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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】緑化方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 20/00 20180101AFI20220414BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20220414BHJP
   A01G 24/10 20180101ALI20220414BHJP
   A01G 24/42 20180101ALI20220414BHJP
【FI】
A01G20/00
C09K17/06 H
A01G24/10
A01G24/42
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021155431
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2021-10-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506394924
【氏名又は名称】株式会社グリーンプロデュース
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(73)【特許権者】
【識別番号】521419008
【氏名又は名称】トヤマ商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521419019
【氏名又は名称】有限会社八尾興業
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】大出 真隆
(72)【発明者】
【氏名】袋布 昌幹
(72)【発明者】
【氏名】森実 智洋
(72)【発明者】
【氏名】中川 武秀
【審査官】佐藤 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-070022(JP,A)
【文献】特開2002-105963(JP,A)
【文献】特開2005-272510(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112024587(CN,A)
【文献】クラピア,2019年
【文献】クラピア Q&A,2021年12月13日,https://web.archive.org/web/20170811231224/http://www.idemitsu-tm.jp/kurapia/qa.html,2017年8月11日アーカイブ
【文献】あも青(暖地/シーショアパスパラム),2020年10月19日,https://www.kofu-field.com/archives/2748
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 20/00
C09K 17/00-17/18
A01G 24/00-24/60
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌に石膏と、消石灰であるアルカリ資材からなる土壌改良剤を添加し、
アルカリ耐性を有する緑化植物を、前記土壌改良剤を添加した、pHが11.0~12.2である前記土壌に植え付ける、
緑化方法。
【請求項2】
前記緑化植物はイワダレソウであり、
前記石膏と前記消石灰は合計して、前記土壌に対して20重量%であり、
前記消石灰の配合量は、前記石膏に対して20~30重量%であることを特徴とする、
請求項に記載の緑化方法。
【請求項3】
消石灰を含む焼却灰を前記アルカリ資材として利用することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の緑化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、のり面等に植物を植えて緑化するための緑化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路や鉄道の用地等において、のり面の景観の向上等を目的として、土壌に石膏等の改良資材を添加し、イワダレソウや芝等の緑化植物により被覆して緑化を行うことが広く行われている。
緑化工法としては、例えば特許文献1に記載の「クラピアカット苗吹付緑化工法」が知られている。クラピアは、日本原産のイワダレソウの改良品種であり、芝の約10倍の成長速度で葉が密生して生育するため、早期に地表面を緻密に被覆して緑地を形成し、雑草種子の活着を妨げる雑草抑制機能を有している。
