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特許7057948超音波プローブの穿刺をガイドするシステム及び記録媒体
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  • 特許-超音波プローブの穿刺をガイドするシステム及び記録媒体 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】超音波プローブの穿刺をガイドするシステム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019234378
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2020108759
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】108100218
(32)【優先日】2019-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】507388074
【氏名又は名称】国立陽明大学
(73)【特許権者】
【識別番号】517364891
【氏名又は名称】臺北榮民總醫院
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】江惠華
(72)【発明者】
【氏名】丁乾坤
(72)【発明者】
【氏名】廖書緯
(72)【発明者】
【氏名】蘇府蔚
(72)【発明者】
【氏名】楊靜芳
(72)【発明者】
【氏名】楊嘉偉
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/124173(WO,A1)
【文献】特表2012-518453(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0217117(US,A1)
【文献】特表2011-522654(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0066073(US,A1)
【文献】特開2013-146376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0190610(US,A1)
【文献】特表2018-522646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0374644(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0275892(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、胸膜信号の分析、識別、追跡、距離測定及び表示を実行させるためのプログラムを記録した非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
コンピュータに、
(a)超音波プローブ装置を提供して軸方向深さにおけるそれぞれが超音波振幅と超音波送受信信号の時間差を含む複数の超音波エコー信号を1秒につき少なくとも20回取得するステップと
(b)複数の前記超音波送受信信号の時間差を、異なる組織の接点から前記超音波プローブ装置の針端までのエコー距離である複数の軸方向の距離にそれぞれ換算するステップと
(c)複数の前記軸方向の距離と複数の前記超音波振幅から、長さ単位及び振幅単位で距離及び信号振幅の図を取得するステップと
(d)前記距離及び信号振幅の図から、振幅の変化の特徴と深さの変化の特徴に基づいて胸膜を識別し、所望の領域を設定してから、前記超音波プローブ装置の針端と胸膜との動的に変化する距離をリアルタイムで表示、追跡及び測定するステップと、
(e)操作時間内にステップ(a)~(c)の操作を繰り返し、前記軸方向の深さの違いによって、複数の距離及び信号振幅の図を取得するステップと、
(f)複数の前記距離及び信号振幅の図に基づいて、前記操作時間から、距離及び信号の経時変化の図を取得するステップと、
(g)距離及び信号の経時変化の図から、振幅の変化の特徴、深さの変化の特徴及び周期的変化の特徴に基づいて、前記所望の領域を設定してから、胸膜と前記超音波プローブ装置の針端との動的に変化する距離を表示するステップと
を実行させるためのプログラムを記録した記録媒体
【請求項2】
軸方向深さにおける複数の超音波エコー信号を取得することとは、傍脊椎から胸膜までの区間に任意の距離の胸膜呼吸信号が現れることである請求項1に記載の記録媒体
【請求項3】
