(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】周辺分布を使用した多次元分光NMRおよびMRI
(51)【国際特許分類】
G01N 24/08 20060101AFI20220414BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20220414BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20220414BHJP
G01N 24/12 20060101ALI20220414BHJP
G01R 33/561 20060101ALI20220414BHJP
G01R 33/50 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
G01N24/08 510D
A61B5/055 311
A61B5/055 382
G01N24/00 530A
G01N24/12 510C
G01N24/00 530G
G01R33/561
G01N24/08 510L
G01R33/50
(21)【出願番号】P 2019506625
(86)(22)【出願日】2017-08-11
(86)【国際出願番号】 US2017046615
(87)【国際公開番号】W WO2018031942
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-20
(32)【優先日】2016-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バッサー, ピーター ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミニ, ダン エイチ.
【審査官】佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/179049(WO,A1)
【文献】特開2007-132752(JP,A)
【文献】特開2010-249746(JP,A)
【文献】Brian L. Burns et al.,Maximum Entropy Reconstruction of Correlated Spectroscopy of Human Breast In Vivo,Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med.,20(2012),2012年,Page 2272
【文献】J. Mitchell et al., ,Emulation of petroleum well-logging D-T2 correlations on a standard bentchtop spectrometer ,Journal of Magnetic Resonance ,2011年,212(2011),Pages 394-401,doi: 10.1016/j.jmr.2011.07.020
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC
A61B 5/055
G01N 1/00-G01N 1/44、
G01N 22/00-G01N 22/04、
G01N 24/00-G01N 24/14、
G01N 35/00-G01N 37/00、
G01R 33/00-G01R 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、前記方法は、
取得された磁気共鳴(MR)試料データが複数の試料特性に関連付けられるように、複数のMR取得パラメータを変動させることによって、前記MR試料データの選択された組を取得することと、
前記取得されたMR試料データに基づいて、前記複数の試料特性に関連付けられた周辺分布を決定することであって、前記周辺分布は、前記MR取得パラメータの選択された組み合わせに依存し、前記周辺分布は、多次元スペクトルを再構成するためのソフトまたはハード制約として使用される、ことと
を含む、方法。
【請求項2】
前記磁気共鳴(MR)試料データの選択された組は、前記取得されたMR試料データが第1の試料特性および第2の試料特性に関連付けられるように、少なくとも第1のMR取得パラメータ
、第2のMR取得パラメータを
それぞれ第1
の範囲、第2の範囲にわたって
変動させることによって取得され、
前記周辺分布を決定することは、前記第1および第2の試料特性に関連付けられた第1の周辺分布および第2の周辺分布を決定することを含み、前記第1および第2の周辺分布は、前記第1および第2のMR取得パラメータの選択された組み合わせに依存し、
前記第1の周辺分布および前記第2の周辺分布は、前記ソフトまたはハード制約として使用され、前記多次元スペクトルは、2次元スペクトルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の周辺分布
、前記第2の周辺分布は、それぞれ、前記第1のMR取得パラメータ
、前記第2のMR取得パラメータに関連付けられた1次元周辺分布である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のMR取得パラメータおよび前記第2のMR取得パラメータの両方に関連付けられた2次元試料データ組を取得することをさらに含み、前記2次元スペクトルは、前記2次元データ組を使用して再構成される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の試料特性は、拡散率(D)であり、前記第2の試料特性は、スピン格子緩和時間(T
1)である、請求項2-4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1のMR取得パラメータは、b値であり、前記第2のMR取得パラメータは、反転時間τである、請求項2-5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第1および第2の試料特性は、拡散率(D)、スピン格子緩和時間(T
1)、スピンスピン緩和時間(T
2)、またはそれらの組み合わせを備えている、請求項2-6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1および第2の1次元周辺分布は、ソフト制約として使用される、請求項2-7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の1次元周辺分布は、ハード制約として使用される、請求項2-7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1のMR取得パラメータおよび前記第2のMR取得パラメータは、独立している、請求項2-9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第1および第2の周辺分布は、
【化1】
正則化を使用して決定される、請求項2-10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1および第2の周辺分布を決定するために取得されるべき前記MRデータの組を選択することをさらに含む、請求項2-10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記MR試料データの選択された組は、MRデータの第1の組であり、前記方法は、
MRデータの選択された第2の組を取得することと、
前記MRデータの第1の選択された組および前記MRデータの第2の選択された組に基づいて、前記第1および第2の周辺分布を決定することと
をさらに含む、請求項2-12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記MR試料データは、磁気共鳴映像(MRI)データである、請求項2-13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記MR試料データは、磁気核磁気共鳴(NMR)データである、請求項2-13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記MR試料データは、非生物学的試料から得られる、請求項2-15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記MR試料データは、生物学的試料から得られる、請求項2-15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記MR試料データは、ヒト対象から得られる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1-18のいずれかに記載の方法を実施するためのコンピュータ実行可能命令を備えている少なくと
