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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】スライドハンガー
(51)【国際特許分類】
   A47B 77/14 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
A47B77/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018104648
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019208588
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000104973
【氏名又は名称】クリナップ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000239219
【氏名又は名称】福伸電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 智紀
(72)【発明者】
【氏名】山中 実
(72)【発明者】
【氏名】板倉 渉
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-142542(JP,A)
【文献】特開2000-135126(JP,A)
【文献】特開平11-096831(JP,A)
【文献】特開2009-213678(JP,A)
【文献】特開昭53-113961(JP,A)
【文献】実開昭60-163095(JP,U)
【文献】米国特許第4089464(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 77/14-77/18
A47B 88/975-88/994
A47G 29/00-29/30
B26B 3/00
A47J 47/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚又は天板の下面に取り付けられるレールと、このレール上をスライド自在なスライドブロックと、このスライドブロックに固定されたハンガーとを備え、前記レール上の任意の位置に脱着可能に固定するスライドハンガーであって、
前記レールは、下面に前記スライドブロックを掛け止めて係止する係合溝を有し、
前記スライドブロックは、外側を覆う一対の側壁を有する外ブロックと、この外ブロックの前記一対の側壁内に装着される一対の側壁を有する内ブロックと、からなり、
これらの外ブロックの前記側壁と内ブロックの前記側壁とは、いずれか一方にピンが突設され、他方に当該ピンと嵌合する嵌合凹部又は嵌合孔が形成されており、前記外ブロックと前記内ブロックとが、互いに揺動自在に嵌合され、
且つ、前記外ブロックと前記内ブロックとの上部には、それぞれ前記係合溝と係合する係合爪が形成されているとともに、
前記外ブロックと前記内ブロックとの間には、これらを互いに押し広げる方向に付勢するばね材が介装されており、当該ばね材の付勢力に抗して押圧することで前記外ブロックと前記内ブロックとが互いに揺動して前記レールと前記スライドブロックとの係合が解除されること
を特徴とするスライドハンガー。
【請求項2】
前記係合溝は、前記レールの長手方向に沿った両縁から内側へ折り返された断面L字状の折返し片を有した溝であり、
前記外ブロックと前記内ブロックの前記係合爪同士は、前記ばね材で互いに広がる方向に付勢されていること
を特徴とする請求項1に記載のスライドハンガー。
【請求項3】
前記内ブロックは、前記棚又は前記天板に向かって手前に面して装着されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載のスライドハンガー。
【請求項4】
前記ばね材は、コイルスプリングであり、前記外ブロックと前記内ブロックのいずれか一方に形成された筒状部又は棒状部に当該コイルスプリングが装着されていること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のスライドハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊戸棚などのキッチン用の収納庫の棚下や天板下に装着されるレール上の任意の位置にスライド自在に固定するスライドハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチンの吊戸棚などの収納庫の棚板や天板には、キッチンペーパーやまな板等のキッチン用具を支持するためのハンガーが固設されていた。しかし、棚板や天板にハンガーを固設すると、その用途が限定されるとともに、収納庫の収納レイアウトを自由に変更することができないという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するために、収納庫の棚下や天板下にレールを装着し、そのレール上をスライド自在なスライドブロックを設け、そのスライドブロックでレール上の任意の位置に固定することができるスライドハンガーが提案されるようになった。
