(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】シリンダ装置、プレス装置、ワーククランプ装置、シリンダ装置動作方法、ワークのクランプ方法、及びワークのプレス方法
(51)【国際特許分類】
F15B 3/00 20060101AFI20220414BHJP
B30B 1/32 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
F15B3/00 D
B30B1/32 C
(21)【出願番号】P 2018021724
(22)【出願日】2018-02-09
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2017049309
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096655
【氏名又は名称】川井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100091225
【氏名又は名称】仲野 均
(72)【発明者】
【氏名】荒井 茂弘
【審査官】小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第3511048(US,A)
【文献】特開2006-258188(JP,A)
【文献】特開平11-287202(JP,A)
【文献】実開昭62-161940(JP,U)
【文献】特開2007-085492(JP,A)
【文献】特開2007-046671(JP,A)
【文献】特開2003-266262(JP,A)
【文献】特開2003-056503(JP,A)
【文献】特開2001-150267(JP,A)
【文献】米国特許第6240758(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 3/00,11/00-11/22,15/00-15/28
B30B 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内の一端側に形成された空圧室と、
前記シリンダ内を前記空圧室の圧力で他端側に移動する油圧室と、
前記空圧室が前記油圧室に与えるスラスト方向の力からラジアル方向の力を発生させ、当該ラジアル方向の力によって前記油圧室を前記シリンダ内に固定する固定手段と、
前記空圧室の前記他端側に設けられ、前記空圧室が前記固定した油圧室に発生させる油圧を増幅する油圧増幅手段と、
前記油圧増幅手段及び前記空圧室を貫通して前記シリンダの前記一端側の外部にまで延設され、前記増幅した油圧を前記一端側で出力する出力ロッドと、
を具備
し、
前記油圧室は、前記出力ロッドが設けられた第1油圧室と、前記固定手段が設けられた、前記第1油圧室と連通しない第2油圧室と、から構成されており、
前記固定手段は、前記第2油圧室の油圧によって前記ラジアル方向の力を発生させて前記第2油圧室と前記第1油圧室を固定し、
前記油圧増幅手段は、前記第1油圧室の油圧力を増幅して前記出力ロッドに出力する、
ことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記油圧室は、前記空圧室が前記油圧室に与える前記他端側方向の力と前記出力ロッドが前記油圧室に与える前記一端側方向の力と、を受けて油圧を発生させることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記固定手段は、前記ラジアル方向の力によって弾性変形した前記第2油圧室の側壁を前記シリンダの内壁に押圧することにより前記第2油圧室と前記第1油圧室を固定することを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記固定手段は、前記第2油圧室に発生した油圧で、スラスト方向に移動するテーパ部材をクランパに押圧することによりラジアル方向の力を発生させ、当該力によって前記クランパを前記シリンダの内壁に押圧することにより前記第2油圧室と前記第1油圧室を固定することを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載のシリンダ装置。
【請求項5】
前記第1油圧室は、前記出力ロッドを出力方向に押圧する出力ピストンを備えていることを特徴とする
請求項1、請求項2、請求項3、又は
請求項4に記載のシリンダ装置。
【請求項6】
前記第1油圧室の前記出力ピストンは、前記第1油圧室に増幅されて発生した油圧が前記出力ロッドに働いて推力を出力する状態でも移動せず、前記出力ロッドに出力だけを伝達することを特徴とする
請求項5に記載のシリンダ装置。
【請求項7】
前記空圧室は、前記第1油圧室を加圧する第1ピストンを備えた第1空圧室と、前記第2油圧室を加圧する第2ピストンを備えた第2空圧室と、前記第1空圧室と前記第2空圧室を連通する連通孔とから構成され、
前記第1空圧室は、第1吸排気口を有すると共に前記第2空圧室の前記一端側に形成されている、
ことを特徴とする
請求項1から
請求項6までのうちの何れか1の請求項に記載のシリンダ装置。
【請求項8】
前記第1ピストンは、前記第1空圧室の圧力で、前記出力ロッドが押圧対象に当接するまで、又は、前記第1油圧室が移動可能な前記他端側の端部に到達するまで、前記第2空圧室、前記第1油圧室、及び前記第2油圧室を前記他端側に移動する、
ことを特徴とする
請求項7に記載のシリンダ装置。
【請求項9】
前記第2油圧室の前記第2ピストンが前記第2油圧室に増幅した油圧を発生させる際の、前記第2ピストンの移動量が、前記第2ピストンに配設された前記第2油圧室のシール部材の弾性変形量の範囲内である、
ことを特徴とする
請求項8に記載のシリンダ装置。
【請求項10】
前記第1油圧室は、前記第2油圧室の前記他端側に形成されており、
前記第1ピストンは、前記第2空圧室と前記第2油圧室を貫通して前記第1油圧室まで形成されていることを特徴とする
請求項8、又は
請求項9に記載のシリンダ装置。
【請求項11】
前記シリンダ内の他端側に設けられ、第2吸排気口を有し、前記油圧室を前記一端側に押圧する第3空圧室を具備したことを特徴とする
請求項10に記載のシリンダ装置。
【請求項12】
前記出力ロッドの移動時に、当該出力ロッドの中心軸の周りの回転角度を変化させる回転角度変化手段を具備したことを特徴とする請求項1から
請求項11までのうちの何れか1の請求項に記載のシリンダ装置。
【請求項13】
前記回転角度変化手段は、
前記出力ロッドと、当該出力ロッドに対面する摺動面のうち、一方の側に形成された突起部材と、他方の側に形成され、当該突起部材と係合すると共に前記出力ロッドの移動方向に形成された溝部と、の摺動機構によって、前記出力ロッドの回転角度を変化させることを特徴とする
請求項12に記載のシリンダ装置。
【請求項14】
請求項10に記載のシリンダ装置と、
前記シリンダ装置に対してワークを所定位置に設置するワーク設置手段と、
前記シリンダ装置を駆動して、前記出力ロッドに装着した工具で前記設置したワークをプレスするプレス手段と、
前記プレスしたワークを前記所定位置から離脱する離脱手段と、
を具備したことを特徴とするプレス装置。
【請求項15】
請求項11に記載したシリンダ装置と、
前記シリンダ装置に対してワークを所定位置に設置するワーク設置手段と、
前記シリンダ装置を駆動して、前記出力ロッドに装着した工具で前記設置したワークを押圧しクランプする手段と、
前記クランプしたワークを前記所定位置から離脱する離脱手段と、
を具備したことを特徴とするワーククランプ装置。
【請求項16】
請求項11のシリンダ装置を動作させるシリンダ装置動作方法であって、
第2吸排気口から第3空圧室を加圧すると共に第1吸排気口から第1空圧室と第2空圧室を減圧することにより第1油圧室と第2油圧室を一端側に移動させて初期状態に設定する第1ステップと、
前記第1吸排気口から前記第1空圧室と前記第2空圧室を加圧すると共に前記第2吸排気口から前記第3空圧室を減圧することにより前記第1空圧室と前記第2空圧室を他端側に移動させて、前記出力ロッドを押圧対象に当接させ、又は、前記第1油圧室が移動可能な前記他端側の端部に到達させる、第2ステップと、
前記第1吸排気口から更に加圧して前記固定手段を動作させ、前記第1油圧室と前記第2油圧室をシリンダに固定する第3ステップと、
前記第1吸排気口から更に加圧して前記油圧増幅手段を動作させ、前記出力ロッドを前記押圧対象に押圧する第4ステップと、
前記第2吸排気口から前記第3空圧室を加圧すると共に前記第1吸排気口を減圧して前記第1油圧室と前記第2油圧室を前記一端側に移動させて初期状態に復帰させる第5ステップと、
を有することを特徴とするシリンダ装置動作方法。
【請求項17】
請求項11に記載のシリンダ装置を動作させてワークを所定位置にクランプする方法であって、
ワークを所定位置に設置する第1ステップと、
前記シリンダ装置を駆動して、前記出力ロッドに装着した工具がワークに当接し停止するまで、又は、前記第1油圧室が移動可能な前記他端側の端部に到達し停止するまで、前記第1空圧室の空圧力で移動させる第2ステップと、
前記固定手段により前記第1油圧室と前記第2油圧室を固定する第3ステップと、
前記油圧増幅手段により前記第1油圧室の油圧力が増幅される第4ステップと、
第4ステップにより増幅された
油圧力により前記出力ロッドに装着した工具がワークを油圧力で押圧し所定の位置にクランプする第5ステップと、
を有することを特徴とするワークのクランプ方法。
【請求項18】
請求項14に記載のプレス装置を動作させてワークをプレスする方法であって、
前記シリンダ装置を駆動して、前記出力ロッドの位置を初期状態に戻す第1ステップと、
ワークを所定位置に設置する第2ステップと、
前記シリンダ装置を駆動して、前記出力ロッドに装着した工具がワークに当接し停止するまで、又は、前記第1油圧室が移動可能な前記他端側の端部に到達し停止するまで、前記第1空圧室の圧力で移動させる第3ステップと、
前記固定手段により前記第1油圧室と前記第2油圧室を固定する第4ステップと、
前記油圧増幅手段により前記第1油圧室の油圧力が増幅される第5ステップと、
第5ステップにより増幅された油圧力により前記出力ロッドに装着した工具がワークを油圧力で押圧し、ワークをプレスする第6ステップと、
前記シリンダ装置を駆動して、前記出力ロッドと共に前記出力ロッドに装着した工具を空圧力で前記ワークから離脱させる第7ステップと、
プレスが完了したワークを所定の位置から離脱する第8ステップと、
を有することを特徴とするワークのプレス方法。
【請求項19】
前記空圧室は、前記第1油圧室を加圧する第1ピストンを備えた第1空圧室と、前記第2油圧室を加圧する第2ピストンを備えた第2空圧室とから構成され、
前記第2空圧室は、前記第2油圧室の前記一端側に配設され、
前記第1空圧室は、前記第2油圧室の前記他端側に配設され、
前記第2空圧室を加圧する第1吸排気口と、
前記第2空圧室と前記第2油圧室を貫通して前記第1空圧室を加圧する第3吸排気口と、を備える、
ことを特徴とする
請求項1から
請求項6までのうちの何れか1の請求項に記載のシリンダ装置。
【請求項20】
前記出力ロッドは、第2空圧室と前記第2油圧室、及び前記シリンダにおける前記一端側の外部まで貫通し、
前記第3吸排気口は、前記出力ロッドの前記一端側から、前記出力ロッド内の一部を通り、前記第1空圧室を加圧する、
ことを特徴とする
請求項19に記載のシリンダ装置。
【請求項21】
前記出力ロッドは、前記シリンダの全長における前記一端側の外部から前記他端側の外部まで貫通し、
前記第3吸排気口は、前記出力ロッドの前記他端側から、前記出力ロッド内の一部を通り、前記第1空圧室を加圧する、
ことを特徴とする
請求項19に記載のシリンダ装置。
【請求項22】
前記第2油圧室を有する入力側ハウジングと、前記第1空圧室及び前記第1油圧室を有する出力側ハウジングを備え、
前記入力側ハウジングは、前記出力側ハウジングの前記一端側に固定されている、
ことを特徴とする
請求項19、
請求項20、又は
請求項21に記載のシリンダ装置。
【請求項23】
前記第2ピストンは、前記入力側ハウジングと前記第2空圧室との間に配設され、前記第2空圧室からの圧力で前記他端側に移動し、当該移動により前記第2油圧室を加圧するロッド部分を備える、
ことを特徴とする
請求項22に記載のシリンダ装置。
【請求項24】
請求項23のシリンダ装置を動作させるシリンダ装置動作方法であって、
前記第1吸排気口から前記第2空圧室を加圧することで、前記第2ピストンと、前記入力側ハウジングと前記出力側ハウジングを、前記他端側に移動させる移動ステップと、
前記出力ロッドを押圧対象に当接させることで、前記入力側ハウジングと、前記出力側ハウジングの移動を停止させる移動停止ステップと、
前記第1吸排気口から前記第2空圧室を更に加圧して、前記第2ピストンを前記他端側に移動させることで、前記第2油圧室を前記ロッド部分で加圧して前記固定手段を動作させ、前記入力側ハウジングと前記出力側ハウジングを前記シリンダに固定する固定ステップと、
前記
固定ステップの後、前記第3吸排気口から第1空圧室を加圧して前記油圧増幅手段を動作させ、前記出力ロッドの先端から増幅された油圧による推力を発生させる推力発生ステップと、
を有することを特徴とするシリンダ装置動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ装置、プレス装置、ワーククランプ装置、シリンダ装置動作方法、ワークのクランプ方法、及びワークのプレス方法に関し、例えば、流体圧シリンダを用いたものに関する。
