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特許7058071風力タービン・ピッチ・キャビネット温度制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】風力タービン・ピッチ・キャビネット温度制御システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 9/22 20160101AFI20220414BHJP
   F03D 7/04 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
F03D9/22
F03D7/04 H
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016245189
(22)【出願日】2016-12-19
(65)【公開番号】P2017141811
(43)【公開日】2017-08-17
【審査請求日】2019-12-12
(31)【優先権主張番号】1522886.9
(32)【優先日】2015-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521213325
【氏名又は名称】ケバ インダストリアル オートメーション ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス レスマン
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-511796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 9/22
F03D 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給装置と、エネルギー貯蔵装置と、電気モーターと、遮断抵抗器と、を備える風力タービンであって、
前記電気モーターは回転翼を回転させ、前記エネルギー貯蔵装置は前記回転翼のピッチ制御を可能にし、
前記電気モーターが、第1の電流が前記遮断抵抗器を流れて、前記電気モーターの余分な運動エネルギーが熱に変換されるように、前記遮断抵抗器と随時電気的に接触しており、
前記電力供給装置が、前記遮断抵抗器が熱を生成するように第2の電流を前記遮断抵抗器に流すように構成され、該遮断抵抗器とエネルギー貯蔵装置が、遮断抵抗器が前記エネルギー貯蔵装置に熱を与えるように配される、風力タービン。
【請求項2】
前記ピッチ制御に用いられる制御回路構成を更に備え、該制御回路構成は、前記遮断抵抗器が前記制御回路構成に熱を与えるように前記遮断抵抗器を基準として配されている、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項3】
前記遮断抵抗器及びエネルギー貯蔵装置が収納される筐体を更に備える、請求項2に記載の風力タービン。
【請求項4】
前記筐体がピッチ駆動装置の制御回路構成も収納する、請求項3に記載の風力タービン。
【請求項5】
前記筐体内部に空気流を分散させるように構成されたファンを更に備える、請求項3又は4に記載の風力タービン。
【請求項6】
前記電力供給装置と前記遮断抵抗器との間に切替手段を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項7】
前記電力供給装置と前記遮断抵抗器との間に切替手段を更に備える、請求項5に記載の風力タービン。
【請求項8】
前記電力供給装置と通信するプロセッサを更に備え、該プロセッサは、前記電力供給装置の前記遮断抵抗器への出力を制御するように構成されている、請求項4に記載の風力タービン。
【請求項9】
前記プロセッサと通信する温度センサーを更に備え、該温度センサーは、前記エネルギー貯蔵装置、前記筐体及び前記制御回路構成の温度のうちの少なくとも1つをモニターするように構成されている、請求項8に記載の風力タービン。
【請求項10】
前記エネルギー貯蔵装置が、風力タービン回転翼の緊急ピッチ制御を可能にするように構成された、前記電気モーターのバックアップ・エネルギー貯蔵装置である、請求項1~4および7~9のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項11】
前記エネルギー貯蔵装置が、風力タービン回転翼の緊急ピッチ制御を可能にするように構成された、前記電気モーターのバックアップ・エネルギー貯蔵装置である、請求項5に記載の風力タービン。
【請求項12】
