(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】高純度タウリン及び塩の調製方法、及びシステム
(51)【国際特許分類】
C07C 303/22 20060101AFI20220413BHJP
C07C 309/14 20060101ALI20220413BHJP
C07C 303/44 20060101ALI20220413BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
C07C303/22
C07C309/14
C07C303/44
C02F1/42 Z
(21)【出願番号】P 2020218896
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】202010320728.8
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520336182
【氏名又は名称】チェンジャン ヨンアン ファーマシュティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ファン キチャン
(72)【発明者】
【氏名】リ シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ フェン
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-025335(JP,A)
【文献】特開平03-188057(JP,A)
【文献】特開昭60-092253(JP,A)
【文献】特表2017-533883(JP,A)
【文献】特表2013-535650(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106699612(CN,A)
【文献】LIN, R. et al.,Controlling the Size of Taurine Crystals in the Cooling Crystallization Process,Ind. Eng. Chem. Res.,2013年,Vol.52, No.37,pp.13449-13458,DOI:10.1021/ie4000807
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンオキシドと重亜硫酸塩を反応させてイセチオン酸塩を生成し、
前記イセチオン酸塩を
、アンモニア
と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、及び硫酸リチウムからなる群から選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物とアンモノリシス反応させた後、蒸発させてタウリン塩の濃縮液を得て、前記濃縮液をイオン交換システム内でイオン交換させてタウリンを主成分とする吸着液を得て、前記吸着液を個別に回収し、前記吸着液からタウリンを抽出し、吸着された金属カチオンを酸で溶出し、溶出液を個別に回収し、前記溶出液から塩を抽出する、又は前記溶出液をそのまま塩溶液製品とする、ことを特徴とする高純度タウリン及び塩の調製方法。
【請求項2】
前記イオン交換システムにおいて、精製水を用いて前記イオン交換システムの吸着部と溶出部とをそれぞれ洗浄し、得られた洗浄水をそれぞれ回収する、ことを特徴とする請求項1に記載の高純度タウリン及び塩の調製方法。
【請求項3】
吸着状態において、前記吸着部の排出口での溶液のpHが4~10であるときに前記吸着液を回収し、溶出状態において、前記溶出部の排出口での溶液のpHが2~8であるときに前記溶出液を回収する、ことを特徴とする請求項2に記載の高純度タウリン及び塩の調製方法。
【請求項4】
少なくとも残存したイセチオン酸アニオンと当量の金属カチオンが前記吸着液に入る、ことを特徴とする請求項3に記載の高純度タウリン及び塩の調製方法。
【請求項5】
前記イオン交換システムに注入する前記濃縮液のタウリン濃度は10%~35%である、ことを特徴とする請求項4に記載の高純度タウリン及び塩の調製方法。
【請求項6】
前記重亜硫酸塩は、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸カリウム、又は重亜硫酸リチウムである、ことを特徴とする請求項5に記載の高純度タウリン及び塩の調製方法。
【請求項7】
前記酸は、硫酸、塩酸、リン酸、水溶性カルボン酸、又はスルホン酸である、ことを特徴とする請求項
1に記載の高純度タウリン及び塩の調製方法。
【請求項8】
前記イオン交換システムに注入する前記酸の濃度が5%~35%である、ことを特徴とする請求項
7に記載の高純度タウリン及び塩の調製方法。
【請求項9】
前記イオン交換システムの吸着体は、カチオンを吸着する機能を有する樹脂であるイオン交換樹脂である、ことを特徴とする請求項1乃至
8の何れか1項に記載の高純度タウリン及び塩の調製方法。
【請求項10】
前記吸着液からタウリンを抽出することは、蒸発濃縮、降温結晶化、及び固液分離を含み、前記降温結晶化と前記固液分離の温度は5℃~30℃であり、分離により得られるタウリン粗生成物は、タウリンの含有量が95%よりも大きく、純度が98.5%以上である、ことを特徴とする請求項
9に記載の高純度タウリン及び塩の調製方法。
【請求項11】
前記溶出液からの塩の抽出には蒸発結晶化が用いられ、前記蒸発結晶化の温度は60℃~125℃であり、分離により得られる塩粗生成物は、塩の含有量が97%よりも大きく、純度が98.5%以上である、ことを特徴とする請求項
