(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】軌道回路用送信装置
(51)【国際特許分類】
B61L 23/14 20060101AFI20220414BHJP
H04L 27/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
B61L23/14 A
H04L27/00 Z
(21)【出願番号】P 2018035071
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】金谷 友普
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-274376(JP,A)
【文献】特開2002-308095(JP,A)
【文献】特開2005-029009(JP,A)
【文献】特開2001-080513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道回路へ送信される発振信号となる送信波を原信号から生成する信号生成回路と、その生成に係る指示を行う手段を定めた信号生成指示プログラムと、前記原信号について周波数を測定する周波数測定回路と、その測定値に基づいて前記原信号に係る正否判別を行う手段を定めた周波数照査プログラムと、前記送信波の信号レベルを測定するレベル測定回路と、その測定値に基づいて前記送信波に係る正否判別を行う手段を定めたレベル照査プログラムと、前記信号生成指示プログラムと前記周波数照査プログラムと前記レベル照査プログラムとを実行しうるフェールセーフコンピュータと、前記信号生成回路を収容する送信部筐体と、前記送信部筐体と筐体間配線にて接続される論理部筐体とを備えた軌道回路用送信装置において、
前記フェールセーフコンピュータと前記周波数測定回路と前記レベル測定回路とが前記論理部筐体に収容されて
おり、
前記周波数測定回路と前記レベル測定回路との組が複数組設けられていることを特徴とする軌道回路用送信装置。
【請求項2】
軌道回路へ送信される発振信号となる送信波を原信号から生成する信号生成回路と、その生成に係る指示を行う手段を定めた信号生成指示プログラムと、前記原信号について周波数を測定する周波数測定回路と、その測定値に基づいて前記原信号に係る正否判別を行う手段を定めた周波数照査プログラムと、前記送信波の信号レベルを測定するレベル測定回路と、その測定値に基づいて前記送信波に係る正否判別を行う手段を定めたレベル照査プログラムと、前記信号生成指示プログラムと前記周波数照査プログラムと前記レベル照査プログラムとを実行しうるフェールセーフコンピュータと、前記信号生成回路を収容する送信部筐体と、前記送信部筐体と筐体間配線にて接続される論理部筐体とを備えた軌道回路用送信装置において、
前記フェールセーフコンピュータと前記周波数測定回路と前記レベル測定回路とが前記論理部筐体に収容されて
おり、
前記周波数測定回路と前記レベル測定回路との組が、複数組一緒に、前記論理部筐体への収容単位であるユニットに搭載されるとともに、前記フェールセーフコンピュータとバスラインにて接続されるようになっている
ことを特徴とする軌道回路用送信装置。
【請求項3】
前記周波数測定回路による周波数測定の対象が前記原信号でなく前記送信波になっており、前記周波数測定回路が前記送信波から前記原信号の周波数に相当する周波数を計測するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された軌道回路用送信装置。
【請求項4】
前記原信号が、搬送波と信号波との組からなるものであり、前記信号生成回路が、
前記搬送波を
前記信号波にて変調することで前記送信波を生成するものであり、
前記周波数測定回路による周波数測定の対象が前記原信号でなく前記送信波になっており、前記周波数測定回路が前記送信波から前記搬送波の周波数に相当する周波数を計測するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された軌道回路用送信装置。
【請求項5】
前記原信号が、搬送波と信号波との組からなるものであり、前記信号生成回路が、
前記搬送波を
前記信号波にて変調することで前記送信波を生成するものであり、
前記周波数測定回路による周波数測定の対象が前記原信号でなく前記送信波になっており、前記周波数測定回路が前記送信波から前記信号波の周波数に相当する周波数を計測するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された軌道回路用送信装置。
【請求項6】
前記原信号が、搬送波と信号波との組からなるものであり、前記信号生成回路が、
前記搬送波を
前記信号波にて変調することで前記送信波を生成するものであり、
前記周波数測定回路が搬送波周波数測定回路と信号波周波数測定回路とを具備したものであり、前記搬送波周波数測定回路が前記送信波から前記搬送波の周波数に相当する周波数を計測するものであり、前記信号波周波数測定回路が前記送信波から前記信号波の周波数に相当する周波数を計測するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された軌道回路用送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道信号保安装置のうちTD信号(列車検知信号)やATC信号(自動列車制御信号)などの発振信号を生成して軌道回路へ送信する軌道回路用送信装置に関し、更に、フェールセーフコンピュータを搭載した軌道回路用送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の軌道を幾つかの区間(例えば1T~16T)に区切っておき、各区間1T~16Tの軌道に対して一端側から所定周波数の電気信号を流しそれを他端側で検出するものが軌道回路であり、そのような軌道回路へ電気信号を流すのが軌道回路用送信装置である(例えば特許文献1~4参照)。その典型例として、該当する軌道区間に列車有無検出用のTD信号(列車検知信号)を送信するTD送信装置や(例えば特許文献1,2参照)、該当する軌道区間に列車速度制限用のATC信号(自動列車制御信号)を送信するATC送信装置(例えば特許文献1,4参照)、それら両装置を一台で兼ねるATC/TD送信装置が挙げられる。ここでは、ATC/TD送信装置を従来手法にて具体化した軌道回路用送信装置20について、その構成や実装状態などを説明する(
