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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】階段用運搬装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/02 20060101AFI20220414BHJP
   B66F 11/00 20060101ALN20220414BHJP
【FI】
B61B13/02 Z
B66F11/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018024631
(22)【出願日】2018-02-15
(65)【公開番号】P2019137344
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000134981
【氏名又は名称】株式会社ニッカリ
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】卯月 保
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 和則
(72)【発明者】
【氏名】穴原 義也
(72)【発明者】
【氏名】茅原 則明
(72)【発明者】
【氏名】山本 武
【審査官】米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-247524(JP,A)
【文献】登録実用新案第3090781(JP,U)
【文献】特開2008-74539(JP,A)
【文献】特開平8-73199(JP,A)
【文献】実開昭62-26371(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/02
B66F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段上の複数の高さに置かれる設置ベースと、
前記設置ベースに支持されるレールと、
前記レール上を走行する運搬機と、を備え、
前記設置ベースは、前記レールをクランプ固定により支持し、
前記設置ベースは、
階段に接する設置面を有する設置部と、
前記レールをクランプ固定により支持するクランプ部と、
前記設置部と前記クランプ部とを回転自在に連結する連結軸と、を備え、
前記設置部は、前記クランプ部が前記設置部に対して45度傾斜した場合に該クランプ部の重心が前記設置面内に位置するような幅を有することを特徴とする階段用運搬装置。
【請求項2】
前記レールは、複数のパーツに分割される分割式であり、各パーツ同士を差込むことで連結されることを特徴とする請求項1に記載の階段用運搬装置。
【請求項3】
階段上の複数の高さに置かれる設置ベースと、
前記設置ベースに支持されるレールと、
前記レール上を走行する運搬機と、を備え、
前記設置ベースは、前記レールをクランプ固定により支持し、
前記レールは、複数のパーツに分割される分割式であり、各パーツ同士を差込むことで連結され、
前記レールは、
階段の下端に配置される始点レールと、
前記始点レールに連結され、複数本使用される接続レールと、
前記接続レールに連結され、階段の上端に配置される長さ違いの複数本の終点レールと、を備えることを特徴とする階段用運搬装置。
【請求項4】
前記レールは、前記終点レールの上端に連結される挿入レールをさらに備え、
前記挿入レールの上端は、階段の上端よりも上に延びていることを特徴とする請求項に記載の階段用運搬装置。
【請求項5】
前記運搬機は、
前記レールのラックに噛合するピニオンと、
前記レールのうち前記ラックに対向する側の面に接するローラーと、を備え、
前記挿入レールの上端は、水平にカットされていて、前記運搬機の前記ピニオンと前記ローラーとの間に差し込まれることを特徴とする請求項に記載の階段用運搬装置。
【請求項6】
前記レールのラックは、該レールの上側に設けられていることを特徴とする請求項に記載の階段用運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段に沿って重量物を運搬する階段用運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種施設において、施設の階段に沿って重量物を運搬する場合、階段にレールを設置して、レール上に運搬台車を移動可能に取付け、さらに重量物を積み込んだ運搬台車をレールに沿って移動させることが考えられる。
【0003】
特許文献1には、階段の最上階の角部に配置された上部受台と、階段の傾斜面に配置された案内装置と、運搬台車および索状体(チェーン)とを備えた重量物運搬装置が記載されている。
【0004】
上部受台は、上部階の水平床面に配置され、索状体の一端部が固定される固定手段を有する。案内装置は、上部受台に連結されたガイドレールを有する。ガイドレールは、階段に設置される支持装置によって支持されている。運搬台車は、ガイドレールに沿って移動可能であって、ガイドレールを転動する複数の車輪と、索状体が掛けられるガイドローラと、索状体の他端部を巻き取る電動チェーンブロックとを有する。
