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特許7057933電力変換器の運転制御装置および運転制御方法
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  • 特許-電力変換器の運転制御装置および運転制御方法 図1
  • 特許-電力変換器の運転制御装置および運転制御方法 図2
  • 特許-電力変換器の運転制御装置および運転制御方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】電力変換器の運転制御装置および運転制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20220414BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/46
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017218629
(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公開番号】P2019080485
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】沼田 一男
(72)【発明者】
【氏名】槻谷 泰彦
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-244852(JP,A)
【文献】特開2016-226120(JP,A)
【文献】特開2005-117809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を出力する分散電源の出力を交流電力へ変換し任意に設定した電力を出力する複数の電力変換器と、
前記複数の電力変換器と並列に接続され負荷へ電力を供給する系統電源と、
前記系統電源および前記複数の電力変換器の出力電力値を個々に把握する電力値把握手段と、
前記電力値把握手段により前記負荷へ供給する電力を測定し、前記分散電源から前記負荷へ供給する電力が最大になるよう、前記複数の電力変換器のうち1台を定格運転させ前記負荷へ供給する電力前記定格運転した電力変換器の出力電力で割り、小数点以下を切り上げた値を必要な電力変換器の運転台数とし、前記必要な電力変換器の運転台数分の電力変換器を運転させ、前記負荷へ供給する電力と前記1台の定格運転した電力変換器の出力電力との差を案分して残りの運転している電力変換器に対して出力電力値を与える制御手段と、を備える電力変換器の運転制御装置。
【請求項3】
直流電力を出力する分散電源の出力を交流電力へ変換し任意に設定した電力を出力する複数の電力変換器と、
前記複数の電力変換器と並列に接続され負荷へ電力を供給する系統電源と、
前記系統電源および前記複数の電力変換器の出力電力値を個々に把握する電力値把握手段と、
前記電力値把握手段により前記負荷へ供給する電力を測定し、前記分散電源から前記負荷へ供給する電力が最大になるよう、前記複数の電力変換器のうち1台を定格運転させ前記負荷へ供給する電力と前記定格運転した電力変換器の出力電力で割り、小数点以下を切り上げた値を必要な電力変換器の運転台数とし、前記必要な電力変換器の運転台数分の電力変換器を運転させ、前記負荷へ供給する電力と前記1台の定格運転した電力変換器の出力電力との差を案分して残りの運転している電力変換器に対して出力電力値を与える制御ステップを有する電力変換器の運転制御方法。
【請求項4】
前記制御ステップは、前記系統電源の前記電力値把握手段が前記負荷側から前記系統電源側へ流れる電力を把握したとき、前記求められた必要な電力変換器の運転台数を1台減らし、前記定格運転した電力変換器以外で運転している電力変換器を1台停止させる、請求項3に記載の電力変換器の運転制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換器の運転制御装置および運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システム(photovoltaic(PV)system)や風力発電システムなどの再生可能エネルギーを利用した分散電源で発電した電力を自家設備への供給電力として利用することが行われている。このとき、分散電源の出力電力は天候等の環境の影響に左右され、安定した電力供給が望めないことから系統電源を併用するのが一般的である。
【0003】
分散電源が出力する直流電力を交流電力へと変換するために、電力変換器(パワーコンディショナ(PCS))が用いられ、比較的規模が大きくなると複数の分散電源とそれに対応する複数のPCSで構成され、これら複数のPCSと系統電源とを並列に接続し自家設備の負荷へ電力供給するシステムが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-226120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術によれば、系統電源と複数の分散電源、PCSを使って負荷へ電力を供給するシステムにおいて、PCSが定格運転のみ可能な種類の機器の場合、負荷の変動に応じた電力を供給するといった木目細かな制御が出来ないという問題がある。すなわち、PCSが定格運転のみの場合はONまたはOFF(100%出力または0%出力)の運転になるため、PCS1台分の定格未満の電力については供給することができない。
【0006】
