(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】光エネルギー線硬化型粘土組成物、光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法および造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20220414BHJP
G09B 19/10 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
C08F290/06
G09B19/10 D
(21)【出願番号】P 2019111675
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592196123
【氏名又は名称】株式会社パジコ
(73)【特許権者】
【識別番号】390028048
【氏名又は名称】根上工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆士
(72)【発明者】
【氏名】石田 久憲
(72)【発明者】
【氏名】畠中 瑞生
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-331091(JP,A)
【文献】特開昭54-117588(JP,A)
【文献】特開2000-219804(JP,A)
【文献】特開2018-057590(JP,A)
【文献】特開2013-163819(JP,A)
【文献】特開2004-359843(JP,A)
【文献】特開2015-108093(JP,A)
【文献】特開2016-186039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290、299
C08G18,59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ウレタンアクリレートと、
(b)希釈剤と、
(c)光開始剤と、
を含有する光エネルギー線硬化型粘土組成物であって、
前記ウレタンアクリレートは、
水酸基を2個以上持ち、分子量300以下の第1化合物と、
脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている第2化合物と、
アクリレートまたはメタアクリレートと、活性水素とを持つ第3化合物と、
の反応生成物
であって、前記第1化合物、前記第2化合物、前記第3化合物の順番に、それらの混合割合(重量比)が、1:4.2~5.0:2.5~8.3であり、
前記希釈剤は、アクリレートまたはメタアクリレートのモノマー
であり、
前記光開始剤は、アシルホスフィンオキサイド系の光開始剤である、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項2】
請求項1記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
前記希釈剤が、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートおよび/または1,9-ノナンジオールジメタクリレートである、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
前記第1化合物は、炭素数が2以上6以下の脂肪族、炭素数6以上の脂環または芳香族構造が含まれている、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項4】
請求項3記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
前記第3化合物は、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を1個以上6個以下有する化合物である、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項5】
請求項4記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
前記反応生成物の重量平均分子量は、2000以上8000以下である、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項6】
請求項5記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
前記希釈剤の割合は、5重量%以上60重量%以下である、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項7】
請求項6記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
香料を含有する、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項8】
請求項6記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
ブルーイング剤を含有する、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項9】
請求項6記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
シリカを含有する、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項10】
請求項6記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物において、
光透過性を有する、光エネルギー線硬化型粘土組成物。
【請求項11】
(a)水酸基を2個以上持つ第1化合物と、アクリレートまたはメタアクリレートと、活性水素とを持つ第3化合物と、希釈剤と、を混合する工程、
(b)(a)工程の後、脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている第2化合物を添加する工程と、
を有し、
前記第1化合物、前記第2化合物、前記第3化合物の順番に、それらの混合割合(重量比)を、1:4.2~5.0:2.5~8.3として、前記第1化合物と、前記第2化合物と、前記第3化合物との反応によりウレタンアクリレートが形成され、
前記希釈剤は、アクリレートまたはメタアクリレートのモノマー