も1つのコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項20】
磁気共鳴(MR)システムであって、前記MRシステムは、
MRデータ取得システムと、
前記MRデータ取得システムに結合されているMRデータプロセッサと
を備え、
前記MRデータプロセッサは、複数の周辺分布を制約として使用して試料に関連付けられた多次元MRスペクトルを再構成するように動作可能である、MRシステム。
【請求項21】
前記多次元MRスペクトルは、2次元MRスペクトルであり、前記MRデータプロセッサは、第1および第2の周辺分布を制約として使用して前記試料に関連付けられた2次元MRスペクトルを再構成するように動作可能である、請求項20に記載のMRシステム。
【請求項22】
前記MRデータ取得システムは、第1および第2のMR取得パラメータに関連付けられた印加されたMR信号に基づいてMRデータを取得するように動作可能である、請求項21に記載のMRシステム。
【請求項23】
前記第1および第2のMR取得パラメータは、第1の試料特性および第2の試料特性に関連付けられたMR信号変動を生じさせるように動作可能である、
請求項22に記載のMRシステム。
【請求項24】
前記MRデータ取得システムは、少なくとも
、静磁場を生じさせるように据え付けられた磁石と試料スピン回転を誘発するように動作可能である高周波パルス発生器とを含む、請求項21-23のいずれかに記載のMRシステム。
【請求項25】
前記第1の試料特性は、拡散率(D)であり、前記第2の試料特性は、スピン格子緩和時間(T
1)である、請求項
23に記載のMRシステム。
【請求項26】
前記第1のMR取得パラメータは、b値であり、前記第2のMR取得パラメータは、反転時間(τ)である、請求項
22に記載のMRシステム。
【請求項27】
前記第1および第2の試料特性は、拡散率(D)、スピン格子緩和時間(T
1)、スピンスピン緩和時間(T
2)、またはそれらの組み合わせを備えている、請求項
23に記載のMRシステム。
【請求項28】
前記MRデータプロセッサは、
【化1】
正則化を使用して前記第1および第2の周辺分布を決定するように動作可能である、請求項21-27のいずれかに記載のMRシステム。
【請求項29】
前記MRデータ取得システムは、磁気共鳴映像(MRI)システムである、請求項20-28のいずれかに記載の
MRシステム。
【請求項30】
前記MRデータ取得システムは、核磁気共鳴(NMR)システムである、請求項20-28のいずれかに記載の
MRシステム。
【請求項31】
試料は、生物学的試料である、請求項20-30のいずれかに記載の
MRシステム。
【請求項32】
試料は、非生物学的試料である、請求項20-30のいずれかに記載の
MRシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国仮出願第62/373,497号(2016年8月11日出願)の利益を主張し、上記出願は、その全体が参照により本明細書に引用される。
【0002】
(分野)
本開示は、核磁気共鳴および磁気共鳴映像に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(要約)
核磁気共鳴(NMR)および磁気共鳴映像(MRI)の臨床的用途における多次元(例えば、2次元)の緩和スペクトルを測定することは、多数の用途を有する。NMRおよびMRIの方法ならびにシステムは、本明細書で「MR」方法およびシステムと集合的に称される。主な障害は、大容量データ組を処理するためにかなりの計算資源と、これらのデータ組を得るために要求される長い取得時間との必要性であった。典型的な方法は、解を安定させるために大容量のデータを要求する不良条件問題、第1種のフレドホルム積分の反転に基づく。
【0004】
本開示では、新規のMR方法およびアプローチが、開示され、それは、スペクトルの1次元予測または周辺分布からの先験的情報を使用して、取得を加速し、そのような2次元スペクトルの再構成を改良し得る。開示されるアプローチでは、これらの1次元周辺分布は、2次元スペクトルが再構成されるとき、強力な制約を提供し、典型的には、従来の2次元アプローチよりも少ない桁のデータを要求する。開示されるアプローチは、便宜上、周辺分布制約付き最適化(MADCO)法と称され得る。ある例では、代表的なMADCO法は、2次元のD-T1空間内に3つの異なるピークを有するポリビニルピロリドン/水のファントムを参照して説明される。この新たなアプローチの実験パラメータに対する安定性、感度、および正確度が、完全なデータ組を連続的にサブサンプリングすることによって従来の方法と比較される。従来の制約されていない方法は、不十分に性能を発揮していたが、新たな方法は、非常に正確かつ堅牢であり、僅かなデータを要求するのみである。開示される技術のいくつかの側面は、より広く適用されることもでき、種々の2次元のMRI実験(D-T2、T1-T2、D-D等)と共に使用され、初めて、これらを生物学的、前臨床的、および臨床的な用途のために潜在的に実行可能にし得る。
【0005】
いくつかの例では、方法は、取得された磁気共鳴(MR)試料データが、第1の試料特性および第2の試料特性に関連付けられるように、少なくとも第1のMR取得パラメータおよび第2のMR取得パラメータを第1および第2の範囲にわたってそれぞれ変動させることによって、MR試料データの選択された組を取得することを含む。取得されたMR試料データに基づいて、第1および第2の試料特性に関連付けられた第1の周辺分布および第2の周辺分布が、決定され、第1および第2の周辺分布は、第1および第2のMR取得パラメータの選択された組み合わせに依存する。試料に関連付けられた2次元スペクトルが、第1および第2の周辺分布を制約として使用して再構成される。いくつかの例では、第1の周辺分布および第2の周辺分布は、それぞれ、第1のMR取得パラメータおよび第2のMR取得パラメータに関連付けられた1次元周辺分布である。
【0006】
他の例では、第1の試料特性は、ω1であり、第2の試料特性は、ω2である。変数ωiは、スピン-格子緩和時間(T1)、スピン-スピン緩和時間(T2)、横緩和時間(T2*)、拡散率(D)、磁化移動(MT)、またはそれらの組み合わせであり得る。なおもさらなる例では、第1のMR取得パラメータは、β1であり、第2のMR取得パラメータは、β2である。測定されるサンプル特性ωiに応じて、取得パラメータβiは、反転時間τ1、エコー時間τ2、拡散加重b値、混合時間τmであり得る。
【0007】
他の例では、第1のMR取得パラメータおよび第2のMR取得パラメータは、独立している。他の実施形態では、第1および第2の周辺分布は、
【化1】
または
【化2】
正則化を使用して決定される。さらに代表的な例では、取得されるべきMRデータの組が、第1および第2の周辺分布を決定するように選択される。さらに他の実施形態では、MR試料データの選択された組は、MRデータの第1の組であり、MRデータの選択された第2の組が、取得され、第1および第2の周辺分布が、MRデータの第1の選択された組およびMRデータの第2の選択された組に基づいて決定される。いくつかの例では、少なくとの1つのコンピュータ読み取り可能な媒体が、そのような方法を実施するためのコンピュータ実行可能命令を記憶している。
【0008】
他の例では、MRシステムは、MRデータ取得システムと、MRデータ取得システムに結合されたMRデータプロセッサとを備えている。MRデータプロセッサは、第1および第2の周辺分布を制約として使用して試料に関連付けられた2次元MRスペクトルを再構成するように動作可能である。いくつかの例では、MRデータ取得システムは、第1および第2のMR取得パラメータに関連付けられた印加されたMR信号に基づいてMRデータを取得するように動作可能である。代表的な実施形態では、第1および第2のMR取得パラメータは、第1の試料特性および第2の試料特性に関連付けられたMR信号変動を生じさせるように動作可能である。他の実施形態では、MRデータ取得システムは、少なくとも、静磁場を生じさせるように据え付けられた磁石と、試料スピン回転を誘発するように動作可能である高周波パルス発生器とを含む。典型的な例では、MRデータプロセッサは、
【化1】
または
【化2】
正則化を使用して第1および第2の周辺分布を決定するように動作可能である。
【0009】
より一般的には、開示される例は、NMRからMRI例および用途に拡張されることができ、MRI例および用途において、NMR実験は、空間位置特定またはMRシーケンス撮像と組み合わせられ、この情報がボクセル毎に得られることを可能にし得る。
【0010】
本開示技術の前述および他の特徴ならびに利点は、添付図面を参照して述べる以下の詳細説明から明白となるであろう。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
方法であって、前記方法は、
