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特許7057778ニッケル基単結晶超合金基材を含む部品およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】ニッケル基単結晶超合金基材を含む部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/06 20060101AFI20220413BHJP
   C23C 16/30 20060101ALI20220413BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20220413BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
C23C14/06 N
C23C16/30
C23C28/00 B
F01D5/28
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019521819
(86)(22)【出願日】2017-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 FR2017052880
(87)【国際公開番号】W WO2018078246
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】1660417
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】306047664
【氏名又は名称】サフラン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザブーンジ,アマール
(72)【発明者】
【氏名】ジャッケ,ビルジニー
(72)【発明者】
【氏名】ラム,ジェレミー
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-068062(JP,A)
【文献】特開2005-188505(JP,A)
【文献】特開2002-194531(JP,A)
【文献】特開2008-156744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
C23C 16/00-16/56
C23C 28/00
F01D 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル基単結晶超合金基材(2)を含む部品(1)の製造方法であって、
-ニッケル基単結晶超合金基材(2)を製造することと、
-前記基材(2)上に、アルミニウムおよび白金の合金から構成される第1の種類の少なくとも1つの層(30)と、アルミニウム、シリコンおよび白金の合金から構成される第2の種類の少なくとも1つの層(31)と、ニッケル、アルミニウム、シリコンおよび白金の合金から構成される第3の種類の層(32)であって、コーティング(3)の層スタックの最も外側にあるこの第3の種類の層(32)とを含むコーティング(3)を形成することと、
-前記第3の種類の層(32)上にシリコンドープアルミナ層(4)を形成することと、
からなるステップを備えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記コーティング(3)が、少なくとも3つの第1の種類の層(30)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング(3)が、2つの第2の種類の層(31)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング(3)が、いくつかの連続した第1の種類の層(30)および/または、いくつかの連続した第2の種類の層(31)を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング(3)において、前記ニッケル基単結晶超合金基材(2)と接触している層が、第1の種類の層(30)であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1の種類の層(30)、第2の種類の層(31)および第3の種類の層(32)のうちの少なくとも1つの層が、
-アルミニウムのナノ結晶層(302)を成膜した後に白金のナノ結晶層(301)を成膜することによる、またはその逆の順序で成膜することによる前記第1の種類の層(30)、
-任意の順序で、アルミニウムのナノ結晶層(302)、白金のナノ結晶層(301)およびシリコンのナノ結晶層(310)を成膜することによる前記第2の種類の層(31)、および
-任意の順序で、アルミニウムのナノ結晶層(302)、白金のナノ結晶層(301)、ニッケルのナノ結晶層(303)およびシリコンのナノ結晶層(320)を成膜することによる前記第3の種類の層(32)
として形成されることと、
