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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】医療システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/00 20060101AFI20220414BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
A61N7/00
A61M25/00 540
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017244995
(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2019110982
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 隆
(72)【発明者】
【氏名】大橋 和俊
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】北川 ともみ
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 太輝人
【審査官】安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-515012(JP,A)
【文献】特開平11-239619(JP,A)
【文献】特表2006-510397(JP,A)
【文献】米国特許第07144407(US,B1)
【文献】特開2017-035505(JP,A)
【文献】特開2010-252922(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0082584(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 7/00
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液脳関門の近傍で超音波を照射する振動子ユニットと、前記振動子ユニットを先端に回転可能に取り付ける駆動シャフトと、前記駆動シャフトを長手方向を回転軸として回転させる駆動部と、前記患者の前記血液脳関門に薬剤を供給する薬剤供給部と、を備え
前記駆動部は、前記駆動シャフトを回転させることにより前記駆動シャフトに取り付けられた前記振動子ユニットが前記血液脳関門の近傍において超音波を放射方向に照射することを可能にする医療システム。
【請求項2】
前記薬剤供給部と接続され、前記薬剤供給部から供給された薬剤を流通可能なルーメンを有する薬剤送出カテーテルを備え、前記駆動シャフトが前記薬剤送出カテーテルのルーメンに収容可能とされている請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記駆動シャフトを長手方向に進退移動させる移動部を備える、請求項1又は請求項2に記載の医療システム。
【請求項4】
ガイドワイヤが進退移動可能なガイドワイヤルーメンを備える、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の医療システム。
【請求項5】
前記患者の体外に配置され、前記患者の血管の外部から神経又は前記神経の周辺組織に刺激を付与して前記患者の前記血液脳関門を広げる刺激付与部を備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の医療システム。
【請求項6】
前記薬剤送出カテーテルが血管内に挿入された状態において血管を拡張可能な拡張部材を備える請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の医療システム。
【請求項7】
前記刺激付与部は、前記患者の頭部の外部周辺に配置した状態において前記頭部に電気刺激を付与する電極を備える請求項5又は請求項6に記載の医療システム。
【請求項8】
前記刺激付与部は、患者の周囲に匂いを付与するディフューザーを備える請求項5~請
求項7のいずれか1項に記載の医療システム。
【請求項9】
前記刺激付与部は、室内の温度を調整するエアーコンディショナーを備える請求項5~請求項8のいずれか1項に記載の医療システム。
【請求項10】