【背景技術】
【0002】
エア(気体)や油(液体)といった流体を用いた流体圧シリンダが工業の広い分野で利用されている。
これら流体圧シリンダは、流体の圧力でシリンダ内のピストンに推力を発生させることにより、例えば、プレスやアクチュエータの駆動など、様々な機械的な動作の原動となることができる。
【0003】
ところで、油圧シリンダは、油圧による大きな加圧力により小さなサイズでも大きな推力を得られるという特徴があるが、油圧供給装置などの大がかりな設備が必要であるという点が問題であった。
そのため、特許文献1では、エアシリンダと油圧シリンダを組み合わせたエアハイドロシリンダによってエア圧で油圧を発生させることにより、複雑な油圧系を省略し、低コストで小型化が可能な流体圧シリンダを提案している。
【0004】
ところが、特許文献1の技術では、エアシリンダのピストンの移動量を油圧シリンダの断面積に対応させて推力を発生させるため、ストロークが短いという問題があった。
例えば、エアハイドロシリンダの出力側にアクチュエータを装着した場合、ストロークを確保するためには、アクチュエータをエアハイドロシリンダごと移動する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、エアハイドロシリンダを用いたストロークの大きいシリンダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、シリンダと、前記シリンダ内の一端側に形成された空圧室と、前記シリンダ内を前記空圧室の圧力で他端側に移動する油圧室と、前記空圧室が前記油圧室に与えるスラスト方向の力からラジアル方向の力を発生させ、当該ラジアル方向の力によって前記油圧室を前記シリンダ内に固定する固定手段と、前記空圧室の前記他端側に設けられ、前記空圧室が前記固定した油圧室に発生させる油圧を増幅する油圧増幅手段と、前記油圧増幅手段及び前記空圧室を貫通して前記シリンダの前記一端側の外部にまで延設され、前記増幅した油圧を前記一端側で出力する出力ロッドと、を具備し、前記油圧室は、前記出力ロッドが設けられた第1油圧室と、前記固定手段が設けられた、前記第1油圧室と連通しない第2油圧室と、から構成されており、前記固定手段は、前記第2油圧室の油圧によって前記ラジアル方向の力を発生させて前記第2油圧室と前記第1油圧室を固定し、前記油圧増幅手段は、前記第1油圧室の油圧力を増幅して前記出力ロッドに出力する、ことを特徴とするシリンダ装置を提供する。
請求項2に記載の発明では、前記油圧室は、前記空圧室が前記油圧室に与える前記他端側方向の力と前記出力ロッドが前記油圧室に与える前記一端側方向の力と、を受けて油圧を発生させることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項3に記載の発明では、前記固定手段は、前記ラジアル方向の力によって弾性変形した前記第2油圧室の側壁を前記シリンダの内壁に押圧することにより前記第2油圧室と前記第1油圧室を固定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項4に記載の発明では、前記固定手段は、前記第2油圧室に発生した油圧で、スラスト方向に移動するテーパ部材をクランパに押圧することによりラジアル方向の力を発生させ、当該力によって前記クランパを前記シリンダの内壁に押圧することにより前記第2油圧室と前記第1油圧室を固定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項5に記載の発明では、前記第1油圧室は、前記出力ロッドを出力方向に押圧する出力ピストンを備えていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、又は請求項4に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項6に記載の発明では、前記第1油圧室の前記出力ピストンは、前記第1油圧室に増幅されて発生した油圧が前記出力ロッドに働いて推力を出力する状態でも移動せず、前記出力ロッドに出力だけを伝達することを特徴とする請求項5に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項7に記載の発明では、前記空圧室は、前記第1油圧室を加圧する第1ピストンを備えた第1空圧室と、前記第2油圧室を加圧する第2ピストンを備えた第2空圧室と、前記第1空圧室と前記第2空圧室を連通する連通孔とから構成され、前記第1空圧室は、第1吸排気口を有すると共に前記第2空圧室の前記一端側に形成されている、ことを特徴とする請求項1から請求項6までのうちの何れか1の請求項に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項8に記載の発明では、前記第1ピストンは、前記第1空圧室の圧力で、前記出力ロッドが押圧対象に当接するまで、又は、前記第1油圧室が移動可能な前記他端側の端部に到達するまで、前記第2空圧室、前記第1油圧室、及び前記第2油圧室を前記他端側に移動する、ことを特徴とする請求項7に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項9に記載の発明では、前記第2油圧室の前記第2ピストンが前記第2油圧室に増幅した油圧を発生させる際の、前記第2ピストンの移動量が、前記第2ピストンに配設された前記第2油圧室のシール部材の弾性変形量の範囲内である、ことを特徴とする請求項8に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項10に記載の発明では、前記第1油圧室は、前記第2油圧室の前記他端側に形成されており、前記第1ピストンは、前記第2空圧室と前記第2油圧室を貫通して前記第1油圧室まで形成されていることを特徴とする請求項8、又は請求項9に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項11に記載の発明では、前記シリンダ内の他端側に設けられ、第2吸排気口を有し、前記油圧室を前記一端側に押圧する第3空圧室を具備したことを特徴とする請求項10に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項12に記載の発明では、前記出力ロッドの移動時に、当該出力ロッドの中心軸の周りの回転角度を変化させる回転角度変化手段を具備したことを特徴とする請求項1から請求項11までのうちの何れか1の請求項に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項13に記載の発明では、前記回転角度変化手段は、前記出力ロッドと、当該出力ロッドに対面する摺動面のうち、一方の側に形成された突起部材と、他方の側に形成され、当該突起部材と係合すると共に前記出力ロッドの移動方向に形成された溝部と、の摺動機構によって、前記出力ロッドの回転角度を変化させることを特徴とする請求項12に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項14に記載の発明では、請求項10に記載のシリンダ装置と、前記シリンダ装置に対してワークを所定位置に設置するワーク設置手段と、前記シリンダ装置を駆動して、前記出力ロッドに装着した工具で前記設置したワークをプレスするプレス手段と、前記プレスしたワークを前記所定位置から離脱する離脱手段と、を具備したことを特徴とするプレス装置を提供する。
請求項15に記載の発明では、請求項11に記載したシリンダ装置と、前記シリンダ装置に対してワークを所定位置に設置するワーク設置手段と、前記シリンダ装置を駆動して、前記出力ロッドに装着した工具で前記設置したワークを押圧しクランプする手段と、前記クランプしたワークを前記所定位置から離脱する離脱手段と、を具備したことを特徴とするワーククランプ装置を提供する。
請求項16に記載の発明では、請求項11のシリンダ装置を動作させるシリンダ装置動作方法であって、第2吸排気口から第3空圧室を加圧すると共に第1吸排気口から第1空圧室と第2空圧室を減圧することにより第1油圧室と第2油圧室を一端側に移動させて初期状態に設定する第1ステップと、前記第1吸排気口から前記第1空圧室と前記第2空圧室を加圧すると共に前記第2吸排気口から前記第3空圧室を減圧することにより前記第1空圧室と前記第2空圧室を他端側に移動させて、前記出力ロッドを押圧対象に当接させ、又は、前記第1油圧室が移動可能な前記他端側の端部に到達させる、第2ステップと、前記第1吸排気口から更に加圧して前記固定手段を動作させ、前記第1油圧室と前記第2油圧室をシリンダに固定する第3ステップと、前記第1吸排気口から更に加圧して前記油圧増幅手段を動作させ、前記出力ロッドを前記押圧対象に押圧する第4ステップと、前記第2吸排気口から前記第3空圧室を加圧すると共に前記第1吸排気口を減圧して前記第1油圧室と前記第2油圧室を前記一端側に移動させて初期状態に復帰させる第5ステップと、を有することを特徴とするシリンダ装置動作方法を提供する。
請求項17に記載の発明では、請求項11に記載のシリンダ装置を動作させてワークを所定位置にクランプする方法であって、ワークを所定位置に設置する第1ステップと、前記シリンダ装置を駆動して、前記出力ロッドに装着した工具がワークに当接し停止するまで、又は、前記第1油圧室が移動可能な前記他端側の端部に到達し停止するまで、前記第1空圧室の空圧力で移動させる第2ステップと、前記固定手段により前記第1油圧室と前記第2油圧室を固定する第3ステップと、前記油圧増幅手段により前記第1油圧室の油圧力が増幅される第4ステップと、第4ステップにより増幅された油圧力により前記出力ロッドに装着した工具がワークを油圧力で押圧し所定の位置にクランプする第5ステップと、を有することを特徴とするワークのクランプ方法を提供する。
請求項18に記載の発明では、請求項14に記載のプレス装置を動作させてワークをプレスする方法であって、前記シリンダ装置を駆動して、前記出力ロッドの位置を初期状態に戻す第1ステップと、ワークを所定位置に設置する第2ステップと、前記シリンダ装置を駆動して、前記出力ロッドに装着した工具がワークに当接し停止するまで、又は、前記第1油圧室が移動可能な前記他端側の端部に到達し停止するまで、前記第1空圧室の圧力で移動させる第3ステップと、前記固定手段により前記第1油圧室と前記第2油圧室を固定する第4ステップと、前記油圧増幅手段により前記第1油圧室の油圧力が増幅される第5ステップと、第5ステップにより増幅された油圧力により前記出力ロッドに装着した工具がワークを油圧力で押圧し、ワークをプレスする第6ステップと、前記シリンダ装置を駆動して、前記出力ロッドと共に前記出力ロッドに装着した工具を空圧力で前記ワークから離脱させる第7ステップと、プレスが完了したワークを所定の位置から離脱する第8ステップと、を有することを特徴とするワークのプレス方法を提供する。
請求項19に記載の発明では、前記空圧室は、前記第1油圧室を加圧する第1ピストンを備えた第1空圧室と、前記第2油圧室を加圧する第2ピストンを備えた第2空圧室とから構成され、前記第2空圧室は、前記第2油圧室の前記一端側に配設され、前記第1空圧室は、前記第2油圧室の前記他端側に配設され、前記第2空圧室を加圧する第1吸排気口と、前記第2空圧室と前記第2油圧室を貫通して前記第1空圧室を加圧する第3吸排気口と、を備える、ことを特徴とする請求項1から請求項6までのうちの何れか1の請求項に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項20に記載の発明では、前記出力ロッドは、第2空圧室と前記第2油圧室、及び前記シリンダにおける前記一端側の外部まで貫通し、前記第3吸排気口は、前記出力ロッドの前記一端側から、前記出力ロッド内の一部を通り、前記第1空圧室を加圧する、ことを特徴とする請求項19に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項21に記載の発明では、前記出力ロッドは、前記シリンダの全長における前記一端側の外部から前記他端側の外部まで貫通し、前記第3吸排気口は、前記出力ロッドの前記他端側から、前記出力ロッド内の一部を通り、前記第1空圧室を加圧する、ことを特徴とする請求項19に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項22に記載の発明では、前記第2油圧室を有する入力側ハウジングと、前記第1空圧室及び前記第1油圧室を有する出力側ハウジングを備え、前記入力側ハウジングは、前記出力側ハウジングの前記一端側に固定されている、ことを特徴とする請求項19、請求項20、又は請求項21に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項23に記載の発明では、前記第2ピストンは、前記入力側ハウジングと前記第2空圧室との間に配設され、前記第2空圧室からの圧力で前記他端側に移動し、当該移動により前記第2油圧室を加圧するロッド部分を備える、ことを特徴とする請求項22に記載のシリンダ装置を提供する。