【0004】
例えば、特許文献1には、下方が開口した固定式の外キャビネット2と、前面が開口した可動式の内キャビネット3を備え、前記内キャビネット3を前記外キャビネット2に対して昇降可能に支持するとともに、該内キャビネット3の左右の側板3a間に棚板6を水平に架設して成る昇降式吊戸棚1において、前記棚板6の下面にガイドレールを左右方向に形成し、該ガイドレールにスライド可能に嵌合するスライドブロック9を介してハンガー8を前記棚板6に左右方向にスライド可能且つ着脱可能に取り付けた昇降式吊戸棚が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0016]~[0034]、図面の図11図13等参照)。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の昇降式吊戸棚のスライドブロック9では、移動の際に両手で掴んでずらす必要があり、フックの固定位置を片手で簡単に移動することができないという問題があった。特に、昇降式吊戸棚のように高所に設置されている場合は、脚立等に昇って目線を上げてスライドブロック9を間近で視認したうえ、固定の解除を行ってスライド移動する必要があり、面倒であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-253001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ハンガーの固定位置を片手で簡単に変更することができ、収納レイアウトを自由に変更することができるスライドハンガーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係るスライドハンガーは、棚又は天板の下面に取り付けられるレールと、このレール上をスライド自在なスライドブロックと、このスライドブロックに固定されたハンガーと、を備え、前記レール上の任意の位置に脱着可能に固定するスライドハンガーであって、前記レールは、下面に前記スライドブロックを掛け止めて係止する係合溝を有し、前記スライドブロックは、外側を覆う一対の側壁を有する外ブロックと、この外ブロックの前記一対の側壁内に装着される一対の側壁を有する内ブロックと、からなり、これらの外ブロックの前記側壁と内ブロックの前記側壁とは、いずれか一方にピンが突設され、他方に当該ピンと嵌合する嵌合凹部又は嵌合孔が形成されており、前記外ブロックと前記内ブロックとが、互いに揺動自在に嵌合され、且つ、前記外ブロックと前記内ブロックとの上部には、それぞれ前記係合溝と係合する係合爪が形成されているとともに、前記外ブロックと前記内ブロックとの間には、これらを互いに押し広げる方向に付勢するばね材が介装されており、当該ばね材の付勢力に抗して押圧することで前記外ブロックと前記内ブロックとが互いに揺動して前記レールと前記スライドブロックとの係合が解除されることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係るスライドハンガーは、第1発明において、前記係合溝は、前記レールの長手方向に沿った両縁から内側へ折り返された断面L字状の折返し片を有した溝であり、前記外ブロックと前記内ブロックの前記係合爪同士は、前記ばね材で互いに広がる方向に付勢されていることを特徴とする。
【0010】
第3発明に係るスライドハンガーは、第1発明又は第2発明において、前記内ブロックは、前記棚又は前記天板に向かって手前に面して装着されていることを特徴とする。
【0011】
第4発明に係るスライドハンガーは、第1発明ないし第3発明の何れかの発明において、前記ばね材は、コイルスプリングであり、前記外ブロックと前記内ブロックのいずれか一方に形成された筒状部又は棒状部に当該コイルスプリングが装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明~第4発明によれば、外ブロックと内ブロックの揺動でレールへの固定及び解除ができるので、外ブロックと内ブロックを掴んで一方を押圧するだけでスライドブロックの固定及び解除を行うことができる。このため、ハンガーの固定位置を片手で簡単に変更することができ、吊戸棚などの収納庫内の収納レイアウトを自由に変更することができる。