前記エネルギー貯蔵装置が、風力タービン回転翼の緊急ピッチ制御を可能にするように構成された、前記電気モーターのバックアップ・エネルギー貯蔵装置である、請求項6に記載の風力タービン。
【請求項13】
前記エネルギー貯蔵装置がコンデンサである、請求項1~4、7~9、および11~12のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項14】
前記エネルギー貯蔵装置がコンデンサである、請求項5に記載の風力タービン。
【請求項15】
前記エネルギー貯蔵装置がコンデンサである、請求項6に記載の風力タービン。
【請求項16】
前記エネルギー貯蔵装置がコンデンサである、請求項10に記載の風力タービン。
【請求項17】
前記エネルギー貯蔵装置がウルトラコンデンサである、請求項13に記載の風力タービン。
【請求項18】
前記エネルギー貯蔵装置がウルトラコンデンサである、請求項14~16のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項19】
風力タービン内のエネルギー貯蔵装置の温度を制御する方法であって、
電気モーターと、遮断抵抗器と、エネルギー貯蔵装置と、を備える風力タービンであって、
前記電気モーターは回転翼を回転させ、前記エネルギー貯蔵装置は前記回転翼のピッチ制御を可能にし、
前記電気モーターが、第1の電流が前記遮断抵抗器を流れて、前記電気モーターの余分な運動エネルギーを熱に変換することができるように、前記遮断抵抗器と随時電気的に接触している、風力タービンを設けることと、
第2の電流を前記遮断抵抗器に流すことによって熱を生成するように構成された電力供給装置を備る加熱システムを更に設けることと、前記遮断抵抗器とエネルギー貯蔵装置を、前記遮断抵抗器が前記エネルギー貯蔵装置にこの熱を与えることができるように配することと、を含む、方法。
【請求項20】
前記ピッチ制御に用いられる制御回路構成を設けることと、該制御回路構成を、前記遮断抵抗器が前記制御回路構成に熱を与えることができるように前記遮断抵抗器を基準として配することと、を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の方法であって、
前記電力供給装置を用いて前記遮断抵抗器に電流を供給することと、
該遮断抵抗器からの熱を前記エネルギー貯蔵装置に与えることと、を更に含む、方法。
【請求項22】
前記遮断抵抗器からの熱を前記制御回路構成に与えることを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記遮断抵抗器からの熱を前記制御回路構成に与えることを更に含む、請求項20を引用する請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵装置及び制御回路構成のための温度制御システムにおける改良に関する。特に、但し限定的にではなく、本発明は、風力タービン回転翼の緊急ピッチ制御用ピッチ・モーターの電力供給及び制御に用いられる緊急エネルギー貯蔵装置及び制御回路構成の温度を維持するための温度制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転子上に取り付けられた回転翼を有する風力タービンは、強風発生時の風力タービンへの構造的損傷を防止する、又は回転をともかく停止させるべく、回転翼の回転速度を制限するための、枢動可能な回転翼を使用することがある。回転翼に風に向かう、又は風からそれるように角度を付けることによって、回転翼が受ける回転トルクが制御され、風力タービンの回転速度及び発電電力を動作限界内に調整及び維持することができる。回転翼それぞれの迎え角を調整するための、風力タービンの所謂ピッチ駆動装置には、交流モーターを使用するのが一般的であった。現在では直流モーターに向かう傾向があり、その結果、直流周波数変換用中間回路が、ピッチ駆動装置の直流供給に使用される。しかしながら、これは、過電圧による損傷を避けるために負荷が中間回路にエネルギーをフィードバックする際に電圧を制御する必要性を伴う。往々にして、この目的のために、制動ユニットとも呼ばれる所謂制動チョッパーが使用される。これら制動チョッパーは、その機能により本明細書で更に遮断抵抗器と呼ばれる、直流モーターそれぞれに対する付加的な負荷としての役割を果たすための抵抗器を備える。
【0003】
風力タービンが過負荷又は構造上の安全閾値に近づいている時など、回転子を停止する、又はその速度を違った速度に制限することが重要である状況においては、少なくとも、回転翼が回転子を停止させることになる所謂フェザリング位置まで全ての回転翼を回転させる必要がある期間中、ピッチ制御機構が機能可能であることが重要である。従って、これらのピッチ制御機構に緊急バックアップ電力供給装置を備えることが標準的慣例となっており、風力タービンは、電力損失やその他の故障時でも回転子速度を低減することができる。
