(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】振動モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20220414BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20220414BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
G01M99/00 Z
G08C15/00 D
(21)【出願番号】P 2017233401
(22)【出願日】2017-12-05
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000180368
【氏名又は名称】四国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000144991
【氏名又は名称】株式会社四国総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】中西 美一
(72)【発明者】
【氏名】天野 雄一朗
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-014604(JP,A)
【文献】特開2017-096651(JP,A)
【文献】特開昭59-226975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01M 99/00
G08C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信網を介して相互通信が可能な複数のセンサーユニットと、前記センサーユニットと前記無線通信網を介して相互通信が可能なデータ収集ユニットとを備える振動モニタリングシステムであって、
前記センサーユニットが、3軸加速度センサー、処理装置、計測プログラムが格納された記憶装置、内蔵時計、電源装置および無線通信装置を備え、
前記計測プログラムが、他のセンサーユニットとの無線通信により内蔵時計の時刻を定期的に同期させる時刻同期手段と、
前記3軸加速度センサーから取得した所定時間内の加速度波形
データを分析し、有意な振動加速度が含まれている場合には当該所定時間内
の加速度波形データに、
前記内蔵時計から取得した時刻をタイムスタンプ
として付与して前記記憶装置に記憶する振動データ記憶手段と、
前記記憶装置に記憶された前記
加速度波形データを前記データ収集ユニットに前記無線通信網を介して送信する振動データ送信手段と
、を備え
、
前記処理装置が、前記加速度波形データを一時保存する第1の記憶領域および第2の記憶領域を備え、
前記振動データ記憶手段が、前記加速度波形データの保存先となるアクティブ領域および記憶された前記加速度波形データの読み込み元となるストア領域を第1の記憶領域および第2の記憶領域間で切り替えること、並びに、前記ストア領域に記憶された前記加速度波形データを読み込んで前記分析を実行することを特徴とする振動モニタリングシステム。
【請求項2】
前記振動データ記憶手段が、前記内蔵時計からの割り込み入力を基準に前記
加速度波形データの保存先を第1の
記憶領域および第2の
記憶領域間で切り替えることを特徴とする請求項
1に記載の振動モニタリングシステム。
【請求項3】
前記内蔵時計が、前記処理装置が備える第一の水晶時計と、前記無線通信装置が備える第二の水晶時計とから構成され、
前記時刻同期手段が、前記第二の水晶時計の時刻を、前記データ収集ユニットの時刻に同期する第1の時刻同期処理と、前記第一の水晶時計と前記第二の水晶時計と
を所定の間隔で同期
する第2の時刻同期処理と、を実行することを特徴とする請求項1
または2に記載の振動モニタリングシステム。
【請求項4】
さらに、前記センサーユニットが、前記加速度波形データに基づいて構造物の傾斜角を算出する傾斜角算出手段を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の振動モニタリングシステム。
【請求項5】
前記
傾斜角算出手段が、
前記加速度波形データに有意な振動加速度が含まれていない場合には前記加速度波形データ中の各軸の加速度計測値を平滑化処理し、ノイズ成分を低減させ
たデータに基づいて構造物の傾斜角の算出を行い、前記記憶装置に記憶することを特徴とする請求項
4に記載の振動モニタリングシステム。
【請求項6】
前記時刻同期手段が、前記センサーユニット間におけるタイムスタンプのズレを1/100秒以下に維持することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の振動モニタリングシステム。
【請求項7】
前記電源装置が電池を備え、当該電池で2日間以上駆動することができることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の振動モニタリングシステム。
【請求項8】
さらに、前記データ収集ユニットと通信可能な監視サーバを備え、
前記監視サーバが、
前記データ収集ユニットから受信した前記加速度波形データに基づき
前記複数のセンサーユニットが配置された各構造物の
経時的な変位量を算出する手段、および/または、
前記データ収集ユニットから受信した前記加速度波形データに基づき
前記複数のセンサーユニットが配置された各構造物
