(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】多条刈りコンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 57/22 20060101AFI20220414BHJP
A01D 67/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
A01D57/22 G
A01D57/22 H
A01D67/00 D
(21)【出願番号】P 2019055534
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】森山 浩二
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-220322(JP,A)
【文献】実開平06-017439(JP,U)
【文献】実開昭54-115326(JP,U)
【文献】特開2004-275033(JP,A)
【文献】特開2010-252695(JP,A)
【文献】特開2012-050353(JP,A)
【文献】特開2018-183079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 57/22
A01D 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一側方の引起領域に突出して上昇移動する複数の引起タインにて穀稈を引き起こす複数の引起装置と、前記引起装置を駆動する複数の電動モータと、前記引起装置にて引き起こされた複数条分の穀稈を刈り取る刈取装置と、刈り取られた複数条分の穀稈を後方で左右中央側の合流部に搬送する複数の穀稈搬送装置とを備え、
前記電動モータは、前記引起装置の背部における前記引起領域から離れた左右一方側の位置に配置されて
おり、
複数の前記引起装置には、前記引起領域を挟まずに左右に隣接して配置される第1引起装置対が含まれており、
前記第1引起装置対には、単一の前記電動モータからの動力が、その動力を左右に分配する動力分配機構を介して伝えられ、
複数の前記穀稈搬送装置には、前記第1引起装置対のうちの一方の引起装置からの穀稈を前記合流部に搬送する一方側の穀稈搬送装置と、他方の引起装置からの穀稈を前記合流部に搬送する他方側の穀稈搬送装置とが含まれており、
前記一方側の穀稈搬送装置と前記他方側の穀稈搬送装置とは、それらの前記合流部への穀稈搬送経路の横方向への傾斜角が異なる角度に設定されており、
前記第1引起装置対においては、前記穀稈搬送経路の傾斜角が緩い穀稈搬送装置に穀稈を引き渡す引起装置に前記電動モータが備えられている、
多条刈りコンバイン。
【請求項2】
左右一側方の引起領域に突出して上昇移動する複数の引起タインにて穀稈を引き起こす複数の引起装置と、前記引起装置を駆動する複数の電動モータと、前記引起装置にて引き起こされた複数条分の穀稈を刈り取る刈取装置と、刈り取られた複数条分の穀稈を後方で左右中央側の合流部に搬送する複数の穀稈搬送装置とを備え、
前記電動モータは、前記引起装置の背部における前記引起領域から離れた左右一方側の位置に配置されており、
複数の前記引起装置には、前記引起領域を挟まずに左右に隣接して配置される第1引起装置対が含まれており、
前記第1引起装置対には、単一の前記電動モータからの動力が、その動力を左右に分配する動力分配機構を介して伝えられ、
前記刈取装置の刈幅中心に対して左側に配置される前記第1引起装置対においては右側の引起装置に前記電動モータが備えられ、前記刈取装置の刈幅中心に対して右側に配置される前記第1引起装置対においては左側の引起装置に前記電動モータが備えられている
、
多条刈りコンバイン。
【請求項3】
左右一側方の引起領域に突出して上昇移動する複数の引起タインにて穀稈を引き起こす複数の引起装置と、前記引起装置を駆動する複数の電動モータと、前記引起装置にて引き起こされた複数条分の穀稈を刈り取る刈取装置と、刈り取られた複数条分の穀稈を後方で左右中央側の合流部に搬送する複数の穀稈搬送装置とを備え、
前記電動モータは、前記引起装置の背部における前記引起領域から離れた左右一方側の位置に配置されており、
複数の前記引起装置には、互いの前記引起領域を挟んで左右に隣接して配置される第2引起装置対と、前記第2引起装置対の一方の引起装置と前記引起領域を挟んで左右に隣接して配置される単一の引起装置とからなる引起装置セットが含まれており、
複数の前記穀稈搬送装置には、前記合流部への穀稈搬送経路の横方向への傾斜角が異なる角度に設定された穀稈搬送装置が含まれており、
前記引起装置セットにおいては、前記第2引起装置対にて引き起こされた穀稈が前記穀稈搬送経路の傾斜角がきつい穀稈搬送装置に引き継がれ、前記単一の引起装置にて引き起こされた穀稈が前記穀稈搬送経路の傾斜角が緩い穀稈搬送装置に引き継がれる
、
多条刈りコンバイン。
【請求項4】
複数の前記引起装置には、前記引起領域を挟まずに左右に隣接して配置される第1引起装置対が含まれており、
前記第1引起装置対には、単一の前記電動モータからの動力が、その動力を左右に分配する動力分配機構を介して伝えられている
請求項3に記載の多条刈りコンバイン。
【請求項5】
前記引起装置は、その上部に配置された駆動軸に前記電動モータからの動力が減速機構を介して伝えられ、
前記電動モータは、前記引起装置の背部における前記駆動軸よりも下方の位置に配置されている
請求項1~4のいずれか一項に記載の多条刈りコンバイン。
【請求項6】
前記引起装置は、その下部を支点にして前後方向に姿勢変更可能に備えられている
請求項1~5のいずれか一項に記載の多条刈りコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈を引き起こす複数の引起装置と、前記引起装置にて引き起こされた複数条分の穀稈を刈り取る刈取装置と、刈り取られた複数条分の穀稈を後方で左右中央側の合流部に搬送する複数の穀稈搬送装置とを備えた多条刈りコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
多条刈りコンバインにおいては、引起装置を駆動する電動モータを、各引起装置における背部の上端部に配置して、各引起装置の上端部に配置された駆動スプロケットを、電動モータの出力軸(駆動軸)に固着するように構成されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引起装置には、引起装置の上端部に配置される駆動スプロケット、引起装置の下端部に配置される従動ローラ、駆動スプロケットと従動ローラとに掛け渡される無端の引起チェーン、及び、引起チェーンにその周方向に所定間隔を置いて取り付けられる複数の引起タイン、などが備えられている。そして、このような引起装置においては、駆動スプロケットにて引起チェーンが引き上げられる側の左右一側方が、各引起しタインによって穀稈を引き上げる引起領域に設定されている。
【0005】
そのため、上記特許文献1に記載のコンバインの引起装置においては、駆動スプロケットが電動モータの出力軸に固着されることにより、電動モータが、引起装置の背部における引起領域に近い左右一方側の位置に配置されることになる。これにより、各引起装置にて引き起こされた直後の穀稈においては、引起装置から離れて不安定になった穂先側が引起領域の近くに配置された電動モータに接触する可能性が高くなり、この接触に起因した搬送姿勢の乱れが生じ易くなる。そして、このような搬送姿勢の乱れが生じると、搬送姿勢の乱れに起因した各穀稈搬送装置での穀稈詰まりや脱穀装置での脱穀不良などが生じ易くなる。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、各引起装置が電動モータで駆動される引起装置の電動化を図りながら、各引起装置にて引き起こされた穀稈が電動モータに接触して穀稈の搬送姿勢が乱れることに起因した不都合の発生を抑制する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、多条刈りコンバインにおいて、
左右一側方の引起領域に突出して上昇移動する複数の引起タインにて穀稈を引き起こす複数の引起装置と、前記引起装置を駆動する複数の電動モータと、前記引起装置にて引き起こされた複数条分の穀稈を刈り取る刈取装置と、刈り取られた複数条分の穀稈を後方で左右中央側の合流部に搬送する複数の穀稈搬送装置とを備え、
前記電動モータは、前記引起装置の背部における前記引起領域から離れた左右一方側の位置に配置されている点にある。
【0008】
本構成によれば、各引起装置にて引き起こされた直後の穀稈の穂先側が、引起装置から離れて不安定になったとしても、電動モータに接触する可能性が低くなる。これにより、その接触に起因した穀稈の搬送姿勢の乱れが生じ難くなり、搬送姿勢の乱れに起因した各穀稈搬送装置での穀稈詰まりや脱穀装置での脱穀不良などが生じ難くなる。
そして、2条刈りコンバインに備えられる左右一対の引起装置や、多条刈りコンバインの左右両端部に配置される各引起装置においては、それらにおける機体の左右中央側に引起領域が備えられ、かつ、それらにおける機体の左右外側に電動モータが備えられることから、それらの引起装置にて引き起こされた穀稈は、穀稈搬送装置に引き継がれて左右中央側の合流部に向けて搬送されるのに伴って、引起装置の電動モータから離れることになる。これにより、穀稈搬送装置にて搬送される穀稈が、2条刈りコンバインに備えられた各引起装置の電動モータや、多条刈りコンバインの左右両端部に配置された各引起装置の電動モータに接触する可能性が低くなる。これにより、その接触に起因した穀稈の搬送姿勢の乱れが生じ難くなり、搬送姿勢の乱れに起因した各穀稈搬送装置での穀稈詰まりや脱穀装置での脱穀不良などが生じ難くなる。