取得された磁気共鳴(MR)試料データが第1の試料特性および第2の試料特性に関連付けられるように、少なくとも第1のMR取得パラメータおよび第2のMR取得パラメータを第1および第2の範囲にわたってそれぞれ変動させることによって、前記MR試料データの選択された組を取得することと、
前記取得されたMR試料データに基づいて、前記第1および第2の試料特性に関連付けられた第1の周辺分布および第2の周辺分布を決定することであって、前記第1および第2の周辺分布は、前記第1および第2のMR取得パラメータの選択された組み合わせに依存する、ことと、
前記第1および第2の周辺分布を制約として使用して、前記試料に関連付けられた2次元スペクトルを再構成することと
を含む、方法。
(項目2)
前記第1の周辺分布および前記第2の周辺分布は、それぞれ、前記第1のMR取得パラメータおよび前記第2のMR取得パラメータに関連付けられた1次元周辺分布である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第1のMR取得パラメータおよび前記第2のMR取得パラメータの両方に関連付けられた2次元試料データ組を取得することをさらに含み、前記2次元スペクトルは、前記2次元データ組を使用して再構成される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記第1の試料特性は、拡散率(D)であり、前記第2の試料特性は、スピン格子緩和時間(T
1
)である、項目1-3のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記第1のMR取得パラメータは、b値であり、前記第2のMR取得パラメータは、反転時間τである、項目1-4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記第1および第2の試料特性は、拡散率(D)、スピン格子緩和時間(T
1
)、スピンスピン緩和時間(T
2
)、またはそれらの組み合わせを備えている、項目1-5のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記第1および第2の1次元周辺分布は、ソフト制約として使用される、項目1-6のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記第1および第2の1次元周辺分布は、ハード制約として使用される、項目1-6のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記第1のMR取得パラメータおよび前記第2のMR取得パラメータは、独立している、項目1-8のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記第1および第2の周辺分布は、
【化1】
正則化を使用して決定される、項目1-9のいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記第1および第2の周辺分布を決定するために取得されるべき前記MRデータの組を選択することをさらに含む、項目1-10のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記MR試料データの選択された組は、MRデータの第1の組であり、前記方法は、
MRデータの選択された第2の組を取得することと、
前記MRデータの第1の選択された組および前記MRデータの第2の選択された組に基づいて、前記第1および第2の周辺分布を決定することと
をさらに含む、項目1-11のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記MR試料データは、磁気共鳴映像(MRI)データである、項目1-12のいずれかに記載の方法。
(項目14)
前記MR試料データは、磁気核磁気共鳴(NMR)データである、項目1-12のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記MR試料データは、非生物学的試料から得られる、項目1-14のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記MR試料データは、生物学的試料から得られる、項目1-14のいずれかに記載の方法。
(項目17)
前記MR試料データは、ヒト対象から得られる、項目16に記載の方法。
(項目18)
項目1-17のいずれかに記載の方法を実施するためのコンピュータ実行可能命令を備えている少なくとの1つのコンピュータ読み取り可能な媒体。
(項目19)
磁気共鳴(MR)システムであって、前記システムは、
MRデータ取得システムと、
前記MRデータ取得システムに結合されているMRデータプロセッサと
を備え、
前記MRデータプロセッサは、第1および第2の周辺分布を制約として使用して試料に関連付けられた2次元MRスペクトルを再構成するように動作可能である、システム。
(項目20)
前記MRデータ取得システムは、第1および第2のMR取得パラメータに関連付けられた印加されたMR信号に基づいてMRデータを取得するように動作可能である、項目19に記載のMRシステム。
(項目21)
前記第1および第2のMR取得パラメータは、第1の試料特性および第2の試料特性に関連付けられたMR信号変動を生じさせるように動作可能である、項目19または項目20に記載のMRシステム。
(項目22)
前記MRデータ取得システムは、少なくとも静磁場を生じさせるように据え付けられた磁石と試料スピン回転を誘発するように動作可能である高周波パルス発生器とを含む、項目19-21のいずれかに記載のMRシステム。
(項目23)
前記第1の試料特性は、拡散率(D)であり、前記第2の試料特性は、スピン格子緩和時間(T
1
)である、項目19-22のいずれかに記載のMRシステム。
(項目24)
前記第1のMR取得パラメータは、b値であり、前記第2のMR取得パラメータは、反転時間(τ)である、項目19-23のいずれかに記載のMRシステム。
(項目25)
前記第1および第2の試料特性は、拡散率(D)、スピン格子緩和時間(T
1
)、スピンスピン緩和時間(T
2
)、またはそれらの組み合わせを備えている、項目19-24のいずれかに記載のMRシステム。
(項目26)
前記MRデータプロセッサは、
【化1】
正則化を使用して前記第1および第2の周辺分布を決定するように動作可能である、項目19-25のいずれかに記載のMRシステム。
(項目27)
前記MRデータ取得システムは、磁気共鳴映像(MRI)システムである、項目19-26のいずれかに記載の磁気共鳴(MR)システム。
(項目28)
前記MRデータ取得システムは、核磁気共鳴(NMR)システムである、項目19-26のいずれかに記載の磁気共鳴(MR)システム。
(項目29)
試料は、生物学的である、項目19-28のいずれかに記載の磁気共鳴(MR)システム。
(項目30)
試料は、生物学的試料である、項目19-28のいずれかに記載の磁気共鳴(MR)システム。
(項目31)
試料は、非生物学的試料である、項目19-28のいずれかに記載の磁気共鳴(MR)システム。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1Aおよび1Bは、従来のスキーム(1A)と、2次元相関関数F(ω
1、ω
2)を得るために使用される例示的な周辺分布制約付き最適化(MADCO)実験設計スキーム(1B)とを図示する。
【
図2】
図2は、各(T
1,D)サンプルの各々の分析および相対的スピン密度による平均化から得られるグランドトゥルースT
1-D分布を示す。3つのピークが、識別され、参照のために付番され(1、2、3)、それらの値(gmT
1,gmD)は、1(293ms,2.26μ
2/ms)、2(782ms,1.99μ
2/ms)、および3(1596ms,1.24μ
2/ms)であった。
【
図3】
図3A-3Iは、制約されていない従来の方法を伴う再構成を図示する。2つのデータ部分サンプルおよび完全なデータ組が、それぞれ、3A、3B、ならびに3Cの2次元D-T
1分布をもたらした。
図3D-3Iは、グランドトゥルース1次元分布(赤色の空円)で重ねられた1次元予測(青色の塗りつぶし円)を示す。
【
図4】
図4A-4Iは、代表的なMADCO法を用いた再構成を図示する。2つのデータサブサンプリングおよび完全なデータ組が、それぞれ、4A、4B、および4Cの2次元D-T
1分布をもたらした。
図4D-4Iは、グランドトゥルース1次元分布(赤色の空円)で重ねられた1次元予測(青色の塗りつぶし円)を示す。
【
図5】
図5A-5Cは、取得数の関数として、従来の方法(緑色の菱形)およびMADCO法(青色の四角形)を用いて概算値とグランドトゥルース分布との間のJensen差異によって実証された、開示される方法に特有の正確度および安定度を図示する。2次元D-T
1分布、T
