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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】電波吸収体及び電波吸収用品
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20220414BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
H05K9/00 M
C08J9/04 CEQ
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017236928
(22)【出願日】2017-12-11
(65)【公開番号】P2019106421
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】317012868
【氏名又は名称】合同会社F-Plan
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】山本 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】石原 太一
(72)【発明者】
【氏名】郭 辰
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特公平02-009477(JP,B2)
【文献】特開2017-135189(JP,A)
【文献】特開平07-086783(JP,A)
【文献】特開2002-184916(JP,A)
【文献】特開2011-208123(JP,A)
【文献】特開2003-056093(JP,A)
【文献】特開2012-214625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
C08J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体を含む電波吸収体であって、
前記発泡体は、
エラストマーを含む母材と、
前記発泡体中に分散したナノカーボンと、
を備え、
前記ナノカーボンの含有量は、100質量部の前記母材に対し、5~45質量部であり、
前記エラストマーはシリコーンゴムであり、
前記ナノカーボンは、繊維長が1μm~500μmの気相成長炭素繊維であり、
圧縮率が20%であるときの前記電波吸収体の吸収ピーク周波数は、圧縮率が0%であるときの前記吸収ピーク周波数よりも、0.5GHz以上3.7GHz以下高周波側に移行している電波吸収体。
【請求項2】
請求項1に記載の電波吸収体であって、
前記気相成長炭素繊維は、直径が0.01μm~0.2μmであり、アスペクト比が10~500であるものである電波吸収体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電波吸収体と、
前記電波吸収体の少なくとも一部を圧縮する圧縮ユニットと、
を備える電波吸収用品。
【請求項4】
請求項に記載の電波吸収用品であって、
前記圧縮ユニットは、前記電波吸収体を圧縮する程度を変更可能に構成された電波吸収用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電波吸収体及び電波吸収用品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、効率化に伴い、電子部品から放出される電波による誤動作が問題になっている。その対策として、電波吸収体を電子機器に取り付けることが行われる。電波吸収体は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2005-521782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電波吸収体によって吸収する必要がある電波の周波数は、電波吸収体の用途に応じて異なる。しかしながら、従来の電波吸収体において、電波を吸収する効果が高い周波数帯域(以下では電波吸収帯域とする)は、固定された周波数帯域であった。そのため、従来は、用途ごとに異なる電波吸収体を用意しなければならなかった。
【0005】
本開示の一局面は、電波吸収帯域を変化させることができる電波吸収体及び電波吸収用品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面は、発泡体を含む電波吸収体であって、前記発泡体は、エラストマーを含む母材と、前記発泡体中に分散したナノカーボンと、を備え、前記ナノカーボンの含有量は、100質量部の前記母材に対し、5~45質量部である電波吸収体である。
【0007】
本開示の一局面である電波吸収体は、それを圧縮することで、電波吸収帯域を変化させることができる。また、本開示の一局面である電波吸収体は、それを圧縮した場合、電波吸収帯域が高周波側に変化するとともに、厚みが減少する。そのため、本開示の一局面である電波吸収体によれば、厚みが薄く、電波吸収帯域が高周波側にある電波吸収体を実現できる。
【0008】