請求項24に記載の発明では、請求項23のシリンダ装置を動作させるシリンダ装置動作方法であって、前記第1吸排気口から前記第2空圧室を加圧することで、前記第2ピストンと、前記入力側ハウジングと前記出力側ハウジングを、前記他端側に移動させる移動ステップと、前記出力ロッドを押圧対象に当接させることで、前記入力側ハウジングと、前記出力側ハウジングの移動を停止させる移動停止ステップと、前記第1吸排気口から前記第2空圧室を更に加圧して、前記第2ピストンを前記他端側に移動させることで、前記第2油圧室を前記ロッド部分で加圧して前記固定手段を動作させ、前記入力側ハウジングと前記出力側ハウジングを前記シリンダに固定する固定ステップと、前記固定ステップの後、前記第3吸排気口から第1空圧室を加圧して前記油圧増幅手段を動作させ、前記出力ロッドの先端から増幅された油圧による推力を発生させる推力発生ステップと、を有することを特徴とするシリンダ装置動作方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、空圧室によって油圧室をシリンダ内で移動させることにより、ストロークの確保と推力の確保を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態のシリンダ装置を説明するための図である。
【
図3】第2実施形態のシリンダ装置を説明するための図である。
【
図4】第3実施形態のシリンダ装置を説明するための図である。
【
図5】第4実施形態のシリンダ装置を説明するための図である。
【
図6】第5実施形態のシリンダ装置を説明するための図である。
【
図8】第5実施形態の動作状態を表す説明図である。
【
図9】第6実施形態のシリンダ装置を説明するための図である。
【
図10】第7実施形態のシリンダ装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態の概要)
従来のエアハイドロシリンダの場合、エアシリンダ部分では、ストロークは大きいが推力が小さいという特徴があり、油圧シリンダ部分では、ストロークは小さいが推力が大きいという特徴がある。
そこで。本実施形態のシリンダ装置1(
図1)では、空圧室20から成る空圧系に、油圧室30から成る油圧系をシリンダ2内でスラスト方向に移動させる機能と、移動後に油圧室30を加圧して油圧を発生させる機能を持たせることにより、必要なストロークを確保すると共に必要な推力を発生する。
【0011】
より詳細には、空圧室20は、第1ピストン11を加圧する第1空圧室21と、第2ピストン12を加圧する第2空圧室22から構成されている。
第1空圧室21と第2空圧室22は、抜止めボルト17の内部に形成された貫通孔によって連通している。
【0012】
一方、油圧発生部55は、油圧室30を内蔵しており、更に、油圧室30は、第1ピストン11を介して第1空圧室21により加圧される第1油圧室31と、第2ピストン12を介して第2空圧室22により加圧される第2油圧室32から構成されている。
油圧発生部55は、シリンダ2内をスラスト方向に移動できるようになっており、第2油圧室32は、油圧によって薄肉部15をラジアル方向に弾性変形させ、移動する油圧発生部55をシリンダ2内で固定する機能を有している。
第1油圧室31は、固定により高まった第1油圧室31の油圧を出力ロッド7に出力する。
【0013】
シリンダ装置1の動作は、以下の通りである。
まず、第1吸排気口5を開放すると共に第2吸排気口6からエアを注入し、油圧発生部55を第1吸排気口5の側に寄せて初期状態にセットする。
次に、第2吸排気口6を開放して第1吸排気口5からエアを注入する。
これにより第1空圧室21が加圧され、第1ピストン11が押されて油圧発生部55が第2吸排気口6の側に移動する。これにより出力ロッド7の十分なストロークが得られる。
【0014】
出力ロッド7が爪76などの工具を介してワーク100に当接すると油圧発生部55の移動が止められる。油圧発生部55の内部にある第2油圧室32は、出力側に蓋34が内壁として構成されており、第2空圧室22の第2ピストン12とで内部の油を挟んだ構造をしている。
第1ピストン11と第2ピストン12に使用されているシール部材は材質が異なり、第2ピストン12のシール部材の方が摺動抵抗が小さく、より早く動作を開始し、より早く動作を完了するようになっている。この第1ピストン11と第2ピストン12のシール部材の摺動抵抗の違いは、材質の違いによる摩擦抵抗の差に基づくが、形状や、締め代の差に基づくようにしてもよい。
油圧発生部55の移動が停止して内部隔壁である蓋34の移動が止まると、入力側から第2ピストン12により押圧されるので内部圧力が上昇する。同様に油圧発生部55の内部にある第1油圧室31は、出力ロッド7と第1空圧室21の第1ピストン11で挟まれており、出力側を出力ロッド7で移動が止められると、入力側から第1ピストン11により押圧されるので内部圧力が上昇する。
この時、摺動抵抗が小さい第2ピストン12の方が早く動くので、第2油圧室32による油圧で薄肉部15が先に弾性変形し、シリンダ2の内周面に当接して、摩擦によって油圧発生部55がシリンダ2に固定される。
【0015】
油圧発生部55が固定されると、第1吸排気口5から供給されるエアにより、第1ピストン11と第2ピストン12が第1油圧室31と第2油圧室32を更に加圧する。
これにより第2油圧室32で高まった油圧が更に薄肉部15をシリンダ2の内周面に押圧し、より固定が堅持される。油圧発生部55がシリンダ2に固定されると第1油圧室31の油圧力によって第3ピストン13を前進させる推力が大きくなるので、さらに高められた第1油圧室31の油圧力が第3ピストン13を介して出力ロッド7に出力され、油圧による大きな推力がワーク100に印加される。
以上のようにして、シリンダ装置1は、エアシリンダ装置による長いストロークと、油圧シリンダによる大きな油圧の両方を兼ね備えることができる。
【0016】
(第1実施形態の詳細)
図1(a)は、第1実施形態に係るシリンダ装置1のスラスト方向(中心線の方向)の断面図を示しており、
図1(b)は、部品図を示している。
なお、
図1(a)では、図面の複雑化を避けるためOリングを省略してある。省略したOリングは、エアや油などの流体を封じる空間を構成する部材間に配設されることで、当該空間をシールし、流体の遺漏を防ぐために設置されるもので、
図1(b)の部品図では、Oリングも図示してある。
【0017】
シリンダ装置1は、シリンダ2の両開放端をボルト3aで固定される蓋3とボルト4aで固定される蓋4で塞いで構成されており、内部には、第1空圧室21の第1ピストン11によってスラスト方向に移動する油圧発生部55が収納(内蔵)されている。
【0018】
油圧発生部55は、ピストンハウジング14を筐体とし、その内部に収納された第2空圧室22、第2油圧室32、及び第1油圧室31などから構成された油圧発生機能を有するアセンブリである。
油圧発生部55は、第1空圧室21の圧力により出力側(第2吸排気口6の側)に移動する。そして、第2油圧室32は、油圧によって移動した油圧発生部55をシリンダ2内で固定し、第1油圧室31は固定されることによって内部で高まった油圧を出力ロッド7の1方向に推進力として出力する。
【0019】
出力ロッド7は、第2油圧室32、第2空圧室22、第1空圧室21を貫通して入力側(第1吸排気口5の側)に蓋3の外部まで延設され、換言すれば、シリンダ2の一端側の外部まで延設されている。また、出力ロッド7は、先端に設置された爪76をシリンダ装置1の側に引き寄せることにより、シリンダ2の一端側においてワーク100をワーク設置台101に押圧する。
【0020】
このように、シリンダ装置1は、シリンダ内を空圧室の圧力で他端側(出力側)に移動する油圧室を備えており、当該油圧室は、出力ロッド7が設けられた第1油圧室31と、固定手段が設けられた第2油圧室32から構成されている。
【0021】
シリンダ装置1を構成する部品の材質は、アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属である。
シリンダ装置1の大きさは、一例として、外径が20ミリ程度、ストローク長さが50ミリ程度であるが、これよりも大きくても、あるいは、小さくてもよい。以上が、シリンダ装置1の構成の概略である。
【0022】
以下では、第1吸排気口5が形成された一端側を加圧用のエアが入力される側であるため入力側と呼び、第2吸排気口6が形成された他端側を油圧が出力される側であるため出力側と呼ぶことにする。このため、出力ロッド7は、入力側に形成されている。
また、シリンダ2内の部品が最も入力側に位置する
図1(a)に示した状態を初期状態と呼ぶことにする。
【0023】
シリンダ2は、両端面が開放された円筒部材であって、シリンダ装置1の筐体を構成している。
シリンダ2の入力側端部は、円柱状の部材で構成された蓋3によって閉塞されている。
蓋3の出力側には、シリンダ2を挿入する凹部43が形成されており、シリンダ2の入力側端部の外周に形成された雄ネジと凹部43の内周面に形成された雌ネジを嵌合させることにより、シリンダ2と蓋3は、ネジ止めされて接合されている。
また、蓋3の中心線上には、出力ロッド7を挿通して蓋3の外部に延出するための貫通孔が形成されている。
【0024】
シリンダ2内の入力側の端部部分には、シリンダ2の内壁に沿ってスラスト方向に摺動する第1ピストン11が設けられている。
第1ピストン11の入力側端面と凹部43の底面は対面しており、凹部43の底面には、溝が形成された凸部44が形成されている。
【0025】
凸部44により、第1ピストン11の入力側への移動範囲が規制されるため、第1ピストン11が最も入力側に寄った場合でも、凹部43、第1ピストン11の端面、及びシリンダ2の内壁で囲まれた空間が形成される。
蓋3の側面には、第1吸排気口5から当該空間に連通する吸排気路が形成されており、これによって、第1吸排気口5からの吸気や排気によって加減圧が可能な第1空圧室21が当該空間に形成される。
凸部44に溝が形成されているのは、第1吸排気口5からエアが供給された場合に、第1ピストン11の端面全体にエアが速やかに行き渡るようにするためである。
【0026】
第1ピストン11の出力側端面には、後述の抜止めナット18、第2空圧室22、第2ピストン12、張出部57、第2油圧室32、蓋34を中心線に沿って貫通して第1油圧室31に至るロッド部分50がスラスト方向に形成されている。
ロッド部分50は、円筒形状に形成されており、中心線に沿って第1ピストン11を貫通して出力ロッド7を摺動可能に挿通する貫通孔が形成されている。
【0027】
このように、第1油圧室31は、第2油圧室32の他端側(出力側)に形成されており、第1ピストン11は、第2空圧室22と第2油圧室32を貫通して第1油圧室31まで形成されている。
第1ピストン11は、油圧発生部55をシリンダ2内で出力側に移動させる機能と、第1油圧室31を加圧して出力ロッド7に油圧を出力させる機能を有している。
【0028】
第1ピストン11の出力側には、油圧発生部55が配置されている。
油圧発生部55は、略円筒状の形状を有するピストンハウジング14を筐体とし、当該筐体内に形成されている第2空圧室22、第2油圧室32、第1油圧室31を駆動して油圧を発生させる油圧発生用のアセンブリである。
【0029】
ピストンハウジング14は、入力側から第2空圧室22、第2油圧室32、第1油圧室31を形成する内部形状を有する概略円筒形の部材である。
ピストンハウジング14の中央部には、シリンダ2の内周面と所定のクリアランスを隔てて摺動する薄肉部15が外筒部に形成されており、薄肉部15の両側の部分は、薄肉部15よりも外径が小さく形成されている。
【0030】
ピストンハウジング14の入力側の端部には、ピストンハウジング14の開口部を閉塞する抜止めナット18が、ピストンハウジング14に形成された雌ネジと、抜止めナット18に形成された雄ネジを嵌合させることによりネジ止めされて固定されている。
第1ピストン11と抜止めナット18の間には、両者を離れる方向に付勢するコイルバネ19が設けられている。
コイルバネ19は、第1ピストン11の出力側端面と抜止めナット18の入力側端面の対応する位置に形成された凹部に設置されている。
【0031】
また、第1ピストン11には、抜止めボルト17を挿通するための貫通孔が形成されており、抜止めナット18には、抜止めボルト17を固定するためのネジ孔が貫通して設けられている。
抜止めナット18の貫通孔は、入力側がザグリ加工されており、第1ピストン11の貫通孔から当該ザグリ加工された部分まで円筒部材であるカラー16が挿入されている。
【0032】
そして、カラー16には、抜止めボルト17が挿入され、抜止めボルト17の先端が抜止めナット18に形成された雌ネジに嵌合してネジ止めされている。
また、第1ピストン11の貫通孔の入力側は、ザグリ加工されており、抜止めボルト17の頭部が当該ザグリ部分に当接することにより、第1ピストン11の抜けを防止している。
【0033】
図示しないがカラー16の外周面と第1ピストン11の貫通孔の内周面の間にはOリングが設けられており、第1ピストン11は、カラー16に対してスラスト方向に摺動することができる。
このように、第1ピストン11は、コイルバネ19によって抜止めナット18から離れる方向に付勢されると共に、抜止めボルト17によって、第1ピストン11が抜止めナット18から所定距離以上離れないように最大離隔量が規制されている。
【0034】
この最大離隔量は、第1ピストン11の出力側端面と抜止めナット18の入力側端面の間に、第1ピストン11が抜止めナット18側に押し込まれるストロークを確保するための間隙51が形成される量に設定されている。
