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特許7057980抗-ヒトインターロイキン-2抗体及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】抗-ヒトインターロイキン-2抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20220414BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220414BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220414BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220414BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220414BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220414BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220414BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220414BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220414BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220414BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220414BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 111
A61P13/10
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019565265
(86)(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 KR2018005955
(87)【国際公開番号】W WO2018217058
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2019-11-25
(31)【優先権主張番号】10-2017-0064815
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516355542
【氏名又は名称】インスティテュート フォー ベーシック サイエンス
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE FOR BASIC SCIENCE
(73)【特許権者】
【識別番号】509191159
【氏名又は名称】ポステック アカデミー‐インダストリー ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サーフ、チャールズ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジュン-ニョン
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/005950(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/070561(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1340559(KR,B1)
【文献】国際公開第2014/066834(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインターロイキン-2(human interleukin-2,hIL-2)に特異的に結合し、前記hIL-2がCD25に結合するのを阻害する抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片であって、
配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖CDR(complementarity determining region)1;配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;及び配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び
配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含むことを特徴とする抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体であることを特徴とする請求項1に記載の抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
配列番号3、配列番号23、配列番号28、配列番号32及び配列番号34よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び
配列番号4、配列番号24、配列番号26及び配列番号30よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
配列番号3の重鎖可変領域及び配列番号4の軽鎖可変領域;
配列番号23の重鎖可変領域及び配列番号24の軽鎖可変領域;
配列番号28の重鎖可変領域及び配列番号26の軽鎖可変領域;
配列番号32の重鎖可変領域及び配列番号30の軽鎖可変領域;又は
配列番号34の重鎖可変領域及び配列番号30の軽鎖可変領域を含むことを特徴とする請求項3に記載の抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
CD8+ T細胞とNK細胞の拡張を誘導することを特徴とする請求項1に記載の抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸を含む組換えベクター。
【請求項8】
請求項7に記載の組換えベクターで形質転換された細胞。
【請求項9】
請求項8に記載の細胞を培養する段階を含む抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片の製造方法。
【請求項10】
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片とhIL-2が結合された複合体。
【請求項11】
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含む癌の予防又は治療用組成物。
【請求項12】
前記癌は、皮膚癌、乳癌、大腸癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、脳腫瘍、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、すい臓癌、胃癌、子宮頸癌、甲状腺癌、前立腺癌及び膀胱癌よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を含む二重特異抗体(bispecific antibody)又は抗体-薬物の接合体(antibody-drug conjugate)。
【請求項14】
請求項13に記載の二重特異抗体又は抗体-薬物の接合体を有効成分として含む癌の予防又は治療用組成物。
【請求項15】
前記癌は、皮膚癌、乳癌、大腸癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、脳腫瘍、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、すい臓癌、胃癌、子宮頸癌、甲状腺癌、前立腺癌及び膀胱癌よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片及び免疫チェックポイント阻害剤を含む癌治療用併用投与組成物。
【請求項17】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、抗-CTLA-4抗体又は抗-PD-1抗体であることを特徴とする請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含むワクチン効能増進用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトインターロイキン-2(human Interleukin-2,hIL-2)に結合する抗体に関し、より具体的には、hIL-2の特定エピトープに特異的に結合することによって、hIL-2がCD25に結合するのを阻害する抗-hIL-2抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-2(Interleukin-2,IL-2)は、Treg(Foxp3 CD4調節T)細胞、ナチュラルキラー細胞(natural killer cell、NK細胞)などIL-2受容体を発現するT細胞を含む多様なリンパ細胞の生存、拡張及び機能に必須の役割をする多面的発現(pleiotropic)サイトカイン(cytokine)である。IL-2受容体(Interleukin-2 receptor,IL-2R)は、親和度によって高親和性IL-2受容体(high-affinity IL-2R)と低親和性IL-2受容体(low-affinity IL-2R)として存在する。高親和性IL-2受容体は、IL-2Rγc(CD132)、IL-2Rβ(CD122)及びIL-2Rα(CD25)の3個の鎖から構成されており、低い親和性IL-2受容体は、ただIL-2Rγc、IL-2Rβ鎖だけから構成されている(Boyman,O.,et al.,Nat Rev Immunol、2012.12(3):p.180-90)。
【0003】