間の変位量の差を算出する手段を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の振動モニタリングシステム。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の振動モニタリングシステムのデータ収集ユニットと通信可能な監視サーバであって、
前記データ収集ユニットから受信した前記加速度波形データに基づき
前記複数のセンサーユニットが配置された各構造物の
経時的な変位量を算出する手段、および/または、
前記データ収集ユニットから受信した前記加速度波形データに基づき
前記複数のセンサーユニットが配置された各構造物
間の変位量の差を算出する手段を備えることを特徴とする監視サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の複数の箇所に取り付けた複数の3軸加速度センサーの測定値に基づいて、構造物の振動をモニタリングする振動モニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物に取り付けた加速度センサーの測定値を無線通信により収集し、収集した測定値に基づいて、構造物の振動をモニタリングする振動モニタリングシステムが知られている。このような振動モニタリングシステムとして、たとえば特許文献1では、一定以上の加速度を検知した場合に、省電力状態から完全動作状態に切り替えて、加速度を検出・記憶するシステムが開示されている。また、特許文献2では、振動データを所定の判定値に基づいて判定し、判定値を超えた振動データを保存するシステムが開示されている。さらに、特許文献3では、振動を加振して2つのセンサーで検出させ、2つのセンサーの変位量に基づいて一方のセンサーの測定値を補正するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-509881号公報
【文献】特開2006-242826号公報
【文献】特開2015-99073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造物の状態を高い精度でモニタリングするためには、構造物の複数の箇所に設置された複数の加速度センサーが略同時刻(具体的には、1/100秒の誤差範囲内)に測定した測定値を比較することが要求される。しかしながら、加速度センサーを構造物内部に設置する場合には、GPSなどの外部から正確な時刻を取得することができないため、内蔵する時計に基づいて、加速度センサーの取得時刻を決定することが求められるが、通常の水晶時計を用いた場合には、水晶時計に一定の誤差が生じてしまい、実際には同時刻で取得した加速度であっても、加速度センサーごとに取得時刻のデータに誤差が生じてしまう場合があった。このような問題に対して、高精度の発信器を有する小型内蔵時計、たとえばチップレベルの原子時計を内蔵させることも考えられるが、このような小型内蔵時計は高価であり、システム全体のコストが増大してしまうという問題があった。そのため、このような高価な内蔵時計を用いることなく、構造物内の複数の箇所に設置された加速度センサーから、略同時刻で取得された複数の加速度データを同時刻で取得したデータとして取得可能なシステムが要求されていた。
【0005】
本発明は、高価な小型内蔵時計を用いることなく、略同時刻で測定された測定値を同時刻で取得した測定値として取得可能な振動モニタリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る振動モニタリングシステムは、無線通信網を介して相互通信が可能な複数のセンサーユニットと、前記センサーユニットと前記無線通信網を介して相互通信が可能なデータ収集ユニットとを備える振動モニタリングシステムであって、前記センサーユニットが、3軸加速度センサー、処理装置、計測プログラムが格納された記憶装置、内蔵時計、電源装置および無線通信装置を備え、前記計測プログラムが、他のセンサーユニットとの無線通信により内蔵時計の時刻を定期的に同期させる時刻同期手段と、前記3軸加速度センサーから取得した所定時間内の加速度波形データを分析し、有意な振動加速度が含まれている場合には当該所定時間内の加速度波形データに、前記内蔵時計から取得した時刻をタイムスタンプとして付与して前記記憶装置に記憶する振動データ記憶手段と、前記記憶装置に記憶された前記加速度波形データを前記データ収集ユニットに前記無線通信網を介して送信する振動データ送信手段と、を備え、前記処理装置が、前記加速度波形データを一時保存する第1の記憶領域および第2の記憶領域を備え、前記振動データ記憶手段が、前記加速度波形データの保存先となるアクティブ領域および記憶された前記加速度波形データの読み込み元となるストア領域を第1の記憶領域および第2の記憶領域間で切り替えること、並びに、前記ストア領域に記憶された前記加速度波形データを読み込んで前記分析を実行することを特徴とする。
【0007】
前記振動モニタリングシステムは、前記振動データ記憶手段が、前記内蔵時計からの割り込み入力を基準に前記加速度波形データの保存先を第1の記憶領域および第2の記憶領域間で切り替えるように構成してもよい。
【0008】
前記振動モニタリングシステムは、前記内蔵時計が、前記処理装置が備える第一の水晶時計と、前記無線通信装置が備える第二の水晶時計とから構成され、前記時刻同期手段が、前記第二の水晶時計の時刻を、前記データ収集ユニットの時刻に同期する第1の時刻同期処理と、前記第一の水晶時計と前記第二の水晶時計とを所定の間隔で同期する第2の時刻同期処理と、を実行するように構成してもよい。
