(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】回転工具装置及び工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 47/00 20060101AFI20220414BHJP
B23Q 11/12 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
B23B47/00 B
B23Q11/12 E
(21)【出願番号】P 2018192400
(22)【出願日】2018-10-11
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】風間 浩明
(72)【発明者】
【氏名】小坂 貴史
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-337633(JP,A)
【文献】実開昭64-012965(JP,U)
【文献】特開2014-035034(JP,A)
【文献】特開2003-225801(JP,A)
【文献】特開昭60-183101(JP,A)
【文献】特開平10-202467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 47/00
B23B 3/16
B23B 3/22- 3/26
B23B 29/24-29/34
B23B 39/16
B23Q 11/12
F16H 55/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源が作動することによ
り回転軸を中心に回転する駆動歯車と、
前記駆動歯車に嵌合した状態で前記駆動歯車とともに前記回転軸を中心に回転する工具ユニットと、を備え、
前記駆動歯車は、
潤滑油が供給される第1端部を有し、前記回転軸に沿って延びる第1油通路と、
前記第1油通路から前記駆動歯車の歯面まで前記駆動歯車の径方向に沿って延びる第2油通路と、を備
え、
前記工具ユニットは、
工具と、
前記工具を保持する工具保持部と、を備え、
前記工具保持部は、前記工具と反対側の端部に位置する第1嵌合部を備え、
前記駆動歯車は、前記第1嵌合部に嵌合する第2嵌合部を備え、
前記第1油通路は、前記第1端部とは反対側の端部であり、前記第2嵌合部に到達する第2端部を備える、
回転工具装置。
【請求項2】
前記駆動歯車及び前記工具ユニットを回転可能に収容する筐体を備え、
前記筐体は、
鉛直方向に沿って延び、前記第1油通路の前記第1端部に連続し、油が供給される給油路と、
前記工具ユニットを着脱可能に保持する工具取付穴部と、を備える、
請求項
1に記載の回転工具装置。
【請求項3】
前記第2油通路は前記径方向に沿って貫通する孔であり、互いに交差するように複数設けられる、
請求項1
又は2に記載の回転工具装置。
【請求項4】
前記駆動歯車は、複数設けられ、互いに噛み合うように1列に並べられる、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の回転工具装置。
【請求項5】
前記筐体の前記給油路にはミストの潤滑油が供給される、
請求項
2に記載の回転工具装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1項に記載の回転工具装置と、
前記回転工具装置による加工を行うためにワークを把持する主軸ユニットと、を備える、
工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転工具装置及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の工作機械として、特許文献1には、複数の工具を回転可能に支持するドリル装置が開示されている。このドリル装置は、例えば、駆動モータと、駆動モータの駆動力を各工具に伝達する伝達機構と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたドリル装置では、伝達機構に潤滑油を供給するためには工具を取り外したりドリル装置を分解したりする必要がある。