(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】三次元測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 5/008 20060101AFI20220413BHJP
G01B 5/08 20060101ALI20220413BHJP
G01B 5/20 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
G01B5/008
G01B5/08
G01B5/20 R
(21)【出願番号】P 2018140284
(22)【出願日】2018-07-26
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100107847
【氏名又は名称】大槻 聡
(72)【発明者】
【氏名】柴田 典男
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-190928(JP,A)
【文献】特開平06-050749(JP,A)
【文献】特開2009-150822(JP,A)
【文献】特開2006-302124(JP,A)
【文献】特開2004-286571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
11/00-11/30
21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幾何要素を用いて測定する測定項目を保持する設定情報記憶部と、
プローブを用いて測定対象物上の位置を指示することにより、前記幾何要素に対応する測定点の座標を測定する座標測定部と、
前記測定点の座標と前記幾何要素の種別とに基づいて前記幾何要素を特定する幾何要素特定部と、
前記特定された幾何要素に基づいて前記測定項目の測定値を算出する測定値算出部と、
前記測定対象物に対応する三次元モデルを受け付ける三次元モデル受付部と、
前記特定された幾何要素に対応する前記三次元モデルのモデル要素を抽出するモデル要素抽出部と、
前記モデル要素の設計値又は公差情報を前記三次元モデルから抽出し、当該設計値又は公差情報に基づいて前記測定項目の判定条件を指定する判定条件指定部と、
前記測定値及び前記判定条件に基づいて前記測定対象物の良否判定を行う判定部とを備えたことを特徴とする三次元測定装置。
【請求項2】
前記モデル要素抽出部は、2以上の前記特定された幾何要素の中から選択された前記幾何要素に対応する前記モデル要素を抽出することを特徴とする請求項1に記載の三次元測定装置。
【請求項3】
前記モデル要素抽出部は、前記特定された幾何要素に対応する2以上の前記モデル要素のうち、前記特定された幾何要素からの距離に基づいて1の前記モデル要素を抽出することを特徴とする請求項1に記載の三次元測定装置。
【請求項4】
前記モデル要素抽出部は、前記特定された幾何要素に対応する2以上の前記モデル要素のうち、三次元モデル上における位置の指定に基づいて1の前記モデル要素を抽出することを特徴とする請求項1に記載の三次元測定装置。
【請求項5】
前記モデル要素抽出部は、前記特定された幾何要素に対応する2以上の前記モデル要素のうち、抽出する前記モデル要素を変更可能であることを特徴とする請求項3又は4に記載の三次元測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元測定装置に係り、さらに詳しくは、測定対象物上において幾何要素を特定し、幾何要素を用いて測定対象物の形状を測定する三次元測定装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物上において1又は2以上の幾何要素を特定し、当該幾何要素の寸法、角度などの物理量を算出することにより、測定対象物の形状を測定する三次元測定装置が従来から知られている(例えば、特許文献1)。この種の三次元測定装置は、ユーザがプローブを用いて測定対象物上の位置を指示することにより、指示された位置の座標を測定することができる。そして、測定された座標に基づいて幾何要素を特定し、当該幾何要素の物理量を算出することにより、測定対象物の形状に関する所望の物理量を測定する。
【0003】
