(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ、及び、フィルムコンデンサ用の外装ケース
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20220414BHJP
H01G 4/224 20060101ALI20220414BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
H01G4/32 540
H01G4/32 511L
H01G4/224 200
H01G2/10 C
H01G2/10 M
(21)【出願番号】P 2019567186
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2019002456
(87)【国際公開番号】W WO2019146755
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2018010869
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城岸 賢
(72)【発明者】
【氏名】小林 真一
(72)【発明者】
【氏名】市川 智道
(72)【発明者】
【氏名】亀井 聡
(72)【発明者】
【氏名】菊池 公明
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/109732(WO,A1)
【文献】特開2005-222910(JP,A)
【文献】特開平04-277657(JP,A)
【文献】特開2016-100610(JP,A)
【文献】特開平02-153712(JP,A)
【文献】特開昭57-157512(JP,A)
【文献】特開平04-048506(JP,A)
【文献】特開2005-197620(JP,A)
【文献】特開平06-143884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
H01G 4/224
H01G 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムが巻回又は積層されてなるコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を内部に収納する外装ケースと、
前記コンデンサ素子と前記外装ケースとの間に充填された充填樹脂と、を備え、
前記外装ケースが、液晶ポリマーと無機充填材とを含む樹脂組成物から構成されており、
前記樹脂組成物中の前記無機充填材の含有量が、5重量%以上、60重量%以下であり、
前記外装ケースが、一端に開口部を有し、
前記外装ケースの開口面には、凹部が設けられて
おり、
前記外装ケースの曲げ強さが、120MPa以上、250MPa以下である、フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記外装ケースの引張強さが、100MPa以上、220MPa以下である、請求項
1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
樹脂フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムが巻回又は積層されてなるコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を内部に収納する外装ケースと、
前記コンデンサ素子と前記外装ケースとの間に充填された充填樹脂と、を備え、
前記外装ケースが、液晶ポリマーと無機充填材とを含む樹脂組成物から構成されており、
前記樹脂組成物中の前記無機充填材の含有量が、5重量%以上、60重量%以下であり、
前記外装ケースが、一端に開口部を有し、
前記外装ケースの開口面には、凹部が設けられており、
前記外装ケースの引張強さが、100MPa以上、220MPa以下である、フィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記コンデンサ素子の体積は、前記外装ケースの内容積に対して30%以上、85%以下である、請求項1
~3のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記外装ケースの内面と前記コンデンサ素子の外面との離間距離は、1mm以上、5mm以下である、請求項1
~4のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項6】
前記樹脂組成物は、前記無機充填材として、繊維状の無機材料及び/又は板状の無機材料を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項7】
前記樹脂フィルムは、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有する樹脂を主成分として含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項8】
前記樹脂フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項9】
前記充填樹脂は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂及びシリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項10】
前記外装ケースの内面には、リブが設けられており、
前記リブは、前記外装ケースの底面側から開口部側に向かって伸び、かつ、前記外装ケースの底面と側壁の内面とを連接している、請求項1~9のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項11】
樹脂フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムが巻回又は積層されてなるコンデンサ素子を内部に収納するための、フィルムコンデンサ用の外装ケースであって、
液晶ポリマーと無機充填材とを含む樹脂組成物から構成されており、
前記樹脂組成物中の前記無機充填材の含有量が、5重量%以上、60重量%以下であり、
一端に開口部を有し、かつ、開口面には凹部が設けられて
おり、
曲げ強さが、120MPa以上、250MPa以下である、フィルムコンデンサ用の外装ケース。
【請求項12】
引張強さが、100MPa以上、220MPa以下である、請求項
11に記載の外装ケース。
【請求項13】
樹脂フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムが巻回又は積層されてなるコンデンサ素子を内部に収納するための、フィルムコンデンサ用の外装ケースであって、
液晶ポリマーと無機充填材とを含む樹脂組成物から構成されており、
前記樹脂組成物中の前記無機充填材の含有量が、5重量%以上、60重量%以下であり、
一端に開口部を有し、かつ、開口面には凹部が設けられており、
引張強さが、100MPa以上、220MPa以下である、フィルムコンデンサ用の外装ケース。
【請求項14】
前記樹脂組成物は、前記無機充填材として、繊維状の無機材料及び/又は板状の無機材料を含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の外装ケース。
【請求項15】
内面には、リブが設けられており、
