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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20220413BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220413BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 Q
H05K3/46 G
H05K1/02 C
H05K1/11 H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019561487
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2017047011
(87)【国際公開番号】W WO2019130496
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】521386593
【氏名又は名称】リンクステック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】山根 勇介
(72)【発明者】
【氏名】品田 詠逸
(72)【発明者】
【氏名】和田 大
(72)【発明者】
【氏名】篠原 翔
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0037432(US,A1)
【文献】特開平11-054927(JP,A)
【文献】特開2012-151375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/11
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板との間に絶縁部材が介在する積層構造を有する積層体の製造方法であって、
前記第1の基板を貫通する第1の貫通孔が前記第1の基板に形成され、前記第2の基板を貫通する第2の貫通孔が前記第2の基板に形成され、前記絶縁部材が前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置された状態で前記絶縁部材に貫通孔を形成して、前記第1の貫通孔と、前記第2の貫通孔と、前記絶縁部材の前記貫通孔とにより、前記積層体を貫通する貫通孔を形成する工程を備え、
前記第1の基板が、前記第1の貫通孔の内壁に配置された第1の導体部を有し、
前記第2の基板が、前記第2の貫通孔の内壁に配置された第2の導体部を有し、
前記第1の基板における前記第2の基板と対向する第1の主面において、前記第1の貫通孔の形成位置とは異なる位置に第1の表面電極が配置されており、
前記第2の基板における前記第1の基板と対向する第2の主面において、前記第2の貫通孔の形成位置とは異なる位置に第2の表面電極が配置されており、
前記第1の貫通孔における前記第2の基板とは反対側の端部と、前記第2の貫通孔における前記第1の基板とは反対側の端部とが、前記第1の導体部と、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、前記第2の導体部とを介して電気的に接続されている、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁部材の前記貫通孔をレーザ加工によって形成する、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁部材の前記貫通孔をドリル加工によって形成する、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
第1の基板と第2の基板との間に絶縁部材が介在する積層構造を有する積層体であって、
前記第1の基板を貫通する第1の貫通孔と、前記第2の基板を貫通する第2の貫通孔と、前記絶縁部材を貫通する貫通孔とが、前記積層体を貫通する貫通孔を構成しており、
前記第1の基板が、前記第1の貫通孔の内壁に配置された第1の導体部を有し、
前記第2の基板が、前記第2の貫通孔の内壁に配置された第2の導体部を有し、
前記第1の基板における前記第2の基板と対向する第1の主面において、前記第1の貫通孔の形成位置とは異なる位置に第1の表面電極が配置されており、
前記第2の基板における前記第1の基板と対向する第2の主面において、前記第2の貫通孔の形成位置とは異なる位置に第2の表面電極が配置されており、
前記第1の貫通孔における前記第2の基板とは反対側の端部と、前記第2の貫通孔における前記第1の基板とは反対側の端部とが、前記第1の導体部と、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、前記第2の導体部とを介して電気的に接続されており、
前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔の少なくとも一方の径が、前記絶縁部材の前記貫通孔の径よりも大きい、積層体。
【請求項5】
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極が、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の間に配置された導電部材によって互いに電気的に接続されている、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記第1の基板を貫通する第3の貫通孔が前記第1の基板に更に形成されており、
前記第1の基板が、前記第3の貫通孔の内壁に配置された第3の導体部を更に有し、
前記第2の基板を貫通する第4の貫通孔が前記第2の基板に更に形成されており、
前記第2の基板が、前記第4の貫通孔の内壁に配置された第4の導体部を更に有し、
前記第1の主面に第3の表面電極が配置されており、
前記第2の主面に第4の表面電極が配置されている、請求項4又は5に記載の積層体。
【請求項7】
前記第1の基板、前記絶縁部材及び前記第2の基板の積層方向において互いに重なる位置に前記第3の貫通孔と前記第4の貫通孔とが形成されており、
前記第3の表面電極が、前記第1の主面における前記第3の貫通孔の形成位置に配置されており、
前記第4の表面電極が、前記第2の主面における前記第4の貫通孔の形成位置に配置されている、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記第1の基板、前記絶縁部材及び前記第2の基板の積層方向において互いに重ならない位置に前記第3の貫通孔と前記第4の貫通孔とが形成されており、
前記第3の表面電極が、前記第1の主面における前記第3の貫通孔の形成位置に配置されており、
前記第4の表面電極が、前記第2の主面における前記第3の表面電極と対向する位置に配置されている、請求項6に記載の積層体。
【請求項9】