【0013】
特に、第2発明によれば、レールの係合溝が内側へ折り返された断面L字状の折返し片を有した溝となっているので、外側からレールの溝が見えにくく、見栄えがよくなりデザイン性が向上するだけでなく、埃などが溜まりにくく清掃も容易となる。その上、外ブロックと内ブロックの前記係合爪同士は、ばね材で互いに広がる方向に付勢されているので、ゴミやキッチン用品などがばねに引っ掛かるおそれが少ない上、ばね材を内ブロック等に収容してばねが外部から見えないようすることができ、その点でもデザイン性が向上する。
【0014】
特に、第3発明によれば、内ブロックが棚又は天板に向かって手前に面して、即ち、棚や天板の外側から見て内ブロックが外ブロックに隠れるのではなく、外ブロックに対して手前側に位置するように装着されている。このため、係合のロックを解除する際に押圧すべき内ブロックが視認し易く、高所にあった場合でも簡単に片手でつまんで内ブロックを押圧することができる。よって、さらにスライドハンガーの固定位置の調整や変更が容易となる。
【0015】
特に、第4発明によれば、内ブロック又は外ブロックの筒状部又は棒状部にコイルスプリングが装着されているので、コイルスプリングの伸縮動作を筒状部又は棒状部で案内することとなる。このため、コイルスプリングを構成する鋼線同士が引っ掛かるおそれが少なくなり、コイルスプリングの伸縮動作が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係るスライドハンガーを示す斜視図である。
図2】同上のスライドハンガーの構成を示す分解斜視図である。
図3】同上のスライドハンガーのレールを示す斜視図である。
図4】同上のレールを示す鉛直断面図である。
図5】同上のスライドハンガーの外ブロックを示す正面斜視図である。
図6】同上の外ブロックを示す背面斜視図である。
図7】同上の外ブロックを示す背面図である。
図8】同上の外ブロックを示す側面図である。
図9】同上のスライドハンガーの内ブロックを示す正面斜視図である。
図10】同上の内ブロックを示す背面斜視図である。
図11】同上の内ブロックを示す背面図である。
図12】同上の内ブロックを示す側面図である。
図13】同上のスライドハンガーのハンガーを示す斜視図である。
図14】同上のスライドハンガーの鉛直断面の断面斜視図である。
図15】同上のスライドハンガーの固定状況を示す図であり、(a)が側面図、(b)が正面斜視図である。
図16】同上のスライドハンガーの固定解除状況を示す図であり、(a)が側面図、(b)が正面斜視図である。
図17】本発明の第2実施形態に係るスライドハンガーを示す斜視図である。
図18】同上のスライドハンガーの外ブロックを示す正面斜視図である。
図19】同上の外ブロックを示す背面斜視図である。
図20】同上のスライドハンガーの内ブロックを示す正面斜視図である。
図21】同上の内ブロックを示す背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用したスライドハンガーを実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
[第1実施形態]
先ず、図1図13用いて、本発明の第1実施形態に係るスライドハンガー1の各構成について説明する。本発明の第1実施形態に係るスライドハンガー1を示す斜視図であり、図2は、そのスライドハンガー1の構成を示す分解斜視図である。
【0019】
図1図2に示すように、本発明の第1実施形態に係るスライドハンガー1は、レール2と、このレール2上をスライド自在なスライドブロック3と、このスライドブロック3に固定されたハンガー4と、を備えている。
【0020】
(レール)
次に、図3図4を用いて、スライドハンガー1のレール2について説明する。図3は、スライドハンガー1のレール2を示す斜視図であり、図4は、レール2を示す鉛直断面図である。
【0021】
レール2は、アルミニウムなどの金属製のレールであり、図3図4に示すように、下方が開放された断面コの字状のレール本体20を有している。また、このレール本体20の下面には、スライドブロック3を掛け止めて係止する係合溝2aが形成されている。この係合溝2aは、長手方向に沿った両縁から内側へ折り返された断面L字状の一対の折返し片21,21を有した溝である。この係合溝2aは、折返し片21,21で後述のスライドブロック3の係合爪51,61を掛け止めてスライドブロック3をレール2上の任意の位置に脱着可能に固定する機能を有している。
【0022】
