(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】プリーツ型成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/00 20060101AFI20220414BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20220414BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20220414BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20220414BHJP
C08L 77/02 20060101ALI20220414BHJP
B01D 29/07 20060101ALI20220414BHJP
B29C 48/345 20190101ALI20220414BHJP
【FI】
C08J5/00 CES
C08J5/00 CFG
C08K3/34
C08K3/26
C08L23/12
C08L77/02
B01D29/06 510Z
B29C48/345
(21)【出願番号】P 2018039200
(22)【出願日】2018-03-06
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2017113271
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】本間 義和
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-113572(JP,A)
【文献】実開平06-034727(JP,U)
【文献】特開2004-137396(JP,A)
【文献】特開2015-110716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;
5/12-5/22
C08K 3/34
C08K 3/26
C08L 23/12
C08L 77/02
C08L 101/00
B01D 23/00-35/04;
35/08-37/08
B29C 48/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、タルク、炭酸カルシウム、ワラストナイトから選ばれるものを1または2以上含む無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂組成物のネットからなるプリーツ型成形体であって、
前記熱可塑性樹樹脂がポリアミド6またはポリプロピレンであり、
前記タルクが、平均粒径5μm以上で、前記熱可塑性樹脂組成物中の含有割合が8質量%以上であり、
前記炭酸カルシウムが、平均粒径5μm以上で、前記熱可塑性樹脂組成物中の含有割合が15質量%以上であり、
前記ワラストナイトが、アスペクト比が2以上で、前記熱可塑性樹脂組成物中の含有割合が10質量%以上である、プリーツ型成形体。
【請求項2】
前記タルクが、平均粒径と熱可塑性樹脂組成物中の含有割合の積が100以上になるようにそれぞれが調整されているものであり、
前記炭酸カルシウムが、平均粒径と熱可塑性樹脂組成物中の含有割合の積が100以上になるようにそれぞれが調整されているものであり、
前記ワラストナイトが、アスペクト比と熱可塑性樹脂組成物中の含有割合の積が50以上になるようにそれぞれが調整されているものである、請求項1記載のプリーツ型成形体。
【請求項3】
前記無機充填材が、タルク、炭酸カルシウム、ワラストナイトから選ばれるいずれか一つである、請求項1または2記載のプリーツ型支持体。
【請求項4】
前記プリーツ型支持体がエンジンオイルフィルター用の支持体である、請求項1~
3のいずれか1項記載のプリーツ型成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター用のプリーツ型ろ材の支持体として使用できるプリーツ型成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や各種機械では、エンジン内に循環させるエンジンオイルを浄化するためのオイルフィルターが使用されている(特許文献1~4)。
オイルフィルターは、大きな表面積を確保するため、多数層に折り畳まれたプリーツ型のものが汎用されており、オイルフィルターを支持するためのプリーツ型の支持体も併用されていることが多い。このような支持体をオイルフィルターと組み合わせて使用することで、オイルフィルター自体の使用寿命を延長させることができる。
現状のオイルフィルターの支持体には、綾織りなどの金網からなる製品が使用されているが、加工時にずれを生じるという問題がある。
プラスチック製であれば前記問題は生じないが、折り畳むことと折り畳まれた状態を維持することが困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表平8-501494号公報
【文献】WO2003/066193
【文献】特表平11-276814号公報
【文献】特開2007-1827721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、エンジンオイルのオイルフィルターの支持体として使用できるプリーツ型成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、熱可塑性樹脂と、タルク、炭酸カルシウム、ワラストナイトから選ばれるものを1または2以上含む無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂組成物のネットからなるプリーツ型成形体であって、