前記リブが、底面側から開口部側に向かって伸び、かつ、底面と側壁の内面とを連接している、請求項11~14のいずれか1項に記載の外装ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサ、及び、フィルムコンデンサ用の外装ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
金属化フィルムコンデンサは、樹脂フィルムの表面に金属蒸着膜が設けられた金属化フィルムが巻回又は積層されてなるコンデンサ素子を備えている。このような金属化フィルムコンデンサを高温高湿環境下で使用すると、水分の浸入に起因して、金属蒸着膜の水酸化反応が進行する。これにより、金属蒸着膜の導電性が失われてしまい、静電容量が低下するという問題がある。
【0003】
そこで、水蒸気バリア性に優れる金属ケースの内部にコンデンサ素子を収納する方法が知られている。ただし、金属ケースは導電性が高いため、コンデンサ素子に接続されたリード端子と金属ケースとの間に絶縁対策を施す必要がある。
【0004】
金属ケースに代えて、絶縁性の高いポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリフェニレンサルファイド(PPS)等からなる樹脂ケースを使用する方法も知られている。これらの樹脂ケースを使用することで、絶縁対策は不要となるが、水蒸気バリア性は金属ケースと比較して格段に低下する。特に、近年、自動車などの高信頼性市場で求められる85℃85%RH雰囲気下における耐湿信頼性を確保するには、樹脂ケースなどを厚くする必要があり、部品小型化のトレンドに合わない。
【0005】
上記の問題に対して、特許文献1には、コンデンサ素子と、上記コンデンサ素子を内部に収納する樹脂ケースと、上記コンデンサ素子と上記樹脂ケースの隙間に充填される充填樹脂と、からなる金属化フィルムコンデンサにおいて、上記コンデンサ素子と上記樹脂ケースとの間で、かつ上記樹脂ケースの内壁近傍にガスバリア性プラスチックフィルムを配置した金属化フィルムコンデンサが開示されている。特許文献2には、ケースと、上記ケース内に収納されるコンデンサ素子と、上記ケース内に充填されコンデンサ素子を埋没させる樹脂とを備える金属化フィルムコンデンサにおいて、上記コンデンサ素子と上記樹脂上面との間に金属箔ラミネートシートを配置した金属化フィルムコンデンサが開示されている。
【0006】
また、コンデンサ素子を収納するケースの材料として、特許文献3には、PBT又はPPSに代えて、液晶性ポリマー(LCP)を使用してもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-173351号公報
【文献】特開2007-311625号公報
【文献】特開2005-222910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1又は特許文献2のように、プラスチックフィルム又は金属箔ラミネートシートを用いてコンデンサ素子を保護する場合、ケース内に樹脂を充填する際の作業性悪化やコスト増加などの問題が懸念される。
【0009】
一方、特許文献3のように、コンデンサ素子を収納する外装ケースの材料としてLCPを用いた場合には、PBT又はPPSからなる樹脂ケースに比べてガスバリア性に優れ、かつ、金属ケースと異なり絶縁対策も不要となる。しかしながら、LCPを用いた外装ケースの内部にコンデンサ素子が収納されたフィルムコンデンサを高温環境下で使用した場合、外装ケースが変形するおそれがあることが判明した。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、高温高湿環境下での耐湿信頼性に優れ、かつ、高温環境下で外装ケースが変形しにくいフィルムコンデンサを提供することを目的とする。本発明はまた、該フィルムコンデンサ用の外装ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のフィルムコンデンサは、樹脂フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムが巻回又は積層されてなるコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子を内部に収納する外装ケースと、上記コンデンサ素子と上記外装ケースとの間に充填された充填樹脂と、を備え、上記外装ケースが、液晶ポリマー(LCP)と無機充填材とを含む樹脂組成物から構成されている。
【0012】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、上記樹脂組成物中の上記無機充填材の含有量が、5重量%以上、60重量%以下であることが望ましく、15重量%以上、60重量%以下であることがより望ましい。
【0013】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、上記外装ケースの曲げ強さが、120MPa以上、250MPa以下であることが望ましく、190MPa以上、250MPa以下であることがより望ましい。
【0014】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、上記外装ケースの引張強さが、100MPa以上、220MPa以下であることが望ましく、170MPa以上、220MPa以下であることがより望ましい。
【0015】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、上記樹脂組成物は、上記無機充填材として、繊維状の無機材料及び/又は板状の無機材料を含むことが望ましい。
【0016】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、上記樹脂フィルムは、ウレタン結合及びユリア(ウレアともいう)結合の少なくとも一方を有する樹脂を主成分として含むことが望ましい。
【0017】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、上記樹脂フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含んでいてもよい。
【0018】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、上記充填樹脂は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂及びシリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含むことが望ましい。
【0019】
本発明のフィルムコンデンサ用の外装ケースは、樹脂フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムが巻回又は積層されてなるコンデンサ素子を内部に収納するための、フィルムコンデンサ用の外装ケースであって、液晶ポリマーと無機充填材とを含む樹脂組成物から構成されている。
【0020】
本発明のフィルムコンデンサ用の外装ケースにおいては、上記樹脂組成物中の上記無機充填材の含有量が、5重量%以上、60重量%以下であることが望ましい。
【0021】
本発明のフィルムコンデンサ用の外装ケースにおいては、曲げ強さが、120MPa以上、250MPa以下であることが望ましく、190MPa以上、250MPa以下であることがより望ましい。
【0022】
本発明のフィルムコンデンサ用の外装ケースにおいては、引張強さが、100MPa以上、220MPa以下であることが望ましく、170MPa以上、220MPa以下であることがより望ましい。