であり、
前記開始剤は、アシルホスフィンオキサイド系の光開始剤である、光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法において、
前記希釈剤が、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートおよび/または1,9-ノナンジオールジメタクリレートである、光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法。
【請求項13】
光エネルギー線硬化型粘土組成物を準備する工程、
前記光エネルギー線硬化型粘土組成物を加工し、粘土造形物を形成する工程、
前記粘土造形物に光エネルギーを照射することにより、粘土造形物を硬化させ、造形物を形成する工程、
を有し、
前記光エネルギー線硬化型粘土組成物は、
(a)ウレタンアクリレートと、
(b)希釈剤と、
(c)光開始剤と、
を含有し、
前記ウレタンアクリレートは、
水酸基を2個以上持ち、分子量300以下の第1化合物と、
脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている第2化合物と、
アクリレートまたはメタアクリレートと、活性水素とを持つ第3化合物と、
の反応生成物
であって、前記第1化合物と、前記第2化合物、前記第3化合物の順番に、それらの混合割合(重量比)が、1:4.2~5.0:2.5~8.3であり、
前記希釈剤は、アクリレートまたはメタアクリレートのモノマー
であり、
前記開始剤は、アシルホスフィンオキサイド系の光開始剤である、造形物の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の造形物の製造方法において、
前記希釈剤が、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートおよび/または1,9-ノナンジオールジメタクリレートである、造形物の製造方法。
【請求項15】
請求項13記載の造形物の製造方法において、
前記光エネルギーは、紫外線である、造形物の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の造形物の製造方法において、
前記紫外線は、LED-UVである、造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光エネルギー線硬化型粘土組成物、光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法および造形物の製造方法に関し、特に、アクセサリなどを自作するための光エネルギー線硬化型粘土組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル系の光硬化型樹脂は、ネックレス、ペンダント、ブローチ、キーホルダーなどのアクセサリを自作するための樹脂として市販されている。
また、特許文献1には、凹形状の主成形面と前記主成形面が開口する主開口部とが設けられた成形型に成形材料を供給し、前記主成形面に対応した凸形状の主表面および前記主開口部に対応する主背面を備えた主アクセサリ部を成形する成形工程と、前記主アクセサリ部の外部に突出する丸環部、前記主アクセサリ部に埋め込まれる埋設部、および前記埋設部と前記丸環部との間に前記丸環部に対して傾斜して設けられ前記主背面を貫通する傾斜連結部を備えたヒートンを前記成形型に配置する配置工程と、前記主アクセサリ部を硬化させて前記ヒートンを前記主アクセサリ部に固定する硬化工程と、を有するアクセサリの製造方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、光輝感に優れた塗膜を形成することが可能なメタリック塗料である不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)、有機溶剤および光輝材を含有して成るメタリック塗料組成物であって、該不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)が2以上の活性水素を有する分子量300以下の化合物(A)と脂環式または芳香族のポリイソシアネート化合物(B)と活性水素を有する(メタ)アクリレート化合物(C)との反応生成物であり、分子内にウレタン結合および(メタ)アクリロイル基を持ち、3000以上の分子量および2以上の不飽和基を有することを特徴とする組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018- 57590号公報
【文献】特開2010-209276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、成形型の凹部にアクリル系光硬化樹脂よりなるレジン液を供給し、レジン液を硬化させることにより、凹部の形状に対応したアクセサリを自作可能なレジン液を開発している。
【0006】
このようなレジン液は、アクセサリの自作用途として非常に有用なものであり、多くの顧客から支持され、愛用されているものであるが、液状であるため成形型を準備する必要があり、例えば、粘土のように素手で触り造形することができない。
【0007】
そこで、紫外線などの光エネルギー線硬化型でありながら、素手で触り、容易に造形することができる粘土状である粘土組成物の開発が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態に記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物は、(a)ウレタンアクリレートと、(b)希釈剤と、(c)光開始剤と、を含有する光エネルギー線硬化型粘土組成物であって、前記ウレタンアクリレートは、水酸基を2個以上持つ第1化合物と、脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている第2化合物と、アクリレートまたはメタアクリレートと、活性水素とを持つ第3化合物との反応生成物であり、前記希釈剤は、アクリレートまたはメタアクリレートのモノマーである。
【0009】
例えば、前記ウレタンアクリレートの重量平均分子量は、2000以上8000以下である。
【0010】
例えば、前記希釈剤の割合は、5重量%以上60重量%以下である。
【0011】