【0004】
緊急電力供給装置は、しばしばコンデンサという形態で提供される。
【0005】
ある一定の温度未満では、コンデンサの内部抵抗が著しく増加する。その結果、緊急時にコンデンサによって放電されるエネルギーの一部が熱として浪費されることになる。このことは、良く言っても、バックアップ電力供給装置における非効率性を意味し、最悪の場合、コンデンサの低下した出力では回転翼のピッチを適切に変更するのに不十分であり、結局、結果として風力タービンに損傷を与えてしまう恐れがある。風力タービンは、様々な環境及び気候において用いられるため、バックアップ・コンデンサの温度制御は深刻な問題である。従来技術の解決策は、緊急エネルギー装置を、自身の内部抵抗によって自ら加熱されるように放電させるというものであった。
【0006】
従来技術の別の解決策は、風力タービンに、一般的にはファン・ヒーターである、主要な内部部品を最適温度に維持するよう動作するヒーターを装備することであった。これら従来のファン・ヒーターは、スペースを取り、重量を重くすることに加え、温度制御時にヒステリシスを被ることが知られている。しかも、それらは交流電力に依存している。近代の風力タービンの多くは、直流モーター及び直流中間周波数コンバータ回路を使用するため、風力タービンの設計に費用のかかる複雑な変更/追加を加えることなく、これら従来のファンを用いることはできない。電気安全要求事項を満たすためには、交流ヒーターを使用するためのそのような変更は、ピッチ・キャビネットを通して中性線を配線することを含み、更に費用がかかる。
【0007】
また、風力タービンのパーツ点数が増えることで、設置及びメンテナンスの費用及び複雑性がいずれも増大する。
【0008】
従って、付加的な部品の必要性を最小限に抑えながら、ピッチ制御機構に熱を与えることができる能力が望ましい。制御回路構成といった、ピッチ制御機構のその他の部品用の熱を与えることができる能力も同様に望ましい。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠陥の一部を軽減することである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一態様によれば、電力供給装置と、エネルギー貯蔵装置と、電気モーターと、遮断抵抗器とを備える風力タービンであって、電気モーターが、第1の電流が遮断抵抗器を流れて、発電機モードで動作している電気モーターの余分な運動エネルギーが熱に変換されるように、遮断抵抗器と随時電気的に接触しており、電力供給装置が、遮断抵抗器が熱を生成するように、第2の電流を遮断抵抗器に流すように構成され、遮断抵抗器とエネルギー貯蔵装置が、遮断抵抗器がエネルギー貯蔵装置に熱を与えるように配される、風力タービンが提供される。
【0011】
エネルギー貯蔵装置用熱源としての遮断抵抗器の新しい使用モードを提供することによって、風力タービンの既存の部品の有用性が最適化される。遮断抵抗器は、風力タービンのその他の重要な部品の温度を維持するのに使用されてもよい。更に、付加的な単独型加熱素子の必要性が、それらに付随する不利点とともに解消される。従来の交流電源方式のファン・ヒーターは、ヒステリシスを被り、付加的な回路構成を必要とすることが知られている。これらの素子を排除することによって、風力タービンの全体的なパーツ点数が減少し、スペースや重量がセーブされ、設置及びメンテナンスの費用及び複雑性が低下する。
【0012】
好ましくは、風力タービンは、制御回路構成を更に備え、制御回路構成は、遮断抵抗器が制御回路構成に熱を与えるように遮断抵抗器を基準として配されている。このことは、結露によって制御回路構成の動作が妨げられることを防止し、また低温に伴うその他の損傷を防止するのに役立つ。
【0013】
好ましくは、抵抗器、エネルギー貯蔵装置及び制御回路構成は、筐体内に収納される。このことは、遮断抵抗器からの熱出力を閉じ込めるのに役立ち、エネルギー貯蔵装置及び制御回路構成の局所的熱環境を画定して、それらの温度をより正確に制御することを可能にする。上記のように、全ての部品が直流電源方式であり、従来の交流電源方式のファン・ヒーターの場合のように、筐体を通して中性線を配線する必要はない。この制約を排除することによって、風力タービンの配線効率の更なる最大化が可能になるとともに、上述したパーツ数の低下という利点が提供される。また、遮断抵抗器及びエネルギー貯蔵装置を同一の筐体内に配置することによって、メンテナンス時のこれら両者へのより容易いアクセスが可能になるとともに、スペースにより重きが置かれてもよい場合に、本来なら遮断抵抗器が設置されてもよい場所のスペースがセーブされる。通常、風力タービンにおける遮断抵抗器は、遮断抵抗器によって生成された熱をできるだけ早く放散するために換気の良い所に配置される。本発明は、しかし、遮断抵抗器がめったに使用されず、選択された遮断抵抗器の特性が適切に選定される場合、換気要求事項は無視できることに気付いた。
