(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】カメラ装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/232 20060101AFI20220413BHJP
H04N 5/351 20110101ALI20220413BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20220413BHJP
G03B 7/091 20210101ALI20220413BHJP
【FI】
H04N5/232 220
H04N5/232 450
H04N5/351
G03B15/00 T
G03B15/00 R
G03B15/00 Q
G03B7/091
(21)【出願番号】P 2021506838
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2019011108
(87)【国際公開番号】W WO2020188684
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】小坂 大樹
【審査官】津幡 貴生
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-216482(JP,A)
【文献】特開2016-130674(JP,A)
【文献】特開2012-032211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0042176(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222-5/257
H04N 5/351
G03B 15/00
G03B 7/091
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の撮影場所に移動してきた撮影対象物を撮影して後段の装置に映像出力を提供するカメラ装置において、
映像出力用の撮影を行う第1の駆動モードと、前記第1の駆動モードよりも高速に撮影を行う第2の駆動モードとを切り替え可能な撮像素子と、
前記撮像素子により前記第2の駆動モードで撮像された撮像信号に基づいて、所定の撮影場所に存する撮影対象物を検出する物体検出部と、
前記物体検出部により撮影対象物が検出されたことに応じて、少なくとも次の撮影タイミングにおいて前記第1の駆動モードで動作するように前記撮像素子を制御する撮像素子駆動制御部と、
前記撮像素子により前記第1の駆動モードで撮像された撮像信号を処理し、前記後段の装置に映像出力を提供するカメラ映像処理部と、
を備え、
前記物体検出部は、撮影対象物の移動方向に沿って、前記撮像素子による撮影間隔における撮影対象物の移動量に応じた幅を持つ検出範囲が予め設定されており、前記撮像素子による撮影映像において、移動する撮影対象物の先頭部分が前記検出範囲内にて検出された場合に、所定の撮影場所に存する撮影対象物の検出と
し、
前記検出範囲として、前記第1の駆動モードでの撮影時に使用する第1の検出範囲と、前記第2の駆動モードでの撮影時に使用する第2の検出範囲とを有し、
前記第1の検出範囲における撮影対象物の移動方向の上流側の境界が、前記第2の検出範囲における撮影対象物の移動方向の上流側の境界よりも上流に設定されていることを特徴とするカメラ装置。
【請求項2】
所定の撮影場所に移動してきた撮影対象物を撮影して後段の装置に映像出力を提供するカメラ装置において、
映像出力用の撮影を行う第1の駆動モードと、前記第1の駆動モードよりも高速に撮影を行う第2の駆動モードとを切り替え可能な撮像素子と、
前記撮像素子により前記第2の駆動モードで撮像された撮像信号に基づいて、所定の撮影場所に存する撮影対象物を検出する物体検出部と、
前記物体検出部により撮影対象物が検出されたことに応じて、少なくとも次の撮影タイミングにおいて前記第1の駆動モードで動作するように前記撮像素子を制御する撮像素子駆動制御部と、
前記撮像素子により前記第1の駆動モードで撮像された撮像信号が書き込まれるフレームメモリと、
前記フレームメモリから撮像信号を読み出して処理し、前記後段の装置に映像出力を提供するカメラ映像処理部と、
を備え、
前記物体検出部は、撮影対象物の移動方向に沿って、前記撮像素子による撮影間隔における撮影対象物の移動量に応じた幅を持つ検出範囲が予め設定されており、前記撮像素子による撮影映像において、移動する撮影対象物の先頭部分が前記検出範囲内にて検出された場合に、所定の撮影場所に存する撮影対象物の検出と
し、
前記検出範囲として、前記第1の駆動モードでの撮影時に使用する第1の検出範囲と、前記第2の駆動モードでの撮影時に使用する第2の検出範囲とを有し、
前記第1の検出範囲における撮影対象物の移動方向の上流側の境界が、前記第2の検出範囲における撮影対象物の移動方向の上流側の境界よりも上流に設定されていることを特徴とするカメラ装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載のカメラ装置において、
前記撮像素子による撮影間隔における撮影対象物の移動量に基づいて、撮影対象物を移動させる物体移動装置に対して速度制御信号を出力することを特徴とするカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の撮影場所に移動してきた撮影対象物を撮影して後段の装置に映像出力を提供するカメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、撮影対象物を移動させながら、撮影対象物が所定の撮影場所に移動してきた際に工業用カメラで撮影する撮影システムが実用に供されている。
【0003】
従来は、撮影対象物(被写体)を移動させる物体移動装置側に、カメラの撮影タイミングの起点を決めるトリガ生成装置を用意し、トリガ生成に合わせて撮影対象物を撮影場所に配置して撮影していた。
図1には、従来の撮影システムの構成例を示してある。
図1の撮影システムは、物体移動装置11と、トリガ生成装置12と、カメラ13と、映像処理装置14とを備えている。
【0004】
物体移動装置11は、撮影対象物を移動させる装置であり、例えば、ベルトコンベアなどが用いられる。物体移動装置11により移動される撮影対象物は、例えば、民芸品などの物体である。物体移動装置11は、撮影すべきタイミングを決定するための撮影基準信号11tをトリガ生成装置12に与える。また、物体移動装置11により撮影場所に移動された撮影対象物は、撮影場所の照明環境などにより照明される。これにより、撮影対象物からの撮影光11vがカメラ13に与えられる。
【0005】
