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  • 特許-接地確認装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】接地確認装置
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/02 20060101AFI20220414BHJP
   H01R 4/64 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
H05F3/02 G
H01R4/64 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019175121
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021051959
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2020-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504268744
【氏名又は名称】独立行政法人労働者健康安全機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】特許業務法人アイリンク国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】長田 裕生
(72)【発明者】
【氏名】崔 光石
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 輝夫
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04654746(US,A)
【文献】特開平07-326487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 1/00- 7/00
H01R 4/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定電源回路に接続された導体と、
この導体に接続された高抵抗素子と、
上記導体と対向する浮遊容量生成手段と
を備え、
上記導体の先端を対象物に接触させたときに、測定電源回路の電荷が対象物側に流れるか否かで対象物の接地を確認する接地確認装置であって、
上記導体と上記浮遊容量生成手段との対向長さで浮遊容量が決められる構成にする一方、
上記導体を通常は接地側に接続し、この導体の先端を対象物に押し付けて当該導体に押圧力が作用したとき、上記導体を接地側から切り離すとともに、当該導体を上記測定電源回路に接続する切換え機構を設け、
上記導体先端と対象物との間に絶縁破壊が発生したとき、上記高抵抗素子で大電流の流れが阻止されるとともに、上記浮遊容量に電荷が蓄電されて対象物と導体とが同電位になる構成にした接地確認装置。
【請求項2】
上記切換え機構は、
上記導体と一体的に移動するとともにこの導体と電気的に接続された切換え素子と、
常時接地状態を保つ接地素子と、
上記切換え素子にばね力を作用させ、そのばね力の作用で上記切換え素子を上記接地素子に接触させるばね部材を備え、
通常は、上記ばね部材のばね力で上記切換え素子を接地素子に接触させて上記導体を接地させる請求項1に記載の接地確認装置。
【請求項3】
上記導体と、
この導体とその軸線方向に一体的に移動する切換え素子と、
一方の端部が上記切換え素子と間隔を保つとともに他方の端部が上記測定電源回路に接続された導体連結素子とを備え、
上記切換え素子が上記ばね部材のばね力に抗して上記間隔分移動したとき、切換え素子と測定電源回路とを、上記導体連結素子を介して電気的に接続する請求項2に記載の接地確認装置。
【請求項4】
上記測定電源回路が、キャパシタと、このキャパシタをチャージする電源と、キャパシタの電圧を測定する測定手段とからなる請求項1~3のいずれか1項に記載の接地確認装置。
【請求項5】
上記導体と一体的に移動するとともにこの導体と電気的に接続された切換え素子と、
常時接地状態を保つ接地素子と、
上記キャパシタと上記電源との間に設けた連動スイッチと、
上記切換え素子と上記連動スイッチとを連動させる連動手段とを備え、
上記切換え素子が上記接地素子に接触するとともに、切換え素子が測定電源回路から切り離されている位置関係において上記連動手段が上記連動スイッチを閉じ、切換え素子が上記接地素子から切り離されて切換え素子が測定電源回路に電気的に接続された位置関係において上記連動手段が上記連動スイッチを開く構成にした請求項4に記載の接地確認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着火放電を発生させない除電機構及びその除電機構を備えた接地確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可燃性溶剤や粉体などを取り扱う危険な場所での着火事故の多くは、接地不備により、帯電した導体と接地された導体との間で生じる着火放電が原因となっていた。
