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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】改良された選択的触媒還元システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20220414BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20220414BHJP
   B01D 53/90 20060101ALI20220414BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
F01N3/08 B ZAB
B01D53/86 222
B01D53/90
B01D53/94 222
B01D53/94 400
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019530776
(86)(22)【出願日】2017-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2017082173
(87)【国際公開番号】W WO2018114419
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】16205947.1
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516323231
【氏名又は名称】パーキンス エンジンズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PERKINS ENGINES COMPANY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】レオ シェード
(72)【発明者】
【氏名】アレクシス エデン
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド シルバー
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-114978(JP,A)
【文献】特開2009-156229(JP,A)
【文献】特開2008-215133(JP,A)
【文献】特表2010-526250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0257303(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0307967(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
F01N 3/02
F01N 3/04- 3/38
F01N 9/00-11/00
B01D 53/73
B01D 53/86-53/90
B01D 53/94-53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出ガス通路内で選択的触媒還元システムを使用して排出ガスを処理する方法であって,前記システムが,SCR触媒の上流側通路内における加水分解触媒と,ディーゼル排出流体(DEF)を可変のDEF投与率で加水分解触媒に噴射するためのDEF投与ユニットを備え,前記方法が:
・排出ガスに含まれる全ての窒素酸化物(NOx)を変換するための初期DEF投与率を予測するステップ;
・前記SCR触媒に貯蔵されるアンモニアの量を推定するステップ;
前記システムにおけるNOx変換率を測定するステップ;
・初期DEF投与率を前記アンモニア貯蔵量の推定値及びNOx変換率の測定値に基づいて調整することにより,第1の調整されたDEF投与率を生成するステップ;
・前記加水分解触媒に貯蔵されているアンモニア等価体の量を推定するステップ;
・前記第1の調整されたDEF投与率をアンモニア等価体の貯蔵量推定値に基づいて調整することにより,第2の調整されたDEF投与率を生成するステップ;並びに
・該第2の調整されたDEF投与率によりDEFを噴射するステップ;
