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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】慢性疾患をモニタする方法及び機器
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/087 20060101AFI20220413BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
A61B5/087
A61M16/00 300
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020154741
(22)【出願日】2020-09-15
(62)【分割の表示】P 2016569741の分割
【原出願日】2015-05-25
(65)【公開番号】P2021000485
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2020-10-02
(31)【優先権主張番号】2014901975
(32)【優先日】2014-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】508354647
【氏名又は名称】レスメッド センサー テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ジャヴェッド,ファイザン
(72)【発明者】
【氏名】ファルジア,スティーヴン・ポール
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/177621(WO,A1)
【文献】特表2011-510784(JP,A)
【文献】特表2012-532668(JP,A)
【文献】特開2004-113340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0177789(US,A1)
【文献】特表2006-502774(JP,A)
【文献】特表2009-532072(JP,A)
【文献】国際公開第2009/098627(WO,A1)
【文献】特開2012-000211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の慢性疾患の症状をモニタする装置を作動させる方法であって、
1以上のプロセッサが、
複数のモニタリングセッションの各々において、当該モニタリングセッション中の前記患者の呼吸を表す呼吸シグナルから呼吸症状を抽出するステップであって、前記呼吸シグナルは少なくとも1つのセンサーから得られるものである、ステップと、
前記呼吸症状の連続的な値から時系列を構成するステップと、
モニタリングセッションにおける前記患者の安定度を計算するステップであって、前記安定度は、前記時系列のサブシークエンスの2つの集合における確率分布の非類似性の程度を表し、サブシークエンスを含む前記2つの集合は、実質的に、モニタリングセッションの前後それぞれの前記時系列のサンプルから構成される、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
1以上の前記プロセッサが、前記安定度と閾値との比較に基づいた警告発生を制御するステップを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1以上の前記プロセッサが、
前記モニタリングセッションを含むそれまでの呼吸症状の値を所与として、前記モニタリングセッションのランレングスの事後分布を計算するステップと、
前記モニタリングセッションにおける前記患者の第2の安定度を、前記ランレングスの事後分布の合計値として計算するステップと
を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1以上の前記プロセッサが、前記安定度と第1の閾値との比較と、前記第2の安定度と第2の閾値との比較とに基づいて警告の発生を制御するステップを更に含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1以上の前記プロセッサが、前記安定度と第1の閾値との比較と、前記第2の安定度と第2の閾値との比較とのいずれかに基づいて警告の発生を制御するステップを更に含む請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記非類似性の程度が非類似性の対称的度合いである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非類似性の対称的度合いは、
モニタリングセッション前の時系列のサンプルから実質的になる時系列のサブシークエンスの集合における確率分布と、モニタリングセッション後の時系列のサンプルから実質的になる時系列のサブシークエンスの集合における確率分布との間のfダイバージェンスと、
モニタリングセッション後の時系列のサンプルから実質的になる時系列のサブシークエンスの集合における確率分布と、モニタリングセッション前の時系列のサンプルから実質的になる時系列のサブシークエンスの集合における確率分布との間のfダイバージェンスと
の合計である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1の確率分布と第2の確率分布との間のfダイバージェンスは、前記第2の確率分布の密度関数により重みづけされた、前記第1の確率分布の密度関数の、前記第2の確率分布の密度関数に対する比率の凸関数の積分である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記凸関数はピアソン発散である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1以上の前記プロセッサが、ガウスカーネル基底関数の加重和により密度関数の前記比率を近似するステップを更に含む請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
モニタリングセッションにおいて患者の呼吸を表す呼吸シグナルを生成するセンサーと、
複数のモニタリングセッションの各々において、前記呼吸シグナルから呼吸症状を抽出し、前記呼吸症状の連続的な値から時系列を構成し、モニタリングセッションにおける前記患者の安定度を計算するプロセッサであって、前記安定度は、前記時系列のサブシークエンスの2つ集合における確率分布の非類似性の程度を表し、サブシークエンスを含む前記2つの集合は、実質的に、モニタリングセッションの前後それぞれの時系列のサンプルから構成される、プロセッサと
を備えた慢性疾患モニタリング機器。
【請求項12】
外部コンピューティングデバイスを更に備えた請求項11に記載の慢性疾患モニタリング機器。
【請求項13】
前記プロセッサが前記外部コンピューティングデバイスの一部を構成する、請求項12に記載の慢性疾患モニタリング機器。
【請求項14】
前記プロセッサが更に、前記安定度と閾値との比較に基づいた警告発生の制御をする、請求項11に記載の慢性疾患モニタリング機器。
【請求項15】
外部コンピューティングデバイスを更に備えた請求項14に記載の慢性疾患モニタリング機器。
【請求項16】
警告発生が前記外部コンピューティングデバイスへの警告メッセージの送信を含む、請求項15に記載の慢性疾患モニタリング機器。
【請求項17】
前記センサーが非接触式動態センサーであり、前記呼吸シグナルは前記患者の呼吸運動を示すシグナルである、請求項11から16のいずれか一項に記載の慢性疾患モニタリング機器。
【請求項18】
前記機器が呼吸圧力治療デバイスであり、前記呼吸シグナルは、前記呼吸圧力治療デバイスを用いたセッションから得られる前記患者の呼吸流量率を示すシグナルである、請求項11から17のいずれか一項に記載の慢性疾患モニタリング機器。
【請求項19】
モニタリングセッションにおいて患者の呼吸を表す呼吸シグナルを生成するセンサーと、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実行する1以上のプロセッサと
を備えた慢性疾患モニタリング機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2014年5月26日出願のオーストラリア仮出願番号201490197
5の利益を主張するものである。この仮出願の全開示内容は、引用することにより本明細
書の一部をなすものとする。
【0002】
[連邦政府支援による研究開発の記載]
該当なし
【0003】
[共同研究及び開発者の名前リスト]
該当なし
【0004】
[序列番号]
該当なし
【0005】
[発明の分野]
本技術は慢性疾患の発見、診断、治療、予防、または改善の1つまたは複数に関
する。特に本技術は医療機器や機械、またその使用方法に関する。
【背景技術】
【0006】
5.2.1 ヒトの呼吸器系と呼吸器系障害
身体の呼吸器系はガス交換を促進する。鼻と口腔は患者の呼吸器の気道を形成
する。
【0007】
気道は管の連なりを含むが、これは肺の奥へ進むほど狭く短く、数も多くなっていく。
肺の主な機能はガス交換で、酸素を空気から静脈血に送り込み、二酸化炭素を放出する働
きをする。気管は左右の主気管支に分かれ、さらに終末細気管支へ分化する。気管支 は
空気を案内するがガス交換には関わらない。気道は更に分岐して呼吸細気管支に連なり、
肺胞に至る。肺胞ではガス交換が行われ、呼吸領域と呼ばれる。参考文献: 『Respirato
ry Physiology』John B. West、Lippincott Williams、Wilkins共著、第9版、2011年出版
【0008】
様々なタイプの呼吸器障害が存在する。障害は無呼吸、呼吸低下、過呼吸など特定の症
状によって特徴づけられる。
【0009】
閉鎖性睡眠時無呼吸(OSA)は睡眠呼吸障害(SDB)の一形態であり、睡眠時の上
部気道の閉塞や閉鎖により特徴付けられる。これは異常に小さい上部気道と、睡眠時の舌
、軟口蓋、口腔咽頭後壁の筋緊張の消失の組み合わせにより引き起こされる。この症状は
、患者の睡眠中、一晩につき平均30秒から120秒間、時に200秒から300秒の呼
吸停止を引き起こす。しばしば日中に異常な眠気を生じさせ、心臓血管疾患や脳障害を引
き起こす可能性もある。この症候群は特に中年の肥満男性においてよく見られる疾患であ
るが、患者は症状に気がつかない場合もある。参考:US Patent 4,944,
310(Sullivan)。
【0010】
チェーン・ストークス呼吸(CSR)は別のタイプの睡眠呼吸障害である。CSRはC
SRサイクルと呼ばれる換気の増減がリズミカルに交代で起こる呼吸調節機の障害である
。CSRは動脈血の脱酸素化と再酸素化が交互に起こることで特徴付けられる。CSRは
反復的な低酸素症のために有害であるとも言える。CSRが繰り返しの睡眠覚醒という形
で現れる患者もいる。その結果、深刻な睡眠障害が起こり、交感神経活動が活性化され、
後負荷が増大する。参考:US Patent 6,532,959 (Berthon
-Jones)。
【0011】
肺満肺胞低換気症候群(OHS)とは、低換気を起こす原因が他にない場合の、重症度
の肥満と日中に起きる慢性高炭酸ガス血症との合併症と定義される。症状には、呼吸困難
、起床時の頭痛、日中の過度の眠気が含まれる。
【0012】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は特定の特徴を共通に持つ下気道障害全てを含有する。
この特徴としては、気流抵抗の増大、呼吸時の呼気相の拡大、肺の通常の弾力性の喪失が
含まれる。COPDの例としては、気腫、慢性気管支炎が挙げられる。 COPDは習慣
的な喫煙(主要なリスク要因)、職業被曝、大気汚染や遺伝的要因により引き起こされる
。症状には、労作時呼吸困難、慢性の咳や痰の分泌が含まれる。
【0013】
神経筋疾患(NMD)は、幅広く、内在筋の病変を通じて直接的に、または神経病変を
通じて間接的に起きる筋肉機能障害と不全を指す。NMD患者は、進行性の筋肉障害から
歩行困難を起こし、車椅子生活となり、嚥下困難、呼吸筋力低下を起こし、呼吸不全によ
り死にいたる。神経筋障害は急速に起こる場合と緩やかに起こる場合に分けられる。(i
)急速進行系障害:数ヶ月で筋肉障害が悪化し、数年で死に至る(例:筋萎縮性側索硬化
症(ALS)、若年性のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD))。(ii)可変的
な、または緩徐進行性の障害:数年で筋肉障害が悪化し、平均余命がやや低下する(例:
肢体、顔面・肩甲・上腕筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー)。NMDで起こる
