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特許7058261耐衝撃性があり収縮可能な編組された管状スリーブおよびその構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】耐衝撃性があり収縮可能な編組された管状スリーブおよびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   D04C 1/06 20060101AFI20220414BHJP
   D04C 1/02 20060101ALI20220414BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
D04C1/06 Z
D04C1/02
H02G3/04 062
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019510961
(86)(22)【出願日】2017-08-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 US2017048299
(87)【国際公開番号】W WO2018039395
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】62/379,015
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/684,799
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503170721
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル・パワートレイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL-MOGUL POWERTRAIN LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チウ,シャオダン
(72)【発明者】
【氏名】クラウザー,リー
(72)【発明者】
【氏名】ピオトロフスキー,マイク
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ティアンキ
(72)【発明者】
【氏名】アダムスキー,エマ
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01394311(EP,A1)
【文献】特開昭62-276063(JP,A)
【文献】特表平05-505218(JP,A)
【文献】国際公開第92/006235(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/161576(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04C 1/06
D04C 1/02
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い部材を経路決めするとともに保護するためのテキスタイルスリーブであって、
両開放端部間で中心軸に沿って延在する周方向に連続した管状の外周を有する細長い壁を備え、前記壁は、螺旋方向に延在する束において互いに編組される複数の糸を含み、前記束のそれぞれは互いに並んで当接する関係で配置された前記糸の複数を含み、前記束の少なくともいくつかは収縮可能な糸を含み、前記束の少なくともいくつかは非収縮可能な糸を含み、前記収縮可能な糸は、直径方向に拡大された組付け部品の第1の状態から直径方向に収縮された第2の状態まで径方向に縮められる能力を有する壁を提供し、
前記束の少なくともいくつかは、少なくとも1本の前記収縮可能な糸および少なくとも1本の前記非収縮可能な糸を含む、テキスタイルスリーブ。
【請求項2】
前記束の少なくともいくつかは、前記収縮可能な糸を含むのみである、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項3】
前記束の少なくともいくつかは、前記非収縮可能な糸を含むのみである、請求項に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項4】
前記束の少なくともいくつかは、前記非収縮可能な糸を含むのみである、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項5】
前記収縮可能な糸は、収縮される際に、前記非収縮可能な糸の嵩高い枕部を形成する、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項6】
