(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】クレーン運転システム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/18 20060101AFI20220414BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
B66C13/18
B66C15/00 Z
(21)【出願番号】P 2018234572
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡森 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】入澤 啓
(72)【発明者】
【氏名】村岡 克英
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-037285(JP,A)
【文献】特開2000-226181(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181734(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0141751(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107531410(CN,A)
【文献】特開2010-215334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/18
B66C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り荷を搬送するクレーンと、
前記クレーンに取り付けられ、前記吊り荷が取り付けられる吊り具と、
前記クレーンを制御するクレーン制御盤と、
前記吊り具を制御する吊り具制御盤と、
を備え、
前記吊り具制御盤は、前記クレーン制御盤に差し込まれていた第1の鍵が差し込まれると、前記吊り具制御盤の操作が可能になる構成を備え、
前記クレーン制御盤は、前記吊り具制御盤に差し込まれていた第2の鍵が差し込まれると、前記クレーンが前記吊り荷を搬送するのを可能にする構成を備える、
ことを特徴とするクレーン運転システム。
【請求項2】
前記吊り具制御盤は、前記クレーン制御盤に差し込まれていた前記第1の鍵が差し込まれていないと、前記吊り具制御盤の操作ができないインターロックを備え、
前記クレーン制御盤は、前記吊り具制御盤に差し込まれていた前記第2の鍵が差し込まれていないと、前記クレーンが前記吊り荷を搬送できないインターロックを備える、
請求項1に記載のクレーン運転システム。
【請求項3】
前記クレーン制御盤は、第1の鍵穴と第2の鍵穴とを備え、
前記吊り具制御盤は、第3の鍵穴と第4の鍵穴とを備え、
前記第1の鍵穴には、前記第1の鍵が差し込まれており、
前記第4の鍵穴には、前記第2の鍵が差し込まれており、
前記吊り具制御盤は、前記第1の鍵穴から取り外された前記第1の鍵が前記第3の鍵穴に差し込まれると、前記第2の鍵が前記第4の鍵穴から取り外すことができるインターロックを備え、
前記クレーン制御盤は、前記第4の鍵穴から取り外された前記第2の鍵が前記第2の鍵穴に差し込まれると、前記クレーンが前記吊り荷を搬送することができるインターロックを備える、
請求項1に記載のクレーン運転システム。
【請求項4】
前記吊り具制御盤が備える前記インターロックは、前記第1の鍵が前記第3の鍵穴に差し込まれないと、前記第2の鍵が前記第4の鍵穴から取り外すことができないように構成され、
前記クレーン制御盤が備える前記インターロックは、前記第2の鍵が前記第2の鍵穴に差し込まれないと、前記クレーンが前記吊り荷を搬送することができないように構成されている、
請求項3に記載のクレーン運転システム。
【請求項5】
前記クレーン制御盤は、前記第2の鍵が前記第2の鍵穴に差し込まれると、前記クレーンに吊り上げ可能な荷重を設定するように構成され、
前記クレーンは、前記荷重が設定されると、前記吊り荷を搬送することができるように構成されている、
請求項3に記載のクレーン運転システム。
【請求項6】
前記クレーン制御盤は、第5の鍵穴を備え、第3の鍵が前記第5の鍵穴に差し込まれていると、前記第1の鍵が前記第1の鍵穴から取り外すことができるインターロックを備える、