前記第3の表面電極及び前記第4の表面電極が、前記第3の表面電極及び前記第4の表面電極の間に配置された導電部材によって互いに電気的に接続されている、請求項6~8のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
前記第3の表面電極と前記第4の表面電極との間に導電部材が配置されていない、請求項6~8のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項11】
前記第1の貫通孔の径及び前記第2の貫通孔の径が、前記絶縁部材の前記貫通孔の径よりも大きい、請求項4~10のいずれか一項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層配線板は、例えば、回路形成された両面銅張積層板と、絶縁性接着剤とを交互に積層して一体化させた後、接続に必要な箇所に、多層配線板の全体を積層方向に貫通する貫通孔を設け、さらに、金属めっきにより貫通孔の内壁に導体部を作製することによって、貫通孔の両端部を電気的に接続する貫通スルーホールを設けることにより得ることができる。
【0003】
貫通スルーホールは、多層配線板の積層方向の全体にわたって形成されるため、多層配線板の表面では、貫通スルーホールとの電気的な接続を避けるため、貫通スルーホールの形成位置を避けるように回路パターンが配置される。そのため、貫通スルーホール構造では、配線密度を向上させることには限界がある。
【0004】
多層配線板に実装される部品は、主に表面実装されており、部品と多層配線板とを接続するための接続部は年々狭小化している。多層配線板に実装される部品の高密度化に伴い、実装点数も益々増加しており、多層配線板の貫通スルーホールピッチの狭小化、配線回路の層数の増加等が求められている。例えば、多層配線板の全体を積層方向に貫通する貫通孔を設けた後に金属めっきにより貫通孔の内壁に導体部を形成して得られる貫通スルーホールを設けたインタスティシャルバイアホール(IVH:非貫通スルーホール)付き多層配線板が知られている。この多層配線板は、貫通スルーホールのみの多層配線板に比べ、小径の孔あけが可能であり、狭ピッチ化へ対応しやすい。
【0005】
更なる高密度化に対応するために層間接続技術が開発されている。例えば、配線板の表面にビルドアップ層を形成した後、レーザ等により設けられた非貫通孔の内壁をめっきして非貫通孔の両端部を電気的に接続した構造を、必要層数に応じて逐次積み重ねるビルドアップ工法が知られている。さらに、ビルドアップ工法以外の層間接続技術として、めっきを用いることなく、層間接続部材として導電性ペースト、異方導電材料等を用いる多層配線板の製造技術が提案されている。
【0006】
例えば、下記特許文献1には、薄型のプリプレグに設けられた孔の中に導電性ペーストを充填した部材、回路基板等を重ね合わせた後、加熱・加圧して一枚の多層配線板を形成する方法が開示されている。
【0007】
下記特許文献2には、回路板、銅箔等の上に形成されたバンプに絶縁材料を押し付けることによりバンプを絶縁材料から貫通させて得られる構造体の上に回路板、銅箔等を重ね合わせた後、加熱・加圧による積層を行い一体化することにより得られる多層配線板が開示されている。
【0008】
下記特許文献3には、導体板上に山形又は略円錐状の導電性バンプを形成した後に絶縁性プリプレグ基材を加熱して軟化させてプレス貫挿させることにより、導電性バンプからなるビアを形成する方法が開示されている。
【0009】
下記特許文献4には、硬化した絶縁部材に設けられた孔の中に導電性ペーストを充填することにより、絶縁部材の厚さ方向に貫通する導電性のビアが形成された複数の部材を積層して多層の回路基板を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-87870号公報
【文献】特開平9-162553号公報
【文献】特開2013-110230号公報
【文献】特開2015-26689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、多層配線板に実装される部品として、貫通孔(貫通スルーホール)内にピンを挿入して保持されるピン挿入型(プレスフィットピン型)の部品が挙げられる。ピン挿入型の部品を用いるためには、多層配線板における複数の基板を貫通する貫通孔が必要である。
【0012】
複数の基板を積層(層間接続)することにより多層配線板を得た後に貫通孔を多層配線板に設けることは可能であるが、複数の基板を貫通させることを要するため、多層配線板の製造工程が長くなること、多層配線板の製造コストが高くなること等が懸念される。そのため、多層配線板として用いられる積層体、又は、多層配線板を得るために用いられる積層体として、ピン挿入型の部品を実装可能である積層体を効率的に得ることが求められる。
【0013】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、ピン挿入型の部品を実装可能である積層体を効率的に得ることが可能な積層体の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記製造方法により得ることが可能な積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る積層体の製造方法は、第1の基板と第2の基板との間に絶縁部材が介在する積層構造を有する積層体の製造方法であって、前記第1の基板を貫通する第1の貫通孔が前記第1の基板に形成され、前記第2の基板を貫通する第2の貫通孔が前記第2の基板に形成され、前記絶縁部材が前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置された状態で前記絶縁部材に貫通孔を形成して、前記第1の貫通孔と、前記第2の貫通孔と、前記絶縁部材の前記貫通孔とにより、前記積層体を貫通する貫通孔を形成する工程を備え、前記第1の基板が、前記第1の貫通孔の内壁に配置された第1の導体部を有し、前記第2の基板が、前記第2の貫通孔の内壁に配置された第2の導体部を有し、前記第1の基板における前記第2の基板と対向する第1の主面において、前記第1の貫通孔の形成位置とは異なる位置に第1の表面電極が配置されており、前記第2の基板における前記第1の基板と対向する第2の主面において、前記第2の貫通孔の形成位置とは異なる位置に第2の表面電極が配置されており、前記第1の貫通孔における前記第2の基板とは反対側の端部と、前記第2の貫通孔における前記第1の基板とは反対側の端部とが、前記第1の導体部と、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、前記第2の導体部とを介して電気的に接続されている。
【0015】