【0009】
前記振動モニタリングシステムは、さらに、前記センサーユニットが、前記加速度波形データに基づいて構造物の傾斜角を算出する傾斜角算出手段を備えるように構成してもよい。
【0010】
前記振動モニタリングシステムは、前記傾斜角算出手段が、前記加速度波形データに有意な振動加速度が含まれていない場合には前記加速度波形データ中の各軸の加速度計測値を平滑化処理し、ノイズ成分を低減させたデータに基づいて構造物の傾斜角の算出を行い、前記記憶装置に記憶するように構成してもよい。
【0011】
前記振動モニタリングシステムは、前記時刻同期手段が、前記センサーユニット間におけるタイムスタンプのズレを1/100秒以下に維持するように構成してもよい。
【0012】
前記振動モニタリングシステムは、前記電源装置が電池を備え、当該電池で2日間以上駆動することができるように構成してもよい。
【0013】
前記振動モニタリングシステムは、さらに、前記データ収集ユニットと通信可能な監視サーバを備え、前記監視サーバが、前記データ収集ユニットから受信した前記加速度波形データに基づき前記複数のセンサーユニットが配置された各構造物の経時的な変位量を算出する手段、および/または、前記データ収集ユニットから受信した前記加速度波形データに基づき前記複数のセンサーユニットが配置された各構造物間の変位量の差を算出する手段を備えるように構成してもよい。
本発明に係る監視サーバは、上記振動モニタリングシステムのデータ収集ユニットと通信可能な監視サーバであって、前記データ収集ユニットから受信した前記加速度波形データに基づき前記複数のセンサーユニットが配置された各構造物の経時的な変位量を算出する手段、および/または、前記データ収集ユニットから受信した前記加速度波形データに基づき前記複数のセンサーユニットが配置された各構造物間の変位量の差を算出する手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高価な小型内蔵時計を用いることなく、略同時刻で取得された測定値を同時刻で取得された測定値として取得することができる振動モニタリングシステムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る振動モニタリングシステムの構成を示す概略図である。
【
図2】本実施形態に係るセンサーユニットの構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係るデータ収集ユニットの構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る遠隔モニタリング装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る振動モニタリング処理を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係るセンサーユニットの動作を説明するための図である。
【
図7】本実施形態に係る時刻同期処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本実施形態に係る振動モニタリングシステムを図に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る振動モニタリングシステムの構成を示す概略図である。
図1に示すように、本発明に係る振動モニタリングシステムは、構造物の複数の箇所に設置される複数のセンサーユニット1と、複数のセンサーユニット1の測定値を収集するデータ収集ユニット2と、データ収集ユニット2からデータを受信する遠隔モニタリング装置3とから構成される。
【0017】
図1に示すように、複数のセンサーユニット1は、構造物の複数の箇所にそれぞれ設置される。たとえば、
図1に示す例では、構造物Aの複数の箇所に複数のセンサーユニット1
A1~1
Anがそれぞれ設置されており、構造物Bの複数の箇所に複数のセンサーユニット1
B1~1
Bnが設置されている。なお、
図1に示す複数のセンサーユニット1
A1~1
An,1
A1~1
Anは総称してセンサーユニット1ともいう。センサーユニット1は、3軸加速度センサー10を有しており、複数のセンサーユニット1
A1~1
Anは構造物Aの各箇所の振動を加速度データとしてそれぞれ測定し、複数のセンサーユニット1
B1~1
Bnが構造物Bの各箇所の振動を加速度データとしてそれぞれ測定する。そして、センサーユニット1は、無線通信により、測定した加速度データからなる加速度波形データを、データ収集ユニット2まで送信する。
【0018】
ここで、センサーユニット1は、それぞれが直接、データ収集ユニット2に加速度データを送信するのではなく、
図1に示すように、他のセンサーユニット1を介して、データ収集ユニット2に加速度データを送信するマルチホップ通信を行う。そして、データ収集ユニット2が、収集した加速度データを、電気通信回線4を介して、遠隔モニタリング装置3に送信する。たとえば、
図1に示す例では、構造物Aにおいて、センサーユニット1
A1は測定した加速度データをセンサーユニット1
A2に送信する。そして、センサーユニット1
A2は、当該センサーユニット1
A2が測定した加速度データと、センサーユニット1
