IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 水澤化学工業株式会社の特許一覧

特許7058131硫酸改質Y型ゼオライト及びその製造方法
<>
  • 特許-硫酸改質Y型ゼオライト及びその製造方法 図1
  • 特許-硫酸改質Y型ゼオライト及びその製造方法 図2
  • 特許-硫酸改質Y型ゼオライト及びその製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】硫酸改質Y型ゼオライト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/24 20060101AFI20220414BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220414BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20220414BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20220414BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
C01B39/24
B01J20/28 Z
B01J20/30
A61L9/01 B
B01J20/18 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018009534
(22)【出願日】2018-01-24
(65)【公開番号】P2019127410
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000193601
【氏名又は名称】水澤化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】藤原 隆
(72)【発明者】
【氏名】近藤 優和
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕史
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 祐太
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-110919(JP,A)
【文献】特開2012-140287(JP,A)
【文献】特開2011-246339(JP,A)
【文献】特開平05-097428(JP,A)
【文献】LIU Zhanjun et al.,Journal of Nanotechnolgy,2016年,volume2016,1-6,http://dx.doi.org/10.1155/2016/1486107
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-39/54
B01J 20/00-38/76
A61L 9/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO/Alモル比が3.0~6.0の範囲にあり且つY型ゼオライトに特有の結晶構造を有していると共に、110℃で1時間乾燥させた後、5gを量り取り、25℃の純水95gを用いて5%スラリーとし、これを18時間攪拌した後に濾過し、次いで濾過固形分に50gの純水を通す操作を3回行い、得られた洗浄固形分を110℃で1時間乾燥した後に測定して、SO/Alモル比が0.00050以上の範囲にあることを特徴とする硫酸改質Y型ゼオライト。
【請求項2】
NaO/Alモル比が0.1~1.5の範囲にあり、110℃で1時間乾燥させた後、5gを量り取り、25℃の純水95gを用いて5%スラリーとし、これを18時間攪拌した後に濾過し、次いで濾過固形分に50gの純水を通す操作を3回行い、得られた洗浄固形分を110℃で1時間乾燥した後に測定して、SO/Alモル比が0.00050~0.20の範囲にある請求項1に記載の硫酸改質Y型ゼオライト。
【請求項3】
結晶度が20%以上の範囲にあり且つNH3-TPD法により測定した酸量が1.0~3.0mmol/gの範囲にあり、110℃で1時間乾燥させた後、5gを量り取り、25℃の純水95gを用いて5%スラリーとし、これを18時間攪拌した後に濾過し、次いで濾過固形分に50gの純水を通す操作を3回行い、得られた洗浄固形分を110℃で1時間乾燥した後に測定して、SO/Alモル比が0.00050~0.20の範囲にある請求項1に記載の硫酸改質Y型ゼオライト。
【請求項4】
SiO/Alモル比が3~60の範囲となるようにSi源とAl源とを含むアルミノシリケートゲルを、60℃未満の温度で撹拌熟成し、
次いで、硫酸水溶液を添加し、熟成を行い、
この後、60~120℃の温度で8~24時間加熱して結晶化反応を行うこと、
を特徴とする請求項1に記載の硫酸改質Y型ゼオライトの製造方法。