本発明に係る積層体の製造方法によれば、第1の基板を貫通する第1の貫通孔が第1の基板に形成され、第2の基板を貫通する第2の貫通孔が第2の基板に形成され、絶縁部材が第1の基板と第2の基板との間に配置された状態で絶縁部材に貫通孔を形成して、第1の貫通孔と、第2の貫通孔と、絶縁部材の貫通孔とにより、積層体を貫通する貫通孔を形成する。この場合、積層体を貫通する貫通孔を形成する操作を行う際に、第1の基板及び第2の基板に予め貫通孔が形成されているため、絶縁部材に加えて第1の基板及び第2の基板に貫通孔を形成する必要がない。そのため、積層体の製造工程を簡略化することが可能であると共に、積層体の製造コストが高くなることを抑制することができる。したがって、本発明に係る積層体の製造方法によれば、ピン挿入型の部品を実装可能である積層体を効率的に得ることができる。
【0016】
ところで、複数の基板を積層(層間接続)することにより多層配線板を得た後に貫通孔を多層配線板に設けることは可能であるが、基板が厚い場合、小径のドリルでの加工が難しい(ドリル折れが発生する)恐れがあると共に、貫通孔の内壁に配置された導体部のめっきの付き回り性(スローイングパワー。例えば、貫通孔のアスペクト比が25を超える場合のめっきの付き回り性)が低下する恐れがある。一方、本発明に係る積層体の製造方法によれば、基板が厚い場合であっても、小径のドリルを用いて、積層体を貫通する貫通孔を形成することができる。また、基板が厚い場合であっても、複数の基板を積層する前に予め基板に導体部が形成されているため、基板を積層した後にめっきの付き回り性を考慮する必要がない。これらにより、孔を容易に小径化できることから、基板に形成される貫通孔間の距離を増大させることができる。この場合、信号線の増加等が可能であると共に、信号線の引き回しも容易である。
【0017】
本発明に係る積層体の製造方法は、前記絶縁部材の前記貫通孔をレーザ加工によって形成する態様であってもよい。本発明に係る積層体の製造方法は、前記絶縁部材の前記貫通孔をドリル加工によって形成する態様であってもよい。
【0018】
本発明に係る積層体は、第1の基板と第2の基板との間に絶縁部材が介在する積層構造を有する積層体であって、前記第1の基板を貫通する第1の貫通孔と、前記第2の基板を貫通する第2の貫通孔と、前記絶縁部材を貫通する貫通孔とが、前記積層体を貫通する貫通孔を構成しており、前記第1の基板が、前記第1の貫通孔の内壁に配置された第1の導体部を有し、前記第2の基板が、前記第2の貫通孔の内壁に配置された第2の導体部を有し、前記第1の基板における前記第2の基板と対向する第1の主面において、前記第1の貫通孔の形成位置とは異なる位置に第1の表面電極が配置されており、前記第2の基板における前記第1の基板と対向する第2の主面において、前記第2の貫通孔の形成位置とは異なる位置に第2の表面電極が配置されており、前記第1の貫通孔における前記第2の基板とは反対側の端部と、前記第2の貫通孔における前記第1の基板とは反対側の端部とが、前記第1の導体部と、前記第1の表面電極と、前記第2の表面電極と、前記第2の導体部とを介して電気的に接続されている。
【0019】
前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極は、前記第1の表面電極及び前記第2の表面電極の間に配置された導電部材によって互いに電気的に接続されていてもよい。
【0020】
本発明に係る積層体は、前記第1の基板を貫通する第3の貫通孔が前記第1の基板に更に形成されており、前記第1の基板が、前記第3の貫通孔の内壁に配置された第3の導体部を更に有し、前記第2の基板を貫通する第4の貫通孔が前記第2の基板に更に形成されており、前記第2の基板が、前記第4の貫通孔の内壁に配置された第4の導体部を更に有し、前記第1の主面に第3の表面電極が配置されており、前記第2の主面に第4の表面電極が配置されている態様であってもよい。
【0021】
本発明に係る積層体は、前記第1の基板、前記絶縁部材及び前記第2の基板の積層方向において互いに重なる位置に前記第3の貫通孔と前記第4の貫通孔とが形成されており、前記第3の表面電極が、前記第1の主面における前記第3の貫通孔の形成位置に配置されており、前記第4の表面電極が、前記第2の主面における前記第4の貫通孔の形成位置に配置されている態様であってもよい。
【0022】
本発明に係る積層体は、前記第1の基板、前記絶縁部材及び前記第2の基板の積層方向において互いに重ならない位置に前記第3の貫通孔と前記第4の貫通孔とが形成されており、前記第3の表面電極が、前記第1の主面における前記第3の貫通孔の形成位置に配置されており、前記第4の表面電極が、前記第2の主面における前記第3の表面電極と対向する位置に配置されている態様であってもよい。
【0023】
前記第3の表面電極及び前記第4の表面電極は、前記第3の表面電極及び前記第4の表面電極の間に配置された導電部材によって互いに電気的に接続されている態様であってもよい。
【0024】
本発明に係る積層体は、前記第3の表面電極と前記第4の表面電極との間に導電部材が配置されていない態様であってもよい。
【0025】
前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔の少なくとも一方の径は、前記絶縁部材の前記貫通孔の径よりも大きくてもよい。
【0026】
前記第1の貫通孔の径及び前記第2の貫通孔の径は、前記絶縁部材の前記貫通孔の径よりも大きくてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ピン挿入型の部品を実装可能である積層体を効率的かつ容易に得ることができる。このような本発明によれば、積層体の設計の自由度及び貫通孔の形成の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る積層体を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の他の実施形態に係る積層体を示す概略断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法を示す概略断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0030】
本実施形態に係る積層体は、第1の基板と第2の基板との間に絶縁部材が介在する積層構造を有する積層体であって、第1の基板を貫通する第1の貫通孔と、第2の基板を貫通する第2の貫通孔と、絶縁部材を貫通する貫通孔とが、積層体を貫通する貫通孔を構成しており、第1の基板が、第1の貫通孔の内壁に配置された第1の導体部を有し、第2の基板が、第2の貫通孔の内壁に配置された第2の導体部を有し、第1の基板における第2の基板と対向する第1の主面において、第1の貫通孔の形成位置とは異なる位置に第1の表面電極が配置されており、第2の基板における第1の基板と対向する第2の主面において、第2の貫通孔の形成位置とは異なる位置に第2の表面電極が配置されており、第1の貫通孔における第2の基板とは反対側の端部と、第2の貫通孔における第1の基板とは反対側の端部とが、第1の導体部と、第1の表面電極と、第2の表面電極と、第2の導体部とを介して電気的に接続されている。
【0031】