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって,排出ガス中のNOxを検出するに先立って,DEFを前記加水分解触媒に噴射する初期ステップを更に備える方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって,前記NOx変換率が増加する際に,前記第2の調整されたDEF投与率を増加するステップを更に備える方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の方法であって,前記NOx変換率が減少する際に,前記第2の調整されたDEF投与率を減少するステップを更に備える方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の方法であって,前記システムの入口において排出ガス温度の増加を検出したときに,前記第2の調整されたDEF投与率を増加するステップを更に備える方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって,
・アンモニア・スリップを生じさせ得る排出ガス温度の増加時間を計算するステップ; ・前記排出ガス温度の増加時間を計測するステップ,並びに
・排出ガス温度の増加が,前記計算された時間に亘って維持され,又はこれを超える場合に,前記第2の調整されたDEF投与率を徐々に減少させるステップ;
を更に備える,方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ディーゼルエンジンの排出ガスを処理するための選択的触媒還元システムに関する。
【背景技術】
【0002】
選択的触媒還元(SCR)システムは既知であり,一般的にディーゼルエンジンの排出系に含まれて該エンジンの排出ガス処理に供されている。このようなシステムは,エンジンの排出通路内を流れる排出ガスにディーゼル排出流体(DEF)を導入するものである。DEFは尿素を含み,その尿素は排出通路内で加水分解及び/又は熱分解することによりアンモニアを生成する。アンモニアはSCR触媒を通過し,その間に排出ガスと反応する。この場合,排出ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)は,排出系から大気中に放出される前に窒素に変換される。
【0003】
排出通路内にDEFを投与する多くのSCRシステムが提案されている。このようなシステムは,ときには「ウェット・スプレー」とも称されており,水性尿素のスプレーを排出ガス中に噴射して分解させることによりアンモニアを生成するものである。かかるシステムの一例は,特許文献1:米国特許出願公開第2008/307967号明細書に開示されている。特許文献1は,DEFが主排出通路の外側に配置された供給通路内で加水分解される配置を記載している。特に,DEFは加水分解触媒に投与され,アンモニアに加水分解される。そのアンモニアはSCR触媒の入口まで下流側に流れ,ここで反応してNOxを還元させる。一般的に,SCRシステムにより行われる既知の制御プロセス,例えば特許文献1に開示されるプロセスは,NOxをアンモニアにより還元させるべき場合に,DEFを加水分解リアクタに投与するものである。
【0004】
特定の条件下でSCRシステムにおける加水分解触媒にDEFを投与する場合,DEFは触媒を冷却して尿素の熱分解と,これに引き続くイソシアン酸の加水分解,並びにアンモニア及びイソシアン酸の脱離を減速させ,又は実効的に防止する。このアンモニア放出の抑制により,加水分解触媒の機能におけるラグ又は遅延が生じる。その結果,SCR触媒におけるアンモニア貯蔵及びNOx変換に作用させ得る制御量が制約される。更に,尿素の熱分解が減速又は防止されると,例えば排出入口温度の上昇が生じた場合でも,排出通路内における尿素の堆積を生じさせ,未反応の尿素又はアンモニアが未処理状態で排出通路からアンモニア・スリップ中に投与される結果を生じさせかねない。
【0005】
本発明の課題は,既知のSCR排出システムにおける上記欠点の少なくとも1つを除去又は軽減することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2008/307967号明細書
【発明の概要】
【0007】
第1の態様において,本発明は,排出ガス通路内で選択的触媒還元システムを使用して排出ガスを処理する方法を提供する。このシステムは,SCR触媒の上流側通路内における加水分解触媒と,ディーゼル排出流体(DEF)を可変のDEF投与率で加水分解触媒に噴射するためのDEF投与ユニットを備える。本発明に係る方法は,排出ガスに含まれる全ての窒素酸化物(NOx)を変換するための初期DEF投与率を予測するステップ;及びSCR触媒に貯蔵されるアンモニアの量を推定するステップを備える。次に,システムにおけるNOx変換率を測定する。次に,初期DEF投与率をアンモニア貯蔵量の推定値及びNOx変換率の測定値に基づいて調整することにより,第1の調整されたDEF投与率を生成する。次に,加水分解触媒に貯蔵されているアンモニア等価体の量を推定する。次に,第1の調整されたDEF投与率をアンモニア等価体の貯蔵量推定値に基づいて調整することにより,第2の調整されたDEF投与率を生成する。次に,第2の調整されたDEF投与率によりDEFを噴射する。
