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特許7057999自立型不織布製水切り袋、および、自立型不織布製水切り袋の製造方法
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  • 特許-自立型不織布製水切り袋、および、自立型不織布製水切り袋の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】自立型不織布製水切り袋、および、自立型不織布製水切り袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65F 1/00 20060101AFI20220414BHJP
   D04H 13/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
B65F1/00 102F
D04H13/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017222182
(22)【出願日】2017-11-17
(65)【公開番号】P2019094136
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390026491
【氏名又は名称】小林製袋産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】澤村 かおり
(72)【発明者】
【氏名】小林 諭史
(72)【発明者】
【氏名】周 慕
【審査官】山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3159425(JP,U)
【文献】特開2005-015179(JP,A)
【文献】登録実用新案第3092175(JP,U)
【文献】登録実用新案第3173108(JP,U)
【文献】実開昭60-114102(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 1/00-1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、前記底壁の縁部を囲み、かつ、前記底壁の縁部から立ち上がる筒状の周壁とを備え、前記周壁の頂部が開口部である自立型不織布製水切り袋であって、
前記周壁は、ポリオレフィン、および、ポリエステルの少なくとも一方を含む複数の繊維がフラットロールによる溶融で結合されたサーマルボンド不織布であり、
前記底壁は、前記サーマルボンド不織布よりも透液性の高いメッシュ状の不織布であり、ポリオレフィン、および、ポリエステルの少なくとも一方と、セルロースとを含む複数の繊維が水圧によって絡まり結合された水流交絡不織布であり、
前記周壁は、前壁および後壁から構成され、
前記自立型不織布製水切り袋は、前記前壁の左右側辺と前記後壁の左右側辺とが接合され、かつ、前記前壁の底部および前記後壁の底部と、前記底壁の縁部とが接合された接合体である
自立型不織布製水切り袋。
【請求項2】
前記前壁の左右側辺と前記後壁の左右側辺とは、互いに熱溶着された溶着部であり、
前記前壁の底部および前記後壁の底部と、前記底壁の縁部とは、互いに熱溶着された溶着部である
請求項1に記載の自立型不織布製水切り袋。
【請求項3】
前記前壁の底部および前記後壁の底部から前記開口部に向かう方向が上下方向であり、
前記前壁の底部および前記後壁の底部と、前記底の縁部とによる溶着部の前記上下方向における幅が5mm以上20mm以下である
請求項2に記載の自立型不織布製水切り袋。
【請求項4】
底壁と、前記底壁の縁部を囲み、かつ、前記底壁の縁部から立ち上がる筒状の周壁とを備え、前記周壁の頂部が開口部である自立型不織布製水切り袋の製造方法であって、
前記周壁は、ポリオレフィン、および、ポリエステルの少なくとも一方を含む複数の繊維がフラットロールによる溶融で結合されたサーマルボンド不織布であり、
前記底壁は、前記サーマルボンド不織布よりも透液性の高いメッシュ状の不織布であり、ポリオレフィン、および、ポリエステルの少なくとも一方と、セルロースとを含む複数の繊維が水圧によって絡まり結合された水流交絡不織布であり、
上下に重ねられた帯状の前記サーマルボンド不織布の間に、帯状の前記水流交絡不織布であって、幅方向での両端部が前記幅方向での中間部に折り重ねられた前記水流交絡不織布を配置する工程と、
