(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】茶生葉処理装置、茶生葉の処理方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/06 20060101AFI20220414BHJP
A23F 3/36 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
A23F3/06 301B
A23F3/06 E
A23F3/06 S
A23F3/36
(21)【出願番号】P 2021188659
(22)【出願日】2021-11-19
【審査請求日】2021-11-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505049582
【氏名又は名称】株式会社ひかわ
(73)【特許権者】
【識別番号】521509147
【氏名又は名称】株式会社出雲精茶
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米山 弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 泰司
(72)【発明者】
【氏名】村上 雅章
(72)【発明者】
【氏名】前田 節夫
(72)【発明者】
【氏名】岡 祐太
(72)【発明者】
【氏名】金山 義史
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-168631(JP,A)
【文献】特開平11-146758(JP,A)
【文献】実開昭54-078798(JP,U)
【文献】特開2009-291160(JP,A)
【文献】特開2006-296355(JP,A)
【文献】特開平07-135902(JP,A)
【文献】特開2008-253225(JP,A)
【文献】特開2006-121973(JP,A)
【文献】実開平03-022679(JP,U)
【文献】特開2019-110797(JP,A)
【文献】特開2011-167090(JP,A)
【文献】特開2019-129752(JP,A)
【文献】特開2007-060957(JP,A)
【文献】特開2001-245591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/06
A23F 3/20
A23F 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶生葉の供給口と、蒸気の供給口と、熱水の供給口とが一端側に設けられ、前記茶生葉、前記蒸気、及び前記熱水の排出口を他端に有
し、前記熱水及び前記蒸気の逸散を防ぐことが可能な管体と、
前記管体内を通過する前記茶生葉、前記蒸気、及び前記熱水を攪拌するための攪拌手段と、を備え、
前記排出口の下端を、前記管体の一端の内部下端よりも上側に位置させることが可能、或いは、前記排出口の下端を、前記管体の一端の内部下端と同一の高さに位置させることが可能であ
る生葉処理装置。
【請求項2】
前記攪拌手段は、前記管体内に回転可能に設けられた回転軸と、前記回転軸の外周面に取り付けられて前記管体内を通過する前記茶生葉、前記蒸気、及び前記熱水を攪拌する複数の攪拌翼と、を含む請求項1に記載の茶生葉処理装置。
【請求項3】
前記管体は、前記茶生葉の供給口、前記蒸気の供給口、及び前記熱水の供給口が
個別に設けられた前記一端側の固定胴と、前記排出口を有する前記他端側の回転胴と、を備え、
前記回転胴は、前記固定胴に対して回転可能に設けられることで前記攪拌手段を構成し、回転により前記回転胴内を通過する前記茶生葉、前記蒸気、及び前記熱水を攪拌する請求項1又は2に記載の茶生葉処理装置。
【請求項4】
前記熱水の供給口は、前記茶生葉の供給口よりも前記管体の前記他端側に位置する請求項1乃至3のいずれかに記載の茶生葉処理装置。
【請求項5】
前記管体の向きを調整可能な調整手段をさらに備え、
前記調整手段は、前記排出口の下端が前記管体の一端の内部下端よりも上側に位置するように、前記管体の向きを調整可能である請求項1乃至4のいずれかに記載の茶生葉処理装置。
【請求項6】
蒸気による茶生葉の酸化酵素の不活性化処理及び熱水によるカフェイン低減処理を行う茶生葉の処理方法であって、
前記茶生葉の供給口、前記蒸気の供給口、及び前記熱水の供給口を一端側に有するとともに前記茶生葉、前記蒸気、及び前記熱水の排出口を他端に有
し、前記熱水及び前記蒸気の逸散を防ぐことが可能な管体を、前記排出口の下端が、前記管体の一端の内部下端よりも上側に位置する状態、或いは、前記排出口の下端が、前記管体の一端の内部下端と同一の高さとなる状態にして、前記管体内に前記茶生葉、前記熱水、及び前記蒸気を供給する工程と、
前記茶生葉、前記蒸気、及び前記熱水を前記管体内で前記他端側へ通過させながら攪拌する工程と、
前記排出口から排出された前記茶生葉と前記熱水とを分離する工程と、
前記熱水から分離された前記茶生葉を冷却する工程と、
前記茶生葉の冷却後に前記茶生葉を乾燥する工程と、を有する茶生葉の処理方法。
【請求項7】
前記茶生葉を冷却する工程と前記茶生葉を乾燥する工程との間において、前記茶生葉を揉捻する工程を有する請求項6に記載の茶生葉の処理方法。
【請求項8】
前記茶生葉の供給口に供給される前記茶生葉の量に対する前記熱水の供給口に供給される前記熱水の量は、前記茶生葉1重量部に対して前記熱水が10重量部以上19重量部以下であり、