その結果、多条刈りコンバインにおいて、各引起装置が電動モータで駆動される引起装置の電動化を図りながら、各引起装置にて引き起こされた穀稈が電動モータに接触して穀稈の搬送姿勢が乱れることに起因した不都合の発生を抑制することができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、
複数の前記引起装置には、前記引起領域を挟まずに左右に隣接して配置される第1引起装置対が含まれており、
前記第1引起装置対には、単一の前記電動モータからの動力が、その動力を左右に分配する動力分配機構を介して伝えられている点にある。
【0010】
本構成によれば、各引起装置を専用の電動モータで駆動する場合に比較して、電動モータの装備数量を少なくすることができる。
又、第1引起装置対を単一の電動モータで駆動することにより、動力分配機構を、引起領域を跨ぐことなく左右の引起装置に掛け渡すことができ、これにより、引起領域において引起装置にて引き起こされる穀稈が動力分配機構に接触することに起因した引き起こし不良の発生を回避することができる。
つまり、電動モータの装備数量を削減しながらも、各引起装置による穀稈の引き起こしを良好に行うことができ、これにより、引き起こし不良に起因した穀稈の刈り取り不良や搬送不良などの不都合の発生を回避することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、
複数の前記穀稈搬送装置には、前記第1引起装置対のうちの一方の引起装置からの穀稈を前記合流部に搬送する一方側の穀稈搬送装置と、他方の引起装置からの穀稈を前記合流部に搬送する他方側の穀稈搬送装置とが含まれており、
前記一方側の穀稈搬送装置と前記他方側の穀稈搬送装置とは、それらの前記合流部への穀稈搬送経路の横方向への傾斜角が異なる角度に設定されており、
前記第1引起装置対においては、前記穀稈搬送経路の傾斜角が緩い穀稈搬送装置に穀稈を引き渡す引起装置に前記電動モータが備えられている点にある。
【0012】
本構成によれば、穀稈搬送経路の傾斜角が緩い穀稈搬送装置は穀稈を横方向に搬送する成分が小さいことから、この穀稈搬送装置に穀稈を引き渡す引起装置に電動モータが備えられていても、この穀稈搬送装置にて搬送される穀稈が電動モータに接触する可能性は低くなる。
一方、穀稈搬送経路の傾斜角がきつい穀稈搬送装置は穀稈を横方向に搬送する成分が大きくなるが、この穀稈搬送装置に穀稈を引き渡す引起装置には電動モータがなく、この穀稈搬送装置から離れる側の引起装置に電動モータが備えられていることから、この穀稈搬送装置にて搬送される穀稈が電動モータに接触する可能性は低くなる。
つまり、電動モータの装備数量を削減しながら、電動モータの配置に工夫を凝らすことで、第1引起装置対から対応する穀稈搬送装置に受け継がれて当該穀稈搬送装置にて搬送される穀稈が、第1引起装置対に備えられた電動モータに接触する可能性が低くなる。これにより、その接触に起因した穀稈の搬送姿勢の乱れが生じ難くなり、搬送姿勢の乱れに起因した各穀稈搬送装置での穀稈詰まりや脱穀装置での脱穀不良などが生じ難くなる。
本構成は、複数の引起装置に第1引起装置対が含まれる4条刈りコンバイン、5条刈りコンバイン、6条刈りコンバイン、7条刈りコンバイン、などの多条刈りコンバインに好適である。
その結果、これらの多条刈りコンバインにおいて、各引起装置が電動モータで駆動される引起装置の電動化を図りながら、各引起装置にて引き起こされた穀稈が電動モータに接触して穀稈の搬送姿勢が乱れることに起因した不都合の発生を抑制することができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、
前記刈取装置の刈幅中心に対して左側に配置される前記第1引起装置対においては右側の引起装置に前記電動モータが備えられ、前記刈取装置の刈幅中心に対して右側に配置される前記第1引起装置対においては左側の引起装置に前記電動モータが備えられている点にある。
【0014】
各穀稈搬送装置は、引起装置からの穀稈を左右中央側の合流部に搬送することから、左右両端側に配置される穀稈搬送装置ほど、それらの穀稈搬送経路の横方向への傾斜角がきつくなる傾向にあり、穀稈を横方向に搬送する成分が大きくなる傾向にある。逆に、左右中央側に配置される穀稈搬送装置ほど、それらの穀稈搬送経路の横方向への傾斜角が緩くなる傾向にあり、穀稈を横方向に搬送する成分が小さくなる傾向にある。
本構成は、この点が考慮されたものであり、刈取装置の刈幅中心に対して左側に配置される第1引起装置対においては、右側の引起装置、つまり、刈取装置の刈幅方向で合流部に近い側となる左右中央側の引起装置に単一の電動モータが備えられている。又、刈取装置の刈幅中心に対して右側に配置される第1引起装置対においては、左側の引起装置、つまり、刈取装置の刈幅方向で合流部に近い側となる左右中央側の引起装置に単一の電動モータが備えられている。
このように、電動モータの装備数量を削減しながら、電動モータの配置に工夫を凝らすことで、第1引起装置対から対応する穀稈搬送装置に引き継がれて当該穀稈搬送装置にて搬送される穀稈が、第1引起装置対に備えられた電動モータに接触する可能性が低くなる。これにより、その接触に起因した穀稈の搬送姿勢の乱れが生じ難くなり、搬送姿勢の乱れに起因した各穀稈搬送装置での穀稈詰まりや脱穀装置での脱穀不良などが生じ難くなる。
本構成は、第1引起装置対が刈取装置の刈幅中心に対して左右いずれか一方又は双方に配置される5条刈りコンバイン、6条刈りコンバイン、7条刈りコンバイン、などの多条刈りコンバインに好適である。
その結果、これらの多条刈りコンバインにおいて、各引起装置が電動モータで駆動される引起装置の電動化を図りながら、各引起装置にて引き起こされた穀稈が電動モータに接触して穀稈の搬送姿勢が乱れることに起因した不都合の発生を抑制することができる。
【0015】
本発明の第5特徴構成は、
複数の前記引起装置には、互いの前記引起領域を挟んで左右に隣接して配置される第2引起装置対と、前記第2引起装置対の一方の引起装置と前記引起領域を挟んで左右に隣接して配置される単一の引起装置とからなる引起装置セットが含まれており、
複数の前記穀稈搬送装置には、前記合流部への穀稈搬送経路の横方向への傾斜角が異なる角度に設定された穀稈搬送装置が含まれており、
前記引起装置セットにおいては、前記第2引起装置対にて引き起こされた穀稈が前記穀稈搬送経路の傾斜角がきつい穀稈搬送装置に引き継がれ、前記単一の引起装置にて引き起こされた穀稈が前記穀稈搬送経路の傾斜角が緩い穀稈搬送装置に引き継がれる点にある。
【0016】
本構成によれば、第2引起装置対の各引起装置においては、それらの引起領域から離れた位置に電動モータが備えられることから、それらの引起領域にて引き起こされた穀稈は電動モータに接触し難くなる。
一方、引起装置セットにおける単一の引起装置においては、その引起領域から離れた位置に電動モータが備えられることから、その引起領域にて引き起こされた穀稈は電動モータに接触し難くなるが、その反面、その引起領域の近くに、隣接する引起装置セットの引起装置に備えられた電動モータが存在することになる。
本構成は、この点が考慮されたものであり、第2引起装置対にて引き起こされた穀稈が穀稈搬送経路の傾斜角がきつい穀稈搬送装置に引き継がれることで、この穀稈搬送装置にて搬送される穀稈が、第2引起装置対の各電動モータに接触する可能性を低くしている。
又、引起装置セットにおける単一の引起装置にて引き起こされた穀稈が穀稈搬送経路の傾斜角が緩い穀稈搬送装置に引き継がれることで、この穀稈搬送装置にて搬送される穀稈が、単一の引起装置とこれに隣接する第2引起装置対の一方の引起装置とに備えられた各電動モータに接触する可能性を低くしている。
これにより、各穀稈搬送装置にて搬送される穀稈が、引起装置セットの各電動モータに接触することに起因した穀稈の搬送姿勢の乱れが生じ難くなり、搬送姿勢の乱れに起因した各穀稈搬送装置での穀稈詰まりや脱穀装置での脱穀不良などが生じ難くなる。
本構成は、複数の引起装置に引起装置セットが含まれる3条刈りコンバイン、5条刈りコンバイン、7条刈りコンバイン、などの多条刈りコンバインに好適である。
その結果、これらの多条刈りコンバインにおいて、各引起装置が電動モータで駆動される引起装置の電動化を図りながら、各引起装置にて引き起こされた穀稈が電動モータに接触して穀稈の搬送姿勢が乱れることに起因した不都合の発生を抑制することができる。
【0017】
本発明の第6特徴構成は、
前記引起装置は、その上部に配置された駆動軸に前記電動モータからの動力が減速機構を介して伝えられ、
前記電動モータは、前記引起装置の背部における前記駆動軸よりも下方の位置に配置されている点にある。
【0018】
本構成によれば、穀稈の引き起こしに適した引起装置の駆動速度と駆動トルクとが得られ易くなる。
又、引起装置は後傾斜姿勢で備えられることから、引起装置における電動モータの配置を低くするほど、電動モータにおいて、引起装置の引き起こし終端から後方に張り出す部分が少なくなる。これにより、引起装置から離れて不安定になった穀稈の穂先側が電動モータに接触する可能性が低くなり、その接触に起因した穀稈の搬送姿勢の乱れが更に生じ難くなる。
そして、引起装置における電動モータの配置が低くなることで、運転部から各引起装置による穀稈の引き起こし具合などを視認する場合に、その視認性が電動モータによって低下する不都合の発生を抑制することができる。
【0019】
本発明の第7特徴構成は、
前記引起装置は、その下部を支点にして前後方向に姿勢変更可能に備えられている点にある。
【0020】
