(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】耐圧型管継手及びそれを用いた管接続方法
(51)【国際特許分類】
F16L 37/12 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
F16L37/12
(21)【出願番号】P 2021121261
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2020132258
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311014705
【氏名又は名称】NJT銅管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】若林 広行
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0021001(US,A1)
【文献】特開2011-132981(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0232067(US,A1)
【文献】特開2009-180273(JP,A)
【文献】特開平11-351466(JP,A)
【文献】特開平06-147374(JP,A)
【文献】米国特許第06450550(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接続管体がその管端から挿入されて、固定せしめられる挿入孔を、少なくとも一方の端部側に有する筒状の継手本体と;前記挿入孔に挿入せしめられる前記被接続管体の外表面に食い込んで、該被接続管体の引き抜きを阻止する弾性変形可能な複数の係止爪を、該挿入孔の周方向に所定間隔を隔てて位置するように備えてなる、該挿入孔内に位置固定に配設された規制リングと;該規制リングの複数の係止爪を径方向外方に押し拡げるようにして、該規制リング内に嵌入、配置せしめられ、前記被接続管体の挿入によって、該被接続管体の管端に当接されて、前記挿入孔の奥部に移動せしめられることにより、該被接続管体が該規制リング内に代替、配置されて、かかる被接続管体の外表面に、該規制リングの複数の係止爪が食い込み得るように構成してなる誘導筒体と;前記規制リングよりも前記挿入孔の軸方向外側に位置して、該挿入孔の内面に露呈するように配設され、該挿入孔内に挿入される前記被接続管体の外面に接して、該被接続管体の外面と前記挿入孔の内面との間をシールするO-リングからなる第一のシール手段と;前記継手本体の被接続管体挿入側の端部外周部に螺合せしめられ、かかる螺合の進行によって、前記O-リングを前記挿入孔の軸方向に加圧・圧縮せしめることにより、該O-リングを径方向内方に膨出させて、前記被接続管体の外面に対する圧着性を高める、前記挿入孔に挿入される該被接続管体の挿通孔が底部に形成された有底筒体形状の加圧ナットとを有し、且つ
前記加圧ナットが、前記継手本体の端部外周面に設けられたネジ部に螺合せしめられる筒体部の端面に開口する少なくとも一つの切欠きを有し、該加圧ナットの該継手本体に対する螺合によって、該切欠きを通じて、該継手本体の端部外周面に設けられたネジ部の一部が、外部に露呈せしめられるようになっていることを特徴とす
る耐圧型管継手。
【請求項2】
前記切欠きが、前記筒体部の軸方向外方に開口する円弧形状を呈していることを特徴とする請求項
1に記載の耐圧型管継手。
【請求項3】
被接続管体がその管端から挿入されて、固定せしめられる挿入孔を、少なくとも一方の端部側に有する
と共に、かかる挿入孔の内面に、内側ネジ部が設けられてなる筒状の継手本体と、
前記挿入孔に挿入せしめられる前記被接続管体の外表面に食い込んで、該被接続管体の引き抜きを阻止する弾性変形可能な複数の係止爪を、該挿入孔の周方向に所定間隔を隔てて位置するように備えてなる、該挿入孔内
に配置された規制リングと、
外周面に外側ネジ部を有し、かかる外側ネジ部を前記挿入孔内面の内側ネジ部に螺合することによって、前記規制リングを固定せしめる、該挿入孔内に収容されて、筒内に前記被接続管体が挿通せしめられる円筒形状のネジカラー部材と、
前記規制リングの複数の係止爪を径方向外方に押し拡げるようにして、該規制リング内に嵌入、配置せしめられ、前記被接続管体の挿入によって、該被接続管体の管端に当接されて、前記挿入孔の奥部に移動せしめられることにより、該被接続管体が該規制リング内に代替、配置されて、かかる被接続管体の外表面に、該規制リングの複数の係止爪が食い込み得るように構成してなる誘導筒体と、
前記
ネジカラー部材よりも前記挿入孔の軸方向外側に位置して、該挿入孔の内面に露呈するように配設され、該挿入孔内に挿入される前記被接続管体の外面に接して、該被接続管体の外面と前記挿入孔の内面との間をシールするO-リングからなる第一のシール手段と、
前記継手本体の被接続管体挿入側の端部外周部に螺合せしめられ、かかる螺合の進行によって、前記O-リングを前記挿入孔の軸方向に加圧・圧縮せしめることにより、該O-リングを径方向内方に膨出させて、前記被接続管体の外面に対する圧着性を高める、前記挿入孔に挿入される該被接続管体の挿通孔が底部に形成された
、前記ネジカラー部材とは別体の有底筒体形状の加圧ナットとを、
有することを特徴とする耐圧型管継手。
【請求項4】
前記
ネジカラー部材が、前記被接続管体挿入側の端面に工具穴を有し、該工具穴を利用した工具による回動操作によって、前記挿入孔内面の内側ネジ部への螺合が行われ得るようになっていることを特徴とする請求項
3に記載の耐圧型管継手。
【請求項5】
厚肉筒体形状を呈し、その軸方向の一方の端面に開口するV字部を有する、弾性材料からなるVパッキン部材が、第二のシール手段として、前記ネジカラー部材と前記O-リングとの間に配置されて、前記継手本体の挿入孔内面と前記被接続管体の外面との間をシールするように構成されていることを特徴とする請求項
3又は請求項4に記載の耐圧型管継手。
【請求項6】
前記規制リングの配設位置よりも奥部側の前記挿入孔の内面に設けられ、前記被接続管体の挿入によって移動せしめられる前記誘導筒体が当接させられて、その移動が阻止せしめられるストッパ手段が、設けられていることを特徴とする請求項1
乃至請求項5の何れか1項に記載の耐圧型管継手。
【請求項7】
前記規制リングの複数が、隣接する規制リング間に環状のスペーサを介在せしめてなる形態において、前記挿入孔の軸方向に配列されていることを特徴とする請求項1
乃至請求項
6の何れか1項に記載の耐圧型管継手。
【請求項8】
前記O-リングの前記挿入孔の軸方向両側にカラー部材が配置され、該カラー部材の一方に、前記加圧ナットの加圧力が作用せしめられることにより、該O-リングの圧縮が行なわれるようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項
