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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】車両用バッテリパックの支持装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20220413BHJP
   B62D 21/02 20060101ALI20220413BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20220413BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D21/02 Z
H01M50/249
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018086974
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019189169
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】518151386
【氏名又は名称】エーヴィエル・リスト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】メノン ビクラム
(72)【発明者】
【氏名】ウール マーカス
(72)【発明者】
【氏名】ローランド マカハマー
(72)【発明者】
【氏名】ピーター デル ネグロ
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-113063(JP,A)
【文献】特開2001-97048(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0069886(US,A1)
【文献】特開平9-98517(JP,A)
【文献】特開2010-36901(JP,A)
【文献】特開2014-69686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 21/02
H01M 50/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のラダーフレームを構成するサイドレール間である第1スペースに配置される第1バッテリ収容部と、前記第1スペースよりも車高方向下方の第2スペースにおいて、前記第1バッテリ収容部に連結され、前記第1バッテリ収容部の車幅方向における幅よりも大きい幅を有する第2バッテリ収容部と、前記第1バッテリ収容部および前記第2バッテリ収容部に収容されるバッテリと、を備える車両用バッテリパックの支持装置であって、
前記サイドレールのウェブの車幅方向外側における端面において、車幅方向に突出するように設けられるフレーム側ブラケットと、
前記車両用バッテリパックの前記第2バッテリ収容部と前記フレーム側ブラケットとを弾性的に連結し、前記車両用バッテリパックを前記車両のラダーフレームに懸架する連結部と、を含む車両用バッテリパックの支持装置。
【請求項2】
前記車両用バッテリパックの前記第2バッテリ収容部の車幅方向外側における端面において、車幅方向に突出するように設けられるバッテリ側ブラケットを更に含む、請求項1に記載の車両用バッテリパックの支持装置。
【請求項3】
前記バッテリ側ブラケットは、前記第1バッテリ収容部及び前記第2バッテリ収容部を形成するハウジングの溶接箇所を避けて設けられる、請求項2に記載の車両用バッテリパックの支持装置。
【請求項4】
前記バッテリ側ブラケットは、車長方向における前記ハウジングの端部から、前記車長方向において変位して設けられる、請求項3に記載の車両用バッテリパックの支持装置。
【請求項5】
前記フレーム側ブラケットは、前記サイドレールの端面からの突出量を調整するアジャストプレートを介して前記サイドレールのウェブに接続されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用バッテリパックの支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車又はハイブリッド自動車等の電動車両に搭載される車両用バッテリパックを支持するための支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、環境負荷低減の観点に着目し、エンジンのような内燃機関に代えて走行用動力源としてモータを利用する電気自動車、及び当該内燃機関と当該モータとを併用するハイブリッド自動車等の電動車両の開発が進んでいる。特に、これらの電動車両においては、当該モータを駆動するために駆動用のバッテリが搭載され、当該バッテリから当該モータへ電力を供給することにより、車両を走行するために必要となる動力が得られる。