呼吸器障害の症状には、全身衰弱、嚥下困難、労作時及び安静時呼吸困難、疲労、眠気、
起床時の頭痛、集中力の低下と気分のムラが含まれる。
【0014】
胸壁障害は胸部変形の一種で、呼吸筋と胸郭の非効率な結合が引き起こされる。通常、
拘束性障害によって特徴づけられ、長期間の高炭酸ガス性呼吸不全を合併する可能性があ
る。脊柱側弯と後弯症は重度の呼吸器障害を引き起こすことがある。呼吸器障害の症状と
しては、労作時呼吸困難、末梢浮腫、起座呼吸、反復性肺感染症、起床時の頭痛、疲労、
睡眠の質の減少、食欲不振が含まれる。
【0015】
心不全(HF)は比較的ありふれた重度の病状であり、心臓の能力が身体の酸素需要に
追いつかない状態により特徴付けられる。心不全の管理はその罹患率と重症性のため、現
代の医療制度にとって重大な挑戦である。HFは慢性疾病であり、事実上急速性である。
HF の進行はしばしば、比較的長期間にわたる安静状態(心血管機能の低下にも関わら
ず)と、急性の発作による中断により特徴付けられる。この急性発作の間、患者は呼吸困
難(呼吸が難しくなる)、ギャロップリズム、頸静脈圧の上昇、起座呼吸を経験する。典
型的な場合だと、この時に明白な鬱血(肺空洞への体液増量)を伴う。この過度の体液は
数キロの体重増加として測定できる。しかし、明白な鬱血が起こった時には医師の側には
患者を安定させる手段はほとんど残されていない場合が多く、多くの場合患者は入院が必
要となる。極端な場合、適時治療がないと、患者は急性非代償性心不全(ADHF) 、
時に代償不全と呼ばれる状態になる。
【0016】
5.2.2 治療
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療には、経鼻持続的気道陽圧法(CPAP)が採用
されている。仮説では、持続的気道陽圧が空気スプリントのように作用し、軟口蓋と舌を
前面に押し出し、後口腔咽頭壁から離すことにより、上気道閉塞を防ぐことになる。
【0017】
非侵襲性換気(NIV)は、上気道を通して患者に換気補助を提供し、身体の呼吸仕事
量を受け持つことで患者が十分に息ができるようにし、且つ、または同時に適度な酸素レ
ベルを維持する。換気補助は非侵襲性患者インターフェイスにより行われる。NIVはC
SR、OHS、COPD、MD、胸壁障害の治療に用いられている。
【0018】
5.2.3 治療システム
上記で挙げた治療法は治療システムまたは機器により提供される。システム及び機器は
、治療せずに症状の診断をする際にも用いられることがある。
【0019】
治療システムは呼吸圧力装置(RPTデバイス)、空気回路、加湿器、患者インターフ
ェイス、データ管理から構成される。
【0020】
5.2.3.1 患者インターフェイス
患者インターフェイスは、例えばエアフローを送り込んだり、呼吸装置とユーザーを結
びつけるものとして使用される。エアフローは鼻及び、または口へのマスク、口腔へのチ
ューブ、ユーザーの気管へ挿入した気管カニューレにより送り込まれる。どの治療方法を
適用するかによって、患者のインターフェイスが形成される。例えば患者の顔面部であれ
ば、周囲圧力と対抗するように十分に分散させた圧力、例えば陽圧約10cmHOでガ
スを送り込むのを容易にし、効果的な治療に結びつける。他の形式の治療、例えば酸素を
送り込む場合、患者インターフェイスは、陽圧約10cmHOでの気道へのガス提供を
容易にする程度に密閉されない可能性がある。
【0021】
5.2.3.2 呼吸圧力治療(RPT)装置
空気圧ジェネレータは工業用換気システムなど、幅広い応用で知られている。しかし、
医療用空気圧ジェネレータは、医療機器に必要とされる信頼度、サイズ、重量などに置い
て、一般的な空気圧ジェネレータでは満たされない特定の条件を必要とする。加えて、医
学治療用にデザインされたデバイスであっても、快適さ、騒音、使いやすさ、効率性、サ
イズ、重量、製造可能性、コスト、信頼性などの点で1点、あるいは複数の欠点を含むこ
とがある。
【0022】
5.2.3.3 加湿器
加湿機なしにエアフローを送り込むと、気道の乾燥を引き起こすことがある。RPT機
器及び患者インターフェイスに加湿機を加えると、鼻粘膜の乾燥を最低限に抑え、患者の
気道の快適度を上昇させる加湿性ガスが発生する。涼しい地域では、加えて、暖かい空気
が顔面部に送り込まれ、患者のインターフェイスが冷たい空気にさらされずにより快適に
なる。
【0023】
5.2.4 モニタリングシステム
HF代償不全やCOPDの悪化といった起こりうる臨床兆候を予防し、または緩和する
ために、HF又はCOPDの患者の自宅でのモニタリングに関心が集まっている。臨床兆
候を予測する目的のために提案されている、または使用されている症状としては、体重、
Bナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベル、夜間の心拍数、寝相が含まれる。睡眠ポリ
グラフィー検査(PSG)は心肺障害のモニタリングとして従来から用いられているシス
テムである。典型的なPSGでは、脳波図(EEG)、心エコー検査(ECG)、眼電図
(EOG)などの様々な身体的シグナルを記録するために、人体の15から20か所にコ
ンタクトセンサーを設置する。
【0024】
HFは睡眠呼吸障害(SDB)と高い関連性を示している。特にチェーンストークス呼
吸(CSR)は一般的に身体の呼吸調節系が不安定であることから生じるが、この原因の
1つは心疾患である。CSRの重症度は一連の症状により示されるが、これは睡眠時の呼
吸が典型的なCSRの症状、例えば「チェーンストークスのような」症状とどの程度似て
いるかどうかを示唆する。加えて、OSAの重症度を示す特徴、例えば無呼吸/低呼吸指
数(AHI)は独立して、ADHFイベントによる死亡予測因子、または同イベントのた
めの入院措置の予測因子として用いられる。SDBの症状に見られるような値や変異は、
ADHF症状の起こりやすさに関して有益な情報を含んでいる。マスクや口鼻カニューレ
など、睡眠時に呼吸パラメータをモニタリングし分析し、SDBの兆候を抽出することの
できるコンタクトセンサーのモダリティは、慢性の心肺疾患のモニタリングの文脈で提案
されている。植え込み型センサーも、ADHF症状を予測する目的で、胸郭インピーダンスや
心不整脈のモニタリングに使用されている。
【0025】
HFのモニタリングシステムは上記のようなセンサーモダリティを土台にしているが、
患者自身による毎日の体重の記録に依存した体重ベースのモニタリングシステムのように
患者のコンプライアンスが必要となること、あるいは、ウェアラブルであること(これは
長期間のモニタリングには非現実的である)、あるいは、侵襲性が高いことのいずれかに
より、不満足な結果となる傾向が高い。植え込み式デバイスの使用は、そのようなデバイ
スが使用可能な一部の限られたHF患者にしか適さない。
【0026】
SleepMinder(ResMed Sensor Technologies社
、ダブリン、アイルランド)は、慢性疾患を長期間モニタリングするのに適した、非接触
型のベッドサイドモニターである。SleepMinderは、極度低出力(1mW以下
)で5.8GHzのライセンスフリー周波でドップラーレーダーの原則に則り生体運動を
感知するセンサーを備えている。SleepMinderは距離が0.3から1.5メー
トル以内の範囲で身体運動、特に呼吸運動を測定することができる。2人の人間がベッド
にいる場合、洗練されたセンサーデザインとインテリジェントシグナル処理を取り合わせ
(combination)、SleepMinderはセンサーに近い方の人間の呼吸運動のみを
測定する。SleepMinderは 障らない測定であり、重要なコンプライアンスの
問題を示していないように、慢性疾患を長期間モニタリングするのに適している。
【発明の概要】
【0027】
本技術は、快適性、コスト、効能、使いやすさ、製造可能性の面で1点、あるいは複数
の改善が必要とされる心肺疾患、またはその他の慢性疾患のモニタリングに使用される医
療機器を対象とする。
【0028】
本技術の第一の側面は、心肺疾患またはその他の慢性疾患のモニタリング用機器に関連
する。
【0029】
本技術の別の側面は、心肺疾患またはその他の慢性疾患のモニタリング方法に関連する
【0030】
本技術の一形態は、慢性疾患モニタリング機器を構成する。この機器は、各モニタリン
グセッションにおいて、患者の呼吸シグナルから呼吸症状を抽出し、複数のモニタリング
セッションから得られた呼吸症状の連続的な値からなる時系列の統計的分析により安定度
(stability measure)を計算する。安定度は、モニタリングセッション時に生じる、呼
吸症状の統計的分布における変動ポイントの度合い(indication)を示すものである。安
定度がある基準に達した場合、警告が発せられる。
【0031】
本技術の別形態は、慢性疾患モニタリング方法を構成する。これは、安定度を変動ポイ
ントの度合いとして計算するステップを含む。この変動ポイントは、複数のモニタリング
セッションにおいて患者の呼吸シグナルから抽出された呼吸症状の連続的な値からなる時
系列の確率分布において生じるものである。安定度は、呼吸症状の統計的分布における、
モニタリングセッション時に起こる変動ポイントの度合いを示す。分布において変動ポイ
ントが検出された場合、警告が発せられる。計算方法はレトロスペクティブまたはオンラ
インである。
【0032】
本技術の一番目の側面によると、慢性疾患状態の患者をモニタリングする方法を提供す
る。この方法は以下のように構成される。まず、各モニタリングセッションに対して、モ
ニタリングセッション間の患者の呼吸を表す呼吸シグナルから得られた呼吸症状をプロセ
ッサ匂いて抽出すること。この呼吸シグナルは少なくとも1台以上のセンサーから感知さ
れる。そしてモニタリングセッションのため患者の安定度を測定し、プロセッサで計算す
ること。この安定度は、呼吸症状の統計的分布における、モニタリングセッション時に起
こる変動ポイントを表す。
【0033】
第二番目の側面は、慢性疾患のモニタリング機器を提供する。機器は、モニタリングセ
ッション間の患者を表す呼吸シグナルの生成を設定するセンサー、及び一番目の側面によ
る治療手法を設定するためのプロセッサから構成される。
【0034】
第三番目の側面は、患者の慢性疾患状態をモニタリングする治療方法を提供する。この
方法は、1つ、または複数のプロセッサにより実行され、以下により構成される。まず、
各モニタリングセッションに対して、モニタリングセッション間の患者の呼吸を表す呼吸
シグナルから得られた呼吸症状をプロセッサにおいて抽出すること。この呼吸シグナルは
少なくとも1台以上のセンサーから感知される。そして呼吸症状の連続した値からなる時
間軸を設定すること。そしてモニタリングセッションにおける患者の安定度を計算するこ
と。安定度は、時系列のサブシークエンスの2つの集合での確率分布の非類似性を表す。
この2つの集合は実質上、モニタリングセッション前後それぞれの時間軸でのサンプルに
より構成されるサブシークエンスからなる。
【0035】
第4番目の側面によると、慢性疾患モニタリング装置が提供される。この装置は、モニ
タリングセッション間の患者の呼吸を表す呼吸シグナルの生成を設定するセンサー、第三
番目の側面による方法の実行を設定するプロセッサから構成される。
【0036】
第5番目の側面によると、患者の慢性疾患状態をモニタリングする方法が提供される。
この方法は、1つ、または複数のプロセッサにより実行され、以下により構成される。ま
ず、各モニタリングセッションに対して、モニタリングセッション間の患者の呼吸を表す
呼吸シグナルから得られた呼吸症状をプロセッサにおいて抽出すること。この呼吸シグナ
ルは少なくとも1台以上のセンサーから感知される。そして、モニタリングセッションに
おける患者の安定度を計算すること。この安定度は、呼吸症状の統計的分布における、モ
ニタリングセッション時に起こる 変動ポイントを表す。この計算は、モニタリングまで
、またモニタリングセッションまで、またセッション中の呼吸症状の値を所与とした、モ
ニタリングセッションのランレングス内の事後分布、そして、ランレングスの事後分布の
合計値により構成される。
【0037】
第6番目の側面はによると、慢性疾患モニタリング機器が提供される。この機器は、モ
ニタリングセッション間に患者の呼吸が表す呼吸シグナルの生成を設定するセンサー、そ
して第5番目の側面による方法の実行を設定するプロセッサにより構成される。
【0038】
もちろん、ここで示した側面の一部は本技術のあらゆる側面を形成するものもある。ま
た、サブ側面及び、もしく本側面の様々なものがいろいろな方法で組み合わさることもあ
るし、加えて本技術の追加的側面または副側面を構成することもある。
【0039】
本技術の他の特性は、以下の詳細説明、要約、図及び請求などに含まれた情報により、
