(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】サクションロールのシールストリップモニターおよび潤滑水制御システム
(51)【国際特許分類】
D21F 3/10 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
D21F3/10
(21)【出願番号】P 2019556311
(86)(22)【出願日】2018-04-30
(86)【国際出願番号】 US2018030187
(87)【国際公開番号】W WO2018204254
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2019-10-16
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511136119
【氏名又は名称】ストウ・ウッドワード・ライセンスコ,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】リーヴス・ザ・サード,サミュエル・ハワード
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,ジェフリー
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/040974(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/040975(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0254019(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0254020(US,A1)
【文献】特開平02-061192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0126732(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21F 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部ルーメンおよび複数の貫通孔を有する円筒形シェルと、
前記シェルの前記ルーメン内に位置決めされたサクションボックスと、
前記サクションボックスと動作可能に接続されたサクション源と、
前記サクションボックスに取り付けられ、前記サクションボックスと前記シェルの間にシールを形成するのを助けるように構成された少なくとも1つのシールストリップと、
前記シールストリップに、3つの異なる水準のセンサ摩耗を示すように、センサ端部から3つの異なる間隔をおいて埋め込まれて取り付けられた第1、第2および第3のセンサと、
前記第1、第2および第3のセンサに加え、前記サクションボックス内部の環境温度を測定し、基準温度として使用される第4のセンサと、
前記センサと動作可能に接続されたコントローラと、
を含むサクションロールであって、前記センサは、前記コントローラへ信号を伝えるように構成され、前記信号は前記コントローラで処理され、前記シールストリップについて、温度、摩耗、振動、および圧力のうちの少なくとも1つに関するデータを提供する、サクションロール。
【請求項2】
前記第1、第2および第3のセンサは、その一端における長期の摩耗によって前記センサが作動しなくなり、それにより前記シールストリップが所定量だけ摩耗したことを示すように構成および配置される、請求項1に記載のサクションロール。
【請求項3】
前記第1、第2および第3のセンサはプリント回路基板に装着される、請求項2に記載のサクションロール。
【請求項4】
前記プリント回路基板はフレキシブルプリント回路基板である、請求項3に記載のサクションロール。
【請求項5】
前記第1および第3のセンサは、前記プリント回路基板の一方の側に装着され、前記第2のセンサは、前記プリント回路基板の反対側に装着される、請求項3に記載のサクションロール。
【請求項6】
前記サクションロールの振動に関するデータを提供するように構成された
第5のセンサをさらに含む、請求項1に記載のサクションロール。
【請求項7】
前記シールストリップに関する位置データを提供するように構成された
第5のセンサをさらに含む、請求項1に記載のサクションロール。
【請求項8】
前記シールストリップを潤滑するように位置決めされた潤滑シャワーをさらに含む、請求項1に記載のサクションロール。
【請求項9】
前記コントローラは、前記センサによって取得されたデータに基づき、前記潤滑シャワーからの水の放出を調節するように構成される、請求項8に記載のサクションロール。
【請求項10】
前記コントローラは、前記センサによって取得されたデータに基づき、前記潤滑シャワーを作動させて前記潤滑シャワー自体をパージするように構成される、請求項8に記載のサクションロール。