【0023】
本発明のフィルムコンデンサ用の外装ケースにおいて、上記樹脂組成物は、上記無機充填材として、繊維状の無機材料及び/又は板状の無機材料を含むことが望ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高温高湿環境下での耐湿信頼性に優れ、かつ、高温環境下で外装ケースが変形しにくいフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るフィルムコンデンサを模式的に示す断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示すフィルムコンデンサのIb-Ib線断面図であり、
図1(c)は、
図1(a)に示すフィルムコンデンサのIc-Ic線断面図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1(a)に示すフィルムコンデンサを構成する外装ケースの一例を模式的に示す正面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示す外装ケースの側面図である。
【
図3】
図3は、引張試験で使用される試験片を説明するための平面図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明のフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子の一例を模式的に示す斜視図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示すコンデンサ素子のIVb-IVb線断面図である。
【
図5】
図5は、
図4(a)及び
図4(b)に示すコンデンサ素子を構成する金属化フィルムの巻回体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4(a)及び
図4(b)に示すコンデンサ素子を構成する金属化フィルムの巻回体の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、コンデンサ試料の寸法を示す断面図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、コンデンサ試料の寸法を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のフィルムコンデンサについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0027】
なお、以下において説明するフィルムコンデンサ用の外装ケースもまた、本発明の1つである。
【0028】
本発明のフィルムコンデンサは、金属化フィルムが巻回又は積層されてなるコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子を内部に収納する外装ケースと、上記コンデンサ素子と上記外装ケースとの間に充填された充填樹脂と、を備える。本発明のフィルムコンデンサにおいては、上記外装ケースが、LCPと無機充填材とを含む樹脂組成物から構成されていることを特徴としている。
【0029】
フィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子の製法上、樹脂フィルム間に水分が取り込まれることがある。そのため、フィルムコンデンサが高温環境下で使用されると、樹脂フィルム間で水分が蒸発することでコンデンサ素子が膨張する。コンデンサ素子と外装ケースとの間には充填樹脂が充填されているため、コンデンサ素子の膨張が外装ケースにまで伝わることになる。
【0030】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、外装ケースを構成する樹脂組成物がLCPに加えて無機充填材を含むため、外装ケースの強度が向上する。その結果、コンデンサ素子が膨張しても、外装ケースの変形を抑制することができる。
【0031】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るフィルムコンデンサを模式的に示す断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示すフィルムコンデンサのIb-Ib線断面図であり、
図1(c)は、
図1(a)に示すフィルムコンデンサのIc-Ic線断面図である。
【0032】
図1(a)、
図1(b)及び
図1(c)に示すフィルムコンデンサ1は、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を内部に収納する外装ケース20と、コンデンサ素子10と外装ケース20との間に充填された充填樹脂30と、を備えている。
【0033】
図1(a)、
図1(b)及び
図1(c)に示すフィルムコンデンサ1において、外装ケース20の内部には、直方体状の空間が形成されており、外装ケース20の内面から離間しつつ、外装ケース20の内部の中央にコンデンサ素子10が配置されている。コンデンサ素子10を保持するために、コンデンサ素子10の外面と外装ケース20の内面との間には、エポキシ樹脂などの充填樹脂30が充填されている。外装ケース20は、一端に開口部を有する有底筒状であり、充填樹脂30は、外装ケース20の内部において、外装ケース20の開口部からコンデンサ素子10までも充填されている。エポキシ樹脂は、加熱硬化させることで、外装ケース20とコンデンサ素子10を一体に接着固定することができる。
【0034】
図1(a)において、コンデンサ素子10は、金属化フィルムの巻回体40と、巻回体40の両側方に形成された第1の外部電極41及び第2の外部電極42と、を備えている。第1の外部電極41には第1のリード端子51が電気的に接続され、第2の外部電極42には第2のリード端子52が電気的に接続されている。第1のリード端子51及び第2のリード端子52は、外装ケース20の内部から外部に向かって突出している。
【0035】
図1(a)、
図1(b)及び
図1(c)に示すように、外装ケース20の内面には、第1のリブ60及び第2のリブ70が設けられていることが望ましい。第1のリブ60は、第1の外部電極41側及び/又は第2の外部電極42側に設けられたリブである。第1のリブ60は、外装ケース20の底面側から開口部側に向かって伸びる板状からなり、その開口部側の端面は、外装ケース20からコンデンサ素子10に向かって順次長さが小さくなるようにテーパー形状を有する。第1のリブ60は、一対の板状からなり、その一方が外装ケース20の底面と
図2(a)に示す第3の側壁23の内面とを連接し、且つ、その他方が外装ケース20の底面と
図2(a)に示す第4の側壁24の内面とを連接する。第1のリブ60は、
図1(b)において、外装ケース20内の幅方向における中央に位置することで、第1のリード端子51の同軸上に位置する。また、第1のリブ60は、底面側から開口部側に向かう方向において、外装ケース20の中心から底部側に位置する。一方、第2のリブ70は、外装ケース20の底面側に設けられたリブである。第2のリブ70は、外装ケース20の底面側から開口部側に向かって伸びる板状からなる。第2のリブ70は、
図1(a)において、外装ケース20の内部に互いに離間した一対の板状からなり、
図1(c)に示すように、外装ケース20の内面形状に沿った外面形状と、コンデンサ素子10の内面に概略沿ったU字状の内面形状とからなる。また、第2のリブ70の一方の板状部(
図1(a)における紙面左側)は、