検討対象として詳しく載せておく。
【0040】
本技術は例の形で表されているが、この例に限定はされない。下記の参考番号は添付ド
図面に書いてある番号である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】[7.1 治療システム] 図1は本技術の一形態に従って治療システムを示す。患者1000は患者インターフェイス3000を着用し、RPTデバイス4000から陽圧で空気の供給を受ける。RPTデバイス4000からの空気は加湿器5000により加湿され、空気回路4170を通じて患者1000に送り込まれる。
図2】[7.2.呼吸システムと顔面解剖学] 図2は鼻腔及び口腔、喉頭、声帯、食道、気管、気管支、肺、肺胞嚢、心臓及び横隔膜などを含んだヒトの呼吸システムの概要である。
図3】[7.3 患者インターフェイス] 図3は本技術の一形態に従った鼻腔マスクの形をとった患者インターフェイスを表す。
図4A】[7.4 RPTデバイス] 図4Aは本技術の一形態に従った時の RPT デバイスを表す。
図4B図4Bは本技術の一形態に従った時の、図4Aに示したデバイスを空気圧力の道筋を表した模式図である。上流と下流の方向が図示されている。
図4C図4Cは本技術の一形態に従った時の、図4Aに示したRPTデバイスの電気部品の模式図である。
図5】[7.5 加湿器] 図5は本技術の一形態に従った時の加湿器を表した等角図法でである。
図6A】[7.6 呼吸波形] 図6Aは睡眠中のヒトの呼吸波形モデルを示す。
図6B図6Bは患者のノンレム睡眠時の約90秒間における呼吸を調べた睡眠ポリグラフィー検査データを示す。
図6C図6CはOSA患者の睡眠ポリグラフィー検査データを示す。
図6D図6Dは患者が閉塞性無呼吸を連続して経験した際の患者のフロー(空気流量)率のデータを示す。
図6E図6Eはチェーンストロークス呼吸を伴う患者の睡眠ポリグラフィー検査データを示す。
図7A】[7.7 モニタリング機器] 図7Aは本技術の一形態に従った時の睡眠患者のモニタリング機器を表す。
図7B図7Bはモニタリング機器をブロック図で表し、図7Aを詳細化したものである。
図7C図7Cは本技術の一形態に従って、図7Bのモニタリング機器により実行された、慢性疾患状態の患者をモニタリングする方法を表したフローチャートである。
図7D図7Dは本技術の一形態に従って、図7Cの方法により、抽出作業を実装する際に用いる方法を示したブロック図である。
図7E図7Eは本技術の一形態に従って、オンラインアプローチで図7Cの方法により、安定度計算ステップを実装する際に用いる方法を示したブロック図である。
図7F図7Fは本技術の一形態に従って、レトロスペクティブアプローチで図7Cの方法により、安定度計算ステップを実装する際に用いる方法を示したブロック図である。
図8図8図7Cの方法を用いて図7Aのモニタリング機器から得られた結果を例として示したグラフを含む。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本技術を詳細に説明する前に、本技術は、個人差はあるものの、ここで説明する特定の
事例への適用にとどまらないことを理解されたい。また、この開示で用いる用語は、ここ
で特定の事例を説明する目的にのみ用いたもので、それに用途を限定する意図はないこと
を理解されたい。
【0043】
以下で説明する機器及び方法は、特に循環器系疾患に適したものであり、その用語によ
り説明される。しかし、ここで説明する機器と方法は患者の呼吸器に影響するその他の慢
性疾患のモニタリングにも応用できる。
【0044】
8.1 モニタリング機器と方法
8.1.1 非侵襲性モニタリング機器
図7Aは、本技術の一形態に従った時の、非侵襲性モニタリング機器7000を表す。
このモニタリング機器7000は、睡眠中の患者1000の隣接部、比較的近いところに
設置される(例:ベッドサイドテーブル)。
【0045】
図7Bは、本技術の一形態に従った時の、モニタリング機器7000をブロック図で、
図7Aを詳細にしたものである。モニタリング機器7000では、非接触型の動態センサ
ー7010を含む非接触型のセンサーユニット1200が、直接患者1000の方向を向
く。動態センサー7010は患者1000の身体運動を表す1つまたは複数のシグナルの
生成を設定し、そこから患者の呼吸運動を表す1つまたは複数の呼吸運動シグナルが取り
出される。
【0046】
センサーユニット1200はまた、マイクロコントローラーユニット(MCU)700
1と、メモリ7002(例:メモリーカード)を含み、データを記録する。実装では、セ
ンサーユニット1200は外部コンピューティングデバイス7005へのデータ移動を設
定する通信回路7004を含む。これは例えばローカル接続の一般目的用コンピューター
、リモートサーバー、コネクション7008経由接続などの形になる。コネクション70
08は有線の場合も無線の場合もありうるが、その場合通信回路7004は無線機能を備
え、直接的または間接的にローカルネットワークもしくはインターネットのような広域ネ
ットワーク(ここでは示していない)に接続される。
【0047】
センサーユニット1200は、動態センター7010によって生成されたプロセスを設
定するプロセッサ7006を含む。以下の詳細で説明する。
【0048】
センサーユニット1200は、視覚的フィードバックのユーザーへの提供を設定するデ
ィスプレイデバイス7015を含む。実装では、ディスプレイデバイス7015は1つま
たは複数の警告ライトを備える(例:複数の発光ダイオード)。このディスプレイデバイ
ス7015は、LCDまたはタッチスクリーン式画面のようなディスプレイスクリーンの
実装を備える。ディスプレイデバイス7015の操作は、患者の循環器系機能の評価をも
とに、プロセッサ7006により制御される。ディスプレイデバイス7015は、モニタ
リング機器7000のユーザー、例えば患者1000、医師、その他の医療従事者などに
情報を提供するように操作される。ディスプレイデバイス7015はまた、モニタリング
機器7000の操作用にグラフィックユーザーインターフェイスを示す。
【0049】
センサーユニット1200はまた、プロセッサ7006の制御の下、ユーザーへの音声
フィードバックの提供を設定する音声アウトプット7017(例:呼吸により周波数の異
なるトーン、一定の条件を満たした際に鳴る警告音)を含む。
【0050】
モニタリング機器7000の操作に関するユーザーコントロールは、コントロール操作
(ここでは示されていない)を基にするが、この操作はモニタリング機器7000のプロ
セッサ7006により感知される。
【0051】
センサーユニット1200の一例は、ResMed Sensor Technolo
gies Ltdが製造したSleepMinderデバイスである。これは非接触型の
ドップラー型無線周波(RF)動態センサー7010を備えている。
【0052】
本技術の一形態として、例えばSleepMinderデバイスをセンサーユニット1
200として使用した場合、動態センサー7010は、RFシグナル7060の送信を設
定するRF送信機7020を備える。送信されたシグナル7060は、例えば以下のよう
な形をとる。
【数1】
【0053】
数式1では、搬送周波数をf(通常100MHzから100GHzの間をとる。例:
3GHz~12GHz、5.8GHz~10.5GHz)、時間をt、任意の位相角をθ
、パルス波形をu(t)とする。連続波システムでは、マグニチュードu(t)はユニタ
リーのことがあり、数式1からは省略することもできる。より一般的には、パルスu(t
)は数式2のように定義される。
【数2】
【0054】
ここでTは区間幅、Tはパルス幅を指す。T<<Tの時に、これはパルス連続波シ
ステムとなる。一例では、Tが最小値に近づくと、発生するシグナルのスペクトラムが
大きくなるが、この時のシステムを超広帯域(UWB)レーダーあるいはインパルスレー
ダーと呼ぶ。代替的に、RF伝達シグナル7060が送信する搬送周波数が変化して(チ
ャープ値になって)、いわゆる周波数変調連続波(FMCW)システムが生まれる。
【0055】
ラジオ周波シグナル7060は、ローカル発振機7040とパルスゲート用回路とをつ
なげた送信機7020によって生成される。FMCWの場合、電圧制御された発振機が、
電圧周波数コンバーターと一緒に使用され、送信用にRFシグナル7060を作る。アン
テナ7050により、送信されたRFシグナル7060が空気と結合される。アンテナ7
050は全方向性(送信力は全方向に対しほぼ等しい)もしくは指向性(送信力は特定の
方向性を指向する)である。機器7000においては指向性アンテナ7050の使用が望
ましい。そうすると、送信また反射されたエネルギーは主に一方向から来ることになる。
機器7000の実装では、1台のアンテナ7000が単一の搬送周波数で、送信機702
0と受信機7030の両方に用いられる。また、複数の受信及び送信アンテナ7050を
複数の搬送周波数で用いることもできる。
【0056】
機器7000は、単純なダイポールアンテナ、パッチアンテナ、螺旋アンテナなど、様
々な実施形態のアンテナ7050と互換性がある。アンテナの選択は、必要となる方向性
、サイズ、形、コストなどの要因により影響される。機器7000はヒトが使用する際安
全に操作されなければならないことを明記しておく。機器7000はシステム全体として
平均電力1mW(0dBm)以下の出力を見せている。RF曝露について推奨される安全
レベルは1mW/cmである。0dBmで送信中のシステムから1メートル離れた場所
において、同程度の出力密度はこの推奨制限値の100倍以下となっている。
【0057】
使用の際、送信RFシグナル7060は電波を反射する物質(例えば患者1000のエ
アー身体インターフェイス)を反射する。反射されたシグナル7070の一部は受信機7
030が受信する。シグナルは送信機7020と結びつくか、または「バイスタティック
」設定という形で送信機7020から分離する。受信シグナル7070と送信シグナル7
060はミキサー7080で一緒になり、(アナログまたはデジタル形式で)増殖する。
ミキサー7080は(下(数式3)で示すような)乗数の形か、もしくは乗数の結果が近
似値となった回路の形をとる(例:正弦波を加えた包絡線検出器)。例えば、CWの場合
だと、混合シグナルはこのようになる。
【数3】
【0058】
ここでφ(t)は送信及び受信シグナル7060と7070(反射物が単体である場合
)の行路差から生じるフェーズ項である。γは反射シグナル7070によって生じた減衰
である。反射物体が固定されると、γ(t)も固定される。機器7000では、反射物体
(例:患者1000の胸部)は常に動いており、φ(t)は時間により変動する。単純な
例では、胸部が呼吸のために周波数fについて正弦曲線を描いたら、混合シグナルm(
t)はfに対する成分を含有する(及び2fを原点とした要素。ただしこれは低減フ
ィルターによって排除される)。混合後、低減フィルターを通したシグナルは、運動シグ
ナルまたは復調センサー運動シグナル7003となり、全体的な身体(非呼吸器系)運動
と呼吸運動についての情報を含む。
【0059】
復調センサー運動シグナル7003の偏角は、反射シグナルの平均路程距離により影響
を受け、動態センサー7010(例:動態センサー7010がおおよそ感知する箇所)で
ヌル値とピーク値を検知する。この効果は求積法を使うと最低限に抑えることができる。
ここで、送信機7020は、(求積法で)90度の損失角のシグナルと、数式1のシグナ
ル7060を同時に送信する。結果、2つの反射角ができ、両方が混合し、ミキサー70
80で低減フィルターにかけられる。これらは2つの復調センサーシグナルとなり、それ
ぞれのI、Q「チャンネル」から、「Iシグナル」と「Qシグナル」と呼ばれる。運動シ
グナル7003はこれらのうち片方、または両方のシグナルから構成される。
【0060】
UWBの実装では、運動シグナル7003を獲得する代替方法が使用される。最上位の
エアー身体インターフェイスまでの路程距離は、送信パルスとピーク反射シグナルピーク
の間のディレイの測定によって決定される。例えば、パルス幅が1nsで、動態センサー
7010から身体までの距離が0.5メートルの時、受信機7030にパルスのピーク反
射が届く前のディレイは1/(3×10)s=3.33nsとなる。多数のパルス(例
:1μsにつき1nsパルス)を送信し、路程距離は所与の時間内に緩やかに変化してい
くと想定した場合、運動シグナル7003は所与の時間軸内でのディレイ時間の平均値と
して計算できる。
【0061】
こうして、動態センサー7010は、例えば無線周波数センサーのように、胸部壁の呼
吸運動、または、より一般的には機器7000でモニターしている患者1000の身体部
分の運動を推定できる。
【0062】
上記で記載したように、受信シグナル7070は、身体運動全体の結果など、大きな運