【0014】
好ましくは、筐体内部に空気流を分散させるように構成されたファンが存在する。このファンは、遮断抵抗器に供給を行い、筐体内にくまなく、加熱された空気を分散させることによって加熱効率を上げるのと同じ電力供給装置によって電力供給されてもよい。
【0015】
好ましくは、電気モーターと遮断抵抗器との間に切替手段が存在する。これは、遮断抵抗器が電気モーターの中間交流コンバータ回路に切り替わって、電流という形態で余分な運動エネルギーを引き出し、それを熱として放散させることを可能にする。
【0016】
好ましくは、電力供給装置と遮断抵抗器との間に切替手段が存在する。これは、遮断抵抗器がオン・デマンドで電流を供給されて、エネルギー貯蔵装置及び/又は制御回路構成の温度を調節するのに用いられる熱を出力することを可能にする。
【0017】
切替手段は、機械的継電器、固体継電器及びサイリスタのうちの1つとして提供されてもよい。
【0018】
好ましくは、電力供給装置と通信するプロセッサが存在し、そのプロセッサは、電力供給装置の遮断抵抗器への出力を制御するように構成されている。プロセッサは、遮断抵抗器に供給された電流の大きさ及びタイミングの精細な制御を可能にする。従って、エネルギー貯蔵装置及び制御回路構成の温度は、プロセッサからの指令に従って適切に維持又は変更されることが可能である。
【0019】
好ましくは、プロセッサと通信する温度センサーが存在し、その温度センサーは、エネルギー貯蔵装置、筐体及び制御回路構成のうちの少なくとも1つの温度をモニターするように構成されている。これは、様々に異なる各部品の正確な温度を適切にモニターすることを可能にする。これは、プロセッサとともに、電力供給装置の遮断抵抗器への出力及び結果としてもたらされる各部品の温度変化を変調及び較正するフィードバック・ループを作り出す。
【0020】
好ましくは、エネルギー貯蔵装置は、風力タービン回転翼の緊急ピッチ制御を可能にするように構成された、ピッチ・モーターのバックアップ・エネルギー貯蔵装置である。
【0021】
好ましくは、エネルギー貯蔵装置はコンデンサである。コンデンサは広範囲の動作温度を有し、実質的な損失までの長期間、変化を保留することができる。また、コンデンサは、風力タービンの電力出力によって素早くかつ容易く再充電することができる。これにより、コンデンサは、とりわけ遠隔用途において、相応に信頼性の高いバックアップ電力源となる。
【0022】
好ましくは、エネルギー貯蔵装置はウルトラコンデンサである。ウルトラコンデンサは、-40℃~60℃に及ぶ非常に広範囲の動作温度を有する。
【0023】
好ましくは、エネルギー貯蔵装置の温度は-20℃より高く維持される。この温度より高い場合、ウルトラコンデンサの内部抵抗は管理し易く、ウルトラコンデンサの出力能力を過度に生じさせることがない。
【0024】
代替的に、エネルギー貯蔵装置は-10℃より高く維持される。この温度より高い場合、ウルトラコンデンサに貯蔵されているほぼ全てのエネルギーを、損失を最小限に抑えながら、出力することができる。このことは、コンデンサを満充電する必要があることによって浪費されるエネルギーが低減され、風力タービンの全体的なエネルギー効率が上がることを意味する。
【0025】
代替的には、エネルギー貯蔵装置は0℃より高く維持される。
【0026】
代替的には、エネルギー貯蔵装置は15℃~20℃の範囲内で維持される。
【0027】
番号付き条項:
条項1.電力供給装置と、エネルギー貯蔵装置と、電気モーターと、遮断抵抗器とを備える風力タービンであって、
前記電気モーターが、第1の電流が前記遮断抵抗器を流れて、前記電気モーターの余分な運動エネルギーが熱に変換されるように、前記遮断抵抗器と随時電気的に接触しており、
前記電力供給装置が、前記遮断抵抗器が熱を生成するように第2の電流を前記遮断抵抗器に流すように構成され、該遮断抵抗器とエネルギー貯蔵装置が、前記遮断抵抗器が前記エネルギー貯蔵装置に熱を与えるように配される、風力タービン。
条項2.制御回路構成を更に備え、該制御回路構成は、前記遮断抵抗器が前記制御回路構成に熱を与えるように前記遮断抵抗器を基準として配されている、条項1に記載の風力タービン。