本開示の別の局面は、本開示の一局面である電波吸収体と、前記電波吸収体の少なくとも一部を圧縮する圧縮ユニットと、を備える電波吸収用品である。本開示の別の局面である電波吸収用品は、圧縮ユニットにより、電波吸収体の少なくとも一部を圧縮することができる。そのため、本開示の別の局面である電波吸収用品によれば、電波吸収体の電波吸収帯域を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは、電波吸収用品1の構成を表す斜視図であり、図1Bは、電波吸収体3を圧縮していない状態における電波吸収用品1の構成を表す側面図であり、図1Cは、電波吸収体3を圧縮している状態における電波吸収用品1の構成を表す側面図である。
図2図2Aは、電波吸収体3及び金属板5を除く電波吸収用品101の構成を表す斜視図であり、図2Bは、電波吸収用品101の構成を表す斜視図である。
図3】実施例A1の反射損失の測定結果を表すグラフである。
図4】実施例A2の反射損失の測定結果を表すグラフである。
図5】実施例A3の反射損失の測定結果を表すグラフである。
図6】実施例A4の反射損失の測定結果を表すグラフである。
図7】比較例a1の反射損失の測定結果を表すグラフである。
図8】実施例B1の反射損失の測定結果を表すグラフである。
図9】実施例B1の反射損失の測定結果を表すグラフである。
図10】圧縮率と吸収バンドとの関係を表すグラフである。
図11】圧縮率と吸収バンドとの関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態を説明する。
1.電波吸収体
本開示の電波吸収体は発泡体を含む。電波吸収体の全体が発泡体であってもよいし、電波吸収体の一部が発泡体であってもよい。発泡体は母材を備える。母材はエラストマーを含む。エラストマーとして、例えば、スチレン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、合成ゴム等が挙げられる。スチレン系エラストマーとして、例えば、スチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンエチレンプロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレンゴム等が挙げられる。
【0011】
シリコーン系エラストマーとして、例えば、シリコーンゴム等が挙げられる。エラストマーとして、上記の例のうちの一種を単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
母材は、例えば、軟化剤をさらに含む。母材がスチレン系エラストマーを含む場合、軟化剤をさらに含むことが好ましい。軟化剤として、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等の炭化水素系プロセスオイルが挙げられる。炭化水素系プロセスオイルとして、パラフィン系プロセスオイル、又はナフテン系プロセスオイルを単独で用いてもよいし、それらを混合して用いてもよい。母材は、軟化剤以外の添加物(ただし、発泡剤、ナノカーボンを除く)をさらに含んでいてもよい。
【0013】
発泡体として、独立気泡を有する発泡体が好ましい。独立気泡を有する発泡体である場合、吸湿性が低くなり、吸湿に伴う特性変化を抑制できる。発泡体を形成する方法として、母材と、発泡剤とを配合し、発泡させる方法が挙げられる。発泡剤の配合量は、例えば、母材100質量部に対し、1~20質量部とすることができる。発泡剤の配合量が1質量部以上である場合、母材は発泡構造を形成する。発泡剤の配合量が20質量部以下である場合、発泡体は安定した形状が得られ、電波吸収帯域を変化させることが出来る。
【0014】
母材がスチレン系エラストマーを主成分とする場合、発泡剤の配合量は、母材100質量部に対し、1~10質量部とすることが好ましい。発泡体の発泡における発泡倍率は、例えば、1.45~3.6倍である。
【0015】
本開示の電波吸収体はナノカーボンを備える。ナノカーボンは、発泡体の中に分散している。ナノカーボンの含有量は、母材100質量部に対し、5~45質量部である。ナノカーボンの含有量が、母材100質量部に対し、5質量部以上であることにより、絶縁体の母材の抵抗値を半導体から導体の範囲に調整できることから、電波吸収帯域の設計が可能になり、電波を吸収できる様になる。
【0016】
ナノカーボンの含有量が、母材100質量部に対し、45質量部以下であることにより、母材とナノカーボンとを含む原料の混練が可能になる。母材がシリコーン系エラストマーを主成分とする場合、ナノカーボンの含有量は、母材100質量部に対し、5~25質量部であることが好ましい。
【0017】
ナノカーボンは特に限定されず、適宜選択して用いることができる。ナノカーボンとして、気相成長炭素繊維が好ましい。ナノカーボンが気相成長炭素繊維である場合、電波吸収体を圧縮したときにおける電波吸収帯域の変化量が一層大きくなる。
【0018】
気相成長炭素繊維の直径は、0.01μm~0.2μmが好ましい。気相成長炭素繊維の繊維長は1μm~500μmが好ましい。気相成長炭素繊維のアスペクト比は10~500が好ましい。気相成長炭素繊維の直径、繊維長、及びアスペクト比が上記の範囲内である場合、電波吸収体を圧縮したときにおける電波吸収帯域の変化量が一層大きくなる。
【0019】
電波吸収体の形態は特に限定されず、例えば、板状、円柱状、角柱状、球状、不規則形状等が挙げられる。