【0003】
近年、このような電動車両に関し、トラック等の商用車の分野においても、その開発が行われている。例えば、特許文献1には、衝突安全性を向上することができる商用車向けのバッテリボックスの保持構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-113063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、商用車は、荷物を積載するための構造、又は車両自体の大型化のために、乗用車と比較して車両重量が大きくなる。このため、乗用車に比べて車両重量が大きい商用車の分野において、十分な走行距離を可能とする電動車両を実用化するためには、電動車両に搭載可能なバッテリ容量を増大することが重要な課題である。また、乗用車と比較して、走行時において振動等の外力が路面から入力されることが多い商用車においては、バッテリの大容量化のみならず、バッテリの信頼性を確保することも要求されている。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、電動車両に搭載可能なバッテリ容量を増大できる車両用バッテリパックに対して、走行時における外力の影響を低減して信頼性を向上することができる車両用バッテリパックの支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本適用例に係る車両用バッテリパックの支持装置は、車両のラダーフレームを構成するサイドレール間である第1スペースに配置される第1バッテリ収容部と、前記第1スペースよりも車高方向下方の第2スペースにおいて、前記第1バッテリ収容部に連結され、前記第1バッテリ収容部の車幅方向における幅よりも大きい幅を有する第2バッテリ収容部と、前記第1バッテリ収容部および前記第2バッテリ収容部に収容されるバッテリと、を備える車両用バッテリパックの支持装置であって、前記サイドレールのウェブの車幅方向外側における端面において、車幅方向に突出するように設けられるフレーム側ブラケットと、前記車両用バッテリパックの前記第2バッテリ収容部と前記フレーム側ブラケットとを弾性的に連結し、前記車両用バッテリパックを前記車両のラダーフレームに懸架する連結部と、を含む。
【0008】
上記適用例に係る車両用バッテリパックの支持装置においては、バッテリ容量の増大を図ることができるように構成された車両用バッテリパックを、連結部によってラダーフレームに弾性的に懸架することになる。従って、車両の走行時において、路面から車輪を介してラダーフレームに対して振動等の外力が入力されても、連結部によって当該外力が吸収され、バッテリパックに伝達されることが抑制される。このため、バッテリパックに対する当該外力の影響が低減されることになり、車両に搭載された状態のバッテリパックの信頼性を向上させることができる。すなわち、上記適用例に係る車両用バッテリパックの支持装置は、車両に搭載可能なバッテリ容量を増大できるバッテリパックに対して、走行時における外力の影響を低減して信頼性を向上することを可能にする。
【0009】
(2)また、本適用例に係る車両用バッテリパックの支持装置は、上記(1)において、前記車両用バッテリパックの前記第2バッテリ収容部の車幅方向外側における端面において、車幅方向に突出するように設けられるバッテリ側ブラケットを更に含んでいてもよい。このようなバッテリ側ブラケットにより、第2バッテリ収容部と連結部との取り付けをより強固且つ確実に行うことが可能となり、車両に搭載された状態のバッテリパックの信頼性を向上させることができる。
【0010】
(3)本適用例に係る車両用バッテリパックの支持装置は、上記(2)において、前記バッテリ側ブラケットは、前記第1バッテリ収容部及び前記第2バッテリ収容部を形成するハウジングの溶接箇所を避けて設けられてもよい。これにより、比較的に剛性が低い溶接箇所に支持装置が設けられることがなくなり、バッテリ側ブラケットから伝達される外力の影響を低減することが可能となる。このため、バッテリハウジングの強度に関する信頼性を向上することが可能となり、更には信頼性の低減が抑制された状態でバッテリパックを搭載することが可能になる。
