(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】ローヤルゼリー素材の製造方法、ローヤルゼリー素材、ローヤルゼリー含有飲食品、及びローヤルゼリー含有化粧料
(51)【国際特許分類】
A23L 21/20 20160101AFI20220414BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20220414BHJP
A61K 8/9728 20170101ALI20220414BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
A23L21/20
A61K8/98
A61K8/9728
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018071633
(22)【出願日】2018-04-03
(62)【分割の表示】P 2017243972の分割
【原出願日】2017-12-20
【審査請求日】2020-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2016254419
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591045471
【氏名又は名称】アピ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391016842
【氏名又は名称】岐阜県
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秦 健敏
(72)【発明者】
【氏名】市原 賢二
(72)【発明者】
【氏名】吉村 明浩
(72)【発明者】
【氏名】澤井 美伯
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-219434(JP,A)
【文献】特開2006-280249(JP,A)
【文献】特開2008-194031(JP,A)
【文献】特開平06-276996(JP,A)
【文献】特開2008-295307(JP,A)
【文献】特開平09-084556(JP,A)
【文献】特開2011-152103(JP,A)
【文献】特開平04-316458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローヤルゼリーを酵母発酵処理した後、
使用した酵母を除去せずに乾燥助剤とともに乾燥して、褐変の抑制された乾燥固形状物を得るローヤルゼリー素材の製造方法。
【請求項2】
ローヤルゼリーを酵母発酵処理した後、
使用した酵母を除去せずに乾燥助剤とともに乾燥して、凝集の抑制された乾燥固形状物を得るローヤルゼリー素材の製造方法。
【請求項3】
ローヤルゼリーの酵母発酵物であって、ローヤルゼリー由来のグルコース及びフルクトースからなる糖質の合計含有量が乾燥固形分換算で10質量%以下とされている該ローヤルゼリーの酵母発酵物
、使用した酵母、及び乾燥助剤を含み、乾燥固形状であることを特徴とするローヤルゼリー素材。
【請求項4】
前記乾燥助剤が、該乾燥助剤によって褐変が抑制される有効量で含まれる、請求項
3記載のローヤルゼリー素材。
【請求項5】
前記乾燥助剤が、デンプン、デキストリン、食物繊維、及びタンパク質からなる群から選ばれた1種又は2種以上の食用素材である、請求項
3又は
4記載のローヤルゼリー素材。
【請求項6】
ローヤルゼリーの酵母発酵物
であって使用した酵母を除去しない該発酵物に、乾燥助剤を、該乾燥助剤によって褐変が抑制される有効量で添加して、乾燥固形状にすることを特徴とするローヤルゼリー素材の褐変抑制方法。
【請求項7】
前記乾燥助剤が、デンプン、デキストリン、食物繊維、及びタンパク質からなる群から選ばれた1種又は2種以上の食用素材である、請求項
6記載のローヤルゼリー素材の褐変抑制方法。
【請求項8】
請求項3~
5のいずれか1項に記載のローヤルゼリー素材を含有するローヤルゼリー含有飲食品。
【請求項9】
請求項3~
5のいずれか1項に記載のローヤルゼリー素材を含有するローヤルゼリー含有化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローヤルゼリーを酵母発酵処理してなるローヤルゼリー素材、そのローヤルゼリー素材を利用した飲食品、及びそのローヤルゼリー素材を利用した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ローヤルゼリーは、羽化後3~15日の雌のミツバチが下咽頭腺及び大腮腺から分泌する分泌物を混合して作るクリーム状の物質で、特有のタンパク質、脂肪酸、ミネラル等を含有し、血圧降下作用、抗腫瘍作用、創傷治癒促進、抗菌作用等の種々の機能性を有することが報告されている。したがって、従来、ローヤルゼリーは、栄養価の高い健康食品のみならず、医薬品、化粧品等の用途にも用いられてきた。
【0003】
しかしながら、ローヤルゼリーは、保存安定性が悪く、経時的に外観が変色するという問題があった。そこで、例えば、特許文献1には、ローヤルゼリーと、デンプン及びデキストロース当量が18以下のデキストリンから選ばれる少なくとも一種とを、溶媒に溶解した後、凍結乾燥することにより得られるローヤルゼリー含有組成物が開示され、そのように構成した組成物においては、経時的な外観の変色が抑制されることが記載されている。
【0004】
一方、ローヤルゼリーの機能性をより優れたものとするために様々な処理が行われている。一例を挙げれば、例えば、特許文献2には、ローヤルゼリーを微生物で発酵させて得られる発酵物が開示され、かかる発酵物が、発酵前のローヤルゼリーよりも強い線維芽細胞賦活作用と細胞内チロシナーゼ活性抑制作用とを有しており、保存安定性にも優れ、化粧料への配合素材として好適であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-152103号公報
【文献】特開2006-219434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された方法によるデンプン等の添加だけでは変色抑制効果が十分ではなかった。また、変色抑制効果を得るための相当量でデンプン等を添加する必要があるので、得られる素材の全体中に含まれるローヤルゼリー成分の割合が目減りしてしまうという問題があった。一方、特許文献2には、ローヤルゼリーの乳酸菌発酵液について、それが沈殿・濁り、変色・着色などの保存安定性に優れていることが記載されているが、錠剤等の固形状の形態に調製されたときも同様の効果が認められるかどうか、明らかではなく、また、微生物として酵母を用いたときにも同様の効果が認められるか、明らかではなかった。
【0007】
よって、本発明の目的は、ローヤルゼリーの有用成分の目減りを最小限に抑えつつ、経時的な外観の変色を抑制することができるローヤルゼリー素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者らが鋭意研究した結果、ローヤルゼリーを酵母発酵処理することにより、ローヤルゼリー製品の品質の1つの指標物質として知られるデセン酸の含有量を目減りさせることなく、ローヤルゼリー含有の糖分を顕著に減量させることができ、かかるローヤルゼリー素材は、経時的な外観の変色も抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1は、ローヤルゼリーを酵母発酵処理した後、乾燥して、褐変の抑制された乾燥固形状物を得るローヤルゼリー素材の製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明の第2は、ローヤルゼリーを酵母発酵処理した後、乾燥して、凝集の抑制された乾燥固形状物を得るローヤルゼリー素材の製造方法を提供するものである。