以上の構成によって、初期状態では、コイルバネ19によって第1ピストン11と抜止めナット18は、抜止めボルト17によって規制される量だけ離れているが、第1空圧室21に圧力が加わって、第2油圧室32により油圧発生部55が固定されるか、油圧発生部55が蓋4と当接し移動できなくなると、第1ピストン11は、抜止めナット18に接近できるようになる。
なお、この際に、間隙51にあった空気は、後述の貫通孔40からピストンハウジング14の外周とシリンダ2の内周の間の空間を経由して第3空圧室41に排出される。
【0035】
抜止めナット18の出力側には、凹部が形成されており、ピストンハウジング14内で抜止めナット18の出力側に配置された第2ピストン12の端面と当該凹部が形成する空間により第2空圧室22が形成される。
また、抜止めナット18の中心線上には、ロッド部分50を摺動可能に挿通する貫通孔が形成されている。
抜止めボルト17には、中心線に沿って貫通孔が形成されており、当該貫通孔を介して第1空圧室21と第2空圧室22は、連通している。
【0036】
このように、シリンダ装置1は、シリンダ内の一端側(入力側)に形成された空圧室(空圧室20)を備えており、当該空圧室20は、第1油圧室31を加圧する第1ピストン11を備えた第1空圧室21と、第2油圧室32を加圧する第2ピストン12を備えた第2空圧室22と、から構成されている。
そして、第1空圧室21は、第2空圧室22の一端側に設けられており、第1吸排気口5を有している。
更に、第1ピストン11は、第1空圧室21と第2空圧室22を連通する連通孔を有している。
【0037】
第2ピストン12の出力側には、第2油圧室32を形成するために、シリンダ2の内周面から中心線方向に張り出した張出部57が形成されている。
第2ピストン12の出力側端面と、張出部57の入力側端面の間には、張出部57から離れる方向に第2ピストン12を付勢するコイルバネ33が設置されており、コイルバネ33の中心を第1ピストン11のロッド部分50、第2ピストン12のロッド部分58、及び出力ロッド7が挿通している。
【0038】
以上の構成によって、初期状態では、第2ピストン12の入力側端面は、抜止めナット18の凹部の縁部分先端に当接し、第2ピストン12の出力側端面と張出部57の入力側端面の間には、第2ピストン12が張出部57側に押し込まれるストロークを確保するための間隙52が設けられている。
また、ピストンハウジング14の間隙52が形成された部分には、第2ピストン12が張出部57の方に移動する際に、間隙52の空気をピストンハウジング14とシリンダ2の間の空間に逃がすための貫通孔40が形成されている。
【0039】
張出部57の中心線上には、第2油圧室32に至る貫通孔が設けられており、第2ピストン12のロッド部分58が摺動可能に挿入されている。
更に、ロッド部分58は、中心線上に第2ピストン12を貫通する貫通孔が形成されており、第1ピストン11のロッド部分50が当該貫通孔を摺動可能に挿通している。
このようにロッド部分58は、円筒状に形成されており、張出部57を貫通して第2油圧室32に露出した端部が第2油圧室32の油を加圧するピストンとして機能する。
【0040】
ここで、第1空圧室21と第2空圧室22のエアの圧力をP1、第2空圧室22における第2ピストン12の断面積(エアから圧力を受ける部分をスラスト方向に投影した面積、以下同様)をS1、第2油圧室32におけるロッド部分58の断面積をS2、コイルバネ33が第2ピストン12を付勢する力をF1とすると、第2油圧室32の油圧P2は、P2=(P1・S1-F1)/S2となる。そのため、(P1・S1-F1)/S2>P1なら、第2空圧室22の圧力が増幅されて第2油圧室32に伝達される。
油圧発生部55は、この条件が満たされるように構成されており、第2油圧室32は、増大した油圧で油圧発生部55を強固に固定する。
【0041】
第2油圧室32は、入力側が張出部57で仕切られ、外周部分がピストンハウジング14の薄肉部15で仕切られ、出力側が蓋34で仕切られた空間で構成されており、油圧用の油が充填されている。
第2油圧室32は、第2ピストン12がスラスト方向の力によって張出部57の方に押圧されると、ロッド部分58が第2油圧室32に挿入されるため、上記の式に従って加圧される。特に出力ロッド7がワーク100に当接すると(より詳細には、出力ロッド7の先端に取り付けられた爪76がワーク100に当接すると)、急激に加圧される。
【0042】
第2油圧室32は、第2ピストン12がスラスト方向の力によって張出部57の方に押圧されると、ロッド部分58が第2油圧室32に挿入されるため、上記の式に従って加圧される。この時、加圧された圧力は周囲の内壁を均等に押圧する。第2油圧室32の内壁のスラスト方向の断面積は、入力側と出力側を比較すると、出力側よりもロッド部分58の端面積の分だけ入力側の方が小さい。このため、第2油圧室32内部の油が内壁を押圧する力は断面積が大きい出力側の方が大きくなるので、第2油圧室32には出力側へ移動しようとする力が働く。
この時、空圧室21と空圧室22には同時にエアが供給されるので、第2ピストン12と第1ピストン11は同時に動作を開始する。そのため同時に第1油圧室31にも油圧力が発生し始める。第1油圧室31で発生した油圧力は、蓋34の出力側端面を押圧するので、油圧発生部55には入力側へ移動しようとする力が発生する。
この出力側と入力側に移動させようとする相反する力の関係において、第2油圧室32による出力側へ移動しようとする力の方が大きい場合は、油圧発生部55には第2油圧室32により出力ロッド7を押圧する方向に力が作用するが、出力ロッド7は移動できないので油圧発生部55もその場で停止する。
そして第2油圧室32内部で高まった油圧は、出力ロッド7の停止に伴いスラスト方向に移動できなくなり、剛性が弱い薄肉部15に圧力が作用し、矢線で示したラジアル方向(中心線から外に向かう方向)に弾性変形して膨張し、薄肉部15の外周面がシリンダ2の内周面に押圧される。これにより、薄肉部15とシリンダ2の間に摩擦力が発生し、油圧発生部55がシリンダ2内でスラスト方向に固定される。
一方、第1油圧室31による入力側へ移動させる力の方が大きい場合は、第1ピストン11よりも第2ピストン12の方がシール部材による摺動抵抗が小さく、より早く動作するので、第1ピストン11が間隙51の隙間を動き切る前(第1ピストン11が抜止めナット18に当接する前)に第2ピストン12の動作が完了し、剛性が弱い薄肉部15に圧力が作用し、外周面がシリンダ2の内周面に押圧して、油圧発生部55がシリンダ2内でスラスト方向に固定される。
【0043】
このように、シリンダ装置1は、空圧室が油圧室に与えるスラスト方向の力からラジアル方向の力を発生させ、当該ラジアル方向の力によって油圧室をシリンダ2内に固定する固定手段を備えている。
そして、当該油圧室は、空圧室が油圧室に与える他端側方向(出力側)の力と出力ロッドが油圧室に与える一端側方向(入力側)の力を受けて油圧を発生させている。
より詳細には、当該固定手段(薄肉部15)は、第2油圧室32の油圧によってラジアル方向の力を発生させ、当該ラジアル方向の力によって弾性変形した第2油圧室32の側壁をシリンダ2の内壁に押圧することにより第2油圧室32と第1油圧室31を固定している。
【0044】
蓋34は、外周面に雄ネジが形成されており、ピストンハウジング14の出力側端部に形成された雌ネジにねじ込んで固定されている。
蓋34の中心には、貫通孔が形成されており、当該貫通孔には、第1ピストン11のロッド部分50の先端部分が挿入されている。
【0045】
蓋34の出力側には、中心線に沿って入力側に出力ロッド7が形成された第3ピストン13が配置されており、蓋34の出力側端面、ロッド部分50の先端部分の端面、第3ピストン13の入力側端面、後述する給油口栓38の入力側端面、及びピストンハウジング14の内周面で空間によって仕切られた第1油圧室31が形成されている。
このように、第1油圧室31は、出力ロッド7を出力方向に押圧する出力ピストン(第3ピストン13)を備えている。
【0046】
第3ピストン13には、出力側端面と入力側端面を連通し、第1油圧室31に至る給油路が形成されており、当該給油路の出力側には、第1油圧室31に給油してからこれを密閉するための給油口栓38がネジ機構により固定されている。
【0047】
出力ロッド7は、第1油圧室31を貫通し、更に、ロッド部分50の内部や蓋3の貫通孔を経由することにより第2油圧室32、第2空圧室22、第1空圧室21を貫通して蓋3の外部まで延設されている。
出力ロッド7の先端には、出力ロッド7の軸方向から直角方向に張り出した爪76が形成されている。
爪76は、出力ロッド7が出力方向に移動すると蓋3の側に引き寄せられ(引き込まれ)、爪76の出力側端面がワーク設置台101の上に設置されたワーク100を出力側に押圧する。
【0048】
当該構成により、第1ピストン11がピストンハウジング14に近づくと、ロッド部分50が第1油圧室31に挿入されて第1油圧室31の油が加圧され、出力ロッド7が当該加圧された油圧を受けて出力側に移動する。
ここで、第1空圧室21と第2空圧室22のエアの圧力をP1、第1空圧室21における第1ピストン11の断面積をS3、第1油圧室31の油圧をP3、第1油圧室31における第1ピストン11の断面積をS4とする。
この場合、P3=S3・P1/S4となり、S3>S4なら、第1空圧室21の圧力が増幅されて第1油圧室31に伝達される。
【0049】
また、第1油圧室31における第3ピストン13の断面積をS5とすると、出力ロッド7がワーク100を押圧する力Fは、F=P1・S3・S5/S4となる。
【0050】
シリンダ装置1の油圧系(油圧室30)は、第1空圧室21の圧力がピストン11のロッド部分50により第1油圧室31で増幅されて、ワーク100の加工に必要な力F3を出力ロッド7により発揮するように(推力が増大するように)設定されている。
このようにシリンダ装置1は、空圧室20が第1油圧室31に発生させる油圧を増幅する油圧増幅手段(ピストン11、ロッド部分50)と、油圧増幅手段及び空圧室を貫通してシリンダ2の一端側(入力側)の外部にまで延設され、当該増幅した油圧を一端側で出力する出力ロッド7を備えており、当該油圧増幅手段は、第1油圧室31に発生した油圧を増幅して出力ロッド7に出力している。
【0051】
ピストンハウジング14の出力側の開放端には、ネジ溝が形成されており、中心に出力ロッド7を挿通する貫通孔が形成された抜止めナット37がネジ止めされている。
第3ピストン13の出力側端面と、抜止めナット37の入力側端面の間には、第3ピストン13が出力方向に移動するストロークを確保するための間隙54が形成されており、抜止めナット37の端面には、第3ピストン13の移動の際に間隙54の空気を挿通させる貫通孔53が形成されている。
なお、第3ピストン13の出力側端面と、抜止めナット37との間隙54にバネ(図示しない)を配設するようにしてもよい。このバネは、第3ピストン13を入力側に押圧する補助として機能する。
【0052】
蓋4は、円柱状の部材であって、入力側にシリンダ2を挿入するための凹部が形成されている。
当該凹部の内周面には雌ネジが形成されており、これがシリンダ2の対応する外周面に形成された雄ネジと嵌合することにより両者は、ネジ止めされている。
当該凹部の底面には、蓋3の凸部44と同様に、溝が形成された凸部が形成されている。
【0053】
更に、蓋4の側面には、第2吸排気口6からシリンダ2の内部に連通する吸排気路が設けられており、シリンダ2内の出力側には第2吸排気口6から吸排気される第3空圧室41が形成されている。
第3空圧室41は、第1吸排気口5を開放して第2吸排気口6からエアを供給することにより、油圧発生部55を入力側に移動して、シリンダ装置1を初期状態に復帰させるのに用いられる。
このように、シリンダ装置1は、シリンダ内の他端側に設けられ、第2吸排気口6を有し、油圧室(油圧室30)を一端側に押圧する第3空圧室41を備えている。
【0054】
以上のように構成されたシリンダ装置1は、次のようにして動作する。
まず、第1吸排気口5を開放して空圧室20(第1空圧室21、第2空圧室22)を減圧しつつ、第2吸排気口6からエアを供給して、空圧室20、油圧室30(第1油圧室31、第2油圧室32)を初期状態に設定する。
次に、第2吸排気口6を開放して第3空圧室41を減圧しつつ、第1吸排気口5からエアを供給する。
【0055】
すると、第1空圧室21と第2空圧室22の気圧が上昇し、第1ピストン11が油圧発生部55を押圧することにより、出力ロッド7の爪76がワーク100に当接するまで油圧発生部55が出力側にスライドして移動する。
このように、第1ピストン11は、第1空圧室21の圧力で、出力ロッド7が押圧対象(ワーク100)に当接するまで、第2空圧室22、第1油圧室31、及び第2油圧室32を他端側(出力側)に移動している。
【0056】
油圧発生部55が移動して出力ロッド7の爪76がワーク100に当接すると、第1ピストン11が第1油圧室31を圧し、第2ピストン12が第2油圧室32を圧するため、第1油圧室31と第2油圧室32の油が加圧されてこれらの油圧が上昇する。
この時油圧発生部55は、第2油圧室32のスラスト方向の内壁の断面積において、出力側の断面積が入力側の断面積よりもロッド部分58の端面積部分だけ大きいため、面積差分だけ押圧力が出力ロッド7の方向に発生する。
この時、第1油圧室31に発生した油圧力は、蓋34の出力側端面を押圧するので、油圧発生部55には入力側へ移動しようとする力が発生する。