10に記載の高純度タウリン及び塩の調製方法。
【請求項12】
エチレンオキシド法によるタウリン製造プロセスに用いられる高純度タウリン及び塩の調製システムであって、付加反応装置、アンモノリシス反応装置、蒸発装置、及びタウリン塩濃縮液回収装置を備え、
前記アンモノリシス反応装置には金属塩注入口が設けられ、前記タウリン塩濃縮液回収装置はイオン交換用のイオン交換システムに接続され、前記イオン交換システムには酸注入口、吸着液排出口及び溶出液排出口が設けられ、前記吸着液排出口はタウリン抽出装置に接続され、前記溶出液排出口は塩抽出装置に接続され、前記イオン交換システムには精製水注入口、吸着部洗浄水排出口、及び溶出部洗浄水排出口が設けられる、ことを特徴とする高純度タウリン及び塩の調製システム。
【請求項13】
前記吸着部洗浄水排出口は前記タウリン塩濃縮液回収装置に接続され、前記溶出部洗浄水排出口は前記塩抽出装置に接続される、ことを特徴とする請求項
12に記載の高純度タウリン及び塩の調製システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タウリンの化学合成プロセスにおける調製方法に関し、特にエチレンオキシド法による高純度タウリン及び塩の調製方法、及びその調製システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タウリンは、化学名が2-アミノエタンスルホン酸であり、生体細胞内の含有量が最も多い硫黄含有遊離アミノ酸である。タウリンの化学合成プロセスの経路には、主にエチレンオキシド法とエタノールアミン法が含まれる。これらのうち、エチレンオキシド法による調製には、以下の3つのステップが含まれる。
(1)エチレンオキシドを出発原料として、エチレンオキシド及び亜硫酸水素ナトリウム(重亜硫酸ナトリウム)を付加反応させ、ヒドロキシエタンスルホン酸ナトリウム(イセチオン酸ナトリウム)を生成する。
主な反応:
【化1】
(2)イセチオン酸ナトリウムをアンモノリシスしてタウリンナトリウムを生成する。
【化2】
(3)硫酸を加えて酸性化し、タウリン及び塩を生成する。
【化3】
【0003】
特許文献1~4には、硫酸を用いてタウリンナトリウムを中和することで、タウリン及び硫酸ナトリウムを生成する方法が記載されている。冷却後、結晶懸濁液をろ過することにより、タウリン粗生成物を容易に生成することができる。しかしながら、廃棄母液中にはタウリン、硫酸アンモニウムやほかの有機不純物がまだ含まれている。これらの特許では、これらの成分を廃棄母液から分離するための実現可能な方法も提案されており、製造の経済性、廃棄物の排出低減が実現される。しかしながら、すべての材料が同一の母液に混在しているので、タウリンや硫酸塩などの分離が困難であり、プロセスの設計が複雑化され、また抽出のためのエネルギーや人件費などのコストが増大し、そして、タウリン及び硫酸塩の製品の純度が低い。
【0004】
特許文献5~7には、タウリンの循環製造方法が開示されており、タウリンと硫酸ナトリウムの分離原理及び方法が詳細に記載されている。33℃では硫酸ナトリウムの溶解度が最高である。33℃~100℃では、硫酸ナトリウムの溶解度が少しずつ低下していき、一方、0℃~33℃の範囲では、硫酸ナトリウムの溶解度が急激に低下する。40℃以上の場合、硫酸ナトリウムは結晶水を含まない結晶の形態で析出され、30℃以下の場合、硫酸ナトリウムは芒硝(即ち、硫酸ナトリウム十水和物)の形態で析出される。タウリンを抽出する際に、温度を約33℃に制御し、硫酸塩を結晶化させずにタウリンを抽出し、次に、抽出後の母液を蒸発させることにより硫酸塩を結晶化させ、70℃~95℃で硫酸ナトリウムを分離する。この処理方法は、主に、異なる温度で溶解度が異なるという硫酸塩及びタウリンの特性を利用して、タウリンと硫酸ナトリウムを分離する。しかしながら、記載されている操作過程が非常に複雑であり、複数種類の材料が同一の母液系に存在するので、分離により得られる製品の純度が低くなる。
【0005】
特許文献8では、主に、新規深共晶溶剤を用いて調製する方法によって硫酸ナトリウムからタウリンを抽出する、タウリンからの硫酸ナトリウム固体不純物の除去方法が記載されている。モノエタノールアミンとタウリンを用いて深共晶溶剤を形成し、ろ過により硫酸ナトリウム不純物を除去し、有機溶媒を用いた逆抽出などの一連の手段により純粋なタウリン単体を分離する。この方法では、複数種の有機溶媒を使用し、しかも操作が煩雑であり、中間制御点の精度についての要件が厳しく、工業化が非常に困難である。
【0006】
特許文献9には、イセチオン酸ナトリウムをアンモノリシスすることによりタウリンを調製するリサイクルプロセスが記載されている。タウリン粗生成物のタウリン含有量は90%であり、硫酸ナトリウムが不純物への要求性の低い水ガラス製品に転化されることにより、硫酸ナトリウムの処理についての課題を解決する。この処理方法では、タウリン粗生成物と硫酸ナトリウムの純度についての課題を解決できず、低含有量・低純度製品の後続処理プロセスに過ぎない。
【0007】
上述のとおり、従来の硫酸中和法によるタウリンの調製プロセスには、タウリンと硫酸塩の分離・精製の点で多数の欠点が存在し、特に、分離プロセスが複雑であり、分離製品の純度が低く、抽出率が低く、抽出コストが高い。したがって、上記問題を解決するために、高純度タウリン及び硫酸塩又は他の塩を調製し生成するプロセスの開発が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国特許出願公開第101508657号明細書