【0011】
一方、本発明の第3は、ローヤルゼリーの酵母発酵物であって、ローヤルゼリー由来のグルコース及びフルクトースからなる糖質の合計含有量が乾燥固形分換算で10質量%以下とされている該ローヤルゼリーの酵母発酵物を含み、乾燥固形状であることを特徴とするローヤルゼリー素材を提供するものである。
【0012】
上記の乾燥固形状であるローヤルゼリー素材においては、更に、乾燥助剤を含むことが好ましい。
【0013】
また、上記の乾燥固形状であるローヤルゼリー素材においては、前記乾燥助剤が、該乾燥助剤によって褐変が抑制される有効量で含まれることが好ましい。
【0014】
また、上記の乾燥固形状であるローヤルゼリー素材においては、前記乾燥助剤が、デンプン 、デキストリン、食物繊維、及びタンパク質からなる群から選ばれた1種又は2種以上の食用素材であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の第4は、ローヤルゼリーの酵母発酵物に、乾燥助剤を、該乾燥助剤によって褐変が抑制される有効量で添加して、乾燥固形状にすることを特徴とするローヤルゼリー素材の褐変抑制方法を提供するものである。
【0016】
上記褐変抑制方法においては、前記乾燥助剤が、デンプン、デキストリン、食物繊維、及びタンパク質からなる群から選ばれた1種又は2種以上の食用素材であることが好ましい。
【0017】
更に、本発明の第5は、上記の乾燥固形状であるローヤルゼリー素材を含有するローヤルゼリー含有飲食品を提供するものである。
【0018】
更に、本発明の第6は、上記の乾燥固形状であるローヤルゼリー素材を含有するローヤルゼリー含有化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ローヤルゼリーを酵母発酵処理することにより、ローヤルゼリー製品の品質の1つの指標物質として知られるデセン酸の含有量を目減りさせることなく、ローヤルゼリー含有の糖分を顕著に減量させることができ、これにより経時的な外観の変色が抑制されたローヤルゼリー素材を提供することができる。更に、かかるローヤルゼリー素材は、これを乾燥固形状にしたときの凝集も抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】試験例2において、各種ローヤルゼリー素材を使用した錠剤について、錠剤中の糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)、錠剤中の10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10HDA)の含有量、及び錠剤を所定環境下に保管したときの褐変について調べた結果を示す図表である。
【
図2】試験例3において、各種ローヤルゼリー素材からなる粉末について、40℃、湿度75%の環境下での加速試験を行って、その際の粉末中の10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10HDA)の安定性を調べた結果を示す図表である。
【
図3】試験例7において、各種乾燥助剤を使用して調製された粉末状のローヤルゼリー素材について、50℃での過酷試験を行って、その際の粉末の色調の変化を調べた結果を写真により示す図表であり、サンプルA0~A8についての結果を示す図表である。
【
図4】試験例7において、各種乾燥助剤を使用して調製された粉末状のローヤルゼリー素材について、50℃での過酷試験を行って、その際の粉末の色調の変化を調べた結果を写真により示す図表であり、サンプルA9~A16についての結果を示す図表である。
【
図5】試験例7において、各種乾燥助剤を使用して調製された粉末状のローヤルゼリー素材について、50℃での過酷試験を行って、その際の粉末の色調の変化を調べた結果を写真により示す図表であり、サンプルB0~B8についての結果を示す図表である。
【
図6】試験例7において、各種乾燥助剤を使用して調製された粉末状のローヤルゼリー素材について、50℃での過酷試験を行って、その際の粉末の色調の変化を調べた結果を写真により示す図表であり、サンプルB9~B16についての結果を示す図表である。
【
図7】試験例7において、各種乾燥助剤を使用して調製された粉末状のローヤルゼリー素材について、50℃での過酷試験を行って、その際の粉末の色調の変化を調べた結果を写真により示す図表であり、サンプルC0~C8についての結果を示す図表である。
【
図8】試験例7において、各種乾燥助剤を使用して調製された粉末状のローヤルゼリー素材について、50℃での過酷試験を行って、その際の粉末の色調の変化を調べた結果を写真により示す図表であり、サンプルC9~C16についての結果を示す図表である。
【
図9】試験例7において、各種乾燥助剤を使用して調製された粉末状のローヤルゼリー素材について、50℃での過酷試験を行って、その際の粉末の色調の変化を調べた結果を写真により示す図表であり、サンプルD0~D8についての結果を示す図表である。
【
図10】試験例7において、各種乾燥助剤を使用して調製された粉末状のローヤルゼリー素材について、50℃での過酷試験を行って、その際の粉末の色調の変化を調べた結果を写真により示す図表であり、サンプルD9~D16についての結果を示す図表である。
【
図11】試験例7において、各種乾燥助剤を使用して調製された粉末状のローヤルゼリー素材について、50℃での過酷試験を行って、その際の粉末の色調の変化を調べた結果をグラフ化して示す図表であり、
図11(1)はサンプルA0、A3~A5、B0、B3~B5についての結果を示す図表であり、
図11(2)はサンプルA0、A1~A2、A16、B0、B1~B2、B16についての結果を示す図表であり、
図11(3)はサンプルA0、A6~A8、B0、B6~B8についての結果を示す図表であり、
図11(4)はサンプルA0、A9~A10、A14、B0、B9~B10、B14についての結果を示す図表であり、
図11(5)はサンプルA0、A11~A13、B0、B11~B13についての結果を示す図表であり、
図11(6)はサンプルA0、A15、B0、B15についての結果を示す図表である。
【
図12】試験例7において、各種乾燥助剤を使用して調製された粉末状のローヤルゼリー素材について、50℃での過酷試験を行って、その際の粉末の色調の変化を調べた結果をグラフ化して示す図表であり、
図12(1)はサンプルC0、C3~C5、D0、D3~D5についての結果を示す図表であり、
図12(2)はサンプルC0、C1~C2、C16、D0、D1~D2、D16についての結果を示す図表であり、
図12(3)はサンプルC0、C6~C8、D0、D6~D8についての結果を示す図表であり、
図12(4)はサンプルC0、C9~C10、C14、D0、D9~D10、D14についての結果を示す図表であり、
図12(5)はサンプルC0、C11~C13、D0、D11~D13についての結果を示す図表であり、
