IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フンダシオン セントロ ナショナル デ インベスティガシオネス カルディオバスキュラレス カルロス テルセーロ (セエネイセ)の特許一覧 ▶ コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカスの特許一覧 ▶ ウニベルシダ アウトノマ デ マドリードの特許一覧

特許7057976被験体において胸部大動脈瘤(TAA)を同定するin vitro方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】被験体において胸部大動脈瘤(TAA)を同定するin vitro方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/155 20060101AFI20220414BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20220414BHJP
   A61K 31/223 20060101ALI20220414BHJP
   A61K 31/4174 20060101ALI20220414BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20220414BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
A61K31/155
A61K31/198
A61K31/223
A61K31/4174
A61P9/14
A61P43/00 111
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018566633
(86)(22)【出願日】2016-12-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2016082925
(87)【国際公開番号】W WO2017153023
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2019-12-25
(31)【優先権主張番号】16382103.6
(32)【優先日】2016-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515057883
【氏名又は名称】セントロ ナショナル デ インベスティガシオネス カルディオバスキュラレス カルロス テルセーロ (エフェ.エセ.ペ.)
(73)【特許権者】
【識別番号】504339734
【氏名又は名称】コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス
(73)【特許権者】
【識別番号】518320797
【氏名又は名称】ウニベルシダ アウトノマ デ マドリード
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レドンド モジャ ファン ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】メンデス-バルベロ ネレア
(72)【発明者】
【氏名】オジェル ペドロサ ホルヘ
(72)【発明者】
【氏名】カンパネーロ ガルシア ミゲル ラモン
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】Vascular Pharmacology,2010年,Volume 52, No. 12,p. 37-45
【文献】Br J Pharmacol,2007年,Vol. 150,p. 1075-1083,doi: 10.1038/sj.bjp.0707181
【文献】Br J Pharmacol,2005年,Vol. 145, No. 3,p. 301-312,doi: 10.1038/sj.bjp.0706168.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61P 9/14
A61K 31/00
A61K 45/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における胸部大動脈瘤(TAA)の治療的な処置のために用いられるiNOS阻害剤を含む組成物であって、
前記iNOS阻害剤が、1400W、L-NAME、GW274150、GW273629、塩酸アミノグアニジン(AG)、L-NIL、及びクロトリマゾールからなる群から選択される、前記組成物。
【請求項2】
前記患者が、大動脈二尖弁;マルファン症候群、血管型エーラス・ダンロス、ロイス・ディーツ症候群(1型及び2型)、並びに家族性胸部大動脈瘤及び解離(家族性TAAD)等の症候性胸部大動脈瘤(TAA)、無症候性TAA、又はAdamts1欠損によって引き起こされる大動脈障害と関連する任意の他の疾患からなる一群から選択される疾患を患っている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記患者が、マルファン症候群、血管型エーラス・ダンロス、ロイス・ディーツ症候群(1型及び2型)、並びに家族性胸部大動脈瘤及び解離(家族性TAAD)等の症候性胸部大動脈瘤(TAA)、又は無症候群TAAからなる一群から選択される疾患を患っている、請求項1又は2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記患者がマルファン症候群(MFS)を患っている、請求項1又は2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記患者がヒト患者である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
TAAの進行が制限される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
TAAの進行が復調される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記iNOS阻害剤が、GW274150である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記患者が、マルファン症候群を患っており、かつTAAの進行が復調される、請求項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所与の疾患又は障害を同定するため及び該疾患又は障害を治療するため特異的バイオマーカーが使用される、オーダーメイド医療の分野に含まれ得る。特に、バイオマーカーADAMTS1は、胸部大動脈瘤(TAA:thoracic aortic aneurysm)を引き起こす疾患、好ましくはマルファン症候群を発症するリスクがあるヒト被験体を同定するため、本発明において使用される。
【背景技術】
【0002】
大動脈瘤(AA:Aortic aneurysm)は、血管平滑筋細胞(VSMC:vascular smooth muscle cell)の機能不全及び不利な細胞外マトリックスのリモデリングを特徴とし、それらが合わさって、血管壁の拡張、解離及び破損が起こりやすくなる。AAは、しばしば破損するまで症状が無く、著しい罹患率及び死亡率をもたらす。少なくともより全身性の大動脈障害(aortopathy)がない状態において、腹部AA(AAA:abdominal AA)の十分原因として単一の遺伝子又は遺伝子座は同定されていない。対照的に、胸部AA(TAA:thoracic AA)は、家族性の遺伝性素因との関係が深く、高い浸透率(penetrance)を示す遺伝子変異体を伴う。家族性TAA及び解離(FTAAD:Familial TAA and dissections)は、全身性の結合組織障害(症候性FTAAD)の特徴とは別に又はそれと共に現れる。マルファン症候群(MFS)の患者及びマウスモデルは、骨格、肺、筋肉及び眼の異常を示す。
【0003】
症候性及び無症候性のFTAADは、TGFβシグナル伝達の増加と関連する。TGFβ活性化は、肥大し、脆くなった中膜(medial layer)、線維症、プロテオグリカン蓄積、並びに弾性線維の組織崩壊及び断裂を特徴とするTAAの典型的な組織病理学的特徴である、大動脈中膜変性を引き起こすと提唱されている。しかしながら、TGFβ活性化がFTAADの原因であるのか又は結果であるのかは明らかではない。
【0004】
大動脈のサイズが大きくなるに従って大動脈の解離又は破裂のリスクが上昇することから、主な治療目標は、構造変化を大動脈の壁に制限し、動脈瘤の成長を遅くすることである。TAAにおけるTGFβの病原性の役割と一致して、中和抗TGFβ抗体は大動脈の拡張を予防し、軽度MFSのマウスモデルにおいて弾性ラメラ断裂を抑制する。また同じモデルにおいて、これらのプロセスは、TGFβシグナル伝達を阻害するアンジオテンシンII(Ang-II)I型受容体(AT1R)アンタゴニストであるロサルタンによって阻害される。しかしながら、ロサルタンは重篤なMFSモデルではそれほど有効ではなく、無作為化臨床試験では、ロサルタンは、大動脈起始部肥大の速度減少においてベータ遮断薬のアテノロールよりも有効ではなく、アテノロールとの二剤併用療法は追加的な利益を生まなかった。
【0005】
臨床試験におけるロサルタンの期待外れの成果にもかかわらず、Ang-II及びAT1RはマウスモデルにおけるTAA及びAAAの発症及び進行に関与することは明らかなようである。Ang-IIが動脈瘤を促進する機構についてはほとんど知られていない。しかしながら、本発明の発明者らは最近、Ang-II及び血管リモデリングと関連する他の刺激が、AT1RによってADAMTS1(トロンボスポンジンモチーフ1を有するディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ(A Disintegrin And Metalloproteinase with Thrombospondin Motifs 1))の大動脈での発現を誘導するよう作用することを示した。プロテオグリカン分解性ADAMTSメタロプロテイナーゼファミリーメンバーであるADAMTS1は、組織リモデリング、排卵、創傷治癒及び血管新生に関与する。ADAMTS1は、発生の間及び成年期の大動脈内皮及び血管平滑筋細胞(VSMC:vascular smooth muscle cell)、並びにアテローム性動脈硬化の病変で発現される。また、Adamts1はTAA組織でも発現され、バーシカン及びアグリカンを切断する、正常な大動脈組織において活性である。Adamts1-/-マウスは、先天性腎奇形及び高い周産期死亡率を有するが、血管表現型は報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Ang-II誘導性AAのメディエーターとしてのAdamts1の可能性のある役割を調査するため、本発明者らは、Adamts1+/-マウス及び標的化ノックダウンに基づく大動脈Adamts1欠損のモデルを使用した。本発明者らのデータは、予想外にも、Adamts1欠損はAng-II誘導性動脈瘤を抑制せず、それどころか、全て大動脈セグメントを冒すMFSに類似する重篤な大動脈障害を誘導することを示している。ADAMTS1はMFSでは弱く発現され、MFSの大動脈表現型におけるAdamts1欠損に対する役目を示す。本明細書に示されるノックダウンモデルによる結果は、動脈瘤形成の病因において一酸化窒素(NO)に関する極めて重要な役割を明らかにし、MFSと関連付けたことから、TAA及びTAA関連疾患に対する新たな治療方法を提供する。さらに、本発明は、TAA関連疾患をマルファン症候群又はFTAADと診断するのに有用なデータを得るための解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、胸部大動脈瘤(TAA)又はTAAを引き起こす疾患を発症するリスクがある被験体をスクリーニングするin vitro方法であって、
(a)少なくともADAMTS1及び/又は少なくとも誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現パターン若しくは発現レベル、及び/又は少なくとも以下のADAMTS1基質:アグリカン、バーシカン、組織因子経路インヒビター-2(TFPI-2)、セマフォリン3C、ニドゲン-1、ニドゲン-2、デスモコリン-3、ディストログリカン、mac-2、I型コラーゲン、アンフィレギュリン、TGF-α、ヘパリン結合EGF、シンデカン4、バーシカンネオエピトープ、又はアグリカンネオエピトープのいずれかの発現パターンを測定することと、
b)スクリーニングされる被験体の少なくともADAMTS1及び/又は少なくとも誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の上記発現パターン若しくは発現レベル、及び/又は少なくとも以下のADAMTS1基質:アグリカン、バーシカン、組織因子経路インヒビター-2(TFPI-2)、セマフォリン3C、ニドゲン-1、ニドゲン-2、デスモコリン-3、ディストログリカン、mac-2、I型コラーゲン、アンフィレギュリン、TGF-α、ヘパリン結合EGF、シンデカン4、バーシカンネオエピトープ、又はアグリカンネオエピトープのいずれかの発現パターンを、既に確立されている発現パターン又は発現レベルと比較することと、
を含み、ここで、既に確立されている発現パターン又は発現レベルに対する比較において、少なくともADAMTS1、シンデカン4、バーシカンネオエピトープ、及び/又はアグリカンネオエピトープの発現減少、及び/又は少なくともiNOS、アグリカン、バーシカン、組織因子経路インヒビター-2(TFPI-2)、セマフォリン3C、ニドゲン-1、ニドゲン-2、デスモコリン-3、ディストログリカン、mac-2、I型コラーゲン、アンフィレギュリン、TGF-α、及び/又はヘパリン結合EGFの過剰発現が、胸部大動脈瘤(TAA)又はTAAを引き起こす疾患の指標である、in vitro方法に関する。
【0008】
さらに、本発明は、胸部大動脈瘤(TAA)の治療、予防又は抑制を必要とする被験体におけるかかる治療、予防又は抑制の方法であって、iNOS遮断薬又はその薬学的に許容可能な塩若しくはプロドラッグを上記被験体に投与することを含む、方法に更に関する。
【0009】
最後に、本発明は、胸部大動脈瘤(TAA)の治療、予防又は抑制に有用な化合物を同定するスクリーニング方法であって、
1.NOS阻害剤、特にiNOS阻害剤として、より詳しくはiNOS選択的阻害剤として作用し得る化合物又は化合物群を同定する工程と、
2.対応するin vivo方法又はin vitro方法によって、上記1)において同定された選択化合物の胸部大動脈瘤(TAA)又はTAAを引き起こす疾患の治療、予防又は抑制に対する有用性を判定する工程と、
を含む、スクリーニング方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】Adamts1欠損による症候性TAAの誘導を示す図である。(a)指定のマウス(n=3)に由来する大動脈切片に対するAdamts1免疫染色の代表的な画像。スケールバー、20μm。(b)28日間に亘って対照で治療した又はAng-IIで治療したAR、AsAo及びAbAoの代表的な超音波画像。赤線は内腔境界を示し、黄色は管腔径である。スケールバー、1mm。(c)対照で治療したAdamts1+/+マウス(n=13)及びAdamts1+/-マウス(n=15)、並びにAngIIで治療したAdamts1+/+マウス(n=11)及びAdamts1+/-マウス(n=14)に由来する指定の大動脈切片の最大径(平均±SEM)。一元配置(One-way)ANOVA、****p<0.0001 Adamts1+/+対Adamts1+/-;####p<0.0001、###p>0.001、##p<0.01、p<0.05 対照対Ang-II。(d)(c)に示されるAdamts1+/+マウス及びAdamts1+/-マウスのAng-II治療コホートの生存曲線。Log-rank(Mantel-Cox)検定、p<0.05。(e)同じコホートにおける動脈瘤の発生率。(f)治療終了時の収縮期及び拡張期の血圧。一元配置ANOVA、****p<0.001 Adamts1+/+対Adamts1+/-;####p<0.0001 対照対Ang-II。(g)10のAdamts1+/+及び7のAdamts1+/-のガス注入した(insufflated)肺に由来する切片の代表的なH&E染色。は、進行性の末梢気腔(distal airspace)の拡大を示す。スケールバー、500μm(左)及び50μm(右)。(h)16週齢~20週齢のAdamts1+/+マウス(n=10)及びAdamts1+/-マウス(n=9)の代表的な骨格PET CT画像。赤色点線、1.67cm。脊柱後弯の発生が示される。20匹のAdamts1+/+マウス及び17匹のAdamts1+/-のマウスの(i)胸郭の前後径及び横径(平均±SEM)、並びに(j)頭蓋、並びに(k)上腕骨、大腿骨及び脛骨の長さの定量(平均±SEM)。Studentのt検定、ns、有意差なし;**p<0.01及び***p<0.001。
図2】成体マウスの大動脈におけるAdamts1ノックダウンは、Adamts1遺伝子欠損によって誘導されるものに類似する大動脈疾患を引き起こす。GFPと、siCtl又はsiAdamts1のいずれかとを発現するレンチウイルスを、頸静脈より8週齢のC57BL/6マウスに接種した。(a)実験タイムライン。白色三角形、Eco-BP:超音波及び血圧の分析;LVi、レンチウイルス接種;Ang II、Ang-IIミニポンプ埋め込み。(b)AsAoの切片に対する代表的なGFP及びAdamts1の免疫染色。スケールバー、50μm。(c)形質導入され、指定の治療がなされたマウスに由来する大動脈試料におけるAdamts1免疫ブロット分析。Gapdh発現をローディング対照として使用した。12匹の対照siCtlマウス、16匹の対照siAdamts1マウス、13匹のAng-II siCtlマウス及び16匹のAng-II siAdamts1マウスにおける治療終了時の(d)収縮期血圧及び拡張期血圧(平均±SEM)、並びに最大大動脈径(平均±SEM)。一元配置ANOVA、****p<0.001 siCtl対siAdamts1;p<0.05、###p<0.001、及び####p<0.0001、対照対Ang-II。D及びEの結果は、2つの独立した実験からのプールドデータである。(f)画像はマッソン・トリクローム(Masson T.)、エラスチカ・ワンギーソン(EVG)及びアルシアンブルーの染色を示す。スケールバー、50μm。(g、h)図1並びに図2d及び図2eに示されるマウスコホートに由来するAsAo切片のエラスチン破断及びコラーゲン含有量の定量。一元配置ANOVA、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001 siCtl対siAdamts1又はAdamts1+/+対Adamts1+/-;p<0.05、##p<0.01、####p<0.0001 対照対Ang-II。(i)対照又はAng-IIで治療したAdamts1+/+マウス及びAdamts1+/-マウス(n=3)に由来するAsAo切片の代表的なTGFβ1、pSMAD2及び全SMAD2/3の免疫組織化学検査。