【0005】
この重量物運搬装置では、運搬台車の電動チェーンブロックを作動させて索状体を巻き取ることで、運搬台車をガイドレールの下方から上方に移動させ、運搬台車を上部階の水平床面にまで乗り上げさせることができる。このため特許文献1では、階段での重量物の運搬を容易に行うことができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-73199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで重量物の運搬作業が一時的なものである場合には、階段に一時的にレールを設置し、運搬作業後には、レールを解体することが好ましい。ここでレールを設置する際、アンカーボルトなどによりレールを階段に固定しまうと、アンカーボルトの施工自体に時間と人手を要し、さらには階段を傷付けてしまう。
【0008】
特許文献1では、階段に設置される支持装置によりガイドレールを支持している。支持装置は、階段に設置される支持部と、支持部に対して回動可能に連結された受け部とを有する。支持装置の支持部は、アンカーボルトなどで階段に固定されていないため、階段にガイドレールを設置する際、階段を傷付けることはない。
【0009】
しかし、支持装置の受け部には、複数のねじ孔が形成されている。またガイドレールには、貫通孔が形成されている。そして支持装置は、ガイドレールの貫通孔を介して受け部のねじ孔に皿ビスを螺合させることで、ガイドレールを連結している。
【0010】
このため、特許文献1では、階段にガイドレールを設置したり、設置したガイドレールを解体したりするとき、工具が必要となり、時間と人手を要するという問題がある。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑み、階段上へのレールの設置および解体を簡単に行うことができ、階段上に一時的にレールを設置して、レール上を走行する運搬機で重量物を運搬できる階段用運搬装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明にかかる階段用運搬装置の代表的な構成は、階段上の複数の高さに置かれる設置ベースと、設置ベースに支持されるレールと、レール上を走行する運搬機と、を備え、設置ベースは、レールをクランプ固定により支持することを特徴とする。
【0013】
上記構成では、設置ベースは、階段上に置かれるだけであり、アンカーボルトなどにより階段上に固定する必要がない。そして設置ベースがクランプ固定であることからレールの任意の位置で固定することができるため、階段の踏面の長さにかかわらず、任意の階段に設置してレールを支持することができる。また設置ベースは、クランプ固定(C型クランプ)でレールを支持するため、工具レスとなる。なおクランプ固定は、C型クランプに限らず、ワンタッチクランプや、手まわしハンドルによる固定であってもよい。
【0014】
よって、階段上にレールを簡単に設置でき、さらにレールの解体も迅速に行うことができる。したがって、上記構成によれば、階段に一時的にレールを設置して、レール上を走行(自走)する運搬機で重量物を運搬できる(例えば、変圧器を地下の機械室に運搬できる)。
【0015】
上記の設置ベースは、階段に接する設置面を有する設置部と、レールをクランプ固定により支持するクランプ部と、設置部とクランプ部とを回転自在に連結する連結軸と、を備え、設置部は、クランプ部の回転方向の幅を有し、幅は、クランプ部が45度傾斜した場合にクランプ部の重心が設置面内に位置するような長さを有するとよい。
【0016】
このように、設置部の幅が広いので、アンカーボルトなどで階段に固定しなくても、設置部を階段上に安定して載置できる。またクランプ部が設置部に対して回転自在であることから、任意の角度の階段に設置することができる。
【0017】
上記のレールは、複数のパーツに分割される分割式であり、各パーツ同士を差込むことで連結されるとよい。
【0018】
このようにレールが分割式であるので、各パーツの重量を抑えることができ、人手で運ぶことができる。またレールは、分割式で各パーツ同士を差込んで連結されるので、設置や解体を簡便に行うことができ、任意の長さの階段に設置でき、さらに使い回しもできる。したがって、このようなレールは、階段に一時的に設置されるものとして好ましい。
【0019】
上記のレールは、階段の下端に配置される始点レールと、始点レールに連結され、複数本使用される接続レールと、接続レールに連結され、階段の上端に配置される長さ違いの複数本の終点レールと、を備えるとよい。
【0020】
これにより、レールは、始点レール、接続レール、長さ違いの終点レールを連結して組み立てることができる。このため、使用される接続レールの本数や、使用される終点レールの種類によって、レール全体の長さを調整できる。したがって、レールは、任意の長さの階段に設置でき、さらに使い回しもできるので、階段に一時的に設置されるものとして好ましい。
【0021】
