(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】推定装置、蓄電装置、推定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/387 20190101AFI20220414BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20220414BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20220414BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220414BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220414BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
G01R31/387
G01R31/3828
H02J7/04 A
H02J7/00 M
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/44 Q
(21)【出願番号】P 2019509985
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2018012798
(87)【国際公開番号】W WO2018181489
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2017062703
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 敦史
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-261151(JP,A)
【文献】特開2012-244648(JP,A)
【文献】特開2017-022852(JP,A)
【文献】特開2005-164604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0045587(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0079969(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/387
G01R 31/3828
H02J 7/04
H02J 7/00
H01M 10/48
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子のSOCを推定する推定装置であって、
電流計測部と、
推定部と、
変更部と、を備え、
前記推定部は、
前記電流計測部により計測される電流の積算により前記蓄電素子のSOCを推定する推定処理と、
所定の補正条件に達した場合、前記蓄電素子を満充電又はその近傍まで充電し、前記SOCの推定値の誤差を補正する補正処理と、を実行し、
前記変更部は、前記補正条件を、前記蓄電素子の状態に応じて変更
し、
前記蓄電素子の状態の相違は、要求されるSOCの推定精度の相違である、推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の推定装置であって、
前記変更部は、前記補正処理にて前記蓄電素子を充電する充電条件を、前記蓄電素子の状態に応じて変更する、推定装置。
【請求項3】
蓄電素子のSOCを推定する推定装置であって、
電流計測部と、
推定部と、
変更部と、を備え、
前記推定部は、
前記電流計測部により計測される電流の積算により前記蓄電素子のSOCを推定する推定処理と、
所定の補正条件に達した場合、前記蓄電素子を満充電又はその近傍まで充電し、前記SOCの推定値の誤差を補正する補正処理と、を実行し、
前記変更部は、前記補正条件を、前記蓄電素子の状態に応じて変更
し、
前記補正条件として定められた条件値と閾値との差が所定値未満になった場合、前記蓄電素子の使用範囲を高SOC側にシフトする処理を実行する実行部を備える、推定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の推定装置であって、
前記変更部は、前記補正処理にて前記蓄電素子を充電する充電条件を、前記蓄電素子の状態に応じて変更する、推定装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の推定装置であって、
前記蓄電素子の状態の相違は、要求されるSOCの推定精度の相違である、推定装置。
【請求項6】
請求項2又は請求項5に記載の推定装置であって、
前記SOCの推定精度の要求レベルは、前記蓄電素子の環境温度又は容量維持率により異なる、推定装置。
【請求項7】
蓄電素子と、
請求項1~請求項6のうちいずれか一項に記載の推定装置と、を含み、車両に搭載された車両用の蓄電装置。
【請求項8】
蓄電素子と、
電流計測部と、
推定部と、
変更部と、を備え、
前記推定部は、