また、PCSが0~100%まで出力電力が可変な出力抑制機能を持つ種類の機器の場合、PCSは応答速度が遅いという特徴を持っているため、急激な負荷変動や天候の変動が発生して供給過多の状態になると、分散電源で発電した電力が系統電源へ供給されてしまう逆潮流という現象が発生してしまう恐れがあるという問題がある。逆潮流は、電力品質の悪化をもたらし、同じ系統電源に接続された他需要家へ悪影響を及ぼすため回避しなければならない。さらに、PCSの機種によっては、逆潮流が発生するとインターロック機能によりPCSを強制停止させることにより、逆潮流の状態を最小限に止めていた。そのようにPCSを強制停止した場合、手動による復帰操作を伴うため、操作員の負担が大きいものとなっていた。
【0007】
本実施形態は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本実施形態の目的は、負荷変動に追従し、かつ逆潮流を回避する電力変換器の運転制御装置および運転制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の電力変換器の運転制御装置は、次のような構成を有することを特徴とする。
(1)直流電力を出力する分散電源の出力を交流電力へ変換し任意に設定した電力を出力する複数の電力変換器。
(2)前記複数の電力変換器と並列に接続され負荷へ電力を供給する系統電源。
(3)前記系統電源および前記複数の電力変換器の出力電力値を個々に把握する電力値把握手段。
(4)前記電力値把握手段により前記負荷へ供給する電力を測定し、前記分散電源から前記負荷へ供給する電力が最大になるよう、前記複数の電力変換器のうち1台を定格運転させ前記負荷へ供給する電力前記定格運転した電力変換器の出力電力で割り、小数点以下を切り上げた値を必要な電力変換器の運転台数とし、前記必要な電力変換器の運転台数分の電力変換器を運転させ、前記負荷へ供給する電力と前記1台の定格運転した電力変換器の出力電力との差を案分して残りの運転している電力変換器に対して出力電力値を与える制御手段。
【0009】
以下のような実施形態も、本発明の一態様である。
(1)前記制御手段は、前記系統電源の前記電力値把握手段が前記負荷側から前記系統電源側へ流れる電力を把握したとき、前記求められた必要な電力変換器の運転台数を1台減らし、前記定格運転した電力変換器以外で運転している電力変換器を1台停止させる
【0010】
また、本発明の実施形態は、電力変換器の運転制御方法の態様も包含する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態を示すシステム構成図。
図2】本発明の第1の実施形態のPCSの台数制御を示すフローチャート図。
図3】本発明の第2の実施形態のPCSの台数制御を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態の構成)
以下、本発明に係る第1の実施形態の構成について図1を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示すシステム構成図である。負荷1に電力を供給するため、その供給源として、系統電源2と、系統電源2に並列に接続された複数の分散電源3から構成されている。分散電源3は、本実施形態では太陽電池3a~3eを用いているがこれに限られるものでは無く、風力発電等の再生可能エネルギーを利用して直流電力を発電する装置であれば良い。また太陽電池3a~3eの台数についても本実施形態では5台で構成しているが、例示であることは言うまでもない。
【0013】
複数の太陽電池3a~3eのそれぞれに対応する形で、電力変換器4(PCS4(全台を指す)、PCS4a~4e)が接続され、太陽電池3a~3eが発電した直流電力を交流電力へ変換し、系統電源2と並列に接続され負荷1へ電力を供給する。ここで、電力変換器4は、遠隔で運転/停止をすることができ、0~100%まで出力電力が可変な出力抑制機能を持つ種類の機器を用いている。
【0014】
系統電源2およびPCS4a~4eの出力側に電力センサ5(電力値把握手段)を備え、負荷へ供給する電力を測定する。ここで、本実施形態ではPCS4の出力電力を電力センサで検出しているが、電力値把握手段としてはPCS4本体から出力電圧を直接検出するようにしても良い。
【0015】
電力センサ5で検出した電力値を制御装置6(制御手段)へ取り込み、そして制御手段6はPCS4a~4eに対して運転台数を算出し、運転/停止指令を与える。制御手段6は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)を使うことによって実現することができ、電力センサ5やPCS4a~4eとの信号のやり取りは、DC4~20mA電流信号によるものやRS-485などのシリアルインターフェースなどが使用できる。
【0016】
(第1の実施形態の作用、効果)
次に、本発明に係る第1の実施形態のPCS4の台数制御について図2のフローチャートを使って説明する。フローチャートに示す演算や指令等は、制御手段6に例えばプログラムを構築することで実現できる。ここで、PCS4の台数制御を行う目的は、分散電源3である太陽電池3a~3eから負荷1へ供給する電力が最大になるようにするためである。つまり、系統電源2から負荷1への供給電力を最小にすることである。
【0017】
図2のステップS1で代表PCSの出力を100%に設定する(定格運転)。代表PCSとは、PCS4a~4eのうちのいずれかのPCSを固定しても良いし、任意のタイミングでどのPCSが代表PCSとなるか切り替えても良い。代表PCSに対して100%出力の指令を与え、発電電力を電力センサ5で計測し(X)、制御手段6に入力する。ここで、発電電力は発電源が太陽電池3a~3eであるため、代表PCSに対して100%出力の指令を与えたとしても天候や時間帯により発電電力は一定に定まるものではない。また、最大の発電電力を得るためにPCS4内でMPPT制御(Maximum Power Point Tracking)を実行するようにしても良い。