前記医療システムは、前記血管内の画像を生成する際に前記血管に照射した超音波の反射波を受信するセンサをさらに備える、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー等の症状に対する治療方法が研究されている。アルツハイマー等の症状の治療には薬物投与が考えられる。また、アルツハイマーの治療には脳血管中に存在するアミロイドβと呼ばれる物質を脳血管から排出することが症状の緩和につながり得るといわれている。しかしながら、脳血管には血液脳関門と呼ばれる部位がある。血液脳関門はアミロイドβの排出を制限しており、投与された薬剤が該当部位へ送達されることを阻害していると言われている。
【0003】
このように、薬剤の投与又はアミロイドβの排出は血液脳関門によって阻害されるため、これらを行うためには血液脳関門を広げることが必要になると言われている。血液脳関門を広げる従来の方法には脳に超音波を照射することが挙げられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2017-515839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の方法では、血液脳関門を広げることが十分でない場合があり、血液脳関門を効果的に広げ得る方法が要請されている。
【0006】
そこで本発明は、血液脳関門を効果的に広げることが可能な医療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る医療システムは、患者の血液脳関門の近傍で超音波を照射する振動子ユニットと、前記振動子ユニットを先端に回転可能に取り付ける駆動シャフトと、前記駆動シャフトを長手方向を回転軸として回転させる駆動部と、前記患者の前記血液脳関門に薬剤を供給する薬剤供給部と、を備える。駆動部は、駆動シャフトを回転させることにより駆動シャフトに取り付けられた振動子ユニットが血液脳関門の近傍において超音波を放射方向に照射することを可能にする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る医療システムによれば、血液脳関門を効果的に広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る医療システムを構成する超音波カテーテルを示す図である。
図2】医療システムを構成する刺激付与部について示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る処置方法を示すフローチャートである。
図4】薬剤送出カテーテルの先端開口部が目的部位近傍に到達した状態を示す図である。
図5】超音波カテーテルから目的部位に超音波を照射する際を示す図である。
図6】目的部位において血液脳関門が広げられた状態を示す図である。
図7】第2実施形態とその変形例に係る刺激付与部について示す図である。
図8】第3実施形態に係る薬剤送出カテーテルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。なお、図面には適宜座標系を図示している。座標系のxは後述する長尺状の超音波カテーテル100の長手方向を示す。y、zは長手方向xと直交する方向を示す。
【0011】
(医療システム)
図1、2は本発明の実施形態に係る処置方法に用いられる医療システムを示す図である。
【0012】
本実施形態に係る医療システムは、図1、2を参照して概説すれば、患者の脳血管内に導入されて脳血管における血液脳関門に超音波を照射する長尺の超音波カテーテル100を有する。医療システムは、超音波カテーテル100を収容可能に構成するとともに薬剤を先端から送出可能なルーメン210を備える長尺の薬剤送出カテーテル200と、患者の血管外部から神経に刺激を付与する刺激付与部500と、を有する。医療システムは、薬剤送出カテーテル200に接続され、薬剤送出カテーテル200のルーメン210にマイクロバブルを含む流体を流通させる泡発生部400と、ルーメン210に薬剤を供給する薬剤供給部300を有する。超音波カテーテル100は、本明細書において長尺状の医療器具に相当する。以下、詳述する。
【0013】
(超音波カテーテル)
超音波カテーテル100は、図1に示すように長尺のシャフト部10と、脳血管に超音波を照射する照射部20と、照射部20が貫通し、シャフト部10より基端側に位置するハブと、照射部20を操作する操作部と、を有する。
【0014】
シャフト部10は、照射部20を進退移動させる照射部ルーメン11を備えた長尺状の第1シャフト部12と、第1シャフト部12と一体的に設けられガイドワイヤGが進退移動可能なガイドワイヤルーメン13を備える第2シャフト部14と、を備える。
【0015】