直径方向に拡大された組付け部品の前記第1の状態は、第1の直径を有し、直径方向に収縮された前記第2の状態は、第2の直径を有し、前記第1の直径および前記第2の直径の比率は、約1.5:1~5:1またはそれ以上の間である、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項7】
両端部間で中心軸に沿って延在する周方向に連続した管状の外周を有する壁を複数の糸で編組することを備えるテキスタイルスリーブを構築する方法であって、前記糸の少なくともいくつかは収縮可能な糸および非収縮可能な糸を含み、前記方法はさらに、
直径方向に拡大された組付け部品の第1の状態から直径方向に縮径された第2の状態まで前記壁を径方向に縮めるように収縮される能力を有する前記収縮可能な糸を提供することと、
螺旋方向に延在する束として前記複数の糸の少なくともいくつかを互いに編組することとを備え、前記束は互いに並んで当接する関係で配置された前記糸の複数を含み、前記束の少なくともいくつかは前記収縮可能な糸を含み、前記束の少なくともいくつかは前記非収縮可能な糸を含み、
少なくとも1本の前記収縮可能な糸および少なくとも1本の前記非収縮可能な糸を有する前記束の少なくともいくつかを編組することをさらに含む、テキスタイルスリーブを構築する方法。
【請求項8】
前記収縮可能な糸のみを有する前記束の少なくともいくつかを編組することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記非収縮可能な糸のみを有する前記束の少なくともいくつかを編組することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記非収縮可能な糸のみを有する前記束の少なくともいくつかを編組することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記収縮可能な糸を収縮することによって、前記非収縮可能な糸の嵩高い枕部を形成することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
直径方向に拡大された組付け部品の前記第1の状態が第1の直径を有し、直径方向に縮径された前記第2の状態が第2の直径を有するように、収縮可能な糸を編組することをさらに含み、前記第1の直径および前記第2の直径の比率は、約1.5:1~5:1またはそれ以上の間である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2016年8月24日に提出された米国仮出願連続番号第62/379,015号および2017年8月23日に提出された米国特許出願連続番号第15/684,799号の利益を主張し、参照によりその内容全体がここに組み込まれる。
【0002】
本発明の背景
1.技術分野
この発明は、概して、細長い部材を保護するためのテキスタイルスリーブ、より特定的には、収縮可能な編組された管状スリーブに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
編組された(braided)スリーブの中に、ワイヤ、ワイヤハーネス、ケーブルおよび様々なタイプの管などの細長い部材を収容して、細長い部材への衝撃および摩耗、流体ならびに熱的影響に対する保護を提供することが知られている。スリーブおよびその内容物に対するダメージを防ぐために高い耐衝撃性が必要とされる用途においては、巻付可能であり周方向に連続的でもある管状スリーブが知られている。各々は衝撃力および摩耗に対する好適な保護を提供するために作製され得るが、各々は欠点を伴う。巻付可能なスリーブは、クランプ、ストラップ、テープなどの、保護されている細長い部材の周りにそれらを固定するための二次的な固定具を要求するため、組付けの間に追加の労力および時間が要求され、これにより組付けの費用を増加させる。さらに、二次的な固定具を在庫に置いておく必要があることは、費用がかかる。またさらに、二次的な固定具は、使用の間にほどける可能性を呈し、これにより細長い部材の環境影響に対する直接の暴露の危険を与える可能性がある。加えて、巻付可能なスリーブは、典型的には、対向する縁部が重なり合う不均一な厚さを有するため、スリーブの外囲は、狭いエリアで用いられることを妨げることがあり、または他の態様では組付けを困難にすることがある、増加された厚さの領域を有する。巻付可能なスリーブに対する別の欠点は、異なる直径の用途のために異なるサイズを在庫に置いておく必要性であり、これは棚卸しおよび費用をさらに増加させる。
【0004】