上下に重ねられた前記帯状の前記サーマルボンド不織布における前記幅方向での中心を含む帯状の第1領域を、前記帯状の前記水流交絡不織布における前記幅方向での中心を含む帯状の第1領域に熱溶着によって接合し、これによって、底シール部を形成する工程と、
上下方向に重ねられた前記帯状の前記サーマルボンド不織布において前記幅方向に延びる帯状の第2領域を、前記帯状の前記水流交絡不織布における前記帯状の前記サーマルボンド不織布の前記第2領域に対向する帯状の第2領域に熱溶着によって接合し、これによって左右シール部を形成する工程と、
前記底シール部を前記幅方向での中心で切断することによって、前記自立型不織布製水切り袋の前記底壁を形成する工程と、
前記左右シール部を長さ方向の中心で切断することによって、前記自立型不織布製水切り袋の前記周壁を形成する工程と、を含む
自立型不織布製水切り袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立型不織布製水切り袋、および、自立型不織布製水切り袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンのシンクで用いられる水切り袋には、他の部材によって支えられることなく、水切り袋そのもので立った状態を維持できるように構成された自立型水切り袋が知られている。自立型水切り袋は、例えば、互いに対向する前後の壁と、各壁の下端縁に連結された底壁とを備え、前後の壁における左右の両側端が、シール部によって接合されている。そして、前後壁の上端縁から底部に向けて左右の幅が広くなるようにシール部が構成され、それによって、前後の壁が倒れることを抑える柱としてシール部が機能する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-32403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自立型不織布製水切り袋では、前壁や後壁がシンクにおいて水に濡れ続けると、使用を開始したときの形状を維持できず、例えば、ごみを入れる開口部が変形したり、水切り袋が倒れたりする。
本発明は、使用時における形状の安定性を向上可能とした自立型不織布製水切り袋、および、自立型不織布製水切り袋の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための自立型不織布製水切り袋は、底壁と、前記底壁の縁部を囲み、かつ、前記縁部から立ち上がる筒状の周壁とを備え、前記周壁の頂部が開口部である自立型不織布製水切り袋であって、前記周壁は、ポリオレフィン、および、ポリエステルの少なくとも一方を含む複数の繊維がフラットロールによる溶融で結合されたサーマルボンド不織布であり、前記底壁は、前記サーマルボンド不織布よりも透液性の高いメッシュ状の不織布であり、ポリオレフィン、および、ポリエステルの少なくとも一方と、セルロースとを含む複数の繊維が水圧によって絡まり結合された水流交絡不織布である。
【0006】
上記課題を解決するための自立型不織布製水切り袋の製造方法は、底壁と、前記底壁の縁部を囲み、かつ、前記縁部から立ち上がる筒状の周壁とを備え、前記周壁の頂部が開口部である自立型不織布製水切り袋の製造方法であって、前記周壁は、ポリオレフィン、および、ポリエステルの少なくとも一方を含む複数の繊維がフラットロールによる溶融で結合されたサーマルボンド不織布によって前記周壁を形成する工程と、前記サーマルボンド不織布よりも透液性の高いメッシュ状の不織布であり、ポリオレフィン、および、ポリエステルの少なくとも一方と、セルロースとを含む複数の繊維が水圧によって絡まり結合された水流交絡不織布によって前記底壁を形成する工程と、を含む。
【0007】
上記各構成によれば、周壁を構成する不織布が、底壁を構成する不織布よりも液状体を透しにくい。そのため、自立型不織布製水切り袋の内容物に含まれる液状体が、周壁よりも底壁を通じて排出されやすい。結果として、周壁、および、底壁がサーマルボンド不織布である構成と比べて、周壁に対する液状体の供給が抑えられる。それゆえに、周壁が液状物を含むことによる変形を自立型不織布製水切り袋において抑えられる。また、周壁、および、底壁の全てが水流交絡不織布である構成と比べて、周壁において繊維を緻密にすることが可能であるから、周壁の強度を高めて、より自立に適した構成とすることが可能ともなる。こうした理由から、自立型不織布製水切り袋において、使用時における形状の安定性を向上することができる。