図3】Adamts1ノックダウンは、TGFβ活性化と無関係に大動脈拡張、低血圧及び中膜変性を急速に誘導する。(a)実験タイムライン。siCtl又はsiAdamts1のレンチウイルスを8週齢のC57BL/6マウスに頸静脈より接種し、指定の時間に大動脈拡張及び血圧をモニターした。大動脈抽出物において、(b)RT-qPCR及び(c)免疫組織化学検査によって分析されたAdamts1発現。代表的な画像はAsAo切片におけるAdamts1及びGFPで示される。mRNA量をGapdh発現に対して正規化した(平均±SEM)。一元配置ANOVA、**p<0.001、***p<0.001、****p<0.0001 対siCtl。スケールバー、50μm。siCtrl又はsiAdamts1のレンチウイルスで形質導入されたマウスの指定の時間における(d)収縮期血圧;(e)エラスチン破断;(f)AsAo及び(g)AbAoの最大径;並びに(h)コラーゲン含有量(平均±SEM;n=5~12)。同じ時間点において、(e、h)一元配置ANOVA及び(d、e、g)二元配置(two-way)ANOVA、**p<0.001、****p<0.0001 対siCtl。(i)siCtl又はsiAdamts1によるマウス(n=3)の形質導入から4日後に作製された大動脈抽出物中のMmp2及びMmp9の活性の代表的なザイモグラム分析。(j)実験スキーム。1つの動物群は、レンチウイルス接種の3日前に中和抗TGFβ抗体の腹腔内注射を受け、注射を1週間当たり3回繰り返した。別の群を、レンチウイルス接種の直前に開始する、浸透ミニポンプ送達によってロサルタンで治療した。指定の実験群における、(k)最大AsAo径の変化、並びに(l)エラスチン破断及び(m)大動脈切片中のコラーゲン含有量の実験終了時の定量(平均±SEM)。1群当たりのマウスの数は、siCtrl 8匹、siCtrlロサルタン 4匹、siAdamts1 5匹、siAdamts1ロサルタン 7匹、及びsiAdamts1抗TGFβ 6匹であった。(k)群平均の二元配置ANOVA及び(l、m)一元配置ANOVA、**p<0.001、***p<0.001、****p<0.0001 対si-Ctl;n.s.、有意差なし。(b、e、h)siCtlの結果は実験期間中を通して安定し、データは、2日目、4日目、7日目、14日目、21日目及び49日目の読取りの平均である。(n)siCtlを発現する又はsiAdamts1を発現するレンチウイルスの接種から4日後のマウスに由来する大動脈切片におけるMmp9(赤色)、SMA(白色)及びF4/80(緑色)の免疫蛍光、エラスチン自家蛍光(緑色)、及びDAPI染色核(青色)の代表的な画像。高脂肪食を給餌したApoe-/-マウスにおけるアテローム斑をF4/80染色に対する陽性対照として使用した。スケールバー、50μm。
図4】Adamts1欠損によって誘導される大動脈障害は、NOによって媒介される。(a)実験計画。siCtl又はsiAdamts1のレンチウイルス接種の3日前に開始し、次の14日間継続して、8週齢のC57BL/6マウスに飲用水中のNOS阻害剤(L-NAME)を与えた。(b)指定時間でのAsAo及びAbAoの最大径、並びに大動脈切片における(c)エラスチン破断及び(d)コラーゲン含有量の実験終了時の定量(平均±SEM;各群n=5)。(e)L-NAMEで治療したsiAdamts1形質導入マウスに由来する大動脈抽出物中のMmp2及びMmp9の活性の定量。(b)群平均の二元配置ANOVA、及び(c~e)一元配置ANOVA;p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001 対siCtl;##p<0.01、####p<0.0001 L-NAME対対照;ns、有意差なし。(f~h)8週齢のAdamts1+/+マウス及びAdamts1+/-マウスを21日間に亘ってL-NAMEで治療した。Adamts1+/+マウス12匹、Adamts1+/+ L NAMEマウス13匹、Adamts1+/-マウス14匹、及びAdamts1+/- L-NAMEマウス12匹における(f)指定の時間点でのAsAo及びAbAoの最大径(平均±SEM)、並びに実験終了時の(g)収縮期血圧、(h)エラスチン破断、及び(i)コラーゲン含有量。(f)二元配置ANOVA、***p<0.001、****p<0.0001 対各時間点におけるAdamts1+/- L-NAME。(g~i)一元配置ANOVA、***p<0.001、****p<0.0001、Adamts1+/+対Adamts1+/-;p<0.05、###p<0.001 L-NAME対対照。
図5】Nos2はAdamts1欠損によって誘導される大動脈障害の極めて重要なメディエーターである。(a)指定の時間点でのsiCtl及びsiAdamts1の形質導入マウスに由来する大動脈抽出物中のNos2 mRNAのRT-qPCR分析。一元配置ANOVA(n=4)、**p<0.01、対siCtl。図4のようにsiCtlレベルを特定した。(b)siCtlマウス及びsiAdamts1マウス(接種から14日後)に由来する、並びに12週齢のAdamts1+/+マウス及びAdamts1+/-マウスに由来する大動脈切片におけるNos2(赤色)、エラスチン自家蛍光(緑色)及びDAPI染色核(青色)の代表的な蛍光免疫染色(n=3)。IgGを陰性対照として使用した。スケールバー、50μm。(c)実験計画。8週齢のNos2-/-マウス及び野生型(wt)マウスにsiCtl及びsiAdamts1のレンチウイルスを接種し、大動脈の拡張及び血圧についてモニターした。(d)指定の時間点での野生型siCtlマウス6匹、野生型siAdamts1マウス9匹、Nos2-/- siCtlマウス4匹、及びNos2-/- siAdamts1マウス7匹におけるAsAo及びAbAoの最大径(平均±SEM)。群平均の二元配置ANOVA;****p<0.0001 対Nos2-/- siAdamts1;ns、有意差なし。同じ動物コホートにおける(e)AsAo及びAbAoのエラスチン破断、並びに(f)AbAoのコラーゲン含有量の実験終了時の定量。(g)同じマウスコホートにおける指定の時間点での収縮期血圧(平均±SEM)。群平均の二元配置ANOVA;****p<0.0001 対Nos2-/- siAdamts1;ns、有意差なし。(h)siCtlマウス、siAdamts1マウス、及びNos2-/- siAdamts1マウス(接種から14日後)に由来する、並びに10週齢のAdamts1+/+マウス、及びAdamts1+/-マウスに由来する固定されていない大動脈組織切片におけるNO産生(赤色)、エラスチン自家蛍光(緑色)及びDAPI染色核(青色)の代表的な画像(n=3)。スケールバー、50μm。(i)siCtl又はsiAdamts1を発現するレンチウイルスを接種した(接種から4日後)16週齢のNos2-/-マウス、Adamts1+/+マウス及びAdamts1+/-マウス、並びに野生型マウス(1群当たりn=4匹のマウス)に由来する大動脈切片におけるNos2(赤色)及びSMA(白色)の免疫蛍光、エラスチン自家蛍光(緑色)、並びにDAPI染色核(青色)の代表的な画像。スケールバー、50μm。(j)siCtl-orsiAdamts1発現レンチウイルスで治療した野生型マウス(1群当たりn=5匹のマウス)の大動脈抽出物中の合計の及びリン酸化されたAkt及びp65の代表的な免疫ブロット分析。各レーンはマウス1匹を表す。(i~l)指定の時間点におけるAsAo(左)及びAbAo(右)の最大径。
図6】Adamts1及びNOはマルファン症候群において極めて重要な役割を果たす。(a)実験スキーム。12週齢の野生型マウス及びFbn1C1039G/+マウスに21日間に亘って飲用水中のL-NAMEを与えた。大動脈の拡張及び血圧を、指定の時間及び安楽死の前に特定した。野生型マウス9匹、野生型L-NAMEマウス7匹、Fbn1C1039G/+マウス8匹、及びFbn1C1039G/+ L-NAMEマウス8匹における(b)指定の時間でのAsAo最大径(平均±SEM)、及び(c)実験終了時の収縮期血圧の定量。(b)二元配置ANOVA、****<0.0001 対Fbn1C1039G/+ L-NAME。(c)一元配置ANOVA、**p<0.01 対野生型対照;p<0.05、####p<0.0001 対照対L-NAME。(d)野生型マウス6匹、野生型L-NAMEマウス3匹、Fbn1C1039G/+マウス3匹、及びFbn1C1039G/+ L-NAMEマウス5匹におけるAsAoのエラスチン破断の実験終了時の定量。一元配置ANOVA;***p<0.001、****p<0.0001、対野生型対照;##p<0.01 対照対L-NAME。(e)野生型マウス6匹及びFbn1C1039G/+マウス3匹に由来する大動脈抽出物中のNos2及びNos3のmRNAのRT-qPCR分析。Studentのt検定、***p<0.001。(f)野生型マウス及びFbn1C1039G/+マウスの大動脈横断切片のNO産生(赤色)、Nos2免疫蛍光(赤色)、エラスチン自家蛍光(緑色)、及びDAPI染色核(青色)の代表的な画像(n=3)。(g)野生型マウス及びFbn1C1039G/+マウスに由来する大動脈切片における代表的なAdamts1免疫組織化学検査、及び大動脈抽出物中のAdamts1イムノブロット分析。IgG染色は陰性対照としての役割を果たす。スケールバー、20μm。対照ドナー5名及びMFS患者9名の(h)ADAMTS1免疫蛍光(赤色;n=9)の代表的な中膜の画像、及び(i)免疫組織化学染色切片におけるADAMTS1陽性領域の定量。対照ドナー5名及びMFS患者8名に由来する切片における(j)NOS2免疫蛍光(赤色;n=6)の代表的な中膜の画像、及び(k)NOS2陽性領域の定量。バー、25μm。(h、j)エラスチン自家蛍光(緑色)及びDAPI染色核(青色)も示される。(i、k)データは平均+SEMとして提示される。Studentのt検定;p<0.05、***p<0.001。(l)マルファン症候群における大動脈表現型、及びAdamts1欠損によって誘導される関連する大動脈障害に対するNO及びNOS2の寄与を表すモデル。(m)指定のマウス群(1群当たりn=4匹のマウス)における指定の時間点におけるAsAo最大径、実験終了時の収縮期血圧(1群当たりn=4匹のマウス)。(n)大動脈切片におけるEVG染色の代表的な画像(lと同じマウスコホート)。(o)16週間の(飲用水中の)1400Wによる治療後の12週齢のAdamts1+/-マウス及びFbn1+/C1039Gマウス、並びそれらの対応する野生型同腹仔に由来する。データは平均±s.e.mである。(p、q)21日間に亘って飲用水中の1400Wで治療された36週齢のFbn1+/C1039Gマウス及びそれらの野生型同腹仔における、指定の時間点でのAsAo最大径(p)及び実験終了時の収縮期血圧(k)(n=5匹の対照又は1400Wで治療した野生型マウス;n=7匹の対照Fbn1+/C1039Gマウス;n=6匹の1400Wで治療したFbn1+/C1039Gマウス)。データは平均±s.e.mであるか(p)、又は75パーセンタイル及び25パーセンタイルの箱ひげ図;バーは最大値及び最小値を表す(q)。***P<0.001(対1400Wで治療したFbn1+/C1039Gマウス);P<0.05(対野生型対照);P<0.05(対治療した野生型);群平均の反復計測二元配置ANOVA(o)又は二元配置ANOVA(q)による。
図7】(a)指定の通り、28日間に亘って治療したAdamts1+/+及びAdamts1+/-におけるAdamts1 mRNA発現のRT-qPCR分析。一元配置ANOVA、p<0.05、***p<0.001 Adamts1+/+対Adamts1+/;###p<0.001 対照Adamts1+/+対Ang-II Adamts1+/+。(b)予測されたメンデル比に対する、離乳時に生存していたAdamts1+/+マウス、Adamts1+/-マウス、及びAdamts1-/-マウスの割合(n=151)。(c)3ヶ月齢~4ヶ月齢のAdamts1+/+マウス10匹及びAdamts1+/-マウス7匹に由来する腎臓横断切片の代表的なヘマトキシリン-エオシン(H&E)染色;は水腎症の空間(hydronephrotic space)を示す。スケールバー、500μm。(d)9週齢のAdamts1+/+マウス(n=5)及びAdamts1+/-マウス(n=6)における(d)血漿尿素及び(e)血漿クレアチニンのレベル(平均±SEM)。
図8】(a及びb)Adamts1特異的siRNA(#si27、#si57、#si69)又は対照siRNA(siCtl)をコードするレンチウイルスで血管平滑筋細胞を形質導入した。Adamts1レベルを、これらの細胞に由来する抽出物における(a)RT-qPCR及び(b)免疫ブロットによって分析した。mRNA量をGapdh発現(平均+SEM;n=3)に対して正規化した。一元配置ANOVA、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001 対非治療siCtl。チューブリン発現をローディング対照として使用した。(c)AbAo切片に対する代表的なGFP及びAdamts1の免疫染色。IgG染色は陰性対照としての役割を果たす。スケールバー、50μm。(d)28日間に亘り、指定の通り治療したsiCtl又はsiAdamts1で形質導入されたマウスに由来する大動脈試料中のAdamts1 mRNAレベル。1群当たりのマウスの数は、対照siCtl 12匹、対照siAdamts1 16匹、Ang-II siCtl 13匹、及びAng-II siAdamts1 16匹であった。mRNA量をGapdh発現(平均+SEM)に対して正規化した。一元配置ANOVA、***p<0.001 対siCtl;###p<0.001 対対照。(e)指定されるマウス及び治療(n>6)に由来する大動脈試料中のAdamts1 mRNAレベル。mRNA量をGapdh発現(平均+SEM)に対して正規化した。一元配置ANOVA、**p<0.01、***p<0.001 対対照Adamts1+/+;###p<0.001、####p<0.0001 対対照siCtl;&&&p<0.001 Adamts1+/-対siAdamts1。(f)(d)と同じマウスコホートにおいて分析された実験終了時の大動脈の最大径(平均±SEM)。一元配置ANOVA、****p<0.001 siCtl対siAdamts1;p<0.05及び###p<0.001 対照対Ang-II。
図9図2gに示されるマウスコホートに由来するAbAo切片の(a)代表的なマッソン・トリクローム(Masson T)、エラスチカ・ワンギーソン(EVG)、及びアルシアンブルーの染色、並びに(b)エラスチン破断及びコラーゲン含有量の定量。(c~e)(c)AbAo切片及び(e)AsAo切片に対する、代表的なマッソン・トリクローム(Masson T)、エラスチカ・ワンギーソン(EVG)、及びアルシアンブルーの染色、並びに(d)図2hに示されるマウスコホートに由来するAbAo切片のエラスチン破断及びコラーゲン含有量の定量。(a、c、e)スケールバー、50μm。(b、d))一元配置ANOVA、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001 siCtl対siAdamts1又はAdamts1+/+対Adamts1+/--;p<0.05、##p<0.01、####p<0.0001 対照対Ang-II。
図10】(a)指定の通り治療したsiCtl及びsiAdamts1の形質導入マウスに由来するAbAo横断切片に対する代表的なpSMAD2及びSMAD2/3の免疫染色(n=3)。スケールバー、50μm。対照及びAng-IIで治療した(b)siCtl及びsiAdamts1の形質導入マウス、並びに(c)Adamts1+/+マウス及びAdamts1+/-マウスに由来する抽出物におけるTgfb1、Ctgf、Col1a1及びPai-1のmRNA発現のRT-qPCR分析。一元配置ANOVA、p<0.05、***p<0.001、siCtl対siAdamts1;p<0.05、###p<0.001 対照対Ang-II。(d)Adamts1+/+マウス及びAdamts1+/-マウス。二元配置ANOVA、p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001、siCtl対siAdamts1;p<0.05、##p<0.01、###p<0.001、####p<0.0001、対照対Ang-II。
図11】(a)siCtl及びsiAdamts1の形質導入マウスにおいて、指定時間に測定した拡張期血圧(平均±SEM)。二元配置ANOVA(n=5~12);p<0.05、**p<0.01、***p<0.001 対各時間点のsiCtl。(b)同じマウスに由来するAbAo横断切片におけるエラスチン破断。(c)指定時間での同じマウスにおけるTgfb1、Ctgf、Col1a1及びPai-1の発現のRT-qPCR分析。mRNA量をGapdh発現に対して正規化した。一元配置ANOVA;p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001 対siCtl。(b、c)におけるsiCtlの結果は実験期間を通して安定し、データは2日目、4日目、7日目、14日目、21日目及び49日目の読取りの平均である。siCtlマウス8匹、siCtlロサルタンマウス4匹、siAdamts1マウス5匹、siAdamts1ロサルタンマウス7匹、及びsiAdamts1抗TGFβマウス6匹における、(d)指定時間でのAbAo最大径(平均±SEM)及び(e)収縮期血圧(平均±SEM)。群平均の二元配置ANOVA、****p<0.0001 対siCtl;n.s.、有意差なし。(f)Tgfb1、Pai-1、Ctgf、Col1a1、及びAdamts1のmRNAのRT-qPCR分析。mRNA量をGapdh発現に対して正規化した。一元配置ANOVA;p<0.05、**p<0.01、***p<0.001 対siCtl;##p<0.05、###p<0.001。