前記電流計測部により計測される電流の積算により前記蓄電素子のSOCを推定する推
定処理と、
所定の補正条件に達した場合、前記蓄電素子を満充電又はその近傍まで充電し、前記SOCの推定値の誤差を補正する補正処理と、を実行し、
前記変更部は、前記補正条件を、前記蓄電素子の状態に応じて変更
し、
前記蓄電素子の状態の相違は、要求されるSOCの推定精度の相違である、蓄電装置。
【請求項9】
蓄電素子と、
電流計測部と、
推定部と、
変更部と、を備え、
前記推定部は、
前記電流計測部により計測される電流の積算により前記蓄電素子のSOCを推定する推
定処理と、
所定の補正条件に達した場合、前記蓄電素子を満充電又はその近傍まで充電し、前記SOCの推定値の誤差を補正する補正処理と、を実行し、
前記変更部は、前記補正条件を、前記蓄電素子の状態に応じて変更
し、
前記補正条件として定められた条件値と閾値との差が所定値未満になった場合、前記蓄電素子の使用範囲を高SOC側にシフトする処理を実行する、蓄電装置。
【請求項10】
蓄電素子のSOCを推定する推定方法であって、
電流の積算により蓄電素子のSOCを推定すること、
所定の補正条件に達した場合、前記蓄電素子を満充電又はその近傍まで充電すること、
前記SOCの推定値の誤差を補正すること、
前記補正条件を、前記蓄電素子の状態に応じて変更すること、を備え、
前記蓄電素子の状態の相違は、要求されるSOCの推定精度の相違である、推定方法。
【請求項11】
蓄電素子のSOCを推定する推定方法であって、
電流の積算により蓄電素子のSOCを推定すること、
所定の補正条件に達した場合、前記蓄電素子を満充電又はその近傍まで充電すること、
前記SOCの推定値の誤差を補正すること、
前記補正条件を、前記蓄電素子の状態に応じて変更すること、を備え、
前記補正条件として定められた条件値と閾値との差が所定値未満になった場合、前記蓄電素子の使用範囲を高SOC側にシフトする処理を実行する、推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流積算法によるSOCの推定値の誤差を補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子のSOCを推定する方法の一つに電流積算法がある。電流積算法は、電流計測部により電流の計測誤差によるSOCの推定値の誤差が蓄積する。そのため、別の方法でSOCを検出して、定期的にSOCの推定値の誤差を補正することが考えられる。電流積算法によるSOCの推定値を補正する技術を開示する文献として、下記の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電流積算法によるSOCの推定値の誤差を補正する方法の一つに、蓄電素子を満充電又はその付近まで充電して補正する方法がある。蓄電素子の使用用途や状態によっては、満充電まで充電する頻度が少ないことが好ましい場合がある。
本発明は、補正処理及び充電制御の実行頻度を、蓄電素子の状態に応じて適した頻度とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
蓄電素子のSOCを推定する推定装置は、電流計測部と、推定部と、変更部とを備え、前記推定部は、前記電流計測部により計測される電流の積算により前記蓄電素子のSOCを推定する推定処理と、所定の補正条件に達した場合、前記蓄電素子を満充電又はその近傍まで充電し、前記SOCの推定値の誤差を補正する補正処理と、を実行し、前記変更部は、前記補正条件を、前記蓄電素子の状態に応じて変更する。
【発明の効果】
【0006】
この構成により、補正処理及び充電制御の実行頻度を、蓄電素子の状態に応じて適した頻度とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図7】実施形態3におけるCCCV充電時の電流垂下特性を示す図
【
図8】実施形態4におけるリセット処理(補正処理)のフローを示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
初めに、推定装置の概要について説明する。
蓄電素子のSOCを推定する推定装置は、電流計測部と、推定部と、変更部とを備え、前記推定部は、前記電流計測部により計測される電流の積算により前記蓄電素子のSOCを推定する推定処理と、所定の補正条件に達した場合、前記蓄電素子を満充電又はその近傍まで充電し、前記SOCの推定値の誤差を補正する補正処理と、を実行し、前記変更部は、前記補正条件を、前記蓄電素子の状態に応じて変更する。
【0009】
この構成では、所定の補正条件に達した場合、補正処理が実行され、SOCの推定値の誤差を補正する。しかも、蓄電素子の状態に応じて補正条件を変更する。従って、補正処理及び充電制御の実行頻度を、蓄電素子の状態に適した頻度とすることが出来る。
【0010】
前記変更部は、前記補正処理にて前記蓄電素子を充電する充電条件を、前記蓄電素子の状態に応じて変更するとよい。この構成では、補正時の充電条件を、蓄電素子の状態に適した条件にできる。
【0011】