【0008】
上記自立型不織布製水切り袋において、前記周壁が、前壁および後壁から構成され、自立型不織布製水切り袋は、前記前壁の左右側辺と前記後壁の左右側辺とが接合され、かつ、前記前壁の底部および前記後壁の底部と前記底壁の縁部とが接合された接合体であってもよい。
【0009】
上記構成によれば、周壁の左右および底壁の周りに、複数の不織布が接合された部分が位置する。これらの接合された部分は、自立型不織布製水切り袋における他の部分に比べて強度が高いため、他の部分を支持する支持部として機能する。結果として、自立型不織布製水切り袋が、使用時においてより自立しやすくなる。
【0010】
上記自立型不織布製水切り袋において、前記前壁の左右側辺と前記後壁の左右側辺とは、互いに熱溶着された溶着部であり、前記前壁の底部および前記後壁の底部と、前記底壁の縁部とは、互いに熱溶着された溶着部であってもよい。
【0011】
上記構成によれば、前壁と後壁とが直接接合され、また、前壁および後壁と底壁とが直接接合されるため、前壁、後壁、および、底壁以外の材料をこれらの接合に要しない分、自立型不織布製水切り袋の製造に要するコストを低くすることができる。
【0012】
上記自立型不織布製水切り袋において、前記前壁の底部および前記後壁の底部から前記開口部に向けた方向が上下方向であり、前記溶着部の前記上下方向における幅が5mm以上20mm以下であってもよい。
【0013】
上記構成によれば、上下方向における溶着部の幅が5mm以上であることによって、溶着部の強度を高めることができ、水切り袋の自立性をさらに高めることができる。また、溶着部の上下方向の幅が20mm以下であるため、水切り袋のごみの保持容量を確保しつつ、水切り袋そのもののサイズが過大になることを抑えることができる。
【0014】
上記自立型不織布製水切り袋の製造方法において、前記周壁を形成する工程では、上下に重ねられた前記サーマルボンド不織布の間に、上下に折り重ねられた前記水流交絡不織布を配置して、上下に重ねられた前記サーマルボンド不織布同士を熱溶着することによって前記周壁を形成し、前記底壁を形成する工程では、上側の前記サーマルボンド不織布と前記水流交絡不織布の上側部分とを熱溶着し、下側の前記サーマルボンド不織布と前記水流交絡不織布の下側部分とを熱溶着することによって前記底壁と前記周壁とを接合してもよい。
【0015】
上記自立型不織布製水切り袋の製造方法によれば、サーマルボンド不織布同士が直接接合され、また、サーマルボンド不織布と水流交絡不織布とが直接接合されるため、周壁、および、底壁以外の材料をこれらの接合に要しない分、自立型不織布製水切り袋の製造に要するコストを低くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自立型不織布製水切り袋の使用時における形状の安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】自立型不織布製水切り袋の一実施形態を示す図であり、自立型不織布製水切り袋が自立した状態を示す斜視図。
図2】(a)自立型不織布製水切り袋が折りたたまれた状態を示す平面図であり、(b)図2(a)のI-I線に沿う断面図。
図3】自立型不織布製水切り袋の製造方法の一実施形態を示す工程図。
図4】自立型不織布製水切り袋の製造方法の一実施形態を示す工程図。
図5】自立型不織布製水切り袋の製造方法の一実施形態を示す工程図。
図6】自立型不織布製水切り袋の製造方法の一実施形態を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から図6を参照して、自立型不織布製水切り袋、および、自立型不織布製水切り袋の製造方法の一実施形態を説明する。以下では、自立型不織布製水切り袋の構成、自立型不織布製水切り袋の作用、および、自立型不織布製水切り袋の製造方法を順に説明する。
【0019】
[自立型不織布製水切り袋の構成]
図1には、自立した状態の自立型不織布製水切り袋が示されている。図1では、自立型不織布製水切り袋が備える底壁の構造を示す便宜上、前壁の右下部を破断して示す。なお、自立型不織布製水切り袋が自立した状態とは、当該袋が他の部材によって支えられることなく、袋のみで立った状態である。
【0020】