1分布、およびD分布の予測の測定された距離が、それぞれ、
図5A、
図5B、および
図5Cに示される。
【
図6】
図6は、完全なデータ組に対して従来の方法を使用した
【化2】
正規化を用いたT
1-D分布を示す。
【
図7】
図7Aおよび7Bは、グランドトゥルース(赤色の空円)と1次元実験からの概算値(青色の塗りつぶし円)との間の比較を示すグラフである。
図7Aは、1次元取得から得られる周辺T
1分布を示し、
図7Bは、1次元取得から得られる周辺D分布を示す。
【
図8】
図8は、例示的な磁気共鳴装置の略図である。
【
図9】
図9は、磁気共鳴データを収集する例示的方法を図示するフローチャートである。
【
図10】
図10は、本明細書で議論されるデータ取得、記憶、分析、および他の動作を実施するための代表的なコンピュータ環境を図示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(序論)
多次元の核磁気共鳴(NMR)実験は、T
1およびT
2等の緩和特性と拡散率D等の物理的パラメータとの間の相関の決定を可能にする。これらの相関は、多くの用途における微細構造関連の水の動態を識別し、特徴付けるために使用されることができる。以下の一般式は、分離可能なカーネルを伴うサンプルパラメータω
1、ω
2に関連付けられた2次元のNMR実験からの受信される信号M(一般的に信号減衰とも称される)を説明する。
【数1】
式中、F(ω
1,ω
2)は、サンプル分布に対応し、Κ
1(β
1,ω
1)およびΚ
2(β
2,ω
2)は、関連付けられたパラメータへの信号依存に関連付けられた、いわゆる、カーネルであり、β
1およびβ
2は、データ取得スキームによって決定される実験パラメータである。式1は、第1種のフレドホルム積分の広いクラスの1つの例である。カーネルΚ
1、Κ
2が、指数形態を有するとき、古典的な不良条件問題である2次元逆ラプラス変換(ILT)の適用が、サンプル分布F(ω
1,ω
2)を得るために要求される。Carr-Purcell-Meiboom-Gill(CPMG)取得を伴う2次元の緩和時間測定実験において使用される最も一般的な2次元ILTアルゴリズムは、受信信号の高密度サンプリングを要求する。このアルゴリズムは、2次元信号を圧縮することによって、有用な情報を喪失することなく反転の効率を大いに改良し、いくつかの基本表現の冗長性を明らかにすることができる。
【0013】
近年、多次元の拡散/緩和実験が非常に関心を集めているが、前臨床的および臨床的な適用は、現在実行不可能である。高磁界3Tおよび7T MRIスキャナでは、単位時間あたりに印加され得る180°パルスの総数が、主に高い比吸収率(SAR)に起因する安全性への懸念によって限定される。したがって、迅速なスピンエコートレイン、多重エコートレイン、またはCPMGパルストレインは、臨床的に適用可能ではなく、要求される大容量データは、長い走査時間に起因して生体内実験では収集することができない。各取得は、CPMGパルストレインなしのD-T1、T1-T2測定であるかどうかにかかわらず、単一の実験データ点のみをもたらすであろう。潜在的に長時間にわたる撮像ブロックが、追加されると、操作時間の短縮化が、主たる難題となる。
【0014】
故に、いくつかの例では、正確な2次元拡散/緩和スペクトル再構成に必要とされる取得数が、実質的に低減される。1つの例示的なアプローチは、離散フレドホルム方程式を反転するために必要とされる取得数を安定させ、低減させるための等式制約として、所望される2次元関数の周辺1次元分布を使用することである。周辺分布制約付き最適化(MADCO)を多次元のNMR実験に適用することによって、2つの緩和/拡散パラメータの2次元相関関数の1次元予測が使用され、F(ω1,ω2)の解空間を大いに制約し得る。
【0015】
1つの例示的な測定および再構成アプローチが、
図1A-1Bに図示される。実験パラメータ空間(β
1,β
2)(
図1A)全体をサンプリングし、2次元分布F(ω
1,ω
2)を推定する代わりに、
図1Bに図示される例示的なMADCOアプローチを使用して、2次元分布が、2次元空間における少数の捕捉で補完されるβ
1軸およびβ
2軸に沿った比較的に高密度のサンプリング(すなわち、1次元データ)を用いて、正確に推測され得る。2次元の再構成は、次いで、典型的には、2つのステップを含む:(1)1次元データからF(ω
1)およびF(ω
2)を推定すること、(2)残っている2次元データからのF(ω
1,ω
2)の推定を制約するためにこれらの1次元スペクトルを使用すること。
【0016】
典型的には、(DおよびT1等の)特定の試料特性の多次元スペクトルを得るために、勾配強度G(すなわち、等しくは、b値)および反転時間τ等の関連付けられるNMR信号取得パラメータが、変動させられ、1次元スペクトルを提供する。いくつかの例では、1次元スペクトルは、NMR取得信号の対応する試料特性への依存を実質的に低減または排除する固定値に設定されたNMR信号取得パラメータの一方もしくは両方を用いて得られる。例えば、以下に議論されるように、勾配強度は、0に設定されるか、またはそうでなければ小さい値にされ得、反転時間は、試料T1値に対して非常に長くあり得る。容易ではないが、試料特性の組み合わせに依存するNMR信号が、関連付けられるパラメータの異なる組み合わせを使用して得られ得る。例えば、Ab+BτおよびAb-Bτ等の取得パラメータの線形に独立な組み合わせ等、b値および反転時間τの異なる組み合わせが、適用され得る(式中、A、Bは、任意の数である)。対応する1次元スペクトルは、次いで、これらの組み合わせられた特性に関連付けられ、多次元スペクトルを制約するために使用されることができる。他の例では、取得されたデータの任意の組が使用され、1次元スペクトルを生じさせる。詳細に議論されないが、より低次の多次元スペクトルが、より高次の多次元スペクトルの決定を制約するために使用されることができる。例えば、1次元スペクトルおよび2次元スペクトルが、3次元スペクトルを制約するために使用されることができる。したがって、n個の試料特性およびm個の試料特性に関連付けられた2つのより低次のスペクトルが、それぞれ、n+m個のスペクトル見出すためにを使用されることができる。
【0017】
開示される方法は、他のタイプの多次元実験にも等しく適用可能であり得るが、都合の良い例証のために、ポリビニルピロリドン(PVP)水溶液ファントムのD-T1測定が、本明細書で説明される。臨床的に適用可能な反復回復法による拡散加重画像パルスシーケンスが、D-T1相関を観察するために使用された。開示されるアプローチおよび従来のアプローチが、実験パラメータへの安定性ならびに感度を決定するために調査され、両方の方法の正確度が、完全なデータ組を部分サンプリングすることにより取得数を徐々に減少させることによって探索された。
【0018】
(サンプル調製およびデータ取得)
ドープ水およびポリビニルピロリドンPVP(Sigma-Aldrich、K値29-32)が、使用され、3つの異なるピークを伴うD-T
1ファントムを作成した。PVPの水溶液は、それらの測定される拡散率が、拡散時間から独立しており、かつ単一のスピンの集団のガウス拡散を示すため、良好な拡散MRファントムを成すことが示された。加えて、増加する体積あたりのPVP加重(w/v)濃度が、拡散率およびT
1の両方と負に互いに関係づけられる。0.18mMおよび0.5mMのガドペンテト酸ジメグルミンを伴う2つの精製水サンプルが、20%w/vのPVP水溶液サンプルとともに調整された。各サンプルに対して別個に測定されるような、緩和時間および拡散率の対応する加重幾何平均(gm)(gmT
1、gmD)が、
図2に示される。各サンプルは、4mmのNMR管内に設置され、これらは、次いで、一緒に15mmのNMR管の中に挿入された。
【0019】
撮像データが、Micro 2.5マイクロイメージングプローブを装備するAVANCE III MRI分光計を伴う7 T Brukerワイドボア垂直磁石上で収集された。MRIデータは、標準的なスピンエコー拡散加重シーケンスの前に印加される断熱180°反転パルスを伴う、反復回復法によるスピンエコー拡散加重エコープラナー撮像(IR-DWI-EPI)シーケンスを用いて取得された。完全な2次元の実験セットは、0~900mT/mの範囲に及ぶ40個の拡散勾配線形ステップ(G)と、100~3,000msの範囲に及ぶ対数時間間隔を伴う37個の反転時間(τ)と、10秒の反転時間を伴う追加の磁化平衡走査とを有していた。1次元実験は、完全な2次元のデータ組の一部であった。1次元のIRデータ組は、G=0である37個の反転時間の全てを含み、1次元の拡散データ組は、τ=10である(合計20個の)奇数の拡散勾配線形ステップの全てを含んだ。他の取得パラメータは、δ=3msおよびΔ=15msの拡散勾配の持続時間および分離であり、0~6,200s/mm2(b=γ2 δ2G2(Δ-δ/3))の範囲に及ぶb値につながる(式中、γは、磁気回転比であり、TE=50msであり、TR=反転時間+10秒である)。64×64および0.2×0.2mmの行列サイズならびに解像度を伴う単一の5mm軸方向の断片が、2つの平均値および4つのセグメントを用いて取得された。完全な2次元の実験における実験的な信号対雑音比(SNR)は、最大700であった。