図12】(a)指定の通りL-NAMEで治療したsiCtl及びsiAdamts1の形質導入マウスにおける指定時間での収縮期及び拡張期の血圧(平均±SEM;各群に対してn=5)。群平均の二元配置ANOVA、****p<0.0001;####p<0.0001 対照対L-NAME。(b)同じマウス群におけるAbAo横断切片中のエラスチン破断の実験終了時の定量。(c)図4gに示されるのと同じマウスコホートにおける実験終了時の拡張期血圧。(b、c)一元配置ANOVA、**p<0.01、****p<0.0001 対非治療siCtl、又はAdamts1+/+対Adamts1+/-;p<0.05、###p<0.001、L-NAME、対非治療。
図13】siCtl及びsiAdamts1の形質導入マウスに由来する大動脈抽出物における指定時間での(a)Nos3及び(b)End1のmRNA発現のRT-qPCR分析。mRNA量をGapdh発現に対して正規化した。一元配置ANOVA(n=4)、***p<0.001 対siCtl。(c)図5gに示されるのと同じマウスコホートの拡張期血圧(平均±SEM)。群平均の二元配置ANOVA、****p<0.0001 対Nos2-/- siAdamts1;ns、有意差なし。(d)siCtlで治療した野生型マウス6匹、siAdamts1で治療した野生型マウス8匹、siCtlで治療したNos2-/-マウス5匹、及びsiAdamts1で治療したNos2-/-マウス5匹のAbAoにおけるエラスチン破断の実験終了時の定量(平均±SEM)。(e)siCtl又はsiAdamts1で形質導入されたVSMCに由来する抽出物におけるNos2 mRNAのRT-qPCR分析(平均±SEM、1群当たりn=3匹のマウス)。Studentのt検定、**p<0.01。(f)siCtl又はsiAdamts1で形質導入したVSMCに由来する抽出物におけるNos2(1群当たりn=4)、p-Akt-S473(1群当たりn=3)、Akt(1群当たりn=3)、p-p65-S536(1群当たりn=3)及びp65(1群当たりn=3)の代表的な免疫ブロット分析。チューブリン(1群当たりn=4)をローディング対照として使用した。(g)siCtl又はsiAdamts1で形質導入され、指定のmTOR阻害剤であるAZD8055で処理したVSMCに由来する抽出物におけるNos2、pAkt-S473及びAktの代表的な免疫ブロット分析(1群当たりn=3)。(h)siCtl又はsiAdamts1で形質導入され、指定のNos2阻害剤である1400wで処理したVSMCに由来する順化培地中の亜硝酸塩及び硝酸塩(全NOx)の定量。治療していないsiCtlマウス8匹及び治療したsiCtlマウス6匹、並びに治療していないsiAdamts1マウス8匹及び治療したsiAdamts1マウス6匹。(i)siCtl又はsiAdamts1で形質導入され、指定のNos2阻害剤である1400wで処理した固定されていないVSMC中のNO産生(赤色)及びGFP蛍光(緑色)の代表的な画像(1群当たりn=3)。バー、50μm。
図14】(a)野生型マウス9匹、野生型L-NAMEマウス7匹、Fbn1C1039G/+マウス8匹、及びFbn1C1039G/+ L-NAMEマウス8匹における指定時間でのAbAo最大径(平均±SEM)。二元配置ANOVA、****p<0.0001 対Fbn1C1039G/+ L-NAME。(b)同じマウスにおける拡張期血圧の実験終了時の定量。一元配置ANOVA、**<0.01 対非治療野生型;##p<0.01 対照対L-NAME。野生型マウス6匹、野生型L-NAMEマウス3匹、Fbn1C1039G/+マウス3匹及びFbn1C1039G/+ L-NAMEマウス5匹における(c)AbAoにおけるエラスチン破断、並びに(d)AsAo及びAbAoにおけるコラーゲン含有量の実験終了時の定量。一元配置ANOVA;***p<0.001、対非治療野生型;##p<0.01、非治療対L-NAME。(e)野生型マウス6匹及びFbn1C1039G/+マウス3匹に由来する大動脈抽出物中のAdamts1 mRNAのRTqPCR分析。(f)健康なドナー5名及びMFS患者9名に由来するヒト試料の大動脈横断切片におけるADAMTS1免疫組織化学検査の代表的な中膜の画像。バー、25μm。(g)対照ドナー5名及びMFS患者8名に由来する切片におけるNOS2免疫蛍光(赤色;n=6)及びDAPI染色核(青色)の代表的な中膜の画像。バー、25μm。(h)ADAMTS1-NOS2軸は、ヒトMFSの大動脈試料において調節されていない(deregulated)。12週齢におけるFbn1C1039G/+8名及びFbn1C1039G/+;Nos2-/-14名のAsAo及びAbAoの最大径(平均±SEM)。Studentのt検定、***p<0.001、****p<0.0001。(i)ADAMTS1-NOS2軸は、ヒトMFSの大動脈試料において調節されていない。対照ドナー5名及びMFS患者8名に由来する切片におけるNOS2(赤色)及びSMA(白色)の免疫蛍光、エラスチン自家蛍光(緑色)、及びDAPI染色核(青色)の代表的な中膜の画像。バー、25μm。
図15】(a)Nos2阻害剤であるアミノグアニジン(AG)はAdamts1+/-マウスにおいて大動脈径を減少させる。AG(飲用水中、1.5gr/l)で治療された又はAGで治療されていないAdamts1+/+(n=4)及びAdamts1+/-(n=5)からの上行大動脈径及び腹部大動脈径(平均±SEM)。反復計測二元配置ANOVA ***p<0.001及び****p<0.001。(b)Nos2阻害剤であるアミノグアニジン(AG)は、Adamts1+/-マウスにおいて大動脈径を減少させる。(a)に示されるマウスによる収縮期血圧(平均±SEM)。一元配置ANOVA、***p<0.001 対照Adamts1+/+対Adamts1+/-;##p<0.01 AGで治療したAdamts1+/+対Adamts1。(c)同じマウスにおける拡張期血圧の実験終了時の定量。二元配置ANOVA、p<0.05、**p<0.01 対非治療野生型;p<0.05 ###p<0.001。(d)同じ動物コホートにおけるエラスチン破断の定量(平均±SEM)。スケールバー、50μm。二元配置ANOVA、p<0.05 **p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001 対非治療野生型;###p<0.001。
図16】siCtl又はsiAdamts1のレンチウイルスで形質導入し、Nos2阻害剤、すなわち指定の通り、1400W(2μm)、アミノグアニジン(AG)(100μM)、GW273629(20μm)、l-NIL(3mM)、クロトリマゾール(20μM)で処理したVSMCに由来する順化培地中の亜硝酸塩及び硝酸塩(全NOx)の定量。データは平均±s.e.mである;1群当たりn=4;****P<0.0001(対対照-siCTL)、####P<0.0001(対対照-siAdamts1)。
図17】siCtl又はsiAdamts1で形質導入され、指定されるNos2阻害剤で処理された固定されていないVSMCにおけるNO産生(赤色)及びGFP蛍光(緑色)の代表的な画像(n=4)。バー、50μm。
図18】NOS2の構造、リガンド及び阻害剤結合部位の3D図である。ヒトNOS2のA鎖(緑色)及びB鎖(青色)をカートゥーン(cartoon)で示し、本来のリガンドを棒状部分(sticks:スティック)として示す(Hemo及びH4Bは赤色、L-アルギニンは黄色)、(a)ヒトNOS2構造及び本来のリガンド、並びに(b)ダイマー界面及びリガンド領域の拡大図。全ての阻害剤モデルは、リガンド領域のグアニジン部位(黄色の棒状部分)において結合する。(c)ではL-NAME、(d)では1400w、(e)ではアミノグアニジン、(f)ではGW273629、(g)ではL-NIL、及び(h)ではクロトリマゾールに対する結合部位が示される。クロトリマゾールの場合、以前に報告されるように、ダイマー界面を修飾するNOS2のダイマー化を阻害する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
本明細書において同じ意味で使用される「一酸化窒素合成酵素」及び「NOS」の用語は、eNOS、nNOS及びiNOSを含む酵素である一酸化窒素合成酵素のいずれかのアイソフォームを指す。
【0012】
本明細書において同じ意味で使用される「誘導型一酸化窒素合成酵素」、「NOS-2」及び「iNOS」の用語は、Ca+2依存性誘導型アイソフォームの酵素である一酸化窒素合成酵素を指す。
【0013】
本明細書において同じ意味で使用される「一酸化窒素合成酵素阻害剤」及び「NOS阻害剤」の用語は、一酸化窒素合成酵素の生理学的効果を減少させる化合物を意味する。かかる阻害剤は、一酸化窒素合成酵素の特定のアイソフォームに対して選択的であってもよく、又は実質的に選択的でなくてもよい、すなわち、一酸化窒素合成酵素の2以上のアイソフォームに対しておおむね有効であってもよい。
【0014】
「選択的一酸化窒素合成酵素阻害剤」及び「選択的NOS阻害剤」の用語は、一酸化窒素合成酵素の他のアイソフォームに対して、一酸化窒素合成酵素の特定のアイソフォームの生理学的効果を優先的に減少させることができる化合物を意味する。
【0015】
「選択的誘導型一酸化窒素合成酵素阻害剤」、「選択的NOS-2阻害剤」及び「選択的iNOS阻害剤」の用語は、一酸化窒素合成酵素の他のアイソフォームに対して、一酸化窒素合成酵素のカルシウムイオン非依存性アイソフォームの生理学的効果を優先的に減少させることができる化合物を意味する。一実施形態では、選択的iNOS阻害剤は、内皮型NOS又は神経型NOSのいずれかと比較して、in vivo投与が100mg/kg未満の有効性(ED50)を生じるようにiNOSの選択的阻害をもたらす。別の実施形態では、選択的iNOS阻害剤は、内皮型NOS又は神経型NOSのいずれかと比較して、in vivo投与が齧歯類エンドトキシンモデル)で10mg/kg未満の有効性(ED50)を生じるようにiNOSの選択的阻害をもたらす。更なる実施形態では、iNOS阻害剤は、平均動脈血圧の上昇によって測定されるように、eNOSに関して約20倍の選択性を示す。更に別の実施形態では、iNOS阻害剤は、平均動脈血圧の上昇によって測定されるように、eNOSに関して100倍以上の選択性を示す。更に別の実施形態では、iNOS阻害剤は、胃腸通過又は陰茎勃起の減少によって測定されるように、nNOSに関しての約20倍の選択性を示す。別の実施形態では、iNOS阻害剤は、胃腸通過又は陰茎勃起の減少によって測定されるように、nNOSに関して約100倍以上の選択性を示す。
【0016】
「スクリーニング」の用語は、健康な個体と診断未確定の胸部大動脈瘤(TAA)を患う又は上記適応症を患うリスクの高い人々とを区別する目的を持つ、一般集団に属する下記に定義される胸部大動脈瘤(TAA)を患うリスクがある個体群の検査又は試験として理解される。
【0017】
「胸部大動脈瘤(TAA)」の用語は、正常よりも少なくとも50%超の大動脈壁の胸部セグメント(thoracic segment)の局所的な病的拡張としてTAAを定義する広く受け入れられている医学的定義を含み、真性動脈瘤は血管壁の全ての層を含む。本発明は、マルファン症候群、血管型エーラス・ダンロス、ロイス・ディーツ症候群(1型及び2型)、並びに家族性胸部大動脈瘤及び解離(家族性TAAD)等の症候性胸部大動脈瘤(TAA);無症候性TAA;又はAdamts1欠損によって引き起こされる大動脈障害と関連する任意の他の疾患等のTAAをもたらす疾患を含む。無症候性胸部大動脈瘤(TAA)は、胸部大動脈瘤(TAA)をもたらす症候群として理解されていない疾患を含む。また、本発明は大動脈二尖弁等のTAAを生じる疾患を含み、ここで、Adamts1ヌルマウスはほとんどの場合、大動脈二尖弁を発症する。
【0018】
「低侵襲生体試料」の表現は、患者から血液を採取するのに使用される細い針以外に有害な機器を使用する必要がなく、結果的に患者に対して害がない、患者身体から得られる任意の試料を指す。具体的には、本発明では、低侵襲生体試料は、血液試料、血清試料、又は血漿試料を指す。
【0019】
本発明に記載されるバイオマーカーのいずれか又はそれらの組み合わせの「上方制御」又は「過剰発現」の用語は、所与の「閾値」又は「カットオフ値」に関して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%超、少なくとも65%超、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、又はそれよりも多いそれらの発現レベルの増加を指す。さらに、本発明に記載されるバイオマーカーのいずれか又はそれらの組み合わせの「上方制御」又は「過剰発現」の用語もまた、所与の「閾値」又は「カットオフ値」に関して、少なくとも約1.5倍、約2倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍、約50倍、又は約100倍のそれら発現レベルの増加を指す。
【0020】
「Adamts1」の用語は、トロンボスポンジンモチーフ1を有するディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ、特にヒトにおいてADAMTS1遺伝子によってコードされる酵素を指す。
【0021】
本発明に記載されるバイオマーカーのいずれか又はそれらの組み合わせの「発現減少」の用語は、所与の「閾値」又は「カットオフ値」に関して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%超、少なくとも65%超、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、又はそれよりも多いそれらの発現レベルの減少を指す。さらに、本発明に記載されるバイオマーカーのいずれか又はそれらの組み合わせの「発現減少」の用語もまた、所与の「閾値」又は「カットオフ値」に関して、少なくとも約1.5倍、約2倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍、約50倍、又は約100倍のそれら発現レベルの減少を指す。
【0022】
「閾値」又は「カットオフ値」の用語は、本発明に記載されるAdamts1又はiNOSの発現レベルを指す場合、患者の発現レベルが該閾値若しくはカットオフ又は参照レベルを上回る又は下回る場合に、所与の感度及び特異性で被験体が症候性の又は無症候性の胸部大動脈瘤(TAA)を患う可能性があることを示す参照発現レベルを指す。本発明において、上記「閾値」又は「カットオフ値」は、健康な被験体から取得した参照発現レベルである。
【0023】
発現の閾値又はカットオフレベルを確立するための様々な統計学的及び数学的な方法が、従来技術において知られている。特定のバイオマーカーに対する閾値又はカットオフ発現レベルが選択され得る。当業者は、感度又は特異性に関する種々の値を得るために、例えば特定のバイオマーカー又はそれらの組み合わせに対するROCプロットに沿って移動させることによってこれらの閾値又はカットオフ発現レベルを変化させることができ、それにより全体的なアッセイ性能に影響を及ぼすことを理解する。例えば、臨床的な観点から見てロバストな診断方法を目的とする場合は、高い感度を持とうとするはずである。しかしながら、費用対効果の高い方法を目標とする場合は、高い特異性を得ようとするはずである。最良のカットオフは、最も優れた感度及び特異性をもたらす特定のバイオマーカーに対するROCプロットから得られた値を指す。感度及び特異性の値は、閾値(カットオフ)の範囲に亘って計算される。したがって、アッセイされた患者集団の少なくとも60%において、又はアッセイされた患者集団の少なくとも65%、70%、75%、若しくは80%において、感度及び/又は特異性が、少なくとも約70%であるように、また例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも100%となり得るように、閾値又はカットオフ値を選択することができる。
【0024】
本明細書で使用される「C1~6アルキル」の表現は、メチル基及びエチル基、並びに直鎖又は分岐鎖のプロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基を含む。特定のアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル及びtert-ブチルである。「C1~6アルコキシ」、「C1~6アルコキシC1~6アルキル」、「ヒドロキシC1~6アルキル」、「C1~6アルキルカルボニル」、「C1~6アルコキシカルボニルC1~6アルキル」、「C1-アルコキシカルボニル」、「アミノC1~6アルキル」、「C1~6アルキルカルバモイルC1~6アルキル」、「C1~6ジアルキルカルバモイルC1~6アルキル」、「モノ-又はジ-C1~6アルキルアミノC1~6アルキル」、「アミノC1~6アルキルカルボニル」、「ジフェニルC1~6アルキル」、「アリールC1~6アルキル」、「アリールカルボニルC1~6アルキル」、及び「アリールオキシC1~6アルキル」等の派生する表現は、適宜解釈される。
【0025】
本明細書で使用される、「C2~6アルケニル」の表現は、エテニル基、並びに直鎖又は分岐鎖のプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基を含む。同様に、「C2~6アルキニル」の表現は、エチニル基及びプロピニル基、並びに直鎖又は分岐鎖のブチニル基、ペンチニル基及びヘキシニル基を含む。
【0026】