図1が示すように、自立型不織布製水切り袋10(以下、水切り袋10とも言う)は、底壁11と周壁12とを備えている。周壁12は、底壁11の縁部11Aから立ち上がる筒状を有し、周壁12の頂部が開口部13である。周壁12は、前壁12F、および、後壁12Bから構成されている。以下では、周壁12の底部から開口部13に向かう方向が上下方向であり、周壁12において、前壁12Fと後壁12Bとの接合部が並ぶ方向が、左右方向である。また、前壁12Fから後壁12Bに向かう方向が、前後方向である。
【0021】
底壁11は、周壁12よりも透液性の高い一枚のメッシュ状の不織布から構成されている。底壁11は、矩形状の不織布における左右両端辺を前後に折り重ねた状態である。底壁11は縁部11Aを含み、縁部11Aは、左右で一対の短辺である左右底縁11ASと、前後で一対の長辺である底縁11ABとから構成されている。左右底縁11ASは、水切り袋10が自立した状態において、上下方向に沿って延びている。左右底縁11ASは、矩形状の不織布における左右両端辺を前後に折り重ねて接合された縁である。底壁11は、水切り袋10が自立した状態において、一対の左右底縁11ASの間で前後に広がる形状を有している。底壁11は、水切り袋10の前後方向に広がる底襠である。
【0022】
底壁11は、底壁11を上下方向に貫通する複数の貫通孔を有している。貫通孔の直径は、例えば、0.5mm以上5mm以下である。貫通孔の直径が0.5mm以上であることによって、直径が0.5mm未満である構成と比べて底壁11での水切れ性がよくなる。また、直径が5mm以上であることによって、直径が5mm以下である構成と比べて、貫通孔に向けて飛び出た繊維によってごみが捕集されやすい。
【0023】
前壁12Fは、一枚の矩形状を有した不織布から構成されている。前壁12Fは、水切り袋10を設置する設置面に接する前壁底部FBと、前壁底部FBの上方に位置する前壁折り返し部FAと、上下方向に沿って延びる左右で一対の前壁左右側辺FSとを含んでいる。前壁折り返し部FAは、前壁12Fを構成する不織布の上端部が、水切り袋10の内側に向けて折り返された部分である。前壁左右側辺FSの下部は、底壁11の左右底縁11ASと熱溶着されている。前壁底部FBは、底縁11ABと熱溶着されている。これら熱溶着された部分は、複数の不織布が互いに熱溶着された溶着部である。
【0024】
後壁12Bは、前壁12Fを構成する不織布と同じ寸法を有する1枚の不織布から構成されている。後壁12Bは、設置面に接する後壁底部BBと、後壁底部BBの上方に位置する後壁折り返し部BAと、上下方向に沿って延びる左右で一対の後壁左右側辺BSとを含んでいる。後壁折り返し部BAは、後壁12Bを構成する不織布の上端部が、水切り袋10の内側に向けて折り返された部分である。
【0025】
前壁折り返し部FA、および、後壁折り返し部BAは、開口部13を区画する。前壁12Fが前壁折り返し部FAを有し、かつ、後壁12Bが後壁折り返し部BAを有することによって、開口部13を区画する部分の強度が高まり、また、開口部13の開いた状態が維持されやすくなる。
【0026】
後壁左右側辺BSの下部は、底壁11の左右底縁11ASと熱溶着されている。また、前壁左右側辺FSは、後壁左右側辺BSとの間に左右底縁11ASを挟んだ状態で、後壁左右側辺BSとも熱溶着される。さらに、後壁底部BBは、底壁11の底縁11ABと熱溶着されている。これら熱溶着された部分は、複数の不織布が互いに熱溶着された溶着部である。このように、前壁12Fと後壁12Bとが互いに熱溶着され、かつ、前壁12Fと後壁12Bとが底壁11に熱溶着されることによって、前壁12F、後壁12B、および、底壁11の接合体が形成される。
【0027】
上下方向に沿う底部FB,BBの高さHは、例えば、5mm以上20mm以下である。底部FB,BBの高さHが5mm以上であることによって、底部FB,BBの強度を高めることができ、自立性をさらに高めることができる。また、底部FB,BBの高さHが20mm以下であることによって、水切り袋10のごみの保持容量を確保しつつ、水切り袋10そのもののサイズが過大になることを抑えることができる。左右方向に沿う側辺FS,BSの幅Wは、例えば、底部FB,BBの高さHと同様、5mm以上20mm以下である。
【0028】