例えば、光エネルギー線硬化型粘土組成物は、香料を含有する。
【0012】
例えば、光エネルギー線硬化型粘土組成物は、ブルーイング剤を含有する。
【0013】
例えば、光エネルギー線硬化型粘土組成物は、シリカを含有する。
【0014】
例えば、光エネルギー線硬化型粘土組成物は、光透過性を有する。
【0015】
本発明の一実施の形態に記載の光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法は、(a)水酸基を2個以上持つ第1化合物と、アクリレートまたはメタアクリレートと、活性水素とを持つ第3化合物と、希釈剤と、を混合する工程、(b)(a)工程の後、脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている第2化合物を添加する工程と、を有し、前記第1化合物と、前記第2化合物と、前記第3化合物との反応によりウレタンアクリレートが形成され、前記希釈剤は、アクリレートまたはメタアクリレートのモノマーである。
【0016】
本発明の一実施の形態に記載の造形物の製造方法は、光エネルギー線硬化型粘土組成物を準備する工程、前記光エネルギー線硬化型粘土組成物を加工し、粘土造形物を形成する工程、前記粘土造形物に光エネルギーを照射することにより、粘土造形物を硬化させ、造形物を形成する工程、を有し、前記光エネルギー線硬化型粘土組成物は、(a)ウレタンアクリレートと、(b)希釈剤と、(c)光開始剤と、を含有し、前記ウレタンアクリレートは、水酸基を2個以上持つ第1化合物と、脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている第2化合物と、アクリレートまたはメタアクリレートと、活性水素とを持つ第3化合物との反応生成物であり、前記希釈剤は、アクリレートまたはメタアクリレートのモノマーである。
【0017】
例えば、前記光エネルギーは、紫外線である。
【0018】
例えば、前記紫外線は、LED-UVである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光エネルギー線硬化型粘土組成物によれば、粘土組成物の特性を向上させることができる。また、この粘土組成物を用いて加工された造形物の特性を向上させることができる。
【0020】
本発明の光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法によれば、特性の良好な粘土組成物を製造することができる。
【0021】
本発明の造形物の製造方法によれば、特性の良好な造形物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図6】透明粘土の造形工程を示す図(写真)である。
【
図7】透明粘土の造形工程を示す図(写真)である。
【
図8】透明粘土の造形工程を示す図(写真)である。
【
図9】透明粘土の造形工程を示す図(写真)である。
【
図10】透明粘土の造形工程を示す図(写真)である。
【
図11】透明粘土の造形工程を示す図(写真)である。
【
図12】透明粘土の造形工程を示す図(写真)である。
【
図13】透明粘土の造形工程を示す図(写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
以下に、本実施の形態の光エネルギー線硬化型粘土組成物について説明する。ここでは、光エネルギー線として紫外線を用い、また、光透過性を有し、透明であるため、紫外線硬化性透明粘土組成物(単に、透明粘土組成物、透明粘土とも言う)として以下に説明する。このような、紫外線硬化性透明粘土組成物は、家庭用のものとして、簡易なLED-UV装置を用いて、硬化させることができ、容易に造形物を形成することができる。
【0024】
<透明粘土組成物>
本実施の形態の紫外線硬化性透明粘土組成物は、ウレタンアクリレートと、モノマー(希釈剤)と、光開始剤とを有する。
【0025】
本実施の形態のウレタンアクリレートは、例えば、以下の構成を有する。
【0026】
-アクリレート-イソシアネート-ポリオール-イソシアネート-アクリレート-
このようなウレタンアクリレートは、ポリオールの構造および分子量、イソシアネートの種類、アクリレートの種類、アクリロイル基の数などにより、その特性が変化する。アクリレートはメタアクリレートでもよい。
【0027】
このようなウレタンアクリレートは、水酸基を2個以上持つ化合物Aと、脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている化合物Bと、アクリレートまたはメタアクリレートと、活性水素とを持つ化合物Cとの反応生成物として得ることができる。
【0028】
化合物Aは水酸基を2個以上持つ化合物であればよい。例えば、シクロヘキシルジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノールなどの多価脂環式アルコール類;エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、3-メチル-1.5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1.8-オクタンジオールなどの多価脂肪族アルコール類などが挙げられる。
【0029】
特に、分子量300以下の化合物、より具体的には、炭素数が2以上6以下の脂肪族、炭素数6以上の脂環または芳香族構造が含まれているものを用いることが好ましい。
【0030】
化合物Bは脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている化合物であれば良い。例えば、トリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)メチルシクロヘキサン-2,4(又は2,6)-ジイソシアネート、1,3-(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート重合体、ジフェニルメタンジイソシアネート重合体などを挙げることができる。
【0031】
化合物Cは、アクリレートまたはメタクリレートであって、活性水素(-OH中の水素)を持つ化合物であれば良い。別の言い方をすれば、アクリロイル基(H2C=CH-C(=O)-)またはメタクリロイル基を有し、かつ、活性水素(-OH中の水素)を有する化合物である。
【0032】
