(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】スパッタリングシステム
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
C23C14/34 C
C23C14/34 B
C23C14/34 U
(21)【出願番号】P 2020204152
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】202011148944.5
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518382946
【氏名又は名称】業成科技(成都)有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】518382957
【氏名又は名称】業成光電(深▲ゼン▼)有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】518382968
【氏名又は名称】英特盛科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 伯綸
(72)【発明者】
【氏名】陳 俊達
(72)【発明者】
【氏名】周 宗震
(72)【発明者】
【氏名】呉 景揚
(72)【発明者】
【氏名】薛 乃豪
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第211445884(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0003039(US,A1)
【文献】国際公開第2007/081202(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成膜表面に対してスパッタリング成膜を行うのに適し、かつ前記被成膜表面には複数のセクションを有し、その中の各セクションは投影の高さを有するスパッタリングシステムであって、
支持プレートと、
前記支持プレート上に設置され、複数のスパッタリングユニットを含み、かつ各セクションは前記複数のスパッタリングユニットのうち少なくとも1つに対応し、前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットは駆動軸及びスパッタリングターゲットを備え、前記駆動軸の第1の端部は前記支持プレートに接続し、前記駆動軸の第2の端部は前記スパッタリングターゲットに接続し、前記スパッタリングターゲットは前記被成膜表面に面しているスパッタリングアレイと、
前記駆動軸に電気的接続する制御器であって、前記駆動軸が前記スパッタリングターゲットを連動させるとともに前記スパッタリングターゲットが前記被成膜表面に対向して移動するのを制御し、かつ前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットから前記投影の高さの方向において前記複数のセクションのうち対応する1つのセクションまでの距離が所定の条件に合うように制御する制御器と
、を含
み、
前記投影の高さは、あるスパッタリングユニットから、当該スパッタリングユニットに対応するセクションの表面までの距離のうち一番遠い点までの距離と、最も近い点までの距離との差または当該スパッタリングユニットに対応するセクションの表面までの距離のうち一番遠い点までの距離と、当該セクションの各点までの距離との差を平均した平均距離差を示し、
前記複数のセクションはそれぞれ曲面を成し、かつ前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットの長さはそれぞれ、前記複数のセクションのそれぞれの曲面のうち対応する1つのセクション曲面の湾曲度合いに基づいて決定される、スパッタリングシステム。
【請求項2】
少なくとも1つのチャンバー及び保持装置をさらに含み、前記少なくとも1つのチャンバーは前記支持プレート、前記スパッタリングアレイ及び前記制御器を収容し、前記保持装置は前記被成膜表面を有する物体を保持し、前記保持装置は水平移動して前記少なくとも1つのチャンバーに出入りすることで前記被成膜表面が前記スパッタリングアレイによるスパッタリングを受けるのを制御する、請求項1に記載のスパッタリングシステム。
【請求項3】
少なくとも1つのチャンバー及び保持装置をさらに含み、前記少なくとも1つのチャンバーは前記支持プレート、前記スパッタリングアレイ及び前記制御器を収容するとともに前記保持装置を取り囲み、前記保持装置は前記被成膜表面を有する物体を保持し、かつ前記物体を動かして前記スパッタリングアレイに対向して回動させることにより前記被成膜表面がスパッタリングアレイのスパッタリングを受けるのを制御する、請求項1に記載のスパッタリングシステム。
【請求項4】
前記スパッタリングアレイはN列、М行の配列であり、Mは2以上の正の整数であり、かつNは自然数である、請求項1に記載のスパッタリングシステム。
【請求項5】
前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットのスパッタリングターゲットの長さは同じであり、前記スパッタリングターゲットの長さの方向は前記投影の高さの方向に対して垂直である、請求項1に記載のスパッタリングシステム。
【請求項6】
前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットのスパッタリングターゲットの長さは異なり、前記スパッタリングターゲットの長さの方向は前記投影の高さの方向に対して垂直である、請求項1に記載のスパッタリングシステム。
【請求項7】
前記複数のセクションはそれぞれ曲面を成し、前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットのスパッタ面は前記投影の高さの方向に対向して異なる仰角を呈し、かつ前記複数のスパッタリングユニット中の1つのスパッタリングユニットの仰角は、前記複数のセクションのそれぞれの曲面中対応する1つのセクション曲面の切断線方向に基づき、又は前記対応するセクション曲面の2つの端部をつなぐ線に基づき決定される、請求項1に記載のスパッタリングシステム。
【請求項8】
前記スパッタリングアレイ中の各列のスパッタリングユニット中のスパッタリングユニット中の前記スパッタリングターゲットは同じ材料により構成されるが、前記スパッタリングアレイ中の2つずつ隣り合う列のスパッタリングユニットの前記スパッタリングターゲットは異なる材料により構成される、請求項1に記載のスパッタリングシステム。
【請求項9】
前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットの前記スパッタリングターゲットは柱状であり、かつ前記複数のスパッタリングユニットは前記支持プレートの水平方向に対して平行に沿って配列を延伸させる、請求項1に記載のスパッタリングシステム。