図6~
図8参照)。
【0003】
軌道回路用送信装置20は、地上装置であり、列車検知信号やATC信号を送信する送受信装置等を搭載するために設置された幾つかの架のうちから割り当てられた送信架10に搭載される(例えば特許文献3,4参照)。送信架10には(
図6(a)参照)、一の又は多数の論理部内ユニット11を収容した論理部筐体12と、一の又は多数の送信部内ユニット13を収容した送信部筐体14とが、上下に並べて或いは左右にも並べて搭載されている。
また、この送信架10には、架間ケーブル15,16等の一端部が接続されている。
【0004】
それらのうち、架間ケーブル15は、論理部外ケーブル17にて又は直接接続にて論理部筐体12に接続されていて(
図6(b)参照)、例えば図示しない他の架に搭載された上位の連動装置との信号送受を担っており、架間ケーブル16は、送信部外ケーブル18にて又は直接接続にて送信部筐体14に接続されていて、他の架である例えば図示しない変成器架を介して軌道回路へTD信号(列車検知信号)やATC信号(自動列車制御信号)を送受する役目を担っている。これに対し、筐体間ケーブル19(筐体間配線)は、送信架10の中で論理部筐体12と送信部筐体14とに接続されていて、両筐体12,14間の信号送受を担っている。
【0005】
このような架搭載状況下で、軌道回路用送信装置20は(
図6(c)参照)、大別すると、論理部筐体12に収容された論理部22と、送信部筐体14に収容されたATC/TD送信器30と、筐体間ケーブル19を利用した架内シリアル伝送21とを具備したものとなっている。それらのうち、論理部22には、一つの論理部内ユニット11にて具体化されたCPUユニット23(コンピュータユニット,主制御装置)が含まれており、ATC/TD送信器30には、何れのユニットも一つの送信部内ユニット13にて具体化されたCPUユニット31(コンピュータユニット)とLDユニット55(レベル検出ユニット)とOSCユニット40(発振ユニット)とPAユニット50(増幅ユニット)という4ユニットからなる組が含まれている。
【0006】
図示のものは最大16個の軌道回路(1T~16T)を担当するものなので、各軌道回路に割り振られる16組と予備の2組との計18組(31,55,40,50)のATC/TD送信器30が組み込まれるため、ATC/TD送信器30用の送信部筐体14に収容される送信部内ユニット13は4個×18組で計72個に及ぶ。一方、論理部22用の論理部筐体12に収容される論理部内ユニット11は1個であり、架内シリアル伝送21のケーブルは筐体間ケーブル19に収められる。なお、一つの架に送信部筐体14を複数装備したり、一つの論理部筐体12に軌道回路用送信装置20のCPUユニット23と他の軌道回路用送信装置のCPUユニットを収容することも可能であるが、詳述は割愛する。
【0007】
軌道回路用送信装置20の各部の回路構成等を述べると(
図6(d),
図7参照)、論理部22のCPUユニット23には、速度決定プログラム25がインストールされたCPU24(コンピュータ)と、このCPU24と上述の架内シリアル伝送21とに接続されたSIO26(シリアル入出力回路)とが搭載されており、CPU24が、図示しない上位の連動装置の指示等に基づいて速度決定プログラム25を実行することにより軌道の各区間1T~16Tにおける列車速度制限値(走行列車の上限速度)を決定するとともに、それらの速度値を架内シリアル伝送21経由で該当ATC/TD送信器30へ配信するようになっている。
【0008】
ATC/TD送信器30のCPUユニット31には、信号生成指示プログラム33と信号波周波数照査プログラム34と搬送波周波数照査プログラム35とレベル照査プログラム36とがインストールされたCPU32(コンピュータ)と、このCPU32と上述の架内シリアル伝送21とに接続されたSIO37(シリアル入出力回路)とが搭載されており、担当する区間(1T~16Tの何れか一つ)の軌道回路に係る列車速度制限値が架内シリアル伝送21を介して上位のCPU24から送られて来ると、それをSIO37経由でCPU32が受信するようになっている。SIO26,37には、対応したシリアル通信用デバイス等が用いられている。また、CPUユニット31とOSCユニット40及びLDユニット55とは、CPU32のバスライン(アドレスバス及びデータバス)にて接続されていて、CPU32が接続先ユニット40,55の各回路と指令やデータ等を遣り取りできるようになっている。
【0009】