測定値は、設計値と対比して提示され、あるいは、上限値及び下限値などの公差情報と比較して良否判定が行われる。このため、測定項目ごとに判定条件が指定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の三次元測定装置は、測定項目ごとに判定条件をユーザが指定する必要があった。例えば、測定項目ごとに、設計値、上限値及び下限値をユーザが数値入力する必要があり設定作業が煩雑であった。また、このような設定作業において入力ミスが発生し易いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、三次元測定装置における判定条件の指定を容易化することを目的とする。また、三次元測定装置における判定条件の入力ミスを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様による三次元測定装置は、幾何要素を用いて測定する測定項目を保持する設定情報記憶部と、プローブを用いて測定対象物上の位置を指示することにより、前記幾何要素に対応する測定点の座標を測定する座標測定部と、前記測定点の座標と前記幾何要素の種別とに基づいて前記幾何要素を特定する幾何要素特定部と、前記特定された幾何要素に基づいて前記測定項目の測定値を算出する測定値算出部と、前記測定対象物に対応する三次元モデルを受け付ける三次元モデル受付部と、前記特定された幾何要素に対応する前記三次元モデルのモデル要素を抽出するモデル要素抽出部と、前記モデル要素の設計値又は公差情報を前記三次元モデルから抽出し、当該設計値又は公差情報に基づいて前記測定項目の判定条件を指定する判定条件指定部と、前記測定値及び前記判定条件に基づいて前記測定対象物の良否判定を行う判定部とを備える。
【0008】
本発明の第2の態様による三次元測定装置は、上記構成に加えて、前記モデル要素抽出部が、2以上の前記特定された幾何要素の中から選択された前記幾何要素に対応する前記モデル要素を抽出するように構成される。
【0009】
本発明の第3の態様による三次元測定装置は、上記構成に加えて、前記モデル要素抽出部が、前記特定された幾何要素に対応する2以上の前記モデル要素のうち、前記特定された幾何要素からの距離に基づいて1の前記モデル要素を抽出するように構成される。
【0010】
本発明の第4の態様による三次元測定装置は、上記構成に加えて、前記モデル要素抽出部が、前記特定された幾何要素に対応する2以上の前記モデル要素のうち、三次元モデル上における位置の指定に基づいて1の前記モデル要素を抽出するように構成される。
【0011】
本発明の第5の態様による三次元測定装置は、上記構成に加えて、前記モデル要素抽出部が、前記特定された幾何要素に対応する2以上の前記モデル要素のうち、抽出する前記モデル要素を変更可能であるように構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、三次元測定装置における判定条件の指定を容易化することができる。また、三次元測定装置における判定条件の入力ミスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態による三次元測定装置1の一構成例を示した図である。
【
図2】
図1のプローブ110の詳細構成の一例を示した斜視図である。
【
図3】撮像部105がプローブ110の位置及び姿勢を検出する方法についての説明図である。
【
図4】設定モードにおける動作の一例を示したフローチャートであり、設定情報を生成するための手順が示されている。
【
図5】測定モードにおける動作の一例を示したフローチャートである。
【
図6】判定条件の参照指定の動作の一例を示したフローチャートである。
【
図7】判定条件参照指定画面2の一例を示した図である。
【
図8】判定条件参照指定画面2の一例を示した図である。
【
図9】判定条件参照指定画面2の一例を示した図である。
【
図10】
図1の測定ヘッド100の主な機能構成を示した機能ブロック図である。
【
図11】
図10の判定条件参照指定部524の詳細構成の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)三次元測定装置
図1は、本発明の実施の形態による三次元測定装置1の一構成例を示した図である。三次元測定装置1は、三次元座標を測定することができる座標測定装置であり、測定対象物の寸法を測定し、測定値の良否判定を行うことができる。三次元測定装置1は、測定ヘッド100、プローブ110、操作部120及び処理装置130を備える。また、測定ヘッド100は、筐体101、載置台104、撮像部105及び表示部106を備える。
【0015】
筐体101は、水平な設置面上に設置される設置部102と、設置部102の後端から上方に延び、撮像部105及び表示部106を支持するスタンド部103とにより構成される。また、設置部102の前端には、載置台104が設けられている。載置台104は、測定対象物Sが載置される台であり、例えば、光学定盤を用いることができる。
【0016】
撮像部105は、プローブ110の位置及び姿勢を検出するための撮像手段である。プローブ110に設けられた複数のマーカを撮像部105で撮像することにより、三次元空間におけるプローブ110の位置及び姿勢が検出される。撮像部105は、スタンド部103によって支持され、載置台104の後方の斜め上方向から載置台104を俯瞰するように配置されている。撮像部105は、例えば、集光レンズ及びCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサを備え、赤外線の入射角を検出することができる。このため、プローブ110に設けられた複数の発光部から放出される赤外線の入射方向をそれぞれ検出し、三次元空間におけるプローブ110の位置及び姿勢を検出することができる。