【請求項10】
前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットの前記スパッタリングターゲットは柱状であり、かつ前記複数のスパッタリングユニットは前記支持プレートの水平方向に対して垂直に配列を延伸させる、請求項1に記載のスパッタリングシステム。
【請求項11】
前記複数のスパッタリングユニットは複数の柱状タイプであり、前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットの前記スパッタリングターゲットは柱状であり、前記複数のスパッタリングユニットの各列のスパッタリングユニットと隣り合うスパッタリングユニットは前記支持プレートに平行な水平方向上でずれている、請求項1に記載のスパッタリングシステム。
【請求項12】
前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットの前記スパッタリングターゲットは平面状であり、かつ前記複数のスパッタリングユニットの各列のスパッタリングユニットと隣り合うスパッタリングユニットは、前記支持プレートに平行な水平方向上で揃っている、請求項1に記載のスパッタリングシステム。
【請求項13】
前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットの前記スパッタリングターゲットは平面状であり、各列のスパッタリングユニットと隣り合うスパッタリングユニットは、前記支持プレートに平行な水平方向上でずれている、請求項1に記載のスパッタリングシステム。
【請求項14】
前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットはそれぞれシャッターを含み、このシャッターは前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットのスパッタリングターゲットと前記複数のセクションのうちの対応する1つのセクションの間に設置される、請求項1に記載のスパッタリングシステム。
【請求項15】
各前記シャッターは移動可能な複数のサブシャッターを含み、前記スパッタリングアレイは前記複数のサブシャッターの水平移動によりスパッタ率を調整する、請求項
14に記載のスパッタリングシステム。
【請求項16】
前記シャッターは複数の開口を有し、前記スパッタリングアレイは前記シャッターの前記複数の開口の大きさを調整することによりスパッタ率を調整する、請求項
14に記載のスパッタリングシステム。
【請求項17】
被成膜表面に対してスパッタリング成膜を行うのに適し、かつ前記被成膜表面には複数のセクションを有し、その中の各セクションは投影の高さを有するスパッタリングシステムの製造方法であって、
前記スパッタリングシステムは、
支持プレートと、
前記支持プレート上に設置され、複数のスパッタリングユニットを含み、かつ各セクションは前記複数のスパッタリングユニットのうち少なくとも1つに対応し、前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットは駆動軸及びスパッタリングターゲットを備え、前記駆動軸の第1の端部は前記支持プレートに接続し、前記駆動軸の第2の端部は前記スパッタリングターゲットに接続し、前記スパッタリングターゲットは前記被成膜表面に面しているスパッタリングアレイと、
前記駆動軸に電気的接続する制御器であって、前記駆動軸が前記スパッタリングターゲットを連動させるとともに前記スパッタリングターゲットが前記被成膜表面に対向して移動するのを制御し、かつ前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットから前記投影の高さの方向において前記複数のセクションのうち対応する1つのセクションまでの距離が所定の条件に合うように制御する制御器と、を含み、
前記投影の高さは、あるスパッタリングユニットから、当該スパッタリングユニットに対応するセクションの表面までの距離のうち一番遠い点までの距離と、最も近い点までの距離との差または当該スパッタリングユニットに対応するセクションの表面までの距離のうち一番遠い点までの距離と、当該セクションの各点までの距離との差を平均した平均距離差を示し、
前記複数のセクションはそれぞれ曲面を成し、かつ前記複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットの長さはそれぞれ、前記複数のセクションのそれぞれの曲面のうち対応する1つのセクション曲面の湾曲度合いに基づいて決定される、スパッタリングシステムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパッタリングシステムに関し、特に、曲面(又は3次元表面)を有する物体に対して成膜を行うスパッタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング技術は現在半導体やオプトエレクトロニクス産業ですでに大量に応用されており、物体の表面が平面である場合は、各スパッタリングターゲットから物体表面までの距離は同じであるため、均一な膜厚を実現しやすい。物体表面が曲面である場合、各スパッタリングターゲットから物体表面までの距離が異なる可能性があり、物体表面のスパッタ率に差が出て、膜厚が不均一になってしまう。膜厚が不均一になる問題を解決するために、公知技術によればシャッターを追加設置して膜厚の調整を行う。しかし、このようなシャッターを追加する方式により曲面表面の膜はより均一にできるが、全体の成膜速度が大幅に低下することもある。
【0003】
そこで、本発明は上述した欠点について、曲面表面を有する物体に対してスパッタリング成膜を行うのに適したスパッタリングシステムを提案し、成膜の均一性の程度を改善することにより、公知技術において生じた問題を解決する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、各スパッタリングユニットに対して独立制御を行うことにより非平坦な3次元表面をより均一に成膜するスパッタリングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明の実施形態において提供するスパッタリングシステムは、被成膜表面に対してスパッタリング成膜を行うのに適し、かつ被成膜表面には複数のセクションを有し、その中の各セクションは投影の高さを有する。スパッタリングシステムは支持プレート、スパッタリングアレイ及び制御器を含む。スパッタリングアレイは支持プレート上に設置され、複数のスパッタリングユニットを含み、かつ各セクションはスパッタリングユニットのうち少なくとも1つに対応する。複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットは駆動軸及びスパッタリングターゲットを備える。駆動軸の第1の端部は支持プレートに接続し、駆動軸の第2の端部はスパッタリングターゲットに接続し、スパッタリングターゲットは被成膜表面に面している。制御器は駆動軸に電気的接続し、駆動軸がスパッタリングターゲットを連動させるとともにスパッタリングターゲットが被成膜表面に対向して移動するのを制御し、かつ制御器は複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットから投影の高さの方向において複数のセクション中対応する1つのセクションまでの距離が所定の条件に合うように制御する。
