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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20220414BHJP
   E03D 11/08 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D11/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020113757
(22)【出願日】2020-07-01
(62)【分割の表示】P 2018085728の分割
【原出願日】2013-12-27
(65)【公開番号】P2020159188
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2020-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】頭島 周
(72)【発明者】
【氏名】平河 智博
(72)【発明者】
【氏名】北村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】篠原 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】下川 雄基
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-213883(JP,A)
【文献】実開平06-053677(JP,U)
【文献】特開2001-262657(JP,A)
【文献】特開平10-195961(JP,A)
【文献】特開平08-177112(JP,A)
【文献】特開2013-194410(JP,A)
【文献】特開2013-050027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、
便器本体の後方上面に設置され、排水口を開閉することにより上記便器本体へ洗浄水を供給する貯水タンクと、
ボウル形状の汚物受け面と、上縁部に形成されその内周面がオーバーハング形状又は略鉛直方向に立ち上がるように形成されたリム部と、を備えたボウル部と、このボウル部の下方にその入口が接続され汚物を排出する排水路と、上記リム部の内周面に洗浄水を吐水して旋回流を形成する第1リム吐水部及び第2リム吐水部と、上記貯水タンクに貯水された洗浄水を上記第1リム吐水部及び上記第2リム吐水部へ導くリム導水路と、を備えた便器本体と、を有し、
上記リム導水路は、上記貯水タンクの排水口と接続し下方へと延びる下向導水路と、この下向導水路と繋がる屈曲導水路と、この屈曲導水路と繋がり横方向へ延び上記第1リム吐水部及び上記第2リム吐水部と連通する横向導水路とから構成され、
上記横向導水路には、上記第1リム吐水部及び上記第2リム吐水部の出口の合計断面積よりも小さい通水断面積を有する縮径部と、上記第1リム吐水部及び上記第2リム吐水部と上記縮径部を繋ぐ通水部が形成されており、上記通水部は洗浄水の流れ方向に向かって上方へ徐々に傾斜する箇所を有することを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記下向導水路の前方側の側面は、洗浄水の流れ方向に向かって前方へ徐々に傾斜していることを特徴とする請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記縮径部は、上記屈曲導水路と連接する上記横向導水路の入口から洗浄水の流れ方向に所定距離の長さにわたって延びる流路であり、この長さが10mm~100mmであることを特徴とする請求項1又は2記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記縮径部は、鉛直方向の通水断面形状が横方向に長い扁平形状で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記縮径部は、上記屈曲導水路と連接する側の上記横向導水路の上面を下方へ位置させることにより通水断面積を縮径するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水供給源から供給される洗浄水により便器本体を洗浄して汚物を排出する洗い落とし式等の水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器として、特許文献1に記載されているように、清掃性を高めるために、水洗大便器のボウル部の上縁に形成されたリム部の内周をオーバーハング形状又は略鉛直形状に形成し、貯水タンクに貯められた洗浄水をリム吐水口から水平方向に吐水して旋回流を形成するものが知られている。