例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、2-ヒドロキシ-1-アクリロキシ-3-メタクリレートなどのヒドロキシアクリレート;プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,7-ヘプタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物などが挙げられる。
【0033】
また、その他にもネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物などが挙げられる。
【0034】
例えば、化合物Cとしては、アクリロイル基またはメタクリロイル基を1~6個有するものを用いることができる。このような基は、架橋結合の起点となり、基の数を制御することで、紫外線硬化物の硬度を調整することができる。例えば、基の数を1、2個程度とすることで、紫外線硬化物を柔らかくすることができる。また、基の数を4個以上とすることで、紫外線硬化物を硬くすることができる。
【0035】
本実施の形態の希釈剤(モノマー)としては、アクリレートまたはメタクリレートのモノマーを用いることができる。このモノマーは、ウレタンアクリレートに組み込まれるモノマーではない。
【0036】
アクリレートまたはメタクリレートとしては、例えば、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N-ビニルカプロラクタム、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコ
ール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリ
レート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ
)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレン
グリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テ
トラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロキエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートなどを用いることができる。このような希釈剤(モノマー)としてのアクリレートまたはメタクリレートは、化合物Cと異なり、可塑性の付与を目的とするものである。
【0037】
本実施の形態の光開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad184)、2-メチル-2-モルフォリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド(Speedcure TPO)、メチルベンゾイルホルメート(OmniradMBF)、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ヒドロキシベンゾフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-S-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロ)-S-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4、6-ビス(トリクロロメチル)-S-トリアジン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノン(Omnirad 2959)、鉄-アレン錯体、チタノセン化合物などが挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
【0038】
なお、本実施の形態の紫外線硬化型透明粘土組成物には、その他、触媒、禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、染料、顔料、消泡剤、無機フィラー、有機フィラー、架橋剤等を含有させることができる。
【0039】
また、粘土組成物を構成する上記具体的材料は、単独で用いても良く、また、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0040】
また、本実施の形態の紫外線硬化型透明粘土組成物は、成形後、光エネルギー線(紫外線(UV)、LED-UV等)で硬化させることができる。例えば、UVライト(株式会社パジコ社製)、UV-LEDハンディライト(株式会社パジコ社製)などを用いて、本実施の形態の紫外線硬化型透明粘土組成物を硬化させることができる。例えば、UV-LEDの照射領域は、30~180cm2、出力(強度)は、5~15W、照射時間は、30~240秒程度である。また、照射部の高さ(ライトから床面までの距離)3cm~6cm秒程度である。また、本実施の形態の紫外線硬化型透明粘土組成物は、太陽光により硬化させることもできる。
(実施例)
以下、実施例を通じて本実施の形態をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
<紫外線硬化型透明粘土組成物の合成>
化合物Aとしてのエチレングリコールと、化合物Cとしてのペンタエリスリトールトリアクリレートと、希釈剤(モノマー)とを表1、2に示す配合で混合した。
【表1】
【表2】
【0042】
次いで、化合物Bとしてのイソホロンジイソシアネートを添加し、70℃で15時間撹拌し、化合物A、B、Cの反応によりウレタンアクリレートを生成した。化合物A、B、Cの混合割合(重量)は、1:4.2~5.0:2.5~8.3程度であった。
【0043】
得られた組成物は、透明の粘土状であり、容易に成形可能な透明粘土であった。また、ウレタンアクリレートの重量平均分子量は、2000以上8000以下であった。
【0044】
<硬化物の形成>
表1、表2に示す配合で形成された透明粘土を成形し、LED-UVを照射し、硬化物を得た。透明粘土および硬化物について以下の評価を行った。
【0045】
<使用材料>
IBXA:イソボルニルアクリレート
FA-511AS:ジシクロペンテニルアクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