前記蓄電素子の状態の相違は、要求されるSOCの推定精度の相違であってもよい。この構成では、要求されるSOCの推定精度に応じて、補正条件を変更する。そのため、補正処理及び充電制御の実行頻度を、要求されるSOCの推定精度に適した頻度に出来る。同様に、充電条件を変更してもよい。
【0012】
前記SOCの推定精度の要求レベルは、前記蓄電素子の環境温度又は容量維持率により異なってもよい。この構成では、蓄電素子の環境温度や容量維持率に応じて、補正条件が変更される。例えば、夏場など蓄電素子の内部抵抗が低く、出力が高い時期(要求されるSOCの推定精度「低」)は、補正条件を緩くして補正処理の実行頻度を下げることで、充電制御の回数を減らすことが出来る。一方、冬場など蓄電素子の内部抵抗が高く、出力が低い時期(要求されるSOCの推定精度「高」)は、補正条件を厳しくして補正処理の実行頻度を高くすることで、SOCの推定精度及び電池性能を維持することが出来る。蓄電素子の容量維持率が高い場合は内部抵抗が低く、容量維持率が低い場合は内部抵抗が高い。そのため、SOCの推定精度の要求レベルは、上記した夏/冬と同じとしてもよい。
【0013】
前記補正条件として定められた条件値と閾値との差が所定値未満になった場合、蓄電素子の使用範囲を高SOC側にシフトする処理を実行する実行部を備えてもよい。
【0014】
この構成では、SOCの累積推定誤差や蓄電素子の通電時間など、補正条件として定められた条件値が閾値に対して所定値未満になった場合、蓄電素子の使用範囲を高SOC側にシフトする。このようにすることで、充電開始前のSOC値が高くなることから、補正処理のために蓄電素子を満充電又はその近傍まで充電する時間(充電時間)を短くすることが出来る。
【0015】
上記の推定装置を車両に搭載された蓄電装置に適用するとよい。この構成は、車両の燃費向上に効果的である。例えば、要求されるSOCの推定精度が低い場合、補正条件を緩くして、補正処理及び充電制御の実行頻度が少なくなるように調整することで、車両の燃費を向上できる。
【0016】
上記推定装置は、蓄電素子を有する蓄電装置に適用することが出来る。
推定方法は、電流の積算により蓄電素子のSOCを推定し、所定の補正条件に達した場合、前記蓄電素子を満充電又はその近傍まで充電し、前記SOCの推定値の誤差を補正し、前記補正条件を、前記蓄電素子の状態に応じて変更する。
【0017】
<実施形態1>
1.バッテリの説明
図1は自動車の側面図、
図2はバッテリの斜視図、
図3はバッテリの分解斜視図、
図4はバッテリの電気的構成を示すブロック図である。
【0018】
自動車(車両の一例)1は、
図1に示すように、バッテリ(蓄電装置の一例)20を備えている。バッテリ20は、
図2に示すように、ブロック状の電池ケース21を有しており、電池ケース21内には、複数の二次電池31からなる組電池30や制御基板28が収容されている。以下の説明において、
図2および
図3を参照する場合、電池ケース21が設置面に対して傾きなく水平に置かれた時の電池ケース21の上下方向をY方向とし、電池ケース21の長辺方向に沿う方向をX方向とし、電池ケース21の奥行き方向をZ方向をとして説明する。
【0019】
電池ケース21は、
図3に示すように、上方に開口する箱型のケース本体23と、複数の二次電池31を位置決めする位置決め部材24と、ケース本体23の上部に装着される中蓋25と、中蓋25の上部に装着される上蓋26とを備えている。ケース本体23内には、
図3に示すように、各二次電池31が個別に収容される複数のセル室23AがX方向に並んで設けられていてもよい。
【0020】
位置決め部材24は、
図3に示すように、複数のバスバー27が上面に配置されている。位置決め部材24がケース本体23内に配置された複数の二次電池31の上部に配置されることで、複数の二次電池31が、位置決めされると共に複数のバスバー27によって直列に接続される。
【0021】
中蓋25は、
図2に示すように、平面視略矩形状をなし、Y方向に高低差を付けた形状とされている。中蓋25のX方向両端部には、図示しないハーネス端子が接続される一対の端子部22P、22Nが設けられている。一対の端子部22P、22Nは、例えば鉛合金等の金属からなり、22Pが正極端子部、22Nが負極端子部である。
【0022】
中蓋25は、
図3に示すように、制御基板28が内部に収容されている。中蓋25がケース本体23に装着されることで、後述する二次電池31と制御基板28とが接続される。
【0023】
図4を参照して、バッテリ20の電気的構成を説明する。バッテリ20は、組電池30と、電流遮断装置37と、電流センサ41と、電圧検出部45と、温度センサ47、49と、組電池30を管理する電池管理装置(以下、BM)50とを有する。BM50が「推定部」、「変更部」の一例である。電流センサ41が「電流計測部」の一例である。BM50及び電流センサ41が「推定装置」の一例である。
【0024】
組電池30は、直列接続された複数の二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)31から構成されている。組電池30、電流センサ41、電流遮断装置37は、通電路35を介して、直列に接続されている。電流センサ41を負極側、電流遮断装置37を正極側に配置しており、電流センサ41は負極端子部22N、電流遮断装置37は、正極端子部22Pにそれぞれ接続されている。
