(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】液晶表示装置及び光学素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13363 20060101AFI20220413BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
G02F1/13363
G02F1/13357
(21)【出願番号】P 2019515195
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(86)【国際出願番号】 JP2018014485
(87)【国際公開番号】W WO2018198700
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2017086800
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小間 徳夫
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-248045(JP,A)
【文献】特開2005-024738(JP,A)
【文献】特開2004-094039(JP,A)
【文献】特開2000-105371(JP,A)
【文献】特開平11-237632(JP,A)
【文献】国際公開第2011/058780(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/059630(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335,1/13363
G02F 1/13357
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライトと、
前記バックライトからの光を受けて波長変換された光を出力する波長変換層と、
前記波長変換層よりも視認側に配置された液晶層と、
前記液晶層よりも視認側に配置された偏光板と、
前記波長変換層と前記液晶層との間に配置された偏光層と、
前記液晶層と前記偏光板との間に配置されたλ/4板と、
前記偏光層と前記液晶層との間に配置されたλ/4層と、
を有する液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶表示装置であって、
前記λ/4板と前記λ/4層は、同じ波長分散特性を有する、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液晶表示装置であって、
前記偏光層と前記液晶層との間に、水分の透過を抑制するためのバリアコート層が設けられている、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の液晶表示装置であって、
前記λ/4層及び前記λ/4板は、同じ材質の液晶性高分子によって構成されている、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置及び光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス表示装置等の表示装置が普及してきている。一般的な液晶表示装置は、非発光型表示装置であって、白色LED等を光源とするバックライトからの光を液晶層にて画素ごとに光変調し、赤(R)、緑(G)、青(B)の各カラーフィルター層を透過させてカラー表示を行う。白色LEDは、発光効率がよく、寿命が長い等の特長がある。一方、白色LEDは、発熱による蛍光体の発光効率の低下(いわゆる温度消光)による光損失が大きい。また、カラーフィルター層によって白色LEDからの光を赤、緑及び青に分離する構造のため、バックライトの1/3程度の光しか実際には使用されず、液晶表示装置全体での光利用効率が低い。
【0003】
また、バックライトとして紫外光源を用い、この紫外光源を励起光として赤、緑及び青の各色の蛍光体層を発光させる形式の液晶表示装置が開示されている(特許文献1)。また、バックライトとして青色LEDを用い、青色LEDから出力される青色光を利用して赤色及び緑色の蛍光体層を発光させて赤色及び緑色の光を得ると共に、青色LEDからの青色光をそのまま透過させて青色の光を表示させる形式の液晶表示装置が開示されている(特許文献2)。
【0004】
また、液晶層が挟持された一対の基板と、一対の基板の一方側の背面に配置されたピーク波長380nm~420nmの範囲の光を発する発光ダイオードと、一対の基板の他方側に形成された偏光板とを備え、一対の基板の他方側に形成された偏光板の液晶層と反対側には、単位ピクセル毎に、ピーク波長が380nm~420nmの範囲の光を吸収して所定の色の光を発する蛍光体層を備えるサブピクセルを備え、蛍光体層の液晶層とは反対側の面には波長420nm以下の波長の光を反射又は吸収するフィルタ層が形成された液晶表示装置が開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-036158号公報
【文献】特開2003-005182号公報
【文献】特開2010-250259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、いずれの表示装置も外光下での視認性が十分でないという問題がある。外光下での視認性が高い表示装置として反射型の液晶表示装置が提案されているが、暗所では視認性が低いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、暗所での視認性を低下させることなく、外光下での視認性をも高めた新たな液晶表示装置、及び、それに用いられる光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、バックライトと、前記バックライトからの光を受けて波長変換された光を出力する波長変換層と、前記波長変換層よりも視認側に配置された液晶層と、前記液晶層よりも視認側に配置された偏光板と、前記波長変換層と前記液晶層との間に配置された偏光層と、前記液晶層と前記偏光板との間に配置されたλ/4板と、前記偏光層と前記液晶層との間に配置されたλ/4層と、を有する液晶表示装置である。
【0009】
前記λ/4板と前記λ/4層は、同じ波長分散特性を有することが好適である。
【0010】
前記偏光層と前記液晶層との間に、水分の透過を抑制するためのバリアコート層が設けられていることが好適である。
【0011】
液晶表示装置において、前記λ/4層及び前記λ/4板は、同じ材質の液晶性高分子によって構成されていることが好適である。
【0012】
本発明の1つの態様は、バックライトと、前記バックライトからの光を受けて波長変換された光を出力する波長変換層と、前記波長変換層よりも視認側に配置された液晶層と、前記液晶層よりも視認側には配置された偏光板と、前記波長変換層と前記液晶層との間に配置された偏光層と、前記液晶層と前記偏光板との間に配置されたλ/4板と、前記偏光層と前記液晶層との間に配置されたλ/4層と、を有する液晶表示装置に使用される前記λ/4板からなる光学素子であって、前記λ/4層と波長分散が同じであることを特徴とする光学素子である。
【0013】