前記タルクが、平均粒径5μm以上で、前記熱可塑性樹脂組成物中の含有割合が8質量%以上であり、
前記炭酸カルシウムが、平均粒径5μm以上で、前記熱可塑性樹脂組成物中の含有割合が15質量%以上であり、
前記ワラストナイトが、アスペクト比が2以上で、前記熱可塑性樹脂組成物中の含有割合が10質量%以上である、プリーツ型成形体を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のプリーツ型成形体は、折り曲げ加工性(折り曲がり保持性)が良く、さらに金網と比べると軽量化できるため、エンジンオイルのオイルフィルターの支持体として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】プリーツ型成形体の製造用ネットの部分拡大平面図。
【
図2】(a)、(b)は、実施例および比較例における折り曲げ加工性試験の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<プリーツ型成形体の製造用組成物>
本発明のプリーツ型成形体の製造原料となる組成物で使用する熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体樹脂などのオレフィン共重合樹脂、アクリル酸、メタクリル酸、これらのエステル由来の構成単位を含むアクリル酸系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などを挙げることができる。これらの中でもポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂が好ましく、さらにポリアミド6とポリプロピレンが好ましい。
【0009】
本発明のプリーツ型成形体の製造原料となる組成物で使用する無機充填材は、タルク、炭酸カルシウム、ワラストナイトから選ばれるものを1または2以上含むものである。
無機充填材としては、上記のタルク、炭酸カルシウム、ワラストナイトを除いた他の無機充填材を含有することができる。他の無機充填材としては、マイカ、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。
無機充填材は、タルク、炭酸カルシウム、ワラストナイトから選ばれるものを1または2以上の含有割合が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0010】
タルクは、平均粒径5μm以上であり、好ましくは5~30μmであり、より好ましく8~30μmであり、さらに好ましくは8~28μmである。
タルクの熱可塑性樹脂組成物中の含有割合は8質量%以上であり、好ましくは10質量%以上である。
タルクは、同じ含有割合であれば平均粒径が大きい方が折り曲げ加工性が良く、同じ平均粒径であれば含有割合が大きい方が折り曲げ加工性が良いため、平均粒径と熱可塑性樹脂組成物中の含有割合の積が100以上になるようにそれぞれが調整されていることが好ましく、120以上になるようにそれぞれが調整されていることがより好ましい。
【0011】
炭酸カルシウムは、平均粒径5μm以上であり、好ましくは5~30μmであり、より好ましく8~30μmであり、さらに好ましくは8~28μmである。
炭酸カルシウムの熱可塑性樹脂組成物中の含有割合は8質量%以上であり、好ましくは10質量%以上である。
炭酸カルシウムは、同じ含有割合であれば平均粒径が大きい方が折り曲げ加工性が良く、同じ平均粒径であれば含有割合が大きい方が折り曲げ加工性が良いため、平均粒径と熱可塑性樹脂組成物中の含有割合の積が100以上になるようにそれぞれが調整されていることが好ましく、120以上になるようにそれぞれが調整されていることがより好ましい。
【0012】
ワラストナイトは、アスペクト比が2以上で、前記熱可塑性樹脂組成物中の含有割合が15質量%以上であることが好ましい。
ワラストナイトは、同じ含有割合であればアスペクト比が大きい方が折り曲げ加工性が良く、同じアスペクト比であれば含有割合が大きい方が折り曲げ加工性が良いため、アスペクト比と熱可塑性樹脂組成物中の含有割合の積が50以上になるようにそれぞれが調整されていることが好ましく、100以上になるようにそれぞれが調整されていることがより好ましい。
【0013】
本発明のプリーツ型成形体は、本発明の課題を解決できる範囲内で、公知の樹脂添加剤として使用される他の成分を使用することができる。
前記他の成分としては、酸化防止剤、熱安定剤、耐薬品剤、難燃剤、染・顔料等の着色剤、潤滑剤などを挙げることができる。
【0014】
<組成物からなるネット>
上記の組成物からなるネットは、特開2016-121414号公報の段落番号0021、0022に記載方法、特許第4684783号公報に記載の方法(剪断法成形;段落番号0026~0030)、特開2008-2002号公報の段落番号0045、特公昭41-5264号公報に記載された方法を適用して製造することができる。
【0015】
ネットの厚みは0.1~1.0mmが好ましく、0.2~0.8mmがより好ましい。
ネットの接点ピッチ(
図1に示すMD/TD)は、MD方向ピッチ長さ>TD方向ピッチ長さの関係を満たしていることが好ましい。
MD方向ピッチ長さは1~4mmが好ましく、1.5~3.5mmがより好ましい。