【0020】
(方法)
D-T
1測定に対して、所与の回復時間に対して、完全に回復されるデータが、データ組から減じられ、それによって、不完全な反転パルスによってもたらされる潜在的なアーチファクトは、解消される。式1(上記)は、T
1およびDのN
T1およびN
Dの対数空間値と、τおよびbのN
τぴょびN
b値とを伴うカーネルK
1(τ,T
1)およびK
2(b,D)を使用することによって、離散化されることができる。
【数2】
式中、F(T
1,n,D
m)は、離散化されたサンプル密度および2次元のカーネルK(τ,b,T
1,D)=K
1(τ,T
1)K
2(b,D)である。式2は、行列の形式で記載され得る。
【数3】
式中、MおよびFは、(N
τN
b)×1および(N
T1N
D)×1のベクトルであり、Kは、(N
τN
b)×(N
T1N
D)の行列である。議論されるように、式3は、不良条件問題を表し、すなわち、Mのわずかな変化が、Fの大きい変動をもたらし得る。そのような不良条件問題を解決するための1つのアプローチは、正則化である。解が平滑であるよう予期される場合、
【化2】
正則化が、適切である。しかしながら、この例では、ファントムは、D-T
1空間内の離散成分を備え、
【化1】
正則化をより好適な選択肢にする。なぜなら、それが、
【化2】
正則化の多くの有益な性質を有するが、まばらなモデルをもたらすからである(下記の「加速される2次元MRI緩和時間測定のための周辺分布制約付き最適化(MADCO)」を参照)。この例で考慮される正規化問題は、以下であった:
【数4】
式中、||・・・||
2および||・・・||
1は、それぞれ、
【化2】
ノルムおよび
【化1】
ノルムであり、正則化パラメータαは、適合誤差χ(α)=||KF
(α)-M||
2を使用するS曲線方法に基づいて選定された。正則化パラメータは、d(log χ)/d(log α)=TOL(TOL=0.1である)であるように決定された。
【0021】
開示されるアプローチは、式4の解を安定させる一方で、要求されるデータ取得数を著しく低減させ(すなわち、N
τおよびN
bを低減させ)正確度を改善させる単純かつ簡潔な方法を提供する。F(T
1,D)は、T
1とDとの接合分布であるので、以下の式によって1次元周辺分布F(T
1)およびF(D)に関連する。
【数5】
【0022】
1次元周辺分布F(T1)およびF(D)は、それぞれ、1次元回復法または拡散実験から別個に推測され、次いで、式4が解決されるとき、等式制約として式5の2つの部分を適用することによってF(T1,D)を見出すために使用され得る。式4が(NτNb)×(NT1ND)カーネルKをN’τ×NT1カーネルK1またはN’b×NDカーネルK2(N’τおよびN’bは、1次元取得の数である)と交換することによって解決される1次元の問題は、それぞれ、NDおよびNT1の倍率で自由パラメータの数を低減させる。
【0023】
N
τ<<N’
τおよびN
b<<N’
bであるように、2次元分布を推定するために要求される2次元実験の数を劇的に低減させるためのMADCOの使用が、ここに示される。実験雑音が不正確なF(T
1)およびF(D)の推定をもたらすと予期されるとき、これらの等式制約が、緩和されるべきである。この場合、制約は、以下の通りである。
【数6】
および
【数7】
式中、σは、無減衰信号によって正則化された雑音(完全な信号減衰の後に決定されるような)の標準偏差(SD)である。標準的な非負制約と同様、式6および7内の不等式制約も、満たされなければならない物理的条件を表し(その軸のうちの1つに関して予測される2次元確率分布の「質量保存の法則」)、同様の様式で適用され得る。開示される例では、N
T1=N
D=50、N’
τ=37、N’
b=20であり、安定性および正確度が定量化されながら、2次元実験(N
τN
b)の数が、7~1,480の範囲内で変動させられた。
【0024】
ファントムを撮像することは、3つの着目領域(ROI)の選択によって、(T
1,D)サンプルの各々の別個の分析を可能にした。完全な2次元のデータ組と1次元の部分組を使用して式6を解決することは、これらのROIからのF
GT(T
1,D)、F
GT(T
1)、およびF
GT(D)(「GT」はグランドトゥルースの略である)の推定を別個にもたらした。単一ピークデータ(すなわち、単一指数)スペクトルを推定することは、良設定問題であり、したがって、これらの分析から得られた1次元分布および2次元分布が、それらの相対スピン密度に従って平均され、グランドトゥルースとして採用された(2次元分布に対する
図2、1次元分布に対する
図6を参照)。性能は、2つの確率分布間の距離の尺度であるJensen差異を算出することによって査定された。Jensen差異d
JDは、0および1によって境界をつけられ、2つの分布QおよびPに対して以下のように定義されるカルバック・ライブラー情報量の対称形である。
【数8】
【0025】
(結果)
MADCOの性能が、19個の対数的に分散された取得における完全なデータ組からの500個の無作為の部分サンプルを使用することによりD-T1分布を推定することによって、決定され、従来の方法と比較された。3つの代表的なデータサンプル、すなわち、64個、157個、1,480個の取得における従来の実験設計(
図1A)を使用した再構成は、それぞれ、
図3A-3Cに示される2次元のD-T1分布をもたらした。
図3D-3Iでは、各2次元分布に対して、1次元予測がグランドトゥルースと重ねられている。
図2のグランドトゥルースと視覚的に比較すると、
図3A-3Iの推定された結果は、2次元予測および1次元予測の両方に対して非常に不正確であり、さらに、完全なデータ組(1,480個の取得)が使用されるときでも不十分な状態である。
【0026】
同一の3つのデータ部分サンプル(この場合、20個と37個の1次元拡散(O)およびIR(T
1)の取得に加えて、7個、100個、および1,423個の2次元の取得、合計、64個、157個、1,480個)におけるMADCO実験設計(
図1B)および処理フレームワークを使用して再構成されたスペクトルが、
図4A-4Iに示される。取得数が25倍に増加するとき、殆どまたは全く差が認められなかった2次元分布(
図4A-4C)から、安定性ならびに正確度は、明白である。T
1およびDの周辺分布は、完全なデータ組を用いるよりも157個の取得において正確であった(
図4Eおよび4H)。この観察は、SNRに増加をもたらすことが既知である不均一な(サブ)サンプリングに起因すると考えられ得る。ピーク(平均および振幅)の正確度を確立する観点から、MADCOは、ほぼ全ての事例において従来の方法を凌ぎ、正規化された平均平方二乗誤差を10%を十分に下回るように首尾一貫して保つ。誤差算出に関するパラメータおよび詳細のより完全なリストが、下記の表1および2に提供される。
【0027】
単一パラメータ(例えば、gmT
1、gmD)の正確度と対照的に、取得数の関数として、再構成された2次元分布全体の正確度を調査することが、より有益である。次元分布の再構成の後、推定された分布とグランドトゥルース分布との間のJensen差異が、MADCOを伴う場合とそれを伴わない場合とで算出された。各取得数に対して、500個の無作為の部分サンプルからの2次元のJensen差異の平均値および標準偏差(SD)が、算出され、
図5A-5Cに提示される。T
1分布およびD分布の1次元予測と、グランドトゥルースとの間のJensen差異の両方が、それぞれ、
図5Bおよび5Cに示される。MADCO再構成の高い正確度が、制約されていないアプローチからの結果と比較して、グランドトゥルースからの著しく低いJensen差異によって実証される。MADCOの安定性は、比較的に小さいSDおよびその低い変動性から明白である。逆に、従来の方法は、大きいSDをもたらしており、大きいSDは、MADCOを使用することによって軽減される実験パラメータへの高い感度を示す。いくつかの場合では、予測された分布のJensen距離が、増加する取得数の関数として常時単調に減少したわけではなかったことは注目に値する。しかしながら、両方の場合において、2次元のJensen距離は、単調な減少を示した。
【0028】
(考察)