軸方向深さにおける複数の超音波エコー信号を取得することとは、肋骨間から胸膜までの区間に任意の距離の最内肋間筋信号が現れるとともに、任意の距離の胸膜信号が現れることである請求項1に記載の記録媒体
【請求項4】
更に、コンピュータに、胸膜と前記超音波プローブ装置の針端との距離が所定の距離よりも小さい場合には警告信号を発するステップを実行させるためのプログラムを記録した請求項1に記載の記録媒体
【請求項5】
胸膜信号の分析、識別、追跡、距離測定及び表示に用いられる統合システムであって、
超音波プローブ及び穿刺針管を備え、前記超音波プローブが前記穿刺針管の内側に配置され、信号送信器を介して超音波パルス波を送信する超音波プローブ装置と、
前記超音波プローブ装置が組織を穿刺する際の軸方向深さにおける複数の超音波エコー信号を取得し、複数の前記超音波エコー信号が、それぞれ超音波振幅と超音波送受信信号の時間差を含む信号送受信器と、
有線又は無線で前記信号送受信器に電気的に接続される信号分析装置、を含み、前記信号分析装置は、
複数の前記超音波送受信信号の時間差を複数の軸方向の距離に換算するデータプロセッサであって、複数の前記軸方向の距離が、異なる組織の接点から前記超音波プローブ装置の針端までのエコー距離であり、長さ単位及び振幅単位で距離及び信号振幅の図を出力するデータプロセッサと、
前記データプロセッサに接続されて、前記距離及び信号振幅の図を表示するとともに、振幅の変化の特徴と深さの変化の特徴に基づいて胸膜を識別し、所望の領域を設定してから、前記穿刺針管の針端と胸膜との動的に変化する距離をリアルタイムで表示、追跡及び測定するディスプレイ、を含むシステム。
【請求項6】
前記超音波プローブの先端は平面となっており、前記穿刺針管の針先管口は相対的な斜面となっている請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記超音波プローブと前記穿刺針管の針先管口は同一の斜面をもって整列しており、前記同一の斜面が20°~50°の夾角をなす斜面である請求項に記載のシステム。
【請求項8】
更に、
前記超音波プローブ装置は、信号送信器を介して超音波パルス波を1秒あたり少なくとも20回送信し、
前記データプロセッサは、前記軸方向の深さの違いによって、操作時間内に複数の距離及び信号振幅の図を取得するとともに、複数の前記距離及び信号振幅の図に基づいて、前記操作時間から距離及び信号の経時変化の図を出力し、
前記ディスプレイは、距離及び信号の経時変化の図を表示するとともに、振幅の変化の特徴、深さの変化の特徴及び周期的変化の特徴に基づいて、前記所望の領域を設定してから、呼吸時の胸膜と前記穿刺針管の針端との動的に変化する距離を表示する請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波穿刺針装置における胸膜呼吸信号の分析、識別、追跡、距離測定及び表示に用いられ、特に、傍脊椎神経ブロック(Paravertebral Block,PVB)及び肋間神経ブロック(Intercostals Nerve Block,ICNB)に用いられて、胸膜の超音波信号の特徴を識別し、前記穿刺針の針先と胸膜との距離を検知することで、PVB及びICNB神経ブロックによる麻酔薬の注射位置を判断するための統合システム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、胸腔領域周辺の神経ブロックでは、体外超音波でガイドしつつ、穿刺針を用いて局所麻酔薬を脊椎近傍の神経節付近に注射するか、神経が存在する領域を浸潤することで、痛みを止め効果が得られるよう神経をブロックすることが主流となっている。
【0003】
ここ10年ほどは、麻酔分野において超音波技術が広く利用されるようになっており、特に、傍脊椎神経ブロック(PVB)と肋間神経ブロック(ICNB)において区域麻酔の効果及び成功率が大幅に向上している。現在の臨床では、体外超音波で麻酔穿刺の進行を補助しており、Bモード(Brightness Mode)超音波によって麻酔穿刺針と胸膜との相対位置を表示している。通常、医療従事者は、Bモード(Brightness Mode)の体外超音波画像によるガイドの下で、患者の背の脊椎側又は胸側から肋骨の隙間に穿刺を行うが、Bモードの解像度では、(1)針先の正しい位置を正確には判断できない。また、(2)針先と胸膜との距離を正確に計測できないことから、臨床における操作リスクが大幅に増加している。このことから、手術には依然として相当な実行リスクが付随する。そこで、肺に対する穿刺や気胸等の事故を回避すべく、本発明では、穿刺針と超音波穿刺針を組み合わせ、解剖構造の識別を可能とする。そして、客観的且つ科学的に判断を補助し、穿刺過程全般を通じてリアルタイムで超音波信号を提供することで、肺部及び周辺組織の識別を補助して安全性を向上させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