【0025】
図4に示すように、バッテリ20には、自動車1に搭載されたエンジン(図略)を始動するためのセルモータ15が接続されており、セルモータ15はバッテリ20から電力の供給を受けて駆動する。バッテリ20には、セルモータ15の他に、電装品などの車両負荷(図略)やオルタネータ17が接続されている。オルタネータ17の発電量が車両負荷の電力消費より大きい場合、バッテリ20はオルタネータ17により充電される。また、オルタネータの発電量が車両負荷の電力消費より小さい場合、バッテリ20は、その不足分を補うために放電する。
【0026】
電流センサ41は、電池ケース21の内部に設けられており、二次電池31に流れる電流を検出する。電流センサ41は、信号線によってBM50に電気的に接続されており、電流センサ41の出力は、BM50に取り込まれる。
【0027】
電圧検出部45は、電池ケース21の内部に設けられており、各二次電池31の電圧及び組電池30の総電圧を検出する。電圧検出部45は、信号線によってBM50に電気的に接続されており、電圧検出部45の出力は、BM50に取り込まれる。
【0028】
温度センサ47は、電池ケース21の内部に設けられており、二次電池31の温度を検出する。温度センサ47は、信号線によってBM50に電気的に接続されており、温度センサ47の出力は、BM50に取り込まれる。
【0029】
温度センサ49は、電池ケース21の内部に設けられており、バッテリ20の環境温度の温度を検出する。温度センサ49は、信号線によってBM50に電気的に接続されており、温度センサ49の出力は、BM50に取り込まれる。
【0030】
電流遮断装置37は、電池ケース21の内部に設けられている。電流遮断装置37は、組電池30の通電路35上に配置されている。
【0031】
BM50は、演算機能を有するCPU51、各種情報を記憶したメモリ53、通信部55などを備えており、制御基板28に設けられている。通信部55には、自動車1に搭載された車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)100が接続されており、BM50は、エンジンの動作状態など車両に関する情報を、車両ECU100から受信する。
【0032】
BM50は、電流センサ41の出力に基づいて二次電池31の電流を監視する。電圧検出部45の出力に基づいて、各二次電池31の電圧や組電池30の総電圧を監視する。BM50は、温度センサ47、49の出力に基づいて、二次電池31の温度やバッテリ20の環境温度を監視する。
【0033】
2.二次電池の特性
二次電池31は、正極活物質にリン酸鉄リチウム(LiFePO4)、負極活物質にグラファイトを用いたリン酸鉄系のリチウムイオン二次電池である。
【0034】
図5は横軸をSOC[%]、縦軸をOCV[V]とした、二次電池31のSOC-OCV相関特性である。SOC(state of charge:充電状態)は、下記の(1)で示されるように、二次電池31の実容量(available capacity)Caに対する残存容量Crの比率である。実容量Caは、二次電池31を完全充電された状態から取り出し可能な容量である。二次電池31の満充電容量を実容量Caとする。
【0035】
OCV(open circuit voltage:開放電圧)は、二次電池31の開放電圧である。二次電池31の開放電圧は、無電流又は無電流とみなせる状態において、二次電池31の電圧を計測することにより、検出できる。
【0036】
SOC=Cr/Ca×100・・・・・・・・(1)
【0037】
二次電池31は、
図5に示すように、SOCの変化量に対するOCVの変化量がほぼ平坦なプラトー領域を有している。プラトー領域とは、SOCの変化量に対するOCVの変化量が2[mV/%]以下の領域である。プラトー領域は、概ねSOCが31%から97%の範囲に位置している。SOCが31%以下の領域、97%以上の領域は、SOCの変化量に対するOCVの変化量が、プラトー領域よりも大きい高変化領域である。
【0038】
バッテリ20の主な用途は、エンジン始動であり、エンジン始動時に数百A、時には1000A以上のクランキング電流を流す必要がある。また、車両が減速した時の回生エネルギーを受け入れる必要がある。
【0039】
従って、二次電池31は満充電付近では制御されず、プラトー領域内において、SOCが中央値で約70%になるように制御される。すなわち、二次電池31の通常使用範囲Eの下限値をSOC60%、上限値をSOC80%とすると、BM50は、SOCが60%を下回ると、車両ECU100に充電指令を送る。これにより、二次電池31は、SOCが上限値の80%まで充電される。また、二次電池31のSOCが上限値である80%を超えた場合、BM50は車両ECU100を介してオルタネータ17の発電を抑制し、二次電池31を使って車両負荷に電力を供給することでSOCを下げる。このような処理を繰り返すことで、二次電池31は、プラトー領域内にて、SOCが中央値で約70%になるように制御される。