前記管体内で前記蒸気と混合された前記熱水の温度が96℃以上100℃以下である、請求項6又は7に記載の茶生葉の処理方法。
【請求項9】
前記茶生葉が前記茶生葉の供給口から前記排出口まで移送される時間は、20秒以上50秒以下である、請求項6乃至8のいずれかに記載の茶生葉の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶生葉に対して酸化酵素の不活性化処理及びカフェイン低減処理を行うための茶生葉処理装置、及びこれを用いた茶生葉の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、茶生葉中の酸化酵素を不活性化させる目的で、外周面に攪拌翼が設けられた攪拌軸が網胴内に設けられた網胴回転攪拌式蒸機が使用されている。網胴回転攪拌式蒸機は、排出口側になるほど下側に傾斜するように向きが調整された状態で、攪拌軸及び網胴を回転させながら網胴内に蒸気及び茶生葉を流すことで、蒸気と茶生葉とを接触させて茶生葉中の酸化酵素を不活性化させるものである(非特許文献1)。
【0003】
近年、上記の酸化酵素の不活性化に加えて、カフェインの低減処理が行われた茶葉(以下、脱カフェイン茶葉)が販売されている。この脱カフェイン茶葉を製造するために、茶生葉と熱水との接触で茶生葉中のカフェインを低減することが行われている。このカフェインの低減処理は、例えば、特許文献1及び非特許文献2に開示されるようにノズルから噴出する熱水をコンベアに搬送される茶葉に吹き付けることで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi Vol.45 No.4. 273~278 1998年 「製茶機械」吉富 均
【文献】日本食品工学会誌 Vol.8 No.3 pp-109-116, 2007年9月「低カフェイン処理機を用いて製造した「べにふうき」緑茶の化学成分変動と抗アレルギー活性への影響 山田万里他
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上述した脱カフェイン茶葉を製造する方法では、酸化酵素を不活性化させるための設備(網胴回転攪拌式蒸機等)と、カフェインの低減処理を行うための設備とを別々に設ける必要があった。このため設備コストが高額になっていた。また上記のカフェインの低減処理では、例えば熱水をノズルまで送る過程で熱水の温度が徐々に下がるため、多量の熱水が必要とされて運転コストが高額になっていた。例えば1時間あたりに450kgの茶葉を処理するためには、約36000L/hrもの熱水を循環させる必要があった(非特許文献2)。
【0007】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであって、その目的は、設備コストを抑えつつ、茶生葉に対して酸化酵素の不活性化処理とカフェイン低減処理の双方を行うことができるとともに、熱水の量を少なくして運転コストを抑えても、茶生葉から多くのカフェインを低減できる茶生葉処理装置及び茶生葉の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0009】
項1.茶生葉の供給口と、蒸気の供給口と、熱水の供給口とが一端側に設けられ、前記茶生葉、前記蒸気、及び前記熱水の排出口を他端に有する管体と、
前記管体内を通過する前記茶生葉、前記蒸気、及び前記熱水を攪拌するための攪拌手段と、を備え、
前記排出口の下端を、前記管体の一端の内部下端よりも上側に位置させることが可能、或いは、前記排出口の下端を、前記管体の一端の内部下端と同一の高さに位置させることが可能である茶生葉処理装置。
【0010】
項2.前記攪拌手段は、前記管体内に回転可能に設けられた回転軸と、前記回転軸の外周面に取り付けられて前記管体内を通過する前記茶生葉、前記蒸気、及び前記熱水を攪拌する複数の攪拌翼と、を含む項1に記載の茶生葉処理装置。
【0011】
項3.前記管体は、前記茶生葉の供給口、前記蒸気の供給口、及び前記熱水の供給口が設けられた前記一端側の固定胴と、前記排出口を有する前記他端側の回転胴と、を備え、
前記回転胴は、前記固定胴に対して回転可能に設けられることで前記攪拌手段を構成し、回転により前記回転胴内を通過する前記茶生葉、前記蒸気、及び前記熱水を攪拌する項1又は2に記載の茶生葉処理装置。
【0012】
項4.前記熱水の供給口は、前記茶生葉の供給口よりも前記管体の前記他端側に位置する項1乃至3のいずれかに記載の茶生葉処理装置。
【0013】
項5.前記管体の向きを調整可能な調整手段をさらに備え、
前記調整手段は、前記排出口の下端が前記管体の一端の内部下端よりも上側に位置するように、前記管体の向きを調整可能である項1乃至4のいずれかに記載の茶生葉処理装置。
【0014】
項6.蒸気による茶生葉の酸化酵素の不活性化処理及び熱水によるカフェイン低減処理を行う茶生葉の処理方法であって、
前記茶生葉の供給口、前記蒸気の供給口、及び前記熱水の供給口を一端側に有するとともに前記茶生葉、前記蒸気、及び前記熱水の排出口を他端に有する管体を、前記排出口の下端が、前記管体の一端の内部下端よりも上側に位置する状態、或いは、前記排出口の下端が、前記管体の一端の内部下端と同一の高さとなる状態にして、前記管体内に前記茶生葉、前記熱水、及び前記蒸気を供給する工程と、
前記茶生葉、前記蒸気、及び前記熱水を前記管体内で前記他端側へ通過させながら攪拌する工程と、
前記排出口から排出された前記茶生葉と前記熱水とを分離する工程と、
