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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/33 20180101AFI20220414BHJP
   F21S 41/164 20180101ALI20220414BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20220414BHJP
【FI】
F21S41/33
F21S41/164
F21W102:155
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018075506
(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公開番号】P2019186025
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(72)【発明者】
【氏名】木ノ内 利行
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-166371(JP,A)
【文献】特開2013-149503(JP,A)
【文献】特開2000-200509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/33
F21S 41/164
F21W 102/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に延びる光軸に直交する方向かつ水平方向に対して、光軸近傍から左斜め下方と右斜め下方にそれぞれ傾斜する左下降カットオフライン及び右下降カットオフラインを有するカットオフライン光を形成する光源と、左下降カットオフラインに倣う形状を有し、対向車線側カットオフラインを形成する左カットオフライン形成端、並びに右下降カットオフラインに倣う形状を有し、自車線側カットオフラインを形成する右カットオフライン形成端を有する反射面によって前記カットオフライン光を前方に反転反射するリフレクタと、を有する車両用前照灯において、
前記リフレクタが、左下降カットオフラインに対応して形成される対向車線側カットオフラインを水平カットラインとするようにカットオフライン光を反射し、
水平カットオフラインを形成するリフレクタの前記左カットオフライン形成端は、カットオフライン光の対応する左下降カットオフラインよりも下向きに最大で略+5°の範囲で傾いて形成されたことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
車両の前後方向に延びる光軸に直交する方向かつ水平方向に対して、光軸近傍から左斜め下方と右斜め下方にそれぞれ傾斜する左下降カットオフライン及び右下降カットオフラインを有するカットオフライン光を形成する光源と、左下降カットオフラインに倣う形状を有し、自車線側カットオフラインを形成する左カットオフライン形成端、並びに右下降カットオフラインに倣う形状を有し、対向車線側カットオフラインを形成する右カットオフライン形成端を有する反射面によって前記カットオフライン光を前方に反転反射するリフレクタと、を有する車両用前照灯において、
前記リフレクタが、右下降カットオフラインに対応して形成される対向車線側カットオフラインを水平カットラインとするようにカットオフライン光を反射し
水平カットオフラインを形成するリフレクタの前記右カットオフライン形成端は、カットオフライン光の対応する右下降カットオフラインよりも下向きに最大で略+5°の範囲で傾いて形成されたことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項3】
車両の前後方向に延びる光軸に直交する方向かつ水平方向に対して、光軸近傍から左斜め下及び右斜め下よりも下方を覆う遮光部材を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記リフレクタの反射面は、カットオフライン光を反射する複数の反射セグメントによって構成され、
前記複数の反射セグメントは、
左カットオフライン形成端を備える第1カットオフライン形成セグメントと、
右カットオフライン形成端を備える第2カットオフライン形成セグメントと、