【0011】
(4)本適用例に係る車両用バッテリパックの支持装置は、上記(3)において、前記バッテリ側ブラケットは、車長方向における前記ハウジングの端部から、前記車長方向において変位して設けられてもよい。このような構成により、バッテリ側ブラケットから伝達される外力の影響を低減することが可能となるため、バッテリハウジングの強度に関する信頼性を向上することが可能となり、更には信頼性の低減が抑制された状態でバッテリパックを搭載することが可能になる。
【0012】
(5)本適用例に係る車両用バッテリパックの支持装置は、上記(1)乃至(4)のいずれかにおいて、前記フレーム側ブラケットは、前記サイドレールの端面からの突出量を調整するアジャストプレートを介して前記サイドレールのウェブに接続されてもよい。これにより、サイドレールに対するフレーム側ブラケットの突出量を調整することが可能になり、第2バッテリ収容部の車幅方向の寸法が変更されても、フレーム側ブラケット及びバッテリ側ブラケットの車幅方向Bの寸法を変更することなく、連結部を適切な位置に配置することができる。すなわち、バッテリパックの寸法に対応させて、寸法が異なる種々のフレーム側ブラケット及びバッテリ側ブラケットを準備する必要がなくなるため、部材の共通化が図られ、バッテリパックの支持に関するコスト低減が図られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施例に係る車両用バッテリパックの支持装置を備える電動車両の全体構成を概略的に示す上面図である。
図2】本発明の第一実施例におけるバッテリハウジングの斜視図である。
図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4】本発明の第一実施例におけるバッテリパックとサイドレールとの支持構造を示す正面図である。
図5】本発明の第二実施例におけるバッテリパックとサイドレールとの支持構造を示す正面図である。
図6】本発明の第三実施例におけるバッテリパックとサイドレールとの支持構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施例について、図面を参照しつつその構成について詳細に説明する。
<第一実施例>
【0015】
先ず、図1を参照しつつ、本実施例に係る車両用バッテリパックの支持装置を備える電動車両1の全体構成を説明する。ここで、図1は、本実施例に係る車両用バッテリパックの支持装置を備える電動車両の全体構成を概略的に示す上面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施例における電動車両1は、ラダーフレーム10、キャブ20、荷箱30、車輪機構40、駆動装置50、及びバッテリパック60を備える電動トラックである。なお、図1では、電動車両1の上面からキャブ20及び荷箱30を透過するように見た場合の上面図として表している。
【0017】
本実施例において、電動車両1は、走行用駆動源としてモータ(電動機)を備える電気自動車として想定されているが、エンジンを更に備えるハイブリッド自動車であってもよい。また、電動車両1は電動トラックに限定されることなく、車両を駆動するためのバッテリを備える他の商用車であってもよい。
【0018】
ラダーフレーム10は、左サイドレール11L、右サイドレール11R、及び複数のクロスメンバ12を有する。左サイドレール11L及び右サイドレール11Rは、電動車両1の車長方向Aに延在し、互いに車幅方向Bに対して平行に配置される。複数のクロスメンバ12は、左サイドレール11Lと右サイドレール11Rとを連結している。すなわち、ラダーフレーム10は、いわゆる梯子型フレームを構成している。そして、ラダーフレーム10は、キャブ20、荷箱30、駆動装置50、バッテリパック60、及び電動車両1に搭載されるその他の重量物を支持する。以下において、左サイドレール11L及び右サイドレール11Rを総称して、単にサイドレール11とも称する。
【0019】
キャブ20は、図示しない運転席を含む構造体であり、ラダーフレーム10の前部上方に設けられている。一方、荷箱30は、電動車両1によって搬送される荷物等が積載される構造体であり、ラダーフレーム10の後部上方に設けられている。
【0020】