7の何れか1項に記載の耐圧型管継手。
【請求項9】
前記加圧ナットが、前記継手本体の端部外周部に螺合せしめられる筒体部内において、底部に形成された前記挿通孔の周囲から所定高さで立ち上がる、該継手本体の端部の内径よりも小さな外径を有する筒状の押圧突部を有し、該加圧ナットの螺入によって、かかる押圧突部が前記O-リングを加圧・圧縮せしめるように構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項
8の何れか1項に記載の耐圧型管継手。
【請求項10】
請求項
3に記載の耐圧型管継手を用いて、所定の被接続管体の接続を行なう方法にして、
前記継手本体の挿入孔内面に設けられた内側ネジ部に対する、前記ネジカラー部材の外側ネジ部の螺合によって、前記規制リングが該ネジカラー部材にて位置固定に保持される一方、該規制リングの複数の係止爪を径方向外方に押し拡げるようにして、かかる規制リング内に、前記誘導筒体が嵌入、配置せしめられてなる形態の前記耐圧型管継手を準備する工程と、
該耐圧型管継手における前記継手本体の挿入孔に、前記被接続管体を、その管端から差し込む工程と、
かかる差し込まれた被接続管体の管端にて、前記規制リング内に配置されている前記誘導筒体を押し出し、前記挿入孔の奥部に移動せしめる一方、該被接続管体を、該誘導筒体に代わって該規制リング内に配置させて、かかる被接続管体の外表面に該規制リングの複数の係止爪が食い込み得るようにする工程と、
前記継手本体の端部に螺合された前記加圧ナットを、更に螺入せしめて、前記O-リングを前記挿入孔の軸方向に加圧・圧縮することにより、該O-リングを径方向内方に膨出させて、前記被接続管体の外面に対する圧着性を高める工程とを、
含むことを特徴とする管接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧型管継手及びそれを用いた管接続方法に係り、特に、空調機器における冷媒配管の如き、流体が高い圧力下で流通せしめられる配管の接続に好適に用いられ得る耐圧型の管継手構造と、それを用いて、被接続管体を有利に接続せしめて、優れた耐圧性を発揮し得るようにした管接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体や気体等の流体を輸送する配管を、別の配管に接続したり、また目的とする機器に接続したりするために、ソケット、アダプタ、チーズ、T字型、Y字型、クロス型、90°エルボ等と称される各種の管継手が、広く用いられてきており、例えば水道配管や温水機器接続用配管、空調機器における冷媒用配管等の接続工事が、そのような管継手を用いて行なわれてきている。
【0003】
ところで、この種の管継手においては、接続されるべき配管(被接続管)と継手との接続に際して、それらをろう付けにより固着せしめるろう付け手法を採用することが、一般的であったのであるが、その作業時に火気を使用する必要があるために、天井裏の如き配管現場での管接続作業には、採用し難いものであった。
【0004】
そこで、被接続管と継手との接続に際して、ろう付けの如き火気を使用することなく、それら両者を機械的(メカニカル)に接続する管継手構造が、種々提案されており、例えば特開平11-141760号公報においては、継手の円筒部に被接続管である銅管の端部を拡径して外嵌せしめ、そして円筒部に設けた環状溝部に位置する銅管の拡径部を、かかる環状溝部内へかしめることによって、それら継手と銅管とを固着させる接続構造が、明らかにされている。また、特表2003-524132号公報には、筒状継手の端部内に被接続管の端部を嵌入せしめて二重管構造とし、その二重管構造の間に、封止用リングを介在せしめてなる状態において、その封止用リングの両側を一括プレスすることによって、当該二重管部位をかしめ、塑性変形させることにより、それら被接続管と継手との接続を実現せしめてなる連結構造が、明らかにされている。
【0005】
しかしながら、それら継手と被接続管とを嵌合せしめた二重管構造部位をかしめて、連結する方式にあっては、継手と被接続管との連結を、単に、かしめ操作にて行ない得るものであるところから、その連結作業が、前記したろう付け手法に比べて、簡単且つ容易となるという利点を有しているものの、かかるかしめ操作には、それを実施するための専用工具として、所定のかしめ工具(プレス工具)が必要とされ、このかしめ工具がないと、目的とするかしめ作業を実施することが出来なくなる。このために、継手と被接続管との連結場所には、作業者が重量のあるかしめ工具を持ち運びする必要があり、また、かしめ作業中では、連結されるべき継手と被接続管の位置を固定するために、作業者の手にて支持する必要があるところから、かかるかしめ作業にも、その更なる簡略化が望まれているのである。しかも、連結場所への専用工具の持ち運びが失念されたり、専用工具が紛失や盗難されたりした場合にあっては、そのかしめ作業に手間取り、管接続作業全体の遅延をもたらす他、かしめ工具がないことにより、かしめ作業自体が全く実施することが出来なくなる問題も、内在するものであった。
【0006】
このため、上述の如きかしめ作業を実施する必要がなく、単に、被接続管を差し込むだけで連結が可能な継手構造として、特開2000-249268号公報においては、パイプと継手本体とを接続する際に、継手本体に形成した雄ネジに、押圧体に形成した雌ネジを螺合させて、それら継手本体と押圧体との間に、ロックリング等を挟持、固定せしめ、そして、接続されるべきパイプをかかる押圧体内を通じて継手本体内に挿入すると共に、パイプの外周面にロックリングの規制片を係合させて、かかるパイプの抜止めを図るようにした継手が、提案されている。また、特開2019-90503号公報においても、継手本体の開口部にキャップ部材を螺合せしめると共に、それら継手本体とキャップ部材との間にロックリングを挟持、固定した状態において、連結されるべき管体をキャップ部材を通じて継手本体内に差し込み、その外周面にロックリングの爪を食い込ませるようにすることによって、かかる差し込まれた管体の引抜きを規制するようにした管継手構造が、明らかにされている。
【0007】
しかしながら、それら被接続管を差し込む方式の管継手構造にあっては、かかる被接続管内を流通せしめられる流体の漏洩を阻止すべく、継手本体と、押圧体又はキャップ部材との間におけるシールと共に、被接続管と、押圧体又はキャップ部材との間におけるシールを含む、少なくとも2ヶ所にシール手段を設ける必要があり、そのために、管継手構造におけるシール構造が複雑となることに加えて、継手本体に対する押圧体やキャップ部材の螺合が緩んで、漏れが発生したり、被接続管が脱落したりする恐れも、内在するものであった。
【0008】