周方向に連続した管状スリーブに関しては、巻付可能なスリーブと同様に、異なる直径の用途のために異なるサイズを在庫に置く必要性が存在する。さらに、管状スリーブは、一般に、直径が固定されており、このように、細長い部材がスリーブの直径に対して増加されたサイズの領域を有する用途においては、このスリーブのタイプを使用することを困難または不可能にし得るため、スリーブは、たとえば電子コネクタなどの増加されたサイズの領域上に適合し得ない。さらに、固定された直径の管状スリーブは、典型的には、所定の位置にそれらを固定するための二次的な固定具を必要とする。したがって、それらは、上述された同様の欠点に悩まされる。加えて、上述されたように、所望の耐衝撃性を提供するためには、一般的に、比較的厚い壁を形成する必要があるため、比較的狭い空間でスリーブを使用する能力を損なう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、必要とされるのは、そこに含まれる細長い部材に対して特に衝撃、摩耗および汚染に対する高められた保護を提供し、使用中に所定の位置に固定されたままとなり、細長い部材の直径の幅範囲にわたって有用であり、製造および組付けにおいて経済的であり、かつ長く有効な寿命を示すスリーブである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の概要
本発明の1つの局面は、細長い部材を経路決めするとともに保護するためのテキスタイルスリーブを提供する。スリーブは、両開放端部間で中心軸に沿って延在する周方向に連続した管状の外周を有する細長い編組された壁を含む。壁は、収縮可能な糸と非収縮可能な糸とを含む。収縮可能な糸は、直径方向に拡大された組付け部品の第1の状態から、直径方向に収縮された第2の状態まで径方向に縮められる能力を有する壁を提供する。
【0007】
本発明の別の局面によれば、直径方向に拡大された組付け部品の第1の状態の直径と直径方向に収縮された第2の状態の直径との間の比率は、約1.5:1~5:1またはそれ以上の間の範囲であり得る。
【0008】
本発明の別の局面によれば、収縮可能な糸および非収縮可能な糸は、同じ糸巻きから互いに並んで当接する関係で、別個の糸の束としてともに編組され得る。
【0009】
本発明の別の局面によれば、収縮可能な糸および非収縮可能な糸は、異なる糸巻きから互いに別々に編組され得る。
【0010】
本発明の別の局面によれば、収縮可能な糸および非収縮可能な糸は、互いに異なる経路に沿って延在するように互いに別々に編組され得る。
【0011】
本発明の別の局面によれば、収縮可能な糸は、モノフィラメントとして提供され得る。
本発明の別の局面によれば、収縮可能な糸は、マルチフィラメントとして提供され得る。
【0012】
本発明の別の局面によれば、収縮可能な糸は、マルチフィラメントおよび/またはモノフィラメントとして提供され得る。
【0013】
本発明の別の局面によれば、非収縮可能な糸は、モノフィラメントとして提供され得る。
【0014】
本発明の別の局面によれば、非収縮可能な糸は、マルチフィラメントとして提供され得る。
【0015】
本発明の別の局面によれば、非収縮可能な糸は、マルチフィラメントおよび/またはモノフィラメントとして提供され得る。
【0016】
本発明の別の局面によれば、非収縮可能な糸は、エアーテクスチャード(air texturized)マルチフィラメントであり得る。
【0017】
本発明の別の局面によれば、非収縮可能な糸は、PET、ナイロン、PP、PE、PPS、PEEK、およびノメックス(Nomex)のうちの少なくとも1つ以上として提供され得る。
【0018】
本発明の別の局面によれば、壁は、直径方向に拡大された組付け部品の第1の状態にあるときの第1の密度と、直径方向に縮径された第2の状態にあるときの第2の密度とを有し得る。第2の密度は、第1の密度の約1.5倍以上である。
【0019】
本発明のさらに別の局面によれば、細長い部材を経路決めするとともに保護するためのテキスタイルスリーブを構築する方法が提供される。上記方法は、収縮可能な糸および非収縮可能な糸で、両開放端部間で中心軸に沿って延在する周方向に連続した管状の外周を有する壁を編組することを含む。上記方法はさらに、直径方向に拡大された組付け部品の第1の状態から直径方向に縮径された第2の状態まで壁を径方向に縮めるように収縮される能力を有する収縮可能な糸を提供することをさらに含む。
【0020】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、収縮可能な糸を編組して、直径方向に拡大された組付け部品の第1の状態の直径と直径方向に収縮された第2の状態の直径との間の比率が約1.5:1~5:1またはそれ以上の間である壁を提供することをさらに含み得る。
【0021】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、互いに並んで当接する関係で配置される複数の糸を含む別個の束を編組することをさらに含み得る。複数の糸は、収縮可能な糸および/または非収縮可能な糸を含む。
【0022】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、共通の糸巻きから別個の束を形成する糸を編組することをさらに含み得る。
【0023】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、収縮可能な糸と非収縮可能な糸を、それらが互いに異なる経路に沿って延在するように、互いに別々に編組することをさらに含み得る。