カットオフライン形成端を持たない汎用セグメント
を有し、
対向車線側カットオフラインを形成する第1及び第2カットオフライン形成セグメントのうち一方が、カットオフラインを水平にした状態で光を反射するように形成されたことを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
車両の前後方向に延びる光軸に直交する方向かつ水平方向に対して、光軸近傍から左斜め下方と右斜め下方にそれぞれ傾斜する左下降カットオフライン及び右下降カットオフラインを有するカットオフライン光を形成する光源と、左下降カットオフラインに倣う形状を有し、対向車線側カットオフラインを形成する左カットオフライン形成端、並びに右下降カットオフラインに倣う形状を有し、自車線側カットオフラインを形成する右カットオフライン形成端を有する反射面によって前記カットオフライン光を前方に反転反射するリフレクタと、を有する車両用前照灯において、
前記リフレクタが、左下降カットオフラインに対応して形成される対向車線側カットオフラインを水平カットラインとするようにカットオフライン光を反射し、
前記リフレクタの反射面は、カットオフライン光を反射する複数の反射セグメントによって構成され、
前記複数の反射セグメントは、
左カットオフライン形成端を備える第1カットオフライン形成セグメントと、
右カットオフライン形成端を備える第2カットオフライン形成セグメントと、
カットオフライン形成端を持たない汎用セグメント
を有し、
前記汎用セグメントが対向車線側カットライン近傍に光を反射する補光領域を有することを特徴とする車両用前照灯。
【請求項6】
車両の前後方向に延びる光軸に直交する方向かつ水平方向に対して、光軸近傍から左斜め下方と右斜め下方にそれぞれ傾斜する左下降カットオフライン及び右下降カットオフラインを有するカットオフライン光を形成する光源と、左下降カットオフラインに倣う形状を有し、自車線側カットオフラインを形成する左カットオフライン形成端、並びに右下降カットオフラインに倣う形状を有し、対向車線側カットオフラインを形成する右カットオフライン形成端を有する反射面によって前記カットオフライン光を前方に反転反射するリフレクタと、を有する車両用前照灯において、
前記リフレクタが、右下降カットオフラインに対応して形成される対向車線側カットオフラインを水平カットラインとするようにカットオフライン光を反射し、
前記リフレクタの反射面は、カットオフライン光を反射する複数の反射セグメントによって構成され、
前記複数の反射セグメントは、
左カットオフライン形成端を備える第1カットオフライン形成セグメントと、
右カットオフライン形成端を備える第2カットオフライン形成セグメントと、
カットオフライン形成端を持たない汎用セグメント
を有し、
前記汎用セグメントが対向車線側カットライン近傍に光を反射する補光領域を有することを特徴とする車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水平カットオフラインと斜めカットオフラインを有する配光パターンでロービーム照射を行う車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図2及び図3には、インナーシェードによって水平カットオフライン及び斜めに下降するカットオフラインを有するロービーム用のカットオフライン光を光源バルブから出射し、出射したカットオフライン光を水平カットオフラインに倣う水平カットオフライン形成端を有する水平カットオフライン形成領域と、斜めに下降するカットオフラインに倣う斜めカットオフライン形成端を有する斜めカットオフライン形成領域とを有するリフレクタで前方に反転反射することにより、対向車線側に水平カットオフラインを有し、自車線側に斜め上方に傾く斜めカットオフラインを有する配光パターンを前方に形成する車両用前照灯が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-57103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両用前照灯は、光源バルブが予め水平カットオフラインを備えたカットオフライン光をリフレクタに照射するため、リフレクタにも水平カットオフラインに倣う形状の端部(水平カットオフライン形成端)を設けることで対向車線側のグレア光を低減している。しかし、近年の高効率光源バルブには、左右斜め下方に傾斜するカットオフラインをインナーシェードで形成するものがあり、そのような高効率光源バルブによるカットオフライン光を特許文献2の図2に示されるような水平カットオフライン形成端を有するリフレクタで反射すると、水平方向から斜め下方に照射される光の一部が非反射領域に入射して対向車線側の光量が不足する問題が生じる。