【請求項11】
内部ルーメンおよび複数の貫通孔を有する円筒形シェルと、
前記シェルの前記ルーメン内に位置決めされたサクションボックスと、
前記サクションボックスと動作可能に接続されたサクション源と、
前記サクションボックスに取り付けられ、前記サクションボックスと前記シェルの間にシールを形成するのを助けるように構成された少なくとも1つのシールストリップと、
フレキシブル回路基板に装着され、前記シールストリップに取り付けられた第1、第2、および第3のセンサであって、二つのセンサがフレキシブル回路基板の上側に位置し、一つのセンサが、下側に位置するように装着されたセンサと、
前記センサと動作可能に接続されたコントローラと、
を含むサクションロールであって、前記センサは、前記コントローラへ信号を伝えるように構成され、前記信号は前記コントローラで処理され、前記シールストリップについて、温度、摩耗、振動、および圧力のうちの少なくとも1つに関するデータを提供する、サクションロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その開示全体が本明細書に組み入れられる、2017年5月1日出願の米国仮特許出願第62/492,486号の優先権および利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
製紙には本質的に、製造プロセスの多くの時点で水の除去が必要である。一般に、実際の紙のシートが形成される前、製紙用パルプ(水、木材、および他の繊維のスラリー)は、ウェットパルプの運搬体として働く(幅広いベルトの形の)フェルトの上面に乗る。パルプから十分な水分が除去され、フェルトによって与えられる付加的な支持がなくても紙のシートを処理できるようになるまで、フェルトは、抄紙機のウェットセクションでパルプを運ぶために用いられる。
【0003】
抄紙機のウェットエンドでは、きわめて一般的に、最初の水の除去は(ソファ、ピックアップ、またはプレス式のサクションロールのいずれであれ)プレスセクション内のサクションロールを用いて行われ、サクションロールは、サクションロールと一直線になって対をなす、孔のない標準的なプレスロールと共に(またはティッシュ用機械ではヤンキードライヤーに対して)使用される。フェルトパルプの運搬体はこれら2つのロールに挟まれ押し付けられる。
【0004】
サクションロールの主な構成要素には、ロールの周縁部のまわりに規定されたパターンで放射状に穿孔された何万もの孔を有する、ステンレス鋼、銅合金、または他の金属で作られた中空シェル12(
図1)が含まれる。こうした孔は、サイズが規格に合わせられ(1/8”未満~約1/4”の範囲)、処理される特定の紙材料に合わせて設計される。これらの孔は、水を除去するための「ベント」を形成する。このベントは通常、有効なロール表面積の約20~45パーセントの範囲とすることができる。サクションロールシェルは、サクションボックスと呼ばれる固定の芯部のまわりでシェルを回転させる駆動システムによって駆動される。
【0005】
サクションボックス20(
図2)は、頂部に蓋がなく、端部、底部、または側部にポートを有する、従来型の長い矩形のボックスと考えることができる。ボックスの端部(具体的には駆動端部)は、通常はパイロットベアリングを有し、その内側の軌道は、サクションボックスのジャーナルに対する滑り嵌めを伴うパイロットブッシュまたはベアリングであり、外側の軌道は、回転するシェルに押し付けられる。例示的なサクションボックスおよびシェルが、Huttunenの米国特許第6,358,370号に示されており、その開示全体が本明細書に組み入れられる。
【0006】
シェル内の孔を利用するには、サクションロールシェル内部のこうしたポートを用いて、処理中の製紙用パルプの真下に位置するゾーンに真空ゾーン30を作り出さなければならない。これは、サクションボックス20によって、サクションボックスの長軸に沿って両側でシールを保持する溝付ホルダ32を用いて実現される。
図2は溝付ホルダ32を示し、
図3および4は、2種類のシール34、34’を示している。こうした長いシールに加えて、必要に応じて様々なシートの幅に対応するようにある程度の軸方向の調整を行う、ショートエンド(管理・駆動端部(tending and drive end)と呼ばれる)の2つの短いシール(エンドデッケルと呼ばれる)も存在する。
【0007】
シール34、34’は通常、ゴム引きされた重合グラファイトで製造され、動作中、シェル12の内面とほぼ接触した状態に保持される(
図3および4参照)。シール34、34’の間は、一定の真空度に引かれる。これによって、ロール10の上を通過するシート40の下に真空ゾーン30を作り出すことが可能になる。
【0008】