【請求項5】
硫酸水溶液のみ、または、硫酸水溶液及び硫酸塩を用いて、結晶化反応前のSO/Alモル比が1.30以上の範囲となるように組成調整する工程を含む請求項4に記載の硫酸改質Y型ゼオライトの製造方法。
【請求項6】
前記結晶化反応により得られた反応物をろ過分離した後、アンモニウム塩水溶液を用いてイオン交換し、次いで、得られたイオン交換体を焼成する工程を含む請求項4または5に記載の硫酸改質Y型ゼオライトの製造方法。
【請求項7】
前記焼成を300~800℃の範囲で行う請求項6に記載の硫酸改質Y型ゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸根を含む硫酸改質Y型ゼオライト及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、Y型ゼオライトは、その特異な細孔構造により、除湿剤、各種触媒、アンモニア吸着剤(消臭剤)などの用途に広く使用されている。
ところで、このようなY型ゼオライトの特性、特に触媒やアンモニア吸着剤などとしての特性は、該ゼオライトが有する酸量を増大させることにより、大幅に向上するものと期待されるが、このような試みはほとんどされていないのが現状である。
【0003】
例えば、特許文献1や特許文献2には、Y型ゼオライト或いはホージャサイト(FAU)型ゼオライトを硫酸等の酸で処理することが提案されている。しかしながら、このような酸処理の手段では、ゼオライト中のAl分が溶出し、Y型ゼオライトの細孔分布が大きく変化すると共に、用いた酸はAl分の溶出に消費される。このため、ある種の物質に対する吸着性は増大するものの、酸量の増大による特性向上はほとんど期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-188858号
【文献】特開平05-097428号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、Y型ゼオライトに特有の結晶構造を有しており、増大した酸量を有する改質Y型ゼオライトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、Y型ゼオライトを製造する際、結晶化反応前に、硫酸水溶液処理及び硫酸塩処理による組成調整を行っておくことにより、Y型ゼオライトの結晶構造を変化させることなく、硫酸根が結晶構造中に組み込まれ、保有酸量が増大した改質Y型ゼオライトが得られるという知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明によれば、SiO/Al(モル比)が3.0~6.0の範囲にあり且つY型ゼオライトに特有の結晶構造を有していると共に、110℃で1時間乾燥させた後、5gを量り取り、25℃の純水95gを用いて5%スラリーとし、これを18時間攪拌した後に濾過し、次いで濾過固形分に50gの純水を通す操作を3回行い、得られた洗浄固形分を110℃で1時間乾燥した後に測定して、SO/Alモル比が0.00050以上の範囲にあることを特徴とする硫酸改質Y型ゼオライトが提供される。
【0008】
本発明の硫酸改質Y型ゼオライトは、大別して、次の2つのタイプがある。
(1)NaO/Alモル比が0.1~1.5の範囲にあり、110℃で1時間乾燥させた後、5gを量り取り、25℃の純水95gを用いて5%スラリーとし、これを18時間攪拌した後に濾過し、次いで濾過固形分に50gの純水を通す操作を3回行い、得られた洗浄固形分を110℃で1時間乾燥した後に測定して、SO/Alモル比が0.00050~0.20の範囲にあるもの(Naイオン型およびイオン交換体)。
(2)結晶度が20%以上の範囲にあり且つNH3-TPD法により測定した酸量が1.0~3.0mmol/gの範囲にあり、110℃で1時間乾燥させた後、5gを量り取り、25℃の純水95gを用いて5%スラリーとし、これを18時間攪拌した後に濾過し、次いで濾過固形分に50gの純水を通す操作を3回行い、得られた洗浄固形分を110℃で1時間乾燥した後に測定して、SO/Alモル比が0.00050~0.20の範囲にあるもの(プロトン型)。
【0009】
本発明によれば、また、SiO/Al(モル比)が3~60の範囲となるようにSi源とAl源とを含むアルミノシリケートゲルを、60℃未満の温度で撹拌熟成し、
次いで、硫酸水溶液を添加し、熟成を行い、
この後、60~120℃の温度に加熱して結晶化反応を行うこと、
を特徴とする前記硫酸改質Y型ゼオライトの製造方法が提供される。
【0010】
本発明の製造方法においては、
(1)硫酸塩を用いて、結晶化反応前のSO/Alモル比が1.30以上の範囲となるように組成調整する工程を含むこと、
(2)前記結晶化反応により得られた反応物をろ過分離した後、アンモニウム塩水溶液を用いてイオン交換し、次いで、得られたイオン交換体を焼成する工程を含むこと、