上記のレールは、終点レールの上端に連結される挿入レールをさらに備え、挿入レールの上端は、階段の上端よりも上に延びているとよい。
【0022】
これにより、運搬機をレールに取付けるときに、終点レールの上端に挿入レールを連結することで、フロア床面の上で取付作業を容易に行うことができる。そして取付作業の後、挿入レールを終点レールから取り外すと、終点レールの上端が階段の上端付近に位置することになる。このため、レールに取付けられた運搬機を階段の上端の高さとほぼ同じにすることで、階段の上端(踊り場など)に置かれた重量物を運搬機に容易に積み込むことができる。
【0023】
上記の運搬機は、レールのラックに噛合するピニオンと、レールのうちラックに対向する側の面に接するローラーと、を備え、挿入レールの上端は、水平にカットされていて、運搬機のピニオンとローラーとの間に差し込まれるとよい。
【0024】
このように、挿入レールの上端が水平にカットされているので、運搬機をレールに取付けるとき、運搬機のピニオンとローラーとの間に、挿入レールの上端を差し込み易い。したがって、運搬機をレールに容易に取付けることができる。
【0025】
上記のレールのラックは、レールの上側に設けられているとよい。これにより、レールのラックに噛合する運搬機のピニオンが、レールの上側に位置にすることになる。したがって上記構成によれば、レールの下側には運搬機のピニオンが位置しないので、レールを階段に近づけることができ、装置全体の重心が下がり安定する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、階段上へのレールの設置および解体を簡単に行うことができ、階段上に一時的にレールを設置して、レール上を走行する運搬機で重量物を運搬できる階段用運搬装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態における階段用運搬装置を示す図である。
図2】運搬機を説明する図である。
図3】レールのうち接続レールを代表的に示す図である。
図4】設置ベースを説明する図である。
図5】接続レール同士を連結する手順を示す図である。
図6】レールの各パーツを示す図である。
図7】階段にレールを設置する手順を示す図である。
図8】階段に始点レールと接続レールを設置した状態を示す図である。
図9】レールに運搬機を取付ける手順を示す図である。
図10】変形例における階段用運搬装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0029】
図1は、本発明の実施形態における階段用運搬装置100を説明する図である。階段用運搬装置100は、各種施設の階段102に沿って重量物(ここでは、変圧器104)を運搬する装置である。階段用運搬装置100は、階段102上の複数の高さに置かれる設置ベース106と、設置ベース106に支持されるレール108と、レール108上を走行する運搬機110とを備える。
【0030】
レール108は、複数のパーツに分割される分割式であり、各パーツ同士を差し込むことで連結される。レール108が分割式であるので、各パーツの重量を抑えることができ、人手で運ぶことができる。複数のパーツは、始点レール112と、接続レール114と、終点レール116とを含む。
【0031】
始点レール112は、階段102の下端118に配置される。接続レール114は、階段102の長さに応じて複数本(ここでは2本)使用される。1本目の接続レール114は、始点レール112および2本目の接続レール114に連結されている。さらに2本目の接続レール114は、終点レール116に連結されている。
【0032】
終点レール116は、2本目の接続レール114に連結されることで、階段102の上端120付近に配置される。なお終点レール116は、長さ違いの複数本(例えば3本)が用意されていて(図6参照)、階段102の長さに応じていずれか1本が使用される。さらにレール108の各パーツである始点レール112、接続レール114および終点レール116の上側には、ラック122がそれぞれ設けられている。
【0033】
図2は運搬機110を説明する図である。運搬機110は、レール108上を自走する装置であり、駆動部124と、駆動部124に取付けられる配電盤126および荷台フレーム128とを有する。運搬機110を駆動させるために必要な電力は、不図示の電源に接続された配電盤126を介して駆動部124まで供給される。
【0034】
駆動部124は、ピニオン130、上側ローラー132、134およびローラー(下側ローラー136、138)を備える。ピニオン130は、レール108の上側に設けられたラック122と噛合する。上側ローラー132、134は、ラック122に接するように配置されている。下側ローラー136、138は、レール108のうちラック122に対向する側の面に接する。つまりレール108は、ピニオン130と下側ローラー136、138との間に挟み込まれた状態となる(図9参照)。
【0035】