本構成によれば、機体に向けて倒伏する穀稈を刈り取る向かい刈りを行う場合には、後傾斜姿勢で備えられている各引起装置を前方側に姿勢変更して各引起装置の傾斜角を小さくすることで、機体に向けて倒伏する穀稈を各引起装置にて好適に引き起こすことができ、向かい刈りによる穀稈の刈り取りが行い易くなる。
又、機体から離れる方向に倒伏する穀稈を刈り取る追い刈りを行う場合には、後傾斜姿勢で備えられている各引起装置を後方側に姿勢変更して引起装置の傾斜角を大きくすることで、機体から離れる方向に倒伏する穀稈を各引起装置にて好適に引き起こすことができ、追い刈りによる穀稈の刈り取りが行い易くなる。
そして、各引起装置を機体前方側に倒伏させるようにすれば、各引起装置の後方に配置された各穀稈搬送装置などの前方を開放することができ、各穀稈搬送装置などに詰まった穀稈を取り除くなどのメンテナンスが行い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図10】引起装置の傾斜姿勢を機体前側に姿勢変更した状態を示す側面図
【
図11】リンク式の姿勢変更機構にて引起装置の傾斜姿勢を機体後側に姿勢変更した状態を示す側面図
【
図12】リンク式の姿勢変更機構にて引起装置の傾斜姿勢を機体前側に姿勢変更した状態を示す側面図
【
図13】リンク式の姿勢変更機構の構成を示す平面図
【
図14】本発明を5条刈り用の刈取搬送部に適用した別実施形態を示す概略平面図
【
図15】本発明を4条刈り用の刈取搬送部に適用した別実施形態を示す概略平面図
【
図16】本発明を3条刈り用の刈取搬送部に適用した別実施形態を示す概略平面図
【
図17】本発明を7条刈り用の刈取搬送部に適用した別実施形態を示す概略平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明を、多条刈りコンバイン(自脱型コンバイン)の一例である6条刈りコンバインに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本発明は、6条刈りコンバイン以外の4条刈りコンバインや7条刈りコンバインなどの多条刈りコンバインに適用することができる。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に例示された6条刈りコンバインには、乗用型の走行機体1、6条刈り用の刈取搬送部2、脱穀装置3、穀粒貯留部4、及び、排わら処理部5、などが備えられている。刈取搬送部2は、収穫作業時の走行に伴って収穫対象となる機体前方の未刈り穀稈を刈り取って後方に搬送する。脱穀装置3は、刈取搬送部2にて搬送された穀稈に脱穀・選別処理を施す。穀粒貯留部4は、脱穀・選別処理で得られた穀粒を貯留する。排わら処理部5は、脱穀処理後の穀稈(排わら)を機体の後端部に搬送して、機体の後端部から機外に排出する。
【0024】
図1に示すように、走行機体1は、その骨組みを形成する機体フレーム10を有している。機体フレーム10は、その前部の右半部に、原動機の一例であるディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)11、及び、キャビン仕様の運転部12、などが搭載されている。機体フレーム10における前部の左右中央側には、エンジン11からの動力を変速する走行用の変速装置(図示せず)が備えられている。機体フレーム10における前部の左半部には、エンジン11からの動力を刈取搬送部2及び脱穀装置3などに分配する動力分配装置13が備えられている。機体フレーム10の下部には、走行装置の一例である左右のクローラ14が備えられている。左右のクローラ14には、変速装置による変速後の動力が伝えられている。機体フレーム10には、刈取搬送部2を上下揺動可能に支持する支持フレーム10Aが含まれている。支持フレーム10Aは、機体フレーム10の左半部における動力分配装置13の前側に配置されている。図示は省略するが、運転部12には、ステアリングホイールや変速レバーなどの各種の操作具、及び、搭乗者用の座席、などが備えられている。
【0025】
図1~5に示すように、刈取搬送部2は、支持フレーム10Aに上下揺動可能に支持された刈取フレーム20を有している。刈取フレーム20には、7つの分草具21、6つの引起装置22、バリカン型の刈取装置23、6組の掻込搬送装置24、穀稈搬送ユニット25、及び、刈取伝動系26、などが備えられている。
なお、本実施形態においては、便宜上、6つの引起装置22を、左側から順に、第1引起装置22、第2引起装置22、第3引起装置22、第4引起装置22、第5引起装置22、第6引起装置22と称することがある。又、6組の掻込搬送装置24を、左側から順に、第1掻込搬送装置24、第2掻込搬送装置24、第3掻込搬送装置24、第4掻込搬送装置24、第5掻込搬送装置24、第6掻込搬送装置24と称することがある。
【0026】
各分草具21は、収穫作業時の走行に伴って収穫対象の未刈り穀稈を条ごとに梳き分ける。各引起装置22は、梳き分けられた未刈り穀稈を所定の刈取姿勢に引き起こす。刈取装置23は、引き起こされた未刈り穀稈の株元側を切断して未刈り穀稈を刈り取る。各掻込搬送装置24は、引き起こし姿勢の穀稈を後方に向けて掻き込み搬送する。穀稈搬送ユニット25は、各掻込搬送装置24からの穀稈を、刈取搬送部2の左右中央側に備えられた合流部Jに搬送し、その後、刈り取り時の引き起こし姿勢から脱穀処理用の横倒れ姿勢に姿勢変更しながら脱穀装置3に向けて搬送する。これにより、刈取搬送部2は、最大6条の穀稈を刈り取り搬送する6条刈り仕様に構成されている。
【0027】
図1に示すように、刈取搬送部2は、機体フレーム10から刈取フレーム20に架設されたリフトシリンダ6の伸縮により、刈取フレーム20の後端部を揺動支点にして昇降揺動する。リフトシリンダ6には、油圧制御によって伸縮して刈取搬送部2を昇降させる単動型の油圧シリンダが採用されている。
【0028】
図1に示すように、脱穀装置3は、走行機体1の左半部に搭載されている。脱穀装置3の左側部には、刈取搬送部2にて搬送された穀稈の株元側を受け取って、穀稈を横倒れ姿勢で後方に搬送するフィードチェーン30が備えられている。フィードチェーン30は、穀稈の穂先側を脱穀装置3の穂先投入口から脱穀装置3の内部に供給する。脱穀装置3の内部には、第1受網31、扱胴32、第2受網(図示せず)、処理胴(図示せず)、プレファン33、揺動選別装置34、唐箕ファン35、セカンドファン36、スクリュ搬送式の一番コンベヤ37、スクリュ搬送式の二番コンベヤ38、スクリュ搬送式の揚送コンベヤ(図示せず)、二番還元装置(図示せず)、及び、排塵ファン39、などが備えられている。
【0029】
第1受網31は、フィードチェーン30にて搬送される穀稈の穂先側を下方から受け止める。扱胴32は、第1受網31にて受け止められた穀稈の穂先側に脱穀処理を施して、この脱穀処理で得られた穀粒やわら屑などの混在物を第1受網31から揺動選別装置34の前半部に漏下させる。第2受網は、第1受網31から漏下せずに送塵口から流出した混在物を受け取る。処理胴は、第2受網が受け取った混在物に脱穀処理を施して、脱穀処理後の混在物を第2受網などから揺動選別装置34の後半部に漏下させる。プレファン33は、揺動選別装置34に漏下する混在物に選別風を供給して、混在物に含まれたわら屑などの塵埃を機体の後方に風力搬送する。揺動選別装置34は、漏下した混在物に篩い選別処理を施して、混在物を単粒化穀粒や枝梗付着粒などに選別する。唐箕ファン35は、揺動選別装置34の前半部にて篩い選別処理中の混在物に選別風を供給して、混在物に含まれたわら屑などの塵埃を機体の後方に風力搬送する。セカンドファン36は、揺動選別装置34の後半部にて篩い選別処理中の混在物に選別風を供給して、混在物に含まれたわら屑などの塵埃を機体の後方に風力搬送する。一番コンベヤ37は、揺動選別装置34の前半部から一番物として漏下した単粒化穀粒を脱穀装置3の右端部に搬送する。二番コンベヤ38は、揺動選別装置34の後半部から二番物として漏下した枝梗付着粒や二又粒などを脱穀装置3の右端部に搬送する。揚送コンベヤは、一番コンベヤ37にて搬送された一番物を上方に搬送して穀粒貯留部4に供給する。二番還元装置は、スクリュコンベヤと二番処理部とを有している。スクリュコンベヤは、二番コンベヤ38にて搬送された二番物を揺動選別装置34の前部に向けて搬送する。二番処理部は、スクリュコンベヤにて搬送された二番物に脱穀処理を施して、脱穀処理後の二番物を揺動選別装置34の前部に供給する。排塵ファン39は、機体の後方に風力搬送されたわら屑などの塵埃を、脱穀装置3の後端に形成された排出口(図示せず)から機外に排出する。
【0030】
図1に示すように、穀粒貯留部4は、走行機体1における右半部の後部側に搭載されている。穀粒貯留部4には、その内部に貯留された穀粒の機外への排出を可能にするスクリュ搬送式の穀粒排出装置40が備えられている。
【0031】
図1に示すように、排わら処理部5には、排わら搬送装置50及び排わら細断装置51などが備えられている。排わら搬送装置50は、フィードチェーン30から排わらを受け取って、排わらを機体の後端部に搬送する。排わら細断装置51は、その上端に形成された投入口を開閉する蓋体51Aを有している。排わら細断装置51は、蓋体51Aが投入口を開放する開位置に操作された場合に、排わら搬送装置50にて搬送された排わらを、内部の排わらカッタ51Bにて細断してから機外に排出する細断排出状態に切り換わる。排わら細断装置51は、蓋体51Aが投入口を塞ぐ閉位置に操作された場合に、排わら搬送装置50にて搬送された排わらを、そのまま機外に排出する長わら排出状態に切り換わる。
【0032】
図1~5に示すように、刈取フレーム20には、第1フレーム20A、第2フレーム20B、第3フレーム20C、及び、左右の支持アーム20D,20E、などが含まれている。第1フレーム20Aは、刈取伝動系26を覆う伝動ケースを兼ねている。
【0033】
図1~2.