図12(6)はサンプルC0、C15、D0、D15についての結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において用いられるローヤルゼリーとしては、特にその形態、産地等に制限はなく、生ローヤルゼリーや、生ローヤルゼリーを乾燥させて粉末化したローヤルゼリー粉末等のいずれの形態のものを使用してもよい。産地としては、例えば、中国、台湾、日本等のアジア諸国、ヨーロッパ諸国、北アメリカ諸国、ブラジル等の南アメリカ諸国のいずれでもよい。更には、原料ローヤルゼリーとして、例えば、酸・アルカリ処理や加熱処理、微粒子化処理、限外濾過、亜臨界処理、これらの処理の組合わせ等の前処理を行ったものを用いてもよい。
【0022】
本発明において用いられる酵母としては、特にその種属等に制限はないが、食品安全性の観点からは、飲食品の製造等のために従来用いられている食経験の豊富な酵母菌株や酵母含有製剤等であることが好ましい。例えば、酵母菌株としてサッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等が好ましく例示され、酵母含有製剤としては、パンやアルコール飲料製造用のイースト製剤等が好ましく採用され得る。
【0023】
本発明においては、上記ローヤルゼリーに上記酵母を作用させて、発酵処理を行なう。その条件等に特に制限はなく、適宜適当な条件を設定して酵母発酵物を得ることができるが、典型的な例を挙げると、ローヤルゼリーを適当な溶媒、例えば水(又は緩衝液)で所定倍率に希釈し、ローヤルゼリーを乾燥固形分換算で好ましくは2~30質量%、より好ましくは2.5~30質量%、更により好ましくは5~30質量%、最も好ましくは10~25質量%含有する液状基質とし、これに酵母を添加して、好ましくはpH5.5~11、より好ましくはpH5.5~10、更により好ましくはpH7~8の条件下に振とうあるいは静置することなどにより行うことができる。酵母発酵に必要な酵母の栄養素は、ほぼローヤルゼリーのみで十分であるが、必要に応じて、例えば、ビタミン、ミネラル、アミノ酸等の栄養素を補填してもよい。あるいは本発明の作用効果を害しない範囲であれば、必要最小限の糖質を補填してもよい。また、温度条件としては、25~35℃であることが好ましい。また、酵母の添加量としてはその液状基質の容量に対して酵母の生菌が最終濃度で1×105~5×109個/mLとなるように添加することが好ましく、最終濃度で1×106~2×108個/mLとなるように添加することがより好ましい。また、酵母発酵の処理時間としては、典型的には0.5時間~7日間であり、より典型的には3時間~5日間であり、更により典型的には24時間~3日間である。酵母発酵の処理条件が、それぞれ上記範囲外であると、ローヤルゼリー含有の糖分を減量する等の作用効果を奏しない場合があるので、好ましくない。なお、「乾燥固形分換算」とは、水分を除いた部分の量に換算することをいう。水分は、従来周知の食品分析法である加熱乾燥法やカール・フィッシャー法等に基づいて測定することが可能である。
【0024】
本発明においては、(1)酵母発酵処理前のローヤルゼリー、(2)酵母発酵処理中のローヤルゼリー及び/又はその発酵物、(3)酵母発酵処理後の発酵物、のそれぞれに対応する1つ又は2つ以上の段階又は工程において、酵素処理を行なってもよい。具体的には、酵素処理は、例えば、ローヤルゼリー及び/又はその発酵物、プロテアーゼ、多糖類分解酵素等の酵素、及び水(又は緩衝液)を含む反応液を、所定条件下でインキュベートすることにより実施され得る。そして、その際の処理条件は、酵素の種類、反応温度、酵素の力価等により適宜設定され得る。
【0025】
酵素処理のための酵素としては、例えば、プロテアーゼとしては、パパイン、ブロメライン、マイクロバイアル・アスパルティック・プロテアーゼの一種アスペルギロペプチダーゼA、ペプシン、パンクレアチン、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)由来の中性プロテアーゼ(例えばプロテアーゼN「アマノ」G(アマノエンザイム社製))等が挙げられる。また、多糖類分解酵素としては、例えば、セルラーゼ、アビセラーゼ、ヘミセルラーゼ、グルコシダーゼ、マンナナーゼ(例えばスミチームACH(新日本化学工業社製))、マンノシダーゼ、ガラクトシダーゼ、キシラナーゼ等が挙げられる。
【0026】
上記のようにして得られたローヤルゼリーの酵母発酵物は、それをそのまま液体の状態で本発明にかかるローヤルゼリー素材と成してもよく、濃縮等により溶媒を除いて濃縮液と成してもよく、更に、乾燥・粉末化して粉体と成してもよい。更には、加熱殺菌処理を施してもよく、酵母を生菌の状態で残存させてもよい。ただし、本発明にかかるローヤルゼリー素材の形態はこれらの形態に限られるものではない。
【0027】
上記に説明したローヤルゼリーの酵母発酵処理により、後述の実施例でも示されるように、ローヤルゼリー含有の糖分が顕著に減量される一方で、ローヤルゼリー製品の品質の1つの指標物質として知られるデセン酸の含有量の目減りがない(あるいは、糖分の減量により相対的に増量される。)。また、上記に説明したローヤルゼリーの酵母発酵処理により、後述の実施例でも示されるように、経時的な外観の変色が抑制される(特に褐変が抑制される。)。このような変色抑制効果は、糖分の減量によりメーラード反応や酸化反応等の変色に関わる反応が抑制されたことが1つの原因として考えられる。また、上記に説明したローヤルゼリーの酵母発酵処理により、後述の実施例でも示されるように、乾燥固形状にしたときの凝集が抑制される。このような凝集抑制効果は、糖分の減量により乾燥固形状物を構成する粒子どうしの結着に関わる性質が変化したことが1つの原因として考えられる。
【0028】
より具体的には、上記ローヤルゼリー素材は、グルコース及びフルクトースからなる糖質の合計含有量が乾燥固形分換算で10質量%以下とされていることが好ましく、8質量%以下とされていることがより好ましく、5質量%以下とされていることが更により好ましい。また、10-ヒドロキシ-2-デセン酸の含有量が乾燥固形分換算で5質量%以上とされていることが好ましく、6質量%以上とされていることがより好ましく、6~15質量%とされていることが更により好ましく、6~10質量%とされていることが最も好ましい。また、蛋白質及び/又はペプチドの合計含有量は、乾燥固形分換算で35質量%以上とされていることが好ましく、40質量%以上とされていることがより好ましく、40~60質量%とされていることが更により好ましく、45~55質量%とされていることが最も好ましい。
【0029】
なお、これらの物質の定量は、糖分やデセン酸については、周知の低分子分析方法、例えば、HPLC分析や超高速液体クロマトグラフ分析等によって行うことができる。また、蛋白質及び/又はペプチドについては、周知の蛋白質・ペプチド分析方法、例えば、BCA法、Bradford法、Lowry法等によって行うことができる。ただし、定量方法はこれらに限られるものではなく、当業者に周知の測定方法により、標準品の段階希釈液で予め作成された検量線にあてはめを行う等によって、適宜定量することが可能である。
【0030】