【0040】
3.SOCの推定処理とリセット処理(補正処理)
BM50は、二次電池31のSOCを推定する処理を行う。SOCの推定は、下記の(2)式にて示すように、SOCの初期値と、電流センサ41により検出される電流Iの累積積算値と、から推定出来る(電流積算法)。
【0041】
SOC=SOCo+∫Idt/Ca・・・・・(2)
SOCoは、運転開始時のSOCの初期値、Iは電流である。
【0042】
電流積算法においては、電流センサ41の計測誤差が蓄積する。そのため、BM50は、定期的に満充電まで充電して、電流積算法によるSOCの推定値の誤差をリセットする。
【0043】
図6は、リセット処理のフローである。リセット処理のフローは、S10からS30の3つのステップから構成されている。BM50は、電流積算法によるSOC推定の開始と同時に、リセット処理のフローをスタートする。
【0044】
BM50は、フローがスタートすると、電流積算法によるSOCの累積推定誤差εを算出する(S10)。SOCの累積推定誤差εは、電流センサ41の「計測誤差」、バッテリ20の「通電時間」、バッテリ20の「電流値」などから算出することが出来る。
【0045】
電流センサ41の計測誤差は、電流値に依存しない絶対誤差と、電流値に依存する相対誤差が含まれている。
【0046】
絶対誤差だけを計測誤差とする場合、バッテリ20の「通電時間」と「絶対誤差」の積により、SOCの累積推定誤差εを算出することが出来る。
【0047】
絶対誤差と相対誤差の双方を含めて計測誤差とする場合、「バッテリ20の電流値に応じた相対誤差を通電時間について積算した値」と、「絶対誤差を通電時間について積算した値」とを加算する。これにより、SOCの累積推定誤差εを算出することが出来る。
【0048】
相対誤差は、放電時と充電時は相殺してキャンセルする分がある。キャンセル分は考慮するとよい。
【0049】
BM50は、S10の処理に続いて、リセット条件に達したか、判定する処理を行う。リセット条件は、電流積算法によるSOCの推定値の誤差をリセットするリセット処理を実行するか、否かを決定する条件である(S20)。リセット条件は、S10にて算出した電流積算法によるSOCの累積推定誤差εと閾値Hにより定められており、累積推定誤差ε≧閾値Hである。
【0050】
BM50は、電流積算法によるSOCの累積推定誤差εが閾値Hより小さい場合、リセット条件に達していないと判断する(S20:NO)。リセット条件に達していない場合、S10に戻り、BM50は、SOCの累積推定誤差εの算出を継続する。
【0051】
電流積算法によるSOCの推定開始後、算出されるSOCの累積推定誤差εは次第に増加し、やがて閾値Hを超える。
【0052】
SOCの累積推定誤差εが閾値Hを超えると、BM50は、リセット条件に達したと判断する(S20:YES)。
【0053】
リセット条件に達すると、BM50は、電流積算法によるSOCの推定値の誤差を、満充電検出法によりリセットするリセット処理(S30)を実行する。満充電検出法とは、二次電池31を満充電まで充電し、満充電を検出した時の二次電池31のSOCを「100%」と推定する方法である。
【0054】
具体的に説明すると、BM50は、リセット条件に達すると、車両ECU100を介してオルタネータ17に充電指令を送り、二次電池31を満充電まで充電する(S30:充電制御)。これにより、
図5に示すSOC-OCV相関特性上において、通常使用範囲Eに含まれるP1から満充電に相当するP2に移動する。
【0055】
満充電について説明する。オルタネータ17は、二次電池31をCCCV(定電流・定電圧)方式で充電する。CCCV充電は、定電流充電(CC充電)と、定電圧充電(CV充電)を組み合わせた充電方式であり、充電開始後、組電池30の総電圧が所定電圧に到達するまで一定の電流で充電を行う(定電流充電)。
【0056】
組電池30が所定電圧に達すると、その後、組電池30の総電圧が設定電圧(上限電圧)を超えないように充電電流を制御する(定電圧充電)。これにより、充電電流は垂下してゆく(
図7参照)。そして、垂下する充電電流が所定の電流閾値(一例として、バッテリ20の電流レートで0.05C)を下回る状態になると、満充電であると判断して、充電を停止する。すなわち、定電圧充電中において、垂下する充電電流が電流閾値を下回ることを条件として満充電と判断する。
【0057】
二次電池31の満充電を検出すると、BM50は、満充電を検出した時の二次電池31のSOCを100%と推定する。これにより、電流積算法によるSOCの推定値の誤差、すなわち累積推定誤差εをリセットすることが出来る。
【0058】
満充電ではSOCの変化量に対するOCVの変化量が大きい。そのため、満充電検出法はSOCの推定精度が高く、電流積算法によるSOCの推定値の誤差を精度よくリセットすることが出来る。
【0059】
リセット後は、満充電検出法で求めたSOCを初期値として、電流積算法でSOCを推定する。
【0060】