図4に示すように、第1フレーム20Aは、第1部材20Aa、第2部材20Ab、及び、第3部材20Ac、などを有している。第1部材20Aaは、支持フレーム10Aから機体前方に向けて延びている。第1部材20Aaは、その後端部が揺動支点として機能するように、後端部が支持フレーム10Aに回転可能に支持されている。第2部材20Abは、第1部材20Aaの前端部から左右方向に延びている。第3部材20Acは、第2部材20Abの左端部から上方に延びている。
【0034】
図1~5に示すように、第2フレーム20Bは、その後端部が第1フレーム20Aの第2部材20Abに連結されている。第2フレーム20Bは、刈取搬送部2の刈幅方向に所定間隔を置いて並ぶ7本の分草杆20Ba、及び、刈幅方向に延びて各分草杆20Baの後部を支持する支持部材20Bb、などを有している。各分草杆20Baは、それらの前端部に分草具21が取り付けられている。
なお、本実施形態においては、便宜上、7本の分草杆20Baを、左側から順に、第1分草杆20Ba、第2分草杆20Ba、第3分草杆20Ba、第4分草杆20Ba、第5分草杆20Ba、第6分草杆20Ba、第7分草杆20Baと称することがある。
【0035】
図1~4に示すように、第3フレーム20Cは、左右の前側部材20Caと単一の後側部材20Cbとを有している。左側の前側部材20Caは、第2フレーム20Bの第3分草杆20Baから引起装置22の背面に沿って上方に延びた後、刈取搬送部2における左右中央側の後上方に向けて延びている。右側の前側部材20Caは、第2フレーム20Bの第5分草杆20Baから引起装置22の背面に沿って上方に延びた後、刈取搬送部2における左右中央側の後上方に向けて延びている。後側部材20Cbは、刈取搬送部2の左右中央側において、第1フレーム20Aの後端部から前上方に向けて延びた後、左右の前側部材20Caの後端部に向けて延びている。第3フレーム20Cは、各前側部材20Caの後端部と後側部材20Cbの前端部とが連結されることにより、穀稈搬送ユニット25にて搬送される穀稈の上方を通って、第1フレーム20Aの後端部と第2フレーム20Bの前部とに架設されるセンタフレームとして機能する。これにより、穀稈搬送ユニット25にて搬送される穀稈が第3フレーム20Cに接触して搬送姿勢が乱れる不都合を招くことなく、刈取フレーム20の強度を向上させることができる。
【0036】
図2、
図4に示すように、左側の支持アーム20Dは、第3部材20Acの上端から第1引起装置22の上部に向けて延びている。
図4に示すように、右側の支持アーム20Eは、第7分草杆20Baの後端部から第6引起装置22の上部に向けて延びている。
【0037】
図2~6に示すように、各引起装置22は、それらの背面に取り付けられた電動モータ70からの動力で駆動される電動式に構成されている。各引起装置22は、それらの上部側ほど機体後方側に位置する同じ後傾斜姿勢で刈取フレーム20に支持されている。
図3に示すように、各引起装置22は、駆動スプロケット22A、従動ローラ22B、無端の引起チェーン22C、複数の引起タイン22D、テンションローラ22E、及び、引起ガイド22F、などを有している。駆動スプロケット22Aは、引起装置22における左右一端側の上端部に駆動軸22Gを介して回転可能に支持されている。従動ローラ22Bは、引起装置22における左右一端側の下端部に回転可能に支持されている。引起チェーン22Cは、駆動スプロケット22Aと従動ローラ22Bとに掛け渡されている。各引起タイン22Dは、それらの基端部が引起チェーン22Cの周方向に所定間隔を置いて取り付けられている。テンションローラ22Eは、引起装置22における駆動スプロケット22Aとは左右反対側の位置に配置されて引起チェーン22Cを緊張状態に維持する。引起ガイド22Fは、駆動スプロケット22Aと従動ローラ22Bとの間において上下方向に延びている。
【0038】
図3に示すように、6つの引起装置22のうち、機体左側から奇数位置に配置された各引起装置22においては、それらの駆動スプロケット22Aが機体正面視で右回りに回転駆動され、これにより、引起チェーン22Cが機体正面視で右回りに回動する。機体左側から偶数位置に配置された各引起装置22においては、それらの駆動スプロケット22Aが機体正面視で左回りに回転駆動され、これにより、引起チェーン22Cが機体正面視で左回りに回動する。
図6に示すように、各引起タイン22Dは、格納姿勢と引起姿勢とに姿勢切り換え可能な状態で引起チェーン22Cに取り付けられている。各引起タイン22Dは、格納姿勢では、引起チェーン22Cに略沿った姿勢になり、引起装置22から外方への突出が防止されている。各引起タイン22Dは、引起姿勢では、引起チェーン22Cに対して略直交する姿勢になり、引起装置22から左右一側方の引起領域Aに突出する。
図3、
図6に示すように、各引起タイン22Dは、従動ローラ22Bとの接触で格納姿勢から引起姿勢に切り換わる。各引起タイン22Dは、引起領域Aにおいては引起ガイド22Fによって引起姿勢に維持された状態で上昇移動する。
【0039】
つまり、
図3~6に示すように、各引起装置22においては、それらの左右一側方が未刈り穀稈を引き起こす引起領域Aに設定されている。各引起装置22は、それらの引起領域Aにおいては、各引起タイン22Dが引起姿勢で引起領域Aに突出して上昇移動することで未刈り穀稈を引き起こす。そして、機体左側から奇数位置に配置された各引起装置22が、それらの右側方に引起領域Aを有する第1仕様に構成されている。又、機体左側から偶数位置に配置された各引起装置22が、それらの左側に引起領域Aを有する第2仕様に構成されている。
【0040】
図示は省略するが、刈取装置23は、第1分草杆20Baと第6分草杆20Baとにわたる刈幅を有して、各引起装置22にて引き起こされた6条分の未刈り穀稈の株元側を切断して未刈り穀稈を刈り取る。刈取装置23は、刈取伝動系26などを経由して伝えられたエンジン11からの動力で駆動される。
【0041】
図2~5に示すように、各掻込搬送装置24は、スターホイル24Aとベルト搬送式の掻込搬送機構24Bとを有している。各掻込搬送機構24Bは、それらの搬送終端部に配置された駆動プーリ24Baがスターホイル24Aと一体回転する。図示は省略するが、各掻込搬送装置24は、刈取伝動系26及び穀稈搬送ユニット25などを経由して伝えられたエンジン11からの動力で駆動される。
【0042】
図3、
図5に示すように、第1掻込搬送装置24及び第2掻込搬送装置24は、それらのスターホイル24Aが噛み合い連動する。第1掻込搬送装置24の掻込搬送機構24B及び第2掻込搬送装置24の掻込搬送機構24Bは、それらの搬送終端側ほど左右間隔が狭くなる平面視V字状に配置されている。これにより、第1掻込搬送装置24及び第2掻込搬送装置24は、第1引起装置22及び第2引起装置22にて引き起こされる穀稈の株元側を、第1掻込搬送装置24と第2掻込搬送装置24との左右中間位置に掻き寄せた後、第1掻込搬送装置24と第2掻込搬送装置24との間から後方の穀稈搬送ユニット25に掻き出す。
【0043】
図3、
図5に示すように、第3掻込搬送装置24及び第4掻込搬送装置24は、それらのスターホイル24Aが噛み合い連動する。第3掻込搬送装置24の掻込搬送機構24B及び第4掻込搬送装置24の掻込搬送機構24Bは、それらの搬送終端側ほど左右間隔が狭くなる平面視V字状に配置されている。これにより、第3掻込搬送装置24及び第4掻込搬送装置24は、第3引起装置22及び第4引起装置22にて引き起こされる穀稈の株元側を、第3掻込搬送装置24と第4掻込搬送装置24との左右中間位置に掻き寄せた後、第3掻込搬送装置24と第4掻込搬送装置24との間から後方の穀稈搬送ユニット25に掻き出す。
【0044】
図3、
図5に示すように、第5掻込搬送装置24及び第6掻込搬送装置24は、それらのスターホイル24Aが噛み合い連動する。第5掻込搬送装置24の掻込搬送機構24B及び第6掻込搬送装置24の掻込搬送機構24Bは、それらの搬送終端側ほど左右間隔が狭くなる平面視V字状に配置されている。これにより、第5掻込搬送装置24及び第6掻込搬送装置24は、第5引起装置22及び第6引起装置22にて引き起こされる穀稈の株元側を、第5掻込搬送装置24と第6掻込搬送装置24との左右中間位置に掻き寄せた後、第5掻込搬送装置24と第6掻込搬送装置24との間から後方の穀稈搬送ユニット25に掻き出す。
【0045】
図1~5に示すように、穀稈搬送ユニット25は、第1穀稈搬送装置25A、第2穀稈搬送装置25B、及び、第3穀稈搬送装置25C、などを有している。図示は省略するが、穀稈搬送ユニット25は、刈取伝動系26などを経由して伝えられたエンジン11からの動力で駆動される。
【0046】
図2~5に示すように、第1穀稈搬送装置25Aは、チェーン搬送式の第1株元搬送機構25Aa、及び、タイン搬送式の第1穂先搬送機構25Ab、などを有している。第1株元搬送機構25Aaは、その搬送始端部に備えられた従動スプロケット(図示せず)が第1掻込搬送装置24のスターホイル24A及び駆動プーリ24Baと一体回転する。第1株元搬送機構25Aa及び第1穂先搬送機構25Abは、第1掻込搬送装置24及び第2掻込搬送装置24の搬送終端部から刈取搬送部2の左右中央側に備えられた合流部Jにわたる右後ろ向きの傾斜姿勢で刈取搬送部2の左半部に備えられている。これにより、第1穀稈搬送装置25Aは、第1掻込搬送装置24及び第2掻込搬送装置24にて搬送された穀稈を、刈り取り時の起立姿勢を維持しながら右後方の合流部Jに搬送することができる。つまり、第1穀稈搬送装置25Aにより、第1掻込搬送装置24及び第2掻込搬送装置24からの穀稈を右後方の合流部Jに搬送する左側の穀稈搬送経路R1が形成されている。
【0047】
図3~5に示すように、第2穀稈搬送装置25Bは、チェーン搬送式の第2株元搬送機構25Ba、及び、タイン搬送式の第2穂先搬送機構25Bb、などを有している。第2株元搬送機構25Baは、その搬送始端部に備えられた従動スプロケット(図示せず)が第3掻込搬送装置24のスターホイル24A及び駆動プーリ24Baと一体回転する。第2株元搬送機構25Ba及び第2穂先搬送機構25Bbは、第3掻込搬送装置24及び第4掻込搬送装置24の搬送終端部から前述した合流部Jにわたる前後向きの姿勢で刈取搬送部2の左右中間部に備えられている。これにより、第2穀稈搬送装置25Bは、第3掻込搬送装置24及び第4掻込搬送装置24にて搬送された穀稈を、刈り取り時の起立姿勢を維持しながら後方の合流部Jに搬送することができる。つまり、第2穀稈搬送装置25Bにより、第3掻込搬送装置24及び第4掻込搬送装置24からの穀稈を後方の合流部Jに搬送する左右中央側の穀稈搬送経路R2が形成されている。