という手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硫酸改質Y型ゼオライトは、Y型ゼオライトに特有の結晶構造を有していると同時に、一定量の硫酸根が構造中に安定に組み込まれており、従来公知のY型ゼオライトと同等の水分吸着性を示すばかりか、酸量が増大している。このことから、酸触媒としての機能が増大し、またアンモニア等の塩基性ガスに対する吸着性が大幅に向上し、特にプロトン型に転換されたものは、固体酸としての特性がより高められている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】比較例1および比較例2で用いたY型ゼオライトのX線回折像を示す図。
図2】実施例7および実施例8で用いた硫酸改質Y型ゼオライトのX線回折像を示す図。
図3】比較例2、実施例2および実施例8のNH-TPD法により測定したアンモニア検出ピークを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の硫酸改質Y型ゼオライトは、Y型ゼオライトの構造中に一定量の硫酸根が導入されているものであり、110℃で1時間乾燥させた後、5gを量り取り、25℃の純水95gを用いて5%スラリーとし、これを18時間攪拌した後に濾過し、次いで濾過固形分に50gの純水を通す操作を3回行い、得られた洗浄固形分を110℃で1時間乾燥した後に測定して、SO/Alモル比が0.00050以上、好ましくは0.00050~0.20、特に好ましくは0.0010~0.15、最も好ましくは0.0050~0.10の範囲にある。即ち、硫酸根が、結晶化反応後の酸処理或いは酸洗浄等により、Y型ゼオライトに付着しているに過ぎない場合には、上記の洗浄により硫酸根は除去されてしまうため、SO/Alモル比が上記のような大きな値を示さないが、本発明では、この硫酸根がY型ゼオライトの構造中に安定に組み込まれているため、SO/Alモル比が少なくとも0.00050以上の値を示すものである
【0014】
このように硫酸根の導入により改質された本発明の硫酸改質Y型ゼオライトは、Naイオン型およびそのイオン交換体とプロトン型とに大別されるが、大まかに言って、Y型ゼオライトへの結晶化反応に先立って改質のための硫酸を加えておくという手法を採用することにより、硫酸根が組み込まれたNaイオン型のY型ゼオライトが得られ、このNaイオン型のY型ゼオライトをアンモニウムイオンで交換した後に焼成を行うことにより、硫酸根が組み込まれたプロトン型のY型ゼオライトが得られる。
【0015】
<Naイオン型の硫酸改質Y型ゼオライト及びその製造>
本発明の硫酸改質Y型ゼオライトにおいて、Naイオン型のものは、Si源とAl源とを用いて、Y型ゼオライト前駆体であるアルミノシリケートゲルを調製し、次いで、改質剤である硫酸水溶液を前記ゲルに添加し、熟成を行い、改質Y型ゼオライトの前駆体である硫酸改質アルミノシリケートゲルを得、この後、結晶化反応を行うことにより合成される。
【0016】
Y型ゼオライトの前駆体であるアルミノシリケートゲルを調製するに際して、Si源とAl源との量比は、Y型ゼオライトを形成し得る範囲であり、具体的には、SiO/Alモル比が3~60、好ましくは3~50、特に好ましくは3.0~20の範囲となる量で、Si源とAl源とが混合される。
【0017】
アルミノシリケートゲルの調製に用いられるSi源としては、例えば、ケイ酸ソーダ、沈降シリカ、シリカゲル、コロイダルシリカ、フュームドシリカ及びオルトケイ酸テトラエチルなどがあり、好ましくはケイ酸ソーダを用いることができる。また、Al源としては、例えば、アルミン酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、及び硫酸アルミニウムなどがあり、好ましくはアルミン酸ソーダを用いることができる。アルミノシリケートゲルの調製に用いられる原料はいずれも、あらかじめ水と混合して濃度調整を行い、前記ゲルの調製に用いることができる。
【0018】
上記のアルミノシリケートゲルを、60℃未満の温度、好ましくは10~40℃の温度で撹拌下に熟成することにより、Si源とAl源とがY型ゼオライトの結晶を生成し得るように配向してアルミノシリケートゲルが生成する。この場合の熟成時間は、用いる液量や撹拌の程度によっても多少異なるが、通常、1時間以上、好ましくは2~3時間程度である。
【0019】
また、このようなY型ゼオライトの前駆体であるアルミノシリケートゲルを調製するに先立って、調製に用いるSi源の一部およびAl源の一部とを混合し、上記と同様の撹拌熟成を行い、結晶生成の核となるアルミノシリケートゾル(Crystallization Directing Agent:CDA)を生成させておくことが好ましい。CDAは、ある種の結晶を生成させる時、当該結晶がもっとも安定に速やかに生成される剤であり、CDAが液中に存在している状態で結晶化を行うと、CDAを核として結晶化が効率よく進行し、短時間且つ高収率で目的とする結晶を得ることができるというものである。