【0017】
表示部106は、ユーザに対し表示出力を行う表示手段、例えば、液晶ディスプレイパネルである。表示部106には、操作画面、撮影画像、測定結果などが表示される。
【0018】
プローブ110は、ユーザが把持し、測定対象物Sに接触させる装置であり、ケーブルを介して測定ヘッド100に接続される。載置台104上の測定対象物Sに対しプローブ110を接触させた状態で、当該プローブ110の位置及び姿勢を検出することにより、プローブ110が接触している測定対象物S上の測定点の座標を求めることができる。
【0019】
操作部120は、ユーザが操作入力を行うための操作入力手段であり、複数の操作ボタンを備え、ケーブルを介して測定ヘッド100に接続される。例えば、測定対象物S上の測定点の座標を求める際、操作部120を用いた操作入力が行われる。操作部120は、プローブ110に一体的に設けられていてもよい。
【0020】
処理装置130は、測定ヘッド100に接続された端末装置であり、例えば、専用ソフトウエアがインストールされたPCを用いることができる。また、処理装置130は、測定対象物Sに対応する三次元モデルを示すCADデータを保持し、当該CADデータは、測定ヘッド100へ読み出すことができる。
【0021】
図2は、
図1のプローブ110の詳細構成の一例を示した斜視図である。プローブ110は、筐体部111、把持部112、発光部113及びスタイラス114を備える。把持部112の上端は、筐体部111の長手方向の略中央に連結され、プローブ110は略T字形の形状を有する。
【0022】
発光部113は、撮像部105によって検出されるマーカである。発光部113には、赤外線を放出する点光源、例えば、波長860nmの赤外線を放出する赤外線LEDを用いることができる。筐体部111の上面には、複数の発光部113が設けられている。図中では、7個の発光部113が筐体部111の上面に設けられている。これらの発光部113は、筐体部111の上面の互いに異なる位置に配置され、また、少なくとも一部の発光部113は、他の発光部113とは異なる高さに配置されている。このため、これらの発光部113からの赤外線を撮像部105が検出することにより、プローブ110の位置及び姿勢を検出することができる。
【0023】
スタイラス114は、測定対象物Sに接触させる部材である。スタイラス114は、筐体部111の前端から突出する棒状体と、その先端に設けられた球形状の接触部115とにより構成される。当該接触部115を測定対象物S上の測定点に接触させた状態でプローブ110の位置及び姿勢を検出することにより、当該測定点の座標を求めることができる。
【0024】
(2)プローブ110の位置及び姿勢
図3は、撮像部105がプローブ110の位置及び姿勢を検出する方法についての説明図である。図中の撮像領域Vは、載置台104及びその周辺を含む一定の領域、例えば、載置台104の外縁からプローブ110の全長の寸法だけ突出した領域として定義される。
【0025】
撮像部105は、撮像素子105a及びレンズ105bで構成され、撮像領域Vを撮影可能な画角θを有する。撮像領域V内の発光部113から入射する赤外光は、レンズ105bの主点105cを通って撮像素子105a上の受光位置Pに結像する。このため、受光位置Pに基づいて、赤外線の入射方向、つまり、主点105cから見た発光部113の方向を求めることができる。
【0026】
複数の発光部113の相対的な位置関係は既知であるため、複数の発光部113の方向を検出することにより、三次元空間におけるプローブ110の位置及び姿勢を特定することができる。
【0027】
(3)測定点の座標
プローブ110内における発光部113及びスタイラス114の相対的な位置関係は既知である。このため、プローブ110の位置及び姿勢を特定すれば、接触部115の位置も特定することができる。このため、接触部115を測定対象物S上の測定点に接触させた状態でプローブ110の位置及び姿勢を検出すれば、当該測定点の位置を求めることができる。
【0028】
ただし、プローブ110の位置及び姿勢に基づいて求めることができる接触部115の位置は、接触部115の中心座標である。これに対し、測定点は接触部115の外周面上に位置するため、上記方法で求められる測定点の座標は、接触部115の半径に相当するオフセット誤差を有する。そこで、測定点における測定対象物Sの法線方向を特定した後に当該法線方向へのオフセット補正を行うことにより、測定点の座標をより正確に求めることができる。
【0029】