【0008】
第2の態様において,本発明は,排出ガスを排出通路内において処理するための選択的触媒還元(SCR)システムを提供する。このSCRシステムは,排出通路内における加水分解触媒,ディーゼル排出流体(DEF)を前記加水分解触媒に噴射するためのDEF投与ユニット,及び,加水分解触媒の下流側で前記通路内に配置されたSCR触媒を備える。入口温度センサ及び第1の窒素酸化物(NOx)センサが,それぞれ加水分解触媒の上流側で前記通路内に配置されている。第2のNOxセンサが,SCR触媒の下流側に配置されている。制御モジュールが入口温度センサ,第1のNOxセンサ,第2のNOxセンサ及びDEF投与ユニットに接続されており,制御モジュールは,アンモニア‐NOx比(ANR)マップを読取り可能である。制御モジュールによりDEF投与ユニットを,前記センサから受信した信号及びANRマップから取得されたANR情報に基づいて制御する。
【0009】
第3の態様において,本発明は,上記第2の態様に係るSCRシステムを含む車両用の排出装置を提供する。
【0010】
第4の態様において,本発明は,上記第2の態様に係るSCRシステムを含む車両を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下,本発明の好適な実施形態を,あくまでも例示として,添付図面を参照しながら記載する。
図1】選択的触媒還元(SCR)システムの概要図である。
図2図1のSCRシステムにおけるECMで使用されるメインコントローラ及びサブコントローラの説明図である。
図3図1のSCRシステムにおけるECMで使用されるメインコントローラ及びサブコントローラの説明図である。
図4図3のサブコントローラの一部を構成する操作レジーム・ステートマシンにより実行される制御プロセスのフローチャートである。
図5図3のサブコントローラの一部を構成するアンモニアコントローラにより実行される制御プロセスのフローチャートである。
図6図1のSCRシステムにより実行される例示的な投与レジームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は,選択的触媒関願(SCR)システム10を示すものである。システム10は,車両(図示せず)のエンジン(図示せず)から排出ガスを排出する排出通路12内に配置される。排出ガスは,先ず,任意的にシステム10の一部を構成することのできる,既知の形式のディーゼル酸化触媒(DOC)14を通過する。DOC14は,その触媒作用により排出ガス中の炭化水素及び一酸化酸素の酸化反応を生じさせて二酸化酸素及び水を発生し,一酸化窒素を二酸化窒素に酸化させるものである。
【0013】
DOC14の下流側にはディーゼル排出流体(DEF)投与ユニット16が配置され,これは,排出通路12内でDOC14の下流側に配置された加水分解触媒18にDEFを投与するように構成されている。DEF)投与ユニット16は既知の形式であり,DEFを水性尿素の溶液形態で噴射するものである。加水分解触媒18は既知の形式であり,DEFの加水反応の触媒作用を生じさせてアンモニア及び二酸化炭素を発生させるものである。
【0014】
排出通路12内で加水分解触媒18の下流側にSCR触媒20が配置され,これも既知の形式である。SCR触媒20は,排出ガス中の窒素酸化物(NOx)と上流側で発生するアンモニアとの間の還元反応の触媒作用を生じさせてNOxを窒素及び水に変換するものである。任意的に,システム10は,SCR触媒20の直ぐ上流側に配置されるSCR触媒フィルタ22を含むことができる。SCR触媒フィルタ22は,排出通路内における大きな粒子がSCR触媒20に流入するのを防止するように構成されている。
【0015】
排出通路12内でSCR触媒20の下流側には,既知形式のアンモニア・スリップ(AS)触媒24が任意的に配置され,これは,SCR触媒20を通過した未反応のアンモニアを,排出系から大気中に放出可能となる前に酸化させるように構成されている。
【0016】
