(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】取排水装置のメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
E02B 9/04 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
E02B9/04 B
(21)【出願番号】P 2018058701
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000151449
【氏名又は名称】株式会社東京久栄
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】児島 啓太
(72)【発明者】
【氏名】西▲崎▼ 丈能
(72)【発明者】
【氏名】大西 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】登川 武司
(72)【発明者】
【氏名】玉村 文男
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-088183(JP,A)
【文献】特開2014-169609(JP,A)
【文献】特開昭58-017278(JP,A)
【文献】特開平09-143969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中に設置され、海水が出入りする出入部、
前記海水を汲み上げるポンプを備え前記海水を貯留するピット、前記出入部と前記ピットとを繋ぎ、継手部を有する主管、及び一端が前記ピットに接続し他端が海中に配置された副管を備えて、海水利用設備に付設される取排水装置において、前記継手部
を補強又は補修する措置を講じる取排水装置のメンテナンス方法であって、
前記副管に前記海水を流通させ、前記主管を流通する前記海水の流速を、前記副管に前記海水を流通させていない場合の流速よりも低下させる流速低下工程を行った後、
前記主管内から前記継手部
を補強又は補修する措置を講じる措置工程を行う、取排水装置のメンテナンス方法。
【請求項2】
前記取排水装置は、前記出入部としての取水部を備え、前記副管の海側端部に前記副管内への前記海水の侵入を防止する海側止水蓋が設置された取水装置であって、
前記流速低下工程は、
前記海側止水蓋を撤去する海側止水蓋撤去工程と、
前記主管のピット側端部と前記ピットとの連通部に区画壁を設置する区画壁設置工程とを含む請求項1に記載の、取排水装置のメンテナンス方法。
【請求項3】
前記流速低下工程は、前記副管のピット側端部にピット側止水蓋を設置するピット側止水蓋設置工程と、
前記ピット側止水蓋を撤去するピット側止水蓋撤去工程とを更に含み、
前記ピット側止水蓋設置工程は、前記海側止水蓋撤去工程の前に行い、
前記ピット側止水蓋撤去工程は、前記海側止水蓋撤去工程と前記区画壁設置工程との間に行う請求項2に記載の、取排水装置のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水が出入りする出入部、海水が貯留されるピット、出入部とピットとを繋ぎ、継手と配管とを有する主管、及びピットに接続した副管を備え、海水利用設備に付設される取排水装置の継手部に所定の措置を講じる取排水装置のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水利用設備たる発電所や工場などでは、海水を熱媒体として利用しており、例えば、発電所の一例としての火力発電所では、発電タービンから戻る蒸気を凝縮させる復水器が海水利用装置として備えられ、この復水器においては、海水が冷却用の媒体として用いられている。また、工場の一例としての都市ガス製造所では、液化天然ガス(LNG)を気化させるLNG気化器が海水利用装置として備えられ、このLNG気化器においては、海水が加熱用の媒体として用いられている。
【0003】
特許文献1には、取水ピットから海水を汲み上げる海水ポンプや、海水ポンプにて汲み上げられた海水を貯蔵する海水ヘッダ、海水ヘッダから供給される海水を用いて作動する海水利用装置としてのLNG気化器などを装備した都市ガス製造所が開示されている。通常、特許文献1に開示されたような都市ガス製造所には、上記取水ピット、海中に設置された取水部、及び海水ピットと取水部とを接続する配管などからなる取水装置が設けられており、取水部から取り入れられた海水が配管内を流通して取水ピット内へ流れ込み、この取水ピット内に流れ込んだ海水が海水ポンプに汲み上げられて使用されている。
【0004】