第1種のフレドホルム積分の数値反転の不良条件本質にもかかわらず、この問題は、多くの用途の核心にある。多数の実験およびサンプルを要求する多くの領域における結果として生じるデータ障害が、多くの用途を非現実的または実行不可能にしてきた。例えば、2次元のNMR実験は、非常に強力であるが、フレドホルム等式を反転させるための十分なデータを得るために要求される長い取得時間により、これらの実験は、生体内の前臨床的または臨床的なMRI用途に移行されていない。本明細書に説明される技術は、その1次元予測に関するより容易にアクセス可能な知識を使用することによって、2次元スペクトルの再構成を安定させ、加速し、改良することができる。MADCOは、ILTの性質を改良するために一般的な数学的アプローチを使用し、2次元空間に3つの異なるピークから成るD-T1ファントムサンプルに対して本明細書で実証されている。示されるように、式6および7の不等式を用いて式4を制約し、高いレベルの正確度をもたらす一方、僅かな完全なデータ組を使用する1次元周辺分布の合理的に正確な推定が、提供される。MADCOの効率は、次元数Nと、所与の次元における1次元スペクトルの再構成のために要求される取得数Mとを考慮することによって表され得る。従来のアプローチは、O(MN)個の測定を必要とするが、MADCOを使用することは、O(MN)個の取得のみが、必要とされる。
【0029】
独立的な1次元測定は、難しい3つのピークを持つ1次元T
1分布に対しても非常に正確な周辺分布をもたらした(
図6を参照)。従来の方法で得られた2次元分布からの1次元予測は、特に、より困難なT
1分布の解決において不正確でありかつ堅牢ではなかった(
図3D-3I)。本明細書に開示される驚くべき結果は、最初に2次元の緩和時間測実験を実施することによって1次元緩和分布を回復させ、その後に予測を行うことが、1次元緩和時間測定よりも正確かつ確実であると述べる公開された報告とは対照的である。しかしながら、以前のアプローチは、
【化2】
ノルム正則化が、特に、2次元のパラメータ空間に離散構成要素を備えているファントムから取得されたデータの分析に対して不適であることを認識し損ねている。
【0030】
意図的にオーバーサンプリングされ、完全な取得走査時間は、約37時間であった。示されるように、従来の方法を用いて推測されたD-T
1分布は、完全なデータ組が使用されたときであっても正確からかけ離れていた。逆に、開示される方法の適用は、完全なデータ組のうちの4%(64個の取得)のみを使用するときであっても、グランドトゥルース分布との良好な一致につながった。さらに、従来のアプローチの正確度を改善し、
図5Aに示されるJensen距離におけるさらなる収束につながるために、追加の取得が、依然として必要であり得る。収束が到達されていないので、MADCOの真の加速係数を確立することは困難であるが、理論的に、1480/64=約25を上回る。開示される例では、64個、最長90分の走査時間が、MADCO法を使用してD-T
1分布マッピングを完成させるために十分であった。便利な例証調査のためにファントムが選択され、IR-DWI-EPIパルスシーケンスが使用されたが、それは、生体内の前臨床的および臨床的調査に直接的に適用され得る。この例に使用された保守的に選定された反復時間(10秒)は、低減され得る。T
1加重に対するルックロッカー取得またはその修正形を使用することによって、さらなる加速が、達成され得る。緩和時間測定パラメータ空間に対する圧縮感知等のサンプリング方策の最近の進歩も、MADCO法と統合され、2次元の取得効率を増加させ得る。
【0031】
他の生物学的用途の中でも、2次元の拡散測定/緩和時間測定MRIを用いた神経組織の特徴付けは、そうでなければアクセス不可能な情報を明らかにすることが可能となり得る。MADCOを用いて分析された神経組織に対するD-T1 MRI実験からの予備的発見は、微細構造的特徴および分子交換動態等の複雑な水分交換動態への感度を示す。開示される技術は、D-T2とT1-T2との相関、およびT2-T2とD-Dとの交換調査等の種々の他の2次元実験と共にMADCO法を使用することによって、合理的な時間枠の中で包括的な調査を提供することができる。さらに、開示される技術は、より高次元の周辺分布制約付き最適化の原理の適用が実験時間の主要限界が引き上げられることを可能にするので、2次元を超えて拡張され得る。
【0032】
(加速される2次元のMRI緩和時間測定のための周辺分布制約付き最適化(MADCO)の使用)
(
【化3】
正則化の使用)
スペクトルが平滑であることが予期されるとき、
【化2】
正則化が、適切である。しかしながら、開示される例では、ファントムは、D-T
1空間内の離散成分から成り、
【化1】
正則化をより好適な選択肢にする。
【化1】
正則化は、
【化2】
正則化の多くの有益な性質を有するが、まばらなモデルをもたらすからである。例証のために、
【化2】
正則化が、従来の方法を使用して完全なデータ組(1,480個の取得)に対して採用された。結果として生じるスペクトルが、
図6に示される。
【0033】
(1次元実験からのグランドトゥルースおよび推定)
ファントムを撮像することは、3つの着目領域(ROI)を選択することによって、(T
1,D)サンプルのそれぞれの別個の分析を可能にした。1次元実験からのデータを使用したこれらのROIの別個の分析から得られた単一のピーク1次元分布が、次いで、それらの相対スピン密度に従って平均され、(
図7A-7Bに示される)1次元グランドトゥルースとして見なされた。1次元実験を使用したこれら3つの(T
1,D)サンプル全てを含んだROIからのT
1およびDの周辺分布が、それぞれ、
図7A-7Bに示される。これらの1次元の推定値が、2次元のD-T
1分布の再構成を制約するために使用され、安定化および加速をもたらす。
【0034】
(2次元分布導出パラメータの正確度)
得られた2次元分布の推定パラメータD-T
1および各ピークの高さFの正確度は、(下記の表1に示される)グランドトゥルース値に対するそれらの正規化された平均平方二乗誤差(nrmse)、すなわち、Εを以下のように算出することによって決定される。
【数9】
式中、<・・・>は、幾何平均(gm)を表す。MADCOアプローチは、略全ての事例において従来の方法を凌ぐ一方で、Εを10%を大きく下回るように一貫して保つ。
【0035】
分布からの単一パラメータのnrmse値は、誤解を招き得る。例えば、64個の取得を伴う従来の方法を使用することによって得られたスペクトル内の第1の2つのピークに関連付けられたnrmseは、合理的な正確度(下記の表1を参照)を指し示すが、実際の2次元スペクトルの検査(
図3A)は、これらのピークが分解さえされていないことを明確に示す。
【0036】
実際の推定パラメータgmD、gmT
1および各ピークの高さFは、3つの明白に異なるピークに対応する2次元分布内の区分にわたって平均化することによって決定された。ピーク間の分割は、グランドトゥルース分布(
図1)、すなわち、(1)100≦T
1≦494ms、(2)543≦T
1≦954ms、(3)1,048≦T
1≦1,0000msに従って決定された。拡散率の範囲全体が、各ピークに含まれることに留意されたい。結果として生じるパラメータが、下記の表2で詳述される。
【0037】
【0038】
【0039】
(分子交換の測定)
開示される技術は、分子交換と称される水分の1つのドメインから他のドメインへの動的移動を調べるためにも使用されることができる。交換コンパートメントの数に関する支援されない仮定を課すのではなく、開示される技術は、交換を測定するためのモデルを必要としないアプローチを提供し、任意の数のコンパートメント間での任意の数の交換プロセスを可能にする。この迅速な拡散交換分光法(fDEXSY)MRIの方法は、臨床的に実行可能な時間枠内で細胞膜透過性に変換され得るそのような情報を得るためのフレームワークを提供する。
【0040】
(技術の他の例示的用途)
開示される技術は、臨床的なMRIスキャナ内に存在し、生体内のマイクロダイナミックMRI走査を実施するために使用されることができる。異なるマイクロダイナミック生物マーカは、脳組織の生存能力に伴って有意に変化することができる。特に、マイクロダイナミックMRIの有用な用途は、炎症、癌、および脳卒中の変化の検査を含む。他の用途は、正常発達および学習における神経可塑性の調査を含む。神経可塑性中の主要プロセスが、種々の細胞および細胞内の構成要素の長期間にわたる増強、ニューロン新生、および構造改作の誘発を含むので、神経組織構成要素の密度ならびに交換に対するマイクロダイナミックMRIの特殊性および感度が、それを優れた診査道具にする。開示される技術に基づくMRIツールは、正常および負傷した生体外の組織サンプルに適用され、取得された高解像度および高画質のMRIデータを用いて交換を測定することもできる。定量的組織学および免疫組織化学が、次いで、種々の組織染料の分布をMRIベースの透過性マップと直接的に比較するために同一の脊髄ならびに脳細胞試料上で実施されることができる。
【0041】