本発明の1つの態様は、バックライトと、前記バックライトからの光を受けて波長変換された光を出力する波長変換層と、前記波長変換層よりも視認側に配置された液晶層と、前記液晶層よりも視認側に配置された偏光板と、前記波長変換層と前記液晶層との間に配置された偏光層と、前記液晶層と前記偏光板との間に配置されたλ/4板と、前記偏光層と前記液晶層との間に配置されたλ/4層と、を有する液晶表示装置に使用される、前記偏光板と前記λ/4板とからなる光学素子であって、前記λ/4層と波長分散が同じである前記λ/4板と前記偏光板とが一体形成されたことを特徴とする光学素子である。
【0014】
本発明の1つの態様は、バックライトと、前記バックライトからの光を受けて波長変換された光を出力する波長変換層と、前記波長変換層よりも視認側に配置された液晶層と、前記液晶層よりも視認側に配置された偏光板と、前記波長変換層と前記液晶層との間に配置された偏光層と、前記液晶層と前記偏光板との間に配置されたλ/4板と、前記偏光層と前記液晶層との間に配置されたλ/4層と、を有する液晶表示装置に使用される前記λ/4層からなる光学素子であって、前記λ/4板と波長分散が同じであることを特徴とする光学素子である。
【0015】
本発明の1つの態様は、バックライトと、前記バックライトからの光を受けて波長変換された光を出力する波長変換層と、前記波長変換層よりも視認側に配置された液晶層と、前記液晶層よりも視認側に配置された偏光板と、前記波長変換層と前記液晶層との間に配置された偏光層と、前記液晶層と前記偏光板との間に配置されたλ/4板と、前記偏光層と前記液晶層との間に配置されたλ/4層と、を有する液晶表示装置に使用される、前記偏光層と前記λ/4層とからなる光学素子であって、前記λ/4板と波長分散が同じである前記λ/4層と前記偏光層とが一体形成されたことを特徴とする光学素子である。
【0016】
光学素子において、前記λ/4層と前記λ/4板は、同じ材質の液晶性高分子によって構成されていることが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、暗所での視認性を低下させることなく、外光下での視認性をも高めた新たな液晶表示装置、及び、それに用いられる光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施の形態における液晶表示装置の構成を示す図である。
【
図2】第2の実施の形態における液晶表示装置の構成を示す図である。
【
図3】従来の波長変換層の問題を説明するための図である。
【
図4】変形例における波長変換層の構成を示す図である。
【
図5】変形例における波長変換層の構成を示す図である。
【
図6】変形例における波長変換層の構成を示す図である。
【
図7】変形例における波長変換層の構成を示す図である。
【
図8】変形例における波長変換層の構成を示す図である。
【
図9】変形例における波長変換層の構成を示す図である。
【
図10】赤色の波長領域の光を吸収するカラーフィルターの透過率の例を示す図である。
【
図11】赤色及び緑色の波長領域の光を吸収するカラーフィルターの透過率の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態における液晶表示装置100は、
図1の断面模式図に示すように、偏光板10、ネガティブCプレート12、TFT基板14、層間絶縁膜16、表示電極18、配向膜(配向層)20、液晶層22、配向膜(配向層)24、共通電極26、バリアコート層28、偏光層30、波長変換層32、対向基板34、バックライト36、λ/4板38、及び、λ/4層40を含んで構成される。
【0020】
液晶表示装置100は、矢印で示すように、バックライト36から光を受けて、波長変換層32で波長変換された光を偏光板10側から出力して画像を表示する装置として機能する。また、液晶表示装置100は、偏光板10側から入射する外光を積極的に利用して、波長変換層32において外光を波長変換して出力することもできる。なお、
図1は模式図であり、各構成要素の大きさ及び厚さは実際の値を反映していない。
【0021】
本実施の形態では、液晶表示装置100としてアクティブマトリックス型液晶表示装置を例として説明するが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、単純マトリックス型等の他の態様の液晶表示装置にも適用可能である。
【0022】
TFT基板14は、基板上にTFTを画素毎に配置して構成される。基板は、ガラス等の透明な基板である。基板は、液晶表示装置100を機械的に支持すると共に、光を透過して画像を表示するために用いられる。基板は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂からなるフレキシブル基板としてもよい。
【0023】
図1では、TFTが3つ表されている。TFTのほぼ真ん中の基板上には、ゲートラインに接続されるゲート電極14aが配置される。ゲート電極14aを覆ってゲート絶縁膜14bが形成され、このゲート絶縁膜14bを覆って半導体層14cが形成される。ゲート絶縁膜14bは、例えばSiO
2などの絶縁体で形成される。また、半導体層14cは、アモルファスシリコンや、ポリシリコンで形成され、ゲート電極14aの直上部分が不純物のほとんどないチャネル領域とされ、両側が不純物ドープによって導電性が付与されたソース領域およびドレイン領域とされる。TFTのドレイン領域の上にはコンタクトホールが形成され、そこに金属(例えば、アルミニウム)のドレイン電極が配置(電気的に接続)され、ソース領域の上にはコンタクトホールが形成され、そこに金属(例えば、アルミニウム)のソース電極が配置(電気的に接続)される。ドレイン電極はデータ電圧が供給されるデータラインに接続される。
【0024】
TFT基板14のTFTが形成されていない側の表面には、偏光板10が形成される。TFT基板14の基板の表面を覆うように偏光板10が形成される。偏光板10は、PVA(ポリビニルアルコール)系樹脂にヨウ素系材料又は二色性染料によって染色がなされた染色系の偏光素子を含むものとすることが好適である。
【0025】
TFT基板14のTFTが形成されていない側の表面上には、視野補正用のネガティブCプレート12が形成される。例えば、ネガティブCプレートの厚さ方向のレターデーションRthは220nmである。また、ネガティブCプレート12と偏光板10との間には、λ/4板の一例に相当するλ/4板38(1/4波長板)が形成される。例えば、λ/4板38のレターデーションReは135nmであることが好適であり、遅相軸は45°であることが好適である。ネガティブCプレート12とλ/4板38は光学補償層として機能する。また、λ/4板38は、反射防止層として機能する。つまり、偏光板10を通って液晶表示装置100の外部から内部に光が入射すると、その光の偏光は偏光板10を通ることで直線偏光となり、その直線偏光はλ/4板38を通ることで円偏光に変換される。円偏光の光が各層の界面等で反射すると、再びλ/4板38に入射する。つまり、光はλ/4板38を2回通ることになる。円偏光の光は反射しても回転方向は変わらない性質があるので、λ/4板38の位相差の2往復分が加算され、合計λ/2の位相差が得られる。この位相差によって、各相の界面等で反射してλ/4板38を通り抜けた光の偏光方位は、入射偏光方位に対して90°回転させられる。これによって、反射光は偏光板10を通り抜けることができず、液晶表示装置100の外部に射出されない。このようにして、反射光が液晶表示装置100から射出されることを防止することができる。偏光板10とλ/4板38は、光アイソレータとして機能することになる。