ここで、上記取水装置の配管は、海側と陸地側との間に設置された護岸を貫通し、且つ、地盤に埋設されている。そのため、地震などによって地盤が揺さぶられ、地盤が液状化して地盤が変位したり、或いは、護岸の下側及び護岸の陸地側の地盤において液状化が発生し、これによって護岸に土圧が作用して護岸が海側に移動したりした場合に、それに伴って配管が変位したり、配管に過剰な負荷がかかり、これにより、配管や配管同士を繋ぐ継手が破損するおそれがある。そこで、従来から、主管の一部に伸縮継手を設けることで、地盤の変位や護岸の移動にある程度追従できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、地盤の変位や護岸の移動にある程度追従できるようにしていても、継手部の破損を完全に防止することは困難であるため、破損した継手部の補修が必要になる場合がある。
【0007】
また、近年、想定外の大規模地震によって地盤の変位量や護岸の移動量が許容範囲を超えるような事態が発生することを想定した既存設備の補強対策の重要性が高まっており、そのような補強対策として、継手部の補強が必要となる場合もある。
【0008】
ところが、上述したように、取水装置の主管は、護岸を貫通し地盤に埋設されたものであるが故に、継手部の補修作業や補強作業といった取水装置のメンテナンスを目的とした措置を講じるためには、大規模な土木工事によって主管を露出させる必要があり、作業コストを抑えることが難しく、また、作業に長時間を要するという問題があった。また、このような問題は、取水装置の限らず、海水を排水するための排水装置についても同様に存在する。
【0009】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、取排水装置のメンテナンスを目的とした継手部の補修作業や補強作業といった措置を従来よりも容易に講じることができる取排水装置のメンテナンス方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る取排水装置のメンテナンス方法の特徴構成は、海中に設置され、海水が出入りする出入部、前記海水を汲み上げるポンプを備え前記海水を貯留するピット、前記出入部と前記ピットとを繋ぎ、継手部を有する主管、及び一端が前記ピットに接続し他端が海中に配置された副管を備えて、海水利用設備に付設される取排水装置において、前記継手部を補強又は補修する措置を講じる取排水装置のメンテナンス方法であって、
前記副管に前記海水を流通させ、前記主管を流通する前記海水の流速を、前記副管に前記海水を流通させていない場合の流速よりも低下させる流速低下工程を行った後、
前記主管内から前記継手部を補強又は補修する措置を講じる措置工程を行う点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、副管に海水を流通させ、主管に流通する海水の流速を、副管に海水を流通させていない場合の流速よりも低下させる流速低下工程を行い、ピット内への海水の流入又はピット内からの海水の排出が可能な状態を維持しつつ、主管内に作業者が侵入できるようになる。そして、流速が低下した主管内に作業者が立ち入り、主管内から継手により連結されている部分(継手部)に所定の措置を講じる措置工程を実施する。尚、主管を流通する海水の流速は、当該主管内で作業者が所定の措置を講じることが可能な流速まで低下させる。
【0012】
このように、上記特徴構成によれば、主管内から継手部に所定の措置を講じる措置工程を実施することができるため、主管を露出させるための大規模な土木工事を行う場合と比較して、作業コストを抑えることができ、且つ、所定の措置に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0013】
そして、本発明に係る取排水装置のメンテナンス方法の更なる特徴構成は、前記取排水装置は、前記出入部としての取水部を備え、前記副管の海側端部に前記副管内への海水の侵入を防止する海側止水蓋が設置された取水装置であって、
前記流速低下工程は、
前記海側止水蓋を撤去する海側止水蓋撤去工程と、
前記主管のピット側端部と前記ピットとの連通部に区画壁を設置する区画壁設置工程とを含む点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、海側止水蓋撤去工程を行うことにより、主管及び副管を通じてピット内へ海水が流入する状態となる。その後、区画壁設置工程を行うことによって、ピット内から主管内への海水の流入が抑えられる。したがって、主管に流通する海水の流速が副管に海水を流通させていない場合の流速よりも低下した状態で措置工程を行うことができる。尚、この場合も、主管内を流通する海水の流速は、当該主管内で作業者が継手部に対して所定の措置を講じることが可能な流速まで低下させる。
【0015】