IL-2は、抗腫瘍活性(anti-tumor activity)を有するCD8 T細胞とNK細胞を刺激するので、1990年代に米国とヨーロッパで転移性黒色腫と転移性腎臓癌の治療のために臨床的に使用された(Rosenberg,S.A.,J Immunol、2014.192(12):p.5451-8)。しかしながら、IL-2治療は、治療を受ける癌患者の10%未満だけで効果的であり、深刻な副作用を伴った。これは、投与されたIL-2が生体内(in vivo)で非常に短い半減期を有し、抗腫瘍活性を有するCD8 T細胞とNK細胞が、低親和性IL-2受容体を発現するので、多量のIL-2投与が要求され、これによって血管漏出症候群と低血圧による多器官の深刻な疾患を誘発するためである(Lotze,M.T.,et al.,J Immunol、1985.134(1):p.157-66,Schwartz,R.N.,et al.,Oncology(Williston Park),2002.16(11 Suppl 13):p.11-20)。他の問題点は、IL-2の投与が、高親和性IL-2受容体を発現し、CD8 T細胞及びNK細胞により媒介される抗腫瘍免疫を抑制するTreg細胞の強力な拡張を誘導するということである(Brandenburg,S.,et al.,Eur J Immunol、2008.38(6):p.1643-53;Facciabene,A.,et al.,Cancer Res、2012.72(9):p.2162-71)。IL-2治療のこのような短所を解決する方法は、IL-2の生体内半減期を延長させ、同時に低親和性IL-2受容体を発現するCD8 T細胞及びNK細胞を選択的に活性化させることであり、このために多くの試みがあったが、若干の成功があっただけである(Arenas-Ramirez,N.,et al.,Sci Transl Med、2016.8(367):p.367ra166)。
【0004】
最近、高親和性IL-2受容体に結合するIL-2のアミノ酸残基の変形が解決方法として提案されたが、人為的に導入されたアミノ酸配列を分解するタンパク質分解酵素に対して免疫原性を有するか、又は感受性を有する変形されたIL-2を提供することができるという限界点がある(Levin,A.M.,et al.,Nature、2012.484(7395):p.529-33)。
【0005】
これより、本発明者らは、IL-2に不自然な変形を起こさず、IL-2の生体内半減期を延長させ、同時に低親和性IL-2受容体を発現するCD8 T細胞及びNK細胞を選択的に活性化させる方法を開発するために努力した結果、IL-2に特定の特異性を有する抗-IL-2モノクローナル抗体(monoclonal AB,mAb)を結合させると、IL-2が高親和性受容体に結合するのを選択的に阻害することを確認することによって、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の背景技術の部分に記載された前記情報は、ただ本発明の背景に対する理解を向上させるためのものであり、これにより、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとってすでに知られた先行技術を形成する情報を含まないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ヒトインターロイキン-2(human interleukin-2,hIL-2)に特異的に結合し、前記hIL-2がCD25に結合するのを阻害する、抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸、前記核酸を含むベクター及び前記ベクターで形質転換された細胞、これを利用した抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片の製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含む癌の予防又は治療用組成物及び治療方法を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を含む二重特異抗体又は抗体-薬物の接合体、これを有効成分として含む癌の予防又は治療用組成物及び治療方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片及び免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitor)を含む癌治療用併用投与組成物及び治療方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;及び配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0013】
本発明は、また、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸、前記核酸を含むベクター、前記ベクターで形質転換された細胞及びこれを利用した抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片の製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、また、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片とhIL-2が結合された複合体を提供する。
【0015】
本発明は、また、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含む癌の予防又は治療用組成物及び治療方法を提供する。
【0016】
本発明は、また、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を含む二重特異抗体又は抗体-薬物の接合体、これを有効成分として含む癌の予防又は治療用組成物及び治療方法を提供する。
【0017】
本発明は、また、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片及び免疫チェックポイント阻害剤を含む癌治療用併用投与組成物及び治療方法を提供する。
【0018】
本発明は、また、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片の癌の予防又は治療の使用を提供する。
【0019】
本発明は、また、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片の癌の予防又は治療のための薬剤を製造するための使用を提供する。
【0020】
本発明は、また、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含むワクチン効能増進用組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、TCB2モノクローナル抗体のhIL-2に対する結合特異性の実験結果を示すものである。
図2図2は、hIL-2/TCB2複合体による生体内(in vivo)免疫刺激効果を示すものである。図2Aは、免疫細胞頻度の分析結果、図2Bは、CD4及びCD8 T細胞でCD44及びCD62Lの発現分析結果、図2Cは、実験統計の分析結果、図2Dは、hIL-2/MAB602又は、hIL-2/TCB2複合体による免疫細胞の拡張効果に対する結果と実験統計分析である(**p<0.01,***p<0.001(unpaired t test))。
図3図3は、抗-hIL-2 mAbsのhIL-2に対する親和度をBiacore T100を利用して表面プラズモン共鳴曲線で示すものである。
図4図4は、固形腫瘍に対するhIL-2/TCB2複合体の効果を示すものである(***p<0.001(Two way ANOVA for day 12,unpaired t test for day 14))。
図5図5は、転移性腫瘍に対するTCB2 mAbの効果を示すものである(***p<0.001(unpaired t test))。
図6図6は、B6F10黒色腫モデルでhIL-2/TCB2複合体及びtumor peptide therapy併用の抗腫瘍効果を示すものである(***p<0.001(Two way ANOVA))。
図7図7は、CT26腫瘍モデル(Balb/C colon cancer)でhIL-2/TCB2複合体及び抗-CTLA-4抗体併用の抗腫瘍効果を示すものである(**p<0.01(Two way ANOVA for day 17,unpaired t test for day 24))。
図8図8は、MC38腫瘍モデル(B6 colon cancer)でhIL-2/TCB2複合体及び抗-PD-1抗体併用の抗腫瘍効果を示すものである(*p<0.05,**p<0.01(Two way ANOVA for day 19,unpaired t test for day 21))。
図9図9は、hIL-2/hnTCB2複合体による生体内(in vivo)免疫刺激効果に対する結果と実験統計分析である。
図10図10は、MC38腫瘍モデル(B6 colon cancer)でhIL-2/hnTCB2複合体及び抗-PD-1抗体併用の抗腫瘍効果を示すものである(*p<0.05,**p<0.01(Two way ANOVA for day 19 and 22,unpaired t test for day 25))。
【発明を実施するための形態】
【0022】
別途定義されない限り、本明細書で使用されたすべての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野において熟練した専門家により通常的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に本明細書で使用された命名法は、本技術分野においてよく知られており、通常的に使用されるものである。
【0023】
本発明では、不自然な変形を起こさず、IL-2の生体内半減期を延長させ、同時に低親和性IL-2受容体を発現するCD8 T細胞及びNK細胞を選択的に活性化させる方法を開発するために努力した結果、IL-2に特定の特異性を有する抗-IL-2モノクローナル抗体(monoclonal AB,mAb)を結合させると、IL-2が高親和性受容体に結合することを選択的に阻害することを確認しようとした。
【0024】
本発明は、一態様において、ヒトインターロイキン-2(human interleukin-2,hIL-2)に特異的に結合し、前記hIL-2がCD25に結合するのを阻害する、抗-hIL-2抗体(本明細書内で「TCB2」で示す)又はその抗原結合断片に関する。
【0025】
本発明において、ヒトインターロイキン-2(human interleukin-2,hIL-2)とは、どんな他の因子とも実質的な配列相同性を有しない133個のアミノ酸からなるタンパク質(15.4 kDa)を示すものである。
【0026】
本発明において、CD25とは、IL-2受容体のIL-2Rα鎖を示すものであって、IL-2受容体は、親和度によって高親和性IL-2受容体(high-affinity IL-2R)と低親和性IL-2受容体(low-affinity IL-2R)として存在し、CD25は、低い親和性IL-2受容体には存在せず、高親和性IL-2受容体にのみ存在する鎖である。