また、特開2003-42369号公報においては、ワンタッチ継手として、筒状の継手本体の一方の開口部内に、O-リング及び規制リングを順次挿入して配置せしめ、更にリング状の保持部材を挿入してなる状態において、継手本体の開口部の端部を内側にかしめることによって、保持部材をかしめ固定してなる形態の継手構造が明らかにされ、かかる継手本体の開口部内に接続されるべきパイプを差し込むことにより、このパイプの外周面に、規制リングの規制舌の先端が食い込むようにして、かかるパイプの抜け止めが阻止されるようになっている。しかしながら、そこでは、パイプの差込み方向における下流側に、O-リングによるシール機構が配設されることとなるところから、パイプの差し込みによって規制リングを通過したパイプの外表面に擦傷が発生し、その傷が発生した表面において、O-リングによるシールが行なわれることとなるところから、シール特性が充分に発揮出来ないという問題を内在するものであった。
【0009】
しかも、上述の如き従来の挿入式の継手構造にあっては、継手本体の挿入孔に対して、被接続管を差し込むだけで、取り付けられ、この被接続管の引抜きに対する抵抗は、かかる被接続管の外周面に、ロックリングや規制リングの規制片乃至規制舌が食い込むことによって、実現されるものであるところから、空調機器における冷媒配管の如き、流体が高い圧力下で流通せしめられる配管において、その接続に必要とされる耐圧性や引抜き阻止力を、充分に発揮し難いという問題が、内在している。また、かかる被接続管の引抜き阻止力を高めるべく、ロックリングや規制リングを複数段に設置したり、或いはそれらロックリングや規制リングにおける規制片乃至規制舌を高硬質化したり、高強度化したりすると、被接続管の挿入抵抗が過大となり、作業者の手作業によって挿入することが困難となる問題が生ずる。特に、被接続管の管径が大きくなる程、かかる被接続管の挿入抵抗は大きくなるのである。具体的には、被接続管の管径(外径/呼び径)が22.22mmを超えるようになると、標準の一般男性の力では挿入出来ない程の挿入力が必要とされるのであって、例えば、管径が28.58mmの被接続管を挿入するためには、0.6kN以上の挿入力が必要とされることとなるために、作業者の手によって被接続管を挿入することは、著しく困難なことであったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-141760号公報
【文献】特表2003-524132号公報
【文献】特開2000-249268号公報
【文献】特開2019-90503号公報
【文献】特開2003-42369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、被接続管体の接続に際して、火気を使用することなく、また専用工具を用いる必要のない、優れた耐圧性並びに引抜き阻止力を発揮し得る耐圧型管継手を提供することにあり、また他の課題とするところは、管外径が22.22mmを超えるような大径の被接続管体であっても、作業者の通常の力を用いて接続作業が可能な耐圧型管継手を提供するこことにあり、更にそのような耐圧型の管継手を用いて、被接続管体を、高いシール性が確保され得るように、有利に接続し得る方法を提供することをも、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、本発明は、上記した課題又は明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書の記載全体並びに図面に開示の技術内容に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0013】
そこで、本発明は、先ず、前記した課題を解決すべく、(a)被接続管体がその管端から挿入されて、固定せしめられる挿入孔を、少なくとも一方の端部側に有する筒状の継手本体と、(b)前記挿入孔に挿入せしめられる前記被接続管体の外表面に食い込んで、該被接続管体の引き抜きを阻止する弾性変形可能な複数の係止爪を、該挿入孔の周方向に所定間隔を隔てて位置するように備えてなる、該挿入孔内に位置固定に配設された規制リングと、(c)該規制リングの複数の係止爪を径方向外方に押し拡げるようにして、該規制リング内に嵌入、配置せしめられ、前記被接続管体の挿入によって、該被接続管体の管端に当接されて、前記挿入孔の奥部に移動せしめられることにより、該被接続管体が該規制リング内に代替、配置されて、かかる被接続管体の外表面に、該規制リングの複数の係止爪が食い込み得るように構成してなる誘導筒体と、(d)前記規制リングよりも前記挿入孔の軸方向外側に位置して、該挿入孔の内面に露呈するように配設され、該挿入孔内に挿入される前記被接続管体の外面に接して、該被接続管体の外面と前記挿入孔の内面との間をシールするO-リングからなる第一のシール手段と、(e)前記継手本体の被接続管体挿入側の端部外周部に螺合せしめられ、かかる螺合の進行によって、前記O-リングを前記挿入孔の軸方向に加圧・圧縮せしめることにより、該O-リングを径方向内方に膨出させて、前記被接続管体の外面に対する圧着性を高める、前記挿入孔に挿入される該被接続管体の挿通孔が底部に形成された有底筒体形状の加圧ナットとを、有することを特徴とする耐圧型管継手を、その要旨とするものである。
【0014】
なお、このような本発明に従う耐圧型管継手の望ましい態様の一つによれば、前記規制リングの配設位置よりも奥部側の前記挿入孔の内面に設けられ、前記被接続管体の挿入によって移動せしめられる前記誘導筒体が当接させられて、その移動が阻止せしめられるストッパ手段が、設けられている。
【0015】
また、本発明に従う耐圧型管継手の望ましい態様の他の一つによれば、前記規制リングの複数が、隣接する規制リング間に環状のスペーサを介在せしめてなる形態において、前記挿入孔の軸方向に配列されている。
【0016】
さらに、本発明に従う耐圧型管継手の他の望ましい態様によれば、前記規制リングが、前記挿入孔の内面に設けられたネジ部に螺合されるネジカラー部材にて、該挿入孔内面に形成された段付き部に当接せしめられて、挟持・固定されている。
【0017】
加えて、本発明にあっては、有利には、厚肉筒体形状を呈し、その軸方向の一方の端面に開口するV字部を有する、弾性材料からなるVパッキン部材が、第二のシール手段として、前記ネジカラー部材と前記O-リングとの間に配置されて、前記継手本体の挿入孔内面と前記被接続管体の外面との間をシールするように構成されている。
【0018】
また、本発明に従う耐圧型管継手の別の望ましい態様によれば、前記O-リングの前記挿入孔の軸方向両側にカラー部材が配置され、該カラー部材の一方に、前記加圧ナットの加圧力が作用せしめられることにより、該O-リングの圧縮が行なわれるようになっている。
【0019】
さらに、本発明に従う耐圧型管継手の更に別の望ましい態様によれば、前記加圧ナットが、前記継手本体の端部外周部に螺合せしめられる筒体部内において、底部に形成された前記挿通孔の周囲から所定高さで立ち上がる、該継手本体の端部の内径よりも小さな外径を有する筒状の押圧突部を有し、該加圧ナットの螺入によって、かかる押圧突部が前記O-リングを加圧・圧縮せしめるように構成されている。