【0026】
TFT基板14のTFTが形成された側の面には、層間絶縁膜16を介して表示電極18が設けられる。この表示電極18は画素毎に分離された個別電極であり、例えばITO(インジウム・チン・オキサイド)などによる透明電極である。表示電極18は、TFT基板14に形成されたソース電極に接続される。
【0027】
表示電極18を覆って、液晶を垂直に配向させる配向膜20が形成される。配向膜20は、ポリイミド等の樹脂材料によって構成される。配向膜20は、例えば、ポリイミド樹脂となるN-メチル-2-ピロリジノンの5wt%溶液を表示電極18上に印刷し、180℃から280℃程度の加熱により硬化させて形成することができる。
【0028】
次に、対向基板34側の構成及び製造方法について説明する。対向基板34は、ガラス等の透明な基板である。対向基板34は、液晶表示装置100を機械的に支持すると共に、バックライト36からの光を透過して波長変換層32等に入射させるために用いられる。対向基板34は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂からなるフレキシブル基板としてもよい。
【0029】
対向基板34上には、波長変換層32が形成される。波長変換層32は、画素毎に対向基板34の面内方向にマトリクス状に配置される。波長変換層32として、後述するバックライト36からの光を受けて特定の波長領域の光を放出する蛍光体、量子ドット、量子ロッドのいずれかを適用することができる。
【0030】
蛍光体は、画素毎に赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれか一つの光を発する材料とすることが好適である。赤色蛍光体にはEu付活硫化物系赤色蛍光体、緑色蛍光体にはEu付活硫化物系緑色蛍光体、青色蛍光体にはEu付活リン酸塩系青色蛍光体を使用することができる。波長変換層32は、表示させたい色に応じて単一又は複数の蛍光体を含んでいるものとすることができる。なお、青色の波長領域は450nm~495nm、緑色の波長領域は495nm~590nm、赤色の波長領域は590nm~750nmとする。ただし、各色の波長領域は厳密なものではなく、上記範囲からずれていてもよい。また、各色の波長領域が連続的でなくてもよいし、重複してもよい。
【0031】
例えば、380nm以上460nm以下の範囲のバックライト36からの光や外光を吸収して、青色光及び黄色光を発する2種の蛍光体を含んでいる場合には、擬似的に白色光を得ることができる。また、赤色光、緑色光及び青色光の発する3種の蛍光体を含んでいる場合にも同様に白色光を得ることができる。また、ピーク波長が380nm以上460nm以下の範囲のバックライト36からの光や外光を吸収して任意の色の光を発する単一又は複数の蛍光体を適宜選択して用いることにより、任意の色の光を発することができる液晶表示装置が得られる。
【0032】
また、例えば、380nm以下の紫外光の波長範囲のバックライト36からの光を吸収して、所望の波長領域の光を発する青色光及び黄色光を発する2種の蛍光体を含んでいる場合には、擬似的に白色光を得ることができる。また、赤色光、緑色光及び青色光の発する3種の蛍光体を含んでいる場合にも同様に白色光を得ることができる。また、ピーク波長が380nm以下の範囲のバックライト36からの光を吸収して任意の色の光を発する単一又は複数の蛍光体を適宜選択して用いることにより、任意の色の光を発することができる液晶表示装置が得られる。
【0033】
また、波長変換層32は、複数の異なる特性を有する半導体材料を3次元的に周期的に配置した量子ドット構造や2次元的に周期的に配置した量子ロッドによっても実現することができる。量子ドットや量子ロッドは、異なるバンドギャップを有する半導体材料をnmオーダーの周期で繰り返し配置することによって、所望のバンドギャップを有する材料として機能させるものであり、バックライト36からの光を受けてバンドギャップに応じた波長領域の光を発する波長変換層32として利用することができる。具体的には、バックライト36の出力光の波長領域の光を吸収して、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれか一つの光を発する特性を有する量子ドット構造や量子ロッド構造を形成する。
【0034】
量子ドットは、例えば、中心核(コア)を、セレン化カドミウム(CdSe)で形成し、その外側を硫化亜鉛(ZnS)の被覆層(シェル)が覆う構造とすることができる。この直径を変えることで発光色をコントロールすることができる。たとえば赤(R)を発光させる場合は直径8.3nm、緑(G)を発光させる場合は直径3nm、青(B)を発光させる場合はさらに直径を小さくするとよい。また、中心核材料としては、リン化インジウム(InP)、硫化インジウム銅(CuInS2)、カーボン、グラフェン等を用いてもよい。
【0035】
波長変換層を、赤(R)、緑(G)、青(B)を発光する蛍光体又は量子ドット又は量子ロッドとし、表示電極に対応した箇所にパターニング処理により形成及び配置することでフルカラー表示が可能となる。パターニング処理は、赤(R)、緑(G)、青(B)を発光する蛍光体材料又は量子ドット材料又は量子ロッド材料を感光性高分子に分散し、この分散液をコーターにより対向基板34上に塗布形成し、露光、現像することにより実現される。各々の色の間には表示画素間の混色を防止するためにブラックマトリクスを形成してもよい。
【0036】
波長変換層32上には、偏光層30が形成される。偏光層30は、PVA(ポリビニルアルコール)系樹脂に二色性染料によって染色がなされた染色系の偏光素子を含むものとすることが好適である。ここで、染料系材料は、アゾ化合物及び/又はその塩を含有することが好適である。
【0037】
すなわち、以下の化学式を満たす染料系材料を用いることが好適である。
【0038】
【化1】
(1)式中R1、R2は各々独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシル基を示し、nは1又は2で示されるアゾ化合物及びその塩。
(2)R1、R2が各々独立に水素原子、メチル基、メトキシ基のいずれかである(1)記載のアゾ化合物及びその塩。
(3)R1、R2が水素原子である(1)記載のアゾ化合物及びその塩。
【0039】
例えば、以下に示す工程で得られる材料を用いることが好適である。4-アミノ安息香酸13.7部を水500部に加え、水酸化ナトリウムで溶解する。得られた物質を冷却して10℃以下で35%塩酸32部を加え、次に亜硝酸ナトリウム6.9部を加え、5~10℃で1時間攪拌する。そこへアニリン-ω-メタンスルホン酸ソーダ20.9部を加え、20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3.5とする。さらに、攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過して、モノアゾ化合物を得る。得られたモノアゾ化合物を水酸化ナトリウム存在下、90℃で攪拌し、化学式(2)のモノアゾ化合物17部を得る。
【0040】
【0041】