荷台フレーム128は、駆動部124の連結部140に回転可能に連結され、さらにロッド142にも連結されている。ロッド142は、駆動部124に取付けられていて、長さが調整可能となっている。荷台フレーム128は、ロッド142の長さを調整することで階段の角度にかかわらず水平に保たれる。荷台フレーム128は、脚部144を有する。脚部144の長さは、図1に示すように、運搬機110が階段102の下端118付近までレール108に沿って走行したときに、階段102の下端118に接するように階段の傾斜に応じて設定する。
【0036】
図1に示す変圧器104は、重量が大きく(例えば500kgほど)、階段用運搬装置100によって地下の機械室などに運搬される。具体的には、まず作業者は、キャスター台車146上に載置された変圧器104を、階段102の上端120から運搬機110の荷台フレーム128に積み込む(後述)。
【0037】
つぎに作業者は、リモコンなどを操作して運搬機110の駆動部124を駆動させることにより、変圧器104が積み込まれた運搬機110をレール108に沿って下方に走行させる。そして作業者は、図示のように荷台フレーム128の脚部144が階段102の下端118に接した状態となると、運搬機110の走行を停止させる。
【0038】
機械室などのフロア床面148には、リフト台車150と傾斜台152とが置かれている。リフト台車150は、昇降可能な荷台153を有する。リフト台車150は、荷台153が運搬機110の荷台フレーム128に隣接するように配置される。さらに荷台153の高さは、荷台フレーム128の高さと同じになるように調整されている。傾斜台152は、リフト台車150に隣接して配置されている。
【0039】
続いて作業者は、運搬機110の荷台フレーム128からリフト台車150の荷台153に、キャスター台車146上に載置された変圧器104を積み込む。そしてリフト台車150の荷台153の高さを下げると、変圧器104は、キャスター台車146上に載置された状態で、荷台153から傾斜台152を通って機械室などのフロア床面148上に置かれる。このように、階段用運搬装置100を用いることで、変圧器104は、階段102の上端120から階段102に沿ってフロア床面148まで運搬される。
【0040】
図3はレール108のうち接続レール114を代表的に示す図である。図3(a)、図3(b)は、それぞれ接続レール114を説明する三面図、斜視図である。
【0041】
接続レール114は、一対の下側レール154、156と、一対の上側レール158、160とを有する。下側レール154、156は、接続部材162、164によって互いに離間して平行になるように接続されている。また下側レール154、156は、設置ベース106によってクランプ固定され支持される部位である(図4(c)参照)。
【0042】
一方の上側レール158は、固定部材166、168、170を介して下側レール154に固定されている。他方の上側レール160は、固定部材172、174、176を介して下側レール156に固定されている。このようにして、上側レール158、160は、図示ように、下側レール154、156の内側かつ上側に離間して配置されている。
【0043】
図3(b)に示すように下側レール154、156は、上端178、180がオス形状、下端182、184がメス形状となっている。上側レール158、160の上端186、188は、オス形状となっていて、さらに孔部190、192が形成されている。上側レール158、160の下端194、196は、メス形状となっていて、さらに孔部198、199が形成されている。
【0044】
図4は設置ベース106を説明する図である。設置ベース106は、図4(a)に示すように、設置部200と、回転部202と、一対の連結軸204と、一対のクランプ部206とを備える。設置部200は、階段102に接する設置面208を有する。回転部202は、図4(b)に示すように、一対の連結軸204によって設置部200に対して回転自在に連結されている。
【0045】
一対のクランプ部206は、回転部202に固定されていて、回転部202とともに設置部200に対して回転可能となっている。なお図4(b)は、一対のクランプ部206が設置部200に対して45度傾斜した状態を示している。
【0046】
図4(b)に示すように設置部200は、回転部202およびクランプ部206の回転方向の幅を有する。設置部200の幅の長さLは、一対のクランプ部206が45度傾斜した場合に、一対のクランプ部206が固定された回転部202の重心が設置面208内に位置するような長さに設定されている。このように、設置ベース106では、設置部200の幅が広いので、アンカーボルトなどで階段102に固定しなくても、設置部200を階段102上に安定して載置できる。
【0047】
図4(c)に示すように一対のクランプ部206は、接続レバー210を有し、これを作業者が把持し操作することにより、工具を用いることなくクランプ固定(C型クランプ)が可能となる。ここでは、レール108の各パーツとして接続レール144(図3参照)を、一対のクランプ部206でクランプ固定により支持する場合を例示している。この場合には、接続レール144を一対のクランプ部206に接近させ、さらに下側レール154、156を一対のクランプ部206に載置する。そして、接続レバー210を操作することで、下側レール154、156を一対のクランプ部206でクランプ固定することが可能となる。