このような着火放電に起因する事故は、静電気対策の基本である対象物の除電もしくは接地を適切に行うことで未然に防止することができる。
【0003】
そして、従来の除電機構は、接地電位を保った端子を上記対象物に直接接触させて、当該対象物の静電気を除去するようにしていた。
また、防爆対策では、当該対象物が接地されているかどうかを確認する必要がある。なぜなら、接地が不十分で対象物が帯電していると、それが放電するときの火花によって事故を起こすことがあるからである。
【0004】
そこで従来は、例えば、一対の端子の一方を対象物に接触させ、いずれか他方の端子を接地側に接触させて除電していた。また、対象物が接地されているかどうかの判定は、端子を対象物に接触させ、その端子に電圧を印加して、対象物に電流が流れるかどうかを判定するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-204234号公報
【文献】特開2016-225244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の除電機構では、接地電位を保った端子を除電対象物に直接接触させていたので、その端子が除電対象物に接触する直前に、除電対象物と上記端子との間で絶縁破壊が発生し、そのときに過大エネルギーが放出される。そのために除電対象物と上記端子との間で着火性の火花放電が発生する。
【0007】
上記のように除電対象物と端子との間で火花放電が発生すれば、それが爆発・火災事故の要因になってしまう。
つまり、従来の除電機構では、除電対象物の静電気を除去するものでありながら、除電機構自らが爆発・火災事故の要因を作ってしまうと言う矛盾を抱えていた。
【0008】
また、従来の接地確認装置では、端子を測定対象物に接触させ、その端子に電圧を印加して電流が流れるかどうかを判定するもので、測定対象物を事前に除電する機能が備わっていなかった。
そのために上記除電機構と同様に、接地確認をする装置でありながら、自らが着火の要因を作ってしまうと言う矛盾を抱えていた。
【0009】
この発明の目的は、自らが爆発・火災事故の要因にはならない接地確認装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、測定電源回路に接続された導体と、この導体に接続された高抵抗素子と、上記導体と対向する浮遊容量生成手段とを備え、上記導体の先端を対象物に接触させたときに、測定電源回路の電荷が対象物側に流れるか否かで対象物の接地を確認する接地確認装置であって、上記導体と上記浮遊容量生成手段との対向長さで浮遊容量が決められる構成にする一方、上記導体を通常は接地側に接続し、この導体の先端を対象物に押し付けて当該導体に押圧力が作用したとき、上記導体を接地側から切り離すとともに、当該導体を上記測定電源回路に接続する切換え機構を設け、上記導体先端と対象物との間に絶縁破壊が発生したとき、高抵抗素子で大電流の流れが阻止されるとともに、上記浮遊容量に電荷が蓄電されて対象物と導体とが同電位になる構成にしている。
【0015】
さらに、上記高抵抗素子は、上記導体の先端と除電対象物との間に絶縁破壊が発生したとき、高抵抗素子で大電流の流れを瞬間的に阻止して、上記浮遊容量にその容量分の電荷を蓄電させる機能を発揮するものである。したがって、この高抵抗素子は、浮遊容量に電荷を蓄電させるとともに、導体の先端が除電対象物に接触した後は、当該対象物の静電気を接地側に流す機能を備えている。
【0019】
しかも、上記導体の先端を測定対象物に接触させた段階でその対象物が除電されるので、測定対象物の電荷が測定電源回路側に逆流したりしない。特に、測定電源回路の出力電圧は、防爆などの観点から安全性を考慮してなるべく低電圧になるように設計されるので、測定対象物の電荷が逆流しやすくなっている。もし、測定対象物の電荷が測定電源回路に逆流してしまうと、その電荷量によっては測定電源回路を破壊したり、発火したりする危険がある。しかし、上記したように測定対象物が事前に除電されるので、測定電源回路の破壊や発火の危険はない。
【0020】
の発明は、上記切換え機構が、上記導体と一体的に移動するとともにこの導体と電気的に接続された切換え素子と、常時接地状態を保つ接地素子と、上記切換え素子にばね力を作用させ、そのばね力の作用で上記切換え素子を上記接地素子に接触させるばね部材を備え、通常は、上記ばね部材のばね力で上記切換え素子を接地素子に接触させて上記導体を接地させる。
【0022】