開示される方法および装置は、身体全体の画像用途に適用され、限定ではないが、心臓、胎盤、肝臓、腎臓、脾臓、結腸、前立腺、ならびに骨格および他の筋肉ならびに末梢神経を含む器官を走査することができる。開示されるアプローチは、脊椎動物および他の動物モデル、ならびに、食品、有機および合成ポリマーおよびゲル、化学工学用途に使用される分離システム、土および他のサンプル、粘土および岩石、および他の多孔性および無孔の媒体を含む非生物学的な材料を用いた遺伝子型/表現型および他の調査にも使用されることができる。開示される方法および装置は、動物、植物、微生物、または他の有機体、もしくは選択された器官またはそのような有機体の他の部分等の試料の評価するための生体外ならびに試験管内の用途に適用されることができる。
【0042】
他の用途では、開示される方法および装置は、異常および正常発達の軌道ならびに種々の不調、疾患、および軽度外傷性脳損傷を含む外傷の後遺症を調査し、免疫細胞ならびに他の細胞が細胞外基質(ECM)の中に潜入し得る脳を含む軟質組織内の炎症反応をフォローし、それを査定することと、創傷治癒、および他の経時的な細胞および組織プロセスを評価し、追跡することとに使用されることができる。上に記載されたように、開示される方法および装置は、ヒト、動物、または他の生物内の他の組織および器官の発達を非生物学的試料と同様に、生体外または生体内のいずれかで調査するためにも使用されることができる。
【0043】
開示される技術の例は、概して、磁気共鳴映像(MRI)に関して議論されているが、開示されるアプローチは、概して、画像取得の有無にかかわらず、核磁気共鳴(NMR)または任意の磁気共鳴ベースの試料の評価においても使用されることができる。
【0044】
開示される技術および可能な用途に関する追加の情報が、Bai R,Benjamini D,Cheng J,and Basser PJのThe Journal of Chemical Physics,145:154202,2016に公開された”Fast,accurate 2D-MR relaxation exchange spectroscopy (REXSY):beyond compressed sensing”、および、Benjamini D and Basser PJのMicroporous and Mesoporous Materials,2017,10.1016/j.micromeso.2017.02.001に公開された“Towards clinically feasible relaxation-diffusion correlation MRI using MADCO”(両方とも参照することによって全体として本明細書に組み込まれる)の中に見出され得る。
【0045】
(信号取得)
本明細書に説明されるNMR信号は、
図8に図示されるような例示的なNMR/MRI装置300を使用して得られることができる。装置300は、一定磁場またはパルス磁場等の選択された磁場を標的(例えば、患者もしくは試料)に印加するように構成されることができるコントローラ/インターフェース302を含む。軸磁石コントローラ304は、概して、実質的に一定の磁場B
0を生じさせるように構成される軸磁石306と連通する。勾配コントローラ308は、電磁コイル310-312を使用して一定または時間変動勾配磁場を選択された方向または方向の組に印加し、それぞれの磁場勾配G
x、G
y、G
z、もしくはそれらの組み合わせを生じさせるように構成される。RF発生器314は、1つ以上のRFパルスを伝達コイル315を使用して標的に送達するように構成される。RF受信器316は、受信コイル318と連通し、スピンの正味磁化を検出または測定するように構成される。スライス選択勾配が、拡散勾配を印加するために使用される同一のハードウェアに適用されることができる。
【0046】
勾配コントローラ308は、1つ以上の軸に沿ってパルスもしくは他の勾配磁場を生じさせるように構成されることができる。例えば、米国特許第5,539,310号に説明されるような勾配の選択によって、効果的な拡散テンソルが、見出され得る。加えて、勾配コントローラ308は、異なる大きさの勾配パルスまたは他の勾配磁場を印加するように構成されることができ、関連付けられるMR信号が、RF受信器316によって検出されることができる。パーソナルコンピュータ、ワークステーション、モバイルコンピューティングデバイス、またはネットワーク化されたコンピュータ等のコンピュータ324もしくは他の処理システムが、データ取得、制御、および/または分析のために提供されることができる。コンピュータ324は、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスクまたはCD-ROM等の取り外し可能記憶媒体、ならびに/もしくはランダムアクセスメモリ(RAM)等の他のメモリを含み得る。データ取得または制御のためのコンピュータ実行可能命令が、任意の形態の有形データ記憶媒体上に提供され、かつ/もしくはローカルエリアネットワーク、インターネット、または他のネットワークを介してコンピュータ324に送達されることができる。信号取得、器具制御、および信号分析が、分散処理を用いて実施されることができる。例えば、信号取得および信号分析または処理は、異なる場所において実施されることができる。
【0047】
MR信号が、勾配の種々の大きさおよび方向に対して得られることができる。信号は、印加されるパルス勾配磁場の大きさおよび持続時間または他のスピンエンコード磁場の効果的大きさを固定することによって、およびエンコード磁場が印加される方向を変動させることによって得られることができる。種々の方向に関連付けられた信号が得られた後、スピンエンコード磁場の大きさが、変更され、種々の方向の他の一連の信号が、得られる。代替として、信号は、印加されるエンコード磁場の方向を固定することによって、およびエンコード磁場の大きさを変動させることによって得られることができる。
【0048】
他の信号取得シーケンスも、使用されることができる。例えば、本願では2つのPFG NMRおよびMRIの取得が説明されるが、特に、他の形態の複数のPFG NMRならびにMRI実験も、使用されることができる。加えて、拡散エンコードが、「フィルタ」としてMRI取得に先立って生じ得るか、それは、撮像シーケンス自体に埋め込まれるか、またはそれに組み込まれることができる。
【0049】
データ組の1次元の周辺分布を制約として使用して、低減された量の取得されたNMR試料データから2次元スペクトルを再構成するための代表的な方法400が、
図9に図示される。402において、例示的方法400は、取得されるNMR試料データが第1の試料特性および第2の試料特性に関連付けられるように、少なくとも第1のNMR取得パラメータおよび第2のNMR取得パラメータを、それぞれ、第1および第2の範囲にわたって変動させることによって、NMR試料データの選択された組を取得することを含み得る。404において、方法400は、取得されたNMR試料データに基づいて、第1および第2の試料特性に関連付けられた第1の周辺分布および第2の周辺分布を決定することを含み得、第1および第2の周辺分布は、第1および第2のNMR取得パラメータの選択された組み合わせに依存する。次いで、406において、方法400は、試料に関連付けられた2次元スペクトルを、第1および第2の周辺分布を制約として使用して再構成することを含み得る。第1および第2の周辺分布は、それぞれ、第1のNMR取得パラメータおよび第2のNMR取得パラメータに関連付けられた1次元の周辺分布を備え得る。方法400のいくつかの実施形態では、例えば、第1の試料特性は、拡散率(D)であり、第2の試料特性は、スピン格子緩和時間(T1)である。方法400のいくつかの実施形態では、例えば、第1のNMR取得パラメータは、b値であり得、第2のNMR取得パラメータは、反転時間τであり得る。方法400のいくつかの実施形態では、第1および第2の試料特性は、拡散率(D)、スピン格子緩和時間(T1)、スピンスピン緩和時間(T2)、および/またはそれらの組み合わせを備え得る。1次元の周辺分布は、ソフト制約またはハード制約のいずれか一方として使用されることができる。方法400のいくつかの実施形態では、第1および第2の周辺分布は、
【化1】
正則化を使用して決定されることができる。408において、方法400は、随意に、追加の取得されるNMR試料データを用いて402、404、406のプロセスを反復し、406で再構成された2次元スペクトルの正確度を改良することを含み得る。方法400は、例示的順序で実施されるステップを説明するが、これらのステップは、異なる順序で実施されることができ、一般的なステップで実施されているように説明されるNMR試料データの取得および/または周辺分布の決定は、代替として、2つ以上のステップで実施されることができる。
【0050】