【0024】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、収縮可能な糸をモノフィラメントとして提供することをさらに含み得る。
【0025】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、収縮可能な糸をマルチフィラメントとして提供することをさらに含み得る。
【0026】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、収縮可能な糸をマルチフィラメントおよび/またはモノフィラメントとして提供することをさらに含み得る。
【0027】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、非収縮可能な糸をモノフィラメントとして提供することをさらに含み得る。
【0028】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、非収縮可能な糸をマルチフィラメントとして提供することをさらに含み得る。
【0029】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、非収縮可能な糸をマルチフィラメントおよび/またはモノフィラメントとして提供することをさらに含み得る。
【0030】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、非収縮可能な糸を高度テクスチャード(highly texturized)マルチフィラメントとして提供することをさらに含み得る。
【0031】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、非収縮可能な糸をPET、ナイロン、PP、PE、PPS、PEEK、およびノメックスのうちの少なくとも1つ以上として提供することをさらに含み得る。
【0032】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、壁を収縮する際に、壁が直径方向に縮径された第2の状態にあるときの第2の密度を達成するように、直径方向に拡大された組付け部品の第1の状態にあるときの第1の密度を有する壁を編組することをさらに含み得る。第2の密度は、第1の密度の約1.5倍以上である。
【0033】
これらのおよび他の局面、構成ならびに利点は、現在好ましい実施形態およびベストモードの以下の詳細な説明、添付された請求項、ならびに添付の図面を参照して、当業者にとってより容易に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】スリーブが保護対象となる細長い部材の周りにおいて収縮された組み付けられた状態で示される、本開示の1つの局面に従って示される、管状の編組されたスリーブの概略斜視図である。
図1A】「編組されたままの」収縮されていない組付け部品の状態で示される、図1のスリーブの概略斜視図である。
図2】「編組されたままの」収縮されていない組付け部品の状態で示される、本開示の1つの局面に従う、編組されたスリーブの側面図である。
図2A】収縮された組み付けられた状態で示される、図2のスリーブの部分端部図である。
図3】「編組されたままの」収縮されていない組付け部品の状態で示される、本開示の別の局面に従う、別の編組されたスリーブの側面図である。
図3A】収縮された組み付けられた状態で示される、図3のスリーブの部分端部図である。
図4図2のスリーブを構築するのに用いられる、本開示の別の局面に従う糸巻き配置の図である。
図5図3のスリーブを構築するのに用いられる、本開示のさらに別の局面に従う糸巻き配置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
現在好ましい実施形態の詳細な説明
図面をより詳細に参照すると、図1および図1Aは、本開示の1つの局面に従って構築される、以下スリーブ10とよばれる、編組された保護管状スリーブを概略的に示す。図1には、スリーブ10が、保護対象となる細長い部材12の周りに配置されるように示される。スリーブ10は、以下、収縮された状態または第2の状態とよばれる、細長い部材12の周りにおける直径方向に収縮された完全に組み付けられた第2の状態で示される。図1Aには、スリーブ10が、以下、収縮されていない状態または第1の状態とよばれる、「編組されたままの」直径方向に拡大された収縮されていない組付け部品の第1の状態で示される。スリーブ10は、周方向に連続した管状の外周16と、両開放端部20,22間で中心長手方向軸18に沿って延在する内側キャビティ17とを有する細長い編組された壁14を有する。周方向に連続的かつ管状であることによって、スリーブ10は、長手方向に延在する自由側縁部を有しないが、むしろ壁はその長さに沿って巻き付けられず開かれないように縫い目がないということが理解されるべきである。