【0006】
本発明の実施形態において、スパッタリングシステムは少なくとも1つのチャンバー及び保持装置をさらに含み、少なくとも1つのチャンバーには支持プレート、スパッタリングアレイ及び制御器を収容する。保持装置は被成膜表面を有する物体を保持し、保持装置は水平移動して少なくとも1つのチャンバーに出入りすることで被成膜表面がスパッタリングアレイによるスパッタリングを受けるのを制御する。
【0007】
本発明の実施形態において、スパッタリングシステムは少なくとも1つのチャンバー及び保持装置をさらに含み、少なくとも1つのチャンバーには支持プレート、スパッタリングアレイ及び制御器を収容する。少なくとも1つのチャンバーは保持装置を取り囲む。保持装置は被成膜表面を有する物体を保持し、かつ少なくとも1つの被成膜表面を動かしてスパッタリングアレイに対向して回動させることにより被成膜表面がスパッタリングアレイのスパッタリングを受けるのを制御する。
【0008】
本発明の実施形態において、スパッタリングアレイはN列、М行の配列であり、Mは2以上の正の整数であり、かつNは自然数である。
【0009】
本発明の実施形態において、複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットのスパッタリングターゲットの長さは同じであり、スパッタリングターゲットの長さの方向は投影の高さの方向に対して垂直である。
【0010】
本発明の実施形態において、複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットのスパッタリングターゲットの長さは異なり、スパッタリングターゲットの長さの方向は投影の高さの方向に対して垂直である。
【0011】
本発明の実施形態において、複数のセクションはそれぞれ曲面を成し、かつ複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットの長さはそれぞれ、複数のセクションのそれぞれの曲面のうち対応する1つのセクション曲面の湾曲度合いに基づいて決定される。
【0012】
本発明の実施形態において、複数のセクションはそれぞれ曲面を成し、複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットのスパッタ面は投影の高さの方向に対向して異なる仰角を呈し、かつ複数のスパッタリングユニット中の1つのスパッタリングユニットの仰角は、複数のセクションのそれぞれの曲面中対応する1つのセクション曲面の切断線方向に基づき、又は対応するセクション曲面の2つの端部をつなぐ線に基づき決定される。
【0013】
本発明の実施形態において、複数のスパッタリングアレイ中の各列のスパッタリングユニット中のスパッタリングユニット中のスパッタリングターゲットは同じ材料により構成されるが、スパッタリングアレイ中の2つずつ隣り合う列のスパッタリングユニットのスパッタリングターゲットは異なる材料により構成される。
【0014】
本発明の実施形態において、スパッタリングユニットのスパッタリングターゲットは柱状であり、かつスパッタリングユニットは支持プレートの水平方向に対して平行に沿って配列を延伸させる。
【0015】
本発明の実施形態において、スパッタリングユニットのスパッタリングターゲットは柱状であり、かつスパッタリングユニットは支持プレートの水平方向に対して垂直に配列を延伸させる。
【0016】
本発明の実施形態において、複数のスパッタリングユニットは複数の柱状タイプであり、スパッタリングユニットのスパッタリングターゲットは柱状であり、これらのスパッタリングユニットの各列のスパッタリングユニットと隣り合うスパッタリングユニットは支持プレートに平行な水平方向上でずれている。
【0017】
本発明の実施形態において、スパッタリングユニットのスパッタリングターゲットは平面状であり、かつ複数のスパッタリングユニットの各列のスパッタリングユニットと隣り合うスパッタリングユニットは、支持プレートに平行な水平方向上で揃っている。
【0018】
本発明の実施形態において、スパッタリングユニットのスパッタリングターゲットは平面状であり、かつスパッタリングユニットは位置をずらした配列であり、各列のスパッタリングユニットと隣り合うスパッタリングユニットは、支持プレートに平行な水平方向上でずれている。
【0019】
本発明の実施形態において、スパッタリングユニットはシャッターを含み、シャッターは複数のスパッタリングユニット中の各スパッタリングユニットのスパッタリングターゲットと複数のセクションのうち対応する1つのセクションとの間に設置される。
【0020】
本発明の実施形態において、各シャッターは移動可能な複数のサブシャッターを含み、スパッタリングアレイはこれらのサブシャッターの水平移動によりスパッタ率を調整する。
【0021】
本発明の実施形態において、シャッターは複数の開口を有し、スパッタリングアレイはシャッターの開口の大きさを調整することによりスパッタ率を調整する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、各スパッタリングユニットに対して独立制御を行うことにより非平坦な3次元表面に均一に成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態におけるスパッタリングシステムを示す図である。
【
図2】
図1中いずれかのチャンバーの支持プレートを示す図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるスパッタリングユニットの内部構造を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるスパッタリングユニットに対してガス制御ユニットを接続することを示す図である。
【
図5】本発明の実施形態におけるスパッタリングユニットのターゲット上にシャッターを追加することを示す図である。
【
図6A】本発明の実施形態の平面スパッタリングターゲットと3次元表面の対向関係を示す図である。
【
図6B】本発明のもう1つの実施形態の平面スパッタリングターゲットと3次元表面の対向関係を示す図である。
【