図1(c)において紙面左右に一方の板状部における第1部位と第2部位に分かれており、第1部位が外装ケース20の底面と
図2(b)に示す第1の側壁21の内面とを連接し、第2部位が外装ケース20の底面と
図2(b)に示す第2の側壁22の内面とを連接する。
図1(a)に示すように、第2のリブ70の一方の板状部は、コンデンサ素子10の中心から第1の外部電極41との間に位置し、第2のリブ70の他方の板状部は、コンデンサ素子10の中心から第2の外部電極42との間に位置する。また、
図1(c)に示すように、第2のリブ70は、コンデンサ素子10の中心より開口部まで伸びており、第2のリード端子52よりも開口部側にまで伸びるように位置する。外装ケースの内面にリブを設けることにより、樹脂注型時においてコンデンサ素子の位置精度を向上させることができる。なお、外装ケースの内面にリブが設けられていなくてもよい。
【0036】
(外装ケース)
本発明のフィルムコンデンサを構成する外装ケースは、例えば、一端に開口部のある有底筒状である。
【0037】
図2(a)は、
図1(a)に示すフィルムコンデンサを構成する外装ケースの一例を模式的に示す正面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示す外装ケースの側面図である。
【0038】
図2(a)及び
図2(b)に示す外装ケース20は、一端に略長方形の開口部(
図1(a)、
図1(b)及び
図1(c)参照)と、この開口部の四辺から他端に向かって伸びる四枚の平板を備えた四角筒状の側部と、開口部に対向しつつ四角筒状の他端を封する底部と、を備えた有底四角筒状である。なお、外装ケース20は、有底円筒状などの筒状であってもよい。
【0039】
外装ケース20の側部は、第1の側壁21と、第1の側壁21と略同面積を有すると共に第1の側壁21の内面と対向するように離間して配置された第2の側壁22と、第1の側壁21の一方の側辺と第2の側壁22の一方の側辺とを連接すると共に第1の側壁21の面積より小面積を有する第3の側壁23と、第1の側壁21の他方の側辺と第2の側壁22の他方の側辺とを連接し、第3の側壁23と略同面積を有するとともに第3の側壁23の内面と対向するように離間して配置された第4の側壁24とを備える。
【0040】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、外装ケース20の側部には、開口部側の四辺において、凹部25が設けられていることが望ましい。凹部25は、開口部側から底部側に向かい、開口部側の四辺に沿って伸びている。外装ケースの開口面に凹部を設けることにより、フィルムコンデンサを基板実装した際に、フィルムコンデンサ及び基板が密閉して内圧が上昇することを防止することができる。なお、外装ケースに凹部が設けられていなくてもよい。
【0041】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、外装ケース20の側部には、各側壁を連接する辺に沿って伸びるテーパー部26が設けられていることが望ましい。
図2(a)及び
図2(b)では、第3の側壁23及び第4の側壁24の底部側の角部にテーパー部26が設けられている。このため、第1の側壁21の底部側の側辺と底部とを連接する辺にもテーパー部が設けられ、第2の側壁22の底部側の側辺と底部とを連接する辺にもテーパー部が設けられている。なお、外装ケースの側部にテーパー部が設けられていなくてもよい。
【0042】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、外装ケースは、LCPと無機充填材とを含む樹脂組成物から構成されている。
【0043】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、内部のコンデンサ素子に含有される水分の蒸発を抑えるため、内部のコンデンサ素子の加熱を抑制することが望ましい。そのため、外装ケースは、100℃の高温であっても不透明(例えば黒色)であることが望ましい。なお、ここでいう不透明とは、可視光400nm以上700nm以下の波長での透過率が5%以下であることをいう。
【0044】
樹脂組成物に含まれるLCPとして、後述の実施例では、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸基を骨格にもつLCPを使用している。また、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸基以外にも、フェノール、フタル酸、エチレンテレフタレートなどの各種成分を用いて、重縮合体を形成したLCPを使用することができる。
また、LCPを分類する場合、I型、II型、III型といった分類方法もあるが、材料としては、上記構成要素から形成したLCPと同じ材料を意味する。
【0045】
樹脂組成物に含まれる無機充填材としては、LCPよりも強度が高い材料を使用することができる。無機充填材は、LCPよりも融点が高い材料であることが望ましく、融点が680℃以上である材料であることがより望ましい。
【0046】
無機充填材の形態は特に限定されず、例えば、繊維状又は板状などの長手方向を有するものが挙げられる。これらの無機充填材は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。したがって、樹脂組成物は、上記無機充填材として、繊維状の無機材料及び/又は板状の無機材料を含むことが望ましい。
【0047】
本明細書において、「繊維状」とは、充填材の長手方向長さと、長手方向に垂直な断面における断面径との関係が、長手方向長さ÷断面径≧5(すなわちアスペクト比が5:1以上)である状態を意味する。ここで、断面径は、断面の外周上において最長となる2点間距離とする。断面径が長手方向で異なる場合、断面径が最大となる箇所で測定を行う。
また、「板状」とは、投影面積が最大となる面の断面径と、この断面に対して垂直方向における最大高さの関係が、断面径÷高さ≧3である状態を意味する。
【0048】
無機充填材は、少なくともその一部が外装ケースの側部の各側壁において、ケース底側から開口部に向かって配向している部分と、隣り合う側壁に向かって配向している部分とを有し、外装ケースの内部において分散していることが望ましい。
【0049】
無機充填材は、少なくとも直径5μm以上、長さ50μm以上のサイズを有するものであることが望ましい。特に、無機充填材は、凝集することなく、外装ケース全体に分散していることが望ましい。
【0050】
無機充填材として、具体的には、繊維状のガラスフィラーや板状のタルク又はマイカなどの材料を使用することができる。
【0051】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、外装ケースの変形量を小さくする観点から、樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、5重量%以上であることが望ましく、15重量%以上であることがより望ましい。また、外装ケースの成形性を確保する観点から、樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、60重量%以下であることが望ましい。
【0052】
樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、20mm×20mm×0.5mm厚の試験片を使用して、灰分測定あるいは熱重量分析によって、残存成分を無機成分とみなして重量を測定し、初期重量と残存成分重量から算出することができる。