壁14は、少なくとも1本のまたは複数の収縮可能な糸24と、少なくとも1本のまたは複数の非収縮可能または実質的に非収縮可能な糸26とを含む、少なくとも2つの異なるタイプの糸を含む。実質的に非収縮可能な糸によって、意味されることは、糸26は、その元の長さの最大約1~10%の間など若干収縮し得るが、その元の長さの約20%以上収縮する収縮可能な糸24としての範囲とはかけ離れているということであると認識されるべきである。このように、スリーブ10を編組する際、壁14は、互いに編組された態様でスリーブの長さに沿って反対の螺旋方向に延在する収縮可能な糸24および非収縮可能な糸26の両方を有する。スリーブ10が収縮されていない第1の状態にある間、たとえばワイヤ、ワイヤハーネスまたは管など、スリーブ10を編組することを終える際に、細長い部材12は、キャビティ17を通って配置される。壁14が収縮されてない結果、細長い部材12は、スリーブ10のキャビティ17を通って容易に供給されることができる。そして、スリーブ10が細長い部材12に沿って適切に配置された状態で、スリーブ10は、非収縮可能な糸にダメージを生じさせることなく、収縮可能な糸24を収縮させるのに十分な温度まで加熱され、これにより、壁14を、直径が細長い部材12の外面に密接したぴったりとした当接になるように十分に収縮させる。
【0036】
収縮可能な糸24が収縮されていない状態で編組されることによって、キャビティ17がそこを通る細長い部材12を容易に受容するように好適にサイズ決めされるように拡大されている壁14を有して、スリーブ10は形成される。「編組されたまま」の第1の直径と収縮されたときの第2の直径との間の比率は、約1.5~10またはそれ以上の間の範囲にあり得る。このように、細長い部材12が拡大された付属品、コネクタ、独特な形状の分岐などを有する場合、それは、拡大された第1の状態にある間、依然としてスリーブ10のキャビティ17を通って容易に挿入されることができる。収縮可能な糸24は、マルチフィラメントおよび/またはモノフィラメントのいずれかとして提供され得、約50~10000デニールの間の範囲の大きさを有して提供され得る。キャビティ17を通って細長い部材12を配置する際、用いられる収縮可能な糸24のタイプに応じて、熱、流体、および紫外線照射の少なくとも1つの選択された印加を介して、壁14は活性化されて細長い部材12の周りに密接嵌合のぴったりとした関係になるように収縮し得る(図1)。したがって、スリーブ10は、二次的な固定機構の必要なく、細長い部材12の周りに、固定されまたは実質的に固定され(スリーブは細長い部材12との静止した摩擦係合にあるが、軸方向および/または回転方向に沿ってそこに十分に強い力が加えられた場合には細長い部材12に対して動かされる可能性があるが、そうでなければスリーブ10は所望の通りに細長い部材12に対して静止した位置に維持されることを意味する)、配置される。これにより、クランプ、ストラップ、テープなどの必要をなくす。またさらに、編組された壁14は、収縮される際、密度を高くされるため、とりわけ耐衝撃性、耐摩耗性、不浸透性などの壁14の保護特性は大いに上昇する。たとえば、密度は、収縮されてない状態における第1の密度から収縮された状態における第2の密度まで、約2倍以上増加され得る。1つの例では、例示であって限定ではないが、密度は249kg/m3から446kg/m3まで増加された。加えて、単一の壁14が細長い部材12の周りへの密接なぴったりとした嵌合に持ち込まれることによって、壁14の厚さおよび外囲が最小化されることにより、狭いエリアで有用となる。1つの例では、例示であって限定ではないが、壁14の仕上げ厚さは、約3.6mmであった。
【0037】
非収縮可能または実質的に非収縮可能な糸26は、PET、ナイロン、PP、PE、PPS、PEEK、およびノメックス材料糸の少なくとも1つのマルチフィラメントおよび/またはモノフィラメントとして提供され得る。非収縮可能な糸26のデニールは、50~10000の範囲であり得る。比較的嵩高いマルチフィラメントは、衝撃力を減ずることをさらに容易にするような増加された嵩高性を提供するとともに、スリーブ10の可撓性を高めることがわかっている。収縮可能な糸24および非収縮可能な糸26を含む、糸の端部の数は、意図された用途のために所望のとおりに調整され得る。
【0038】
本開示の別の局面によれば、収縮可能な糸24および非収縮可能な糸26は、収縮可能な糸24および非収縮可能な糸26の別個の束30が互いに分配され単一の糸として織られて互いに同じ編組された経路を辿ることができるように、収縮可能な糸24および非収縮可能な糸26の別個の束30として共通の糸巻き28の周りに巻き付けられ得る(図2および図)。さらに、収縮可能な糸24および非収縮可能な糸26は、収縮可能な糸24および非収縮可能な糸26が互いに異なる編組された経路に沿って延在するように、互いに分離した糸巻き28’の周りに巻き付けられ、互いに別々に編組されてもよい(図3および図)。