この貯水タンクは、多種類の便器毎の仕様にあわせて、各タンク内に貯められる洗浄水の高さ位置を調整し、便器本体までの落差を変更し、便器に供給する最適な給水流量を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-44178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多種類の便器の中に、洗浄方式の異なる便器がある場合、便器本体が求める給水流量とタンクが供給する給水流量が適合しない場合があった。上述した特許文献1に記載されているような水洗大便器においては、便器本体が求める給水流量とタンクが供給する給水流量が適合しない状態で使用すると、給水流量が比較的大きい貯水水位が高い位置にある貯水タンクを適用した場合、リム部の内周がオーバーハング形状又は略鉛直形状に形成されているために、リム部を旋回する洗浄水がリム部を越えて便器本体外に溢れ出すといった問題が生じる。特にリム部のうち曲率半径が小さい前方および後方側領域、及び前方側から側方側に移行する領域においてはリム部を旋回する洗浄水が溢れ出し易いという問題が生じている。また、給水流量が比較的小さい貯水水位が低い位置にある貯水タンクを適用した場合、リム吐水部から吐水される洗浄水の給水流量が減少されることにより、リム部を旋回する洗浄水の勢いが弱くなり、ボウル部内を十分に洗浄できなくなるという問題が生じている。
【0005】
この問題を解決するために、リム吐水口及びリム吐水口への導水路、ゼット吐水口及びゼット吐水口への導水路それぞれの通水断面積を調節することで、便器本体の圧力損失を調整することが考えられる。しかし、前記各所の通水断面積を調整した場合、各吐水口から出てくる洗浄水の分配比や洗浄水の流速まで変化してしまうことでバランスが崩れ、排出性能に影響を及ぼすという問題が生じてしまう。また、圧力損失の調整箇所が複数あることでそれぞれの寸法バラつきの影響を受けやすく圧力損失を制御することが困難であるという問題が生じている。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、不適合の給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体に取付けられた場合であっても便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水をボウル部へ供給することができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、便器本体の後方上面に設置され、排水口を開閉することにより便器本体へ洗浄水を供給する貯水タンクと、ボウル形状の汚物受け面と、上縁部に形成されその内周面がオーバーハング形状又は略鉛直方向に立ち上がるように形成されたリム部と、を備えたボウル部と、このボウル部の下方にその入口が接続され汚物を排出する排水路と、リム部の内周面に洗浄水を吐水して旋回流を形成する第1リム吐水部及び第2リム吐水部と、貯水タンクに貯水された洗浄水を第1リム吐水部及び第2リム吐水部へ導くリム導水路と、を備えた便器本体と、を有し、リム導水路は、貯水タンクの排水口と接続し下方へと延びる下向導水路と、この下向導水路と繋がる屈曲導水路と、この屈曲導水路と繋がり横方向へ延び吐水部と連通する横向導水路とから構成され、横向導水路には、第1リム吐水部及び第2リム吐水部の出口の合計断面積よりも小さい通水断面積を有する縮径部と、第1リム吐水部及び第2リム吐水部と縮径部を繋ぐ通水部が形成されており、通水部は洗浄水の流れ方向に向かって上方へ徐々に傾斜する箇所を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、貯水タンクの給水流量が大きいほど導水路の通水断面積が小さくなるように縮径部が横向導水路に設けられることにより、便器本体が求める給水流量より大きい不適合の給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体に取付けられた場合でも、各吐水口から出てくる洗浄水の分配比や洗浄水の流速を変化させることなく、便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水をボウル部へ供給することができる。
よって、ボウル部のリム部の内周面がオーバーハング形状又は略鉛直方向に立ち上がるように形成されている便器において、リム吐水部から吐水される洗浄水の給水流量が増大されることにより、リム部を旋回する洗浄水がリム部を越えて便器外に溢れ出すことを防止することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、下向導水路の前方側の側面は、洗浄水の流れ方向に向かって前方へ徐々に傾斜している。
このように構成された本発明においては、下向導水路の前方側の側面が洗浄水の流れ方向に向かって前方へ徐々に傾斜しているため、下向導水路を通過した洗浄水を縮径部にスムーズに導くことができ、不適合の給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体に取付けられた場合でも便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水と確実にすることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、縮径部は、屈曲導水路と連接する横向導水路の入口から洗浄水の流れ方向に所定距離の長さにわたって延びる流路であり、この長さが10mm~100mmである。