信号生成指示プログラム33は、CPU32を信号生成指示手段として機能させるものであり、信号生成指示手段は、担当する軌道回路の位置づけや、CPU24から受けた上述の列車速度制限値などに基づいて、担当する軌道回路に流すべき信号波(送信波)の周波数を決定する。信号波の生成はAM変調で行っており、搬送波を信号波で変調する。搬送波は、例えば10.0kHzや,12.5kHz,15.5kHzといった弁別可能な複数の周波数から一つを選定する。信号波がTD信号(列車検知信号)の場合には、あらかじめ割り付けているTD信号の周波数(例えば19Hz)を選定する。一方、信号波がATC信号(自動列車制御信号)の場合には、担当する軌道回路に流すべきATC信号(自動列車制御信号)の周波数を決定し、例えば22Hzや,47Hz,135Hzといった弁別可能な複数の周波数から一つを選定して、それを信号波周波数とするようになっている。それらの決定内容は信号生成指示としてCPUユニット31からバスライン38経由でOSCユニット40へ送信されるようにもなっている。なお、搬送波周波数はそれらの何れよりも十分に高い。
【0010】
ATC/TD送信器30のOSCユニット40には(
図7参照)、水晶発振器等を具備していて搬送波周波数と信号波周波数との何れよりも高い周波数で発振する発振回路41と、その発振信号から上述の信号生成指示に応じて搬送波周波数の搬送波Aを生成する搬送波生成回路42と、発振回路41の発振信号から上述の信号生成指示に応じて信号波周波数の信号波Bを生成する信号波生成回路43と、搬送波Aを信号波Bにて変調することにより送信波C(TD信号・列車検知信号またはATC信号・自動列車制御信号)を生成する変調回路44と、搬送波Aを入力してその周波数である搬送波周波数を測定する搬送波周波数測定回路45と、信号波Bを入力してその周波数である信号波周波数を測定する信号波周波数測定回路46とが設けられている。
【0011】
それらのうち、搬送波周波数測定回路45は(
図8参照)、搬送波Aを入力し、それからカウンタ主体の計数回路にて所定期間内の波数を数え上げることによって、搬送波周波数の値を得るようになっている。また、信号波周波数測定回路46は(
図8参照)、信号波Bを入力し、それからカウンタ主体の計数回路にて所定期間内の波数を数え上げることによって、信号波周波数の値を得るようになっている。
【0012】
ATC/TD送信器30のPAユニット50は(
図6(d),
図7参照)、パワーアンプを主体とした増幅回路51を具備しており、OSCユニット40から送信波Cを入力して、それを増幅回路51にて信号増幅し、それを図示しない他架の変成器等経由で担当の軌道回路へ送出するようになっている。
ATC/TD送信器30のLDユニット55は(
図6(d),
図7参照)、レベル測定回路56を具備しており、OSCユニット40から送信波Cを入力して、それに含まれている搬送波成分と信号波成分との双方の信号レベルを検出するようになっている。
【0013】
具体的なレベル測定回路56は(
図8参照)、送信波Cを入力し、そこから搬送波BPF(バンドパスフィルタ)にて雑音を除去し、それから全波整流回路とRMS変換回路とによって脈流から直流へ変換することによって搬送波レベル(搬送波成分の信号レベル)の値を得るとともに、送信波Cの雑音除去後の信号から包絡線検波回路と信号波BPFとにて信号波成分を抽出し、更にそれから全波整流回路とRMS変換回路とによって脈流から直流へ変換することによって信号波レベル(信号波成分の信号レベル)の値を得るようになっている。
【0014】
ATC/TD送信器30のCPUユニット31のCPU32における残り三つの照査プログラム34~36について説明する(
図6(d),
図7参照)。
それらのうち、信号波周波数照査プログラム34は、バスライン38を介して信号波周波数測定回路46から信号波周波数の測定値を取得してそれを信号生成指示手段(33)の信号生成指示値の該当部分と照合することで信号波Bの正否を判別する信号波周波数照査手段としてCPU32を機能させるものである。
【0015】
また、搬送波周波数照査プログラム35は、バスライン38を介して搬送波周波数測定回路45から搬送波周波数の測定値を取得してそれを信号生成指示手段(33)の信号生成指示値の該当部分と照合することで搬送波Aの正否を判別する搬送波周波数照査手段としてCPU32を機能させるものである。
さらに、レベル照査プログラム36は、バスライン38を介してレベル測定回路56から搬送波レベル測定値と信号波レベル測定値とを取得してそれらを既定の上下限値と照合することで送信波Cの正否を判別するレベル照査手段としてCPU32を機能させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2000-168554号公報
【文献】特開2005-262895号公報
【文献】特開2005-212532号公報
【文献】特開2009-126198号公報
【文献】特開2006-338094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、このような従来の軌道回路用送信装置では、単一か少数個で足りる論理部22のCPUユニット23ばかりでなく、それ以上の個数が設けられるATC/TD送信器30のCPUユニット31にまで、CPU24,32(コンピュータ)が搭載されている。しかも、鉄道信号保安装置に要求される信頼性を確保するために、CPU24,32の何れにも、フェールセーフコンピュータが採用されている。
しかしながら、フェールセーフコンピュータは(例えば特許文献5参照)、いわゆる振り子回路などの照合回路を伴った多重系のコンピュータが主流となっており、そうでない一般的なコンピュータを使用するのに比べて、コストも実装空間も嵩む。
【0018】
そこで、フェールセーフコンピュータの個数が少なくて済む軌道回路用送信装置を実現することが第1技術課題となる。