【0003】
また、建設業界においては現在、多量の廃石膏ボードが建設資材の廃材として排出されており、さらに今後の排出量の大幅な増加が見込まれている。
廃石膏ボードのリサイクルとしては、特許文献2、3のように廃石膏ボードから回収された石膏を軟弱地盤の固化材として再利用することが研究されている。
しかし、今後の排出量の増加の見込から、再利用の範囲を拡大することは課題であり、緑化における土壌改良材として石膏を再利用することはその課題を解決することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5222259号明細書
【文献】特許第5584915号明細書
【文献】特許第5582356号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実際に、土壌に改良資材として石膏を添加すると、緑化植物が繁茂しやすくなる一方、雑草も繁茂しやすくなってしまう。
このため、緑化植物による被覆が行われるまでは、繁茂した雑草を定期的に除去する必要がある。
【0006】
本発明は、土壌を雑草が繁茂しにくいように改良するとともに、改良土壌に適した緑化植物を用いることで、雑草の繁茂を抑制しながら緑化を行うことができる緑化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本願発明は、土壌に石膏と、消石灰であるアルカリ資材からなる土壌改良剤を添加し、アルカリ耐性を有する緑化植物を、前記土壌改良剤を添加した、pHが11.0~12.2である前記土壌に植え付ける、緑化方法を提供する
記緑化植物はイワダレソウであり、前記石膏と前記消石灰は合計して、前記土壌に対して20重量%であり、前記消石灰の配合量は、前記石膏に対して20~30重量%であってもよい
石灰を含む焼却灰を前記アルカリ資材として利用してもよい
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果を得ることができる。
(1)石膏を添加して緑化植物の繁茂を促進するとともに、アルカリ資材を添加することで土壌をアルカリ性にし、雑草の繁茂を抑制することができる。
(2)建築資材の廃材である廃石膏ボードから回収した石膏を再利用でき、廃石膏ボードの再利用の範囲を拡大することができる。
(3)消石灰を用いることで、消石灰を含む焼却灰のリサイクルが促進される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】「土壌改良資材なし(資材なし)」「石膏のみ混合」「消石灰のみ混合」の3パターンについて雑草の繁茂量を調べた結果写真
図2】「土壌改良資材なし(資材なし)」「石膏のみ混合」「消石灰のみ混合」の3パターンについてクラピアの繁茂量を調べた結果写真
図3】石膏に対する消石灰の配合量(重量%)を変化させた場合の雑草とクラピアの繁茂量を調べた結果写真
図4図3の実験後に、雑草の抜き取りを行ったときの抜き取り前後の比較写真
図5】石膏に消石灰を配合したときの雑草量、クラピアの繁茂量、地盤のpH値のグラフ
図6】「土壌改良資材なし(資材なし)」「石膏のみ混合」「消石灰のみ混合」の3パターンについて雑草の繁茂量を調べた結果写真
図7】「土壌改良資材なし(資材なし)」「石膏のみ混合」「消石灰のみ混合」の3パターンについてバミューダ芝の繁茂量を調べた結果写真
図8】石膏に対する消石灰の配合量(重量%)を変化してバミューダ芝を生育し、その後雑草の抜き取りを行ったときの抜き取り前後の比較写真
図9】抜き取った雑草量とバミューダ芝の繁茂率のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
[実施例]
(1)土壌改良資材
本発明の土壌改良資材は、石膏とアルカリ資材を混合したものであり、土壌に添加剤として添加する。
石膏は市販されているもののほか、建築資材の廃材である廃石膏ボードから回収したものを再利用できる。
石膏を添加した土壌は緑化植物の繁茂を促進させるが、雑草も繁茂してしまう。このため、雑草の繁茂を抑制するためにアルカリ資材を添加し、土壌をアルカリ性にする。土壌がアルカリ性のため、一般的な雑草はアルカリ耐性がなく、繁茂が抑制される。
アルカリ資材としては消石灰が好適である。焼却灰もリサイクルの促進が求められるところ、焼却灰には消石灰が含まれているため、焼却灰をアルカリ資材として用いることで焼却灰のリサイクルが促進される
【0012】