車両前方に位置する車輪機構40は、本実施例において、車両前方に位置する左右の前輪41、2つの前輪41の車軸としてのフロントアクスル42から構成される。また、車両後方に位置する車輪機構40は、車両後方に位置し且つ左右に各2つ配置された後輪43、これらの後輪43の車軸としてのリアアクスル44から構成される。そして、電動車両1においては、後輪43が駆動輪として機能するように駆動力が伝達され、電動車両1が走行することになる。なお、車輪機構40は、図示しないサスペンション機構を介してラダーフレーム10に懸架され、電動車両1の重量を支持する。
【0021】
駆動装置50は、モータユニット51及びギアユニット52を有する。モータユニット51は、モータ53、及びモータ53を収容するモータハウジング54から構成される。ギアユニット52は、複数のギアからなる減速機構55、減速機構55から入力される動力を左右の後輪43に対して振り分ける差動機構56、並びに減速機構55及び差動機構56を収容するギアハウジング57から構成される。
【0022】
また、駆動装置50は、減速機構55及び差動機構56を介して、モータ53の駆動トルクを車両の走行に適した回転速度に減速してリアアクスル44に駆動力を伝達する。これにより駆動装置50は、リアアクスル44を介して後輪43を回転させて電動車両1を走行させることができる。ここで、駆動装置50は、本実施例においては、左サイドレール11L及び右サイドレール11Rに対して車幅方向Bの内側(すなわち、サイドレール間のスペース)に配置され、図示しない支持部材によりラダーフレーム10に支持されている。
【0023】
バッテリパック60は、電動車両1を走行させるためのエネルギー源としてモータ53に電力を供給する複数のバッテリ61と、バッテリ61を収容するバッテリハウジング62を有している。バッテリパック60は、電動車両1に必要とされる電力を蓄えるために比較的大型で大容量の二次電池である。ここで、バッテリパック60は、本実施例において、車幅方向Bに対して左サイドレール11Lと右サイドレール11Rとの間、且つ駆動装置50の車両前方に配置される。具体的に、バッテリパック60は、後述する支持装置によりラダーフレーム10に懸架される。なお、バッテリパック60とサイドレール11との具体的な位置関係については後述する。
【0024】
次に、図2及び図3を参照しつつ、バッテリパック60の構造を説明する。ここで、図2は、本実施例におけるバッテリパック60の斜視図であり、図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
【0025】
図2に分かるように、バッテリパック60は、車長方向Aに沿って延在するような形状を備えている。また、バッテリパック60は、車幅方向B及び車高方向Cによって規定される平面における断面形状が逆T型となる形状を備えている。
【0026】
図2及び図3に示すように、バッテリパック60の構成部材であるバッテリハウジング62は、第1バッテリ収容部63、第2バッテリ収容部64、隔壁65、複数の接合部材66を備えている。ここで、第1バッテリ収容部63及び第2バッテリ収容部64は、バッテリを収納するための開口が設けられた箱型の筐体である。本実施例において、第1バッテリ収容部63は、筐体を構成する本体63a、及び車長方向Aにおいて本体63aの両端に配置される2つの側壁63bを溶接して形成される構造を備える。同様に、第2バッテリ収容部64は、筐体を構成する本体64a、及び車長方向Aにおいて本体64aの両端に配置される2つの側壁64bを溶接して形成される構造を備える。
【0027】
そして、第1バッテリ収容部63と第2バッテリ収容部64とは、隔壁65を介して互いの開口が向かい合うように配置されている。また、複数の接合部材66が、第1バッテリ収容部63及び隔壁65を貫通し、第2バッテリ収容部64まで到達することにより、第1バッテリ収容部63、第2バッテリ収容部64及び隔壁65が連結されている。
【0028】
このようなバッテリハウジング62の構成により、バッテリハウジング62内には、第1バッテリ収容部63及び隔壁65によって囲まれた直方体状の第1バッテリ収容空間71と、第2バッテリ収容部64及び隔壁65によって囲まれた直方体状の第2バッテリ収容空間72とが形成されている。すなわち、第1バッテリ収容空間71と第2バッテリ収容空間72とが、隔壁65によって分離されて設けられている。
【0029】