トリガ生成装置12は、物体移動装置11から撮影基準信号11tを受け取ると、カメラ13が利用できる形式のトリガパルス12tを出力する。撮影基準信号11tとしては、例えば、ベルトコンベアの歯車の回転カウント、赤外線を出射するLED(Light Emitting Diode)と赤外線を受光するフォトダイオードの組み合わせ(LEDとフォトダイオード間を通過する物体による赤外線の遮光を検出するフォトカプラ)による物体検出信号、物体の加重検知による物体検出信号など、様々なタイプの信号を用いることができる。トリガ生成装置12には、トリガパルス12tを生成するための電源供給が必要であると共に、トリガパルス12tをカメラ13に伝達するための電気結線が必要である。
【0006】
カメラ13は、撮影対象物からの撮影光11vをトリガパルス12tの入力タイミング(ONのタイミング)に合わせて撮像し、撮影光11vを電気の映像信号へ変換し、映像出力13vを映像処理装置14に伝送する。
【0007】
映像処理装置14は、カメラ13からの映像出力13vを受信して種々の処理を行う。また、映像処理装置14は、カメラ13の動作設定や状態確認を行うための機能設定信号14cの送信やその応答の受信も行う。映像処理装置14としては、PC(Personal Computer)などの汎用的な装置を用いてもよいし、専用の工業装置を用いてもよいし、種々の装置を使用することができる。
【0008】
図2には、従来の工業用カメラの構成例を示してある。
図2の工業用カメラは、
図1の撮影システムにおけるカメラ13に対応している。従来の工業用カメラは、後段の映像処理装置14が要求する映像出力13vのために、固定の動作条件で撮影を行っていた。
図2の工業用カメラは、レンズ21と、カメラ映像処理部20とを備えている。カメラ映像処理部20は、撮像素子22と、高精度映像処理部23と、出力同期制御部24と、撮像素子駆動制御部25と、CPU(Central Processing Unit)26とを有している。
【0009】
カメラ映像処理部20では、トリガパルス12tの入力に合わせて撮影を開始し、撮像素子22の光電変換面に入力された光21vを電気信号に変換し、機能設定信号14cで要求された条件に従って映像処理を行い、映像出力13vとして電気信号を出力する。
【0010】
レンズ21は、撮影対象物からの撮影光11vを撮像素子22の光電変換面に集光し、撮影対象物の像を光電変換面に結像させるように配置されている。レンズは、従来方式と後述する提案方式との差異に影響を及ぼさない部分であるため、詳しい説明については割愛する。
【0011】
撮像素子22は、レンズ21によって光電変換面に集光された光21v(撮影対象物の像)を電気信号に変換し、撮像信号22vとして出力する。
【0012】
高精度映像処理部23は、撮像素子22から出力された撮像信号22vを、解像度・階調表現・色合いなどが後段の映像処理装置14が求める品質となるように処理し、処理結果の映像信号23vを出力する。従来方式では、撮像素子22から撮像信号22vが出力される毎に、解像度・階調表現・色合いなどが後段の映像処理装置14が求める品質となるように処理を行って映像信号23vを出力していた。すなわち、撮像素子22から出力される全ての撮像信号22vを映像信号23vに変換して出力していた。
【0013】
出力同期制御部24は、高精度映像処理部23から出力された映像信号23vに、後段の映像処理装置14が受信でき且つ映像の出力範囲の座標(水平方向及び垂直方向の撮影範囲)が分かるように加工を施して、映像出力13vの出力を行う。また、出力同期制御部24は、トリガパルス12tの入力を撮影の開始タイミングとして、映像の出力範囲の座標が正しく連携するように高精度映像処理部23及び撮像素子駆動制御部25に同期信号24tを与えることで、映像座標のタイミング管理を行う。
【0014】
撮像素子駆動制御部25は、撮像素子22の露光時間や出力する映像座標を適切にする制御のために、制御信号25tを撮像素子22に出力する。制御信号25tは、撮像素子22の露光時間や映像の出力範囲などを決める信号である。制御信号25tとしては、電圧とパルス幅を持つ駆動パルスであってもよく、露光時間や映像の出力範囲などを決めるレジスタへのパラメータ入力であってもよい。また、撮像素子22として画素混合可能な撮像素子を用いる場合には、制御信号25tに画素混合の設定を含めてもよい。従来のカメラでは、高精度映像処理部23や後段の映像処理装置14が要求する解像度などが常に満たされるように、固定された水平方向及び垂直方向の範囲に映像の出力範囲が制御されている。
【0015】
CPU26は、機能設定信号14cで要求されたデータをメモリから読み出して、後段の映像処理装置14にカメラの状態を伝える。また、CPU26は、カメラの状態を切り替えるために、撮像素子駆動制御部25と高精度映像処理部23と出力同期制御部24の状態変更を指示する機能設定信号26cを出力する。機能設定信号26cは、各ブロックに接続された個別のポート制御結線を用いて伝送してもよく、各ブロックが共通バスを通じて参照できるレジスタを用いて伝送してもよい(つまり、レジスタの設定を書き換える)。また、撮像素子22をレジスタの設定で制御できる構成などの場合は、機能設定信号26cによりレジスタに直接パラメータ入力することも考えられる。
以上のように、従来方式では、システムで事前に決めておいた撮影モードに固定して、同じ条件で撮影を繰り返すように構成されていた。
【0016】
昨今は、高解像度と高速撮影を実現できる撮像素子が開発されている。しかしながら、撮像素子が撮影できる秒間撮像枚数(フレームレート)に対して、映像出力を伝送できるフレームレートがボトルネックとなり、撮像素子の性能を活かしきれない場合が発生している。また、高解像度で且つ通常のフレームレートが低速な撮像素子を用いる場合に、映像の出力範囲の制限や画素混合技術によってフレームレートを高速化する手法が存在するが、現状では効果的に用いられていない。
撮像素子の制御に関しては、従来より種々の発明が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2006-074366号公報
【文献】特開2000-324436号公報
【文献】特開2002-354349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述した従来の撮影システムは、トリガ生成装置を備えた構成であるため、トリガ生成装置への電源供給と工業用カメラへのトリガパルス結線が必要であった。また、撮像素子の性能や機能が向上しているにも関わらず、カメラ映像の伝送能力がボトルネックとなり、撮像素子の性能や機能の向上を活かしきれていない実態があった。
【0019】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、所定の撮影場所に移動してきた撮影対象物をトリガ生成装置なしで撮影することが可能なカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明では、カメラ装置を以下のように構成した。