このように構成された本発明においては、横向導水路の入口から縮径部が10mm~100mm長さで形成されているため、洗浄水の流れをスムーズにしてより整流された流れの洗浄水を便器本体へ供給することができ、不適合の給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体に取付けられた場合でも便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水をボウル部へ供給することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、縮径部は、鉛直方向の通水断面形状が横方向に長い扁平形状で形成されている。
このように構成された本発明においては、縮径部が横方向に長い扁平形状で形成されているため、上下方向の洗浄水の流速分布を一様とすることができ、洗浄水の流れをスムーズにしてより整流された流れの洗浄水を便器本体へ供給することができ、不適合の給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体に取付けられた場合でも便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水をボウル部へ供給することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、縮径部は、屈曲導水路と連接する側の横向導水路の上面を下方へ位置させることにより通水断面積を縮径するように構成されている。
このように構成された本発明においては、屈曲導水路と連接する側の横向導水路の上面を下方へと位置させることにより縮径部を構成しているために、屈曲導水路を通過した洗浄水が横向導水路に流入する際、淀みが発生し洗浄水が滞留し易い領域である屈曲導水路と連接する側の横向導水路の上方領域を減らすことができる。したがって、洗浄水の流れをスムーズにして整流された洗浄水を便器本体へ供給することができ、不適合の給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体に取付けられた場合でも便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水をボウル部へ供給することができる。

【発明の効果】
【0013】
本発明の水洗大便器によれば、不適合の給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体に取付けられた場合であっても便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水をボウル部へ供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による水洗大便器を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態による水洗大便器を示す側面断面図である。
図3】(a)図2のA-A線に沿って見た導水路の鉛直方向断面図である。 (b)図2のB-B線に沿って見た導水路の鉛直方向断面図である。 (c)タンク接続口の上面視の平面図である。 (d)第一リム吐水口の正面断面図である。 (e)第二リム吐水口の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付図面により、本発明の実施形態による水洗大便器を説明する。先ず、図1により、本実施形態による水洗大便器の設置状態を説明する。図1は、本発明の実施形態による水洗大便器を示す平面図である。図1に示すように、符号1は、本実施形態による水洗大便器1を示し、この水洗大便器1は、後述する排水トラップ管路内の水位上昇による落差を利用して汚物を排出する洗い落とし式水洗大便器(ウォッシュダウン式便器)である。なお、本実施形態においては、水洗大便器は他のタイプの便器(例えば、サイホン式便器)であってもよい。
【0016】
水洗大便器1は、陶器製の便器本体2を備えている。便器本体2の後方側の上方には、洗浄水を貯水する貯水タンク(図示せず)が取り付けられ、貯水タンクの底面に設けられた排水口が、便器本体2に設けられたタンク接続口3と連通するように構成されている。貯水タンクの底面の排水口には、使用者の操作に応じて上下動する排水弁が設けられており、使用者が便器洗浄開始の操作をすると、排水弁が排水口を開口して、貯水タンク内の洗浄水が、タンク接続口3を通じて便器本体2に供給され、便器本体2が洗浄されるようになっている。
【0017】
次に、図1及び図2により、本実施形態による水洗大便器1を詳細に説明する。図2は本発明の実施形態による水洗大便器を示す側面断面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1の便器本体2は、ボウル部12と、このボウル部12の底部から連通して延びる排水トラップ管路14を有する。ボウル部12は、汚物受け面16と、この汚物受け面16の上縁に形成されたリム部18を備えている。このリム部18は、その内周面がオーバーハング形状又は略鉛直方向に立ち上がるように形成されている。このリム部18は、オーバーハング又は略鉛直形状のリム部であり、汚物受け面16の上縁から上方に滑らかに立ち上がるように形成されている。さらに、ボウル部12の汚物受け面16は、ボウル形状の上方汚物受け面20と、この上方汚物受け面20と排水トラップ管路14との間に形成された凹部22を備えている。
【0019】