このように、上記特徴構成においても、主管内から継手部に所定の措置を講じる措置工程を実施することができるため、主管を露出させるための大規模な土木工事を要する場合に比べ、作業コストを抑えることができ、且つ、所定の措置を講じるのに要する時間を大幅に短縮できる。
【0016】
また、本発明に係る取排水装置のメンテナンス方法の更なる特徴構成は、前記流速低下工程は、前記副管のピット側端部にピット側止水蓋を設置するピット側止水蓋設置工程と、
前記ピット側止水蓋を撤去するピット側止水蓋撤去工程とを更に含み、
前記ピット側止水蓋設置工程は、前記海側止水蓋撤去工程の前に行い、
前記ピット側止水蓋撤去工程は、前記海側止水蓋撤去工程と前記区画壁設置工程との間に行う点にある。
【0017】
この特徴構成によれば、海側止水蓋撤去工程を行う前にピット側止水蓋設置工程を行うことで、副管の海側端部に設置された海側止水蓋に作用する水圧が非常に小さくなり、当該海側止水蓋の撤去を容易に行うことができるようになる。そして、海側止水蓋撤去工程と区画壁設置工程との間にピット側止水蓋撤去工程を行うことで、主管及び副管を通じてピット内へ海水が流入するに状態できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】第1実施形態に係る取水装置のメンテナンス方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】第1実施形態に係る取水装置のメンテナンス方法を説明するための図であり、主管と取水ピットとの間の連通部を示す拡大図である。
【
図5】第1実施形態に係る取水装置のメンテナンス方法を説明するための図であり、副管の海側端部を示す拡大図である。
【
図6】第1実施形態に係る取水装置のメンテナンス方法を説明するための図であり、主管と取水ピットとの間の連通部を示す拡大図である。
【
図7】第1実施形態に係る取水装置のメンテナンス方法を説明するための図であり、伸縮継手部を示す断面図である。
【
図8】第1実施形態に係る取水装置のメンテナンス方法を説明するための図であり、副管の海側端部を示す拡大図である。
【
図9】第1実施形態に係る取水装置のメンテナンス方法を説明するための図であり、伸縮継手部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る取排水装置のメンテナンス方法の一実施形態について、
図1及び
図2に示す取水装置の伸縮継手が設けられた部分(伸縮継手部)を補強する態様を例にとって、「取排水装置のメンテナンス方法」を「取水装置のメンテナンス方法」として説明する。尚、
図1は、取水装置を示す平面図であり、
図2は、伸縮継手部を示す断面図である。
【0020】
〔取水装置〕
まず、海水利用設備としてのLNG製造所などに付設される取水装置1の概略構成について説明する。
図1に示すように、取水装置1は、海から海水を取り入れる取水部2、海水を貯留する取水ピット5、取水部2と取水ピット5とを繋ぎ、配管16と継手17,18とを有する主取水管(「主管」に相当)15、及び取水ピット5に接続し、配管21と継手22,23とを有する副取水管(「副管」に相当)20を備えている。
【0021】
取水部2は、クラゲなどの侵入を防止するフィルタ(図示せず)などを備えており、海水を取り込む取込口の位置が海面よりも低い位置なるように海中に設置されている。また、当該取水部2には、主取水管15の一端側が接続している。
【0022】
取水ピット5は、平面視D字状の外周壁6にて外方に対して区画形成され、且つ、多数のベノト杭にて支持された底壁を備える状態に構成されている。当該取水ピット5の内部には、主取水管15にて取水部2と接続するとともに、副取水管20にて海に直接接続した海側領域S1と、整流壁7にて海側領域S1に対して区画される内方側領域S2とが設けられている。尚、整流壁7は、多数の海水通路を備えて、海水通路を通して海側領域S1の海水を内方側領域S2に流動させることによって、消波するように構成されている。
【0023】
また、取水ピット5には、海水ポンプ8が設けられている。この海水ポンプ8は、吸引管9を内方側領域S2の海水中に延出させる形態で、取水ピット5の上部に設けられており、LNG気化器などの海水を熱媒体として利用する機器に海水を供給する海水ヘッダ(図示せず)に取水ピット5に取り入れた海水を汲み上げるように構成されている。
【0024】
更に、内方側領域S2には、海水ポンプ8にて汲み上げられる前の海水中に存在する大きな異物(貝殻等)を除去するために、複数のバーススクリーン10及び複数のトラベリングスクリーン11が設けられるとともに、海水の流動を調節する複数の角落とし12が設けられている。
【0025】
主取水管15は、複数の配管16が伸縮継手17や特殊継手18によって連結されたものであり、一端側が取水ピット5の海側領域S1に接続し、他端側が取水部2の取水口に接続された状態で、護岸を貫通して地盤に埋設されている。