【0005】
一方で、左右斜め下方に傾斜するカットオフラインを有する高効率光源バルブのカットオフライン光を左右斜め下方に傾斜するカットオフラインにそれぞれ倣うようなカットオフライン形成端を有するリフレクタでそのまま反転反射した場合、対向車線側のカットオフラインが水平よりも斜め上方に伸びてグレア光を生じることで対向車を眩惑する点で問題がある。
【0006】
本願は、上記問題に鑑みて、左右斜め下方に傾斜するカットオフラインを有する光を発する高効率光源バルブによって生じる対向車線側のグレア光を防止することで対向車線側に照射されるロービームの遠方視認性を向上させた車両用前照灯を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
車両の前後方向に延びる光軸に直交する方向かつ水平方向に対して、光軸近傍から左斜め下方と右斜め下方にそれぞれ傾斜する左下降カットオフライン及び右下降カットオフラインを有するカットオフライン光を形成する光源と、左下降カットオフラインに倣う形状を有し、対向車線側カットオフラインを形成する左カットオフライン形成端並びに右下降カットオフラインに倣う形状を有し、自車線側カットオフラインを形成する右カットオフライン形成端を有する反射面によって前記カットオフライン光を前方に反転反射するリフレクタと、を有する車両用前照灯において、前記リフレクタが、左下降カットオフラインに対応して形成される対向車線側カットオフラインを水平カットラインとするようにカットオフライン光を反射することがのぞましい。
【0008】
(作用)車両が左側通行の国における対向車線側(右車線側)において斜め上方に向けられる光をリフレクタによって反射して水平カットオフラインを形成することで、対向車線側のグレアが防止されつつ水平カットオフライン近傍の光束が増加する。
【0009】
また、車両の前後方向に延びる光軸に直交する方向かつ水平方向に対して、光軸近傍から左斜め下方と右斜め下方にそれぞれ傾斜する左下降カットオフライン及び右下降カットオフラインを有するカットオフライン光を形成する光源と、左下降カットオフラインに倣う形状を有し、自車線側カットオフラインを形成する左カットオフライン形成端並びに右下降カットオフラインに倣う形状を有し、対向車線側カットオフラインを形成する右カットオフライン形成端を有する反射面によって前記カットオフライン光を前方に反転反射するリフレクタと、を有する車両用前照灯において、前記リフレクタが、右下降カットオフラインに対応して形成される対向車線側カットオフラインを水平カットラインとするようにカットオフライン光を反射することも望ましい。
【0010】
(作用)車両が右側通行の国における対向車線側(左車線側)において斜め上方に向けられる光をリフレクタによって反射して水平カットオフラインを形成することで、対向車線側のグレアが防止されつつ水平カットオフライン近傍の光束が増加する。
【0011】
また、車両用前照灯において、車両の前後方向に延びる光軸に直交する方向かつ水平方向に対して、光軸近傍から左斜め下及び右斜め下よりも下方を覆う遮光部材を有することも望ましい。
【0012】
(作用)遮光部材が、光軸近傍から左斜め下及び右斜め下よりも下方に向かう光を遮光することにより、左下降カットオフライン及び右下降カットオフラインを有するカットオフライン光をリフレクタの反射面に照射する。
【0013】
また、車両用前照灯において、前記リフレクタの反射面は、カットオフライン光を反射する複数の反射セグメントによって構成され、前記複数の反射セグメントは、左カットオフライン形成端を備える第1カットオフライン形成セグメントと、右カットオフライン形成端を備える第2カットオフライン形成セグメントと、カットオフライン形成端を持たない汎用セグメントを有し、対向車線側カットオフラインを形成する第1及び第2カットオフライン形成セグメントのうち一方が、カットオフラインを水平にした状態で光を反射するように形成されることも望ましい。