このため、伝達機構に潤滑油を供給することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、容易に潤滑油を供給することができる回転工具装置及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る回転工具装置は、駆動源と、前記駆動源が作動することにより回転軸を中心に回転する駆動歯車と、前記駆動歯車に嵌合した状態で前記駆動歯車とともに前記回転軸を中心に回転する工具ユニットと、を備え、前記駆動歯車は、潤滑油が供給される第1端部を有し、前記回転軸に沿って延びる第1油通路と、前記第1油通路から前記駆動歯車の歯面まで前記駆動歯車の径方向に沿って延びる第2油通路と、を備え、前記工具ユニットは、工具と、前記工具を保持する工具保持部と、を備え、前記工具保持部は、前記工具と反対側の端部に位置する第1嵌合部を備え、前記駆動歯車は、前記第1嵌合部に嵌合する第2嵌合部を備え、前記第1油通路は、前記第1端部とは反対側の端部であり、前記第2嵌合部に到達する第2端部を備える。
【0008】
前記回転工具装置は、前記駆動歯車及び前記工具ユニットを回転可能に収容する筐体を備え、前記筐体は、鉛直方向に沿って延び、前記第1油通路の前記第1端部に連続し、油が供給される給油路と、前記工具ユニットを着脱可能に保持する工具取付穴部と、を備える、ようにしてもよい。
【0009】
前記第2油通路は前記径方向に沿って貫通する孔であり、互いに交差するように複数設けられる、ようにしてもよい。
【0010】
前記駆動歯車は、複数設けられ、互いに噛み合うように1列に並べられる、ようにしてもよい。
【0011】
前記筐体の前記給油路にはミストの潤滑油が供給される、ようにしてもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る工作機械は、前記回転工具装置と、前記回転工具装置による加工を行うためにワークを把持する主軸ユニットと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転工具装置及び工作機械において、容易に潤滑油を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る工作機械について図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、工作機械1は、工作機械1全体の台であるベッドSと、ワークWを把持しつつ軸回転させる主軸ユニット10と、主軸ユニット10により把持されたワークWを加工するために移動する工具機構30と、工作機械1を制御する制御部90と、を備える。
【0017】
以下では、工作機械1の構成の理解を容易にするため、鉛直方向を「Y軸方向」とし、ワークWの中心線に沿った水平方向を「Z軸方向」とし、Y軸及びZ軸方向に垂直な水平方向を「X軸方向」とする。また、図中にX、Y、Z軸の各々の方向を示す矢印を示した。これら矢印が示す各方向において、矢印の向く方向を「+」側、その反対側の方向を「-」側とする。
【0018】
(主軸ユニット10)
図1に示すように、主軸ユニット10は、主軸台11と、主軸14と、主軸台11をZ軸方向に移動させるZ軸移動機構13と、を備える。
【0019】
主軸14は、何れも図示しない、ワークWを保持するチャックと、チャックで保持したワークWを回転させるワーク回転用モータと、を備える。主軸台11は、主軸14を回転可能に支持する。Z軸移動機構13は、ベッドSに対して回転可能に支持され、Z軸方向に延びるボールねじ13aと、ボールねじ13aを回転させるZ軸用モータ13zと、ボールねじ13aと嵌合するナット12aと、を備える。ナット12aには主軸台11が固定されている。Z軸移動機構13は、Z軸用モータ13zによりボールねじ13aを回転させることで、ナット12aを介して主軸台11をZ軸方向に移動させる。これにより、主軸台11がベッドSに対してZ軸方向に移動する。よって、主軸ユニット10は、主軸14で保持したワークWをZ軸方向に移動させることができる。
【0020】
(工具機構30)
工具機構30は、
図1に示すように、ベッドSに固定された固定台31と、回転工具装置50と、固定工具ユニット80と、回転工具装置50及び固定工具ユニット80をY軸方向に移動させるY軸移動機構32と、