上記では、満充電検出法の一例として、満充電を検出した場合を説明したが、満充電の近傍に到達した事を検出し、その時の二次電池31のSOCを100%の近傍、例えば97%や98%と推定してもよい。満充電の近傍とは、後述するOCV法でSOCを推定した時に満充電と同等の検出精度が得られる範囲であり、満充電(SOC=100)に対するSOC値の差が数パーセントの範囲である。
【0061】
4.バッテリの状態とリセット条件の変更
二次電池31を満充電又はその近傍まで充電するには、オルタネータ17を駆動する必要があることから、車両の燃費が低下する。従って、リセット処理実行のため、二次電池31を満充電又はその付近まで、充電する回数はできる限り少ないことが好ましい。
【0062】
バッテリ20の状態には、SOCの推定精度の要求レベルが低い場合や、高い場合などがある。SOCの推定精度の要求レベルが低い場合、リセット処理の頻度を下げることで、車両の燃費を向上させることが可能である。
【0063】
以上のことから、BM50は、バッテリ20の状態に応じて、リセット条件を変更する。具体的には、SOCの推定精度の要求レベルを低レベル、中レベル、高レベルの3段階に分ける。そして、低レベルの場合、累積推定誤差εの閾値Hを「H1」とし、中レベルの場合、「H2」とし、高レベルの場合、「H3」とする。H1、H2、H3の大小関係は以下の(3)式で示す。
【0064】
H3<H2<H1・・・・・(3)
【0065】
このようにすることで、リセット処理のために行う充電制御の実行頻度が、SOCの推定精度の要求レベルに応じて変わる。具体的には、SOCの推定精度の要求レベルが低いほど、実行頻度が下がる。従って、要求されるSOCの推定精度を維持しつつ、車両の燃費を向上させることが出来る。高い推定精度に合わせて、充電制御の実行頻度を一律高くする場合に比べて、車両の燃費を向上させる。
【0066】
SOCの推定精度の要求レベルが異なるケースとして、二次電池31の環境温度が異なるケースを例示することが出来る。
【0067】
冬場など気温が低い場合、二次電池31は内部抵抗が高く、出力が低い。出力が低い場合、残存容量Crが、ある程度多くないと、バッテリ20は、クランキング電流を流すことが出来ない。SOCの推定誤差が大きいとエンジンの始動性に影響を与える場合があるため、SOCの推定精度の要求レベルは高い。
【0068】
反対に、夏場など気温が高い場合、二次電池31は内部抵抗が低く、出力が高い。出力が高い場合、残存容量Crが、気温が低い場合に比べて少なくても、バッテリ20は、クランキング電流を流すことが出来る。SOCの推定誤差がある程度大きくても、それがエンジンの始動性に影響を与えることは少ないため、SOCの推定精度の要求レベルを冬場より低く設定できる。
【0069】
BM50は、温度センサ49の出力によりバッテリ20の環境温度を取得し、環境温度に応じて、累積推定誤差εの閾値Hを変更する。すなわち、環境温度が低い場合(冬など)、閾値H1を選択し、環境温度が中程度の場合(春や秋など)、閾値H2を選択し、環境温度が高い場合(夏など)、閾値H3を選択する。
【0070】
環境温度が低い場合、充電制御及びリセット処理の実行頻度が多くなることから、SOCの推定精度は高い。そのため、推定精度の誤差により、バッテリ20の残存容量Crがクランキングに必要な容量を下回ることを抑制できるので、エンジンの始動性を確保できる。
【0071】
一方、環境温度が高い場合、充電制御及びリセット処理の実行頻度が少なくなる。オルタネータ17の駆動回数を少なくすることが出来るので、車両の燃費を向上させることが出来る。
【0072】
5.効果説明
BM50によれば、リセット処理及び充電制御の実行頻度を、二次電池31の状態に適した頻度とすることが出来る。
【0073】
<実施形態2>
実施形態1では、SOCの推定精度の要求レベルが異なるケースとして、二次電池31の環境温度が異なるケースを例示した。
【0074】
実施形態2では、SOCの推定精度の要求レベルが異なるケースとして、二次電池31の容量維持率Zが異なるケースを例示する。容量維持率Zは、実容量Caの維持率であり、下記の(4)式にて求めることが出来る。
【0075】
Z=Ca_t/Ca_o×100・・・・(4)
Ca_oは、実容量Caの初期値(使用開始時)、Ca_tは、使用開始から経過時間Tにおける実容量Caである。
【0076】
二次電池31の容量維持率Zが低い場合、内部抵抗が大きく、容量維持率Zが高い場合、内部抵抗が小さい。
【0077】
従って、容量維持率Zが低い場合(劣化が大きい場合)は、冬場と同様に、二次電池31の出力が低い。出力が低い場合、残存容量Crがある程度多くないと、バッテリ20は、クランキング電流を流すことが出来ない。SOCの推定誤差が大きいと、エンジンの始動性に影響を与える場合があるため、SOCの推定精度の要求レベルは高い。
【0078】
容量維持率Zが高い場合(未劣化の場合)は、夏場と同様に、二次電池31の出力が高いことから、残存容量Crが、劣化時に比べて少なくても、バッテリ20は、クランキング電流を流すことが出来る。SOCの推定誤差がある程度大きくても、それがエンジンの始動性に影響を与えることは少ないため、SOCの推定精度の要求レベルを容量維持率Zが高い場合に比べて低く設定できる。