【文献】中国特許出願公開第10158658号明細書
【文献】中国特許出願公開第10158659号明細書
【文献】中国特許出願公開第101486669号明細書
【文献】米国特許第9428450号明細書
【文献】米国特許第9428451号明細書
【文献】欧州特許第3133060号明細書
【文献】中国特許出願公開第110683970号明細書
【文献】中国特許出願公開第109020839号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術の問題を解決するために、本発明は、プロセスがシンプルであり、生産コストが低い高純度タウリン及び塩の調製方法、及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る技術的な解決手段は以下のとおりである。高純度タウリン及び塩の調製方法は、下記のステップを含む。
【0011】
高純度タウリン及び塩の調製方法は、エチレンオキシドと重亜硫酸塩を反応させてイセチオン酸塩を生成し、イセチオン酸塩をアンモニア、金属塩とアンモノリシス反応させた後、蒸発させてタウリン塩の濃縮液を得て、濃縮液をイオン交換システム内でイオン交換させてタウリンを主成分とする吸着液を得て、吸着液を個別に回収し、吸着液からタウリンを抽出し、吸着された金属カチオンを酸で溶出し、溶出液を個別に回収し、溶出液から塩を抽出する、又は溶出液をそのまま塩溶液製品とする、ことを含む。
【0012】
ここで、重亜硫酸塩は、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸カリウム、又は重亜硫酸リチウムであり、好ましくは、重亜硫酸ナトリウム又は重亜硫酸アンモニウムを使用する。金属塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、及び硫酸リチウムからなる群から選択されるいずれか1種又は2種以上の混合物であり、好ましくは、水酸化ナトリウム又は硫酸ナトリウムである。酸は、硫酸、塩酸、リン酸、水溶性カルボン酸、又はスルホン酸、好ましくは、硫酸又は塩酸である。
【0013】
好ましくは、イオン交換システムにおいて、精製水を用いてイオン交換システムの吸着部と溶出部とをそれぞれ洗浄し、得られた洗浄水をそれぞれ回収する。
【0014】
好ましくは、吸着状態において、吸着部の排出口での溶液のpHが4~10であるときに吸着液を回収し、溶出状態において、溶出部の排出口での溶液のpHが2~8であるときに溶出液を回収する。
【0015】
好ましくは、少なくとも残存したイセチオン酸アニオンと当量の金属カチオンが吸着液に入る。
【0016】
好ましくは、イオン交換システムに注入する濃縮液のタウリン濃度が10%~35%である。
【0017】
好ましくは、イオン交換システムに注入する酸の濃度が5%~35%である。
【0018】
好ましくは、イオン交換システムの吸着体は、カチオンを吸着する機能を有する樹脂であるイオン交換樹脂である。
【0019】
好ましくは、吸着液からタウリンを抽出することは、蒸発濃縮、降温結晶化、及び固液分離を含み、降温結晶化と固液分離の温度は5℃~30℃であり、分離により得られるタウリン粗生成物は、タウリンの含有量が95%よりも大きく、純度が98.5%以上である。
【0020】
好ましくは、溶出液からの塩の抽出には蒸発結晶化が用いられ、蒸発結晶化の温度は60℃~125℃であり、分離により得られる塩粗生成物は、塩の含有量が97%よりも大きく、純度が98.5%以上である。
【0021】
上記調製方法に基づき、本発明は、エチレンオキシド法によるタウリン製造プロセスに用いられる高純度タウリン及び塩の調製システムであって、付加反応装置、アンモノリシス反応装置、蒸発装置、及びタウリン塩濃縮液回収装置を備え、アンモノリシス反応装置には金属塩注入口が設けられ、タウリン塩濃縮液回収装置はイオン交換用のイオン交換システムに接続され、イオン交換システムには酸注入口、吸着液排出口及び溶出液排出口が設けられ、吸着液排出口はタウリン抽出装置に接続され、溶出液排出口は塩抽出装置に接続され、イオン交換システムには精製水注入口、吸着部洗浄水排出口、及び溶出部洗浄水排出口が設けられる高純度タウリン及び塩の調製システムをさらに提供する。
【0022】
洗浄水を効率よく回収して利用できるように、好ましくは、吸着部の洗浄水排出口はタウリン塩濃縮液回収装置に接続され、溶出部の洗浄水排出口は塩抽出装置に接続される。
【0023】
上述のとおり、本発明は、高純度タウリン及び塩の調製方法である。アンモノリシス反応後、イオン交換することによって2種の対象生成物の材料を効率よく簡単に分離し、それによって材料系を厳密に分離し、さらに、それぞれ独立して抽出と精製を行うことで、タウリンと塩という2つの対象生成物の結晶形態が非常に良好になり、最終的な抽出率が大幅に向上し、得られたタウリン及び塩の両方の純度が非常に高くなる。ここで、タウリン粗生成物は、タウリンの含有量が95%以上に達し、純度が98.5%よりも大きく、塩粗生成物は、塩の含有量が97%以上に達し、純度が98.5%以上に達し、再結晶化後、両製品の含有量は99.5%以上である。
【0024】