図2に示すように、回転工具装置50及び固定工具ユニット80をX軸方向に移動させるX軸移動機構42と、を備える。
【0021】
図1に示すように、固定台31には、固定台31のZ軸方向に貫通する空洞部を有する筒状のフランジ31bが設けられている。フランジ31bの内面には、ワークWの保持や移動を補助するガイドブッシュ31cが設けられている。なお、フランジ31bやガイドブッシュ31cは、加工するワークWに合わせて適宜変更することができる。
【0022】
Y軸移動機構32は、Y軸方向に延びるボールねじ32aと、ボールねじ32aと係合するナット32bと、ボールねじ32aを回転させるY軸用モータ32yと、を備える。Y軸移動機構32は、Y軸用モータ32yによりボールねじ32aを回転させることで、ナット32bを介して回転工具装置50及び固定工具ユニット80をY軸方向に移動させる。
【0023】
図2に示すように、X軸移動機構42は、X軸方向に延びるボールねじ42aと、ボールねじ42aと係合するナット42bと、ボールねじ42aを回転させるX軸用モータ42xと、を備える。X軸移動機構42は、X軸用モータ42xによりボールねじ42aを回転させることで、ナット42b及びY軸移動機構32を介して回転工具装置50及び固定工具ユニット80をX軸方向に移動させる。
【0024】
(制御部90)
図1に示すように、制御部90は、工作機械1全体を制御するものであり、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、CPU(Central Processing Unit)と、を備える。制御部90は、オペレータによって作成されたNC(Numerical Control)プログラムに従って、Z軸移動機構13を介して主軸台11をZ軸方向に移動させるとともに、X軸移動機構42及びY軸移動機構32を介して回転工具装置50及び固定工具ユニット80をX軸方向及びY軸方向に移動させ、回転工具装置50を介してカートリッジ式工具ユニット70a,70bを回転させる。これにより、ワークWが加工される。
【0025】
(固定工具ユニット80)
図3に示すように、固定工具ユニット80は、工具保持部81と、工具保持部81に保持される工具群82と、を備える。工具群82は、複数のバイトから構成される。工具群82は、X軸方向に沿い、かつ、その刃先が主軸14に把持されるワークWの側周面に向かうように工具保持部81によって把持される。工具群82の刃先が回転中のワークWの側周面に接触することにより、ワークWを切削することができる。
【0026】
(回転工具装置50)
図3に示すように、回転工具装置50は、カートリッジ式工具ユニット70a,70bを保持し、カートリッジ式工具ユニット70a,70bを軸回転させる。回転中のカートリッジ式工具ユニット70a,70bの先端にワークWを接触させることにより、ワークWを加工することができる。
回転工具装置50は、
図5に示すように、筐体51と、給油継手53と、排油継手55と、駆動歯車61,62,63と、
図4に示すように、伝達歯車64と、出力歯車65と、工具回転用モータ50mと、を備える。回転工具装置50にはカートリッジ式工具ユニット70a,70bが着脱可能に装着される。
【0027】
筐体51は、駆動歯車61,62,63、伝達歯車64及び出力歯車65を回転可能に収容する。また、筐体51には工具回転用モータ50mが固定される。
【0028】
詳しくは、
図5に示すように、筐体51は、駆動歯車61,62,63に潤滑油を供給する給油路52と、カートリッジ式工具ユニット70a,70bが装着可能な3つの工具取付穴部51a,51b,51cと、排油口56と、を備える。
3つの工具取付穴部51a,51b,51cはY軸方向に並べられる。各工具取付穴部51a,51b,51cはX軸方向に沿って延び、主軸14に把持されたワークWに向かって開口した円柱状の有底穴を有する。工具取付穴部51a,51b,51cは、駆動歯車61,62,63が互いに噛み合い可能となるように、工具取付穴部51a,51b,51cの底面側(+X側)においてY軸方向につながるように形成される。本例では、工具取付穴部51aにはカートリッジ式工具ユニット70aが装着され、工具取付穴部51cにはカートリッジ式工具ユニット70bが装着される。工具取付穴部51bには、カートリッジ式工具ユニット70a,70bが装着されず、工具取付穴部51bの開口部を塞ぐ蓋54が装着されている。蓋54により工具取付穴部51b内に塵埃等の異物が進入することが抑制される。