また、その解決手段の具体化を試行したところ、筐体間ケーブル(筐体間配線)が増えるという不所望な副作用が生じたので、それをも軽減するべく、フェールセーフコンピュータの個数が減っても筐体間配線の増加が少なくて済む軌道回路用送信装置を実現することが第2技術課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の軌道回路用送信装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、
軌道回路へ送信される発振信号となる送信波を原信号から生成する信号生成回路と、その生成に係る指示を行う手段を定めた信号生成指示プログラムと、前記原信号について周波数を測定する周波数測定回路と、その測定値に基づいて前記原信号に係る正否判別を行う手段を定めた周波数照査プログラムと、前記送信波の信号レベルを測定するレベル測定回路と、その測定値に基づいて前記送信波に係る正否判別を行う手段を定めたレベル照査プログラムと、前記信号生成指示プログラムと前記周波数照査プログラムと前記レベル照査プログラムとを実行しうるフェールセーフコンピュータと、前記信号生成回路を収容する送信部筐体と、前記送信部筐体と筐体間配線にて接続される論理部筐体とを備えた軌道回路用送信装置において、
前記フェールセーフコンピュータと前記周波数測定回路と前記レベル測定回路とが前記論理部筐体に収容されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の軌道回路用送信装置は(解決手段2)、上記解決手段1の軌道回路用送信装置であって、
前記周波数測定回路と前記レベル測定回路との組が、複数組一緒に、前記論理部筐体への収容単位であるユニットに搭載されるとともに、前記フェールセーフコンピュータとバスラインにて接続されるようになっていることを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明の軌道回路用送信装置は(解決手段3)、上記解決手段1,2の軌道回路用送信装置であって、
前記周波数測定回路が、前記レベル測定回路の測定対象の前記送信波を前記原信号に代えて周波数測定の対象とし、そこから前記原信号の周波数に相当する周波数を計測するものであることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の軌道回路用送信装置は(解決手段4)、上記解決手段1,2の軌道回路用送信装置であって、
前記信号生成回路が、搬送波を信号波にて変調することで前記送信波を生成するものであり、
前記周波数測定回路が、前記レベル測定回路の測定対象の前記送信波を前記搬送波に代えて周波数測定の対象とし、そこから前記搬送波の周波数に相当する周波数を計測するものであることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の軌道回路用送信装置は(解決手段5)、上記解決手段1,2の軌道回路用送信装置であって、
前記信号生成回路が、搬送波を信号波にて変調することで前記送信波を生成するものであり、
前記周波数測定回路が、前記レベル測定回路の測定対象の前記送信波を前記信号波に代えて周波数測定の対象とし、そこから前記信号波の周波数に相当する周波数を計測するものであることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の軌道回路用送信装置は(解決手段6)、上記解決手段1,2の軌道回路用送信装置であって、
前記信号生成回路が、搬送波を信号波にて変調することで前記送信波を生成するものであり、
前記周波数測定回路が、前記レベル測定回路の測定対象の前記送信波を前記搬送波に代えて周波数測定の対象とし更にそこから前記搬送波の周波数に相当する周波数を計測する搬送波周波数測定回路と、前記レベル測定回路の測定対象の前記送信波を前記信号波に代えて周波数測定の対象とし更にそこから前記信号波の周波数に相当する周波数を計測する信号波周波数測定回路とを具備していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
このような本発明の軌道回路用送信装置にあっては(解決手段1)、従来は信号生成回路とともに送信部筐体に収容されて軌道回路や信号生成回路の個数以上の多数個が使用されていたフェールセーフコンピュータが論理部筐体に移設されたことにより、多数の信号生成回路に係る所要の照査手段を単一の又は少数のフェールセーフコンピュータに実行させることが各プログラムの時分割実行や繰り返し実行など簡便な常套的手法にて具現化されるので、フェールセーフコンピュータの個数が少なくて済む軌道回路用送信装置を実現することができ、第1技術課題が解決される。フェールセーフコンピュータの集約化によってフェールセーフコンピュータ搭載ユニットの個数が減るという付随効果も奏する。
【0026】
また、従来はフェールセーフコンピュータとバスラインで接続されていて測定値など多ビットのデータを送受していた周波数測定回路とレベル測定回路もフェールセーフコンピュータとともに論理部筐体に移設されたことにより、それらの測定回路に係る筐体間配線がバスライン用でなく測定対象信号の送信ライン用で良くなる。しかも、そのような送信ライン用の線数がバスライン用の線数より遙かに少ないことから、単にフェールセーフコンピュータを論理部筐体に移設して集約するにとどまる基本的改良に比べて、筐体間配線の増加数が少なくて済むので、第2技術課題もかなりの程度まで解決される。
【0027】
また、本発明の軌道回路用送信装置にあっては(解決手段2)、論理部や送信部の筐体に回路を収容するときの一纏まり・単位であるユニットを更に減らすことができる。
詳述すると、先ず、送信部毎にフェールセーフコンピュータが設けられていた従来品では、フェールセーフコンピュータと周波数測定回路およびレベル測定回路とがバスラインによる一対一接続に基づいて同数設置されているうえ、フェールセーフコンピュータの回路規模が大きくて、フェールセーフコンピュータ搭載ユニット(CPUユニット)と周波数測定回路やレベル測定回路とが別ユニットになっていた。