動を行っている物質を含む。これは、身体から発せられる反射シグナルは2つ以上の反射
路を含有しており、結果的に複雑なシグナルになっているためである(例えば片手がセン
サー方向に、胸部が別方向に動いている場合)。このようなシグナルの受信は、上半身が
動いていることを表すという意味で有用であり、睡眠状態の決定に役立つ。
【0063】
呼吸運動シグナル、またより一般的な身体運動シグナルの質を向上させるため、センサ
ーユニット1200により集められた反射エネルギーによる物理体積は様々な方法で制限
される。例えば、センサーユニット1200は、受信機7030のアンテナのように、「
方向選択的」(つまり、一定の方向によりエネルギーを送信するように)にすることがで
きる。方向選択性は方向性アンテナ7050、または複数のRF送信機7020を使うこ
とで可能になる。本技術の代替形態では、連続波、FMCW、またはUWBレーダーが同
様のシグナルの調達に使われる。「タイムドメインゲーティング」と呼ばれる技術は、反
射シグナル7070の測定にのみ用いられるが、このシグナルはセンサーユニット120
0から一定の物理的距離にて生じたシグナルから生じるものである。周波数ドメインゲー
ティング(フィルタリング)はまた、一定周波数以上の反射物体の運動を無視する時にも
用いられる。
【0064】
機器7000の実装では、複数の周波数(例:500MHzと5GHz)を使うが、位
相アンビギュイティを起こさずに大きな動きを正確に特定するには定周波数が用いられる
。位相アンビギュイティは高周波センサーシグナル(これは小さな動きを感知するのに適
している)から削除することもできる。このようなセンサーユニット1200を使い、機
器7000は患者1000から情報を集め、その情報を用いて呼吸運動及びより一般的な
身体運動の情報を決定する。
【0065】
運動シグナル7003は各モニタリングセッションにおいてセンサーユニット1200
のメモリ7002に保管され、同時に/または、リンク(例:コネクション7008)を
通じて外部コンピューティングデバイス7005に送信され、保管される。実装では、各
モニタリングセッションの持続時間は一晩である。
【0066】
センサーユニット1200のプロセッサ7006、また外部コンピューティングデバイ
ス7005は、以下に詳細を説明するようなモニタリングプロセスにより、蓄積された運
動シグナル7003を処理する。記載するプロセスは、例えばセンサーユニット1200
のメモリ7002のように、コンピューターで読み取れる記憶媒体により保管され、例え
ばセンサーユニット1200のプロセッサ7006などのプロセッサにより読み取られ、
実行される。
【0067】
8.1.2 代替モニタリング機器
本技術の別形態として、図1に示したような、患者インターフェイス3000を使い、
患者1000に空気回路4170を通した呼吸圧力治療の提供を設定するRPTデバイス
4000もまた、モニタリング機器として設定される。
【0068】
患者インターフェイス3000は、シール形成構造3100、プレナム・チャンバ32
00、位置決定及び固定構造3300、ベント3400、空気回路4170へ接続するた
めの接続ポート3600、前頭部サポート3700の機能実装から構成される。形式によ
っては、機能実装は1つ、または複数の物理的要素から提供される。形式によっては、1
つの物理的要素が1つ、または複数の機能的実装を提供する。使用においては、シール形
成構造3100は、患者の気道入り口を囲い込むように設置され、気道に陽圧で空気が入
り込むのを容易にする。
【0069】
RPTデバイス 4000は機械的空気圧部品4100、電子部品4200から構成さ
れ、1つ、または複数のアルゴリズム4300を実行する。RPTデバイスは外部ハウジ
ング4010を備え、上部4012と下部4014により形成されるのが望ましい。更に
、外部ハウジング4010は1つまたは複数のパネル4015を含む。RPTデバイス4
000は、RPTデバイス4000の1つまたは複数の内部要素をサポートするシャーシ
4016を備えているのが望ましい。RPTデバイス4000はハンドル4018を含む
【0070】
RPTデバイス4000の空気圧経路は、1つまたは複数の空気経路備品を備えている
ことが望ましい。例としては、吸気エアフィルター4112、吸気マフラー4122、陽
圧で空気を供給できる圧力ジェネレータ4140、(できれば送風機4142)、呼気マ
フラー4124、圧力センサー4272またはフロー(空気流量)センサー4274のよ
うな1つまたは複数の変換機4270があげられる。
【0071】
1つあるいは複数の空気経路備品は、空気圧ブロック4020と呼ばれる取り外し可能
なユニタリー構造の中に設置される。空気圧ブロック4020は外部ハウジング4010
内に設置される。一形態では、空気圧ブロック4020はシャーシ4016に支持される
か、その一部となる。
【0072】
RPTデバイス4000は電源4210、1つあるいは複数のインプットデバイス42
00、中央制御コントローラー4230、治療デバイスコントローラー4240、圧力ジ
ェネレーター4140、1つあるいは複数の保護回路4250、メモリ4260、変換器
4270、データ通信インターフェイス4280、1つあるいは複数のアウトプットデバ
イス4290を備えるのが望ましい。電子部品4200は単一のプリント板ユニット(P
CBA)4202に取り付けられる。代替形態では、RPTデバイス4000は1つある
いは複数のPCBA4202を含む。
【0073】
本技術の一形態では、中央制御コントローラー4230はRPTデバイス4000を制
御するのに適した複数のプロセッサである。適切なプロセッサはARMホールディングス
が販売しているARM(登録商標)Cortex(登録商標)-Mプロセッサを土台とし
たx86INTELプロセッサで、例としてはSTマイクロエレクトロニクス社が出して
いるSTM32シリーズのマイクロコントローラーが挙げられる。本技術の代替形式では
、32ビットRISC CPU、例えばSTマイクロエレクトロニクス社のSTR9シリ
ーズのマイクロプロセッサ、16ビットRISC CPU、例えばテキサス・インスツル
メンツ社のMSP430マイクロプロセッサも適切である。
【0074】
本技術の一形態では、中央制御コントローラー4230は専用電子回路である。一形態
では、中央制御コントローラー4230は特定用途向け集積回路である。別形態では、中
央制御コントローラー4230は個別電子部品から構成される。
【0075】
中央制御コントローラー4230は、1つまたは複数の変換器4270と、インプット
デバイス4220からインプットシグナルを受信するように設定される。
【0076】
中央コントローラー4230は1つあるいは複数のアウトプットデバイス4290、治
療デバイスコントローラー4240、データ通志ニンターフェイス4280、そして加湿
器5000にアウトプットシグナルを送信するように設定される。
【0077】
本技術の形式の中には、中央制御コントローラー4230は1つまたは複数のプロセス
を実装するように設定される。このプロセスは、ここで説明するようにコンピュータープ
ログラムの形で表示され、例えばメモリ4260のような、非一時的なコンピューター読
み取り可能な形式のストレージ媒体に記憶される。
【0078】
データ通信インターフェイス4280は、外部リモート通信ネットワーク4282及び/または外部ローカル通信ネットワーク4284と接続可能になっている。外部リモート通信ネットワーク4282は、外部リモートデバイス4286と接続可能になっている。外部ローカル通信ネットワーク4284は外部ローカルデバイス4288と接続可能になっている。データ通信インターフェイス4280は、有線通信(例:イーサネット、光ファイバー)もしくは無線プロトコル(例:CDMA、GSM、LTE(登録商標))でインターネットと接続する。
【0079】
一形式では、外部ローカル通信ネットワーク4282は、1つあるいはブルートゥース(登録商標)のような複数の通信標準、または民生用赤外線プロトコルを利用する。外部ローカルデバイス4288はパソコン、携帯電話、タブレット、あるいはリモコンになる。
【0080】
一形態では、外部リモート通信ネットワーク4282はインターネットとなる。一形態
では、外部リモートデバイス4286は、例えばネットワークでつないだコンピューター
群のような、1台または複数のコンピューターとなる。一形態では、外部リモートデバイ
ス4286は本物のコンピューターではなく、仮想コンピューターとなる。いずれの場合
も、医療従事者のように適切な権限を保持する者がこのような外部リモートデバイス42
86にアクセス可能となる。
【0081】
アウトプットデバイス4290は視覚、聴覚、触覚のいずれかのユニットの形をとる。
ビジュアルディスプレイは液晶(LCD)リキッドクリスタルディスプレイもしくは発光
ダイオード(LED)ディスプレイとなる。ディスプレイドライバー4292はディスプ
レイ4294に表示されることを意図した文字、記号、画像をインプットの形で受信し、
変換し、ディスプレイ4294がこうした文字、記号、画像を映し出すように命令する。
ディスプレイ4294はディスプレイドライバー4292から受信した命令に対し、文字
、記号、画像を視覚的に映し出すように設定される。
【0082】
8.1.3 モニタリングプロセス
本技術の一側面において、モニタリング機器は、患者の心肺機能を呼吸シグナルからモ
ニターするモニタリングプロセスを実行する。この呼吸シグナルは患者1000の呼吸が
表すものである。
【0083】
本技術の一形式では、モニタリング機器は図7Bに示した非侵襲性機器7000であり
、呼吸シグナルは運動シグナル7003から生じる呼吸運動シグナルである。モニタリン
グプロセスは、非接触性センサーユニット1200の中のプロセッサ7006によって実
行されるが、このセンサーは、例えばメモリ7002のような、コンピューター読み取り
可能の記憶媒体に記憶されたインストラクションによって設定される。代替では、外部コ
ンピューターデバイス7005のプロセッサがここで示したモニタリングプロセスの一部
、あるいはすべてを実装し、上記で説明したようなコネクション7008を通して、機器
7000のセンサーユニット1200と他のセンサーから、ローデータ、あるいは部分的
に加工された形で、必要なデータを取り込む。このような実装では、モニタリング機器7
000のビジュアルディスプレイ7015と音声アウトプット7017に関する上記説明
は、外部コンピューティングデバイス7005の同等要素に適用されることになる。一例
では、外部コンピューティングデバイス7005は、医療関係者がアクセスできるデバイ
スで、複数の患者のモニタリングができる。医療関係者はモニタリング機器7000のよ
うな複数の離れた場所にいる患者のデータを記録しているデバイスからデータをレビュー
することができる。このようなシステムでは、患者のモニタリングデータを記録するため
にデータベースが提供される。このような外部コンピューティングデバイス7005を通
して、特定の患者に緻密な観察が必要であったり、病院への搬送が必要とされる際に、医
療従事者はレポートや警告を受信する。
【0084】
本技術の一形式では、モニタリング機器はRPTデバイス4000であり、呼吸シグナ
ルは、1台あるいは複数の変換機4270から得た患者1000の呼吸フロー(呼吸流量
)率Qrを表す。モニタリングプロセスは、RPTデバイス4000の中央制御コントロ
ーラー4230によって実行されるが、これはメモリ4260のようなコンピューター読
み取り可能の記憶媒体に記憶されたインストラクションによって設定される。代替として
は、ローカルまたは外部リモートデバイス4288または4286がここで示した加工の
一部あるいはすべてを実装し、上記の説明のように、データ通信インターフェイス428
0を通して、RPTデバイス4000からローデータで、あるいは部分的に加工された形
で必要なデータを取り込む。このような実装では、RPTデバイス4000のアウトプッ
トデバイス4290のアウトプット機能は、ローカルあるいは外部リモートデバイス42
88または4286の同等要素に適用され、実行される。
【0085】
図7Cは方法7100を図式化したフローチャートで、本技術の一形態に従ってモニタ
リングプロセスを実装する際に用いられる。方法7100は各モニタリングセッションの
終わりに、そのセッションに該当する記録された呼吸シグナルにおいて実行される。
【0086】
方法7100はステップ7110から開始する。ここでは、呼吸シグナルは前処理され
ている。前処理ステップ7110(図7Cでダッシュ付きで示している)は任意であり、
方法7100からは削除することもできる。次のステップ7120では、(おそらく前処
理されている)呼吸シグナルが分析され、1つまたは複数の呼吸症状を抽出する。抽出さ