請求項3に記載のクレーン運転システム。
【請求項7】
前記クレーン制御盤は、第6の鍵穴を備え、第4の鍵が前記第6の鍵穴に差し込まれていると、前記クレーン制御盤の操作が可能になるインターロックを備える、
請求項3に記載のクレーン運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り具を用いて吊り荷を吊り上げるクレーンの運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンにて荷役作業を行う際に、吊り荷が吊り具に適切に取り付けられていないと、または吊り具がクレーンフックに適切に取り付けられていないと、吊り荷の搬送中に吊り荷または吊り具がクレーンから落下する恐れがある。
【0003】
特許文献1には、従来のクレーンの例として、操作パネルを有する制御装置と、操作パネルに設けられて自動運転モードから点検モードに切り換えるキースイッチを備える走行クレーンが記載されている。この走行クレーンでは、キースイッチを自動運転モードに切り換えてキーを抜き、このキーで地上側の主操作盤の主キースイッチを自動運転モードにセットすることにより、走行クレーンを地上側の主操作盤に設定した条件で自動運転することができる。
【0004】
特許文献2には、原子力発電施設において、沸騰水形原子炉の定期点検時や燃料交換時に、原子炉内機器を原子炉圧力容器内から取り出し、移送するための原子炉内機器昇降装置が記載されている。この原子炉内機器昇降装置は、天井クレーンのフックによって吊下げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平01-294104号公報
【文献】特開平11-64570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
天井クレーン等のクレーンを用いた荷役作業は、玉掛け指揮者の合図に従い、クレーンの運転手がクレーンを操作することで実施される。従来では、吊り荷が吊り具に適切に取り付けられているか否か、または吊り具がクレーンフックに適切に取り付けられているか否かの判断、すなわち荷重伝達経路の健全性が確保されているか否かの判断は、玉掛け指揮者の目視確認に依存している。荷重伝達経路の健全性は、玉掛け指揮者の判断という人の判断に依存しているので、十分に確保できないこともあり得る。荷重伝達経路の健全性が十分に確保できないと、吊り荷や吊り具がクレーンから落下する恐れがある。そこで、玉掛け指揮者等の人の判断によらずに荷重伝達経路の健全性を確保できるクレーンが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、荷重伝達経路の健全性を確保できるクレーン運転システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるクレーン運転システムは、吊り荷を搬送するクレーンと、前記クレーンに取り付けられ、前記吊り荷が取り付けられる吊り具と、前記クレーンを制御するクレーン制御盤と、前記吊り具を制御する吊り具制御盤とを備える。前記吊り具制御盤は、前記クレーン制御盤に差し込まれていた第1の鍵が差し込まれると、前記吊り具制御盤の操作が可能になる構成を備える。前記クレーン制御盤は、前記吊り具制御盤に差し込まれていた第2の鍵が差し込まれると、前記クレーンが前記吊り荷を搬送するのを可能にする構成を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、荷重伝達経路の健全性を確保できるクレーン運転システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例によるクレーン運転システムの天井クレーン制御盤の概要を示す図。
【
図2】本発明の実施例によるクレーン運転システムの吊り具制御盤の概要を示す図。
【
図3】本発明の実施例によるクレーン運転システムを示す図。
【