傍脊椎神経ブロック(PVB)及び肋間神経ブロック(ICNB)は、一般的な従来の全身麻酔や半身麻酔と比較して、標的領域に高度な選択性をもって良好な痛みを止め効果をもたらすことができる。また、体外超音波で位置を特定しつつ、穿刺針を組み合わせて使用する。ただし、現在のところ針の穿刺深さの測定には依然として大きな誤差が存在する。また、胸腔領域には人体にとって重要な器官が複数存在し、区域麻酔の有効性や安全性に間接的な影響を及ぼす。そこで、本発明では、
(1)麻酔用穿刺針内に設置される針内超音波を利用する。これにより、超音波プローブ装置の精度下で距離をリアルタイムで測定する。前記測定では軸方向の解像度が0.2mmに達するとともに、警告機能も提供可能である。
(2)初期の研究を通じ、Aモード下では呼吸時の胸膜信号にちらつき(flickering)が観察されることが分かった。Aモードにおけるこのような現象は、過去の文献には報告がない。
(3)所望の領域(胸膜信号)に丸印を付け、非相関性(de-correlation value)、離散フーリエ変換(FFT)又は時間-周波数解析(time-frequency spectrum)等の方法を用い、呼吸時にちらつく胸膜信号を分析及び識別するとともに、距離(胸膜と針先との距離)をリアルタイムで測定する。主たる目的は、胸膜と呼吸運動の特徴分析及び超音波エコー信号に基づいて、軸方向の穿刺深さを確認することである。特に、胸膜の超音波エコー信号を確認することで、穿刺針が正確に目標深さに到達するよう補助する。
【0005】
また、体外超音波を組み合わせて行う上記の区域麻酔方式の場合、従来は斜め穿刺法(In-plane)で実行することが多かった。図1Aを参照して、この場合には、穿刺時に針が皮膚(skin)面との間に夾角を形成しつつ、肋間神経(intercostal nerve)領域へと進入する。しかし、図1Bを参照して、斜め穿刺法の場合には、体外超音波による深さ測定と穿刺針の進行方向が平行ではない。そのため、針の穿刺長と実際の穿刺深さとの関係を換算しにくいだけでなく、針先の位置と胸膜との距離を観測することも難しいため、手術の実施リスクが増加してしまう。そこで、本発明は、その他の穿刺法を開示する。図1Cを参照して、この場合には穿刺時に針が皮膚(skin)面との間に直角又は略垂直の角度を形成しつつ、肋間神経(intercostal nerve)領域へと進入するため、針の穿刺深さから深さの値をリアルタイムで取得可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みて、本発明は、胸膜信号の分析、識別、追跡、距離測定及び表示に用いられる統合方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。前記方法は、(a)超音波プローブ装置が組織を穿刺する際の軸方向深さにおける複数(即ち、多数。以下同様とし、これ以上詳述しない)の超音波エコー信号を取得する。これら超音波エコー信号は、それぞれ超音波振幅と超音波送受信信号の時間差を含む。(b)これら超音波送受信信号の時間差を複数の軸方向の距離に換算する。これら軸方向の距離は、異なる組織の接点から前記超音波プローブ装置の針端までの距離である。(c)これら軸方向の距離とこれら超音波振幅から、長さ単位及び振幅単位で距離及び信号振幅の図を取得する。(d)前記距離及び信号振幅の図から、振幅の変化の特徴と深さの変化の特徴に基づいて所望の領域を設定してから、前記穿刺針の針端と胸膜との動的に変化する距離をリアルタイムで表示、追跡及び測定する。
【0007】
また、本発明は、胸膜信号の分析、識別、追跡、距離測定及び表示に用いられる統合システムを更に提供する。前記システムは、超音波プローブ装置、信号送受信器及び有線又は無線で前記信号送受信器に電気的に接続される信号分析装置を含む。
【0008】
超音波プローブ装置は、超音波プローブ及び穿刺針管を備える。前記超音波プローブは前記穿刺針管の内側に配置され、信号送信器を介して超音波パルス波を1秒あたり少なくとも20回(例えば、1秒あたり50回)送信する。
【0009】
前記信号分析装置は、前記超音波プローブ装置が組織を穿刺する際の軸方向深さにおける複数の超音波エコー信号を取得する。これら超音波エコー信号は、それぞれ超音波振幅と超音波送受信信号の時間差を含む。
【0010】