照射部20は、図1に示すように超音波を血管に照射可能な振動子ユニット21と、振動子ユニット21を先端に回転可能に取り付ける長尺状の駆動シャフト22と、を備える。
【0016】
超音波カテーテル100は、駆動シャフト22を長手方向xを回転軸として回転させる駆動部(図示省略)と、駆動シャフト22を長手方向xに進退移動させる移動部(図示省略)と、を備える。超音波カテーテル100は、振動子ユニット21から超音波を照射するように制御する制御部(図示省略)と、を備える。超音波カテーテル100は、公知の超音波カテーテルにおける振動子ユニットが超音波の送信(照射)機能のみ有し、受信機能を有さない点以外は当該超音波カテーテルと同様に構成している。そのため、詳細な説明を省略する。
【0017】
(薬剤送出カテーテル)
薬剤送出カテーテル200は長尺状の管状部材にて構成している。薬剤送出カテーテル200は、図1に示すように脳血管における血液脳関門に送出される薬剤を基端側から先端側に流通可能なルーメン210と、ルーメン210を流通した薬剤を脳血管に送出する先端開口部220と、を備える。ルーメン210には、薬剤供給部300からの薬剤と泡発生部400からのマイクロバブルを含む流体と、を流通させることができる。なお、先端開口部220から送出する薬剤はシロスタゾール等を挙げることができるが、これに限定されない。
【0018】
(薬剤供給装置)
薬剤供給部300は薬剤送出カテーテルの基端側で接続され、ポンプ等によって薬剤を供給する公知の装置と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0019】
(泡発生部)
泡発生部400は、薬剤送出カテーテル200のルーメン210においてマイクロバブルを基端側から先端側に流通させて脳血管に送達する。泡発生部400は、吸入した空気を気液混合させて先端側から送出するポンプ等を挙げることができるが、これに限定されない。
【0020】
(刺激付与部)
刺激付与部500は、図2に示すように患者の頭部に装着可能に構成されるヘッドキャップ510と、ヘッドキャップ510に取り付けられ、患者の頭部に電気刺激を付与する電極520と、を備える。刺激付与部500は、電極520に電力を供給する電力源530と、電力源530と電極520とを電気的に接続するケーブル540と、を備える。
【0021】
ヘッドキャップ510は、患者の額に嵌る程度の大きさに構成され、略半球状に構成している。電極520は、ケーブル540を通じて電力源530と接続され、電力源530から供給された電力を患者の頭部外表面から電気刺激として供給可能に構成している。なお、ケーブル540は電極320の数に応じて複数設けられるが、図2では便宜上、図示を簡略化している。
【0022】
(処置方法)
次に図3から図6を参照して、本実施形態の処置方法について説明する。図3は本発明の実施形態に係る処置方法を示すフローチャート、図4図6は脳血管内において血液脳関門Bに超音波を照射する際を示す図である。
【0023】
図3を参照して本実施形態に係る処置方法について概説すれば、所定部位から超音波カテーテル100を導入(ST1)し、超音波カテーテル100により超音波を血液脳関門Bに照射する(ST2)。そして、患者の頭部外部から電気刺激を付与(ST3)し、脳血管から超音波カテーテル100を抜去する(ST4)。以下、詳述する。
【0024】
まず、穿刺針(図示省略)を用いて穿刺部位を形成し、穿刺部位から造影剤を導入し、モニタにて造影画像を確認できるようにする。次に、穿刺部位からガイドワイヤGを総大腿動脈又は橈骨動脈等の生体管腔に挿入する。次に、穿刺部位にガイドワイヤGに沿わせてイントロデューサーシースを生体管腔に挿入する。次に、ガイドワイヤGに沿わせて薬剤送出カテーテル200をイントロデューサーシースに挿通させる。薬剤送出カテーテル200の先端にはX線不透過性のマーカが設けられており、X線造影画像において薬剤送出カテーテル200の位置を認識することができる。
【0025】
図4に示すように薬剤送出カテーテル200が脳血管における血液脳関門Bの付近の脳動脈に到達したら、超音波カテーテル100のガイドワイヤルーメン13にガイドワイヤGを挿通させる。次に、ガイドワイヤGに沿わせて超音波カテーテル100を薬剤送出カテーテル200のルーメン210に挿入する。そして、X線造影画像を確認しながら超音波カテーテル100を移動させ、超音波カテーテル100の照射部20を薬剤送出カテーテル200の先端開口部220から露出させる(ST1、図5参照)。
【0026】