実際の利用では、適切に機能しているサクションロールにおいて、シール34、34’がサクションロールシェル12の内側に直接接触することはない。シール34、34’がシェル12に接触すれば、シール34、34’はすり減り、すぐに封止能力を失うことになる。この摩耗をなくす、または大幅に低減し、シールを与えるために、スプレーノズル24を通って流れる水で形成される潤滑シャワーにより、シール34、34’の長さに沿って水が適用される(
図2参照)。このシャワーは、シール表面とシェル12の内面との間の水の層流によって、シール34、34’を潤滑された状態に保つ。
【0009】
処理中のパルプにとって問題になること、または水が無駄になることはないが、シール34、34’を潤滑された状態に保つのに適正な量の潤滑が適用されるように、潤滑に使用される水の量は適切に測定されるべきである。さらに、製紙工場で用いられるプロセス用水は、化学物質、および通常動作中に潤滑シャワーノズル24を詰まらせる恐れがあるかなりの微粒子をも含むことがある。こうしたノズル24は、回転するシェル12の内側に位置するため、抄紙機のオペレータには見えない。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様として、本発明の実施形態は、内部ルーメンおよび複数の貫通孔を有する円筒形シェルと、シェルのルーメン内に位置決めされたサクションボックスと、サクションボックスと動作可能に接続されたサクション源と、サクションボックスに取り付けられ、サクションボックスとシェルの間にシールを形成するのを助けるように構成された少なくとも1つのシールストリップと、シールストリップに取り付けられたセンサと、センサと動作可能に接続されたコントローラとを含むサクションロールを対象とする。センサは、コントローラへ信号を伝えるように構成され、信号はコントローラで処理され、シールストリップについて、温度、摩耗、振動、および圧力のうちの少なくとも1つに関するデータを提供する。
【0011】
第2の態様として、本発明の実施形態は、内部ルーメンおよび複数の貫通孔を有する円筒形シェルと、シェルのルーメン内に位置決めされたサクションボックスと、サクションボックスと動作可能に接続されたサクション源と、サクションボックスに取り付けられ、サクションボックスとシェルの間にシールを形成するのを助けるように構成された少なくとも1つのシールストリップと、シールストリップに取り付けられた第1、第2、および第3のセンサと、センサと動作可能に接続されたコントローラとを含むサクションロールを対象とする。センサは、コントローラへ信号を伝えるように構成され、信号はコントローラで処理され、シールストリップについて、温度、摩耗、振動、および圧力のうちの少なくとも1つに関するデータを提供する。
【0012】
第3の態様として、本発明の実施形態は、内部ルーメンおよび複数の貫通孔を有する円筒形シェルと、シェルのルーメン内に位置決めされたサクションボックスと、サクションボックスと動作可能に接続されたサクション源と、サクションボックスに取り付けられ、サクションボックスとシェルの間にシールを形成するのを助けるように構成された少なくとも1つのシールストリップと、フレキシブル回路基板に装着され、シールストリップに取り付けられた第1、第2、および第3のセンサと、センサと動作可能に接続されたコントローラとを含むサクションロールを対象とする。センサは、コントローラへ信号を伝えるように構成され、信号はコントローラで処理され、シールストリップについて、温度、摩耗、振動、および圧力のうちの少なくとも1つに関するデータを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】典型的な抄紙機のサクションロールの斜視端面図である。
【
図2】典型的なサクションロールのサクションボックス領域の拡大斜視端面図である。
【
図3】従来型サクションロールのサクションボックス領域およびシールストリップの端面図である。
【
図4】別の従来型サクションロールのサクションボックス領域およびシールストリップの端面図である。
【
図5】本発明の実施形態によるサクションロールのシールストリップ検知システムの概略図である。
【
図6】
図5のシステムの管理端部コントローラ(Tending End Controller)およびシールストリップ検知ユニットの概略図である。
【
図7A】
図6の管理端部コントローラの上面図である。
【
図7B】
図7Aの管理端部コントローラのPCBの上面図である。
【
図8】
図6の管理端部コントローラを駆動する電力ユニットの上面図である。
【
図9】
図5のシステムのゾーン温度・摩耗モジュール(Zone Temperature and Wear Module)の斜視図である。
【
図10】センサユニットを有する
図9のゾーン温度・摩耗モジュールの上面図である。
【
図11】カバーが外された状態の
図9のゾーン温度・摩耗モジュールの上面図である。
【
図12】
図11のゾーン温度・摩耗モジュールの拡大図である。
【
図13】センサユニットを有し、カバーが外された状態の