図3に示すように、第2バッテリ収容部64の寸法は、第1バッテリ収容部63の寸法よりも大きくなっており、更には第2バッテリ収容空間72の寸法も第1バッテリ収容空間71よりも大きくなっている。具体的には、車幅方向Bにおいて、第2バッテリ収容部64の幅(寸法)は、第1バッテリ収容部63の幅よりも大きく、車長方向A及び車高方向Cにおける第1バッテリ収容部63及び第2バッテリ収容部64の寸法は略同一である。同様に、車幅方向Bにおいて、第2バッテリ収容空間72の幅は、第1バッテリ収容空間71の幅よりも大きく、車長方向A及び車高方向Cにおける第1バッテリ収容空間71及び第2バッテリ収容空間72の寸法は略同一である。このため、第1バッテリ収容空間71と比較して、第2バッテリ収容空間72は、より多くの数量のバッテリ61を収容できることになる。本実施例においては、第1バッテリ収容空間71に2つのバッテリ61が収容され、第2バッテリ収容空間72に3つのバッテリが収容されている。
【0030】
ここで、第1バッテリ収容部63(第1バッテリ収容空間71)に収容されたバッテリ61が第1バッテリに該当し、第2バッテリ収容部64(第2バッテリ収容空間72)に収容されたバッテリ61が第2バッテリに該当し、これらのバッテリ61は、図示しない配線によって電気的に接続されている。なお、当該数量については限定されず、電動車両1に要求される電力量や、バッテリ61の寸法及び特性等に応じて適宜変更することができる。
【0031】
第1バッテリ収容部63、第2バッテリ収容部64、及び隔壁65の材料は、例えば、アルミニウム等の軽金属である。これにより、バッテリパック60自体の重量を低減しつつも、外力に耐えうる強固な構成とすることができる。また、バッテリハウジング62を構成するこれらの部材の材質を同一の金属としてもよい。これにより、バッテリハウジング62の各構成部材を接合する接合部材66の腐食を防止するためである。
【0032】
また、第2バッテリ収容部64の剛性は、第1バッテリ収容部63の剛性よりも高い。例えば、第2バッテリ収容部64の厚みを第1バッテリ収容部63の厚みよりも大きくすることにより、当該剛性を調整してもよい。これは、後述するように、第1バッテリ収容部63は、サイドレール11によって挟まれるように配置されるため、サイドレール11によって側方からの衝突から保護されているものの、第2バッテリ収容部64は、サイドレール11の下方に配置されるため、側突安全性を向上させることが好ましいためである。そして、このような剛性の調整により、第1バッテリ収容部63をより軽量化してバッテリパック60自体の重量を低減しつつも、側突安全性の向上が図られることになる。
【0033】
なお、当該剛性の調整については、厚みによる調整以外に、例えば、ローリング形成によって製造されたシート状の材料に加工を施して第1バッテリ収容部63を形成し、押出成形又は金型鋳造によって比較的に厚く且つ強固なバルク状の材料に加工を施して第2バッテリ収容部64を形成してもよい。また、接合部材66の腐食防止を図ることができれば、第1バッテリ収容部63を樹脂等のより軽量な部材から構成し、第2バッテリ収容部64を金属材料から構成するようにしてもよい。
【0034】
そして、図2に示すように、バッテリハウジング62をサイドレール11の間に搭載する場合には、第2バッテリ収容部64の本体64aの車幅方向外側端面64cに設けられた支持装置取付領域64dに後述する支持装置のバッテリ側ブラケットが取り付けられることになる。本実施例においては、車幅方向外側端面64cのそれぞれに3つ(合計6つ)の支持装置取付領域64dが存在しているが、バッテリパックの重量及び寸法に応じ、その数量を適宜変更することができる。
【0035】
ここで、後述するバッテリ側ブラケットが取り付けられる支持装置取付領域64dは、本体64aと側壁64bの溶接箇所64eを避けて配置されることが好ましい。特に、本実施例においては、溶接箇所64eは、車長方向Aにおけるバッテリハウジング62の端部に位置するため、支持装置取付領域64dは、当該バッテリハウジング62の端部から変位して配置されている。
【0036】
このように設計する理由は、溶接箇所64eは非溶接箇所と比較して剛性が低く、支持装置取付領域64dに取り付けられるバッテリ側ブラケットから伝達される外力の影響が大きくなり、溶接箇所64eにおける破損が生じる虞れがあるからである。すなわち、比較的に高い剛性を有する非溶接箇所に支持装置取付領域64dを設けることにより、当該バッテリ側ブラケットから伝達される外力の影響を低減することが可能となり、バッテリハウジング62の強度に関する信頼性を向上することができ、更には信頼性の低減が抑制された状態でバッテリパック60を搭載することができる。