前記熱水から分離された前記茶生葉を冷却する工程と、
前記茶生葉の冷却後に前記茶生葉を乾燥する工程と、を有する茶生葉の処理方法。
【0015】
項7.前記茶生葉を冷却する工程と前記茶生葉を乾燥する工程との間において、前記茶生葉を揉捻する工程を有する項6に記載の茶生葉の処理方法。
【0016】
項8.前記茶生葉の供給口に供給される前記茶生葉の量に対する前記熱水の供給口に供給される前記熱水の量は、前記茶生葉1重量部に対して前記熱水が10重量部以上19重量部以下であり、
前記管体内で前記蒸気と混合された前記熱水の温度が96℃以上100℃以下である、項6又は7に記載の茶生葉の処理方法。
【0017】
項9.前記茶生葉が前記茶生葉の供給口から前記排出口まで移送される時間は、20秒以上50秒以下である、項6乃至8のいずれかに記載の茶生葉の処理方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、設備コストを抑えつつ、茶生葉に対して酸化酵素の不活性化処理とカフェイン低減処理の双方を行うことができるとともに、熱水の量を少なくして運転コストを抑えても、茶生葉から多くのカフェインを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る茶生葉処理装置の側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る茶生葉処理装置の概略縦断面図であり、排出口の下端が、管体の一端の内部下端よりも上側に位置した状態を示す。
【
図3】本発明の実施形態に係る茶生葉処理装置の概略縦断面図であり、排出口の下端が、管体の一端の内部下端と同一の高さに位置した状態を示す。
【
図4】本発明の実施形態に係る茶生葉処理装置の概略縦断面図であり、排出口の下端が、管体の一端の内部下端よりも下側に位置した状態を示す。
【
図5】本発明の第一変形例に係る茶生葉処理装置の概略縦断面図であり、排出口の下端が、管体の一端の内部下端よりも上側に位置した状態を示す。
【
図6】本発明の第一変形例に係る茶生葉処理装置の略縦断面図であり、排出口の下端が、管体の一端の内部下端と同一の高さに位置した状態を示す。
【
図7】本発明の第一変形例に係る茶生葉処理装置の概略縦断面図であり、排出口の下端が、管体の一端の内部下端よりも下側に位置した状態を示す。
【
図8】(A)は、本発明の第二変形例に係る茶生葉処理装置の概略縦断面図であり、(B)は、本発明の第三変形例に係る茶生葉処理装置の概略縦断面図であり、(A)及び(B)は、排出口の下端が、管体の一端の内部下端よりも上側に位置した状態を示す。
【
図9】(A)は、本発明の第四変形例に係る茶生葉処理装置の概略縦断面図であり、(B)は、本発明の第五変形例に係る茶生葉処理装置の概略縦断面図であり、(A)及び(B)は、排出口の下端が、管体の一端の内部下端と同一の高さに位置した状態を示す。
【
図10】本発明の第六変形例に係る茶生葉処理装置の概略縦断面図であり、排出口の下端が、管体の一端の内部下端と同一の高さに位置した状態を示す。
【
図11】本発明の第七変形例に係る茶生葉処理装置の概略縦断面図であり、排出口の下端が、管体の一端の内部下端よりも上側に位置した状態を示す。
【
図12】本発明の実施例及び/又は比較例の効果を確認した試験の条件及び結果を示す表である。
【
図13】実施例9,10及び比較例8,9で得られた碾茶に存在する微生物を確認した試験の条件及び結果を示す表である。
【
図14】実施例9,10の碾茶の苦渋味・旨みを採点した試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る茶生葉処理装置1を示す側面図である。
図2~
図4は、本発明の実施形態に係る茶生葉処理装置1の縦断面図である。
【0022】
図1~
図4に示す茶生葉処理装置1は、茶生葉Tに対して酸化酵素の不活性化処理及びカフェイン低減処理の双方を同時に行うことが可能である。当該茶生葉処理装置1は、管体2と、攪拌手段3と、調整手段4とを備える。
【0023】
管体2は、茶生葉Tの供給口5と、蒸気Vの供給口6(
図2~
図4)と、熱水Hの供給口7とが一端側に設けられたものである。管体2の内部は、茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hの流路をなしており、管体2は、茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hを排出するための排出口8を他端に有する。
【0024】
管体2の構造は、特に限定されないが、本実施形態では、管体2は、固定胴9と、回転胴10とを備える。
【0025】
固定胴9は、管体2の一端側を構成する。上記の茶生葉Tの供給口5と蒸気Vの供給口6と熱水Hの供給口7とは、固定胴9に設けられており、これら供給口5,6,7からそれぞれ茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hを固定胴9内に供給できる。
【0026】
熱水Hの供給口7には、図示しない熱水用配管が接続される。当該熱水用配管は、水槽に貯留する熱水Hを供給口7に供給する管である。当該熱水用配管には、例えば、ポンプ、開閉弁、及び熱水用流量計が設けられる。この場合、水槽に貯留する熱水Hをポンプによって供給口7に向けて圧送すること、開閉弁によって供給口7に供給される熱水Hの量を調整すること、及び熱水用流量計によって供給口7に供給される熱水Hの量を計測することが可能とされる。