図4】本発明の実施例によるクレーン運転システムにおいて、ドライヤーセパレータを吊り荷として吊り上げる作業の手順について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によるクレーン運転システムでは、クレーンと吊り具が制御盤を備え、これらの制御盤が機械的なインターロックを有し、定められた一連の手順を作業者が適切に完了しない限り、クレーンで吊り荷を吊り上げることができない。定められた一連の手順は、クレーンと吊り具の制御盤に対して鍵を付け替える手順である。
【0012】
本発明によるクレーン運転システムは、上記のような構成を備えるので、吊り荷が吊り具に適切に取り付けられていること、すなわち荷重伝達経路の健全性を、機械的に確保することができ、吊り荷の搬送中に吊り荷がクレーンから落下するのを防ぐことができる。
【0013】
以下、本発明の実施例によるクレーン運転システムについて、図面を用いて説明する。以下の実施例では、クレーン運転システムが原子力発電施設における天井クレーンをクレーンとして備え、天井クレーンがドライヤーセパレータとキャスクを吊り荷として吊り上げて搬送する例を説明する。なお、本発明によるクレーン運転システムは、クレーンが原子力発電施設における天井クレーン以外のクレーンでもよく、ドライヤーセパレータとキャスク以外の物体を吊り荷として吊り上げることができる。
【実施例】
【0014】
図3は、本実施例によるクレーン運転システムを示す図である。本実施例によるクレーン運転システムは、天井クレーンと吊り具を備え、吊り荷11を搬送する。
【0015】
天井クレーンは、天井クレーン本体2、走行レール3、フック4、天井クレーン制御線5、天井クレーン制御盤7、及び運転室30を備える。天井クレーン本体2は、運転室30に位置するクレーン運転手31に操作され、走行レール3を走行し、フック4に取り付けられた吊り具を用いて吊り荷11を吊り上げて搬送する。天井クレーン本体2には、天井クレーン制御盤7が接続された天井クレーン制御線5が接続されている。
【0016】
天井クレーン制御盤7は、天井クレーン本体2を制御する。天井クレーン制御盤7は、任意の位置、例えばオペレーションフロア1に設置することができ、玉掛け作業者29が天井クレーン本体2を操作するのに用いられる。天井クレーン本体2は、天井クレーン制御盤7により吊り上げ可能な吊り荷11の荷重が設定されると、吊り荷11を搬送することができる機構を備える。
【0017】
吊り具は、吊り具本体8、吊り具制御線9、及び吊り具制御盤10を備える。吊り具本体8は、天井クレーンのフック4に取り付けられ、搬送すべき吊り荷11が取り付けられる。吊り具本体8には、吊り具制御盤10が接続された吊り具制御線9が接続されている。
【0018】
吊り具制御盤10は、吊り具本体8を制御する。吊り具制御盤10は、玉掛け作業者29が携帯でき、玉掛け作業者29が吊り具本体8を操作するのに用いられる。吊り具本体8は、吊り具制御盤10に制御されて、吊り荷11が取り付けられるようになる。
【0019】
本実施例によるクレーン運転システムでは、例えばオペレーションフロア1に位置する玉掛け作業者29により、玉掛け作業が行われる。玉掛け作業者29は、例えばオペレーションフロア1に位置する玉掛け指揮者6の指示に従い、玉掛け作業を実施する。
【0020】
図1は、天井クレーン制御盤7の概要を示す図である。天井クレーン制御盤7は、電源鍵穴12、キャスク搬送モード選択鍵穴13、ドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵穴14、キャスクコントロール鍵穴15、ドライヤーセパレータコントロール鍵穴16、キャスク取り付け確認鍵穴17、ドライヤーセパレータ取り付け確認鍵穴18、モード選択スイッチ23、及びホイスト選択スイッチ24を備える。
【0021】
モード選択スイッチ23は、吊り荷11と運転目的に応じた天井クレーンの運転モードを選択するためのスイッチである。ホイスト選択スイッチ24は、使用するホイストを選択するスイッチである。モード選択スイッチ23とホイスト選択スイッチ24により、吊り荷11と運転目的に応じた天井クレーンの運転条件を設定することができる。
【0022】
図2は、吊り具制御盤10の概要を示す図である。吊り具制御盤10は、電源鍵穴25、取り付け確認鍵穴26、及び吊り具開閉スイッチ28を備える。吊り具開閉スイッチ28は、吊り具本体8に吊り荷11を取り付けるためのスイッチである。
【0023】