基板の貫通孔(第1の貫通孔及び第2の貫通孔の少なくとも一方)の径(基板の厚み方向に直行する方向の直径)は、0.1mm以上であってよく、0.2mm以上であってよく、0.3mm以上であってよく、0.4mm以上であってよく、0.5mm以上であってよい。基板(第1の基板、及び/又は、第2の基板)の貫通孔の径は、5mm以下であってよく、3mm以下であってよく、1mm以下であってよい。第1の基板の貫通孔の径と、第2の基板の貫通孔の径とは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
絶縁部材の貫通孔の径(絶縁部材の厚み方向に直行する方向の直径)は、0.1mm以上であってよく、0.2mm以上であってよく、0.3mm以上であってよく、0.4mm以上であってよく、0.45mm以上であってよく、0.5mm以上であってよい。絶縁部材の貫通孔の径は、1mm以下であってよく、0.9mm以下であってよく、0.8mm以下であってよく、0.7mm以下であってよく、0.6mm以下であってよい。
【0033】
基板の貫通孔(第1の貫通孔及び第2の貫通孔の少なくとも一方)の径と、絶縁部材の貫通孔の径との差は、絶縁部材に貫通孔を形成する際に基板の貫通孔内の導体部が破損することを抑制しやすい観点から、0.1mm以上であってもよく、0.15mm以上であってもよく、0.2mm以上であってもよい。第1の貫通孔及び第2の貫通孔の少なくとも一方の径と、絶縁部材の貫通孔の径との差の上限値は、例えば0.5mmである。
【0034】
絶縁部材の貫通孔の径は、基板の貫通孔(第1の貫通孔及び第2の貫通孔の少なくとも一方)の径と同一であっても異なっていてもよい。例えば、基板の貫通孔(第1の貫通孔及び第2の貫通孔の少なくとも一方)の径は、絶縁部材の貫通孔の径よりも大きくてもよい。また、第1の貫通孔の径及び第2の貫通孔の径は、絶縁部材の貫通孔の径よりも大きくてもよい。絶縁部材の貫通孔の径と基板の貫通孔の径とは同一(同径)であることが好ましい。この場合、絶縁部材に貫通孔を形成した後に絶縁部材の構成材料が基板の貫通孔内から除去されやすく、基板の貫通孔内に異物等が溜まることを抑制できる。また、部品実装の際に、挿入型のピンに絶縁部材が接触して絶縁部材の構成材料が飛散することを抑制できる。
【0035】
導体部の厚さ(導体部における貫通孔の径方向の厚さ)は、10μm以上であってよく、15μm以上であってよく、20μm以上であってよい。導体部14a~14d及び導体部24a~24dの厚さは、40μm以下であってよく、35μm以下であってよく、30μm以下であってよい。
【0036】
図1は、本実施形態に係る積層体を示す概略断面図である。図1に示す積層体(多層配線板)100は、基板(第1の基板)10と、基板(第2の基板)20と、絶縁部材30と、を備えており、基板10と基板20との間に絶縁部材30が介在する積層構造を有している。絶縁部材30は、基板10及び基板20に接している。基板10、絶縁部材30及び基板20は、この順に積層されている。
【0037】
基板10,20の大きさ、形状等は、特に限定されない。基板10及び基板20の大きさ、形状等は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
基板10,20としては、プリント配線板を用いることができる。プリント配線板としては、両面回路板、多層配線板、マルチワイヤ配線板等が挙げられる。プリント配線板に用いられる基材の種類は限定されないが、積層時の加圧加熱による変形(寸法変化)を制御する観点から、ガラスクロス等の強化材を含有する絶縁基材が好ましい。同様の観点から、基材としては、NEMA(National Electrical Manufacturers Association)規格のFR(Flame Retardant)-5グレードの基材、ガラス転移温度が高い基材(例えば、ポリイミド樹脂等を含有する基材)が好ましい。
【0039】
基板10は、基板10の厚み方向に基板10を貫通する複数の貫通孔12a~12dを有しており、当該貫通孔12a~12dの内壁に配置された導体部(ビア)14a~14dを有している。導体部14a~14dは、貫通孔の軸方向に沿って、貫通孔12a~12dにおける基板20側の端部から、貫通孔12a~12dにおける基板20とは反対側の端部まで伸びている。基板20は、基板20の厚み方向に基板20を貫通する複数の貫通孔22a~22dを有しており、当該貫通孔22a~22dの内壁に配置された導体部(ビア)24a~24dを有している。導体部24a~24dは、貫通孔の軸方向に沿って、貫通孔22a~22dにおける基板10側の端部から、貫通孔22a~22dにおける基板10とは反対側の端部まで伸びている。基板10及び基板20は、貫通スルーホール構造を有している。貫通孔12a~12dと、貫通孔22a~22dとは、基板10、絶縁部材30及び基板20の積層方向において対向する位置に形成されている。
【0040】
積層体100では、基板10の厚み方向に基板10を貫通する貫通孔12a(第1の貫通孔)と、基板20の厚み方向に基板20を貫通する貫通孔22a(第2の貫通孔)と、絶縁部材30の厚み方向に絶縁部材30を貫通する貫通孔32aとが、積層体100の厚み方向に積層体100を貫通する貫通孔100aを形成している。基板10を貫通する貫通孔12bと、基板20を貫通する貫通孔22bと、絶縁部材30を貫通する貫通孔32bとが、積層体100の厚み方向に積層体100を貫通する貫通孔100bを形成している。貫通孔12a,12b,22a,22bは、径方向の中央部が中空の構造を有している。貫通孔12c,12d,22c,22dにおける導体部14c,14d,24c,24dの占有空間以外の空間に孔埋め樹脂40が充填されている。孔埋め樹脂40としては、太陽インキ製造株式会社製の商品名:THP-100DX1、タツタ電線株式会社製の商品名:AE1244等を用いることができる。
【0041】
貫通孔100aを構成する貫通孔12a及び貫通孔22aは、基板10、絶縁部材30及び基板20の積層方向において互いに重なる位置に形成されている。貫通孔100bを構成する貫通孔12b及び貫通孔22bは、基板10、絶縁部材30及び基板20の積層方向において互いに重なる位置に形成されている。基板10の貫通孔及び基板20の貫通孔が基板10、絶縁部材30及び基板20の積層方向において互いに重なる位置に形成されている場合、両貫通孔の中心軸は、同一軸であってもよく、同一軸でなくてもよい。積層体100を貫通する貫通孔が形成されていない位置では、基板10の貫通孔及び基板20の貫通孔は、基板10、絶縁部材30及び基板20の積層方向において、互いに重なる位置に形成されていてもよく、互いに重ならない位置に形成されていてもよい。
【0042】