【0048】
図1、
図3~5に示すように、第3穀稈搬送装置25Cは、チェーン搬送式の第3株元搬送機構25Ca、タイン搬送式の第3穂先搬送機構25Cb、チェーン搬送式の第4株元搬送機構25Cc、及び、チェーン搬送式の第5株元搬送機構25Cd、などを有している。第3株元搬送機構25Caは、その搬送始端部に備えられた従動スプロケット(図示せず)が第6掻込搬送装置24のスターホイル24A及び駆動プーリ24Baと一体回転する。第3株元搬送機構25Caは、第5掻込搬送装置24及び第6掻込搬送装置24の搬送終端部から前述した合流部Jにわたる左後ろ向きの傾斜姿勢で刈取搬送部2の右半部に備えられている。第3穂先搬送機構25Cbは、第5掻込搬送装置24及び第6掻込搬送装置24の搬送終端部から合流部Jを経由して脱穀装置3の穂先投入口に向かう左後ろ向きの傾斜姿勢で刈取搬送部2に備えられている。第4株元搬送機構25Ccは、合流部Jからフィードチェーン30の搬送始端部に向かう左後ろ向きの傾斜姿勢で刈取搬送部2の左半部に備えられている。第5株元搬送機構25Cdは、第4株元搬送機構25Ccの搬送終端部からフィードチェーン30の搬送始端部への穀稈の受け渡しを可能にする姿勢で刈取搬送部2の左側後部に備えられている。これにより、第3穀稈搬送装置25Cは、第5掻込搬送装置24及び第6掻込搬送装置24にて搬送された穀稈を、刈り取り時の起立姿勢を維持しながら左後方の合流部Jに搬送することができる。又、第3穀稈搬送装置25Cは、第1穀稈搬送装置25A及び第2穀稈搬送装置25Bにて合流部Jに搬送された穀稈を、その合流部Jにおいて受け取ることができ、受け取った穀稈を、第5掻込搬送装置24及び第6掻込搬送装置24からの穀稈とともに、刈り取り時の起立姿勢から脱穀処理用の横倒れ姿勢に姿勢変更しながら左後方の脱穀装置3に搬送することができる。つまり、第3穀稈搬送装置25Cにより、第5掻込搬送装置24及び第6掻込搬送装置24からの穀稈を左後方の合流部Jに搬送する右側の穀稈搬送経路R3、及び、合流部Jに搬送された穀稈を脱穀装置3に供給搬送する供給搬送経路R4が形成されている。
【0049】
穀稈搬送ユニット25は、各穀稈搬送装置25A~25Cを有することにより、刈り取られた6条分の穀稈を後方で左右中央側の合流部Jに搬送することができ、合流部Jに搬送された穀稈を脱穀装置3に供給することができる。そして、この6条刈りコンバインにおいては、合流部Jが刈取搬送部2の左右中央側に備えられていることにより、刈取搬送部2の左側に備えられる第1穀稈搬送装置25Aの穀稈搬送経路R1と、刈取搬送部2の右側に備えられる第3穀稈搬送装置25Cの穀稈搬送経路R3とが、刈取搬送部2の左右中央側に備えられる第2穀稈搬送装置25Bの穀稈搬送経路R2よりも横方向への傾斜角がきつくなっている。又、この6条刈りコンバインにおいては、脱穀装置3が走行機体1の左半部に搭載されていることにより、刈取搬送部2の右側に備えられる第3穀稈搬送装置25Cの穀稈搬送経路R3が、刈取搬送部2の左側に備えられる第1穀稈搬送装置25Aの穀稈搬送経路R1よりも横方向への傾斜角がきつくなっている。
【0050】
図2、
図4に示すように、刈取伝動系26は、動力分配装置13を経由したエンジン11からの動力を刈取フレーム20の内部に取り入れる入力軸26Aなどを有している。入力軸26Aは、支持フレーム10Aに回転可能に支持された刈取フレーム20における第1部材20Aaの後端部に相対回転可能に支持されている。入力軸26Aの左端部には、入力軸26Aと一体回転する入力プーリ26Bが取り付けられており、この入力プーリ26Bに動力分配装置13からの動力がベルト伝動されている。
【0051】
図3~6に示すように、6つの引起装置22において、第1引起装置22と第2引起装置22、第3引起装置22と第4引起装置22、及び、第5引起装置22と第6引起装置22は、それぞれ、それらの間に引起領域Aが位置するように左右方向に所定間隔を置いて配置されている。又、第2引起装置22と第3引起装置22、及び、第4引起装置22と第5引起装置22は、それぞれ、それらの間に引起領域Aが位置しないように左右方向に近接して配置されている。
【0052】
図2、
図4~7に示すように、6つの引起装置22のうち、第1引起装置22における背面の上部には、単一の電動モータ70を含む第1駆動ユニット71が取り付けられている。第2引起装置22及び第3引起装置22における背面の上部には、単一の電動モータ70を含む第2駆動ユニット72が取り付けられている。第4引起装置22及び第5引起装置22における背面の上部には、単一の電動モータ70を含む第3駆動ユニット73が取り付けられている。第6引起装置22における背面の上部には、単一の電動モータ70を含む第4駆動ユニット74が取り付けられている。
【0053】
図2、
図4~7に示すように、第1駆動ユニット71及び第4駆動ユニット74には、電動モータ70からの動力を減速して第1引起装置22又は第6引起装置22の駆動軸22Gに伝えるギア式の減速機構75が含まれている。
図4~7に示すように、第2駆動ユニット72及び第3駆動ユニット73には、前述した減速機構75と、減速後の動力を左右に振り分けて第2引起装置22と第3引起装置22の各駆動軸22G、又は、第4引起装置22と第5引起装置22の各駆動軸22Gに伝える動力分配機構76が含まれている。
【0054】
図6に示すように、各引起装置22は、それらの背面の上部に第1支持部材77が備えられている。第1引起装置22は、その背面の上下中間部に第2支持部材78が備えられている。第2引起装置22及び第3引起装置22は、それらの背面の上下中間部に第3支持部材79が架設されている。第4引起装置22及び第5引起装置22は、それらの背面の上下中間部に第4支持部材80が架設されている。第6引起装置22は、その背面の上下中間部に第5支持部材81が備えられている。
【0055】
第1駆動ユニット71は、減速機構75の上部が第1引起装置22の第1支持部材77に支持されている。第1駆動ユニット71は、電動モータ70の下部が第2支持部材78に支持されている。これにより、第1駆動ユニット71は、電動モータ70が第1引起装置22の駆動軸22Gや駆動スプロケット22Aよりも下方に位置する状態で、第1引起装置22の第1支持部材77と第2支持部材78とに支持されている。
【0056】
第2駆動ユニット72は、動力分配機構76の左端部が第2引起装置22の第1支持部材77に支持され、動力分配機構76の右端部が第3引起装置22の第1支持部材77に支持されている。第2駆動ユニット72は、電動モータ70の下部が第3支持部材79に支持されている。これにより、第2駆動ユニット72は、電動モータ70が第2引起装置22及び第3引起装置22の駆動軸22Gや駆動スプロケット22Aよりも下方に位置する状態で、第2引起装置22及び第3引起装置22の第1支持部材77と第3支持部材79とに支持されている。
【0057】
第3駆動ユニット73は、動力分配機構76の左端部が第4引起装置22の第1支持部材77に支持され、動力分配機構76の右端部が第5引起装置22の第1支持部材77に支持されている。第3駆動ユニット73は、電動モータ70の下部が第4支持部材80に支持されている。これにより、第3駆動ユニット73は、電動モータ70が第4引起装置22及び第5引起装置22の駆動軸22Gや駆動スプロケット22Aよりも下方に位置する状態で、第4引起装置22及び第5引起装置22の第1支持部材77と第4支持部材80とに支持されている。
【0058】
第4駆動ユニット74は、減速機構75の上部が第6引起装置22の第1支持部材77に支持されている。第4駆動ユニット74は、電動モータ70の下部が第5支持部材81に支持されている。これにより、第4駆動ユニット74は、電動モータ70が第6引起装置22の駆動軸22Gや駆動スプロケット22Aよりも下方に位置する状態で、第6引起装置22の第1支持部材77と第5支持部材81とに支持されている。
【0059】
図4~6に示すように、刈取搬送部2において、各電動モータ70は、電動モータ70が取り付けられる引起装置22の背部における引起領域Aから離れた左右一方側の位置に配置されている。又、6つの引起装置22には、
第2引起装置22と第3引起装置22、及び、第4引起装置22と第5引起装置22とが、引起領域Aを挟まずに左右に隣接して配置される2組の第1引起装置対P1として含まれている。第1引起装置対P1には、単一の電動モータ70からの動力が、その動力を左右に分配する動力分配機構76を介して伝えられている。2組の第1引起装置対P1のうち、第2引起装置22と第3引起装置22とからなる第1引起装置対P1は、刈取装置23の刈幅中心に対して左側に配置されている。そして、この左側の第1引起装置対P1においては、右側の第3引起装置22の背部に電動モータ70が備えられている。一方、第4引起装置22と第5引起装置22とからなる第1引起装置対P1は、刈取装置23の刈幅中心に対して右側に配置されている。そして、この右側の第1引起装置対P1においては、左側の第4引起装置22の背部に電動モータ70が備えられている。
【0060】
図4~5に示すように、穀稈搬送ユニット25において、左側の第1引起装置対P1の第3引起装置22からの穀稈を合流部Jに搬送する第2穀稈搬送装置25Bは、その穀稈搬送経路R2の横方向への傾斜角が、第2引起装置22からの穀稈を合流部Jに搬送する第1穀稈搬送装置25Aにおける穀稈搬送経路R1の横方向への傾斜角よりも緩くなっている。又、右側の第1引起装置対P1の第4引起装置22からの穀稈を合流部Jに搬送する第2穀稈搬送装置25Bは、その穀稈搬送経路R2の横方向への傾斜角が、第5引起装置22からの穀稈を合流部Jに搬送する第3穀稈搬送装置25Cにおける穀稈搬送経路R1の横方向への傾斜角よりも緩くなっている。
【0061】
上記の構成により、各引起装置22を専用の電動モータ70で駆動する場合に比較して、電動モータ70の装備数量を少なくすることができる。
又、第1引起装置対P1を単一の電動モータ70で駆動することにより、動力分配機構76を、引起領域Aを跨ぐことなく左右の引起装置22に掛け渡すことができ、これにより、引起領域Aにおいて引起装置22にて引き起こされる穀稈が動力分配機構76に接触することに起因した引き起こし不良の発生を回避することができる。