本明細書で使用される「アリール」は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、ビフェニレニル(biphenylenyl)等の炭素環式芳香族環系(carbocyclic aromatic ring system)を表す。また、アリールは、上に列挙される炭素環式芳香族環系の部分水素化誘導体を含むことが意図される。かかる部分水素化誘導体の非限定的な例は1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1,4-ジヒドロナフチル等である。
【0027】
本明細書で使用される「アリールオキシ」は、基-O-アリールを表し、ここで、アリールは上に定義される通りである。
【0028】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」(それ自体で、又は「ヘテロアリールオキシ」若しくは「ヘテロアリールアルキル」等の任意の組み合わせで)は、限定されないが、ピロール、ピラゾール、フラン、チオフェン、キノリン、イソキノリン、キナゾリニル、ピリジン、ピリミジン、オキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアゾール、イミダゾール、又はベンズイミダゾール等の1以上の環が、N、O又はSからなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、5員~10員の芳香族環系である。
【0029】
本明細書で使用される「複素環又はヘテロシクリル」(それ自身で、又は「ヘテロシクリルアルキル」等の任意の組み合わせで)は、限定されないが、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロピラン、又はイミダゾリジン等の1以上の環がN、O又はSからなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む、飽和又は部分不飽和の4員~10員の環系である。
【0030】
本明細書で使用される「C1~6パーフルオロアルキル」の表現は、上記アルキル基中の全ての水素原子がフッ素原子で置換されていることを意味する。実例として、トリフルオロメチル基及びペンタフルオロエチル基、並びに直鎖又は分岐鎖のヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基及びトリデカフルオロヘキシル基が挙げられる。「C1~6パーフルオロアルコキシ」の派生する表現は、適宜解釈される。
【0031】
本明細書に使用される「C3~8シクロアルキル」の表現は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルを意味する。
【0032】
本明細書で使用される「C3~8シクロアルキルC1~6アルキル」の表現は、本明細書に定義されるC3~8シクロアルキルが本明細書に定義されるC1~6アルキルに更に付着されていることを意味する。代表例として、シクロプロピルメチル、1-シクロブチルエチル、2-シクロペンチルプロピル、シクロヘキシルメチル、2-シクロヘプチルエチル、及び2-シクロオクチルブチル等が挙げられる。
【0033】
本明細書で使用される「ハロゲン」又は「ハロ」は、クロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを意味する。
【0034】
本明細書で使用される「C1~6アルキルスルホニル」は、本発明において、基-S(=O)2C1~6アルキルを示し、ここで、C1~6アルキルは上に定義される通りである。代表例として、限定されないが、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n-プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、iso-ブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニル、n-ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、tert-ペンチルスルホニル、n-ヘキシルスルホニル、イソヘキシルスルホニル等が挙げられる。
【0035】
本明細書で使用される「アリールスルホニル」は基-S(=O)2アリールを表し、ここで、アリールは上に定義される通りである。
【0036】
本明細書で使用される「ヘテロアリールスルホニル」は基-S(=O)2ヘテロアリールを表し、ここで、ヘテロアリールは上に定義される通りである。
【0037】
本明細書で使用される「患者」は、例えばラット、マウス、イヌ、ネコ、モルモット、及びヒト等の霊長類等の温血動物を意味する。
【0038】
本明細書に使用される「薬学的に許容可能な担体」の表現は、無毒な溶媒、分散剤、賦形剤、アジュバント、又は医薬組成物、すなわち患者への投与が可能な剤形の形成を可能とするため本発明の化合物と混合される他の材料を意味する。かかる担体の1つの例は、非経口投与に典型的に使用される薬学的に許容可能な油である。
【0039】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な塩」の用語は、本発明の化合物の塩が医薬製剤において使用され得ることを意味する。しかしながら、他の塩が、本発明による化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩の作製に有用な場合がある。本発明の化合物の好適な薬学的に許容可能な塩として、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、酢酸、サリチル酸、ケイ皮酸、2-フェノキシ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、炭酸、又はリン酸等の薬学的に許容可能な酸の溶液と本発明による化合物の溶液とを混合することによって形成され得る酸付加塩が挙げられる。また、オルトリン酸一水素ナトリウム及び硫酸水素カリウム等の酸性金属塩も形成され得る。また、そのように形成される塩は、モノ-又はジ-酸性塩のいずれかとして存在し得て、また水和されて又は実質的に無水のいずれかで存在することができる。さらに、本発明の化合物が酸性部分を持つ場合、その好適な薬学的に許容可能な塩として、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩又はカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩又はマグネシウム塩;及び好適な有機配位子と共に形成される塩、例えば第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0040】
「置換、置換された」は、C1~6アルキル、C1~6パーフルオロアルキル、ヒドロキシ、-CO2H、エステル、アミド、C1~C6アルコキシ、C1~C6パーフルオロアルコキシ、-NH2、Cl、Br、I、F、-NH-低級アルキル、及び-N(低級アルキル)2からなる群から独立して選択される1個~2個の置換基によって置換されていることを意味する。
【0041】
「治療的有効量」は、指定される障害又は状態を治療するのに有効な化合物の量を意味する。
【0042】
「含む、含んでいる」の用語は、「含む、含んでいる」の単語の前にあるもの全てを含むが、これらに限定されないことを意味する。したがって、「含む、含んでいる」の用語の使用は、列挙される要素が必要とされる又は必須であるが、他の要素は任意であり、存在してもしなくてもよいことを示す。
【0043】
「からなる」は、「からなる」の前にあるもの全てを含み、それらに限定されることを意味する。したがって、「からなる」の句は、列挙される要素が必要とされ、又は必須であり、他の要素は存在し得ないことを示す。
【0044】
また、本明細書に使用される「キット」の用語は、いかなる具体的な装置にも限定されず、限定されないがマイクロアレイ、バイオアレイ、バイオチップ、又はバイオチップアレイ等の本発明を実施するのに適した任意の装置を備えることに留意されたい。
【0045】
本明細書に実例として記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素(単数又は複数)、限定(単数又は複数)のない状態で好適に実施されてもよい。したがって、例えば、「含む、含んでいる(comprising)」、「含む、含んでいる、挙げられる(including)」、「含有する、含有している(containing)」等の用語は、拡大的に、限定なく読まれるものとする。さらに、本明細書で採用される用語及び表現は、限定ではなく説明する用語として使用されており、かかる用語及び表現の使用において、示され記載される特徴又はそれらの一部の任意の等価物を除外する意図はなく、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲において様々な修飾が可能であることが認識される。したがって、本発明は好ましい実施形態によって具体的に開示されているが、本明細書に開示される好ましい実施形態に具体化される本発明の任意の特徴、変更形態及び変形形態が当業者によって用いられてもよく、かかる変更形態及び変形形態は、本発明の範囲に含まれるものとすることが理解されるべきである。
【0046】
詳細な説明
本発明は、NO経路、特にiNOSをマウスモデルにおける大動脈疾患の必須のメディエーターとして同定し、胸部大動脈障害における、特にヒトTAAにおける介入に対して可能な標的としてかかる経路を示唆する。さらに、本発明者らは、Adamts1が血管壁ホメオスタシスの重要なメディエーターであり、胸部大動脈瘤において、特に症候性胸部大動脈瘤(TAA)において、より詳しくはMFSにおいてその発現が減少されることを示す。実際、Adamts1欠損マウスにおける大動脈障害のヒト症候性FTAADに対する類似点は、MFSにおけるADAMTS1下方制御がMFS患者における大動脈表現型の土台となっている可能性があることを示唆する。
【0047】
本発明の発明者らは、以前に、レンチウイルス指向性が投与経路に依存すること、及び頸静脈への注射が大動脈壁の安定的で効率的な形質導入をもたらすことを報告した。このアプローチは、大動脈全体に亘るAdamts1の長期的なサイレンシングを達成し、血管壁で発現される遺伝子の分析のためのゲノム改変された(genomically modified)マウスの使用に対する代替法を提供する。サイレンシングモデルは、Adamts1+/-マウスのものと識別不能な大動脈表現型の変化及び症状をもたらす。レンチウイルスサイレンシングの主要な実験の利益は、遺伝子ターゲティングのタイミングの制御である。コンディショナルノックアウトのアプローチにより大動脈壁においてこれを達成することは、3つの主な細胞型に特異的なドライバー(drivers)の同時使用を必要とし、実行できないであろう。対照的に、単一のレンチウイルス型が全ての血管壁細胞の遺伝子発現をノックダウンする。さらに、タイムドノックダウン(timed knockdown)は、大動脈障害を研究するための特有のモデルを提供し、本発明者らが疾患に結び付く病的なシーケンスを明らかにすることを可能とする。すなわちsiAdamts1形質導入は、即時の低血圧及びエラスチン分解、その後、急速な大動脈拡張を引き起こすのに対し、TGFβ-Smad経路はレンチウイルス感染から1週間後~2週間後まで活性化されなかった。
【0048】
大動脈の中膜変性及び拡張は、症候性及び無症候性の大動脈疾患におけるTGFβ及びAngIIの経路の活性化と関連するが、これらの経路の遮断は、疾患において少なくとも最初の2週間はsiAdamts1媒介大動脈拡張、中膜変性又は低血圧に対して顕著な効果を有しなかった。それにもかかわらず、本発明者らのデータは、これらの経路の後期段階に対する役割と対応する。この点について、TGFβの中和もまた、重度の進行型のMFS(Fbn1mgR/mgRマウス)の初期段階における動脈瘤の進行を抑制することはできなかったが、後期段階では保護した。
【0049】
高血圧は、AAにおける危険因子とされるが、本発明者らの結果は、L-NAMEの昇圧効果がAdamts1+/-マウス及びMFSマウスにおける大動脈拡張の回復と対応することを示す。拡張の回復は著しく速く、1週間で完了した。これらのマウスにおける弾性線維及びコラーゲンの沈着はNOS阻害の3週間後に正常レベルまで戻り、大動脈壁からのコラーゲンクリアランス及びエラスチン合成の誘導に対する機構の活性化を示唆した。本発明者らは3ヶ月齢~4ヶ月齢のマウスにおいてNOS阻害剤を使用しており、より高齢のマウスにおけるそれらの治療効果はまだ特定されていない。それにもかかわらず、本発明者らの結果は、NOが大動脈疾患の主要なトリガーであり、またそれらの症状が持続するのに必要であることを明白に示す。
【0050】
脳及び腹部のAAのマウスモデルにおいてNOを関係付ける先の報告では、しばしば、薬理学的な対(versus)標的化遺伝子欠失アプローチに関して矛盾するデータが与えられている。例えば、Nos2に対する抑制性又は賦活性の役割がAAAのモデルで報告されている。脳動脈瘤では、薬理学的阻害剤による結果は、Nos2が疾患発症に非常に重要であることを示すが、Nos2-/-マウス及び野生型マウスは同様の脳動脈瘤の発生を有する。本発明者らの分析では、遺伝学的研究は、L-NAMEで得られた結果、すなわちNos2-/-マウスがsiAdamts1誘発性大動脈障害に抵抗性であったことを支持する。したがって、このモデルにおけるNOの病理学的役割はNos2によって媒介され、これはAdamts1サイレンシングの2日後には誘導される。Nos2は静止細胞では通常発現されないが、一旦誘導されると、高い活性を維持することに注目することが重要である。本発明者らは、2種類のAdamts1欠損マウスモデルであるMFSマウス、またより重要なことにはMFS患者の大動脈切片において高いNos2タンパク質を示す。まとめると、本発明者らの結果は、NOS2媒介NO産生が、TAAの病因において、特に症候性胸部大動脈瘤(TAA)の病因において、特にMFS及びAdamts1欠損によって引き起こされる大動脈障害において必須の役割を果たすことを示す。
【0051】
したがって、本発明の第1の態様は、胸部大動脈瘤(TAA)の治療、予防又は抑制を必要とする被験体におけるかかる治療、予防又は抑制の方法に有用な組成物であって、該方法が、iNOS遮断薬/阻害剤、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはプロドラッグを該被験体に投与することを含む、組成物に関する。本発明の第1の態様の方法は、たとえ、被験体が本発明において後に記載される方法論によってTAA若しくはTAAを発症するリスクがあると診断された場合であっても、又は被験体が任意の他の既知の臨床上有効な方法論によってTAA若しくはTAAを発症するリスクがあると診断された場合であっても有用であることに注目することが重要である。
【0052】
さらに、TAAは、全身性の結合組織疾患の顕著な特徴を示す症候性症状(presentations)(マルファン症候群、ADESAD(Adamts1欠損誘発性症候性大動脈疾患(ADESAD)等)及びロイス・ディーツ症候群(LDS))と、TAAによる大動脈二尖弁及び単離家族性TAA等の無症候性症状とに更に分類され得ることが注目される。本発明の発明者らは、本明細書を通して、特に図6m及び図6oにおいて、iNOS阻害剤が、2つの症候性症状、特にマルファン及びADESADにおける進行性TAA拡大の予防、制限、及び復調を目的とする医学療法として有用であることを明確に説明した。さらに、症候性症状は、一般に、疾患の発症及びその後の進行に関して同様の性質を提示し、特にそれらが全て数ある特徴の中でも弾性線維の断裂を特徴とする中膜変性を伴って発症することが良く知られ、したがって、2つの症候性症状において、中膜変性等の共通する性質の復調に有効な医学的治療が、ロイス・ディーツ症候群(LDS)等の他の症候性症状においても有効であろうことはもっともらしく見える(図4h、図4i(それぞれ、ADESADにおけるエラスチン破断及び線維症)を参照されたい)(また図6o、図6h及び図6jも参照されたい)ということに注目されたい。TAAによる大動脈二尖弁及び単離家族性TAA等の無症候性症状について本発明の発明者らは、該疾患の無症候性症状に対する動物モデルを作製した(このモデルにおける中膜変性及び大動脈拡張が示される、図2e、図2f、及び図2gを参照されたい)。さらに、図4b、図4c、図4d、図5d、図5e及び図5fは、iNOS阻害剤による治療は、かかる無症候性症状モデルにおける大動脈拡張及び中膜変性を予防し、上記疾患の無症候性症状のiNOSノックアウトマウスが中膜変性又は大動脈拡張を発症しないことを説明する。
【0053】
したがって、本発明者らは、本明細書において提供される証拠は、疾患の症候性及び無症候性の症状における進行性TAA拡大の予防、制限及び復調を目的とする医学療法としてのiNOS阻害剤の有用性を実証すると信じている。結果的に、本発明の明細書は、TAAの治療におけるiNOS阻害剤の有用性を実証する。
【0054】
本発明の好ましい態様では、iNOS阻害剤が、ヒトNOS2構造のL-アルギニンリガンド領域のグアニジン部位で結合することができ、L-アルギニンの存在下でヒトNOS2アイソフォームを阻害することができる。この意味では、本発明者らは、ヒトNOS2構造のL-アルギニンリガンド領域のグアニジン部位を結合する能力、及びL-アルギニンの存在下でヒトNOS2アイソフォームを阻害する能力により特徴付けることによって「iNOS阻害剤」の表現を更に表した。創薬の早い時期から、異なる構造型の分子が同じ生物学的作用を誘発し得ることが知られていたことに留意されたい。本発明の場合、及び明細書を通して説明されるように、構造上多様な化合物は、図18に図示されるものと同じように共通の標的に結合し、1400W、アミノグアニジン(図15a及び図15b)、L-Name(図4b)、GW273629、L-NIL及びクロトリマゾール(図16)について図17又は図6lに図示されるように、それらの化合物はいずれもL-アルギニンの存在下でヒトNOS2アイソフォームを阻害し、NOの発現を減少させた。結果的に、請求項2の範囲に含まれる全てのiNOS阻害剤が本発明の実施に有用となるはずであるということは間違いない。