一般に、Y型ゼオライト形成のためのCDAは、例えばSiO/Alモル比が16±1.5と、極めて限定された範囲にあり、反応溶液総量の1~30質量%程度となるような量のCDAを生成するように設定される。
このようにしてCDAを生成した後、残りのSi源及びAl源を添加し、前述の撹拌熟成を行い、その後、結晶化反応を行うことにより、より高収率で目的とするY型ゼオライトを得ることが可能となる。
【0020】
上記のようにして得られたY型ゼオライトの前駆体であるアルミノシリケートゲルに対して、本発明においては、Y型ゼオライトの改質剤として硫酸水溶液を添加し、さらなる撹拌熟成を行う。即ち、この硫酸水溶液の添加により、Y型ゼオライトの生成に寄与していない一部のNa分が取り除かれると同時に、余剰の硫酸根がY型ゼオライトの構造内に存在するようにゲル中に取り込まれた硫酸改質アルミノシリケートゲル(硫酸改質Y型ゼオライトの前駆体)が生成することとなる。
このような硫酸添加後の熟成も、前述した撹拌熟成と同様、60℃未満の温度、好ましくは10~40℃程度の温度で、通常、30分以上、好ましくは2~3時間程度行われる。
【0021】
また、添加する硫酸水溶液の量は、通常、結晶化反応前のSO/Alモル比が1.30以上、特に1.30~2.0の範囲とするのがよい。この量が少ないと、硫酸による改質(硫酸根の構造中への組み込み)が不十分となってしまう。また、必要以上に多量の硫酸水溶液を使用すると、Y型ゼオライトを形成し得るように配向している前記ゲルが不安定な状態となり、また、過剰な酸の中和に大量のアルカリが必要となりコスト増となる。
また、用いる硫酸水溶液の濃度は、通常98質量%以下、好ましくは75質量%以下、特に5~40質量%が好適である。硫酸濃度が濃すぎると、硫酸水溶液を加えた際にアルミノシリケートゲルの粘性が増大し、攪拌が困難となる場合がある。
【0022】
さらに、本発明においては、硫酸水溶液添加に加えて、好ましくはアルミノシリケートゲルと硫酸水溶液を均一に混合した後に、硫酸塩を添加し、原料に由来する余剰のNaの捕捉に消費された分の硫酸根を補充し、結晶化反応前のアルミノシリケートゲルが目的とするSO/Alモル比となるように組成調整することが望ましい。
本発明の硫酸改質を達成するには、硫酸水溶液および硫酸塩の添加により、結晶化反応前のSO/Alモル比が1.30以上となるよう組成調整することが好ましい。
【0023】
本発明で組成調整に用いられる硫酸塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、及び明礬などがあり、好ましくは硫酸ナトリウムを用いることができる。用いる硫酸塩は固体の状態で用いることもできるが、アルミノシリケートゲルの粘性を考慮し、あらかじめ水溶液として用いることが望ましい。また、硫酸塩添加後の熟成は、前述したアルミノシリケートゲルの撹拌熟成、或いは、硫酸水溶液添加後の熟成によって省略することもでき、省略しない場合は、60℃未満の温度、好ましくは10~40℃程度の温度で、通常、30分以上、好ましくは2~3時間程度行われる。
【0024】
上記のように硫酸添加、及び必要に応じて硫酸塩の添加により組成調整を行った後、撹拌熟成を行い、改質Y型ゼオライトの前駆体である硫酸改質アルミノシリケートゲルを得た後、常法に従い、結晶化反応を行う。
この結晶化反応は、上記で得られた硫酸改質アルミノシリケートゲルを60~120℃の温度に加熱し、通常、8時間以上、特に16~24時間程度行われる。反応の終点は、Y型ゼオライトに特有のX線回折ピークが発現することにより確認することができる。
【0025】
結晶化反応後は、反応液を濾過し、適宜水洗することにより、目的とするNaイオン型の硫酸改質Y型ゼオライトが得られる。
このタイプの改質Y型ゼオライト(以下、Na-Y改質ゼオライトと呼ぶことがある)は、Y型ゼオライトに特有の結晶構造、即ちX線回折ピークを示し(図2参照)、しかも、NaO/Alモル比が、従来のY型ゼオライトと同様に0.1~1.5、好ましくは0.8~1.5、特に好ましくは0.9~1.2の範囲にあるが、特に重要な特徴は、後述する実施例に示されているように、110℃で1時間乾燥させた後、5gを量り取り、25℃の純水95gを用いて5%スラリーとし、これを18時間攪拌した後に濾過し、次いで濾過固形分に50gの純水を通す操作を3回行い、得られた洗浄固形分を110℃で1時間乾燥した後に測定して、SO/Alモル比が0.00050以上、好ましくは0.00050~0.20、特に好ましくは0.0010~0.15、最も好ましくは0.0050~0.10の範囲にあり、従来のY型ゼオライト(未改質Y型ゼオライト)に比して高い硫酸根濃度を示す。
【0026】