システム10は,電子制御モジュール(ECM)26を含み,これはDEF投与ユニット16に接続され,かつ,DEF投与ユニット16がDEFを加水分解触媒18に投与する投与率を制御するように構成されている。システム10は,ECM26に接続される複数のセンサも含んでいる。
【0017】
入口窒素酸化物(NOx)センサ28が加水分解触媒18の上流側に配置され,排出通路12内におけるNOxレベルを測定するように構成されている。この第1のNOxセンサ28は,ECM26に接続されている。
【0018】
加水分解触媒18の上流側には入口温度センサ30も配置されており,これもECM26に接続されている。入口温度センサ30は,加水分解触媒18の上流側における温度を測定し,その温度をECM26に送信するように構成されている。
【0019】
加水分解触媒18とSCR触媒20との間には加水分解触媒温度センサ32が配置され,これはECMセンサ26に接続され,かつ,SCR触媒20の上流側における排出ガスのSCR温度値を測定すると共に信号をECMに送信することにより,ECMにSCR温度値を示すように構成されている。加水分解触媒18とSCR触媒20との間には加水分解触媒アンモニアセンサ34も配置され,これもECM26に接続されている。
【0020】
システム10はAS触媒24の下流側に配置された第2のNOxセンサ36も含んでおり,これはSCRシステムの下流側における排出系のテールパイプ内のNOxレベルを測定し,かつ,そのNOxレベルをECM26に送信するように構成されている。第2のNOxセンサ36に隣接する排出通路内には,出口アンモニア及び温度センサ38,40も配置することができ,これらはそれぞれテールパイプ内におけるアンモニア及び温度レベルを測定し,かつ,そのアンモニア及び温度レベルをECM26に送信するように構成される。
【産業上の利用可能性】
【0021】
次に,図2~6を参照してシステム10による排出ガスの処理態様の一例を記載する。
【0022】
図2図3は,ECM26により使用されるメインの,又は標準的SCR用のコントローラと,加水分解触媒用サブコントローラを示す。メインコントローラ100は,フィードフォワード型ANRマップ50と,SCR触媒用の貯蔵量推定器/修正器52とを含み,この推定器/修正器はアンモニア貯蔵量を推定し,その貯蔵量推定値と,モデル/推定器における温度測定値に基づいてフィードバック修正を行うものである。使用にあたり,ECM26により第1のNOxセンサ28からの測定値及び入口温度センサ30からの測定値を受信し,通路内における排出ガスのための質量流量を既知の態様で計算する。次に,これらの入口NOx値,温度測定値及び質量流量値をANRマップ50と照合し,排出ガス中の全てのNOxを窒素及び水に変換するための初期DEF投与率を予測する。更に,メインコントローラ100により,第1のNOxセンサ28,第2のNOxセンサ30及び加水分解触媒温度センサ32からの各測定値も受信し,これらの測定値をSCR触媒用の貯蔵量推定器/修正器52に送信する。また,メインコントローラ100は,出口アンモニアセンサ38からの測定値を任意的に受信し,そのアンモニア測定値も貯蔵量推定器/修正器52に送信する構成とすることができる。これらの測定値を貯蔵量推定器/修正器52に送信することにより,メインコントローラ100は,SCR触媒20に貯蔵されているアンモニアの量を推定し,システム10全体におけるNOx変換率も測定することができる。すなわち,メインコントローラ100により,ANRマップ50から得られる初期DEF投与率を,アンモニア貯蔵量推定値及びNOx変換率に基づいて調整して,第1の調整されたDEF投与率を提供することができる。
【0023】
SCRシステム10に加水分解触媒18が存在するため,DEF投与率は,加水分解触媒に蓄積されているアンモニア等価体の量を加味して更に調整する必要がある。本開示の文脈において「アンモニア等価体」とは,DEFの噴射と,その後に生じる熱分解及び加水分解の間の任意の段階で加水分解触媒に残留する物質を指す。すなわち,「アンモニア等価体」とは,DEF,尿素,イソシアン酸及びアンモニアを指す。この追加的な調整は,サブコントローラ102により行われるものである。
【0024】