排水トラップ管路14は、ボウル部12の底部に開口した入口14aから斜め上方に延び、最高点14bを通った後、斜め下方に延びて、出口14cに達し、排水ソケットを介して排水管(図示せず)に接続されている。水洗大便器1の溜水水位Lは、排水トラップ管路14の最高点14bの高さと等しくなる。
【0020】
便器本体2を前方から見て、リム部18の左側の中央領域の内周側には、第一リム吐水口26が形成され、第一リム導水路26dが略同一の通水断面積で第一リム吐水口26まで延び、洗浄水が第一リム吐水口26まで供給されるようになっている。この第一リム吐水口26から前方に向けて洗浄水が吐水され、ボウル部12内において旋回流を形成するようになっている。
さらに、便器本体2を前方から見て、リム部18の右側の後方領域の内周側には、第二リム吐水口28が形成され、第二リム導水路28dが略同一の通水断面積で第二リム吐水口28まで延び、洗浄水が第二リム吐水口28に供給されるようになっている。この第二リム吐水口28から、第一リム吐水口26から吐水される洗浄水で形成される旋回流と同一方向に洗浄水が吐水され、ボウル部12内において旋回流を形成しボウル部12の後方領域を洗浄するようになっている。
【0021】
便器本体2の導水路24の上流端には、貯水タンク(図示せず)と接続するタンク接続口3が形成されている。導水路24は、貯水タンクの排水口と接続し下方へと延びる下向導水路24aと、この下向導水路と繋がる屈曲導水路24bと、この屈曲導水路24bと繋がり横方向へ延び、第一リム導水路26d、第二リム導水路28dを介して第一リム吐水口26、第二リム吐水口28と連通する横向導水路24cとから構成されている。
【0022】
横向導水路24cは、屈曲導水路24bと繋がる入口24d付近においては、流水経路の径が縮小された縮径部24eが形成されている(図1、2の点線囲んだ領域)。縮径部24eは、その通水断面形状において、左右方向である横方向に長い扁平形状で形成されている。縮径部24eの通水断面積(流路断面積)C1は、タンク接続口3の通水断面積(流路断面積)C4よりも小さくなるように形成されており、便器本体の導水路24の通水断面積の中で最も小さくなるように形成されている。また、縮径部24eの通水断面積C1は、第一リム導水路26d、第一リム吐水口26の通水断面積C2と、第二リム導水路28d、第二リム吐水口28の通水断面積C3との合計よりも小さくされている。従って、縮径部24eの通水断面積C1により、便器本体導水路24内を流れる洗浄水の給水流量が決定されるようになっている。
また、上述した実施形態の場合では、縮径部24eの通水断面積C1が、第一リム吐水口26の通水断面積C2と第二リム吐水口28の通水断面積C3との合計よりも小さくされているが、ゼット吐水口及びゼット導水路を備えた場合は、縮径部24eの通水断面積C1が、リム吐水口とゼット吐水口の通水断面積との合計よりも小さくされる。要は、洗浄水のボウル部への出口である吐水口が一つ又は複数にかかわらず、縮径部の通水断面積が、各導水路、洗浄水の出口である吐水口の通水断面積との合計よりも小さくなっていれば良い。
【0023】
次に、図2及び図3により、導水路24に形成される縮径部24eについて詳細に説明する。
図3(a)は、図2のA-A線に沿って見た導水路24の鉛直方向断面図である。図3(b)は、図2のB-B線に沿って見た導水路24の鉛直方向断面図である。図3(c)は、タンク接続口3の上面視の平面図である。図3(d)は、第一リム吐水口26の正面断面図である。図3(e)は、第二リム吐水口28の正面断面図である。
【0024】
縮径部24eは、自身を通過する洗浄水に関して、貯水タンクからの不適合の給水流量を、便器洗浄に適したほぼ一定の給水流量に調節することができるものである。
縮径部24eは、便器本体2とは同一材料の陶器で便器本体2と一体に形成されている。なお、縮径部24eを樹脂等の別部材で形成しても良い。
【0025】
縮径部24eは、その通水断面形状において、左右方向である横方向に長い扁平形状で、洗浄水が流れる方向に所定距離で形成されている。この所定距離は、約10mm~約100mmで形成されており、さらに好ましくは、約10mm~約50mmで形成されている。
縮径部24eは、その通水断面形状において、左右方向である横方向に長い扁平形状で洗浄水が流れる方向に所定距離で形成されているため、上下方向の洗浄水の流速分布を一様とすることができ、洗浄水の流れをスムーズにして整流された流れの洗浄水を便器本体2へ供給することができる。
【0026】
横向導水路24cは、屈曲導水路24bと直接的に繋がる縮径部24eとこの縮径部24eの下流に繋がる通水部24fとから構成されている。
縮径部24eは、自身の長さをより長く形成することにより圧力損失を増大させることができ、また、自身の通水断面積をより小さく形成することにより圧力損失を増大させることができる。逆に、縮径部24eは、自身の長さをより短く形成することにより圧力損失を減少させることができ、また、自身の通水断面積をより大きく形成することにより圧力損失を減少させることができる。
【0027】
縮径部24eの通水断面積C1は、導水路24の内、最も小さく形成されている。具体的に、タンク接続部の通水断面積C4、通水部24fの通水断面積C5より小さく形成されており、第一リム導水路26dの各通水断面積や第一リム吐水口26の通水断面積C2と第二リム導水路28dの各通水断面積や第二リム吐水口28の通水断面積C3の合計断面積より小さく形成されている。