A1から送信された加速度データとを、図示しないセンサーユニット1
A3に送信する。同様に、センサーユニット1
A3~1
An-1で加速度データの送信が行われる。そして、センサーユニット1
Anは、当該センサーユニット1
Anが測定した加速度データと、センサーユニット1
A1~1
An-1から送信された加速度データとを、データ収集ユニット2
Aに送信する。さらに、データ収集ユニット2
Aは、複数のセンサーユニット1
A1~1
Anで測定された加速度データを、電気通信回線4を介して遠隔モニタリング装置3に送信する。同様に、構造物Bにおいても、センサーユニット1
B1~1
Bnが、それぞれの加速度データを、マルチホップ通信によりデータ収集ユニット2
Bまで無線送信し、最終的に、データ収集ユニット2
Bがセンサーユニット1
B1~1
Bnの加速度データを、電気通信回線4を介して、遠隔モニタリング装置3に送信する。
【0019】
なお、
図1に示す例では、センサーユニット1
A1~1
Anおよびデータ収集ユニット2
Aと、センサーユニット1
B1~1
Bnおよびデータ収集ユニット2
Aとがそれぞれリニアに接続されている構成を例示しているが、この構成に限定されず、センサーユニット1
A1~1
Anおよびデータ収集ユニット2
Aと、センサーユニット1
B1~1
Bnおよびデータ収集ユニット2
Aとがそれぞれツリー形式で接続される構成としてもよい。この場合、データ収集ユニット2
Aは、複数のセンサーユニット1
Aから加速度データを受信する構成とすることができる。また、以下においては、マルチホップ通信において、データ収集ユニット2側にあるセンサーユニット1に対し、データ収集ユニット2と反対側にあるセンサーユニット1を下流と称し、反対に、データ収集ユニット2と反対側にあるセンサーユニット1に対し、データ収集ユニット2側にあるセンサーユニット1を上流と称す。
【0020】
次に、センサーユニット1の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るセンサーユニット1の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態に係るセンサーユニット1は、3軸加速度センサー10と、電源装置11と、処理モジュール20と、無線通信モジュール30とを備える。
【0021】
3軸加速度センサー10は、複数方向(3次元)の加速度を検出する。3軸加速度センサー10により取得された3軸方向それぞれの加速度データは、処理モジュール20の処理装置21に送信される。
電源装置11は、常時は商用電源から電力を受電し、停電時は電池から電力を受電する電源装置である。実施例のセンサーユニット1の消費電力は0.1W未満で、単三形Lリチウム乾電池2本で5日程度動作する。
【0022】
処理モジュール20は、
図2に示すように、処理装置21と、水晶時計23と、記憶装置24とを備える。処理装置21は、たとえば、MCU(Micro Controller Unit)であり、構造物の振動を計測するための計測プログラムが記憶されている。処理装置21は、計測プログラムを実行することで、3軸加速度センサー10から加速度データを取得する加速度データ取得機能と、取得した加速度データを記憶領域に一時記憶させるデータ書き込み機能と、一定時間における加速度データの時系列データ(以下、加速度波形データともいう)を評価するデータ評価機能と、加速度データに基づいて構造物の傾斜角を算出する傾斜角算出機能と、無線通信により送信する加速度波形データを記憶装置24に記憶するデータ保存機能と、加速度波形データおよび傾斜角データを無線送信するデータ送信機能と、処理モジュール20に内蔵された水晶時計23の時刻をデータ収集ユニット2の時刻に同期させる時刻同期機能と、処理モジュール20の水晶時計23の時刻を基準として、3軸加速度センサー10から取得した加速度データを書き込む記憶領域を一定時間ごとに切り替える記憶領域切替機能とを有する。なお、地震発生時には、無線通信網の機能が失われることがあるが、その場合でも加速度波形データおよび傾斜角データは記憶装置24に保存される。また、処理装置21の各機能の詳細については後述する。
【0023】
無線通信モジュール30は、
図2に示すように、無線通信処理装置31と、アンテナ32と、水晶時計33とを備える。無線通信処理装置31は、アンテナ32を介して、下流のセンサーユニット1から加速度波形データおよび傾斜角データを無線通信で受信するとともに、下流のセンサーユニット1から受信した加速度波形データおよび傾斜角データ並びに当該センサーユニット1で取得した加速度波形データおよび傾斜角データを、上流のセンサーユニット1またはデータ収集ユニット2に無線通信で送信する。なお、センサーユニット1がどのセンサーユニット1からデータを受信し、どのセンサーユニット1にデータを送信するかは、無線通信処理装置31の機能により予め決定されている。
【0024】
また、無線通信処理装置31は、無線マルチホップ通信により、上流のセンサーユニット1またはデータ収集ユニット2から時刻データを受信する機能も有する。さらに、無線通信処理装置31は、無線マルチホップ通信により、受信した時刻データを、下流のセンサーユニット1に送信する機能も有する。無線通信処理装置31は、各無線通信処理装置が多段に中継することにより、広範囲の無線マルチホップネットワークを自動で構築することができる。無線通信処理装置31は、自動的に品質の良い通信経路を選択して中継することもできるし、優先したい経路を固定で設定することもできる。