NMRデータ取得、周辺分布の決定、および多次元スペクトルの再構成に関するより多くの情報が、米国特許第7,643,863号ならびに第8,380,280号(参照することによって全体として本明細書に組み込まれる)に見出され得る。NMR/MRI磁場内のより低次の分布に基づくより高次の接合分布の決定に関するより多くの情報が、2016年6月2日に公開されたWO第2016/086025号(参照することによって全体として本明細書に組み込まれる)に見出され得る。
【0051】
(コンピュータ環境)
図10および以下の議論は、開示される技術が実装され得る例示的コンピューティング環境の簡潔かつ一般的な説明を提供することが意図されている。要求されてはいないが、開示される技術は、パーソナルコンピュータ(PC)によって実行されているプログラムモジュール等のコンピュータ実行可能命令の一般的な文脈の中で説明される。概して、プログラムモジュールは、特定のタスクを実施するか、または特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。そのうえ、開示される技術は、ハンドヘルドデバイスと、マルチプロセッサシステムと、マイクロプロセッサベースまたはプログラマブル消費者用電子機器と、ネットワークPCと、ミニコンピュータと、メインフレームコンピュータと、同等物とを含む他のコンピュータシステム構成を伴って実装され得る。開示される技術は、タスクが通信ネットワークを通して連結される遠隔処理デバイスによって実施される分散されたコンピューティング環境内でも実践され得る。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、ローカルメモリ記憶デバイスおよび遠隔メモリ記憶デバイスの両方に位置し得る。
【0052】
図10を参照すると、開示される技術を実装するための例示的システムは、1つ以上の処理ユニット502と、システムメモリ504と、システムメモリ504を含む種々のシステム構成要素を1つ以上の処理ユニット502に結合するシステムバス506とを含む例示的な従来のPC500の形態の汎用目的コンピューティングデバイスを含む。システムバス506は、種々のバスアーキテクチャのうちの任意のものを使用するメモリバスまたはメモリコントローラと、周辺機器用バスと、ローカルバスとを含むいくつかのタイプのバス構造のうちの任意のものであり得る。例示的システムメモリ504は、読み取り専用メモリ(ROM)508と、ランダムアクセスメモリ(RAM)510とを含む。PC500内の要素間の情報転送を助ける基本的ルーチンを含む基本入出力システム(BIOS)512が、ROM508内に記憶される。
【0053】
例示的PC500は、ハードディスクから読み取りかつそこに書き込むためのハードディスクドライブ、取り外し可能磁気ディスクから読み取るため、またはそれに書き込むための磁気ディスクドライブ、および(CD-ROMもしくは他の光学式媒体等の)取り外し可能光ディスクから読み取るため、またはそれに書き込むための光ディスクドライブ等の1つ以上の記憶デバイス530をさらに含む。そのような記憶デバイスは、それぞれ、ハードディスクドライブインターフェース、磁気ディスクドライブインターフェース、および光学式ドライブインターフェースによってシステムバス506に接続されることができる。ドライブおよびそれらの関連付けられるコンピュータ読み取り可能な媒体は、PC500のためのコンピュータ読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュール、ならびに他のデータの不揮発性記憶装置を提供する。磁気カセット、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク、CD、DVD、RAM、ROM等のPCによってアクセス可能であるデータを記憶することができる他のタイプのコンピュータ読み取り可能な媒体も、例示的動作環境において使用され得る。
図10に示されるように、NMRデータ取得、取得されたデータ、計算された分布に対する命令、および、より低次のスペクトルを制約として使用して多次元スペクトルを決定するためのプロセッサ実行可能命令が、メモリ部590内に記憶されるが、記憶および処理は、ローカルにNMR機械または広域ネットワークを介してアクセス可能な遠隔の場所等の他の場所に提供されることができる。
【0054】
いくつかのプログラムモジュールは、オペレーティングシステムと、1つ以上のアプリケーションプログラムと、他のプログラムモジュールと、プログラムデータとを含む、記憶デバイス530内に記憶され得る。ユーザは、キーボードおよびマウス等のポインティングデバイス等の1つ以上の入力デバイス540を通してPC500の中にコマンドならびに情報を入力し得る。他の入力デバイスは、デジタルカメラ、マイク、操作レバー、ゲームパッド、衛星テレビ受信用アンテナ、スキャナ等を含み得る。これらおよび他の入力デバイスは、多くの場合、システムバス506に結合されたシリアルポートインターフェースを通して1つ以上の処理ユニット502に接続されるが、それらは、パラレルポート、ゲームポート、もしくはユニバーサルシリアルバス(USB)等の他のインターフェースによって接続され得る。モニタ546または他のタイプの表示デバイスも、ビデオアダプタ等のインターフェースを介してシステムバス506に接続される。スピーカおよびプリンタ(図示せず)等の他の周辺出力デバイスが、含まれ得る。
【0055】
PC500は、遠隔コンピュータ560等の1つ以上の遠隔コンピュータへの論理接続を使用して、ネットワーク化された環境内で動作し得る。いくつかの例では、1つ以上のネットワークもしくは通信接続550が、含まれる。
図10では、メモリ記憶デバイス562のみが図示されているが、遠隔コンピュータ560は、別のPC、サーバ、ルータ、ネットワークPC、またはピアデバイスもしくは他の一般的なネットワークノードであり得、典型的には、PC500に関して上記に説明された要素のうちの多くまたは全てを含む。パーソナルコンピュータ500および/または遠隔コンピュータ560は、ローカルエリアネットワーク(LAN)ならびに広域ネットワーク(WAN)に接続されることができる。そのようなネットワーク環境は、オフィス、企業全体のコンピュータネットワーク、インフラネット、およびインターネットでは一般的である。
【0056】
LANネットワーク環境内で使用されるとき、PC500は、ネットワークインターフェースを通してLANに接続される。WANネットワーク環境内で使用されるとき、PC500は、典型的には、インターネット等のWANを経由して通信を確立するためのモデムまたは他の手段を含む。ネットワーク環境では、パーソナルコンピュータ500またはその一部と比較して描写されるプログラムモジュールが、LANもしくはWAN上の遠隔メモリ記憶デバイスまたは他の場所内に記憶され得る。ネットワーク接続は、例示的なものとして示され、コンピュータ間で通信リンクを確立する他の手段も、使用され得る。
【0057】
この説明のために、本開示の実施形態のある側面、利点、および新規の特徴が、本明細書に説明される。開示される方法およびシステムは、いかようにも限定的であると解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独および相互の種々の組み合わせならびに副次的組み合わせの、種々の開示される実施形態の新規ならびに非自明な特徴および側面の全てを対象とする。方法、装置、およびシステムは、任意の具体的な側面または特徴もしくはその組み合わせに限定されず、開示される実施形態も、任意の1つ以上の具体的な利点が存在すること、もしくはそのような問題が解決されることを要求するものではない。
【0058】
開示される方法のうちのいくつかの動作が、便利な表現のために特定の順次的順序で説明されるが、特定の順序が具体的な言い回しによって要求されない限り、この説明の様式が、再配列を包含することを理解されたい。例えば、連続的であると説明される動作は、いくつかの場合では、同時に行われるように再配列または実施され得る。そのうえ、単純化のために、本明細書および添付図面は、開示される方法が、他の方法と共に使用され得る種々の方法を全て示さない場合がある。
【0059】
単数を示す用語「a」、「an」、および「the」は、文脈が別様に明示しない限り、複数の指示物を含む。用語「comprises」は、「限定ではないが、~を含む」を意味する。用語「coupled」は、物理的に連結されることを意味し、結合された要素間の中間要素を除外するものではない。用語「and/or」は、列挙された要素のうちの任意の1つ以上のものを意味する。したがって、用語「Aおよび/またはB」は、「A」、「B」、もしくは「AならびにB」を意味する。
【0060】
開示される技術の原理が適用され得る多くの可能な実施形態に照らして、図示される実施形態が、好ましい例にすぎず、本開示の範囲を限定するものとして見なされるべきではないことを認識されたい。むしろ、本開示の範囲は、少なくとも以下の請求項と同程度に広義である。したがって、以下の請求項の範囲内に該当するあらゆるものが請求される。