【0037】
なお、溶接箇所64eが車長方向Aにおけるバッテリハウジング62の端部に位置しない場合には、支持装置取付領域64dを当該端部に設けてもよい。例えば、第2バッテリ収容部64が同一形状を備える2つの本体を溶接する場合には、溶接箇所64eが車長方向Aにおけるバッテリハウジング62の中央部に一部するため、支持装置取付領域64dは当該中央部を避け、車長方向Aにおけるバッテリハウジング62の端部に設けてもよい。
【0038】
次に、図4を参照しつつ、本実施例におけるバッテリパック60とサイドレール11との位置関係及び支持構造を説明する。ここで、図4は、本実施例におけるバッテリパック60とサイドレール11との支持構造を示す正面図である。
【0039】
図4に示すように、左サイドレール11Lと右サイドレール11Rとの間には第1スペース81が存在し、当該第1スペース81よりも車高方向Cの下方には第2スペース82が存在している。そして、バッテリハウジング62は、第1スペース81及び第2スペース82にわたって配設されている。
【0040】
より具体的に、バッテリハウジング62の第1バッテリ収容部63は、第1スペース81に配置されている。また、本実施例において、第1バッテリ収容部63は、左サイドレール11Lのフランジ13の車幅方向内側端部13aと、右サイドレール11Rの12の車幅方向内側端部13aとの間に配置されている。すなわち、第1バッテリ収容部63の車幅方向における幅は、サイドレール間の距離よりも小さい。ここで、サイドレール間の距離とは、左サイドレール11Lのフランジ13の車幅方向内側端部13aから、右サイドレール11Rのフランジ13の車幅方向内側端部13aまでの距離D1である。
【0041】
一方、バッテリハウジング62の第2バッテリ収容部64及び隔壁65は、サイドレール11の下方である第2スペース82に配置されている。すなわち、バッテリハウジング62の第2バッテリ収容部64及び隔壁65は、第2スペース82において、第1バッテリ収容部63に連結されていることになる。
【0042】
また、本実施例において、第2バッテリ収容部64及び隔壁65の車幅方向Bにおける幅は、サイドレール間の距離D1よりも大きいだけでなく、サイドレール11のウェブ間の距離よりも大きい。すなわち、第2バッテリ収容部64及び隔壁65は、サイドレール11よりも側方に向けて突出していることになる。ここで、ウェブ間の距離とは、左サイドレール11Lのウェブ14の車幅方向外側端面14aから、右サイドレール11Rのウェブ14の車幅方向外側端面14aまでの距離D2である。
【0043】
このようなバッテリハウジング62の構成、及びサイドレール11とバッテリハウジング62との配置関係により、サイドレール11の周辺のスペースを有効に活用してバッテリ61を搭載することができる。このため、電動車両1に搭載可能なバッテリ容量の増大が図られることになる。
【0044】
また、本実施例においては、第2バッテリ収容部64の車幅方向Bにおける幅がサイドレール11のウェブ間の距離よりも大きいため、搭載可能なバッテリ容量の増大が更に図られている。更に、第1バッテリ収容部63がサイドレール11によって挟まれているため、側突安全性の向上も図られることになる。
【0045】
なお、本実施例においては、第1バッテリ収容部63における第1バッテリ収容空間71と、第2バッテリ収容部64における第2バッテリ収容空間72とが隔壁65によって分離されていたが、隔壁65を設けずに、1つの収容空間を形成してもよい。この場合には、第1バッテリ収容部63と第2バッテリ収容部64とにまたがって、バッテリ61が搭載されてもよい。
【0046】
そして、図4から分かるように、上述したようなバッテリハウジング62とサイドレール11との位置関係を保ちつつ、バッテリハウジング62にバッテリ61が搭載された状態のバッテリパック60をサイドレール11に懸架するために、本実施例においては、支持装置90が使用されている。ここで、支持装置90は、フレーム側ブラケット91、バッテリ側ブラケット92、及び連結部93から構成されている。
【0047】