本発明の第1の側面に係るカメラ装置は、所定の撮影場所に移動してきた撮影対象物を撮影して後段の装置に映像出力を提供するカメラ装置において、映像出力用の撮影を行う第1の駆動モードと、前記第1の駆動モードよりも高速に撮影を行う第2の駆動モードとを切り替え可能な撮像素子と、前記撮像素子により前記第2の駆動モードで撮像された撮像信号に基づいて、所定の撮影場所に存する撮影対象物を検出する物体検出部と、前記物体検出部により撮影対象物が検出されたことに応じて、前記第1の駆動モードで動作するように前記撮像素子を制御する撮像素子駆動制御部と、前記撮像素子により前記第1の駆動モードで撮像された撮像信号を処理し、前記後段の装置に映像出力を提供するカメラ映像処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明の第2の側面に係るカメラ装置は、所定の撮影場所に移動してきた撮影対象物を撮影して後段の装置に映像出力を提供するカメラ装置において、前記後段の装置への映像出力よりも高速に撮影を行う撮像素子と、前記撮像素子により撮像された撮像信号に基づいて、所定の撮影場所に存する撮影対象物を検出する物体検出部と、前記物体検出部により撮影対象物が検出されたことに応じて、前記撮像素子により撮像された撮像信号が書き込まれるフレームメモリと、前記フレームメモリから撮像信号を読み出して処理し、前記後段の装置に映像出力を提供するカメラ映像処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
本発明の第3の側面に係るカメラ装置は、所定の撮影場所に移動してきた撮影対象物を撮影して後段の装置に映像出力を提供するカメラ装置において、映像出力用の撮影を行う第1の駆動モードと、前記第1の駆動モードよりも高速に撮影を行う第2の駆動モードとを切り替え可能な撮像素子と、前記撮像素子により前記第2の駆動モードで撮像された撮像信号に基づいて、所定の撮影場所に存する撮影対象物を検出する物体検出部と、前記物体検出部により撮影対象物が検出されたことに応じて、前記第1の駆動モードで動作するように前記撮像素子を制御する撮像素子駆動制御部と、前記撮像素子により前記第1の駆動モードで撮像された撮像信号が書き込まれるフレームメモリと、前記フレームメモリから撮像信号を読み出して処理し、前記後段の装置に映像出力を提供するカメラ映像処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
なお、上記第1~第3の側面に係るカメラ装置は更に、前記撮像素子による撮影間隔における撮影対象物の移動量に基づいて、撮影対象物を移動させる物体移動装置に対して速度制御信号を出力するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、所定の撮影場所に移動してきた撮影対象物をトリガ生成装置なしで撮影することが可能なカメラ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来の撮影システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図1の撮影システムで使用されるカメラ装置の構成例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る撮影システムの構成例を示す図である。
【
図4】
図3の撮影システムで使用されるカメラ装置の第1構成例を示す図である。
【
図5】
図3の撮影システムで使用されるカメラ装置の第2構成例を示す図である。
【
図6】第1構成例のカメラ装置による高速度判定処理のフローチャート例を示す図である。
【
図7】第1構成例のカメラ装置による撮影・出力映像の時系列順の画像例を示す図である。
【
図8】第2構成例のカメラ装置による撮影・出力映像の時系列順の画像例を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る撮影システムの別の構成例を示す図である。
【
図10】
図9の撮影システムで使用されるカメラ装置の構成例(第3構成例)を示す図である。
【
図11】第3構成例のカメラ装置による撮影・出力映像の時系列順の画像例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態に係る撮影システムについて、図面を参照して説明する。
図3には、本発明の一実施形態に係る撮影システムの構成例を示してある。
図3の撮影システムは、物体移動装置31と、カメラ33と、映像処理装置34とを備えている。
【0027】
物体移動装置31は、撮影対象物(被写体)を移動させる装置であり、例えば、ベルトコンベアなどが用いられる。物体移動装置31により移動される撮影対象物は、例えば、民芸品などの物体である。物体移動装置31により撮影場所に移動された撮影対象物は、撮影場所の照明環境などにより照明される。これにより、撮影対象物からの撮影光31vがカメラ33に与えられる。
【0028】
カメラ33は、撮影場所に移動してきた撮影対象物からの撮影光31vを撮像し、撮影光31vを電気の映像信号へ変換し、映像出力33vを映像処理装置34に伝送する。カメラ33は、
図4又は
図5を参照して後述するように、撮影対象物が撮影すべき場所にいることを判定する高速度撮影判定部(40A)と、後段の映像処理装置34が要求する映像出力を生成するためのカメラ映像処理部(40B)とを備えている。
【0029】
映像処理装置34は、カメラ33からの映像出力33vを受信して種々の処理を行う。また、映像処理装置34は、カメラ33の動作設定や状態確認を行うための機能設定信号34cの送信やその応答の受信も行う。機能設定信号34cには、カメラ33の高速度撮影判定部(40A)で所望の動作を実行させるための設定値や、背景状態の取得のための前動作の指示などが含まれる。映像処理装置34としては、PCなどの汎用的な装置を用いてもよいし、専用の工業装置を用いてもよいし、種々の装置を使用することができる。
【0030】
図4には、本発明に係るカメラ装置の第1構成例を示してある。
図4のカメラ装置は、
図3の撮影システムにおけるカメラ33に対応している。第1構成例のカメラ装置は、レンズ41と、高速度撮影判定部40Aと、カメラ映像処理部40Bとを備えている。高速度撮影判定部40Aは、撮像素子42と、簡易物体検出部43と、撮像素子駆動制御部44とを有している。カメラ映像処理部40Bは、高精度映像処理部45と、出力同期制御部46と、CPU47とを有している。
【0031】
高速度撮影判定部40Aでは、カメラ映像処理部40Bからの機能設定信号47cにより要求された条件に従って、撮像素子42の光電変換面に入力された光41vを判定用高速撮影と出力用高精細撮影とで切り替えて電気信号に変換し、撮像信号43vをカメラ映像処理部40Bに出力する。また、高速度撮影判定部40Aは、撮像信号43vが有効なタイミングを伝えるための相互同期信号44cの入出力も行う。
【0032】