2.電波吸収用品
電波吸収用品は、本開示の電波吸収体と、前記電波吸収体の少なくとも一部を圧縮する圧縮ユニットとを備える。圧縮ユニットは、電波吸収体を圧縮する程度を変更可能に構成されることが好ましい。
【0020】
図1A図1Cに、本開示の一形態である電波吸収用品1を示す。電波吸収用品1は、板状の電波吸収体3と、金属板5と、一対の押圧板7、9と、ビス11と、ナット13と、を備える。
【0021】
電波吸収体3と金属板5とは重ねられている。一対の押圧板7、9は、電波吸収体3及び金属板5を両側から挟む。押圧板7、9の外周側には、それぞれ、複数の貫通孔15が形成されている。ビス11は、押圧板7の方から、押圧板7、9の貫通孔15に差し通されている。ナット13は、押圧板9の貫通孔15から飛び出したビス11に取り付けられている。押圧板9は、金属製の反射板で兼用できる。押圧板9が金属性の反射板の場合、押圧板7は入射側とし、電波を透過する絶縁性の樹脂やガラスで構成する。
【0022】
ナット13を締め込むことにより、押圧板7と押圧板9との間隔Dを小さくすることができる。ナット13を緩めると、間隔Dは広がる。
図1Cに示す状態は、図1Bに示す状態よりも、間隔Dが小さくなった状態である。図1Cに示すように、間隔Dを小さくすることで、電波吸収体3は圧縮される。間隔Dを小さくするほど、電波吸収体3の圧縮の程度は著しくなる。電波吸収用品1は、ナット13の締め込み量を変化させることにより、電波吸収体3を圧縮する程度を変更可能である。
【0023】
電波吸収体3が圧縮されると、電波吸収体3の電波吸収帯域が変化する。電波吸収体3の圧縮の程度が大きいほど、電波吸収帯域の変化量は大きい。電波吸収体3を一旦圧縮した後、ナット13を緩め、間隔Dを広げると、電波吸収体3は元の形態に復帰する。
【0024】
図2A図2Bに、本開示の別の形態である電波吸収用品101を示す。電波吸収用品101は、一対の押圧板7、9と、間隔調整治具17と、を備える。押圧板7、9の一方の端部付近には、それぞれ、1つの貫通孔15が形成されている。間隔調整治具17は、棒状の本体部19と、本体部19の一端に設けられたレバー21と、を備える。本体部19は、押圧板7の方から、押圧板7、9の貫通孔15に差し通されている。間隔調整治具17は、レバー21を一方に回転させると、押圧板7と押圧板9との間隔Dを小さくし、レバー21を反対の方向に回転させると、間隔Dを広げる機能を有する。
【0025】
一対の押圧板7、9は、電波吸収体3及び金属板5を両側から挟む。レバー21を一方に回転させ、間隔Dを小さくすることで、電波吸収体3は圧縮される。間隔Dを小さくするほど、電波吸収体3の圧縮の程度は著しくなる。電波吸収用品101は、レバー21の回転量を変化させることにより、電波吸収体3を圧縮する程度を変更可能である。
【0026】
電波吸収体3が圧縮されると、電波吸収体3の電波吸収帯域が変化する。電波吸収体3の圧縮の程度が大きいほど、電波吸収帯域の変化量は大きい。電波吸収体3を一旦圧縮した後、レバー21を反対の方向に回転させ、間隔Dを広げると、電波吸収体3は元の形態に復帰する。
【0027】
電波吸収用品1、101は、例えば、ビルの壁面、橋の橋脚等に取り付けることができる。電波吸収用品1、101は、それらを取り付けた後でも、間隔Dを変化させることにより、電波吸収体3の電波吸収帯域を変化させることができる。間隔Dを調整する機構は、様々な公知技術を利用できる。また、金属板5を使用せずに、押圧板7、9のどちらかを金属製の反射板で兼用できる。その場合、他方は入射側とし、電波を透過する絶縁性の樹脂やガラスで構成する。
【0028】
3.実施例
(3-1)実施例A1~A4、比較例a1の電波吸収体の製造
以下のようにして、実施例A1~A4、比較例a1の電波吸収体を製造した。下記の表1に示す様な配合比で、母材を構成するシリコーンゴムと、ナノカーボンと、発泡剤とを配合した。
【0029】
【表1】
上記表1中のナノカーボンは気相成長炭素繊維である。上記表1中のナノカーボンは、昭和電工株式会社製の市販品(品名:VGCF(登録商標)-H、平均繊維径150 nm、繊維長10μm)である。実施例A1~A3における発泡剤は、大日精化工業株式会社製の市販品(品名:ダイフォームH850D)である。実施例A4における発泡剤は、大日精化工業株式会社製の市販品(品名:ダイフォームH750D)である。
【0030】
上記の原料を、まず、脱泡ミキサーを用い、常温下で10分間撹拌混合した。次に、攪拌混合後の原料を所望の高さの型枠に流し込み、型枠ごと110℃の恒温槽内で5分間加熱した。このとき、シリコーンゴムの硬化が促進され、ゴム状に硬化した硬化体が得られた。次に、この硬化体を型枠から取り出して170℃の恒温槽に移し、10分間加熱した。この加熱により発泡剤の発泡が開始され、発泡構造体となった。
【0031】
以上の工程により、実施例A1~A4、比較例a1の電波吸収体が得られた。実施例A1~A4の電波吸収体は発泡体を含む。発泡体は、シリコーンゴムを含む母材と、発泡体中に分散したナノカーボンとを備える。実施例A1~A4、比較例a1の電波吸収体における発泡倍率及び密度は上記表1に示すとおりである。
【0032】
(3-2)実施例B1の電波吸収体の製造