本発明において、上記のような条件で測定して高い硫酸根濃度を示すということは、硫酸根がY型ゼオライトの構造中に安定に組み込まれていることを示す。例えば、従来のY型ゼオライト(未改質Y型ゼオライト)に対して、単に硫酸による酸洗浄が行われているに過ぎない場合には、上記のように純水による洗浄後に測定した硫酸根濃度は、本発明に比してかなり低い値となる。即ち、本発明では、硫酸根がY型ゼオライトの構造中に組み込まれているため、純水による洗浄によって溶出せず、高い硫酸根濃度を示すわけである。
また、かかる硫酸根は、どのような状態でY型ゼオライトの構造中に組み込まれているかは明確に解明されていないが、Y型ゼオライトに特有のX線回折ピークは損なわれていないことから、ゼオライトの細孔内に保持される形で存在しているのではないかと思われる。
【0027】
このような硫酸根濃度を示すNa-Y改質ゼオライトは、Y型ゼオライトの細孔構造をそのまま保持しており、窒素吸着法で測定した細孔直径が17~3000Åでの細孔容積(全細孔容積)が、未改質のY型ゼオライトと同様、0.01~0.05cm/gの範囲にある。また、例えば、水蒸気BET法で測定した親水性比表面積が750m/g以上、好ましくは800m/g以上、特に好ましくは900~1200m/gの範囲にあり、水蒸気吸着等温線のP/P=0.9以上から求められる全細孔容積が好ましくは0.30cm/g以上である。この親水性比表面積は、一般的に比表面積測定に利用される窒素吸着の代わりに水蒸気吸着を利用して測定したものであり、この方法により測定された比表面積は、親水性や水分吸着性と密接に関係する。従って、本発明のNa-Y改質ゼオライトは、水分に対して優れた吸着性を示す。
【0028】
<プロトン型の硫酸改質Y型ゼオライト及びその製造>
Na-Y改質ゼオライトは、Naイオンを各種のカチオンと交換して様々な用途に用いることができるが、酸量をさらに増大させ、例えば、各種の触媒や塩基性ガスの吸着剤としての用途においては、これをプロトン型に転換すること(以下、プロトン変性と呼ぶことがある)により得られる、酸量がさらに増大した硫酸改質Y型ゼオライトを用いることが好ましい。
このタイプの改質Y型ゼオライト(以下、H-Y改質ゼオライトと呼ぶことがある)は、上述したNa-Y改質ゼオライトをアンモニウムイオンでイオン交換した後、焼成することにより得られる。
【0029】
上記のアンモニウムイオン交換は、上記のNa-Y改質ゼオライト中のNaイオンを水溶液中でアンモニウムイオンに交換するものである。即ち、Na-Y改質ゼオライトは高い耐熱性を有しているため、これを焼成によって変性するには、焼成温度を著しく高い温度とすることが必要であり、Y型ゼオライトの結晶構造を大きく破壊せずに水分吸着性を維持し得る程度の適度な変性が困難となってしまう。しかるに、Naイオンをアンモニウムイオンに交換しておけば、加熱によってアンモニウムイオンが分解した部分の細孔を焼成で容易にプロトン変性することが出来るため、Y型ゼオライトの結晶構造を大きく破壊せず、Naイオンを構造中から効果的に放出し、適度にプロトン変性することが可能となる。
【0030】
このようなカチオン交換は、NaO/Alモル比が0.1~0.8、特に0.2~0.5となる程度に行われる。Naイオンが多く残存すると、後述する焼成による適度なプロトン変性が困難となってしまう。また、Naイオンの残存は、硫酸根濃度が高いという特性による利点を阻害する恐れがあるため、NaO/Alモル比は上記範囲とすることが好ましい。
【0031】
さらに、かかるカチオン交換処理は、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩の水溶液を使用し、上述したNa-Y改質ゼオライトと該水溶液とを、室温で撹拌混合すればよいが、60℃程度に加熱すると反応をより迅速に行うことも可能である。処理時間は、アンモニウム塩の種類や水溶液のアンモニウム塩濃度によっても異なるが、一般に、2~40質量%濃度の塩化アンモニウム水溶液を用いた場合で0.5~24時間程度である。
【0032】
上記のようにしてカチオン交換処理が行われた後は、ろ過及び水洗を行い、未反応の塩化アンモニウムや生成したNa塩を除去する。以上のカチオン交換処理を必要に応じて1回或いは2回以上行うことで目的のNaO/Alモル比とした後、焼成を行い、Na-Y改質ゼオライトについて、適度なプロトン変性を行う。
【0033】
焼成は、Y型ゼオライトの結晶構造を大きく破壊せずに、細孔構造を適度に変える程度に行われるものであり、具体的には、結晶度が20%以上、好ましくは20~80%に低下する程度に焼成が行われる。
なお、本発明において結晶度とは、Y型ゼオライト標準物質(触媒学会のJRC-Z-Y4.8)のX線回折測定において、ICDD39-1380で(331)、(440)、(533)、(642)、(555)と示される5つの面指数のピーク強度の和を100%とした時の、Y型ゼオライト試料である(詳細は、後述の実施例を参照)。