基板10における基板20と対向する主面(第1の主面)10aにおいて、貫通孔12aの形成位置とは異なる位置に表面電極(第1の表面電極、ランド)16aが配置されている。表面電極16aは、主面10aにおける貫通孔12aの形成位置に隣接する位置に配置されている。表面電極16aは、貫通孔12a内の導体部14aに接しており、導体部14aと電気的に接続されている。基板20における基板10と対向する主面(第2の主面)20aにおいて、貫通孔22aの形成位置とは異なる位置に表面電極(第2の表面電極、ランド)26aが配置されている。表面電極26aは、主面20aにおける貫通孔22aの形成位置に隣接する位置に配置されている。表面電極26aは、貫通孔22a内の導体部24aに接しており、導体部24aと電気的に接続されている。
【0043】
主面10aにおいて、貫通孔12bの形成位置とは異なる位置に表面電極16bが配置されている。主面10aにおける貫通孔12c,12dの形成位置には、表面電極(パッド)16c,16dが配置されている。主面20aにおいて、貫通孔22bの形成位置とは異なる位置に表面電極26bが配置されている。主面20aにおける貫通孔22c,22dの形成位置には、表面電極(パッド)26c,26dが配置されている。貫通孔12c,12d,22c,22d内に孔埋め樹脂40が充填されていると、貫通孔12c,12d,22c,22dの形成位置に表面電極16c,16d,26c、26dを形成しやすい。また、表面電極16c,16d,26c、26dは、導体部14c,14d,24c,24dと電気的に接続される導電部材(例えば、後述する導電部材50c)と接触させやすいことから、表面電極16c,16d,26c、26dを配置することにより導体部14c,14d,24c,24dと導電部材との電気的接続を容易に得ることができる。
【0044】
積層体100において、基板10の貫通孔(例えば、貫通孔12a)における基板20とは反対側(主面10aとは反対側)の端部と、基板20の貫通孔(例えば、貫通孔22a)における基板10とは反対側(主面20aとは反対側)の端部とは、少なくとも、基板10の導体部(例えば、導体部14a(第1の導体部))と、基板10の表面電極(例えば、表面電極16a)と、基板20の表面電極(例えば、表面電極26a)と、基板20の導体部(例えば、導体部24a(第2の導体部))とを介して電気的に接続されている。表面電極16a及び表面電極26aは、表面電極16a及び表面電極26aの間に配置された導電部材50aによって互いに電気的に接続されている。表面電極16c及び表面電極26cは、表面電極16c及び表面電極26cの間に配置された導電部材50cによって互いに電気的に接続されている。表面電極16d及び表面電極26dは、表面電極16dと表面電極26dとの間に導電部材が配置されることなく、表面電極16d及び表面電極26dの間に絶縁部材30が介在するため、互いに電気的に接続されていない。
【0045】
導電部材(例えば、導電部材50a,50c)に用いられる導電性材料は、導電性を有していれば限定されず、プリント配線板における一般的な積層温度(200℃以下)で溶融して金属間結合が形成された後の再溶融温度が250℃以上である材料が好ましい。導電性材料としては、銅、スズ合金等が挙げられる。導電性材料は、例えば、第一の金属として、銅粒子及び金属被覆銅粒子(例えば、銀、金又はスズに被覆された銅粒子)の少なくとも一方を含有し、第二の金属として、スズ、ビスマス、銀、亜鉛及びパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属を含有することが好ましい。第二の金属は、第一の金属と金属間化合物を形成することが好ましい。この場合、第二の金属は、少なくともスズを含むことが好ましい。導電部材としては、導電性ペーストを用いることができる。導電部材としては、ORMET社製の商品名:HT-710、タツタ電線株式会社製の商品名:MPA500等が挙げられる。
【0046】
表面電極の表面を保護するために、基板の表面に表面処理(表面仕上げ)が施されていてもよい。表面処理は、金めっきであることが好ましい。表面電極の材料の種類(例えば銅)によっては、大気中に放置すると、表面に酸化膜(例えば、酸化銅膜)が形成されて表面電極と導電部材との接続性が低下する場合がある。この場合、金めっき等により表面電極の表面を保護することにより、表面電極が酸化劣化することを抑制しやすい。
【0047】
絶縁部材30は、絶縁性を有していれば特に限定されない。絶縁部材30としては、例えば、絶縁性を有するフィルムを用いることができる。絶縁部材30の絶縁材料は、例えば、樹脂組成物から構成されている。樹脂組成物は、流動性を制御しやすい観点から、樹脂(ポリマ)を含有することが好ましく、熱硬化性樹脂を含有することがより好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0048】
樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合、硬化物(熱硬化物)のガラス転移温度は、部品実装時のリフロー耐性が向上する観点から、150℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましい。樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合、樹脂組成物は、硬化物の熱膨張率を抑える観点から、強化材としてフィラー等の粒子を含有することが好ましい。
【0049】
ガラス転移温度は、次の方法で測定することができる。
(サンプル作製方法)
乾燥後の厚さが100μmになるように、アプリケータを用いて熱硬化性樹脂組成物を離型PET(polyethylene terephthalate)フィルム(帝人デュポンフィルム社製、商品名:A-53)上に塗布した後、温度130℃、時間30分の条件で乾燥することにより半硬化のフィルムを作製する。次に、離型PETフィルムから半硬化のフィルムを剥がす。そして、2枚の金属製の枠に半硬化のフィルムを挟むことでフィルムを固定した後、温度185℃、時間60分の条件で乾燥することにより、硬化した熱硬化性樹脂組成物からなるフィルムを作製する。
(測定方法)
TAインスツルメント社製、装置名:TMA-2940を用いて、冶具:引っ張り、チャック間距離:15mm、測定温度:室温~350℃、昇温温度:10℃/分、引っ張り荷重:5gf、サンプルサイズ:幅5mm×長さ25mmの条件で測定し、得られた温度-変位曲線から接線法によりガラス転移温度を求める。
【0050】
絶縁部材30の絶縁材料としては、例えば、日立化成株式会社製の商品名:AS-401HS、日立化成株式会社製の商品名:AS-9500が挙げられる。ガラス繊維又はカーボン繊維からなる不織布、ガラスクロス・カーボンクロスを含む絶縁材料を用いる場合、不織布・クロスの緻密による厚さの違いによって、表面電極の高さが表面電極毎にばらつきやすいことから、接続抵抗値が不安定となる場合がある。そのため、絶縁材料は、ガラス繊維又はカーボン繊維からなる不織布、ガラスクロス・カーボンクロス等を含まなくてよい。
【0051】