以下のようにして、実施例B1の電波吸収体を製造した。下記の表2に示す様な配合比で、母材を構成するスチレン系エラストマー及び軟化剤と、ナノカーボンと、発泡剤とを配合した。
【0033】
【表2】
上記表2中のナノカーボンは気相成長炭素繊維である。上記表2中のナノカーボンは、昭和電工株式会社製の市販品(品名:VGCF(登録商標)-H、平均繊維径150 nm、繊維長10μm)である。発泡剤は、大日精化工業株式会社製の市販品(品名:ダイフォームH850D)である。
【0034】
上記の原料を、二軸押出機に投入し、混錬して押し出すことで、シート状の電波吸収体を得た。電波吸収体は発泡体である。二軸押出機は、Tダイ(シートダイ)を備える。Tダイ寸法は、幅160mm、厚み2mmである。Tダイ温度は140℃である。
【0035】
以上の工程により、実施例B1の電波吸収体が得られた。実施例B1の電波吸収体は、発泡体を含む。発泡体は、母材と、ナノカーボンとを備える。母材は、スチレン系エラストマー及び軟化剤を含む。ナノカーボンは発泡体中に分散している。実施例B1の電波吸収体における発泡倍率及び密度は上記表2に示すとおりである。
【0036】
(3-3)電波吸収特性(反射損失)の測定
電波吸収特性の測定システムは、HVSテクノロジーズ社(HVS Technologies,Inc.)製のフリー・スペース・マイクロ波測定システム(HVS Free Space Microwave Measurement System)を利用した。
【0037】
反射損失の測定方法は、自由空間法であって、JIS R 1679(垂直入射)に準拠する測定方法である。周波数の範囲は5.6GHz~75GHzである。
測定の手順は以下のとおりである。
【0038】
(i) ブランク値を測定するために、アルミから成る金属板のみをフリー・スペース・マイクロ波測定システムの測定サンプルホルダに設置して、S11を測定する。
(ii)上記(i)で使用した金属板と、サンプルとを重ねてサンプルホルダに設置する。
【0039】
(iii)サンプルの圧縮率Rを所定の値に調整する。なお、圧縮率Rとは、以下の式(1)で表される値である。圧縮率Rは、サンプルを圧縮する程度を表す。
【0040】
【数1】
式(1)においてdは、圧縮されていないときのサンプルの厚さである。dは測定の時点におけるサンプルの厚さである。d及びdは、金属板の厚さを含まない値である。
圧縮率Rの単位は%である。
【0041】
(iv)S11を測定する。
(v)上記(i)で測定したS11から、上記(iv)で測定したS11を差し引き、反射損失を算出する。
【0042】
上記(i)~(v)の手順を、サンプルの圧縮率Rを変えながら、繰り返し行った。実施例A1についての測定結果を図3に示す。実施例A2についての測定結果を図4に示す。実施例A3についての測定結果を図5に示す。実施例A4についての測定結果を図6に示す。比較例a1についての測定結果を図7に示す。実施例B1についての測定結果を図8及び図9に示す。
【0043】
それぞれの測定結果では、電波吸収体を圧縮しない場合と、所定の圧縮率Rで圧縮した場合との反射損失を示す。図9において「厚さ2倍」とは、電波吸収体を圧縮しないで、厚さを2倍にした場合の反射損失を示す。
【0044】
図3図6、及び図8に示す様に、本実施例の電波吸収体を圧縮させると、吸収帯域が高周波側に移行することが分かる。図3図7とから、発泡剤を添加することで、移行する吸収帯域の幅が大きくなることが分かる。図3図4とから、発泡剤が多いほど、吸収ピーク周波数は高周波側となり、反射損失量が多くなることが分かる。図3図5とから、ナノカーボンが多いほど、吸収ピーク周波数は低周波側となり、反射損失量が多くなることが分かる。図3図6とから、発泡倍率を上げると、吸収ピーク周波数は高周波側となり、反射損失量が多くなることが分かる。
【0045】
図8及び図9は、JIS R 1679(垂直入射)に準拠して測定した反射損失を示す。図8から、圧縮すると、電波吸収帯域が高周波側に変化することが分かる。図9から、圧縮しないで厚さを2倍にすると、電波吸収帯域が低周波側に変化することが分かる。
実施例A1、A2、A3、A4、比較例a1について、圧縮率を変化させて吸収帯域を測定した。その結果を表3、図10に示す。また、実施例B1について、圧縮率を変化させて吸収帯域を測定した。その結果を表4、図11に示す。
【表3】
【表4】
上記の試験結果から、電波吸収体を圧縮させると、吸収帯域が高周波側に移行することが分かった。
4.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0046】
(1)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0047】
(2)上述した電波吸収体、電波吸収用品の他、当該電波吸収体を構成要素とする電子機器、電波吸収方法、電波吸収体の製造方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1、101…電波吸収用品、3…電波吸収体、5…金属板、7、9…押圧板、11…ビス、13…ナット、15…貫通孔、17…間隔調整治具、19…本体部、21…レバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11