フレーム側ブラケット91は、例えば、金属から形成されており、比較的に強固な構造を備えている。また、フレーム側ブラケット91は、車幅方向Bの外側におけるサイドレール11のウェブ14の車幅方向外側端面14aに対して、ねじ等の接合部材(図示せず)によって取り付けられている。ここで、フレーム側ブラケット91は、車幅方向Bの外側に向けて突出している。このため、連結部93を車高方向Cに沿って延在するように取り付けるためのスペースが確保されていることになる。
【0048】
バッテリ側ブラケット92も、例えば、金属から形成されており、比較的に強固な構造を備えている。また、バッテリ側ブラケット92も、車幅方向Bの外側におけるサイドレール11の車幅方向外側端面64cに対して、ねじ等の接合部材(図示せず)によって取り付けられている。ここで、バッテリ側ブラケット92は、車幅方向Bの外側に向けて突出している。このため、連結部93を車高方向Cに沿って延在するように取り付けるためのスペースが確保されていることになる。
【0049】
連結部93は、略円柱又は略円錐台の形状を備えるゴム等の弾性体から形成されている。このため、連結部93は、車長方向A、車幅方向B、車高方向C、及びこれらを組み合わせた複合的な方向(例えば回転方向)において、入力される外力を吸収することができる。ここで、連結部93は、車高方向Cにおいて対向する各部材の表面部分に固定されている。フレーム側ブラケット91及びバッテリ側ブラケット92に対する連結部93の固定方法は、例えばねじ等の接合部材を使用してもよく、或いは各部材に形成した凹凸を篏合するようような接合部材を使用しない方法であってもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0050】
以上のように、連結部93が所望の弾性を備えているため、第2バッテリ収容部64及びバッテリ側ブラケット92は、フレーム側ブラケット91に対し、連結部93を介して弾性的に連結されている。すなわち、連結部93は、フレーム側ブラケット91に対して第2バッテリ収容部64及びバッテリ側ブラケット92を弾性的に連結し、バッテリパック60をラダーフレーム10に懸架している。
【0051】
従って、電動車両1の走行時において、路面から車輪機構40を介してラダーフレーム10に対して振動等の外力が入力されても、当該外力が連結部によって吸収されることになる。当該外力が吸収されることにより、バッテリパック60への当該外力の影響が低減されることになり、電動車両1に搭載された状態のバッテリパック60の信頼性を向上させることができる。すなわち、本実施例に係る支持装置90は、電動車両1に搭載可能なバッテリ容量を増大できるバッテリパック60に対して、走行時における外力の影響を低減して信頼性を向上することを可能にする。
【0052】
<第二実施例>
上述した第一実施例においては、サイドレール11に対してフレーム側ブラケット91を直接的に取り付けていたが、車幅方向Bにおけるフレーム側ブラケット91の突出量を調整するためのアジャストプレートを介して、フレーム側ブラケット91をサイドレール11に対して取り付けてもよい。このような構成の支持装置を第二実施例として、図5を参照しつつ説明する。ここで、図5は、第二実施例に係るバッテリパックとサイドレールとの支持構造を示す正面図である。なお、第一実施例と同一の部材については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図5に示すように、本実施例に係る支持装置190は、フレーム側ブラケット91、バッテリ側ブラケット92、及び連結部93に加えて、アジャストプレート94を有している。アジャストプレート94は、サイドレール11のウェブ14の車幅方向外側端面14aに取り付けられている。そして、ウェブ14の車幅方向外側端面14aに対する接続面とは反対側に位置するアジャストプレート94の表面には、フレーム側ブラケット91が取り付けられている。
【0054】
アジャストプレート94は、複数の金属部材から構成され、車幅方向Bにおける寸法を変更することが可能な公知の伸縮構造を備えている。これにより、サイドレール11に対するフレーム側ブラケット91の突出量を調整することが可能になる。フレーム側ブラケット91の突出量をアジャストプレート94によって調整可能とすることにより、第2バッテリ収容部64の車幅方向Bの寸法が変更されても、フレーム側ブラケット91及びバッテリ側ブラケット92の車幅方向Bの寸法を変更することなく、連結部93を適切な位置に配置することができる。すなわち、バッテリパック60の寸法に対応させて、寸法が異なる種々のフレーム側ブラケット91及びバッテリ側ブラケット92を準備する必要がなくなるため、部材の共通化が図られ、バッテリパック60の支持に関するコスト低減が図られることになる。