【0048】
このように、設置ベース106がクランプ固定であることから、レール108の任意の位置で固定することができる。このため、設置ベース106は、階段102の踏面の長さにかかわらず、任意の階段102に設置してレール108を支持することができる。なおクランプ固定としては、工具を用いることなくレール108の各パーツを固定可能であれば、これに限られず、ワンタッチクランプや、手まわしハンドルによる固定であってもよい。さらに、一対のクランプ部206が設置部200に対して回転自在であることから、設置ベース106は、任意の角度の階段102に設置することができる。また本実施形態においてはクランプ部206を回転部202の端に位置するよう図示しているが、回転部202の中央に配置してもよい。
【0049】
図5は接続レール114同士を連結する手順を示す図である。ここでは、図1に示すレール108で使用された1本目の接続レール114と2本目の接続レール114とを連結する場合を示している。
【0050】
まず、図5(a)に示すように1本目の接続レール114のオス形状の上端178、180、186、188を、2本目の接続レール114のメス形状の下端182、184、194、196に差し込む。このとき、1本目の接続レール114の上端186、188に形成された孔部190、192と、2本目の接続レール114の下端194、196に形成された孔部198、199とが重なるように位置を調整する。
【0051】
つぎに、重ねられた孔部190、198を貫通するように孔部190、198に接続ピン212を挿入し、さらに重ねられた孔部192、199を貫通するように孔部192、199に接続ピン214を挿入する。このようにして、1本目と2本目の接続レール114同士は、工具を用いることなく連結されて、図5(b)に示すようにラック122が連続した状態となる。
【0052】
図6はレール108の各パーツの側面を示す図である。各パーツのうち、始点レール112、長さ違いの複数本(ここでは3本)の終点レール116の基本構成は、図3で示した接続レール114の基本構成とほぼ同一となっている。
【0053】
ただし、始点レール112の下端216は、階段102の傾斜角(例えば45度)に対応して屈曲している。このようにすれば、始点レール112を階段102の下端118に配置する際、始点レール112の下端216が階段102の下端118に対してほぼ平行となるため、配置が容易となる。また始点レール112の上端218、220は、オス形状となっている。このため、始点レール112は、上端218、220が接続レール114のメス形状の下端182、194に差し込まれることで、接続レール114に連結可能となる。
【0054】
終点レール116は、メス形状の下端222、224と、メス形状の上端226とを有する。終点レール116は、メス形状の下端222、224が接続レール114のオス形状の上端178、186に差し込まれることで、接続レール114に連結可能となる。
【0055】
レール108はさらに、挿入レール228を備える。挿入レール228は、レール108に運搬機110を取付ける際に終点レール116に一時的に連結される(図9(a)参照)。挿入レール228は、オス形状の下端230と、水平にカットされた上端232と、上端232に取付けられた脚部234とを有する。
【0056】
挿入レール228は、オス形状の下端230が終点レール116のメス形状の上端226に差し込まれることで、終点レール116に連結可能となる。挿入レール228は、終点レール116に連結された状態で、脚部234によって支えられ階段102の上端120に安定して載置される(図9(a)参照)。
【0057】
図7は階段102にレール108を設置する手順を示す図である。図8は階段102に始点レール112と接続レール114を設置した状態を示す図である。
【0058】
まず作業者は、図7(a)に示すように階段102上の複数の高さに設置ベース106を置く。設置ベース106は、階段102上に置かれるだけであり、アンカーボルトなどにより階段102上に固定する必要はない。また作業者は、設置ベース106の一対のクランプ部206を、設置部200に対して階段102の傾斜角と同じ角度に傾斜させる。
【0059】
つぎに作業者は、図7(b)に示すように階段102の下端118に始点レール112を配置し、設置ベース106の接続レバー210(図4(c)参照)を把持して操作することで、工具を用いることなく、一対のクランプ部206により始点レール112をクランプ固定する。
【0060】
続いて図7(c)に示すように作業者は、始点レール112に1本目の接続レール114を差し込んで連結し、さらに接続レール114を設置ベース106でクランプ固定し支持させる。このようにして、始点レール112と接続レール114は、工具を用いることなく連結され、図8に示すように階段102上に設置される。なお図8は、図7(c)に対応していて、階段102にほぼ正対する方向から始点レール112および接続レール114を見た状態を示している。