また、このレール本体20の上面には、複数のビス孔2bが穿設されており、昇降式吊戸棚などの棚の棚板の下面にレール2を固定することが可能となっている。レール2は、棚板の正面側の縁に沿って、ビス孔2bに図示しないビスを挿通してねじ止め固定される。なお、ここで、正面とは、棚を外側から正対して目視した際の目線方向の面を指しており、背面とは、正面とは反対側の面を指している(以下、同じ)。
【0023】
その上、係合溝2aには、後述のスライドブロック3の係合爪51,61の揺動軌道に応じて係合爪をガイドする断面円弧状のガイド部22が形成されている。このため、係合爪の揺動動作がスムーズとなっている。
【0024】
(スライドブロック)
次に、スライドハンガー1のスライドブロック3について説明する。スライドブロック3は、樹脂製の2つのブロック体同士が揺動可能に嵌着されて概略立方体状(六面体状)となった部材である。このスライドブロック3は、図2に示すように、外側を覆う外ブロック5と、この外ブロック5内に装着される内ブロック6と、から構成されている。
【0025】
(外ブロック)
先ず、図5図8を用いて、スライドブロック3の外ブロック5について説明する。図5は、スライドブロック3の外ブロック5を示す正面斜視図であり、図6は、の外ブロック5を示す背面斜視図である。また、図7は、外ブロック5を示す背面図であり、図8は、外ブロック5を示す側面図である。
【0026】
図5図8に示すように、外ブロック5は、水平断面がコの字状の外ブロック本体50と、この外ブロック本体50の上端と接続する係合爪51など、から主に構成されている。
【0027】
この外ブロック本体50は、一対の側壁52と、これらの側壁52間に設けられた背面板53と、これらの側壁52及び背面板53に接続する底板54など、から構成されている。
【0028】
これら一対の側壁52には、図5に示すように、内ブロック6に突設された後述の嵌合ピン62aと嵌合する嵌合凹部52aがそれぞれ形成されている。
【0029】
また、背面板53には、図6に示すように、ばね材であるステンレス鋼線からなるコイルスプリング7を装着する筒状部63aを挿通可能な大きさの上下方向に長い長孔である背面孔53aが穿設されている。このため、外ブロック5と内ブロック6をコイルスプリング7で内側から押圧付勢しながら外ブロック5と内ブロック6が揺動しても、コイルスプリング7を装着している筒状部63aが障害とならない構成となっている。
【0030】
それに加え、図6に示すように、背面板53には、内ブロック6の係合爪61が当接して揺動を止めるストッパ53bが形成されている。レール2からスライドブロック3を取り外した際に、コイルスプリング7の反発力(付勢力)で押圧されて内ブロック6が揺動し過ぎることを防止するためである。このストッパ53bは、一定の強度を確保するとともに、軽量化と樹脂材の節約のために、半割円筒状に形成されている。
【0031】
底板54は、平板状の部材であり、外ブロック5と内ブロック6の互いの揺動を阻害しないように、側壁52の幅(奥行)の半分程の幅となっており、背面板53側に偏在して設けられている。
【0032】
また、係合爪51は、一対の側壁52と接続して斜め上方に延在する一対の立上り部51aと、これらの立上り部51aの突端に架け渡された爪部51bと、を有している。図6図7に示すように、これらの立上り部51aと爪部51bとに囲まれたスペースは、内ブロック6の係合爪61が揺動するスペースとして開口されている。
【0033】
(内ブロック)
次に、図9図12を用いて、スライドブロック3の内ブロック6について説明する。図9は、スライドブロック3の内ブロック6を示す正面斜視図であり、図10は、内ブロック6を示す背面斜視図である。また、図11は、内ブロック6を示す内側からみた背面図であり、図12は、内ブロック6を示す側面図である。
【0034】
図9図12に示すように、内ブロック6は、水平断面がコの字状の内ブロック本体60と、この内ブロック本体60の上端と接続する係合爪61など、から主に構成されている。
【0035】
この内ブロック本体60は、一対の側壁62と、これらの側壁62間に設けられた正面板63と、これらの側壁62及び正面板63に接続する底板64など、から構成されている。
【0036】
これら一対の側壁62には、図9図12に示すように、前述の嵌合凹部52aに嵌め込まれて揺動軸となる円柱状の嵌合ピン62aが、それぞれ外側に向け突設されている。
【0037】
また、正面板63の内面(背面)には、コイルスプリング7を装着する筒状部63aが突設されている。この筒状部63aの直径は、前述の背面孔53aの横幅より狭く設定されており、揺動の際、筒状部63aの先端が、長孔形状の背面孔53a内を上下に移動可能となっている。
【0038】
なお、この筒状部63aは、外側にコイルスプリング7を遊嵌していればよいので、棒状部とすることもできる。但し、筒状部63aとした方が、断面性能が向上するため、強度が高く、且つ、樹脂材料を低減して軽量化を図ることができる。