の発明は、上記導体と、この導体とその軸線方向に一体的に移動する切換え素子と、一方の端部が上記切換え素子と間隔を保つとともに他方の端部が上記測定電源回路に接続された導体連結素子とを備え、上記切換え素子が上記ばね部材のばね力に抗して上記間隔分移動したとき、切換え素子と測定電源回路とを、上記導体連結素子を介して電気的に接続する構成にしている。
【0023】
の発明、上記測定電源回路が、キャパシタと、このキャパシタをチャージする電源と、キャパシタの電圧を測定する測定手段とからなる。
【0024】
第5の発明は、上記導体と一体的に移動するとともにこの導体と電気的に接続された切換え素子と、常時接地状態を保つ接地素子と、上記キャパシタと電源との間に設けた連動スイッチと、上記切換え素子と上記連動スイッチとを連動させる連動手段とを備え、上記切換え素子が上記接地素子に接触して導体が測定電源回路から切り離されている位置関係において上記連動手段が上記連動スイッチを閉じ、切換え素子が上記接地素子から切り離された位置関係において連動手段が上記連動スイッチを開く構成にしている。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、除電対象物と導体の先端との間で絶縁破壊による放電が発生しても、そのときの放電エネルギーを小さく抑えられるので、着火性放電を防止できる。
また、この発明の接地確認装置によれば、着火性放電とともに測定電源回路の発火も防止できるし、一連の動作で測定作業をスムーズに実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】除電機構の構造の概略図である。
図2】除電機構を電流測定器に用いた例を示す概略図である。
図3】接地確認装置の断面図である。
図4】接地確認装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示した実施形態は、除電機構の概略図であり、この除電機構は接地されたケーシングAを備え、このケーシングAの開口部分から導体1の先端を突出させている。この導体1はその先端とは反対側に高抵抗素子2を接続するとともに、この高抵抗素子2にはケーブルxを介して接地させている。
【0028】
なお、上記のように接地させたケーブルxがこの発明の接地電位保持手段を構成しているが、この発明においては、接地電位を維持しているものであれば、その構成や材質等は問わない。
【0029】
上記のようにした導体1に電圧が作用すると、この導体1と接地されたケーシングAとの間に浮遊容量SCが生成される。なお、この実施形態では、導体1とケーシングAとを対向させて、それらの間で浮遊容量SCが生成されるようにしたが、例えば導体1の対向相手としては、床面や接地電位を保った他の部材等を用いても良い。
【0030】
そして、上記浮遊容量SCは、導体1とケーシングAとの対向長さLに応じてその容量が決まるが、できるだけ小さくすることが望ましい。
このように浮遊容量SCの容量が微小であれば、導体1の先端と除電対象物11との間で絶縁破壊が発生したとしても、浮遊容量の蓄電量に相当する電流しか流れないので、上記導体と除電対象物とが瞬時に同電位になる。
また、浮遊容量SCの容量が小さいと、短い時間で充放電を繰り返すが、このように繰り返される充放電によって流れる電流も十分に小さいので、放電エネルギーも小さくなる。
【0031】
なお、上記浮遊容量SCは上記のように導体1と浮遊容量生成手段であるケーシングAとの対向長さLによって決まるが、この対向長さLも上記導体1の断面形状に応じて変化する。例えば、断面が平板状の導体あるいは大径の導体など、対向面積が大きな導体であれば、その長さを相対的に短くできる。
【0032】
また、図1においてケーシングAから突出した導体1の先端から高抵抗素子2までの距離を対向長さLとして設定しているが、導体1の突出端がケーシングAに近ければ、浮遊容量SCに影響を及ぼす。そこで図1では導体1の先端から高抵抗素子2までを対向長さLとしている。
【0033】
さらに、上記高抵抗素子2は、上記絶縁破壊時の電流の流れを抑えて、浮遊容量SCに蓄電させるとともに、導体1の先端が除電対象物11に接触した後は、除電対象物11の静電気をケーブルxにスムーズに流せる抵抗値を保てばよい。
【0034】
例えば、浮遊容量を微小な3pF程度に設定するとともに、高抵抗素子2の抵抗値を100MΩ程度としたとき、時定数τは0.3msとなるので、3pF及び100MΩは十分に許容できるものである。
ただし、浮遊容量SCは小さければ小さいほどよい。なぜなら、浮遊容量SCが小さければ絶縁破壊時の放電エネルギーを小さくできるからである。しかし、可燃性物質の最小着火エネルギーが大きい場合はそれに応じて浮遊容量SCの容量を大きくしても良い。実際には0.1pF~5pFの範囲であれば許容限度内といえる。