【0025】
次に、データ収集ユニット2の構成について説明する。
図3は、本実施形態に係るデータ収集ユニット2の構成を示すブロック図である。本実施形態に係るデータ収集ユニット2は、
図3に示すように、処理装置41と、記憶装置42と、無線通信装置43と、回線通信装置44と、水晶時計45とを備える。
【0026】
処理装置41は、無線通信装置43を介して、複数のセンサーユニット1から加速度波形データおよび傾斜角データを受信する。そして、処理装置41は、複数のセンサーユニット1から受信した加速度波形データおよび傾斜角データを、3G網、LTE網等の携帯電話網通信が可能な回線通信装置44により、電気通信回線4を通じて遠隔モニタリング装置3に送信する。なお、遠隔モニタリング装置3に送信するデータの送信容量よりも、センサーユニット1から受信するデータの受信容量の方が大きい場合には、処理装置41は、送信待ちのデータを、記憶装置42に一時的に記憶することができる。そして、処理装置41は、複数のセンサーユニット1から受信した加速度波形データおよび傾斜角データを記憶装置42に保存すると共に、3G網、LTE網等の携帯電話網通信が可能な回線通信装置44により、電気通信回線4を通じて遠隔モニタリング装置3に送信する。なお、地震発生時には電気通信回線4の機能が一時的に失われることがあるが、その場合でも加速度波形データおよび傾斜角データは記憶装置42に保存される。
【0027】
また、処理装置41は、内蔵する水晶時計45の時刻データを、無線通信装置43を介して、センサーユニット1に送信する機能を有する。各センサーユニット1に送信される時刻データは、各センサーユニット1の時刻を、データ収集ユニット2の時刻に同期するために利用されることとなる。
【0028】
次に、遠隔モニタリング装置3の構成について説明する。
図4は、遠隔モニタリング装置3の構成を示すブロック図である。遠隔モニタリング装置3は、たとえばPCサーバなどの機器であり、
図4に示すように、処理装置51と、受信装置52と、データベース53と、入力装置54と、表示装置55とを有する。
【0029】
処理装置51は、ユーザが構造物の状態をモニタリングするための監視プログラムと、監視プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備える。そして、処理装置51は、RAMに記憶されたプログラムをCPUで実行することで、データ収集ユニット2から加速度波形データおよび傾斜角データを受信するデータ受信機能と、データベース53から同時刻に取得された加速度データを抽出する加速度データ抽出機能と、構造物の各箇所の振動の変位量を算出する変位量算出機能と、構造物の各箇所の加速度データ、変位量、傾斜角のいずれか1以上を含むモニタリング情報をユーザに提示する情報提示機能と、を有する。なお、処理装置51の各機能の詳細については後述する。
【0030】
次に、本実施形態に係る振動モニタリングシステムの実施例および動作について説明する。本実施例では、3軸加速度センサー10としてADXL355(アナログデバイセズ社)を、無線通信モジュール30として通信距離の長い920MHz帯無線に対応したSR920(沖電気工業株式会社)を、バッファ記憶装置となる記憶装置24としてMicroSDを使用した。
【0031】
まず、本実施形態に係る振動モニタリング処理について説明する。なお、
図5は、本実施形態に係る振動モニタリング処理を示すフローチャートであり、
図6は、本実施形態に係るセンサーユニット1の動作を説明するための図である。なお、
図5に示すように、ステップS101~S108の処理は各センサーユニット1により実行され、ステップS109の処理はデータ収集ユニット2により実行され、ステップS110~S113の処理は遠隔モニタリング装置3により実行される。また、
図5に示す例では、説明の便宜上に、ステップS101~S113の処理を時系列に並べて説明するが、各処理はそれぞれ独自のサイクルで繰り返し行われており、また、異なる処理が並行して行われることもある。
【0032】
ステップS101では、構造物の各箇所に設置された3軸加速度センサー10により、3軸方向の加速度データが測定される。本実施形態において、3軸加速度センサー10は、独自のクロックメカニズムにより(たとえば5ミリ秒ごとに)、自律的に、処理モジュール20の処理装置21に対して、DataReady信号を出力する。DataReady信号は割り込み入力となっており、処理モジュール20の処理装置21はDataReady信号を受信すると即座に、処理装置21の加速度データ取得機能により、3軸加速度センサー10から3軸方向の加速度データをI2C通信で取得する。
【0033】
ステップS102では、処理装置21のデータ書き込み機能により、ステップS101で取得された加速度データが、第1記憶領域22Aおよび第2記憶領域22Bのいずれか一方に記憶される。ここで、本実施形態においては、第1記憶領域22Aおよび第2記憶領域22Bのうち、測定された加速度データが書き込まれる領域をアクティブ領域と称し、もう一方の記憶領域をストア領域と称する。アクティブ領域とストア領域とは、処理装置21により、一定時間(たとえば10秒)ごとに交互に切り替えられる。
【0034】
たとえば、