れた呼吸症状は、センサーユニット1200の中のメモリ7002あるいは外部コンピュ
ーターデバイス7005の中のメモリのようなメモリに記録される。
【0087】
ステップ7130での方法7100は、完了したばかりのモニタリングセッションから
抽出された呼吸症状と、1つあるいは複数の、以前のモニタリングセッションから抽出し
た呼吸症状を用いて、安定度を計算する。このいわゆる安定度、もしくはセッションベー
スの逐次計算による安定度の履歴は、例えばセンサーユニット1200の中のメモリ70
02、あるいは外部コンピューティングーデバイス7005の中のメモリ、あるいはまた
は安定度を計算するプロセッサに付随するメモリの1つまたは複数に記録される。ステッ
プ7130で計算された安定度は、起こりうる臨床兆候の予測因子となる。ここで、安定
度の変動(例:悪化の上昇)は、患者の症状における悪化を意味する時があり、臨床兆候
の予測因子として働く。安定度はまた、患者の症状が向上した場合にも変動するが(例:
好転の上昇)、これも慢性疾患をモニタリングする際の調査対象である。
【0088】
安定度はステップ7140で評価され、例えば1つまたは複数の閾値との比較とした時
に基準を満たしているかが決定される。例えば、安定度はステップ7140で、例えばプ
ロセッサにおいて、閾値と比較される。安定度が閾値を超えていた場合(「Y」)、変動
点が検知され、ステップ7150は警告を発生する。超えていなかった場合 (「N」)
、方法7100はステップ7160で終了する。閾値の選択は起こりうる臨床兆候を検出
する際のモニタリングプロセスの感度と特異性に影響し、モニタリングプロセスがトレー
ニングデータの下で実行された時、希望したレベルの感度と特異性を元に選択される。実
装では、観察された偽陽性及び偽陰性の検出を元に、モニタリングセッション間に閾値が
調整される。ステップ7140でのその他の評価は、安定度が特定の値域内に見られるか
どうかを、例えば1つまたは複数の値域で、1つまたは複数の閾値がどこに点在するかを
比較することで決定する。従って、オートメーション化されたモニタリングプロセスは、
処理を通して、一見無難な呼吸シグナルのデータを、患者のモニタリングのためのツール
に効果的に変換する(例:安定度)。このモニタリングシステムは、モニタリング機器だ
けでなく、タイムリーかつ必要な治療の変更が可能になるといった点で患者をより効果的
にモニターすることができると言う点で、現場の医療従事者の能力も向上させる。
【0089】
本技術の一形態では、モニタリング機器は非侵襲性モニタリング機器7000であり、
非接触性動態センサー7010はドップラーRF動態センサーである。上記のように、こ
のような実装では、運動シグナル7003はIシグナルとQシグナルの2つから構成され
る。通常それぞれが身体運動を表すが、一般的にそれぞれ90度位相がずれる形になる。
【0090】
運動シグナル7003がIシグナルとQシグナルを構成する時、幾つかのアプローチが
可能である。「パラレル」アプローチでは、ステップ7110と7120がそれぞれIと
Qシグナルにおいて同時に実行され、別々に集められた症状が症状抽出ステップ7120
の最後に結合される。パラレルアプローチの実装では、前処理ステップ7110は省略さ
れる。「結合」アプローチでは、IシグナルとQシグナルは前処理ステップ7110の一
部として結合され、処理ステップ7120から7130までは結合された運動シグナルの
上で実行される。正確さが下がるというコストが発生する可能性はあるが、結合アプロー
チはパラレルアプローチよりも計算上複雑でないという利点がある。
【0091】
代替として、非接触性動態センサー7010は単独運動シグナル7003を感知する。
これは「単独チャンネル」アプローチと呼ばれる方法で操作される。
【0092】
以下のセクションでは、図7Cに詳細を示したモニタリング方法7100のステップの
実装について説明を行う。
【0093】
実装ステップ7110と7120は、本技術の一形態において説明されるが、ここでモ
ニタリング機器は図7Bのモニタリング機器7000を示す。本技術の形式において、モ
ニタリング機器は図4AのRPTデバイス4000であり、前処理ステップ7110は省
略される。呼吸症状抽出ステップ7120は呼吸フロー(呼吸流量)シグナルQrの標準
形式で実行される。
【0094】
ステップ7130から7150までの実装は、本技術の上記形式をの両方を包括する。
【0095】
[前処理]
結合アプローチの下では、前処理ステップ7110はIシグナルとQシグナルの結合か
ら開始される。ここでは幾何学的手法が適応され、結合運動シグナルcとなる。実装では
、サブステップが組み合わせられて3つの段階を構成し、IシグナルとQシグナルに沿っ
て開いていくウィンドウに適用される(例:時間が経つと一定量のデータ(ウィンドウサ
イズ)を徐々に処理していく)。実装では、ウィンドウは50%重複しながら10秒間連
続する。
a. 相互相関を使った時、シグナルが180度位相がずれているかどうかを確認し
、ずれている場合は同象限に戻す。
b. ベクトル(I,Q)が準円軌道に沿ってクラウド型にポイントを作っていく時
、クラウドの平均を弧の中心(0,0)から減き、両方向に対して中心クラウドの位置の
最低値mIQを特定する。mIQとして表される、それぞれのベクトル(I,Q)の長さ
mを計算する。
【数4】
【数5】
c. mの平均値を減算し、結合シグナルc(1次元)を算出する。
【数6】
【0096】
結合運動シグナルcはトレンド除去され、遊走する基線が削除される(任意)。実装で
は、トレンド除去は三次多公式を用いて実行される。
【数7】
【0097】
別の実装では、トレンド除去はダブルパス・メジアンフィルタリング方法を用いて実行
される。
【0098】
トレンド除法で得たシグナルcは、値域が呼吸機能の波動域に合う形でバターワース
・バンドパスフィルターにより(任意に)バンドパスフィルターをかける。実装では、[
0.1Hz,0.8Hz]となる(1分間につき6~48呼吸に相当)。
【0099】
前処理ステップ7110の更なる(任意の)サブステップは、ノイズリダクションであ
る。実装では、特にドップラーRF動態センサー7010のシグナルに適した形では、非
定常ではあるが、ノイズリダクションサブステップは、(バンドパスフィルターをかけら
れた)トレンド除法で結合した運動シグナルcにおけるウェーブレット変換領域におい
て実行される。
【数8】
【0100】
ここでWはウェーブレット変換を示す。例えば係数30の「symmlet」ウェーブ
レットは第5項まで拡大する。Mはマスキング行列を示し、特定のウェーブレット係数を
通過するが、「摂動的」と見なされたものは排除する。
【0101】
Mの実行に関する実装ステップについては以下の通りである。
a. ウェーブレット係数の「人工性(artefactness)」(以下参照)が最初の閾値
以上のところで、二項基準を選択する。
b. この基準から、標準偏差を元に(閾値Tを用いて)ウェーブレット係数のハ
ード閾値法を行う。
【0102】
「人工性」は、当該範囲内で人工性がシグナルに与える影響の程度の測定値を数値で表
したものである。人工性は、ありえないほど高度の振幅値を含むシグナルの歪度である。
シグナルxの人工性は以下のように計算できる。
【数9】
【0103】
ここでσはシグナルxの標準偏差である。Art(x)が1より遠ざかるほど、人工
性が大きくなる。
【0104】
パラレルアプローチでは、サブステップのコンビネーションは前処理ステップ7110
から省略される。それに続くサブステップ(トレンド除法、フィルタリング、ノイズリダ
クション)のいずれも、または全ては、IシグナルとQシグナルのそれぞれで同時に行わ
れる。
【0105】
単独チャンネルアプローチでは、トレンド除法、フィルタリング、ノイズリダクション
といったサブステップのいずれも、あるいは全ては、運動シグナル7003において行わ
れる。
【0106】
下記の説明では、前処理ステップ7110の任意的性質を反映するため、抽出ステップ
7120へのインプットは、(前処理された)運動シグナルとして示す。
【0107】
[呼吸症状の抽出]
図7Dは方法7200のブロック図であり、本技術の一形態での図7Cの方法における
症状抽出ステップ7120を実装する際に用いられる。
【0108】
方法7200では、活動推定及び運動探知モジュール7210は 運動係数シグナルと
運動フラグ連を(前処理された)運動シグナルから生成する。(結合、あるいは単独チャ
ンネルアプローチでは、(前処理された)運動シグナルは一つしかない。)存在/不在探
知モジュール7220は、(前処理された)運動シグナルと運動フラグ連から、存在/不
在フラグ連を生成する。睡眠/覚醒分析モジュール7230は、存在/不在フラグ連、運
動フラグ連、運動係数シグナルからヒプノグラムを計算する。呼吸率推定モジュール72
40は、(前処理された)運動シグナルとヒプノグラムから、患者の呼吸率の連続推定値
を生成する。シグナル選択モジュール7250は、運動フラグ連とヒプノグラムを用いて
、(前処理された)運動シグナルの区域を選択する。
【0109】
モジュレーションサイクル測定モジュール7255は、(前処理された)運動シグナル
のうち選択された区域から、患者の呼吸のモジュレーションサイクル時間の推定値を生成
する。エンベロープ発生モジュール7260は、推定呼吸率を用いて、(前処理された)
運動シグナルのうち選択された区域のエンベロープを生成する。SDBイベント検知モジ
ュール7265は、推定されたモジュレーションサイクルの長さを用いて、(前処理され
た)運動シグナルのうち選択された区域から、SDBイベントの候補を生成する。SDB
イベント確認モジュール7270は、推定されたモジュレーションサイクルの長さを用い
て、SDBイベント検知モジュールにより生成されたSDBイベント候補を確認する。最
後に、症状予測モジュール7280は、確認されたSDBイベントから呼吸症状値を計算
する。
【0110】
パラレルアプローチでは、方法7200のモジュール7210から7270は単純に繰
り返す形で、2つの(前処理された)運動シグナル7003を独自に処理する。症状予測
モジュール7280の修正版は、SDBイベントを結合し、2つの並行した処理の流れか
らSDBイベントを結合し、2つの(前処理された)運動シグナルから一つの呼吸症状を
計算する。
【0111】
方法7200のモジュール7210 から7280は、ResMed Sensor
Technologies社によって同時係属出願中のPCT出願番号PCT/AU20
13/000564に詳細が記載されている。これはWO2013/177621、「心
肺機能モニタリングの方法と機器」として公開されている。この全体内容は、参照に組み
込まれている。
【0112】
実装では、症状抽出ステップ7120は各モニタリングセッション匂いて4つの呼吸症
状を抽出する。
・SDBイベントの合計数
・呼吸率の中央値(平均)
・呼吸率の第三四分ぐらい数
・CSRサイクルの継続時間の第三四分位数
【0113】
[安定度の計算]
呼吸症状による臨床兆候の予測は、大多数の安定しているセッションの中で極めて少数
のイベントを有する非常に不均衡なデータ集合の例である。そのため、偽陽性予測の数を
最小にするために、ロバストなアプローチが必要とされる。本技術では、患者が安定して
いるときには、呼吸症状は1つの統計的分布に従い、臨床兆候前のある時点で「変動ポイ
ント(又は変化ポイント)(change point)」を超え、別の分布になっていくと仮定する
。そのため、安定度の計算は、tというインデックスが付けられたモニタリングセッショ
ンにおける分布の変化が、tというインデックスが付けられた該モニタリングセッション
又はその付近における安定度の上昇をもたらすものとなるように行われる。言い換えると
、あるセッションでの安定度は、当該セッションにおける呼吸症状の分布において発生し
た変動ポイントの度合いである。そのため、本技術のステップ7130は実際、分布ベー
スである。安定度の計算に対する分布ベースのアプローチは、分類ベースのアプローチと
比べて、偽陽性が低い(特定率が高い)結果となっている。
【0114】
ステップ7130での安定度計算における2つのアプローチについて以下に記載する。
オンラインまたは逐次的アプローチは、原則として、呼吸症状の分布における変動ポイン
トを、起こった瞬間に探知することができる。すなわち、モニタリングセッションtが終
わり次第、モニタリングセッションtでの安定度を計算するために十分なデータが入手可
能となる。オンラインアプローチは、急激に発生する臨床兆候を緩和あるいは防止するの
に最適である。例えば、分布における変動ポイントと臨床兆候発生の間のディレイは1週
間である。
【0115】
レトロスペクティブアプローチは、選択したパラメータにより、1週間から2週間のデ