【0055】
第1の態様の別の好ましい実施形態では、iNOS阻害剤が、R2によって残りの化合物に共有結合される以下の化学部分を含む:
【化1】
(式中、
R1はメチル基、メチルアミン基又はアミノ基であり、R2はアミノ基又はメチレン基である)。
【0056】
iNOS遮断薬/遮断薬はiNOS選択的阻害剤であることが好ましい。より好ましくは、iNOS阻害剤は、1400W、L-NAME、BYK191023、GW274150、GW273629、MEG(コハク酸ナトリウム)、塩酸アミノグアニジン(AG)、L-カナバニン、S-(2-アミノエチル)-ITU二臭化水素酸塩、2-イミノピペリジン塩酸塩、1-アミノ-2-ヒドロキシグアニジン、p-トルエンスルホン酸塩、1,3-BP-ITU二臭化水素酸塩、2-アミノ-4-メチルピリジン、S-メチルイソチオ尿素硫酸塩、カナバニン硫酸塩、MEG(硫酸塩)、AMT塩酸塩、L-NIL二塩酸塩、1,3-PBITU、二臭化水素酸塩、S-(3-アミノプロピル)-ITU二臭化水素酸塩、S-イソプロピルイソチオ尿素臭化水素酸塩、プロペニル-L-NIO(塩酸塩)、2-イミノ-4-メチルピペリジン酢酸塩、N-ベンジルアセトアミド臭化水素酸塩、2-イミノ-4,6-ジメチルピペリジン、クマリンからなる群から選択される、又は式:
【化2】
(式中、R1はC1~4アルキル、C3~4シクロアルキル、C1~4ヒドロキシアルキル、及びC1~4ハロアルキル、又はその薬学的に許容可能な塩から選択される)によって表される。
【0057】
上に言及される化合物の幾つかは、本明細書において以下で表される:
【化3】
【0058】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、上記iNOS阻害剤は、
S-((R)-2-(1-イミノエチルアミノ)プロピル)-L-システイン、
S-((S)-2-(1-イミノエチルアミノ)プロピル)-L-システイン、
S-((R/S)-2-(1-イミノエチルアミノ)プロピル)-L-システイン、
S-((R)-2-(1-イミノエチルアミノ)プロピル)-D-システイン、
S-((S)-2-(1-イミノエチルアミノ)プロピル)-D-システイン、
S-((R/S)-2-(1-イミノエチルアミノ)プロピル)-D-システイン、
S-((R/S)-2-(1-イミノエチルアミノ)ブチル)-L-システイン、
S-((R/S)-2-(1-イミノエチルアミノ,2-シクロプロピル)エチル)-L-システイン、及び、
S-((R/S)-2-(1-イミノエチルアミノ,3-ヒドロキシ)プロピル)-L-システイン、
又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物若しくは生理学的に機能性の誘導体からなる群から選択される。
【0059】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態では、iNOS阻害剤は、以下からなる群から選択される:
式Iを有する化合物
【化4】
(式中、
R1は、H、ハロ、及び任意に1以上のハロによって置換され得るアルキルからなる群から選択され、
R2は、H、ハロ及び任意に1以上のハロによって置換され得るアルキルからなる群から選択され、
但し、R1又はR2の少なくとも一方がハロを含み、
R7は、H及びヒドロキシからなる群から選択され、
Jは、ヒドロキシ、アルコキシ及びNR3R4からなる群から選択され、
ここで、
R3は、H、低級アルキル、低級アルキレニル及び低級アルキニルからなる群から選択され、
R4は、H、及び環の少なくとも1つのメンバーが炭素であり、1個~約4個のヘテロ原子が独立して酸素、窒素及び硫黄から選択される複素環からなる群から選択され、該複素環は、任意に、ヘテロアリールアミノ、N-アリール-N-アルキルアミノ、N-ヘテロアリールアミノ-N-アルキルアミノ、ハロアルキルチオ、アルカノイルオキシ、アルコキシ、ヘテロアラルコキシ、シクロアルコキシ、シクロアルケニルオキシ、ヒドロキシ、アミノ、チオ、ニトロ、低級アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキルチオアルキル、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アリールチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルスルホンアミド、アルキルアミノスルホニル、アミドスルホニル、モノアルキルアミドスルホニル、ジアルキルアミドスルホニル、モノアリールアミドスルホニル、アリールスルホンアミド、ジアリールアミドスルホニル、モノアルキルモノアリールアミドスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールチオ、ヘテロアリールスルフィニル、ヘテロアリールスルホニル、アルカノイル、アルケノイル、アロイル、ヘテロアロイル、アラルカノイル、ヘテロアラルカノイル、ヘテロアルカノイル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレンジオキシ、ハロアルキレンジオキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、低級シクロアルキルアルキル、低級シクロアルケニルアルキル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヒドロキシハロアルキル、ヒドロキシアラルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシヘテロアラルキル、ハロアルコキシアルキル、アリール、アラルキル、アリールオキシ、アラルコキシ、アリールオキシアルキル、飽和ヘテロシクリル、部分飽和ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールオキシアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルケニル、ヘテロアリールアルケニル、シアノアルキル、ジシアノアルキル、カルボキサミドアルキル、ジカルボキサミドアルキル、シアノカルボアルコキシアルキル、カルボアルコキシアルキル、ジカルボアルコキシアルキル、シアノシクロアルキル、ジシアノシクロアルキル、カルボキサミドシクロアルキル、ジカルボキサミドシクロアルキル、カルボアルコキシシアノシクロアルキル、カルボアルコキシシクロアルキル、ジカルボアルコキシシクロアルキル、ホルミルアルキル、アシルアルキル、ジアルコキシホスホノアルキル、ジアラルコキシホスホノアルキル、ホスホノアルキル、ジアルコキシホスホノアルコキシ、ジアラルコキシホスホノアルコキシ、ホスホノアルコキシ、ジアルコキシホスホノアルキルアミノ、ジアラルコキシホスホノアルキルアミノ、ホスホノアルキルアミノ、ジアルコキシホスホノアルキル、ジアラルコキシホスホノアルキル、グアニジノ、アミジノ、及びアシルアミノで置換され得る);
式IIに対応する構造を有する化合物
【化5】
(式中、
Xは-S-、-S(O)-、及び-S(O)2-からなる群から選択され、R12はC1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C1~C5アルコキシ-C1アルキル、及びC1~C5アルキルチオ-C1アルキルからなる群から選択され、ここで、これらの基はそれぞれ、任意に-OH、アルコキシ、及びハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基によって置換され、R18は-OR24及び-N(R25)(R26)からなる群から選択され、R13は-H、-OH、-C(O)-R27、-C(O)-O-R28、及び-C(O)-S-R29からなる群から選択され、又はR18は-N(R30)-であり、R13は-C(O)-であり、ここで、R18及びR13はそれらが付着する原子と共に環を形成し、又は、R18は-O-であり、R13は-C(R31)(R32)-であり、ここで、R18及びR13はそれらが付着する原子と共に環を形成し、ここで、R13が-C(R321)(R32)-である場合、R14は-C(O)-O-R33であり、そうでなければ、R14は-Hであり、R11、R15、R16及びR17は独立して、-H、ハロゲン、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル及びC1~C5アルコキシ-C1アルキルからなる群から選択され、R19及びR20は独立して、-H、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル及びC1~C5アルコキシ-C1アルキルからなる群から選択され、R21は-H、-OH、-C(O)-O-R34、及び-C(O)-S-R35からなる群から選択され、R22は-H、-OH、-C(O)-O-R36、及び-C(O)-S-R37からなる群から選択され、又はR21は-O-であり、R22は-C(O)-であり、ここで、R21及びR22はそれらが付着される原子と共に環を形成し、又はR21は-C(O)-であり、R22は-O-であり、ここで、R21及びR22はそれらが付着される原子と共に環を形成し、R23はC1アルキルであり、R24は-H及びC1~C6アルキルからなる群から選択され、ここで、R24がC1~C6アルキルである場合、R24は、任意にシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される1以上の部分によって置換され、R25は-H、アルキル、及びアルコキシからなる群から選択され、R26は-H、-OH、アルキル、アルコキシ、-C(O)-R38、-C(O)-O-R39、及び-C(O)-S-R40からなる群から選択され、ここで、R25及びR26が独立してアルキル又はアルコキシである場合、R25及びR26は独立して、任意にシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールからなる群から選択される1以上の部分で置換され、又はR25は-Hであり、R26は、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールからなる群から選択され、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39及びR40は、独立して-H及びアルキルからなる群から選択され、ここで、アルキルは任意にシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールからなる群から選択される1以上の部分によって置換され、ここで、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R199、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、及びR40のいずれかが、独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される部分である場合、該部分は、任意に-OH、アルコキシ、及びハロゲンからなる群から選択される1以上の置換基で置換される);
式IIIによって表される化合物
【化6】
(式中、
R41は、H又はメチルであり、
R42は、H又はメチルである);
式IVの化合物
【化7】
式Vの化合物
【化8】
(式中、
R43は、水素、ハロ、C1~C5アルキル、及びアルコキシ又は1以上のハロによって置換されたC1~C5アルキルからなる群から選択され、
R44は、水素、ハロ、C1~C5アルキル、及びアルコキシ又は1以上のハロによって置換されたC1~C5アルキルからなる群から選択され、
R45は、C1~C5アルキル、又はアルコキシ若しくは1以上のハロによって置換されたC1~C5アルキルである);
式VIの化合物
【化9】
(式中、
R46は、C1~C5アルキルであり、該C1~C5アルキルは、任意にハロ又はアルコキシによって置換され、該アルコキシは、任意に1以上のハロによって置換される);
式VIIの化合物
【化10】
(式中、
R47は、水素、ハロ、C1~C5アルキル、及びアルコキシ又は1以上のハロによって置換されたC1~C5アルキルからなる群から選択され、
R48は、水素、ハロ、C1~C5アルキル、及びアルコキシ又は1以上のハロによって置換されたC1~C5アルキルからなる群から選択され、
R49は、C1~C5アルキル、又はアルコキシ若しくは1以上のハロによって置換されたC1~C5アルキルである);
式VIIIの化合物
【化11】
(式中、
R50は、C1~C5アルキルであり、該C1~C5アルキルは、任意にハロ又はアルコキシによって置換され、該アルコキシは、任意に1以上のハロによって置換される);
式IXの化合物
【化12】
(式中、
R50は、水素、ハロ及びC1~C5アルキルからなる群から選択され、該C1~C5アルキルは、任意にハロ又はアルコキシによって置換され、該アルコキシは、任意に1以上のハロによって置換され、
R51は、水素、ハロ及びC1~C5アルキルからなる群から選択され、該C1~C5アルキルは、任意にハロ又はアルコキシによって置換され、該アルコキシは、任意に1以上のハロによって置換され、
R52は、C1~C5アルキルであり、該C1~C5アルキルは、任意にハロ又はアルコキシによって置換され、該アルコキシは、任意に1以上のハロによって置換され、
R53は、水素、ハロ及びC1~C5アルキルからなる群から選択され、該C1~C5アルキルは、任意にハロ又はアルコキシによって置換され、該アルコキシは、任意に1以上のハロによって置換され、
R54は、ハロ及びC1~C5アルキルからなる群から選択され、該C1~C5アルキルは、任意にハロ又はアルコキシによって置換され、該アルコキシは、任意に1以上のハロによって置換される);
式Xの化合物
【化13】
(式中、
R55は、C1~C5アルキルであり、該C1~C5アルキルは、任意にハロ又はアルコキシによって置換され、該アルコキシは、任意に1以上のハロによって置換される);
式XIを有する化合物
【化14】
2S-アミノ-6-[(1-イミノエチル)アミノ]-N-(1H-テトラゾール-5-イル)ヘキサンアミド、水和物、二塩酸塩XI
式XIIの化合物:
【化15】
(式中、
R79は、C1~4アルキル、C3~4シクロアルキル、C1~4ヒドロキシアルキル、及びC1~4ハロアルキルから選択される);
式XIII、式XIV又は式XVの化合物:
【化16】
(式中、
Aは-R56、-OR56、C(O)N(R56)R57、P(O)[N(R56)R57]2、-N(R56)C(O)R57、-N(R76)C(O)OR56、-N(R56)R76、-N(R71)C(O)N(R56)R71、-S(O)tR56、-SO2NHC(O)R56、-NHSO2R77、-SO2NH(R56)H、-C(O)NHSO2R77、及び-CH=NOR56であり、
X、Y及びZはそれぞれ独立してN又はC(R19)であり、
UはそれぞれN又はC(R60)であり、
但し、XがNであり、Z及びYがCR74である場合のみUはNであり、
VはN(R59)、S、O又はC(R59)Hであり、
WはそれぞれN又はCHであり、
Qは、直接結合、-C(O)-、-O-、-C(=N-R56)-、S(O)t、及び-N(R61)-からなる群から選択され、
mは0又は1~4の整数であり、
nは0又は1~3の整数であり、
qは0又は1であり、
rは0又は1であり、
但し、Q及びVがヘテロ原子である場合、m、q及びrはいずれも0であり得ず、
Aが-OR56、N(R56)C(O)R57、-N(R71)C(O)OR57、-N(R56)R76、-N(R71)C(O)N(R56)R71、-S(O)tR56(tが0である場合)、又は-NHSO2R77である場合、n、q及びrはいずれも0であり得ず、
Qがヘテロ原子であり、Aが-OR56、N(R56)C(O)R57、-N(R71)C(O)OR57、-N(R56)R76、N(R71)C(O)N(R56)R71、-S(O)tR56(tが0である場合)、又は-NHSO2R77である場合、m及びnはどちらも0にはなり得ず、
tは、0、1又は2であり、
【化17】
は、任意に置換されたN-ヘテロシクリルであり、
【化18】
は、任意に置換されたカルボシクリル又は任意に置換されたN-ヘテロシクリルであり、
R56及びR57はそれぞれ独立して、水素、任意に置換されたC1~C20アルキル、任意に置換されたシクロアルキル、-[C0~C8アルキル]-R64、-[C2~C8アルケニル]-R64、-[C2~C8アルキニル]-R64、-[C2~C8アルキル]-R65(任意にヒドロキシによって置換された)、-[C1~C8]-R66(任意にヒドロキシによって置換された)、任意に置換されたヘテロシクリルからなる群から選択され、
又はR56及びR57はそれらが付着される窒素原子と共に、任意に置換されたN-ヘテロシクリルであり、
R58は、水素、アルキル、シクロアルキル、任意に置換されたアリール、ハロアルキル、-[C1~C8アルキル]-C(O)N(R56)R57、-[C1~C8アルキル]-N(R56)R57、-[C1~C8アルキル]-R63、-[C2~C8アルキル]-R65、-[C1~C8アルキル]-R66、及びヘテロシクリル(任意にハロ、アルキル、アルコキシ及びイミダゾリルからなる群から選択される1以上の置換基によって置換される)からなる群から選択され、
又は、Qが-N(R58)-である、若しくはR58に直接結合される場合、R58は更に、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、モノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、及び-C(=NR73)-NH2であり得て、
又は-Q-R58は共に-C(O)OH、-C(O)N(R56)R57、若しくは、
【化19】
を表し、
R59は、水素、アルキル、アリール、アラルキル及びシクロアルキルからなる群から選択され、
但し、Aが-R56又は-OR56である場合、R59は水素になり得ず、VがCHである場合、更にR59はヒドロキシであり得て、