図6に示す例では、時刻nから、第1記憶領域22Aを、3軸加速度センサー10の加速度データを書き込むアクティブ領域としており、第2記憶領域22Bをストア領域としている。この場合、データ書き込み機能は、時刻nから一定時間、アクティブ領域である第1記憶領域22Aに、3軸加速度センサー10から取得した加速度データを記憶させる。
アクティブ領域とストア領域との切替は、処理モジュール20の水晶時計23からの1秒毎の割り込み入力を基準に行っており、ソフトウェア処理による揺らぎを起こさない設計としている。
【0035】
ステップS103では、処理装置21のデータ評価機能により、ステップS102で書き込まれた時系列の加速度データ(加速度波形データ)の評価が行われる。具体的には、データ評価機能は、まず、第1記憶領域22Aおよび第2記憶領域22Bのうち、ストア領域である記憶領域から一定時間前までの加速度データの時系列データを加速度波形データとして読み込む。たとえば、
図6に示す例において、時刻nから第2記憶領域22Bがストア領域となっている場合には、データ評価機能は、時刻nの直前にストア領域であった第1記憶領域22Aに記憶された、時刻n-1から時刻nまでに取得された加速度データの時系列データを、加速度波形データとして読み込む。そして、データ評価機能は、読みだした加速度波形データに有意な振動加速度が含まれるか否かの評価を行う。なお、ステップS103のデータ評価処理は、ステップS102のデータ書き込み処理と並行して行なわれる。
【0036】
ステップS104では、処理装置21のデータ評価機能により、ステップS103における加速度波形データの評価結果に基づいて、加速度波形データに有意な振動加速度が含まれるか否かの判断が行われる。加速度波形データに有意な振動加速度が含まれると判断された場合には、ステップS105に進み、一方、加速度波形データに有意な振動加速度が含まれないと判断された場合は、ステップS106に進む。
【0037】
ステップS103およびS104における有意な振動加速度の判定方法について補足の説明をする。一定期間(たとえば10秒間)の加速度波形に有意な振動加速度が含まれるかどうかの判定方法は、たとえば次の手順で行う。
(1)XYZの各軸の加速度計測値について、期間平均値(Xave, Yave, Zave)を算出する。
(2)XYZの各軸について、読み込んだ全ての時系列加速度データと平均値の差の絶対値(abs(X - Xave), abs(Y - Yave), abs(Z - Zave))を算出し、絶対値の期間最大値(Xmax, Ymax, Zmax)を算出する。ここで、各軸の絶対値は、重力加速度の寄与のない振動加速度の大きさである。
(3)(Xmax + Ymax + Zmax)が予め設定した閾値を超える場合に、当該期間に有意な振動加速度が含まれていると判定する。
【0038】
ステップS105では、処理装置21のデータ保存機能により、有意な振動加速度が含まれると判断された加速度波形データが、記憶装置24に記憶される。具体的には、データ保存機能は、有意な振動加速度を含む期間の加速度波形データに、当該加速度波形データの取得が開始された時刻をタイムスタンプとして付与し、記憶装置24に記憶する。たとえば、
図6に示す例において、時刻n-1から時刻nまでに取得された加速度波形データを記憶装置24に記憶する場合、データ保存機能は、
図6に示すように、加速度波形データのファイル名に当該加速度波形データの取得が開始された時刻n-1を含ませることで、加速度波形データに時刻n-1のタイムスタンプを付与することができる。このような加速度波形データは、時刻n-1から時刻nまでの一定時間における加速度データであり、このように、一定時間における加速度データを1つの加速度波形データのファイルとして保存することで、後述するデータ処理を容易とすることができる。また、データ保存機能は、記憶装置24に加速度波形データを記憶するとともに、加速度波形データの送信順番をデータ送信キューに登録する。これにより、加速度波形データが時系列順に無線送信されることとなる。
【0039】
図5のステップS104において、加速度波形データに有意な振動加速度が含まれないと判断された場合は、ステップS106に進む。ステップS106では、処理装置21の傾斜角算出機能により、XYZの各軸の加速度波形データの平滑化処理が行われる。たとえば、傾斜角算出機能は、各軸方向の加速度波形データについて、移動平均などの平滑化処理(ローパスフィルター処理)を行うことができる。重力加速度は直流成分であるのに対し、微小な振動ノイズや3軸加速度センサー10の電気ノイズは交流成分であるため、このような平滑化処理を行うことで、ノイズの影響を大幅に低減することができる。
【0040】
ステップS107では、処理装置21の傾斜角算出機能により、ステップ104で有意な振動加速度を含まないと判定された期間のデータから、ステップ106で平滑化処理により有意な振動加速度とは判定されないレベルの微小な振動ノイズやセンサー自体の電気ノイズを除去したデータに基づいて、構造物の傾斜角の算出を行い、記憶装置24に記憶する。具体的には、傾斜角算出機能は、有意な振動加速度を含まないXYZ各方向における重力加速度計測データに基づいて、三角関数を用いた公知の方法により、構造物の各箇所における傾斜角を算出することができる。特に、本実施形態においては、ステップS104において有意な振動加速度を含まない計測データを選別し、さらに、ステップS106でノイズ低減処理を予め行うことにより、1/100°以下の分解能で傾斜角を算出することが可能となる。