【0061】
図7(c)に後続して、作業者は、図7(d)に示すように1本目の接続レール114に2本目の接続レール114を差し込んで連結し、さらに2本目の接続114を設置ベース106でクランプ固定し支持させる。このようにして、接続レール114同士は、工具を用いることなく連結される。
【0062】
つぎに作業者は、階段102の長さに応じて、長さ違いの複数本の終点レール116のうちいずれか1本を選択する。そして作業者は、図7(e)に示すように2本目の接続レール114に、選択した終点レール116を差し込んで連結し、さらに終点レール116を設置ベース106でクランプ固定し支持させる。このようにして、2本目の接続レール114と終点レール116は、工具を用いることなく連結される。
【0063】
このようにして作業者は、図7(e)に示すように始点レール112と、2本の接続レール114と、選択された1本の終点レール114とを連結したレール108を、工具を用いることなく階段102に設置できる。なおレール108は、分割式であるため、使用される接続レール140の本数や、使用される長さ違いの終点レール116の種類を変更することにより、全体の長さを調整できる。
【0064】
したがって、レール108は、任意の長さの階段102に設置でき、さらに使い回しもできるので、階段102に簡単に一時的に設置できる。一方、階段102に一時的に設置されたレール108は、図3(a)から図3(e)の順に示した上記の設置手順とは逆の手順によって、工具を用いることなく簡単に解体できる。
【0065】
図9はレール108に運搬機110を取付ける手順を示す図である。まず作業者は、図9(a)に示すように終点レール116に挿入レール228を差し込んで連結する。このため、挿入レール228は、水平にカットされた上端232が、階段102の上端120よりも上方に位置することになる。また挿入レール228は、階段102の上端120に脚部234が接しているので、階段102の上端120に安定して載置される。
【0066】
つぎに作業者は、運搬機110の駆動部124を水平状態とし、さらに挿入レール228の上端232に駆動部124を接近させる。そして作業者は、駆動部124のピニオン130と下側ローラー136、138との間に、挿入レール228の上端232を差し込む。このため、駆動部124は、図9(a)に示すようにピニオン130がラック122と噛合し、下側ローラー136、138がレール108(ここでは挿入レール228)のうちラック122に対向する対向面236(下側の面)に接する。このようにして、レール108は、ピニオン130と下側ローラー136、138との間に挟み込まれた状態となる。このため、駆動部124では、ピニオン130とラック122の噛合が安定し、ピニオン130の回転力がラック122に確実に伝達される。
【0067】
また図9(a)の取付作業は、終点レール116に挿入レール228を連結するため、平坦な階段102の上端120の上で駆動部124を挿入レール228に取付けることになる。これは、階段102の上で取付作業をすると作業者の姿勢がつらいことと、万が一にも駆動部124を取り落とした場合に駆動部124が階段を落ちていくことを防止するためである。挿入レール228によって平坦な階段102の上端120で作業を行うことにより、取付作業を容易に行うことができ、また安全性も向上することができる。また挿入レール228の上端232が水平にカットされているので、水平状態の駆動部124のピニオン130と下側ローラー136、138との間に、挿入レール228の上端232を容易に差し込むことができる。
【0068】
つぎに作業者は、駆動部124が挿入レール228に乗った状態で、駆動部124にロッド142を取り付ける。ロッド142を取り付けた後、作業者は、ロッド142に配電盤126を取り付ける。続いて作業者は、駆動部124の連結部140とロッド142に荷台フレーム128を取り付けて、その後、ロッド142の長さを調整することによって荷台フレーム128を水平に保つ。このようにして、駆動部124、配電盤126および水平に保たれた荷台フレーム128を含む運搬機110が組み立てられる。
【0069】
続いて図9(b)に示すように、作業者は、運搬機110を、挿入レール228より下の終点レール116の位置まで移動させる。そして作業者は、挿入レール228を取り外す。
【0070】
続いて図9(c)に示すように、運搬機110の荷台フレーム128の天板がおおよそ階段の上端120と同レベルになるまで運搬機110を移動させる。階段の上端120に鉄板238を置き、運搬機110の荷台フレーム128に隣接させる。このようにして、図1に示すキャスター台車146に載置された状態の変圧器104を、鉄板238から運搬機110の荷台フレーム128に容易に積み込むことができる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態における階段用運搬装置100は、階段102上へのレール108の設置および解体を、工具を用いることなく簡単に行うことができる。また階段用運搬装置100では、階段102上に一時的にレール108を設置して、レール108上を走行する運搬機110で重量物を運搬できる。