前記ナノ結晶層(301、302、303、310、320)が、前記コーティング(3)を形成するように拡散処理を受けることとを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
コーティング(3)の異なる層の成膜が、物理蒸着法または化学蒸着法によって行われることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング(3)の個々の層の成膜が、陰極スパッタリングによって行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
方法が、前記シリコンドープアルミナ層(4)上に熱障壁(5)を成膜することからなる追加のステップを備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ニッケル基単結晶超合金基材(2)を含む部品(1)であって、シリコンドープアルミナ層(4)によって被覆されたコーティング(3)を前記基材(2)上に連続的に含み、前記コーティング(3)が、アルミニウムおよび白金の合金から構成される第1の種類の少なくとも1つの層(30)と、アルミニウム、シリコンおよび白金の合金から構成される第2の種類の少なくとも1つの層(31)と、ニッケル、アルミニウム、シリコンおよび白金の合金から構成される第3の種類の層(32)であって、コーティング(3)の層スタックの最も外側にあるこの第3の種類の層(32)と、を含むことを特徴とする、部品。
【請求項11】
前記シリコンドープアルミナ層(4)が熱障壁(5)によって被覆されていることを特徴とする、請求項10に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル基単結晶超合金の分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、ニッケル基単結晶超合金基材を含む部品の製造方法、ならびにニッケル基単結晶超合金基材を含む部品に関する。
【背景技術】
【0003】
用語「超合金」は、高温および高圧で、酸化、腐食、クリープおよび周期的応力(特に機械的または熱的)に対する非常に良好な耐性を示す複雑な合金を指す。これらの超合金の特定の用途は、例えばタービンブレードなどの航空分野で使用される部品の製造にある。
【0004】
ニッケル基単結晶超合金基材、1つ以上のアンダーコートおよび熱障壁を内側から外側に向かって連続的に含む部品は、最先端技術において既に知られている。
【0005】
添付の図1には、そのような部品の一例の概略断面図が示されている。これは、ニッケル基単結晶超合金基材A、NiAlPt、MがCoおよび/またはNiに等しいMCrAlYから選択される合金のボンドコートB、アルミナなどの酸化物層C、および最終的には熱障壁Dを連続的に含む。
【0006】
超合金とそのコーティングとの間の化学成分の相互拡散、ならびに酸素拡散によるアルミナ層の粒界の酸化は、部品の寿命に悪影響を及ぼす可能性があることを多数の研究が示している。
【0007】
上述した部品が、例えば800℃から1600℃の間の温度で使用されるタービンブレードである場合、基材の超合金とその基材を被覆する異なる層の異なる化学組成のために、基材の超合金と基材を被覆する異なる層との間で相互拡散が重要であることがわかる。例えば、ボンドコートBのアルミニウムは、基材Aに拡散することができ、または基材のチタンは、ボンドコートBに拡散することができる。この現象に関連する拡散フラックスは、異なる結果をもたらす可能性がある。
【0008】
まず、上述したフラックスは、アルミナ層Cの時期尚早の枯渇をもたらし、それはボンドコートBのマルテンサイト変態(γ’-Ni3Al相に変態したβ-NiAl相)を促進する。これらの変態は、亀裂を生じさせ、酸化物層の剥離を促進する。
【0009】
次に、チタンなどの超合金の特定の元素、または硫黄などの特定の不純物の拡散は、酸化物層Cと熱障壁Dとの間の接着性を低下させる。
【0010】
他方で、相互拡散は、被覆された超合金の機械的性質(クリープ、疲労強度)を著しく低下させるであろう二次反応域(SRZ)の形成をもたらす可能性がある。
【0011】
最後に、上述した部品がタービンブレードである場合、燃焼室からの高温ガス(主に酸素)は、高温ガスがアルミナ層に達するまで多孔質熱障壁を通って拡散する。これは、アルミナ層の粒界の酸化およびアルミナ層の膨張をもたらす。この進展には、粒界の成長による長期の圧縮応力が伴い、ボンドコートBの表面うねり(「しわ」と呼ばれる)と熱障壁Dの接着性の低下(フレーキング)をもたらす。この現象は、このボンドコートBと基材Aの超合金との間の組成の相違が重要であることから、ボンドコートBがβ-(Ni、Pt)Al相の形態である場合にさらに増大することに注目すべきである。
【0012】
相互拡散の悪影響を制限し、被覆された超合金の寿命を延ばすために、超合金基材AとボンドコートBとの間に数マイクロメートルの厚さを有する拡散障壁を挿入することからなる解決策が最新技術から既に知られている。