更に、本発明の別の態様においては、ローヤルゼリー素材は、上記に説明したローヤルゼリーの酵母発酵処理物であって、ローヤルゼリー由来のグルコース及びフルクトースからなる糖質の合計含有量が乾燥固形分換算で10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である、そのローヤルゼリーの酵母発酵物を含み、乾燥固形状とされていることが好ましい。乾燥固形状物となすための乾燥手段は、公知の手段を利用でき、特に制限はない。例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、熱風乾燥、真空乾燥などが挙げられる。なかでも、熱変性が少ないという理由から凍結乾燥が好ましい。ここで、「乾燥固形状」もしくは「乾燥固形状物」とは、粉末状の形態に限られず、例えば、顆粒状、錠剤状等の形態を含む意味である。また、このような乾燥固形状の形態のローヤルゼリー素材においては、その全体中に上記ローヤルゼリー酵母発酵処理物を10~100質量%含有するものであることが好ましく、より典型的には30~75質量%含有するものである。また、その水分含量が10質量%以下であればよく、5質量%以下であることがより好ましい。このような乾燥固形状と成すことにより、保存性の良いローヤルゼリー素材を提供することができる。
【0031】
また、本発明の好ましい態様において、上記ローヤルゼリー素材が乾燥固形状である場合には、更に、乾燥助剤を含むことがより好ましい。これによれば、乾燥助剤の配合によって、粉末状等の乾燥固形状の形態の維持が容易になるとともに、所定の場合には、経時的な外観の変色が更により一層抑制される(特に褐変が更により一層抑制される。)。その際、乾燥助剤は、糖分を減量したローヤルゼリー酵母発酵物を液体状、湿潤状等の形態から乾燥固形状と成すための調製工程に添加することがより好ましい。このとき使用する乾燥助剤としては、当業者に賦形剤等として周知の物質等を用いればよく、特に制限はない。例えば、下記表1に示すような賦形剤等が種々知られているので、これらを使用可能である。
【0032】
【0033】
上記の態様に使用する乾燥助剤としては、1種類のものを単独で使用してもよく、2種類以上のものを併用してもよい。使用する乾燥助剤の含有量としては、所望する形態等に応じて乾燥助剤の種類を適宜選択し、含有量もそれに応じて適宜設定すればよいが、例えば、典型的には、上記ローヤルゼリー素材中に、乾燥助剤を乾燥固形分換算(複数添加する場合はその合計として)で1~50質量%程度含有させることが好ましく、10~20質量%程度含有させることがより好ましい。
【0034】
より具体的には、上記の態様に使用する乾燥助剤としては、ヒドロキシプロピルデンプン、還元デンプン分解物、α化デンプン等のデンプン類や、粉あめ(DE20~40程度)、マルトデキストリン(DE10~20程度)、デキストリン(DE10以下)、クラスターデキストリン、α-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン等のデキストリン類や、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、イヌリン、ローカストビーンガム、セルロース、キトサン等の食物繊維類や、ゼラチン等のタンパク質類等が挙げられる。なかでも、粉末状等の乾燥固形状の形態への調製の容易化とともに、褐変を抑制する観点からは、ヒドロキシプロピルデンプン、α化デンプン、還元デンプン分解物等のデンプン類や、デキストリン(DE3)、デキストリン(DE11)、γ-シクロデキストリン、α-シクロデキストリン、クラスターデキストリン等のデキストリン類や、アルギン酸ナトリウム、キトサン、イヌリン、ローカストビーンガム、微結晶セルロース等の食物繊維類や、ゼラチン等のタンパク質類等が挙げられる。
【0035】
本発明にかかるローヤルゼリー素材は、ローヤルゼリー含有飲食品の製造のために好ましく用いられる。すなわち、種々の飲食品用の素材又は基材を用いた飲食品の調製や加工等の際に、あるいはその素材又は基材自体の調製や加工等の際に、その原料の一部として添加することなどによってローヤルゼリー含有飲食品を成すことができる。その形態に特に制限はなく、液状、粉末状、ゲル状、固形状等であり得る。また、剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤のいずれであってもよい。その中でも、吸湿性が抑えられることから、糖衣錠、セラック錠などのコーティング錠やカプセル剤であることが好ましい。また、その他の成分としてゲル化剤含有食品、糖類、香料、甘味料、油脂、基材、賦形剤、乾燥助剤、食品添加剤、副素材、増量剤等を適宜配合してもよい。
【0036】
本発明にかかるローヤルゼリー素材は、ローヤルゼリー含有化粧料の製造のために好ましく用いられる。すなわち、種々の化粧品用の素材又は基材を用いた化粧料の調製や加工等の際に、あるいはその素材又は基材自体の調製や加工等の際に、その原料の一部として添加することなどによってローヤルゼリー含有化粧料を成すことができる。その形態・剤形に特に制限はなく、乳液状、クリーム状、粉末状等であり得る。また、化粧品素材又は基材としては、一般に化粧料に共通して配合されるものであって、例えば、油分、精製水及びアルコールを主要成分として、界面活性剤、保湿剤、酸化防止剤、増粘剤、抗脂漏剤、血行促進剤、美白剤、pH調整剤、色素顔料、防腐剤、香料等が適宜配合され得る。
【0037】
本発明にかかるローヤルゼリー素材は、ローヤルゼリー由来の特有のタンパク質、脂肪酸、ミネラル等を豊富に含有しているので、生体への様々な有益な効果が期待できる。よって、上記の態様に代え、あるいは加えて、例えば、健康食品、サプリメント、栄養補助食品、機能性食品、化粧品、医薬品、医薬部外品、動物用健康食品、動物用サプリメント、動物用栄養補助食品、動物用機能性食品、動物用医薬品、動物用医薬部外品など各種の製品形態で、あるいはそれら製品と組み合わせて使用されることが可能である。また、各種の飲食品や動物・魚類用飼料と組み合わせて使用されることが可能である。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0039】
<調製例1-1>
固形分34質量%の生ローヤルゼリーに対して蒸留水を加えて、その乾燥固形分含量が11質量%となるように調整し、これを攪拌して成分をよく溶解・分散させ、3Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整した。このローヤルゼリー溶液(RJ溶液:以下、「ローヤルゼリー」を「RJ」と称する場合がある。)の100gに対して、市販のパン酵母含有製剤A500mgを添加し、好気条件下に30℃で24時間インキュベートすることにより、酵母発酵処理を行なった。酵母発酵処理後、80℃で30分間加熱殺菌し、その後に凍結乾燥、粉末化して、調製例1-1の酵母発酵RJ末を得た。
【0040】
<調製例1-2>
RJ溶液の100gに対して、パン酵母含有製剤Aの500mgに加えて、糖化酵素製剤(「グルクザイムAF6」天野エンザイム株式会社製)の100mgを添加した以外は、調製例1-1と同様にして、調製例1-2の酵母発酵RJ末を得た。
【0041】
<調製例2-1>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Bを使用した以外は、調製例1-1と同様にして、調製例2-1の酵母発酵RJ末を得た。
【0042】
<調製例2-2>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Bを使用した以外は、調製例1-2と同様にして、調製例2-2の酵母発酵RJ末を得た。
【0043】
<調製例3-1>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Cを使用した以外は、調製例1-1と同様にして、調製例3-1の酵母発酵RJ末を得た。
【0044】
<調製例3-2>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Cを使用した以外は、調製例1-2と同様にして、調製例3-2の酵母発酵RJ末を得た。