【0055】
例えば、第2バッテリ収容部64の車幅方向外側端面64cが、ウェブ14の車幅方向外側端面14aよりも車幅方向Bの外側に向けて更に突出する場合には、アジャストプレート94の車幅方向Bの寸法を更に大きくし、フレーム側ブラケット91の突出量を大きくすることになる。一方、第2バッテリ収容部64の車幅方向外側端面64cが、ウェブ14の車幅方向外側端面14aよりも車幅方向Bの内側に位置する場合には、アジャストプレート94の車幅方向Bの寸法を小さくし、フレーム側ブラケット91の突出量を小さくすることになる。
【0056】
なお、第2バッテリ収容部64の車幅方向Bの寸法が、サイドレール11のウェブ間の距離D2よりも小さくなる場合には、第2バッテリ収容部64の車幅方向外側端面64cにもアジャストプレートを設け、車幅方向Bにおけるバッテリ側ブラケット92の突出量も調整してもよい。このような構成により、バッテリパック60の寸法変更に対して、支持装置90自体の寸法の調整を更に容易に行うことが可能となり、バッテリパック60の支持に関するコスト低減が更に図られることになる。
【0057】
<第三実施例>
上述した第一実施例及び第二実施例においては、連結部93の端部にはフレーム側ブラケット91及びバッテリ側ブラケット92が配設されていたが、第2バッテリ収容部64に対する支持については、連結部93が第2バッテリ収容部64に直接的に接続されてもよい。このような構成の支持装置を第三実施例として、図6を参照しつつ説明する。ここで、図6は、第三実施例に係るバッテリパックとサイドレールとの支持構造を示す正面図である。なお、第一実施例と同一の部材については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
図6に示すように、本実施例におけるバッテリパック160は、第1実施例におけるバッテリハウジング62とは異なる形状を備えるバッテリハウジング162を備えている。具体的に、バッテリハウジング162において、第2バッテリ収容部164の正面形状は矩形ではなく、逆T型(すなわち、凸型)となっている。このため、第2バッテリ収容部164においては、車幅方向Bの端部164aにおける高さ寸法が他の部分よりも小さくなっている。換言すると、第2バッテリ収容部164は、車幅方向Bにおける両側部に凹部が形成されていることになる。
【0059】
そして、図6に示すように、本実施例に係る支持装置290は、フレーム側ブラケット91、及び連結部93から構成されている。連結部93の一端はフレーム側ブラケット91と接続し、他端は第2バッテリ収容部164の端部164aの端面164cと直接的に接続している。例えば、端面164cには、連結部93の凹凸に篏合可能となる凹凸(図示せず)が形成されており、これらの凹凸の篏合によって両部材を接続してもよい。
【0060】
本実施例においては、バッテリ側ブラケット92が不要となるため、支持装置290の構成部品点数を削減し、支持装置290及びこれを備える電動車両1のコスト低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 電動車両
10 ラダーフレーム
11 サイドレール
11L 左サイドレール
11R 右サイドレール
12 クロスメンバ
13 フランジ
13a 車幅方向内側端部
14 ウェブ
14a 車幅方向外側端面
20 キャブ
30 荷箱
40 車輪機構
41 前輪
42 フロントアクスル
43 後輪
44 リアアクスル
50 駆動装置
51 モータユニット
52 ギアユニット
53 モータ
54 モータハウジング
55 減速機構
56 差動機構
57 ギアハウジング
60 バッテリパック
61 バッテリ
62 バッテリハウジング
63 第1バッテリ収容部
63a 本体
63b 側壁
64 第2バッテリ収容部
64a 本体
64b 側壁
64c 車幅方向外側端面
64d 支持装置取付領域
64e 溶接箇所
65 隔壁
66 接合部材
71 第1バッテリ収容空間
72 第2バッテリ収容空間
81 第1スペース
82 第2スペース
90 支持装置
91 フレーム側ブラケット
92 バッテリ側ブラケット
93 連結部
A 車長方向
B 車幅方向
C 車高方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6