【0027】
本明細書で使用された用語「抗体」とは、免疫系内で抗原の刺激によって作られる物質を意味するものであって、その種類は、特に制限されない。抗体は、最近、疾患治療剤の用途で多く使用されている。抗体は、生体外だけでなく、生体内でも非常に安定しており、半減期が長いので、大量発現及び生産に有利である。また、抗体は、本質的にダイマー(dimer)構造を有するので、接着能(avidity)が非常に高い。完全な抗体は、2個の全長(full length)軽鎖及び2個の全長重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖と二硫化結合で連結されている。抗体の不変領域は、重鎖不変領域と軽鎖不変領域に分けられ、重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びイプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとしてガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変領域は、キャパ(κ)及びラムダ(λ)タイプを有する。
【0028】
本発明において、抗体は、動物由来抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体を全部含む。所望の抗原を被免疫動物に免疫させて生産する動物由来抗体は、一般的に治療目的でヒトに投与時に免疫拒否反応が起こり得、このような免疫拒否反応を抑制するために、キメラ抗体(chimeric antibody)が開発された。キメラ抗体は、遺伝工学的方法を利用して抗-アイソタイプ(anti-isotype)反応の原因となる動物由来抗体の不変領域をヒト抗体の不変領域に置換したものである。キメラ抗体は、動物由来抗体に比べて抗-アイソタイプ反応において相当部分改善されたが、依然として動物由来アミノ酸が可変領域に存在していて、潜在的な抗-イディオタイプ(anti-idiotypic)反応に対する副作用を内包している。このような副作用を改善するために開発されたものが、ヒト化抗体(humanized antibody)である。これは、キメラ抗体の可変領域のうち抗原の結合に重要な役割をするCDR(complementarity determining regions、相補性決定領域)部位をヒト抗体骨格(framework)に移植して製作される。
【0029】
前記「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖可変ドメイン免疫グロブリン及びヒト化重鎖可変ドメイン免疫グロブリンを含む。ヒト化抗体は、一つ以上のヒト遺伝子配列で部分的に又は全体的に誘導された一定の領域(合成アナログを含む)を含むことができる。ヒト化抗体は、CDRを提供するドナー抗体と同じ標的抗原に結合するものと期待される。通常、ヒト化抗体又は免疫グロブリンのすべてのセグメント又は部分は、CDRを除いて、自然発生又は保存(consensus)ヒト免疫グロブリン配列の対応するセグメント又は部分と実質的に同一であるか、実質的に同種性である。ヒト化抗体を製作するためのCDR移植(grafting)技術において最も重要なことは、動物由来抗体のCDR部位を最もよく受け入れることができる最適化したヒト抗体を選定することであり、このために抗体データベースの活用、結晶構造(crystal structure)の分析、分子モデリング技術などが活用される。しかしながら、最適化したヒト抗体骨格に動物由来抗体のCDR部位を移植しても、動物由来抗体の骨格に位置しつつ、抗原結合に影響を及ぼすアミノ酸が存在する場合があるので、抗原結合力が保存されない場合が相当数存在するので、抗原結合力を復元するための更なる抗体工学技術の適用は必須と言える。
【0030】
本発明の用語「モノクローナル抗体(monoclonal Ab,mAb)」とは、本発明の技術分野において通常的に使用される意味で使用されたものであって、結合された抗原上の単一エピトープを認識する抗体を意味するものである。この点が、同じ抗原に結合するが、その抗原の異なるエピトープに結合する区別される抗体の集合を意味するポリクローナル抗体と対比される。このような理由で、単一抗原分子は、複数のポリクローナル抗体により同時に結合され得るが、この抗原に特異的な特定のモノクローナル抗体は、ただ一つの分子だけにより結合され得る。単一モノクローナル抗体分子により結合された後、結合されたエピトープは遮断され、したがって、これ以上他の同じモノクローナル抗体により結合され得ない。抗体のモノクローナル性質は、治療剤としての使用に特に適合しており、これは、このような抗体が単一、同種性分子種であるので、非常によく特性化され得、再現可能に製造され、精製可能であるためである。このような要因は、生物学的活性が非常に高い水準の精密性で予測され得る製品を生産可能にし、このような分子は、哺乳類、特にヒトでの治療的投与に対して官庁での許可を得なければならないので、前記要因は、特に重要である。
【0031】
本明細書で使用された用語「重鎖(heavy chain)」とは、抗原に特異性を付与するために十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVH及び3個の不変領域ドメインCH1、CH2及びCH3とヒンジ(hinge)を含む全長重鎖及びその断片を全部含むものである。本明細書で使用された用語「軽鎖(light chain)」とは、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVL及び不変領域ドメインCLを含む全長軽鎖及びその断片を全部含むものである。
【0032】
本発明において、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3、配列番号23、配列番号28、配列番号32及び配列番号34よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び配列番号4、配列番号24、配列番号26及び配列番号30よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むことを特徴とする。好ましくは配列番号3の重鎖可変領域及び配列番号4の軽鎖可変領域;配列番号23の重鎖可変領域及び配列番号24の軽鎖可変領域;配列番号28の重鎖可変領域及び配列番号26の軽鎖可変領域;配列番号32の重鎖可変領域及び配列番号30の軽鎖可変領域;又は配列番号34の重鎖可変領域及び配列番号30の軽鎖可変領域を含むことを特徴とする。
【0033】
本明細書で使用された用語「相補性決定領域(complementarity determining region,CDR)」とは、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の高可変領域(hypervariable region)のアミノ酸配列を意味する。重鎖及び軽鎖は、それぞれ3個のCDRを含むことができる(重鎖CDR1、重鎖CDR2、重鎖CDR3及び軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、軽鎖CDR3)。前記CDRは、抗体が抗原又はエピトープに結合するにあたって主要な接触残基を提供することができる。
【0034】
本発明において、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号5のDNA配列を含む重鎖CDR1;配列番号6のDNA配列を含む重鎖CDR2;及び配列番号7のDNA配列を含む重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号8のDNA配列を含む軽鎖CDR1;配列番号9のDNA配列を含む軽鎖CDR2;及び配列番号10のDNA配列を含む軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含むことを特徴とする。
【0035】
本発明において、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1;配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2;及び配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1;配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2;及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含むことを特徴とする。
【0036】
本発明の用語「特異的に結合」とは、当業者に通常的に公知となっている意味と同じものであって、抗原及び抗体が特異的に相互作用して免疫学的反応をすることを意味する。本発明では、ヒトIL-2(hIL-2)が数個のhIL-2と異なるその他潜在的抗原を区別できるヒトモノクローナル抗体又はその断片の能力を指すものであり、前記区別は、複数の異なる抗原プールで潜在的結合パートナーとしてただhIL-2と結合したり相当な程度で結合する程度よりなる。この場合、「hIL-2と相当な程度で結合」は、複数の同等に接近可能な異なる抗原プールで潜在的結合パートナーとしてhIL-2がhIL-2でない他の抗原より少なくとも10倍、好ましくは50倍、最も好ましくは100倍又はそれ以上で結合することを意味する。
【0037】
本発明の用語「抗原結合断片」とは、免疫グロブリン全体構造に対するその断片であって、抗原が結合し得る部分を含むポリペプチドの一部を意味する。例えば、scFv、(scFv)、scFv-Fc、Fab、Fab´又は、F(ab´)であり得るが、これに限定されない。前記抗原結合断片のうちFabは、軽鎖及び重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域及び重鎖の最初の不変領域(CH1)を有する構造であって、1個の抗原結合部位を有する。Fab´は、重鎖CH1ドメインのC-末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点からFabと差異がある。F(ab´)抗体は、Fab´のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合を成して生成される。Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変部位のみを有している最小の抗体断片であって、Fv断片を生成する組換え技術は、当業界に広く公知されている。二重鎖Fv(two-chain Fv)は、非共有結合で重鎖可変部位と軽鎖可変部位が連結されており、単鎖Fv(single-chain Fv)は、一般的にペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と単鎖の可変領域が共有結合で連結されたり、又は、C-末端ですぐに連結されていて、二重鎖Fvのようにダイマーのような構造を成すことができる。前記リンカーは、1~100個又は2~50個の任意のアミノ酸よりなるペプチドリンカーであり得、当業界に適切な配列が知られている。前記抗原結合断片は、タンパク質加水分解酵素を利用して得ることができ(例えば、全体抗体をパパインで制限切断すると、Fabを得ることができ、ペプシンで切断すると、F(ab´)断片を得ることができる)、遺伝子組換え技術を用いて製作することができる。本発明の抗体の抗原結合断片は、前記CDRを一つ以上含む断片であり得る。