【0027】
蒸気Vの供給口6は、蒸気用配管11の開口によって構成される。蒸気用配管11は、固定胴9の壁を貫通しており、ボイラーで発生した蒸気Vを供給口6に供給する。
【0028】
茶生葉Tの供給口5と、蒸気Vの供給口6と、熱水Hの供給口7との位置関係は特に限定されないが、茶生葉Tの管詰まりを防止する観点から、
図2~
図4に示すように、熱水Hの供給口7を、茶生葉Tの供給口5よりも管体2の他端側(回転胴10側)に位置させることが好ましい。
【0029】
回転胴10は、管体2の他端側を構成する。回転胴10は、固定胴9に対して回転可能に設けられるものであって、固定胴9に連設される連設胴12と、連設胴12内に取り付けられる網胴13とを備える。当該回転胴10は、網胴13内が、茶生葉T、熱水H、蒸気Vを流す流路をなしており、茶生葉T、熱水H、及び蒸気Vの排出口8を、上記管体2の他端としての固定胴9の反対側の端に有する。
【0030】
網胴13は、金網やパンチングメタル等の通気鈑を用いて筒状に形成されたものであり、公知の固定具を用いて連設胴12の内側に固定される。
【0031】
連設胴12は、金属等を用いて筒状に形成されたものであり、網胴13の網の目を通過した熱水Hや蒸気Vの逸散を防ぐ。
【0032】
攪拌手段3は、管体2内を通過する茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hを攪拌する手段である。当該攪拌手段3は、上記の回転胴10と、回転軸14と、複数の攪拌翼15とによって構成される。
【0033】
回転軸14は、管体2内に回転可能に設けられる。複数の攪拌翼15は、回転軸14の外周面に設けられる。
【0034】
上記の攪拌手段3によれば、回転胴10が回転することによって管体2内を通過する茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hが攪拌されるうえ、回転軸14が回転することに伴い、管体2内を通過する茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hが複数の攪拌翼15によっても攪拌される。
【0035】
回転胴10及び回転軸14を回転させる回転手段は特に限定されないが、本実施形態では、上記の回転手段として、モーター20と、歯車21と、歯環22と、動力伝達機構23とが、茶生葉処理装置1に設けられる(
図1)。歯車21は、連設胴12の一端側(固定胴9側)の外周面に取り付けられる。歯環22は、歯車21と噛み合うように設けられる。動力伝達機構23は、プーリーやベルトなどの手段を用いて、モーター20の動力を歯環22及び回転軸14に伝達する。上記の回転手段によれば、モーター20の動力が動力伝達機構23を介して歯環22に伝達されて歯環22が回転することで、歯車21と共に回転胴10が回転する。またモーター20の動力が動力伝達機構23を介して回転軸14に伝達されることで、回転軸14も回転する。なお回転胴10を安定して回転させるために、回転胴10は、複数のプーリー24によって位置決めされる。複数のプーリー24は、歯車21の近傍において、回転胴10の周方向に等間隔となるように設けられており、プーリー24の各々は、固定胴9の他端(回転胴10側の端)に設けられた唾部25に回転可能に支持される。
【0036】
なお回転胴10から網胴13を省略して、回転胴10を連設胴12のみから構成してもよい。この場合、連設胴12(回転胴10)が、固定胴9に対して回転可能に設けられることで、連設胴12(回転胴10)が攪拌手段3を構成するものとされる。上記のようにする場合でも、連設胴12(回転胴10)及び回転軸14が回転することで、管体2内を通過する茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hを、連設胴12(回転胴10)及び複数の攪拌翼15によって攪拌できる。
【0037】
また回転胴10を回転させるための動力源(モーター等)と、回転軸14を回転させるための動力源(モーター等)とが、別個に茶生葉処理装置1に設けられてもよい。
【0038】
調整手段4は、管体2が以下の(1)~(3)の状態となるように、管体2の向きを調整可能な手段である。茶生葉Tに対して酸化酵素の不活性化処理及びカフェイン低減処理の双方を行う際には、管体2の向きは、以下の(1)或いは(2)の状態とされる。
【0039】
(1)排出口8の下端Aが、管体2の一端の内部下端Bよりも上側に位置する状態(
図2参照)。
(2)排出口8の下端Aが、管体2の一端の内部下端Bと同一の高さに位置する状態(
図3参照)。
(3)排出口8の下端Aが、管体2の一端の内部下端Bよりも下側に位置する状態(
図4参照)。
【0040】
調整手段4の構造は、特に限定されないが、本実施形態では、調整手段4は、架枠30と、機枠31と、ヒンジ機構32とを備える。管体2、モーター20、及び動力伝達機構23は、架枠30に支持される。架枠30は、機枠31に傾斜可能に支持される。ヒンジ機構32は、第一節体33と第二節体34とを備える。第一節体33の一端は、回転胴10の他端の近傍(排出口8の近傍)で、第一ヒンジ35を介して架枠30に連結される。第一節体33の他端は、第二ヒンジ36を介して第二節体34の一端と連結される。第二節体34の他端は、第三ヒンジ37を介して機枠31と連結される。
【0041】
上記の調整手段4によれば、第一節体33と第二節体34との間の屈曲角度を変えて架枠30の傾きを調整することで、