【0020】
更にまた、本発明に従う耐圧型管継手の好ましい態様によれば、前記加圧ナットが、前記継手本体の端部外周面に設けられたネジ部に螺合せしめられる筒体部の端面に開口する少なくとも一つの切欠きを有し、該加圧ナットの該継手本体に対する螺合によって、該切欠きを通じて、該継手本体の端部外周面に設けられたネジ部の一部が、外部に露呈せしめられるようになっており、また、そのような切欠きとしては、好ましくは、前記筒体部の軸方向外方に開口する円弧形状を呈する形態が、採用されることとなる。
【0021】
そして、本発明にあっては、上述の如き構成からなる耐圧型管継手を用いて、所定の被接続管体の接続を行なう方法にして、 (i)該耐圧型管継手における前記継手本体の挿入孔に、前記被接続管体を、その管端から差し込む工程と、(ii)かかる差し込まれた被接続管体の管端にて、前記規制リング内に配置されている前記誘導筒体を押し出し、前記挿入孔の奥部に移動せしめる一方、該被接続管体を、該誘導筒体に代わって該規制リング内に配置させて、かかる被接続管体の外表面に該規制リングの複数の係止爪が食い込み得るようにする工程と、 (iii)前記継手本体の端部に螺合された前記加圧ナットを、更に螺入せしめて、前記O-リングを前記挿入孔の軸方向に加圧・圧縮することにより、該O-リングを径方向内方に膨出させて、前記被接続管体の外面に対する圧着性を高める工程とを、含むことを特徴とする管接続方法をも、その要旨とするものである。
【発明の効果】
【0022】
このような本発明に従う耐圧型管継手にあっては、継手本体の挿入孔内に位置固定に配設された規制リングの複数の係止爪を径方向外方に押し拡げるようにして、かかる規制リング内に、所定の誘導筒体を配置してなる状態において、目的とする被接続管体を挿入せしめ、そして、この被接続管体の端部にて誘導筒体を押圧して、挿入孔の奥部に押し込むようにすることにより、そのような誘導筒体に代わって、被接続管体が、規制リング内に嵌入、位置せしめられることとなり、また被接続管体の外表面に複数の係止爪が食い込み得るように配置されることとなるところから、被接続管体の規制リング内への嵌入、配置作業を、作業者の手によって、比較的容易に且つ簡単に、そして迅速に行ない得ることとなるのであり、それ故に、規制リングの係止爪の弾性力を高めたり、また規制リングを複数段配置して、係止作用を高めたりしても、継手本体の挿入孔への被接続管体の挿入作業を、作業者の素手によって通常の力を加えることにより、容易に実施することが出来ることとなり、以て、所謂ワンタッチ継手として有利に用いられ得るのである。
【0023】
しかも、継手本体の挿入孔内に配置されて、かかる挿入孔の内面と、差し込まれる被接続管体の外面との間をシールするO-リングが、規制リングよりも、該挿入孔の入口側に配置されてなる状態において、継手本体の端部に螺合された加圧ナットの更なる螺入によって、挿入孔の軸方向に加圧・圧縮せしめられて、挿入孔の径方向内方に膨出せしめられるようになっているところから、挿入された被接続管体の外周面に対する密着性乃至は圧着性が効果的に高められ得ることとなるのであり、これによって、複雑なシール構造を採用することなく、被接続管体内を流通せしめられる流体の漏れの問題をより一層有利に解消し得ることとなったのである。加えて、O-リングの配置が、被接続管体の挿入方向において、規制リングよりも後方側となることによって、かかるO-リングが押圧せしめられる被接続管体の外表面には、規制リングによる擦傷が存在せず、それ故に、O-リングによるシール性も良好に高められ得ることとなるのである。
【0024】
このように、本発明に従う耐圧型管継手やそれを用いた管接続方法によれば、火気を使用することなく、また特別な専用工具を用いることもなく、単に、作業者の素手による挿入操作のみによって、被接続管体を、管継手の加圧ナットに設けた挿通孔を通じて差し込み、そして継手本体の挿入孔内に挿入する操作を実施するだけで、被接続管体と管継手との接続が完了することとなるのであり、しかも、優れた耐圧性と引抜き阻止力を発揮し得るものであるところから、高い圧力の冷媒等の流体が管内に流通せしめられる被接続管体の接続に有利に採用され得る他、管外径が6.35~22.22mmの管体のみならず、25.4mm以上、38.1mmまでの管外径を有する冷媒用管体であっても、その接続も有利に行ない得るという特徴が発揮され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に従う耐圧型管継手の一例を示す断面説明図(2ヶ所の部分拡大図を含む)である。
【
図2】
図1に示される耐圧型管継手に用いられている継手本体の全体を示す断面説明図(1ヶ所の部分拡大図を含む)である。
【
図3】
図1に示される耐圧型管継手に用いられている規制リングを示す概略説明図であって、(a)は、その正面説明図であり、(b)は、その左側面説明図であり、(c)は、(a)におけるA-A断面説明図である。
【
図4】
図1に示される耐圧型管継手に用いられているネジカラーを示す概略説明図であって、(a)は、その正面説明図であり、(b)は、(a)におけるB-B断面説明図である。
【
図5】
図1に示される耐圧型管継手に用いられているVパッキンを示す概略説明図であって、(a)は、その正面説明図であり、(b)は、(a)におけるC-C断面説明図である。
【
図6】
図1に示される耐圧型管継手に用いられている加圧ナットを示す概略説明図であって、(a)は、その正面説明図であり、(b)は、(a)におけるD-D断面説明図である。
【
図7】
図1に示される耐圧型管継手に対して、被接続管体を差し込んで、接続する工程を示す断面説明図である。
【
図8】O-リングの圧縮率の算出に用いられるW0についての説明図であって、(a)は、O-リングの初期圧縮率の算出に用いられるW0を示す、
図1に示される断面図の部分説明図であり、(b)は、O-リングの最終圧縮率の算出に用いられるW0を示す、
図7の下の図において銅管を除いた状態を示す断面部分説明図である。
【
図9】本発明に従う耐圧型管継手に用いられる加圧ナットの他の一例を示す説明図であって、(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、その正面図、左側面図及び右側面図であり、(d)及び(e)は、それぞれ、(c)におけるE-E断面図及びF-F断面図である。
【
図10】本発明に従う耐圧型管継手に用いられる継手本体の他の一例を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の構成を更に具体的に明らかにするために、本発明の代表的な実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0027】