つまり、電動モータ70の装備数量を削減しながらも、各引起装置22による穀稈の引き起こしを良好に行うことができ、これにより、引き起こし不良に起因した穀稈の刈り取り不良や搬送不良などの不都合の発生を回避することができる。
【0062】
又、上記の構成により、各引起装置22にて引き起こされた直後の穀稈の穂先側が、引起装置22から離れて不安定になったとしても、引起領域Aから離れて配置された電動モータ70に接触する可能性が低くなる。
そして、刈取搬送部2の左右両端部に配置される第1引起装置22及び第6引起装置22においては、それらにおける機体の左右中央側の左右一側方に引起領域Aが備えられることから、それらの引起装置22にて引き起こされた穀稈は、第1穀稈搬送装置25A又は第3穀稈搬送装置25Cに引き継がれて合流部Jに向けて搬送されるのに伴って、第1引起装置22及び第6引起装置22の電動モータ70から離れることになる。これにより、第1穀稈搬送装置25A及び第3穀稈搬送装置25Cにて搬送される穀稈が、左右両端部の第1引起装置22及び第6引起装置22に備えられた電動モータ70に接触する可能性が低くなる。
更に、刈取装置23の刈幅中心に対して、左側の第1引起装置対P1においては右側の第3引起装置22の背部に電動モータ70が備えられ、かつ、右側の第1引起装置対P1においては左側の第4引起装置22の背部に電動モータ70が備えられていることにより、各第1引起装置対P1においては、横方向への傾斜角が緩い穀稈搬送装置25Bに穀稈を引き渡す第3引起装置22又は第4引起装置22の背部に電動モータ70が備えられることになる。これにより、各第1引起装置対P1から対応する穀稈搬送装置25A~25Cに受け継がれて搬送される穀稈が、各第1引起装置対P1に備えられた電動モータ70に接触する可能性が低くなる。
【0063】
その結果、電動モータ70の装備数量を削減しながら、各引起装置22が電動モータ70で駆動される引起装置22の電動化を図ることができる。又、引き起こし後の穀稈が電動モータ70に接触することに起因した穀稈の搬送姿勢の乱れを生じ難くすることができ、搬送姿勢の乱れに起因した穀稈搬送ユニット25での穀稈詰まりや脱穀装置3での脱穀不良などの不都合の発生を抑制することができる。
【0064】
図2に示すように、各引起装置22は後傾斜姿勢で備えられることから、各引起装置22における電動モータ70の配置を低くするほど、電動モータ70において、引起装置22の引き起こし終端から後方に張り出す部分が少なくなる。そこで、
図6に示すように、各電動モータ70は、対応する引起装置22の背部における駆動軸22Gよりも下方の位置に配置されている。
これにより、各引起装置22から離れて不安定になった穀稈の穂先側が電動モータ70に接触する可能性が更に低くなり、その接触に起因した穀稈の搬送姿勢の乱れが生じ難くなる。
又、各引起装置22における電動モータ70の配置が低くなることで、運転部12から各引起装置22による穀稈の引き起こし具合などを視認する場合に、その視認性が電動モータ70によって低下する不都合の発生を抑制することができる。
【0065】
図5~6に示すように、第1駆動ユニット71においては、電動モータ70が第1引起装置22の引起領域Aから離れる第1引起装置22の背面における左側の位置に配置されている。これにより、第1駆動ユニット71の減速機構75は、その伝動方向の上手側となる下部側ほど穀稈搬送ユニット25の第1穀稈搬送装置25Aから離れる右傾斜姿勢で、電動モータ70の出力軸70Aと第1引起装置22の駆動軸22Gとを伝動可能に連結している。
これにより、第1引起装置22にて引き起こされた直後の穀稈の穂先側が、第1引起装置22から離れて不安定になったとしても、第1駆動ユニット71の減速機構75に接触する可能性が低くなる。又、第1引起装置22にて引き起こされた穀稈は、第1穀稈搬送装置25Aに引き継がれて合流部Jに向けて搬送されるのに伴って、第1駆動ユニット71の減速機構75から離れることになる。これにより、第1穀稈搬送装置25Aにて搬送される穀稈が、第1引起装置22に備えられた第1駆動ユニット71の減速機構75に接触する可能性が低くなる。
【0066】
図5~6に示すように、第2駆動ユニット72においては、電動モータ70が第2引起装置22及び第3引起装置22の引起領域Aから離れる第3引起装置22の背面における左側の位置に配置されている。これにより、第2駆動ユニット72の減速機構75は、第3引起装置22の背面における左側の位置において、電動モータ70の出力軸70Aからその真上に位置する動力分配機構76の入力軸76Aにわたる上下向き姿勢で、電動モータ70の出力軸70Aと動力分配機構76の入力軸76Aとを伝動可能に連結している。
これにより、第2引起装置22及び第3引起装置22にて引き起こされた直後の穀稈の穂先側が、第2引起装置22又は第3引起装置22から離れて不安定になったとしても、第2駆動ユニット72の減速機構75に接触する可能性が低くなる。又、横方向への傾斜角が緩い第2穀稈搬送装置25Bに穀稈を引き渡す第3引起装置22の背部に第2駆動ユニット72の減速機構75が備えられることから、第2引起装置22又は第3引起装置22から対応する第1穀稈搬送装置25A又は第2穀稈搬送装置25Bに受け継がれて搬送される穀稈が、第3引起装置22の背部に備えられた第2駆動ユニット72の減速機構75に接触する可能性が低くなる。
【0067】
図5~6に示すように、第3駆動ユニット73においては、電動モータ70が第4引起装置22及び第5引起装置22の引起領域Aから離れる第4引起装置22の背面における右側の位置に配置されている。これにより、第3駆動ユニット73の減速機構75は、第4引起装置22の背面における右側の位置において、電動モータ70の出力軸70Aからその真上に位置する動力分配機構76の入力軸76Aにわたる上下向き姿勢で、電動モータ70の出力軸70Aと動力分配機構76の入力軸76Aとを伝動可能に連結している。
これにより、第4引起装置22及び第5引起装置22にて引き起こされた直後の穀稈の穂先側が、第4引起装置22又は第5引起装置22から離れて不安定になったとしても、第3駆動ユニット73の減速機構75に接触する可能性が低くなる。又、横方向への傾斜角が緩い第2穀稈搬送装置25Bに穀稈を引き渡す第4引起装置22の背部に第3駆動ユニット73の減速機構75が備えられることから、第4引起装置22又は第5引起装置22から対応する第2穀稈搬送装置25B又は第3穀稈搬送装置25Cに受け継がれて搬送される穀稈が、第4引起装置22の背部に備えられた第3駆動ユニット73の減速機構75に接触する可能性が低くなる。
【0068】
図5~6に示すように、第4駆動ユニット74においては、電動モータ70が第6引起装置22の引起領域Aから離れる第6引起装置22の背面における右側の位置に配置されている。これにより、第4駆動ユニット74の減速機構75は、その伝動方向の上手側となる下部側ほど穀稈搬送ユニット25の第3穀稈搬送装置25Cから離れる左傾斜姿勢で、電動モータ70の出力軸70Aと第6引起装置22の駆動軸22Gとを伝動可能に連結している。
これにより、第6引起装置22にて引き起こされた直後の穀稈の穂先側が、第6引起装置22から離れて不安定になったとしても、第4駆動ユニット71の減速機構75に接触する可能性が低くなる。又、第6引起装置22にて引き起こされた穀稈は、第3穀稈搬送装置25Cに引き継がれて合流部Jに向けて搬送されるのに伴って、第4駆動ユニット74の減速機構75から離れることになる。これにより、第3穀稈搬送装置25Cにて搬送される穀稈が、第6引起装置22に備えられた第4駆動ユニット74の減速機構75に接触する可能性が低くなる。
【0069】
その結果、引き起こし後の穀稈が各駆動ユニット71~74の減速機構75に接触することに起因した穀稈の搬送姿勢の乱れを生じ難くすることができ、搬送姿勢の乱れに起因した穀稈搬送ユニット25での穀稈詰まりや脱穀装置3での脱穀不良などの不都合の発生を抑制することができる。
【0070】
図4に示すように、第3フレーム20Cは、左側の前側部材20Caの上部側が、第1穀稈搬送装置25Aの上方において第1穀稈搬送装置25Aの穀稈搬送経路R1に略沿った姿勢で延びている。又、右側の前側部材20Caの上部側が、第3穀稈搬送装置25Cの上方において第3穀稈搬送装置25Cの穀稈搬送経路R3に略沿った姿勢で延びている。これにより、第1穀稈搬送装置25Aの穀稈搬送経路R1又は第3穀稈搬送装置25Cの穀稈搬送経路R3にて上下向きの引き起こし姿勢で搬送される穀稈が、上下方向に長い長稈であっても、その穂先側が左右の前側部材20Caの上部側に引っ掛かることに起因した穀稈の搬送姿勢の乱れを生じ難くすることができる。その結果、その搬送姿勢の乱れに起因した穀稈搬送ユニット25での穀稈詰まりや脱穀装置3での脱穀不良などの不都合の発生を抑制することができる。
【0071】
図6、
図8、
図10に示すように、第1引起装置22の下部は、第1分草杆20Baから第1引起装置22の下部に向けて延びるアーム部20aに、第1引起装置22の前後揺動を許容するヒンジ27を介して連結されている。
図2、
図6~7に示すように、第1引起装置22の上部は、その背面に取り付けられた第1駆動ユニット71が、前述した左側の支持アーム20Dの上端部に固定されたブラケット20Daにボルト連結されている。
【0072】
図9に示すように、第2引起装置22の下部は、前述した左側の前側部材20Caの下部に固定された下部ブラケット20bに、第2引起装置22の前後揺動を許容するヒンジ27を介して連結されている。図示は省略するが、第3引起装置22の下部は、第2引起装置22の下部と同様に下部ブラケット20bにヒンジ27を介して連結されている。
図4、
図6~7に示すように、第2引起装置22及び第3引起装置22の上部は、それらの背面に取り付けられた第2駆動ユニット72が、左側の前側部材20Caの上部側に固定された上部ブラケット20cにボルト連結されている。
【0073】
図示は省略するが、第4引起装置22及び第5引起装置22の下部は、前述した右側の前側部材20Caの下部に固定された下部ブラケット20bに、第4引起装置22の前後揺動を許容するヒンジ27を介して連結されている。
図4、