図7A】本発明のスパッタリングターゲットから3次元表面までの距離を独立制御することを示す側面図である。
【
図7B】本発明の実施形態においてスパッタリングユニットのターゲット上にシャッターを追加して開口の調整を行うことを示す図である。
【
図8】本発明の実施形態におけるセクション形式のスパッタリングユニットの設計を示す図である。
【
図9】対応する
図8の被成膜表面がスパッタリングを受けた後を示す図である。
【
図10】本発明のもう1つの実施形態におけるセクション形式のスパッタリングユニットの設計を示す図である。
【
図11】対応する
図10の被成膜表面がスパッタリングを受けた後を示す図である。
【
図12】本発明のさらに別の実施形態におけるセクション形式のスパッタリングユニットの設計を示す図である。
【
図13】対応する
図12の被成膜表面がスパッタリングを受けた後を示す図である。
【
図14A】スパッタリングターゲットが曲面の湾曲度合いに対して回動するのをスパッタリングユニットが制御することを示す図である。
【
図14B】
図14A中のスパッタリングターゲットが回動を完了した状態を示す図である。
【
図15A】本発明のもう1つの実施形態におけるスパッタリングシステムを示す図である。
【
図16-24】本発明の異なる実施形態におけるスパッタリングシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に具体例を挙げて説明を加えるが、これらの例は説明のために用いられるに過ぎない。当業者であれば、本開示内容の精神と領域を逸脱しない範囲内で各種の変更や潤色を加えることができる。本開示内容の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。本明細書及び特許請求の範囲において、明確な指定がない限り、「1つ」及び「前記」という用語は、「1つまたは少なくとも1つ」の意味を含む。また、本開示にもあるように、特定の文脈から複数であることが明らかである以外に、単数表記は複数の意味も含む。さらに、本明細書及び特許請求の範囲における内容に明確な指定がない限り、「その中」という用語は、「その中」及び「その上」という意味を含むことがある。本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語(terms)は、明確な説明がない限り、その用語が当該分野、本開示の内容及び特殊な内容において通常用いられるのと同じ意味を有する。本開示を説明するための用語については、以下の段落または明細書で別途説明し、当業者(practitioner)が本開示の説明をより明確に理解できるようにする。本明細書のいかなる部分の例示も、ここに述べる用語の例示の使用に含まれ、これらの例示は説明のために用いられるに過ぎず、本開示又は例示されるいかなる用語の範囲及び意味を限定するものではない。同様に、本開示は本明細書で提案される各種実施形態に限定されない。
【0025】
本明細書で使用される「実質的に(substantially)」、「約(around、about)」又は「略(approximately)」という用語はおおむね、一定の値又は範囲の20%以内、好ましくは10%以内を意味する。また、ここで提供される数量は近似する値でもよいため、特に説明がない場合は、「約」、「略」又は「…に近い」を加えて表わすことができる。数量、濃度又は他の数値若しくはパラメータが、指定範囲、好適な範囲又は表で列挙された理想値を有する場合は、これらの範囲が別々に記載されているか否かにかかわらず、数値の範囲は、特別に説明される任意の上限と下限を有する数値、又は理想値からなる全ての範囲であると見なされる。例えば、ある部材の長さHがXcmからYcmの範囲である場合、その部材の長さHはXからYの間の任意の実数であると見なされる。
【0026】
また、本明細書において「電気(的)結合」又は「電気(的)接続」という語句を使用する場合は、いかなる直接的及び間接的な電気接続手段も含まれる。例えば、文中で第1装置が第2装置に電気的結合するという記載がある場合、当該第1装置は当該第2装置に直接的に接続できる、或いはその他の装置又は接続手段により当該第2装置に間接的に接続できることを示す。さらに、電気信号の伝送、提供についての記載がある場合は、電気信号の伝送過程において減衰又はその他非理想的な変化が伴う可能性はあるが、電気信号の伝送又は提供のソース及び受信端について特に説明がない場合は、実質上同一信号であると見なされることを、当業者は理解できるはずである。例えば、電子回路の端点Aから電気信号Sを電子回路の端点Bに伝送(又は提供)する場合、トランジスタースイッチのソース、ドレイン両端及び/又は可能な寄生容量により電圧を低下させる可能性があるが、この設計の目的によれば、意図せずに伝送(又は提供)時に生じる減衰又はその他の非理想的な変化を利用してある特定の技術効果を達成する場合、電気信号Sは電子回路の端点Aと端点Bにおいて実質的な同一信号と見なすことができるはずである。
【0027】
ここで使用される「含む、備える(comprising、including、involving)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」などの用語は、オープンエンド形式(open-ended)であり、つまり、列挙されたものに限定されないことを意図していると理解できる。また、本発明の実施形態又は特許請求の範囲により、本発明に開示される目的、長所又は特徴の全てを実現する必要はない。なお、要約部分及び発明の名称は、単に特許文献の検索の補助として用いられるものであって、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0028】
図1を参照されたい。
図1は本発明の実施形態おけるスパッタリングシステム700を示す図であり、各スパッタリングユニットに対して独立制御を行い、非平坦な3次元表面(すなわち被成膜表面)に対してより均一なスパッタリング成膜を行うものであるが、平面に対してもスパッタリング成膜を行うことができ、ここに限定されない。スパッタリングシステム700は、例えば
図1が示すチャンバー742-1~742-Nのように、1つ又は複数のチャンバーを含むことができる。スパッタリングシステム700はインライン型(In-line type)加工を採用し、台車741は被成膜物体を搭載するとともにチャンバーを通過する方式により移動して物体がスパッタリングプロセスを受けるようにする。本実施形態では台車741を以ってスパッタリングシステム700中の被成膜物体の運搬構造とするが、異なる実施形態において、台車の代わりにその他の運搬方式を用いることもできる。
【0029】
続いて
図2を併せて参照されたい。
図2は
