2シクロホスファミド(100~200mg/m2エトポシド1日3回の投与あり、もしくは投与なし)(N=3、Fluなし処置群と名付けた)、または2)30~60mg/kg(約1~2g/m2)シクロホスファミドおよび3~5用量の25mg/m2フルダラビン(N=6、Cy/Flu処置群と名付けた)のいずれかで処置した。
【0432】
処置後、0日目、1日目、3日目、7日目、10日目、14日目、21日目、および28日目に、EGFRt(CAR特異的マーカー)およびCD4またはCD8の表面発現を対象にした細胞試料のフローサイトメトリーを行うことによって、処置した対象の末梢血に存在するCAR-T細胞の数を求めた。
【0433】
結果を図7Aおよび図7Bに図示した。これらは、試料中にある、1μLあたりの全細胞として、あるいは、それぞれCD8+細胞またはCD4+細胞に対する全パーセントとして、CARを発現するCD8+T細胞またはCD4+T細胞をそれぞれ示す。図7Aおよび図7Bに示したように、処置後の末梢血中にあるCD8+(図7A)またはCD4+(図7B)CAR-T細胞の存在によって測定された時に、シクロホスファミド/フルダラビンでプレコンディショニングした対象では、CAR-T細胞を投与する前にフルダラビンを与えなかった対象と比較して高い程度のCAR-T細胞の増殖および/または持続性が、処置後、3~28日目から観察された。この結果から、シクロホスファミド/フルダラビンを用いたプレコンディショニングはNHL対象におけるインビボCAR-T細胞の増殖に影響を及ぼすことができると証明された。
【0434】
全寛解率(ORR)を測定することによって、対象を処置の効力についてモニタリングした。ORRは、骨髄、末梢血、および脳脊髄液(CSF)の検査ならびに理学的検査および中枢神経系(CNS)症状の評価によって決定される、完全寛解(CR)または部分寛解(PR)の対象の割合として求めた。
【0435】
シクロホスファミド/フルダラビンを用いてプレコンディショニングされた対象の全寛解率は、38%CR率および23%PR率(CR=5/13、PR=3/13)を含めて62%(8/13)であったのに対して、フルダラビンを用いてプレコンディショニングしなかった対象の全寛解率は、8%CR率および42%PR率(CR=1/12、PR=5/12)を含めて50%(6/12)であった。
【0436】
本発明は、提供された、例えば、本発明の様々な局面を例示するために提供された特定の開示された態様に範囲が限定されることが意図されない。本明細書の説明および開示から、説明された組成物および方法に対する様々な変更が明らかになる。このようなバリエーションは、本開示の真の範囲および精神から逸脱することなく実施される可能性があり、本開示の範囲内にあることが意図される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
【配列表】
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