【0028】
これに対し、上記の解決手段1によるフェールセーフコンピュータの集約化に伴って、上述したようにフェールセーフコンピュータ搭載ユニットの個数が削減されるが、それにとどまらず周波数測定回路やレベル測定回路を複数組纏めてフェールセーフコンピュータにバスライン接続することが無理なく出来るようになっている。
そして、そのことを利用して、この解決手段2の装置にあっては、規模の小さい周波数測定回路やレベル測定回路は複数個・複数組が纏めて一ユニットに搭載されるようにもしたことにより、論理部筐体と送信部筐体とに搭載されるユニットの総数を大きく減らすことができて、上述の付随効果が高まる。
【0029】
さらに、本発明の軌道回路用送信装置にあっては(解決手段3~6)、周波数測定回路の測定対象の信号がレベル測定回路の測定対象の送信波から抽出されるようにもしたことにより、筐体間配線の増加数が移設対象測定回路の個数より少なくなるところまで抑制されるため、第2技術課題が高位に解決される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施例1について、軌道回路用送信装置の構造を示し、その要部のブロック構成図である。
【
図2】(a)が装置全体の概要ブロック構成図、(b)がユニット構成の模式図である。
【
図3】本発明の実施例2について、軌道回路用送信装置の構造を示し、その要部のブロック構成図である。
【
図4】その軌道回路用送信装置の測定回路のブロック構成図である。る。
【
図5】本発明の実施例3について、軌道回路用送信装置の構造を示し、その軌道回路用送信装置の測定回路のブロック構成図である。
【
図6】従来の軌道回路用送信装置について、(a)が送信架における論理部筐体や送信部筐体さらには各ユニットの搭載状態を模式的に示した斜視図、(b)が筐体間ケーブルの模式的斜視図、(c)がユニット構成の模式図、(d)が全体の概要ブロック構成図である。
【
図7】その軌道回路用送信装置の要部のブロック構成図である。
【
図8】その軌道回路用送信装置の測定回路のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
このような本発明の軌道回路用送信装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1~3により説明する。
図1~2に示した実施例1は、上述した解決手段1(出願当初の請求項1,2)を具現化したものであり、
図3~4に示した実施例2は、上述した解決手段3~6(出願当初の請求項3~6)を具現化したものであり、
図5に示した実施例3は、その変形例である。
なお、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、また、それらについて背景技術の欄で述べたことは以下の各実施例についても共通するので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0032】
本発明の軌道回路用送信装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、軌道回路用送信装置60の要部に係るブロック構成図であり、
図2(a)は、軌道回路用送信装置60の全体の概要を示すブロック構成図であり、
図2(b)は、軌道回路用送信装置60のユニット構成を示す模式図である。
【0033】
この実施例1の軌道回路用送信装置60は(
図1,
図2(a)参照)、既述した軌道回路用送信装置20を改造したものであり、送信架10に搭載される論理部筐体12及び送信部筐体14と、両筐体に接続される架内シリアル伝送21及びその両端のSIO26,37と、区間1T~16Tの軌道回路に接続される実機の16組とダミー抵抗に接続される予備1,2の2組とで計18組が存在している発振回路41と搬送波生成回路42と信号波生成回路43と変調回路44と搬送波周波数測定回路45と信号波周波数測定回路46と増幅回路51とレベル測定回路56と、速度決定プログラム25と信号生成指示プログラム33と信号波周波数照査プログラム34と搬送波周波数照査プログラム35とレベル照査プログラム36とを、軌道回路用送信装置20から引き継いで、具備している。
【0034】
これに対し、18個のCPU32(フェールセーフコンピュータ)は18個のCPUユニット31ごと省かれて無くなっており、送信部内ユニット13の合計数が18個ほど減少している。なお、それぞれのユニット31に搭載されていたSIO37は、18個のATC/TD送信器30を同様に改造した18個のATC/TD送信器61それぞれにおいて、OSCユニット40を改造したOSCユニット62に移設搭載されて、CPU32に引き渡していた信号生成指示を搬送波生成回路42や信号波生成回路43へ直に引き渡すようになって、引き続き役目を果たすようになっている。
【0035】
また、そのようになったOSCユニット62には、上記の生成回路42,43に加えて発振回路41と変調回路44も引き続き搭載されていて、そのユニット62の中で搬送波Aと信号波Bと送信波Cとが従来同様に生成されるようになっているが、搬送波周波数測定回路45と信号波周波数測定回路46は、OSCユニット62から、更にはATC/TD送信器30からも、取り外されている。それに加えて、レベル測定回路56も、LDユニット55ごとATC/TD送信器30から取り外されている。なお、増幅回路51を搭載したPAユニット50は、従来同様、夫々のATC/TD送信器61に引き継がれている。
【0036】