図1のチャンバー742-1から742-Nまでのいずれか1つの構造を示す図である。チャンバー742はチャンバー742-1から742-Nまでのいずれかである。チャンバー742は支持プレート710、制御器720及びスパッタリングアレイ730を収容する。支持プレート710はチャンバー742の内壁であってもよく、又はチャンバー742の内壁に設置されるプレートとして用いることにより実現してもよい。スパッタリングアレイ730は複数のスパッタリングユニット730Sにより構成される。スパッタリングユニット730Sの一端は支持プレート710に接続され、別の一端は被成膜物体の通過経路の方に向かって被成膜物体に対してスパッタリング成膜を実施する。詳しく説明すると、各スパッタリングユニット730Sは駆動軸730S1及びスパッタリングターゲット730S2を備える。駆動軸730S1の1つ目の端部は前記支持プレート710に接続し、前記駆動軸730S1の2つ目の端部は前記スパッタリングターゲット730S2に接続する。
【0030】
例えば、スパッタリングアレイ730中の各スパッタリングユニット730Sは独立制御されるユニットであり、それぞれスパッタリングターゲット、移動制御ユニット、ガス制御ユニット、シャッター、冷却水経路及び電極層を含むことができ、これらの素子についてはさらに
図3~
図5を参照できる。
図3は本発明の実施形態におけるスパッタリングユニット730Sの内部構造760を示す図であり、内部構造760はマグネット761、冷却水経路762及び電極層763を含み、その中の電極層763は電源764に接続される。当業者であればスパッタリングターゲットの構造及び使用方式を理解できるので、その他詳細の説明は省略する。
図4は本発明の実施形態においてスパッタリングユニット730Sに対しガス制御ユニット767を接続することを示す図であり、前述の制御器720(
図2を参照)は駆動軸730の移動を制御でき、これによりスパッタリングターゲット766が被成膜物体の表面に対向して近づいたり離れたりするのを調整する、又はスパッタリングターゲット766のスパッタ面を回転させて被成膜物体表面に対向する仰角を変更する。スパッタリングターゲット766はガス制御ユニット767に接続され、ガス制御ユニット767はマスフローコントローラー(Mass Flow Controller:MFC)であってよい。
図5は本発明の実施形態におけるスパッタリングユニット730Sのスパッタリングターゲット766上に複数のサブシャッター768を追加することを示す図である。
図5中の符号505の移動方向が示すように、スパッタリングユニット730Sはこれらのサブシャッター768が移動方向505に沿って水平移動を行うことによりスパッタ率を調整でき、かつ各サブシャッター768は必用に応じて個別又は全体的に移動調整を行える。サブシャッター768が共同でスパッタリングターゲット766を覆う面積が多いほど得られるスパッタ率は低くなる。また、各スパッタリングユニットのスパッタ率はスパッタリングターゲットの電力、通気量、被成膜物体の移動速度の影響を受けることもある。
【0031】
スパッタリングアレイ730は制御器720に電気的接続し、制御器720は、被成膜物体(例えばチャンバー742-1~742-Nのうちのいずれか)の3次元表面の湾曲度合いの変化に基づき、各スパッタリングユニット730Sからそれが対応する3次元表面のセクションまでの距離が所定条件を満たすように、それぞれ制御し、ここでの3次元表面の湾曲度合いの変化は1セクションの曲面の最も低い箇所から最も高い箇所までの距離を用いて理解できる。本実施形態において、3次元表面中の各セクションは曲面である可能性があるため、スパッタリングユニット730Sからそれが対応する3次元表面中のセクションまでの距離は、スパッタリングユニット730Sから曲面各点までの平均距離を用いることができ、又はスパッタリングユニット730Sから曲面中最も高い点若しくは最も低い点までの距離を計算して代表的な距離の代わりとすることもできるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明の実施形態によれば、上述の所定条件はスパッタリングユニット730Sからそれが対応する3次元表面中のセクションまでの距離が実質的に同じであることであり、「実質的に同じ」とはここでは完全に同じことを指すか、又はわずかな誤差は許容されることを指す。例えば、異なるスパッタリングターゲットから被成膜物体までの距離の誤差は0~10cmが許容される。スパッタリングアレイ中の各スパッタリングユニットを独立制御することにより各スパッタリングユニットから3次元表面までの距離の間の差が特定範囲内になるよう制御されるのであれば、いずれも本発明の範疇に属する。
【0033】
図6Aを参照されたい。
図6Aは本発明の実施形態の平面スパッタリングターゲットと3次元表面の対向関係を示す図である。まず
図6Aでは、3次元表面1210のセクションは4つの曲面セクションS1~S4(又はそれより多いセクション)に分かれ、かつ各曲面セクションS1~S4は投影の高さを有し、曲面セクションS4についていえば投影の高さP1を有する。説明すべきは、投影の高さP1は曲面セクションS4の最も高い点の高さ、又は曲面セクションS4の各点を平均した高さであってよいという点であり、各曲面セクションの3次元変化の説明に用いられる。すなわち、スパッタリングの対象が3次元表面1210から平面(図中未表示)に代わるとき、各平面セクションの投影の高さはいずれも同じになる。続いて曲面セクションS1~S4それぞれに基づいて対応する平面スパッタリングターゲットの長さH1~H4が決定される。つまり、平面スパッタリングターゲットの長さは対応する曲面セクションの湾曲度合いに基づいて決定される。3次元表面1210全体の湾曲度合いの変化が大きくない状況の場合、各曲面セクションの湾曲度合いは近いため、同様の長さを有する平面スパッタリングターゲットを採用でき、すなわちスパッタリングターゲットの長さH1~H4は等しくなる。例えば、決まったスパッタリングターゲットの長さの範囲は1~50cmでよく、好ましくは10~15cmである。本実施形態では、投影の高さP1の方向A1はスパッタリングターゲットの長さH1~H4の方向A2に垂直であるが、これに限定されない。
図6Bは本発明のもう1つの実施形態の平面スパッタリングターゲットと3次元表面の対向関係を示す図である。
図6Aに反して
図6Bが示すように、3次元表面1230全体の湾曲度合いの変化が大きい状況の場合、各曲面セクションの湾曲度合いは差異がより大きいため、異なる長さの平面スパッタリングターゲットを採用でき、すなわち2つのスパッタリングターゲットの長さH1’、H2’は互いに異なるか、又はいずれも完全に等しくなる。一般的には、セクションが多いほどより均一なスパッタリング効果が得られる。また、移動方向601~604は駆動軸がそれぞれ曲面セクションS1~S4に対しスパッタリングターゲットを近づけたり遠ざけたりすることを表す。
【0034】
図7Aを参照されたい。