図9のゾーン温度・摩耗モジュールの上面図である。
【
図14】センサユニットを有し、カバーが所定の位置にある状態の
図9のゾーン温度・摩耗モジュールの上面図である。
【
図15】
図9のゾーン温度・摩耗モジュールの拡大図である。
【
図16】
図9のゾーン温度・摩耗モジュールのセンサユニットの概略図である。
【
図17】シールストリップ上の所定の位置にある
図16のゾーン温度・摩耗モジュールの斜視図である。
【
図18】
図16のゾーン温度・摩耗モジュールのセンサユニットの概略図である。
【
図19】サクションロールの2つの異なるゾーンに対する、温度を時間の関数とした2つの例示的なプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、以下において本発明をさらに詳しく説明し、本発明の実施形態を示す。しかしながら、本発明は、異なる形で具体化することが可能であり、以下に述べる実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、こうした実施形態は、本開示を十分かつ完全なものとするために提供され、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるものである。図中、全体を通じて同様の番号は同様の要素を指す。分かりやすくするために、一部の構成要素の厚さおよび寸法が誇張されている場合がある。
【0015】
さらに、本明細書では説明が容易になるように、「下方に(under)」、「より下に(below)」、「さらに下に(lower)」、「上方に(over)」、「さらに上に(upper)」などの空間に関する用語が、図示される1つの要素または機能の他の(1つもしくは複数の)要素または(1つもしくは複数の)機能に対する関係を記述するために使用されることがある。空間に関する用語が、図に描かれた配置に加えて、使用時または作動時におけるデバイスの異なる配置を包含することが企図されることが理解されよう。たとえば、図のデバイスを逆さにした場合には、他の要素または機能の「下方に(under)」または「下に(beneath)」と記述された要素は、その他の要素または機能の「上方に(over)」配置されることになる。したがって、例示的な用語「下方に(under)」は、上方および下方の配置の両方を包含することができる。デバイスは他の形で配置する(90度回転させる、または他の配置にする)ことも可能であり、本明細書で使用される空間に関する記述語は、適宜に解釈される。
【0016】
簡潔にするため、かつ/または分かりやすくするために、よく知られている機能または構造は、詳しく説明しないことがある。
【0017】
システムの概要:
記載されるシステムの機能により、ストリップの温度、ストリップの摩耗を測定する方法、および電子的なマルチマイクロプロセッサベースの測定・制御システムを用いて詰まった潤滑シャワーノズルをパージする方法を提供することができる。また、ストリップの動き(シェルから近いまたは遠い)、ならびにパイロットベアリングの温度および振動を判断するための任意選択の機能を提供することもできる。こうした各モジュールは、それぞれがプログラムされたファームウェアの制御下にあるマイクロプロセッサを含むことができる。
【0018】
システム100(
図5)は、
・監視されるシールストリップおよびゾーン
・監視される各ゾーンの温度および摩耗の状態
・制御弁の開口に基づく水流量の名目上の割合
・存在する場合には、自動弁パージシステムの状態
・パイロットベアリングの振動および温度の状態
・シール位置センサによって与えられる、シールストリップ封止用の面ストリップの内側シェル面に対する相対位置
・任意の警告レベルまたはシステムの不具合(温度/摩耗、弁の不具合など)
の項目の少なくともいくつかをグラフィック表示するコンピュータ(本明細書に記載されるホストPC102など)を含む。
【0019】
システムのハードウェア:
ホストPCおよび相互接続:
図5を参照すると、システムのホストPC102は、独立したデータバス105(当技術分野では、RS-422および/またはRS-485ネットワークと記載される)に接続可能なカスタムハードウェアと共に、ユーザのネットワークへの接続を可能にするハードウェアを備えた、従来型または産業グレードのパーソナルコンピュータを含む。この専用のRS-422または485ネットワークは、サクションロールハウジング上の固定のサクションボックス20の上またはその近くに装着された管理端部コントローラ106(以下で説明する)に接続するために用いられる。ホストPC102から管理端部コントローラ106への接続には、専用の有線または無線リンク105を用いることができる。
【0020】