測定対象物Sの法線方向は、後述する幾何要素を特定することにより求めることができる。幾何要素は、測定対象物Sの外表面上の幾何学形状であり、測定対象物S上の複数の測定点を測定することにより特定される。また、これらの測定点の測定時におけるプローブ110の姿勢に基づいて、当該測定対象物Sの外面側が、2次元の幾何要素のどちら側であるのかを特定することができる。このため、幾何要素を特定すれば、測定点における測定対象物Sの法線方向を求めることができる。
【0030】
(4)三次元測定装置1の動作
三次元測定装置1は、設定情報を生成するための設定モードと、当該設定情報に基づいて測定を行う測定モードの2種類の動作モードを有する。測定モードは、例えば、測定対象物Sの生産工程における製品検査に使用され、設定モードは、当該製品検査で使用する設定情報を予め生成するモードである。
【0031】
設定モードでは、測定対象物Sの物理量の測定に関する測定項目が指定され、この測定項目が設定情報として記憶保持される。測定項目には、物理量の測定条件及び判定条件が含まれる。一方、測定モードでは、設定モードで生成された設定情報が読み出され、当該設定情報に含まれる測定項目に基づいて、測定対象物Sの物理量が測定され、これらの測定値に基づいて測定対象物Sの良否判定が行われる。
【0032】
測定条件は、測定する物理量を規定する情報であり、1又は2以上の幾何要素に対応づけられている。幾何要素は、測定対象物Sの外表面の一部として定義される幾何学形状であり、例えば、点、直線、平面、円、円筒、円錐、球を指定することができる。物理量は、1又は2以上の幾何要素を用いて測定される。例えば、2つの幾何要素間の距離又は角度、1つの幾何要素が有する長さ、角度、その他の特徴量を測定条件として指定することができる。
【0033】
具体的には、2つの平面間の距離を測定する場合、幾何要素として2つの平面が指定される。円の中心と平面の距離を測定する場合、第1幾何要素として円、第2幾何要素として平面が指定される。直線及び平面のなす角度を測定する場合、第1幾何要素として直線、第2幾何要素として平面が指定される。円の直径、中心位置又は真円度を測定する場合、幾何要素として円が指定される。円錐の中心軸に対する母線の傾斜角を測定する場合、幾何要素として円錐が指定される。
【0034】
判定条件は、測定された物理量の良否を判定するための条件である。判定条件は、設計値及び公差情報からなる。設計値は、測定値と比較すべき標準値であり、測定値とともにユーザに提示される。公差情報は、測定値と比較すべき限界値であり、例えば、上限値又は下限値で構成され、測定値を上限値及び下限値と比較することにより判定結果が得られる。つまり、測定値が上限値又は下限値を超える場合にはNG(不合格)と判定され、測定値が上限値から下限値までの値である場合には、OK(合格)と判定される。
【0035】
設定情報は、1つの測定対象物Sを対象とする2以上の測定項目を含むことができる。この場合、設定モードでは、物理量ごとに設定項目が指定され、2以上の設定項目を含む設定情報が生成される。また、測定モードでは、設定情報に基づいて、物理量ごとに測定が行われ、物理量ごとに良否判定が行われる。また、2以上の測定項目に関する良否判定の結果に基づいて、測定対象物Sの良否に関する総合判定が行われる。例えば、いずれかの測定項目に関する判定結果がNGであれば、総合判定もNGとなり、全ての測定項目に関する判定結果がOKであれば、総合判定もOKとなる。
【0036】
また、設定情報に含まれる2以上の測定項目は、互いに同一又は異なる幾何要素を用いることができる。例えば、2つの測定項目は、同一の円の直径と中心のX座標であってもよいし、異なる円のそれぞれの直径であってもよい。つまり、設定情報が2以上の測定項目を含む場合、当該設定情報は、1又は2以上の幾何要素を含むことができる。
【0037】
(4-1)設定モードにおける動作(設定情報の生成)
図4のステップS101~S108は、設定モードにおける動作の一例を示したフローチャートであり、測定対象物Sを用いて、設定情報を生成するための手順が示されている。
【0038】
まず、測定項目がユーザによって指定される(ステップS101)。このステップでは、測定に用いる1又は2以上の幾何要素の種別、つまり、幾何学的形状の種別が指定されるとともに、当該幾何要素を用いて測定する物理量が指定される。
【0039】
次に、ステップS101で指定された幾何要素を特定するために必要な1又は2以上の測定点の座標が取得される(ステップS102,S103)。幾何要素の特定に必要な数の測定点がプローブ110を用いて順に指定され、これらの測定点の座標が順に取得され、幾何要素が特定される(ステップS104)。例えば、幾何要素が平面であれば、当該平面上の3以上の測定点の座標を取得することによって、幾何要素を特定することができる。
【0040】
ステップS101で2以上の幾何要素が指定された場合には、他の幾何要素についてもステップS102~S104が繰り返される(ステップS105)。
【0041】