図1、
図2に示すように管体2を他端側(排出口8側)になるほど上側に傾斜させて、排出口8の下端Aを、管体2の一端の内部下端Bよりも上側に位置させることや(
図2)、
図3に示すように管体2を水平にして、排出口8の下端Aを、管体2の一端の内部下端Bと同一の高さに位置させることや、
図4に示すように管体2を他端側(排出口8側)になるほど下側に傾斜させて、排出口8の下端Aを、管体2の一端の内部下端Bよりも下側に位置させることができる。
【0042】
以上の茶生葉処理装置1を用いて、蒸気Vによる茶生葉Tの酸化酵素の不活性化処理及び熱水Hによるカフェイン低減処理の双方を行う際には、まず、「茶生葉Tの供給口5、蒸気Vの供給口6、及び熱水Hの供給口7を一端側に有するとともに茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hの排出口8を他端に有する管体2」を、排出口8の下端Aが管体2の一端の内部下端Bよりも上側に位置する状態にして(
図2の状態にして)、或いは排出口8の下端Aが管体2の一端の内部下端Bと同一の高さとなる状態にして(
図3の状態にして)、茶生葉Tの供給口5、蒸気Vの供給口6、及び熱水Hの供給口7から、それぞれ茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hを管体2内に供給する(供給工程)。そして、管体2内で茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hを管体2の他端側へ通過させながら攪拌手段3(回転胴10、回転軸14、及び複数の攪拌翼15)によって攪拌する(攪拌工程)。上記の供給工程及び攪拌工程が実施されることで、管体2内において、熱水Hの流れによって茶生葉Tが供給口から排出口8に向けて移送される。そしてこの移送の間に、管体2内の茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hが攪拌されて、茶生葉Tが蒸気V及び熱水Hと接触することで、茶生葉T中の酸化酵素が不活性化される。また茶生葉Tが熱水Hと接触することで、茶生葉Tからカフェインが抽出されて、茶生葉Tのカフェイン量が低減される。
【0043】
ついで排出口8から排出された茶生葉Tと熱水Hとを網状のコンベア等を用いて分離する(分離工程)。ついで熱水Hから分離された茶生葉Tを冷水等を用いて冷却し(冷却工程)、茶生葉Tの冷却後に、茶生葉Tを乾燥することが行われる(乾燥工程)。これにより、酸化酵素が不活性化され、且つカフェイン量が低減された茶葉が得られる。なお煎茶を製造する場合には、上記の茶生葉Tを冷却する工程と、上記の茶生葉Tを乾燥する工程との間において、茶生葉Tを揉捻する工程が実施される。
【0044】
本実施形態によれば、管体2内で茶生葉Tを蒸気V及び熱水Hの双方に接触させることができる。このため酸化酵素の不活性化用の設備とカフェイン低減用の設備とを別個に設ける必要なく、茶生葉Tに対して酸化酵素の不活性化処理及びカフェイン低減処理の双方を行うことができる。したがって設備コストを抑えつつ、茶生葉Tに対して酸化酵素の不活性化処理とカフェイン低減処理の双方を行うことができる。
【0045】
また、排出口8の下端Aが管体2の一端の内部下端Bよりも上側に位置するように、或いは、排出口8の下端Aが管体2の一端の内部下端Bと同一の高さとなるように、管体2の向きが調整されることで、管体2内における茶生葉Tの滞留時間を長くすることができる。したがって茶生葉Tと熱水Hとの接触時間を長くすることができる。さらに蒸気Vが熱水Hに混合されることで熱水Hの温度を高温に維持できる。以上の理由から、熱水Hの量を少なくして運転コストを抑えても、茶生葉Tから十分な量のカフェインを抽出できる。
【0046】
なお、茶生葉Tの供給口5に供給する茶生葉Tの量に対する熱水Hの供給口7に供給する熱水Hの量を、茶生葉Tの1重量部に対して熱水Hが10重量部以上19重量部以下となるようにし、管体2内で蒸気Vと混合された熱水Hの温度を96℃以上100℃以下とすることが好ましい。このようにすれば、熱水Hの量を少なく抑えつつ、茶生葉Tに含まれるカフェインの60%以上を抽出できる。
【0047】
また茶生葉Tの供給口5から排出口8まで茶生葉Tが移送される時間を、20秒以上50秒以下とすることが好ましい。このようにすれば、茶生葉Tから十分な量のカフェインを低減できる一方で、タンニン、テアニン、及び遊離アミノ酸の有用成分を多く茶生葉Tに残存できる。また上記の時間を50秒以下とすることで、茶生葉Tの変色を防止できる。なお茶生葉Tの移送時間を上記の時間とすることは、供給口7から管体2内に供給する熱水Hの量や管体2の傾き等を調整することで実現される。
【0048】
また本実施形態によれば、
図4に示すように管体2を他端側(排出口8側)になるほど下側に傾斜させて、排出口8の下端Aが管体2の一端の内部下端Bよりも下側に位置した状態にできることで、従来の網胴回転攪拌式茶生葉処理装置の用途の如く、茶生葉Tに対して酸化酵素の不活性化処理のみを行うことも可能である。この場合には、管体2を、他端側になるほど下側に傾斜した状態(