【0039】
底板64は、平板状の部材であるが、底面が円弧状の曲面で切り欠かれており、底面が平坦な平面部64aと、底面が円弧状となった曲面部64bとが形成されている。この曲面部64bは、内ブロック6が嵌合ピン62aを中心として揺動する際に、外ブロック5の底板54が当接しないように円弧状の曲面に切り欠かれている。
【0040】
また、係合爪61は、一対の側壁62と接続して斜め上方に延在する一対の立上り部61aと、これらの立上り部61aの突端部分に形成された爪部61bと、を有している。但し、係合爪61は、外ブロック5の係合爪51と相違して、開口されておらず、階段状に全て閉塞されている。
【0041】
そして、係合爪61の基端部には、長孔円弧状に切り欠かれた切欠き部61cが形成されている。この切欠き部61cは、ハンガー4を挿通する大きさとなっており、切欠き部61cに挿通されたハンガー4を外ブロック5の係合爪51の基端部との間に挟み込んで固定する機能を有している。
【0042】
その上、図11に示すように、係合爪61の立上り部61a間の閉塞された部分には、所望の強度を達成するとともに、軽量化を図るために、複数の矩形の凹部61dが形成されている。
【0043】
次に、図13を用いて、スライドハンガー1のハンガー4について説明する。図13は、スライドハンガー1のハンガー4を示す斜視図である。
【0044】
図13に示すように、ハンガー4は、棒状の複数の金属線材が溶接されて組み合わされた部材であり、上辺部材40と、補強横材41と、正面視J字状の4本のフック42と、から構成されている。
【0045】
上辺部材40は、棒状の複数の金属線材から平面視コの字状に折り曲げられた部材であり、直線部40aと、その直線部40aの端部が90度折り曲げられた正面折返し部40bと、背面折返し部40cと、を有している。また、正面折返し部40bの突端は、スライドブロック3が抜け出さないように、さらに90度折り返されたストッパ部40dが形成されている。
【0046】
このハンガー4は、正面折返し部40bがスライドブロック3の外ブロック5の係合爪51の基端部と、内ブロック6の係合爪61の基端部との間に挿通されて固定されている。
【0047】
そして、このハンガー4は、4本のフック42にキッチン用品等の様々な物品を引っ掛けて使用するハンガーフックとしての機能を有している。
【0048】
<スライドハンガーの使用方法>
次に、図14図16を用いて、本発明に係るスライドハンガーの使用方法について説明する。前述の第1実施形態に係るスライドハンガー1を例示して説明する。図14は、スライドハンガー1の鉛直断面を示す断面斜視図である。図15は、スライドハンガー1の固定状況を示す図であり、(a)が側面図、(b)が正面斜視図である。そして、図16は、スライドハンガー1の固定解除状況を示す図であり、(a)が側面図、(b)が正面斜視図である。
【0049】
先ず、図14図15において、スライドハンガー1のレール2が、棚下に取り付けられて、レール2にスライドブロック3及びそのスライドブロック3に固定されたハンガー4が、固定されている状態を示す。
【0050】
スライドブロック3は、前述のように、外ブロック5と内ブロック6が、嵌合凹部52aに嵌め込まれた嵌合ピン62aを軸として揺動自在に組み合わされている。そして、図14に示すように、筒状部63aに外嵌されたコイルスプリング7により、内部から外側へ向け外ブロック5と内ブロック6を押圧付勢している。このコイルスプリング7の反発力(付勢力)により、外ブロック5及び内ブロック6は、嵌合ピン62aを軸として揺動し、係合爪51及び係合爪61がレール2の係合溝2aの折返し片21に押し付けられることとなる。このため、レール2上の任意の位置にスライドブロック3を固定することができる。
【0051】
また、コイルスプリング7は、図14に示すように、内ブロック6の正面板63の内面(背面)に突設された円筒状の筒状部63aの外周面に沿って装着されているので、コイルスプリング7の伸縮動作を筒状部63aで案内することとなる。このため、コイルスプリング7を構成する鋼線同士が引っ掛かるおそれが少なくなり、コイルスプリング7の伸縮動作が安定する。
【0052】
図15に示す状態は、レール2にスライドブロック3が固定されている状態であり、この状態では、係合爪51及び係合爪61は、その基端部の切欠き部61cに、ハンガー4の正面折返し部40bが挿通されて固定されている。このため、ハンガー4の4本のフック42にコップなどの食卓用品やレードル、トング、小型フライパンなどのキッチン用品等を引っ掛けて収納することができる。
【0053】