ATC/TD送信器30から取り外された搬送波周波数測定回路45と信号波周波数測定回路46とレベル測定回路56は、論理部筐体12に搭載される新たな論理部63に設けられたLD3個ユニット64に移設されるが、その際、回路規模に応じた適宜個数ずつが、図示のレイアウトでは3組ずつが、一つのLD3個ユニット64に纏めて搭載されており、そのような纏め搭載によって、従来は18個のLDユニット55に搭載されていた回路が、6個のLD3個ユニット64に搭載されるので、論理部内ユニット11と送信部内ユニット13との合計数が12個ほど従来より少なくて済む。
そして、そのような構成の下、架内シリアル伝送21での送受に適さない搬送波Aと信号波Bと送信波Cについては、新たに追加された筐体間配線(71~73)が使用されている。
【0037】
すなわち、搬送波Aは、送信部筐体14のATC/TD送信器61のOSCユニット62から、該当する筐体間配線の搬送波送信ライン71にて、論理部筐体12の論理部63のLD3個ユニット64において該当する搬送波周波数測定回路45へ、送信される。
また、信号波Bは、送信部筐体14のATC/TD送信器61のOSCユニット62から、該当する筐体間配線の信号波送信ライン72にて、論理部筐体12の論理部63のLD3個ユニット64において該当する信号波周波数測定回路46へ、送信される。
さらに、送信波Cは、送信部筐体14のATC/TD送信器61のOSCユニット62から、該当する筐体間配線の変調波送信ライン73にて、論理部筐体12の論理部63のLD3個ユニット64において該当するレベル測定回路56へ、送信される。
【0038】
さらに、それらの信号A,B,Cを受信する測定回路45,46,56は、論理部筐体12においてCPU66(フェールセーフコンピュータ)にバスライン67で接続されて、それぞれの測定結果をCPU66へ送信できるようにされる。
このCPU66は、ハードウェアについてみると、基本的には従来のCPU24を踏襲したフェールセーフコンピュータであり、能力が足りれば同じままで良いが、この実施例では、プログラムメモリ等がプログラム追加に叶うように増設されている。
そして、そのCPU66を搭載するCPUユニット65は、基本的には従来のCPUユニット23を踏襲したものであるが、CPU66のバスライン67が、ユニットは別だが同じ論理部筐体12に搭載されたLD3個ユニット64に対して、接続されている。
【0039】
一方、CPU66の搭載プログラムについては拡張されている。すなわち、以前のCPU24のときからインストールされていた速度決定プログラム25に加えて、無くなったCPU32から移設された信号生成指示プログラム33と信号波周波数照査プログラム34と搬送波周波数照査プログラム35とレベル照査プログラム36もCPU66にインストールされている。これらのプログラムの機能は、プログラムを実行するCPUが違っても、さらには架内シリアル伝送21を使用するプログラムが違っても、基本的には移設前と変わらないので、同一符号を付して示し、重複する煩雑な説明は割愛する。
【0040】
ただし、従来は各プログラム33~36が18個のCPU24それぞれにインストールされて、プログラムコードとプロセスとが一対一に対応していたが、各プログラム33~36のプログラムコードが速度決定プログラム25と同様に18組のATC/TD送信器及び測定回路45,46,56に係る処理を担当することになったので、CPU32の図示しないプロセス管理等によって、CPU32による各プログラム33~36の実行について、適宜な時分割制御等がなされようになっている。また、これによって、CPU32では、プログラムコードとプロセスとの対応関係が1対18という一対多になることから、18個のCPUユニット23が取り除かれても、残っている1個のCPUユニット65によって必要な信号生成や照査の処理が従来と同じく適切に行われるものとなる。
【0041】
このような実装状態を纏めると、軌道回路用送信装置60は(
図2(b)参照)、論理部筐体12に収容された論理部63と、送信部筐体14に収容された18個のATC/TD送信器61と、筐体間ケーブル19を利用した架内シリアル伝送21と、新たな筐体間配線(71~73)とを具備したものとなっている。
それらのうち、論理部63には、1個の論理部内ユニット11にて具体化されたCPUユニット65と、6個の論理部内ユニット11にて具体化されたLD3個ユニット64が含まれているので、論理部筐体12には計7個の論理部内ユニット11が収容される。
【0042】
一方、ATC/TD送信器61には、何れのユニットも一つの送信部内ユニット13にて具体化されたOSCユニット62とPAユニット50という2ユニットからなる組が含まれており、そのようなATC/TD送信器61が18個ほど採用されているので、送信部筐体14には計36個の送信部内ユニット13が収容される。
そのため、軌道回路用送信装置60に搭載されるユニット11,13は、合計43個にとどまり、既述した軌道回路用送信装置20の搭載ユニット数の合計73個より、30個も少なくなっている。
【0043】
軌道回路用送信装置60に搭載されるフェールセーフコンピュータは、CPU66の1個だけであり、既述した軌道回路用送信装置20に搭載されていた18個のCPUユニット31が無くなっているので、大幅な原価低減と実装空間削減とが達成されている。なお、新たに導入された搬送波送信ライン71と信号波送信ライン72と変調波送信ライン73には、縒対線などを用いた個別のライン(配線)が割り振られるので、3本組の筐体間配線(71~73)が18組で合計54本の筐体間配線が増えてしまっているが、その負担よりも、多数のフェールセーフコンピュータを不要とした利益の方が遙かに大きい。
【0044】