以下、本実施例によるクレーン運転システムにおいて、荷重伝達経路の健全性を機械的に確保できること、すなわち、吊り荷11が吊り具本体8に適切に取り付けられていることを、天井クレーン制御盤7と吊り具制御盤10が備える機械的なインターロックにより確保できることを説明する。本実施例によるクレーン運転システムでは、天井クレーン制御盤7と吊り具制御盤10に対して鍵を付け替える一連の手順を玉掛け作業者29が完了することで、荷重伝達経路の健全性を機械的に確保でき、天井クレーン本体2で吊り荷11を吊り上げることができる。以下では、この一連の手順を、ドライヤーセパレータを吊り荷11として吊り上げる作業を例に挙げて説明する。吊り具制御盤10は、ドライヤーセパレータを吊り荷11として吊り上げる作業で使用される制御盤である。
【0024】
なお、以下では、吊り具本体8への吊り荷11の取り付けについて説明するが、天井クレーンのフック4への吊り具本体8の取り付けも、同様の構成と同様の手順を用いることにより実施でき、吊り具本体8がフック4に適切に取り付けられていることも機械的なインターロックにより確保できる。
【0025】
図1に示すように、本実施例によるクレーン運転システムは、天井クレーン制御盤7の鍵穴に差し込むことができる4つの鍵、すなわち、電源鍵19、ドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵20、キャスクコントロール鍵21、及びドライヤーセパレータコントロール鍵22を備える。電源鍵19は、電源鍵穴12に差し込むことができる。ドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵20は、ドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵穴14に差し込むことができる。キャスクコントロール鍵21は、キャスクコントロール鍵穴15に差し込むことができる。ドライヤーセパレータコントロール鍵22は、ドライヤーセパレータコントロール鍵穴16に差し込むことができる。ドライヤーセパレータコントロール鍵22は、吊り具制御盤10の電源鍵穴25に差し込むこともできる(
図2)。
【0026】
図2に示すように、本実施例によるクレーン運転システムは、吊り具制御盤10の取り付け確認鍵穴26に差し込むことができるドライヤーセパレータ取り付け確認鍵27を備える。ドライヤーセパレータ取り付け確認鍵27は、天井クレーン制御盤7のドライヤーセパレータ取り付け確認鍵穴18に差し込むこともできる(
図1)。
【0027】
本実施例によるクレーン運転システムは、天井クレーンの運転開始前(天井クレーン本体2で吊り荷11を吊り上げる作業を開始する前)では、
図1、2に示すように、キャスクコントロール鍵21がキャスクコントロール鍵穴15に差し込まれており、ドライヤーセパレータコントロール鍵22がドライヤーセパレータコントロール鍵穴16に差し込まれており、ドライヤーセパレータ取り付け確認鍵27が取り付け確認鍵穴26に差し込まれている。
【0028】
本実施例によるクレーン運転システムでは、天井クレーン制御盤7は、機械的なインターロックを備え、このインターロックにより、電源鍵穴12に電源鍵19が差し込まれていないと、電源が入らず、操作できない。天井クレーン制御盤7は、電源鍵穴12に電源鍵19が差し込まれると、インターロックが解除され、電源が入り、天井クレーン制御盤7の操作が可能になり、モード選択スイッチ23とホイスト選択スイッチ24の操作が可能になって、天井クレーンの操作が可能になる。
【0029】
天井クレーン制御盤7は、機械的なインターロックを備え、このインターロックにより、電源鍵穴12に電源鍵19が差し込まれており、ドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵穴14にドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵20が差し込まれていないと、ドライヤーセパレータコントロール鍵穴16からドライヤーセパレータコントロール鍵22を取り外すことができない。天井クレーン制御盤7は、機械的なインターロックを備え、このインターロックにより、電源鍵穴12に電源鍵19が差し込まれており、キャスク搬送モード選択鍵穴13にキャスク搬送モード選択鍵(図示せず)が差し込まれていないと、キャスクコントロール鍵穴15からキャスクコントロール鍵21を取り外すことができない。