R60は、水素、アルキル、アリール、アラルキル、ハロアルキル、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたアリール、-OR71、-S(O)t-R71、N(R71)R76、N(R71)C(O)N(R56)R71、N(R71)C(O)OR71、N(R71)C(O)R71、-[C0~C8アルキル]-C(H)[C(O)R71]2、及び-[C0~C8アルキル]-C(O)N(R56)R71からなる群から選択され、
R61は、水素、アルキル、シクロアルキル、-[C1~C8アルキル]-R63、-[C2~C8]アルキル]-R65、-[C1~C8アルキル]-R66、アシル、-C(O)R63、-C(O)-、-[C1~C8アルキル]-R63、アルコキシカルボニル、任意に置換されたアリールオキシカルボニル、任意に置換されたアラルコキシカルボニル(aralkoxycarbonyl)、アルキルスルホニル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロシクリル、アルコキシカルボニルアルキル、カルボキシアルキル、任意に置換されたアリールスルホニル、アミノカルボニル、モノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、任意に置換されたアリールアミノカルボニル、アミノスルホニル、モノアルキルアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、アリールスルホニルアミノカルボニル、任意に置換されたN-ヘテロシクリル、-C(=NH)-N(CN)R56、-C(O)R78-N(R56)R57、-C(O)-N(R56)R78-C(O)OR56からなる群から選択され、
R63及びR64はそれぞれ独立して、ハロアルキル、(ハロ、シアノ、アルキル、又はアルコキシで任意に置換された)シクロアルキル、(ハロ、アルキル、及びアルコキシからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換された)カルボシクリル、及び(アルキル、アラルキル又はアルコキシで任意に置換された)ヘテロシクリルからなる群から選択され、
R65はそれぞれ独立して、ハロ、アルコキシ、任意に置換されたアリールオキシ、任意に置換されたアラルコキシ、任意に置換された-S(O)t-R77、アシルアミノ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、(トリフェニルメチル)アミノ、ヒドロキシ、メルカプト、アルキルスルホンアミドからなる群から選択され、
R66はそれぞれ独立して、シアノ、ジ(アルコキシ)アルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、モノアルキルアミノカルボニル、及びジアルキルアミノカルボニルからなる群から選択され、
R67、R68、R69、R70、R72及びR75はそれぞれ独立して水素又はアルキルであり、
R71はそれぞれ独立して、水素、アルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアラルキル、又はシクロアルキルであり、
R73は、水素、NO2又はトルエンスルホニルであり、
R74はそれぞれ独立して、水素、(任意にヒドロキシで置換された)アルキル、シクロプロピル、ハロ、又はハロアルキルであり、
R76はそれぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアラルキル、-C(O)R77、又は-SO2R77であり、
又は、R76と、R56及びそれらが付着される窒素は共に、任意に置換されたN-ヘテロシクリルであり、
又はR76と、R71及びそれらが付着される窒素は共に、任意に置換されたN-ヘテロシクリルであり、
R77は、それぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、任意に置換されたアリール、又は任意に置換されたアラルキルであり、
R78はアミノ酸残基である)、及び、
【化20】
、又は上記誘導型一酸化窒素合成酵素阻害剤のいずれかの薬学的に許容可能な塩若しくはプロドラッグ。
【0060】
本発明の第1の態様の更に別の好ましい実施形態では、iNOS阻害剤はクマリンであり、式(XVI):
【化21】
(式中、
AはOであり、
Rは(CHNRからなる群から選択され、
ここで、R及びRは同一であるか又は異なり、水素、C(=NH)NH及びC~Cアルキルからなる群から選択され、
nは2~5の整数であり、
は水素であり、
は水素であり、
はハロゲンであり、
は水素であり、
は水素であり、
但し、nが2である場合、RとRはどちらかが水素ではなく又はどちらかがエチルではなく、Xは塩素である)の化合物、並びにその薬学的に許容可能な塩及び光学異性体からなる群から選択される。
【0061】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、式XVIの化合物を指し、式中、
AはOであり、
Rは(CHNRであり、
はハロゲンである。
【0062】
は、水素、C1~6アルキル、及びC(=NH)NHからなる群から選択されることが好ましい。
【0063】
は、臭素及び塩素からなる群から選択されることがより好ましい。
【0064】
化合物は、
6-クロロ-4-(3-アミノプロポキシ)-1-ベンゾピラン-2-オン、
6-クロロ-4-(3-メチルアミノ-プロポキシ)-1-ベンゾピラン-2-オン、
4-(2-アミノ-エトキシ)-6-クロロ-1-ベンゾピラン-2-オン、
4-(3-アミノ-プロポキシ)-6-ブロモ-1-ベンゾピラン-2-オン、
4-(3-アミノ-プロポキシ)-6-フルオロ-1-ベンゾピラン-2-オン、
6-クロロ-4-(3-ジメチルアミノ-プロポキシ)-1-ベンゾピラン-2-オン、
N-[3-(6-クロロ-2-オキソ-2H-1-ベンゾピラン-4-イルオキシ)-プロピル]-グアニジン、
N-[3-(6-クロロ-2-オキソ-2H-1-ベンゾピラン-4-イルオキシ)-プロピル]-アセトアミド、
4-(5-アミノ-ペンチルオキシ)-6-クロロ-1-ベンゾピラン-2-オン、
又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物若しくは生理学的に機能性の誘導体からなる群から選択される。
【0065】
本発明の第1の態様による又はその好ましい実施形態のいずれかによる方法では、被験体は大動脈二尖弁;マルファン症候群、血管型エーラス・ダンロス、ロイス・ディーツ症候群(1型及び2型)、並びに家族性胸部大動脈瘤及び解離(家族性TAAD)等の症候性胸部大動脈瘤(TAA);無症候性TAA;又はAdamts1欠損によって引き起こされる大動脈障害と関連する任意の他の疾患を有する又はそれを患っている。
【0066】
本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかによる方法では、iNOS選択的阻害薬、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはプロドラッグを投与することが、1日当たり少なくとも1回の投薬で、経口的に、吸入によって、腸内で、又は非経口的に被験体に投与することを含む。
【0067】
本発明の第2の態様は、TAA、又は大動脈二尖弁;又はマルファン症候群、血管型エーラス・ダンロス、ロイス・ディーツ症候群(1型及び2型)、並びに家族性胸部大動脈瘤及び解離(家族性TAAD)等の症候性胸部大動脈瘤(TAA);又は無症候性TAA;又はAdamts1欠損によって引き起こされる大動脈障害と関連する任意の他の疾患の治療、予防、又は抑制を必要とする患者における、かかる治療、予防又は抑制に使用される組成物であって、一定量のiNOS選択的阻害剤、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはプロドラッグを含む、組成物に関する。好ましくは、かかるiNOS選択的阻害剤は、本発明の第1の態様で定義され、又はその好ましい実施形態のいずれかで定義される。本発明の第2の態様の好ましい実施形態では、上記組成物は、1日当たり少なくとも1回の投薬で、経口的に、吸入によって、腸内で、又は非経口的に被験体に投与される。
【0068】
本発明の第2の態様の別の好ましい実施形態では、被験体はマルファン症候群を有する、又はマルファン症候群を患う。
【0069】
一方、上記治療方法に加えて、本発明の発明者らは、マウス又はヒトにおけるAdamts1欠損が胸部大動脈表現型、特に症候性胸部大動脈瘤(TAA)、より詳しくはMFSを有する又はそれを患っている被験体又は患者の症候性胸部大動脈瘤(TAA)と明らかな相関を有することも見出した(実施例を参照されたい)。
【0070】
したがって、本発明の第3の態様は、TAAを発症するリスクがある被験体をスクリーニングするin vitro方法であって、(a)スクリーニングされる被験体の単離された生体試料から得られた、少なくともトロンボスポンジンモチーフ1を有するディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ(ADAMTS1:A Disintegrin And Metalloproteinase with Thrombospondin Motifs 1)の発現パターン又は発現レベルを測定することと、(b)スクリーニングされる被験体の少なくともADAMTS1の上記発現パターン又は発現レベルを、既に確立された発現パターン又は発現レベルと比較することとを含み、ここで、少なくともADAMTS1の発現減少が胸部大動脈瘤(TAA)の指標である、in vitro方法に関する。
【0071】
また、ADAMTS1基質は、本発明の第3の態様の目的にも使用され得ることに注目されたい。したがってこの意味で、本発明の第3の態様に記載される方法に代えて又はそれに加えて、本発明の第4の態様は、TAAを発症するリスクがある被験体をスクリーニングするin vitro方法であって、
(a)スクリーニングされる被験体の単離された生体試料において、少なくともADAMTS1及び/又は少なくとも誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現パターン若しくは発現レベル、及び/又は少なくとも以下のADAMTS1基質:アグリカン、バーシカン、組織因子経路インヒビター-2(TFPI-2)、セマフォリン3C、ニドゲン-1、ニドゲン-2、デスモコリン-3、ディストログリカン、mac-2、I型コラーゲン、アンフィレギュリン、TGF-α、ヘパリン結合EGF、シンデカン4、バーシカンネオエピトープ又はアグリカンネオエピトープのいずれかの発現パターンを測定することと、
(b)スクリーニングされる被験体の少なくともADAMTS1及び/又は少なくとも誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の上記発現パターン若しくは発現レベル、及び/又は少なくとも以下のADAMTS1基質:アグリカン、バーシカン、組織因子経路インヒビター-2(TFPI-2)、セマフォリン3C、ニドゲン-1、ニドゲン-2、デスモコリン-3、ディストログリカン、mac-2、I型コラーゲン、アンフィレギュリン、TGF-α、ヘパリン結合EGF、シンデカン4、バーシカンネオエピトープ又はアグリカンネオエピトープのいずれかの発現パターンと、既に確立されている発現パターン又は発現レベルとを比較することと、
を含み、ここで、少なくともADAMTS1、シンデカン4、バーシカンネオエピトープ及び/又はアグリカンネオエピトープの発現減少、並びに少なくともiNOS、アグリカン、バーシカン、組織因子経路インヒビター-2(TFPI-2)、セマフォリン3C、ニドゲン-1、ニドゲン-2、デスモコリン-3、ディストログリカン、mac-2、I型コラーゲン、アンフィレギュリン、TGF-α及び/又はヘパリン結合EGFの過剰発現が胸部大動脈瘤(TAA)の指標である、in vitro方法に関する。好ましくは、本発明の第3又は第4の態様の方法は、大動脈二尖弁;又はマルファン症候群、血管型エーラス・ダンロス、ロイス・ディーツ症候群(1型及び2型)、並びに家族性胸部大動脈瘤及び解離(家族性TAAD)等の症候性胸部大動脈瘤(TAA);又は無症候性TAA;又はAdamts1欠損によって引き起こされる動脈障害と関連する任意の他の疾患(以下、TAA及びこの段落で参照される疾患の一覧に含まれる任意の他の疾患は、本明細書で「TAA関連疾患("TAA related diseases" or "TAA related disease")」と称される)等のTAAを引き起こす疾患を発症するリスクがある被験体をスクリーニングする。
【0072】
本発明の第5の態様は、本発明の第3又は第4の態様のいずれかの工程a)及び工程b)と、任意に(c)臨床検査によって疾患の存在を確認する工程とを含む、TAA関連疾患を患っていることが疑われる被験体を診断するin vitro方法に関する。
【0073】
本発明の第6の態様は、本発明の第3又は第4の態様のいずれかの工程a)及び工程b)を含む、TAA関連疾患のin vitro診断に有用なデータを得る方法に関する。
【0074】
本発明の第7の態様は、本発明の第3又は第4の態様のいずれかの工程a)及び工程b)を含む、被験者を健康な被験体として又はTAA関連疾患を患っている被験者として分類するin vitro方法に関する。
【0075】
本発明の第8の態様は、本発明の第3又は第4の態様のいずれかの工程a)及び工程b)を含む、TAA関連疾患を患っている被験体において、治療に対する反応をモニターする又はTAA関連疾患の進行をモニターするin vitro方法に関する。
【0076】
本発明の第9の態様は、TAA関連疾患を患っている患者を治療する方法であって、本発明の第3又は第4の態様のいずれかの工程a)又は工程b)と、(c)上記疾患と診断された患者を治療する工程とを含む、方法に関する。好ましくは、上記治療はiNOS阻害剤、より好ましくは本発明の第1の態様に定義される又はその好ましい実施形態のいずれかに定義されるiNOS阻害剤によるものである。代替的には、本発明は、本発明の第3又は第4の態様のいずれかの工程a)及び工程)を含む方法による、TAA関連疾患と診断された患者での該疾患の治療に使用されるiNOS阻害剤を含む組成物に関する。好ましくは、上記治療は選択的iNOS阻害剤、より好ましくは本発明の第1の態様に定義される又はその好ましい実施形態のいずれかに定義されるiNOS阻害剤によるものである。
【0077】
好ましい実施形態、第3~第9のいずれかの態様の方法又は組成物では、TAA関連疾患は、マルファン症候群、血管型エーラス・ダンロス、ロイス・ディーツ症候群(1型及び2型)、Adamts1欠損によって引き起こされる大動脈障害、並びに家族性胸部大動脈瘤及び解離(家族性TAAD)からなる群から選択され、好ましくはマルファン症候群である。
【0078】
別の好ましい実施形態、先のいずれかの態様の方法又は組成物では、生体試料は、スクリーニングされる被験体の生検試料(大動脈生検試料等)、又は血漿試料、血液試料、脳脊髄液(CSF)試料若しくは血清試料等の低侵襲生体試料からなる群から選択される。
【0079】
本発明の第10の態様は、単離された生体試料において、少なくともADAMTS1及び/又は少なくとも誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の(タンパク質、ペプチド又はヌクレオチドの)差次的発現レベル、及び/又は少なくとも以下のADAMTS1基質:アグリカン、バーシカン、組織因子経路インヒビター-2(TFPI-2)、セマフォリン3C、ニドゲン-1、ニドゲン-2、デスモコリン-3、ディストログリカン、mac-2、I型コラーゲン、アンフィレギュリン、TGF-α、ヘパリン結合EGF、シンデカン4、バーシカンネオエピトープ及びアグリカンネオエピトープのいずれかの発現パターンを特定するための、被験体がTAA関連疾患を患う又はそれを有するリスクをin vitroで診断するためのバイオマーカー検出試薬を備えるキットのin vitroでの使用に関する。上記キットは、家族性胸部大動脈瘤及び解離(家族性TAAD)又はマルファン症候群(MFS)等のTAA関連疾患を患うリスクを同定するために使用されることがより好ましい。
【0080】
好ましくは、本発明の第10の態様は、単離された生体試料における少なくともADAMTS1の差次的発現レベルを特定するためのバイオマーカー検出試薬を備えるキットのin vitroでの使用に関し、ここで、少なくともADAMTS1の発現減少は、被験体がTAA関連疾患を患う又はそれを有するリスクをin vitroで診断するためのTAA関連疾患の指標である。
【0081】
本発明の第10の態様の別の好ましい実施形態では、上記キットは、少なくともAdamts1及び任意に一酸化窒素合成酵素2の検出のため少なくとも以下のヌクレオチド:
Adamts1(ACACTGGCGGTTGGCATCGT、GCCAGCCCTGGTCACCTTGC)、
Nos2(CAGCTGGGCTGTACAAACCTT、CATTGGAAGTGAAGCGTTTCG)、
を備える。
【0082】
上記のキットはqPCR反応の実施に特に好適であり、そのための追加の試薬を含むことが好ましい。これらの反応は、製造業者のガイドラインに従ってSYBRマスターミックス(Applied Biosystems)により3反復(triplicate)で行われることが好ましい。
【0083】
本発明の第10の態様の更に好ましい実施形態では、上記キットは、本発明の第10の態様のキットにおいて定義されるペプチド又はタンパク質のいずれかを検出するため、抗体又はそのフラグメント等の好適な試薬を備える。
【0084】
本発明の第10の態様の更なる好ましい実施形態では、単離された生体試料は、スクリーニングされる被験体の生検試料(大動脈生検試料等)、又は血漿試料、血液試料、脳脊髄液(CSF)試料若しくは血清試料等の低侵襲生体試料からなる群から選択される。
【0085】
本発明は、第3~第9の態様のいずれかに記載される方法のいずれかのコンピューターによって実施されるプロセスと並んで、かかるプロセスの実施に使用されるデバイスに更に関することに注意されたい。
【0086】