ステップS101で指定された全ての幾何要素が特定されると、当該幾何要素を用いて、指定された測定項目の測定値が算出され、表示される(ステップS106)。この測定値を参照しながら、測定項目ごとに判定情報が指定される(ステップS107)。つまり、各測定項目について設計値及び公差情報がそれぞれ指定される。ここでは、ユーザの数値入力により、設計値及び公差情報が指定される。なお、1つの幾何要素を用いて測定値を求める測定項目の場合、ここでは数値入力を行わず、三次元モデルから設計値又は公差情報を抽出し、抽出された値を参照して判定条件を指定することでもできる。判定条件の参照指定については後述する。
【0042】
2以上の測定項目を指定する場合には、他の測定項目についてもステップS101~S107が繰り返され、2以上の測定項目を含む設定情報が生成される(ステップS108)。
【0043】
(4-2)測定モードにおける動作
図5のステップS201~S209は、測定モードにおける動作の一例を示したフローチャートであり、設定情報に基づいて、測定対象物Sの測定及び判定を行うための手順が示されている。
【0044】
まず、設定モードで生成され、記憶保持されている設定情報が読み出される(ステップS201)。つまり、1つの測定対象物Sについて、1又は2以上の測定項目が読み出される。
【0045】
まず、最初の測定項目の測定条件に含まれる幾何要素を特定するために、測定点の座標が取得される(ステップS202,S203)。つまり、測定条件に従って、プローブ110を用いて1又は2以上の測定点の座標が順に取得される。そして、全ての測定点の座標を取得すれば、幾何要素が特定される(ステップS204)。
【0046】
測定項目において2以上の幾何要素が指定されている場合には、他の幾何要素についてもステップS202~S204が繰り返される(ステップS205)。
【0047】
測定項目において指定された全ての幾何要素が特定されると、特定された幾何要素に基づいて、測定項目に対応する測定値が算出される(ステップS206)。この測定値を上限値及び下限値と比較することにより、測定値に関する良否判定が行われる(ステップS207)。
【0048】
設定情報に2以上の測定項目が含まれている場合、他の測定項目についてもステップS202~S207が繰り返され、全ての測定項目について測定値が求められ、良否判定が行われる(ステップS208)。全ての測定項目について判定結果が得られれば、これらの判定結果に基づいて、測定対象物Sの良否について総合判定が行われる(ステップS209)。
【0049】
(5)判定条件の参照指定
図6のステップS301~S309は、判定条件の参照指定の動作の一例を示したフローチャートである。三次元測定装置1は、測定対象物Sの三次元モデルから設計値及び公差情報を抽出し、抽出された設計値及び公差情報に基づいて、測定項目の判定条件を指定することができる。このフローチャートは、このような判定条件の参照指定の手順を示すものであり、設定情報が生成された後の設定モードにおいて実行される。
【0050】
上述したとおり、判定条件は、設置情報の生成手順において数値により指定することができる(
図4のステップS107)。このようにして指定された判定条件は、参照指定により更新することができる。また、判定条件の妥当性について、三次元モデルから抽出した設計値及び公差情報に基づいて確認することもできる。なお、数値による判定条件の指定を省略し、参照指定のみを行うように構成してもよい。
【0051】
まず、測定対象物Sに対応する三次元モデルが読み込まれる(ステップS301)。三次元モデルは、例えば、CADデータとして処理装置130から測定ヘッド100へ入力される。CADデータは、三次元モデルを規定するデータであり、三次元モデルの外表面を規定する多数のモデル要素により構成される。モデル要素は、三次元モデルの一部を構成する幾何学形状として規定される。つまり、モデル要素は、幾何学形状の種別と、当該幾何学形状を特定するための数値により構成される。モデル要素に対応づけられる数値には、設計情報及び公差情報を含むことができる。
【0052】
三次元モデルが読み込まれると、測定対象物Sに対する位置合わせが行われる(ステップS302)。この位置合わせは、三次元モデルの座標を測定対象物Sが配置された実空間の座標と一致させるための座標変換処理である。
【0053】
次に、設定情報に含まれる任意の幾何要素が選択される(ステップS303)。ユーザは、操作部120を用いて、設定情報に含まれる2以上の幾何要素の中から一つの幾何要素を選択することができる。
【0054】
幾何要素が選択されると、当該幾何要素に対応するモデル要素が三次元モデルから抽出される(ステップS304)。抽出するモデル要素は、選択された幾何要素の種別に基づいて決定される。例えば、幾何要素の種別が選択された幾何要素と一致するモデル要素が選択される。
【0055】