【0026】
また、副取水管20は、主取水管15と同様に、複数の配管21が伸縮継手22や特殊継手23によって連結されたものであり、一端側が取水ピット5の海側領域S1に接続し、他端側が海中に配置された状態で、護岸を貫通して地盤に埋設されている。尚、副取水管20は、その海側端部に管口を塞ぐ海側止水蓋24が設置されており、また、そのピット側端部に管口を塞ぐピット側止水蓋25が設置できるようになっている。
【0027】
主取水管15における伸縮継手17は、
図2に示すように、スリーブ管17aと、2つのフランジ17bと、2つのゴムリング17cと、2つのフランジ17bを締結する複数対のボルト17d及びナット17eとからなり、スリーブ管17aの両端部内周面と主取水管15における2つの配管16の外周面との間にゴムリング17cが挟まれた状態で、これらゴムリング17cを押さえつけるように2つのフランジ17bが締結されている。したがって、配管16は、内部空間と外部空間との間がゴムリング17cによってシールされた状態で管軸方向に一定量だけ移動できるようになっている。尚、主取水管15における特殊継手18の構造については詳述しないが、公知の特殊継手の構造を採用することができる。
【0028】
副取水管20における伸縮継手22は、主取水管15の伸縮継手17と同様の構成を備えるものであるから、その詳細な説明は省略する。また、特殊継手23についても、主取水管15の特殊継手18と同様に、公知の特殊継手の構造を採用することができる。
【0029】
次に、取水装置1における主取水管15の伸縮継手部を補強する取水装置のメンテナンス方法の手順を
図3~
図9を参照して以下説明する。尚、
図3は、第1実施形態に係る取水装置のメンテナンス方法の手順を説明するフローチャートである。また、
図4~
図9は、第1実施形態に係る取水装置のメンテナンス方法における各工程での取水装置1の状態を説明するための図であり、
図4、
図6及び
図8は、
図1におけるA部の拡大図、
図5及び
図9は、
図1におけるB部の拡大図であり、
図7は、伸縮継手部を示す断面図である。
【0030】
まず、
図4に示すように、副取水管20の取水ピット側端部にピット側止水蓋25を設置する工程(ピット側止水蓋設置工程)#1を行い、副取水管20の取水ピット5側の管口を塞いで、取水ピット5と副取水管20内との間の海水の流通を止める。これにより、海側止水蓋24に作用する水圧が非常に小さくなり、当該海側止水蓋24の撤去を容易に行うことができるようになる。
【0031】
次に、
図5に示すように、副取水管20の海側端部に設置された海側止水蓋24を撤去する工程(海側止水蓋撤去工程)#2を行う。尚、止水蓋24,25の設置及び撤去は、起重機船によって行う。また、海側止水蓋撤去工程#2とともに、副取水管20内へのクラゲの侵入を防止するためのネット設置作業を行うことが好ましい。
【0032】
その後、
図6に示すように、副取水管20の取水ピット側端部に設置したピット側止水蓋25を撤去する工程(ピット側止水蓋撤去工程)#3を行う。これにより、主取水管15及び副取水管20を通じて取水ピット5の海側領域S1へ海水が流入する状態となる。尚、この状態においては、主取水管15内を流通する海水の流速は、主取水管15のみを海水が流通する場合の流速と比較して、損失水頭の関係からおよそ半分以下となる。
【0033】
しかる後、主取水管15の取水ピット5側の端部と取水ピット5の海側領域S1とを連通する部分S1a(連通部)に両者を区画する区画壁30を設置する工程(区画壁設置工程)#4を行う。これにより、
図6に示すように、取水ピット5内から主取水管15内への海水の流入が抑えられ、主取水管15に流通する海水の流速が低下した状態となる。尚、主取水管15内で作業者が安全に補強作業を実施するためには、当該主取水管15内の海水の流速が20cm/sec以下であることが好ましいという観点から、本実施形態においては、主取水管15内を流通する海水の流速を20cm/sec以下まで低下させる。尚、本実施形態に係る取水装置のメンテナンス方法においては、ピット側止水蓋設置工程#1,海側止水蓋撤去工程#2,ピット側止水蓋撤去工程#3及び区画壁設置工程#4が流速低下工程である。
【0034】
このようにして、主取水管15内を流れる海水の流速を低下させた状態で、所定の措置としての補強作業を行う工程(措置工程)#5を実施する。本実施形態では、伸縮継手部の補強に使用する補強部材として、
図7に示すように、中間部に突起部31aを有する角棒31を用いて補強作業を行う。具体的に、補強作業では、水中クレーンを用いて中性浮力とした角棒31などの必要資材を潜水士が施工場所(即ち、伸縮継手部)に搬入する。ついで、複数の角棒31を突起部31aが2つの配管16の間に嵌った状態で主取水管15の周方向に等間隔に位置するように水中溶接を行う。これにより、