この出力側と入力側に移動させようとする相反する力の関係において、第2油圧室32による出力側へ移動しようとする力の方が大きい場合は、出力ロッド7の爪76がワークに当接して停止しているので、油圧発生装置55も移動が停止する。
これにより第2油圧室32内部の油はスラスト方向に移動できないので内部圧が更に上昇し、薄肉部15をラジアル方向に押圧して弾性変形させ、シリンダ2の内周面に当接させる。これにより油圧発生部55がシリンダ2内で固定される。
一方、第1油圧室31による入力側へ移動させる力の方が大きい場合は、第1ピストン11よりも第2ピストン12の方が摺動抵抗が小さく、より早く動作するので、第1ピストン11が間隙51の隙間を動き切る前に第2ピストン12の動作が完了し、剛性が弱い薄肉部15に圧力が作用し、外周面がシリンダ2の内周面に押圧して、油圧発生部55がシリンダ2内でスラスト方向に固定される。
【0057】
油圧発生部55が固定された状態で、空圧室20にさらにエアが供給されるため、第1油圧室31、第2油圧室32の油圧が更に上昇する。これにより薄肉部15はさらにシリンダ2を押圧し、薄肉部15の押圧力による把持力が上昇する。薄肉部15による把持力が高まることにより、油圧発生部55がスラスト方向に堅持され(油圧発生部55が薄肉部15でシリンダ2に固定され)、第1油圧室31の油圧力が発生するスラスト方向の力を受けても動かなくなる。すると第1油圧室31の油圧力が出力ロッド7に印加され、爪76を介してワーク100を油圧力で押圧する。
この時ワーク100は、爪76がワーク100に当接後、押圧されてその場で固定されるのみで、出力ロッド7から印加される油圧力により移動もしくは変形等が無い場合は、第3ピストン13が第1油圧室31室内をスラスト方向に移動することがないので、第1油圧室31内部の油を第3ピストン13のOリング(
図1(b)参照)の移動とともに外部に持ち出すことが無い。
また第2油圧室32は、内部の油が密閉されていて体積が一定であるため、薄肉部15がラジアル方向に膨らむと、そのラジアル方向の体積増加分だけスラスト方向の体積が減少して短くなり、短くなった分、第2ピストン12が前進できる。薄肉部15のラジアル方向の変形量は極わずかであり、そのためそれに伴うスラスト方向の変化量も僅かで、第2ピストン12が移動する量も小さくほとんど動かない。そのため第2ピストン12のOリング(
図1(b)参照)が移動して第2油圧室32内部の油を外部に持ち出すことがほとんど無い。本実施形態では、第2ピストン12の移動量は、Oリング等のシール部材(第2ピストン12に配設された第2油圧室32のシール部材)の弾性変形範囲内の量になるよう設定されており、本実施形態では、Oリングが全く移動しないので内部油が外部に持ち出されることが無い。
ワーク100に対する押圧処理が終了すると、第1吸排気口5を開放し、第1空圧室21と第2空圧室22を減圧する。
【0058】
これにより、第1油圧室31と第2油圧室32の油圧が低下する。
第2油圧室32では、薄肉部15の弾性変形が復元力により戻り、油圧発生部55の固定が解除される。また、第2ピストン12は、コイルバネ33の付勢力により初期状態の位置に戻る。
次に、シリンダ装置1を用いてワーク100を押圧し、クランプする例を説明する。
シリンダ装置1にはワーク100を押圧しクランプするのに最適なクランプ用部材が出力ロッド7の先端に組付いているものとする。
そして、シリンダ装置1は、ワーク100を押圧し、クランプされる部材へのクランプ動作を次の順で行う。
(1)まず、第1吸排気口5を開放して第2吸排気口6にエアを供給することにより、シリンダ装置1を初期状態とし、これによってクランプ用部材を後退させて、ワーク100を所定の位置に設置する。この時ワーク100は、押圧されても動かないように設置されている。
(2)そして、第2吸排気口6を開放して第1吸排気口5からエアを供給する。すると、エア駆動で出力ロッド7が出力方向に前進し、出力ロッド7の先端に取り付けたクランプ用部材がワーク100に当接する。
(3)クランプ用部材が当接すると、空圧室20の圧力が高まって、油圧発生部55がシリンダ2に固定され。出力ロッド7に油圧力による推力が発生する。これにより、強い力でワーク100を押圧するので、ワーク100がクランプされる部材に強く押し付けられ、クランプされる。
(4)ワーク100をクランプされる部材から解放する場合は、第1吸排気口5を開放して第2吸排気口6からエアを供給し、エア駆動により出力ロッド7を退避させ、次いでワーク100を所定の位置から離脱させる。
以下、ワーク100を交換しながら、以上のサイクルを繰り返す。
【0059】
ここで、シリンダエンドでの油圧力発生について、すなわち、出力側のシリンダエンド(蓋4)に油圧発生部55が当接した状態で油圧力を発生させる場合について説明する。この動作例は、出力ロッド7がワーク100に当接しなくても油圧推進力を発生できる事例である。
以下その動作について説明する。
油圧発生部55が前進し、シリンダエンド(蓋4)に当接すると、第2空圧室22により第2ピストン12が第2油圧室32を押圧し、同時に第1空圧室21により第1ピストン11が第1油圧室31を押圧する。油圧発生部55は前進できないので、第2油圧室32内部の油は蓋34と第2ピストン12とにより狭窄され加圧される。すると薄肉部15が弾性変形し、シリンダ2の内壁を固定する。この時、第2ピストン12の摺動抵抗の方が第1ピストン11よりも小さいので早く動作し、第1ピストン11が間隙51の隙間を動き切る前に第2ピストン12の動作が完了する。
油圧発生部55がシリンダ2に固定されるとスラスト方向の把持力が上昇し剛性が高まるので、第1油圧室31で発生するスラスト方向の油圧推力を受け止めることができ、出力ロッド7に油圧推進力が発生する。
これにより、出力ロッド7がワークに当接していない状態においても出力ロッド7に油圧推進力を印加することができる。
【0060】
図2(a)は、シリンダ装置1を用いてプレス加工を行う例を説明するための図である。
図示しないプレス装置は、出力方向を下方にして(即ち、出力ロッド7を上に向けて)シリンダ装置1を固定している。
出力ロッド7に工具として取り付けられた爪76の出力側には、下から設置台73、部品72、ピン71の順で設置されている。設置台73は、ワーク設置手段として機能している。
部品72には、ピン71を締まり嵌めにて挿入する貫通孔が形成されており、当該貫通孔には予めピン71が仮挿入されている。
シリンダ装置1は、次の括弧で示した数字の順で仮挿入されたピン71を圧入する。
【0061】
(1)まず、第1吸排気口5を開放して第2吸排気口6にエアを供給することにより、シリンダ装置1を初期状態とし、これによって爪76を上方に後退させて、設置台73の上にピン71を仮挿入した部品72を所定位置に設置する。
(2)次に、第2吸排気口6を開放して第1吸排気口5からエアを供給する。
すると、エアによる駆動で出力ロッド7が出力方向(下方)に前進し、爪76の端面がピン71の先端に当接する。
【0062】
(3)爪76とピン71が当接すると、空圧室20の圧力が高まって、油圧発生部55がシリンダ2に固定され、出力ロッド7が油圧で駆動される。これにより、強い力で爪76がピン71にプレスされて、ピン71が部品72の孔に圧入される。このようにプレス装置は、プレス手段を備えている。
(4)圧入が完了すると、第1吸排気口5を開放して第2吸排気口6からエアを供給し、エア駆動により爪76を引き上げ、次いで部品72を所定位置から離脱する。このようにプレス装置は、離脱手段を備えている。
【0063】
(第1実施形態の変形例)
シリンダ装置1では、出力ロッド7、ロッド部分50、及びロッド部分58は、同軸に形成されている。これにより、出力ロッド7は、中心軸の周りに回転する自由度を有している。
本変形例は、この自由度を規制し、出力ロッド7が中心軸の周りに回転しないようにするため、出力ロッド7、ロッド部分50、及びロッド部分58をシリンダ2の中心線から偏心させて(出力ロッド7、ロッド部分50、及びロッド部分58の中心線が、シリンダ2の中心線と一致しないように)形成する。
【0064】
即ち、第1ピストン11、第2ピストン12、第3ピストン13からは、偏心ピンのように、これらピストンの中心よりオフセットした位置からロッド部分50、ロッド部分58、出力ロッド7が形成される。
これに合わせて、蓋3、抜止めナット18、張出部57、蓋34の貫通孔も偏心させる。
【0065】
これにより、出力ロッド7は、爪76の角度を一定に保ったままピストン運動することができる。
また、出力ロッド7の中心軸の周りの回転角度を規制する方法としては、後述のカム機構を用いることもできる。
【0066】
(第2実施形態)
本実施の形態のシリンダ装置1aでは、カム機構を用いることにより、出力ロッド7のスラスト方向の移動に対応して出力ロッド7の中心軸の周りの回転角度を変化させる。
以下では、第1実施形態と同じ箇所については、説明を簡略化、又は省略し、相違点について説明する。
【0067】
図3(a)は、シリンダ装置1aのスラスト方向の断面図を示し、
図3(b)は部品図を示している。
第3ピストン13には、中心線に沿って出力側端面から出力ロッド7の中程までめくら孔81が形成されている。
なお、めくら孔81を貫通孔ではなく、一端側が閉塞されためくら状態としたのは、第3空圧室41のエアが当該孔から遺漏するのを防ぐためである。
【0068】
蓋4の入力端側凹部には、中心線に沿ってカム軸ロッド82の固定孔が形成されており、当該固定孔の入力側に、カム軸ロッド82が、例えば、ネジ機構によって固定されている。
これによって、カム軸ロッド82は、シリンダ2の中心線に沿って蓋4の入力側端部から出力ロッド7の方に延設されている。
【0069】
カム軸ロッド82の外径は、抜止めナット37の貫通孔53や出力ロッド7のめくら孔81の内径よりも小さく形成されており、カム軸ロッド82は、抜止めナット37の貫通孔53を貫通して出力ロッド7のめくら孔81に挿入されている。
【0070】
カム軸ロッド82は、蓋4に固定されており、油圧発生部55は、スラスト方向に移動するため、油圧発生部55の移動に伴って、めくら孔81の内周面は、カム軸ロッド82の外周面を摺動する。
めくら孔81の長さは、油圧発生部55が最も出力側に移動した場合でも、めくら孔81の底面がカム軸ロッド82の先端に接触しない長さに設定されている。
【0071】
カム軸ロッド82の側面には、長手方向にガイド溝83が形成されており、カム軸ロッド82は、ガイド溝83が次に述べるカムピン80に面するように固定されている。
第3ピストン13には、第1油圧室31において側面からめくら孔81に達する貫通孔が形成されている。当該貫通孔には、カムピン80が挿入されて、例えば、ネジ機構によって固定されており、カムピン80の先端部分はガイド溝83と係合している(即ち、先端部分がカムピン80に嵌っている)。
なお、カムピン80の先端の端面とガイド溝83の底面との間には、所定のクリアランス(間隙)が設定されており、これによって、摺動の際には、カムピン80の外周側面とガイド溝83の側面が接触するようになっている。
【0072】
なおガイド溝83は、
図3で図示したような一直線の場合には、爪76の直線駆動のガイドとしての役割を果たす。また、ガイド溝83を途中で爪76が旋回駆動できるようにその旋回範囲に応じた領域において螺旋状に形成してもよい。
すなわち、ガイド溝83は、出力ロッド7と爪76の旋回の開始と終了位置に対応する周方向の位相位置を繋ぐように螺旋溝が形成され、この螺旋溝の出力側の端部から更に出力側(蓋4方向)に向かって軸方向に延びる直線溝部が形成されている。この直線溝部は、爪76を軸方向に空圧駆動による直線運動を行わせ、直線動作中にワーク100と爪76が当接するように形成され、その後ワーク100を引き込む(押し込む)ように形成されている。
【0073】
油圧発生部55がスラスト方向に移動すると、カムピン80とガイド溝83が係合しているため、油圧発生部55は、ガイド溝83に倣って中心軸の周りを回転する。これにより出力ロッド7もガイド溝83に倣って回転する。
カム軸ロッド82とガイド溝83の長さは、油圧発生部55が最も入力側に移動した場合でも、カムピン80がガイド溝83と係合している長さに設定されている。
【0074】
図に示した状態は、初期状態であり、カムピン80がカム軸ロッド82の最も入力側に位置している状態を表している。
油圧発生部55が最も出力側に移動したときのカムピン80の位置は、図の波線で示したカムピン80aの位置となる。
この両位置の間のガイド溝83が出力ロッド7の回転の仕方を規定することになる。
【0075】
ガイド溝83がカム軸ロッド82の軸線にそって直線上に形成されている部分では、出力ロッド7は、角度を一定に保ったまま移動し、ガイド溝83が螺旋状に捻れている部分では、出力ロッド7は、捻れに沿って回転する。
このため、ガイド溝83の形状を適当に設定すれば、カムピン80とガイド溝83によるカム機構により、出力ロッド7の先端に取り付けられた爪76を、出力ロッド7の移動に同期して所望の角度に回転させることができる。
【0076】
例えば、爪76を入力側に移動してワーク100をワーク設置台101に設置する際には、ワーク100の設置動作と干渉しない角度に爪76を回転させ、ワーク100を設置した後に、爪76をワーク100の側に回転させながらワーク100に当接してこれをプレスする、といった動作をガイド溝83の形状により規定することができる。
【0077】