【0041】
ステップS108では、処理装置21のデータ送信機能により、ステップS105で記憶装置24に記憶された加速度波形データおよびステップS107で算出された構造物の傾斜角データが、無線通信モジュール30を介して無線送信される。本実施形態において、データ送信機能は、ステップS105で登録した送信キューを参照し、取得された時期の古い加速度波形データから順に無線送信を行う。なお、上述したように、本実施形態における無線通信モジュール30は、マルチホップ通信を行っており、当該センサーユニット1で取得した加速度波形データおよび傾斜角データに加えて、下流のセンサーユニット1から受信した加速度波形データおよび傾斜角データも、上流のセンサーユニット1またはデータ収集ユニット2に無線送信を行う。
【0042】
ステップS109の処理は、データ収集ユニット2により行われる。ステップS109では、データ収集ユニット2の処理装置41により、構造物の複数の箇所に設置された複数のセンサーユニット1において計測された加速度波形データおよび傾斜角データが、記憶装置42に保存されると共に、回線通信装置44および電気通信回線4を介して、遠隔モニタリング装置3に送信される。
【0043】
ステップS110~S113の処理は、遠隔モニタリング装置3により行われる。まず、ステップS110では、遠隔モニタリング装置3の処理装置51のデータ受信機能により、データ収集ユニット2から送信された加速度波形データおよび傾斜角データの受信が行われる。そして、データ受信機能は、受信した加速度波形データおよび傾斜角データを、データベース53に記憶する。
【0044】
ステップS111では、処理装置51の加速度データ抽出機能により、データベース53を参照して、同時刻に取得された加速度データの抽出が行われる。本実施形態では、データ収集ユニット2から受信した加速度波形データには、加速度データの取得を開始した時刻のタイムスタンプが付与されており、加速度データ抽出機能は、当該タイムスタンプを参照することで、同じ構造物における複数の箇所で、同時刻に取得された複数の加速度データを抽出することができる。なお、ユーザは、遠隔モニタリング装置3の入力装置54を介して、ユーザが所望する時刻に取得された加速度データを抽出させることもできるし、また、遠隔モニタリング装置3が自動で最新の加速度データを抽出することもできる。
【0045】
ステップS112では、処理装置51の変位量算出機能により、構造物の各箇所における変位量の算出が行われる。たとえば、変位量算出機能は、構造物の各箇所に設置されたセンサーユニット1の経時的な変位量を算出することができる。これにより、構造物の各箇所においてどのような変位が生じているかをユーザに提示することができる。さらに、本実施形態において、変位量算出機能は、算出された同時刻の変位量データを比較することで、構造物の各箇所間の変位量の差を算出することもできる。これにより、構造物全体の歪みの状態をユーザに提示することができる。なお、本実施形態において、加速度データは3軸方向において測定されるため、変位量算出機能は各軸方向における変位量を算出することが可能である。
【0046】
ステップS113では、処理装置51の情報提示機能により、構造物の各箇所の加速度データ、変位量、傾斜角のいずれか1つ以上を含むモニタリング情報が、表示装置55のディスプレイに表示される。たとえば、情報提示機能は、モニタリングしている構造物のイラストを生成し、当該構造物のイラストに重畳して、構造物の対応箇所で測定された各センサーユニット1の加速度データ、およびそれに基づく変位量や傾斜角を、表示装置55に表示させることができる。
【0047】
なお、構造物の振動が継続する場合には、センサーユニット1で送信対象となる加速度波形データの量が多くなり、センサーユニット1が送信可能な送信量を上回ることもあるが、一時的に記憶装置24に送信対象の加速度波形データを記憶しておくことで、有意な振動加速度が収まった後に、全ての加速度波形データをデータ収集ユニット2へ送信することが可能となる。
【0048】
次に、
図7に基づいて、本実施形態に係る時刻同期処理について説明する。
図7は、本実施形態に係る時刻同期処理を示すフローチャートである。なお、
図7に示すように、ステップS201~S202の処理はデータ収集ユニット2で実行され、ステップS203~S205の処理は各センサーユニット1でそれぞれ実行される。また、
図5に示す振動モニタリング処理と同様に、
図7に示す時刻同期処理では、説明の便宜上、ステップS201~S205の処理を時系列に並べて説明するが、各処理はそれぞれ独自のサイクルで繰り返し行われており、また、異なる処理が並行して行われることもある。
【0049】
まず、ステップS201では、データ収集ユニット2の処理装置41により、データ収集ユニット2に内蔵する水晶時計45の時刻データが取得される。そして、ステップS202では、データ収集ユニット2の処理装置41により、無線通信装置43を介して、ステップS201で取得されたデータ収集ユニット2の時刻データが各センサーユニット1にマルチホップ通信により無線送信される。
【0050】