図7に示すように、伸縮継手部が主取水管15内から複数の角棒31によって補強された状態となる。
【0035】
上記のようにして措置工程#5を実施した後、連通部S1aに設置した区画壁30を撤去する工程(区画壁撤去工程)#6を行い、これにより、
図8に示すように、主取水管15及び副取水管20を通じて取水ピット5内へ海水が流入する状態となる。その後、副取水管20の海側端部に海側止水蓋24を設置する工程(海側止水蓋設置工程)#7を行う。これにより、
図9に示すように、副取水管20を通じた取水ピット5内への海水の流入が止まり、主取水管15のみを通じて取水ピット5内へ海水が流入する状態、即ち、元の通常の状態に戻る。
【0036】
以上のように、本実施形態に係る取水装置のメンテナンス方法によれば、伸縮継手部に対する補強などの措置を講じる措置工程を行う際に、主取水管15を露出させるための大規模な土木工事等を要することなく、主取水管15内から伸縮継手部に所定の措置を講じることができる。したがって、大規模な土木工事を要する場合と比較して、補強作業や補修作業といった措置を講じるのに必要なコストを抑えることができ、且つ、所定の措置を講じるのに要する時間を大幅に短縮できる。
【0037】
〔別実施形態〕
〔1〕
上記実施形態では、本発明に係る取排水装置のメンテナンス方法について、具体例を挙げて説明したが、その態様は適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、措置工程として取水装置1の伸縮継手部を補強する態様を例にとって説明したが、これに限られるものではなく、特殊継手18,23を補強する、或いは破損した伸縮継手17,22や特殊継手18,23を補修するといった作業を措置工程として行うようにしても良い。尚、継手の一種である伸縮継手は、2つの配管を一定量伸縮可能な状態で連結するものであるため、当該伸縮継手を主取水管に用いることで、地盤の変位や護岸の移動にある程度追従することが可能になるという利点がある。しかしながら、2つの配管を伸縮可能な状態で連結するものであるが故に、地盤の変位量や護岸の移動量によっては伸縮継手から配管が脱落したり、配管と伸縮継手との繋ぎ部分に隙間が生じたりすることで、主取水管の内部と外部とが連通した状態となり、主取水管内への土砂の流入などが生じるおそれがある。このような問題は、2つの配管を固定して連結する特殊継手などと比較して、2つの配管を伸縮可能な状態で連結する伸縮継手の方が発生し易いため、伸縮継手に対して所定の措置を講じ、上記問題の発生を予防することが重要である。また、上記実施形態では、補強部材として突起部31aを有した角棒31を用いる態様を示したが、これに限られるものではなく、措置工程で用いる部材は、伸縮継手や特殊継手の補修、補強を行うために必要な一又は二以上の部材であって、管内を搬送可能な部材を適宜選択することができる。このようにすれば、作業者が所定の措置に必要な部材を主管内に搬入することができ、当該搬入した部材を用いて継手部に対して所定の措置を講じることができる。
【0038】
〔2〕
また、上記実施形態では、主取水管15を流通する海水の流速を20cm/sec以下に低下させる態様を例にとって説明したが、主取水管15内で作業者が所定の作業を実施可能な速度であれば、特に限定されるものではない。
【0039】
〔3〕
更に、上記実施形態では、流速低下工程として、ピット側止水蓋設置工程#1及びピット側止水蓋撤去工程#3を行うようにしているが、必要に応じて、これら2つの工程を省略し、海側止水蓋撤去工程#2と区画壁設置工程#4とを行うようにしても良い。
【0040】
〔4〕
また、上記実施形態では、取水装置1のメンテナンス方法として説明したが、例えば、排水装置のメンテナンス方法としても適用できる。即ち、出入部としての排水部や、海水が貯留される排水ピット、排水部と排水ピットとを繋ぐ主排水管、排水ピットに接続した副排水管などを有する排水装置において、副排水管に海水を流通させるようにして主排水管を流通する海水の流速を低下させることにより、主排水管の継手部を主排水管内から補修、補強することもできる。
【0041】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、取排水装置のメンテナンスに必要な継手部の補修作業や補強作業といった措置を従来よりも容易に講じることができる取排水装置のメンテナンス方法に利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 取水装置
2 取水部
5 取水ピット
15 主取水管
16 配管
17 伸縮継手
20 副取水管
30 区画壁
31 角棒(補強部材)
S1a 連通部