なお、外ブロック5と内ブロック6の組み合わせは、図15(b)に示すように、内ブロック6が棚に向かって手前に面するように、即ち、正面視で内ブロック6が視認可能な位置に設置する方が好ましい。逆に外ブロック5を手前に設置すると、内ブロック6が棚の外側から視認できないからである。内ブロック6が棚に向かって手前に面するように配置することにより、後述の固定解除やスライド動作をどのように行えばよいか直感的に把握することができる。
【0054】
また、図15(b)に示すように、内ブロック6の正面板63の正面には、「押す」という文字が刻印され、又は「押す」という表示がされていることが好ましい。より直感的に固定解除やスライド動作の方法が理解でき、説明書等を読んで把握する必要がなくなるからである。
【0055】
スライドブロック3のレール2への固定を解除してスライド移動したり、清掃等のために、棚に取り付けられたレール2からスライドブロック3及びハンガー4を取り外す場合は、図16に示すように用いる。
【0056】
スライドブロック3の固定を解除する場合は、スライドブロック3を片手でつまみ、図15(b)に示す内ブロック6の正面板63の「押す」という刻印を親指等で押圧する。これにより、図16(a)に示すように、コイルスプリング7(図14参照)の反発力に抗して、外ブロック5及び内ブロック6が嵌合ピン62aを軸として矢印方向に揺動する。これにより、係合爪51及び係合爪61も揺動して係合溝2aとの係合のロックを解除することができる。このため、レール2の係合溝2aからスライドブロック3及びハンガー4を簡単に取り外すことができる。
【0057】
これにより、スライドブロック3のレール2上でのスライド移動が自在となり、収容するキッチン用品等の様々な物品の大きさや形状に合わせて、収納レイアウトを自由に変更することが可能となる。
【0058】
なお、本実施形態に係るスライドハンガー1では、筒状部63aの突端から筒内の内周面に向け、ワッシャーを介してビス止めされて、背面孔53aにビス及びワッシャーが掛け止められている(図示せず)。このため、図16(b)等で示すように、レール2からスライドブロック3を取り外した状態で、手を放してもコイルスプリング7の反発力で外ブロック5と内ブロックの嵌合状態が外れてしまうおそれがなくなる。
【0059】
以上説明した本発明の第1実施形態に係るスライドハンガー1によれば、スライドブロック3を片手でつまみ、内ブロック6の正面板63の「押す」という刻印を親指等で押圧するだけでスライドブロック3の固定及び解除を行うことができる。このため、ハンガー4の固定位置を片手で簡単に変更することができ、収納レイアウトを自由に変更することができる。
【0060】
また、スライドハンガー1によれば、内ブロック6が棚の手前に面して装着されているので、係合のロックを解除する際に押圧すべき内ブロック6が視認し易く、高所にあった場合でも簡単に片手でつまんで内ブロック6を押圧することができる。このため、さらにスライドハンガー1の固定位置の調整や変更が容易となる。
【0061】
また、スライドハンガー1によれば、レール2の係合溝2aが内側へ折り返された断面L字状の折返し片21を有した溝となっているので、外側からレール2の溝が見えにくく、見栄えがよくなりデザイン性が向上する。その上、レール2の係合溝2aに埃などが溜まりにくく清掃も容易となる。
【0062】
その上、スライドハンガー1によれば、コイルスプリング7が内ブロック6の正面板63の内面(背面)に突設された円筒状の筒状部63aの外周面に沿って装着されて、係合爪51と係合爪61は、互いに広がる方向に付勢されている。このため、ゴミやキッチン用品などがコイルスプリング7に引っ掛かるおそれが少ない上、ステンレス鋼線からなるため色彩の違うコイルスプリング7をスライドブロック3に収容して外部から視認できないようにすることができ、さらにデザイン性が向上する。また、コイルスプリング7の伸縮動作を筒状部63aで案内することとなるため、コイルスプリング7の伸縮動作が安定する。
【0063】
[第2実施形態]
次に、図17図21を用いて、本発明の第2実施形態に係るスライドハンガー1’について説明する。図17は、本発明の第2実施形態に係るスライドハンガー1’を示す斜視図である。スライドハンガー1’が、前述の第1実施形態に係るスライドハンガー1と相違する主な点は、レールの大きさとスライドブロックの形状及び大きさであり、同様の構成となっているため詳細な説明は省略する。特に、装着されるハンガー4は同一であるため説明を省略する。
【0064】
図17に示すように、スライドハンガー1’も、スライドハンガー1と同様に、レール2’と、このレール2’上をスライド自在なスライドブロック3’と、このスライドブロック3’に固定された前述のハンガー4(図示せず)と、を備えている。