縮径部24eが、導水路24、第一リム導水路26dと第二リム導水路28dの内、最も小さく形成されているため、導水路24を流れる洗浄水が受ける圧力損失が、縮径部24eで最も大きくなり、縮径部24eの通水断面積を調整すれば、第一リム吐水口26及び第二リム吐水口28から吐水される洗浄水の給水流量を適切なものとすることができる。
【0028】
また、導水路24は、貯水タンクの排水口と接続し下方へと延びる下向導水路24aと、この下向導水路24aと繋がる屈曲導水路24bと、この屈曲導水路24bと繋がり横方向へ延び、第一リム導水路24d、第二リム導水路28dを介して第一リム吐水口26、第二リム吐水口28と連通する横向導水路24cとから構成されている。
横向導水路24cは、屈曲導水路24bと直接的に繋がる縮径部24eとこの縮径部24eの下流に繋がる通水部24fとから構成されている。
【0029】
横向導水路24cの内、屈曲導水路24bと直接的に繋がる部分の横向導水路24cの上面の全体を、横向導水路24cの他の部分である通水部24fの上面と比べて、下方に位置させることにより、縮径部24eを構成している。これにより、屈曲導水路24bを通過した洗浄水が横向導水路24cに流入する際、淀みが発生し洗浄水が滞留し易い領域である屈曲導水路24bと連接する側の横向導水路24cの上方領域を減らすことができる。したがって、洗浄水の流れをスムーズにして整流された洗浄水を便器本体2へ供給することができ、不適合の給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体に取付けられた場合でも便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水をボウル部へ供給することができる。
【0030】
縮径部24eの上流の下向導水路24aの前方側の側面24gは、洗浄水の流れ方向に向かって前方(横向導水路24cの入口24dの側)へ徐々に傾斜している。下向導水路24aの前方側の側面24gが洗浄水の流れ方向に向かって前方へ徐々に傾斜しているため、下向導水路24aを通過した洗浄水を縮径部24eにスムーズに導くことができ、不適合の給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体に取付けられた場合でも便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水と確実にすることができる。
【0031】
次に、主に図1乃至図3を参照して、上述した本発明の実施形態による水洗大便器の動作を説明する。
使用者が洗浄開始を操作すると、貯水タンク内の洗浄水が、貯水タンクの底面に設けられた排水口からタンク接続口3を通って便器本体2に向かって供給される。
このタンク接続口3から供給された洗浄水は、下向導水路24aの前方側の下方に向かって前方へ傾斜する側面24gに沿って流れ、縮径部24eに流入し、圧力損失を受けて、給水流量が減少される。
【0032】
縮径部24eが屈曲導水路24bと直接的に繋がる部分の横向導水路24cの上面を下方に位置させ、淀み領域を小さくしているために、下向導水路24aに沿って流れた洗浄水が、淀みを抑えつつ縮径部24eを流れる。その後、その縮径部24eに流入する洗浄水は、意図した所定の給水流量の範囲に調節される。
【0033】
この洗浄水が縮径部24eを流れ、第一リム導水路24d、第二リム導水路28dを介して第一リム吐水口26、第二リム吐水口28から吐水される場合に、第一リム吐水口26、第二リム吐水口28から吐水された洗浄水がオーバーハング又は略鉛直形状のリム部18を越えて溢れ出ることを抑制することができる。
第一リム吐水口26、第二リム吐水口28から吐水され、ボウル部12内を旋回する旋回流が、リム部18を越えて溢れ出ることなく汚物受け面16を良好に洗浄することができる。
【0034】
第一リム吐水口26、第二リム吐水口28から吐水された洗浄水は、ボウル部12内で旋回流を形成し、ボウル部12の汚物受け面16が洗浄され、排水トラップ管路14から、汚物を排出する。
【0035】
上述した本実施形態による水洗大便器1においては、便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、便器本体2の後方上面に設置され、排水口を開閉することにより便器本体2へ洗浄水を供給する貯水タンクと、ボウル形状の汚物受け面16と、上縁部に形成されその内周面がオーバーハング形状又は略鉛直方向に立ち上がるように形成されたリム部18と、を備えたボウル部12と、このボウル部12の下方にその入口14aが接続され汚物を排出する排水路14と、リム部18の内周面に洗浄水を吐水して旋回流を形成するリム吐水部26,28と、上記貯水タンクに貯水された洗浄水をリム吐水部26,28へ導くリム導水路26d,28dと、を備えた便器本体2と、を有し、導水路24は、貯水タンクの排水口と接続し下方へと延びる下向導水路24aと、この下向導水路24aと繋がる屈曲導水路24bと、この屈曲導水路24bと繋がり横方向へ延びリム吐水部26,28と連通する横向導水路24cとから構成され、横向導水路24cには、リム吐水部26,28の出口の合計断面積よりも小さい通水断面積を有する縮径部24eが形成されている。