ィレイで呼吸症状の分布における変動ポイントを検知することができる。レトロスペクテ
ィブアプローチは、より緩やかに発生する臨床兆候を緩和あるいは防止するのに最適であ
る。例えば、分布における変動ポイントと臨床兆候発生との間のディレイは2~3週間で
ある。
【0116】
各アプローチは連続値としての時系列{y(t)}また{y}、サンプルyを形成し
、分析する。サンプルyは(整数の)モニタリングセッション数tを指数とした時に抽出
された呼吸症状のうち1つを指す。(整数の)モニタリングセッションの指数tは、よく
「時間t」短縮形として表されるが、この場合の時間とはモニタリングセッションのユニ
ットとして理解されたい。
【0117】
[オンラインまたは逐次的アプローチ]
オンラインアプローチはベイジアンオンライン多重変化点検知(Bayesian on-line cha
nge point detection、BOPCD)をベースとする。オンラインアプローチは時間tに
おけるランレングスrと呼ばれる量を扱う。これはrと記され、インプットされたサン
プル分布における最後の変動ポイント以降のサンプルyの数として定義される。オンラ
インアプローチでのステップ7130は、時間tを含むそれまでの全サンプルyを所与
として、時間tにおけるランレングスrの事後分布を計算する。これらのサンプルは短
縮形
【数10】
として表され、計算されたランレングスの事後分布は
【数11】
と表される。現在のランに属するサンプル
【数12】
は、短縮形
【数13】
として表される。
【0118】
ランレングスの事後分布
【数14】
は、ランレングスrtにおける結合尤度
【数15】
を標準化(normalise)して計算される。
【数16】
【0119】
結合尤度
【数17】
は短縮形でγtと表され、γt
【数18】
と置くことで、その前値γt-1から計算される。この
【数19】
はrt-1の周辺化により展開される。
【数20】
【0120】
数式11の合計値における第1因子p(rt | rt-1) は、ランレングスにおける前提条件であ
り、同時に前提変動ポイントも示している。実装では、前提変動ポイント p(rt | rt-1)
はゼロ以外の値を2つしかとらない。
【数21】
【0121】
最初のゼロ以外の値(rt = 0)は、ランレングスrt-1後に発生する変動ポイントの確率H(rt
-1+1) である。もう一つのゼロ以外の値(for rt = rt-1+1)は、その補数であり、例えば
、現在のランがセッションを終えて大きくなるように、rtがrt-1よりも大きくなる確率を
示す。関数H(rt-1+1) は「ハザード関数」と呼ばれる。実装では、ハザード関数H(rt-1+1
) は所定の固定値h (「ハザード率」として知られる)で、これは(「無記憶」プロセスと
呼ばれる)rt-1からは独立して、時間スケール1/h の時の、ランレングスの幾何分布を引
き起こす。実装では、ハザード率h は1 / 90に設定される。これは、モニタリングセッシ
ョン90の時間スケールにつき1変動ポイントということを意味する。
【0122】
数式11の合計値における第2因子
【数22】
は、事後予測確率として知られている。これまでの全サンプル
【数23】
とこれまでのランレングスrt-1を所与とした時の、現在のサンプルytの観測確率であるた
めである。事後予測確率
【数24】

【数25】
と省略できる。これは現在のランに属しているこれまでのサンプル
【数26】
にのみ依存しているためである。
【0123】
基本予測モデル(UPM) は、時間軸{yt}のモデルであり、事後予測確率
【数27】
を計算する時に使われる。オンラインアプローチによる実装では、UPMは、単体でガウス
サンプル分布と一致したものをベースとする。
【数28】
【0124】
ここで、平均値μと分散σ2は全変動ポイントで変動する。一つの実装例では、平均値μ
及び分散σ2は、正規分布と逆ガウス分布からそれぞれ導き出される。
【数29】
【0125】
このため、UPMはノーマル・インバース・ガンマ(NIG)モデルと呼ばれる。(NIG)モデルの
パラメータμ0, κ0, α0, 及び β0 により、ノーマル・インバース・ガンマ・モデルが
トレーニングデータに適しているかが決定される。
【0126】
時間tにおける事後予測確率を計算するには、最初にUPMのパラメータを1から現在の時間t
まで全時間においてアップデートする。
【数30】
【0127】
次にNIGモデルの分散σ2 を計算する。
【数31】
【0128】
最後に、事後予測確率
【数32】
を計算する。
【数33】
【0129】
余談として、時間tにおけるランレングスの事後分布
【数34】
は、全サンプル
【数35】
を所与として、次のサンプルyt+1の周辺予測分布(marginal predictive distributi
on)
【数36】
の計算に用いられる。周辺予測分布
【数37】
は、ランレングスrt上での事後予測確率
【数38】
の周辺化により、ランレングス rt における不確実性を保全する方法で計算される。
【数39】
【0130】
ランレングスrt各値における事後予測確率
【数40】
は、上記に記したようにUPMから計算される。
【0131】
オンラインアプローチの下での安定度Stは、時間t において、前回の変移点が検知された
時以降に生じた変動ポイントの可能性として計算される。この確率は、前回の変動ポイン
トが検知された時点から可能性のある全ランレングスにおける、ランレングス事後分布
【数41】
の合計値として計算される。つまり、合計値は、ゼロから現在時間tまでのランレングスr
tの全ての値を計算し、前回の変動ポイントの時間を差し引くことで得られる。
【数42】
【0132】
ただし、時間tより前の、過去の変動ポイントは、時間tにおいて検出されたものであ
る(前回の警告時間t0は、変動ポイントが検出される前にゼロに初期化される)。
【0133】
本技術の一形態では、下記に説明するように、ユーザーインターフェイスを通して、医療
従事者がモニタリング機器7000にマニュアルの警告をつけることができる。外部コンピュ
ーティングデバイス7005と接続しているこのユーザーインターフェイスは、外部コンピュ
ーティングデバイス7005が受信し、あるいは計算した呼吸症状から医療者が検知したもの
をベースとしている。このようなマニュアル警告が発せられた場合、前回の警告時間t0
値がマニュアル警告が出た時間にアップデートされる。
【0134】
図7Eは方法7300を表したフローチャートを含み、本技術の一形態によるオンラインアプロ
ーチ下での図7Cで示した方法7100の安定度計算ステップ7130 の実装時に使われる。方法7
300は、各モニタリングセッション後に1作用ずつ、インタラクティブに実行される。
【0135】
ステップ7310での方法7300は、実装においては結合尤度
【数43】
(すなわちγt)は1に初期化される(例:t = 0の時の値が代入される)。ステップ7310は
方法7300の最初の反復の時にしか実行されないため図7Eではダッシュで示されている。ス
テップ7320では、現在時間 t が増加し、現在のサンプルyt が受信される。ステップ733
0が続き、そこでは方法7300が UPMを使って現在の事後予測確率
【数44】
を、数式15から17を使って現在のサンプルyt を計算する。次にステップ7340 が現在の結
合尤度
【数45】
を、数式11を使って、前回の結合尤度γt-1 と現在の事後予測確率
【数46】
から計算する。ランレングスrtがゼロに等しいとき、数式11の合計はt 項ある。しかし、
ゼロ以上のランレングス値rtについては、数式11の合計値は1項しか存在しない。すなわ
ち、前の変動ポイント(数式12)がゼロ以外の時、rt-1 はrt-1 = rt-1という、1つの値
しか示さない。この事実は、オンラインアプローチの計算的効率性を示している。
【0136】
次のステップ7350では、数式10で示したように現在の結合尤度
【数47】
を標準化することで、方法7300が現在のランレングス事後分布
【数48】
を計算する。次にステップ7360は、数式19を使って、現在のランレングス事後分布
【数49】
から現在の安定度Stを計算する。方法7300はこれで終了する。
【0137】
[レトロスペクティブアプローチ]
レトロスペクティブアプローチのステップ7130は、特定の時間の前後における時間軸{y(t
)}でのサブシークエンスの確率分布を比較することにより行われる。レトロスペクティブ
アプローチ下でのステップ7130は、2つの分布の間の非類似性として、安定度を計算する
【0138】
表記上、時間軸{y(t)}における長さkのサブシークエンス
【数50】
を、以下のように定義する。
【数51】
【0139】
ここで、k はレトロスペクティブアプローチのパラメータとなる。各サブシークエンス
【数52】
はk成分のベクトルとして扱われるが、ここで成分ベクトルは結合分布から得たk-次元の
サンプルである。時間tによるn個の連続したサブシークエンス
【数53】
の集合Ψ(t) は以下のように定義される。
【数54】
【0140】
ただし、nはレトロスペクティブアプローチの更なるパラメータである。n個のサブシー
クエンス
【数55】
の集合Ψ(t)の確率分布は、Ptと書かれる。
【0141】
レトロスペクティブアプローチでは、分布Pと、n個のサブシークエンスの集合Ψ(t
+n)の分布Pt+nとの間の対称的非類似性Dを計算する。ただし、nは集合Ψ(t
)より後のサンプルである。一つの実装では、対称的非類似性Dは、2つの分布PとP
’の間の非類似性の尺度D(P||P’)を利用する。これは、f発散(fダイバージ
ェンス)(f-divergence)として知られ、以下のように定義される。
【数56】
【0142】
ここで、f はf(1)=0となるような凸関数であり、
【数57】
及び
【数58】
は分布PとP’それぞれの確率密度関数(密度)である。対称的非類似性Dsは、分布Ptと分
布Pt+nとの間のf発散Df(Pt ||Pt+n)と、分布Pt+nと分布Ptとの間のf発散Df(Pt+n||Pt)と
の合計として計算される。
【数59】
【0143】
対称的非類似性Ds は、PtとPt+n間の対称的非類似性Dsが、Pt+nとPt間の対称的非類似性D
sと同じであることからこのように呼ばれる。一般的に、数式22のf-発散Df はこの意味で
は対称的ではない。対称的類似性Ds は数式23により計算され、PtとPt+n間のf-発散Df
またはPt+nとPt間のf-発散Dfが高い時に高い値をとる。対称的非類似性 Ds は従って、変
動ポイントを検知するにあたり、PtとPt+n間のf-発散Dfのみ、またはPt+nとPt間のf-発散
Df のみよりもより繊細である。よって、PtとPt+n間の対称的非類似性 Ds は、時間t+nに
おける患者1000の安定度St+nとして使用される。Ptをモニタリングセッションt+n開始前
の時間軸{y(t)}でのサンプルによるサブシークエンス
【数60】
を構成する集合Ψ(t)の確率分布、Pt+nをモニタリングセッションt+n開始後の時間軸{y(t
)}でのサンプルによるサブシークエンス
【数61】
を構成する集合Ψ(t+n) の確率分布とした時、PtとPt+n間の対称的非類似性の値が高い時
、時間軸{y(t)}における変動ポイントは、モニタリングセッション(t+n-1)と(t+n)の間に
起こりうる可能性が高いことを示す。
【0144】
数式23を用いてモニタリングセッションt+nにおける安定度St+nを評価するためには、時
間軸t+2n+k-2まで、またこの時点でのサンプルy(t)が必要となる。言い換えると、サンプ
ルy(T)が時間軸Tで受信された時、レトロスペクティブアプローチによる安定度Sは時間軸
T-n-k+2において計算される。よって、レトロスペクティブアプローチによると、時間軸T
における最も直近のサンプルy(T)を用いて安定度Sの上昇が計算された場合、これは、時
間Tより約n+k-2前のモニタリングセッションにおいて変動ポイントが発生したということ
を意味する。つまり、レトロスペクティブアプローチでは、n+k-2サンプルのディレイが
起こる。
【0145】
実装では、f-発散(数式22)の定義中の凸関数は、カルバック・ライブラー情報量であり
、f(t) = t log(t)と定義される。別実装では、凸関数は、ピアソン発散であり、二次関
数で定義される。
【数62】
【0146】
数式24のピアソン発散f(t)から数式22を引くと、ピアソン非類似率DPEが得られる。
【0147】
分布Pt、Pt+nにおける密度
【数63】
及び
【数64】
はわからないため、対称的非類似性Dsは直接的には計算できない。レトロスペクティブア
プローチでの実装では、集合Ψ(t)とΨ(t+n)からそれぞれ密度
【数65】

【数66】
を推定し、その後数式22と23を当てはめて推定密度から対称的非類似性Dsを計算する従来