本明細書では、「第1の」および「第2の」という用語が、様々な要素を記述するために用いられるが、こうした要素をこれらの用語によって限定すべきではないことも理解されよう。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためにのみ用いられる。したがって、本発明の概念の教示から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と称することができ、また同様に、第2の要素を第1の要素と称することができる。
【0021】
本発明の概念の例示的な実施形態は、ノード、デバイス、装置、および方法として具体化することができる。したがって、本発明の概念の例示的な実施形態は、ハードウェアおよび/またはソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)内に具体化することができる。さらに、本発明の概念の例示的な実施形態は、命令実行システムが使用するため、または命令実行システムと共に使用するための媒体内に具体化された、コンピュータで使用可能またはコンピュータで読み取り可能なプログラムコードを有するコンピュータで使用可能またはコンピュータで読み取り可能な非一時的記憶媒体を含む、コンピュータプログラム製品の形をとることができる。本文書の文脈において、コンピュータで使用可能またはコンピュータで読み取り可能な媒体は、命令実行システム、装置、もしくはデバイスが使用するため、またはそれらと共に使用するためのプログラムを包含、格納、通信、または伝送することが可能な任意の媒体とすることができる。
【0022】
コンピュータで使用可能またはコンピュータで読み取り可能な媒体は、たとえばそれだけに限らないが、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外もしくは半導体のシステム、装置、またはデバイスとすることができる。コンピュータで読み取り可能な媒体のさらに具体的な例(網羅的ではないリスト)は、1つまたは複数の通信線を有する電気接続、携帯型コンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能かつプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバ、および携帯型コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)を含む。たとえば、紙または他の媒体を光学走査することによってプログラムを電子的に取り込み、次いでコンパイルして解釈すること、あるいは必要な場合には適切な方法で他の形で処理し、次いでコンピュータメモリに格納することができるため、コンピュータで使用可能またはコンピュータで読み取り可能な媒体は、プログラムが印刷された紙または他の適切な媒体とすることも可能であることに留意されたい。
【0023】
本明細書では、本発明の概念の例示的な実施形態を、流れ図および/またはブロック図を参照して説明する。流れ図および/またはブロック図の各ブロック、ならびに流れ図および/またはブロック図中のブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令および/またはハードウェア操作によって実行可能であることが理解されよう。こうしたコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、特定目的のコンピュータ、または他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに対して与えられ、それにより、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサを介して実行する命令が、流れ図および/またはブロック図の1つまたは複数のブロックで指定される機能を実装するための手段および/または回路を生成するような機械装置を作り出すことが可能である。
【0024】
こうしたコンピュータプログラム命令は、コンピュータで使用可能またはコンピュータで読み取り可能なメモリに格納された命令が、流れ図および/またはブロック図の1つまたは複数のブロックで指定される機能を実装する命令を含む製品を作り出すような特定の方法で機能するように、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置に指示することができる、コンピュータで使用可能またはコンピュータで読み取り可能なメモリに格納することも可能である。
【0025】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置にロードされ、それにより、コンピュータまたは他のプログラム可能な装置上で実施される一連の動作ステップが、コンピュータまたは他のプログラム可能な装置で実行する命令が流れ図および/またはブロック図の1つまたは複数のブロックで指定される機能を実装するためのステップを提供するような、コンピュータによって実装されるプロセスを作り出すことも可能である。