図6に示すように、第4引起装置22及び第5引起装置22の上部は、それらの背面に取り付けられた第3駆動ユニット73が、右側の前側部材20Caの上部側に固定された上部ブラケット20cにボルト連結されている。
【0074】
図示は省略するが、第6引起装置22の下部は、第7分草杆20Baから第6引起装置22の下部に向けて延びるアーム部20aに、第6引起装置22の前後揺動を許容するヒンジ27を介して連結されている。
図6に示すように、第6引起装置22の上部は、その背面に取り付けられた第4駆動ユニット74が、前述した右側の支持アーム20Eの上端部に固定されたブラケット20Eaにボルト連結されている。
【0075】
上記の構成により、各引起装置22は、それらの上下両端部が刈取フレーム20に支持された安定状態で、同じ後傾斜姿勢で刈取フレーム20に支持されている。又、各引起装置22は、それらの上部側に取り付けられた駆動ユニット71~74の刈取フレーム20に対するボルト連結を解除することにより、それらの下部に備えられたヒンジ27の支軸27Aを支点にして、それらの傾斜姿勢を機体前側に変更することができる。そして、各引起装置22は、
図10に示すように、それらの上部側の駆動ユニット71~74を刈取フレーム20に中継部材82を介して連結することにより、それらの傾斜姿勢を、中継部材82の長さに応じて変更することができる。
【0076】
つまり、各引起装置22は、それらの下部を支点にして前後方向に姿勢変更可能に備えられている。これにより、機体に向けて倒伏する穀稈を刈り取る向かい刈りを行う場合には、
図10に示すように、後傾斜姿勢で備えられている各引起装置22を機体前方側に姿勢変更して各引起装置22の傾斜角を小さくすることで、機体に向けて倒伏する穀稈を各引起装置22にて好適に引き起こすことができる。その結果、向かい刈りによる穀稈の刈り取りが行い易くなる。
又、機体から離れる方向に倒伏する穀稈を刈り取る追い刈りを行う場合には、
図2に示すように、後傾斜姿勢で備えられている各引起装置22を機体後方側に姿勢変更して各引起装置22の傾斜角を大きくすることで、機体から離れる方向に倒伏する穀稈を各引起装置22にて好適に引き起こすことができる。その結果、追い刈りによる穀稈の刈り取りが行い易くなる。
そして、各引起装置22を機体前方側に倒伏させるようにすれば、各引起装置22の後方に配置された各掻込搬送装置24や各穀稈搬送装置25A~25Cなどの前方を開放することができ、各掻込搬送装置24や各穀稈搬送装置25A~25Cなどに詰まった穀稈を取り除くなどのメンテナンスが行い易くなる。
【0077】
なお、各引起装置22の姿勢変更に関しては、
図11~13に示すように、各引起装置22の上部側に取り付けられた駆動ユニット71~74と刈取フレーム20との間に、各引起装置22の姿勢変更を可能にするリンク式の姿勢変更機構90を備えるようにしてもよい。
この姿勢変更機構90の構成について詳述すると、この姿勢変更機構90においては、各駆動ユニット71~74に固定された第1ブラケット91と、刈取フレーム20に固定された第2ブラケット92とが、屈伸可能なリンク機構93を介して連結されている。第1ブラケット91には、連結アーム94が上下揺動可能に取り付けられており、この連結アーム94の遊端側に2つの連結孔94A,94Bが形成されている。第2ブラケット92には、連結アーム94の各連結孔94A,94Bを利用したノブ付きボルト95による連結アーム94の連結を可能にする雌ネジ部92Aが備えられている。
この構成により、上記の姿勢変更機構90を備えた場合には、工具を用いることなく、各引起装置22の後傾斜角を2段階で調整することができる。
【0078】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
なお、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0079】
(1)多条刈りコンバインの構成は種々の変更が可能である。
例えば、多条刈りコンバインは、稲などの禾穀類のみを収穫対象とするもの、そばなどの擬禾穀類のみを収穫対象とするもの、大豆などの菽穀類のみを収穫対象とするもの、などであってもよい。
例えば、多条刈りコンバインは、左右のクローラ14に代えて、左右の前輪と左右の後輪とを備えるホイール仕様に構成されていてもよい。
例えば、多条刈りコンバインは、左右のクローラ14に代えて、左右の前輪と左右のクローラとを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、多条刈りコンバインは、エンジン11の代わりに電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、多条刈りコンバインは、エンジン11と電動モータとを備えるハイブリッド仕様に構成されていてもよい。
例えば、多条刈りコンバインは、電動式のリフトシリンダなどによって刈取搬送部2を昇降駆動する構成であってもよい。
例えば、多条刈りコンバインは、自動走行システムを備えて自動走行可能に構成されていてもよい。
【0080】
(2)電動モータ70は、全ての引起装置22の背部における引起領域Aから離れた左右一方側の位置に配置されていてもよい。
【0081】
(3)
図14に示すように、5条刈り用の刈取搬送部2においては、第1引起装置22の背部における引起領域Aから離れた左側の位置に電動モータ70が配置されている。又、第2引起装置22と第3引起装置22とが、引起領域Aを挟まずに左右に隣接して配置される第1引起装置対P1となり、この第1引起装置対P1においては、第1引起装置対P1からの穀稈を搬送する第1穀稈搬送装置25Aと第2穀稈搬送装置25Bのうちの横方向への傾斜角が緩い穀稈搬送経路R2を有する第2穀稈搬送装置25Bに穀稈を引き渡す第3引起装置22に電動モータ70が備えられている。更に、第4引起装置22と第5引起装置22とが、互いの引起領域Aを挟んで左右に隣接して配置される第2引起装置対P2となり、この第2引起装置対P2と第2引起装置対P2の第4引起装置22と引起領域Aを挟んで左側に隣接して配置される第3引起装置22とが引起装置セットSとなる。そして、この引起装置セットSにおいては、引起装置セットSからの穀稈を搬送する第2穀稈搬送装置25Bと第3穀稈搬送装置25Cのうち、横方向への傾斜角がきつい穀稈搬送経路R3を有する第3穀稈搬送装置25Cに第2引起装置対P2にて引き起こされた穀稈が引き継がれ、横方向への傾斜角が緩い穀稈搬送経路R2を有する第2穀稈搬送装置25Bに第3引起装置22にて引き起こされた穀稈が引き継がれている。
【0082】
上記の構成により、各引起装置22を専用の電動モータ70で駆動する場合に比較して、電動モータ70の装備数量を少なくすることができる。
又、第1引起装置対P1を単一の電動モータ70で駆動することにより、動力分配機構76を、引起領域Aを跨ぐことなく左右の引起装置22に掛け渡すことができ、これにより、引起領域Aにおいて引起装置22にて引き起こされる穀稈が動力分配機構76に接触することに起因した引き起こし不良の発生を回避することができる。
つまり、電動モータ70の装備数量を削減しながらも、各引起装置22による穀稈の引き起こしを良好に行うことができ、これにより、引き起こし不良に起因した穀稈の刈り取り不良や搬送不良などの不都合の発生を回避することができる。
【0083】
又、上記の構成により、各引起装置22にて引き起こされた直後の穀稈の穂先側が、引起装置22から離れて不安定になったとしても、引起領域Aから離れて配置された電動モータ70に接触する可能性が低くなる。
そして、刈取搬送部2の左右両端部に配置される第1引起装置22及び第5引起装置22においては、それらの引起装置22にて引き起こされた穀稈は、第1穀稈搬送装置25A又は第3穀稈搬送装置25Cに引き継がれて合流部Jに向けて搬送されるのに伴って、第1引起装置22及び第5引起装置22の電動モータ70から離れることになる。これにより、第1穀稈搬送装置25A及び第3穀稈搬送装置25Cにて搬送される穀稈が、左右両端部の第1引起装置22及び第5引起装置22に備えられた電動モータ70に接触する可能性が低くなる。
更に、第1引起装置対P1においては、穀稈搬送経路R2の横方向への傾斜角が緩い第2穀稈搬送装置25Bに穀稈を引き渡す第3引起装置22の背部に電動モータ70が備えられることから、第1引起装置対P1から対応する穀稈搬送装置25A,25Bに受け継がれて搬送される穀稈が、第1引起装置対P1に備えられた電動モータ70に接触する可能性が低くなる。
その上、引起装置セットSにおいては、第2引起装置対P2にて引き起こされた穀稈が穀稈搬送経路R3の傾斜角がきつい第3穀稈搬送装置25Cに引き継がれることで、第3穀稈搬送装置25Cにて搬送される穀稈が、第2引起装置対P2の各電動モータ70に接触する可能性を低くしている。又、第3引起装置22にて引き起こされた穀稈が穀稈搬送経路R2の傾斜角が緩い第2穀稈搬送装置25Bに引き継がれることで、第2穀稈搬送装置25Bにて搬送される穀稈が、第3引起装置22とこれに隣接する第4引起装置22とに備えられた各電動モータ70に接触する可能性を低くしている。
【0084】
その結果、5条刈り用の刈取搬送部2においても、電動モータ70の装備数量を削減しながら、各引起装置22が電動モータ70で駆動される引起装置22の電動化を図ることができる。又、引き起こし後の穀稈が電動モータ70に接触することに起因した穀稈の搬送姿勢の乱れを生じ難くすることができ、搬送姿勢の乱れに起因した穀稈搬送ユニット25での穀稈詰まりや脱穀装置3での脱穀不良などの不都合の発生を抑制することができる。
【0085】
(4)
図15に示すように、4条刈り用の刈取搬送部2においては、第1引起装置22の背部における引起領域Aから離れた左側の位置に電動モータ70が配置されている。又、第2引起装置22と第3引起装置22とが前述した第1引起装置対P1となり、この第1引起装置対P1においては、第1引起装置対P1からの穀稈を搬送する第1穀稈搬送装置25Aと第2穀稈搬送装置25Bのうちの横方向への傾斜角が緩い穀稈搬送経路R1を有する第1穀稈搬送装置25Aに穀稈を引き渡す第2引起装置22に電動モータ70が備えられている。更に、第4引起装置22の背部における引起領域Aから離れた右側の位置に電動モータ70が配置されている。
【0086】
上記の構成により、各引起装置22を専用の電動モータ70で駆動する場合に比較して、電動モータ70の装備数量を少なくすることができる。