【0014】
(作用)斜めカットオフラインに倣う形状の形成端を有するカットオフライン形成セグメントが、光源からのカットオフライン光を余さず受けつつ対向車線側のカットオフラインを斜めにせずに水平に反射することで水平カットオフライン近傍の光束が増加する。
【0015】
水平カットオフラインを形成するリフレクタの前記左カットオフライン形成端または右カットオフライン形成端のうち一方は、カットオフライン光の対応する左下降カットオフライン及び右下降カットオフラインよりも下向きに最大で略+5°の範囲で傾いて形成されることも望ましい。
【0016】
(作用)光軸に直交する方向かつ水平方向に対して、左右下方にそれぞれ傾いて形成されるリフレクタの左右カットオフライン形成端は、光源から入射されるカットオフライン光において前記水平方向から左右下向きに傾いて形成される左右の下降カットオフラインよりも微少角(最大で略+5°)分大きなマージンを持って形成されることにより、リフレクタに入射するカットオフライン光の左右の下降カットオフラインが、左右カットオフライン形成端の内側の反射領域に漏れなく入射する。
【0017】
また、車両用前照灯において、前記汎用セグメントに対向車線側のカットライン近傍に光を反射する補光領域を設けることが望ましい。
【0018】
(作用)汎用セグメントの光が対向車線側の水平カットオフライン近傍に照射されて水平カットオフライン近傍の光束を更に増加させる。
【発明の効果】
【0019】
車両用前照灯によれば、左右対称の下降カットオフラインを形成する高効率光源を採用しても対向車線側の車両を眩惑するグレア光の発生が防止されつつ対向車線側の水平カットオフライン近傍に反射される光の光束が増加して水平カットオフラインが鮮明になることで対向車線側の遠方視認性が向上する。
【0020】
車両用前照灯によれば、斜めカットオフラインを有する高効率光源を採用しても対向車線側のグレア光が防止されつつ対向車線側の水平カットオフライン近傍に反射される光の光束が増加して水平カットオフラインが鮮明になることで対向車線側の遠方視認性が向上する。
【0021】
車両用前照灯によれば、光源から発せられる左右の下降カットオフライン光の左右の下降カットオフラインが、リフレクタの左右カットオフライン形成端近傍で内側の反射領域に漏れなく入射するため、水平カットオフラインが更に鮮明になって対向車線側の遠方視認性がより向上する。
【0022】
車両用前照灯によれば、カットオフライン形成端を持たない汎用セグメントの光の一部を対向車線側カットオフラインの生成に利用することで対向車線側の遠方視認性が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本願発明の実施形態に係る車両用前照灯の縦断面図。
図2】(a)本実施形態の光源バルブの左側面図。(b)光源バルブのインナーシェード周辺を上方から見た拡大平面図。(c)図2(b)のI-I断面図
図3】本実施形態のリフレクタの正面図。
図4】本実施形態の車両用前照灯によるロービーム用配光パターンをリフレクタの後方から透視的に見た状態を示す図。
図5】本実施形態の車両用前照灯によるロービーム用配光パターンを車両の上方から見た説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態を図1から図5に基づいて説明する。各図においては、車両用前照灯の各部や車両用前照灯の搭載車両のドライバーから見た道路の方向を(上方:下方:左方:右方:前方:後方=Up:Lo:Le:Ri:Fr:Re)として説明する。
【0025】
図1により本実施形態における車両用前照灯1を説明する。車両用前照灯1は、ランプボディ2と透明または半透明の前面レンズ3の内側に形成される灯室S内に灯具ユニット4、及びエクステンションリフレクタ11を設けることで形成される。
【0026】
灯具ユニット4は、光源バルブ5,リフレクタ6及びアウターシェード7によって構成される。光源バルブ5は、光軸O方向に伸びるロービーム用フィラメント8,インナーシェード9及びハイビーム用フィラメント10を有するハロゲンバルブ等の高効率発光バルブであり、光源バルブ5は、光軸Oを中心とした回転放物面上に後述する複数の反射セグメントを設けて形成されたリフレクタ6に光軸Oを基準として同軸となるように取り付けられ、リフレクタ6は、反射面6aに設けられた後述する反射セグメントによって光源バルブ5の光を前方に反射する。アウターシェード7は、ロービーム用フィラメント8から前方に直接出射する光を遮蔽するように光源バルブ5の前端部を被うキャップ7aとリフレクタ6に取り付けられる取付部7bによって構成される。尚、灯室S内の灯具ユニット4の周辺領域は、前方から見えないようにエクステンションリフレクタ11によって遮蔽される。