【0026】
管理端部コントローラ:
やはり
図5を参照すると、管理端部コントローラ106(主制御モジュール、またはMCMとしても知られる)は、
・専用のRS-422/485または無線リンク105を介してホストPC102にインターフェースする。このリンクは、システム100の相互接続されたすべてのモジュールへのコマンドおよびデータのための経路を提供する。
・独立した専用のRS-485リンク105で、サクションボックスの真空ゾーン30の内部に装着された様々なゾーンモジュール(以下で説明する)とやり取りするデータトラフィックへの伝達およびデータトラフィックの制御を行う。
・すべてのゾーンモジュールに対してDC電力用のパススルー接続を提供する。
・主要な潤滑水入口を駆動するアナログ制御(0~100%の流量)信号を提供し、フィードバック制御信号によって弁の位置を監視する。
・サクションロールの外部の温度を測定および通知する。
という複数の機能を有することができる。
【0027】
MCM106(
図6、7Aおよび7Bに示す)は、外部の+24VのDC電源108から電力を受け取る。MCM106は、電子的に制御される水弁を、それを必要とするシステムのために駆動する電子的なハードウェアも有している。MCM106は、独立した有線のRS-485データバス105または専用の安全な無線接続によって、ホストのデータ収集PC102に接続される。
図6は、センサモジュールに有線接続されたMCM106を示している。
図7Aは、無線データリンクモジュールが設置されたMCM106の詳細図を示している。
図7Aの左上から始めると、+24V電源108が2つの端子板112に接続されている。無線データリンクを使用しない場合には、ホストPC102へのRS-485リンクが左下に有線接続される。データバスおよび電力は、
図7Aの右側の5つの端子板114を介してZTMモジュールに供給される。
図7Bは、MCM106の回路基板の図である。
【0028】
次に
図8を参照すると、システム電源モジュール108は、カスタム設計されたPCB120に装着された、汎用部品(COTS)の90-240VAC 25-60Hz VAC商用電源式入力部(標準的かつ世界的なAC電力入力部)+24VDC @9A出力モジュールとすることができる。PCB120は、低負荷で出力を安定させる負荷抵抗、および電力の状態を示す青色LEDを有する。この電源108は、32のZTM(以下で論じる)、ならびに関連するMCM106および制御弁にも電力を供給するのに十分な能力を有する。電源108は、水密のポリカーボネートの筐体に入れられる。
【0029】
ゾーンモジュール:
図5に戻ると、システム100が使用可能な複数のタイプのゾーンモジュールが存在する。いくつかは、任意選択でユーザの要件に応じて適合させることができる。典型的なシステム100は、任意選択で32のゾーン温度・摩耗モジュール130(シールストリップごとに8つ、サクションロールごとに4つのストリップ)、4つのストリップ位置センサモジュール140(ストリップごとに1つ)、および1つのパイロットベアリング温度・振動ゾーンモジュール150(ロールごとに1つ)を含むことができる。
ゾーン温度・摩耗モジュール
ゾーン温度・摩耗モジュール130(ZTM:Zone Temperature and Wear Module)は、最も基本的なモジュールである。このモジュール130は、
・単一のシールストリップ温度モジュールからこのモジュールに接続された、4つのデジタル温度集積回路からの温度を評価する(ここで使用されるセンサのさらに詳しい説明は、以下の段落に記載する)
・オプションとして、各ゾーン専用の水弁を制御することができる
・摩耗を3段階で示すことができる(以下で説明する)
・その測定データを管理端部コントローラ106に伝達し、管理端部コントローラ106からコマンドを受け取る
・管理端部コントローラ106からDC電力を受け取り、電力を次のモジュールへ送る
という機能を含むことができる。
【0030】
図9は、取付板131に装着されたZTM130を示している。モジュール用の筐体は約2インチ角で、高さはあまりない。RS-485データバス104および電力が、モジュール130の両側の2つの雄型コネクタ132に接続され、したがって、データと電力は、これらのコネクタ132を通してバス上の次のモジュールへ向かう。バス上の最初のモジュールがMCM106に接続し、それによってデータバスと電力供給の両方の開始点が形成される。温度/摩耗センサ134は、モジュール130の下側縁部の雌型コネクタに接続する。
【0031】
図10は、バスケーブルの入力および出力、ならびにフレキシブルPCB温度センサ134の接続の例を示している(以下でさらに詳しく説明する)。図示される実施形態において、図示されるケーブル136の長さは2メートルであるが、データケーブルとして適切な任意の必要な長さにすることが可能である。
【0032】