【0045】
<調製例4-1>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Dを使用した以外は、調製例1-1と同様にして、調製例4-1の酵母発酵RJ末を得た。
【0046】
<調製例4-2>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Dを使用した以外は、調製例1-2と同様にして、調製例4-2の酵母発酵RJ末を得た。
【0047】
<調製例5-1>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Eを使用した以外は、調製例1-1と同様にして、調製例5-1の酵母発酵RJ末を得た。
【0048】
<調製例5-2>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Eを使用した以外は、調製例1-2と同様にして、調製例5-2の酵母発酵RJ末を得た。
【0049】
<調製例6-1>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Fを使用した以外は、調製例1-1と同様にして、調製例6-1の酵母発酵RJ末を得た。
【0050】
<調製例6-2>
酵母含有製剤として、市販のパン酵母含有製剤Fを使用した以外は、調製例1-2と同様にして、調製例6-2の酵母発酵RJ末を得た。
【0051】
[試験例1]
調製例1-1~調製例6-2で得られた酵母発酵RJ末のそれぞれについて、その糖分含量を以下に示す方法で測定した。なお、比較のために、酵母発酵処理の原料としたRJ溶液や、酵母を添加直後に殺菌を行い、酵母発酵処理を施さないで調製例1-1と同様にして調製したRJ末についても、同様に、それらの糖分含量を測定した。
【0052】
(糖分含量の測定方法)
標準品(グルコース、フルクトース、スクロースその他の糖)50mgを50mL容のメスフラスコに合一して秤量し、50%アセトニトリルで1.00mg/mLに定容した。公比5で段階希釈し、0.20mg/mL、0.04mg/mLの標準溶液を調製した。また、各被測定検体については、その60mgを20mL容のメスフラスコに秤量し、50%アセトニトリルで定容し、0.20μmフィルターで濾過をして分析試料とした。分析にはHPLC-RID(示差屈折系)を使用し、各被測定検体について得られた測定値曲線下面積値を、別途上記標準溶液により予め作成した検量線にあてはめ、定量した。なお、HPLC-RID(示差屈折系)の分析条件は、以下のとおりとした。
【0053】
・移動相:72%アセトニトリル
・カラム:Cosmosil Sugar-D Pached Column
・流速:1mL/m
・検出:RI(30℃、ポジティブ)
・注入量10μL
【0054】
その結果を表2に示す。
【0055】
【0056】
その結果、表2に示すように、酵母発酵処理を施さないで調製した対照のRJ末では糖分がほとんど減量されなかったのに対して、酵母発酵処理によりローヤルゼリー含有の糖分が顕著に減量され、なかでもグルコースやフルクトースの減量化が顕著であった。
【0057】
[試験例2]
ローヤルゼリー素材においてローヤルゼリー含有の糖分を減量することによるメリットを検証するため、以下に示す錠剤を調製した。
【0058】
(錠剤1)
ローヤルゼリーの凍結乾燥製品(アピ株式会社製)を使用し、その192.5mgに対して、賦形剤を57.5mg使用して、1錠あたり250mgの錠剤を常法に従い打錠成形した。
【0059】
(錠剤2)
ローヤルゼリーの酵素処理製品(アピ株式会社製)(10質量%の乾燥助剤を含有)を使用し、その192.5mgに対して、賦形剤を57.5mg使用して、1錠あたり250mgの錠剤を常法に従い打錠成形した。
【0060】
(錠剤3)
調製例5-1と同様にして調製した酵母発酵RJ末を使用し、その192.5mgに対して、賦形剤を57.5mg使用して、1錠あたり250mgの錠剤を常法に従い打錠成形した。
【0061】
(錠剤4)
調製例5-1と同様にして調製した酵母発酵RJ末を使用し、調製例5-1と同様にローヤルゼリーの酵母発酵処理を行ない、その発酵処理液の固形分100質量部に対して、乾燥助剤を37質量部添加し、80℃で15分間加熱殺菌した後、凍結乾燥、粉末化した。得られた粉末の192.5mgに対して、賦形剤を57.5mg使用して、1錠あたり250mgの錠剤を常法に従い打錠成形した。
【0062】
(錠剤5)
調製例5-1と同様にローヤルゼリーの酵母発酵処理を行ない、その後さらに酵素処理を施した。具体的には、酵母発酵処理後のRJ溶液のpHを3Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.75に再調整し、その1500mLに対して、蛋白質分解酵素製剤(「スミチームFP-G」新日本化学工業株式会社製)の1.65gを添加し、50℃で3時間、酵素処理を行なった。その酵素処理液の固形分100質量部に対して、乾燥助剤を30質量部添加し、80℃で15分間加熱殺菌した後、凍結乾燥、粉末化した。得られた粉末の192.5mgに対して、賦形剤を57.5mg使用して、1錠あたり250mgの錠剤を常法に従い打錠成形した。
【0063】
(錠剤6)
錠剤5の調製において、酵素処理液の固形分100質量部に対して、乾燥助剤を10質量部添加した以外は、錠剤5と同様にして、1錠あたり250mgの錠剤を得た。
【0064】
得られた錠剤1~錠剤6について、その錠剤中の糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)、10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10HDA)含有量、及び錠剤を所定環境下に保管したときの外観の変色を調べた。具体的には、糖分は、試験例1で測定した方法と同様にして測定した。10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10HDA)は、以下に示す方法で測定した。錠剤の外観の変色は、常温、40℃、50℃の環境下(それぞれ湿度75%の環境下)に3日間保管した後の錠剤の色調を、目視により観察した。
【0065】
(10HDAの含有量の測定方法)
標準品(10-ヒドロキシ-2-デセン酸:10-hydroxy-2-decenoic acid)5mgを100mL容のメスフラスコに秤量し、100%メタノールで50.0μg/mLに定容した。公比5で段階希釈し、10.0μg/mL、2.0μg/mLの標準溶液を調製した。また、各被測定検体については、その25mgを50mL容のメスフラスコに秤量し、100%メタノールで定容し、0.20μmフィルターで濾過をして分析試料とした。分析にはUPLC(超高速液体クロマトグラフ)を使用し、各被測定検体について得られた測定値曲線下面積値を、別途上記標準溶液により予め作成した検量線にあてはめ、定量した。なお、UPLC(超高速液体クロマトグラフ)の分析条件は、以下のとおりとした。
【0066】
・移動相:超純水/アセトニトリル(ともに0.1%リン酸を含む)
・カラム:BEH-C18(10cm)
・流速:0.3mL/min
・検出:PDA(210nm)
・注入量:1μL
【0067】
【0068】