具体的には、JIS K 7250 A法(直接灰化法)に基づき、有機材料を燃焼し、その燃焼残さを高温で恒量になるまで加熱する方法にて測定する。
【0053】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、樹脂組成物中のLCPの含有量は、40重量%以上、95重量%以下であることが望ましく、40重量%以上、85重量%以下であることがより望ましい。
【0054】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、外装ケースの比重は、1.5g/cm3以上、1.9g/cm3以下であることが望ましい。
【0055】
外装ケースの比重は、20mm×20mm×0.5mm厚の試験片を使用して、ASTM-D792に基づき、水中置換法により測定する。
【0056】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、外装ケースの変形量を小さくする観点から、外装ケースの曲げ強さは、120MPa以上、250MPa以下であることが望ましく、190MPa以上、250MPa以下であることがより望ましい。
【0057】
外装ケースの曲げ強さは、20mm×20mm×0.5mm厚の試験片を作製して、曲げ試験を実施することにより測定する。試験条件は、ISO 178を参照する。
【0058】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、外装ケースの変形量を小さくする観点から、外装ケースの引張強さは、100MPa以上、220MPa以下であることが望ましく、170MPa以上、220MPa以下であることがより望ましい。
【0059】
図3は、引張試験で使用される試験片を説明するための平面図である。
外装ケースの引張強さは、
図3に示す形状を有し、0.5mm厚とした試験片を作製して、引張試験を実施することにより測定する。試験条件は、ASTM-D638を参照する。
【0060】
なお、これまでの測定では、20mm×20mm×0.5mm厚の試験片、又は、
図3に示す形状を有し、0.5mm厚とした試験片が使用されているが、試験片の寸法及び厚みはこれらに限定されるものではなく、上記よりも小さい形状であってもよい。
【0061】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、外装ケースは、例えば、射出成形により製造することができる。
【0062】
(充填樹脂)
本発明のフィルムコンデンサにおいて、充填樹脂は、コンデンサ素子と外装ケースとの間に充填される。
【0063】
充填樹脂としては、必要な機能に応じた樹脂を適宜選択することができる。
後述の実施例では、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂を使用し、エポキシ樹脂の硬化剤には、酸無水物硬化剤を使用している。また、補強剤には、シリカを用いている。
【0064】
なお、充填樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などを使用することができる。エポキシ樹脂の硬化剤には、アミン硬化剤、イミダゾール硬化剤を使用してもよい。また、充填樹脂には、樹脂のみを使用してもよいが、強度の向上を目的として、補強剤を添加してもよい。補強剤には、シリカ、アルミナなどを用いることができる。
【0065】
コンデンサ素子と外装ケースとの間に充填樹脂を充填することにより、コンデンサ素子を外気から遮断することができる。そのため、透湿性が低い樹脂を適宜選択し、外装ケースの開口部における樹脂を厚くすることが望ましい。
外装ケースの開口部における樹脂の厚みは、コンデンサ全体の体積(体格)が許容される範囲で充分な厚みを持たせることが望ましく、具体的には、2mm以上であることが望ましく、4mm以上であることがより望ましい。特に、
図1(a)、
図1(b)及び
図1(c)に示すように、外装ケース20の内部において、コンデンサ素子10が外装ケース20の開口部よりも底面側に位置するように配置することで、コンデンサ素子10に対して外装ケース20の開口部側の樹脂の厚みを、底面側の樹脂の厚みよりも厚くすることがより望ましい。
また、充填樹脂の高さと外装ケースの高さとの関係は、外装ケースの開口部における樹脂をできる限り厚くするとともに、外装ケースの内部側の位置まででもよいし、すりきり一杯程度でもよいし、表面張力でやや溢れていてもよい。
【0066】
一般に、フィルムコンデンサは、使用環境によっては常時振動にさらされることがある。そのため、外装ケース内のコンデンサ素子が振動により移動しないように、充填樹脂には所定の硬度が求められる。また、フィルムコンデンサの使用環境によっては高温耐熱性が求められることから、高温で樹脂強度(粘度)が低下するようなものは使用できず、その場合も充填樹脂には所定の硬度が求められる。一方で、充填樹脂の硬度が高くなるほど、コンデンサ素子が膨張した際に高い応力が発生するため外装ケースが変形しやすくなる。
本発明のフィルムコンデンサにおいては、外装ケースがLCPと無機充填材とを含む樹脂組成物から構成されているため、充填樹脂の硬度が高い場合(例えばデュロメータ硬度85以上;測定方法JIS K7215)であっても、外装ケースの変形を抑制することができる。
【0067】
(コンデンサ素子)
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子は、例えば断面長円状の柱状であり、その中心軸方向の両端に、例えば金属溶射(メタリコン)で形成した外部電極が設けられる。
【0068】
図4(a)は、本発明のフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子の一例を模式的に示す斜視図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示すコンデンサ素子のIVb-IVb線断面図である。
図4(a)及び
図4(b)に示すコンデンサ素子10は、第1の金属化フィルム11と第2の金属化フィルム12とが積層された状態で巻回された金属化フィルムの巻回体40と、巻回体40の両端部に接続された第1の外部電極41及び第2の外部電極42と、を備えている。
図4(b)に示すように、第1の金属化フィルム11は、第1の樹脂フィルム13と、第1の樹脂フィルム13の表面に設けられた第1の金属層(対向電極)15とを備え、第2の金属化フィルム12は、第2の樹脂フィルム14と、第2の樹脂フィルム14の表面に設けられた第2の金属層(対向電極)16とを備えている。
【0069】
図4(b)に示すように、第1の金属層15及び第2の金属層16は、第1の樹脂フィルム13又は第2の樹脂フィルム14を挟んで互いに対向している。さらに、第1の金属層15は、第1の外部電極41と電気的に接続されており、第2の金属層16は、第2の外部電極42と電気的に接続されている。
【0070】
第1の樹脂フィルム13及び第2の樹脂フィルム14は、それぞれ異なる構成を有していてもよいが、同一の構成を有していることが望ましい。
【0071】
第1の金属層15は、第1の樹脂フィルム13の一方の面において一方側縁にまで届くが、他方側縁にまで届かないように形成される。他方、第2の金属層16は、第2の樹脂フィルム14の一方の面において一方側縁にまで届かないが、他方側縁にまで届くように形成される。第1の金属層15及び第2の金属層16は、例えばアルミニウム層などから構成される。
【0072】
図5は、