先ず、
図1には、本発明に従う耐圧型の管継手の代表的な一例が、ここでは、その左半分について、縦断面形態において示されている。そこにおいて、管継手10は、全体として筒体形状を呈する継手本体12と、そのような継手本体12内にそれぞれ配置された、3段の規制リング14、誘導リング16、ネジカラー18、Vパッキン20、及びO-リング22と、継手本体12の端部開口部に螺合された加圧ナット24とを含んで、構成されている。なお、継手本体12の他方の半分(
図1において、右側の図示されていない部分)も、図示されている左側部分と同様な構造とされている。そして、このような管継手10に対して、被接続管体として、例えば、銅又は銅合金等の金属材質からなる銅管26が差し込まれて、接続せしめられるようになっているのである。
【0028】
具体的には、かかる管継手10を構成する一つの部材である継手本体12は、
図2に示される如く、所定長さの金属製の管体からなるものであって、その両側の端部から、それぞれ、接続されるべき管体(ここでは、銅管26)が挿入されて、接続されるようになっており、そのために、両側の端部にそれぞれ開口する、管体(銅管26)の挿入孔28,28が設けられている。そして、それら挿入孔28,28の間において、継手本体12の軸方向の中央部位に位置するように、内周面から所定高さで突出する、ストッパ手段としてのリング状の突条30が、継手本体12の内周面に一体的に形成されている。なお、この突条30は、後述するように、銅管26の挿入によって、挿入孔28の奥部に移動させられる誘導リング16が当接せしめられるようにして、その移動を阻止するためのものである。
【0029】
また、かかる継手本体12の挿入孔28は、継手本体12の端部に向かって、三段の段付き部28a,28b,28cによって、直径が段階的に拡大する形態において開口せしめられている。即ち、第一の段付き部28aから、第二の段付き部28b、そして第三の段付き部28cに至るに従って、挿通孔28の内径が段階的に拡径されているのである。そして、第二の段付き部28bと第三の段付き部28cの間に位置するように、ネジカラー18が螺合せしめられる内側雌ネジ部32が設けられている。なお、軸方向において最も中央部側に位置する挿入孔28部位と第一の段付き部28aとの間には、継手本体12の端部に向かって傾斜して、拡径する傾斜面からなるテーパ部28dが設けられており、これによって、規制リング14の径方向外方への自由な弾性的変形が可能ならしめられている(
図1参照)。一方、継手本体12の端部外周面には、外側雄ネジ部34が形成されていると共に、この外側雄ネジ部34よりも軸方向中央側に位置するように、円弧状断面を呈する抜止め突起36が外周面に形成され、更に、それよりも軸方向中央側には、段付き部38を有する大径部が、形成されている。
【0030】
さらに、規制リング14は、
図3(a)~(c)より明らかな如く、所定幅の円環形状を呈する環状部(基部)14aを有すると共に、この環状部14aの内周縁部から中心に向かって所定幅で延び、且つ被接続管体である銅管26の挿入方向(管軸方向)に対して所定の傾斜角度、例えば36°~38°の角度にて屈曲して延びる舌片状の係止爪14bの複数が、放射状に一体的に設けられている。そして、それら複数の係止爪14bの先端にて形成される規制リング14の内径は、銅管26の外径よりも小さくなるように設計されているのである。なお、かかる規制リング14は、銅管26の引抜き挙動に対して、その係止爪14bが銅管26の外表面に食い込み得るように、換言すれば引っ掛かり得るように、弾性を有する硬質の金属材料、例えば、SUS301等の弾性特性を発揮し得る金属材料にて構成されており、これによって、係止爪14bは弾性変形可能とされている。また、規制リング14をSUS301の如き金属材質にて構成することにより、長期間に亘って必要な引抜き阻止力を有利に保持することが可能となる。
【0031】
そして、かかる規制リング14は、
図1に示されているように、ここでは、その3個が用いられて、規制リング14の相互の弾性変形を拘束しないような所定厚さの環状のスペーサ40を介して、継手本体12における挿入孔28の第一の段付き部28aに当接せしめられてなる形態において、挿入孔28の軸方向に配列されて、位置固定に配設されている。これによって、被接続管体である銅管26が、継手本体12の挿入孔28内に挿入されると、かかる銅管26の挿入力によって、規制リング14の係止爪14bは弾性的に径方向外方に押し拡げられる一方、係止爪14bの先端部が銅管26の外表面に食い込むように乃至は引っ掛かるようになるところから、銅管26に引抜き力が作用しても、そのすっぽ抜けが効果的に阻止され得ることとなるのである。
【0032】
また、ネジカラー18は、
図4(a)及び(b)から明らかなように、肉厚の円筒形状を呈する金属筒体からなるものであって、その外周面には、雄ネジ部18aと段付き部18bとが形成されている一方、雄ネジ部18aが設けられた側の端面に開口するように、90°の位相差をもって、4個の工具穴18cが形成されている。そして、このネジカラー18は、その工具穴18cを利用した工具による回動操作にて、その外周面に設けた雄ネジ部18aが、継手本体12の挿入孔28の内面に設けた内側雌ネジ部32に螺合せしめられることによって、
図1に示される如く、工具穴18cが設けられた側とは反対側の端面と第一の段付き部28aとの間において、3個の規制リング14を、スペーサ40を介在させた形態において、挟持・固定せしめ得るようになっているのである。なお、このネジカラー18は、その外周部に設けた段付き部18bが、継手本体12の挿入孔28の内周面に設けた第二の段付き部28bに当接することにより、前記3個の規制リング14を所定の締付力にて固定・保持した状態において、その螺入が阻止され得るようになっていると共に、その内孔18dは、銅管26が挿通され得る大きさの内径とされている。このように、ネジカラー18は、規制リング14を固定し、また後述するVパッキン20の固定に寄与するものであると共に、接続される銅管26のガイドとしても機能し、更に銅管26が振動したときに、その振動がそのまま規制リング14やO-リング22、Vパッキン20に伝わるのを緩和する制振作用も奏するものである。
【0033】