本実施形態に係る積層体において基板は、積層体を貫通する貫通孔(例えば、上述の積層体100を貫通する貫通孔100a,100b)を構成する貫通孔(例えば、上述の貫通孔12a,12b,22a,22b)を有していればよい。積層体を貫通する貫通孔は、一つのみ形成されていてもよく、複数形成されていてもよい。積層体を貫通する貫通孔を構成する貫通孔は、各基板に一つのみ形成されていてもよく、少なくとも一方の基板に複数形成されていてもよい。
【0052】
本実施形態に係る積層体において基板は、積層体を貫通する貫通孔を構成しない貫通孔を有していてもよい。例えば、上述の積層体100のように、基板10は、基板10を貫通する貫通孔として、貫通孔12aに加えて貫通孔12c,12d(第3の貫通孔)を有していてもよい。また、基板20は、基板20を貫通する貫通孔として、貫通孔22aに加えて貫通孔22c,22d(第4の貫通孔)を有していてもよい。これらの貫通孔12c,12d,22c,22dは、積層体100を貫通する貫通孔を構成していない。貫通孔12c,12dと、貫通孔22c,22dとは、基板10、絶縁部材30及び基板20の積層方向において対向する位置に形成されている。
【0053】
基板10は、貫通孔12c,12dの内壁に配置された導体部14c,14d(第3の導体部)を有している。基板10の主面10aには、表面電極16c,16d(第3の表面電極)が配置されており、表面電極16c,16dは、主面10aにおける貫通孔12c,12dの形成位置に配置されている。基板20は、貫通孔22c,22dの内壁に配置された導体部24c,24d(第4の導体部)を有している。基板20の主面20aには、表面電極26c,26d(第4の表面電極)が配置されており、表面電極26c,26dは、主面20aにおける貫通孔22c,22dの形成位置に配置されている。積層体を貫通する貫通孔を構成しない貫通孔の形成位置に配置された表面電極は、表面電極の間に配置された導電部材によって互いに電気的に接続される態様(表面電極16c,26cの態様)であってもよく、表面電極の間に導電部材が配置されていない態様(表面電極16d,26dの態様)であってもよい。表面電極の間に導電部材が配置されていない態様では、表面電極の間に絶縁部材30が介在している。
【0054】
積層体を貫通する貫通孔を構成しない貫通孔の他の例として、図2に示す例が挙げられる。図2では、基板10、絶縁部材30及び基板20の積層方向において互いに重ならない位置に貫通孔12cと貫通孔22cとが形成されており、表面電極16cが、主面10aにおける貫通孔12cの形成位置に配置されており、表面電極26cが、主面20aにおける表面電極16cと対向する位置に配置されている。表面電極16c,26cは、表面電極16c,26cの間に配置された導電部材50cによって互いに電気的に接続される態様(図2(a))であってもよく、表面電極16c,26cの間に導電部材が配置されていない態様(図2(b))であってもよい。
【0055】
本実施形態に係る積層体は、本実施形態に係る積層体の製造方法により得ることができる。本実施形態に係る積層体の製造方法は、第1の基板を貫通する第1の貫通孔が第1の基板に形成され、第2の基板を貫通する第2の貫通孔が第2の基板に形成され、絶縁部材が第1の基板と第2の基板との間に配置された状態で絶縁部材に貫通孔を形成して、第1の貫通孔と、第2の貫通孔と、絶縁部材の貫通孔とにより、積層体を貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程を備える。
【0056】
本実施形態に係る積層体の製造方法は、例えば、基板準備工程と、導体部形成工程と、表面電極形成工程と、積層工程と、貫通孔形成工程とをこの順に備える。
【0057】
基板準備工程は、基板の厚み方向に基板を貫通する貫通孔を有する基板(第1の基板及び第2の基板)を準備する工程である。貫通孔の形成方法としては、後述する絶縁部材の貫通孔の形成方法と同様の方法(例えばドリル加工)を用いることができる。
【0058】
導体部形成工程は、基板(第1の基板及び第2の基板)の貫通孔の内壁に導体部を形成する工程である。導体部は、例えばめっきにより形成することができる。導体部形成工程では、導体部を形成した後に、積層体を貫通する貫通孔を構成しない貫通孔に絶縁材料を充填してもよい。
【0059】
表面電極形成工程は、基板(第1の基板及び第2の基板)の主面において、積層体を貫通する貫通孔を構成する貫通孔の形成位置とは異なる位置に表面電極を形成する工程である。表面電極形成工程では、積層体を貫通する貫通孔を構成する貫通孔の形成位置に隣接する位置に表面電極を形成することができる。また、基板の貫通孔内の導体部に接するように表面電極を形成することができる。表面電極は、例えば、基板の主面に配置された金属層(例えば銅箔)をエッチングすることにより形成することができる。金属層は、例えばめっきにより形成することができる。表面電極形成工程では、基板の主面において、積層体を貫通する貫通孔を構成しない貫通孔の形成位置に更に表面電極を形成してもよい。
【0060】
積層工程は、絶縁部材を介して第1の基板と第2の基板とを積層する工程である。積層工程では、絶縁部材及び導電部材を介して第1の基板と第2の基板とを積層することができる。第1の基板の表面電極と第2の基板の表面電極とを電気的に接続するため、これらの表面電極が互いに対向した状態で基板同士を積層して加熱・加圧を行うことができる。
【0061】
基板同士を積層する場合、精度よく位置合わせする観点から、ピンを挿入するために設けた貫通孔(位置合わせ用の貫通孔)に積層位置合わせ用のピンを挿入して基板の位置合わせを行うことが好ましい。積層位置合わせ用のピンは、一つの貫通孔のみに挿入されてもよく、複数の貫通孔に挿入されてもよい。
【0062】
積層工程では、基板の主面に配置された表面電極同士を電気的に接続するため、絶縁部材における表面電極間の位置に貫通孔を形成する。絶縁部材における表面電極同士を電気的に接続しない位置には、貫通孔を形成しなくてもよく、貫通孔を形成してもよい。絶縁部材の貫通孔の形成方法は、特に限定されず、貫通孔形成工程における後述の絶縁部材の貫通孔の形成方法を用いることができる。
【0063】
絶縁部材の表面には離型フィルムが配置されていることが好ましい。この場合、絶縁部材の表面への異物の付着を防止できる。さらに、離型フィルムは、後工程の導電部材(例えば、導電性ペースト)の供給の際に、絶縁部材の表面を保護するための保護フィルムとしての役割をし、導電部材の供給位置に合わせて開口した保護マスクを用意する必要がなくなるため、積層体の製造コストを低減できる。離型フィルムとしては、例えば、帝人デュポン株式会社製の片面離型処理PETフィルム(例えば、商品名:A-31)が挙げられる。基板同士を積層する際には離型フィルムを剥離する。
【0064】