副生成物である硫酸塩を例とすれば、従来のタウリン製造プロセスでは、タウリンと硫酸塩が同一の母液系に存在するので、タウリンと硫酸塩との溶解度の違いにより分離しなければならず、つまり、硫酸ナトリウムの溶解度が最大であるときに、まずタウリンを抽出し、次に、大量のタウリンと硫酸塩を含有する抽出溶液を濃縮させて分離し、一般には、まず、高温で硫酸塩を分離し、次に、約33℃に降温してタウリンを抽出し、これを複数回繰り返して抽出を行う。このため、操作が非常に煩雑であり、タウリンの抽出率及び製品の品質も深刻に制限される。明らかに、すべての材料が同一の系に存在するため、材料の粘度が大きく、その結果、硫酸塩の結晶形態が悪くなり、分離により得られた硫酸ナトリウムの純度が低下し、しかも、タウリン粗生成物が大量の硫酸塩を含むことは避けられず、硫酸塩がタウリンを含むことも避けられず、タウリンと母液の分離が難しくなり、抽出されるタウリンの含有量が低く、収率が低下する。
【発明の効果】
【0025】
従来の製造プロセスに比べて、本発明に係る調製方法は、高純度タウリンの母液系からタウリンを抽出し、高純度の塩母液系から塩を抽出するものであり、2つの対象生成物が同一の母液系に存在することによる製品分離への干渉がなく、それによって、2種の対象生成物の抽出プロセスが簡素化され、生産コストが大幅に低下し、さらに、製品の製造過程の自動化、スマート化、連続化も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の実施形態の技術的な解決手段をより明確に説明するために、以下、実施形態の説明に必要な図面を簡単に逐次説明するが、明らかに、以下の説明における図面は、本発明の実施形態の一部に過ぎず、当業者であれば、創造的な努力を必要とせずに、これらの図面に基づいてほかの図面を得ることもできる。
【
図1】本発明の一実施形態に係る高純度タウリン及び塩製品の調製プロセスのフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に係るイオン交換システムの洗浄水の回収利用のフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態に係る吸着液中のタウリン製品の抽出のフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る溶出液中の硫酸塩製品の抽出のフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る高純度タウリン及び塩製品を調製する調整システムの模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る単一の樹脂カラムの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面及び特定の実施形態を参照しながら本発明の具体的な内容をさらに詳しく説明するが、ここで記載される例は、本発明を解釈するために過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0028】
図1~4に示すように、タウリン及び塩の調製方法は、下記のステップS1~S5を含む。
【0029】
S1;エチレンオキシドと亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩)溶液を反応させてヒドロキシエチルスルホン酸塩(イセチオン酸塩)を生成する。好ましくは、反応系のプロセス条件は、重亜硫酸塩溶液の濃度が25~60wt%、重亜硫酸塩とエチレンオキシドとの物質量の比が1.03~1.08:1、温度が50℃~80℃、pHが6~7である。
【0030】
S2;S1で得られたイセチオン酸塩をアンモニア水、金属塩と混合して反応液を生成する。混合比については、イセチオン酸塩が1molである場合、アンモニアが14molよりも大きく、金属塩が0.01mol~0.3molであることが好ましい。アンモニア含有量が20%(g/ml)よりも大きくなるまでアンモニアを吸収させ、アンモノリシス反応を行う。反応終了後、余剰のアンモニアガスを回収してアンモノリシス反応の原料として再利用する。アンモノリシス反応を完了した溶液は蒸発により濃縮して、濃縮液を生成する。
【0031】
ここで、アンモノリシス反応は、温度が150℃~290℃、好ましくは、240℃~260℃、圧力が10MPa~25MPa、反応時間が15min~60min、好ましくは、40min~50minであることが好ましい。
【0032】
最後のタウリン母液はアンモノリシス工程に再利用してもよく、この場合、金属塩の使用量は過剰となってもよい。最後のタウリン母液がアンモノリシス工程に再利用されない場合、金属塩の使用量は抑制することができる。具体的には、反応液がイセチオン酸塩、アンモニア、及び金属塩である場合、好ましくは、モル比が1:14~17:0.01~0.05であり、反応液がイセチオン酸塩、アンモニア、金属塩、及び再利用される最後の母液である場合、好ましくは、イセチオン酸金属塩、アンモニア、及び金属塩のモル比が1:14~17:0.05~0.3である。イセチオン酸アンモニウム塩が使用される場合、金属塩の添加量は適宜増加してもよく、好ましくは、イセチオン酸アンモニウム塩、アンモニア、金属塩のモル比が1:14~17:1.01~1.3である。
【0033】
S3;S2で生成した濃縮液のタウリン濃度は10%~35%、好ましくは、10%~25%に調整する。濃縮液を調製する際に加える溶液は、精製水、及びイオン交換システムの吸着部から排出された再利用洗浄水であってもよい。
【0034】