図7Aは本発明のスパッタリングターゲットから3次元表面までの距離を独立制御することを示す側面図である。まず仮にシャッター851~854を追加していない状況の場合、スパッタリングターゲット831~834から被成膜物体950までの距離は独立制御を受けて(移動方向601~604が示すように)被成膜物体950に対して水平に近づいたり遠ざかったりすることにより、同じ又は近い距離T-S(上述の所定条件と見なされる)を保持し、ここでの駆動軸841~844はそれぞれスパッタリングターゲット831~834に対応する。もう1つの実施形態では、本発明はスパッタリングターゲット831~834から3次元表面の間にシャッター851~854を追加することもでき、これらはスパッタリングターゲット831~834と被成膜物体950の間に設置され、かつ本発明はシャッター851~854と被成膜物体950の間の距離がいずれもT-S’に保持されるよう制御できる。本実施形態の変化例において、距離T-S(又はT-S’)は6~20cmの間で維持され、8~12cmの間で維持されるのが好ましい。本実施形態では、各スパッタリングユニットから被成膜物体表面までの距離はまずT-S’にできるだけ近くなるように調整し、まだわずかな誤差がある場合、続いて(シャッター851~854の間の隙間が示すように)シャッターの開口の大きさを調整することによりさらにスパッタ率を調整する。ここでスパッタリングターゲットが被成膜物体表面以に近づくとスパッタ率は大きくなり、スパッタリングターゲットが被成膜物体表面から遠くなるとスパッタ率は小さくなる。
図7Bはシャッターの開口が大きくなったシャッター1305及びシャッターの開口が小さくなったシャッター1306をそれぞれ示す図であり、ここでのシャッター1305は大きい開口率を有するのでスパッタリングターゲットのスパッタ率は大きくなり、シャッター1306は小さい開口率を有するのでスパッタリングターゲットのスパッタ率は小さくなる。
【0035】
図8~
図13を参照されたい。本発明の実施形態におけるセクション形式のスパッタリングユニットの設計を示す図である。被成膜物体950はスパッタリングユニットに対向して移動方向500に沿って移動し(例えば前述した
図1の台車741の水平進行方向)、被成膜物体950Aはスパッタリングを受ける。スパッタリングアレイはN列、M行から成るものでよく、Mは2以上の正の整数であり、かつNは自然数である。
図8に示す例では、スパッタリングアレイ900は1列4行のスパッタリングアレイ(すなわちN=1、M=4)であり、この構造は
図9において単一層のスパッタリングターゲット(例えばSiO
2(二酸化ケイ素))1001と被成膜物体950が積み重なった図を用いて示される。この
図9は対応する
図8の被成膜表面がスパッタリングを受けた後を示す図である。
【0036】
図10は本発明のもう1つの実施形態におけるセクション形式のスパッタリングユニットの設計を示す図である。
図10に示す例では、スパッタリングアレイ1000は2列4行のスパッタリングアレイ(すなわちN=2、M=4)であり、スパッタリングアレイ1000は単層のスパッタリング膜厚増加を実現するアレイ形式のスパッタリングターゲットの設計に適しており、例えば、
図8のスパッタリングアレイ900と比較すると、被成膜物体はより多くのスパッタリング成膜を行うことでより厚い膜を得られ、この構造は
図11において2倍の厚さ(
図9と比較)のスパッタリングターゲット1001と被成膜物体950が積み重なった図を用いて示され、
図11は対応する
図10の被成膜表面がスパッタリングを受けた後を示す図である。同様に、スパッタリングアレイ1000の設計が4列4行(すなわちN=4、M=4)である場合、被成膜物体は4倍のスパッタリング成膜を行うことにより4倍の膜厚を得られる。
【0037】
図12は本発明のさらに別の実施形態におけるセクション形式のスパッタリングユニットの設計を示す図である。
図12に示す例では、スパッタリングアレイ1100は4列4行(すなわちN=4、M=4)であり、スパッタリングアレイ1100は多層めっき層(例えばSiO
2とNb
2O
5(五酸化ニオブ)の組み合わせ)の増加を実現するアレイ形式のスパッタリングターゲットの設計に適しており、例えば、被成膜物体が移動方向に向かって移動するとき、被成膜物体は異なる材質でスパッタリング成膜され、このようにして混合式のスパッタリングが得られる。この構造は
図13においてスパッタリングターゲット1002、1001、1003、10004(例えばNb
2O
5、SiO
2、Nb
2O
5、SiO
2)の順序で被成膜物体950と積み重なった図を用いて示され、この
図13は対応する
図12の被成膜表面がスパッタリングを受けた後を示す図である。まとめると、
図12の例では、スパッタリングアレイ中の各列のスパッタリングユニット中のスパッタリングユニット中のスパッタリングターゲット1001、1004が同じ材質により構成され、かつスパッタリングターゲット1002、1003が同じ材質により構成される。しかし、スパッタリングアレイ中の2列ずつ隣り合うスパッタリングユニットのスパッタリングターゲット1002、1001は異なる材質により構成され、かつスパッタリングアレイ中の2列ずつ隣り合うスパッタリングユニットのスパッタリングターゲット1003、1004も異なる材質により構成される。言い換えれば、垂直方向のスパッタリングユニットの材質は同じであるが、水平方向のスパッタリングユニットの材料は同じ又は異なってもよい。つまり、使用者のニーズに応じて、各行すなわち水平方向のスパッタリングユニットには同じ又は異なる材料を使用し、被成膜物体表面に複数層のめっき層を形成し、又は同じ層の膜厚を増加させ、かつスパッタリング材料は被成膜物体表面に均一にスパッタリング成膜する必要があるため、各列即ちこれらの垂直方向のスパッタリングユニットの材料は同じになる。
【0038】
図14Aを参照されたい。
図14Aはスパッタリングターゲットが曲面の湾曲度合いに対して回動するのをスパッタリングユニットが制御することを示す図である。
図14Aに示すように、スパッタリングターゲット1301が面する3次元表面はかなり近いため、回動する必要がない、又はわずかな角度の回動のみを必要とする。しかし、スパッタリングターゲット1302が面する3次元表面は相当な湾曲度合いの曲面を有するため、(移動方向502が示すように)投影の高さに対向する方向A1がより大きい角度で回動する必要があり、また、(移動方向501が示すように)スパッタリングターゲット1302も駆動軸1304により水平方向に押されて被成膜物体950に向かって近づく。言い換えると、3次元表面は異なる湾曲度合いの複数のセクション曲面を有するため、各スパッタリングユニットのスパッタリング面は調整されて異なる仰角を呈し、かつ各スパッタリングユニットの仰角は複数のセクション曲面中の対応するセクション曲面の切断線方向に基づき決定される、又は対応するセクション曲面の2つの端部をつなぐ線に基づき決定される(例えばスパッタリングターゲットを回動させることによりスパッタリング面を前記2つの端部をつなぐ線と平行になるようにする)。スパッタリングターゲットが回動を調整した後もスパッタ率に差がある場合は、(