図2には、折りたたまれた状態の水切り袋10が示されている。なお、水切り袋10が折りたたまれた状態とは、底壁11が前後で折りたたまれ、かつ、開口部13が開口していない状態であり、水切り袋10が使用される前の状態である。水切り袋10は、折りたたまれた状態で流通し、かつ、販売される。
【0029】
図2(a)は、水切り袋10を前壁12Fと対向する方向から見た平面構造を示している。図2(b)は、図2(a)の水切り袋10をI-I線に沿って切断した切断部の断面構造を示している。なお、図2(b)では、図示の便宜上、前壁12Fと後壁12Bとの間、前壁12Fと底壁11との間、および、後壁12Bと底壁11との間に空間があるが、実際には、前後方向において互いに隣り合う壁は、互いに面接触している。
【0030】
図2(a)が示すように、前壁12Fと対向する平面視において、折りたたまれた状態の水切り袋10は、矩形状を有している。底壁11は、前壁12Fと後壁12Bとの間において、上下方向における前壁12Fの中央部よりも、前壁底部FB寄りに位置している。また、底壁11は、左右方向における前壁12Fの全体と重なっている。
【0031】
図2(b)が示すように、底壁11は前壁12Fと後壁12Bとの間において、前後方向に折り畳まれた山型を有し、底壁11の山部が周壁12によって区画された空間内に位置している。底壁11の縁部11Aにおける一部は、前壁底部FBに接合し、底壁11の縁部11Aにおける他の一部は、後壁底部BBに接合している。
【0032】
水切り袋10を使用するときには、前壁折り返し部FAと後壁折り返し部BAとの間の間隔を広げることによって開口部13を開ける。そして、開口部13から底壁11に向けて手を差し込み、折り畳まれた状態の底壁11を前後方向に広げることによって、水切り袋10の底襠を形成する。底壁11を設置面に沿うように配置することで、水切り袋10を自立させることができる。
【0033】
以下、底壁11、および、周壁12の各々を構成する不織布を説明する。周壁12は、ポリオレフィン、および、ポリエステルの少なくとも一方を含む複数の繊維がフラットロールによる溶融で結合されたサーマルボンド不織布である。本実施形態にて用いるサーマルボンド不織布は、JIS L 0222:2001で規定されるサーマルボンド不織布の一例である。
【0034】
繊維に含まれるポリオレフィン、および、ポリエステルは疎水性であるため、これらの樹脂を形成材料とするサーマルボンド不織布は水を含みにくい。そのため、周壁12が水を含むことに起因して、周壁12が撓んだり、折れ曲がったりしにくくなる。結果として、水切り袋10の開口部13が閉じたり、水切り袋10が倒れたりしにくい。また、ポリオレフィン、および、ポリエステルは、熱溶着に適した樹脂でもある。
【0035】
サーマルボンド不織布の製造時は、複数の繊維から構成されるウェブに熱が与えられることによって、複数の繊維が絡まる部分が溶融し、複数の繊維が互いに結合する。フラットロールによって繊維を加熱するには、平坦な円筒面を有するフラットロールを所定の温度に加熱し、加熱されたフラットロールの円筒面をウェブの全体に所定の圧力で押しつける。このように、フラットロールを用いた加熱によれば、ウェブを加熱すると同時にウェブに加圧することもできる。そのため、ウェブの面内において、繊維の溶着された箇所にばらつきが生じにくい。加えて、ウェブの内部における空隙は、フラットロールを用いた加圧によって押し潰されるため、ウェブの厚さ、ひいては、サーマルボンド不織布の厚さは、加圧されることなく製造されたサーマルボンド不織布に比べて薄くなり、かつ、繊維の緻密さが高まる。フラットロールにより繊維が溶融されたサーマルボンド不織布は、繊維の緻密さが高いために、液状体を含みにくい。
【0036】
これに対して、サーマルボンド不織布には、オーブンを用いた加熱によって複数の繊維が溶着されたサーマルボンド不織布も知られている。オーブンを用いた加熱では、ウェブの加熱を行わず、かつ、熱風がウェブを通過するため、ウェブの内部には空隙が形成されやすく、かつ、空隙は圧縮されにくい。そのため、フラットロールを用いて加熱されたサーマルボンド不織布の厚さは、オーブンを用いて加熱されたサーマルボンド不織布に比べて小さい。それゆえに、フラットロールにより加熱されたサーマルボンド不織布は、オーブンにより加熱されたサーマルボンド不織布に比べて液状体を含みにくい。したがって、フラットロールを用いて加熱されたサーマルボンド不織布の周壁12は、オーブンを用いて加熱されたサーマルボンド不織布の周壁よりも、変形しにくい。