HPMA:2-ヒドロキシプロピルメタクリレート
MEDOL-10:(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート
NOD-N:1,9-ノナンジオールジメタクリレート
Omnirad184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
Omnirad 2959:1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノン
OmniradMBF:メチルベンゾイルホルメート
Speedcure TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド
なお、ブルーイング剤とは、青色系顔料を使用した光学的増白剤である。
【0046】
<評価>
(1)粘土性
透明粘土について、容易に手で加工可能であり粘土性がよいものを「○」、固く加工性が悪いもの、または、液状に近く加工性が悪いものを「×」とし、これらの間の感触のものを「△」とした。
(2)臭気
透明粘土の臭いを嗅いで、臭いがほとんど認められないものを「○」、臭いが認められるが、加工に差しさわりのない程度のものを「△」、臭いが強いものを「×」とした。
(3)黄変
透明粘土について、黄変がほとんど認められないものを「○」、黄変が僅かに認められるものを「△」、黄変が強いものを「×」とした。
(4)べたつき(タック)
透明粘土の表面を指で触わる指触評価を実施し、べたつきが全く認められないものを「○」、明らかにべたつきが認められるものを「×」とし、これらの間の感触のものを「△」とした。
(5)硬化性(べたつき(タック))
LED-UVの照射後の硬化物の表面を指で触わる指触評価を実施し、べたつきが全く認められず、硬化性が良いものを「○」、明らかにべたつきが認められ、硬化性が低いものを「×」とし、これらの間の感触のものを「△」とした。
【0047】
(実施例1)
上記ウレタンアクリレートを60重量部、モノマーとしてIBXAを40重量部、光開始剤としてOmnirad 184を5重量部、混合し、透明粘土1を得た。透明粘土1は、粘土性○、臭気△、黄変△、べたつき○であった。
【0048】
次いで、透明粘土1を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0049】
(実施例2)
上記ウレタンアクリレートを60重量部、モノマーとしてIBXAを40重量部、光開始剤としてOmnirad 184を5重量部、ミント香料0.2重量部、混合し、透明粘土2を得た。透明粘土2は、粘土性○、臭気△、黄変△、べたつき○であった。
【0050】
次いで、透明粘土2を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0051】
(実施例3)
上記ウレタンアクリレートを60重量部、モノマーとしてFA-511ASを40重量部、光開始剤としてOmnirad 184を5重量部、混合し、透明粘土3を得た。透明粘土3は、粘土性○、臭気△、黄変△、べたつき○であった。
【0052】
次いで、透明粘土3を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0053】
(実施例4)
上記ウレタンアクリレートを60重量部、モノマーとして、IBXAを40重量部およびHEMAを4重量部、光開始剤としてOmnirad 2959を2重量部、混合し、透明粘土4を得た。透明粘土4は、粘土性○、臭気△、黄変△、べたつき○であった。
【0054】
次いで、透明粘土4を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0055】
(実施例5)
上記ウレタンアクリレートを60重量部、モノマーとして、IBXAを40重量部およびHPMAを5重量部、光開始剤としてOmnirad 2959を2重量部、混合し、透明粘土5を得た。透明粘土5は、粘土性○、臭気△、黄変△、べたつき○であった。
【0056】
次いで、透明粘土5を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0057】
(実施例1~5について)
上記のとおり、実施例1~5の粘土組成物については、臭気、黄変について、若干の改善の余地があるものの、粘土組成物として良好なものが得られ、その硬化物(成形品)も良好であった。
【0058】
(実施例6)
上記ウレタンアクリレートを70重量部、モノマーとしてMEDOL-10を30重量部、光開始剤としてOmnirad 2959を2重量部、混合し、透明粘土6を得た。透明粘土6は、粘土性○、臭気○、黄変△、べたつき○であった。
【0059】
次いで、透明粘土6を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0060】
(実施例7A)
上記ウレタンアクリレートを70重量部、モノマーとしてNOD-Nを30重量部、光開始剤としてOmnirad 2959を2重量部、混合し、透明粘土7Aを得た。透明粘土7Aは、粘土性○、臭気○、黄変△、べたつき○であった。
【0061】
次いで、透明粘土7Aを造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0062】
(実施例7B)
上記ウレタンアクリレートを70重量部、モノマーとしてNOD-Nを30重量部、光開始剤として、Omnirad 184を2重量部およびOmnirad 2959を2重量部、混合し、透明粘土7Bを得た。透明粘土7Bは、粘土性○、臭気○、黄変△、べたつき○であった。
【0063】
次いで、透明粘土7Bを造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0064】
(実施例8)
上記ウレタンアクリレートを70重量部、モノマーとして、MEDOL-10を20重量部およびNOD-Nを10重量部、光開始剤としてOmnirad 2959を2重量部、混合し、透明粘土8を得た。透明粘土7Aは、粘土性○、臭気○、黄変△、べたつき○であった。
【0065】
次いで、透明粘土8を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0066】
(実施例8M)