【0038】
本発明において、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片は、CD8 T細胞とNK細胞の拡張を誘導することを特徴とする。本発明の一実施例において、本発明による抗-hIL-2抗体がCD8 T細胞及びNK細胞活性化を誘導し、少ないTreg細胞拡張を誘導することを確認した。
【0039】
本発明は、他の観点から、抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸に関する。
【0040】
本発明において、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸は、配列番号1、配列番号2、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31又は配列番号33の配列を含むことを特徴とする。具体的に、本発明による抗体の重鎖をコードする核酸配列は、配列番号27、配列番号31又は配列番号33及び/又は本発明による抗体の軽鎖をコードする核酸配列は、配列番号2、配列番号25又は配列番号29である。
【0041】
本発明の抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を分離して抗体又はその抗原結合断片を組換え的に生産することができる。核酸を分離し、これを複製可能なベクター内に挿入して追加にクローニングしたり(DNAの増幅)又は追加に発現させる。
【0042】
本発明の用語「核酸」とは、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸において基本構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドだけでなく、糖又は塩基部位が変形された類似体(analogue)も含む。本発明の重鎖及び軽鎖可変領域をコードする核酸の配列は変形され得る。前記変形は、ヌクレオチドの追加、欠失、又は非保存的置換又は保存的置換を含む。
【0043】
本発明の核酸は、前記ヌクレオチド配列に対して実質的な同一性を示すヌクレオチド配列も含む。実質的な同一性は、本発明のヌクレオチド配列と任意の他の配列を最大限対応するようにアラインし、当業界において通常的に利用されるアルゴリズムを利用してアラインされた配列を分析した場合に、最小80%の相同性、より好ましくは最小90%の相同性、最も好ましくは最小95%の相同性を示すヌクレオチド配列を意味する。
【0044】
前記抗体を暗号化するDNAは、通常の過程を使用して(例えば、抗体の重鎖と軽鎖を暗号化するDNAと特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に分離又は合成する。
【0045】
本発明は、さらに他の観点において、前記核酸を含む組換えベクターに関する。
【0046】
多くのベクターが入手可能である。ベクター成分には、一般的に、次のうち一つ以上が含まれるが、これに制限されない:信号配列、複製基点、一つ以上のマーカー遺伝子、増強因子要素、プロモーター、及び転写終結配列が可能である。
【0047】
本明細書で使用される用語「ベクター」は、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段であって、プラスミドベクター;コスミドベクター;バクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクターのようなウイルスベクターなどを含む。前記ベクターで抗体をコードする核酸は、プロモーターと作動的に連結されている。
【0048】
本明細書で使用される用語「作動的に連結」とは、核酸発現調節配列(例:プロモーター、シグナル配列、又は転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸配列間の機能的な結合を意味し、これによって前記調節配列は、前記他の核酸配列の転写及び/又は解読を調節することになる。
【0049】
原核細胞を宿主とする場合には、転写を進行させることができる強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーター及びT7プロモーターなど)、解読の開始のためのリボソーム結合部位及び転写/解読終結配列を含むことが一般的である。また、例えば、真核細胞を宿主とする場合には、哺乳動物細胞のゲノムに由来したプロモーター(例:メタロチオネインプロモーター、β-アクチンプロモーター、ヒトヘログロビンプロモーター及びヒト筋肉クレアチンプロモーター)又は哺乳動物ウイルスに由来したプロモーター(例:アデノウイルス後期プロモーター、ワクチニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(EBV)のプロモーター及びラウス肉腫ウイルス(RSV)のプロモーター)が利用され得、転写終結配列としてポリアデニル化配列を一般的に有する。
【0050】
場合によって、ベクターは、それから発現する抗体の精製を容易にするために他の配列と融合されることもできる。融合される配列は、例えばグルタチオンS-トランスフェラーゼ(Pharmacia,USA)、マルトース結合タンパク質(NEB,USA)、FLAG(IBI,USA)及び6x His(hexahistidine;Quiagen,USA)などがある。
【0051】
前記ベクターは、選択標識として当業界において通常的に利用される抗生剤耐性遺伝子を含み、例えばアンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子がある。
【0052】
本発明は、さらに他の観点において、前記組換えベクターで形質転換された細胞に関する。本発明の抗体を生成させるために使用された細胞は、原核生物、酵母又は高等真核生物細胞であり得るが、これに制限されるものではない。
【0053】
本発明において、前記形質転換された細胞は、エシェリヒアコリ(Escherichia coli)、バチルスサブチルス及びバチルスチューリンゲンシスのようなバチルス属菌株、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュドモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida))、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)又はスタフィロコッカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカスカルノスス(Staphylocus carnosus))のような原核宿主細胞を利用することができる。
【0054】
ただし、動物細胞に対する関心が最も大きく、有用な宿主細胞株の例は、COS-7、BHK、CHO、CHOK1、DXB-11、DG-44、CHO/-DHFR、CV1、COS-7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL 3A、W138、Hep G2、SK-Hep、MMT、TRI、MRC 5、FS4、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS-0、U20S、又はHT1080であり得るが、これに制限されるものではない。
【0055】
本発明は、さらに他の観点において、前記細胞を培養して本発明による抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を発現させる段階を含む抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片の製造方法に関する。
【0056】
前記細胞は、各種培地で培養することができる。市販用培地のうち制限なしに培養培地として使用することができる。当業者に公知となっているその他すべての必須補充物が適当な濃度で含まれることもできる。培養条件、例えば温度、pHなどが発現のために選別された宿主細胞とともにすでに使用されており、これは、当業者に明白だろう。
【0057】
前記抗体又はその抗原結合断片の回収は、例えば遠心分離又は限外濾過によって不純物を除去し、その結果物を例えば親和クロマトグラフィーなどを利用して精製することができる。追加のその他精製技術、例えば陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーなどが使用され得る。
【0058】
本発明は、さらに他の観点において、抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片とhIL-2が結合された複合体に関する。
【0059】
本発明は、さらに他の観点において、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片に薬物が接合された抗体-薬物の接合体(Antibody-drug conjugate,ADC)に関する。
【0060】
抗体-薬物の接合体(Antibody-drug conjugate,ADC)は、ターゲット癌細胞に抗癌薬物を伝達する前まで抗癌薬物が抗体に安定的に結合されていなければならない。ターゲットに伝達された薬物は、抗体から遊離してターゲット細胞の死滅を誘導しなければならない。このためには、薬物が抗体に安定的に結合すると同時に、ターゲット細胞から遊離するときは、ターゲット細胞の死滅を誘導する十分な細胞毒性を有しなければならない。
【0061】