【0037】
底壁11は、サーマルボンド不織布よりも透液性の高い不織布であり、ポリオレフィン、および、ポリエステルの少なくとも一方と、セルロースとを含む複数の繊維が水圧によって絡まり結合されたメッシュ状の水流交絡不織布である。本実施形態にて用いる水流交絡不織布は、JIS L 0222:2001で規定される水流交絡不織布の一例である。水流交絡不織布は、水流交絡法によって、すなわち、高圧水流によってウェブ中の短繊維、または、フィラメントを交絡して作られた不織布である。
【0038】
水流交絡法は、上述したフラットロールを用いてウェブが加熱される場合よりも、メッシュのサイズを大きくできる傾向を有する。そのため、水流交絡法によって形成された水流交絡不織布は、不織布を形成する複数の繊維における緻密さが、フラットロールを用いて形成されたサーマルボンド不織布に比べて小さい傾向を有する。それゆえに、水流交絡不織布は、フラットロールを用いて形成されたサーマルボンド不織布よりも高い透液性を得られやすい。なお、透液性とは、不織布の表面から不織布に入った液状体が、不織布内を通過して裏面から出ることであり、液状体が裏面から出やすいほど透液性が高い。さらには、メッシュ状の水流交絡不織布は、それの貫通孔を通じて液状体を通過する。これによっても、水流交絡不織布の透液性は、フラットロールを用いて形成されたサーマルボンド不織布よりも高くなる。
【0039】
水流交絡不織布では、不織布を構成する繊維において、セルロースの含まれる割合が、60質量%以下であることが好ましい。セルロースの含まれる割合が60質量%以下であることによって、ポリオレフィン、および、ポリエステルの少なくとも一方によるヒートシール性の低下が抑えられる。
【0040】
繊維に含まれる繊維状のセルロースには、例えば、レーヨン、および、パルプを挙げることができる。繊維状のセルロースは、メッシュ状の不織布における貫通孔内などに飛び出す。貫通孔内に飛び出した繊維は、液状体とともに貫通孔を通過するごみを捕集することができる。なお、周壁12を構成する不織布、および、底壁11を構成する不織布は、銅や銀などを含む金属ゼオライトや、キトサンなどの抗菌剤を含んでもよい。これにより、水切り袋10内での菌の繁殖によるぬめりや悪臭を抑えることができる。
【0041】
[自立型不織布製水切り袋の作用]
水切り袋10の作用を説明する。
水切り袋10は、底壁11における一対の左右底縁11ASが設置面から立ち上がり、かつ、設置面と、底壁11における一対の左右底縁11AS間に広がる部分とが平行であるように設置される。そして、前壁12F、および、後壁12Bが、設置面から立ち上がる状態、すなわち、水切り袋10が自立した状態となる。
【0042】
この際、前壁底部FBと底縁11ABとが熱溶着された溶着部であり、かつ、後壁底部BBと底縁11ABとが熱溶着された溶着部であるため、底壁11の広がった状態が安定するため、前壁12F、および、後壁12Bの自立が各別に安定する。また、前壁左右側辺FSの下部と左右底縁11ASとがそれぞれ熱溶着された溶着部であり、かつ、後壁左右側辺BSの下部と左右底縁11ASとがそれぞれ熱溶着された溶着部であるため、前壁12Fと後壁12Bとが共同してさらに自立した状態が安定する。
【0043】
そして、水切り袋10が自立した状態において、水などの液状体を含むごみが開口部13から袋内に入れられる。このとき、前壁12F、および、後壁12Bと、底壁11とが異なる不織布であり、かつ、前壁12F、および、後壁12Bよりも底壁11で液状体が排出されやすい。そのため、水切り袋10に入れられた液状体が、底壁11上で溜まることが抑えられ、ごみなどに含まれる液状体が、前壁12Fや後壁12Bよりも、底壁11に向けて流れやすい。結果として、前壁12F、および、後壁12Bへの液状体の供給が抑えられることから、前壁12F、および、後壁12Bが液状物を含むことによる変形を抑えられる。すなわち、水切り袋10が自立した状態の安定性を向上させることができる。
【0044】
[自立型不織布製水切り袋の製造方法]
図3図6を参照して、自立型不織布製水切り袋の製造方法について説明する。なお、図3図6は、不織布から構成された各シートの重なりを説明する便宜上、重なり合うシートの間に間隔を空けて各シートを示すが、実際には、重なり合う各シートは、面で接触している。
【0045】