貯水タンクの給水流量が大きいほど導水路の通水断面積が小さくなるように縮径部が横向導水路24cに設けられることにより、便器本体2が求める給水流量より大きい不適合の給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体に取付けられた場合でも、各吐水口から出てくる洗浄水の分配比や洗浄水の流速を変化させることなく、便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水をボウル部12へ供給することができる。よって、ボウル部12のリム部18の内周面がオーバーハング形状又は略鉛直方向に立ち上がるように形成されている便器において、リム吐水部26,28から吐水される洗浄水の給水流量が増大されることにより、リム部18を旋回する洗浄水がリム部18を越えて便器1外に溢れ出すことを防止することができる。
また、便器本体2が求める給水流量より小さい不適合の給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体2に取り付けられた場合でも、各吐水口26,28から出てくる洗浄水の分配比や洗浄水の流速を変化させることなく、便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水をボウル部12へ供給することができる。よって、リム吐水部26,28から吐水される洗浄水の給水流量が減少されることにより、リム部18を旋回する洗浄水の勢いが弱くなり、ボウル部12内を十分に洗浄できなくなることを防止することができる。
【0036】
また、上述した本実施形態による水洗大便器1においては、屈曲導水路24bと連接する側の横向導水路24cの上面を下方へ位置させることにより通水断面積を縮径するように構成されている。屈曲導水路24bと連接する側の横向導水路24cの上面を下方へと位置させることにより縮径部24を構成しているために、屈曲導水路24bを通過した洗浄水が横向導水路24cに流入する際、淀みが発生し洗浄水が滞留し易い領域である屈曲導水路24bと連接する側の横向導水路24cの上方領域を減らすことができる。したがって、洗浄水の流れをスムーズにして整流された流れの洗浄水を便器本体2へ供給することができ、異なる給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体2に取付けられた場合でも便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水をボウル部12へ供給することができる。
【0037】
上述した本実施形態による水洗大便器1においては、縮径部24eは、屈曲導水路24bと連接する横向導水路24cの入口24dから洗浄水の流れ方向に所定距離の長さにわたって延びる流路であり、この長さが10mm~100mmである。このように構成された本発明においては、横向導水路24cの入口から縮径部24eが10mm~100mm長さで形成されているため、洗浄水の流れをスムーズにしてより整流された流れの洗浄水を便器本体2へ供給することができ、不適合の給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体2に取付けられた場合でも便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水をボウル部12へ供給することができる。
【0038】
上述した本実施形態による水洗大便器1においては、縮径部24eは、鉛直方向の通水断面形状が横方向に長い扁平形状で形成されている。縮径部24eが横方向に長い扁平形状で形成されているため、上下方向の洗浄水の流速分布を一様とすることができ、洗浄水の流れをスムーズにしてより整流された流れの洗浄水を便器本体2へ供給することができ、不適合の給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体2に取付けられた場合でも便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水をボウル部12へ供給することができる。
【0039】
上述した本実施形態による水洗大便器1においては、下向導水路24aの前方側の側面24gは、洗浄水の流れ方向に向かって前方へ徐々に傾斜している。下向導水路24aの前方側の側面24gが洗浄水の流れ方向に向かって前方へ徐々に傾斜しているため、下向導水路24aを通過した洗浄水を縮径部24eにスムーズに導くことができ、不適合の給水流量を生じさせる貯水タンクが便器本体2に取付けられた場合でも便器洗浄のための適切な給水流量の洗浄水と確実にすることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 水洗大便器
2 便器本体
3 タンク接続口
12 ボウル部
14 排水トラップ管路
16 汚物受け面
18 リム部
24 導水路
24a 下向導水路
24b 屈曲導水路
24c 横向導水路
24d 横向導水路の入口
24e 縮径部
24f 通水部
24g 下向導水路の前方側の側面
26 第一リム吐水部
26d 第一リム導水路
28 第二リム吐水部
28d 第二リム導水路
図1
図2
図3