図4の状態)にして、茶生葉Tの供給口5及び蒸気Vの供給口6から、それぞれ茶生葉T及び蒸気Vを管体2内に供給する(供給工程)。そして、管体2内で茶生葉Tを管体2の他端側へ通過させながら攪拌手段3(網胴13、回転軸14、及び複数の攪拌翼15)によって攪拌する(攪拌工程)。上記の供給工程及び攪拌工程が実施される場合には、管体2が下側に傾斜することや、管体2内を蒸気Vが流れることで、管体2内で、茶生葉Tが、供給口から排出口8に向けて移送される。そしてこの移送の間に、攪拌手段3によって攪拌される茶生葉Tが蒸気Vと接触することで、茶生葉T中の酸化酵素が不活性化される。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々改変され得る。
【0050】
例えば
図1~
図4に示す調整手段4の代わりに、
図5~
図7に示す調整手段40が茶生葉処理装置1に設けられてもよい。調整手段40は、上下動可能とされた2つの支持部材41,42を備える。一方の支持部材41は、管体2の一端側の下側(例えば固定胴9の下側)に配置される。他方の支持部材42は、管体2の他端側(排出口8側)の下側に配置される。上記の調整手段40が茶生葉処理装置1に設けられる場合には、
図5に示すように、支持部材41を下側に移動させ、支持部材42を上側に移動させることで、管体2が、他端側(排出口8側)になるほど上側に傾斜して、排出口8の下端Aが管体2の一端の内部下端Bよりも上側に位置した状態になる。また
図6に示すように、支持部材41の上端と支持部材42の上端とを同じ高さにすることで、管体2が水平になり、排出口8の下端Aが管体2の一端の内部下端Bと同一の高さとなる。また
図7に示すように、支持部材41を上側に移動させ、支持部材42を下側に移動させることで、管体2が、他端側(排出口8側)になるほど下側に傾斜して、排出口8の下端Aが管体2の一端の内部下端Bよりも下側に位置した状態になる。なお支持部材41,42を上下動させる駆動源として、例えばモーターが使用される。
【0051】
また茶生葉処理装置1に設けられる調整手段は、排出口8の下端Aが管体2の一端の内部下端Bよりも上側に位置させることと、排出口8の下端Aが管体2の一端の内部下端Bと同一の高さにすることとのうち、少なくとも一方を実現可能な手段であればよい(つまり管体2を他端側(排出口8側)になるほど下側に傾斜させて、排出口8の下端Aを管体2の一端の内部下端Bよりも下側に位置させることは必須の条件とされない)。
【0052】
また必ずしも管体2とは別体の調整手段を茶生葉処理装置1に設ける必要はない。例えば
図8(A)に示すように、管体2の一端側に下側へ突出する第一脚部50を設け、管体2の他端側に第一脚部50よりも長く下側へ突出する第二脚部51を設けて、第一脚部50及び第二脚部51を支持面Sに支持させてもよい。このようにしても、管体2が他端側(排出口8側)になるほど上側に傾斜して、排出口8の下端Aが管体2の一端の内部下端Bよりも上側に位置した状態を実現できる。
【0053】
また
図8(B)に示すように、管体2の他端側のみに下側へ突出する脚部52を設けて、脚部52を支持面Sに支持させてもよい。このようにしても、管体2が他端側(排出口8側)になるほど上側に傾斜して、排出口8の下端Aが管体2の一端の内部下端Bよりも上側に位置した状態を実現できる。
【0054】
また
図9(A)に示すように、管体2の一端側に下側へ突出する第一脚部53を設け、管体2の他端側に第一脚部53と等しい長さで下側に突出する第二脚部54を設けて、第一脚部53及び第二脚部54を支持面Sに支持させてもよい。このようにしても、管体2を水平にして、排出口8の下端Aを管体2の一端の内部下端Bと同一の高さにすることができる。
【0055】
また
図9(B)に示すように、管体2そのものを水平な支持面Sに支持させてもよい、。このようにしても、管体2を水平にして、排出口8の下端Aを管体2の一端の内部下端Bと同一の高さにすることができる。
【0056】
また
図10に示すように、管体2の他端において管体2の径内側へ突出する環状唾部60を設けて、当該環状唾部60の内側の開口により排出口8を構成してもよい。このようにすれば、管体2を他端側(排出口8側)になるほど上側に傾斜させた状態だけでなく、管体2を水平にした状態や、管体2を他端側(排出口8側)になるほど下側に傾斜させた状態でも、排出口8の下端Aを、管体2の一端の内部下端Bよりも上側に位置させることが可能となる。或いは上記の環状唾部60を設けることで、
図10に示すように、管体2を他端側(排出口8側)になるほど下側に傾斜させた状態でも、排出口8の下端Aを、管体2の一端の内部下端Bと同一の高さに位置させることが可能となる。なお
図10では、上記の環状唾部60が連設胴12の他端に設けられる例を示しているが、網胴13の他端にも管体2の径内側へ突出する環状唾部が設けられてもよい。
【0057】
また上記実施形態では、攪拌手段3を、回転胴10、回転軸14、及び複数の攪拌翼15によって構成する例を示したが、回転軸14及び複数の攪拌翼15を省略して、攪拌手段3を回転胴10のみから構成してもよい。この場合、回転胴10内が茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hの流路をなすものにされ、且つ、回転胴10が固定胴9に対して回転可能に設けられることで回転胴10が攪拌手段3を構成するものとされる。このようにする場合には、回転胴10の回転によって、管体2内を通過する茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hが攪拌され、茶生葉Tが蒸気V及び熱水Hと接触することで、茶生葉T中の酸化酵素が不活性化される。また茶生葉Tが熱水Hと接触することで、茶生葉Tからカフェインが抽出されて、茶生葉Tのカフェイン量が低減される。