図3に示すように、まず、帯状の上フラットシート12Tと、上フラットシート12Tと同寸法の下フラットシート12Lと、帯状のメッシュシート11Pとを準備する。上フラットシート12T、および、下フラットシート12Lは、上述したサーマルボンド不織布であり、メッシュシート11Pは、上述したメッシュ状の水流交絡不織布である。なお、上フラットシート12Tを平面視した時、一対の長辺の延びる方向が長さ方向であり、一対の短辺の延びる方向が幅方向である。
【0046】
上フラットシート12Tは、下フラットシート12Lの直上に配置されている。上フラットシート12Tの幅方向での両端部と、下フラットシート12Lの幅方向での両端部とは、互いに上下に重ねられている。メッシュシート11Pは、上フラットシート12Tと下フラットシート12Lとの間に配置されている。すなわち、下フラットシート12Lと、メッシュシート11Pと、上フラットシート12Tとが、下から順に積層されている。上フラットシート12Tは、前壁12Fを形成するための不織布であり、下フラットシート12Lは、後壁12Bを形成するための不織布であり、メッシュシート11Pは、底壁11を形成するための不織布である。
【0047】
メッシュシート11Pは、幅方向での両端辺を突き合わせるように、幅方向での両端部を幅方向の中間部に折り重ねている。メッシュシート11Pの幅方向での両端部は、上フラットシート12Tと対向し、メッシュシート11Pの幅方向での中間部は、下フラットシート12Lと対向している。メッシュシート11Pの幅方向での中心は、上フラットシート12Tの幅方向での中心、および、下フラットシート12Lの幅方向での中心と対向している。なお、メッシュシート11Pの内側には、上述した折り重ねを誘導するための板部材が差し込まれている。
【0048】
次いで、図4に示すように、上フラットシート12Tの幅方向での両端部が、メッシュシート11Pに向けて折り返されて、折り返し部FA2が形成される。また、下フラットシート12Lの幅方向での両端部も同様に、メッシュシート11Pに向けて折り返されて、折り返し部BA2が形成される。折り返し部FA2は、前壁折り返し部FAを形成するための折り返しであり、折り返し部BA2は、後壁折り返し部BAを形成するための折り返しである。
【0049】
次いで、図5に示すように、下フラットシート12Lの幅方向での中心を含む帯状の領域、および、上フラットシート12Tの幅方向での中心を含む帯状の領域が、底シール部Z1に設定される。メッシュシート11Pの幅方向での両端部、および、メッシュシート11Pの幅方向での中間部においても、上フラットシート12Tの底シール部Z1や、下フラットシート12Lの底シール部Z1と対向する領域が、底シール部Z1に設定される。そして、下フラットシート12Lの底シール部Z1と、メッシュシート11Pの中間部における底シール部Z1とが、ヒートシールによって接合される。また、上フラットシート12Tの底シール部Z1と、メッシュシート11Pの両端部における底シール部Z1とが、ヒートシールによって接合される。これによって、メッシュシート11Pの両端部と中間部とが、それぞれ上下で別々のフラットシート12T,12Lに溶着される。そして、これら溶着された底シール部Z1が、幅方向での中心で切断されることによって、水切り袋10における各底部(前壁底部FB、後壁底部BB、底縁11AB)が形成される。
【0050】
次いで、図6に示すように、下フラットシート12Lの幅方向に延びる帯状の領域、および、上フラットシート12Tの幅方向に延びる帯状の領域が、左右シール部Z2に設定される。メッシュシート11Pからは、それの内側に位置する板部材が抜き出される。そして、メッシュシート11Pにおいても、下フラットシート12Lの左右シール部Z2や、上フラットシート12Tの左右シール部Z2と対向する領域が、左右シール部Z2に設定される。そして、下フラットシート12Lの左右シール部Z2と、メッシュシート11Pの左右シール部Z2と、上フラットシート12Tの左右シール部Z2とが、ヒートシールによって接合される。そして、これら溶着された左右シール部Z2が、長さ方向での中心で切断されることによって、水切り袋10における各側辺(前壁左右側辺FS、後壁左右側辺BS、左右底縁11AS)が形成される。すなわち、幅方向で一対となる水切り袋10が、水切り袋10の各底部を突き合わせた状態で、長さ方向に沿って順に形成される。
【0051】