図4(a)及び
図4(b)に示すコンデンサ素子を構成する金属化フィルムの巻回体の一例を模式的に示す斜視図である。
図4(b)及び
図5に示すように、第1の金属層15における第1の樹脂フィルム13の側縁にまで届いている側の端部、及び、第2の金属層16における第2の樹脂フィルム14の側縁にまで届いている側の端部がともに積層されたフィルムから露出するように、第1の樹脂フィルム13と第2の樹脂フィルム14とが互いに幅方向(
図4(b)では左右方向)にずらされて積層される。
図5に示すように、第1の樹脂フィルム13及び第2の樹脂フィルム14が積層された状態で巻回されることによって巻回体40となり、第1の金属層15及び第2の金属層16が端部で露出した状態を保持して、積み重なった状態とされる。
【0073】
図4(b)及び
図5では、第2の樹脂フィルム14が第1の樹脂フィルム13の外側になるように、かつ、第1の樹脂フィルム13及び第2の樹脂フィルム14の各々について、第1の金属層15及び第2の金属層16の各々が内方に向くように巻回されている。
【0074】
第1の外部電極41及び第2の外部電極42は、上述のようにして得られた金属化フィルムの巻回体40の各端面上に、例えば亜鉛などを溶射することによって形成される。第1の外部電極41は、第1の金属層15の露出端部と接触し、それによって第1の金属層15と電気的に接続される。他方、第2の外部電極42は、第2の金属層16の露出端部と接触し、それによって第2の金属層16と電気的に接続される。
【0075】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、125℃以上の耐熱性を有することが望ましい。
この場合、125℃以上の高温環境下においてフィルムコンデンサを使用することができる。一方で、125℃以上でフィルムコンデンサが使用されると、樹脂フィルム間で水分が蒸発することでコンデンサ素子が膨張し、外装ケースが変形しやすくなる。
本発明のフィルムコンデンサにおいては、外装ケースがLCPと無機充填材とを含む樹脂組成物から構成されているため、フィルムコンデンサを高温環境下(例えば125℃以上)で使用する場合であっても、外装ケースの変形を抑制することができる。
【0076】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有する樹脂を主成分として含むことが望ましい。このような樹脂としては、例えば、ウレタン結合を有するウレタン樹脂、ユリア結合を有するユリア樹脂等が挙げられる。また、ウレタン結合及びユリア結合の両方を有する樹脂であってもよい。具体的には、後述する硬化性樹脂、蒸着重合膜等が挙げられる。
なお、ウレタン結合及び/又はユリア結合の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
【0077】
本明細書において、「樹脂フィルムの主成分」とは、存在割合(重量%)が最も大きい成分を意味し、望ましくは、存在割合が50重量%を超える成分を意味する。したがって、樹脂フィルムは、主成分以外の成分として、例えば、シリコーン樹脂等の添加剤や、後述する第1有機材料及び第2有機材料等の出発材料の未硬化部分を含んでもよい。
【0078】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含んでいてもよい。硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよいし、光硬化性樹脂であってもよい。硬化性樹脂は、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0079】
本明細書において、熱硬化性樹脂とは、熱で硬化し得る樹脂を意味しており、硬化方法を限定するものではない。したがって、熱で硬化し得る樹脂である限り、熱以外の方法(例えば、光、電子ビームなど)で硬化した樹脂も熱硬化性樹脂に含まれる。また、材料によっては材料自体が持つ反応性によって反応が開始する場合があり、必ずしも外部から熱又は光等を与えずに硬化が進むものについても熱硬化性樹脂とする。光硬化性樹脂についても同様であり、硬化方法を限定するものではない。
【0080】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、蒸着重合膜を主成分として含んでいてもよい。蒸着重合膜は、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有していてもよいし、有していなくてもよい。
なお、蒸着重合膜は、蒸着重合法により成膜されたものを指し、基本的には硬化性樹脂に含まれる。
【0081】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、第1有機材料と第2有機材料との硬化物からなることが望ましい。例えば、第1有機材料が有する水酸基(OH基)と第2有機材料が有するイソシアネート基(NCO基)とが反応して得られる硬化物等が挙げられる。
【0082】
上記の反応によって硬化物を得る場合、出発材料の未硬化部分がフィルム中に残留してもよい。例えば、樹脂フィルムは、イソシアネート基(NCO基)及び水酸基(OH基)の少なくとも一方を含んでもよい。この場合、樹脂フィルムは、イソシアネート基及び水酸基のいずれか一方を含んでもよいし、イソシアネート基及び水酸基の両方を含んでもよい。
なお、イソシアネート基及び/又は水酸基の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
【0083】
第1有機材料は、分子内に複数の水酸基(OH基)を有するポリオールであることが望ましい。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリビニルアセトアセタール等が挙げられる。第1有機材料として、2種以上の有機材料を併用してもよい。第1有機材料の中では、ポリエーテルポリオールに属するフェノキシ樹脂が望ましい。
【0084】
第2有機材料は、分子内に複数の官能基を有する、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂又はメラミン樹脂であることが望ましい。第2有機材料として、2種以上の有機材料を併用してもよい。
【0085】
イソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらのポリイソシアネートの変性体、例えば、カルボジイミド又はウレタン等を有する変性体であってもよい。中でも、芳香族ポリイソシアネートが望ましく、MDIがより望ましい。
【0086】
エポキシ樹脂としては、エポキシ環を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格エポキシ樹脂、シクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂、ナフタレン骨格エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0087】
メラミン樹脂としては、構造の中心にトリアジン環、その周辺にアミノ基3個を有する有機窒素化合物であれば特に限定されず、例えば、アルキル化メラミン樹脂等が挙げられる。その他、メラミンの変性体であってもよい。
【0088】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、望ましくは、第1有機材料及び第2有機材料を含む樹脂溶液をフィルム状に成形し、次いで、熱処理して硬化させることによって得られる。