前記信号分析装置は、これら超音波送受信信号の時間差を複数の軸方向の距離に換算するデータプロセッサであって、これら軸方向の距離が、異なる垂直軸方向から前記超音波プローブ装置の針端までのエコー距離であり、長さ単位及び振幅単位で距離及び信号振幅の図を出力するデータプロセッサと、前記データプロセッサに接続されて、前記距離及び信号振幅の図を表示するとともに、振幅の変化の特徴と深さの変化の特徴に基づいて所望の領域を設定してから、前記穿刺針管の針端と胸膜との動的に変化する距離をリアルタイムで表示、追跡及び測定するディスプレイ、を含む。
【0011】
本発明で言うところの「胸膜」は、胸壁胸膜(壁側胸膜)と肺側胸膜(臓側胸膜)からなる。
【0012】
本発明の記載における超音波プローブ装置は、胸膜呼吸信号の分析、追跡及び距離測定の方法に用いられる。信号対応位置の出現順序は、「超音波による振動ノイズ」、「穿刺針の針端」、「胸膜」の順となる。このうちの胸膜を基準点とし、適切な距離を最適な薬剤投与位置として取得する。
【0013】
以下に、図面を組み合わせて、具体的実施例により本発明の上記目的及びその他の目的、特徴又は利点について具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1Aは、斜め穿刺法の実施例である。
図1B図1Bは、斜め穿刺法の場合の超音波信号を示す図である。
図1C図1Cは、垂直穿刺法の実施例である。
図2図2は、本発明の方法のフローチャートである。
図3図3は、本発明の方法でPVBの場合に得られる超音波プローブと胸膜との距離及び信号振幅の図である。
図4図4は、本発明の方法でPVBの場合に得られる超音波プローブと胸膜との距離及び信号の経時変化の図(Mモード超音波図)である。
図5図5は、本発明の方法でICNBの場合に得られる超音波プローブと胸膜との距離及び信号振幅の図である。
図6図6は、本発明の方法でICNBの場合に得られる超音波プローブと胸膜との距離及び信号の経時変化の図(Mモード超音波図)である。
図7図7は、本発明におけるシステムの部材の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例を、図2図7に示す。
【0016】
図2を参照して、本発明で提供する胸膜呼吸信号の分析、追跡及び距離測定に用いられる方法は、(a)超音波プローブ装置が組織を穿刺する際の軸方向深さにおける複数の超音波エコー信号を1秒につき少なくとも20回取得するステップであって、これら超音波エコー信号が、それぞれ超音波振幅と超音波送受信信号の時間差を含むステップS201と、(b)これら超音波送受信信号の時間差を複数の軸方向の距離に換算するステップであって、これら軸方向の距離が、異なる組織の接点から前記超音波プローブ装置の針端までのエコー距離であるステップS202と、(c)これら軸方向の距離とこれら超音波振幅から、長さ単位及び振幅単位で距離及び信号振幅の図を取得するステップS203と、(d)前記距離及び信号振幅の図から、振幅の変化の特徴と深さの変化の特徴に基づいて胸膜を識別し、所望の領域を設定してから、前記穿刺針の針端と胸膜との動的に変化する距離をリアルタイムで表示、追跡及び測定するステップS204、を含む。
【0017】
好ましくは、この標的物の距離を測定する方法は、更に、(e)操作時間内にステップ(a)~(c)の操作を繰り返し、前記軸方向の深さの違いによって、前記複数の距離及び信号振幅の図を取得するステップと、(f)これらの距離及び信号振幅の図に基づいて、前記操作時間から、距離及び信号の経時変化の図を取得するステップと、(g)前記距離及び信号の経時変化の図から、前記振幅の変化の特徴、前記深さの変化の特徴及び周期的変化の特徴に基づいて、前記所望の領域を設定してから、呼吸時の胸膜と前記穿刺針の針端との距離を表示するステップ、を含む。好ましくは、前記周期的変化の特徴とは、信号の振幅の変化量又は信号の周波数の変化量である。一実施例において、前記周期的変化の特徴は呼吸動作に関連しており、非相関性(de-correlation value)、離散フーリエ変換(FFT)周波数スペクトル又は時間-周波数解析(time frequency spectrum)等の方法を用いてこれら変化量の値を分析する。
【0018】
好ましい実施例において、前記組織の穿刺とは、傍脊椎から胸膜までの区間に任意の距離の胸膜呼吸信号が現れることをいう。本発明の超音波プローブによってPVBの場合に得られる距離及び信号振幅を示す図3を参照すると、穿刺針の針端301から胸膜(Pleura)302までの区間の間隔が穿刺針から胸膜までの距離を表す。また、本発明の超音波プローブによってPVBの場合に得られる距離(Depth)及び信号の経時変化(Time)を示す図4を参照すると、胸膜402は呼吸動作に伴って周期的な起伏を示す。
【0019】