サブコントローラ102は,操作レジーム・ステートマシン104と,加水分解触媒の貯蔵量推定モデル106と,アンモニア・フィードバック/フィードフォワードコントローラ108と,アンモニア等価体の貯蔵コントローラ110とを含む。操作レジーム・ステートマシン104は,第1の調整されたDEF投与率,排出系の質量流量値,並びに入口温度センサ30により測定される入口温度に関する情報を受信する。図4に関連して後述するように,ステートマシン104は,その情報を使用してシステムの入口状況と,これがレジームを安定的又は不安定的に作動させるに適当であるか否かを分析する。ステートマシン104からの情報は,アンモニア等価体の貯蔵コントローラ110に供給することができ,従ってサブコントローラ102により,DEF投与率の調整が適当であるか否かを判定することができる。また,ステートマシン104からの情報は,メインコントローラ100の貯蔵量推定器/修正器52にフィードバックすることもできる。
【0025】
加水分解触媒の貯蔵量推定モデル106は,第1の調整されたDEF投与率,排出系の質量流量,入口温度センサ30により測定された入口温度,加水分解触媒アンモニアセンサ34により測定されたアンモニアレベル,並びに,加水分解触媒温度センサ32により測定された加水分解触媒に関する情報を受信する。次に,モデル106は,加水分解触媒18におけるアンモニア等価体の貯蔵量を推定し,その情報をアンモニア等価体の貯蔵量コントローラ110にフィードフォワードする。
【0026】
アンモニア・フィードバック/フィードフォワードコントローラ108は,第1の調整されたDEF投与率と,加水分解アンモニアセンサ34により測定されたアンモニアレベルに関する情報も受信する。コントローラ108は,その情報を使用することにより,図4を参照してより詳細に後述するように,第1の調整されたDEF投与率に更なる調整が必要か否かを判断する。
【0027】
すなわち,サブコントローラ102は,加水分解触媒18に貯蔵されているアンモニア等価体の量を推定することができ,次に,必要であれば,そのアンモニア等価体貯蔵量推定値に基づいて第1の調整されたDEF投与率を再び調整して第2の調整されたDEF投与率を生成する。次に,DEFをその第2の調整されたDEF投与率に基づいてDEF投与ユニットにより噴射する。
【0028】
図4は,サブコントローラによりシステムの入口条件を分析するために実行することのできるプロセスのフローチャートであり,この分析は,安定的又は不安定的なレジームで作動するに適当であるか否か,従って第1の調整されたDEF登龍率に追加的な調整が必要であるか否かを判断するためのものである。開始ステップ200に引き続き,ステートマシン104は,ステップ202において入口条件を分析する。図3に関連して上述したように,これらの入口条件は,排出ガスの質量流量と,入口温度とを含んでいる。決定ステップ204において,マシンは,入口条件がシステムを不安定的レジームで作動させるに好適であるか否かを決定する。入口条件が安定的レジームでの作動に好適であれば,判定ステップ206において,加水分解触媒貯蔵推定モデル106を使用して加水分解触媒の状態を判定する。次に,決定ステップ208において,プロセスは,推定モデル106からの推定情報が不安定的レジームを示すか否かを確認する。その情報が不安定レジームを示すものであれば,サブコントローラ102は,ステップ210において第1の調整されたDEF投与率を,状態がそうではないことを示すまで,最小の,又は管理された低レベルの投与率に調整する。推定モデル106からの情報が安定的レジームを示すものであれば,サブコントローラ102は,ステップ212において,第1の調整されたDEF投与率をDEF投与ユニットに供給する。
【0029】
決定ステップ204において入口条件が不安定レジームでの作動に適当と判断された場合には,判定ステップ214において加水分解触媒の貯蔵量推定モデル106を使用することにより,加水分解触媒の状態を判断する。次に,決定ステップ216においてプロセスは,推定モデル106からの推定情報が不安定レジームを示すか否かを判断する。その情報が安定レジームを示す場合には,サブコントローラ102により第1の調整されたDEF投与率を,状態が安定レジームを示さなくなるまで,最大の,又は管理された高レベルの投与率に調整する。推定モデル106からの情報が不安定レジームを示す場合には,ステップ220において,サブコントローラ102によりアンモニア・フィードフォワード/フィードバックコントローラ110からの出力を計算すると共に,アンモニア等価体貯蔵量コントローラからの貯蔵量を修正する。この計算は,図5に示すサブルーチンにより実行するものである。
【0030】