【0089】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂を主成分として含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、高結晶性ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリルアリレート等が挙げられる。
【0090】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムは、他の機能を付加するための添加剤を含むこともできる。例えば、レベリング剤を添加することで平滑性を付与することができる。添加剤は、水酸基及び/又はイソシアネート基と反応する官能基を有し、硬化物の架橋構造の一部を形成する材料であることがより望ましい。このような材料としては、例えば、エポキシ基、シラノール基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂等が挙げられる。
【0091】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、5μm以下であることが望ましく、3.5μm未満であることがより望ましく、3.4μm以下であることがさらに望ましい。また、樹脂フィルムの厚みは、0.5μm以上であることが望ましい。
なお、樹脂フィルムの厚みは、光学式膜厚計を用いて測定することができる。
【0092】
例えば、コンデンサ素子を構成する樹脂フィルムを薄くし、樹脂フィルムの巻回長さが変わらない場合を考える。この場合、樹脂フィルムが薄くなることでコンデンサ素子の体積は小さくなり、コンデンサ素子の体積に合わせて外装ケースも小型になる。しかし、樹脂フィルムの巻回長さが変わらないことから、樹脂フィルム間の間隙量は変わらない。すなわち、コンデンサ素子の体積に対する間隙量は、樹脂フィルムが薄い方が大きい。したがって、コンデンサ素子の樹脂フィルム間に含まれる水分が蒸発することによりコンデンサ素子が膨張した場合、コンデンサ素子自体の体積変化量は、樹脂フィルムが薄いほど大きくなる。
本発明のフィルムコンデンサにおいては、外装ケースがLCPと無機充填材とを含む樹脂組成物から構成されているため、樹脂フィルムが薄い場合(例えば3.4μm以下)であっても、外装ケースの変形を抑制することができる。
【0093】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する金属層に含まれる金属の種類は特に限定されないが、金属層は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)及びニッケル(Ni)からなる群より選ばれるいずれか1種を含むことが望ましい。
【0094】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を構成する金属層の厚みは特に限定されないが、金属層の破損を抑制する観点から、金属層の厚みは、5nm以上、40nm以下であることが望ましい。
なお、金属層の厚みは、金属化フィルムを厚み方向に切断した断面を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)等の電子顕微鏡を用いて観察することにより特定することができる。
【0095】
図6は、
図4(a)及び
図4(b)に示すコンデンサ素子を構成する金属化フィルムの巻回体の別の一例を模式的に示す斜視図である。
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子が金属化フィルムの巻回体から構成される場合、
図6に示す金属化フィルムの巻回体40aのように、断面形状が楕円又は長円のような扁平形状にプレスされ、よりコンパクトな形状とされることが望ましい。
この場合、外装ケース内部のデッドスペースを減らすことにより、外装ケースを小型化することができるため、フィルムコンデンサ全体を小型化することができる。
【0096】
コンデンサ素子の樹脂フィルム間に含まれる水分が蒸発することによりコンデンサ素子が膨張した場合、金属化フィルムの巻回体が
図5に示すような円柱状であれば、断面の円中心から放射状に膨張するため、その膨張方向に偏りがない。一方、金属化フィルムの巻回体が
図6に示すような扁平形状であれば、断面の中心から放射状に膨張しない。特に、巻回体がプレスされているため、樹脂フィルムの一部は塑性変形せずに、外方向に形状を戻そうと付勢(バネ性)がかかっている。したがって、コンデンサ素子が膨張するとともに、塑性変形していない一部の付勢が重畳されるため、金属化フィルムの巻回体が円柱状である場合に比べて外装ケースが変形しやすくなる。
本発明のフィルムコンデンサにおいては、外装ケースがLCPと無機充填材とを含む樹脂組成物から構成されているため、金属化フィルムの巻回体が扁平形状である場合であっても、外装ケースの変形を抑制することができる。
【0097】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子が金属化フィルムの巻回体から構成される場合、コンデンサ素子は、円柱状の巻回軸を備えていてもよい。巻回軸は、巻回状態の金属化フィルムの中心軸線上に配置されるものであり、金属化フィルムを巻回する際の巻軸となるものである。
【0098】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、コンデンサ容量に応じてコンデンサ素子のサイズや形状が決まることから、種々のサイズのコンデンサ素子を使用することができる。
例えば、コンデンサ容量が1μF以上、150μF以下であれば、コンデンサ素子のサイズは、断面長円形状において、長円方向の長さが15mm以上65mm以下、短円方向の長さが2mm以上50mm以下、長手方向(断面の奥手前方向であって外部電極を含む)の長さが10mm以上50mm以下であることが望ましい。
この場合、外装ケースの外形は、底部の長辺が16mm以上73mm以下、底部の短辺が3mm以上58mm以下であり、外装ケースの高さが10.5mm以上50.5mm以下であることが望ましい。また、外装ケースの厚みは、0.5mm以上3mm以下であることが望ましい。
【0099】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子の体積は、外装ケースの内容積に対して30%以上、85%以下であることが望ましい。コンデンサ素子の体積が外装ケースの内容積に対して85%を超えると、充填樹脂によって外装ケース及びコンデンサ素子を固定することが困難となる。一方、コンデンサ素子の体積が外装ケースの内容積に対して30%未満であると、コンデンサ素子に対して外装ケースが大きくなりすぎて、フィルムコンデンサが大型になる。
【0100】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、外装ケースの内面とコンデンサ素子の外面との離間距離は、1mm以上、5mm以下であることが望ましく、1mm以上、2mm以下であることがより望ましい。
【0101】
外装ケースのサイズをコンデンサ素子のサイズに近付けるほど、フィルムコンデンサを小型化することができるが、その一方で、コンデンサ素子の樹脂フィルム間に含まれる水分が蒸発することによりコンデンサ素子が膨張した場合、外装ケースが変形しやすくなる。
本発明のフィルムコンデンサにおいては、外装ケースがLCPと無機充填材とを含む樹脂組成物から構成されているため、外装ケースのサイズをコンデンサ素子のサイズに近付けた場合であっても、外装ケースの変形を抑制することができる。