造影画像によって超音波カテーテル100の照射部20が血液脳関門Bが位置する脳動脈の近傍に移動したことを確認したら、駆動部により振動子ユニット21に電力を供給する。そして、血液脳関門Bを広げられるよう、神経又は周辺組織に刺激を付与するために駆動シャフト22を回転させて血液脳関門Bの近傍で振動子ユニット21から超音波を放射方向に照射する(ST2)。なお、ここで医療器具にあたる超音波カテーテル100の照射部20を血液脳関門Bの近傍まで移動させた状態とは、照射部20の半径30mm程度の範囲内に血液脳関門Bが位置した状態を意味する。
【0027】
血液脳関門Bは、通常、特定の物質以外は脳へ送達しないように閉じているものの、超音波の照射によって一時的に広げられることが判明している。そのため、超音波カテーテル100から超音波を照射し、血液脳関門Bを広げた状態で薬剤送出カテーテル200の先端開口部220から薬剤を送出することによって、薬剤を脳へ効果的に送達することができる。
【0028】
また、薬剤の送出の際には、泡発生部400から薬剤とともにマイクロバブルを発生させることによって、マイクロバブルによる血液脳関門Bの拡張が期待できる。そのため、使用する薬剤を減らすことが期待でき、効率的に血液脳関門Bを広げることができる。
【0029】
また、血液脳関門Bは外部からの刺激によっても拡張し得る。そのため、図2に示すように、患者の頭部に刺激付与部500を装着させ、超音波カテーテル100による超音波の照射と近接した時間帯に血管の外部から神経又は周辺組織に電気刺激を付与する(ST3)。これによって、超音波カテーテル100からの超音波の照射と同様に血液脳関門Bを血管外部からの刺激によって広げることができる。このように血液脳関門Bを複数の手段によって広げることで薬剤を効果的に脳に送達することができる。ここで、刺激付与部500が刺激を付与する際の神経の周辺組織とは、対象とする神経から数mm程度以内の範囲の組織を意味する。また、上述した近接した時間帯について、超音波カテーテル100と刺激付与部500による超音波の照射は、超音波カテーテル100と刺激付与部500による相乗効果が期待できれば、どちらが先であってもよい。
【0030】
薬剤の送出が終了したら、薬剤送出カテーテル200から超音波カテーテル100を抜去し、薬剤送出カテーテル200を脳動脈から抜去する(ST4)。そして、刺激付与部500を患者の頭部から取り外す。
【0031】
以上に説明したように、本実施形態に係る処置方法では超音波を照射可能な照射部20を備えた長尺状の超音波カテーテル100の照射部20を血管内における血液脳関門Bの近傍まで移動させる。そして、血液脳関門Bの近傍で照射部20から超音波を照射するとともに、血管の外部から刺激付与部500によって神経又は周辺組織に刺激を付与して血液脳関門Bを広げるように構成している。そのため、超音波カテーテル100と刺激付与部500の複数の手段によって血液脳関門Bを効果的に広げ、薬剤等を脳に効果的に送達できる。
【0032】
また、刺激付与部500による神経への刺激の付与は、電極520から患者の頭部に電気刺激を付与することによって行うことができる。
【0033】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態及びその変形例に係る刺激付与部500a、500bについて示す図である。第1実施形態では刺激付与部500が電極520から神経に電気刺激を付与すると説明した。しかし、以下のように構成することもできる。なお、第2実施形態では刺激付与部500a、500bの構成のみが第1実施形態と異なり、超音波カテーテル100、薬剤送出カテーテル200、泡発生部400及び薬剤供給部300は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0034】
患者の外部から与えられる刺激には、患者の嗅覚を通じて患者の周囲に匂いを付与することによって血液脳関門Bを広げることが考えられる。上記匂いには、ベルガモットやラベンダーといったリラックスする香りを挙げることができる。
【0035】
刺激付与部500aは、図7に示すように患者のいる部屋内に設置され、匂いの源となる香り成分を患者の周囲に照射可能なディフューザーによって構成するができる。刺激付与部500aをこのように構成することによって超音波カテーテル100とともに血液脳関門Bを広げ、患者の脳に薬剤を効果的に送達することができる。
【0036】
また、血液脳関門Bは患者の触覚に対して刺激を付与することによっても広げ得る。そのため、第2実施形態の変形例として、刺激付与部500bは、患者の部屋内に設置され、患者の周囲の雰囲気温度を所定温度に調整するエアーコンディショナーとして構成することができる。刺激付与部500bは、室内を例えば37度以上に加温することができる。これによって超音波カテーテル100とともに血液脳関門Bを上記と同様に広げ、患者の脳内に薬剤を効果的に送達することができる。