幾何要素の種別が一致するモデル要素が2以上ある場合には、選択された幾何要素の位置に基づいていずれか一つのモデル要素が選択される。例えば、選択された幾何要素からの距離が最も近いモデル要素を抽出することができる。また、ユーザが三次元モデル上における位置を指定した場合、指定された位置からの距離が最も近いモデル要素を抽出することができる。さらに、ユーザ操作に基づいて、現在抽出されているモデル要素に代えて、次の候補となる要素モデルを抽出することができる。例えば、選択された幾何要素からの距離が次に近いモデル要素を抽出することができる。
【0056】
モデル要素が抽出されると、当該モデル要素に対応する設計値及び公差情報が三次元モデルから抽出される(ステップS305)。モデル要素は、1又は2以上の物理量を有し、これらの物理量の設計値及び公差情報が対応づけられている。これらの設計値及び公差情報が抽出され、一覧表示される。
【0057】
抽出するモデル要素を変更する場合には、ステップS304、S305が繰り替えされる(ステップS306)。所望のモデル要素が抽出されていない場合、例えば、ユーザが次候補の抽出を指示し、あるいは、ユーザが三次元モデル上の位置を新たに指定することにより、再度、モデル要素の抽出が行われる。
【0058】
抽出された設計値及び公差情報のうち、任意の設計情報及び公差情報がユーザにより選択され(ステップS307)、選択された設計値及び公差情報を測定項目の判定条件として指定することができる(ステップS308)。判定条件が指定される測定項目は、ステップS303で選択した幾何要素に対応する測定項目である。なお、設計値又は公差情報の少なくとも一方を選択し、指定することができるように構成することもできる。
【0059】
設定情報が、2以上の幾何要素を含む場合、その幾何要素について、ステップS303~S308を繰り返すことができ、設定情報に含まれる全ての幾何要素を順次に選択し、対応するモデル要素を抽出し、三次元モデルから設計値及び公差情報を抽出し、判定条件として指定することができる(ステップS309)。
【0060】
三次元モデルから抽出した設計値及び公差情報を判定条件として指定することにより、数値入力を行う場合の煩雑さを解消し、あるいは、入力ミスを防ぐことができる。
【0061】
図7~9は、判定条件参照指定画面2の一例を示した図である。判定条件参照指定画面2は、三次元モデルによる判定条件の参照指定を行うための画面であり、表示部106に表示される。判定条件参照指定画面2は、幾何要素表示部21、測定項目表示部22、モデル画像表示部23及びモデル情報表示部24により構成される。
【0062】
幾何要素表示部21には、設定情報に含まれる1又は2以上の幾何要素が一覧表示されている。図中では、幾何要素として1つの平面001及び3つの円001~003が一覧表示されている。ユーザは、操作部120を操作することにより、これらの幾何要素の中から任意の幾何要素を選択することができ、選択された幾何要素はハイライト21hが付されて表示される。図中では、円002が選択された状態が示されている。
【0063】
測定項目表示部22には、選択された幾何要素に対応する測定項目が一覧表示される。つまり、幾何要素表示部21内において選択された幾何要素に対応する1又は2以上の測定項目が一覧表示される。図中では、測定項目として、円002の直径、真円度、中心X座標、中心Y座標及び中心Z座標が一覧表示されている。
【0064】
測定項目表示部22には、測定項目ごとに測定値、設計値及び公差情報が表示される。図中では、測定項目の一覧表が表示されており、各行が測定項目に対応し、各行ごとにチェック欄22cが設けられている。測定値は、設定情報の生成手順において算出された測定値である(
図4のステップS106)。設計値及び公差情報は、設定情報の生成手順において指定された判定条件であり(
図4のステップS107)、ユーザは、測定項目表示部22内において数値入力により変更することができる。チェック欄22cは、三次元モデルから自動入力(転記)される対象となる設計値又は公差情報を選択する入力欄であり、ユーザ操作によりチェックマークの有無が切り替えられる。
【0065】
モデル画像表示部23は、三次元モデルの外観画像を表示する表示部であり、幾何要素表示部21内で選択された幾何要素に対応するモデル要素が識別可能に表示されている。図中では、円002に対応するモデル要素が、三次元モデルから抽出され、三次元モデルの画像上にシンボル231として強調表示され、「円002」の注釈表示が付されている。
【0066】
モデル情報表示部24には、抽出されたモデル要素に対応する物理量の設計値及び公差情報が表示されている。図中では、円002の物理量として、直径、中心のX座標、中心のY座標、中心のZ座標及び半径が、三次元モデルから抽出され、それぞれの設計値及び公差情報が表示される。また、モデル情報表示部24内のタブ241,242を選択することにより、設計値又は公差情報が選択的に表示される。
【0067】