【0013】
この拡散障壁は、例えば、アルミナまたはレニウム基合金の緻密な層からなり、基材Aの超合金の特定の元素(例えば、チタンまたは硫黄など)の拡散は、この拡散障壁において遅くなることがわかっている。
【0014】
しかしながら、この拡散障壁の使用は、拡散障壁、ベースコートBおよび基材Aの間の熱膨張係数の差を考慮に入れると、部品の熱疲労強度を低下させる。さらに、機械的疲労応力中に拡散障壁において亀裂の発生が強調される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、コーティングおよびアルミナ層によって被覆されたニッケル基単結晶超合金基材を得るための技術的解決策を提案することであり、
-超合金の機械的性質を低下させることなく、超合金基材と前記コーティングの層との間の相互拡散現象を制限し、
-アルミナ層の粒界の酸化を制限し、
-系全体(コーティングされた基材)の寿命を延ばす。
【0016】
アルミナ層がさらに熱障壁によって被覆されている場合、本発明の他の目的は、アルミナ層と熱障壁との間の接着性を改善することである。
【0017】
そのために、本発明は、ニッケル基単結晶超合金基材を含む部品を製造する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、この方法は、
-ニッケル基単結晶超合金基材を製造することと、
-前記基材上に、アルミニウムおよび白金を含む第1の種類の少なくとも1つの層と、アルミニウム、シリコンおよび白金を含む第2の種類の少なくとも1つの層と、ニッケル、アルミニウム、シリコンおよび白金を含む第3の種類の層であって、コーティングの層スタックの最も外側にあるこの第3の種類の層とを含むコーティングを形成することと、
-前記第3の種類の層上にシリコンドープアルミナ層を形成することと、
からなるステップを備える。
【0019】
本発明のこれらの特徴のおかげで、コーティングの異なる層は、これらの超合金の機械的性質を低下させることなく、基材の超合金とアルミナ層との間の相互拡散現象を制限する。
【0020】
さらにまた、シリコンは、アルミナ層中に拡散し、したがって、外部雰囲気からの酸素に対する有効な拡散障壁を構成する。
【0021】
最後に、この方法によって得られる部品の寿命は向上する。
【0022】
本発明の他の有利で非限定的な特徴によれば、単独でまたは組み合わせて、
-前記コーティングが少なくとも3つの第1の種類の層を含み、
-前記コーティングが2つの第2の種類の層を含み、
-前記コーティングが、連続した第1の種類の層および/または連続した第2の種類の層を含み、
-前記コーティングにおいて、ニッケル基単結晶超合金基材と接触している層が第1の種類の層であり、
-前記第1の種類の層、前記第2の種類の層、および前記第3の種類の層のうちの少なくとも1つの層が、
-アルミニウムのナノ結晶層を成膜した後に白金のナノ結晶層を成膜することによる、またはその逆の順序で成膜することによる前記第1の種類の層、
-任意の順序で、アルミニウムのナノ結晶層、白金のナノ結晶層、およびシリコンのナノ結晶層を成膜することによる前記第2の種類の層、および
-任意の順序で、アルミニウムのナノ結晶層、白金のナノ結晶層、ニッケルのナノ結晶層およびシリコンのナノ結晶層を成膜することによる前記第3の種類の層
として形成され、
前記ナノ結晶層が、前記コーティングを形成するために拡散処理を受け、
-前記コーティングの異なる層の成膜が、物理蒸着法または化学蒸着法によって行われ、
-前記コーティングの異なる層の成膜が、陰極スパッタリングによって行われ、
-コーティングが、前記シリコンドープアルミナ層上に熱障壁を成膜することからなる追加のステップを備える。
【0023】
本発明はまた、ニッケル基単結晶超合金基材を含む部品に関する。
【0024】
本発明によれば、部品は、シリコンドープアルミナ層によって被覆されたコーティングを前記基材上に連続的に含み、前記コーティングが、アルミニウムおよび白金を含む第1の種類の少なくとも1つの層と、アルミニウム、シリコンおよび白金を含む第2の種類の少なくとも1つの層と、ニッケル、アルミニウム、シリコンおよび白金を含む第3の種類の層であって、前記コーティングの層スタックの最も外側にあるこの第3の種類の層とを含む。
【0025】
有利には、前記シリコンドープアルミナ層は、熱障壁によって被覆されている。
【0026】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な例としていくつかの可能な実施形態を表す添付の図面を参照しながら、ここで行われる説明から明らかになるであろう。
【0027】
これらの図面において以下のとおりである:
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、いくつかのコートによって被覆されたニッケル基単結晶超合金基材を含む最新技術による部品の概略断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態によるコーティングによって被覆された基材の概略断面図である。