【0079】
BM50は、車両搭載からの経過年数や環境温度の履歴の情報より、バッテリ20の容量維持率Zを推定する。BM50は、推定した容量維持率Zに応じて、累積推定誤差εの閾値Hを変更する。すなわち、容量維持率Zが低い場合、閾値H1を選択し、容量維持率Zが中の場合、閾値H2を選択し、容量維持率Zが高い場合、閾値H3を選択する。
【0080】
容量維持率Zが低い程(劣化が大きい程)、充電制御及びリセット処理の実行頻度が多くなることから、SOCの推定精度は高くなる。そのため、推定精度の誤差により、バッテリ20の残存容量Cがクランキングに必要な容量を下回ることを抑制できるので、エンジンの始動性を確保できる。
【0081】
一方、容量維持率Zが高い場合(未劣化の場合)、充電制御及びリセット処理の実行頻度が少なくなる。オルタネータ17の駆動回数を少なくすることが出来るので、車両の燃費を向上させることが出来る。
【0082】
<実施形態3>
実施形態1では、バッテリの状態に応じて、リセット条件を変更した。実施形態3では、バッテリ20の状態に応じて、充電条件を変更する。
【0083】
図7は、CCCV充電時の充電電流の垂下特性を示している。CCCV充電は、定電流充電(CC充電)と、定電圧充電(CV充電)を組み合わせた充電方式であり、充電開始後、組電池30の総電圧が所定電圧に到達するまでの期間T1は、一定の電流で充電を行う(定電流充電)。
【0084】
組電池30の総電圧30が所定電圧に到達すると、その後、組電池30の総電圧が設定電圧を超えないように充電電流を制御する(定電圧充電)。これにより、
図7に示すように、充電電流は垂下してゆく。実施形態3では、定電圧充電に切り換えてからの充電時間T2を充電終止条件としており、充電時間T2が所定時間に達すると、充電を終了する。
【0085】
車両に搭載されたオルタネータ17は、車両ECU100を介してBM50から、充電する指令を受けると、上記のCCCV充電を行って、二次電池31を充電する。
【0086】
BM50は、リセット処理のための充電を行う場合(
図6のS30)、バッテリ20の状態に応じて、充電時間T2を変更する。具体的には、環境温度が低いなどSOCの推定精度の要求レベルが高い場合、充電時間T2を「T2a」とする。環境温度が高いなどSOCの推定精度の要求レベルが低い場合、充電時間T2を「T2a」よりも短い「T2b」とする。
【0087】
T2b<T2a・・・・・・(5)
【0088】
「T2a」は、二次電池31が満充電まで充電される時間に設定されている。「T2b」は、二次電池31が満充電近傍、例えば満充電の98%まで充電される時間に設定されている。
【0089】
以上のことから、環境温度が低いなどSOCの推定精度の要求レベルが高い場合、リセット処理により二次電池31は満充電まで充電され、充電終了時の二次電池31のSOCは100%に推定される。一方、環境温度が高いなどSOCの推定精度の要求レベルが低い場合、リセット処理により二次電池31は満充電近傍まで充電され、充電終了時の二次電池31のSOCは98%に推定される。
【0090】
OCVは、SOCが97%以上の領域において、SOC値が高い程、変化が大きい。そのため、SOCの推定精度の要求レベルが高い場合、充電時間T2を長くして、満充電まで充電することで、SOCの推定精度が高くなる。
【0091】
SOCの推定精度の要求レベルが低い場合、充電時間T2を短くすることによって、充電が浅くなる。従って、SOCの推定精度は若干低くなるが、充電時間が短くなるので、オルタネータの駆動時間が短くなり、車両の燃費を向上させることが出来る。
【0092】
<実施形態4>
実施形態4では、リセット条件の成立が近くなった場合、二次電池31の通常使用範囲Eを高SOC側にシフトする処理を実行する。高SOC側とはSOCがより高い領域(
図9では右側の領域)である。
【0093】
以下、
図8を参照して、シフト処理のフローについて説明する。シフト処理のフローはS10~S15の3つのステップから構成されている。
【0094】
BM50は、電流積算法によるSOC推定の開始と同時に、シフト処理のフローをスタートする。シフト処理のフローは、
図6に示すリセット処理のフローと並行して行われる。
【0095】
BM50は、シフト処理のフローがスタートすると、まず、電流積算法によるSOCの累積推定誤差εを算出する(S10)。この処理は、
図6のS10と同じ処理である。
【0096】
BM50は、SOCの累積推定誤差εを算出後、累積推定誤差εとリセット条件の閾値Hの差が所定値未満か、判定する(S13)。累積推定誤差εが「条件値」の一例である。
【0097】
累積推定誤差εと閾値Hの差が所定値未満の場合(S13:NO)、S10に戻り、BM50は、SOCの累積推定誤差εの算出を継続する。
【0098】
電流積算法によるSOCの推定処理の開始後、SOCの累積推定誤差εは次第に増加し、やがて閾値Hとの差が所定値未満となる。
【0099】