条項3.前記遮断抵抗器及びエネルギー貯蔵装置が筐体内に収納されている、条項1に記載の風力タービン。
条項4.前記筐体がピッチ駆動装置の制御回路構成も収納する、条項3に記載の風力タービン。
条項5.前記筐体内部に空気流を分散させるように構成されたファンを更に備える、条項3又は4に記載の風力タービン。
条項6.前記電力供給装置と前記遮断抵抗器との間に切替手段を更に備える、条項1~5のいずれか一項に記載の風力タービン。
条項7.前記切替手段が機械的継電器、固体継電器及びサイリスタのうちの1つである、条項6に記載の風力タービン。
条項8.前記電力供給装置と通信するプロセッサを更に備え、該プロセッサは、前記電力供給装置の前記遮断抵抗器への出力を制御するように構成されている、条項1~7のいずれか一項に記載の風力タービン。
条項9.前記プロセッサと通信する温度センサーを更に備え、該温度センサーは、前記エネルギー貯蔵装置、前記筐体及び前記制御回路構成の温度のうちの少なくとも1つをモニターするように構成されている、条項8に記載の風力タービン。
条項10.前記エネルギー貯蔵装置が、風力タービン回転翼の緊急ピッチ制御を可能にするように構成された、ピッチ電気モーターのバックアップ・エネルギー貯蔵装置である、条項1~9のいずれか一項に記載の風力タービン。
条項11.前記エネルギー貯蔵装置がコンデンサである、条項1~10のいずれか一項に記載の風力タービン。
条項12.前記エネルギー貯蔵装置がウルトラコンデンサである、条項11に記載の風力タービン。
条項13.前記エネルギー貯蔵装置の温度が-20℃より高く維持される、条項1~12のいずれか一項に記載の風力タービン。
条項14.前記エネルギー貯蔵装置の温度が-10℃より高く維持される、条項1~12に記載の風力タービン。
条項15.風力タービン内のエネルギー貯蔵装置の温度を制御する方法であって、
電気モーターと、遮断抵抗器と、エネルギー貯蔵装置とを備える風力タービンであって、
前記電気モーターが、第1の電流が前記遮断抵抗器を流れて、前記電気モーターの余分な運動エネルギーを熱に変換することができるように、前記遮断抵抗器と随時電気的に接触している、風力タービンを設けることと、
第2の電流を前記遮断抵抗器に流すことによって熱を生成するように構成された電力供給装置を備える加熱システムを更に設けることと、前記遮断抵抗器と前記エネルギー貯蔵装置を、前記遮断抵抗器が前記エネルギー貯蔵装置にこの熱を与えることができるように配することと、を含む、方法。
条項16.制御回路構成を設けることと、該制御回路構成を、前記遮断抵抗器が前記制御回路構成に熱を与えることができるように前記遮断抵抗器を基準として配することと、を更に含む、条項15に記載の方法。
条項17.条項15又は16に記載の方法であって、
前記電力供給装置を用いて前記遮断抵抗器に電流を供給することと、
前記遮断抵抗器からの熱を前記エネルギー貯蔵装置に与えることと、を更に含む、方法。
条項18.前記遮断抵抗器からの熱を前記制御回路構成に与えることを更に含む、条項16及び17に記載の方法。
条項19.前記電気モーターと前記遮断抵抗器との間の切替手段を更に含む、条項15~18に記載の方法。
条項20.前記切替手段が機械的継電器、固体継電器及びサイリスタのうちの1つである、条項16に記載の方法。
条項21.筐体の内部に、少なくとも前記遮断抵抗器及び前記エネルギー貯蔵装置を配する各工程を更に含む、条項15~20に記載の方法。
条項22.ファンを設け、前記筐体の内部に空気流を分散させる各工程を更に含む、条項21に記載の方法。
条項23.前記電力供給装置と通信するプロセッサを設け、前記電力供給装置の出力を前記プロセッサによって制御する各工程を更に含む、条項14~22に記載の方法。
条項24.前記プロセッサと通信し、前記エネルギー貯蔵装置と熱的に接触する温度センサーを設け、該温度センサーを用いて前記エネルギー貯蔵装置の温度を測定し、前記測定された温度に応じて前記電力供給装置の出力を制御する各工程を更に含む、条項23に記載の方法。
条項25.前記エネルギー貯蔵装置としてコンデンサを設ける各工程を更に含む、条項15~24に記載の方法。
条項26.前記エネルギー貯蔵装置としてウルトラコンデンサを設ける各工程を更に含む、条項25に記載の方法。
条項27.前記エネルギー貯蔵装置の温度を-20℃より高く維持する各工程を更に含む、条項15~26に記載の方法。
条項28.前記エネルギー貯蔵装置の温度を-10℃より高く維持する各工程を更に含む、条項15~26に記載の方法。