濃縮液は、イオン交換システムを用いて、吸着、水洗浄、溶出、及び水洗浄処理を順次行う。イオン交換システムの吸着体は、好ましくは樹脂であり、当該樹脂は、カチオンを吸着する機能を有する樹脂であり、カチオン交換樹脂、たとえばカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール基などを有するカチオン交換樹脂などを含み、また、カチオンを吸着する機能を有するキレート樹脂を用いることもできる。
【0035】
金属イオンを樹脂に吸着し、吸着後、吸着部の排出口での溶液のpHが4~10であるときに吸着液を回収した。吸着させる際に、カチオンの一部を通過させる、即ち、少なくともイセチオン酸アニオンと当量の金属カチオンは吸着部を通過させて吸着液に加える。吸着液中の金属カチオンの含有量は、0.05%~2%、好ましくは、0.1%~1%である。濃縮液中には完全に反応していないイセチオン酸塩が存在しており、イオン交換システムがカチオンのみを吸着し、アニオンをすべて通過させることから、好ましくは、イセチオン酸アニオンと当量の金属イオンは吸着部を通過させることにより、吸着液の排出口での成分がタウリンとイセチオン酸塩であることを確保する。そうではない場合、金属イオンが過剰量又は全部吸着されると、吸着液の排出口での成分がタウリン及びイセチオン酸の形態で存在することになる。成分中のイセチオン酸は不安定であり、その後の加熱蒸発濃縮プロセスにおいて変質して分解しやすい。また、イセチオン酸の粘度は比較的高いので、その後のタウリンの抽出に大きく影響する。また、イセチオン酸は中強酸であり、過度な酸性条件では、タウリンの結晶化状態が劣り、その結果、その後のタウリンの抽出に悪影響を及ぼし、その結果、タウリンの純度を低下させてしまう。
【0036】
精製水をイオン交換システムに加え、吸着部を洗浄する。精製水の使用量は、一般には、イオン交換システムの樹脂カラムの体積の1~2倍である。タウリンの含有量が検出できなくなるまで洗浄し、洗浄水を回収した。洗浄水はアンモノリシス反応後の濃縮液に再利用した。
【0037】
溶出剤となる酸をイオン交換システムに加え、樹脂に吸着された金属イオンを連続的に溶出する。酸は、硫酸、塩酸、リン酸、水溶性カルボン酸、スルホン酸などであってもよく、上記イオン交換に加える酸の濃度は5%~35%、好ましくは、15~25%である。イオン交換システムでは、カチオンのみが吸着されているので、溶出した金属イオンの純度が高く、それにより、回収する塩溶液の極めて高い純度が確保される。具体的には、硫酸の場合、得られる塩は硫酸塩であり、塩酸の場合は、得られる塩は塩化塩であり、硫酸塩も塩化塩も水への溶解度が大きい。溶出部の排出口での溶液のpHが2~8であるとき、溶出液を回収した。
【0038】
溶出部を精製水で洗浄する。精製水の使用量は、一般には、イオン交換システムの樹脂カラムの体積の1~2倍である。水洗における洗浄水を回収し、塩抽出工程で再利用した。
【0039】
上記吸着部及び溶出部には、洗浄が適用され、当該洗浄プロセスは、自動制御システムを用いてオンライン操作で実施されてもよく、このようにして、吸着と溶出を完全に分離し、吸着液中のタウリン溶液と溶出液中の塩溶液を完全に分離することができる。洗浄水は、それに含まれる材料の成分に応じて、対応する材料系に回収してもよい。
【0040】
以下、本発明に係るイオン交換の原理を説明する。
【0041】
イオン交換システムにおいて、カチオンのみを吸着するというイオン交換樹脂の性質を利用して、イオン交換樹脂を用いて材料(イオン交換システムに入った濃縮液)中の金属カチオンを吸着しながら、H+を材料内に交換し、それにより、材料中の金属カチオンが分離され、吸着終了後、水洗いすることで、イオン交換樹脂中に吸着液材料が残存しないようにする。得られた洗浄水は、製造プロセスの系に再利用されてもよい。洗浄済みの樹脂には、大量の金属カチオンが含まれ、そして他の成分が含まれない。酸を用いて樹脂中の金属カチオンを溶出し、樹脂を酸性状態に回復させ、対応する金属塩水溶液を回収する。溶出終了後、水洗いすることで余剰な酸及び塩を洗浄する。上記イオン交換を行うことで、タウリン及び塩を別々の2種の材料系に分離するという目的を実現し、さらにこれらをそれぞれ精製することができる。従来のプロセスでは、タウリンと塩が混在し、同一の材料系からこの2種の製品を抽出する。
【0042】
以下、アンモノリシスによりタウリンナトリウムを生成し、硫酸を加えて硫酸ナトリウムを生成する過程を例として、さらに詳細に説明する。
【0043】
【0044】
イセチオン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、及びアンモニア水を混合した反応液をアンモノリシス反応させる。反応終了後、反応液には、タウリンナトリウムが主成分であり、これに加えて、過剰な水酸化ナトリウム、完全に反応されていない少量のイセチオン酸ナトリウム及びタウリンナトリウム誘導体などが含まれる。アンモノリシス反応が終了し、アンモニアを回収した後、イオン交換システムを通じて、流速とpHを制御し、ナトリウムイオンを一定の割合で吸着させながら、一部の残存ナトリウムイオンを吸着液に通過させる。その結果、回収した吸着液の主成分はタウリンとイセチオン酸ナトリウムとなる。イセチオン酸ナトリウムの溶解度は非常に高く、系中のイセチオン酸ナトリウムの含有量は非常に小さいため、イセチオン酸ナトリウムが析出されず、そのため、硫酸ナトリウムの析出がタウリン抽出率に影響するという従来のプロセスの問題はない。さらに、イセチオン酸ナトリウムの溶解度が高いため、固液分離を行う際に、水洗い方式によって、タウリンの表面に残存している少量のイセチオン酸ナトリウムを洗い落とすことができ、したがって、タウリン製品の純度もその分向上することができる。このことから分かるように、本発明では、イオン交換システムを通じてタウリン溶液系と硫酸ナトリウム溶液系を完全に分離し、それは、効率的かつ簡単な分離方法であり、それにより、高純度タウリンと硫酸ナトリウムを調製するという目的を達成することができる。