【0058】
また攪拌手段3は、回転軸14及び複数の攪拌翼15のみから構成されてもよい。この場合、回転軸14が管体2内に回転可能に設けられて、複数の攪拌翼15が回転軸14の外周面に取り付けられる。このようにする場合には、回転軸14の回転に伴い、管体2内を通過する茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hが、複数の攪拌翼15によって攪拌され、茶生葉Tが蒸気V及び熱水Hと接触することで、茶生葉T中の酸化酵素が不活性化される。また茶生葉Tが熱水Hと接触することで、茶生葉Tからカフェインが抽出されて、茶生葉Tのカフェイン量が低減される。
【0059】
なお上記のように攪拌手段3を回転軸14及び複数の攪拌翼15のみから構成する場合には、連設胴12及び網胴13は回転しないものとされる。或いは例えば
図11に示すように、管体2は一連の単管とされる。この場合、単管(管体2)は、茶生葉Tの供給口5と、蒸気Vの供給口6と、熱水Hの供給口7とが一端側に設けられ、茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hの排出口8を他端に有するものとされる。回転軸14は、単管(管体2)内を通過するとともに回転可能に設けられ、複数の攪拌翼15は、回転軸14の外周面に取り付けられる。そして回転軸14が回転することで、単管(管体2)内を通過する茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hが、複数の攪拌翼15によって攪拌される。
【0060】
また攪拌手段3を構成する部材は、上記の網胴13、回転軸14、及び複数の攪拌翼15に限定されず、攪拌手段3は、管体2内の茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hを攪拌可能な様々な手段によって構成され得る。
【0061】
以上のように茶生葉処理装置1が変更される場合でも、排出口8の下端Aが管体2の一端の内部下端Bよりも上側に位置した状態で、或いは、排出口8の下端Aが管体2の一端の内部下端Bと同一の高さに位置した状態で、管体2内を通過する茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hを攪拌手段3によって攪拌させて、茶生葉Tを蒸気V及び熱水Hと接触させることができる。このため上記実施形態と同様の理由から、設備コスト及び運転コストを抑えつつ、茶生葉Tに対して、酸化酵素の不活性化処理と、十分な量のカフェインを低減する処理とを行うことができる。
【0062】
本願発明者らは、本願発明の効果を確認するために6回の試験を行った。以下、この試験について説明する。
【0063】
図12は、1回目~6回目の試験の条件と結果を示す表である(
図12の表では、管体2を他端側(排出口8側)になるほど上側に傾斜させることで、排出口8の下端Aを管体2の一端の内部下端Bよりも上側に位置させた状態を「上向き」と記し、管体2を水平にすることで、排出口8の下端Aを管体2の一端の内部下端Bと同一の高さに位置させた状態を「水平」と記し、管体2を他端側(排出口8側)になるほど下側に傾斜させることで、排出口8の下端Aを管体2の一端の内部下端Bよりも下側に位置させた状態を「下向き」と記している)。
【0064】
1~6回目の実施例1~10や、1、2、4回目の試験の比較例1~7は、以下の作業1~5を順次行ったものである
【0065】
作業1:茶生葉T、熱水H、蒸気Vを管体2内に供給して攪拌する。
作業2:管体2の排出口8から排出された茶生葉Tと熱水Hとを網状のコンベアを用いて分離する。
作業3:熱水Hから分離された茶生葉Tを冷却する。
作業4:冷却後の茶生葉Tを乾燥することで碾茶を得る。
作業5:乾燥後の碾茶のカフェイン含量・カフェイン残存率・タンニン含量・タンニン残存率・テアニン含量・テアニン残存率・遊離アミノ酸含量・遊離アミノ酸残存率を測定する。
【0066】
5回目の試験の比較例8や、6回目の試験の比較例9は、以下の作業6~9を順次行ったものである(比較例8,9では、作業6で熱水Hを管体2内に供給しなかった)。
【0067】
作業6:茶生葉T及び蒸気Vを管体2内に供給して攪拌する。
作業7:管体2の排出口8から排出された茶生葉Tを冷却する。
作業8:冷却後の茶生葉Tを乾燥することで碾茶を得る。
作業9:乾燥後の碾茶のカフェイン含量・タンニン含量・テアニン含量・遊離アミノ酸含量を測定する。
【0068】
1回目から6回目の試験で使用した茶生葉処理装置は、いすれも、管体2が固定胴9と回転胴10とを備え、攪拌手段3が、回転胴10、回転軸14、及び複数の攪拌翼15によって構成されたものである。
【0069】
なお1回目及び2回目の試験で使用した装置では、茶生葉T及び熱水Hの双方を供給するための供給口(図示せず)と、蒸気Vの供給口とが固定胴9に設けられていた(茶生葉T及び熱水Hの供給口が共通とされていた)。
【0070】
3~6回目の試験で用いた装置は、
図1~
図4に示す装置1から網胴13を省略して回転胴10を連設胴12のみから構成したものである。3~6回目の試験で用いた装置は、茶生葉Tの供給口5と、熱水Hの供給口7と、蒸気Vの供給口6とが別々に固定胴9に設けられ、熱水Hの供給口7が茶生葉Tの供給口5よりも他端側(回転胴10側)に位置していた。
【0071】