図11は、蓋が取り外され、電子機器およびケーブル接続部が露出している状態のZTM130を示している。製造時には、ハウジング内の空洞をDow Corning製のSylgard(登録商標)または同様の封入材料で充填して、ユニットを防水にすることができる。これにより、カバーガスケットに加え、保護がさらに付加される。すべてのケーブルコネクタブートは、オーバーモールド加工し、水密にすることができる。
【0033】
図12は、カバーが取り外された状態のZTM130の詳細な図である。
図13は、ZTMのカバーが取り外された状態のシステム相互接続部の詳細な図である。
【0034】
バス上の最後のZTM130は、受動終端抵抗プラグ137を有しており、その特性インピーダンスでバス104を適切に電気的に終端し、データエラーを引き起こすバス上の電気反射を排除する。
図14は、終端が接続された状態の最後のZTM130の図を示している。左から入るデータバスは、前のモジュール130からのケーブルである。
図15は、ZTM130に接続された終端の詳細図を示している。
【0035】
図9~
図15に示されるデバイスは、サクションボックス領域30内に含まれる。外部では、データバス104および電力ユニット108がMCM106に接続されるが、MCM106は、データバス104、ならびにZTM130およびデータバス104上のRS-485に接続された他のモジュールへの電力供給点を提供する大きいボックスである。
【0036】
ストリップ位置センサモジュール
ストリップ位置センサモジュール140は、シールストリップ34が内部に保持される固定ホルダ32を基準としてシールストリップ34の物理的な動きを測定することによって、シールストリップ34の物理的な動きをインチまたはmmの分数として測定する任意選択のモジュールである。この位置は通常、一端には圧力が与えられ、遠端はキャップで封止された「ロードチューブ(load tube)」142(シールストリップ34の下に全長にわたって延びるホース)の中に含まれる圧力量によって制御される(
図3参照)。ロードチューブ142内の圧力によってロードチューブ142が膨張し(バルーン内の空気によく似ている)、シールストリップ34がシェル12の内面に向かって持ち上がる。この効果と、これまでに言及したサクションボックス20からのシステム真空および潤滑水の層流の助けにより、シールストリップ34の縁部とシェル12の内部との間にシールが形成される。サクションボックス20を通してシェル12を真空に引きすぎると、シールストリップのシェルに対するシールに影響を及ぼす。過剰な真空、ならびに不適切な潤滑シャワーの水流は、シールの耐用年数に大きい影響を及ぼし、早期摩耗または完全なシール不良を引き起こす可能性がある。位置センサモジュール140は、ストリップの動きに対してタブを保持するために使用することができる。他のモジュールと同様に、測定データは、RS-485データバス104上の管理端部コントローラ106に伝達される。
【0037】
パイロットベアリング温度・振動センサモジュール
再び
図5を参照すると、パイロットベアリング温度・振動センサモジュール150は、外部センサを用いて相対的なベアリングの温度を、外部の圧力またはMEMSベースの加速度計を用いて振動を測定するデジタル温度測定集積回路を使用する。こうした測定からのデータは、要求があり次第、管理端部コントローラ106に送信される。
【0038】
シールストリップ温度/摩耗センサ
次に
図16~
図18を参照すると、シールストリップセンサ134は、4つのデジタル温度センサ134a、134b、134c、134dを含み、そのうちの3つ(134a~134c)は、隆起付/フレキシブルKapton(登録商標)(ポリイミドフィルム)PCB138のフレキシブル端部に装着され、エポキシシェル139の内部に封入されている。
【0039】
これら3つのセンサ134a~134cは、3つの異なる水準のセンサ摩耗を示すように、センサ端部から3つの異なる間隔をおいて配置される。センサ134a~134cは、摩耗が生じると、温度センサが電気的に切断され、温度データを読み取ることができなくなるように配置される。図示される実施形態では、摩耗箇所は、端部に最も近いセンサ134aに対して約1/8”、中央のセンサ134bに対して1/4”、最後のセンサ134cに対して3/8”のところで始まる。これらのセンサをそれ自体の専用のマイクロプロセッサのピンに接続すると、それらが分離されるようになっており、したがって、電気回路が摩耗によって破損したとき、サクションロールシェル12への電気接地が、残りの良好な(摩耗していない)センサに影響を及ぼさないことに留意すべきである。
【0040】
シールに装着された3つのセンサ134a~134cに加え、PCB138の隆起が付いた部分に第4のセンサ134dが装着され、水の浸入を防ぐようにクラムシェル式の筐体136によって収容され、封止される。この温度センサ134dは、サクションボックス20内部の環境温度を測定し、基準温度として使用される。