本発明において、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片と抗癌剤など薬物を含む細胞毒性物質は、互いに結合(例えば、共有結合、ペプチド結合などによる)されての接合体(conjugate)又は融合タンパク質(細胞毒性物質及び/又は標識物質がタンパク質である場合)の形態で使用され得る。前記細胞毒性物質は、癌細胞、特に固形癌細胞に対して毒性を有するすべての物質であり得、放射線同位元素、細胞毒素化合物(small molecule)、細胞毒性タンパク質、抗癌剤などよりなる群から選ばれる1種以上であり得るが、これに制限されるものではない。前記細胞毒素タンパク質は、リシン(ricin)、サポリン(saporin)、ゲロニン (gelonin)、モモルジン(momordin)、デボガニン(debouganin)、ジフテリア毒素、緑膿菌毒素(pseudomonas toxin)などよりなる群から選ばれる1種以上であり得るが、これに制限されるものではない。前記放射線同位元素としては、131I、188Rh、90Yなどよりなる群から選ばれる1種以上であり得るが、これに制限されるものではない。前記細胞毒素化合物は、デュオカルマイシン(duocarmycin)、モノメチルアウリスタチンE(monomethyl auristatin E;MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(monomethyl auristatin F;MMAF)、N2´-ジアセチル-N2´-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)マイタンシン(N2´-deacetyl-N2´-(3-mercapto-1-oxopropyl)maytansine;DM1)、PBD(Pyrrolobenzodiazepine)dimerなどよりなる群から選ばれる1種以上であり得るが、これに制限されるものではない。
【0062】
本発明において、前記抗体-薬物の接合体は、本発明の属する技術分野によく知られた技術によるものであり得る。
【0063】
本発明において、前記抗体-薬物の接合体は、前記抗体又はその抗原結合断片がリンカーを介して薬物と結合されることを特徴とする。
【0064】
本発明において、前記リンカーは、切断性リンカー又は非切断性リンカーであることを特徴とする。
【0065】
前記リンカーは、抗-hIL-2抗体と薬物の間を連結する部位であって、例えば前記リンカーは、細胞内条件で切断可能な形態、すなわち細胞内環境で抗体から薬物がリンカーの切断を通じて放出され得るようにする。
【0066】
前記リンカーは、細胞内環境、例えばリソソーム又はエンドソームに存在する切断制により切断され得、細胞内ペプチダーゼ又はプロテアーゼ酵素、例えばリソソーム又はエンドソームプロテアーゼにより切断され得るペプチドリンカーであり得る。一般的にペプチドリンカーは、少なくとも2個以上のアミノ酸長さを有する。前記切断剤は、カテプシンB及びカテプシンD、プラスミンを含むことができ、ペプチドを加水分解して薬物を標的細胞内に放出することができるようにする。前記ペプチドリンカーは、チオール依存性プロテアーゼカテプシン-Bにより切断され得、これは、癌組織で高発現され、例えばPhe-Leu又はGly-Phe-Leu-Glyリンカーが使用され得る。また、前記ペプチドリンカーは、例えば細胞内プロテアーゼにより切断され得るものであって、Val-Citリンカーであるか、Phe-Lysリンカーであり得る。
【0067】
本発明において、前記切断性リンカーは、pH敏感性であり、特定のpH値で加水分解に敏感であり得る。一般的に、pH敏感性リンカーは、酸性条件で加水分解され得ることを示す。例えば、リソソームで加水分解され得る酸性不安定リンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シス-アコニティクアミド(cis-aconitic amide)、オルソエステル、アセタール、ケタルなど)であり得る。
【0068】
前記リンカーは、還元条件で切断されることもできる(例えば二硫化リンカー)。SATA(N-succinimidyl-S-acetylthioacetate)、SPDP(N-succinimidyl-3-(2-pyridyldithio)propionate)、SPDB(N-succinimidyl-3-(2-pyridyldithio)butyrate)及びSMPT(N-succinimidyl-oxycarbonyl-alpha-methyl-alpha-(2-pyridyl-dithio)toluene)を使用して多様な二硫化結合が形成され得る。
【0069】
本発明において、前記薬物及び/又は薬物-リンカーは、抗体のリジンを介して無作為で接合されたり、二硫化結合鎖を還元したときに露出するシステインを介して接合され得る。場合によって、遺伝工学的に製作されたタグ、例えば、ペプチド又はタンパク質に存在するシステインを介してリンカー-薬物が結合され得る。前記遺伝工学的に製作されたタグ、例えば、ペプチド又はタンパク質は、例えば、イソプレノイドトラスフェラーゼにより認識され得るアミノ酸モチーフを含むことができる。前記ペプチド又はタンパク質は、ペプチド又はタンパク質のカルボキシ末端で欠失(deletion)を有したり、ペプチド又はタンパク質のカルボキシ(C)末端にスペーサーユニットの共有結合を通した付加を有する。前記ペプチド又はタンパク質は、アミノ酸モチーフとすぐに共有結合されたり、スペーサーユニットと共有結合されてアミノ酸モチーフと連結され得る。前記アミノ酸スペーサーユニットは、1~20個のアミノ酸から構成され、そのうちグリシン(glycine)ユニットが好ましい。
【0070】
前記リンカーは、リソソームで多数存在したり、又はいくつかの腫瘍細胞で過発現するベータ-グルクロニダーゼ(β-glucuronidase)により認識されて加水分解されるベータ-グルクロニドリンカーを含むことができる。ペプチドリンカーとは異なって、親水性(hydrophilicity)が大きくて、疎水性の性質が高い薬物と結合時に抗体-薬物の接合体の溶解度を増加させることができるという長所を有する。
【0071】
また、前記リンカーは、非切断性リンカーであり得、抗体加水分解の一段階だけを通じて薬物が放出され、例えばアミノ酸-リンカー-薬物の接合体を生産する。このような類型のリンカーは、チオエーテル基又はマレイミドカプロイル基(maleimidocaproyl)であり得、血液内安定性を維持することができる。
【0072】
本発明において、前記薬物は、化学療法剤、毒素、マイクロRNA(miRNA)、siRNA、shRNA又は放射性同位元素であることを特徴とする。前記薬物は、薬理学的効果を示す製剤で抗体に結合され得る。
【0073】
前記化学療法剤は、細胞毒性製剤又は免疫抑制剤であり得る。具体的にマイクロチューブリン抑制剤、類似分裂抑制剤、トポイソメラーゼ阻害薬、又はDNAインターカレーターとして機能できる化学療法剤を含むことができる。また、免疫調節化合物、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗バクテリア剤、抗真菌剤、駆虫剤又はこれらの組合せを含むことができる。
【0074】
前記薬物には、例えば、マイタンシノイド、オリスタチン、アミノプテリン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、タリソマイシン、カンプトテシン、N8-アセチルスペルミジン、1-(2クロロエチル)-1,2-ジメチルスルホニルヒドラジド、エスペラマイシン、エトポシド、6-メルカプトプリン、ドラスタチン、トリコテセン、カリケアマイシン、タキソル(taxol)、タキサン、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、メトトレキサート、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンA、マイトマイシンC、クロラムブシル、デュオカルマイシン、L-アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、チオグアニン(thioguanine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、シタラビン(cytarabine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、イホスファミド(ifosfamide)、ニトロソウレア (nitrosourea)、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、マイトマイシン(mitomycin)、ダカルバジン(dacarbazine)、プロカルバジン(procarbazine)、トポテカン(topotecan)、窒素マスタード(nitrogen mustard)、シトキサン(cytoxan)、エトポシド(etoposide)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、CNU(bischloroethylnitrosourea)、イリノテカン(irinotecan)、カンプトテシン(camptothecin)、ブレオマイシン(bleomycin)、イダルビシン(idarubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、プリカマイシン(plicamycin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ビノレルビン(vinorelbine)、クロラムブシル(chlorambucil)、メルファラン(melphalan)、カルムスチン(carmustine)、ロムスチン(lomustine)、ブスルファン(busulfan)、トレオサルファン(treosulfan)、デカルバジン(decarbazine)、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)、9-アミノカンプトテシン(9-aminocamptothecin)、クリスナトール(crisnatol)、マイトマイシンC(mitomycin C)、 トリメトレキサート (trimetrexate)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、チアゾフリン(tiazofurin)、リバビリン(ribavirin)、EICAR(5-ethynyl-1-beta-Dribofuranosylimidazole-4-carboxamide)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、デフェロキサミン(deferoxamine)、フロクスウリジン(floxuridine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、ラルチトレキセド(raltitrexed)、シタラビン(cytarabine(ara