図7は、設計値のタブ241が選択され、モデル情報表示部24内に設計値の一覧表が表示されている状態を示した図である。設計値の一覧表は、各行が物理量に対応し、各行ごとに物理量の種別と、設計値とが表示されるとともに、チェック欄24cが設けられている。チェック欄24cは、測定項目表示部22の一覧表に自動入力(転記)する対象となる設計値を選択する入力欄であり、ユーザ操作によりチェックマークの有無が切り替えられる。
【0068】
また、モデル情報表示部24には、設計値を参照指定するための設定ボタン24bが設けられている。
図7の状態において、設定ボタン24bを操作すれば、設計値の一覧表のうち、チェック欄24cにより選択されている行の設計値が、測定項目の一覧表のうち、チェック欄22cにより選択されている行の設計値として自動的に転記される。2以上のチェック欄22c,24cが選択されている場合、物理量が一致するように転記される。
【0069】
図8は、公差情報のタブ242が選択され、モデル情報表示部24内に公差情報の一覧表が表示されている状態を示した図である。公差情報の一覧表は、各行が物理量に対応し、各行ごとに物理量の種別と、上限値及び下限値とが表示されるとともに、チェック欄24cが設けられている。チェック欄24cは、測定項目表示部22の一覧表に自動入力(転記)する対象となる公差情報を選択する入力欄であり、ユーザ操作によりチェックマークの有無が切り替えられる。
【0070】
図8の状態において、公差情報を参照指定するための設定ボタン24bを操作すれば、公差情報の一覧表のうち、チェック欄24cにより選択されている行の公差情報が、測定項目の一覧表のうち、チェック欄22cにより選択されている行の公差情報として自動的に転記される。2以上のチェック欄22c,24cが選択されている場合、物理量が一致するように転記される。
【0071】
図9は、円002として誤ったモデル要素が抽出されたときの状態が示されている。円002は右手前の貫通孔の上面開口の外縁形状であり、
図7では、当該上面開口が、円002に対応するモデル要素として抽出され、モデル画像表示部23にはシンボル231が表示されるとともに、モデル情報表示部24には当該モデル要素の物理量が表示されている。これに対し、
図9では、当該貫通孔の下面開口が、円002に対応するモデル要素として抽出され、モデル画像表示部23にはシンボル232が表示されるとともに、モデル情報表示部24には当該モデル要素の物理量が表示されている。つまり、誤ったモデル要素が抽出されている。
【0072】
この場合、ユーザはモデル画像表示部23内においてカーソル233を移動させ、三次元モデル上の任意の位置を指定すれば、指定された位置に最も近いモデル要素が新たに抽出される。図中では、手前右側の貫通孔の上面開口付近の位置を指定することにより、当該上面開口を新たなモデル要素として抽出させ、
図7に示した状態に至ることができる。
【0073】
また、ユーザが、モデル画像表示部23内の「次候補」ボタン23bを操作することにより、異なるモデル要素を抽出することができる。
図9の場合、幾何要素の種別が円であり、かつ、中心位置からの距離が下面開口の次に近いモデル要素として、上面開口が抽出され、
図7に示した状態に至ることができる。
【0074】
幾何要素の種別が同一であり、互いに近くに位置する2以上のモデル要素が存在している場合、選択した幾何要素に対応するモデル要素として、誤ったモデル要素が抽出される可能性がある。このような場合であっても、再度、モデル要素の抽出処理を行い、他のモデル要素を抽出することができる。このため、正しいモデル要素を容易に抽出することができる。
【0075】
(6)測定ヘッド100の機能構成
図10は、
図1の測定ヘッド100の主な機能構成を示した機能ブロック図である。測定ヘッド100は、撮像部105、測定項目受付部501、設定情報記憶部502、座標測定部511、幾何要素特定部512、測定値算出部513、判定部514、三次元モデル受付部521、座標変換部522、三次元モデル記憶部523及び判定条件参照指定部524を備える。
【0076】
測定項目受付部501は、測定項目の指定を受け付ける手段である。測定項目には、測定条件及び判定条件が含まれる。また、測定条件には、幾何要素の種別と、当該幾何要素を用いて測定する物理量の指定が含まれ、判定条件には、設計値及び公差情報が含まれる。測定項目は、操作部120を用いてユーザにより指定される。受け付けた測定項目は、設定情報記憶部502に記憶される。
【0077】
設定情報記憶部502は、測定項目を記憶する記憶手段である。なお、幾何要素は、その種別が測定項目受付部501によって受け付けられ、設定モードにおいて幾何要素特定部512により特定されている。
【0078】
撮像部105は、プローブ110の発光部113を撮影する手段であり、撮影画像に基づいて、プローブ110の位置及び姿勢を検出する。
【0079】
座標測定部511は、プローブ110の位置及び姿勢に基づいて、プローブ110の接触部115の座標を求め、プローブ110により指示された測定対象物S上の測定点の座標を求める。
【0080】