化学式(2)のモノアゾ化合物12部、4,4’-ジニトロスチルベン-2,2’-スルホン酸21部を水300部に溶解させた後、水酸化ナトリウム12部を加え、90℃で縮合反応させる。続いて、グルコース9部で還元し、塩化ナトリウムで塩析した後、濾過して化学式(3)で示されるアゾ化合物16部を得る。
【0042】
【0043】
さらに、化合物(3)の染料を0.01%、シー・アイ・ダイレクト・レッド81を0.01%、特許2622748号公報の実施例1において示されている下記構造式(4)で示される染料を0.03%、特開昭60-156759号公報の実施例23において公開されている下記構造式(5)で示される染料0.03%及び芒硝0.1%の濃度とした45℃の水溶液に基板として厚さ75μmのポリビニルアルコール(PVA)を4分間浸漬する。このフィルムを3%ホウ酸水溶液中で50℃で5倍に延伸し、緊張状態を保ったまま水洗、乾燥する。これによって、中性色(平行位ではグレーで、直交位では黒色)となる染料系材料を得ることができる。
【0044】
【0045】
【0046】
通常の偏光素子は、樹脂にヨウ素およびヨウ素化合物によって染色した材料で形成されたヨウ素系の偏光素子である。しかしながら、ヨウ素およびヨウ素化合物は熱に弱く、100℃程度の加熱によって変質してしまう。一方、染料(二色性染料)を用いる偏光素子は、比較的熱に強く、130℃程度の加熱であれば変質を防げる。そこで、後述する配向膜24や共通電極26の形成時の成膜温度の影響を受けることなく、対向基板34と配向膜24との間に偏光層30を形成することが可能になる。
【0047】
また、偏光層30の含水率を3%以下、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.1%以下とすることが好適である。すなわち、偏光層30の含水率を低下させることによって、偏光層30に含まれる水分が共通電極26や液晶層22に到達し難くすることができる。
【0048】
このように、偏光層30の含水率を低く抑えることにより、偏光層30に含まれる水分が共通電極26や液晶層22へ到達し難くなり、水分による共通電極26や液晶層22の劣化を抑制することができる。
【0049】
なお、含水率は、(偏光層30内の水分重量/偏光層30の全重量)×100(%)として表される。含水率は、カールフィッシャー法により測定することができる。本実施の形態における含水率は、カールフィッシャー電流滴定法を適用して測定した含水率を意味するものとする。
【0050】
カールフィッシャー法としては、三菱ケミカルアナリテック社製の水分測定装置(CA-200型又はKF-200型)に、水分気化装置(VA200型)を取り付けて使用することで含水率の測定が可能となる。
【0051】
また、加熱重量変化法は、精密天秤等で重量を測定した試料を、加熱して十分に水分を気化させた後、再び重量を測定し、数式(1)によって含水率を計算する方法である。加熱時間は、試料の大きさや状態等で変化するが、例えば、120℃で2分である。
【0052】
【0053】
例えば、偏光層30を波長変換層32に貼合する前、又は波長変換層32に貼合した後にアニール処理を施すことにより偏光層30の含水率を低下させることができる。アニール処理は、100℃以上150℃未満の温度範囲で行うことが好適である。また、アニール処理の際に偏光層30を真空槽に導入した状態で行うことが好適である。
【0054】
具体的には、例えば、ポリエチルテレフタレート(PET)機材にポリビニルアルコール(PVA)を塗布し、60℃の温水に浸して膨潤させる。その後、上記と同様に、二色性染料の水溶液によって染着させ延伸する。その後、紫外線硬化樹脂を用いて波長変換層32が形成された対向基板34上にPVA側が貼合面になるように貼合する。このとき、貼合前又は貼合後に110℃で1時間のアニール処理を行う。その後、染色、延伸されたPVAを残しPET機材は剥離される。
【0055】
ここで、偏光層30を波長変換層32に貼合する前にアニール処理することで、加熱によって波長変換層32等の特性の低下を抑制することができる。一方、偏光層30を波長変換層32に貼合した後にアニール処理を施すことで、アニール処理後に直ちにバリアコート層28や共通電極26を偏光層30上に形成することができ、アニール後に水分が偏光層30内に再度入り込むことを抑制することができる。
【0056】
なお、本実施の形態では、偏光層30に対してアニール処理を施すことにより含水率を低下させたが、これに限定されるものではなく、含水率を低下させることができる処理であればよい。例えば、偏光層30を導入した真空槽内を真空状態とすることにより乾燥させ、偏光層30内の水分を低下させる真空処理としてもよい。
【0057】
偏光層30上には、バリアコート層28が形成される。バリアコート層28は、偏光層30に含まれる水分が共通電極26や液晶層22に到達し難くする機能を有する層である。バリアコート層28は、偏光層30と液晶層22との間に配置することが好適である。また、偏光層30と液晶層22との間に共通電極26が設けられている場合、バリアコート層28は、偏光層30と共通電極26との間に配置することがより好適である。バリアコート層28は、有機層や無機層又はこれらを組み合わせたハイブリッド層とすることができる。
【0058】
このように、バリアコート層28を設けることにより、偏光層30に含まれる水分が共通電極26や液晶層22へ到達し難くなり、水分による共通電極26や液晶層22の劣化を抑制することができる。
【0059】
バリアコート層28として用いる有機層は、アクリル系材料を含むことが好適である。有機層は、無機層に比べて偏光層30との密着性が良く、加工がし易い点で有利である。
【0060】
アクリル系樹脂層は、(メタ)アクリレート成分と、光重合開始剤とを少なくとも含有する重合性樹脂組成物を硬化させて構成することができる。(メタ)アクリレート成分は、水酸基を有する(メタ)アクリレート(A)を含有し、任意に(メタ)アクリレート基を3つ以上有する(メタ)アクリレート(B)をさらに含有する。本実施の形態では、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを表すものとする。同様に、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を表すものとする。
【0061】
(メタ)アクリレート成分の溶剤を除いた全水酸基価は、100~200mgKOH/gである。重合性樹脂組成物中の(メタ)アクリレート成分の水酸基価をこの範囲内に抑えることにより、アクリル系樹脂層の偏光層30への密着性及び接着性を高めることができる。アクリル系樹脂層は、偏光層30に対する密着性が良好であるため、偏光層30に優れた耐久性を付与することができる。(メタ)アクリレート成分全体の水酸基価が上記範囲に入っている限りにおいて、(メタ)アクリレート成分は、水酸基を有さない(メタ)アクリレート化合物をさらに含有してもよい。
【0062】
重合性樹脂組成物の固形分換算での水酸基価は、以下の式(2)により求めることがで
きる。
【0063】
【0064】