このように当該カム機構は、出力ロッドの移動時に、当該出力ロッドの中心軸の周りの回転角度を変化させる回転角度変化手段として機能しており、当該回転角度変化手段は、出力ロッドと、当該出力ロッドに対面する摺動面のうち、一方の側に形成された突起部材(カムピン80)と、他方の側に形成された、当該突起部材(カムピン80)と係合すると共に出力ロッドの移動方向に形成された溝部(ガイド溝83)と、の摺動機構によって、出力ロッドの回転角度を変化させている。
【0078】
(第3実施形態)
第2実施形態のシリンダ装置1aでは、カムピン80を第1油圧室31から挿入したため、構造を小型化できるという長所があるが、反面カムピン80の交換に手間がかかる。
そこで、第3実施形態のシリンダ装置1bでは、カムピン80を交換しやすい位置に設置する。
【0079】
図4は、シリンダ装置1bのスラスト方向の断面図を示している。
シリンダ装置1bでは、抜止めナット37の出力側に凸部84が形成されており、凸部84の側面に形成した貫通孔にカムピン80が固定されている。
波線で示したカムピン80aは、カムピン80が最も出力側に移動したときの位置を示している。他の構成は、シリンダ装置1aと同様である。
【0080】
このように、シリンダ装置1bでは、カムピン80が油圧発生部55の外部に露出しているため、シリンダ装置1bの全長は、シリンダ装置1aよりも長くなるものの、カムピン80の交換が容易となる。
【0081】
(第4実施形態)
本実施の形態に係るシリンダ装置1cは、クランパ90によって油圧発生部55をシリンダ2に固定する。
図5(a)は、シリンダ装置1cの、クランパ90周辺における、スラスト方向の断面図を表し、
図5(d)は、クランパ90周辺の部品図を表している。
なお、この図では、全図は示さずに第2空圧室22と第2油圧室32付近を切り出して示している。
第2油圧室32の入力側端面は、ピストンハウジング14に固定された円柱部材95の端面と、円柱部材95の周囲に配置された円環部材91の端面から構成されている。
円環部材91は、内周面が円柱部材95の外周面と接しており、外周面がピストンハウジング14の内周面と接している。これら接した面はOリングによってシールされており、気密性を保ったまま円環部材91は、スラスト方向に移動することができる。
円柱部材95の入力側には、雌ネジが形成されており、第1実施形態における
抜止めナット18に相当する部材が組付いている。
抜止めナット18に相当する部材の入力側外周には雄ネジが形成されており、ナット97がねじ込まれて固定されている。
【0082】
ナット97の出力側端面と、円環部材91の間には、コイルバネ96が設置されており、円環部材91は、第2油圧室32を構成する空間を確保しつつ(図示しないが、この空間を確保するために円環部材91の出力側への移動を規制する規制手段が設けられている)、コイルバネ96によって出力側に付勢されている。
このため、円環部材91は、第2油圧室32の油圧が上昇すると、入力側に移動し、油圧が低下すると、出力側に移動して元に戻るようになっている。
【0083】
図5(b)に示したように、円環部材91の入力側端部には、入力側(図面左側)に行くほど外径が小さくなるテーパ部92が形成されている。
そして、円環部材91のテーパ部92とナット97の出力側端面との間に形成された空間には、クランパ90が配置されている。
クランパ90は、入力側に行くほど内径が小さくなるテーパ部93が形成された円環部材であって、テーパ部93の角度は、テーパ部92の角度と等しくなっている。
【0084】
図5(c)に示したようにクランパ90は、矢線で示したラジアル方向に広がるように4分割されている。
クランパ90の外周面は、シリンダ2の内周面と平行に形成されており、初期状態では、クランパ90の外周面とシリンダ2の内周面に所定のクリアランスが形成され、両者の間に摩擦力が生じないようになっている。
【0085】
更に、クランパ90の外周面には円周方向に溝が形成されており、当該溝には、Oリング94が設置されている。
一般的にOリングは、気密性を保つために設置されるが、Oリング94は、ラジアル方向に広がったクランパ90を引き戻すために設置されている。
そのため、クランパ90の外周面に形成された溝の高さは、Oリング94の直径よりも大きく設定されており、Oリング94がシリンダ2の内周面に接しないようになっている。
なお、本実施形態では、Oリング94を用いているが、ラジアル方向に広がって内径が大きくなった場合に、元の内径に縮んで戻ろうとする部材であれば、他の部材を用いることができる。例えば、弾力性があるひも状の円環状弾性部材を使用してもよい。また、コイルバネの両端を繋いで円環状にしたものを使用してもよい。
【0086】
このように構成されたシリンダ装置1cにおいて、初期状態では、第2油圧室32の圧力が低いため、円環部材91は、コイルバネ96によって出力側に付勢されており、これによって、ナット97の出力側端面と円環部材91のテーパ部92の間に十分なクリアランスが確保される。
そのため、クランパ90は、Oリング94の収縮力により中心軸方向に束ねられてクランパ90とシリンダ2の内周面との間にクリアランスが生じ、油圧発生部55は、スラスト方向に移動することができる。
【0087】
一方、第2油圧室32の圧力が高まると、油圧によってクランパ90が入力側方向に押されて移動する。
すると、クランパ90には、ナット97の出力側端面と円環部材91のテーパ部92で挟まれて、
図5(b)の矢線で示したように、両端側からスラスト方向の力を受ける。
具体的に説明すると、
第2ピストン12が前進すると、第2油圧室32の圧力が上昇し、圧力の上昇は連通路32aを通り円環部材91の端面空間の油圧室32b(第2油圧室)まで達する。
円環部材91は、Oリング94がクランパ90を収縮させようとする力よりも、第2油圧室32の圧力により発生するスラスト方向に移動しようとする力の方が大きくなったとき、クランパ90を押し広げながら入力側に移動する。この時、第2ピストン12により押しのけられた第2油圧室32内部の油が、連通路32aを通り端面空間に流入するので円環部材91がスラスト方向に移動する。
【0088】
このスラスト方向の力は、円環部材91のテーパ部92とクランパ90のテーパ部93の当接により、
図5(b)の矢線で示したように、ラジアル方向の力に変換され、その結果、クランパ90は、ラジアル方向に押し出される。
これにより、クランパ90の外周面とシリンダ2の内周面が当接して摩擦力が発生し、油圧発生部55は、シリンダ2内で固定される。
第4実施形態で用いたクランパ90による固定方法は、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態で用いることも可能である。
【0089】
この例では、第2油圧室32に発生した油圧で、スラスト方向に移動するテーパ部材(円環部材91)をクランパ90に押圧することによりラジアル方向の力を発生させ、当該力によってクランパ90をシリンダの内壁に押圧することにより第2油圧室32と第1油圧室31を固定している。
【0090】
以上に説明した各実施の形態により、次のような効果を得ることができる。
(1)エアピストンと油圧ピストンを巧みに組み合わせてエアハイドロ機構を内蔵することにより、ワーク100に当接するまではエアピストンとして動作させ、ワーク100に当接してからは油圧シリンダとして動作させることができ、油圧ポンプ等の個別付帯設備や施工に手間が掛る油圧配管等が必要ないエア供給のみで、エアピストンによる長いストロークの移動と油圧ピストンの特徴である大きな推力の両方を実現することができる。
(2)エアピストンによって必要なストロークを稼いだ後、薄肉部15の弾性変形やクランパ90の押し出しなどによってスラスト方向の力をラジアル方向の力に変換して油圧ピストンをシリンダ2内で固定することができる。
(3)ラジアル方向の力を油圧により増大させて油圧ピストンを固定することができるため、強固に固定することができる。
(4)シリンダ2内に固定した油圧シリンダに油圧を発せさることにより大きな力を発生させることができる。
(5)必要なストロークのほとんどをエアピストンでカバーし、必要最小限のストロークを油圧ピストンで行うため、油圧ピストンのストローク量が小さくてすみ、そのため、油の遺漏による損耗を最小限に抑えることができる。
特に出力ロッド7がワーク100に当接し、その後出力ロッド7の移動を伴わないで油圧力だけをワークに印加する使用方法の場合は、各油圧室内部での各油圧ピストンの移動量が各シール部材の弾性変形の範囲内でしかないので、各油圧室内部の油の遺漏を発生させないことができる。
(6)出力ロッド7への推力の増大方向が、シリンダ2および内部で固定される第2ハウジング62の位置に対し、離れる方向(外側に押し出す方向)ではなく、近づく方向(内側に引き込む方向)に力を発生させることができるため、ワーク100の加工に必要な力を確実に伝達することができる。
(7)出力ロッド7を中心軸線周りに旋回させるカム機構を設けたので、ラジアル方向において、第2ハウジング62が固定される前に爪76をワーク100と異なる位相に配置することができる。
【0091】
次に、第5実施形態から第7実施形態について説明する。
この第5~第7実施形態では、エア駆動によりピストンハウジング60を所定位置まで移動させた後にシリンダ2に固定する移動、固定動作(クランプ動作)と、その後に、エアハイドロ機構により出力ロッド7の先端に増幅された油圧力を発生させる油圧出力動作とを、別々に行うことができるようにしたものである。
【0092】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について説明する。
この第5実施形態では、固定動作において、ロッド部分58と第2ピストン12の動作により、第2油圧室32にラジアル方向の油圧を発生させることで、薄肉部15を膨張させピストンハウジング60の動きをシリンダ2に固定させる。
一方、油圧出力動作では、第1ピストン11の移動によりロッド部分50の先端が第1油圧室31を押すことで第3ピストン13から出力ロッド7に増幅した油圧力を発生させる。
【0093】
図6は第5実施形態におけるシリンダ装置1dの構成を表したスラスト方向の断面を表したものである。
図7はシリンダ2内に配設される各部品を表したもので、(a)は各部品の断面を表し、(b)は第1ハウジング61の正面図と側面図、及び抜止めリング29の正面図である。
なお、第1実施形態と同一構造や同一機能の部分については同一の符号を付して適宜その説明を省略する。また、
図6では、各部をシールするためのOリングが表示されているが、その説明は省略する。また、図面を見やすくするため、他の実施形態と同様に、断面を表す表示はせず、
図6(a)と
図6(b)に分けて符号を表示している。そして、
図6(a)だけエアが存在する領域に斜線を、油が存在する領域にドットを付し、主要部品とエアと油の充填される領域に関連して符号を表示している。
【0094】
図6、7に示すように、本実施形態のシリンダ装置1dでは、第1実施形態におけるピストンハウジング14(
図1参照)に代えて、第1ハウジング61、第2ハウジング62、第3ハウジング63からなるピストンハウジング60(図示しない)がシリンダ2内に配設されている。
図6に示すように、入力側から順に、第2ピストン12と連結されたロッド部分58を収容する第2ハウジング62、ロッド部分50が連接された第1ピストン11を収容する第1ハウジング61、出力ロッド7が連接された第3ピストン13を収容する第3ハウジング63の順に配設されている。
【0095】
第2ハウジング62は、両端側が厚肉部に形成され、その間が薄肉部15を構成し、薄肉部15の内側が第2油圧室32となっている。
第2ハウジング62の両端の厚肉部には、第2油圧室32に油を充填するための給油孔が形成され、何れか一方から油を注入した後に給油口栓381、給油口栓382で密閉されている。
第2ハウジング62における入力側の端部には、周上に配置された複数のボルト39aによって、蓋39が固定されている。この蓋39は、第1実施形態における張出部57に対応している。
蓋39には入力側に円筒形状の凹部39d(
図7(a)参照)が形成され、凹部39dの底部には中央にロッド部分58用の貫通孔が形成され、この貫通孔の径方向の外側には凹部39dの底部を軸方向に貫通する連通孔39cが形成されている。この連通孔39cは、後述する第5空圧室65と第3空圧室41とを連通する経路の一部を構成している。
蓋39の入力側端部には、シリンダ2の内周壁との間にクリアランスを有するフランジ部が形成され、このフランジ部の周面には
全周に渡って周溝39bが形成され、この周溝39bには摺動補助リング2aが配設されている。摺動補助リング2aは、他の摺動補助リング2b、2cを含め金属以外の材料(例えば樹脂)で形成され、シリンダ2と蓋39、第1ハウジング61との金属接触を回避し、シリンダ2の内周面と第2ハウジング62との摺動を円滑にするために配設されている。
【0096】
蓋39の凹部39dと中央の貫通孔を貫通するように、ロッド部分58が挿通されている。このロッド部分58の入力側には、第2ピストン12が連結ネジ12aで固定されている。
ロッド部分58は、出力側から入力側に向かって順に径が太くなる、小径部58dと中径部を備えている。このロッド部分58が蓋39内を出力方向に移動することで、第2ハウジング62内に形成される第2油圧室32が、小径部58dの先端で加圧され、この油圧によって薄肉部15がラジアル方向に弾性変形し、ピストンハウジング60(61~63)がシリンダ2内で固定される。