図3図3は、本発明の他の実施形態によるコーティングによって被覆された基材の概略断面図である。
図4図4は、特定の実施形態による基材のコーティングを形成するために成膜された異なる層の詳細の概略断面図である。
図5図5は、本発明による部品の2つの実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで本発明による部品の製造方法について説明する。
【0030】
図5に示す本発明の第1の実施形態によれば、参照符号1を有する完成部品は、それ自体アルミナ層4によって被覆された多層コーティング3によって被覆された基材2を備える。
【0031】
同図に示される本発明の第2の実施形態によれば、アルミナ層4は、熱障壁層5によって被覆されている。完成部品は、参照符号1’を有する。
【0032】
基材2は、ニッケル基単結晶超合金からなる。
【0033】
この基材は、例えば鋳造または付加製造によって得られ、例えばタービンブレードなどの所望の最終形状を有する。
【0034】
純粋に例示的な例として、基材2の製造に有用な超合金は、以下の表1に記載されているものである。それらは、文字AからFによって識別される。他のニッケル基単結晶超合金も使用可能である。
【0035】
【表1】
「残部」という用語は、各超合金について、言及した他の様々な成分によって100%に達するための残留質量百分率に対応する。
【0036】
図2に示すように、基材2上に形成されたコーティング3は、「第1の種類の層」と呼ばれる、アルミニウムおよび白金を含む少なくとも1つの層30と、「第2の種類の層」と呼ばれる、アルミニウム、シリコンおよび白金を含む少なくとも1つの層31と、「第3の種類の層」と呼ばれる、ニッケル、アルミニウム、シリコンおよび白金を含む層32とを含む。第3の種類の層32は、コーティング3の層スタックの最も外側にある。換言すれば、第3の種類の層32は、基材2から最も遠い。
【0037】
好ましくは、コーティング3は、少なくとも3つの第1の種類の層を含む。また好ましくは、コーティング3は、2つの第2の種類の層31を含む。異なる層30および31は、交互にすることができるが、これは必須ではない。
【0038】
連続した第1の種類の層30および/または連続した第2の種類の層31を有することも可能である。
【0039】
したがって、例えば、他の変形実施形態を示す図3では、コーティング3は、3つの連続した第1の種類の層30、次に2つの連続した第2の種類の層31、および最後に第3の種類の層32を含む。
【0040】
好ましくは、基材2と接触している層は、第1の種類の層30である。
【0041】
有利には、コーティング3の異なる構成層は、同じ蒸着装置上で作られる。それらは、異なる物理蒸着(PVD)または化学蒸着(CVD)プロセスによって成膜されることができる。
【0042】
物理蒸着の例は、電子ビーム化学蒸着(EBPVD)、蒸発、パルスレーザアブレーションまたはスパッタリング(陰極スパッタリング)の使用を含む。スパッタリングの技術が好ましい。スパッタリングは、他の蒸着技術によって得られるものよりも優れた、前層への優れた接着性を有するナノメートルまたはマイクロメートルの厚さの緻密なフィルムの形成を可能にするという利点を有する。
【0043】
化学蒸着(CVD)技術の例は、以下を含む:
-プラズマ化学蒸着法(PECVD)、
-減圧化学蒸着法(LPCVD)、
-超高真空化学蒸着法(UHVCVD)、
-常圧化学蒸着法(APCVD)、および
-原子層化学蒸着法(ALCVD)。
【0044】
しかしながら、白金は、PVDまたは電着によってのみ成膜されることができることに留意すべきである。
【0045】
第1の実施形態によれば、コーティング3の層30、31、32のうちの少なくとも1つは、この層を構成する異なる化学元素を共蒸着(co-deposition)によって形成される。
【0046】
したがって、この共蒸着は、例えば、形成されるべき前記層を構成する様々な化学元素を含む単一の合金ターゲットから実施されることができる。例えば、第2の種類の層31を形成するために、アルミニウム、白金およびシリコンを含む合金ターゲットが使用可能である。
【0047】
この共蒸着はまた、例えば、それぞれが形成されるべき層を構成する化学元素のうちの1つを含むいくつかの異なるターゲットから実施されることもできる。例えば、第3の種類の層32を形成するために、4つのターゲット、すなわち、アルミニウムターゲット、ニッケルターゲット、シリコンターゲットおよび白金(またはクロム)ターゲットが同時に使用可能である。
【0048】
選択された共蒸着の種類にかかわらず、この技術は、合金の形態の層30、31および32を得ることを可能にする(それぞれ、第1の種類の層30にはAl/Pt合金、第2の種類の層31にはAl/Pt/Si合金、第3の種類の層32にはAl/Pt/Si/Ni合金)。