ステップS203では、センサーユニット1の処理装置21の時刻同期機能により、無線通信モジュール30の水晶時計33の時刻を、ステップS202で送信されたデータ収集ユニット2の時刻に同期する処理(第1の時刻同期処理)が行われる。たとえば、時刻同期機能は、10分間隔で、データ収集ユニット2から時刻データを受信することで、10分ごとに、無線通信モジュール30の水晶時計33の時刻を、データ収集ユニット2の時刻に同期することができる。
【0051】
ステップS204では、さらに、処理装置21の時刻同期機能により、処理モジュール20の水晶時計23の時刻を、ステップS203で同期させた無線通信モジュール30の水晶時計33の時刻に同期する処理(第2の時刻同期処理)が行われる。たとえば、時刻同期機能は、1分間隔で、無線通信モジュール30の水晶時計33の時刻データを取得することで、1分ごとに、処理モジュール20の水晶時計23の時刻を、無線通信モジュール30の時刻、言い換えれば、データ収集ユニット2の時刻に同期することができる。
【0052】
ステップS205では、処理装置21の記憶領域切替機能により、処理モジュール20の水晶時計23の時刻を基準として、第1記憶領域22Aと第2記憶領域22Bとにおいて、アクティブ領域とストア領域との切り替えが行われる。たとえば、本実施形態では、10秒ごとに、アクティブ領域とストア領域との切り替えが行われる。ここで、記憶領域切替機能は、当該10秒間の基準として、水晶時計23の時刻を利用する。この切替信号は、割り込み入力にて行われるため、アクティブ領域とストア領域との切り替えにソフトウェアによる揺らぎが生じない設計とされている。
【0053】
このように、本実施形態においては、同一構造物の複数の箇所に設置された複数のセンサーユニット1のそれぞれにおいて、センサーユニット1の処理モジュール20の水晶時計23の時刻を、データ収集ユニット2の時刻に同期させることができる。これにより、同一構造物の複数の箇所に設置された複数のセンサーユニット1間の時刻のずれを減少させることができるため、各センサーユニット1間で、実際に同時刻で取得した加速度データに、同時刻のタイムスタンプを付与することができる。これにより、遠隔モニタリング装置3において、構造物の複数の箇所において実際に同時刻に取得された加速度データを、同時刻で取得された加速度データとしてモニタリングすることができ、その結果、構造物の変位量を高い精度で検出することができる。
【0054】
特に、地震波の主な周波数成分は小さくとも10Hz程度あり、その周期は1/10秒程度となる。そのため、構造物の振動を高い精度でモニタリングするためには、センサーユニット間の時刻のずれ量は、さらにその1/10、すなわち、1/100秒以下とすることが要求される。原子時計などの高価な小型内蔵時計を除けば、優れた性能の水晶時計(水晶振動子)でも誤差は5ppm程度あり、1日で0.4秒の誤差が生じる。そのため、水晶時計の誤差を1/100秒以下で維持するためには、本実施形態に係るセンサーユニット1のように、センサーユニット1間の時刻の同期を行う必要があり、本実施形態では、定期的に同期を行うことで、時刻の誤差がほとんどなく、センサーユニット間で、同時刻に取得した加速度データに、同時刻のタイムスタンプを付与することができる。実際に上述した実施例では、センサーユニット間の時刻のずれ量を1/100秒以下とすることができた。
【0055】
また、処理モジュール20の処理装置21は、3軸加速度センサー10から加速度データを取得する処理、水晶時計23の時刻を同期させる処理、加速度波形データを評価し無線送信する処理など複数の処理を同時に行う必要があり、3軸加速度センサー10から加速度データを漏れなく取得しながら、水晶時計23の時刻を同期させる必要がある。本実施形態では、第1記憶領域22Aと第2記憶領域22Bとにおいて、アクティブ領域とストア領域とを一定時間ごとに切り替えて、アクティブ領域において加速度データの書き込みを行い、ストア領域においてデータ評価を行うことで、3軸加速度センサー10から加速度データを漏れなく取得しながらも、水晶時計23の時刻を同期させることが可能となった。
【0056】
また、本実施形態では、有意な振動加速度を含まない加速度波形データに基づいて、構造物の傾斜角の算出を行うことで、本来、振動モニタリングに利用されない加速度データを有効に利用することができる。また、傾斜角計測は、構造物の変位量計測のための加速度波形計測と並行して自動的に行われるため、構造物が時々刻々と傾いていく様子を高精度に計測することができ、特に地盤沈下によるビルの傾きのような、ゆっくりした傾斜の進行を高精度に計測することができる。また、本実施形態では、傾斜角を算出する場合に、各軸方向における加速度データの平滑化処理を行うことで、微小なノイズ振動や3軸加速度センサー10自体の電気ノイズの影響を抑制することができ、その結果、1/100°以下の分解能で、傾斜角を算出することができる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1…センサーユニット
10…3軸加速度センサー
11…電源装置
20…処理モジュール
21…処理装置
22A…第1記憶領域
22B…第2記憶領域
23…水晶時計
24…記憶装置
30…無線通信モジュール(無線通信装置)
31…無線通信処理装置
32…アンテナ
33…水晶時計
2…データ収集ユニット
41…処理装置
42…記憶装置
43…無線通信装置
44…回線通信装置
45…水晶時計
3…遠隔モニタリング装置(監視サーバ)
51…処理装置
52…受信装置
53…データベース
54…入力装置
55…表示装置
4…電気通信回線(インターネット)