【0097】
ロッド部分58の中径部には、小径部58dの外周に沿った凹部58bが形成されている。ロッド部分58の小径部58dは、コイルバネ33に挿通され、コイルバネ33の一端側が凹部58bに配置され、他端側が蓋39に形成した凹部39dの底面に当接している。
ロッド部分58の中径部の出力側端面には径方向に張り出したフランジ部58cが形成されている。
ロッド部分58は、コイルバネ33を挿通したロッド部分58の小径部と中径部を蓋39に通した状態において、抜止めリング29が入力側から蓋39にボルト29cで固定されている。抜止めリング29の内径は、ロッド部分58のフランジ部58cの外形よりも小さく形成されているため、コイルバネ33により入力側に付勢されロッド部分58が抜けないようになっている。
抜止めリング29は、
図7(b)に示すように、2分割されていて、同一周上にボルト39a(蓋39の固定用)が貫通する貫通孔29aと、ボルト29cで抜止めリング29を蓋39に固定するためのボルト穴29bが複数形成されている。また2分割された合わせ目は、蓋39に組付けても密着せず隙間があり、第5空圧室65内部のエアと連通孔39c内部のエアは自由に行き来できる構成となっている。
【0098】
抜止めリング29を固定した状態において、ロッド部分58には、第2ピストン12が連結ネジ12aで固定されている。このように、ロッド部分58と第2ピストン12とが分割されているのは、ボルト39aによる蓋39の固定と、ボルト29cによる抜止めリング29の固定を行うためである。
ロッド部分58の中央には貫通孔が形成されていて、この貫通孔には後述する出力ロッド7が挿通されている。
【0099】
第2ピストン12は、入力側の端面が蓋3とシリンダ2の内周面とともに第2空圧室22を形成し、出力側の端面が蓋39とシリンダ2とともに第5空圧室65を形成している。
【0100】
第2ハウジング62の出力側の端部には、蓋39と対向して蓋34の一部が挿入されている。蓋34の出力側にはフランジ部が形成され、このフランジ部が第2ハウジング62の出力側端部の厚肉部と当接し、ボルト34aで固定されている。
蓋34の中央部は入力側(第2油圧室32側)に突出しており、この突出部の内側に凹部34dが形成され、この凹部34dの底面には出力ロッド7が挿通する貫通孔が形成されている。
蓋34の凹部34dの径方向の外側には、蓋34を軸方向に貫通する連通孔34bが形成されている。この連通孔34bと、蓋39の連通孔39cとは、第2油圧室32内に配設されるカラー28によって連通されている。
蓋34の出力側端面には、連通孔34bとつながる連通溝34cが径方向に形成されている。
【0101】
第1ハウジング61は、第2ハウジング62よりも出力側に配設され、入力側の端部には、蓋27が複数のボルト27eで固定されている。
この蓋27は、第2ハウジング62に固定された状態で、第2ハウジング62の内側からボルト27aによって蓋34に固定されている。これにより、蓋34に形成された連通溝34cが蓋27で蓋され、第5空圧室65からのエア通路を形成している。
蓋27には、出力側に凹部27f(
図7(a)参照)が形成されている。この凹部27fの底面は、第1空圧室21の入力側端面として機能する。
蓋27には、凹部27fの底面を貫通し、蓋34の凹部34dと連通する連通孔27bが形成されると共に、凹部27fの底面には連通孔27bと繋がる連通溝27dが径方向に形成されている。
また、蓋27の外周面には、蓋34の連通溝34cと繋がる連通溝27cが軸方向に形成されている。
【0102】
蓋27をボルト27aで蓋34に固定した状態で、第1ハウジング61内には、中央にロッド部分50が延設された第1ピストン11が配設されている。
第1ピストン11が配設されることで、第1ハウジング61は第1ピストン11で仕切られ、入力側に第1空圧室21が、出力側に第4空圧室64が形成される。
【0103】
図7に示すように、第1ハウジング61には、両端側に周溝61a、61bが全周に渡って形成されている。この周溝61aには、上述したように摺動補助リング2b、2cが嵌められ、シリンダ2との摺動を円滑にしている。
また、第1ハウジング61には、全長に渡って軸方向(長手方向)に連通溝61eが形成されている。連通溝61eの入力側端部は、蓋27の連通溝27cと繋がっている。
周溝61a、61bと連通溝61eとが交叉する箇所には、周溝61a、61bに嵌められた摺動補助リング2b、2cによって連通溝61eが塞がれないようにするために、摺動補助リング2b、2cの幅よりも広く、厚さよりも深い凹部61c、61dが形成されている。この連通溝61eとシリンダ2の内周面との間が、第5空圧室65からのエアの通路となっている。
【0104】
図6に戻り、第1ピストン11が内側に配置された第1ハウジング61の出力側の端部には、第3ハウジング63が周方向に配設された複数のボルト63eで固定されている。
第3ハウジング63は、ボルト63eによる固定部から見て、入力側と出力側の両方に凸部が形成されている。この出力側凸部はシリンダ2の内径よりも小さく形成され、軸方向の端面から凹部63aが形成されている。入力側凸部は、第1ハウジング61の内径よりも小さく形成され、入力側端部から凹部63aの底部まで貫通する貫通孔63bが形成され、この貫通孔63bには、第1ピストン11のロッド部分50が挿通されている。
第3ハウジング63の軸方向の途中にはフランジ部が形成されている。第3ハウジング63は、フランジ部が周方向の複数箇所においてボルト63eで
第1ハウジング61に固定されている。
このフランジ部の外周面には軸方向の溝63cが形成されている。
また、第3ハウジング63のフランジ部には、溝63cと繋がる位置から径方向に延び途中から軸方向に曲がった、断面L字状の連通孔63dが形成されている。
断面L字状の連通孔63dは、第3ハウジング63の入力側端面まで貫通することで、第4空圧室64と繋がっている。
一方、溝63cは、その入力側が第1ハウジング61の外周に形成した連通溝61eと繋がり、出力側が第3空圧室41と繋がっている。
【0105】
第3ハウジング63の凹部63aには、第3ピストン13が配置されている。この第3ピストン13の中央部には、貫通孔63bを通って入力側の蓋3を貫通する出力ロッド7が配設されている。出力ロッド7の出力側の端部は、第3ピストン13と螺合により固定されている。
出力ロッド7は、第3ハウジング63の貫通孔63b、第1ピストン11とロッド部分50の中央に形成された軸方向の貫通孔50a(
図7参照)、蓋27の貫通孔、蓋34の貫通孔、ロッド部分58の中央に形成された軸方向の貫通孔、及び、蓋3の貫通孔を通り、蓋3の外側まで延びる長さに形成されている。
この出力ロッド7の入力側の先端には、爪76がボルト76aでネジ止めされている。
【0106】
また、出力ロッド7の入力側には、入力側先端から凹部34dの位置まで、中央に軸方向延びる吸排気路7bが形成されている。この吸排気路7bの出力側の端部は、凹部34dの位置において径方向に貫通する貫通孔7cと繋がっている。なお、蓋34の凹部34dの深さ(軸方向の長さ)は、出力ロッド7の軸方向の稼働範囲よりも大きく形成され、これによって貫通孔7cは出力ロッド7の位置にかかわらず、常に凹部34d内に位置するようになっている。
出力ロッド7の入力側端部には、第3吸排気口8が配設されている。この第3吸排気口8から供給されるエアは、吸排気路7bと貫通孔7cを通り、凹部34dを介して第1空圧室21に供給されるようになっている。
【0107】
第3ハウジング63の凹部63aは、第3ピストン13が配置されることで仕切られ、入力側に第1油圧室31が形成される。
第3ピストン13には、第1油圧室31に油を充填するための給油孔13aが形成され、油を注入した後に給油口栓38で密閉されている。
なお、貫通孔63bの内周面をロッド部分50が摺動し、このロッド部分50の貫通孔内周面を出力ロッド7が摺動するように構成されている。この、出力ロッド7と貫通孔63bとの空間にも油が充填されることで、第1油圧室31の一部を構成している。
また、ロッド部分50の貫通孔50aと出力ロッド7の摺動部の途中には、ここから第1油圧室31の油が漏れ出ないように不図示のOリングが配置されている。
ロッド部分50は、その先端で貫通孔63b内の油を押すことで第1油圧室31を加圧する。
【0108】
第3ハウジング63の出力側端部には、抜止めリング37aが複数のボルト37bで固定されている。抜止めリング37aの固定は、凹部63aに第3ピストン13が配置され、油が充填され給油口栓38がされた状態で行われる。
第3ピストン13と抜止めリング37aのそれぞれ対向する面には、凹部13b、凹部37cが形成され、第3ピストン13を入力側に付勢するコイルバネ36が配置されている。
【0109】
第2ハウジング62は、蓋39、蓋34と共に入力側ハウジングを構成し、第1ハウジング61と第3ハウジング63は、蓋27、抜止めリング37aと共に出力側ハウジングを構成している。
また、蓋34と蓋27とがボルト27aで固定されることにより、入力側ハウジングが出力側ハウジングの入力側(一端側)に固定されている。
【0110】
次に、第5実施形態のシリンダ装置1dによる動作について説明する。
図8は、シリンダ装置1dによる動作の各状態を表したものである。
この動作では、出力ロッド7の先端に配設した爪76がワーク100に当接することでピストンハウジング60(61、62、63)の固定を行い、その後に任意のタイミングで出力ロッド7の先端から増幅された油圧力を出力する。
【0111】
最初に、シリンダ装置1dを初期状態にする動作について説明する。
シリンダ装置1dの初期状態とは、シリンダ2内のピストンハウジング60と第2ピストン12を入力側に移動した状態で、
図8(a)に示した状態が該当する。
シリンダ装置1dを
図8(a)に示した初期状態にするには、第1吸排気口5と第3吸排気口8を開放した状態で、第2吸排気口6から所定圧力でエアを供給する。第3空圧室41に供給されたエアは、第3空圧室41を形成する
ピストンハウジング60の出力側端面を押圧し、ピストンハウジング全体が入力方向に移動を開始する。同時に、第3空圧室41に供給されたエアは、溝63c、凹部61d、連通溝61e、凹部61c、連通溝27c、連通溝34c、連通孔34b、カラー28、連通孔39cを通り、第5空圧室65に到達する(
図6参照)。第5空圧室
65に供給されたエアは、第2ピストン12の出力側端面を押圧し入力側に移動する。この時、第1吸排気口5を開放しているので、第2ピストン12とロッド部分58は、第2空圧室22による出力方向の空圧を受けないため、容易に入力方向に移動できる。
また、ロッド部分58のフランジ部58cは
抜止めリング29と係合するのでピストンハウジング60全体も同時に移動する。ここで、第3空圧室41に供給されたエアは、ピストンハウジング60の出力側端面を押圧するのでピストンハウジング60全体は入力側に移動する。この時、第5空圧室65に供給されたエアによる内部圧力は、ピストンハウジング60の入力側端面も同時に押圧しており、且つコイルバネ33の付勢により第5空圧室65の空間を保持したまま移動する。
この入力側への動きに伴い、第2空圧室22内のエアは、第1吸排気口5から排出される。
【0112】
また、供給されたエアは第3空圧室41から溝63c、連通孔63dを通り第4空圧室64内の圧力も上昇する。第4空圧室64からの圧力により第1ピストン11は、蓋27に当接するまで入力側に移動する。この際、第1空圧室21内に存在するエアは、第1ピストン11に押され、連通溝27d、連通孔27b、凹部34d、貫通孔7c、吸排気路7bを通り、第3吸排気口8から放出される。
第1ピストン11と共にロッド部分50も入力側に移動することで、第1油圧室31内の圧力は低下するため、出力ロッド7と第3ピストン13は、第3空圧室41の圧力上昇とコイルバネ36により入力側に付勢され入力側に移動する。
出力ロッド7と第3ピストン13は、第3ピストン13が第3ハウジング63の凹部63aの底面に当接するまで移動する。
以上の動きによりシリンダ装置1dは、図8(a)に示した初期状態となる。
【0113】
図8(a)に示した初期状態において、第3吸排気口8を開放したまま、第2吸排気口6を開放すると共に、第1吸排気口5からエアを供給することで、
図6に示す状態となる。
すなわち、第1吸排気口5から供給されるエアにより第2空圧室22の圧力が上昇し、第2ピストン12を出力側に押し、第2ピストン12はロッド部分58を介して第2油圧室32を押圧する。この時出力側への押圧力の反力がピストンハウジング60全体に働いていないので、第2油圧室32の油が狭窄されることが無く、薄肉部15は弾性変形を生じない。そのためロッド部分58が第2油圧室32を押圧することにより、ピストンハウジング60全体が出力側に移動する。コイルバネ33はピストンハウジング60全体を出力方向に押すことを補助している。
なお、第3吸排気口8が開放されているため、第1空圧室21の空圧は上昇しないので、第1ピストン11とロッド部分50は出力方向に移動せず、蓋27に当接したままである。またロッド部分50が出力方向に移動しないので、第1油圧室31内の油圧も上昇せず、第3ピストン13も第3ハウジング63に当接したままである。
そして、
図6に示すように、第2ピストン12とピストンハウジング60の移動と共に、第3ピストン13が出力方向に移動することで、出力ロッド7も出力方向に移動し、出力ロッド7の先端に配設された爪76がワーク100に当接する。