【0018】
ステップS2で、代表PCS以外のその他のPCSについて発電電力を電力センサ5で計測し(Pi)、制御手段6に入力する。
【0019】
ステップS3で、分散電源3で発電された電力の総和を、式、
(Y)=(X)+Σ(Pi) ・・・(1)
で求める。ここで、(Y)は分散電源3の発電電力総和で、(X)は代表PCSの発電電力、(Pi)は代表PCS以外のその他PCSの個々の発電電力を意味し、Σ(Pi)はその他PCSの個々の発電電力の和である。
【0020】
ステップS4で、系統電源2から負荷1への電力(CT)を計測する。
【0021】
ステップS5で、負荷1が消費する電力を、式、
(A)=(Y)+(CT) ・・・(2)
で求める。ここで、(A)は負荷1の消費電力である。
【0022】
次に、ステップS6で、PCS4の運転台数(B)を、式、
(B)=(A)/(X)(小数点以下は切り上げ) ・・・(3)
で求める。負荷1の消費電力(A)を代表PCSの発電電力(X)で割ることで、負荷1の消費電力を満足するためのPCS台数を求めることができ、商の小数点以下を切り上げることで1台(正確に言うと1台未満)多いPCS台数を求めていることになる。もちろん、PCS4の台数は設置数による制限があるため、PCS4が全台100%で運転しても負荷1の消費電力を賄うことができない場合は、系統電源2から足りない電力を供給することになる。
【0023】
ステップS7で、ステップS6で求めた台数分、PCS4を運転させる。このとき、運転するPCS4a~4eは、例えば運転回数の少ないPCSから優先して運転するようにすると、PCSの起動回数が平準化され寿命が平均化するという効果が得られる。また、運転回数の代わりに運転時間を指標として用いれば同様の効果が得られる。また、逆に運転回数の多い方または運転時間の長い方から運転するようにすれば寿命が順番に訪れることになるので、PCSの寿命による交換やメンテナンスを平準化できるという効果を得られる。当然ながらPCSを停止する場合も同様で、運転回数の多い方または運転時間の短い方から停止するようにすれば同様の効果が得られることになる。なお、PCS4の運転回数や運転時間は制御手段6でそれぞれカウント数を積算することにより実現できる。
【0024】
ステップS8で、その他PCSの出力設定値を、式、
(C)=[(A)-(X)]/[(B)-1] ・・・(4)
で求め、その他PCSに対して出力設定値を与える。なお、分子の“-(X)”と分母の“-1”は代表PCSの分を除いているためである。このようにすると、式(3)で求めたPCS4の運転台数は1台多いものとなっていたが、出力設定値(C)をその他PCSに案分して与えることにより、負荷1の消費電力に相当する電力を供給できることになる。また、その他PCSは100%運転をしていないことになり余力があるため、多少の負荷変動や天候変化による発電変動についても追従できるという効果がある。
【0025】
ステップS1へ戻り、繰り返しステップS1~S8を実行することで、負荷1の消費電力および分散電力3の発電電力に応じてPCS4の運転台数を定め、分散電力3から負荷1への供給電力が最大になるような制御を行うことができる。
【0026】
(第2の実施形態)
以下、本発明に係る第2の実施形態について説明する。構成は第1の実施形態と同じなため説明は省略し、作用、効果について図3を参照して説明する。
【0027】
図3は、本発明に係る第2の実施形態のPCS4の台数制御を示すフローチャートである。特に、系統電源2への逆潮流が発生した場合のPCS4の台数制御を示すもので、図2のステップS6とステップS7の間にステップP1とステップP2を追加したものであり、この差異について説明する。
【0028】
系統電源2への逆潮流の検出は、系統電源2から負荷1への供給電力を測定する電力センサ5がマイナス値を示したことをもって検出する(ステップP1)。
【0029】
逆潮流を検出すると、ステップP2でPCS4の運転台数を1台減らす演算をするため、逆潮流を解消することができる。すなわち、もともとステップS6で小数点を切り上げてPCS4の運転台数を算出しているので、この小数点以下に相当する分だけ電力が減ることになり、結果的に逆潮流を解消することに繋がる。なお、これも制御手段6で実現できるが、実現手段であるPLCは制御周期が非常に高速であるため、逆潮流を検出してから500msec以内で解消することができる。これにより、逆潮流による電力品質の悪化や同じ系統電源2に接続された他需要家へ悪影響を回避することができるという効果がある。
【0030】
ステップP2ではPCS4の運転台数を1台減らす演算としていたが、逆潮流電力の大きさに応じてPCS4の運転台数を減らす数を1台より多くするようにしても良い。
【0031】
PCSの機種によっては、逆潮流が発生するとインターロック機能によりPCSを強制停止させていたため、その場合は手動による復帰操作が伴い操作員の負担が大きいものとなっていたが、本実施形態によれば通常停止で対応できるため、操作員の手動による復帰操作が不要になり、操作員の負担を軽減することができる。
【0032】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1・・・負荷
2・・・系統電源
3、3a~3e・・・分散電源(太陽電池)
4、4a~4e・・・電力変換器(PCS)
5・・・電力センサ
6・・・制御装置
図1
図2
図3