【0027】
図2(a)は、図1の光源バルブ5を示す。光源バルブ5は、口金5a、口金に固定された筒型ガラス球5b、端子5c、口金5aを介して端子5cに電気的に接続される金属製のリード線5d、ロービーム用フィラメント8、遮光部材であるインナーシェード9及びハイビーム用フィラメント10を有する。ロービーム用フィラメント8、インナーシェード9及びハイビーム用フィラメント10は、それぞれガスを封入されて密閉された筒型ガラス球5bの内側において、リード線5dを介して口金5aに保持される。
【0028】
尚、本実施形態は、発光するフィラメント(8,10)の切替えによってロービーム光またはハイビーム光の双方を出射する2灯式の車両用前照灯を示しているが、ハイビーム専用の車両用前照灯あるいはハイビーム専用の灯具ユニットを別途用意することでハイビーム用フィラメント10を省略した4灯式ロービーム用の車両用前照灯としてもよい。また、本実施形態においては、フィラメントを発光させる光源バルブ5の代わりにLED等の半導体発光素子を発光させる光源を用いても良い。
【0029】
ロービーム用フィラメント8は、光軸Oと同軸になるよう配置され、インナーシェード9は、ロービーム用フィラメント8の下側に配置され、ハイビーム用フィラメント10は、ロービーム用フィラメント8の後方において光軸Oの近傍に配置される。筒型ガラス球5bの先端には、ロービーム用及びハイビーム用フィラメント(8,10)から前方に直接出射する光を遮蔽する遮蔽被膜5eが設けられる。
【0030】
インナーシェード9は、図2(b)(c)に示すように正面から見て上方に開口する有底のカップ型形状を有する。インナーシェード9の後端には、上方から見て後方に凸となる湾曲形状に形成された遮光部9aが設けられる。図2(c)に示す遮光部9aの上端には、正面から見て光軸Oの直下かつ近傍に位置する頂部9bから左斜め下方に傾斜するように形成された左下降カットオフライン形成端9cと、頂部9bから右斜め下方に傾斜するように形成された右下降カットオフライン形成端9dが設けられる。
【0031】
図2(c)の左下降カットオフライン形成端9c及び右下降カットオフライン形成端9dは、それぞれ光軸Oに直交する方向かつ水平方向に延びる軸線O1に対して15°ずつ下方に傾斜するように形成される。尚、インナーシェード9の左右の下降カットオフライン形成端(9c、9d)に関する水平方向からの傾斜角は、頂部9bから左斜め下方及び右斜め下方に傾斜する形状であれば15°に限られない。
【0032】
図2(c)のインナーシェード9は、ロービーム用フィラメント8からリフレクタ6に向けて照射された光のうち、左下降カットオフライン形成端9cよりも下方または右下降カットオフライン形成端9dよりも下方に向かう光を遮光することにより、カットオフライン光S1をリフレクタ6に照射する。カットオフライン光S1は、左下降カットオフライン形成端9cに倣うように水平方向から左斜め下方に略15°傾斜する左下降カットオフライン12と、右下降カットオフライン形成端9dに倣うように水平方向から右斜め下方に略15°傾斜する右下降カットオフライン13を有するようにリフレクタ6に照射される。
【0033】
図1及び図3に示すリフレクタ6は、複数の反射セグメントからなる反射面6aを有し、光源バルブ5から反射面6aに入射した光の上下及び左右方向を反転するように前方に反射する。図3の反射面6aは、点P1-P2-P3-P4で結ばれた線よりも上方に位置するロービーム用反射セグメント群14と、点P1-P2-P3-P4で結ばれた線よりも下方に位置するハイビーム用反射セグメント15aからなるハイビーム専用反射セグメント群15によって形成される。
【0034】
ロービーム用フィラメント8の光は、ロービーム用反射セグメント群14のみに入射して後述する図4のロービーム用配光パターンLpを形成し、ハイビーム用フィラメント10の光は、ロービーム用反射セグメント群14とハイビーム専用反射セグメント群15を含む反射面6aの全体に入射して図示しないハイビーム用配光パターンを形成する。