【0035】
また、高抵抗素子2の抵抗値は、浮遊容量SCを蓄電させるためには大きければ大きいほど良い。しかし、除電対象物11の除電を考慮すると、その大きさにも限界がある。その上限は、時定数τを考慮すると500MΩ程度である。
【0036】
上記のようにした除電機構は、ケーシングAとともに導体1の先端を除電対象物11に接近させる。この接近過程で導体1の先端と除電対象物11との間で絶縁破壊が起こると、両者の間に電流が流れる。このとき高抵抗素子2の抵抗値が大きいので、浮遊容量SCに除電対象物11と同電位になるまで電荷が蓄電されるが、この浮遊容量SCの容量が小さいので、導体1の先端の電位が除電対象物11と瞬時に同電位になる。
【0037】
導体1の先端と除電対象物11とが瞬時に同電位になるので、流れる電流はきわめて小さいものになる。
また、放電によって浮遊容量SCに蓄電された電荷がゼロになれば、再び絶縁破壊が起こり、蓄電された電荷がゼロになるたびに絶縁破壊が繰り返されるが、繰り返される絶縁破壊による電流も小さいので、着火放電を起こすことはない。
【0038】
図2は、上記のようにした除電機構を電流計測器と併用する場合についての概略図である。
すなわち、図2において、上記のようにした除電機構で測定対象物11を除電した後、テスタTで電流を計測するようにしたものである。
なお、このテスタTと除電機構とを一体的に設けてもよいことは当然である。
【0039】
図3,4に示した接地確認装置は、接地されたケーシングAを備え、このケーシングAの開口部分から導体1の先端を突出させている。この導体1は高抵抗素子2を介して導電棒状体3に接続するとともに、この導電棒状体3を絶縁体4で被覆している。さらに、この導電棒状体3の端部、すなわち導体1とは反対側における端部に板状の切換え素子5を固定している。
上記のようにした導体1、高抵抗素子2及び導電棒状体3のそれぞれは軸線方向に一体的に移動可能である。
【0040】
さらに、上記ケーシングAには、板状の接地素子6を固定しているが、この接地素子6はケーシングAを介して常時接地されている。上記した絶縁体4と一体の導電棒状体3はこの接地素子6を貫通して導体1とは反対側に突出させるとともに、その突出端に上記切換え素子5を固定して、導電棒状体3と切換え素子5とを電気的に導通させている。
そして、上記接地素子6と対向して絶縁材料からなるばね受板7をケーシングA内に固定するとともに、このばね受板7と上記切換え素子5との間にばね部材8を介在させている。
【0041】
したがって、上記ばね部材8のばね力で通常は切換え素子5を接地素子6に接触させ、これら切換え素子5及び接地素子6を介して導体1を接地側に導通させている。
また、上記ばね受板7を境にして接地素子6とは反対側に測定電源回路9を設け、この測定電源回路9と電気的に接続された導体連結素子10を設けている。この導体連結素子10の先端は、接地素子6に接触した切換え素子5との間で間隔を保って対向している。
【0042】
上記のように構成したので、切換え素子5は通常はばね部材8のばね力の作用で接地素子6に接触して、導体1を接地側に導通している。したがって、導体1を図示の測定対象物11に接触させれば、この対象物11は接地側に接続されて除電される。
【0043】
上記の状態から、導体1を測定対象物11にさらに強く押し付ければ、導体1と一体的に移動する切換え素子5がばね部材8のばね力に抗して移動し、接地素子6から切り離されるとともに、切換え素子5が導体連結素子10に接触し、導体1を測定電源回路9に接続する。
【0044】
したがって、導体1を測定対象物11に接触させて除電するプロセスと、導体1を接地素子6から切り離して測定電源回路9に接続するプロセスとを一連の動作で実現できる。
なお、上記のことからも明らかなように、切換え素子5、接地素子6、ばね部材8及び導体連結素子10のそれぞれが相まって、この発明の切換え機構を構成する。
【0045】
また、この接地確認装置においても、上記した除電機構とまったく同じ機構が備わっている。すなわち、接地されたケーシングAと、このケーシングAと対向する導体1と、高抵抗素子2と接地電位保持手段としての接地素子6とが備わっている。そして、除電機能を発揮する上では、上記各構成要素の機能も上記した除電機構と同じである。
したがって、この接地確認装置において、接地されたケーシングA、このケーシングAと対向する導体1、高抵抗素子2及び接地電位保持手段としての接地素子6については除電機構の説明を援用する。
【0046】
一方、上記測定電源回路9は、図4に示すように、測定用電源であるキャパシタC、このキャパシタCの電圧を検出するこの発明の測定手段としての電圧計V、上記キャパシタCに蓄電させるための直流電源12、電源12とキャパシタCとの間で開閉する連動スイッチ13及びこの連動スイッチ13とキャパシタCとの間を開閉する手動スイッチ15を設けている。