最後に、本発明がマウスモデルにおける大動脈疾患の必須のメディエーターとしてNO経路、特にiNOSを同定し、かかる経路を胸部大動脈障害における介入に対する可能性のある標的として示唆するという事実によって、本発明の発明者らは、胸部大動脈瘤(TAA)の治療、予防又は抑制に有用な化合物を同定する新たなスクリーニング方法を設計した。胸部大動脈瘤(TAA)の治療、予防又は抑制に有用な化合物を同定する上記スクリーニング方法は、以下の工程を含む。
1.NOS阻害剤、特にiNOS阻害剤として作用し得る化合物又は化合物群の同定。この目的のために、本発明を限定するものではないが、通常、一酸化窒素代謝産物を測定する確実な方法が必要とされる。NOは、電気化学プローブ(しかしながら、これらは多くの制限を受ける)、電子常磁性共鳴分光法及び蛍光画像診断の直接のin vivoでの使用によって特定され得る。亜硝酸塩は、グリース反応及びその誘導体の使用、クロマトグラフィー及び化学発光によって特定され得る。また、S-ニトロソチオールも化学発光によって定量され得て、タンパク質上のそれらの場所の特定は、例えばビオチンスイッチ技術又はその誘導体によってS-ニトロソ化の部位にタグ付けすることを必要とする。本発明を限定しない、NOS阻害剤として作用し得る化合物又は化合物群を同定する他の方法は、一酸化窒素が可溶性グアニリルシクラーゼを刺激して細胞cGMPレベルを増加させるかどうかを判定することによる。この意味で、キナーゼ活性を、ケンプチド(kemptide)8μgを含む反応において組み換えPKG1タンパク質35ngにより化学分析することができる。反応を、HEPES(pH7.0)40mM、ケンプチド(Sigma-Aldrich)8μg、MgCl2 10mM、ATP 60μM、32P-g-ATP 0.6μCi、及び可変量のcGMP(0nM~3000nM)中、30℃で5分間行う。反応を、P81ホスホセルロース紙上のスポッティングによって停止し、液体シンチレーション計数によって活性を測定する。最後に、iNOS阻害剤の計算上のデザインもまた、本発明の一部をなす。
2.対応するin vivo方法又はin vitro方法による、例えば、可変量の選択阻害剤に曝露された正常な線維芽細胞に由来するタンパク質抽出物の免疫ブロッティングでリン酸化RLC(pRLC)のレベルを特定することによる、胸部大動脈瘤(TAA)の治療、予防又は抑制に対する、上記1)で同定された選択化合物の有用性の判定。これらのレベルを全RLCレベルに対して正規化する。Adamts1+/-マウス及びマルファン症候群のFbn1C1039G/+マウスモデルを含むマウスモデルにおける検証のため、pRLC/RLC比を増加させる化合物を選択する。血圧を上昇させずに上行胸部大動脈の直径を減少させる化合物は、臨床試験に対する候補物質である。
【0087】
本発明は、本明細書において広く包括的に記載される。また、包括的な開示に含まれるより狭い下位概念(species)及び下位(sub-generic)分類の各々が本発明の一部をなす。これは、削除されるものが具体的に本明細書に列挙されるかどうかにかかわらず、但し書き又は否定的な限定を伴って、上位概念(genus)から任意の主題を除く本発明の包括的な記載を含む。
【0088】
他の実施形態は、添付の特許請求の範囲及び非限定的な実施例に含まれる。さらに、本発明の特徴又は態様が群によって記載される場合、当業者は、任意の個々のメンバー又はその群のメンバーのサブグループによっても本発明が説明されることを認識する。
【実施例
【0089】
実施例1.実験手順
動物の処置
動物の処置は、CNIC倫理委員会によって承認され、動物の飼育及び実験的使用に関する欧州連合ガイドライン(European Union guidelines for the care and experimental use of animals)に準拠した。Adamts1+/-マウスは、欧州マウス突然変異体アーカイブ(European Mouse Mutant Archive)[(EM:02291)B6;129P2-Adamts1<tm1Dgen>/H]から得られ、Adamts1標的アレルのエクソン1とエクソン2の間のゲノム配列(c7784)を置換するためのLacZ-Neoカセットを保有した。Fbn1遺伝子中に突然変異を持つFbn1C1039G/+マウス(Judge et al., 2004)、及びNos2-/-マウス(Laubach et al., 1995)をJackson Laboratoriesから得た(それぞれ、JAXマウスストック012885番及び007072番)。これらの3系統を先に9世代超に亘ってC57BL/6に戻し交雑した。以下のプライマーを使用する尾部試料のPCRによって全てのマウスの遺伝子型を特定した:Adamts1マウス(5’-GCCATCGGGGTCAGCTTTTCAAATG-3’、5’-GGGCCAGCTCATTCCTCCCACTCAT/GGTTGTAGTTTCGCGCTGAGTTTTG-3’;Nos2-/-マウス(5’ACATGCAGAATGAGTACCGG3’;5’TCAACATCTCCTGGTGGAAC3’、5’AATATGCGAAGTGGACCTCG3’);Fbn1C1039G/+マウス(5’CTC ATC ATT TTT GGC CAG TTG3’、5’GCA CTT GAT GCA CAT TCA CA3’)。別段の定めがない限り、野生型の同腹子を対照として使用した。マウスを、皮下浸透ミニポンプ(Alzet Corp)を使用して、1μg/kg/分のAng-II(Sigma-Aldrich)又は10mg/kg/日のロサルタン(Sigma Aldrich)で治療した。TGFβ1、2、3に対するモノクローナルpan抗体(pan-antibody)のクローン1D11(BioXcell)を1週間当たり3回、10mg/kgで腹腔内注射した。Nω-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル塩酸塩(L-NAME、Sigma-Aldrich)を、飲用水中0.5mg/mlで21日間(及び感染したマウスにおけるLVi接種前の追加の3日間)に亘りマウスに与えた。
【0090】
血圧測定及びin vivo画像化
自動BP-2000血圧分析システム(米国ノースカロライナ州アペックスのVisitech Systems)を使用して、マウス尾部で動脈血圧(BP:blood pressure)を測定した。要するに、マウスを1週間の間毎日、血圧測定のため訓練した。訓練後、各マウスコホートにおけるベースライン血圧値を決定するため、治療の1日前又はレンチウイルス感染前に血圧を測定した。実験の間、測定を数回繰り返した。温めた表面(37℃)上のtail-cuff保定器に置いたマウスにおいて血圧測定結果を記録した。連続して15回の収縮期及び拡張期の血圧測定を行い、マウス1匹当たり最後の10回の読取り値を記録し、平均した。
【0091】
in vivo超音波画像について、VEVO 2100超音波検査装置(カナダ、トロントのVisualSonics)による高周波の超音波によってイソフルオランで麻酔をかけたマウス(2%イソフルオラン)において、大動脈径をモニターした。VEVO 2100ソフトウェア、version1.5.0を使用して大動脈の画像の最大内径を測定した。記録は全て、動物の遺伝子型及び治療を知らされていない心臓病専門医及び検査技師によって行われた。ベースライン径を決定するため、レンチウイルスの投与又は対応する治療の前に測定を行い、実験の間、測定を数回繰り返した。
【0092】
ナノPET-CTスキャナ(ブダペストのMediso Medical Imaging Systems)に統合されたX線CTシステムを使用し、麻酔(1.5%~2%イソフルオラン)をかけたマウスにおいて全身骨格を画像化した。55Kv、500mA/秒、Rx回転当たり360フレーム、及びピッチ=1で画像を得た。Medisソフトウェア(オランダのMedis)を用いて骨格3D再構成を行った。
【0093】
細胞の処置
マウス血管平滑筋細胞(VSMC)を、記載される通りに(Esteban et al., 2011)単離し、生育させた。全ての実験を3継代~7継代の間行った。5時間に亘り、感染多重度(MOI)=3でVSMCに感染させた。その後、10%FBSで補足した新鮮なDMEMで培地を置き換え、細胞を更に3日間培養し、48時間に亘って血清飢餓状態におき、その後、タンパク質アッセイのため6時間、又はmRNA発現分析のため4時間に亘ってAng-IIで刺激した。
【0094】
siRNAをコードするレンチウイルスの産生及び感染
GFP、及びマウスAdamts1 mRNAを標的とするsiRNAを発現するレンチウイルスをABM-GOODから購入した。siRNA配列は以下の通りであった:
#siRNA27(GGAAAGAATCCGCAGCTTTAGTCCACTCA);
#siRNA57(ACCGCCAGTGTCAGTTTACATTCGGAGAG);
#siRNA69(CTTCCGAATGTGCAAAGGAAGTGAAGCCA)。
siCtl(GGGTGAACTCACGTCAGAA)を対照として使用した。HEK-293T細胞の一時的なリン酸カルシウムトランスフェクションによって偽型(Pseudo-typed)レンチウイルス産生を得た。リン酸カルシウム沈殿の除去から48時間後にレンチウイルス粒子を含む上清を収集し、26000rpmで2時間、超遠心分離(ウルトラクリアチューブ、SW28ローター、及びOptima L-100 XP超遠心分離機;Beckman)を行った。ウイルスを無菌PBSの冷たい溶液に懸濁し、48時間に亘ってJurkat細胞の形質導入によって滴定した。形質導入効率(GFP発現細胞)及び細胞死(ヨウ化プロピジウム染色)をフローサイトメトリーによって定量した。
【0095】
in vivo形質導入実験のため、動物に麻酔をかけ(ケタミン/キシラジン)、小さく切開して右頸静脈を露出させた(Esteban et al., 2011)。ウイルス溶液(100μl、PBS中10粒子/ml)を、Ang-IIミニポンプ埋め込みの3週間前又は大動脈拡張のモニタリングの1日前に右頸静脈に直接に接種した。GFP及びAdamts1に対する免疫組織化学検査によって大動脈試料中で形質導入効率を分析した。
【0096】
大動脈組織学検査
CO2で誘導した安楽死の後、マウス大動脈を生理食塩水で灌流し、単離して、4%パラホルムアルデヒド中、4℃で一晩固定した。固定した大動脈からの5μmパラフィン横断切片を、マッソン・トリクローム(Masson:Masson's trichrome)、アルシアンブルー若しくはヴァーヘフ・エラスチカ・ワンギーソン(EVG:Verhoeff elastic-van Gieson)で染色するか、又は免疫組織化学検査若しくは免疫蛍光法に対して使用した。脱パラフィン切片を再水和し、沸騰させ、抗原を回収し(10mMクエン酸バッファー、pH6)、PBS中の10%ヤギ血清と2%BSAで45分間ブロックした。免疫組織化学検査又は免疫蛍光のため、以下の抗体と共に試料をインキュベートした:抗Adamts1(1/100;Santa Cruz)、抗GFP(1/100;Invitrogen)、抗pSMAD2(1/50 Cell Signaling)、抗pSMAD2,3(1/100 Santa Cruz)、抗TGFβ1(1/100;Abcam ab92486)、NOS2(1/100 マウスについてはSanta Cruz、及びヒトについてはMillipore)。一次抗体を無関係なIgG(Santa Cruz)で置換することにより、特異性を判定した。免疫組織化学検査について、DAB(Vector Laboratories)により発色させ、切片をヘマトキシリンで対比染色してDPX(Fluka)に封入した。20倍、40倍又は63倍のHCX PL Fluotar対物レンズを備えるLeica DM2500顕微鏡、及びLeica ApplicationスイートV3.5.0取得ソフトウェアのもとで画像を取得した。免疫蛍光について、二次抗体は、AlexaFluor546複合化ヤギ抗ウサギ及びAlexaFluor647複合化ヤギ抗ウサギ(BD Phramigen)であった。DAPIを含むCitifluor AF4封入剤(Aname)に切片を封入した。20倍又は40倍の油浸レンズを備えるLeica SP5共焦点顕微鏡を使用して、1024×1024ピクセル、8ビットで画像を取得した。
【0097】
コラーゲン含有量についてマッソン・トリクローム及びEVGの染色の画像をImageJ(http://rsbweb.nih.gov/ij/index.html)により、またエラスチン破断の定量のためMetaMorph(カリフォルニア州サニーベールのMolecular Devices)により分析した。各動物について、3つの切片でエラスチン破断を数え、破断数の平均を計算した。プレゼンテーションのため、Photoshop及びIllustrator(Adobe)で画像を処理した。
【0098】
免疫ブロット分析
マウスの大動脈試料を単離し、液体窒素で凍結した後、ホモジナイズした(MagNA lyzer、Roche)。タンパク質抽出物を、プロテアーゼ、ホスファターゼ及びキナーゼの阻害剤で完結させた氷冷RIPAバッファー(NaCl 50mM、Tris HCl pH8 50mM、1%NP40、0.1%SDS、0.5%デオキシコール酸ナトリウム)中で溶解することにより得た。VSMCについては、細胞を感染させた後、AngIIで刺激し、氷冷PBSで洗浄し、RIPAバッファー中で溶解した。
【0099】
SDSポリアクリルアミドゲル上、還元条件下でタンパク質を分離し、ニトロセルロース膜に移した。タンパク質検出を以下の一次抗体で行った:抗Adamts1(1/1000;Santa Cruz)、抗GFP(1/1000;Invitrogen)、抗pSMAD2(1/500;Cell Signaling)、抗アルファチューブリン(1/40000;Sigma-Aldrich)、抗GAPDH(1/10000;Abcam)。結合した抗体を、増強化学発光(ECL:enhanced chemiluminescence)検出試薬(Millipore)で検出した。
【0100】
RT及び定量的PCR
5mlの食塩水灌流の灌流後、大動脈を取り出し(extracted)、外膜層を廃棄した。乳鉢及び自動ビーズホモジナイザー(MagNA Lyzer、Roche)を使用して凍結組織をホモジナイズした。全RNAをTRIZOL(Life Technologies)で単離した。モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素(Life Technologies)200U、ランダムプライマー100ng及びRNアーゼ阻害剤(Life Technologies)40Uを含む反応ミックス20μl中で、37℃にて50分間に亘り全RNA(2μg)を逆転写させた。以下のPCRプライマーによりリアルタイム定量的RT-PCRを行った:Adamts1(ACACTGGCGGTTGGCATCGT、GCCAGCCCTGGTCACCTTGC)、Tgfβ1(CGCCATCTATGAGAAAACC、GTAACGCCAGGAATTGT)、Ctgf(GTGCCAGAACGCACACTG、CCCCGGTTACACTCCAAA)、Col1a1(GCTCCTCTTAGGGGCCACT、CCACGTCTCACCATTGGGG)、Pai-1(GCCAGATTTATCATCAATGACTGGG、GGAGAGGTGCACATCTTTCTCAAAG)、Nos3(GTTTGTCTGCGGCGATGTC、CATGCCGCCCTCTGTTG)、Nos2(CAGCTGGGCTGTACAAACCTT、CATTGGAAGTGAAGCGTTTCG)。製造業者のガイドラインに従い、SYBRマスターミックス(Applied Biosystems)を用いてqPCR反応を3反復で行った。プローブ特異性を調べるため、本発明者らは増幅後の融解曲線分析を行った。各反応について、1つのTmピークのみがもたらされた。正規化のためGAPDHを使用して、2-ΔCT相対定量法により試料中の標的mRNAの量を推定した。倍比率(Fold ratios)を対照動物と比較して計算した。
【0101】
一酸化窒素染色
製造業者の使用説明書に従い、DAF-FMジアセテート試薬(Molecular Probes)によりマウスに由来する固定されていない新鮮な大動脈切片においてNO染色を行った。DAF-FMジアセテート試薬10μmol/Lと共に室温で1時間の間試料をインキュベートし、10%グリセロール/PBSに封入した。画像をLeica SP5顕微鏡で取得した。
【0102】
ザイモグラフィーアッセイ
DTTが存在しない状態であること以外は、免疫ブロットアッセイについて記載される通りに、全大動脈から大動脈抽出物を調製した。1%ゼラチンを含むSDSポリアクリルアミドゲル上で、非還元条件下にて抽出物(15μg)を分画した。室温で30分間に亘り2.5%Triton x-100中でゲルを3回洗浄し、Tris-HCl pH7.5 50mM、CaCl2 10mM及びNaCl 200mM中で37℃にて一晩インキュベートし、クマシーブルーで染色した。ゼラチン分解活性又はMMP活性の領域を透明なバンドとして可視化した。画像をQuantity Oneソフトウェア(Bio-Rad)で分析した。
【0103】
Adamts1 ELISA
ELISAキット(BioNova)を用い、マウス血清50μl中で血清Adamts1を測定した。
【0104】
ヒト試料
研究は、カンタブリア州の倫理及び臨床研究委員会によって承認された。上行大動脈は、ドナーの家族からの書面によるインフォームド・コンセントの後、多重臓器移植ドナーから無記名で得られた。移植用の心臓を準備する際の余分な上行大動脈の組織を研究用に採取した。匿名性を維持しながら患者から臨床データを回収した。組織を直ちに固定して室温で48時間維持し、パラフィンに包埋した。
【0105】
統計学的分析
Graphpad Prismソフトウェア6.01を分析に使用した。大動脈径のデータを、75パーセンタイル及び25パーセンタイルを含む箱ひげ図として提示した。バーは最大及び最小のデータを表す。一元配置又は二元配置の分散分析(ANOVA)及びBonferroniのポストホック検定又はNewmanのポストホック検定(3群以上による実験)により、差を分析した。生存曲線について、Log-rank(Mantel-Cox)検定で差を分析した。統計的有意差をp<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001で割り当てた。