そして、そのようなネジカラー18にて、3個の規制リング14を、挿入孔28内に位置固定に配設してなる状態下において、誘導筒体としての誘導リング16が、規制リング14の複数の係止爪14bを径方向外方に押し拡げるようにして、規制リング14内に嵌入乃至は嵌め込まれ、配置せしめられているのである。なお、この誘導リング16は、規制リング14よりも軟質の金属材質とされ、ここでは、銅管26と同様な銅又は銅合金からなる材質にて形成されている。また、この誘導リング16は、挿入される銅管26と略同様な外径を有しており、銅管26が挿入されて、その端面に誘導リング16の端面が当接され、そして銅管26の挿入に基づくところの押圧力が作用せしめられることにより、後述するように、挿入孔28の軸方向奥部に移動せしめられて、規制リング14から押し出されると共に、規制リング14内には、銅管26が入り込むこととなるのであり、そして誘導リング16は、最終的に、継手本体12の軸方向中央部に設けられた突条30に当接せしめられるようになっている。特に、かかる誘導リング16の材質として、黄銅を用いることによって、規制リング14に対する誘導リング16から銅管26への上記した入れ替えをより円滑に行なうことが出来ることとなる。しかも、ここでは、誘導リング16は、
図1に示される如く、その軸方向の長さの一部(押込み方向前方側の一部)が挿入孔28内に嵌入、位置する状態において、規制リング14内に嵌め込まれており、これによって、銅管26の挿入に際して、銅管26の端面が誘導リング16の端面の全周に亘って当接していない場合にあっても、かかる誘導リング16を、こじることなく、スムーズに効果的に押し込み得るようになっている。
【0034】
また、O-リング22は、H-NBRの如きゴム材料からなる円形断面形状のリングであって、
図1に示されるように、円環板形状の2枚の金属製のカラー42,42にて挟まれた形態において、加圧ナット24が継手本体12の端部外周部に螺合されて、押圧せしめられることにより、継手本体12の挿入孔28における第三の段付き部28cに当接してなる形態において、前記規制リング14よりも挿入孔28の軸方向外側に位置して、かかる挿入孔28の内面に露呈するように配設されている。なお、このO-リング22の内径は、カラー42の内径と共に、銅管26の外径よりも小さくなるようにして、差し込まれる銅管26の外周面との間におけるシールが、実現され得るようになっている。
【0035】
さらに、かかるO-リング22を挟む2つのカラー42,42のうち、挿入孔28の第三の段付き部28cに当接する側のカラー42とネジカラー18との間に配設されるVパッキン20は、IIRの如きゴム材料からなる厚肉の円筒体形状を呈するものであって、軸方向一方の側に位置する基部20aと、それから他方の端部側に延びる、基部20aよりもより一層厚肉とされ、且つ大なる外径とされたシール部20bとから、一体的に構成されている。そして、シール部20bの端面に開口するように、周溝20cが形成されて、この周溝20cの存在によって、横断面が略V字形状を呈する構造とされているのである。また、このようなVパッキン20が、その周溝20cを、ネジカラー18の工具穴18cが形成された側の端面に対向するようにして、取り付けられることにより、ネジカラー18とカラー42との間において、軸方向に圧縮されてなる形態において配置せしめられ、これにより、挿入される銅管26の外周面に対するシールが実現されると共に、内部圧力が上昇したときに、シール部20bが膨出して、シール性能が増大するようになっている。従って、かかるVパッキン20は、O-リング22を第一のシール手段としたときに、副次的な第二のシール手段として、機能するようになっている。
【0036】
加えて、加圧ナット24は、
図6(a)及び(b)に示されるように、継手本体12と同様な金属材質からなるものであって、有底円筒体形状を呈し、その底部を貫通するように設けられた、銅管26を挿入し得る大きさの挿通孔24aを有している。また、この加圧ナット24の筒壁部の内周面には、雌ネジ部24bが設けられていると共に、筒壁部の先端側部分の内周部に所定深さの周溝24cが形成されて、この周溝24cの底部が薄肉部24dとされ、更に、この薄肉部24dを貫通する凍結対策孔24eが、90°の位相差をもって、周方向に4個配設されている。また、かかる周溝24cの形成によって、筒壁部の先端部が鉤部24fとされて、その内面が外方に拡径するテーパ面乃至円弧面とされている。一方、加圧ナット24の底部内面には、そこから挿通孔24aの周りに立ち上がる、所定高さの筒状の押圧突部44が、設けられている。なお、加圧ナット24の底部の外面には、周方向に延びる所定深さの回動操作用凹所24gが、90°の位相差をもって、4ヶ所設けられている。
【0037】
そして、かかる加圧ナット24が、その筒壁部の雌ネジ部24bを、継手本体12の外側雄ネジ部34に螺合せしめて、
図1に示されるように、継手本体12の端部に取り付けられることにより、加圧ナット24の底部内面に設けた押圧突部44が、O-リング22を挟む2つのカラー42,42のうち、軸方向外側に位置するカラー42に当接せしめられて、O-リング22が押圧されることとなるのであり、以て、O-リング22は、2つのカラー42,42にて挟持されてなる形態において、継手本体12の端部に収容保持されることとなるのである。なお、かかる加圧ナット24の継手本体12の端部に対する螺合は、加圧ナット24の筒壁部の端面と継手本体12の外周面に設けた段付き部38との間、及び加圧ナット24の底部内面と継手本体12の軸方向の端面との間に、それぞれ所定の間隙が形成されるようにして、実施されることとなる。これは、銅管26の挿入後において、加圧ナット24の更なる螺合(螺入)によって、O-リング22に所望の圧縮荷重を加えることが出来るようにするためである。また、そのような取付け状態において、加圧ナット24の筒壁部先端に形成される鉤部24fは、継手本体12の外周面に設けた抜止め突起36を乗り越えない位置(
図1における拡大図参照)に、止められることとなる。
【0038】
ところで、
図1に示される形態に組み付けられてなる管継手10に対して、被接続管体である銅管26を、作業者が素手にて把持して、挿入、接続するに際しては、かかる銅管26を、
図1に示される位置から更に前進させて、
図7に示される如く、管継手10内に挿入せしめ、加圧ナット24の挿通孔24aから、O-リング22、Vパッキン20及びネジカラー18を通過させて、銅管26の端面が誘導リング16の端面に当接するようにする。そして、その形態において、銅管26を更に挿入せしめることにより、誘導リング16を押し込み、挿入孔28の奥部に移動させる一方、かかる誘導リング16に代わって、銅管26が、そのまま、押し拡げられている3段の規制リング14内に入り込んで、配置されることとなるのである。かくして、かかる銅管26の外表面に対して、規制リング14の係止爪14bが弾性的に当接して、かかる係止爪14bが、銅管26の外表面に食い込むようになるのであって、これにより、銅管26に対して引抜き力が作用しても、大きな引抜き抵抗力が発揮され得ることとなり、以て、銅管26に対する優れた引抜き阻止力が実現されることとなるのである。
【0039】