上記ウレタンアクリレートを70重量部、モノマーとして、MEDOL-10を20重量部およびNOD-Nを10重量部、光開始剤としてOmnirad 2959を2重量部、ミント香料を1重量部、混合し、透明粘土8Mを得た。透明粘土8Mは、粘土性○、臭気○、黄変△、べたつき○であった。
【0067】
次いで、透明粘土8Mを造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0068】
(実施例8MB)
上記ウレタンアクリレートを70重量部、モノマーとして、MEDOL-10を20重量部およびNOD-Nを10重量部、光開始剤としてOmnirad 2959を2重量部、ミント香料を1重量部、スミプラストバイオレットB(ブルーイング剤)を0.0001重量部、混合し、透明粘土8MBを得た。透明粘土8MBは、粘土性○、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0069】
次いで、透明粘土8Mを造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0070】
(実施例6~8、8M、8MBについて)
上記のとおり、実施例6~8、8M、8MBの粘土組成物については、臭気が改善し、実施例1~5と比較し、より良好な粘土組成物が得られた。また、その硬化物(成形品)も良好であった。さらに、実施例8MBについては、臭気のみならず、黄変も改善した。
【0071】
(実施例9)
上記ウレタンアクリレートを70重量部、モノマーとして、MEDOL-10を30重量部およびNOD-Nを5重量部、光開始剤としてOmnirad 2959を2重量部、混合し、透明粘土9を得た。透明粘土9は、粘土性○、臭気○、黄変△、べたつき○であった。
【0072】
次いで、透明粘土9を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0073】
(実施例10)
上記ウレタンアクリレートを70重量部、モノマーとして、MEDOL-10を30重量部およびNOD-Nを10重量部、光開始剤としてOmnirad 2959を2重量部、混合し、透明粘土10を得た。透明粘土10は、粘土性○、臭気○、黄変△、べたつき○であった。
【0074】
次いで、透明粘土10を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0075】
(実施例10M)
上記ウレタンアクリレートを70重量部、モノマーとして、MEDOL-10を30重量部およびNOD-Nを10重量部、光開始剤としてOmnirad 2959を2重量部、ミント香料を1重量部、混合し、透明粘土10Mを得た。透明粘土10Mは、粘土性○、臭気○、黄変△、べたつき○であった。
【0076】
次いで、透明粘土10Mを造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0077】
(実施例10MB)
上記ウレタンアクリレートを70重量部、モノマーとして、MEDOL-10を30重量部およびNOD-Nを10重量部、光開始剤としてOmnirad 2959を2重量部、ミント香料を1重量部、スミプラストバイオレットB(ブルーイング剤)を0.0001重量部、混合し、透明粘土10MBを得た。透明粘土10MBは、粘土性○、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0078】
次いで、透明粘土10MBを造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性△であったが、成形品としては問題ないものであった。
【0079】
(実施例9、10、10M、10MBについて)
上記のとおり、実施例9、10、10M、10MBの粘土組成物については、臭気が改善し、実施例1~5と比較し、より良好な粘土組成物が得られた。また、その硬化物(成形品)も良好であった。さらに、実施例10MBについては、臭気のみならず、黄変も改善した。
【0080】
(実施例11B1)
上記ウレタンアクリレートを60重量部、モノマーとして、MEDOL-10を40重量部、光開始剤としてOmnirad MBFを0.5重量部、スミプラストバイオレットB(ブルーイング剤)を0.0001重量部、混合し、透明粘土11B1を得た。透明粘土11Bは、粘土性○、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0081】
次いで、透明粘土11B1を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0082】
(実施例11B2)
上記ウレタンアクリレートを60重量部、モノマーとしてMEDOL-10を40重量部、光開始剤としてOmnirad MBFを0.5重量部、スミプラストバイオレットB(ブルーイング剤)を0.0002重量部、混合し、透明粘土11B2を得た。透明粘土11B2は、粘土性○、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0083】
次いで、透明粘土11B2を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0084】
(実施例11S)
上記ウレタンアクリレートを60重量部、モノマーとしてMEDOL-10を40重量部、光開始剤としてSpeedcure TPOを1重量部、シリカを10重量部、混合し、透明粘土11Sを得た。透明粘土11Sは、粘土性○、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0085】
次いで、透明粘土11Sを造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0086】
(実施例12)
上記ウレタンアクリレートを60重量部、モノマーとして、MEDOL-10を30重量部およびNOD-Nを10重量部、光開始剤として、Omnirad 2959を2重量部およびOmnirad MBFを1重量部、スミプラストバイオレットB(ブルーイング剤)を0.0002重量部、混合し、透明粘土12を得た。透明粘土12は、粘土性○、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0087】
次いで、透明粘土12を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0088】
(実施例13)