【0039】
収縮されていない状態で示される図2に図示される第1の実施形態では、スリーブ10の壁14は、共通の糸巻き28上に巻き付けられる収縮可能な糸24および非収縮可能な糸26で編組される(図)。48のキャリア編組機(糸がそれぞれのキャリアの糸巻き28から編組される48のキャリアを有するように、編組機がセットアップされることを意味する)の各々の糸巻き28上には、例示であって限定ではないが、一対の収縮可能な糸24および一対の非収縮可能な糸26が巻き付けられ、したがって、各束30は、48のキャリア上の総計196の端部のための並んで当接する関係の4つの糸を含む。2オーバー2(2 over 2)、3オーバー1(3 over 1)などの他の編組パターンが用いられてもよいが、前述の複数の糸を各々含む別個の束30は、1オーバー1編組パターン(1 over 1 braid pattern)で互いに編組された。収縮可能な糸24および非収縮可能な糸26の端部の数は、各々2つの端部以外、たとえば非収縮可能な糸26の2つの端部を伴う収縮可能な糸24の1つの端部、または意図された用途に所望される任意の他の組み合わせであってもよいことが理解される。図2に示される例示の実施形態では、収縮可能な糸24は、0.38mmの架橋連結されたポリエチレンモノフィラメントとして提供され、非収縮可能な糸26は、2070デニールの高度テクスチャードポリエステルモノフィラメントとして提供されたが、例示であって限定ではない。意図される用途に所望される任意の他の大きさおよび材料タイプの収縮可能な糸24および非収縮可能な糸26が用いられ得ることが認識されるべきである。例示であって限定ではないが、壁14を編組する際、壁14は約249kg/m3の収縮されていない密度および約5インチ当たりピック数(PPI)を有し、スリーブ10を収縮させた後、壁は約446kg/m3の密度および約13PPIのPPIを有し、仕上げられた収縮された内径は、約10mmである。
【0040】
収縮されていない状態で示される図3に示される別の実施形態によれば、スリーブ10’の壁14’は、互いに別個の糸巻き30上に巻き付けられる収縮可能な糸24および非収縮可能な糸26で編組される(図5)。48のキャリア編組機の糸巻き28’のうちの半分には、例示であって限定ではないが3つの収縮可能な糸24が別個の束として互いに並んだ関係で巻き付けられ、糸巻き28”の他の半分には、例示であって限定ではないが3つの非収縮可能な糸26が別個の束として互いに並んだ関係で巻き付けられた。したがって、結果として生じる編組された壁14’は、例示であって限定ではないが、総計144の端部を含み、別個の束は3つの糸を含み、各々は、上述されたように、単一の糸としてかつ所望の編組パターンで互いに編まれる。任意の数の収縮可能な糸24および非収縮可能な糸26が別の糸巻き28’,28”に巻き付けられてもよく、収縮可能な糸24および非収縮可能な糸26の数は同じであっても異なっていてもよいことが認識されるべきである。したがって、糸巻き28’はその上に束を備える収縮可能な糸24の対を有してもよく、一方糸巻き28”はその上に束を備える1、3またはそれ以上の非収縮可能な糸26を有してもよいが、これは例示であって限定ではない。
【0041】
図2Aおよび図3Aには、図2および図3のスリーブ10,10’の一部が収縮された状態で示されるが、スリーブ10,10’の残りの見えない部分は同様であることが認識されるべきである。各実施形態では、収縮可能な糸24および非収縮可能な糸26の組み合わせを有することによって、各スリーブ10,10’の外面16,16’は、収縮される際に、非収縮可能な糸26を径方向内側に引く収縮された糸24を介してテクスチャー加工(texturized)され、これにより、収縮可能な糸24と非収縮可能な糸26との間の複数の合流点において、非収縮可能な糸の各々からの材料からなる複数の嵩高い枕部32を形成することを確認することができる。嵩高い枕部32は、径方向に縮径された収縮された糸24から嵩高くなるように径方向外側に突出した。これにより、ともにスリーブの耐衝撃性を大幅に高めるように作用する比較的柔らかい別個の高められた耐衝撃性ゾーン32を提供するように作用する。枕部ゾーン32は、壁を収縮する際に形成される実質的に増加された壁密度の結果として互いに直接隣接するため、ゾーンが別個であり分離されていても、それらはともにスリーブ10,10’の耐衝撃性を大幅に増加させるように作用する。
【0042】
言うまでもなく、本発明の多くの修正および変形が上記の教示に照らして可能である。すべての請求項のおよびすべての実施形態のすべての構成は、そのような組み合わせが互いに矛盾しない限り、互いに組み合わされることができることが考えられる。したがって、添付の請求項の範囲内で、本発明は、特定的に説明された以外の態様で実施され得ることが理解されるべきである。
図1
図1A
図2
図2A
図3
図3A
図4
図5