条項29.実質的に、添付の関連図面を参照して本明細書において説明される風力タービン。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以降、本発明の各実施形態を、単に例として、以下の添付図面を参照して説明する。
図1図1は、本発明の一実施形態に従った風力タービンの図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に従った方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
付加的な部品の必要性を最小限に抑えながら、緊急エネルギー貯蔵装置の温度を維持することができる風力タービン温度制御システムを提供するために、本発明に従った風力タービン温度制御システムが提供される。
【0030】
図1に風力タービン10の図を示す。風力タービン10は、少なくとも電気モーター15と、電力供給装置30と、遮断抵抗器40と、エネルギー貯蔵装置50とを備える。
【0031】
電気モーター15は、風力タービンの回転翼をその縦方向軸を中心に回転させるための、従来の直流電気モーターである。強い突風が吹く間、回転翼は加速されることがあり、電気モーターが回転翼を回転させるのではなく、回転翼が電気モーターを回転させてしまうことになる。そのような場合、負荷が電気モーターを加速させる時に電気モーターは発電機モーターとなり、既知の方法で短時間発電を行う。発電機モードにおいて、過剰なエネルギーを放散できない場合、回路構成に損傷を与える可能性のある、供給電圧より高い電圧が生じることがある。従って、そのような状況が検知された場合には、余分なエネルギーを熱という形態で放散する所謂遮断抵抗器を電気モーター15に接続して、発電機モードにある電気モーター15によって生成された電圧を低下させるのが一般的である。
【0032】
電力供給装置30は、既知の電力供給装置である。更なる実施形態において、電気供給装置30は、例えば、バッテリー又はコンデンサといった貯蔵エネルギー源を含む。故に、遮断抵抗器40に電流を提供するための、任意の既知の好適な手段を用いることができる。そのような電力供給装置30は、当該技術分野において既知である。
【0033】
電気モーター15及び電力供給装置30はいずれも、遮断抵抗器40に電流を供給するように構成されている。
【0034】
遮断抵抗器40は、電流を供給された場合に熱を生成するように構成されている。本発明の文脈の範囲内で、「遮断抵抗器」という用語が、「負荷抵抗器」、「減衰抵抗器」、「吸収抵抗器」及び「チョッパー抵抗器」と置き換え可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0035】
遮断抵抗器40は、電気モーター15の中間コンバータ回路に切り替えられて、電気エネルギーを熱に変換することにより、サージ又は余分なエネルギーを除去することができる。先行出願において、遮断抵抗器からの熱は二次的で不要な副作用であり、廃熱として、ヒートシンクを介して環境に排出される。
【0036】
エネルギー貯蔵装置50は、既知の緊急エネルギー貯蔵装置である。一実施形態において、エネルギー貯蔵装置50はコンデンサである。好ましい実施形態において、緊急エネルギー貯蔵装置50は、-10℃より高い最適動作温度及び-20℃の最低動作温度を有するウルトラコンデンサである。緊急エネルギー貯蔵装置50は、遮断抵抗器40とともに配されて、遮断抵抗器40から緊急エネルギー貯蔵装置50への効率の良い熱の伝達を可能にする。遮断抵抗器40は、緊急エネルギー貯蔵装置50と熱的に接触又は物理的に接触していてもよく、その両方であってもよい。一実施形態において、緊急エネルギー貯蔵装置50は遮断抵抗器40に接している。更なる実施形態において、緊急エネルギー貯蔵装置50は遮断抵抗器40に極めて近接している。別の更なる実施形態において、緊急エネルギー貯蔵装置50は遮断抵抗器40によって少なくとも部分的に覆われている。
【0037】
任意選択で、風力タービンは制御回路構成55を更に備える。制御回路構成55は、遮断抵抗器40とともに配されて、遮断抵抗器40から制御回路構成55への効率の良い熱の伝達を可能にする。遮断抵抗器40は、制御回路構成55と熱的に接触又は物理的に接触していてもよく、その両方であってもよい。一実施形態において、制御回路構成55は遮断抵抗器40に接している。更なる実施形態において、制御回路構成55は遮断抵抗器40に極めて近接している。別の更なる実施形態において、制御回路構成55は遮断抵抗器40によって少なくとも部分的に覆われている。
【0038】