この実施例1の軌道回路用送信装置60について、使用態様及び動作を簡潔に説明する。なお、使用に先立って、区間1T~16Tの軌道回路を分担して担当する16個のATC/TD送信器61については、PAユニット50の出力ラインを、図示しない他架の変成器等のうち該当するものを経由させて、担当する軌道回路に接続させておく。なお、未だ担当先の軌道回路が決まっていない予備1,2のATC/TD送信器61については、PAユニット50の出力ラインにダミー抵抗を接続しておく。
【0045】
そして、稼働時に、図示しない上位の連動装置等から、列車走行状況等に基づいた指示等がCPUユニット65に与えられると、それに基づいてCPU66が速度決定プログラム25を実行することで軌道の各区間1T~16Tにおける列車速度制限値を決定する。なお、以後の説明では、説明の煩雑化を避けるために、CPU66にインストールされているプログラム25,33~36(定義体)については、プログラムコードとプロセスとを切り分けなくても誤解が生じない範囲では、CPU66による各プログラムコードの実行によるプロセス(処理,機能)をも単にプログラムと呼ぶ。
【0046】
列車速度制限値が決まると、それが速度決定プログラム25から信号生成指示プログラム33に引き渡され、その値と各区間1T~16Tの既知の連なり情報などとに基づいて信号生成指示プログラム33によって搬送波Aと信号波Bの周波数が決定される。
そして、その決定情報が、架内シリアル伝送21経由で、区間1T~16Tのうちの該当区間を担当するATC/TD送信器61のOSCユニット62に搭載されている搬送波生成回路42と信号波生成回路43とに送信される。そうすると、発振回路41の発振信号から、搬送波生成回路42によって搬送波Aが生成されるとともに、信号波生成回路43によって信号波Bが生成される。それから、OSCユニット62の変調回路44によって搬送波Aが信号波Bで変調されて送信波Cが生成される。
【0047】
それらのうち、送信波Cは、OSCユニット62の変調回路44からPAユニット50の増幅回路51に送信され、そこで電力増幅されてから、ATC/TD送信器61更には送信架10の外へ出力され、担当する軌道回路へ向かう。
そして、このような送信波Cの生成と送信とが、時分割処理等で、区間1T~16Tの夫々に対して行われるので、送信波Cの生成が正常になされていれば、区間1T~16Tに係る列車検知と自動列車制御とが適切に行われる。
【0048】
一方、それらと並行して、送信波Cに加え、その原信号である信号波Bと搬送波Aについても、正常か否かが調べられる。
具体的には、搬送波Aは、ATC/TD送信器61のOSCユニット62の搬送波生成回路42から、筐体間配線の搬送波送信ライン71を介して、論理部63のLD3個ユニット64の搬送波周波数測定回路45へ送信され、そこで搬送波周波数が測定される。
また、信号波Bは、ATC/TD送信器61のOSCユニット62の信号波生成回路43から、筐体間配線の信号波送信ライン72を介して、論理部63のLD3個ユニット64の信号波周波数測定回路46へ送信され、そこで信号波周波数が測定される。
【0049】
さらに、送信波Cは、ATC/TD送信器61のOSCユニット62の変調回路44から、筐体間配線の搬送波送信ライン73を介して、論理部63のLD3個ユニット64のレベル測定回路56へ送信され、そこで送信波Cに含まれている搬送波成分と信号波成分との双方の信号レベルが測定される。
そして、後は論理部63の内部で、何れの測定値もバスライン67を介して、搬送波Aの周波数測定値が搬送波周波数照査プログラム35によって取得されるとともに、信号波Bの周波数測定値が信号波周波数照査プログラム34によって取得され、さらに送信波Cに係る二つの信号レベル測定値がレベル照査プログラム36によって取得される。
【0050】
そして、それらのプログラム34,35,36の照査処理によって全ての測定値が適正範囲に属しているか否かが調べられ、全て適正のときだけ、該当するATC/TD送信器61が正常に動作していると判定される。
しかも、それらのプログラム34,35,36が時分割制御等の下で対象を次々に変えながら照査を行うので、CPU66が一つしかなくても、18組が存在している測定回路45,46,56の組すべてについて、測定値の取得と正否判定とが繰り返される。
【実施例2】
【0051】
本発明の軌道回路用送信装置の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図3は、軌道回路用送信装置80の要部に係るブロック構成図であり、
図4は、軌道回路用送信装置80の測定回路56,85,86のブロック構成図である。
【0052】
この軌道回路用送信装置80が上述した実施例1の軌道回路用送信装置60と相違するのは、ATC/TD送信器61と論理部63との間には存在していた搬送波送信ライン71と信号波送信ライン72とが改造後のATC/TD送信器81と論理部83との間から省かれて測定対象信号用の筐体間配線としては変調波送信ライン73だけが残されている点と、搬送波周波数測定回路45が改造されて搬送波周波数測定回路85になった点と、信号波周波数測定回路46が改造されて信号波周波数測定回路86になった点である。
【0053】
なお、レベル測定回路56は、変更が無く、具体的な回路構成を再述すると(
図4の上半分を参照)、送信波Cを入力し、そこから搬送波BPFにて雑音を除去しつつ送信波抽出信号Dを抽出し、それから全波整流回路とRMS変換回路とによって脈流から直流へ変換して搬送波レベル値を得るようになっている。また、レベル測定回路56は、上記の送信波抽出信号Dから包絡線検波回路と信号波BPFとにて信号波Bに相当する信号波抽出信号Eを抽出し、それから、やはり全波整流回路とRMS変換回路とによって脈流から直流へ変換して信号波レベル値を得るようになっている。