的な方法を用いている。しかし、従来的な密度推定方法は次元数(この場合はk)が増加し
てしまうため、正確にならない傾向が高い。
【0148】
レトロスペクティブアプローチの代替実装では、
【数67】

【数68】
間の密度比を推定する。密度比は密度
【数69】

【数70】
を別々に計算するよりも容易であり、比較的正確性が高い。
【0149】
密度比
【数71】
はカーネル基底関数の加重和により近似値が出る。
【数72】
【0150】
ここで、カーネル基底関数K はガウス関数である。
【数73】
【0151】
カーネル幅σ はクロス確認をベースに決定され、重みまたは係数θlはパラメータn-ベク
トル
【数74】
の成分である。カーネル中心
【数75】
では、n 個のサブシークエンス
【数76】
が集合Ψ(t)を構成する。
【0152】
数式25における密度比
【数77】
を所与とした最適パラメータベクトル
【数78】
は、近似値として、近似値
【数79】
を二重損失を経た真の密度比gに合わせることで出すことができる。 これは、以下の目的
関数Oをパラメータベクトル
【数80】
上で最小化させるのに等しい。
【数81】
【0153】
ここで、
【数82】
はn行n列の行列であり、 (l, l’)個目の成分H(l, l’) は以下により得られる。
【数83】
【0154】
ここで、
【数84】
はn 個のサブシークエンス
【数85】
であり、これらが集合Ψ(t+n)を構成する。ベクトル
【数86】
はn-ベクトルで、l個目の成分h(l)は以下により得られる。
【数87】
【0155】
数式27の目的関数の最終項はペナルティ項で、λを正則化パラメータとした時の正則化目
的のために含まれている。
【0156】
数式27の目的関数は、以下によって得られるパラメータベクトル
【数88】
により最小化される。
【数89】
【0157】
数式22のピアソン非類似性DPE(Pt||Pt+n)は以下のように概算される。
【数90】
【0158】
ピアソン非類似性DPE(Pt+n||Pt) は、同様のやり方で、サブシークエンス
【数91】

【数92】
を交換することにより、
【数93】
に近似することができる。結果となる近似値
【数94】
は近似値
【数95】
に加算され、非類似性
【数96】
が得られる。これが、レトロスペクティブアプローチ下での安定度St+n となる。
【0159】
図7Fは方法7400を図式化したフローチャートを含み、本技術の一形態によるレトロスペク
ティブアプローチ下で、図7Cにおける方法7100の安定度計算ステップ7130を実装する際に
使われる。
【0160】
方法7400はステップ7410から開始される。これは、サブシークエンスの2つの集合
【数97】

【数98】
からなり、それぞれ数式21に従い、集合Ψ(t) と集合Ψ(t+n)を構成する。これらのサブ
シークエンスの定義により、方法7400は時間軸t+2n+k-2において、またはその後に実行さ
れる。ステップ7420がそれに続き、数式28と29、またカーネル定義数式26を使って、行列
【数99】
とベクトル
【数100】
が 計算される。次のステップ7430では、数式30が適用され、パラメータベクトル
【数101】
が計算される。それに続くステップ7440では、方法7400がパラメータベクトル
【数102】
を用いて、数式31と25を使ってピアソン非類似性DPE(Pt||Pt+n)の近似値を計算する。
【0161】
ステップ7450では、サブシークエンス
【数103】

【数104】
が交換される。ステップ7460、7470、7480が 交換されたサブシークエンス
【数105】

【数106】
において ステップ7420、7430、7440 の加工を繰り返し、ピアソン非類似性DPE(Pt+n||Pt
)の近似値を得る。最後に、ステップ7490において、近似値DPE(Pt||Pt+n) と DPE(Pt+n||
Pt) が加算され、非類似性a DS(Pt||Pt+n)を得ることになるが、これがレトロスペクティ
ブアプローチでの時間軸t+nにおける安定度St+nとなる。
【0162】
方法7400の実装では、パラメータn and k はそれぞれ10と5となる。よって、レトロスペ
クティブアプローチでのディレイはn+k-2 = 13 サンプルとなる。カーネル幅σと正則化
パラメータλは、クロス確認によって算出される。2つの離散した候補集合から得られた
値は、サブシークエンス
【数107】

【数108】
の集合Ψ(t) と Ψ(t+n) からランダムに選ばれた複数の部分集合の中から、数式27の目
的関数を最小化する。
【0163】
[結合アプローチ]
ステップ7130の結合アプローチは、上記で説明したオンライン安定度とレトロスペクティ
ブ安定度の両方を計算し、警告を発生する。結合アプローチの実装では、結合アプローチ
は、オンライン安定度が最初の基準(例:1つまたは複数の閾値比較)を満たし、レトロ
スペクティブ安定度が同時に2番目の基準(例:1つまたは複数の閾値比較)を満たした
時に警告を発生する。結合アプローチの別の実装では、結合アプローチは、オンライン安
定度が最初の基準(例:1つまたは複数の閾値比較)を満たした時、またはレトロスペク
ティブ安定度が2番目の基準(例:1つまたは複数の閾値比較)を満たした時に警告を発
生する。
【0164】
[警告発生]
ステップ7150で発生した臨床警告は、様々な側面での警報または警告メッセージを含む。
例えば、患者1000に対し臨床警告を発するプロセッサ7006は、モニタリング機器7000の表
示ランプを(例:ディスプレイデバイス7015にLEDまたはアイコンの形で)点灯させる。
症状の評価に関するより詳細なメッセージは、ディスプレイデバイス7015において、患者
1000に表示される。任意として、プロセッサ7006は同時に、または代替として、コネクシ
ョン7008を通して医療従事者と結びついている外部コンピューティングデバイス7005に警
告メッセージを発する。このようなメッセージは有線あるいは無線の形をとる。例えば、
プロセッサ7006は自動的に呼び出し装置にダイアルする形で、呼び出しシステムを通して
警告メッセージを発生する。プロセッサ7006はまた、電話の自動音声装置をかけるように
も設定できる。プロセッサ7006はFax送信による警告送信も可能である。実施形態の中に
は、プロセッサ7006はインターネットメッセージプロトコル、例えば電子メールやその他
のインターネットデータファイル交換プロトコルによる警告メッセージ送信も可能なもの
もある。警告メッセージは患者の情報を機密にするため暗号化される。典型的な警告メッ
セージは患者を特定可する可能性がある。このようなメッセージはモニタリング機器7000
で記録された患者データや、あるいはその他の患者情報を記録したデータを含む可能性が
ある。任意に、実施形態によっては、警告メッセージは患者に追加的な治療、入院措置、
起こりうる臨床兆候の検知による査定が必要かどうかについても伝達する。
【0165】
プロセッサ7006は、患者に対してはモニタリング機器7000のディスプレイデバイス7015を
通し、医療従事者にはコネクション7008を通して警告メッセージを伝えるが、ある実施側
面では、警告メッセージをより選択的に伝えることもできる。例えば、最初の警告メッセ
ージは、コネクション7008を通して、外部コンピューティングデバイス7005に対し送られ
ることで、ディスプレイデバイス7015には警告を表示することなく、医療従事者にのみ送
信される。しかし、2番目の警告メッセージは、より緊急なものであった場合、外部コン
ピューティングデバイス7005に加えてディスプレイデバイス7015にも能動的に表示される
。プロセッサ7006によりコントロールされた付属のスピーカーからの音声警告も実装でき
る。音声警告の使用は警告メッセージの緊急度合いによるであろう。
【0166】
本技術の一形態では、付属の外部コンピューティングデバイス7005におけるユーザーイン
ターフェイスを用いて、医療従事者はモニタリング機器7000にマニュアルで警告を発生す
ることができる。これは、医療従事者が外部コンピューティングデバイス7005で受信した
呼吸症状を精査したものをベースとする。
【0167】
[クエリ]
本技術の別形態では、プロセッサ7006は不必要な警告の発生を回避するために患者のクエ
リに対する回答として警告を調整する。方法7100の変形として、ステップ7150のようにす
ぐに警告を発生するのではなく、安定度が基準に達した場合(ステップ7140)に、プロセ
ッサ7006が患者1000に対し、処方された薬を飲むなどの行動を起こすように促す。または
、回答を入力するように、患者1000に対するクエリの表示を誘発する。プロセッサ7006に
よりコントロールされたディスプレイデバイス7015は、患者1000に対しクエリを提示し、
患者1000にユーザーインターフェイスを使って回答をインプットするように促す。提示さ
れる質問はデータベースにより選択されるか、またはモニタリング機器7000の中のメモリ
7002のデータ構造などのデータ構築された質問群から選択される。プロセッサ7006は次に
、クエリに対する受信回答を評価する。この評価により、プロセッサ7006はステップ7150
において警告を発生するか、警告を中止するか、加えて/または、警告の発生を遅らせて
、追加クエリへの回答を保留とする。 このような追加クエリは、一定時間後、次の変動
ポイントが確認された後、またはモニタリング機器7000が次に使用された後に誘発される
。本技術の一形式では、ステップ7150は、警告メッセージを医療従事者と接続した外部コ
ンピューティングデバイス7005に送信する作用を構成するが、受診したクエリへの回答が
その代わりに外部コンピューティングデバイス7005を通して送られ、医療従事者が手動で
評価する。この評価により、医療従事者は警告を維持するか中止するか決定する。
【0168】
このようなクエリは偽陽性の減少に有用である(例:警告が患者への臨床的介入につなが
る場合、また臨床的介入が後に不必要であったとわかる場合)。患者行動の変化による偽
陽性もあり、これは医療介入なしで修正できる。このような行動としては、医薬品の飲み
忘れ、間違った服用、食事療法及び/または睡眠時間へのノンコンプライアンス、と言っ
たものがある。クエリの質問は薬剤の、及び/またはライフスタイルのコンプライアンス
について患者に尋ねるものである(例:患者は処方された薬を服用しているか、医師の治
療指示に従っているかなど)。任意的に、幾つかの場合では、1つあるいは複数の質問に
より、モニタリング機器7000の操作整合性を問うこともできる。これにより、受信してい
る呼吸シグナルが妥当なものかどうか確認できる。任意的に、プロセッサ7006は、所定の
時間内(1回または複数のモニタリングセッション)にクエリを続行することもでき、所
定の時間が経過した時にのみ警告を発生することもできる。
【0169】
オンラインアプローチの下では、もしもプロセッサ7006が検知した変動ポイントへの対応
として警告を中止した場合、または発生した警告が後に医療従事者によりマニュアルでキ
ャンセルされた場合、プロセッサ 7006が前回の警告時間t0を、(数式19を用いて)前回
警告が発生された時間に戻す。
【0170】
[事例の結果]
図8はグラフ8000を含み、方法7100を使用した際のモニタリング機器7000から得られた事
例を示す。上部トレース8010は、上記に示した呼吸症状の一つ、具体的には、tでインデ
ックスされた400セッションの中での、セッション中の呼吸率第三四分位数を示す。灰色
のバンド8015は、28セッションのインターバルを示す。これは患者がおおよそセッション
数182において経験したADHFイベント(上向き矢印8020により示されている)を対照的に
取り囲む。下部トレース8050はセッションt のピークを示しており、ここではレトロスペ
クティブアプローチで計算された安定度Stが閾値を超えている。つまり、ステップ7150に
より警告が発生される。特に2つのピーク8060は ADHFイベントと一致している。その他の
ピーク、例えば8070は、ADHFイベントとは一致しておらず、そのため「偽陽性」として表
現される。
【0171】
[用語集]
本技術を公開する目的において、本技術の形式では以下の定義を適用する。本技術のその
他の形式では、代替的な定義が適用されることもある。
【0172】
[概要]
空気:本技術の形式では、空気は大気圏の空気を意味する。本技術の他の形式では、空気
は呼吸可能な気体との結合物を指す(例:大気圏の空気に酸素が混入したもの)。
【0173】
持続的気道陽圧法(CPAP):CPAP治療は、一定の圧力で気道の入り口に空気を供給する方法
を指す。この圧力は空気に対し持続的に陽性であり、患者の呼吸サイクルを通しておおよ
そ一定であることが望ましい。ある形式では、気道入り口への圧力は常に呼気よりもわず