TD方向ピッチ長さは0.5~3mmが好ましく、1.0~2.2mmがより好ましい。
MD方向ピッチ長さ/TD方向ピッチ長さは1.3~2.0が好ましい。
【0016】
<プリーツ型成形体>
本発明のプリーツ型成形体は、
図2(b)に示すように、上記組成物から成形されたネットが多数回折り曲げられてプリーツ状にされたものである。
折り曲げ回数と折り曲げ高さ(
図2(b)のH)は用途に応じて選択することができる。
本発明のプリーツ型成形体は、必要に応じて他部材と組み合わせて、平面状または円筒状などにして使用することができる。
本発明のプリーツ型成形体は、エンジンオイルフィルター用の支持体のほか、水または水を含む溶媒フィルター用の支持体、エアフィルター用の支持体として使用することができる。
【実施例】
【0017】
実施例および比較例で使用した各成分は次のとおりのものである。
PA6:宇部興産株式会社製 ポリアミド6樹脂 1020
PP:株式会社プライムポリマー製 プライムポリプロ E-105GM
タルク:日本タルク株式会社製 RA,平均粒径14.7μm
炭酸カルシウム:白石カルシウム製PO-100-B-10,平均粒径2.1μm、アスペクト比1
なお、タルクと炭酸カルシウムの平均粒径は、マイクロトラック・ベル株式会社のレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3000IIシリーズ)にて体積平均径(MV)を測定した。
【0018】
実施例1~15、比較例1~8
(ネットの製造)
各例の組成物は、予め予備混合した後、二軸押出機でペレットに成形したものを使用した。
65mm押出機の先端に円筒ダイを装着した。この円筒ダイは、内周と外周のそれぞれの円周上に配置した多数のノズルを有しており、内周側のノズルと外周側のノズルが互いに逆方向に回転する構造となっているものである。
表1に示す各例のペレットを押出機に供給して、PA6は260~290℃、PPは210~240℃で溶融混練した後、円周ダイの内外のノズルからネット構成糸を押出しながら、ネット構成糸の交差部で内外のノズル孔が重なって1つのノズルとなるようにノズル孔を相対回転させて、交差部でネット構成糸を互いに融着させつつ円筒状のネットを押出成形した。
押出された円筒状のネットは、水槽中のマンドレル(サイジング)に導き、冷却固化した後、押出方向(MD方向)に切り開き、シート状のネットを得た。
【0019】
(プリーツ型成形体の製造)
下記条件でプリーツ加工を行い、支持体ネットの評価を行った。
(プリーツ加工条件)
試験機名称:ホップテック(株)製の高速レシプロ折機(50山/分)
設備条件(加工条件)
プリーツ押込圧力:32kgf(3.13MPa)/幅
折高さ(
図2(a)のH):20mm
使用ネットの幅:390mm
温度:23℃(室温)
【0020】
(折り曲げ加工性の評価)
プリーツ加工後、1分30秒押し込み圧力を維持した状態(
図2(a)に示す状態)からネットを取り出し、表1に示す5~15分経過後(
図2(b)に示す状態)の折れ曲がり角度(
図2(b)のα)を算出した。
合計で20ピッチ(一面側に20山)の折れ曲がり角度から平均値を算出した。平均値の変化が小さいほど、折り曲げ加工性(折り曲がり保持性)が良いことを示している。
【0021】
【0022】
比較例1、2と実施例1~4を比べると、タルクを含有することによりプリーツ型成形体の平均角度は実施例1~4の方が小さく、折り曲げ加工性が良いことが確認できた。
比較例2と実施例1~4は、タルクの平均粒径は同じであるが、比較例2のタルク含有割合が5質量%と小さく、平均粒径とタルクの含有割合の積が100未満であったため、プリーツ型成形体の平均角度αに有意差が生じていた。
実施例1~4は、平均粒径とタルクの含有割合の積が大きくなるほどプリーツ型成形体の平均角度αが小さくなり、折り曲げ加工性が良いことが確認できた。
比較例4、5は、炭酸カルシウムの平均粒径が小さすぎ、炭酸カルシウムの含有割合も十分ではなく、平均粒径と炭酸カルシウムの含有割合の積が100未満であったため、プリーツ型成形体の平均角度αが大きくなっていた。
【0023】
【0024】
比較例6と実施例5~9を比べると、タルクを含有することによりプリーツ型成形体の平均角度αは実施例5~9の方が小さく、折り曲げ加工性が良いことが確認できた。
実施例5~9を比べると、平均粒径とタルクの含有割合の積が大きくなるほど、プリーツ型成形体の平均角度αが小さく、折り曲げ加工性が良いことが確認できた。
同様に実施例8、9では、平均粒径とタルクの含有割合の積が大きな実施例9の方がプリーツ型成形体の平均角度αが小さかった。
比較例7、8と実施例10~13はネットの寸法に小さな違いはあるが、平均粒径と炭酸カルシウムの含有割合の積が大きな実施例10~13のプリーツ型成形体の平均角度αが小さく、折り曲げ加工性が良いことが確認できた。
実施例10~13を比べると、平均粒径と炭酸カルシウムの含有割合の積が大きくなるほどプリーツ型成形体の平均角度αが小さくなり、折り曲げ加工性が良いことが確認できた。
実施例14、15は、他の実施例と比べても折り曲げ加工性が良いことが確認できた。またアスペクト比の大きな実施例15の方が実施例14と比べると折り曲げ加工性が良いことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のプリーツ型成形体は、各種車両、建設用機械、農業用機械などで使用するエンジンオイルフィルター用の支持体として利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ネット