カメラ映像処理部40Bでは、映像処理装置34からの機能設定信号34cにより要求された条件に従って、高速度撮影判定部40Aからの撮像信号43vに映像処理を行い、映像出力33vとして電気信号を出力する。また、カメラ映像処理部40Bは、後段の映像処理装置34との連携のために出力同期制御を行うと共に、基準となる同期信号を高速度撮影判定部40Aに出力し且つ利用すべき撮像信号43vのタイミング入力を受けるために、相互同期信号44cを入出力する。
【0033】
レンズ41は、撮影対象物からの撮影光41vを撮像素子42の光電変換面に集光し、撮影対象物の像を光電変換面に結像させるように配置されている。レンズは、上述した従来方式と本提案方式との差異に影響を及ぼさない部分であるため、詳しい説明については割愛する。
【0034】
撮像素子42は、駆動モードとして、判定用高速撮影のために画素混合機能や部分読み出し機能などを用いて高速に撮影する高速ドラフト駆動と、出力用高精細撮影のために有効画素を個々に読み出す通常撮影用駆動とを有する。撮像素子42は、撮像素子駆動制御部44からの制御信号44tに従って、高速ドラフト駆動と通常撮影用駆動を切り替えられながら、光電変換面に集光された光41v(撮影対象物の像)を電気信号に変換し、撮像信号42vとして出力する。
【0035】
簡易物体検出部43は、簡易なノイズフィルタなどを用いて、撮像信号42vに含まれるノイズや微小な映像変化を平滑化するノイズフィルタ処理を行い、機能設定信号47cに従って前動作として取得された又は範囲指定された背景閾値の映像レベルと比較し、ノイズフィルタ処理後の撮像信号の値が外れているか否かを判定する。値が外れている場合は物体が存在している可能性有りとして物体有無判定結果43cを撮像素子駆動制御部44に出力する。
また、簡易物体検出部43は更に、利用者が動作確認する時は機能設定信号47cによって切り替えてノイズフィルタ処理後の撮像信号を、通常時は撮像信号42vを撮像信号43vとして出力する。
【0036】
ここで背景閾値とは撮影対象の物体が無い状態で、物体移動装置を動作させて撮影した時の映像出力、例えばカラーで有れば赤、緑、青の信号出力の値(例えばR=219、G=238、B=243)を読み取り、その値からユーザが決めて機能設定信号34cで指定した閾値幅(例えば20%)に応じて閾値の公差(例えばR=219~219*(100-20)≒175、G=238~190、B=243~194)を背景と扱い、撮影対象の物体を判別する撮影中には入力映像をノイズフィルタ処理時に合わせて閾値幅による公差中心の補正(例えば100-20/2=90%)を施し、赤、緑、青の信号出力の値が全て前出の閾値の公差に含まれれば背景として、どれかひとつでも閾値の公差から外れれば物体の可能性有りとして扱うための比較用の値である。
【0037】
物体の可能性有りとされた画素は、その周囲に連続して背景以外が存在するかを判定して、一定以上の連続性を満たす場合に物体検出として成立させる。背景以外が一定の連続性を持つことを確認するのはノイズなどの誤判定を防ぐためであり、連続性を見付ける処理が有ればその手段を問うものではない。敢えて手段例を幾つか挙げるなら、ひとつは画素単位では背景か否かの二値で表せる状態に有るので、ノイズなどの誤判定を防ぐためには外部スイッチなどの入力に対するチャタリング防止ロジックと同種の論理が有効と言える。別の観点からはノイズ除去フィルタにより周辺の合成比率を増やしておけば、フィルタ範囲の面積内に有る一定比率以上が背景以外となる画素が占めなければ背景閾値の公差を超えることが無くなり連続性の検出に有効と言える。
【0038】
撮像素子駆動制御部44は、撮像素子42の露光時間や出力する映像座標を適切にする制御のために、制御信号44tを撮像素子42に出力する。制御信号44tは、撮像素子42の露光時間や映像の出力範囲などを決める信号である。制御信号44tとしては、電圧とパルス幅を持つ駆動パルスであってもよく、露光時間や映像の出力範囲などを決めるレジスタへのパラメータ入力であってもよい。また、撮像素子42として画素混合が可能な撮像素子を用いる場合には、制御信号44tに画素混合の設定を含めてもよい。
【0039】
この撮像素子駆動制御部44は、撮像素子の水平と垂直の駆動を行うためのカウンタ座標を内包しており、物体有無判定結果43cが示す物体有りの可能性が、数回のクロックカウンタ続いて発生した場合に連続性が有り実際に物体が存在するとし、その先頭座標を「水平の検出先頭位相」として座標情報を保持する。垂直方向にも物体有無判定結果43cが示す物体有りの可能性が、検出された水平ラインが数回繰り返す場合に連続性が有り実際に物体が存在するとし、「垂直の検出先頭位相」として座標情報を保持する。これにより、物体有無判定結果43cが示す物体有りの可能性が、隣接又は連結して連続領域として存在するかを判定し、現在の撮影が背景のみの撮影か、それとも何らかの物体が存在している状態での撮影かを判断できる状態になる。これら「検出先頭位相」の座標と、機能設定信号47cか初期動作によって設定された移動方向に対する「撮影先頭位相範囲」とを比べ、「検出先頭位相」が「撮影先頭位相範囲」に到達した場合は、次の駆動動作を出力用高精細撮影のための通常撮影用駆動に切り替え、そうでない場合は判定用高速撮影のための高速ドラフト駆動とするよう、撮像素子42の次の駆動シーケンスや内部レジスタを書き換えて、撮像素子42の駆動モードを切り替える。
【0040】
また、撮像素子駆動制御部44は、高速ドラフト駆動にする際にカメラ映像処理部40Bと連携して動作するように、相互同期信号44cの一種であるタイミング情報をタイミング接続バスに出力してカメラ映像処理部40Bの出力同期制御部46に伝達する。第1構成例では、カメラ映像処理部40Bや後段の映像処理装置34が要求する解像度などを常に満たす条件では撮像素子42を駆動させていない。つまり、第1構成例のカメラ装置は、物体検出を高速判定できるように制限された範囲で動作する高速ドラフト駆動と、物体が適切な位置範囲に移動してきた際に後段の処理が要求する条件で動作する通常撮影用駆動とを切り替えるシーケンスを持つことを特徴としている。
【0041】
高精度映像処理部45は、簡易物体検出部43から出力された撮像信号43vを、解像度・階調表現・色合いなどが後段の映像処理装置34が求める品質となるように処理し、処理結果の映像信号45vを出力する。本発明では、出力同期制御部46からの同期信号46tにより指定された撮影タイミングの撮像信号43vに対し、後段の映像処理装置34が求める品質となるように処理を施して映像信号45vを出力できればよい。したがって、それ以外のタイミングでは、撮影信号43vを破棄することや、高精度映像処理部45の処理を休止させることも可能である。
【0042】