【0065】
(レール)
レール2’は、前述のレール2と同様に、金属製のレールであり、図17に示すように、レール2と同様の構成である、断面コの字状のレール本体20’、断面L字状の一対の折返し片21’,21’、断面円弧状のガイド部22’など、を備えている。
【0066】
また、レール本体20’には、スライドブロック3’を掛け止めて係止する係合溝2a’や、棚板の下面にレール2を固定するためのビス孔2b’も形成されている。このため、一対の折返し片21’,21’でスライドブロック3’の係合爪51,61’を掛け止めてスライドブロック3’をレール2’上の任意の位置に固定できる構成となっている。
【0067】
レール2’が、レール2と大きく相違する点は、図17に示すように、レール本体20’の長手方向に沿った両縁部分に、断面矩形の張出し部23’が形成されている点である。
【0068】
(スライドブロック)
次に、スライドハンガー1’のスライドブロック3’について説明する。スライドブロック3’が、前述のスライドブロック3と大きく相違する点は、樹脂製の2つのブロック体同士が組み合わされた形状が、概略立方体状ではなく、図17に示すように、正面に傾斜面を有した多面体形状となっている点である。
【0069】
このスライドブロック3は、スライドブロック3と同様に、図17に示すように、外側を覆う外ブロック5’と、この外ブロック5’内に装着される内ブロック6’と、から構成されている。
【0070】
(外ブロック)
次に、図18図19を用いて、スライドブロック3’の外ブロック5’について説明する。図18は、スライドハンガー1’の外ブロック5’を示す正面斜視図であり、図19は、外ブロック5’を示す背面斜視図である。
【0071】
図18図19に示すように、外ブロック5’は、前述の外ブロック5と同様に、水平断面がコの字状の外ブロック本体50’と、この外ブロック本体50’の上端と接続する係合爪51’など、から主に構成されている。
【0072】
この外ブロック本体50’は、一対の側壁52’と、これらの側壁52’間に設けられた背面板53’と、これらの側壁52’及び背面板53’に接続する底板54’など、から構成されている。
【0073】
これら一対の側壁52’には、図18図19に示すように、内ブロック6’に突設された後述の嵌合ピン62a’と嵌合する嵌合孔52a’がそれぞれ形成されている。この嵌合孔52a’は、前述の外ブロック5の嵌合凹部52aと相違して凹部ではなく側壁52’を貫通する貫通孔となっている点で相違する。
【0074】
また、図19に示すように、背面板53’には、前述のコイルスプリング7を装着する筒状部63a’を挿通可能な大きさの上下方向に長い長孔である背面孔53a’が穿設されている。このため、外ブロック5’と内ブロック6’をコイルスプリング7で内側から押圧付勢しながら外ブロック5’と内ブロック6’が揺動しても、コイルスプリング7を装着している筒状部63a’が障害とならない構成となっている。
【0075】
それに加え、背面板53’には、図19に示すように、レール2’からスライドブロック3’を取り外した際に、内ブロック6’の係合爪61’が当接して揺動を止めるストッパ53b’が形成されている。コイルスプリング7の反発力(付勢力)で押圧されて内ブロック6’が揺動し過ぎることを防止するためである。このストッパ53b’は、背面孔53a’が内側へ凹んだ部分をストッパとして兼用している。
【0076】
底板54’は、平板状の部材であり、外ブロック5’と内ブロック6’の互いの揺動を阻害しないように、側壁52’の幅(奥行)の半分程の幅となっており、背面板53’側に偏在して設けられている。
【0077】
また、係合爪51’は、一対の側壁52’と接続して斜め上方に延在する一対の立上り部51a’と、これらの立上り部51a’の突端に架け渡された爪部51b’と、を有している。図19に示すように、これらの立上り部51a’と爪部51b’とに囲まれたスペースは、内ブロック6’の係合爪61’が揺動するスペースとして開口されている。
【0078】
(内ブロック)
次に、図20図21を用いて、スライドブロック3’の内ブロック6’について説明する。図20は、スライドブロック3’の内ブロック6’を示す正面斜視図であり、図21は、内ブロック6’を示す背面斜視図である。
【0079】
図20図21に示すように、内ブロック6’は、水平断面がコの字状の内ブロック本体60’と、この内ブロック本体60’の上端と接続する係合爪61’など、から主に構成されている。
【0080】
この内ブロック本体60’は、一対の側壁62’と、これらの側壁62’間に設けられた正面板63’と、これらの側壁62’及び正面板63’に接続する底板64’など、から構成されている。