数式(2)において、樹脂の平均分子量は、(メタ)アクリレート成分に含まれる(メタ)アクリレートそれぞれの分子量と配合比から算出した(メタ)アクリレート混合物の平均分子量を表わす。例えば、(メタ)アクリレート成分が、分子量MAの(メタ)アクリレート(A)をXA重量%、分子量MBの(メタ)アクリレート成分(B)をXB重量%含む場合、樹脂の平均分子量Mは、M=MA×XA/100+MB×XB/100で表される。(メタ)アクリレート成分がその他の(メタ)アクリレートを含む場合も同様に配合比に基づいて平均分子量を算出することができる。
【0065】
水酸基を含有する(メタ)アクリレート(A)としては、例えば、EHC変性ブチルアクリレート(長瀬産業製 デナコールDA-151)、グリセロールメタクリレート(日油製 ブレンマーGLM)、2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(日油製 ブレンマーQA)、EO変性燐酸アクリレート(共栄社化学製 ライトエステルP-A)、EO変性フタール酸アクリレート(大阪有機製 ビスコート2308)、EO、PO変性フタル酸メタクリレート(共栄社化学製 ライトエステルHO)、アクリル化イソシアヌレート(東亞合成製 アロニックスM-215)、EO変性ビスフェノールAジアクリレート(共栄社化学製 エポキシエステル3000A)、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート(サートマー社製 SR-399)、グリセロールジメタクリレート(長瀬産業社製 デナコールDM-811)、グリセロールアクリレート(日油製 ブレンマーGAM)、グリセロールジメタクリレート(日油製 ブレンマーGMR)、ECH変性グリセロールトリアクリレート(長瀬産業製 デナコールDA-314)、ECH変性1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬製 カヤラッドR-167)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬製 カヤラッドPET-30)、ステアリン酸変性ペンタエルスリトールジアクリレート(東亞合成製 アロニックスM-233)、ECH変性フタル酸ジアクリレート(長瀬産業製 デナコールDA-721)、トリグリセロールジアクリレート(共栄社化学製 エポキシエステル 80 MFA)、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
水酸基を有する(メタ)アクリレート(A)は、これらの化合物のうち、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましく、水酸基に加え、(メタ)アクリロイル基を3つ以上を有する(メタ)アクリレートであることがより好ましい。水酸基と(メタ)アクリロイル基を3つ以上とを有する(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基価=188mgKOH/g)、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート(107mgKOH/g)が好ましい。
【0067】
水酸基を含有する(メタ)アクリレート(A)の重合性樹脂組成物中の含有量は、重合性樹脂組成物の固形分中に、好ましくは50~99重量%であり、より好ましくは70~99重量%である。
【0068】
重合性樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する(メタ)アクリレート(B)をさらに含有してもよい。(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する(メタ)アクリレート(B)としては、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬製 カヤラッド PET-30)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬製 カヤラッド PET-40)、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート(サートマー社製 SR-367)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製 カヤラッド DPHA)、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート(サートマー製 SR-399)、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(日本化薬製 カヤラッド D-310)、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬製 カヤラッド D-320)、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬製 カヤラッド D-330)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製 カヤラッド DPCA-20、日本化薬製 カヤラッド DPCA-60、日本化薬製 カヤラッド DPCA-120)、トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬製 カヤラッド TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(サートマー製 SR-350)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(サートマー製 SR-355)、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート(日本化薬製 カヤラッド R-604)、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(サートマー製 SR-450)、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬製 カヤラッド TPA-シリーズ)又はECH変性トリメチロールプロパントリアクリレート(長瀬産業製 デコナールDA-321)、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成製 アロニックスM315)、エピクロルヒドリン(ECH)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、シリコーンヘキサ(メタ)アクリレート、ジオールとポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタンアクリレート、活性水素(水酸基、アミン等)を有する多官能(メタ)アクリレートとポリイソシアネート化合物の反応物である多官能ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0069】
(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する(メタ)アクリレート(B)の重合性樹脂組成物中の含有量は、重合性樹脂組成物の固形分中に、好ましくは50~99重量%であり、より好ましくは70~99重量%である。
【0070】