【0035】
図3に示すようにロービーム用反射セグメント群14は、反射面6aの左側で外周から内周にかけて点P1-P2-P5-P6で囲まれた領域に設けられた複数の第1カットオフライン形成セグメント16と、反射面の右側で外周から内周にかけてリフレクタ点P3-P4-P7-P8で囲まれた領域に設けられた複数の第2カットオフライン形成セグメント17と、P6-P5-P8-P7を結ぶ線よりも上方の領域に設けられた複数の汎用セグメント18によって形成される。
【0036】
図3に示すように複数の第1カットオフライン形成セグメント16の下端部には、連続する左カットオフライン形成端19が点P1-P2を結ぶ線上に形成され、複数の第2カットオフライン形成セグメント17の下端部には、連続する右カットオフライン形成端20が点P3-P4を結ぶ線上に形成される。
【0037】
図3の左カットオフライン形成端19は、インナーシェード9の左下降カットオフライン形成端9cに倣うように光軸Oに直交する方向かつ水平方向に延びる軸線O1に対して左下降カットオフライン形成端9cよりも最大で略+5°左斜め下向きに傾斜するように(即ち、15°+最大で略5°傾斜するように)形成され、右カットオフライン形成端20は、インナーシェード9の右下降カットオフライン形成端9dに倣うように光軸Oに直交する方向かつ水平方向に延びる軸線O1に対して右下降カットオフライン形成端9dよりも0°から最大で略+5°右斜め下向きに傾斜するように(即ち、15°+最大で略5°傾斜するように)形成される。
【0038】
図2に示すカットオフライン光S1に形成された左右斜め下方に略15°ずつ傾斜する下降カットオフライン(12、13)は、リフレクタ6の左右のカットオフライン形成端(19,20)に沿って反射面6aのロービーム用反射セグメント群14に入射する。ここで、リフレクタ6の左右のカットオフライン形成端(19,20)は、インナーシェード9の左右の下降カットオフライン形成端(9c、9d)よりも最大で+略5°だけ下方に大きく傾くようにマージンを形成されているため、カットオフライン光S1は、下降カットオフライン(12、13)が斜め下方に15°よりも微少角だけ大きく形成されたとしても、ハイビーム専用反射セグメント群15側にはみ出すこと無く、ロービーム用反射セグメント群14内に漏れなく入射する。尚、マージンの最大値は、インナーシェード9の左右の下降カットオフライン形成端よりも下方に微少角傾けられていれば、5°に限られない。
【0039】
図1に示すように光源バルブ5のロービーム用フィラメント8から出射した光S1は、リフレクタ6の反射面6aによって前方に反射され、図4に示すように反射光S2は、後述する図5の車両24の前方の路面等にロービーム用配光パターンLpを表示する。尚、本実施形態においては、図5に示すように車両24が左側通行の国で使用されることを想定している。
【0040】
具体的には、反射光S2のうち、図3及び図4に示すリフレクタ6のロービーム用反射セグメント群14の左下領域にある第1カットオフライン形成セグメント16で反射された光S21は、右斜め上方に反転反射されて配光領域Lp1を表示し、その上にある複数の汎用セグメント18のうち反射面6aの左半分に配置される左汎用セグメント18aで反射された光S22は、右斜め下方に反転反射されて配光領域Lp1の下に一部が重なるように配光領域Lp2を表示する。更に反射光S2のうち、ロービーム用反射セグメント群14の右下領域にある第2カットオフライン形成セグメント17で反射された光S23は、左斜め上方に反転反射されて配光領域Lp3を表示し、その上にある複数の汎用セグメント18のうち反射面6aの右半分に配置される右汎用セグメント18bで反射された光S24は、右斜め下方に反転反射されて配光領域Lp3の下に一部が重なるように配光領域Lp4を表示する。ロービーム用配光パターンLpは、配光領域Lp1からLp4の合成によって表示される。
【0041】
ここで、図3及び図4に示す第2カットオフライン形成セグメント17による配光領域Lp3は、対向車ドライバーに対する眩惑を考慮する必要の無い図5に示す自車線Ln1側を幅広く照射するため、リフレクタ6の右カットオフライン形成端20によって所定の水平線H-H(対向車ドライバーの目線の位置を示す線)よりも上方で左斜め上方に切れ上がる左斜めカットオフライン21を表示する。しかし、第1カットオフライン形成セグメント16による配光領域Lp1は、対向車ドライバーを眩惑させるグレア光を図5に示す対向車線Ln2側に照射してはならないため、配光領域Lp3と対称になるような水平線H-Hよりも上方に切れ上がる斜め右斜めカットオフライン(二点鎖線で示す符号23の部分)を表示してはならない。