出力同期制御部46は、高精度映像処理部45から出力された映像信号45vに、後段の映像処理装置34が受信でき且つ映像座標(水平方向及び垂直方向の撮影範囲)が分かるように加工を施して、映像出力33vの出力を行う。また、出力同期制御部46は、撮像素子駆動制御部44と相互同期信号44cの入出力で連携し、撮像素子駆動制御部44が通常撮影用駆動となり撮像信号が有効となるタイミングに応じて、映像座標が正しく連携するように高精度映像処理部45に同期信号46tを与えることで、映像座標のタイミング管理を行う。
【0043】
CPU47は、機能設定信号34cで要求されたデータをメモリから読み取って、後段の映像処理装置34にカメラの状態を伝える。また、CPU47は、カメラの状態を切り替えるために、撮像素子駆動制御部44と高精度映像処理部45と出力同期制御部46と簡易物体検出部43の状態変更を指示する機能設定信号47cを出力する。機能設定信号47cは、各ブロックに接続された個別のポート制御結線を用いて伝送してもよく、各ブロックが共通バスを通じて参照できるレジスタを用いて伝送してもよい(つまり、レジスタの設定を書き換える)。また、撮像素子42をレジスタの設定で制御できる構成などの場合は、機能設定信号47cによりレジスタに直接パラメータ入力することも考えられる。ただし、高速ドラフト駆動と通常撮影用駆動の切り替えにはタイミング管理が求められるため、タイミング管理を行えるブロック(撮像素子駆動制御部44など)を介在させることが必要となる。
【0044】
図5には、本発明に係るカメラ装置の第2構成例を示してある。
図5のカメラ装置は、
図3の撮影システムにおけるカメラ33に対応している。第2構成例のカメラ装置は、第1構成例のカメラ装置(
図4)と類似する部分が多いため、相違する部分について主に説明する。
【0045】
第2構成例のカメラ装置は、高速度撮像判定部40Aとカメラ映像処理部40Bの間にフレームメモリ48を介在させている。高速度撮像判定部40Aのデータ処理速度を速くする一方で、後段の映像処理装置34で必要な映像のみをフレームメモリ48から出力させることで、カメラ映像処理部40Bのデータ処理速度を遅くすることが可能となる。
【0046】
撮像素子42’としては、高速撮影が可能で且つ出力用高精細撮影が可能なものが想定される。
撮像素子制御駆動部44’は、撮像素子42’に対して画素混合や範囲制限の制御を行わず、代わりにフレームメモリ書き込み信号44wをフレームメモリ48に出力する。なお、画素混合や範囲制限の制御を行うと共に、フレームメモリ48も利用する構成であっても構わない。
【0047】
フレームメモリ48は、書き込み側(高速度撮像判定部40A)が物体移動検出を行うためにデータ処理速度が速く、読み出し側(カメラ映像処理部40B)が後段の映像処理装置34へのデータ伝送に適した遅いデータ処理速度で動作する。フレームメモリ書き込み信号44wに従ってフレームメモリ48に書き込まれた撮像データは、同期信号46tを元に読み出され、撮像信号48vとして高精度映像処理部45に伝送される。
【0048】
次に、本発明に係るカメラ装置による高速度判定処理について説明する。
図6には、第1構成例のカメラ装置の高速度撮像判定部40Aによる高速度判定処理のフローチャート例を示してある。
図4のカメラ装置は、以下の手順で高速度判定処理を行う。
【0049】
高速度判定処理の動作が開始すると、まず、背景の初期設定の有無を判定する(ステップS11)。
ステップS11で背景の初期設定が無いと判定された場合には、通常撮影用駆動で動作する(ステップS12)。すなわち、従来のカメラのように、高精細映像出力など所定の撮影状態に固定された通常の動作を行う。このとき、利用者は、物体検出連携のための初期設定を行うことができる(ステップS13)。
【0050】
ステップS13では、撮影画像内の検出範囲及び物体が無い撮影での背景状態の取得に関する設定処理が行われる。この設定処理では、例えば、物体の入出力方向(移動方向)の設定、撮影先頭位相範囲の設定、高速ドラフト及び電子シャッタの設定、背景状態を取得する事前動作などを行う。撮影先頭位相範囲の設定では、撮影された物体の先頭が到達した時に次の画像で通常撮影用駆動(高精細撮影)に切り替えるための判定範囲を設定することができる。高速ドラフトの設定では、垂直画素加算やパーシャルスキャン(取り込み範囲を限定したスキャン、株式会社日立国際電気の登録商標)、ROI(Region of Interest)読み出し座標範囲の設定など、物体検出のために必要な部分のみを簡易撮影するための設定を行うことができる。電子シャッタの設定では、高速ドラフト駆動と通常撮影用駆動で同等な映像出力レベルとなるように感度ゲインと電子シャッタを連携させるための設定を行うことができる。なお、感度ゲインと電子シャッタの連携は、高速ドラフトの設定で決まる秒間撮影速度および画素加算回数と高精細出力の秒間撮影速度との差異を算出し、比率から自動設定することもできる。背景状態を取得する事前動作は、物体が無い撮影をし色や明るさから背景と見なされる映像レベルとする閾値範囲を指定する。これらの設定を行うことで、物体検出連携のための初期設定が完了する。
【0051】
ステップS11で背景の初期設定があると判定された場合、又は上記の設定処理(ステップS13)の実行後は、物体検出連携の設定がONか否かを判定する(ステップS14)。
ステップS14で物体検出連携の設定がONでないと判定された場合は、通常動作を行い(ステップS15)、利用者が物体検出連携の設定をONにするまで待つ(ステップS16)。すなわち、撮影画像の内容を元に判定を高速に行なうための高速ドラフト駆動と後段の画像処理装置34の要求する高精細映像出力のための通常撮影用駆動とを自動切り替えする物体検出連携の動作をせず、物体検出連携の設定がONになるまで待機する。
ステップS14で物体検出連携の設定がONと判定された場合、又はONへの変更(ステップS16)の実行後は、物体検出連携の判定動作へと進み、現在自動設定されている駆動状態を確認する(ステップS17)。
【0052】
ステップS17で通常撮影用駆動と判定された場合は、通常撮影用駆動により得られた高精細映像を後段の映像処理装置34に対して出力し(ステップS18)、撮影された物体の作る閉領域よりも後ろ側(物体の移動方向の後ろ側)に背景の領域があるかを判定する(ステップS19)。背景の領域が無い場合は、撮影した物体が画面内に収まらないなどの異常な状態にあるとして条件異常アラート処理へステップを進めることになるが、本発明に対しては例外処理のため、説明を割愛する。物体移動の後ろ側に背景の領域がある場合は、更にその後ろ側に続く物体の有無の判定(ステップS24)に進む。
【0053】
また、ステップS17で通常撮影用駆動でないと判定された場合(高速ドラフト駆動の場合)は、後段の映像処理装置34に対する映像出力は無くてもよい(ステップS20)。ステップS20では、システムの負荷に問題がなければ簡易撮影の映像として出力してもよいが、あるべき高精細映像ではない。