(メタ)アクリレート成分全体における(メタ)アクリロイル基の数の平均値は、3~6であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基の数の平均値が上記範囲であることにより、膜の硬度が高く、塗工工程中で傷が出来にくく、かつ、偏光層30の耐久性を向上させることができる効果がある。
【0071】
(メタ)アクリレート成分は、(メタ)アクリル成分の水酸基価が上記範囲に入る限り、水酸基を有する(メタ)アクリレート(A)、及び(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する(メタ)アクリレート(B)の他にも、その他の(メタ)アクリレートを任意の割合でさらに含有してもよい。
【0072】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、及びベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾイン類;アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及び2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オンなどのアセトフェノン類;2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、及び2-アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、及び2-クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、及び4,4’-ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド類等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0073】
重合性樹脂組成物において、光重合開始剤の含有量は、重合性樹脂組成物の固形分中に、好ましくは0.5~10重量%であり、より好ましくは1~7重量%である。
【0074】
光重合開始剤は、硬化促進剤と併用することもできる。併用しうる硬化促進剤としては、例えばトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、2-メチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミノエステル、EPAなどのアミン類、及び2-メルカプトベンゾチアゾールなどの水素供与体が挙げられる。硬化促進剤の使用量は、重合性樹脂組成物の固形分中に、好ましくは0~5重量%である。
【0075】
上記重合性樹脂組成物を硬化させてなるアクリル系樹脂層は、水酸基を有しているため、トリアセチルセルロースとの密着性が向上すると共に、ケン化処理後の偏光層30との接着性が向上する。
【0076】
バリアコート層28として用いる無機層は、酸化シリコン(SiOx)や窒化シリコン(SiNx)を含むことが好適である。無機層は、スパッタリング法や原子層堆積法(ALD)等に成膜することができる。無機層は、有機層に比べて薄くしても水分の透過率を小さくすることができる点で有利である。
【0077】
ハイブリッド層は、有機層と無機層を積層した構造である。バリアコート層28をハイブリッド層とすることによって、有機層の効果と無機層の効果を組み合わせた効果を得ることができる。具体的には、偏光層30上に有機層を形成した後、有機層に無機層を積層させることにより、有機層と偏光層30との密着性の良さと無機層の防水性の高さを組み合わせて、より薄い層によってバリアコート層28としての機能を発揮することができる。
【0078】
バリアコート層28は、偏光層30に含まれる水分が共通電極26や液晶層22に到達し難くなる程度の膜厚とすることが好適である。一方、バリアコート層28を厚くし過ぎると画素間の混色が生じ易くなったり、光の吸収による効率の低下が生じ易くなったりする。したがって、バリアコート層28の膜厚は、5μm以下とすることが好適である。より好ましくは1μm以下とすることが好適である。例えば、バリアコート層28を有機層とした場合、その膜厚は0.5μm以上5μm以下とすることが好適である。また、例えば、バリアコート層28を無機質にした場合、その膜厚は50nm以上500nm以下とすることが好適である。また、例えば、バリアコート層28をハイブリッド層とした場合、有機層を0.5μm以上5μm以下とし、無機層を50nm以上500nm以下とすることが好適である。
【0079】
バリアコート層28上には、λ/4層40が形成される。例えば、λ/4層40のレターデーションReは135nmであることが好適であり、遅相軸は135°であることが好適である。λ/4層40を厚くし過ぎると、光の吸収による効率の低下が生じ易くなる。したがって、λ/4層40の膜厚は、2μm以下とすることが好適であり、λ/4層40の透過率は10%よりも大きいことが好適である。
【0080】
バックライト36からの光の偏光は、偏光層30を通ることで直線偏光に変換され、その直線偏光はλ/4層40を通ることで円偏光に変換される。この円偏光は、上方のλ/4板38を通ることで直線偏光に変換され、直線偏光に変換された光は、偏光板10を通って液晶表示装置100の外部に射出される。仮に、λ/4層40が形成されていない場合、偏光層30によって直線偏光に変換された光は、上方のλ/4板38を通り抜けることができず、バックライト36からの光が液晶表示装置100の外部に射出されないという問題が生じる。これに対処するために、λ/4層40を形成することで、バックライト36からの光を液晶表示装置100の外部に射出することができる。
【0081】
また、λ/4板38とλ/4層40は、同じ波長分散特性を有する。λ/4板38とλ/4層40の波長分散を合わせることで、液晶層22を通った光の特性を維持しつつその光を液晶表示装置100から射出することができる。
【0082】
また、λ/4層40は、バリアコート層28と共通電極26との間に形成されるインセル型の構造であるため、液晶タイプのλ/4層(例えばメルク社製RM等)が用いられる。λ/4板38は、液晶タイプのλ/4層が用いられてもよいし、フィルムタイプのλ/4層が用いられてもよい。λ/4板38とλ/4層40は、同じ材質の液晶性高分子によって構成されていることが好適である。なお、λ/4板38と偏光板10とが一体形成されて1つの光学素子を構成してもよい。また、λ/4層40と偏光層30とが一体形成されて1つの光学素子を構成してもよい。
【0083】
λ/4層40上には共通電極26が形成される。共通電極26は、例えばITO(インジウム・チン・オキサイド)などによる透明電極である。
【0084】
共通電極26上には、配向膜24が形成される。配向膜24は、ポリイミド等の樹脂材料によって構成される垂直配向膜である。
【0085】
このとき光配向膜を用いることも可能で、光配向膜を用いれば130℃以下の低温プロセスが容易になる。また光配向では、視野角特性を向上させるため、光の照射方向を変えることで1画素内の領域で配向方向を変えて画素分割させてもよい。さらにラビング、光配向などの配向処理は行わず、画素電極と表示電極のいずれかまたは両方にスリットを設けることによる斜め電界で配向方向を決定させてもよい(特開平05-222282号公報)。また表示電極と共通電極のいずれかまたは両方の上に突起(特開平06-104044号公報)を形成して配向制御してもよい。