又、第1引起装置対P1を単一の電動モータ70で駆動することにより、動力分配機構76を、引起領域Aを跨ぐことなく左右の引起装置22に掛け渡すことができ、これにより、引起領域Aにおいて引起装置22にて引き起こされる穀稈が動力分配機構76に接触することに起因した引き起こし不良の発生を回避することができる。
つまり、電動モータ70の装備数量を削減しながらも、各引起装置22による穀稈の引き起こしを良好に行うことができ、これにより、引き起こし不良に起因した穀稈の刈り取り不良や搬送不良などの不都合の発生を回避することができる。
【0087】
又、上記の構成により、各引起装置22にて引き起こされた直後の穀稈の穂先側が、引起装置22から離れて不安定になったとしても、引起領域Aから離れて配置された電動モータ70に接触する可能性が低くなる。
そして、刈取搬送部2の左右両端部に配置される第1引起装置22及び第4引起装置22においては、それらの引起装置22にて引き起こされた穀稈は、第1穀稈搬送装置25A又は第2穀稈搬送装置25Bに引き継がれて合流部Jに向けて搬送されるのに伴って、第1引起装置22及び第4引起装置22の電動モータ70から離れることになる。これにより、第1穀稈搬送装置25A及び第2穀稈搬送装置25Bにて搬送される穀稈が、左右両端部の第1引起装置22及び第4引起装置22に備えられた電動モータ70に接触する可能性が低くなる。
更に、第1引起装置対P1においては、穀稈搬送経路R1の横方向への傾斜角が緩い第1穀稈搬送装置25Aに穀稈を引き渡す第2引起装置22の背部に電動モータ70が備えられることから、第1引起装置対P1から対応する穀稈搬送装置25A,25Bに受け継がれて搬送される穀稈が、第1引起装置対P1に備えられた電動モータ70に接触する可能性が低くなる。
【0088】
その結果、4条刈り用の刈取搬送部2においても、電動モータ70の装備数量を削減しながら、各引起装置22が電動モータ70で駆動される引起装置22の電動化を図ることができる。又、引き起こし後の穀稈が電動モータ70に接触することに起因した穀稈の搬送姿勢の乱れを生じ難くすることができ、搬送姿勢の乱れに起因した穀稈搬送ユニット25での穀稈詰まりや脱穀装置3での脱穀不良などの不都合の発生を抑制することができる。
【0089】
(5)
図16に示すように、3条刈り用の刈取搬送部2においては、各引起装置22の背部における引起領域Aから離れた左右一方側の位置に電動モータ70が配置されている。又、第2引起装置22と第3引起装置22とが前述した第2引起装置対P2となり、この第2引起装置対P2と第2引起装置対P2の第2引起装置22と引起領域Aを挟んで左側に隣接して配置される第1引起装置22とが引起装置セットSとなる。そして、この引起装置セットSにおいては、引起装置セットSからの穀稈を搬送する第1穀稈搬送装置25Aと第2穀稈搬送装置25Bのうち、横方向への傾斜角がきつい穀稈搬送経路R2を有する第2穀稈搬送装置25Bに第2引起装置対P2にて引き起こされた穀稈が引き継がれ、横方向への傾斜角が緩い穀稈搬送経路R1を有する第1穀稈搬送装置25Aに第1引起装置22にて引き起こされた穀稈が引き継がれている。
【0090】
上記の構成により、各引起装置22を専用の電動モータ70で駆動することができる。
又、各引起装置22にて引き起こされた直後の穀稈の穂先側が、引起装置22から離れて不安定になったとしても、引起領域Aから離れて配置された電動モータ70に接触する可能性が低くなる。
そして、刈取搬送部2の左右両端部に配置される第1引起装置22及び第3引起装置22においては、それらの引起装置22にて引き起こされた穀稈は、第1穀稈搬送装置25A又は第2穀稈搬送装置25Bに引き継がれて合流部Jに向けて搬送されるのに伴って、第1引起装置22及び第3引起装置22の電動モータ70から離れることになる。これにより、第1穀稈搬送装置25A及び第2穀稈搬送装置25Cにて搬送される穀稈が、左右両端部の第1引起装置22及び第3引起装置22に備えられた電動モータ70に接触する可能性が低くなる。
更に、引起装置セットSにおいては、第2引起装置対P2にて引き起こされた穀稈が穀稈搬送経路R2の傾斜角がきつい第2穀稈搬送装置25Bに引き継がれることで、第2穀稈搬送装置25Bにて搬送される穀稈が、第2引起装置対P2の各電動モータ70に接触する可能性を低くしている。又、第3引起装置22にて引き起こされた穀稈が穀稈搬送経路R1の傾斜角が緩い第1穀稈搬送装置25Aに引き継がれることで、第1穀稈搬送装置25Aにて搬送される穀稈が、第1引起装置22とこれに隣接する第2引起装置22とに備えられた各電動モータ70に接触する可能性を低くしている。
【0091】
その結果、3条刈り用の刈取搬送部2においても、各引起装置22が電動モータ70で駆動される引起装置22の電動化を図ることができる。又、引き起こし後の穀稈が電動モータ70に接触することに起因した穀稈の搬送姿勢の乱れを生じ難くすることができ、搬送姿勢の乱れに起因した穀稈搬送ユニット25での穀稈詰まりや脱穀装置3での脱穀不良などの不都合の発生を抑制することができる。
【0092】
(6)
図17に示すように、7条刈り用の刈取搬送部2においては、第1引起装置22の背部における引起領域Aから離れた左側の位置に電動モータ70が配置されている。又、第2引起装置22と第3引起装置22、及び、第4引起装置22と第5引起装置22が前述した第1引起装置対P1となる。そして、左側の第1引起装置対P1においては、この第1引起装置対P1からの穀稈を搬送する第1穀稈搬送装置25Aと左側の第2穀稈搬送装置25B1のうち、横方向への傾斜角が緩い穀稈搬送経路R2aを有する左側の第2穀稈搬送装置25B1に穀稈を引き渡す第3引起装置22に電動モータ70が備えられている。右側の第1引起装置対P1においては、この第1引起装置対P1からの穀稈を搬送する右側の第2穀稈搬送装置25B2と第3穀稈搬送装置25Cのうち、横方向への傾斜角が緩い穀稈搬送経路R2bを有する右側の第2穀稈搬送装置25B2に穀稈を引き渡す第引起装置22に電動モータ70が備えられている。更に、第6引起装置22と第7引起装置22とが前述した第2引起装置対P2となり、この第2引起装置対P2と第2引起装置対P2の第6引起装置22と引起領域Aを挟んで左側に隣接して配置される第5引起装置22とが引起装置セットSとなる。そして、この引起装置セットSにおいては、引起装置セットSからの穀稈を搬送する右側の第2穀稈搬送装置25B2と第3穀稈搬送装置25Cのうち、横方向への傾斜角がきつい穀稈搬送経路R3を有する第3穀稈搬送装置25Cに第2引起装置対P2にて引き起こされた穀稈が引き継がれ、横方向への傾斜角が緩い穀稈搬送経路R2bを有する右側の第2穀稈搬送装置25B2に第5引起装置22にて引き起こされた穀稈が引き継がれている。
【0093】
上記の構成により、各引起装置22を専用の電動モータ70で駆動する場合に比較して、電動モータ70の装備数量を少なくすることができる。
又、各第1引起装置対P1を単一の電動モータ70で駆動することにより、動力分配機構76を、引起領域Aを跨ぐことなく左右の引起装置22に掛け渡すことができ、これにより、引起領域Aにおいて引起装置22にて引き起こされる穀稈が動力分配機構76に接触することに起因した引き起こし不良の発生を回避することができる。
つまり、電動モータ70の装備数量を削減しながらも、各引起装置22による穀稈の引き起こしを良好に行うことができ、これにより、引き起こし不良に起因した穀稈の刈り取り不良や搬送不良などの不都合の発生を回避することができる。
【0094】
又、上記の構成により、各引起装置22にて引き起こされた直後の穀稈の穂先側が、引起装置22から離れて不安定になったとしても、引起領域Aから離れて配置された電動モータ70に接触する可能性が低くなる。
そして、刈取搬送部2の左右両端部に配置される第1引起装置22及び第7引起装置22においては、それらの引起装置22にて引き起こされた穀稈は、第1穀稈搬送装置25A又は第3穀稈搬送装置25Cに引き継がれて合流部Jに向けて搬送されるのに伴って、第1引起装置22及び第7引起装置22の電動モータ70から離れることになる。これにより、第1穀稈搬送装置25A及び第3穀稈搬送装置25Cにて搬送される穀稈が、左右両端部の第1引起装置22及び第7引起装置22に備えられた電動モータ70に接触する可能性が低くなる。
更に、各第1引起装置対P1においては、穀稈搬送経路R2a,R2bの横方向への傾斜角が緩い左側の第2穀稈搬送装置25B1又は右側の第2穀稈搬送装置25B2に穀稈を引き渡す第3引起装置22又は第5引起装置22の背部に電動モータ70が備えられることから、各第1引起装置対P1から対応する穀稈搬送装置25A,25B1,25B2に受け継がれて搬送される穀稈が、第1引起装置対P1に備えられた電動モータ70に接触する可能性が低くなる。
その上、引起装置セットSにおいては、第2引起装置対P2にて引き起こされた穀稈が穀稈搬送経路R3の傾斜角がきつい第3穀稈搬送装置25Cに引き継がれることで、第3穀稈搬送装置25Cにて搬送される穀稈が、第2引起装置対P2の各電動モータ70に接触する可能性を低くしている。又、第5引起装置22にて引き起こされた穀稈が穀稈搬送経路R2bの傾斜角が緩い右側の第2穀稈搬送装置25B2に引き継がれることで、右側の第2穀稈搬送装置25B2にて搬送される穀稈が、第6引起装置22とこれに隣接する第5引起装置22とに備えられた各電動モータ70に接触する可能性を低くしている。
【0095】
その結果、7条刈り用の刈取搬送部2においても、電動モータ70の装備数量を削減しながら、各引起装置22が電動モータ70で駆動される引起装置22の電動化を図ることができる。又、引き起こし後の穀稈が電動モータ70に接触することに起因した穀稈の搬送姿勢の乱れを生じ難くすることができ、搬送姿勢の乱れに起因した穀稈搬送ユニット25での穀稈詰まりや脱穀装置3での脱穀不良などの不都合の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0096】
22 引起装置
22D 引起タイン
22G 駆動軸
23 刈取装置
25A 第1穀稈搬送装置
25B 第2穀稈搬送装置
25C 第3穀稈搬送装置
70 電動モータ
75 減速機構
76 動力分配機構
A 引起領域
J 合流部
P1 第1引起装置対
P2 第2引起装置対
R1 穀稈搬送経路
R2 穀稈搬送経路
R3 穀稈搬送経路
S 引起装置セット