【0045】
S4;ステップS3で回収した吸着液を個別に回収し、タウリンを抽出する。抽出には、従来技術を用いて、回収した吸着液材料に対して蒸発濃縮、降温結晶化、及び固液分離を行うことができる。本実施形態において、好ましくは、蒸発濃縮によるタウリン含有量が25%~40%であり、降温結晶化の温度は5℃~30℃であり、固液分離の温度は5℃~30℃、好ましくは、15~20℃であり、タウリン粗生成物及び母液が得られ、タウリン粗生成物は、タウリンの含有量が95%よりも大きく、純度が98.5%以上に達する。抽出率をさらに向上させるために、母液を複数回濃縮させて結晶化しタウリンを抽出することができる。ここで、タウリン抽出システム中の母液の主成分はタウリンとイセチオン酸金属塩であるので、最後の母液は、そのまま又は不純物除去処理を経た後、原料として回収することができ、好ましい形態としては、ステップS2に戻してアンモノリシス反応に供する。好ましい形態として、上記で得られたタウリン粗生成物に水と活性炭を加えて、再度再結晶化させ、固液分離をすることで、より高純度のタウリン完成品を得ることができる。より効果的に循環して利用するために、再結晶化により精製された母液は、ステップS4の吸着液の蒸発濃縮の初期段階に戻り、濃縮結晶化及び分離を行ってもよい。
【0046】
特定の実施形態では、上記タウリン粗生成物の再結晶化において、2~3倍の精製水を用いてタウリン粗生成物を溶解し、粗生成物の全質量に対して0.1%~0.3%の活性炭を加え、85℃~98℃で、15min~40min脱色し、活性炭をろ過した後、ろ液を5℃~30℃、好ましくは10~20℃に降温して結晶化させてもよい。さらに、結晶化材料を分離してベークすると、高純度のタウリン完成品が得ることができる。
【0047】
S5;ステップS3で回収した溶出液の材料を、塩の抽出処理工程に供し、ここで、任意の適用可能な従来技術も使用可能である。本実施形態では、好ましくは、蒸発結晶化プロセスにより塩を直接抽出し、次に固液分離を行い、ここで、好ましくは、蒸発結晶化の温度は60℃~125℃、好ましくは、85℃~110℃、溶出液結晶化後の固液分離の温度は60℃~100℃、好ましくは、85~95℃であり、分離により得られる硫酸塩は、含有量が97%よりも大きく、純度が98.5%以上に達する。塩の純度を向上させるために、上記で得られた塩を再度再結晶化してもよい。
【0048】
本発明に係る高純度タウリン及び塩の調製方法は、非連続、セミ連続又は連続方式で行うことができる。
【0049】
もちろん、ステップS3で回収した溶出液は、そのまま高純度硫酸塩溶液として使用することも可能である。
【0050】
上記プロセスの調製方法に基づき、本発明は、高純度タウリン及び塩を調製するための調製システムを提供し、
図5、6に示すように、該調製システムは、エチレンオキシドと重亜硫酸塩の付加反応装置1、アンモノリシス反応装置2、蒸発装置3、及びタウリン塩濃縮液回収装置4を備え、タウリン塩濃縮液回収装置はイオン交換システム5に接続され、濃縮液がイオン交換システム5に入ってイオン交換を行う。上記各装置及びシステムのいずれにも、プロセスにより要求される必要な材料の注入口、排出口、及び制御バルブが設けられており、その中でも、アンモノリシス反応装置2には、金属塩の材料注入口21、アンモニア水及び再利用アンモニアガスの注入口、及び付加反応装置1から排出される材料を受ける注入口が設けられる。
【0051】
本発明では、任意の従来のイオン交換システムを使用することができ、その構造については制限がなく、固定床、パルス床又は擬似移動床のものであってもよく、また、連続交換床であってもよい。擬似移動床は、従来の固定床による樹脂吸着とイオン交換プロセスに連続向流システムを組み合わせた技術である。従来の連続交換床は、複数の樹脂カラムを含み、1サイクルにおいて吸着、溶出及び水洗のすべてを実施できる。それに対し、固定床は、各ステップが所定の時間に亘って行われるようにすべてのステップの操作を断続的に行う。
【0052】
本実施形態では、イオン交換システムは、4つのカチオン吸着樹脂カラム51、52、53、54、及び電磁ポンプを含む。樹脂カラムごとに、3つの材料注入口と4つの材料排出口が設けられ、材料の供給・排出がバルブを通じて制御される。3つの材料注入口は、濃縮液注入口511、521、531、541、酸注入口512、522、532、542、及び精製水注入口513、523、533、543を含み、材料排出口は、吸着液排出口514、524、534、544、吸着洗浄水排出口515、525、535、545、溶出液排出口516、526、536、546、及び溶出洗浄水排出口517、527、537、547を含む。これらのうち、吸着液排出口514、524、534、544は、タウリン抽出装置6に接続され、溶出液排出口516、526、536、546は、塩抽出装置7に接続される。吸着洗浄水排出口515、525、535、545は、濃縮液回収装置4に接続され、溶出洗浄水排出口517、527、537、547は、塩抽出装置7に接続される。樹脂カラムの材料注入口及び材料排出口はすべて固定されており、3つの材料注入口はそれぞれ1つの注入口を共用し、4つの材料排出口はそれぞれ1つの排出口を共用してもよく、バルブアレイやほかの任意の可能なバルブ制御方式によって、2種の材料の供給・排出が切り換えられてもよい。システムが作動するときに、同じ時期において、4つの樹脂カラムは、それぞれ異なる工程状態にあり、イオン交換システムの連続作動方式を模擬してもよい。