通常撮影用駆動でないと判定された場合は、物体移動の後ろ側に続く部分に物体が存在するかについて、後続部分の先頭の場所を検出先頭位相として判定する(ステップS21)。すなわち、物体の先頭を検出すべき撮影範囲に対して、背景閾値に含まれない値が連続する領域(すなわち、物体の作る閉領域)があるか否かを判別する。
【0054】
ステップS21で物体移動の後ろ側に続く部分に物体が存在すると判定された場合、すなわち、移動してきた物体を撮影している状態の場合は、検出先頭位相を物体の閉領域の先頭へ更新する(ステップS22)。具体的には、画面内で物体の作る閉領域が移動してくる先頭の部分を、次の検出先頭位相として、画像内の座標を保持管理する。ひとつ前の画像での検出先頭位相と今の画像での検出先頭位相との差分画素数を計算すれば、画像毎の画面内移動距離を試算することができる。また、高速ドラフト設定で決まる秒間撮影速度および画素加算回数と高精細映像出力の秒間撮影速度との差異を算出して比率から、高精細映像出力へ切り替えたときの画面内移動距離も試算することができる。試算の有無は問わず、検出先頭位相を更新したら、撮影先頭位相範囲に物体が到達したかの判定(ステップS27)へ進むことができる。
【0055】
ステップS21で物体移動の後ろ側に続く部分に物体が存在しないと判定された場合、すなわち、背景のみを撮影した状態の場合は、背景閾値に含まれる値のみが連続した画像のため、検出先頭位相をクリアして次の物体が撮影範囲に現れる画像を待つ状態とする(ステップS23)。検出先頭位相のクリア後は、撮影先頭位相範囲に物体が到達したかの判定(ステップS27)へ進むことができるが、移動方向の後ろ側は背景のみなので、次回は高速ドラフト駆動となることが確定している。
【0056】
ステップS18、S19にて通常高精細映像出力が正常になされた場合には、ステップS21と同様に、背景の後ろ側に続く部分に物体が存在するかを判定する(ステップS24)。ただし、現在撮影を終えた物体の閉領域を除外して、移動方向の後ろ側の背景の更に後ろ側に、背景閾値に含まれない値が連続する領域があるか否かで判別する。
【0057】
ステップS24で背景の後ろ側に続く部分に物体が存在すると判定された場合、すなわち、続いて移動してきた物体を撮影している状態の場合は、検出先頭位相を次の物体へ更新する(ステップS25)。具体的には、後ろに現れている物体の作る閉領域が移動してくる先頭の部分を、次の検出先頭位相として、画像内の座標を保持管理する。現在撮影した物体による検出先頭位相と、画像毎の画面内移動距離と、後ろに現れている物体のために更新する検出先頭位相とを、駆動による秒間撮影速度の違いも含めて計算すれば物体同士の配置距離を試算することができる。試算の有無は問わず、検出先頭位相を更新したら、撮影先頭位相範囲に物体が到達したかの判定(ステップS27)へ進むことができる。
【0058】
ステップS24で背景の後ろ側に続く部分に物体が存在しないと判定された場合、すなわち、後ろには物体が無く背景のみとなった状態の場合は、撮影を終えた物体の後ろ側は背景閾値に含まれる値のみが連続した画像のため、検出先頭位相をクリアして次の物体が撮影範囲に現れる画像を待つ状態とする(ステップS26)。検出先頭位相のクリア後は、撮影先頭位相範囲に物体が到達したかの判定(ステップS27)へ進むことができるが、移動方向の後ろ側は背景のみなので、次回は高速ドラフト駆動となることが確定している。
【0059】
ステップS27では、撮影先頭位相範囲に検出先頭位相があるか否かを判定する。撮影先頭位相範囲に検出先頭位相があると判定された場合は、次の撮影にて物体が撮影すべき場所まで到達するので、次回は通常撮影用駆動を行なうよう設定する(ステップS28)。撮影先頭位相範囲に検出先頭位相が無いと判定された場合は、次の撮影にて物体が撮影すべき場所へは到達しないので、次回は高速ドラフト駆動を行なうよう設定する(ステップS29)。その後、フロー図の動作開始へ戻り、次の撮影画像に対して物体検出連携を繰り返す。
【0060】
ここで、
図6のフローにおいて、ステップS29の「高速ドラフト駆動」の部分を「フレームメモリ出力無し」に置き換え、ステップS28の「通常撮影用駆動」の部分を「フレームメモリ出力」に置き換えれば、第2構成例のカメラ装置の高速度撮像判定部40Aによる高速度判定処理に相当したフローチャートを表現することができる。
【0061】
次に、本発明に係るカメラ装置による撮影・出力映像について説明する。
図7には、第1構成例のカメラ装置による撮影・出力映像の時系列順の画像例を示してある。同図では、上から下に向かう方向で時刻の推移を表しており、右から左へ撮影対象物が移動してきて撮影される様子を表している。また、撮影対象物が縦に潰れて見える部分は、垂直画素の加算により高速に撮影された画像を表している。加えて画像の上下が無いのは、ROI範囲設定やパーシャルスキャン動作により必要部を切り出して高速に撮影された画像を表わしている。
【0062】
画像401は、判定用高速撮影(高速ドラフト駆動)で動作する撮像素子による撮像信号の出力画である。画像402は、出力用高精細撮影(通常撮影用駆動)で動作する撮像素子による撮像信号の出力画である。指定範囲411は、判定用高速撮影時に物体の水平先頭が高精細撮影すべき場所へ到達したかを検出する範囲である。撮影画像から指定範囲411内にて物体の水平先頭の到達が検出された場合には、次回の撮影は出力用高精細撮影となる。指定範囲412は、出力用高精細撮影時に後続の物体の水平先頭を検出する指定範囲を示している。撮影画像から指定範囲412内にて後続の物体の水平先頭が検出された場合には、次回の撮影も出力用高精細撮影となる。
【0063】
判定用高速撮影時は、撮影画像401に対して指定範囲411の物体移動方向側(
図7では向かって左側)の指定範囲端から物体進入方向側(
図7では向かって右側)の画面端までの範囲において、撮影画像の値が背景閾値の範囲内か否かを判定して、背景では無い判定が数画素に渡る場合、物体が現われたと判断して、その水平先頭の画像位相を検出先頭位相とする。検出先頭位相421、422、423、424は、物体の移動に合わせて、撮影毎にその座標位相を変えていく。判定用高速撮影時において、検出先頭位相421、422、423は、指定範囲411に到達していないので、次の撮影を判定用高速撮影とする。検出先頭位相424は、指定範囲411に到達しているので、次の撮影を出力用高精細撮影とする。すなわち、撮影画像401の指定範囲411に、物体の先頭が現われていない(背景と等しい)場合は、次の撮影を判定用高速撮影とし、物体の先頭が現われた場合は、次の撮影を出力用高精細撮影とする。
【0064】
また、出力用高精細撮影時には、撮影された物体を除外するため、物体の移動方向の後ろ側(