次いで、このように、銅管26の挿入によって、誘導リング16が挿入孔28の奥部にまで移動せしめられて、突起30に当接することによって、その更なる移動が阻止されてなる状態下において、加圧ナット24が、その底部の外周部に設けられた回動操作用凹所24gを利用して、作業者の手によって回動せしめられて、その螺合が更に進行させられることにより、加圧ナット24の筒状の押圧突部44にて発揮せしめられる押圧力によって、カラー42を介して、O-リング22が、挿入孔28の軸方向に加圧・圧縮されることとなるのであり、これにより、かかるO-リング22を径方向内方に膨出させて、銅管26の外周面に対する押圧力が増大せしめられるようになる。O-リング22は、かかる加圧ナット24の更なる螺入による加圧・圧縮作用によって、
図7の下方の図に示される如く、略矩形断面形状を呈する形態となり、そしてこれによって、銅管26の外周面に対して圧接面積を拡大しつつ、強く圧接され、以て、銅管26の外周面と挿入孔28内面との間のシールがより一層高められ得ることとなるのである。
【0040】
なお、O-リング22の圧縮割合としては、一般に、最も有効な耐圧性能や耐久寿命が発揮され得ることが認められている、25%±5%程度が採用され、そのような圧縮割合となるように、換言すれば最終圧縮率(%)が実現されるように、加圧ナット24の底部内面やその筒壁部の端面と、継手本体10の端面や段付き部38とが、それぞれ、当接せしめられるようになっている。そして、それらの当接によって、加圧ナット24の筒壁部の先端に設けた鉤部24fは、継手本体12の外周面に設けた抜止め突起36を乗り越えて、かかる抜止め突起36と段付き部38との間に位置せしめられ、これによって、加圧ナット24の緩みが効果的に阻止され得るようになっている。また、ここでは、継手本体12と加圧ナット24との間に、水が侵入しても、そのような水は、加圧ナット24の筒壁部に設けた凍結対策孔24eから外部に逃出せしめられるようになっており、これによって、水の凍結による問題の発生が有利に回避され得るようになっている。
【0041】
従って、かくの如き構成の管継手10にあっては、被接続管体である銅管26の接続に際して、かかる銅管26を作業者が素手で把持して、その管端部を、加圧ナット24の挿通孔24aを通じて、継手本体12の挿通孔28内に単に差し込むだけの作業にて、容易に且つ簡単に、その接続を完了させることが可能となるのであり、これによって、従来のろう付け手法における場合の如く、火気を使用する必要がないことは勿論、従来のかしめ工法の如く、かしめ作業のための専用工具を用いる必要も全くなくなったのであり、それ故に、火気や専用工具の使用によって惹起される各種の問題も、悉く回避され得ることとなるのである。
【0042】
しかも、銅管26の挿入操作は、複数の係止爪14bを径方向外方に押し拡げるようにして、規制リング14内に嵌入、配置された誘導リング16を、銅管26の端面にて押圧して、移動せしめることにより、かかる誘導リング16に入れ替わって、銅管26を入り込ませて、規制リング14内に配置させるだけでよいところから、規制リング14内への銅管26の挿入に際して、誘導リング16を存在させない場合程、大きな挿入力が必要とされることがなく、従って、規制リング14を複数段に設けたり、或いは、規制リング14の弾性力を高めたりして、銅管26の抜け阻止力を高めた場合にあっても、かかる銅管26の挿入は、作業者の手によって、容易に行ない得ることとなる。
【0043】
それ故に、銅管26の外径を大きくしたりすると、その抜け阻止力を大きくする必要があるのであるが、そのような場合にあっても、例示の如き管継手10の構造は、有利に対応することが可能となっているのである。要するに、接続する銅管26の管径が大きくなる程、かかる銅管26の挿入抵抗が大きくなるのであるが、そのような銅管26の挿入抵抗を低くするために、規制リング14内には、予め、誘導リング16が嵌入、配置されており、この誘導リング16の存在によって、規制リング14の複数の係止爪14bが押し拡げられているのであって、これにより、挿入銅管26の外径が25.4mm以上となるものであっても、その挿入抵抗が効果的に低減され得て、作業者の素手のみによる挿入操作が有利に可能となるのである。そして、この挿入抵抗の低減によって、規制リング14の配設個数の増加が可能となったことにより、流通圧力が15MPaとなるCO2 冷媒用の高圧配管の接続にも、有利に適用可能となったところに、大きな特徴を見出すことが出来る。
【0044】
また、接続される銅管26と管継手10(具体的には、継手本体12)との間のシールにあっても、基本的には、O-リング22によって実現され、また必要に応じて、例示の如く、Vパッキン20を副次的なシール手段として用いるだけで済むところから、従来構造の如く、シールの必要な箇所が複数生じ、そのために、多数のシール手段を配設する必要があるという問題は、全く解消され得るに至ったのである。加えて、銅管26の挿入抵抗を低くするために、加圧ナット24の螺合によるO-リング22の初期圧縮率を低く抑えてなる状態下において、銅管26を挿入せしめた後、加圧ナット24の螺合を手動にて進めて、螺入せしめる動作によって、O-リング22において、シール性の向上と共に、最も長寿命化に適するとされている25%±5%の圧縮率(最終)を実現することが容易に可能となったのである。これによって、O-リング22を用いたシールの耐圧性能や耐久寿命の向上が有利に図られ得るのである。
【0045】
ところで、上記したO-リング22の初期圧縮率は、一般に、15%以下、好ましくは10%以下とされることが望ましく、これによって、銅管26の挿入抵抗を効果的に低減することが出来ることとなる。また、そのような初期圧縮率の下限は、一般に、5%程度とされ、これよりも低い初期圧縮率となると、銅管26の挿入時において、銅管26の表面に付着した塵や水滴等が、継手本体12内に入り込み易くなる等の問題を惹起する。なお、O-リング22の圧縮率(%)は、[(W0-W1)/W1]×100にて示され、そこにおいて、W0は、銅管26が挿入されていない状態(例えば、
図1の状態)における、O-リング22の径方向の幅(太さ)であり、またW1は、銅管26が挿入されている状態(例えば、
図7の状態)における、O-リング22の径方向の幅(太さ)である。従って、
図1に示されるO-リング22の初期圧縮率(%)は、
図8(a)に示されるW0の値を用いて算出され、また
図7の下の図に示されるO-リング22の最終圧縮率(%)は、
図8(b)に示されるW0の値を用いて算出されることとなる。また、それら初期圧縮率(%)や最終圧縮率(%)の算出に用いられるW1は、何れも、O-リング22の配置せしめられる第三の段付き部28cの内径から銅管26の外径を減じて得られる値の1/2の数値にて与えられるものである(
図7参照)。
【0046】
さらに、本実施形態に係る管継手10の構造にあっては、継手本体12の端部に対する加圧ナット24の螺入が終了すると、