C))、シトシンアラビノシド(cytosine arabinoside)、フルダラビン(fludarabine)、タモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、メゲストロール(megestrol)、ゴセレリン(goserelin)、ロイプロリドアセテート(leuprolide acetate)、フルタミド(flutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、EB1089、CB1093、KH1060、ベルテポルフィン(verteporfin)、フタロシアニン(phthalocyanine)、光減作剤Pe4(photosensitizer Pe4)、デメトキシ-ヒポクレリンA(demethoxy-hypocrellin A)、インターフェロン-α(Interferon-α)、インターフェロン-γ(Interferon-γ)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ベルケイド(velcade)、レバミド(revamid)、タラミド(thalamid)、ロバスタチン(lovastatin)、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン(1-methyl-4-phenylpyridiniumion)、スタウロスポリン(staurosporine)、アクチノマイシンD(actinomycin D)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ブレオマイシンA2(bleomycin A2)、ブレオマイシンB2(bleomycinB2)、ペプロマイシン(peplomycin)、エピルビシン(epirubicin)、ピラルビシン(pirarubicin)、ゾルビシン(zorubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ベラパミル(verapamil)及びタプシガルギン(thapsigargin)、核酸分解酵素及び細菌や動植物由来の毒素よりなる群から選ばれる一つ以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0075】
本発明において、前記薬物は、リンカー及びリンカー試薬上の親電子性基と共有結合を形成するために反応できるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、及びアリールヒドラジド基よりなる群から選ばれる一つ以上の親核基を含むことができる。
【0076】
本発明は、さらに他の観点において、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を含む二重特異抗体(Bispecific antibody)に関する。
【0077】
本発明において、前記二重特異抗体は、抗体の2個のアーム(arm)のうち、一つのアーム(arm)は、本発明による抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を含み、残りの他のアーム(arm)は、hIL-2以外の他の抗原、好ましくは癌関連抗原又は免疫チェックポイントタンパク質抗原に特異的な抗体、又は免疫効能細胞関連抗原に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む形態を意味する。
【0078】
前記二重抗体に含まれる抗-hIL-2抗体以外の抗体が結合する抗原は、好ましくは癌関連抗原又は免疫チェックポイントタンパク質抗原としてHer2、EGFR、VEGF、VEGF-R、CD-20、MUC16、CD30、CD33、CD52、PD-1、PD-L1、CTLA4、BTLA4、EphB2、E-セレクチン(selectin)、EpCam、CEA、PSMA、PSA、ERB3、c-METなどから選ばれ、免疫効能細胞関連抗原としては、TCR/CD3、CD16(FcγRIIIa) CD44、CD56、CD69、CD64(FcγRI)、CD89及びCD11b/CD18(CR3)などが選ばれるが、これに限定されるものではない。
【0079】
本発明は、さらに他の観点において、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含む癌の予防又は治療用組成物に関する。
【0080】
本発明は、さらに他の観点において、前記二重特異抗体又は抗体-薬物の接合体を有効成分として含む癌の予防又は治療用組成物に関する。
【0081】
「癌」とは、細胞の正常な分裂、分化及び死滅の調節機能に問題が発生して非正常的に過多増殖して周囲組織及び臓器に浸潤して塊りを形成し、既存の構造を破壊したり変形させる状態を意味するものである。「固形癌(solid cancer)」は、血液癌とは区別される特徴を有し、膀胱、乳房、腸、腎臓、肺、肝、脳、食道、胆嚢、卵巣、すい臓、胃、子宮頸部、甲状腺、前立腺及び皮膚などの様々な固形臓器(solid organ)で非正常的に細胞が成長して発生した塊りよりなる癌を意味するものである。「転移癌」は、癌が最初発生した部位から分離した癌細胞が血液、リンパ管などを介して他の部位に転移して増殖することによって発生する。本発明の組成物は、固形癌及び/又は転移癌の予防又は治療用に使用され得、例えば、皮膚癌、乳癌、大腸癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、脳癌、食道癌、胆嚢岩、卵巣癌、すい臓癌、胃癌、子宮頸癌、甲状腺癌、前立腺癌、膀胱癌の予防又は治療用に使用され得るが、これに制限されるものではない。
【0082】
本明細書で使用された用語「予防(preventing/prevention)」とは、組成物の投与により癌の転移、成長などを抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味するものであり、「治療」とは、組成物の投与により癌による症状が好転したり有利に変更するすべての行為を意味するものである。
【0083】
本発明の組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができ、前記担体は、薬物の製剤化に通常的に利用されるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどよりなる群から選ばれる1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。前記組成物は、また、薬学組成物の製造に通常的に使用される希釈剤、賦形剤、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などよりなる群から選ばれる1種以上をさらに含むことができる。
【0084】
前記組成物、又は前記抗体の薬学的有効量は、経口又は非経口で投与することができる。非経口投与である場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与及び直腸内投与などで投与することができる。経口投与時、タンパク質又はペプチドは、消化されるので、経口用組成物は、活性薬剤をコートしたり胃での分解から保護されるように剤形化され得る。また、前記組成物は、活性物質が標的細胞に移動できる任意の装置により投与され得る。
【0085】
前記組成物内の抗-hIL-2抗体(TCB2 mAb)の含有量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与間隔、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって多様に処方され得る。例えば、前記抗-hIL-2抗体(TCB2 mAb)の1日投与量は、0.001~1000mg/kg、具体的に0.01~100mg/kg、より具体的に0.1~50mg/kgの範囲であり得るが、これに制限されるものではない。前記抗-hIL-2抗体(TCB2 mAb)の1日投与量は、単位用量の形態で一つの製剤に製剤化されたり、適切に分量して製剤化されたり、多用量の容器内に内入させて製造され得る。前記「薬学的有効量」は、所望の薬理的効果を示すことができる有効成分の含量又は投与量を意味するものであり、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与間隔、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって多様に定められる。
【0086】
本発明の組成物は、当該発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を利用して製剤化することによって、単位用量の形態で製造されたり、又は多用量の容器内に内入させて製造され得る。この際、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、エキス剤、散剤、坐剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であり得、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。また、前記組成物は、他の治療剤とともに個別的に又は同時に投与され得る。
【0087】
特に、前記抗-hIL-2抗体(TCB2 mAb)を含む組成物は、抗体を含むので、免疫リポソームに剤形化され得る。抗体を含むリポソームは、当業界に広く知られた方法により製造され得る。前記免疫リポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びポリエチレングリコール-誘導体化したホスファチジルエタノールアミンを含む脂質組成物であって、逆相蒸発法により製造され得る。例えば、抗体のFab´断片は、ジスルフィド-交換反応を通じてリポソームに接合され得る。
【0088】
本発明は、さらに他の観点において、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片及び免疫チェックポイント阻害剤を含むことを特徴とする癌治療用併用投与組成物に関する。
【0089】
本発明において、前記免疫チェックポイント阻害剤は、immune checkpoint inhibitor又はcheckpoint inhibitorを意味し、抗-CTLA-4抗体又は抗-PD-1抗体であることを特徴とするが、これに限定されるものではない。
【0090】