なお、工具取付穴部51bにカートリッジ式工具ユニットが装着されてもよいし、工具取付穴部51a,51cにカートリッジ式工具ユニット70a,70bが装着されなくてもよい。すなわち、オペレータは、加工に必要となるカートリッジ式工具ユニットを選択して、その選択したカートリッジ式工具ユニットを工具取付穴部51a,51b,51cに装着すればよい。
【0029】
図5に示すように、給油路52は、潤滑油が通る筐体51に形成される穴である。給油路52は、Y軸方向に沿って延び筐体51の上面(+Y側の面)に形成される柱状の有底穴として形成される。給油路52は、工具取付穴部51a,51b,51cの底面(+X側の内面)に連通する給油口52a,52b,52cを有する。
【0030】
給油継手53は、筐体51の外上面(+Y側の面)に位置し、給油路52の上端部(+Y側の端部)に接続される。給油継手53には、給油管58を通じて油供給源59が接続される。油供給源59は、潤滑油を収容し、給油管58及び給油継手53を介して給油路52に潤滑油を供給する。例えば、油供給源59は、オイルミスト発生装置であり、潤滑油をミストとして給油路52に供給する。よって、本例では、給油路52に潤滑油を供給する方式としてオイルミスト潤滑方式が採用される。
【0031】
排油口56は、工具取付穴部51cにおける駆動歯車63の歯面63hの下側(-Y軸側)に位置し、工具取付穴部51cの内部空間と筐体51の外部の間を繋ぐ貫通孔として形成される。排油継手55は、筐体51の外下面(-Y軸側の面)に位置し、排油口56に接続される。排油継手55は、排油口56を通過した潤滑油を外部に排出する。
【0032】
図4に示すように、工具回転用モータ50mは制御部90による制御のもと作動することにより軸回転する出力軸50m1を有する。出力軸50m1は、X軸方向に沿って延びる。
【0033】
図4及び
図5に示すように、駆動歯車61,62,63、伝達歯車64及び出力歯車65はそれぞれ平歯車であり、X軸方向に延びる回転軸を中心に回転可能に筐体51内にベアリングを介して支持される。
出力歯車65の回転中心には工具回転用モータ50mの出力軸50m1が挿通され、出力軸50m1とともに回転する。
伝達歯車64は、Z軸方向において出力歯車65と駆動歯車61の間に位置し、出力歯車65と駆動歯車61に噛み合う。伝達歯車64は、出力歯車65の回転力を駆動歯車61に伝達する。
【0034】
図5に示すように、駆動歯車61,62,63はY軸方向に沿って並べられる。駆動歯車61,62,63は互いに噛み合う歯面61h,62h,63hを有する。駆動歯車61,62,63は、互いに同一の形状、すなわち同一の歯数及びモジュールを有する。駆動歯車61は、工具取付穴部51aの底面側(+X側)に位置する。駆動歯車62は、工具取付穴部51bの底面側(+X側)に位置する。駆動歯車63は、工具取付穴部51cの底面側(+X側)に位置する。
【0035】
図6に示すように、駆動歯車61は、駆動歯車61の回転軸に沿って延びる第1油通路61aと、駆動歯車61の径方向に沿って延びる第2油通路61b,61cと、カートリッジ式工具ユニット70aの後述する嵌合突部78が嵌まる嵌合凹部61kと、給油路52の給油口52aに接続される接続部61sと、を備える。
第1油通路61aは、駆動歯車61の回転軸に沿う駆動歯車61を貫通する孔として形成される。第1油通路61aは、給油路52側(+X側)に位置し、給油路52の給油口52aから潤滑油が供給される第1端部61a1と、カートリッジ式工具ユニット70a側(-X側)に位置し、カートリッジ式工具ユニット70aと駆動歯車61の間に潤滑油を供給する第2端部61a2と、を備える。
嵌合凹部61kは第1油通路61aの第2端部61a2に位置する。嵌合凹部61kにはカートリッジ式工具ユニット70aの後述する嵌合突部78が嵌まることにより、駆動歯車61はカートリッジ式工具ユニット70aと一体で軸回転する。