【0114】
出力ロッド7の爪76がワーク100に当接すると、第3ピストン13が第3ハウジング63と当接しているので、ピストンハウジング60全体の移動が停止する。
この状態で、
図8(b)に示すように、更に第1吸排気口5からエアを供給する。すると、ピストンハウジング60が移動停止しているため、第2空圧室22内の圧力が更に上昇し、コイルバネ33による入力方向の付勢力を越え、第2ピストン12とロッド部分58が出力方向に移動する。
なお、第2ピストン12の移動により第5空圧室65の容積が小さくなるが、第5空圧室65内のエアは、第3空圧室41に移動し、第2吸排気口6から排出される。具体的な経路としては、
図6に示すように、第5空圧室65から、凹部39d、連通孔39c、カラー28、連通孔34b、連通溝34c、連通溝27c、連通溝61e、溝63c、第3空圧室41を通り、第2吸排気口6から排出される経路である。
【0115】
ロッド部分58の移動により、第2油圧室32は、
図8(b)において軸方向の矢印で示すようにロッド部分58の先端部で押圧され、内部圧力が上昇する。この油圧により、径方向の矢印で示すように、薄肉部15が外向きに弾性変形し、ピストンハウジング60は、移動が停止しているだけの状態から、シリンダ2に固定された状態となる。
【0116】
なお、薄肉部15で固定されない状態では、ピストンハウジング60は移動できずに停止しているだけの状態である。
この非固定状態(
図6の状態)で、第1吸排気口5からのエア供給を停止し、第3吸排気口8からエアの供給をすると、ピストンハウジング60全体が逆方向(入力方向)に移動してしまう。すなわち、第1空圧室21の圧力で第1ピストン11とロッド部分50が移動して第1油圧室31内の油圧が上昇するが、出力ロッド7は爪76と当接するワーク100で固定されているため、ワーク100からの反力によりピストンハウジング60全体が逆方向(入力方向)に移動してしまう。
そこで、ピストンハウジング60が薄肉部15の弾性変形により固定されたか否かについては、シリンダ2の外周部にひずみゲージ(図示しない)を配設し、薄肉部15によるシリンダ2への押圧力により生じるシリンダ2の変形ひずみを検知し、所定のひずみ量を検知することでピストンハウジング60の固定を判断する。あるいは第2油圧室32内の圧力を検出する圧力センサ(図示しない)を配置し、この圧力が所定値(薄肉部15が弾性変形する値)を超えたか否かにより判断してもよい。なお、圧力センサによる検出対象を第2空圧室22としてもよい。また、圧力センサに変えて、出力ロッド7や爪76の移動を検出するセンサを設け、移動が停止してから所定時間(第2油圧室の圧力が上昇し肉薄部15が弾性変形するまでの時間)経過により、固定されたと判断するようにしてもよい。
【0117】
薄肉部15の弾性変形によりピストンハウジング60がシリンダ2に固定された
図8(b)の状態では、出力ロッド7はワーク100に当接しているだけで、出力ロッド7の先端からは増幅された推力は出力されない。
そこで、第1吸排気口5からのエア供給を継続し、第2吸排気口6を開放した状態のまま、所望のタイミングにおいて、
図8(c)に示すように、第3吸排気口8からエアを供給すると、供給されたエアは、吸排気路7b、貫通孔7c、凹部34d、連通孔27b、連通溝27dを通り第1空圧室21の圧力を上昇させる。
そして第1ピストン11が第1空圧室21の圧力を受け、エアハイドロ機構により第1ピストン11とロッド部分50が、
図8(c)に示すエアハイドロストロークだけ出力方向に移動し、ロッド部分50の先端が、第1油圧室31を押圧する。これにより、ロッド部分50の先端面積と第3ピストン13の端面積との比に応じて増幅された油圧力を第3ピストン13が受け、 第3ピストン13と出力ロッド7及び爪76が油圧ストロークだけ出力方向に移動する。この移動の際に爪76からは、第1油圧室31で増幅された油圧力が第3ピストン13の入力側の端面積を押圧し、爪76に増大された大きな推力が出力される。この大きな推力で爪76がワーク100を蓋3の方向に引き込むことで、ワーク100がワーク設置台101に押し込まれる。
【0118】
以上説明したように、第5実施形態によれば、第2油圧室32の油圧を上昇させてピストンハウジング60をシリンダ2に固定するための第1吸排気口5とは別に、出力ロッド7先端の爪76から推力を発生させるための第3吸排気口8を設けている。
これにより、ピストンハウジング60の固定動作と、出力ロッド7先端の爪76からの推力発生動作を独立させることができる。
【0119】
(第6実施形態)
以下、第6実施形態について説明する。
第5実施形態では、第3吸排気口8を出力ロッド7の入力側に配設したのに対し、この第6実施形態のシリンダ装置1eでは、出力ロッド7の出力側に第3吸排気口8を配設するようにしたものである。
【0120】
図9は、第6実施形態におけるシリンダ装置1eの構成を表したものである。
この
図9に示したシリンダ装置1eでは、第5実施形態におけるシリンダ装置1dと同一箇所については同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
図9に示すように、シリンダ装置1eは、出力ロッド7を蓋3側だけでなく蓋4側も貫通するように形成されている。蓋4には、出力ロッド7が摺動する貫通孔が形成されている。
そして出力ロッド7には、第5実施形態と同様に、出力ロッド7の稼働範囲において凹部34d内となる位置に貫通孔7cが形成されている。この貫通孔7cから、出力ロッド7の出力側端部まで貫通する吸排気路7dが出力ロッド7に形成され、出力ロッド7の出力側の端部に第3吸排気口8が配設されている。
【0121】
このシリンダ装置1eによる動作は、第3吸排気口8と第1空圧室21との間を流れるエアが、吸排気路7dを通る点を除き、第5実施形態と同じである。
このシリンダ装置1eによれば、増幅した推力の作用点である爪76の近傍に第3吸排気口8がないので、爪76周辺の自由度を高めることができる。
【0122】
(第7実施形態)
以下、第7実施形態について説明する。
第6実施形態では、第3吸排気口8を出力ロッド7の出力側に配設することで爪76周辺の自由度を高めたのに対し、この第7実施形態では、第2実施形態と同様にカム機構を用い、出力ロッド7の移動に伴い爪76の中心軸周りの回転角度を変化させることで、ワーク等の着脱時における爪76とワーク等との干渉を回避するようにしたものである。
【0123】
図10は第7実施形態におけるシリンダ装置1fの構成の一部を表したものである。
この
図10に示したシリンダ装置1fでは、第6実施形態における
シリンダ装置1eと同一箇所に対して同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
なお
図3で説明したのと同様に、
図9で図示したような一直線状の場合は、爪76の直線駆動のガイドとしての役割を果たす。また、図示の都合上ガイド溝83を直線状に表しているが、ガイド溝83を途中で爪76が旋回駆動できるように、その旋回範囲に応じた領域において螺旋状に形成してもよい。
【0124】
本実施形態のシリンダ装置1fは、カム機構の一部を構成し、内側を出力ロッド7が摺動する円筒部85を備えている。円筒部85は、入力側にフランジ部が形成され、このフランジ部が周方向の複数箇所においてボルト85aで蓋4に固定されている。
円筒部85の出力側には径方向の貫通孔が形成され、この貫通孔にはカムピン80が挿入されて、例えば、ネジ機構により固定されている。
出力ロッド7の出力側端部には、カム機構の一部を構成するガイド溝83が形成されている。このガイド溝83には、カムピン80の先端が嵌まって(係合して)いる。
なお、カムピン80の先端の端面とガイド溝83の底面との間には、所定のクリアランス(間隙)が設定されており、これによって、摺動の際には、カムピン80の外周側面とガイド溝83の側面が接触するようになっている。
【0125】
図10(b)は、ガイド溝83の形状を示すために、
図10(a)の正面図に対応させたガイド溝83を平面に展開した状態の図である。
ガイド溝83は、軸方向の動きに対して爪76を回転させるための螺旋溝83bと、この
螺旋溝83bの出力側と入力側の端部のそれぞれと連続して形成された直線溝83a、83cを備えている。
すなわち、ガイド溝83は、出力ロッド7と爪76の回転の開始と終了位置に対応する周方向の位相位置を繋ぐように螺旋溝83bが形成され、この螺旋溝83bの入力側の端部から更に入力側(蓋3側、
図6参照)に向かって軸方向に延びる直線溝83cと、出力側の端部から更に出力側(第3吸排気口8側)に向かって軸方向に延びる直線溝83aが形成されている。この直線溝83cは、爪76が軸方向にワーク100を直線的に引き込む(押し込む)ために形成されている。
出力ロッド7と爪76が初期状態(入力側)から出力側に移動するに従い、カムピン80は
直線溝83aから螺旋溝83b、直線溝83cの順にガイド溝83を摺動する。
本実施形態のカム機構は、爪76がワーク等の周辺の物との干渉を回避するために設けられている。このため、初期状態から爪76が干渉を避けながら直線的に移動する直線部83aはできるだけ長く形成され、爪76がワーク位置まで旋回する螺旋溝83bの長さはできるだけ短いことが好ましい。なお、旋回溝83bの位置については、爪76が旋回することで他の部品などの干渉しない位置であれば、より入力側であっても、より出力側であってもよい。
ガイド溝83の螺旋溝83bは、空気圧による出力ロッド7の早送り動作に対応している。直線溝83cは途中まで空気圧による出力ロッド7の早送り動作に対応し、爪76がワーク100に当接した後、または
抜止めリング37aが蓋4に当接した後に切り替わる油圧によるエアハイドロストローク前後のストロークに対応している。
このため、シリンダ装置1fは、出力ロッド7の早送り部分で爪76を所定量旋回動作させた後、直線運動に切り替えてワークへの接近と把持、押圧するストロークでは、ワークへの当接と増幅された推力を出力させる。
なお、本実施形態のカム機構により爪76は90度だけ旋回するようにガイド溝83が形成されているが、任意の旋回角度α(例えば、180度等)に形成するようにしてもよい。また、異なる旋回角度となるように形成された複数の円筒部85を用意し、ワークの種類などに応じて適宜円筒部85を変更するようにしてもよい。
【0126】
ガイド溝83の軸方向の全長は、出力ロッド7の稼働範囲よりも大きく形成し、爪76がワークと当接する前にガイドピン80が直線部83cに到達するように形成される。
なお、直線部83aは、
図8(a)で説明した初期状態において、ガイドピンが位置するように形成されるが、直線部83aは無くすことも可能である。
【0127】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、各実施形態で説明した構成については可能な範囲で他の実施形態に適用するようにしてもよい。
例えば、第5実施形態において、シリンダ2の外周部にひずみゲージを配設し、薄肉部15によるシリンダ2への押圧力により生じるシリンダ2の変形ひずみを検知してピストンハウジング60の固定を判断したが、第1実施形態から第4実施形態、第6実施形態、及び第7実施形態においても同様に、ひずみゲージを配設してピストンハウジング14、60が薄肉部15の弾性変形により固定されたか否かについて判断してもよい。
【0128】
また、説明した第5実施形態~第7実施形態では、第2ハウジング62の薄肉部15でピストンハウジング60をシリンダ2に固定する場合について説明したが、
図5で説明した
第4実施形態と同様に、クランパによってピストンハウジング60をシリンダ2に固定するようにしてもよい。
また、第5実施形態~第7実施形態においても、
図2で説明したのと同様の動作にして、プレス加工による抜き加工や凹部を形成することができる。
なお、段落0090で説明した第1から第4実施形態の効果については、第5実施形態~第7実施形態においても得ることができる。
【符号の説明】
【0129】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f シリンダ装置
2 シリンダ
2a、2b、2c 摺動補助リング
3、4、34 蓋
5 第1吸排気口
6 第2吸排気口
7 出力ロッド
7d 吸排気路
8 第3吸排気口
11 第1ピストン
12 第2ピストン
13 第3ピストン
14 ピストンハウジング
15 薄肉部
16 カラー
17 抜止めボルト
18 抜止めナット
19 コイルバネ
20 空圧室
21 第1空圧室
22 第2空圧室
27、39 蓋
29 抜止めリング
30 油圧室
31 第1油圧室
32 第2油圧室
33 コイルバネ
37 抜止めナット
37a 抜止めリング
38 給油口栓
40、53 貫通孔
41 第3空圧室
43 凹部
44 凸部
50、58 ロッド部分
51、52、54 間隙
55 油圧発生部
57 張出部
60 ピストンハウジング
61 第1ハウジング
62 第2ハウジング
63 第3ハウジング
64 第4空圧室
65 第5空圧室
71 ピン
72 部品
73 設置台
76 爪
80 カムピン
81 めくら孔
82 カム軸ロッド
83 ガイド溝
84 凸部
85 円筒部
85a ボルト
90 クランパ
91 円環部材
92、93 テーパ部
94 Oリング
95 円柱部材
96 コイルバネ
97 ナット
100 ワーク
101 ワーク設置台