【0054】
搬送波周波数測定回路85の改造の要点は、搬送波送信ライン71や信号波送信ライン72を不要にするために、レベル測定回路56によって抽出された送信波抽出信号Dを利用して搬送波周波数が測定できるようにしたことである。具体的な回路構成例を述べると(
図4の下から二段目の回路部分を参照)、搬送波周波数測定回路85は、送信波抽出信号Dを入力し、その波形を半波整流回路とリミッタとで整形し、その整形後の波形から変化点(例えばロー値“L”からハイ値“H”へ変化したタイミング)を検出し、その変化点をカウンタ主体の計数回路にてサンプリングタイミング信号に基づいて数え上げることにより、搬送波Aの周波数に相当する搬送波周波数を送信波抽出信号Dから取得するようになっている。
【0055】
また、信号波周波数測定回路86の改造の要点は、信号波送信ライン72を不要にするために、レベル測定回路56によって抽出された信号波抽出信号Eを利用して信号波周波数が測定できるようにしたことである。具体的な回路構成例を述べると(
図4の最下段の回路部分を参照)、信号波周波数測定回路86は、信号波抽出信号Eを入力し、その波形を半波整流回路とリミッタとで整形し、その整形後の波形から、半周期相当時間(例えばハイ値“H”の継続時間)を監視タイマに基づく時間監視回路などにて求め、それから信号波周波数を取得するようになっている。
【0056】
この場合、測定回路56,85,86のための筐体間配線が、軌道回路用送信装置60の計54本から、軌道回路用送信装置80では計18本に減少している。
それでいて、搬送波周波数が搬送波周波数測定回路85によって変調波送信ライン73経由の送信波Cから得られるとともに、信号波周波数が信号波周波数測定回路86によって変調波送信ライン73経由の送信波Cから得られるので、搬送波送信ライン71と信号波送信ライン72が無くなった軌道回路用送信装置80も、それらのライン71,72が有った上述の軌道回路用送信装置60と同様に動作するので、機能は維持される。
【実施例3】
【0057】
図5にブロック図を示した本発明の軌道回路用送信装置が上述した実施例2の軌道回路用送信装置80と相違するのは、測定回路85,86が同一機能を維持しつつも具体的な回路構成が変更されている点である。
【0058】
この場合、搬送波周波数測定回路85は、送信波抽出信号Dを入力し、その極性を極性判定回路で判定し、それから変化点(例えば負値“-”から正値“+”へ変化したタイミング)を高周波のサンプリングタイミング信号に基づいて検出し、その変化点をカウンタ主体の計数回路にて数え上げることにより、搬送波周波数を取得するようになっている。
また、信号波周波数測定回路86は、送信波抽出信号Dを入力し、監視タイマに基づくスペース部検出回路などにて、送信波抽出信号Dにおけるスペース部の時間を測定することで、信号波周波数を取得するようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の軌道回路用送信装置は、上掲した実施例のATC/TD送信装置に適用が限られる訳でなく、軌道回路へ列車検知信号を送信するTD送信装置や、軌道回路へ自動列車制御信号を送信するATC送信装置、さらには軌道回路へ他の送信波(発振信号)を送信する軌道回路用送信装置であっても、同様構成の又は類似構成のものであれば、適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10…送信架(鉄道信号保安設備)、
11…論理部内ユニット、12…論理部筐体、
13…送信部内ユニット、14…送信部筐体、
15…架間ケーブル(リレー架などへ)、
16…架間ケーブル(変成器架を経て軌道回路へ)、
17…論理部外ケーブル、18…送信部外ケーブル、19…筐体間ケーブル、
20…軌道回路用送信装置、21…架内シリアル伝送、
22…論理部、
23…CPUユニット(論理部内)、
24…CPU(フェールセーフコンピュータ)、
25…速度決定プログラム、26…SIO、
30…ATC/TD送信器(送信部)、
31…CPUユニット(送信部内)、
32…CPU(フェールセーフコンピュータ)、
33…信号生成指示プログラム、34…信号波周波数照査プログラム、
35…搬送波周波数照査プログラム、36…レベル照査プログラム、
37…SIO(シリアル入出力回路,架内シリアル伝送インターフェイス)、
38…バスライン、
40…OSCユニット(発振ユニット)、
41…発振回路、42…搬送波生成回路、43…信号波生成回路、
44…変調回路、45…搬送波周波数測定回路、46…信号波周波数測定回路、
50…PAユニット(増幅ユニット)、51…増幅回路、
55…LDユニット(レベル検出ユニット)、56…レベル測定回路、
60…軌道回路用送信装置、
61…ATC/TD送信器(送信部)、62…OSCユニット(発振ユニット)、
63…論理部、64…LD3個ユニット(レベル検出ユニットx3)、
65…CPUユニット(主制御装置)、
66…CPU(フェールセーフコンピュータ)、67…バスライン、
71…搬送波送信ライン(筐体間配線)、
72…信号波送信ライン(筐体間配線)、
73…変調波送信ライン(筐体間配線)、
80…軌道回路用送信装置、
81…ATC/TD送信器(送信部)、83…論理部、
84…LD3個ユニット(レベル検出ユニットx3)、
85…搬送波周波数測定回路、86…信号波周波数測定回路、
A…搬送波(TD信号波,列車検知信号,原信号)、
B…信号波(ATC信号波,自動列車制御信号,原信号)、
C…送信波(ATC/TD信号波,混成信号)、
D…送信波抽出信号,E…信号波抽出信号