上記ウレタンアクリレートを60重量部、モノマーとして、MEDOL-10を40重量部およびNOD-Nを5重量部、光開始剤として、Omnirad 2959を2重量部およびOmnirad MBFを1重量部、スミプラストバイオレットB(ブルーイング剤)を0.0002重量部、混合し、透明粘土13を得た。透明粘土13は、粘土性○、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0089】
次いで、透明粘土13を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0090】
(実施例11B1、11B2、11S、12、13について)
上記のとおり、実施例11B1、11B2、11S、12、13の粘土組成物については、臭気および黄変が改善し、実施例1~5と比較し、より良好な粘土組成物が得られた。また、硬化性も改善し、その硬化物(成形品)は良好であった。
【0091】
(実施例14)
上記ウレタンアクリレートを70重量部、モノマーとしてMEDOL-10を30重量部、光開始剤としてSpeedcure TPOを1重量部、混合し、透明粘土14を得た。透明粘土14は、粘土性○、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0092】
次いで、透明粘土14を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0093】
(実施例15)
上記ウレタンアクリレートを70重量部、モノマーとして、MEDOL-10を5重量部およびNOD-Nを30重量部、光開始剤として、Omnirad 2959を2重量部およびSpeedcure TPOを2重量部、混合し、透明粘土15を得た。透明粘土15は、粘土性○、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0094】
次いで、透明粘土15を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0095】
(実施例16)
上記ウレタンアクリレートを70重量部、モノマーとして、MEDOL-10を10重量部およびNOD-Nを30重量部、光開始剤として、Omnirad 2959を2重量部およびSpeedcure TPOを2重量部、混合し、透明粘土16を得た。透明粘土16は、粘土性○、臭気○、黄変○、べたつき○であった。
【0096】
次いで、透明粘土16を造形し、LED-UVを照射したところ、造形形状に対応した硬化物(成形品)を得ることができた。硬化性○であった。
【0097】
(実施例14~16について)
上記のとおり、実施例14~16の粘土組成物については、臭気および黄変が改善し、実施例1~5と比較し、より良好な粘土組成物が得られた。また、硬化性も改善し、その硬化物(成形品)は良好であった。特に、実施例14~16は、硬化性において、実施例11B1、11B2、11S、12、13より良好(硬化性◎)であった。
【0098】
(他の実施例)
上記実施例1~16においては、ウレタンアクリレートを合成する化合物Aとしてエチレングリコールを用いたが、化合物Aとしてシクロヘキサンジメタノールを用いた場合についても、上記実施例14~16等と同様に粘土組成物および硬化物を形成することができた。このように、化合物Aとしてシクロヘキサンジメタノールを用いた場合にも、上記実施例14~16と同等の効果を確認することができた。
【0099】
(考察)
このように、ウレタンアクリレートをモノマー中で合成することにより、ウレタン樹脂間にモノマーが介在し、固形でありながら、手で加工可能な粘土性を有する組成物を形成することができる。
【0100】
組成物中のモノマーの割合は、5重量%以上60重量%以下であり、より好ましくは20重量%以上40重量%以下である。
【0101】
また、上記実施例から、臭気については、MEDOL-10やNOD-Nなどのモノマーを用いることで改善することが判明した。
【0102】
また、黄変については、ブルーイング剤を用いることで改善することが判明した。
【0103】
また、硬化性については、Speedcure TPOのようなアシルホスフィンオキサイド系の光開始剤を用いることで改善することが判明した。さらにSpeedcure TPOのようなアシルホスフィンオキサイド系の光開始剤を用いた場合、ブルーイング剤を用いることなく、黄変も改善することが判明した。
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1で説明した粘土組成物(透明粘土)の使用方法について説明する。
【0104】
図1~
図3は、透明粘土を造形する方法(硬化物の製造方法)を示す図である。
【0105】
図1(a)に示す透明粘土10を遮光袋から取り出し、
図1(b)に示すように、造形物10a、10b、10cを形成する。造形物10a、10bは、例えば、キャンディを模したキューブ状の造形物である。このような造形物には、着色剤(例えば、市販の星の雫着色剤)を添加することで、有色透明の造形物を形成することができる。造形物10cは、シート状の造形物であり、のし棒などを用いて薄いシート状に成型することができる。
【0106】
次いで、
図2(a)に示すように、シート状の造形物10c上に、キューブ状の造形物10a、10bを配置し、キューブ状の造形物10a、10bを巻き込むように、シート状の造形物10cを筒状に成型する。
【0107】
次いで、
図2(b)に示すように、筒状のシート状の造形物10cの両端をねじることにより、キューブ状の造形物10a、10bをシート状の造形物10cで包み込む。即ち、キューブ状の造形物10a、10bをシート状の造形物10cで、いわゆる、キャンディ包みする。このようにして、造形物(作品)11を形成することができる。なお、この造形物11は、硬化前の変形可能な粘土状の造形物(粘土造形物)である。
【0108】
次いで、
図3に示すように、LED-UV装置20を用いて、造形物10a、10b、10cに、LED-UVを照射する。これにより、透明粘土よりなる造形物(作品)11が硬化する。硬化後の造形物(作品)を“11H”とする。
【0109】
このように、実施の形態1で説明した透明粘土は、紙粘土やブロンズ粘土などと同様に素手で容易に造形することが可能となる。そして、この透明粘土は、LED-UVにより容易に短時間で硬化させることができ、硬化後は樹脂組成物となるため、強固で保存性の高いものとなる。