【0034】
即ち、結晶度が上記範囲よりも大きいと、プロトン変性が十分に行われておらず、例えば、Naイオンが十分に放出されず、酸量の増大が望めない。また、結晶度が上記範囲よりも小さくなるまで焼成が行われると、Y型ゼオライトの結晶構造が大きく破壊され、非晶質化が進行しすぎてしまい、この結果、Y型ゼオライトに特有の結晶構造が損なわれてしまい、水分に対する吸着性が損なわれるばかりか、酸量の増大による特性向上も望めなくなってしまう。
【0035】
上記のような結晶度の範囲にするための適度な焼成は、一般に、300~800℃、特に400~600℃程度の焼成温度で行われ、それ自体公知の焼成炉を用いて行われる。焼成時間は、用いる焼成炉の構造や焼成温度によっても異なり、一概に規定することはできないが、一般的には3~12時間程度である。例えば、前述したY型ゼオライトをカチオン交換せずにそのまま焼成に供した場合、上記のような温度範囲での焼成では結晶度はほとんど低下せず、さらに高温にしなければ変性することができない。
【0036】
以上のようにして得られるプロトン型の硫酸改質Y型ゼオライト(H-Y改質ゼオライト)は、Y型ゼオライトの結晶構造が破壊されずに維持されているため、未改質のY型ゼオライト及びNa-Y改質ゼオライトと同様、Y型ゼオライトに特有のX線回折ピークを示す(図1および図2を参照)。
【0037】
また、このH-Y改質ゼオライトは、上述した焼成により結晶構造の一部が欠損するため、これにより、水による洗浄を行った場合には一部の硫酸根が放出されており、例えばNa-Y改質ゼオライトに比して若干硫酸根濃度が低下しているが、それでもSO/Alモル比は0.00050以上、特に0.00050~0.20の範囲にある。
【0038】
さらに、上述したカチオン交換及び焼成により、多くのNaイオンが放出されており、例えば、H-Y改質ゼオライトにおいて、NaO/Alモル比は、0.8以下、特に0.5以下の範囲である。
このようなNaイオン含量の低下に伴い、例えば後述する実施例に示すように、NH-TPD法により測定した酸量は、1.0~3.0mmol/g、特に1.5~2.5mmol/gの範囲にある。
【0039】
また、後述する実施例に示す方法で測定した煮沸pH及び電気伝導度を、Na-Y改質ゼオライトと比較すると、以下の通りである。
電気伝導度(μS/cm) 煮沸pH
Na-Y改質ゼオライト 10~150 8.0以上
H-Y改質ゼオライト 10~1500 8.0未満
即ち、Na-Y改質ゼオライトは、Naイオン、硫酸根を多く含んでいるが電気伝導度は低く、硫酸根が煮沸によっても溶出しないことを示している。H-Y改質ゼオライトでは、煮沸pHが低い値を示し酸量が増大した影響がみられる。
【0040】
さらに、上述したH-Y改質ゼオライトは、焼成によるプロトン変性によって細孔容積が若干変化しているが、水分に対する吸着性を損なうほどではない。例えば、窒素吸着法で測定した全細孔容積(細孔直径が17~3000Åでの細孔容積)は、0.04~0.12cm/gの範囲となる。また、例えば、水蒸気BET法で測定した親水性比表面積が700m/g以上、好ましくは800m/g以上、特に好ましくは900~1200m/gの範囲にあり、水蒸気吸着等温線のP/P=0.9以上から求められる全細孔容積が0.28cm/g以上(特に0.30~0.40cm/g)である。この親水性比表面積は、一般的に比表面積測定に利用される窒素吸着の代わりに水蒸気吸着を利用して測定したものであり、この方法により測定された比表面積は、親水性や水分吸着性と密接に関係する。従って、本発明のH-Y改質ゼオライトは、水分に対して優れた吸着性を示す。
【0041】
<用途>
上述した本発明の硫酸改質Y型ゼオライトは、用途に応じた粒径に粒度調整されて使用に供される。
かかる改質ゼオライトは、Y型ゼオライトに特有の結晶構造及び細孔構造を有しており、除湿剤、各種触媒、アンモニア吸着剤(消臭剤)などの用途に広く使用することができる。特に、Na-Y改質ゼオライト及びH-Y改質ゼオライトの何れも水分に対する吸着性に優れており、吸湿剤として使用することができる。また、Naイオンが放出されているH-Y改質ゼオライトは特に高い酸量を示すため、アンモニアガス等の塩基性ガスに対する吸着性も向上しており、このような塩基性ガスに対する吸着剤としても好適に使用され、さらに酸触媒などとしての用途にも好適に使用することができる。
【実施例
【0042】
本発明の優れた効果を、次の実施例で説明する。
なお、実施例における各種試験は下記の方法で行った。
【0043】
(1)化学組成;
元素分析については、(株)リガク社製Rigaku ZSX primus IIを用い、ターゲットはRh、分析線はKαで、その他は以下の条件で測定を行った。
なお、試料は80℃で1時間乾燥した物を基準とした。
【表1】
【0044】
(2)洗浄及び乾燥後のSO/Alモル比の測定