【0047】
そして、上記連動スイッチ13は連動手段14を介して切換え素子5と連動するようにしている。つまり、切換え素子5が接地素子6と接触しているときには、当該連動スイッチ13が閉じてキャパシタCが電源12に接続され、キャパシタCはチャージされる。
【0048】
また、切換え素子5がばね部材8に抗して移動すると、切換え素子5と接地素子6とが切り離されるとともに、切換え素子5と導体連結素子10とが接触状態を保つ。この接触状態では連動スイッチ13が開いて、電源12によるキャパシタCのチャージは中断するとともに、キャパシタCに蓄えられた電荷が導体1を介して測定対象物11に流れることになる。
【0049】
上記のようにした接地確認装置は、導体1を測定対象物11に接触させている状態、すなわち通常の状態では、切換え素子5がばね部材8のばね力の作用で接地素子6に接触して導体1を接地側に接続するとともに、連動スイッチ13を図4に示すように閉じてキャパシタCをチャージする。
【0050】
上記の状態から導体1を測定対象物11の至近距離まで近づけると、測定対象物11の帯電量によっては絶縁破壊を起こして、測定対象物11から導体1に放電が起こるが、このときの放電エネルギーが小さくなる原理は、除電機構とすべて同じである。
【0051】
また、導体1の先端を移動してそれを測定対象物11に接触させると、測定対象物11は接地素子6を介して接地されるので、対象物11は除電される。このように対象物11が事前に除電されるので、その電荷が測定電源回路9に流れてそれを破壊したり、あるいは発火させたりしない。
【0052】
特に、上記測定電源回路9の電源電圧は、防爆対策を考慮して非常に低い値に設定され、通常は5V前後の電圧が想定されている。したがって、上記のように測定対象物11を事前に除電して、その電荷が測定電源回路9に流れるのを防止する意義はきわめて大きい。
なお、この実施形態では、上記測定対象物11を事前に除電する機能と、高抵抗素子2の抵抗によって測定電源回路9に電流が逆流するのを防止する機能とを兼ね備えている。
【0053】
上記のように導体1を測定対象物11に接触させてからそれをさらに強く押し付けると、導体1は導電棒状体3を介して切換え素子5をばね部材8のばね力に抗して押し、切換え素子5を接地素子6から切り離すとともに、切換え素子5を導体連結素子10に接触させる。
【0054】
また、上記のように切換え素子5が導体連結素子10に接触する過程では、連動手段14が連動スイッチ13を押し開くので、キャパシタCに対するチャージは中断されるとともに、このキャパシタCに蓄えられた電荷が、導体連結素子10、切換え素子5、導電棒状体3及び高抵抗素子2を介して導体1に導かれる。そして、このときのキャパシタCの電荷量を電圧計Vで測定する。
【0055】
上記キャパシタCの電荷量がゼロになれば、その電荷のすべてが測定対象物11を介して接地側に流れたと推測できるので、この場合には当該測定対象物11が接地されていると判定できる。逆に、電荷量がゼロにならなければ、測定対象物11が接地不良の状態にあると判定できる。
【0056】
上記のようにして測定を終了したら、導体1を対象物11から離すが、その過程で、切換え素子5が接地素子6に接触した状態をほんの少しの間保つ。このように接触状態を保てば、測定終了後の測定対象物11の残留電荷を接地側に流して除電することができる。
【0057】
いずれにしても、導体1を対象物11に接触させて、接地の良・不良を測定するまでと、その測定終了後に対象物11の残留電荷を接地側に流して除電を終了するまでとを、一連の動作で連続的に行うことができ、この動作の一連性も、この実施形態の大きな特徴である。
【0058】
なお、この実施形態では、測定電源回路9のキャパシタCの電荷量を測定するようにしたが、例えば、測定用電源をキャパシタCに変えてバッテリーを用いても良い。ただし、この場合には、バッテリーから流れる電流の大きさによって、対象物11の接地状況を判定することになる。
【0059】
しかし、電流の大きさで接地状況を判定するとなると、その電流量の基準設定が難しくなる。
したがって、上記実施形態のようにキャパシタCの電荷量がゼロになったか否かで接地状況を判定する方が、明確な判定が可能になり有利である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
可燃性溶剤や粉体などを取り扱う危険な場所での着火事故を防ぐための除電機構あるいは接地確認装置として有効である。
【符号の説明】
【0061】
1…導体、2…高抵抗素子、x…接地電位保持手段、5…切換え素子、6…接地素子、8…ばね部材、9…測定電源回路、10…導体連結素子、11…対象物、L…間隔、SC…浮遊容量、C…キャパシタ、V…電圧計、13…連動スイッチ、14…連動手段
図1
図2
図3
図4