アンモニア・フィードフォワード/フィードバック計算及び貯蔵量修正のためのサブルーチンは開始ステップ300において開始され,判定ステップ302に移行する。判定ステップ302では,加水分解触媒におけるアンモニア等価体貯蔵量推定値が,予め定められている目標値を超えているか否かを判断する。貯蔵量推定値が目標値に満たないと判断された場合には,ステップ304において,アンモニア等価体貯蔵量コントローラ110によりアンモニア出口目標値バイアスを増加させる。貯蔵量推定値が目標値を超えていると判断された場合には,ステップ306において,アンモニア等価体貯蔵量コントローラ110によりアンモニア出口目標値バイアスを減少させる。アンモニア出口目標値バイアスデータ308は,サブルーチンの一部として蓄積し,かつ読み出すことができる。
【0031】
サブルーチンにより目標値バイアスに対する調整が決定されたら,サブルーチンは,ステップ301において,メインコントローラ100から受信した第1の調整されたDEF投与率をアンモニア等価体出口目標値に変換する。ステップ304又は306において決定されたアンモニア出口目標値バイアスは,ステップ312においてアンモニア等価体出口目標値に加算し,これによりバイアス加算アンモニア出口目標値を生成する。次に,ステップ314において,アンモニア等価体貯蔵量コントローラ110により,加水分解触媒アンモニアセンサ34により測定された加水分解触媒18におけるアンモニア濃度が,ステップ312において計算したこのバイアス加算アンモニア出口目標値を超えているか否かを判断する。アンモニア濃度がバイアス加算アンモニア出口目標値に満たないと判断された場合には,ステップ316において,サブルーチンによりDEF投与バイアス値を減少させる。アンモニア濃度がバイアス加算アンモニア出口目標値を超えていると判断された場合には,ステップ318において,サブルーチンによりDEF投与バイアス値を増加させる。DEF投与率バイアスデータ320は,サブルーチンの一部として蓄積し,かつ読み出すことができる。
【0032】
DEF投与バイアス値が決定されたら,そのバイアス値を第1の調整されたDEF投与率に加算し,これにより第2の調整されたDEF投与率を生成する。
【0033】
図6は,SCRシステムの例示的な操作手順の間におけるシステム10の各種パラメータの経時変化を示す。これらのパラメータは,排出ガス中のNOx及びアンモニア濃度,排出系入口温度,DEF投与率及び加水分解触媒におけるアンモニア等価体貯蔵量である。説明の便宜のため,時間はフェーズA~Gに区分されている。例示的な操作手順のフェーズAにおいて,ステートマシン104は,図4に示す制御プロセスに基づいて,入口条件が不安定レジームでの作動に適当なものではあるが,推定モデル106からの推定情報が安定レジームを示すものでないことを判断する。従って,ECM26は,DEF投与ユニット16がDEFを加水分解触媒18に最大投与率で噴射するようにDEF投与ユニット16を制御し,その結果として加水分解触媒におけるアンモニア濃度及びアンモニア等価体貯蔵量を増加させる。フェーズAにおける排出ガス温度は,一定である。
【0034】
例示的な操作手順のフェーズBにおいて,ECM26は,排出系内でNOxが検出された旨の通信をNOxセンサ28から受信する。その時点でステートマシン104は,図4のプロセスに基づき,入口条件及び推定モデル106が不安定レジームを示すものと判断する。従って,プロセスは,図5に示すサブルーチンを使用して,アンモニア・フィードフォワード/フィードバックコントローラ108からの出力を計算すると共に,アンモニア等価体貯蔵量コントローラ110からの貯蔵量修正を行う。この場合,ECM26は,DEF投与ユニット16に,加水分解触媒18へのDEF投与率を減少させるように指示する。その結果,排出系内におけるアンモニア濃度にスパイクが生じ,検出されたNOxがSCR触媒内でアンモニアにより処理される。加水分解触媒へのDEF投与率の低下により,更に,加水分解触媒におけるアンモニア等価体貯蔵量が一時的に低下し,これに伴ってDEF投与バイアス値が増加する。
【0035】
例示的な操作手順のフェーズCにおいて,ステートマシンによるプロセスは,入口条件が不安定レジームでの作動に好適であり続け,状態推定器106が不安定レジームを示すものと判断する。サブプロセスステップ220が行われて出口側アンモニア目標値バイアスを減少させ,このプロセスは目標値が達成されるまで続行される。
【0036】