【0030】
天井クレーン制御盤7は、電源鍵穴12に電源鍵19が差し込まれており、ドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵穴14にドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵20が差し込まれていると、インターロックが解除され、ドライヤーセパレータコントロール鍵穴16からドライヤーセパレータコントロール鍵22を取り外すことができる。天井クレーン制御盤7は、電源鍵穴12に電源鍵19が差し込まれており、キャスク搬送モード選択鍵穴13にキャスク搬送モード選択鍵(図示せず)が差し込まれていると、インターロックが解除され、キャスクコントロール鍵穴15からキャスクコントロール鍵21を取り外すことができる。
【0031】
また、本実施例によるクレーン運転システムでは、吊り具制御盤10は、機械的なインターロックを備え、このインターロックにより、電源鍵穴25にドライヤーセパレータコントロール鍵22が差し込まれていないと、電源が入らず、吊り具制御盤10の操作ができず、取り付け確認鍵穴26からドライヤーセパレータ取り付け確認鍵27を取り外すことができない。
【0032】
吊り具制御盤10は、電源鍵穴25にドライヤーセパレータコントロール鍵22が差し込まれると、インターロックが解除され、電源が入り、吊り具制御盤10の操作が可能になり、吊り具開閉スイッチ28の操作が可能になって、吊り具本体8の操作が可能になるとともに、取り付け確認鍵穴26からドライヤーセパレータ取り付け確認鍵27を取り外すことができる。
【0033】
さらに、本実施例によるクレーン運転システムでは、天井クレーン制御盤7は、機械的なインターロックを備え、このインターロックにより、ドライヤーセパレータ取り付け確認鍵穴18にドライヤーセパレータ取り付け確認鍵27が差し込まれていないと、天井クレーン本体2で吊り荷11(ドライヤーセパレータ)を搬送できない。天井クレーン制御盤7は、機械的なインターロックを備え、このインターロックにより、キャスク取り付け確認鍵穴17にキャスク取り付け確認鍵(図示せず)が差し込まれていないと、天井クレーン本体2で吊り荷11(キャスク)を搬送できない。
【0034】
天井クレーン制御盤7は、ドライヤーセパレータ取り付け確認鍵穴18にドライヤーセパレータ取り付け確認鍵27が差し込まれると、インターロックが解除され、天井クレーン本体2が吊り荷11(ドライヤーセパレータ)を搬送するのを可能にする。天井クレーン制御盤7は、キャスク取り付け確認鍵穴17にキャスク取り付け確認鍵が差し込まれると、インターロックが解除され、天井クレーン本体2が吊り荷11(キャスク)を搬送するのを可能にする。
【0035】
以下では、本実施例によるクレーン運転システムにおいて、ドライヤーセパレータを吊り荷11として吊り上げる作業の手順について説明する。
【0036】
図4は、本実施例によるクレーン運転システムにおいて、ドライヤーセパレータを吊り荷11として吊り上げる作業の手順について説明する図である。
図4には、天井クレーン制御盤7と、吊り具制御盤10と、これらの制御盤7、10に対して取り付けられたり取り外されたりして付け替えられる鍵を示している。
【0037】
初めに、玉掛け作業者29は、玉掛け指揮者6の指示に従い、天井クレーン制御盤7の電源鍵穴12に電源鍵19を差し込む(
図4の矢印A)。天井クレーン制御盤7は、電源鍵穴12に電源鍵19が差し込まれると、モード選択スイッチ23とホイスト選択スイッチ24の操作が可能になり、天井クレーンの運転が可能になる。
【0038】
次に、玉掛け作業者29は、モード選択スイッチ23とホイスト選択スイッチ24を操作し、吊り荷11に応じて天井クレーンの運転条件を設定する。本実施例では、玉掛け作業者29は、ドライヤーセパレータを吊り荷11として搬送するときの運転条件を設定する。天井クレーン制御盤7には、モード選択スイッチ23とホイスト選択スイッチ24により、天井クレーンの運転条件が設定される。
【0039】
次に、玉掛け作業者29は、玉掛け指揮者6の指示に従い、天井クレーン制御盤7のドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵穴14にドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵20を差し込む(