【0053】
図5には、同じ時期内の4つの樹脂カラム51、52、53、54の作動状態が示されており、順次、吸着、水洗、溶出及び水洗の工程を行っている様子である。具体的には、樹脂カラム51が吸着状態である場合、濃縮液注入口511のバルブが開き、濃縮液回収装置4内の濃縮液が濃縮液注入口511に流れ、酸注入口512と精製水注入口513のバルブが閉じられ、材料の排出口端で、吸着液排出口514のバルブが開き、タウリン抽出装置6が吸着液を回収し、吸着洗浄水排出口515、溶出液排出口516及び溶出洗浄水排出口517のバルブが閉じられる。樹脂カラム52が水洗浄状態である場合、精製水注入口523のバルブが開き、精製水を導入し、濃縮液注入口521と酸注入口522のバルブが閉じられ、材料の排出口端で、吸着洗浄水排出口525のバルブが開き、洗浄水が濃縮液回収装置4に流れ、吸着液排出口524、溶出液排出口526及び溶出洗浄水排出口517のバルブが閉じられる。樹脂カラム53が溶出状態である場合、酸注入口532のバルブが開き、酸を導入し、精製水注入口533及び濃縮液注入口531のバルブが閉じられ、材料の排出口端で、溶出液排出口536が開き、溶出液が塩抽出装置7に流れ、溶出洗浄水排出口537、吸着液排出口534及び吸着洗浄水排出口535のバルブが閉じられる。樹脂カラム54が水洗浄状態である場合、精製水注入口543のバルブが開き、精製水を導入し、濃縮液注入口541及び酸注入口542のバルブが閉じられ、材料の排出口端で、溶出洗浄水排出口547のバルブが開き、溶出洗浄水が塩抽出装置7に流れ、吸着液排出口544、溶出液排出口546及び吸着洗浄水排出口545のバルブが閉じられる。これらの設備に加えて、該システムは、調製に必要な制御システム、動力設備、接続部品及び配管バルブなどをさらに含み、これらは、すべて当該分野で一般的な技術手段であるので、ここでは詳しく説明しない。イオン交換システムにおける吸着、溶出、2つの水洗の工程では、バルブアレイ制御システムを通じて吸着部及び溶出部で排出される材料を独立して回収することができ、排出される材料は吸着液、溶出液、吸着部と溶出部から排出された洗浄水を含む。
【0054】
イオン交換システムにおける吸着部の排出口と溶出部の排出口に設けられたpH値の監視装置により排出溶液のpH値を取得し、吸着液と溶出液の排出タイミングを選択し、このように、高純度タウリンを含有する吸着液材料及び高純度の塩水溶液を回収する。
【0055】
タウリン抽出装置6及び塩抽出装置7としては、従来技術における任意の適切な設備やシステムが使用可能であり、たとえば、抽出装置は、従来の蒸発設備、降温結晶化設備/結晶化設備、及び固液分離設備で構成される。これらのうち、固液分離設備は、プレート遠心分離機、トップサスペンション遠心分離機、連続横型スクリュー遠心分離機や、プレートフレームフィルタープレスなど、任意の適切な従来の設備を用いることができる。
【0056】
図6に示すように、一態様として、イオン交換システムに1つのみの樹脂カラム55が設けられている場合にも、3つの材料注入口551、552、553、及び4つの材料排出口554、555、556、557を含み、3つの材料注入口はそれぞれ1つの注入口、4つの材料排出口はそれぞれ1つの排出口を共用することができ、イオン交換システムがバルブ制御によって断続的に作動することによって、吸着、水洗、溶出、水洗という各作動状態に順次進む。
【0057】
本発明の調製方法の技術的効果を説明するために、以下、例を挙げて説明する。特に断らない限り、以下の実施例で使用される原料は、市販の製品であり、使用される方法は一般的な方法であり、材料の含有量はすべて質量体積百分率を意味する。
【実施例】
【0058】
[実施例1]
本実施例では、アンモノリシス液の調製を示す。
【0059】
[イセチオン酸ナトリウムの調製]
重亜硫酸ナトリウム溶液とエチレンオキシドを、重亜硫酸ナトリウムとエチレンオキシドとのモル比が1.05:1となる割合で混合し、pH値6.2~6.8、温度60~65℃の条件下で反応させ、イセチオン酸ナトリウムを生成した。
【0060】
[アンモノリシス液の調製]
イセチオン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、及びアンモニア水を、255℃、10~18MPaの条件下で、45min(分間)反応させ、反応終了後、アンモニアガスを排出して回収し、濃縮させてアンモノリシス反応濃縮液を生成した。
【0061】
[実施例2]
本実施例では、イオン交換システムによるナトリウムイオンの吸着、及びタウリンと硫酸ナトリウムの2種の材料の溶液系への分離を示す。
【0062】
アンモノリシス濃縮液を18Lのタウリン含有量20%の溶液とした。濃度15%の硫酸溶液12Lを調製した。ナトリウムイオンを吸着する機能を有する樹脂を備えた小型イオン交換システムにおいて、調製したタウリン溶液をシステムに圧送し、回収する吸着液のpHを7~8、吸着液中のナトリウムイオンの含有量を0.05%~1%に制御し、合計22L回収した。ここで、吸着液中のタウリン含有量は16%、イセチオン酸ナトリウム含有量は1.5%であった。精製水でタウリンの含有量が検出できなくなるまでシステムを洗浄し、吸着部からの洗浄水を濃縮液の材料として再利用した。15%の硫酸溶液を洗浄済みのシステムに圧送し、回収した溶出液のpHを3~5程度に制御し、硫酸ナトリウム含有量が17%の溶出液を合計16L回収した。回収終了後、精製水でシステムを洗浄し、溶出部からの洗浄水を排出することで、循環吸着分離機能が実現された。システムには複数本の樹脂カラムを使用することで、材料を制御して連続的に供給・排出することが可能になり、かつ各回収液の材料の含有量が安定的に維持された。