【0086】
さらに、配向膜20と配向膜24とを向かい合わせるようにして、配向膜20と配向膜24との間に液晶層22が封止される。配向膜20と配向膜24との間にスペーサ(図示しない)を挿入し、配向膜20と配向膜24との間に液晶を注入して周囲を封止材(図示しない)によって封止することにより液晶層22が形成される。
【0087】
液晶としては、Δε(誘電率異方性)がマイナスとなるいわゆるネガ型のネマティック液晶を用いる。この液晶は、初期状態で液晶を垂直に配向させ、電圧を印加させて液晶を倒すことにより変化する複屈折を利用して、透過状態(白)と非透過状態(黒)を表現するVA(Vertical Alignment)タイプの液晶であり、液晶表示装置100は、VAタイプの液晶表示装置である。
【0088】
液晶層22は、配向膜20と配向膜24とによって初期配向が配向膜20,24に対し垂直方向に制御される。そして、表示電極18と共通電極26との間に電圧を印加することによって、表示電極18と共通電極26との間に電界が生じて液晶層22の配向が制御されて光の透過/不透過が制御される。
【0089】
バックライト36は、光を出力する光源を含んで構成される。光源は、例えば、LEDとすることが好適である。バックライト36から出力される光の波長は、波長変換層32において波長変換に有効に利用され得る波長領域の光とすることが好適である。例えば、バックライト36は、ピーク波長が380nm以上460nm以下の波長領域の光を出力する青色光源又は380nm以下の波長領域の光を出力するUV光源とすることが好適である。
【0090】
液晶表示装置100によれば、バックライト36からの光を波長変換層32にて波長変換して利用することによって、光の利用効率を高めることができる。これに伴って、液晶表示装置100におけるエネルギー効率を向上させることができ、低消費電力の液晶表示装置100を実現することができる。なお、波長変換層32として、量子ドット構造の半導体層を適用することにより、蛍光体を利用する場合に比べてさらに低消費電力とすることができる。
【0091】
また、対向基板34と液晶層22との間に偏光層30を形成したインセル型の構造とすることによって、波長変換層32も対向基板34と液晶層22との間に設けることが可能となり、発光体と表示電極18及びTFT基板14との距離を従来より近づけることができる。例えば、対向基板34は500μm程度の厚みがあり、対向基板34とバックライト36との間に偏光層30を形成した場合に比べて、対向基板34の厚みだけ波長変換層32を表示電極18に近づけることができる。これによって、画素間の混色を避けるための画素間の距離の余裕を小さくすることができる。したがって、高解像度の液晶表示装置100を提供することができる。
【0092】
さらに、光入射側である偏光板10から波長変換層32の直前(
図1では、偏光層30)までの460nm以下の波長領域の光の透過率を高くすることが好適である。具体的には、偏光板10から波長変換層32の直前(
図1では、偏光層30)までの380nm以下の波長領域のうちの少なくともいずれかの領域の透過率が1%以上、380nm~400nmの波長領域のうちの少なくともいずれかの領域の透過率が3%以上、400nm~430nmの波長領域のうちの少なくともいずれかの領域の透過率が5%以上の少なくとも1つの条件を満たすことが好適である。このような透過率とするためには以下のような構成とすることが好適である。
【0093】
偏光板10は、460nm以下の波長領域の光の透過率を高くすることが好適である。具体的には、偏光板10の380nm以下の波長領域のうちの少なくともいずれかの領域の透過率が1%以上、380nm~400nmの波長領域のうちの少なくともいずれかの領域の透過率が3%以上、400nm~430nmの波長領域のうちの少なくともいずれかの領域の透過率が5%以上の少なくとも1つの条件を満たすことが好適である。
【0094】
また、偏光層30は、460nm以下の波長領域の光の透過率を高くすることが好適である。具体的には、偏光層30の380nm以下の波長領域のうちの少なくともいずれかの領域の透過率が1%以上、380nm~400nmの波長領域のうちの少なくともいずれかの領域の透過率が3%以上、400nm~430nmの波長領域のうちの少なくともいずれかの領域の透過率が5%以上の少なくとも1つの条件を満たすことが好適である。
【0095】
偏光板10の460nm以下の波長領域の光の透過率を高めるためには、460nm以下の波長領域の光に対する吸収剤の添加量を減らせばよい。通常、偏光板10の基材となるTACには紫外線吸収剤等の短波長領域に対する吸収剤が含まれているので、当該吸収剤を減らすことにより460nm以下の波長領域の光の透過率を高めることができる。
【0096】
また、配向膜20及び/又は配向膜24の膜厚を薄くすることにより460nm以下の波長領域の光の透過率を高くすることが好適である。配向膜20及び/又は配向膜24の膜厚は、50nm以下にすることが好適であり、5nm以下にすることがより好適である。これにより、配向膜20及び/又は配向膜24における460nm以下の波長領域の光の吸収を抑えることができ、当該波長領域における透過率を高めることができる。
【0097】
また、液晶層22を薄くすることにより460nm以下の波長領域の光の透過率を高くすることが好適である。液晶層22の厚さは、4μm以下にすることが好適であり、3μm以下にすることがより好適であり、2μm以下にすることがさらに好適である。このとき、液晶層22におけるレターデーションを好適な値にするために、液晶層22の膜厚に合わせて液晶層22の屈折率Δnを調整することが好適である。例えば、レターデーションを0.4μmにするためには、液晶層22の厚さを4μmにしたときには屈折率Δnを0.1とし、液晶層22の厚さを3μmにしたときには屈折率Δnを0.15とし、液晶層22の厚さを2μmにしたときには屈折率Δnを0.2とするようにすればよい。
【0098】
また、層間絶縁膜16は、通常1~2μmのUV硬化型の有機膜であるが、膜厚を1μm以下とすることが好適であり、さらに0.5μm以下とすることがより好適である。また、層間絶縁膜16を設けない構成としてもよい。これにより、460nm以下の短波長領域の光の透過率を高くすることができる。
【0099】
また、層間絶縁膜16は、無機膜とし、その膜厚を0.5μm以下とすることが好適である。例えば、層間絶縁膜16をシリコン酸化膜(SiO2膜)とし、その膜厚を100nmとすればよい。これにより、460nm以下の短波長領域の光の透過率を高くすることができる。
【0100】
また、TFT基板14は、その厚さを500μm以下とすることが好適であり、さらに200μm以下にすることがより好適である。また、TFT基板14として、不純物の少ないホウケイ酸ガラス、石英ガラス、サファイアガラス等を使用することも好適である。これにより、460nm以下の波長領域の光の透過率を高くすることができる。
【0101】
また、表示電極18は、その膜厚を50nm以下とすることが好適であり、さらには20nm以下とすることがより好適である。また、共通電極26は、その膜厚を50nm以下とすることが好適であり、さらには20nm以下とすることが好適である。これにより、460nm以下の波長領域の光の透過率を高くすることができる。
【0102】