図4の矢印B)。天井クレーン制御盤7は、ドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵穴14にドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵20が差し込まれると、ドライヤーセパレータコントロール鍵穴16からドライヤーセパレータコントロール鍵22を取り外すことができる。
【0040】
次に、玉掛け作業者29は、玉掛け指揮者6の指示に従い、ドライヤーセパレータコントロール鍵穴16からドライヤーセパレータコントロール鍵22を取り外し(
図4の矢印C)、吊り具制御盤10の電源鍵穴25にドライヤーセパレータコントロール鍵22を差し込む(
図4の矢印D)。吊り具制御盤10は、電源鍵穴25にドライヤーセパレータコントロール鍵22が差し込まれると、吊り具開閉スイッチ28の操作が可能になるとともに、取り付け確認鍵穴26からドライヤーセパレータ取り付け確認鍵27を取り外すことができる。
【0041】
次に、玉掛け作業者29は、吊り具開閉スイッチ28を操作し、吊り具本体8に吊り荷11を取り付ける。玉掛け作業者29は、吊り具本体8に吊り荷11を取り付けた後、吊り具本体8に吊り荷11が接続されているのを確認する。
【0042】
玉掛け指揮者6は、吊り具本体8に吊り荷11が接続されているのを確認する。玉掛け指揮者6は、この確認をし、吊り具本体8に吊り荷11が適切に取り付けられていると判断した後で、玉掛け作業者29に、ドライヤーセパレータ取り付け確認鍵27を天井クレーン制御盤7のドライヤーセパレータ取り付け確認鍵穴18に差し込むことを指示する。
【0043】
玉掛け作業者29は、玉掛け指揮者6の指示に従い、取り付け確認鍵穴26からドライヤーセパレータ取り付け確認鍵27を取り外し(
図4の矢印E)、天井クレーン制御盤7のドライヤーセパレータ取り付け確認鍵穴18にドライヤーセパレータ取り付け確認鍵27を差し込む(
図4の矢印F)。天井クレーン制御盤7は、ドライヤーセパレータ取り付け確認鍵穴18にドライヤーセパレータ取り付け確認鍵27が差し込まれると、天井クレーン本体2に対して、モード選択スイッチ23とホイスト選択スイッチ24で設定された運転条件に合わせて吊り上げ可能な吊り荷11の荷重を設定する。天井クレーン本体2は、吊り上げ可能な荷重が設定されると、今まで課されていた吊り上げ可能な荷重についての制限が解除され、吊り荷11であるドライヤーセパレータを搬送することが可能になる。
【0044】
本実施例によるクレーン運転システムは、以上のような一連の手順を実施することにより、吊り具本体8を用いて吊り荷11(ドライヤーセパレータ)を搬送することが可能になる。
【0045】
以上では、ドライヤーセパレータを吊り荷11として吊り上げる作業の手順について説明したが、本実施例によるクレーン運転システムでは、キャスクを吊り荷11として吊り上げることもできる。但し、吊り具制御盤10は、キャスクを吊り荷11として吊り上げる作業で用いられる制御盤であり、取り付け確認鍵穴26にはキャスク取り付け確認鍵(図示せず)が差し込まれている。
【0046】
以下では、キャスクを吊り荷11として吊り上げる手順について、簡単に説明する。キャスクを吊り荷11として吊り上げる場合も、玉掛け作業者29は、玉掛け指揮者6の指示に従い、鍵を鍵穴から取り外したり、鍵を鍵穴に差し込んだりする。
【0047】
キャスクを吊り荷11として吊り上げる作業を実施する際には、玉掛け作業者29は、天井クレーン制御盤7の電源鍵穴12に電源鍵19を差し込み、モード選択スイッチ23とホイスト選択スイッチ24を操作して天井クレーンの運転条件(キャスクを吊り荷11として搬送するときの運転条件)を設定した後、キャスク搬送モード選択鍵穴13にキャスク搬送モード選択鍵(図示せず)を差し込む。天井クレーン制御盤7は、キャスク搬送モード選択鍵穴13にキャスク搬送モード選択鍵が差し込まれると、キャスクコントロール鍵穴15からキャスクコントロール鍵21を取り外すことができる。
【0048】