接続部61sは、第1油通路61aの第1端部61a1を形成する円筒状をなす。接続部61sは、給油口52aに対して軸回転可能に、給油路52の給油口52a内に位置する。接続部61sが給油路52の給油口52aに挿入されることにより、給油路52と第1油通路61a及び第2油通路61b,61cとが連続した空間となる。
【0036】
図7に示すように、第2油通路61b,61cは、それぞれ駆動歯車61の径方向に沿って延び、互いに異なる角度にて駆動歯車61を貫通する孔として形成される。第2油通路61b,61cは、駆動歯車61の回転軸に沿う第1油通路61aにおいて交差する。第2油通路61b,61cの両端は駆動歯車61の谷部に位置する。第2油通路61b,61cがなす角度αは、約90°、例えば、90°±6°に設定される。なお、
図7においてはハッチングが省略されている。
【0037】
図5に示すように、駆動歯車62は、Y軸方向において駆動歯車61と駆動歯車63の間に位置する。駆動歯車62は、駆動歯車61と同様に、第1油通路62aと、第2油通路62b,62cと、を備える。第1油通路62aは給油路52の給油口52bに接続される。
【0038】
駆動歯車63は、Y軸方向において駆動歯車62の下側(-Y側)に位置する。駆動歯車63は、駆動歯車61と同様に、第1油通路63aと、第2油通路63b,63cと、を備える。第1油通路63aは、給油路52の給油口52cに接続される。駆動歯車63の嵌合凹部には、カートリッジ式工具ユニット70bの嵌合突部が嵌合する。よって、駆動歯車63はカートリッジ式工具ユニット70bと一体で軸回転する。
【0039】
(カートリッジ式工具ユニット70a,70b)
図5に示すように、カートリッジ式工具ユニット70aは、工具取付穴部51a内に着脱可能に保持される円筒部73と、円筒部73内に位置するベアリング75と、ベアリング75内に回転可能に支持される工具保持部72と、工具保持部72により保持される工具71と、を備える。
工具保持部72は、駆動歯車61側の端面(+X側の端面)に位置する嵌合突部78と、工具保持部72における嵌合突部78と反対側の端面(-X側の端面)に位置する工具保持凹部79と、を備える。工具保持凹部79は、工具71を保持する穴により形成される。嵌合突部78は、
図6に示すように、長方形板状をなし、駆動歯車61の嵌合凹部61kに嵌まる。工具71は、例えば、ドリル、タップ、エンドミル又はフライス等である。
カートリッジ式工具ユニット70bは、カートリッジ式工具ユニット70aと同様の構成からなるため、その詳細な説明を割愛する。カートリッジ式工具ユニット70a,70bは互いに異なる種類の工具71を有する。
【0040】
(作用)
次に、回転工具装置50によりワークWを加工する際の作用について説明する。
図4に示すように、工具回転用モータ50mは、制御部90による制御のもと作動することにより、出力軸50m1を出力歯車65とともに回転させる。出力歯車65が回転すると、伝達歯車64及び駆動歯車61,62,63が回転する。駆動歯車61はカートリッジ式工具ユニット70aとともに回転し、駆動歯車63はカートリッジ式工具ユニット70bとともに回転する。回転中のカートリッジ式工具ユニット70a,70bの工具71が主軸14により把持されるワークWに接触することにより、ワークWを加工、例えば穴開け加工を行うことができる。
【0041】
次に、回転工具装置50に潤滑油を供給する際の作用について説明する。回転工具装置50への給油作業は、工作機械1が稼働すると、油供給源59であるオイルミスト発生装置により、圧縮エアで油をミストにして、その圧縮エアで給油管58を通じて給油継手53に、ミストの潤滑油が供給される。潤滑油は、
図5の矢印A1に示すように、給油路52内を給油口52a,52b,52cに向けて進む。そして、
図6に示すように、潤滑油は、給油口52aを通過し、駆動歯車61の第1油通路61aに進入する。潤滑油は、第1油通路61a内を通過し、嵌合凹部61kに到達する。これにより、カートリッジ式工具ユニット70aの嵌合突部78と駆動歯車61の嵌合凹部61kの間に潤滑油が供給される。これにより、カートリッジ式工具ユニット70aが駆動歯車61に対してがたつくことが抑制される。また、双方の摩耗を抑制することができる。
また、潤滑油は、第1油通路61aから第2油通路61b,61cに進入する。潤滑油は、
図7の矢印A2に示すように、第2油通路61b,61c内を駆動歯車61の径方向外側に向けて進む。そして、潤滑油は、駆動歯車61の歯面61hに到達する。例えば、