【0110】
このような、LED-UV硬化型の樹脂組成物としては、液状のものが市販されているが、液状のものは、例えば、
図5に示すような型が必要となり、また、造形の範囲が画一的となる。
図5は、造形用の型を示す図である。
【0111】
しかしながら、実施の形態1で説明した透明粘土によれば、造形の範囲が広がり、オリジナリティの高い造形物(作品)を作ることができる。
【0112】
また、
図4に示すように、チェーン12などの金属部材の取付けも簡単である。例えば、造形物11に孔をあけ、チェーン12の一端を孔に通すことにより、チェーン12を取り付けた後、LED-UVを照射することで、容易にチェーン12を取付けることができる。
図4は、チェーンを取付けた造形物を示す図である。
【0113】
例えば、前述した液状のLED-UV硬化型の樹脂組成物では、チェーンなどを通す孔の位置にヒートンを埋め込んでおき、硬化後にこのヒートンを抜くことにより孔を形成する必要があり、ヒートンの位置決めなどが難しかった。
【0114】
しかしながら、実施の形態1で説明した透明粘土によれば、チェーンなどを通す孔の形成や位置の修正が容易である。
【0115】
また、液状のLED-UV硬化型の樹脂組成物と異なり、実施の形態1で説明した透明粘土は、粘土ヘラや、はさみを用いた微細な加工が可能であり、また、型抜き加工が可能であり、造形の幅が広がる。もちろん、実施の形態1で説明した透明粘土を、
図5に示すような型(成形型)を用いて加工してもよい。
【0116】
また、実施の形態1で説明した透明粘土は、市販の形状物(例えば、携帯端末など)を押し当てることにより、容易に“かたどり”を行うことができ、市販の形状物(例えば、携帯端末など)のカバーなどを容易に形成することができる。
【0117】
このように、実施の形態1で説明した透明粘土は、手で加工可能な粘土状であり、かつ、エネルギー線で硬化させることができるため、容易にオリジナリティの高い造形物(作品)を形成することができる。
【0118】
また、硬化後には適度な硬さを有するため研磨加工なども可能である。また、硬化後の着色も可能である。また、硬化後に他の部材と接着することも可能であり、例えば、マグネットを接着することができる。また、硬化物は耐水性を有し、例えば、花瓶などとして用いることもできる。
【0119】
図6~
図13は、透明粘土の造形工程を示す図(写真)である。例えば、実施の形態1で説明した透明粘土(紫外線硬化性透明粘土組成物)30は、
図6に示すように、のし棒31で容易に伸ばすことができる。例えば、延ばした透明粘土を所定の大きさに切り取り、
図7に示すように、指先で加工することにより、花びら30aを造形することができる。このような花びらを複数枚形成し、土台30bに押し付けることにより圧着することで、花を造形することができる(
図8)。また、
図9に示すように、ヘラ32を利用して、花びら30aを造形し、かつ、土台30bに花びら30aを押し付けてもよい。
【0120】
また、実施の形態1で説明した透明粘土(紫外線硬化性透明粘土組成物)30は、
図10に示すように、素手で容易に伸ばすことができ、また、
図11に示すように、捩ることにより捩り部材30cを形成することができる。
【0121】
上記のように、種々に加工した造形物に、
図12に示すLED-UV装置20を用いてLED-UVを照射することで、粘土状の造形物(例えば、花)を硬化させることができる。
図13に、具体的な造形物(透明粘土の硬化物)の例を示す。着色剤(例えば、市販の星の雫着色剤)を添加することで、有色透明の造形物を形成することができる。
【0122】
このように、実施の形態1で説明した透明粘土は、紙粘土やブロンズ粘土などと同様に素手で容易に造形することが可能となる。そして、この透明粘土は、LED-UVにより容易に短時間で硬化させることができ、硬化後は樹脂組成物となるため、強固で保存性の高いものとなる。
【0123】
(実施例)
(実施の形態3)
本実施の形態においては、各種応用例について説明する。
【0124】
(応用例1)
実施の形態1の透明粘土に着色剤を添加してもよい。また、透明粘土にシリカ等を添加し、半透明としてもよい。また、透明粘土にシリカ等を多量に添加し、不透明としてもよい。また、シリカに代えて中空ガラスを用いてもよい。
【0125】
(応用例2)
実施の形態1の透明粘土に香料を添加してもよい。例えば、レモンやいちごなどの造形物(作品)に対応した香料を添加してもよい。
【0126】
(応用例3)
実施の形態1の透明粘土の硬化性を調整し、ゴム状のような柔軟性を持たせても良い。硬化性を調整することで、例えば、いちごやぶどうなどのグミを模した造形物(作品)を形成することができる。
【0127】
(応用例4)
実施の形態1の透明粘土は、室温(25℃)において、手で加工な粘土性を有するものとしたが、室温では、やや固く、例えば、45℃~55℃程度の湯せんにおいて、粘土性が向上する透明粘土としてもよい。
【0128】
(応用例5)
実施の形態2においては、いわゆる、ハンドメイドの造形物(作品)を例に説明したが、実施の形態1の透明粘土を、タイルなどの補修材として用いても良い。
【0129】
(応用例6)
組成物中のモノマーの割合を調整することにより、透明粘土の硬さを調整することができる。例えば、実施例6のMEDOL-10の割合を、30%から40%に増やした実施例11B1においては、透明粘土の硬さが低下し、より素手で加工しやすくなった。このように、組成物中のモノマーの割合を多く(例えば、30重量%を超え、40重量%以下と)することで、透明粘土の硬さが低下し、より素手で加工しやすくすることができる。
【0130】
このように、本発明は上記実施の形態や実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、光エネルギー線硬化型粘土組成物、光エネルギー線硬化型粘土組成物の製造方法および造形物の製造方法として利用できるものである。特に、アクセサリなどを自作するための光エネルギー線硬化型粘土組成物に関するものとして利用できるものである。
【符号の説明】
【0132】
10 透明粘土
10a 造形物
10b 造形物
10c 造形物
11 造形物(作品)
11H 硬化後の造形物(作品)
12 チェーン
20 LED-UV装置
30 透明粘土
30a 花びら
30b 土台
30c 捩り部材30c
31 のし棒
32 ヘラ