図7Bに示すように)シャッターの開口の大きさをさらに調整してスパッタ率をさらに調整できる。
【0039】
図14Bは
図14A中のスパッタリングターゲットの回動が完了した状態を示し、その中のスパッタリングターゲット1301の左端部から被成膜物体950までの最短距離とスパッタリングターゲット1302の左端部から被成膜物体950までの最短距離は同じ又はほぼ同じであり、かつスパッタリングターゲット1301の右端部から被成膜物体950までの最短距離とスパッタリングターゲット1302の右端部から被成膜物体950までの最短距離も同じ又はほぼ同じである。つまり、スパッタリングターゲット1301、1302から被成膜物体950中の対応するセクションまでの平均距離は同じ又はほぼ同じである。
【0040】
図15A~
図15Bを参照されたい。
図15Aは本発明のもう1つの実施形態におけるスパッタリングシステム1400を示す図であり、各スパッタリングユニットに対して独立制御を行うことにより非平坦な3次元表面に対してより均一なスパッタリング成膜を行う。
図15Bは
図15Aのスパッタリングシステム1400の上面図である。スパッタリングシステム1400はチャンバー1410、制御器1420、スパッタリングアレイ1430及び保持装置1500を含み、その中の支持プレートはチャンバー1410の内壁であってよく、又はチャンバー1410に付着する内壁のプレートを用いて実現できる。
【0041】
図15Aでは、チャンバー1410は保持装置1500の一側に面している。
図7のスパッタリングシステム700と比較すると、スパッタリングシステム1400はバッチタイプの加工方式であり、スパッタリングアレイ1430はチャンバー1410の支持プレートに環状に固定される。スパッタリングアレイ1430は複数のスパッタリングユニット1430Sにより構成され、ここにおけるスパッタリングアレイ1430は制御器1420に電気的接続し、制御器1420は被成膜物体の3次元表面の湾曲度合いの変化に基づいて各スパッタリングユニットから被成膜表面までの距離が上述の所定条件に合うようにそれぞれ制御する。本発明実施形態によれば、所定条件は各スパッタリングユニットから被成膜表面までの最小距離が実質的に同じになることであり、ここでの「実質的に同じ」とは各スパッタリングユニットから被成膜表面までの最小距離が完全に同じであることか、又はわずかな誤差があるのは許容されることを指す。例えば異なるスパッタリングターゲットから被成膜物体までの距離の誤差は0~10cmである。スパッタリングアレイ中の各スパッタリングユニットを独立制御することにより各スパッタリングユニットから被成膜表面までの最小距離の間の差が特定範囲内になるよう制御されるのであれば、いずれも本発明の範疇に属する。
【0042】
図15Bに示すように、被成膜物体はチャンバー1410の中心の保持装置1500上に載置され、かつチャンバー1410の支持プレートは保持装置1500を取り囲む。保持装置1500は制御器1420に電気的接続するとともに少なくとも1つの物体を保持し、これによりこの少なくとも1つの物体を駆動してスパッタリングアレイ1430に対向して移動させ、スパッタリングアレイ1430が上述の所定条件を維持する状況でこの少なくとも1つの物体に対してスパッタリング成膜を行うように制御し、各スパッタリングユニットが同じ又は近いスパッタ率を提供できるようにする。同じスパッタリングターゲットの電力、気圧条件の下で、保持装置1500の回動速度が速いほどスパッタ率は低下し、反対に、保持装置1500の回動速度が遅いほどスパッタ率は上昇する。しかし、スパッタリングユニットのスパッタ率はスパッタリングターゲットの電力、通気量、被成膜物体の移動速度の影響を受けることもある。
【0043】
図16~
図18を参照されたい。
図16~
図18は本発明の異なる実施形態におけるスパッタリングシステムを示す図である。これらの実施形態では、スパッタリングユニットはそれぞれ異なる形状の平面スパッタリングターゲットを採用する。
図16では、スパッタリングシステム1600は円形の平面スパッタリングターゲットを採用し、ここでの移動方向500は被成膜物体の移動方向を指し、スパッタリングアレイ1630、1630’はそれぞれ被成膜物体が移動する経路上の両側に位置し、かつ複数のスパッタリングユニットの各列のスパッタリングユニットと隣り合う列のスパッタリングユニットは支持プレートに平行な水平方向上で揃っている。
【0044】
図17では、スパッタリングシステム1700は四角形の平面スパッタリングターゲットを採用し、ここでの矢印が指す方向は被成膜物体の移動方向であり、スパッタリングアレイ1730、1730’はそれぞれ被成膜物体が移動する経路上の両側に位置し、ここでの移動方向500は被成膜物体の移動方向を指し、かつ複数のスパッタリングユニットの各列のスパッタリングユニットと隣り合う列のスパッタリングユニットは支持プレートに平行な水平方向上で揃っている。また、本実施形態の四角形構造はさらに延伸して長方形をとなってもよい。
【0045】
図18では、スパッタリングシステム1800は多辺形の平面スパッタリングターゲットを採用し、ここでの矢印は被成膜物体の移動方向を指し、スパッタリングアレイ1830、1830’はそれぞれ被成膜物体が移動する経路上の両側に位置し、ここでの移動方向500は被成膜物体の移動方向を指し、かつ複数のスパッタリングユニットの各列のスパッタリングユニットと隣り合う列のスパッタリングユニットは支持プレートに平行な水平方向上で揃っている。また、本実施形態では多辺形構造に八辺形を用いて示しているが、これは例示する目的のために過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。以上の3種類のスパッタリングターゲットについて使用上の差はないが、
図7に示すようにインライン型(In-line type)の加工方式についていえば、多辺形のスパッタリングターゲットは空間利用に最も優れており、その次は円形スパッタリングターゲットであり、四角形のスパッタリングターゲットは空間利用に最も劣っている。
【0046】
図19~
図21を参照されたい。
図19~
図21は本発明の異なる実施形態におけるスパッタリングシステムを示す図であり、これらの実施形態では、スパッタリングユニットにそれぞれ異なる形状の平面スパッタリングターゲットを採用している。
図19では、スパッタリングシステム1900は円形の平面スパッタリングターゲットを採用し、ここでの移動方向500は被成膜物体の移動方向を指し、スパッタリングアレイ1930、1930’はそれぞれ被成膜物体が移動する経路上の両側に位置し、
図16と比較すると、