図1に示すように、酵母発酵処理を施さないローヤルゼリー素材を使用して調製した錠剤1,2に比べ、酵母発酵処理を経たローヤルゼリー素材を使用して調製した錠剤3~6では、錠剤中の糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)が顕著に減量され、40℃や50℃での加速試験における褐変が抑制された。また、乾燥助剤を使用せずに調製された錠剤1と錠剤3との比較において、酵母発酵処理を施さないローヤルゼリー素材を使用して調製した錠剤1に比べ、酵母発酵処理を経たローヤルゼリー素材を使用して調製した錠剤3では、錠剤中の10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10HDA)含有量が相対的に増量された。よって、ローヤルゼリー含有の糖分が減量されたローヤルゼリー素材を使用することによって、錠剤全体の糖分含量が減量され、それに伴いデセン酸含有量が相対的に増量されるとともに、経時的な外観の変色(特に褐変)が抑制されることが明らかとなった。
【0069】
[試験例3]
ローヤルゼリー素材においてローヤルゼリー含有の糖分を減量することによるメリットを検証するため、以下に示す粉末を準備した。
【0070】
(粉末1)
調製例5-1と同様にして調製した酵母発酵RJ末。この粉末の糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)は0質量%(測定限界以下)であった。
【0071】
(粉末2)
ローヤルゼリーの凍結乾燥処理製品(アピ株式会社製)。この粉末の糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)は35.2質量%であった。
【0072】
(粉末3)
ローヤルゼリーの加熱処理製品(アピ株式会社製)。この粉末の糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)は36.4質量%であった。
【0073】
(粉末4)
ローヤルゼリーの酵素処理製品(アピ株式会社製)。この粉末の糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)は26.0質量%であった。
【0074】
上記粉末1~粉末4について、その粉末をサンプル袋に入れ、40℃、湿度75%の環境下で保存することで加速試験を行い、経時的にサンプリングし、試料中の10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10HDA)の含有量を測定して、その安定性を検証した。10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10HDA)は、試験例3で測定した方法と同様にして測定した。
【0075】
【0076】
図2に示すように、酵母発酵処理を施さないローヤルゼリー素材である粉末2~4に比べ、酵母発酵処理を経たローヤルゼリー素材である粉末1では、粉末中の10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10HDA)含有量が、糖分含量の減量に伴い相対的に増量されるとともに、保存時の安定性も向上することが明らかとなった。これは、ローヤルゼリー原料に含まれる糖分その他の成分であって、デセン酸の安定性に影響を与える成分が、酵母発酵処理によって減量されたためであろうと考えられた。
【0077】
[試験例4]
発酵処理のための酵母として酵母含有製剤Eを使用した調製例5-1において、酵母発酵処理するRJ溶液の乾燥固形分換算含量を2.6、5.1、7.7、11質量%と変え、更にpH条件をpH4~7の範囲で変えて、それ以外は調製例5-1と同様にして、それぞれの条件における酵母発酵RJ末を調製し、試験例1と同様にして、それらの糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)を求めた。なお、それぞれのpH条件において、RJ溶液の乾燥固形分換算含量を10質量%に調整した場合であって、酵母を添加直後に殺菌を行い、酵母発酵処理を施さないで調製例5-1と同様にして調製したRJ末についても、対照として、同様にそれらの糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量)を求めた。
【0078】
その結果を表3に示す。
【0079】
【0080】
その結果、表3に示すように、液状基質たるRJ溶液のpHをpH5.0から酸性側に調整して酵母発酵処理を行なった場合、ローヤルゼリー含有の糖分はほとんど減量されなかった。また、液状基質たるRJ溶液のpHをpH6.0に調整して酵母発酵処理を行なうと、RJ溶液の乾燥固形分含量が5.1質量%以下の場合には、ローヤルゼリー含有の糖分はほぼ消失したが、RJ溶液の乾燥固形分含量が7.7質量%の場合には、ローヤルゼリー含有の糖分は半分程度残存し、RJ溶液の乾燥固形分含量が11質量%の場合には、ローヤルゼリー含有の糖分はほとんど減量されなかった。一方、液状基質たるRJ溶液のpHをpH7.0に調整して酵母発酵処理を行なうと、RJ溶液の乾燥固形分含量が2.6~11質量%の範囲で、いずれの場合においても、ローヤルゼリー含有の糖分はほぼ消失した。よって、ローヤルゼリー含有の糖分を効率よく減量するには、pHと固形分含量の両方のファクターが重要であることが明らかとなった。
【0081】
[試験例5]
発酵処理のための酵母として酵母含有製剤Eを使用した調製例5-1において、酵母発酵処理するRJ溶液の乾燥固形分換算含量を、下記表4に示すとおりに2.6~30質量%の範囲で変え、更にpH条件をpH5.5~12の範囲で変えて、それ以外は調製例5-1と同様にして、それぞれの条件における酵母発酵RJ末を調製した。なお、酵母発酵処理の時間は、基本的には調製例5-1と同様に24時間とし(下記表4では「1d」で示される。)、RJ溶液の乾燥固形分換算含量を25又は30質量%に調製した場合にあっては、更に3日間(下記表4中「3d」で示される。)、5日間(下記表4では「5d」で示される。)、又は7日間(下記表4では「7d」で示される。)の処理時間についても酵母発酵RJ末を調製した。得られた酵母発酵RJ末について、試験例1と同様にして、それらの糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量、ないしはグルコースとフルクトースとスクロースの合計含有量)を求めた。また、試験例2と同様にして、それらの10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10HDA)の含有量を求めた。また、以下に示す方法で、それらの蛋白質及び/又はペプチドの含有量を求めた。なお、それぞれのpH条件において、RJ溶液の乾燥固形分換算含量を11、22、25、又は30質量%に調整した場合であって、酵母を添加直後に殺菌を行い、酵母発酵処理を施さないで調製例5-1と同様にして調製したRJ末についても、対照として(下記表4では「N」で示される。)、同様にそれらの糖分含量(グルコースとフルクトースの合計含有量、ないしはグルコースとフルクトースとスクロースの合計含有量)、10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10HDA)の含有量、及び蛋白質及び/又はペプチドの含有量を求めた。
【0082】
(蛋白質・ペプチドの含有量の測定方法)