図7では向かって右側)に背景が連続し始める画像位相を検出末尾位相として検出し、更に物体移動の後方に次の物体が現われていないか判定する。検出末尾位相431に続く次物体判定範囲441は背景と等しいため、次の撮影は判定用高速撮影となり、そこで検出先頭位相425が、指定範囲411に到達し、次を再び出力用高精細撮影としている。検出末尾位相432に続く次物体判定範囲442は次の物体が現われているため、検出先頭位相426を検出する。検出先頭位相426は、指定範囲412の範囲内に到達しているので、次の撮影も再び出力用高精細撮影とする。出力用高精細撮影時は、撮影速度が低下し、物体の移動量が大きくなるので、撮影先頭位相範囲とする指定範囲を広くとる必要がある。
【0065】
民芸品601,602,603,604,605は、撮影対象物の一例である。矢印611は、判定用高速撮影を行っている場合に、次の撮影までに撮影対象物が移動する移動距離を示している。矢印612は、出力用高精細撮影を行っている場合に、次の撮影までに撮影対象物が移動する移動距離を示している。出力用高精細撮影時は、判定用高速撮影時よりも移動距離が大きくなっていることが分かる。
【0066】
図7に示すように、第1構成例のカメラ装置では、判定用高速撮影時に垂直画素の加算や画像出力範囲の制限などによる高速撮影機能を用いることで、通常の4倍速の撮影を実現している。したがって、撮影対象物の移動を詳しく捉えることができ、映像出力用に指定範囲411の中心位置で撮影対象物を撮影する精度を上げやすくなる。
【0067】
出力用高精細撮影により得られた画像は、映像出力に用いられる。本例のカメラ装置は、撮影場所に現れた撮影対象物(民芸品)を中心付近で撮影して後段の映像処理装置34へ映像出力するのみであり、カメラ内では詳細な解析を行わない。後段の映像処理装置34は、カメラの映像出力を画素単位で解析し、例えば、民芸品603は図柄違い、民芸品605はサイズ不足(外殻が足りない中途品)などに分類する検品分類処理を行う。
【0068】
図8には、第2構成例のカメラ装置による撮影・出力映像の時系列順の画像例を示してある。同図では、上から下に向かう方向で時刻の推移を表しており、右から左へ撮影対象物が移動してきて撮影される様子を表している。
【0069】
画像501は、高速撮影性能を持つ撮像素子による撮像信号の出力画である。高速に画像が生成されており、情報量が多すぎてカメラの出力インターフェースに全ての画像を出力することはできない。画像502は、フレームメモリに渡す撮像信号の出力画である。指定範囲511は、撮影画像501をフレームメモリへ出力するか否かを判定するための判定エリアである。撮影画像501に対して指定範囲511に物体移動の先頭が到達したか否か(物体が存在するか否か)の判定が行われ、撮影画像501をフレームメモリに出力するか否かが決定される。すなわち、撮影画像501の指定範囲511に物体移動の先頭が到達していない場合(物体が存在しない場合)は、撮影画像501をフレームメモリに出力せず、そうでない場合を図内には指定範囲511の判定エリアを指定範囲512として、フレームメモリに出力することが決定された時点として明示し、次回の撮影による撮像信号501をフレームメモリに出力する撮像画像502として明示している。
【0070】
矢印621は、高速撮影性能による撮影を行っている場合に、次の撮影までに撮影対象物が移動する移動距離を示している。矢印622は、フレームメモリに出力する動作中に、次の撮影までに撮影対象物が移動する移動距離を示している。出力インターフェースに合わせて撮像していると、撮影対象物が大きく移動してしまうことが分かる。
【0071】
図8に示すように、第2構成例のカメラ装置では、出力インターフェースでのボトルネックの制限を受けることなく、数倍速にて撮影ができている。したがって、撮影対象物の移動を詳しく捉えることができ、映像出力用に指定範囲511の中心位置で撮影対象物を撮影する精度を上げやすくなる。
【0072】
以上説明したように、本発明に係るカメラ装置は、高速撮影により得られた画像に基づいて、所定の撮像場所に撮影対象物が存在するか否かを判定し、撮影対象物が存在すると判定された場合に、後段の装置に映像出力を提供するように構成されている。
【0073】
より具体的には、第1構成例のカメラ装置は、映像出力用の撮影を行う通常撮影用駆動(第1の駆動モード)と、通常撮影用駆動よりも高速に撮影を行う高速ドラフト駆動(第2の駆動モード)とを切り替え可能な撮像素子42と、撮像素子42により高速ドラフト駆動で撮像された撮像信号に基づいて、所定の撮影場所に存する撮影対象物を検出する簡易物体検出部43と、簡易物体検出部43により撮影対象物が検出されたことに応じて、通常撮影用駆動で動作するように撮像素子42を制御する撮像素子駆動制御部44と、撮像素子42により通常撮影用駆動で撮像された撮像信号を処理し、後段の映像処理装置34に映像出力を提供するカメラ映像処理部40Bとを備えている。
【0074】
また、第2構成例のカメラ装置は、後段の映像処理装置34への映像出力よりも高速に撮影を行う撮像素子42’と、撮像素子42’により撮像された撮像信号に基づいて、所定の撮影場所に存する撮影対象物を検出する簡易物体検出部43と、簡易物体検出部43により撮影対象物が検出されたことに応じて、撮像素子42’により撮像された撮像信号が書き込まれるフレームメモリ48と、フレームメモリ48から撮像信号を読み出して処理し、後段の映像処理装置34に映像出力を提供するカメラ映像処理部40Bとを備えている。
【0075】
このような構成により、撮影対象物が所定の撮影場所に移動してきた際に、トリガ生成装置なしで撮影対象物を撮影することができる。また、撮像素子の高速撮影機能の活用(第1実施例)や高速撮影性能の活用(第2実施例)により、カメラ映像の伝送能力に負荷をかけずに、トリガ生成装置を不要とした撮影システムを構築することができる。すなわち、所定の撮影場所に移動してきた撮影対象物をカメラ装置で撮影する撮影システムを、簡易な構成により実現することが可能となる。
【0076】
なお、本発明に係るカメラ装置は、第1構成例と第2構成例とを組み合わせた構成としても実現することができる。すなわち、映像出力用の撮影を行う通常撮影用駆動と、通常撮影用駆動よりも高速に撮影を行う高速ドラフト駆動とを切り替え可能な撮像素子42と、撮像素子42により高速ドラフト駆動で撮像された撮像信号に基づいて、所定の撮影場所に存する撮影対象物を検出する簡易物体検出部43と、簡易物体検出部43により撮影対象物が検出されたことに応じて、通常撮影用駆動で動作するように撮像素子42を制御する撮像素子駆動制御部44と、撮像素子42により通常撮影用駆動で撮像された撮像信号が書き込まれるフレームメモリ48と、フレームメモリ48から撮像信号を読み出して処理し、後段の映像処理装置34に映像出力を提供するカメラ映像処理部40Bとを備えたカメラ装置としてもよい。
【0077】
このような第1構成例と第2構成例の組み合わせによれば、物体移動装置31における物体の配置間隔にバラツキがあり、物体検出および撮影の速度が、映像処理装置34への映像出力33vの伝送速度を時折上回る場合に、一旦フレームメモリを介在させることで平均化される。したがって、ボトルネックとなる速度制限を軽減し、安易に最適な処理速度を向上することができる。