図7の下方の図に示される如く、O-リング22よりも外側となる、加圧ナット24と継手本体12との間の空間は、可及的に低減され得ているところから、外部から結露水が侵入して、そこに残留し、そしてその侵入結露水が凍結することに基づくところの継手や接続銅管の歪みが惹起されても、その歪み量は極微量であって、それは、継手や接続銅管における弾性変形の範囲内に収まるものであるところから、耐冷凍性能が高く、冷凍設備の施工にも有利に適用され得るものとなるのであり、また、施工時間の短縮にも有利に寄与し得ることとなるのである。
【0047】
なお、本発明の上記した特徴は、以下の表1に示される実験結果からも、明らかなところである。
先ず、実験Aにおいては、
図1に示される構造の管継手10を準備して、この管継手10に対する外径:22.22mmの銅管26の挿入抵抗を調べた。この準備された管継手10において、規制リング14の数は3個とし、O-リング22の寸法は、外径:31.22mm、内径:21.22mm、太さ:5.0mmとした。また、O-リング22の初期圧縮率:10%、加圧ナット24の締込みによる最終圧縮率:25%、加圧ナット24の締込み代:1.0mmとした。
一方、実験Bにおいては、実験Aにおいて用いた管継手10から誘導リング16を取り除いた状態において、実験Aと同様にして、銅管26の挿入抵抗を調べた。また、実験Cにおいては、O-リング22の初期圧縮率:18%として、実験Bと同様にして、銅管26の挿入抵抗を調べた。
以上の三つの実験において得られた挿入抵抗の結果を、それぞれ、下記表1に示すが、かかる表より、本発明に従う管継手10を用いた実験Aにおいて、最も優れた結果が得られることは、明らかである。即ち、誘導リング16の無い管継手を用いた実験Bにおいては、実験Aよりも挿入抵抗が9kgfも増大し、更には、誘導リング16が無く且つO-リング22の初期圧縮率を18%とした実験Cにおいては、実験Aよりも挿入抵抗が16kgfも増大していることが認められるのである。
【0048】
【0049】
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0050】
例えば、上述の実施形態においては、被接続管体である銅管26の2本が直線的に接続せしめられる管継手を例として説明されているのであるが、本発明は、それに限られるものでは決してなく、液体や気体等の流体を輸送する配管を、径の異なる別の配管に接続したり、また、目的とする機器に接続したりするために用いられる、従来から公知の各種の名称が付された管継手、例えば、ソケット、アダプタ、チーズ、T字型、Y字型、クロス型、90°エルボ等の何れにも、有利に適用され得るものである。
【0051】
また、本発明にあっては、例示の加圧ナット24に代えて、
図9の(a)~(e)に示される如き形態の加圧ナット50も、有利に用いられることとなる。この加圧ナット50には、作業者による回動操作をより行い易くするべく、継手本体12の端部外周面に設けられた外側雄ネジ部34に螺合せしめられる筒体部52の端面に開口する適数個(少なくとも1つ以上、ここでは4つ)の切欠き54が、該筒体部52の周方向に、所定長さに亘って且つ所定間隔を隔てて、設けられている。特に、そのような切欠き54は、図示の如き円弧形状において形成されていることが望ましいのであるが、また、長円形状、矩形形状、三角形状等の他の各種の外形形状においても形成可能である。そして、このような切欠き54の形成により、加圧ナット50の継手本体12に対する螺合によって、かかる切欠き54を通じて、継手本体12の端部外周面に設けられた外側雄ネジ部34の一部が外部に露呈せしめられるようにすることによって、先の加圧ナット24における凍結対策孔24eと同様な凍結破壊防止用の水抜き穴としての機能を奏せしめることが可能となる特徴が発揮されることとなる。なお、先の加圧ナット24と同様な加圧ナット50の部位には、かかる加圧ナット24と同一の符号を付して、詳細な説明は省略することとする。
【0052】
さらに、
図10には、被接続管体の連結形態の異なる例において用いられる、本発明に従う管継手における継手本体の一例が、示されている。そこにおいて、継手本体12’は筒体形状を呈し、その軸方向一方の側の端部は、被接続管体である銅管26との接続のために、上記した実施形態と同様な構造を有するものである一方、他方の端部の外周面には、単に、ネジ部48が形成されているのみであって、このネジ部48によって、他の配管系に接続されたり、機器の流体の流出入口に対して螺着せしめられたりして、所定の被接続管体(銅管26)の接続が行なわれ得るようになっている。
【0053】
そして、被接続管体にあっても、例示の銅管26の他、アルミニウム又はその合金からなるアルミニウム材質の管体であっても、何等差し支えなく、一般に軟質の金属材質からなる管体が有利に用いられることとなる。そして、規制リング14の材質にあっても、SUS材質に限定されるものではなく、被接続管体よりも硬質の金属材質が有利に採用されることとなる。
【0054】
また、規制リング14としては、例示の構造に限定されるものでは決してなく、ロックリングや規制リング等と称される公知の各種の構造のものを用いることが可能であり、その使用個数にあっても、接続されるべき銅管26の管径やそこを流通せしめられる流体の圧力等に応じて、有効な耐圧性及び引抜き阻止力が発揮され得るように、適宜に選定されるところであって、例示の如き3段での使用の他、1段での使用、更には他の複数段での使用であっても、何等差し支えない。
【0055】
さらに、例示の実施形態においては、複数の規制リング14が、その基部である環状部14aの間に、所定厚さのスペーサ40を介在せしめてなる形態において、継手本体12の挿入孔28内に配設されているが、そのようなスペーサ40は、隣接する規制リング14,14間に適当な間隔が確保され得ることとなるならば、必ずしも必要とされるものではなく、例えば、環状部14aの厚さを厚くすることによって、相互に所定の間隙を形成することが可能である。
【0056】
加えて、例示の実施形態においては、O-リング22と共に、補助的なシール手段としてVパッキン20が配設され、また規制リング14の固定と共に、Vパッキン20に所望の圧縮力を加えるべく、ネジカラー18が配設されているが、それらVパッキン20やネジカラー18は、必要に応じて配設されるものであって、本発明においては、必ずしも必要とされるものではない。
【0057】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そして、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0058】
10 管継手 12 継手本体 14 規制リング 16 誘導リング 18 ネジカラー 20 Vパッキン 22 O-リング 24 加圧ナット 26 銅管 28 挿入孔
30 リング状突条 32 内側雌ネジ部 34 外側雄ネジ部 36 抜止め突起 38 段付き部 40 スペーサ 44 押圧突部 50 加圧ナット
52 筒体部 54 切欠き