試料を110℃で1時間乾燥させた後、5gを量り取り、25℃の純水95gを用いて5%スラリーとした。これを18時間攪拌した後に濾過し、次いで濾過固形分に50gの純水を通す操作を3回行い、得られた洗浄固形分を110℃で1時間乾燥させた。この洗浄及び乾燥後の試料を(1)化学組成と同様に元素分析を行い、モル比を算出した。
【0045】
(3)結晶度の測定
相対湿度90%に調湿したデシケーターに試料を入れ、25℃で48時間以上静置し、水分を飽和量吸着させたものをX線回折測定した。同一条件で測定したNaイオン型のY型ゼオライト標準物質(触媒学会のJRC-Z-Y4.8)のX線回折測定において、ICDD39-1380で(331)、(440)、(533)、(642)、(555)と示される5つの面指数のピーク強度の和を100%とした時の、Y型ゼオライト試料の同一面指数ピーク強度の和の相対比を結晶度とした。
なお、X線回折測定は(株)リガク社製のultima4を用いて、Cu-Kαにて下記の条件で測定を行った。
ターゲット:Cu
フィルター:湾曲結晶グラファイトモノクロメーター
検出器:SC
電圧:40kV
電流:40mA
ステップサイズ:0.02°
計数時間:1.0sec/step
スリット:DS2/3° RS0.3mm SS2/3°
【0046】
(4)NH-TPD法による酸量の測定
触媒分析装置(日本ベル社製 BELCAT-A)を用いて酸量の測定を行った。測定試料0.1gを測定セルに充填し、ヘリウム気流中、500℃で1時間乾燥処理した。続いて100℃の条件下、5%アンモニア-ヘリウム混合ガスを50mL/minの流速で30分間流し、アンモニアを吸着させた。その後、水蒸気処理を行い、過剰なアンモニアを除去した。100℃から610℃まで昇温速度10℃/minで昇温しながらヘリウムを流速50mL/minで流し、脱離したアンモニア量を質量分析装置(日本ベル社製 BELMass)にて測定した。得られたアンモニア検出ピークの面積より酸量を求めた。
【0047】
(5)電気伝導度の測定
200mLガラスビーカーに110℃乾燥した試料を5g量り取り、イオン交換水を95g入れた。この5質量%縣濁液を5分間煮沸し、ウォーターバスで25℃に冷却した。煮沸操作で蒸発した分のイオン交換水を補った後、懸濁液の電気伝導度(μS/cm)を測定した。
【0048】
(6)pHの測定
前記電気伝導度の測定で用いた懸濁液のpHを測定した。
【0049】
(7)窒素吸着法による細孔容積
Micromeritics社製Tri Star 3000を用いて測定を行った。細孔直径が17~3000Åでの細孔容積(全細孔容積)は、P/P=0.975未満の窒素吸着量から求めた。
【0050】
(8)水蒸気BET法による親水性比表面積および細孔容積
日本ベル社のBelsorp‐aqua3 Maxを用いて水蒸気吸着等温線の測定を行った。前処理は、真空条件下で150℃、2時間の条件で行った。平衡判定時間は500秒とし、吸着温度は25℃とした。また、吸着質は脱泡処理を施した純水とした。親水性比表面積を算出するに当たり、BET法の適用範囲はP/P=0.01~0.1とし、解析ソフトBel Masterを用いた。また、P/P=0.93~0.97の範囲における吸着容量から、解析ソフトBel Masterにより全細孔容積を求めた。
【0051】
<比較例1>
(合成原料)
原料として3号ケイ酸ソーダ(SiO=22.9質量%、NaO=7.4質量%、HO=69.7質量%)、アルミン酸ソーダ(Al=23.0質量%、NaO=19.2質量%、HO=57.8質量%)、49質量%NaOHおよび水を使用した。
(アルミノシリケートゾルの調製)
撹拌条件下で、SiO:Al:NaO:HO=16.3:1:30:560となるように原料を混合し、25℃で2時間熟成してアルミノシリケートゾル342gを調製した。
(アルミノシリケートゲルの調製)
撹拌条件下で、調製したアルミノシリケートゾル、3号ケイ酸ソーダ、アルミン酸ソーダおよび水を混合した後に、25℃の温度で2時間撹拌熟成し、2000gのアルミノシリケートゲルを調製した。アルミノシリケートゲルの組成はSiO:Al:NaO:HO=16.3:1:10.2:510であった。
(結晶化反応および濾過水洗乾燥)
アルミノシリケートゲルを92℃の温度に加熱して18時間結晶化反応を行った。得られた反応液を濾過後、濾過ケーキに対して反応液の1.5倍量の水を通して洗浄し、回収した固形分を110℃で24時間乾燥することでNa-Y型ゼオライトを得た。
【0052】
<比較例2>
(アンモニウムイオン交換)
撹拌条件下、比較例1のNa-Y型ゼオライト50gを450gの水に分散し10質量%スラリーを得た。スラリーに対し50gの塩化アンモニウム(99%以上、BASF社製)を加え、25℃で24時間イオン交換反応を行った。得られたイオン交換スラリーを濾過水洗し、固形分を再度10%スラリーにしたのち、同様の交換反応を再度行うことでNaO/Alモル比0.24のNH-Y型ゼオライト(イオン交換体)を得た。