図19中のスパッタリングユニットは位置をずらした配列であり、すなわち各列のスパッタリングユニットと隣り合う列のスパッタリングユニットは支持プレートに平行な水平方向上でずれている。
【0047】
図20では、スパッタリングシステム2000は円形の平面スパッタリングターゲットを採用し、ここでの矢印は被成膜物体の移動方向を指し、スパッタリングアレイ2030、2030’はそれぞれ被成膜物体が移動する経路上の両側に位置し、ここでの移動方向500は被成膜物体の移動方向を指している。
図17と比較すると、
図20中のスパッタリングユニットは位置をずらした配列であり、すなわち各列のスパッタリングユニットと隣り合う列のスパッタリングユニットは支持プレートに平行な水平方向上でずれている。また、本実施形態の四角形構造はさらに延伸して長方形になってもよい。
【0048】
図21では、スパッタリングシステム2100は多辺形の平面スパッタリングターゲットを採用し、ここでの矢印は被成膜物体の移動方向を指し、スパッタリングアレイ2130、2130’はそれぞれ被成膜物体が移動する経路上の両側に位置し、ここでの移動方向500は被成膜物体の移動方向を指している。
図18と比較すると、
図21中のスパッタリングユニットは位置をずらした配列であり、すなわち各列のスパッタリングユニットと隣り合う列のスパッタリングユニットは支持プレートに平行な水平方向上でずれている。以上の3種類のスパッタリングターゲットについて使用上の差はないが、
図7に示すようにインライン型(In-line type)の加工方式についていえば、多辺形のスパッタリングターゲットは空間利用に最も優れており、その次は円形スパッタリングターゲットであり、四角形のスパッタリングターゲットは空間利用に最も劣っている。
【0049】
図22を参照されたい。
図22は本発明の異なる実施形態におけるスパッタリングシステム2200を示す図である。
図16と比較すると、
図22中の各スパッタリングユニットは柱状タイプであり、かつ各スパッタリングユニットのスパッタリングターゲットは柱状である。スパッタリングユニットは支持プレートに平行な水平方向に配列を延伸させ、スパッタリングアレイ2230、2230’はそれぞれ被成膜物体が移動する経路上の両側に位置し、かつ移動方向500は被成膜物体の移動方向を指している。注意すべきは、図中では円柱タイプを以って説明しているが、本発明はこれに限定されない。平面タイプのスパッタリングターゲットと比較して、円柱タイプのスパッタリングターゲットの材料利用率は高いが、円柱タイプのスパッタリングターゲットは回動するターゲット素地が必要であるため、垂直方向上ではより大きな空間を占める。以上の違いに基づき、円柱タイプのスパッタリングターゲットは物体表面の湾曲度合いの変化が大きくない状況に適用されるが、平面タイプのスパッタリングターゲットは物体表面の湾曲度合いの変化が大きい状況に適用されるため、各曲面セクションに応じてスパッタ面が呈する仰角が調整される。この実施形態では、各列のスパッタリングユニットと隣り合う列のスパッタリングユニットは支持プレートに平行な水平方向上でずれている。しかし、その他の変更例では、各列のスパッタリングユニットと隣り合う列のスパッタリングユニットは支持プレートに平行な水平方向上で揃っている。この変更例は
図16~
図18により理解できるので、説明は省略する。
【0050】
図23~
図24を参照されたい。
図23~
図24は本発明の異なる実施形態においてスパッタリングシステムに柱状スパッタリングターゲットを採用することを示す図であり、ここでの移動方向500は被成膜物体の移動方向を指している。
図22のスパッタリングアレイ2230、2230’と比較すると、
図23のスパッタリングアレイ2330、2330’中のスパッタリングユニットは支持プレートの水平方向に対して垂直に配列を延伸させる。また、
図23のスパッタリングアレイ2330、2330’と比較すると、
図24のスパッタリングアレイ2430、2430’中の各列のスパッタリングユニットと隣り合う列のスパッタリングユニットは支持プレートに平行な水平方向上で揃っている。
【0051】
以上、本発明のスパッタリングユニットは平面スパッタリングターゲット又は柱状スパッタリングターゲットを用いて実現でき、以下の表に示すように、その中の平面スパッタリングターゲットにはセラミック材質、合金材質又は金属単体を採用でき、回動スパッタリングターゲットには複合材質又は金属単体を採用できる。
【0052】
【符号の説明】
【0053】
700、1400 スパッタリングシステム
742、742-1~742-N チャンバー
741 台車
710 支持プレート
1410 チャンバー
720、1420 制御器
730、1430 スパッタリングアレイ
730S、1430S スパッタリングユニット
760 内部構造
761 マグネット
762 冷却水経路
763 電極層
764 電源
765 移動制御ユニット
730S2、766、831~834、1301、1302 スパッタリングターゲット
767 ガス制御ユニット
851~854 シャッター
768 サブシャッター
S1~S4 曲面セクション
P2 投影の高さ
H1~H4、H1’、H2’ スパッタリングターゲットの長さ
T-S、T-S’ 距離
500、501、502、601~604 移動方向
950 被成膜物体
960A、1210、1230 3次元表面
730S1、1303、1304、841~844 駆動軸
1305、1306 シャッター
1500 保持装置
900、1000、1100 スパッタリングアレイ
1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400 スパッタリングシステム
1630、1630’、1730、1730’、1830、1830’、1930、1930’、2030、2030’、 2130、2130’、2230、2230’、2330、2330’、 2430、2430’ スパッタリングアレイ
【要約】
【課題】個々のスパッタリングユニットの独立制御により非平坦な3次元表面を均一に成膜するスパッタリングシステムを提供する。
【解決手段】本発明のスパッタリングシステムは、複数のセクションを有する被成膜表面へスパッタリング成膜を行うのに適し、各セクションは投影の高さを有する。本発明は支持プレート、スパッタリングアレイ及び制御器を含む。スパッタリングアレイは支持プレート上に設置され、複数のスパッタリングユニットを含み、各セクションは少なくとも1つのスパッタリングユニットに対応する。各スパッタリングユニットは駆動軸及びスパッタリングターゲットを備える。スパッタリングターゲットは被成膜表面に面している。制御器は駆動軸に電気的接続し、駆動軸はスパッタリングターゲットが被成膜表面に対向して移動するのを制御し、制御器は各スパッタリングユニットからそれが対応する1つのセクションまでの距離を制御する。
【選択図】
図2