標準品(ウシ血清アルブミン:BSA)20mgを10mL容のメスフラスコに秤量し、超純水で2.00mg/mLに定容した。その後、公比2で段階希釈し、1.00mg/mL~0.03mg/mLの標準溶液を調製した。また、各被測定検体については、その5mgを15mL容の遠沈管に秤量し、2.5%SDS水溶液を5mL加えたうえ、95℃で10分間加熱した後、3000rpmで、5分間後遠心分離して、得られた上清を分析試料とした。分析には、蛋白質・ペプチド用定量キット(「BCA Protein assay kit」Thermo Fisher Scientific社)を使用し、キットの添付プロトコールに従い、プレートリーダーにて562nmの吸光度を測定した。別途上記標準溶液により予め作成した検量線にあてはめ、定量した。
【0083】
その結果を表4に示す。
【0084】
【0085】
その結果、表4に示すように、液状基質たるRJ溶液のpHがpH5.5~11の範囲において、ローヤルゼリー含有の糖分を減量する効果や10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10HDA)の増量効果が認められた。更には、蛋白質及び又はペプチドについても、増量効果が認められた。また、液状基質たるRJ溶液の乾燥固形分含量が2.6~30質量%の範囲において、ローヤルゼリー含有の糖分を減量する効果や10-ヒドロキシ-2-デセン酸(10HDA)の増量効果が認められた。更には、蛋白質及び又はペプチドについても、増量効果が認められた。ただし、液状基質たるRJ溶液の乾燥固形分含量が25質量%や30質量%の場合には、本試験例の条件においては、処理に時間を要した。一方、液状基質たるRJ溶液のpHをpH12に調整して酵母発酵処理を行なうと、液状基質たるRJ溶液の乾燥固形分含量が11質量%の場合であっても、ローヤルゼリー含有の糖分を減量する効果は得られなかった。よって、試験例4の結果同様に、ローヤルゼリー含有の糖分を効率よく減量するには、pHと固形分含量の両方のファクターが重要であることが明らかとなった。
【0086】
[試験例6]
特開2006-219434号公報に記載された発明と、本発明の相異を検証するため、以下に示す検体を調製した。
【0087】
(検体1)
特開2006-219434号公報の製造例4と同様にしてローヤルゼリーの酵母発酵物を調製した。
【0088】
具体的には、ローヤルゼリーの凍結乾燥製品(アピ株式会社製)を使用し、その凍結乾燥ローヤルゼリー粉末30gに、蒸留水970gを加えて懸濁液を調製し、加熱殺菌した。この懸濁液にグルコアミラーゼ0.3g、パパイン0.3g、及びペクチナーゼ0.3gを加えた後、市販のパン酵母含有製剤Eを酵母菌数が108個/mLとなるように接種し、37℃で3日間静置培養した。培養終了後培養液を加熱殺菌し、その後に凍結乾燥して、これを検体1のRJ末とした。
【0089】
(検体2)
特開2006-219434号公報の製造例9と同様にしてローヤルゼリーの酵母発酵物を調製した。
【0090】
具体的には、ローヤルゼリーの凍結乾燥製品(アピ株式会社製)を使用し、その凍結乾燥ローヤルゼリー粉末30gに、蒸留水970gを加えて懸濁液を調製し、加熱殺菌した。この懸濁液に市販のパン酵母含有製剤Eを酵母菌数が108個/mLとなるように接種し、37℃で3日間静置培養した。培養終了後培養液を加熱殺菌し、その後に凍結乾燥して、これを検体2のRJ末とした。
【0091】
(検体3)
検体1の調製において、酵母を接種する前の懸濁液に添加したグルコアミラーゼ、パパイン、及びペクチナーゼを、いずれも加熱失活させて使用し、その後接種する酵母含有製剤Eも加熱失活させて使用した以外は、上記検体1と同様にして、検体3のRJ末を調製した。
【0092】
(検体4)
検体2の調製において、酵母含有製剤Eを加熱失活させて使用した以外は、上記検体2と同様にして、検体4のRJ末を調製した。
【0093】
(検体5)
検体2の調製において、酵母を接種する懸濁液のpHを6Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整した以外は、上記検体2と同様にして、検体5のRJ末を調製した。
【0094】
得られた検体1~検体5について、その粉末中のグルコース、フルクトース、及びスクロースの含有量を、試験例1で測定した方法と同様にして測定した。なお、比較のために、原料としたローヤルゼリーの凍結乾燥製品についても、同様に、糖分含量を測定した。
【0095】
その結果を表5に示す。
【0096】
【0097】
その結果、表5に示すように、特開2006-219434号公報の製造例4と同様にして調製した検体1のRJ末や、同製造例9と同様にして調製した検体2のRJ末では、酵素や酵母を加熱失活させて添加して調製した検体3のRJ末や、酵素処理を施さずに酵母を加熱失活させて添加して調製した検体4のRJ末に比べて、糖分の減量がほとんど認められなかった。これに対して、酵母を接種する際の懸濁液のpHをpH7.0に調整して調製した検体5のRJ末では、糖分の減量が顕著であった。よって、特開2006-219434号公報に記載された酵母発酵物では、糖分の減量化が本発明のようには十分になされておらずに、その原因の1つにはpH条件の不適合が挙げられるのではないかと考えられた。
【0098】
[試験例7]
ローヤルゼリー素材においてローヤルゼリー含有の糖分を減量することによるメリットを検証するため、以下に示すようにして検体を調製した。
【0099】
<A>ローヤルゼリーの酵母発酵処理
固形分30質量%の生ローヤルゼリーの3.95kgに対して超純水8.00kgを加えて、これを攪拌して成分をよく溶解・分散させるとともに、20%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整した(乾燥固形分含量:約10質量%)。このローヤルゼリー溶液(RJ溶液)の約12.2kgに対して、市販のパン酵母含有製剤E60gを添加し(RJ溶液の固形分の5%)、好気条件下に30℃で48時間インキュベートすることにより、酵母発酵処理を行なった。酵母発酵処理後には、60℃達温後に30分間維持して加熱殺菌した。このようにして得られたローヤルゼリーの酵母発酵処理液を、以下「FY-RJ溶液」と称する場合がある。
上記FY-RJ溶液の糖分含量(グルコース、フルクトース、及びスクロース)を試験例1と同様にして測定したところ、いずれも検出限界以下の含有量であり、ローヤルゼリー含有の糖分は著しく減量していた。
上記FY-RJ溶液に対して、後述の表6に示す乾燥助剤をそれぞれ、乾燥固形分換算にして15質量%の量となるように添加し、よく混合したうえ、ディスポーザブルアルミ角皿に20g程度分注し、棚式凍結乾燥器にて凍結乾燥した。乾燥温度は35℃とし、乾燥時間は3日とした。また、コントロールとして、乾燥助剤を添加していないFY-RJ溶液も同様に凍結乾燥した。なお、乾燥助剤として増粘性のあるペクチン、アルギン酸ナトリウム、ローカストビーンガムを使用する場合については、それぞれを乾燥固形分換算にして5質量%の量となるように添加したうえ、更に微結晶セルロースを併用して、これを10質量%の量となるように添加した。
得られたブロック状の凍結乾燥物を卓上ミルで粉砕し、検体とした。
【0100】
<B>ローヤルゼリー溶液(非処理)
上記<A>で使用した固形分30質量%の生ローヤルゼリーの4.00kgに対して超純水8.00kgを加えて、これを攪拌して成分をよく溶解・分散させ、乾燥固形分含量約10.92質量%のローヤルゼリー溶液(RJ溶液)を得、この非処理のローヤルゼリー溶液に対して、上記<A>で行ったのと同様にして、後述の表6に示す乾燥助剤をそれぞれ添加したうえ、凍結乾燥物を得た。得られたブロック状の凍結乾燥物を卓上ミルで粉砕し、検体とした。