「併用(co-administration又はcombination)」は、抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片と免疫チェックポイント阻害剤それぞれが同時に、順次に、又は逆順に投与され得ることを意味するものであって、当業者の範囲内適切な有効量の組合せで投与され得る。
【0091】
本発明の一実施例において、抗-CTLA-4抗体又は抗-PD-1抗体と本発明による抗-hIL-2抗体を順次に処理した場合、腫瘍の成長をさらに抑制することを確認した。
【0092】
前記併用投与組成物は、抗-hIL-2抗体を含み、これと関連した構成は、前述した癌の予防又は治療用組成物に含まれた構成と同一なので、各構成に関する説明は、併用投与用組成物においても同一に適用される。
【0093】
本発明は、さらに他の観点において、前記抗-hIL-2抗体、その抗原結合断片、前記二重特異抗体又は前記抗体-薬物の接合体の薬学的に有効な量を患者に投与する段階を含む癌予防及び/又は治療方法を提供する。
【0094】
本発明の前記組成物は、個別治療剤として投与されたり他の治療剤と併用して投与されることができ、従来の治療剤とは順次に又は同時に投与され得る。
【0095】
任意の抗癌剤、例えばシスプラチンは、悪液質、筋肉減弱症、筋肉消耗、骨消耗又は非自発的な体重減少のように副作用を有する。したがって、本発明は、悪液質、筋肉減弱症、筋肉消耗、骨消耗又は非自発的な体重の減少の重症度、頻度又は発生を予防したり最小化したり低減しつつ癌を治療するための組成物又は癌治療方法を含むことができる。
【0096】
一つ以上の抗癌剤と組み合わせて本発明の抗-hIL-2抗体の有効量を含む薬学的組成物を投与する段階を含む。特定の具現例において、本発明は、悪液質、筋肉減弱症又は筋肉消耗、骨消耗又は非自発的な体重減少の重症度、頻度又は発生を予防したり最小化したり低減しつつ癌を治療する方法を含み、方法は、悪液質、筋肉減弱症又は筋肉消耗、骨消耗又は非自発的な体重の減少の重症度、頻度又は発生を誘発したり増加させると知られている一つ以上の抗癌剤と組み合わせて本発明の抗-hIL-2抗体の有効量を含む薬学的組成物を患者に投与する段階を含む。
【0097】
本発明は、さらに他の観点において、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitor)と併用投与する段階を含む癌治療方法に関する。
【0098】
本発明による癌治療方法は、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片と免疫チェックポイント阻害剤が同時に、順次に、又は逆順に投与され得る。好ましくは、前記方法は、下記段階を含むことができるが、これに制限されない:(A)免疫チェックポイント阻害剤で治療する段階;及び(B)抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片で治療する段階。
【0099】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、抗-CTLA-4抗体又は抗-PD-1抗体であることを特徴とするが、これに限定されるものではない。前記癌治療方法は、抗-hIL-2抗体を含む組成物及び上述した組成物に含まれた構成と同じ構成を含む。したがって、各構成に関する説明は、併用投与による癌治療方法にも同一に適用される。
【0100】
本発明は、さらに他の観点において、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片の癌の予防又は治療のための使用に関する。
【0101】
本発明は、さらに他の観点において、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片の癌の予防又は治療のための薬剤を製造するための使用に関する。
【0102】
本発明は、さらに他の観点において、前記抗-hIL-2抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含むワクチン効能増進用組成物に関する。
【0103】
本明細書で使用された用語「ワクチン」とは、生体に免疫をあたえる抗原を含有する生物学的な製剤であって、感染症の予防のためにヒトや動物に投与することによって、生体に免疫を生じるようにする免疫源又は抗原性物質を意味することである。
【実施例
【0104】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、ただ本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものと解されないことは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明だろう。
【0105】
実施例1:TCB2モノクローナル抗体のhIL-2に対する結合特異性実験
hIL-2/TCB2 mAb複合体の治療効能を評価するために、生体内(in vivo)マウスモデルを利用したので、TCB2 mAbがマウスIL-2(mIL-2)に対する交差反応性(cross-reactivity)を示すかを確認するために、TCB2 mAbのhIL-2に対する結合特異性実験を行った。まず、数週にわたってhIL-2で3~4回免疫させたBALB/cマウスの脾臓細胞をSP/2骨髄腫細胞株と融合させた。ハイブリドーマのコロニー(colony)が可視化(visualization)されると、培養上澄み液(supernatant)でELISAした。5μg/mlのhIL-2又はmIL-2をそれぞれPBSに入れて混合した後、総50μlの混合液をELISAプレートにコートした。その後、非特異的結合(non-specific binding)を防止するために、200μlの10%FBSをPBSに混合して常温で30分間インキューベートし、titrated doseモノクローナル抗体を30分間インキューベートした。コートされたhIL-2又はmIL-2とモノクローナル抗体の結合程度は、抗-マウスIgG HRP又は抗-ラット(anti-rat)IgG HRPで検出した。各段階ごとにプレートは、200μl PBSで3~5回ウォッシングした。陽性対照群は、市販のモノクローナル抗体を使用し、hIL-2に対する陽性対照群は、Mab602、mIL-2に対する陽性対照群は、Jes6-1及びS4B6を使用した。
【0106】
その結果、hIL-2に対する陽性対照群として使用されたMab602は、mIL-2に対する低い交差反応性を示す反面、TCB2 mAbは、mIL-2に対する交差反応性を示さなかった(図1)。したがって、TCB2 mAbは、hIL-2のみに対して特異的に結合することを確認することができた。
【0107】
実施例2:hIL-2/TCB2複合体による生体内(in vivo)免疫刺激効果
従来報告されたマウス抗-hIL-2 mAbであるMAB602は、ヒト化したマウスでヒトCD8 T細胞を刺激して臨床で癌免疫治療のためのhIL-2/mAb複合体の効能を立証したが、CDR region Sequenceが公開されておらず、hIL-2/抗-hIL-2 mAb複合体として最大の抗癌効果を示すことができる抗体であるか不明確である。したがって、最大限のCD8 T細胞及びNK細胞活性化と最小限のTreg拡張を誘導する優れた抗hIL-2 mAbを開発しようとした。
【0108】
0日、1日、2日、3日に毎日B6マウスにhIL-2/TCB2 mAb(0.8μg/8μg)複合体を注入し、5日目にSplenic CD8 T細胞とTreg細胞の細胞拡張(cell expansion)程度を分析した。hIL-2/TCB2複合体は、Treg細胞とCD4 T細胞の拡張は最小化したが、CD8 T細胞とNK細胞の強力な拡張を誘導した(図2)。具体的にhIL-2/TCB2 mAb複合体を注入すると、memory phenotype(MP)CD8 T細胞が59倍程度拡張され、拡張されたMP CD8 Tは、CD8 T細胞の大部分になった。NK細胞も18倍拡張されたが、Treg細胞は、CD8 T細胞とNK細胞より低い水準である5倍程度だけ拡張されたことを確認した。hIL-2/TCB2 mAb複合体に対するTreg細胞拡張に対するMP CD8 T細胞の有効比率は、970%であった。したがって、TCB2 mAbは、Treg細胞でないCD8 T細胞とNK細胞を選択的に刺激するモノクローナル抗体であることを確認することができる。
【0109】
また、hIL-2/TCB2複合体に対するTreg細胞拡張に対するMP CD8 T細胞の有効比率は、970%である反面、hIL-2/Mab602複合体に対しては、530%であった(図2D)。したがって、TCB2は、Mab602より優れたモノクローナル抗体である。
【0110】
実施例3:hIL-2に対するTCB2の親和度(affinity)分析
TCB2抗体によるCD8 T細胞及びNK細胞の選択的刺激は、抗体がhIL-2のエピトープに結合されることが必要である。hIL-2のエピトープは、高親和性IL-2R(CD25)によっても認識されるので、TCB2は、IL-2Rα鎖が結合する部位近くのhIL-2に結合する可能性がある。Mab602も、IL-2Rα鎖が結合する部位近くのhIL-2に結合する可能性があるので、抗-hIL-2 mAbであるTCB2の特異性を観察するために、Mab602と競争分析した。商業的に市販中にあり、Mab602とは異なるエピトープに結合するものと知られたさらに他の抗-hIL-2 mAb(5344.111)を対照群として使用した。
【0111】
hIL-2探知のためのsandwich ELISAを利用した。抗-hIL-2クローンの900 RU(Rmax=90)をアミン反応を通じてCM5チップ上に固定させた。hIL-2の2倍希釈液(100nMで)を10μl/minで3分間流して送った後、hIL-2の解離を10分間追跡した。
【0112】
競争分析からTCB2がMab602と競争することを確認した。その特異性によって、TCB2 mAbは、5344.111と競争しないが、Mab602とは競争することを確認した。結果的に、他の抗-hIL-2 mAbよりTCB2がhuman IL-2に対して高い親和度を有することを確認した(図3)。
【0113】
実施例4:hIL-2/TCB2複合体による抗腫瘍効果(anti-tumor effect)
実施例4-1:固形腫瘍に対するTCB2 mAbの効果
TCB2 mAbの固形腫瘍拒否反応に対する臨床的有用性を立証するために、B6マウスに1×10 B16F10黒色腫を皮下で(subcutaneous)注射した後、PBS、hIL-2(0.8μg)単独又はhIL-2/TCB2(0.8μg/8μg)複合体を4~7日に注射した。次に、7日間腫瘍進行(tumor progression)をモニタリングした。