好ましい実施例において、前記組織の穿刺とは、肋骨間から胸膜までの区間に任意の距離の最内肋間筋信号(Innermost intercostals muscle,liM)が現れるとともに、任意の距離の胸膜呼吸信号が現れることをいう。本発明の超音波プローブによって肋間神経ブロック(ICNB)の場合に得られる距離及び信号振幅を示す図5を参照すると、穿刺針の針端501から最内肋間筋(liM)502、胸膜(Pleura)503までの区間の間隔が穿刺深さを表す。また、本発明の超音波穿刺針によって肋間神経ブロック(ICNB)の場合に得られる距離(Depth)及び信号の経時変化(Time)を示す図6を参照すると、胸膜603は呼吸動作に伴って周期的な起伏を示す。
【0020】
好ましくは、本発明の方法ステップは、更に、胸膜と前記穿刺針の針端との距離が所定の距離よりも小さい場合に警告信号を発する。前記警告信号は、光線、音声又は符号等の形式に限らない。
【0021】
本発明の方法の実行ステップは、ソフトウエアプログラムとして記述してもよい。ソフトウエアプログラムは、任意のマイクロプロセッシングユニットにより識別及び解読される記録媒体又は上記記録媒体を含む物品又は装置に記録すればよい。上記の物品は、ハードディスク、フロッピーディスク、光ディスク、ZIP、光磁気装置(MO)、ICチップ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、又は当業者が使用可能な上記記録媒体を含む物品とすればよく、形式については何ら限定しない。
【0022】
図7は、本発明における胸膜信号の分析、識別、追跡、距離測定及び表示に用いられる統合システム700を示す。前記システムは、超音波プローブ装置710、信号送受信器720及び有線又は無線で前記信号送受信器720に電気的に接続される信号分析装置730を含む。
【0023】
超音波プローブ装置710は、超音波プローブ711及び穿刺針管712を備える。前記超音波プローブ711は前記穿刺針管712の内側に配置され、信号送信器を介して超音波パルス波を1秒あたり少なくとも20回(例えば、1秒あたり50回)送信する。好ましくは、前記超音波パルス波の周波数は5~40MHzであり、振幅は50~100Vである。
【0024】
一実施例において、前記超音波プローブ711の先端は平面となっており、前記穿刺針管712の針先管口は相対的な斜面となっている。或いは、前記超音波プローブ711と前記穿刺針管712の針先管口は同一の斜面をもって整列しており、前記同一の斜面が20°又は50°の夾角をなす斜面である。
【0025】
信号送受信器720は、前記超音波プローブ装置710が組織を穿刺する際の軸方向深さにおける複数の超音波エコー信号を取得する。これら超音波エコー信号は、それぞれ超音波振幅と超音波送受信信号の時間差を含む。
【0026】
前記信号分析装置730は、これら超音波送受信信号の時間差を複数の軸方向の距離に換算するデータプロセッサであって、これら軸方向の距離が、異なる組織の接点から前記超音波プローブ装置の針端までのエコー距離であり、長さ単位及び振幅単位で距離及び信号振幅の図を出力するデータプロセッサ731と、前記データプロセッサ731に接続されて、前記距離及び信号振幅の図を表示するとともに、振幅の変化の特徴と深さの変化の特徴に基づいて胸膜を識別し、所望の領域を設定してから、前記穿刺針管712の針端と胸膜との動的に変化する距離をリアルタイムで表示、追跡及び測定するディスプレイ732、を含む。
【0027】
好ましくは、前記データプロセッサ731は、前記軸方向の深さの違いによって、前記複数の距離及び信号振幅の図を取得するとともに、これらの距離及び信号振幅の図に基づいて、前記操作時間から距離及び信号の経時変化の図を出力する。且つ、前記ディスプレイ732は、前記距離及び信号の経時変化の図を表示し、前記振幅の変化の特徴、前記深さの変化の特徴及び周期的変化の特徴に基づいて、前記所望の領域を設定してから、胸膜と前記穿刺針管712の針端との距離を表示する。
【0028】
本発明が開示する全ての特徴は、任意に組み合わせて実現してもよいし、同一、均等又は類似の目的の置換物により置き換えてもよい。よって、明確に規定しない限り、開示する各特徴は均等物又は類似の特徴の一つの実施例にすぎない。
【符号の説明】
【0029】
301、501 穿刺針の針端
302、402、503、603 胸膜(所望の領域)
303、504 超音波による振動ノイズ
502、602 最内肋間筋
700 本発明の統合システム
710 超音波プローブ装置
401、601、711 超音波プローブ
712 穿刺針管
720 信号送受信器
730 信号分析装置
731 データプロセッサ
732 ディスプレイ
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7