絶縁部材に貫通孔を形成した後、絶縁部材を基板の主面に貼り合せ(ラミネート)する。次に、表面電極同士を導電部材で接続する場合、絶縁部材の貫通孔に導電部材を充填する。貫通孔に充填された導電部材は、表面電極に接している。導電部材は、基板と絶縁部材とを積層した後に貫通孔に充填されてもよく、積層前に貫通孔に充填されてもよい。例えば、第1の基板に絶縁部材を貼り合せた後に貫通孔に導電部材を充填し、その後に第1の基板及び絶縁部材に第2の基板を積層することができる。絶縁部材において、積層体を貫通する貫通孔を構成する貫通孔の形成位置に開口部が形成されていると、導電部材が当該開口部内に配置され、積層体を貫通する貫通孔を構成する貫通孔の形成時に妨げとなるため、積層体を貫通する貫通孔を構成する貫通孔の形成位置に開口部が形成されていないことが好ましい。
【0065】
導電部材を供給する方法としては、例えば、スクリーン印刷法、ディスペンサ法等により導電性ペーストを配置する方法が挙げられる。導電性ペーストとしては、例えば、金属材料をバインダ樹脂に混合することで、粘性を保ち、スクリーン印刷、ディスペンサ加工等を容易化した材料が挙げられる。このような導電性ペーストを用いる場合、導電部材の形状を保持する観点から、導電性ペースト配置後に熱処理を行うことによってバインダ樹脂の予備硬化を行うことにより導電性ペーストの粘性を高めることが好ましい。この場合、温度70~150℃、時間10~120分の範囲で熱処理を行うことができる。温度が70℃以上、又は、時間が10分以上であると、充分に粘性を高めやすく、導電性ペーストの形状を保持しやすい。温度が150℃以下、又は、時間が120分以下であると、粘性が過剰に高くなること、及び/又は、バインダ樹脂の硬化が進むことが抑制されやすく、導電性ペーストが溶融しても充分な金属間化合物が形成されやすい。導電部材の形状を保持することにより充分な接続性を確保しやすい。
【0066】
貫通孔形成工程では、第1の基板を貫通する第1の貫通孔が第1の基板に形成され、第2の基板を貫通する第2の貫通孔が第2の基板に形成され、絶縁部材が第1の基板と第2の基板との間に配置された状態で絶縁部材に貫通孔を形成して、第1の貫通孔と、第2の貫通孔と、絶縁部材の貫通孔とにより、積層体を貫通する貫通孔を形成する。絶縁部材の貫通孔は、第1の貫通孔又は第2の貫通孔を介して、絶縁部材における貫通孔から露出した部分を処理することにより形成することができる。
【0067】
絶縁部材の貫通孔の形成方法は、特に限定されない。貫通孔は、物理的処理により形成してもよく、化学的処理により形成してもよい。物理的処理としては、レーザ加工(レーザ照射)、ドリル加工(切削加工)、パンチング加工等が挙げられる。化学的処理としては、薬液処理等が挙げられる。ドリル加工では、基板の貫通孔内の導体部が削れてしまう場合がある。薬液処理により絶縁材料を溶かして貫通孔を形成する場合、基板表面の薬液付着を抑制するため、離型フィルム(例えばPETフィルム)等を貼り付けることが好ましい。レーザ加工を用いる場合では、レーザを照射して加工するため、ドリル等の切削加工に比べて、孔径又はドリル径に依らず、導体部が損傷することを抑制しやすい。そのため、絶縁部材の貫通孔の形成方法としては、レーザ加工が好ましい。
【0068】
レーザ加工におけるレーザとしては、COレーザ、UVレーザ、YAGレーザ、UV-YAGレーザ等が挙げられる。COレーザのレーザ波長が9400nmであるのに対し、UV-YAGレーザのレーザ波長は355nmであり、UV-YAGレーザの方が小径加工に優れるものの、COレーザを用いても現状の量産加工において直径50μm以上の孔を形成できる。さらに、COレーザの出力がUVレーザの出力よりも10倍以上大きいことから、COレーザの生産効率はUVレーザよりも高い。そのため、レーザとしては、COレーザが好ましい。
【0069】
以下、図3及び図4を用いて、一例として図1の積層体100の製造方法を説明する。図3及び図4は、本実施形態に係る積層体の製造方法を示す概略断面図である。
【0070】
まず、図3(a)に示すように、基板10の厚み方向に基板10を貫通する貫通孔12a~12dを有する基板10を準備する。基板10は、基板10に積層される基板(基板20)に対向することとなる主面10aを有する。
【0071】
次に、図3(b)に示すように、基板10の貫通孔12a~12dの内壁に導体部14a~14dを形成する。続いて、貫通孔12c,12dに絶縁材料を充填する。そして、基板10の主面10aにおいて、積層体100を貫通する貫通孔100a,100bを構成する貫通孔12a,12bの形成位置とは異なる位置に表面電極16a,16bを形成する。また、基板10の主面10aにおいて、積層体100を貫通する貫通孔を構成しない貫通孔12c,12dの形成位置に表面電極16c,16dを形成する。
【0072】
さらに、基板10に積層される基板として、基板10と同様の構成を有する基板20を準備する。
【0073】
次に、図4(a)に示すように、基板10の表面電極16a,16cの配置位置に対応する位置に形成された貫通孔を有する絶縁部材30を準備する。続いて、絶縁部材30を基板10の主面10aに張り付けた後に加熱・加圧する。そして、絶縁部材30の貫通孔に導電部材50a,50cを充填し、表面電極16aと導電部材50aとを接触させると共に、表面電極16cと導電部材50cとを接触させる。さらに、基板20の表面電極26a~26dが基板10の表面電極16a~16dに対向するように、基板20における表面電極26a~26dが配置された主面20aに絶縁部材30を張り付けた後に加熱・加圧する。この場合、貫通孔12aと貫通孔22aとの間の位置、貫通孔12bと貫通孔22bとの間の位置、及び、貫通孔12dと貫通孔22dとの間の位置には絶縁部材30が配置されている。
【0074】
次に、図4(b)に示すように、絶縁部材30における貫通孔12aと貫通孔22aとの間の部分に貫通孔32aを形成することにより、貫通孔12a、貫通孔22a及び貫通孔32aにより、積層体100を貫通する貫通孔100aを形成する。また、絶縁部材30における貫通孔12bと貫通孔22bとの間の部分に貫通孔32bを形成することにより、貫通孔12b、貫通孔22b及び貫通孔32bにより、積層体100を貫通する貫通孔100bを形成する。以上により、図1の積層体100を得ることができる。
【0075】
本実施形態に係る積層体100の製造方法によれば、基板10を貫通する貫通孔12a,12bが基板10に形成され、基板20を貫通する貫通孔22a,22bが基板20に形成され、絶縁部材30が基板10と基板20との間に配置された状態で絶縁部材30に貫通孔32a,32bを形成して、貫通孔12a,12bと貫通孔22a,22bと貫通孔32a,32bとにより、積層体100を貫通する貫通孔100a,100bを形成する。この場合、積層体100を貫通する貫通孔100a,100bを形成する操作を行う際に、基板10及び基板20に予め貫通孔12a,12b,22a,22bが形成されているため、絶縁部材30に加えて基板10及び基板20に貫通孔を形成する必要がない。そのため、積層体の製造工程を簡略化することが可能であると共に、積層体の製造コストが高くなることを抑制することができる。したがって、本実施形態に係る積層体100の製造方法によれば、ピン挿入型の部品を実装可能である積層体100を効率的に得ることができる。