【0114】
その結果、固形腫瘍成長の抑制は、サイトカインにより誘導されたCD8 T細胞及びNK細胞拡張の大きさと関係関係があった(図4)。hIL-2/TCB2 mAb複合体は、hIL-2単独処理した場合より腫瘍の成長を優秀に抑制した。
【0115】
実施例4-2:転移性腫瘍に対するTCB2 mAbの効果
TCB2 mAbの転移性腫瘍に対する臨床的有用性を立証するために、B6マウスに3×10 B16F10黒色腫細胞を静脈で(intravenously)注射した。腫瘍注入7日後、7~10日までhIL-2単独(0.8μg)又はhIL-2/TCB2(0.8μg/8μg)複合体を注入し、18日後に肺腫瘍結節の数を測定した。
【0116】
その結果、hIL-2は、そうでなかったが、hIL-2/TCB2複合体を注入した場合には、肺腫瘍結節の成長を優秀に抑制した(図5)。したがって、TCB2 mAbは、hIL-2/TCB2 mAb複合体として使用されるとき、強力な抗癌効果があることを確認することができる。
【0117】
実施例5:hIL-2/TCB2複合体と他の抗癌治療法の併用効果分析
現在全世界的に開発されている抗癌治療方法としてtumor neo-antigenで患者をimmunizationする方法と抗-CTLA-4抗体又は抗-PD-1抗体のようなcheckpoint inhibitorを使用する方法がある。本実施例では、hIL-2/TCB2複合体がこのような抗癌治療療法と共に使用され得るかを分析した。
【0118】
実施例5-1:Neo-antigenを利用した抗癌治療法とhIL-2/TCB2複合体の併用効果
Neo-antigenを利用した治療法とhIL-2/TCB2複合体の適合性をテストするために、1×10 of B16F10 cellsを0日にB6マウスに皮下で(subcutaneous)注射した後、PBS又はTRP2 peptide(100μg)とPoly I:C(100μg)の混合物を3日、7日に注射した。hIL-2/TCB2複合体(0.8μg/8μg)は、4~7日及び11~14日にtwo rounds of four daily injectionsで注射した。次に、5日間腫瘍進行をモニタリングした。
【0119】
その結果、hIL-2/TCB2複合体を注射したものとneo-antigenを利用した療法でB16F10腫瘍の成長は、類似した程度に抑制された。しかしながら、マウスにneo-antigenを利用した療法とhIL-2/TCB2複合体を同時に処理した場合、腫瘍の成長がさらに抑制された(図6)。したがって、hIL-2/TCB2複合体は、neo antigenを利用した抗癌治療法のように使用できることが分かる。
【0120】
実施例5-2:checkpoint inhibitorとhIL-2/TCB2複合体の併用効果
hIL-2/TCB2複合体がcheckpoint inhibitorと使用され得るかをテストするために、CT26(Balb/C colon cancer)及びMC38(B6 colon cancer)モデルを利用した。hIL-2/TCB2複合体を抗-CTLA-4抗体又は抗-PD-1抗体のように、又はそれぞれ処理した後、腫瘍の生長を観察した。
【0121】
hIL-2/TCB2複合体と抗-CTLA-4抗体を一緒に処理する実験のために5×10 CT26 cellsをbalb/Cマウスに皮下で注射し(0日)、抗-CTLA-4抗体(100μg)を7日目から3日間隔で3回注射した。hIL-2/TCB2複合体(0.8μg/8μg)は、8日目から1日に1回11日目まで4回注射した。その結果、CT26腫瘍の成長は、抗-CTLA-4抗体により強く抑制され、33%のマウスで腫瘍が除去された。hIL-2/TCB2複合体を注射したマウスでは、腫瘍成長が抗-CTLA-4抗体に比べて少なく抑制されたが、抗-CTLA-4抗体とhIL-2/TCB2複合体を一緒に処理した場合、抗-CTLA-4抗体を単独処理した場合よりさらに腫瘍の成長を抑制して63%のマウスで腫瘍が除去された(図7)。
【0122】
hIL-2/TCB2複合体と抗-PD-1抗体を一緒に処理する実験のために5× 10 MC38 cellsをB6マウスに皮下で注射した後(0日)、抗-PD-1抗体(100μg)を7日目から3日間隔で3回注射し、hIL-2/TCB2複合体(1.5μg/15μg)は、8日目から11日目まで1日に1回ずつ4回注射した。その結果、抗-PD-1抗体処理は、腫瘍の成長を遅延させるのに効果的でなかったが(抗-PD-1抗体は、最適以下の用量で使用された)、hIL-2/TCB2複合体の処理によってMC38腫瘍の成長は強く抑制され、37%のマウスで腫瘍が拒絶(rejection)された。hIL-2/TCB2複合体及び抗-PD-1抗体を一緒に注射した場合、100%のマウスで腫瘍が拒絶(rejection)された(図8)。
【0123】
実施例5-3:hIL-2/TCB2複合体を利用した免疫抗癌治療の記憶応答(memory response)獲得効果
腫瘍を拒絶(rejection)したマウスが同じ腫瘍に対して記憶応答(memory response)を取得したかを確認するために、5×10 MC38 cellをnaive B6(腫瘍が移植されたことないマウス)又は前記実施例5-2でhIL-2/TCB2により腫瘍が除去されたマウス(25日目)に注射した。MC38腫瘍は、naive B6マウスに注射された場合、速い成長を示したが、腫瘍を拒絶(rejection)したマウスでは成長しなかった(図8)。これは、hIL-2/TCB2複合体を利用した免疫抗癌治療が患者の癌再発を予防するのに特に役に立つことができることを示唆する。
【0124】
このような結果を総合すると、hIL-2/TCB2複合体が抗-CTLA-4抗体又は抗-PD-1抗体のようなcheckpoint inhibitorと一緒に使用され得、共に使用する場合、さらに効果的であることを確認することができる。
【0125】
実施例6:TCB2モノクローナル抗体シーケンシング
TCB2 mAbの相補性決定領域(CDR)を配列化した(表1~表3)。
【表1】
【表2】
【表3】
【0126】
TCB2のアミノ酸配列は、Onur BoymanとNatalia Ramirez(WO2016005950A1)により最近開発された抗-hIL-2 mAbであるNara1(表4)と区別される他の抗体であることが分かる。TCB2とNara1のCDR類似度は、重鎖CDR 1-3の場合、それぞれ40%、52.94%、8.33%であり、軽鎖CDR 1-3の場合、それぞれ33.33%、14.28%、55.55%である(表5)。
【表4】
【表5】
【0127】
配列分析データに基づいて、TCB2 mAbのFab領域をヒトIgG2発現ベクターにクローニングし、クローニングされたベクターのアミノ酸配列を表6に示した。
【表6】
【0128】
実施例7:TCB2ヒト化(humanization)抗体
マウスIgGに対する宿主免疫反応を減少させるために、TCB2 mAbをヒト化(humanization)し、human IgG1 FCとともに発現させた(表7)。マウスTCB2(mTCB2)のCDRをヒトIgG可変領域に導入した後、in vivo試験のために最も親和度(affinity)の高い3個のヒト化したTCB2(hnTCB2)mAb clone(VH1+VL2,VH2+VL2,AH03463(VL03463+VH03463))を選別した(表8)。
【表7】
VL03463アミノ酸配列でVL2と異なる部分は、アンダーラインで表示した。重鎖可変領域配列比較のために、VH2及びVH03463でVH1と異なる部分は、アンダーラインで表示した。VL2は、二つの異なるヒト化TCB2(VL2+VH1又はVL2+VH2)を発現させるためにVH1又はVH2とともに使用された。
【表8】
【0129】
本来のマウスTCB2、ヒトキメラTCB2(hcTCB2)とヒト化したTCB2(hnTCB2)の免疫活性機能を比較するために、hIL-2をそれぞれ異なる形態のTCB2s(マウスTCB2(mTCB2)、hcTCB2,hnTCB2)と複合体を形成させてB6マウスに1日に1回0日から3日目まで4回注射した後、5日目に脾臓の免疫細胞をフローサイトメトリーした。その結果、hnTCB2の親和度がmTCB2やhcTCB2より若干減少したが(表8)、免疫細胞を活性化させる機能は、mTCB2と類似していることを確認した(図9、VL2+VH2は、低い機能性によって表示しなかった)。したがって、mTCB2は、成功裏にヒト化(humanization)されたことが立証された。
【0130】
hnTCB2が免疫細胞を活性化させる機能の他に抗癌能力を保有しているかをテストするために、5×10 MC38をB6マウスに0日目に皮下で注射し、抗-PD-1抗体(200μg)を7日目から3日間隔で3回注射した後、hIL-2/hnTCB2(VL2+ VH1,1.5μg/15μg)複合体を8日目から11日目まで1日に1回4回注射した後、MC38腫瘍の成長を観察した。その結果、高い濃度の抗-PD-1抗体の単独処理によっても腫瘍の成長が遅延されたが、hIL-2/hnTCB2複合体を処理した場合、hIL-2/mTCB2複合体処理と類似した水準にMC38腫瘍の成長が強く抑制され、40%のマウスで腫瘍が拒絶(rejection)された。hIL-2/hnTCB2又はhIL-2/mTCB2複合体を抗-PD-1抗体とともに注射した場合、85%のマウスで腫瘍が拒絶(rejection)された(図10)。したがって、ヒト化TCB2で本来のmTCB2が有していた機能が保存されたことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の抗-hIL-2抗体は、hIL-2の特定エピトープに特異的に結合してhIL-2がCD25に結合するのを阻害することによって、Treg細胞の拡張を最小化する。これに加えて、抗腫瘍活性を示すCD8 T細胞とNK細胞を刺激させる。したがって、本発明の抗-hIL-2抗体は、新しい抗癌治療剤として活用するのに有用である。
【0132】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとってこのような具体的技術は、ただ好ましい実施様態に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されるものではない点は明白だろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物により定義されると言える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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