なお、撮像信号42vや42’vは後段の映像処理装置34が求める品質となるように処理を施した映像信号45vに対して、映像処理装置34への映像出力33vの伝送速度よりも高速に撮影できているが、メモリ出力信号48vや映像信号45vに用いる撮影以外は、出力用高精細撮影を行う必要はない。それよりも、撮影範囲などを限定して高速ドラフト動作を行なわせることで、更に高速な撮影速度にして物体の移動をより微細に捉え、出力用高精細撮影を行う場所の精度を上げることが重要である。第1構成例と第2構成例の組み合わせによれば、この事項にも対応することができる。
【0078】
また、上記の各構成例を拡張し、撮像素子42による撮影間隔における撮影対象物の移動量に基づいて、撮影対象物を移動させる物体移動装置31に対して速度制御信号を出力することで、撮影対象物の移動速度を制御するようにしてもよい。
具体的には、
図7の検出先頭位相421、422、423、424が、物体の移動に合わせて、撮影毎に座標位相を変えていくのを検出していることに基づいて、連続する検出先頭位相間の差分(例えば、検出先頭位相421と検出先頭位相422の差分)から撮影画面内での物体の移動画素数を算出する。そして、移動画素数が少ない(所定の閾値よりも小さい)場合は、もっと高速に撮影できることを示す値をCPUの専用レジスタなどに保持する。一方、移動画素数が多い(所定の閾値よりも大きい)場合は、撮影が粗くなるので、もっと低速に撮影できることを示す値をCPUの専用レジスタなどに保持する。これらの値を機能設定信号34cにより読み出す場合は、追加の回路や接点は要らないが、物体移動装置31を直に制御することはできない。後述の速度制御信号33cを用意できれば、電圧変化の制御線などを物体移動装置31へ繋いで、上記のレジスタの値をもとに加速と減速を制御することができる。以下、
図9~
図12を参照して説明する。
【0079】
図9には、本発明の一実施形態に係る撮影システムの別の構成例を示してある。同図のシステム構成は、
図3のシステム構成に対し、カメラ33から物体移動装置31へ出力される速度制御信号33cが追加されている。
【0080】
図10には、
図9の撮影システムで使用されるカメラ装置の構成例(第3構成例)を示してある。第3構成例のカメラ装置は、第1構成例(
図4)の構成と比べ、高速度撮像判定部40Aの撮像素子駆動制御部44”から速度制御信号33cが出力される点が異なっている。撮像素子駆動制御部44”は、簡易物体検出部43からの判定結果43cに含まれる検出先頭位相を、タイミング管理された前回の検出先頭位相との差分を持たせて電圧などの出力信号へ変換し、速度制御信号33cとして出力する。また、撮像素子駆動制御部44は、検出先頭位相が次の物体へ更新される場合は、更新された座標によって速度制御信号33cの加減速を制御し、検出先頭位相がリセットされて次の物体が現われていない場合は、加速する電圧値を出力すればよい。
【0081】
図11には、第3構成例のカメラ装置による撮影・出力映像の時系列順の画像例を示してある。同図は、
図7の画像例(第1構成例のカメラ装置による撮影・出力映像)を元に、検出位置の精度を自動変更した場合の挙動変更や、速度制御の判定を行える場所を図示したものである。
図11では、参照符号の追加のために、縦の時間軸方向が、映像出力に要する時間より、撮像画像毎に引き伸ばされている。
図7と
図11における内部の検出判定の違いから、検出先頭位相421~426や、検出末尾位相431、432と、次物体判定範囲441、442は、700番台に符号を振り、検出先頭位相721~727、検出末尾位相731、732と、次物体判定範囲741、742にて記載している。
【0082】
検出先頭位相721と検出先頭位相722の差分は、判定用高速撮影における1/15秒での画面内移動距離の矢印611に相当する。判定用高速撮影が繰り返し、検出先頭位相が存在する段階で差分を求めておけば画面内移動距離の矢印611を検出できる。
出力用高精細撮影における1/60秒での画面内移動距離の矢印612は、判定用高速撮影との動作速度の比率で算出可能である。この例では矢印611の4倍が矢印612となる。物体から物体の間隔が矢印612と等しくなれば同じ場所にて物体を撮影できる。
【0083】
検出先頭位相725と検出先頭位相726の差分が、出力用高精細撮影における矢印612の幅から、物体移動分となる判定用高速撮影における矢印611を除いた差分となるとき、この場合は矢印611の3倍幅の時に同じ場所にて物体を撮影できる。
図の検出先頭位相725と検出先頭位相726では速度制御信号33cへは加速方向の信号が出力されることになる。
【0084】
検出先頭位相726と検出先頭位相727の差分が、出力用高精細撮影における矢印612の幅から、物体移動分となる出力用高精細撮影における矢印612を除いた差分で即ち零となるときに同じ場所にて物体を撮影できる。
図の検出先頭位相726と検出先頭位相727では速度制御信号33cへは減速方向の信号が出力されることになる。
【0085】
図11では物体移動装置を制御していない状態で示している。加速すべきとされた検出先頭位相725と検出先頭位相726の関係の後、民芸品601が撮影された位置よりも民芸品602は遅れた位置で撮影されていることが示されて、減速すべきとされた検出先頭位相726と検出先頭位相727の関係の後、民芸品602が撮影された位置よりも民芸品603は進んだ位置で撮影されていることが示されている。
【0086】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記のような構成に限定されるものではなく、上記以外の構成により実現してもよいことは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法や方式、そのような方法や方式をプロセッサやメモリ等のハードウェア資源を有するコンピュータにより実現するためのプログラム、そのプログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、所定の撮影場所に移動してきた撮影対象物を撮影して後段の装置に映像出力を提供する種々のカメラ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
11:物体移動装置、 12:トリガ生成装置、 13:カメラ、 14:映像処理装置、
20:カメラ映像処理部、 21:レンズ、 22:撮像素子、 23:高精度映像処理部、 24:出力同期制御部、 25:撮像素子駆動制御部、 26:CPU、
31:物体移動装置、 33:カメラ、 34:映像処理装置、
40A:高速度撮像判定部、 40B:カメラ映像処理部、 41:レンズ、 42:撮像素子、 43:簡易物体検出部、 44:撮像素子駆動制御部、 45:高精度映像処理部、 46:出力同期制御部、 47:CPU、 48:フレームメモリ
42’:撮像素子、 44’:撮像素子駆動制御部、 44”:撮像素子駆動制御部