【0076】
本実施形態に係る積層体100の製造方法によれば、基板が厚い場合であっても、小径のドリルを用いて、積層体を貫通する貫通孔を形成することができる。また、基板が厚い場合であっても、複数の基板を積層する前に予め基板に導体部が形成されているため、基板を積層した後にめっきの付き回り性を考慮する必要がない。これらにより、孔を容易に小径化できることから、基板に形成される貫通孔間の距離を増大させることができる。この場合、信号線の増加等が可能であると共に、信号線の引き回しも容易である。
【0077】
本実施形態に係る積層体100の製造方法では、貫通孔12aにおける基板20とは反対側の端部と、22a貫通孔における基板10とは反対側の端部とが、導体部14aと、表面電極16aと、導電部材50aと、表面電極16bと、導体部24aとを介して電気的に接続されていることにより、積層体100の両面を電気的に接続することができる。
【0078】
本実施形態によれば、接続信頼性に優れた積層体を得ることができる。また、基板の厚みが厚い場合であっても、ピン挿入型の部品を実装可能である積層体を効率的に得ることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、基板の積層数は、特に限定されず、3層以上であってもよい。3層以上の積層体において、2層以上の積層構造の一方面から多方面にかけて当該積層構造の全体を貫通する貫通孔が形成されていればよく、積層体の一方面から多方面にかけて3層以上を貫通する貫通孔が形成されていなくてもよい。積層体の全体を貫通する貫通孔が形成されている場合には、液体を用いた処理を積層体に施す場合であっても、貫通孔内に液体が残存することを抑制しやすい。
【実施例
【0080】
(実施例1)
樹脂層厚さ0.10mm、銅箔厚さ18μm、サイズ660mm×615mmのエポキシ樹脂系銅張積層板(日立化成株式会社製、商品名:MCL-E-679)の両面に配線回路を形成して内層基板を10枚作製した。
【0081】
次に、樹脂層厚さ0.1mm、サイズ660mm×615mmのプリプレグA(日立化成株式会社製、商品名:GEA-679)20枚を準備した。続いて、ピンラミネーション方式にて内層基板間の位置合わせを行った。そして、前記内層基板1枚と前記プリプレグA2枚とを交互に配置し、最も外側に配置された内層基板の更に外側にプリプレグB(プリプレグAと同様のプリプレグ)を1枚配置した。さらに、厚さ18μm、サイズ660mm×615mmの電解銅箔(日本電解株式会社製、商品名:YGP-18)をプリプレグB上に配置した後、真空プレス機にて加熱・加圧プレスを行い一体化した。加熱・加圧プレス後に、端面にはみ出したプリプレグの樹脂を除去するため基板サイズ605mm×500mmに切断して厚さ3.00mmの構造体Aを得た。
【0082】
次に、NC制御孔あけ機を用いて、直径0.65mmのドリルで前記構造体Aの内層位置に合わせて孔あけを行って貫通孔(直径:0.65mm)を形成した。
【0083】
次に、過マンガン酸処理で孔内のスミアを除去した後、厚付け無電解銅めっきを用いて厚さ25μmのめっき層(導体部)を形成した。
【0084】
次に、非導電性材料として孔埋め樹脂(太陽インキ製造株式会社製、商品名:THP-100DX1)を準備した後、真空印刷機を用いてスクリーン印刷法にて樹脂埋めを行った。このときの樹脂埋めは、多層配線板(最終的に得られる積層体)を貫通する貫通孔を構成する貫通孔には行わず、多層配線板を貫通する貫通孔を構成しない貫通孔に対して行った。次に、樹脂埋めした箇所を含む基板の主面全体に厚付け無電解銅めっきを行い、厚さ15μmの銅層を形成した。次に、テンティング法にて銅層をエッチングすることにより、基板における多層配線板を貫通する貫通孔を構成する貫通孔の形成位置に隣接する位置に配置された表面電極Aと、樹脂埋めした箇所に配置された表面電極B(蓋めっき)と、を有するプリント配線板を2枚作製した。
【0085】
次に、熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物からなる樹脂層(公称厚さ:0.075mm)と、樹脂層の片面に配置されたPETフィルム(厚さ:0.025mm)とを備える絶縁部材(日立化成株式会社製、商品名:AS-401HS、サイズ605mm×500mm)に対して、NC制御孔あけ機を用いて、直径0.55mmのドリルで、表面電極同士を電気的に接続するための導電部材を配置する位置に貫通孔を形成した。さらに、積層時に層間を保持するためのピンを配置する位置に貫通孔を形成した。
【0086】
次に、絶縁部材の樹脂層が第1のプリント配線板に接すると共に絶縁部材の貫通孔から表面電極が露出するように、第1のプリント配線板の一方面に絶縁部材を載せた。続いて、真空ラミネータを用いて、温度85℃、圧力0.5MPa、加圧時間30秒(真空引き30秒)の条件で加熱・加圧を行った。
【0087】
次に、電気的に接続される表面電極が露出した絶縁部材の貫通孔内に導電性材料(タツタ電線株式会社製、商品名:MPA500)を充填した。充填した孔数は12000孔であった。このとき、絶縁部材の表面に配置されたPETフィルムが保護マスクとなり、絶縁部材の貫通孔内のみにMPA500が供給され、絶縁部材における他の箇所にMPA500が付着することを防止した。
【0088】
次に、絶縁部材の表面に配置されたPETフィルムを絶縁部材から剥離した。続いて、第1のプリント配線板の貫通孔にピンを挿入して位置合わせを行った上で第2のプリント配線板を絶縁部材に重ねた後、真空プレス機にて温度180℃、圧力3MPa、時間90分のプレス条件で加熱・加圧プレスを行って構造体Bを作製した。この際、第1のプリント配線板の表面電極と第2のプリント配線板の表面電極とが対向するようにプリント配線板同士を重ねた。
【0089】
次に、レーザ孔あけ機(COレーザ)を用いて、絶縁部材におけるプリント配線板の貫通孔から露出する部分にレーザ照射を行って貫通孔(直径0.55mm)を絶縁部材に形成した。出力6.0W、周期1.0ms、パルス幅30μs、ショット数20回の条件でレーザ照射を行った。その結果、絶縁部材における2枚のプリント配線板の貫通孔間に位置する部分が除去され、多層配線板を貫通する貫通孔を有する多層配線板(積層体)が得られた。
【0090】
(実施例2)
実施例1と同様に構造体Bを製作した後、NC制御孔あけ機を用いて、直径0.45mmのドリルで、絶縁部材におけるプリント配線板の貫通孔から露出する部分に貫通孔(直径0.45mm)を絶縁部材に形成することにより、多層配線板を貫通する貫通孔を有する多層配線板(積層体)を得た。
【符号の説明】
【0091】
10,20…基板、10a,20a…主面、12a~12d,22a~22d,32a~32b…貫通孔、14a~14d,24a~24d…導体部、16a~16d,26a~26d…表面電極、30…絶縁部材、40…孔埋め樹脂、50a,50c…導電部材、100…積層体、100a,100b…貫通孔。
図1
図2
図3
図4