SOCの累積推定誤差εと閾値Hとの差が所定値未満になると(S13:YES)、BM50は、二次電池31の通常使用範囲Eを高SOC側にシフトするシフトを実行する(S15)。
【0100】
具体的には、SOCの通常使用範囲Eの下限値を70%、上限値を90%に変更し、BM50は、SOCが70%を下回ると、車両ECU100に充電指令を送る。これにより、二次電池31は、SOCが上限値の90%まで充電される。また、二次電池31のSOCが上限値である90%を超えた場合、BM50は車両ECU100を介してオルタネータ17の発電を抑制し、二次電池31から車両負荷に電力を供給することでSOCを下げる。このような処理を繰り返すことで、二次電池31は、プラトー領域内にて、SOCが中央値で約80%になるように制御される。
図9のE1はシフト前の通常使用範囲、E2はシフト後の通常使用範囲E2を示している。
【0101】
BM(本発明の「実行部」の一例)50は、SOCの累積推定誤差εと閾値Hとの差が所定値未満になった場合、二次電池31の通常使用範囲Eを高SOC側にシフトする。そのため、充電開始前のSOC値が高くなることから、リセット処理(
図6のS30)のためにバッテリ20を満充電まで充電する時間(充電時間)を短くすることが出来る。
【0102】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0103】
(1)実施形態1では、バッテリ20を車両に搭載した例を示したが、バッテリ20をハイブリッド建機やハイブリッド電車に搭載してもよい。また、それ以外の用途へのバッテリ20の適用も可能である。バッテリ20は、二次電池31がプラトー領域内で使用され、満充電又はその近傍への充電頻度が低い用途に適用されることが好ましい。
【0104】
(2)実施形態1では、蓄電素子としてリチウムイオン二次電池31を例示した。蓄電素子は、リチウムイオン二次電池に限定されるものではなく、他の二次電池やキャパシタであってもよい。蓄電素子の特性として、SOC-OCV特性においてプラトー領域又は低変化領域を有し、満充電付近では、OCVの変化が大きいことが好ましい。低変化領域は、SOCの変化量に対するOCVの変化量が、満充電付近に比べて、相対的に小さい領域である。
【0105】
(3)実施形態1では、「SOCの累積推定誤差ε」に関する条件をリセット条件とした。これ以外にも、「バッテリ20の通電時間」に関する条件や、「前回リセット処理からの経過時間」に関する条件をリセット条件としてもよい。
【0106】
(4)実施形態1では、垂下する充電電流が所定の電流閾値を下回る状態になると、満充電であると判断した。満充電の判断方法は、垂下する充電電流の値に基づく方法の他、定電流充電から定電圧充電に切り換えてからの充電時間や組電池30の総電圧により判断することも可能である。
【0107】
(5)実施形態1では、電流積算法によるSOCの推定値の誤差を、満充電検出法により補正(リセット)する例を示した。補正の方法は、満充電検出法に限定されるものではなく、バッテリ20を満充電又はその近傍まで充電し、その後、OCV法でSOCを推定することにより、電流積算法によるSOCの推定値の誤差を補正してもよい。
【0108】
OCV法は、二次電池31のOCVに基づいてSOCを推定する方法であり、OCVの計測値を、SOCとOCVの相関性を示す相関データ(
図5)に参照することにより、SOCを推定する方法である。
【0109】
(6)実施形態4では、バッテリ20の状態に応じて、定電圧充電時の充電時間T2を変更する例を示した。これ以外にも、充電終止電圧など、他の充電条件を変更してもよい。また、充電条件を変更する処理は、補正条件を変更する処理の実行や充電時間T2を変更する処理の実行を前提としたものではなく、独立して行ってもよい。すなわち、補正条件を変更する処理は実行せずに、充電条件を変更する処理だけを行ってもよい。
【0110】
(7)無停電電源装置(UPS)のように、蓄電装置がフロート充電される用途では、プラトー領域又は低変化領域にSOC100%が設定されることもある。その場合でも、蓄電装置に対しリフレッシュ充電を行うときに(SOC100%を超えて充電を行うときに)、本発明のコンセプトを適用してSOC推定精度を向上できる。本発明のコンセプトは、産業用途の蓄電装置にも適用可能である。
【0111】
(8)実施形態1では、SOCの累積推定誤差εを、電流センサ41の「計測誤差」に基づいて、算出した。電流センサ41の計測誤差は、環境温度や使用年数により異なる場合がある。従って、電流センサ41の計測誤差を、環境温度、使用年数の少なくともいずれかに基づいて、変更するとよい。具体的には、環境温度や使用年数と、電流センサの計測誤差の関係を予め実験等により得ておき、そのデータに基づいて、電流センサ41の計測誤差を変更するとよい。
【符号の説明】
【0112】
1 自動車(「車両」の一例)
15 セルモータ
17 オルタネータ
20 バッテリ
30 組電池
31 二次電池(「蓄電素子」の一例)
41 電流センサ(「電流計測部」の一例)
45 電圧検出部
50 BM(「推定部」、「変更部」、「実行部」の一例)