【0042】
そこで、図3及び図4に示されるリフレクタ6の第1カットオフライン形成セグメント16は、反射光S21による光が水平線H-Hより下方に反射され、かつ左カットオフライン形成端19によって配光領域Lp1に表示されるカットオフラインが水平線H-Hの近傍直下でこれに平行な水平カットオフライン22を表示するように形成される。
【0043】
その結果、本実施形態の車両用前照灯1によれば、第1カットオフライン形成セグメント16により、仮に従来形状の第1カットオフライン形成セグメントを有するリフレクタを採用した場合に水平線H-Hよりも上方で右斜めカットオフライン23を表示するように反射されていた光束を水平線H-Hの直下に収束反射することから対向車のドライバーを眩惑することの無い水平カットオフライン22を収束した光束によってより鮮明に表示することが出来る。
【0044】
図5に示す車両24は、図1に示す本実施形態の車両用前照灯1によりロービーム用配光パターンLpを車両の前方路面等に表示している。図5の二点鎖線は、仮に従来形状の第1カットオフライン形成セグメントを有するリフレクタを採用した場合に表示される配光パターンLppを示す。従来のリフレクタを採用した場合に表示される配光パターンLppは、対向車線Ln2側において、反射光が図4に示す水平線H-Hをよりも上方に拡散される分、水平カットオフライン23近傍の光束が弱くなって車両24に近い位置までしか照射されない。しかし、本実施形態の車両用前照灯1による配光パターンLpは、対向車線Ln2側に反射される光を水平線H-Hより上方に拡散させずに水平線H-Hの近傍直下に収束させて鮮明な水平カットオフライン22を表示するため、対向車のドライバー(図示せず)を眩惑することなく対向車線Ln2側において従来よりも遠方に照射される点で優れている。
【0045】
尚、本実施形態においては、図5に示すように車両24が左側通行の国において使用される車両用前照灯を想定しているため、ロービーム用配光パターンLp1の形成において、第1カットオフライン形成セグメント16が右側車線となる対向車線側の水平カットオフライン22を表示し、第2カットオフライン形成セグメント17が左側車線となる自車線側で左斜めカットオフライン21を形成するように構成されているが、車両が右側通行の国においては、第1カットオフライン形成セグメント16が左側車線となる対向車線側の水平カットオフラインを表示し、第2カットオフライン形成セグメント17が右側車線となる自車線側で右斜め上方に切れ上がる右斜めカットオフラインを形成するように構成されても良い。
【0046】
尚、図3に示すようにリフレクタ6の反射面には、第1カットオフライン形成セグメント16によって形成される配光領域Lp1の内側に反射光を重ねて反射する汎用セグメント18を例えば反射面6aの左側で外周から内周にかけて配置される点P5-P6-P9-P10で囲まれた補光領域25を設けてもよい。その場合、図4及び図5に示すロービーム用配光パターンLpにおいて対向車線Ln2側に表示される水平カットオフライン22の近傍における光束が増加して更に鮮明な水平カットオフラインを表示し、対向車線Ln2の遠方までロービーム用配光パターンLpを表示できる。尚、補光領域25は、汎用セグメント18のいずれに設けてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 車両用前照灯
5 光源バルブ(光源)
6 リフレクタ
6a 反射面
9 インナーシェード(遮光部材)
12 左下降カットオフライン
13 右下降カットオフライン
16 第1カットオフライン形成セグメント
17 第2カットオフライン形成セグメント
18 汎用セグメント
19 左カットオフライン形成端
20 右カットオフライン形成端
22 水平カットオフライン
25 補光領域
Ln1 自車線
Ln2 対向車線
Lp ロービーム用配光パターン
O 光軸
O1 光軸に直交する方向かつ水平方向に伸びる軸線
S1 カットオフライン光
図1
図2
図3
図4
図5