【0037】
(第3実施形態)
図8は第3実施形態に係る薬剤送出カテーテル200aを用いた薬剤の送達について示す図である。なお、第3実施形態では薬剤送出カテーテル200aのみが第1実施形態と異なり、超音波カテーテル100、薬剤供給部300、泡発生部400及び刺激付与部500は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0038】
第3実施形態において薬剤送出カテーテル200aは、図8に示すように先端開口部220の近傍にバルーン230を備える。薬剤送出カテーテル200aは、ルーメン210aを備える。ルーメン210aは、薬剤を送達するルーメンとバルーン230を拡張させるルーメンと、を備える。その他の構成は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、バルーン230は本明細書において患者の血管内に挿入され、拡張可能な拡張部材に相当する。
【0039】
第3実施形態に係る処置方法では、薬剤送出カテーテル200aの先端開口部220が血液脳関門Bの付近に到達した状態で薬剤を先端開口部220から送出する前にバルーン230を拡張させる。その後、先端開口部220から薬剤を血液脳関門Bに送出する。これにより、血液脳関門Bから薬剤を患者の脳に送達する際に血流を低下させることで血液が脳に過剰に流入することを防止できる。その他の手順は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。上記では、刺激付与部500が患者の血管外部から電気刺激や匂い等の刺激を付与すると説明したが、これに限定されない。上記以外にもカプサイシン等の血管拡張を引き起こす物質を経口投与することによって血液脳関門Bを広げるように構成してもよい。
【0041】
また、上記ではエアーコンディショナーに相当する刺激付与部300bによって室内を加温して血管を拡張させ、血液脳関門Bを広げるようにしたが、これに限定されない。エアーコンディショナーによって室温を低下させて血液脳関門Bを収縮させ、隣接する血液脳関門B同士の間隔を大きくすることで血液脳関門Bを広げて薬剤等を投与するように構成してもよい。
【0042】
また、上記では刺激付与部500の電極520から電気刺激を付与する実施形態について説明したが、これに限定されない。上記以外にも電極の代わりに患者の頭皮等に接触させた状態で超音波を照射可能なプローブなどを用いて血管の外部から超音波を照射するとともに超音波カテーテル100を用いて血管の内部からも超音波を照射して患者の血液脳関門Bを広げるようにしてもよい。また、プローブによる超音波は一点に集束させて上記と同様の効果を効率的に得るようにしてもよい。また、プローブから照射する媒体は超音波に限定されず、患者の周囲に磁場をかけるように構成してもよい。
【0043】
また、上記では超音波カテーテル100によって超音波を血液脳関門Bに照射すると説明したが、これに限定されない。薬剤送出カテーテル200から血管を拡張させる薬剤を投与し、その後に超音波の照射及びアルツハイマー等に効能のある薬剤を送出するように構成してもよい。また、上記では超音波カテーテル100が、超音波を受信する機能を有さないと説明したが、これに限定されない。上記以外にも超音波を送信する機能のみのユニットと血管内の断層画像生成のために超音波を送受信する機能を備えたイメージングユニットを備えたデュアルタイプの振動子を備えるように構成してもよい。これにより、血管内の様子を確認しながら超音波の照射を実施することができる。また、振動子ユニットの構成は、上記に代えて、血管内に超音波を照射する機能と上記画像生成のために超音波を送受信する機能を一つのユニットで実現するように構成してもよい。
【0044】
また、上記ではアミロイドβの排出を促すために超音波を照射する実施形態について説明したが、MRIによればアミロイドβの蓄積状況をマッピングできることが考えられる。そのため、MRIによってアミロイドβの蓄積状況を把握したうえで、超音波を照射する脳動脈の部位を特定してもよい。
【符号の説明】
【0045】
20 照射部、
100 超音波カテーテル(医療器具)、
200 薬剤送出カテーテル、
230 バルーン(拡張部材)、
300 薬剤供給部、
400 泡発生部、
500、500a、500b 刺激付与部、
B 血液脳関門。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8