図7に示すように、第2油通路61cが水平方向に沿う場合、第2油通路61cの両端からの潤滑油は、重力に従って歯面61hに沿って移動する。また、駆動歯車61の歯面61hに潤滑油が付着した状態で、駆動歯車61が回転することにより、潤滑油はより均一に歯面61hに行き渡る。これにより、駆動歯車61が駆動歯車62と噛み合う際の摩擦及び摩耗を抑制することができる。
駆動歯車62,63には、駆動歯車61と同様に、潤滑油が供給される。すなわち、潤滑油は、駆動歯車62,63の第1油通路62a,63aと第2油通路62b,62c,63b,63cを介して駆動歯車62,63の歯面62h,63h、及びカートリッジ式工具ユニット70bと駆動歯車63の間に供給される。駆動歯車61,62,63の歯面61h,62h,63hにおける余分な潤滑油は、重力に従って落下し、排油口56及び排油継手55を介して外部に排出される。なお、駆動歯車61から駆動歯車62に潤滑油が落下し、駆動歯車62から駆動歯車63に潤滑油が落下してもよい。
【0042】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0043】
(1)回転工具装置50は、駆動源の一例である工具回転用モータ50mと、工具回転用モータ50mが作動することにより工具ユニットの一例であるカートリッジ式工具ユニット70aとともに回転軸を中心に回転する駆動歯車61と、を備える。駆動歯車61は、潤滑油が供給される第1端部61a1を有し、回転軸に沿って延びる第1油通路61aと、第1油通路61aから駆動歯車61の歯面61hまで駆動歯車61の径方向に沿って延びる第2油通路61b,61cと、を備える。
この構成によれば、潤滑油は、第2油通路61b,61c内を通って駆動歯車61の歯面61hに到達する。よって、カートリッジ式工具ユニット70aを回転工具装置50から取り外したり、回転工具装置50を分解したりすることなく、駆動歯車61に潤滑油を容易に供給することができる。
【0044】
(2)回転工具装置50は、駆動歯車61に嵌合するカートリッジ式工具ユニット70aを備える。カートリッジ式工具ユニット70aは、工具71と、工具71を保持する工具保持部72と、を備える。工具保持部72は、工具71と反対側の端部に位置する第1嵌合部の一例である嵌合突部78を備える。駆動歯車61は、嵌合突部78に嵌合する第2嵌合部の一例である嵌合凹部61kを備える。第1油通路61aは、第1端部61a1とは反対側の端部であり、嵌合凹部61kに到達する第2端部61a2を備える。
この構成によれば、潤滑油は、第1油通路61a内を通ってカートリッジ式工具ユニット70aの嵌合突部78と駆動歯車61の嵌合凹部61kの間に到達する。よって、カートリッジ式工具ユニット70aを回転工具装置50から取り外したり、回転工具装置50を分解したりすることなく、駆動歯車61とカートリッジ式工具ユニット70aの間に潤滑油を容易に供給することができる。
【0045】
(3)回転工具装置50は、駆動歯車61及びカートリッジ式工具ユニット70aを回転可能に収容する筐体51を備える。筐体51は、鉛直方向であるY軸方向に沿って延び、第1油通路61aの第1端部61a1に連続し、油が供給される給油路52と、カートリッジ式工具ユニット70aを着脱可能に保持する工具取付穴部51aと、を備える。
この構成によれば、筐体51に給油路52が設けられているため、簡易な構成にて給油路52から駆動歯車61の第1油通路61aに潤滑油を供給することができる。
【0046】
(4)第2油通路61b,61cは径方向に沿って貫通する孔であり、互いに交差するように複数設けられる。
この構成によれば、異なる角度に複数の第2油通路61b,61cが設けられるため、より歯面61hの全域に潤滑油を行き渡らせることができる。
【0047】
(5)駆動歯車61,62,63は、複数設けられ、互いに噛み合うように1列に並べられる。
この構成によれば、複数の駆動歯車61,62,63毎に潤滑油を供給する手間がなくなり、駆動歯車61,62,63に潤滑油を容易に供給することができる。
【0048】
(6)筐体51の給油路52にはミストの潤滑油が供給される。