例示的な操作手順のフェーズDにおいて,ECM26は,排出系の入口でNOxが検出された旨の通信を再びNOxセンサ28から受信する。ステートマシン104も,図4のプロセスに基づき,入口条件が不安定レジームに好適であり,推定モデル106が不安定レジームを示すものと再び判断する。従って,プロセスは,図5に示すサブルーチンを使用して,アンモニア・フィードフォワード/フィードバックコントローラ108からの出力を計算すると共に,アンモニア等価体貯蔵量コントローラ110からの貯蔵量修正を行う。この場合,ECM26は,DEF投与ユニット16に,加水分解触媒18への出口側アンモニア目標値バイアスを減少させるように指示する。その結果,検出されるNOxをSCR触媒内においてアンモニアにより処理するための排出系内におけるアンモニア濃度にスパイクが生じる。すなわち,加水分解触媒からのアンモニア等価体の放出を阻害するDEF噴射がもはや存在しなくなるため,排出系内におけるアンモニア濃度にスパイクが生じる。加水分解触媒へのDEF投与率の低下により,更に,加水分解触媒におけるアンモニア等価体貯蔵量が一時的に低下し,これに伴ってその補償のために出口側アンモニア目標値バイアスが増加する。例示的な操作手順のフェーズEにおいては,これと同じプロセスが行われるが,入口条件が変化せず,所要のアンモニア貯蔵目標値が達成されているため,バイアス値の変化は小さい。
【0037】
例示的な操作手順のフェーズFにおいて,ECM26は,排出ガス温度が上昇したものと判断する。初めは,操作レジーム・ステートマシンは,条件が不安定レジームでの作動に好適であるものと決定し,ECM26は,DEF投与ユニット16が加水分解触媒に対してDEFを噴射する噴射率を最大率まで線形的イ増加させることにより,目標値バイアスステップ304における排出ガス温度の上昇にも関わらずアンモニア放出を阻止するように,DEF投与ユニットを制御する。間もなくステートマシンは,排出ガス温度の上昇継続時間がアンモニア放出を更に抑制するには長すぎると判断する。次にECM26は,ステップ210におけるようにDEF投与ユニット16を制御して,加水分解触媒に対するDEFを噴射する噴射率をゼロに向けて減少させる。このステップは,事後SCRスリップの可能性を回避するために,漸減的とすることができる。排出ガス温度の上昇により,アンモニア及びその他の物質が放出される際の加水分解触媒におけるアンモニア等価体貯蔵レベルは減少する。
【0038】
例示的な操作手順のフェーズGにおいて,ECM26は,NOxが再び排出系に検出されたものと判断する。この時点で操作レジームのステートプロセスは,ステートマシンに,入口条件及びアンモニア等価体貯蔵量推定値のいずれも不安定レジームを示すことを通知する。従って,図3に示すように,メインコントローラにより決定された第1の調整されたDEF投与率は単に直接的にDEF投与ユニット16に送信され,これによりDEF投与ユニットは,通常の態様でNOxにより規定される投与率をもって,DEFを加水分解触媒18に投与する。換言すれば,排出ガス温度が昇温状態を維持し,アンモニア等価体貯蔵量がゼロである場合,NOxが加水分解触媒の上流側で検出されればDEFが加水分解触媒18に噴射され,そのDEF投与率は加水分解触媒18の上流側におけるNOxレベルに対して比例的である。
【0039】
DEFを制限してアンモニア等価体の貯蔵を回避する代わりに,本発明のシステム及び方法では,加水分解触媒に合理的な量のアンモニア等価体貯蔵量を維持し,その貯蔵量を,更になる投与の継続に基づく冷却効果によって安定化させるものである。アンモニアを放出する必要がある場合,アンモニアは,DEF投与率の増加ではなく,減少によって放出される。
【0040】
加えて,本発明のシステム及び方法では高い量のアンモニア等価体が維持されるため,エンジンをスイッチオフして事後処置システムを冷却させると,DEFの水分が蒸発して尿素を残留させる。その尿素は,低温投与の代わりとして,エンジン始動時に放出することができる。
【0041】
本発明の制御プロセスは,SCR触媒の入口でアンモニアが必要とされないときに投与が指示され,アンモニアが必要とされるときに投与を停止させるという,反直感的な作動モードを有している。比較的大量のアンモニア及びアンモニア等価体を,意図的に加水分解触媒に貯蔵するものである。最後に,先行するエンジン作動フェーズからの比較的多量のアンモニア等価体が加水分解触媒に蓄積されているために,エンジン始動時におけるNOx変換を,既知のシステムにおけるよりも改善することができる。
【0042】
添付した特許請求の範囲により規定される本発明の技術的範囲を逸脱することなく,修正及び改良を行えることは,言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6