(2)緑化植物
本発明の土壌改良資材はアルカリ資材の添加によりアルカリ性となるため、緑化植物はアルカリ耐性があるものとする。
アルカリ耐性を有する緑化植物としては、イワダレソウや暖地型芝(野芝、高麗芝、バミューダ芝、シーショアパスパラム芝、セントオーガスティン芝、キクユー芝など)がある。
緑化植物により緑化したい箇所が被覆されれば、その後は緑化植物により雑草の生育は阻害される。
【0013】
(3)緑化方法
次に、実験結果を元に、本発明の緑化方法及び土壌改良資材について説明する。
【0014】
(3.1)イワダレソウ繁茂実験
(a)実験概要
実験はそれぞれ1m×1mの区画に、イワダレソウの一種であるクラピアの苗を5つ植え付けて行った。
土壌改良資材としては、石膏(吉野石膏製「カルゲン」)、消石灰(通常の肥料用化成品)を種々の配合比により土壌に対して20重量%となるように混合し、表層5cm厚に敷き詰めた。
実験場所:栃木県小山市
【0015】
(b)参考データ:石膏、消石灰の効果
図1は、「土壌改良資材なし(資材なし)」「石膏のみ混合」「消石灰のみ混合」の3パターンについて雑草の繁茂量を調べた結果写真であり、図2は同じパターンでクラピアの繁茂量を調べた結果写真である。
図1、2から以下のことがわかる。
・石膏は雑草、クラピアのどちらにも繁茂促進効果がある
・消石灰は雑草、クラピアのどちらにも繁茂抑制効果がある
・石膏のみの場合、石膏により雑草が繁茂し、繁茂した雑草によりクラピアの繁茂は抑制される。
【0016】
(c)石膏と消石灰の混合
図3は、石膏に対する消石灰の配合量(重量%)を変化させた場合の雑草とクラピアの繁茂量を調べた結果写真である。
図4は、図3の実験後(7月20日)に、雑草の抜き取りを行ったときの抜き取り前後の比較写真である。
図3、4から以下のことがわかる。
・消石灰の配合量が少なければ、石膏により雑草が繁茂し、繁茂した雑草によりクラピアの繁茂は抑制される。
・適切な消石灰量であれば、雑草の繁茂を抑制しつつ、クラピアの繁茂を維持することで、クラピアによる被覆緑化がされる。
・消石灰の配合量が多ければ、消石灰によりクラピアの繁茂が抑制される。
・最適な消石灰の配合量は、石膏に対して20~30重量%である。
【0017】
(d)地盤のpH値
図5は、石膏に消石灰を配合したときの雑草量、クラピアの繁茂量、地盤のpH値のグラフである。
図5からは、地盤のpHが11.0~12.21のときに、雑草の繁茂を抑制しつつ、クラピアの繁茂を維持することができることがわかる。
【0018】
(3.2)暖地型芝繁茂実験
(a)実験概要
実験はそれぞれ1m×1mの区画に、暖地型芝の一種であるバミューダ芝を植え付けて行った。
土壌改良資材としては、石膏(吉野石膏製「カルゲン」)、消石灰(通常の肥料用化成品)を種々の配合比により土壌に対して20重量%となるように混合し、表層5cm厚に敷き詰めた。
実験場所:栃木県小山市
【0019】
(b)参考データ:石膏、消石灰の効果
図6は、「土壌改良資材なし(資材なし)」「石膏のみ混合」「消石灰のみ混合」の3パターンについて雑草の繁茂量を調べた結果写真であり、図7は同じパターンでバミューダ芝の繁茂量を調べた結果写真である。
図6、7から以下のことがわかる。
・石膏は雑草、バミューダ芝のどちらにも繁茂促進効果がある
・消石灰は雑草、バミューダ芝のどちらにも繁茂抑制効果がある
【0020】
(c)石膏と消石灰の混合
図8は、石膏に対する消石灰の配合量(重量%)を変化してバミューダ芝を生育し、その後雑草の抜き取りを行ったときの抜き取り前後の比較写真である。また、図9は抜き取った雑草量とバミューダ芝の繁茂率のグラフである。
図8、9から以下のことがわかる。
・消石灰の配合量が少なければ、石膏により雑草が繁茂し、繁茂した雑草によりバミューダ芝の繁茂は抑制される。
・適切な消石灰量であれば、雑草の繁茂を抑制しつつ、バミューダ芝の繁茂を維持することで、バミューダ芝による被覆緑化がされる。
・消石灰の配合量が多ければ、消石灰によりバミューダ芝の繁茂が抑制される。
・最適な消石灰の配合量は、石膏に対して10~20重量%である。
【要約】
【課題】土壌を雑草が繁茂しにくいように改良するとともに、改良土壌に適した緑化植物を用いることで、雑草の繁茂を抑制しながら緑化を行うことができる緑化方法を提供する。
【解決手段】土壌に石膏とアルカリ資材からなる土壌改良剤を添加し、アルカリ耐性を有する緑化植物を、前記土壌改良剤を添加した前記土壌に植え付ける、緑化方法。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9