(焼成)
得られたNH-Y型ゼオライト40gを蒸発皿に入れ、マッフル炉を用いて460℃で6時間焼成することにより、H-Y型ゼオライトを得た。
【0053】
<実施例1>
比較例1と同様の方法で調製したアルミノシリケートゾル426gに対し、3号ケイ酸ソーダ、アルミン酸ソーダおよび水を混合した後に、25℃の温度で30分間撹拌熟成し、次いで、40質量%硫酸水溶液を添加し、25℃の温度で2時間撹拌熟成し、組成SiO:Al:NaO:HO:SO=10:1:7.4:360:1.4の硫酸改質アルミノシリケートゲル2066gを調製した。以降は比較例1と同様の操作によりNaイオン型の硫酸改質Y型ゼオライトを得た。
【0054】
<実施例2>
比較例1のNa-Y型ゼオライトの代わりに、実施例1の硫酸改質Y型ゼオライトを用いた他は、比較例2と同様の操作でプロトン型の硫酸改質Y型ゼオライトを得た。途中で得られた硫酸改質NH-Y型ゼオライト(イオン交換体)のNaO/Alモル比は0.25であった。
【0055】
<実施例3>
実施例1の硫酸改質アルミノシリケートゲルの調整において、硫酸水溶液を添加しアルミノシリケートゲルのSO/Alモル比を1.4とした後に硫酸ナトリウム(99%以上 和光純薬工業製)38gを加え、SiO:Al:NaO:HO:SO=10:1:8.4:360:2.4の硫酸改質アルミノシリケートゲルを得た。その他は実施例1と同様の操作によりNaイオン型の硫酸改質Y型ゼオライトを得た。
【0056】
<実施例4>
比較例1のNa-Y型ゼオライトの代わりに、実施例3の硫酸改質Y型ゼオライトを用いた他は、比較例2と同様の操作でプロトン型の硫酸改質Y型ゼオライトを得た。途中で得られた硫酸改質NH-Y型ゼオライト(イオン交換体)のNaO/Alモル比は0.26であった。
【0057】
<実施例5>
実施例3の硫酸改質アルミノシリケートゲルの組成をSiO:Al:NaO:HO:SO=10:1:10.4:360:4.4とした以外は、実施例3と同様の操作でNaイオン型の硫酸改質Y型ゼオライトを得た。
【0058】
<実施例6>
比較例1のNa-Y型ゼオライトの代わりに、実施例5の硫酸改質Y型ゼオライトを用いた他は、比較例2と同様の操作でプロトン型の硫酸改質Y型ゼオライトを得た。途中で得られた硫酸改質NH-Y型ゼオライト(イオン交換体)のNaO/Alモル比は0.28であった。
【0059】
<実施例7>
実施例3の改質アルミノシリケートゲルの組成をSiO:Al:NaO:HO:SO=10:1:17.2:360:11.2とした以外は、実施例3と同様の操作でNaイオン型の硫酸改質Y型ゼオライトを得た。
【0060】
<実施例8>
比較例1のNa-Y型ゼオライトの代わりに、実施例7の硫酸改質Y型ゼオライトを用いた他は、比較例2と同様の操作でプロトン型の硫酸改質Y型ゼオライトを得た。途中で得られた硫酸改質NH-Y型ゼオライト(イオン交換体)のNaO/Alモル比は0.36であった。
【0061】
<実施例9>
洗浄及び乾燥後のSO/Alモル比の測定(前記(2)参照)において、実施例2の硫酸改質Y型ゼオライトを用いた時に得られる、洗浄及び乾燥処理した試料をプロトン型の硫酸改質Y型ゼオライトとした。
【0062】
<実施例10>
比較例1と同様の方法で調製したアルミノシリケートゾル329gに対し、3号ケイ酸ソーダ、アルミン酸ソーダおよび水を混合した後に、25℃の温度で30分間撹拌熟成し、次いで、40質量%硫酸水溶液を添加し、25℃の温度で2時間撹拌熟成し、組成SiO:Al:NaO:HO:SO=16.3:1:9.9:545:1.9の硫酸改質アルミノシリケートゲル2066gを調製した。以降は比較例1と同様の操作によりNaイオン型の硫酸改質Y型ゼオライトを得た。
【0063】
<実施例11>
比較例1と同様の方法で調製したアルミノシリケートゾル362gに対し、3号ケイ酸ソーダ、アルミン酸ソーダおよび水を混合した後に、25℃の温度で30分間撹拌熟成し、次いで、40質量%硫酸水溶液を添加し、25℃の温度で2時間撹拌熟成し、組成SiO:Al:NaO:HO:SO=16.3:1:9.9:489:2.7の硫酸改質アルミノシリケートゲル2080gを調製した。以降は比較例1と同様の操作によりNaイオン型の硫酸改質Y型ゼオライトを得た。
【0064】
<実施例12>
比較例1のNa-Y型ゼオライトの代わりに、実施例11の硫酸改質Na-Y型ゼオライトを用い、アンモニウムイオン交換を1回とした他は、比較例2と同様の操作でプロトン型の硫酸改質Y型ゼオライトを得た。途中で得られた硫酸改質NH-Y型ゼオライト(イオン交換体)のNaO/Alモル比は0.34であった。
【0065】
上記の比較例及び実施例で得られた各種ゼオライトについて、各種測定を行い、その結果を表2に示した。
【0066】
【表2】
図1
図2
図3