【0081】
これら一対の側壁62’には、図20図21に示すように、前述の嵌合孔52a’に嵌め込まれて揺動軸となる円柱状の嵌合ピン62a’が、それぞれ外側に向け突設されている。
【0082】
また、図21に示すように、正面板63’の内面(背面)には、前述のコイルスプリング7を装着する筒状部63a’が突設されている。この筒状部63a’の直径は、前述の背面孔53a’の横幅より狭く設定されており、揺動の際、筒状部63a’の先端が、長孔形状の背面孔53a’内を上下に移動可能となっている。なお、この筒状部63a’も、棒状部とすることもできる。
【0083】
底板64’も、前述の底板64と同様に、平板上の底面が円弧状の曲面で切り欠かれており、底面が平坦な平面部64a’と、底面が円弧状となった曲面部64b’とが形成されている。この曲面部64b’は、内ブロック6’が嵌合ピン62a’を中心として揺動する際に、外ブロック5’の底板54’が当接しないように円弧状の曲面に切り欠かれている。
【0084】
また、係合爪61’は、一対の側壁62’と接続して斜め上方に延在する一対の立上り部61a’と、これらの立上り部61a’の突端部分に形成された爪部61b’と、を有している。但し、係合爪61’も、開口されておらず、階段状に全て閉塞されている。
【0085】
そして、係合爪61’の基端部には、長孔円弧状に切り欠かれた切欠き部61c’が形成されている。この切欠き部61c’は、ハンガー4(図示せず)を挿通する大きさとなっており、切欠き部61c’に挿通されたハンガー4を外ブロック5’の係合爪51’の基端部との間に挟み込んで固定する機能を有している。
【0086】
以上説明した第2実施形態に係るスライドハンガー1’によれば、スライドハンガー1と同様に、スライドブロック3’を片手でつまみ、内ブロック6’の正面板63を親指等で押圧するだけでスライドブロック3’の固定及び解除を行うことができる。このため、ハンガー4の固定位置を片手で簡単に変更することができ、収納庫内の収納レイアウトを自由に変更することができる。
【0087】
また、スライドハンガー1’によれば、内ブロック6’が棚の手前に面して装着されているので、係合のロックを解除する際に押圧すべき内ブロック6’が視認し易く、高所にあった場合でも簡単に片手でつまんで内ブロック6’を押圧することができる。このため、さらにスライドハンガー1’の固定位置の調整や変更が容易となる。
【0088】
以上、本発明の第1実施の形態に係るスライドハンガー1及び第2実施の形態に係るスライドハンガー1’について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたって具体化した一実施の形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0089】
特に、スライドブロック3,3’として内ブロック6,6’に嵌合ピン62a,62a’が突設されているものを例示して説明したが、外ブロック5,5’に内側に向けピンが突設されていても構わない。要するに、2つのブロック体が揺動自在に嵌合されていればよい。
【0090】
また、収納庫として吊戸棚を例示し、その棚下にレールを取り付ける場合を例示して説明したが、吊戸棚に限られず、本発明は、その他の収納庫にも適用することができる。その上、レールが取り付けられるのは、棚に限られず、天板にも取り付けることが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1,1’:スライドハンガー
2,2’:レール
20,20’:レール本体
21,21’:折返し片
22,22:ガイド部
23’:張出し部
3,3’:スライドブロック
4:ハンガー
40:上辺部材
40a:直線部
40b:正面折返し部
40c:背面折返し部
40d:ストッパ部
41:補強横材
42:フック
5,5’:外ブロック
50,50’:外ブロック本体
51,51’:係合爪
51a,51a’:立上り部
51b,51b’:爪部
52,52’:側壁
52a:嵌合凹部
52a’:嵌合孔
53,53’:背面板
53a,53a’:背面孔
53b,53b’:ストッパ
54,54’:底板
6、6’:内ブロック
60,60’:内ブロック
61,61’:係合爪
61a,61a’:立上り部
61b,61b’:爪部
61c,61c’:切欠き部
61d:凹部
62,62’:側壁
62a,62a’:嵌合ピン(ピン)
63,63’:正面板
63a,63a’:筒状部
64,64’:底板
64a,64a’:平面部
64b,64b’:曲面部
7:コイルスプリング(ばね材)
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