【0041】
1メートルの丸いケーブルがクラムシェル136を出て、ゾーン温度モジュール130の入力部に接続する。
【0042】
図19は、システム全体を通して2つのセンサの状態を動的に読み取った例を示している。シールストリップに埋め込むことが企図された3つのセンサ、および環境センサの応答が示されている。X軸に沿った各四角形は2秒の時間を表しており、したがって、センサが温度変化にきわめて迅速に反応していることが明らかである。左側のゾーンの状態はピーク温度を示し、緑色のバーは、温度が有効である(摩耗によって破損していない)ことを示す。表示は、一度に最大32のゾーンまで示すことができる。
【0043】
熱電対、サーミスタなどを含む他のタイプのセンサを使用することも可能である。
【0044】
シールストリップの温度/摩耗を監視するために使用されるセンサ134a~134cは、従来とは異なる方法で装着されることに留意すべきである。すなわち、それらは、2つのセンサ134a、134cがフレキシブルPCB138の上側に位置し、1つのセンサ134bが下側に位置するように装着される。この配置は、より正確な摩耗測定を行うために、センサを互いにより近づけて位置決めするのを助ける。
【0045】
PCB138が組み立てられた後、ポリウレタンコーティングでコーティングして耐化学薬品性を付与することができる。先端部(最終的には対象のシールストリップ34に挿入され、所定の位置にエポキシ樹脂で接着される端部)をエポキシシェル139に挿入し、高温のエポキシに入れることができる。
【0046】
付加される任意選択の機能および拡張機能:
主要部対ゾーンの水制御
システムが温度データを収集するため、サクションロールへの主要な水入口点において、または個々のゾーン弁を用いて潤滑シャワーへの水の流れを制御することにより、シールストリップの動作パラメータに基づくそのデータに従って作動することが容易である。システムの一実施形態では、システムのコストを節約するためにゾーンの水制御弁が省かれ、1つの主弁を用いてロール全体への水の流れを制御する。バスに接続されたすべてのゾーン温度モジュールによって収集されたデータに従って作動する管理端部コントローラ106は、1~10ボルトの範囲のアナログ信号(0~100%の弁の開口に対応する)を弁に送る。弁は、水流の相対的指標である、弁の現在位置を示す1~10ボルトのフィードバック信号(やはり、1V=0%、10ボルト=100%)を与える。
【0047】
同様に、忠実なゾーンの水制御が実施される場合には、個々のゾーン弁が制御され、その位置が、埋め込まれたセンサによって収集された局所的なセンサデータを用いて個々のゾーン温度モジュールそれぞれによって確認される。
【0048】
自動パージシステム
自動パージシステムを有するシステムに使用されるシャワーノズルは、ダイアフラム、および圧力が10psi以下に低下する度にノズルを清浄化するワイヤを用いた内部機構を有する。これを前述のシステム100に実装するには、主弁を定期的(たとえば、1時間に1回、10秒間)に閉じるか、または忠実なゾーンの水制御の場合には、ゾーンモジュールが弁を制御するようにする。このパージ処理は、ホストPC102によって、管理端部コントローラ106にコマンドを送信するようにプログラムすることが可能である。管理端部コントローラ106は、主弁を閉じ、次いで開いてパージサイクルを実行するか、またはゾーンモジュール制御の場合には、各ゾーンに順々にパージ機能を実行するように命令する。ゾーンパージを一度にすべてではなく順々に行う(すなわち、一度に1つのゾーンの弁サイクルを行う)ことによって、システム電源での急な電力サージを低減することができる。
【0049】
パイロットベアリング温度・振動モニターモジュール
このモジュールは、マイクロプロセッサ、RS-485データバスレシーバ/ドライバ、およびアナログ信号調節回路を含む。これは、パイロットベアリング装着部からのアナログの振動データと共に、ベアリング温度を通知する。このデータはデータバス通信を専用に使用することが必要になる可能性があるため、振動の読み取りが行われている間、他のモジュールすべてが一時停止されることがある。
【0050】
上記は、本発明を説明するものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本発明の例示的な実施形態を説明してきたが、本発明の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの変更が可能であることが当業者には容易に理解されよう。したがって、そうした変更はすべて、特許請求の範囲において述べる本発明の範囲に含まれることが企図される。本発明は、以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の等価物はそれに含まれる。