任意選択で、遮断抵抗器40は、切替手段16によって電気モーター15に電気的に接続されている。好ましい実施形態において、切替手段16は、機械的に始動させられた継電器である。更なる実施形態において、切替手段16は固体継電器である。別の更なる実施形態において、切替手段16はサイリスタである。故に、遮断抵抗器40の電気モーター15への選択的な電気接続を可能にするための、任意の既知の好適な手段を用いることができる。そのような切替手段16は、当該技術分野において既知である。
【0039】
任意選択で、風力タービン10は筐体20を備える。好ましい実施形態において、筐体20は、電力供給装置30、遮断抵抗器40、緊急エネルギー貯蔵装置50及び制御回路構成55を収納する。一実施形態において、筐体20は熱的に絶縁されている。本発明の文脈の範囲内で、筐体20が、「ピッチ・キャビネット」、「ピッチ・ボックス」、「軸キャビネット」又は「軸ボックス」と呼ばれてもよいことは当業者にとって明らかであろう。
【0040】
任意選択で、遮断抵抗器40は、切替手段35によって電力供給装置30に電気的に接続されている。一実施形態において、切替手段35は、筐体20内に収納されている。代替実施形態において、切替手段35は、筐体20の外側に配置されている。好ましい実施形態において、切替手段35は、機械的に始動させられた継電器である。更なる実施形態において、切替手段35は固体継電器である。別の更なる実施形態において、切替手段35はサイリスタである。故に、遮断抵抗器40の電力供給装置への選択的な電気接続を可能にするための、任意の既知の好適な手段を用いることができる。そのような切替手段35は、当該技術分野において既知である。代替実施形態において、切替手段35及び切替手段16の機能性は単一の切替手段によって提供される。
【0041】
任意選択で、風力タービン10はファン60を備える。ファン60は、筐体20内に収納され、筐体20内で空気を循環させるように配される。一実施形態において、ファン60は、直流ファンであり、電力供給装置30によって電力供給される。この目的のため、直流/直流コンバータ(図示せず)は、中間回路の直流電圧をファンの正規電圧に適合させてもよく、例えば、直流中間電圧を24ボルトに下方変換する。
【0042】
任意選択で、風力タービン10はプロセッサ70を備える。一実施形態において、プロセッサ70は、筐体20内に収納されている。代替実施形態において、プロセッサ70は、筐体20の外側に配置されている。プロセッサ70は、電力供給装置30の遮断抵抗器40への出力の大きさを制御するように構成されている。一実施形態において、プロセッサ70は更に、切替手段35を動作させるように構成されている。
【0043】
任意選択で、風力タービン10は温度センサー80を備える。温度センサー80は、少なくとも緊急エネルギー貯蔵装置50、筐体20及び制御回路構成55の温度を測定し、この温度データをプロセッサ70に提供するように構成されている。一実施形態において、温度センサー80は、緊急エネルギー貯蔵装置50の温度を直接測定する。代替実施形態において、温度センサー80は、筐体20内の空気の温度を測定して、緊急エネルギー貯蔵装置50の間接測定温度を提供する。温度センサー80は、ある実施形態においては継続的に測定を行い、別の実施形態においては時間的間隔を置いて測定を行う。プロセッサ70は、この温度データを受信し、緊急エネルギー貯蔵装置50及び/又は制御回路構成55を設定温度に維持するのに必要な電力供給装置30の遮断抵抗器40への出力を計算するように構成されている。プロセッサ70は、既知の方法でこの計算を実行する。一実施形態において、プロセッサ70は、電力供給装置30の出力と温度センサー80によって検知された、結果としてもたらされる温度変化との間の較正を受ける。更なる実施形態において、この較正は使用されているプロセッサによって動的に決定されてもよい。一実施形態において、プロセッサ70は、制御ループ・フィードバック機構を用いる。好ましい実施形態において、プロセッサは、緊急エネルギー貯蔵装置を-10℃より高く維持するのに必要な電力供給装置30の遮断抵抗器40への出力を計算する。更なる実施形態において、プロセッサは、緊急エネルギー貯蔵装置を-20℃より高く維持するのに必要な電力供給装置30の遮断抵抗器40への出力を計算する。従って、プロセッサは、緊急エネルギー貯蔵装置を任意の特に所望の温度又は温度範囲に維持してもよい。
【0044】