かに高く、吸気よりもわずかに低くなる。別の形式では、圧力は患者の呼吸サイクルによ
り様々に変化する。例えば、部分的上気道閉塞の兆候に応じて増加し、部分的上気道閉塞
の兆候がない場合には減少する。
【0174】
[呼吸サイクルの成分]
無呼吸:無呼吸は、例えば10秒間連続して所定の閾値以下にフロー(呼吸流量)が下回っ
た時に起こるのが望ましいといわれる。閉塞無呼吸は、患者の努力にも関わらず、気道閉
塞が空気を流さない時に起こるといわれる。中枢性無呼吸は、呼吸努力の減少により、ま
たは呼吸努力の喪失により、気道が開いているのにも関わらず無呼吸が検知される場合に
起こるといわれる。混合性無呼吸は、呼吸努力の減少または喪失が、気道閉塞と同時に起
こった場合に生じる。
【0175】
呼吸率:患者の自然発生的呼吸の割合。通常1分間の呼吸数で測られる。
【0176】
デューティサイクル:全呼吸時間 Ttotにおける吸入時間Tiの割合。
【0177】
(呼吸)努力:呼吸努力とは、呼吸を自然に行う人間が呼吸をしようとする際の仕事を指
す。
【0178】
呼吸サイクルの呼気部分:呼吸サイクルにおける、呼気流の開始から吸気流の開始までの
期間。
【0179】
フロー(呼吸流量)制限:フロー(呼吸流量)制限は、患者の呼吸努力の上昇がフロー(
呼吸流量)の増加に対応しない時の患者の呼吸における症状を指す。呼吸サイクルの吸気
部分でフロー(呼吸流量)制限が起こると、吸気流制限と呼ばれる。気流制限が呼吸サイ
クルの呼気部分で起こると、呼気流制限と呼ばれる。
【0180】
呼吸低下:呼吸低下は、フロー(呼吸流量)の減少を意味するが、気流停止ではない。あ
る形式では、呼吸低下は一定継続時間においてフロー(呼吸流量)が閾値以下に減少した
時に起きると言われる。中枢性無呼吸は、呼吸低下が呼吸努力の減少により検知された時
に生じると言われる。
【0181】
過呼吸:通常の気流よりも高いレベルへの気流の上昇
【0182】
呼吸サイクルの吸気部分:呼吸サイクルにおける、吸気流の開始から呼気流の開始までの
期間。
【0183】
(気道の)開通性):気道の開通度、または気道が開いている度合い。 開通している気道は
開いている。気道開通性は、例えば開通している場合に1(1) 、閉まっている(閉塞して
いる)場合にゼロと値で示される。
【0184】
呼吸終末陽圧 (PEEP):呼気の終わりにおける肺での気圧を上回る圧力。
【0185】
ピークフロー(Qピーク):フロー(呼吸流量)の吸気部分での最大気流。
【0186】
呼吸流量、空気量、患者の空気量、呼吸空気量(Qr):これらは同義語であり、RPTデバイ
スで推定した呼吸流量を示す。通常1分間毎のリットル量で示される、患者の経験する実
際の呼吸量である、「真の呼吸流量」「真の呼吸空気量」とは異なる。
【0187】
1回換気呼吸量(Vt):余分な努力が行われない時の、通常の呼吸において吸われ、また吐
かれる空気量。
【0188】
(吸気) 時間(Ti):呼吸流量波形における吸気継続時間。
【0189】
(呼気) 時間(Te):呼吸流量波形における呼気継続時間。
【0190】
(合計) 時間(Ttot):呼吸流量波形における呼気部分の開始から、呼吸流量波形における
吸気部分の開始までの合計継続時間。
【0191】
現行の典型的通気性:所定の時間軸の上で最近の値が集まる傾向にある場所における通気
性の値。つまり、現行の通気性の主な傾向の測定値。
【0192】
上気道閉塞(UAO):部分的、全体的な上気道閉塞両方を含む。上気道における圧力の差が
拡大する(スターリング抵抗運動)に伴い、気流レベルがわずかに上昇する、または減少
するという意味で、気流制限状態とも関係する。
【0193】
換気量(ベント):患者の呼吸システムにおいて交換される気体の合計量の測定値。単位
時間当たりの呼気流と吸気流両方を含む。1分あたりの体積として表される時、この量は
しばしば「分時換気量」と呼ばれる。分時換気量は体積で示されることもあり、1分あた
りの体積として理解される。
【0194】
[RPTデバイスパラメータ]
フロー(呼吸流量)率 (又はフロー):単位時間当たりに排出される瞬間的な体積(質量
)。フロー(呼吸流量)率と換気量が単位時間あたりの同じ程度の体積または質量である
時、フロー(呼吸流量)率は更に短時間内に測定されている。ある形式では、フロー(呼
吸流量)率の参照値はスカラー量の参照値になり、すなわちこれは大きさしか持たない量
となる。他の形式では、フロー(呼吸流量)率の参照値はベクトル量の参照値となり、す
なわちこれは大きさと方向の両方を持つ量ということになる。符号付きの量として参照さ
れた時、フロー(呼吸流量)率は患者の呼吸サイクルにおける呼気部分では名目上プラス
ということになり、よって患者の呼吸サイクルにおける吸気部分がマイナスとなる。フロ
ー(呼吸流量)率は記号Qによって示される。合計フロー(呼吸流量) Qtは、RPTデバイ
スから発せられた空気のフロー(呼吸流量)率である。換気フロー(呼吸流量)Qvは、吐
かれた気体を洗い流した際にベントから流れ出た空気のフロー(呼吸流量)率である。漏
出フロー(呼吸流量)Qlは、患者のインターフェイスシステムから意図しないで漏れ出た
フロー(呼吸流量)率である。 呼吸フロー(呼吸流量)Qrは、患者の呼吸システムに流
れ込んだ空気のフロー(呼吸流量)率である。
【0195】
漏出:漏出という言葉は、周囲に流れ出て行った空気の流れを指す。漏出は、例えば吐き
出したCO2を洗い流した際に生じるものなど、意図的な時もある。例えば、マスクと患者
の顔面の間が密閉されていなかった場合に生じるものなど、意図せずに生じる漏出もある
。漏出の一例としては、回転エルボで起こるものがある。
【0196】
[その他特記事項]
開示した本特許資料の一部には著作権の対象となるものが含まれている。著作権の管理者
は、特許庁が保管し、記録する上において特許書類や特許情報開示における複写について
異論を挟むところはない。ただし、その他の場合には著作権は所有されるものとする。
【0197】
明白に指示があり、値域が示されているのでない限り、それぞれの介在値は、下限は0.1
の位まで本技術の中に含まれる。この範囲での上限から下限までの間、そして特に提示が
ある場合、提示された範囲内での介在値も本技術の中に含まれる。介在範囲の上限と下限
は、介在範囲とは独立してこの中に含まれるが、これらもまた本技術の中に含まれ、提示
された範囲の中での特別な除外対象となる。提示された範囲が1つまたは両方の限度を含
んだ場合、含まれる限度のいずれかまたは両方を除外した範囲はまた本技術に含まれる。
【0198】
更に、ここで提示された値が本技術の一部として実装されている時、特に記載がない限り
、これらの値は近似値であること、またこれらの値は実践的な技術設定において問題がな
く、また同設定が要求する程度において、有効数字として利用できることを理解されたい
【0199】
特に記載がない限り、ここで記載されている技術的・科学的用語は、本技術が属する領域
において通常理解されているものと同じことを意味する。ここで説明したものと類似であ
り、また同等である方法や材料は、本技術の実践またはテストに用いることもできる。こ
こでは限られた数の特定の方法または材料しか扱っていないためである。
【0200】
中身を組み立てる際、優先的に使用されている特定の材料が特定された場合には、類似の
性質を具える明らかな代替素材を代替として用いることができる。更に、逆のことが特に
書かれていなければ、ここで説明しているどの要素も製造可能であり、そのため、まとめ
て、または別々に製造することができるものと理解されたい。
【0201】
ここでの、また付随の請求での名詞単数形(英語における「a」, 「an」, 「the」)は、
特に記載がない限り、その同等物の複数形も含む。
【0202】
ここで言及したすべての出版物はこの出版物が対象としている手法及び/または材料を公
開し、また説明するため参考として挿入したものである。ここで論じた出版物は、本出願
の出願日より以前に発表されているもののみである。ここに書かれた一切は、本技術は過
去の発明の恩恵を受けた出版物に先行すると主張するものではない。更に、所与の出版日
は実際の出版日とは異なるが、これは別に確認されたい。
【0203】
加えて、公表を解釈するにあたっては、すべての用語は本文と一貫する限り幅広く合理的
な方法で解釈されたい。特に、「構成される」といった場合、排他的ではない意味での構
成要素、部品、ステップを指す。つまり、この時言及された構成要素、部品、ステップは
、特に明記されていない他の構成要素、部分、ステップと並存する、利用する、または兼
ね合わせるということを意味する。
【0204】
詳細を説明する際に用いた小見出しは、読者へ参照しやすいように挿入したものであり、
本公開や本請求の中での主題に限定したものではない。主題の見出しは本請求のスコープ
や本請求の限度を解釈するにあたっては使われるべきでない。
【0205】
本技術は特定の実施形態に関して記述されているが、これらの実施形態は単に本技術の原
則と適用を例示したものにすぎないことを理解されたい。中には、用語や記号は科学的詳
細を示唆し、技術の実行には必要でない場合もある。例えば、「第1の」「第2の」とい
う言葉を使用していても、他に特記がない限り、これらは順番を示すのではなく、それぞ
れの要素を区別するために用いられているにすぎない。更に、方法内のステップは順番に
表記され、また示されているが、このような順序もまた必須ではない。当分野の技術者は
、このような順序は修正されることもあり得るし、要素は同時に、もしくは並行して実行
されることもあると理解されるであろう。
【0206】
従って、実施の上では多数の修正が加えられる可能性もあり、その他の調整についても本
技術の精神と領域から外れない限りにおいて行われる可能性があることを理解されたい。
【符号の説明】
【0207】
患者 1000
センサーユニット1200
患者インターフェイス 3000
シール構成構造 3100
プレナム・チャンバ 3200
固定構造3300
ベント 3400
接続ポート 3600
前頭部サポート 3700
RPT デバイス 4000
外部ハウジング 4010
上部 4012
部分 4014
パネル 4015
シャーシ4016
ハンドル4018
空気圧ブロック 4020
空気圧部品 4100
呼気エアフィルター 4112
呼気マフラー 4122
吸気マフラー 4124
圧力ジェネレータ4140
送風機 4142
空気回路4170
電子部品4200
PCBA 4202
電源 4210
インプットデバイス 4220
中央制御コントローラー 4230
治療デバイスコントローラー 4240
保護回路4250
メモリ 4260
変換器 4270
圧力センサー 4272
フロー(呼吸流量)センサー 4274
データ通信インターフェイス 4280
外部リモート通信ネットワーク 4282
外部ローカル通信ネットワーク 4284
外部リモートデバイス 4286
外部ローカルデバイス 4288
アウトプットデバイス 4290
ディスプレイドライバー 4292
ディスプレイ 4294
アルゴリズム 4300
加湿器 5000
モニタリング機器7000
マイクロコントローラーユニット 7001
メモリ 7002
運動シグナル 7003
通信回路7004
外部コンピューティングデバイス 7005
プロセッサ 7006
接続 7008
動態センサー 7010
ディスプレイデバイス 7015
音声アウトプット7017
送信機 7020
受信機 7030
ローカル発振機 7040
アンテナ7050
無線周波(RF)シグナル 7060
反射シグナル 7070
ミキサー7080
モニタリング方法7100
ステップ7110
ステップ7120
ステップ7130
ステップ7140
ステップ7150
ステップ7160
方法 7200
運動探知モジュール 7210
存在/不在探知モジュール 7220
睡眠/覚醒分析モジュール 7230
呼吸率抽出モジュール 7240
シグナル選択モジュール 7250
モジュレーションサイクル測定モジュール 7255
エンベロープ発生モジュール 7260
SDB イベント検知モジュール 7265
SDB イベント確認モジュール 7270
症状予測モジュール 7280
方法 7300
ステップ 7310
ステップ 7320
ステップ 7330
ステップ 7340
ステップ 7350
ステップ 7360
方法 7400
ステップ 7410
ステップ 7420
ステップ 7430
ステップ 7440
ステップ 7450
ステップ 7460
ステップ 7470
ステップ 7480
ステップ 7490
グラフ 8000
トレース 8010
灰色バンド 8015
上向き矢印 8020
トレース 8050
ピーク 8060
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8