以上説明したように、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)周壁12を構成する不織布が、底壁11を構成する不織布よりも液状体を透しにくいため、ごみなどに含まれる液状体が、周壁12よりも、底壁11を通じて排出されやすい。結果として、周壁12、および、底壁11がサーマルボンド不織布である構成と比べて、周壁に対する液状体の供給が抑えられる。それゆえに、周壁12が液状物を含むことによる変形を水切り袋10において抑えられる。また、周壁12、および、底壁11の全てが水流交絡不織布である構成と比べて、周壁12の繊維を緻密にすることが可能であるから、周壁の強度を高めて、より自立に適した構成とすることが可能ともなる。
【0052】
(2)前壁底部FB、および、後壁底部BBと、底壁11の縁部11Aとが接合されることで、底壁11の周囲が底壁11の他の部分よりも固くなるため、水切り袋10における自立性を高めることができる。
【0053】
(3)前壁底部FB、および、後壁底部BBと、底壁11の縁部11Aとが熱溶着によって接合されているため、前壁12F、後壁12B、および、底壁11以外の材料をこれらの接合に要しない分、水切り袋10の製造に要するコストを低くすることができる。
【0054】
(4)上下方向における溶着部の幅が5mm以上であるため、溶着部の強度を高めることができ、水切り袋10の自立性をさらに高めることができる。また、溶着部の上下方向の幅が20mm以下であるため、水切り袋10のごみの保持容量を確保しつつ、水切り袋10そのもののサイズが過大になることを抑えることができる。
【0055】
なお、上述した実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
[開口部]
・前壁12Fの頂部、および、後壁12Bの頂部における各々の折り返しは、数回とすることも可能であり、これによって、開口部13を区画する折り返し部が、多重構造であってもよい。こうした構成であれば、上記(1)~(4)の効果に加えて、折り返し部が補強され、水切り袋における開口性をさらに高める効果を得ることができる。
【0056】
・開口部13を区画する折り返し部は、外側に折り返してもよい。さらに、開口部13を区画する折り返し部は、折り返された部分同士のヒートシールによる溶着部とすることも可能である。なお、水切り袋10は、折り返し部を割愛された構成であってもよい。
【0057】
[溶着部]
・溶着部の上下方向の高さHと、前壁左右側辺FS、および、後壁左右側辺BSとが接合された左右方向の幅Wとは、互いに異なる大きさに変更することも可能である。こうした構成であっても、溶着部の上下方向の幅が5mm以上20mm以下であれば、上述した(1)~(4)の効果を得ることはできる。
【0058】
・前壁12Fと後壁12B、前壁12Fと底壁11、後壁12Bと底壁11とは、熱溶着以外の他の方法で接合されていてもよい。他の方法は、例えば、接着剤などによる化学的な接合であってもよいし、それぞれを縫い合わせてもよい。
【0059】
[周壁]
・周壁12を構成する不織布の枚数は、前壁12F、および、後壁12Bの2枚に限らず、例えば、一枚に変更することも可能であり、また、3枚以上に変更することも可能である。この際、自立した状態における水切り袋10の形状は、円筒状に変更することが可能であり、多角筒状とすることも可能である。
【0060】
[底部]
・底壁11は、折り畳まれた水切り袋10において山型となるように折りたたまれているが、谷型となるように折りたたむことも可能である。また、底壁11は、折り畳まれた水切り袋10においてその他の形状であってもよく、例えば、左右方向から見てM字のように折りたたまれてもよく、山が2つ以上あってもよいし、W字のように谷が2つ以上あってもよい。
【符号の説明】
【0061】
H…高さ、W…幅、10…自立型不織布製水切り袋、11…底壁、11A…縁部、11AS…左右底縁、11AB…底縁、12…周壁、12F…前壁、12B…後壁、13…開口部、FA…前壁折り返し部、BA…後壁折り返し部、FB…前壁底部、BB…後壁底部、FS…前壁左右側辺、BS…後壁左右側辺、11P…メッシュシート、12T…上フラットシート、12L…下フラットシート、FA2…折り返し部、BA2…折り返し部、Z1…底シール部、Z2…左右シール部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6