この構成によれば、オイルミスト潤滑方式が採用されるため、潤滑油が第1油通路61a及び第2油通路61b,61c内を進みやすく、より確実に潤滑油を歯面61h又は駆動歯車61とカートリッジ式工具ユニット70aの間に到達させることができる。
【0049】
(7)工作機械1は、回転工具装置50と、回転工具装置50のカートリッジ式工具ユニット70a,70bによる加工を行うためにワークWを把持する主軸ユニット10と、を備える。
この構成によれば、工作機械1において、駆動歯車61に潤滑油を容易に供給することができる。
【0050】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0051】
(変形例)
上記実施形態においては、給油路52は、潤滑油が通る筐体51に形成される穴であったが、樹脂又は金属のパイプであってもよい。
【0052】
上記実施形態においては、第2油通路61b,61cの両端は駆動歯車61の谷部に位置していたが、第2油通路61b,61cの両端の少なくとも何れかは駆動歯車61の山部に位置していてもよい。
【0053】
上記実施形態においては、給油路52に潤滑油を供給する方式としてオイルミスト潤滑方式が採用されていたが、これに限らず、グリース潤滑方式、エアオイル潤滑方式又はジェット潤滑方式が採用されてもよい。
【0054】
上記実施形態においては、伝達歯車64は単数であったが、伝達歯車64は複数であってもよい。
【0055】
上記実施形態においては、駆動歯車61,62,63は、互いに同一の歯数を有していたが、互いに異なる歯数を有していてもよい。
【0056】
上記実施形態においては、第1油通路61aは第2油通路61b,61cから嵌合凹部61kに到達する部位を有していたが、この部位は省略されてもよい。この場合、カートリッジ式工具ユニット70a,70bは、カートリッジ式でなく、駆動歯車61,63と一体で形成されていてもよい。
【0057】
上記実施形態においては、駆動歯車61,62,63はY軸方向に沿って並べられていたが、駆動歯車61,62,63はY軸方向以外の方向に沿って並べられていてもよい。また、駆動歯車61,62,63の数は3つに限らず、1つ、2つ又は4つ以上であってもよい。
【0058】
上記実施形態においては、駆動歯車61には2つの第2油通路61b,61cが形成されていたが、第2油通路61b,61cの数は、これに限らず、単数又は3つ以上であってもよい。また、第2油通路61b,61cがなす角度も上記実施形態に限らない。
また、上記実施形態においては、第2油通路61b,61cは径方向に沿って同一の径を有していたが、これに限らず、径方向外側に向かうにつれて、拡径又は縮径していてもよい。
【0059】
上記実施形態においては、工具保持部72の嵌合突部78は駆動歯車61の嵌合凹部61kに嵌合していたが、反対に、工具保持部72の嵌合凹部が駆動歯車61の嵌合突部に嵌合していてもよい。
【0060】
上記実施形態においては、駆動歯車61,62,63は、それぞれ第1油通路61a,62a,63a及び第2油通路61b,61c,62b,62c,63b,63cを備えていたが、駆動歯車61,62,63のうち1つ又は2つの第1油通路及び第2油通路が省略されてもよい。
【0061】
上記実施形態においては、第2油通路61b,61cは径方向に沿って貫通する貫通孔として形成されていたが、貫通孔ではなく、第1油通路61aから歯面61hまで延びる有底穴であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 工作機械
10 主軸ユニット
11 主軸台
14 主軸
30 工具機構
32 Y軸移動機構
42 X軸移動機構
50 回転工具装置
50m 工具回転用モータ
51 筐体
51a,51b,51c 工具取付穴部
52 給油路
52a,52b,52c 給油口
59 油供給源
61,62,63 駆動歯車
61a,62a,63a 第1油通路
61b,61c,62b,62c,63b,63c 第2油通路
61a1 第1端部
61a2 第2端部
61h,62h,63h 歯面
61k 嵌合凹部
64 伝達歯車
65 出力歯車
70a,70b カートリッジ式工具ユニット
71 工具
72 工具保持部
73 円筒部
78 嵌合突部
79 工具保持凹部
90 制御部
S ベッド
W ワーク