幾何要素特定部512は、座標測定部511が求めた測定点の座標と、設定情報記憶部502が保持する幾何要素の種別とに基づいて、幾何要素を特定する。
【0081】
測定値算出部513は、設定情報記憶部502が保持する測定項目に基づいて、幾何要素特定部512が特定した幾何要素から測定値を算出する。設定モードにおいて算出された測定値は、設定情報記憶部502に記憶され、測定モードにおいて算出された測定値は、判定部514へ出力される。
【0082】
判定部514は、測定モードにおいて測定値算出部513が求めた測定値と、設定情報記憶部502に保持されている判定条件とに基づいて、測定対象物Sの良否判定を行う。例えば、測定条件と上限値及び下限値とを比較することにより、良否判定が行われる。
【0083】
三次元モデル受付部521は、測定対象物Sの三次元モデルを受け付ける手段である。三次元モデルのデータファイルは、処理装置130内に保持され、ユーザが選択したファイルが三次元モデル受付部521により受け付けられる。座標変換部522は、受け付けた三次元モデルの座標変換を行う手段である。三次元モデル記憶部523は、三次元モデルを記憶する手段であり、座標変換後の三次元モデルが保持される。
【0084】
判定条件参照指定部524は、ユーザ操作に基づいて、三次元モデル記憶部523内の三次元モデルから設計値及び公差情報を抽出し、設定情報記憶部502内に保持されている測定項目の判定条件として設定情報記憶部502に格納する。既に判定条件が格納されている場合には、当該判定条件を更新する。
【0085】
図11は、
図10の判定条件参照指定部524の詳細構成の一例を示した図である。判定条件参照指定部524は、幾何要素選択部601、モデル要素抽出部602、判定条件抽出部603及び判定条件指定部604により構成される。
【0086】
幾何要素選択部601は、ユーザ操作に基づいて、設定情報に含まれる任意の幾何要素を選択する手段である。選択される幾何要素は、判定条件の参照指定の対象となる測定項目に対応する幾何要素である。幾何要素選択部601は、設定情報記憶部502から設定情報を読み出し、当該設定情報に含まれる1又は2以上の測定項目に対応する1又は2以上の幾何要素の中から、いずれか1つの幾何要素を選択する。
【0087】
モデル要素抽出部602は、三次元モデルからモデル要素を抽出する手段である。抽出されるモデル要素は、幾何要素選択部601により選択された幾何要素に対応するモデル要素である。モデル要素抽出部602は、三次元モデル記憶部523内の三次元モデルを構成する多数のモデル要素の中から、いずれか1つのモデル要素を抽出する。例えば、選択された幾何要素に対し、幾何要素の種別が同一で位置が最も近いモデル要素が抽出される。モデル要素の抽出は、幾何要素が選択されることによって行われる。また、ユーザが次候補の抽出を指示すれば、他のモデル要素の選択が行われる。さらに、ユーザが三次元モデル上の位置を指定すれば、当該位置に近いモデル要素が抽出される。
【0088】
判定条件抽出部603は、三次元モデルから設計値及び公差情報を抽出する。抽出される設計値及び公差情報は、モデル要素抽出部602により抽出されたモデル要素に対応づけられた1又は2以上の物理量の設計値及び判定情報である。
【0089】
判定条件指定部604は、判定条件抽出部603が抽出した設計値及び公差情報を測定項目の判定条件として指定する。判定条件指定部604は、抽出された設計値及び公差情報のうち、ユーザが選択したものを測定項目の判定条件として指定し、設定情報記憶部502に格納する。このとき、対象となる測定項目は、幾何要素選択部601が指定した幾何要素に対応づけられた1又は2以上の測定項目であって、ユーザが選択したものである。また、設計値又は公差情報のいずれを判定条件として指定するのかも、ユーザが指定することができる。
【0090】
上記実施の形態では、撮像部105を用いてプローブ110の発光部113を撮影して測定対象物S上の位置を測定する三次元測定装置1の例について説明したが、本発明の適用対象は、このような光学式の三次元測定装置に限定されない。例えば、門型やアーム型の三次元測定装置にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 三次元測定装置
100 測定ヘッド
105 撮像部
106 表示部
110 プローブ
113 発光部
114 スタイラス
115 接触部
120 操作部
130 処理装置
2 判定条件参照指定画面
21 幾何要素表示部
22 測定項目表示部
23 モデル画像表示部
24 モデル情報表示部
501 測定項目受付部
502 設定情報記憶部
511 座標測定部
512 幾何要素特定部
513 測定値算出部
514 判定部
521 三次元モデル受付部
522 座標変換部
523 三次元モデル記憶部
524 判定条件参照指定部
601 幾何要素選択部
602 モデル要素抽出部
603 判定条件抽出部
604 判定条件指定部
S 測定対象物