次に、玉掛け作業者29は、キャスクコントロール鍵穴15からキャスクコントロール鍵21を取り外し、吊り具制御盤10の電源鍵穴25にキャスクコントロール鍵21を差し込む。吊り具制御盤10は、電源鍵穴25にキャスクコントロール鍵21が差し込まれると、吊り具開閉スイッチ28の操作が可能になるとともに、取り付け確認鍵穴26からキャスク取り付け確認鍵(図示せず)を取り外すことができる。
【0049】
次に、玉掛け作業者29は、吊り具開閉スイッチ28を操作して吊り具本体8に吊り荷11(キャスク)を取り付け、取り付け確認鍵穴26からキャスク取り付け確認鍵(図示せず)を取り外し、天井クレーン制御盤7のキャスク取り付け確認鍵穴17にキャスク取り付け確認鍵を差し込む。天井クレーン制御盤7は、キャスク取り付け確認鍵穴17にキャスク取り付け確認鍵が差し込まれると、天井クレーン本体2に対して、モード選択スイッチ23とホイスト選択スイッチ24で設定された運転条件に合わせて吊り上げ可能な吊り荷11の荷重を設定する。天井クレーン本体2は、吊り上げ可能な荷重が設定されると、今まで課されていた吊り上げ可能な荷重についての制限が解除され、吊り荷11であるキャスクを搬送することが可能になる。
【0050】
本実施例によるクレーン運転システムは、以上のような一連の手順を実施することにより、吊り具本体8を用いて吊り荷11(キャスク)を搬送することが可能になる。
【0051】
以上説明したように、本実施例によるクレーン運転システムでは、天井クレーン制御盤7と吊り具制御盤10に対して鍵を付け替える一連の手順を実施することで、荷重伝達経路の健全性を機械的なインターロックにより確保でき、天井クレーン本体2で吊り荷11を搬送することができる。
【0052】
本実施例によるクレーン運転システムで使用される鍵には、鍵穴に差し込まれる部分を備え、鍵穴に対して抜き差しができ、機械的なインターロックを解除できるものであれば、任意の鍵を用いることができる。例えば、シリンダー錠で用いられる鍵やカードキーを、本実施例によるクレーン運転システムで使用される鍵に用いることができる。なお、本実施例によるクレーン運転システムでは複数の鍵を使用するが、これらの鍵は、インターロックを解除するための情報(例えば、鍵穴に差し込まれる部分の形状や、鍵に記録された情報)が、全て互いに異なる。
【0053】
本実施例によるクレーン運転システムの構成において、ドライヤーセパレータコントロール鍵穴16とキャスクコントロール鍵穴15は「第1の鍵穴」と、ドライヤーセパレータ取り付け確認鍵穴18とキャスク取り付け確認鍵穴17は「第2の鍵穴」と、ドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵穴14とキャスク搬送モード選択鍵穴13は「第5の鍵穴」と、ドライヤーセパレータコントロール鍵22とキャスクコントロール鍵21は「第1の鍵」と、それぞれ総称することができる。また、電源鍵穴25は「第3の鍵穴」と、取り付け確認鍵穴26は「第4の鍵穴」と、電源鍵穴12は「第6の鍵穴」と、ドライヤーセパレータ取り付け確認鍵27は「第2の鍵」と、ドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵20は「第3の鍵」と、電源鍵19は「第4の鍵」と、それぞれ呼ぶことができる。
【0054】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…オペレーションフロア、2…天井クレーン本体、3…走行レール、4…フック、5…天井クレーン制御線、6…玉掛け指揮者、7…天井クレーン制御盤、8…吊り具本体、9…吊り具制御線、10…吊り具制御盤、11…吊り荷、12…電源鍵穴、13…キャスク搬送モード選択鍵穴、14…ドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵穴、15…キャスクコントロール鍵穴、16…ドライヤーセパレータコントロール鍵穴、17…キャスク取り付け確認鍵穴、18…ドライヤーセパレータ取り付け確認鍵穴、19…電源鍵、20…ドライヤーセパレータ搬送モード選択鍵、21…キャスクコントロール鍵、22…ドライヤーセパレータコントロール鍵、23…モード選択スイッチ、24…ホイスト選択スイッチ、25…電源鍵穴、26…取り付け確認鍵穴、27…ドライヤーセパレータ取り付け確認鍵、28…吊り具開閉スイッチ、29…玉掛け作業者、30…運転室、31…クレーン運転手。