なお、上記RJ溶液の糖分含量(グルコース、フルクトース、及びスクロース)を試験例1と同様にして測定したところ、それぞれの乾燥固形分換算質量は、グルコースで13.86質量%であり、フルクトースで13.22質量%であり、スクロースで0.97質量%の含有量であった。
【0101】
<C>ローヤルゼリー酵母発酵液の酵素処理
上記<A>で調製したFY-RJ溶液の4.75kgに20%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8.75に調整したうえ、蛋白質分解酵素製剤(「スミチームFP-G」新日本化学工業株式会社製)の4.96gを添加し(FY-RJ溶液の固形分の1%)、50℃で3時間、酵素処理を行なった。酵素処理後には、78℃達温後に15分間維持して失活処理した。このようにして得られたローヤルゼリー酵母発酵液の酵素処理液に対して、上記<A>で行ったのと同様にして、後述の表6に示す乾燥助剤をそれぞれ添加したうえ、凍結乾燥物を得た。得られたブロック状の凍結乾燥物を卓上ミルで粉砕し、検体とした。
【0102】
<D>ローヤルゼリー溶液の酵素処理
上記<B>で調製したRJ溶液の6.00kgに20%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8.74に調整したうえ、蛋白質分解酵素製剤(「スミチームFP-G」新日本化学工業株式会社製)の6.56gを添加し(RJ溶液の固形分の1%)、50℃で3時間、酵素処理を行なった。酵素処理後には、80℃達温後に15分間維持して失活処理した。このようにして得られたローヤルゼリー溶液の酵素処理液に対して、上記<A>で行ったのと同様にして、後述の表6に示す乾燥助剤をそれぞれ添加したうえ、凍結乾燥物を得た。得られたブロック状の凍結乾燥物を卓上ミルで粉砕し、検体とした。
【0103】
表6には、上記の検体の調製に使用した乾燥助剤の情報とともに、各乾燥助剤ごとに付したサンプル名をまとめて示す。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
[評価1]
(1)苛酷試験による色調の変化
50℃での苛酷試験を行って、その際の粉末の色調の変化を調べた。具体的には、サンプルRJ粉末を約10gずつ樹脂フィルムからなるジップ容器に入れ、封を閉じて容器ごと50℃の恒温器に入れた。苛酷試験開始前と、開始1日後、3日後、7日後、14日後に写真撮影と色差測定を行った。
【0109】
色差測定には色差計(ZE-2000、NIPPON DENSHOKU)を使用し、CIE(国際照明委員会)L*a*b*色空間表示系におけるa*値、b*値、L*値を測定し、下記式(1)によってRJ粉末の色差(ΔEi)を算出した(n=3)。
【0110】
ΔEi={(Li-L0)2+(ai-a0)2+(bi-b0)2}1/2・・・(1)
(式中、L0、a0、及びb0は、それぞれ苛酷試験開始前におけるRJ粉末のL*値、a*値、及びb*値であり、Li、ai、及びbiは、それぞれ苛酷試験後におけるRJ粉末のL*値、a*値、及びb*値である。)
【0111】
写真撮影の結果を
図3~
図10に、色差測定の結果を表7に、それぞれ示す。また、
図11及び
図12には、色差測定の結果をグラフ化して示す。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
その結果、特に、
図11にグラフ化して示されるように、ローヤルゼリーに酵母発酵処理を施して調製したRJ粉末(A0~A16のサンプル)は、酵母発酵処理を施さないで調製したRJ粉末(B0~B16のサンプル)に比べ、苛酷試験における経時的な外観の変色(特に褐変)が抑制された。また、
図12にグラフ化して示されるように、ローヤルゼリーに酵母発酵処理と酵素処理を施して調製したRJ粉末(C0~C16のサンプル)は、ローヤルゼリーに酵素処理を施したが、酵母発酵処理を施さないで調製したRJ粉末(D0~D16のサンプル)に比べ、苛酷試験における経時的な外観の変色(特に褐変)が抑制された。このような変色抑制効果は、酵母発酵処理が施されたことにより糖分が減量し、メーラード反応や酸化反応等の変色に関わる反応が抑制されたことが1つの原因として考えられた。
【0117】
また、サンプルA5(デキストリンDE3)、A1(ヒドロキシプロピルデンプン)、A2(α化デンプン)、A16(還元デンプン分解物)、A7(γ-シクロデキストリン)、A8(α-シクロデキストリン)、A10(アルギン酸ナトリウム)、A14(キトサン)、A11(イヌリン)、A12(ローカストビーンガム)、A13(微結晶セルロース)、A15(ゼラチン)、C4(デキストリンDE11)、C5(デキストリンDE3)、C1(ヒドロキシプロピルデンプン)、C2(α化デンプン)、C16(還元デンプン分解物)、C6(クラスターデキストリン)、C7(γ-シクロデキストリン)、C8(α-シクロデキストリン)、C10(アルギン酸ナトリウム)、C14(キトサン)、C11(イヌリン)、C12(ローカストビーンガム)、C15(ゼラチン)の結果にみられるように、それぞれに使用された乾燥助剤、デキストリン(DE3)、デキストリン(DE11)、ヒドロキシプロピルデンプン、α化デンプン、還元デンプン分解物、γ-シクロデキストリン、α-シクロデキストリン、アルギン酸ナトリウム、キトサン、イヌリン、ローカストビーンガム、微結晶セルロース、ゼラチン、クラスターデキストリンによって、酵母発酵処理による変色抑制効果は、更に増長された。一方で、サンプルA3、A9、C3、C9の結果にみられるように、それぞれに使用された乾燥助剤、デキストリン(DE25)、ペクチンは、かえって酵母発酵処理による変色抑制効果を打ち消してしまう結果となった。
【0118】
[評価2]
(2)苛酷試験による凝集状態の変化
上記(1)と同様にして50℃での苛酷試験を行って、その際の粉末の凝集状態の変化を調べた。具体的には、下記の基準で評価した。
【0119】
(スコア基準)
0 - 凝集がまったく認められない
1 * ごく僅かに凝集が認められるが、流動しただけで崩壊する程度
2 ** 凝集物の長径が4mm未満の凝集が多数認められる
3 *** 凝集物の長径が4mm以上8mm未満の凝集が多数認められる
4 **** 凝集物の長径が8mm以上の凝集が認められる
5 ***** 完全に固化している
【0120】
結果は、表8にまとめた。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
その結果、上記表8-1及び表8-3に示した結果にみられるように、ローヤルゼリーに酵母発酵処理を施して調製したRJ粉末(A0~A16のサンプル)は、酵母発酵処理を施さないで調製したRJ粉末(B0~B16のサンプル)に比べ、苛酷試験における粉末の凝集が抑制された。また、上記表8-2及び表8-4に示した結果にみられるように、ローヤルゼリーに酵母発酵処理と酵素処理を施して調製したRJ粉末(C0~C16のサンプル)は、ローヤルゼリーに酵素処理を施したが、酵母発酵処理を施さないで調製したRJ粉末(D0~D16のサンプル)に比べ、苛酷試験における粉末の凝集が抑制された。このような凝集抑制効果は、酵母発酵処理が施されたことにより糖分が減量し、RJ粉末を構成する粒子どうしの結着に関わる性質が変化したことが1つの原因として考えられた。
【0126】
なお、サンプルA3、A4、A6の結果にみられるように、それぞれに使用された乾燥助剤、デキストリン(DE25)、デキストリン(DE11)、クラスターデキストリンにより、かえって酵母発酵処理による粉末の凝集抑制効果が打ち消される結果となった。