【0106】
実施例2.構成的なAdamts1欠損は、症候型TAAを誘導する
Ang-IIで誘発された大動脈拡張及び動脈瘤に対するAdamts1の寄与を調べるため、本発明者らは、欧州マウス突然変異体アーカイブ(EM:02291)からAdamts1欠陥マウスを使用した。Adamts1+/-マウスは野生型の(wt)同腹仔より低いレベルの大動脈のAdamts1を発現した(図1A及び図7A)。Adamts1-/-マウスは離乳時の生存率が非常に低かった(図7B)ため、使用しなかった。対照的に、Adamts1+/-生存率は、野生型同腹仔の生存率に類似し、これらのマウスはこの段階では健康そうに見えた。28日間に亘るAng-IIによる8週齢の野生型マウスの治療は、大動脈輪(AR)、上行大動脈(AsAo)及び腹部大動脈(AbAo)の超音波検査によって確認される、全身性の大動脈拡張を促進した(図1B及び図1C)。予想外に、1つのAdamts1アレルの不活性化は、治療していないマウスにおける大動脈の拡張を誘導し、この効果はAng-IIによって悪化した(図1B及び図1C)。さらに、Ang-IIは野生型マウスにおいてAA又は致死性の大動脈解離をわずかに誘導したが、Adamts1+/-マウスではそれらの形成を容易に引き起こした(図1D及び図1E)。動脈瘤又は致死性の解離は、Ang-IIの不在下でこの年齢のAdamts1+/-マウスで検出されなかった。Ang-IIが高血圧症を誘導することから、本発明者らは、Adamts1不活性化が同様の効果を有したかどうか調べた。本発明者らは、Ang-IIとは異なり、Adamts1遺伝子量(gene dose)の減少は、収縮期及び拡張期の血圧(BP)を減少させることを見出し(図1F)、このことは、Ang-II及びAdamts1ハプロ不全が、別々の機構によって大動脈の拡張を誘導し得ることを示唆している。
【0107】
他のAdamts1標的化マウスにおける腎発生異常と一致して、本発明者らのAdamts1+/-マウスの腎臓には拡大した腎杯腔(caliceal space)があり、水腎症を示した(図7C)。しかしながら、野生型マウス及びヘテロ接合マウスにおいて血漿尿素及びクレアチニンは類似し(図7D及び図7E)、腎機能が損なわれなかったことを示唆する。
【0108】
腎異常の存在は、Adamts1欠損によって誘導された大動脈の病状が症候性である可能性を示唆した。MFSを含む、ヒト及びマウスにおける症候性の大動脈の状態は、肺及び骨格に対する変化を含む。3ヶ月齢のAdamts1+/-マウスの検査は、肺気腫の特徴である末梢気腔径(distal airspace caliber)の著しい増加を明らかにした(図1G)。著しい脊柱後弯が3ヶ月齢~4ヶ月齢のAdamts1+/-マウスの44.4%で検出された(図1H)。これは、肋骨の過成長に起因する胸郭の前後径及び横径の増加と関連した(図1I)。また、他の長骨(上腕骨、脛骨及び大腿骨)は性別を一致させたAdamts1+/-マウスにおいてより長かったのに対し、頭蓋サイズ及び形態は遺伝子型の間で差を示さなかった(図1J及び図1K)。
【0109】
実施例3.大動脈のAdamts1ノックダウンはTAAを促進する
大動脈の拡張に対するAdamts1枯渇の直接の効果を調べるため、本発明者らは、Adamts1特異的siRNAをコードするレンチウイルスで大動脈壁を形質導入することより、成体マウスにおいて大動脈での発現をノックダウンした。培養VSMCにおけるAdamts1 siRNAのスクリーニングは、siRNA-27の高いサイレンシング能力を同定した(図8A及び図8B)。緑色蛍光タンパク質(GFP)のレンチウイルスによって駆動される共発現は、形質導入効率の評価を促進した。C57BL/6マウスへのレンチウイルスの頸静脈内接種は、AsAo及びAbAoの大動脈のGFP免疫染色によって7週間後に特定される、全て大動脈壁層の効率的で安定した形質導入をもたらした(図2A及び図2B)。Adamts1の発現は、過去4週間に亘ってAng-IIで治療したマウスであっても(図2C及び図8C)、siRNA-27(siAdamts1)をコードするレンチウイルスで接種したマウスの大動脈試料においてほぼ検出不可能であった(図2B及び図2C)。実際、形質導入マウスの大動脈試料中のAdamts1 mRNAのレベルは、Adamts1+/-の大動脈でのmRNAレベルを下回った(図8D)。Adamts1サイレンシングはAsAo及びAbAoの全ての層で確認された(図2B)。Adamts1+/-マウスによるデータと一致して、成体の大動脈における大動脈Adamts1サイレンシングは、収縮期及び拡張期の血圧を減少させ(図2D)、AR、AsAo及びAbAoの強い拡張を誘導し、これらの拡張はAng-IIで治療することによって更に増加された(図2E)。
【0110】
実施例4.Adamts1欠損マウスの大動脈壁における中膜変性及びTGFβ経路の活性化
AsAo及びAbAoの組織学的分析は、レンチウイルスの形質導入又は遺伝子不活性化による、Adamts1レベルの減少が中膜変性の特徴的な特性、すなわち、大動脈壁の肥厚、弾性線維断裂及び無秩序化(disarray)、過度のコラーゲン沈着、並びにプロテオグリカン蓄積(図2F図2H及び図9A図9E)を引き起こしたことを明らかにした。これらの特性は、Ang-IIによって悪化した(図2F図2H及び図9A図9E)。
【0111】
マルファン症候群及びロイス・ディーツ症候群における大動脈中膜変性は、TGFβ経路の活性化に結びつく。Adamts1+/-マウスに由来する大動脈切片の免疫組織化学検査は、高リン酸化及び核の位置(nuclear location)によって特定される、TGFβ1及びSmad2/3の発現増加(図2I)、並びにSmad2活性化の増加を明らかにした(図2I)。同様の結果がAdamts1ノックダウンマウスで見られた(図10A)。一貫して、Adamts1+/-マウス及びsiAdamts1接種マウスの大動脈では、TGFβ転写標的Ctgf、Col1a1及びPai-1のmRNAレベルが上昇した(図10B及び図10C)。
【0112】
実施例5.Adamts1欠損によって誘導された大動脈拡張は速く、TGFβ非依存性である
Adamts1欠損依存性大動脈障害の病因を評価するため、本発明者らは、siCtl又はsiAdamts1のレンチウイルスの頸静脈内接種後にAsAo径及びAbAo径、並びに血圧をモニターした(図3A)。Adamts1 mRNA及びタンパク質レベルの減少は、接種の1日後~2日後には検出され(図3B及び図3C)、収縮期及び拡張期の血圧における最初の降下、並びにエラスチン分解の誘導(図3D及び図3E及び図11A及び図11B)と一致した。しかしながら、AsAo径及びAbAo径は、接種から2日後~3日後まで有意に増加することはなかった(図3F及び図3G)。これらの事象は、接種から1週間後~2週間後に始まった(図11C)大動脈壁におけるコラーゲン沈着(図3H)及びTGFβ経路の転写活性化に先行した。エラスチン分解の初期の誘導は、大動脈壁の主なエラスチン分解性(elastolytic)タンパク質であるMmp2及びMmp9の活性を評価するよう本発明者らに促した。Mmp2ではなくMmp9の活性は、Adamts1サイレンシングの後に急速に有意に誘導された(図3I)。
【0113】
TGFβ活性化の標準的な及び非標準的な経路は、MFSマウスモデルにおいて極めて重要な役割を果たし、TGFβ中和抗体及びAT1Rアンタゴニストであるロサルタンはいずれもこのモデルにおいて動脈瘤の形成を予防することができる。Adamts1サイレンシング後のTGFβ活性化のタイミングは、大動脈障害発症における二次的な役割を示唆したが、本発明者らは、TGFβ経路の寄与を評価するためロサルタン及びTGFβ中和抗体を使用した(図3J)。際立ったことに、いずれの治療もsiAdamts1によって誘導された大動脈の拡張を抑制しなかった(図3K及び図11D)。さらに、これらの治療は、低血圧を予防せず(図11E)、弾性線維断裂又は線維症を減少しなかった(図3L及び図3M)。治療の有効性を表す代替分子としてのTGFβ転写標的のmRNAレベルの検出は、TGFβ抗体がTgfb1、Pai-I、Ctgf及びCol1a1の誘導を効率的に阻害したことを示した(図11F)。これらの結果は、中和抗体が効率的にはたらき、疾患発症の間、線維症はTGFβ活性化に非依存性であることを示す。ロサルタンは、予想通り、対照マウスにおいて血圧を減少させた(図11E)。これらの結果は、TGFβ経路活性化は、Adamts1関連の大動脈障害において大動脈拡張及びエラスチン分解に対して二次的であるという結論を指示する。
【0114】
実施例6.Nos2由来の一酸化窒素は、Adamts1欠損によって誘導される大動脈障害を媒介する
Adamts1関連大動脈障害の機構を更に調べるため、本発明者らはAdamts1サイレンシングの際に検出された最も初期の効果である低血圧の可能性のあるメディエーターに注目した。候補因子は、平滑筋を弛緩させ、血圧を低下させる内因性の血管弛緩物質(vasorelaxant)である、一酸化窒素(NO)である。NOは、内皮型(eNOS、NOS3)又は神経型(nNOS、NOS1)を起源とする構成的に発現されるNO合成酵素(NOS:NO synthase)、又は誘導型NOS(iNOS、NOS2)によって産生され得る。大動脈拡張の誘導に対するNOの寄与を試験するため、本発明者らは、全てのNOS酵素の阻害剤であるN -ニトロ-L-アルギニン-メチルエステル(L-NAME)でC57BL/6マウスを治療した(図4A)。L-NAMEの昇圧効果にもかかわらず(図12A)、L-NAMEは、AsAo及びAbAoのsiAdamts1誘導性の拡張を阻止し(図4B)、エラスチン分解を遮断し(図4C及び図12B)、線維症を減少させ(図4D)、Mmp9活性化を阻止した(図4E)。
【0115】
NOS活性阻害の治療可能性を判定するため、本発明者らは、Adamts1+/-マウスを治療するためL-NAMEを使用した。L-NAMEは、正常なレベルへとAsAo径及びAbAo径を急速に減少させ(図4F)、収縮期及び拡張期の低血圧を元の状態に戻し(図4G及び図12C)、弾性線維の断裂を減少させ(図4H)、線維症を減少させた(図4I)。
【0116】
生理学的条件下では、血管型NOS3は、血管のホメオスタシスを維持するため低レベルのNOを産生するのに対し、病態時では、NOS2は転写的に活性化され得て、その構成上の対応物よりも1000倍超のNOを産生する。したがって、本発明者らは、Adamts1欠損マウスではNos2レベルが増加して、大動脈の拡張及び中膜変性を媒介するのかもしれないと仮定した。Nos2発現は、siAdamts1接種の2日後には有意に誘導された(図5A)が、Nos3は影響を受けなかった(図13A)。別の血圧調節物質であるエンドセリン-1は、Adamts1サイレンシングによって影響を受けなかった(図13B)。siAdamts1マウス及びAdamts1+/-マウスに由来する大動脈の横断切片の免疫染色は、Nos2レベルの増加を確認した(図5B)。
【0117】
Nos2由来NOがAdamts1欠損によって誘導される大動脈障害を媒介するかどうか調べるため、本発明者らは、Nos2-/-マウス及び野生型マウスにsiAdamts1レンチウイルスを接種した(図5C)。Nos2欠損は、siAdamts1誘導性のAsAo及びAbAoの拡張(図5D)、弾性線維断裂(図5E)、及び線維症(図5F)を妨げた。Nos2-/-マウスは正常血圧であり、Adamts1サイレンシングは該マウスの収縮期及び拡張期の血圧を減少させることができなかった(図5G及び図13D)。Adamts1欠損誘導性大動脈障害におけるNos2由来NOに対する極めて重要な役割と一致して、siAdamts1形質導入大動脈の固定されていない切片は、対照マウスに由来する切片よりも高いレベルのNOを含んだ(図5H)。同様に、NOレベルは、Adamts1+/-大動脈の固定されていない切片では、野生型マウスに由来するものよりも高かった(図5H)。NOは、siAdamts1を接種したNos2-/-マウスの大動脈切片に蓄積しなかった(図5H)。
【0118】
実施例7.一酸化窒素及びAdamts1はマルファン症候群において重要な役割を果たす
本発明者らは、NOが他の症候型のTAAにおける中膜変性を媒介し得ると仮定した。MFSにおけるNOの役割を特定するため、本発明者らは、MFS患者において頻繁に起こる突然変異と等価なシステイン置換(C1039G)を含むFbn1アレルに関してヘテロ接合のマウスにL-NAMEを投与した(図6A)。Fbn1C1039G/+の表現型は、胸部の大動脈拡張、動脈瘤及び解離を含むヒトMFS、並びに動脈の中膜変性の組織学的特徴に類似する。Adamts1欠損マウスと同様に、12週齢のFbn1C1039G/+マウスは、AsAo及びAbAoの拡張を示した(図6B及び図14A)。L-NAMEは、急速に正常なレベルまでAsAo径及びAbAo径を減少させ(図6B及び図14A)、収縮期及び拡張期の血圧を増大し(図6C及び図14b)、弾性線維断裂を減少させた(図6C及び図14C)。Fbn1C1039G/+マウスは有意なコラーゲン蓄積を示さず、コラーゲン含有量はL-NAMEに影響されなかった(図14D)。また、Fbn1C1039G/+マウスは、同腹仔対照に関して、有意に高いレベルのNos2及びNO産生を示したのに対し、Nos3は影響を受けなかった(図6E)。
【0119】
これらの類似性は、Fbn1C1039G/+マウスのAdamts1と大動脈の病態との間のつながりを示唆した。Fbn1C1039G/+大動脈切片の免疫染色は、大動脈タンパク質抽出物の免疫ブロット分析によって確認されるAdamts1のレベルの低下を明らかにした(図6G)。しかしながら、Fbn1C1039G/+マウス及び対照同腹仔においてAdamts1 mRNAレベルは類似し(図14E)、マルファン症候群におけるAdamts1発現の転写後下方制御を示唆した。
【0120】
ヒトMFSに対するADAMTS1及びNOS2の寄与の評価は、性別及び年齢にかかわらず、臓器移植ドナーに由来する大動脈と比較して、MFS患者に由来する大動脈切片の中膜におけるADAMTS1発現の低下を明らかにした(図6H及び図14F)。免疫組織化学染色された切片におけるADAMTS1陽性領域の定量は、MFS試料における急激な発現減少を確認した(図6I)。エラスチン自発蛍光は、MFSの大動脈切片において僅かに検出され、無秩序なパターンを示した。NOS2免疫蛍光は、8つのうち6つのMFS大動脈切片の中膜におけるより高い発現を明らかにし(図6J及び図14G)、これらの切片におけるNOS2陽性領域の定量はMFS試料において有意な増加を示した(図6K)。まとめると、これらのデータは、ADAMTS1及びNOS2がヒトMFSにおける大動脈の病態の重要なメディエーターであるかもしれないという意見を支持する(図6L)。
【0121】
実施例8.ヒトNOS2のドッキング及び阻害剤との相互作用
ヒトNOS2タンパク質のオキシゲナーゼドメイン(Uniprot Id:P35228、残基511~1153)及びレダクターゼドメイン(Uniprot Id:P35228、残基1~535)のFasta配列を、ホモロジーによるモデリングのため、I-Tasserソフトウェアスイートv5.0(1)のローカル実装に送信(submitted)した。各々に対して、最小エネルギー及び正確なフォールディングを有する最良モデル(テンプレートに対して最も良好な構造アラインメント:それぞれPDB ID 4nos及び3hr4)を最終テンプレートとして選択した。パイモル(pymol)プログラム(The PyMOL Molecular Graphics System、Version 1.8、www.pymol.org)を使用して、両方のテンプレートの重複領域(残基511~535)に構造アラインメントを行い、Rosettaスイートv3.6リリース(www.rosettacommons.org)のループモデルツールを使用して、近接するループに対する最終全モノマーテンプレートを生成した。詳細化(refinement)のためRosettaスイートv3.6(www.rosettacommons.org)のリラックスツール(relax tool)を使用し、スコアはより小さいが、依然高いエネルギーを有するモデルを最終テンプレートとして選択し、最終モノマーモデルを得た。
【0122】
先のモデルの2つの切断型(残基83~1153)に、PDB ID 4cx7構造に対して構造アラインメントを行い、Rosettaスイートv3.6(www.rosettacommons.org)のドッキングツールを使用して、NOS2ダイマーをドッキングするためのテンプレートを作製した。最良モデル(最小エネルギー、4cx7に対する正確な構造アラインメントを有する)を、4cx7構造(図18a及び図18b)から固定されたリガンドhemo、H4B及びArgを有する最終ホモダイマーモデルとして選択した。
【0123】
NOS2ダイマーと阻害剤とのin-silicoドッキングのため、各リガンドL-NAME、1400W、アミノグアニジン、GW273629、L-NIL及びクロトリマゾールに対するデフォルトの3D構造をPubChem(pubchem.ncbi.nlm.nih.gov)から得て、Frog2ウェブツールを使用して各々に対して100のコンフォーマー(conformers)を生成した。各阻害剤に対するデフォルトのコンフォーマーの重心座標を両方の鎖のグアニジン部位の重心座標に配置し、Rosettaスイートv3.6リリース(www.rosettacommons.org)のリガンドドッキングツールを使用してNOS2の最終モデルの阻害剤とのドッキングに対する最初のテンプレートを作製した。先の通り、詳細化のためRosettaスイートv3.6(www.rosettacommons.org)のリラックスツールを使用し、スコアはより小さいが、依然高いエネルギーを有するモデルを最終テンプレートとして選択し、最終モデルを得た。
【0124】
【表1】
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図12
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図14-3】
図15
図16
図17
図18
【配列表】
0007057976000001.app