【0072】
また階段用運搬装置100では、設置ベース106が階段102上に置かれるだけであり、アンカーボルトなどで階段102に固定する必要がないため、階段102を傷付けることもない。
【0073】
さらに階段用運搬装置100では、レール108のラック122がレール108の上側に設けられているため、ラック122に噛合する運搬機110のピニオン130が、レール108の上側に位置にすることになる。したがって階段用運搬装置100によれば、レール108の下側には運搬機110のピニオン130が位置せず、レール108を階段102に近づけることができ、装置全体の重心が下がり安定する。
【0074】
図10は、変形例における階段用運搬装置100Aを示す図である。階段用運搬装置100Aは、図1に示す階段102に代えて折り返し階段240に適用される。階段用運搬装置100Aは、2台の運搬機110と、トランスファー台242とを備える点で、上記の階段用運搬装置100と異なる。
【0075】
折り返し階段240は、上側の階段102Aと、下側の階段102Bと、階段102A、102Bをつなぐ踊り場244とを含んでいる。1台目の運搬機110は、上側の階段102Aに設置されたレール108A上を走行する。図中では1台目の運搬機110がレール108Aに沿って下方に走行し、踊り場244に位置している状態となっている。この運搬機110の荷台フレーム128には、キャスター台車146に載置された変圧器104が積み込まれた状態となっている。また荷台フレーム128の脚部144は、踊り場244に接している。
【0076】
2台目の運搬機110は、下側の階段102Bに設置されたレール108B上を走行する。図中ではレール108Bの終点レール116に挿入レール228が連結されていて、2台目の運搬機110が踊り場244に位置している状態となっている。また挿入レール228の脚部234は、踊り場244に接している。
【0077】
トランスファー台242は、図示のように踊り場244に置かれている。さらにトランスファー台242は、2台の運搬機110の荷台フレーム128の間に位置し、2つの荷台フレーム128にそれぞれ接していて高さも同じになっている。
【0078】
このような階段用運搬装置100Aでは、キャスター台車146に載置された変圧器104を、1台目の運搬機110の荷台フレーム128からトランスファー台242を経由して2台目の運搬機110の荷台フレーム128に容易に積み替えることができる。そして2台目の運搬機110をレール108Bに沿って下方に走行させることで、変圧器104を階段102Bの下端まで搬送できる。
【0079】
したがって、階段用運搬装置100Aによれば、階段102A、102B上に一時的にレール108A、108Bを設置し、踊り場244に一時的にトランスファー台242を設置することで、折り返し階段240に沿って運搬機110で重量物を運搬することができる。
【0080】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、階段に沿って重量物を運搬する階段用運搬装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
100、100A…階段用運搬装置、102、102A、102B、240…階段、104…変圧器、106…設置ベース、108、108A、108B…レール、110…運搬機、112…始点レール、114…接続レール、116…終点レール、118…階段の下端、120…階段の上端、122…ラック、124…駆動部、126…配電盤、128…荷台フレーム、130…ピニオン、132、134…上側ローラー、136、138…下側ローラー、140…連結部、142…ロッド、144…荷台フレームの脚部、146…キャスター台車、148…フロア床面、150…リフト台車、152…傾斜台、153…リフト台車の荷台、154、156…下側レール、158、160…上側レール、162、164…接続部材、166、168、170、172、174、176…固定部材、178、180…下側レールの上端、182、184…下側レールの下端、186、188…上側レールの上端、190、192…上端の孔部、194、196…上側レールの下端、198、199…下端の孔部、200…設置部、202…回転部、204…連結軸、206…クランプ部、208…設置面、210…接続レバー、212、214…接続ピン、216…始点レールの下端、218、220…始点レールの上端、222、224…終点レールの下端、226…終点レールの上端、228…挿入レール、230…挿入レールの下端、232…挿入レールの上端、234…挿入レールの脚部、236…対向面、238…鉄板、242…トランスファー台、244…踊り場
図1
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図10