使用時、風力タービンの電気モーター15は、上記に説明したように、時に加速されて発電機モードになる。この電流が過剰で必要以上である状況、又は電気モーターへの負荷が大きくなる何らかの他の理由がある場合、遮断抵抗器40は、切替手段16によって電気モーター15の回路に接続される。このように、遮断抵抗器40は、電気モーターからエネルギーを吸収し、それを熱として放散する。そのような状況は、しかし、比較的稀であり、典型的には週に1度だけ発生する。従って、緊急エネルギー貯蔵装置又は任意のその他の部品が遮断抵抗器40によって過度に加熱される危険性は、風力タービンの通常動作中は非常に低い。
【0045】
切替手段16の状態及び電気モーター15と遮断抵抗器40との間の接続とは無関係に、工程S101において、温度センサー80は、緊急エネルギー貯蔵装置50の温度を継続的に測定し、そのデータをプロセッサ70に提供する。
【0046】
工程S102において、プロセッサ70はまず、緊急エネルギー貯蔵装置50を所望の温度より高く維持するのに付加的な熱が必要かどうかを判定する。工程S102においてプロセッサ70が付加的な熱が必要であると判定した場合、プロセスは工程S113に進む。プロセッサ70が付加的な熱は必要ないと判定した場合、プロセスは工程S123に進む。
【0047】
工程S113において、プロセッサ70は、遮断抵抗器40に通す電流の大きさ、及びこの電流がどれだけの時間流れる必要があるかを計算する。この計算は既知の方法で行われる。
【0048】
工程S114において、プロセッサ70は、切替手段35を動作させることによって電力供給装置30を遮断抵抗器40に接続し、電力供給装置30の出力を工程S115における必要な電流に設定する。これらの工程が任意の順序で行われても、あるいは単一の工程に組み合わされてもよいことは、当業者にとって明らかとなるであろう。
【0049】
工程S116において、この電流が遮断抵抗器40を通り、遮断抵抗器40がオーム加熱により熱を生成する。遮断抵抗器の周囲の熱風が、その後、電力供給装置30によって電力供給されるファン60によって筐体20内にくまなく分散される。筐体20は、遮断抵抗器からの熱出力を閉じ込めるのに役立ち、緊急エネルギー貯蔵装置50の局所的熱環境を画定して、その温度のより正確な制御を可能にする。全ての部品が直流電源方式であるため、交流電源方式のファン・ヒーターを用いる従来の風力タービン10の場合のように、筐体20を通して中性線を配線する必要はない。この制約を排除することによって、風力タービン10の配線効率の更なる最大化が可能になるとともに、上述したようにパーツ数の低下という利点が提供される。また、遮断抵抗器40及び緊急エネルギー貯蔵装置50を同一の筐体20内に配置するによって、メンテナンス時のこれら両者へのより容易いアクセスが可能になるとともに、スペースにより重きが置かれてもよい場合に、本来なら遮断抵抗器40が設置されてもよい場所のスペースがセーブされる。
【0050】
熱は、従って、緊急エネルギー貯蔵装置50に与えられる。緊急エネルギー貯蔵装置50用熱源としての遮断抵抗器40のこの二次的使用モードを備えることによって、風力タービン10の既存の部品の有用性が最適化される。更に、このことは、付加的な単独型加熱素子の必要性を、それらに付随する不利点とともに解消する。従来の交流電源方式のファン・ヒーターは、ヒステリシスを被り、付加的な回路構成を必要とすることが知られている。これらの素子を排除することによって、風力タービン10の全体的なパーツ点数が減少し、スペースや重量がセーブされ、設置及びメンテナンスの費用及び複雑性が低下する。
【0051】
これら一連の工程は、その後、工程S101にリセットされ、工程S101において、温度センサー80が、緊急エネルギー貯蔵装置50の温度の測定を続行し、プロセスが再開される。工程S101からS116は、温度を一定レベルに保つ閉制御ループを構成する。従って、緊急エネルギー貯蔵装置50の温度は、プロセッサ70からの指令に従って正確に維持又は変更されることが可能である。
【0052】
工程S123において、工程S102における加熱は不要であるとの決定に従い、プロセッサ70は、切替手段35を動作させることによって遮断抵抗器40を電力供給装置30から接続解除する。
【0053】
従って、電力供給装置30と、緊急エネルギー貯蔵装置50と、電気モーター15と、遮断抵抗器40とを備える風力タービン10であって、電気モーター15が、第1の電流が遮断抵抗器40を流れて、電気モーター15の余分な運動エネルギーが熱に変換されるように、遮断抵抗器40と随時電気的に接触しており、電力供給装置30が、遮断抵抗器40が熱を生成するように第2の電流を遮断抵抗器40に流すように構成され、遮断抵抗器40と緊急エネルギー貯蔵装置50が、遮断抵抗器40が緊急エネルギー貯蔵装置50に熱を与えるように配される、風力タービン10が提供される。

図1
図2