【0102】
(リード端子)
本発明のフィルムコンデンサにおいて、リード端子は、外装ケースの内部に充填された充填樹脂から外部に向かって突出する。
【0103】
リード端子がコンデンサ素子の外部電極と電気的に接続されている部分は、外部電極の小領域に設けられることから、リード端子に負荷がかかると、外部電極からリード端子が分離してしまうおそれがある。そこで、外装ケースの内部においては、コンデンサ素子の外部電極とリード端子の外部に充填樹脂が位置し、両者を密着固定する。これにより、リード端子の突出部に負荷がかかっても、充填樹脂によってリード端子と外部電極との接続が補強され、両者の分離を抑制することができる。
【0104】
外部電極とリード端子との接続位置は、外部電極の中央部でもよいし、特許第4733566号の
図1に記載されているように開口部に近い電極端部であってもよい。
【0105】
(その他の実施形態)
図1(a)、
図1(b)及び
図1(c)では、単一の外装ケースに単一のコンデンサ素子が収納されている例を示したが、例えば、特開2012-69840号公報に記載されているように、単一の外装ケースに複数のコンデンサ素子が収納されていてもよい。
【0106】
また、これまでは、第1の金属化フィルムと第2の金属化フィルムとが積層された状態で巻回された巻回型フィルムコンデンサを用いて説明したが、第1の金属化フィルムと第2の金属化フィルムとが積層された積層型フィルムコンデンサであってもよい。積層型フィルムコンデンサであっても、上述した本発明の作用及び効果が得られる。
【実施例】
【0107】
以下、本発明のフィルムコンデンサをより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0108】
[樹脂フィルムの作製]
トルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤にポリビニルアセトアセタール(PVAA)樹脂粉末を溶解させてPVAA樹脂溶液を準備し、酢酸エチルに溶解させたTMP(トリメチロールプロパン)アダクトタイプのトリレンジイソシアネート(TDI)プレポリマー体をPVAA樹脂溶液と混合して混合樹脂溶液を得た。このとき、PVAAとTDIプレポリマー体の配合比が重量比で4:6となるように固形分濃度及び溶液の配合量を調整した。
得られた混合樹脂溶液を、コーターを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に塗工して乾燥させた後、180℃の温度下で1時間熱処理して硬化させ、厚さ3.0μmの樹脂フィルムを作製した。
【0109】
[金属層の形成]
樹脂フィルムの表面に金属層となるアルミニウムを厚さ20nmとなるように蒸着し、PET基材から剥離させることにより、樹脂フィルムの片面に金属層が形成された金属化フィルムを得た。
【0110】
[コンデンサ素子の作製]
金属化フィルムを所望の位置において25mm幅でスリットした後、互い違いに1mmのずらし幅を設けて2枚重ねて巻回することで、円筒状の巻回体を得た。円筒状の巻回体をプレス加工することにより、扁平形状に加工した。その後、巻回体の両端面に亜鉛溶射で1mmの厚さになるように外部電極を形成した。
【0111】
[コンデンサ試料の作製]
コンデンサ素子の外部電極に直径1.2mmのリード線をはんだ付けした後、表1に示す樹脂材料及び組成を有する樹脂組成物からなる厚さ0.5mmの外装樹脂ケースに入れ、エポキシ樹脂を充填した。これにより、コンデンサ試料(フィルムコンデンサ)を作製した。
【0112】
表1に示す無機充填材として、直径10μm、長さ300μmのガラスフィラーを用いた。
【0113】
図7(a)及び
図7(b)は、コンデンサ試料の寸法を示す断面図であり、
図8(a)及び
図8(b)は、コンデンサ試料の寸法を示す外観図である。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、外装樹脂ケースの内面には、樹脂注型時におけるコンデンサ素子の位置精度を向上させるためのリブを設けた。
また、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、外装樹脂ケースの開口面には、フィルムコンデンサを基板実装した際にコンデンサと基板との間が密閉して内圧が上昇することを防ぐための凹部(厚さ1mm)を設けた。
【0114】
[比重の測定]
ASTM-D792に基づき、上述した方法により外装樹脂ケースの比重を測定した。結果を表1に示す。
【0115】
[曲げ強さの測定]
ISO 178に基づき、上述した方法により外装樹脂ケースの曲げ強さを測定した。結果を表1に示す。
【0116】
[引張強さの測定]
ASTM-D638に基づき、上述した方法により外装樹脂ケースの引張強さを測定した。結果を表1に示す。
【0117】
[耐湿性の評価]
作製したコンデンサ試料について、85℃85%RH雰囲気下でDC500Vを1000時間印加することで、耐湿性を評価した。静電容量の低下率が初期値に対して5%以内であるものを○(良)、5%を上回ったものを×(不良)と評価した。結果を表1に示す。
【0118】
[ケース変形の評価]
作製したコンデンサ試料に対して、+125℃への加熱と-40℃への冷却を繰り返す温度サイクル試験を実施した。各温度での保持時間は30分間とした。
図7(b)及び
図8(b)に示すT方向における外装樹脂ケースの寸法について、試験前の試料に対する1000サイクル後の試料の変化量に応じて、以下のように評価した。結果を表1に示す。
◎(優):変化量≦0.5mm
○(良):0.5mm<変化量≦1.0mm
△(可):1.0mm<変化量≦1.3mm
×(不良):1.3mm<変化量
【0119】
【0120】
表1において、試料番号に*を付したものは、本発明の範囲外の比較例である。
【0121】
表1に示すように、外装樹脂ケースの樹脂材料がPPSである試料9及び10では、無機充填材の有無に関わらず、耐湿性の結果は×であった。
【0122】
これに対し、外装樹脂ケースの樹脂材料がLCPである試料1~8では、耐湿性の結果は〇であった。ただし、無機充填材が含まれていない試料1では、ケース変形の結果が×であった。
【0123】
一方、外装樹脂ケースの樹脂材料がLCPであり、かつ、無機充填材が含まれる試料2~8では、外装樹脂ケースの寸法の変化量が小さかった。ケース変形を抑制する観点からは、無機充填材の含有量が5重量%以上であることが望ましく、15重量%以上であることがより望ましいと考えられる。
【0124】
なお、無機充填材の含有量が60重量%より多いと、ケース成形時の流動性悪化や成形機ユニットの摩耗が生じるおそれがある。
【0125】
上記の実施例では、樹脂フィルムの厚さが3.0μmであるが、樹脂フィルムの厚さが2.0μm、2.5μm、3.6μmである場合も同様の効果が得られることが確認できた。
【符号の説明】
【0126】
1 フィルムコンデンサ
10 コンデンサ素子
11 第1の金属化フィルム
12 第2の金属化フィルム
13 第1の樹脂フィルム
14 第2の樹脂フィルム
15 第1の金属層
16 第2の金属層
20 外装ケース
21 第1の側壁
22 第2の側壁
23 第3の側壁
24 第4の側壁
25 凹部
26 テーパー部
30 充填樹脂
40,40a 金属化フィルムの巻回体
41 第1の外部電極
42 第2の外部電極
51 第1のリード端子
52 第2のリード端子
60 第1のリブ
70 第2のリブ