1回目の試験では、やぶきた種 一番茶碾茶用生葉(40kg 、16日間被覆)を使用し、2回目の試験では、やぶきた種 一番茶碾茶用生葉(40kg 、21日間被覆)を使用し、3回目の試験では、やぶきた種 二番茶生葉T(各40kg、被覆14日間)を使用し、4回目の試験では、やぶきた種 二番茶碾茶用生葉(各30kg 、14日間被覆)を使用し、5回目の試験では、秋碾用茶生葉(比較例8では30kg、実施例9では2,008kg)を使用し、6回目の試験では、秋碾茶用生葉(比較例9では30kg、実施例10では798kg)を使用した。
【0072】
1回目及び2回目の試験の比較例1、2では、茶生葉Tが固定胴9内で詰まる事態が生じた。一方、3~6回目の試験で熱水Hを管体2内に供給した例(実施例1~10及び比較例3~7)では、茶生葉Tが固定胴9内で詰まる事態が生じなかった。このことから3~6回目の試験の装置のように、茶生葉Tの供給口5と、熱水Hの供給口7とを別々に設け、熱水Hの供給口7を茶生葉Tの供給口5よりも管体2の他端側(回転胴10側)に位置させることで、茶生葉Tの詰まりを防止できることが確認された。
【0073】
熱水Hを管体2内に供給した実施例1~10及び比較例1~7を比較すると、排出口8の下端Aを管体2の内部下端Bと同一の高さに位置させた実施例1や、排出口8の下端Aを管体2の内部下端Bよりも上側に位置させた実施例2~10は、排出口8の下端Aを管体2の内部下端Bよりも下側に位置させた比較例1~7に比して、カフェイン残存率(%)が少なくなった。このことから、排出口8の下端Aを管体2の内部下端Bよりも上側に位置させること、或いは排出口8の下端Aを管体2の内部下端Bと同一の高さにすることで、茶生葉Tから多くのカフェインを低減できることが確認された。
【0074】
また同一の茶生葉T(二番茶碾茶用生葉(30kg、14日間被覆))を使用した実施例1及び実施例2~6を比較すると、実施例1のカフェイン残存率が39.5%であるのに対して、実施例2~6のカフェイン残存率が23.5%以上34.9%になっていることから、排出口8の下端Aを管体2の内部下端Bよりも上側に位置させる場合(実施例2~6)には、排出口8の下端Aを管体2の内部下端Bと同一の高さにする場合(実施例1)に比して、カフェインをより多く低減できることが確認された。
【0075】
また実施例1~10は、いずれも、茶生葉Tの供給口5に供給される茶生葉Tの1重量部に対して、熱水Hの供給口7に供給される供給される熱水Hの量を10重量部以上19重量部以下とし、固定胴9内で蒸気Vと混合された熱水Hの温度を96℃以上100℃以下とした例である。当該実施例1~10では、いずれも、カフェイン残存率が40%以下の低い値となった。このことから上記の熱水Hの温度を96℃以上100℃以下とすれば、熱水H量が上述の重量部の値のように少なくとも、茶生葉Tに含まれるカフェインの60%以上を低減できることが確認された。
【0076】
また茶生葉Tが供給口から排出口8まで移送される時間を20秒以上50秒以下とした実施例1,2,3,5,6,9は、上記の時間を75秒とした実施例4や、上記の時間を55秒とした実施例10に比して、タンニン残存率・テアニン残存率・遊離アミノ酸残存率が多かった。このことから、上記の時間を20秒以上50秒以下とすることで、タンニン、テアニン、及び遊離アミノ酸の有用成分を茶生葉Tに多く残存できることが確認された。
【0077】
また本願発明者らは、実施例9,10及び比較例8,9で得られた碾茶に存在する微生物を確認する試験を行った。
図13に本試験の条件及び結果を示す。
図13に示す結果から、本発明の茶生葉処理装置で茶生葉Tを処理することで、茶生葉Tの生菌数を低減出来ることが確認された。
【0078】
また、比較例8,9の碾茶の苦渋味・旨みを0点として、実施例9,10の碾茶の苦渋味・旨みを採点する試験を行った。本試験は、9名の専門パネルにより行ったものであり、専門パネルは、比較例8,9の碾茶よりも苦渋味・旨みが低減した場合にマイナスの得点を付け、比較例8,9の碾茶よりも苦渋味・旨みが増加した場合にプラスの得点を付けるように指示されていた。
図14に本試験の結果を示す。
図14に示す結果から、本発明の茶生葉処理装置で茶生葉Tを処理することで、茶生葉Tの旨味を低減することなく苦渋味を低減出来ることが確認された。
【符号の説明】
【0079】
1 茶生葉処理装置
2 管体
3 攪拌手段
4,40 調整手段
5 茶生葉の供給口
6 蒸気の供給口
7 熱水の供給口
10 回転胴
12 連設胴
13 網胴
14 回転軸
15 攪拌翼
A 排出口の下端
B 管体の一端の内部下端
H 熱水
T 茶生葉
V 蒸気
【要約】
【課題】設備コストを抑えつつ、茶生葉に対して酸化酵素の不活性化処理とカフェイン低減処理の双方を行うことができるとともに、熱水の量を少なくして運転コストを抑えても、茶生葉から多くのカフェインを低減できる茶生葉処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の茶生葉処理装置1は、茶生葉Tの供給口5と、蒸気Vの供給口6と、熱水Hの供給口7とが一端側に設けられ、茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hの排出口8を他端に有する管体2と、管体2内を通過する茶生葉T、蒸気V、及び熱水Hを攪拌するための攪拌手段3と、を備え、排出口8の下端Aを、管体2の一端の内部下端Bよりも上側に位置させることが可能、或いは、排出口8の下端Aを、管体2の一端の内部下端Bと同一の高さに位置させることが可能である。
【選択図】
図2