【0049】
図4に示す本発明の第2の実施形態によれば、以下のようにコーティング3の異なる層を形成することも可能である。
【0050】
第1の種類の層30については、白金のナノ結晶層301が成膜され、続いてアルミニウムのナノ結晶層302が成膜され、またはその逆の順序で成膜される。
【0051】
第2の種類の層31については、アルミニウムのナノ結晶層302、白金のナノ結晶層301、およびシリコンのナノ結晶層310が任意の順序で成膜される。
【0052】
最後に、第3の種類の層32については、アルミニウムのナノ結晶層302、白金のナノ結晶層301、ニッケルのナノ結晶層303、およびシリコンのナノ結晶層320が任意の順序で成膜される。
【0053】
「ナノ結晶」という用語は、これらの多結晶材料の層を構成する結晶(粒子)が1マイクロメートル(1μm)未満のサイズであることを意味する。
【0054】
有利には、2つのシリコン層310、320は、100nm未満の厚さを有する。好ましくは、ニッケル層303は、100nm未満の厚さを有する。
【0055】
また有利には、白金層301および/またはアルミニウム層302は、1マイクロメートル(1μm)未満の厚さを有する。
【0056】
コーティング3の異なる層が形成されると、拡散処理は、好ましくは200℃と1200℃との間に含まれる温度まで加熱することによって行われる。
【0057】
拡散処理後、得られた層30、31、32は、ナノ結晶のままであることに留意されたい。
【0058】
そして、第3の種類の層32の上にアルミナ層4が形成される。これを行うために、好ましくは、コーティング3によって被覆された基材2は、酸素分圧下または酸素およびアルゴン分圧下で熱処理される。
【0059】
有利には、この熱処理は、900℃と1200℃との間に含まれる温度に達するまで温度を上昇させるステップと、この温度を1時間未満維持するステップと、室温に達するまで冷却するステップとを含む。
【0060】
最後に、基材1’が所望されるとき、熱障壁5がアルミナ層4上に成膜される。
【0061】
この熱障壁は、例えば、イットリア化ジルコニアの層、または少なくとも1つのイットリア化ジルコニア層(イットリウムを含む)および少なくとも1つのセラミック層の交互層である。
【0062】
好ましくは、前記熱障壁5は、電子ビーム物理蒸着法(EBPVD)によって成膜される。
【0063】
各層の役割は、以下のとおりである。
【0064】
白金301層およびアルミニウム302層は、粒界の全表面積を増大させ、良好な拡散障壁を形成し、基材2の超合金と基材2のコーティング3との間の相互拡散を制限するナノ結晶質である。さらにまた、これらの白金層およびアルミニウム層の粒界もまた、基材2の腐食および酸化を制限する。
【0065】
コーティング3が非常に多くの層を有するという事実から生じる他の利点は、界面数の増加である。これらの界面は、酸素および他の金属をブロックするための潜在的な経路であり、したがって、それらは、基材2とアルミナ層4との間の相互拡散現象を制限する。したがって、多層コーティング3は、部品1または1’全体の弾性を高める。
【0066】
多層コーティング3の他の利点は、その摩耗メカニズムである。2つの連続層の間の各界面には、圧縮ひずみおよび引張ひずみがある。したがって、現れることがある亀裂は、層に対して垂直ではなく界面に沿って優先的に伝播する。多数の界面により、部品1または1’の寿命は向上する。
【0067】
最後に、コーティング3の層を増やすことは、異なる種類のコーティング材料を組み合わせること、およびコーティング3の層のいくつかに欠陥および/または亀裂が生じた場合にコーティング3の全体的な不透過性を高めることを可能にする。
【0068】
さらにまた、シリコンを含有する各層31、32は、非常に特別な役割を有する。
【0069】
第3の種類の層32中のシリコンの一部は、それらが成膜された順序にしたがって、隣接するアルミナ層4の粒界およびそれに隣接する他の層、すなわちアルミニウム層302または白金層301中に拡散する。
【0070】
タービンブレードの動作条件の下で、すなわち800℃から1600℃の温度範囲では、アルミナ粒界中のシリコンは、酸素および/または窒素などの航空機の燃焼室で生成された高温ガスと反応して酸化シリコン(SiO)および/または窒化シリコン(Si)を生成する。
【0071】
この酸化シリコンおよびこの窒化物は、それらの拡散係数が比較的低いことから、酸素に対する非常に有効な拡散障壁を構成する。
【0072】
アルミナ層4の粒界中に拡散することによって、シリコンは、アルミナ層の酸化を減速させ、アルミナ層の寿命を向上させ、したがって部品1,1’全体の寿命を向上させる。
【0073】
ひいては、第2の種類の層31のシリコンは、第3の種類の層32のシリコンが完全に消費された場合には、第3の種類の層32内のシリコンの貯蔵部として機能する。いくつかの層31がある場合、その中のシリコンは、同じ役割を果たす。
図1
図2
図3
図4
図5