【0063】
【0064】
[実施例3]
本実施例では、実施例2で回収した吸着液と溶出液のそれぞれの濃縮抽出を示す。
・ 吸着液抽出:吸着液3Lを、タウリン含有量が33%となるまで濃縮させ、15℃に降温して遠心分離した。得られたタウリン粗生成物は、タウリン含有量が95.5%(g/g)であり、水分が3.5%(g/g)であった。水分を除いた場合の抽出物のタウリン含有量は98.96%(g/g)であり、純度が非常に高くなった。タウリンを抽出した母液中のタウリン含有量は10%、イセチオン酸ナトリウム含有量は4.7%、硫酸塩含有量は<10PPmであった。
(2)溶出液抽出:溶出液3Lを、95℃の高温で6倍濃縮させて結晶化させ、遠心分離した。抽出物の硫酸ナトリウム含有量は97.5%(g/g)、水分は2.0%(g/g)であった。水分を除いた場合の抽出物の硫酸ナトリウムの含有量は99.49%(g/g)であり、純度が非常に高くなった。母液中のタウリン含有量は1ppb未満であり、イセチオン酸ナトリウム含有量は1ppb未満であり、硫酸塩含有量は35%であった。
【0065】
【0066】
【0067】
[実施例4]
本実施例では、タウリンと硫酸ナトリウムのそれぞれの再結晶化を示す。
タウリン再結晶化:上記実施例3で回収したタウリン粗生成物200gに精製水500g、活性炭0.4gを加え、95℃に加熱して20min保温し、活性炭ろ過後、15℃に降温して結晶化させた。結晶化液を分離し、ベークして精製品タウリン155gを得た。分離した精製品母液は、前の工程、つまり濃縮結晶化の工程にリサイクルして再利用することができ、また、再結晶化工程の次のロットの材料にリサイクルしてもよい。検出データを以下に示す。
【0068】
【0069】
硫酸ナトリウム再結晶化:上記実施例3で回収した硫酸ナトリウム200gに精製水500gを加え、95℃に加熱して蒸発させて結晶化させた。結晶化液を分離し、ベークして乾燥精製品の硫酸ナトリウム190gを得た。分離した母液は、前の工程、つまり蒸発結晶化の工程にリサイクルして再利用することができ、また、再結晶化工程の次のロットの材料にリサイクルしてもよい。検出データを以下に示す。
【0070】
【0071】
[実施例5]
本実施例では、従来のプロセスの方法を用いた分離タウリンと硫酸ナトリウムの調製を示す。
タウリン抽出:アンモノリシス濃縮液を一定の濃度とした後、撹拌しながら、濃硫酸を緩やかに加えて中和し、中和過程の温度を50~60℃に制御し、pHが8.0となったとき酸の添加を停止し、33℃に降温して結晶化させた。タウリン粗生成物と母液を分離し、検出したところ、粗生成物中のタウリン含有量が90%(g/g)、硫酸ナトリウム含有量が3%(g/g)、水分が6%であり、母液中のタウリン含有量が15%、硫酸塩含有量が25%であった。
硫酸ナトリウム抽出:タウリンが抽出された母液を33%含有量まで濃縮させ、95℃以上の高温で硫酸ナトリウムを分離した。分離した硫酸ナトリウムの含有量は90%(g/g)、水分は5%であり、硫酸塩中、タウリンの含有量は4%であった。分離した母液を33℃に降温してタウリンを抽出し、このように、硫酸ナトリウムとタウリンの分離・抽出を繰り返して行った。
【0072】
【0073】
[実施例6]
本実施例では、イオン交換システムによるナトリウムイオンの吸着、及びタウリンと塩化ナトリウムの2種の材料の溶液系への分離を示す。
【0074】
アンモノリシス濃縮液を18Lのタウリン含有量20%の溶液とした。12%の塩酸溶液24Lを調製した。調製したタウリン溶液をイオン交換システムに圧送し、回収する吸着液のpHを7~8、吸着液中のナトリウムイオンの含有量を0.05%~1%に制御し、タウリンの含有量16%、イセチオン酸ナトリウムの含有量1.5%の吸着液を合計22L回収した。精製水でシステムをタウリンの含有量が検出できなくなるまで洗浄し、洗浄水をアンモノリシス濃縮液の材料に再利用した。12%の塩酸溶液を洗浄済みのシステムに圧送し、回収した溶出液のpHを3~5程度に制御し、塩化ナトリウム含有量が17%の溶出液を合計28L回収した。回収終了後、精製水でシステムを洗浄した。
【0075】
【0076】
以上の実施例から明らかなように、従来のプロセスの場合は、材料系のタウリンと硫酸ナトリウムが混合しているため、タウリンと硫酸ナトリウムを抽出分離した製品は、含有量が低く、水分が高く、純度が低く、またプロセスの制御が複雑であった。一方、本発明の方法で調製すると、タウリンと硫酸ナトリウム/塩化ナトリウムの材料系を混合したまま抽出分離するということを本質的に解決し、高純度タウリンと硫酸ナトリウム/塩化ナトリウムを調製するという目的を達成することができる。
【0077】
なお、以上の実施形態および実施例は、本発明の技術案を説明するために過ぎず、これに限定するものではなく、前述した実施形態および実施例を参照しながら本発明を詳細に説明したが、当業者にとって明らかなように、前述の各実施形態および実施例に記載の技術案を修正したり、調製反応条件を変更したり、技術的特徴の一部に対して同等置換を行ったりすることができ、これらの修正や置換により、対応する技術案の趣旨は本発明の各実施形態および実施例の技術案の精神及び範囲を逸脱することはない。