また、
図1に示した構造とは異なるが、460nm以下の光の透過率を向上させるために層間絶縁膜16を設けないTFT基板の構造を適用することも好適である。この場合、画素ピクセル内の表示に寄与する有効表示エリア(または開口率)が小さくなるが、それ以上に外光利用効率が高くなる場合はこの方式を採用してもよい。
【0103】
なお、460nm以下の波長領域の光の透過率を高くするためのこれらの構成は単独で採用してもよいし、複数を組み合わせてもよい。
【0104】
このように、光入射側である偏光板10から波長変換層32までの460nm以下の波長領域の光の透過率を高くすることによって、偏光板10側から入射する外光の短波長成分を波長変換層32まで到達させ、外光による発光を効率的に利用することができる。これにより、屋外等の外光下においてもコントラストの高い、視認性に優れた液晶表示装置100とすることができる。
【0105】
<第2の実施の形態>
図2に第2の実施の形態の液晶表示装置200を示す。この第2の実施の形態では、第1の実施の形態における、バリアコート層28が省略されている。従って、第1の実施の形態に比べ、水分の悪影響を受けやすくなるが、1つの工程を省略することができるとともに、構成が簡略化される。
【0106】
<変形例>
バックライト36として、前述の青色光源を用いる場合、波長変換層32として、一般的に、青(B)の波長領域については青色より長い波長の光を吸収する吸収型カラーフィルターを用い、緑(G)の波長領域については入射光を緑色の波長領域の光に変換して出力する波長変換材料を用い、赤(R)の波長領域については入射光を赤色の波長領域の光に変換して出力する波長変換材料を用いる。
【0107】
このとき、緑(G)の波長変換材料は、緑色の波長領域よりも短い波長の光を緑色に変換することができるが、緑色の波長領域よりも長い波長の光を緑色に変換することができない。したがって、
図3に示すように、外光の入射等によって波長変換層32を透過した赤色の波長領域の光が導光板や導光板裏面の反射板などから反射して、緑(G)の波長変換材料の領域に入った場合、緑(G)の表示領域に赤色の波長領域の光が混ざり合ってしまうおそれがある。
【0108】
そこで、本変形例では、
図4に示すように、波長変換層32の緑(G)の領域において緑色の波長変換材料32aと赤色の波長領域の光を吸収するカラーフィルター32bとを重ね合わせた構成とする。
図10に赤色の波長領域の光を吸収するカラーフィルター32bの一例を示す。
【0109】
これにより、波長変換層32の緑(G)の領域に赤色の波長領域の光が混入したとしてもカラーフィルター32bによって吸収され、視認側にその影響が及ぶことを防ぐことができる。
【0110】
なお、カラーフィルター32bを設ける代わりに、
図5に示すように、波長変換層32の緑(G)の領域における緑色の波長変換材料32aに赤色を吸収する色素42を混在させるようにしてもよい。
【0111】
また、バックライトとして、前述のUV光源を用いる場合、波長変換層32として、青(B)の波長領域についても入射光を青色の波長領域の光に変換して出力する波長変換材料を用い、緑(G)の波長領域については入射光を緑色の波長領域の光に変換して出力する波長変換材料を用い、赤(R)の波長領域については入射光を赤色の波長領域の光に変換して出力する波長変換材料を用いる構成も採用される。
【0112】
このとき、青(B)及び緑(G)の波長変換材料は、それぞれ青色及び緑色の波長領域よりも短い波長の光を波長変換することができるが、青色及び緑色の波長領域よりも長い波長の光を波長変換することができない。したがって、外光の入射等によって波長変換層32の波長変換材料の領域を透過した緑色、赤色の波長領域の光が導光板や導光板裏面の反射板などから反射して、青(B)又は緑(G)の波長変換材料の領域に入った場合に青(B)及び緑(G)の領域に各々緑色と赤色又は赤色の波長領域の光が混ざり合ってしまうおそれがある。
【0113】
そこで、本変形例では、
図6に示すように、波長変換層32の青(B)の領域において青色の波長変換材料32cと緑色と赤色の波長領域の光を吸収するカラーフィルター(青色カラーフィルター)32dとを重ね合わせた構成とする。また、波長変換層32の緑(G)の領域において緑色の波長変換材料32aと赤色の波長領域の光を吸収するカラーフィルター32bとを重ね合わせた構成とする。
図11に緑色と赤色の波長領域の光を吸収するカラーフィルター32dの一例を示す。
【0114】
これにより、波長変換層32の青(B)及び緑(G)の領域に赤色の波長領域の光が混入したとしてもカラーフィルター32d及びカラーフィルター32bによって吸収され、視認側にその影響が及ぶことを防ぐことができる。
【0115】
なお、カラーフィルター32b,32dを設ける代わりに、
図7に示すように、波長変換層32の青(B)及び緑(G)の領域において、それぞれ青色の波長変換材料32cに緑色と赤色を吸収する色素(青色色素)44及び緑色の波長変換材料32aに赤色を吸収する色素42を混在させるようにしてもよい。
【0116】
図8及び
図9には、更に別の構成が示されている。例えば、
図8に示すように、バックライトとして、前述の青色光源を用いる場合、波長変換層32として、一般的に、青(B)の波長領域については青色より長い波長の光を吸収する吸収型カラーフィルターを用い、緑(G)の波長領域については入射光を緑色の波長領域の光に変換して出力する波長変換材料32aと赤色の波長領域の光を吸収するカラーフィルター32bとを重ね合わせた構成とする。
【0117】
これにより、偏光層30において反射された赤色の光が波長変換層32の緑(G)の領域に混入したとしてもカラーフィルター32bによって吸収され、視認側にその影響が及ぶことを防ぐことができる。
【0118】
また、例えば、
図9に示すように、バックライトとして、前述のUV光源を用いる場合、波長変換層32として、波長変換層32の青(B)の領域において青色の波長変換材料32cと緑色と赤色の波長領域の光を吸収するカラーフィルター(青色カラーフィルター)32dとを重ね合わせた構成とする。また、波長変換層32の緑(G)の領域において緑色の波長変換材料32aと赤色の波長領域の光を吸収するカラーフィルター32bとを重ね合わせた構成とする。
【0119】
これにより、偏光層30において反射された赤色の波長領域の光が波長変換層32の青(B)及び緑(G)の領域に混入したとしてもカラーフィルター32d及びカラーフィルター32bによって吸収され、視認側にその影響が及ぶことを防ぐことができる。
【0120】
なお、カラーフィルター32b,32dを設ける代わりに、波長変換層32の青(B)及び緑(G)の領域において、それぞれ青色の波長変換材料32cに緑色と赤色を吸収する色素(青色色素)及び緑色の波長変換材料32aに赤色を吸収する色素を混在させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0121】
10 偏光板、12 ネガティブCプレート、14 TFT基板、14a ゲート電極、14b ゲート絶縁膜、14c 半導体層、16 層間絶縁膜、18 表示電極、20 配向膜、22 液晶層、24 配向膜、26 共通電極、28 バリアコート層、30 偏光層、32 波長変換層、34 対向基板、36 バックライト、38 λ/4板、40 λ/4層、100,200 液晶表示装置。