(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】飲料調製用カプセル
(51)【国際特許分類】
A47J 31/06 20060101AFI20220414BHJP
A47J 31/34 20060101ALI20220414BHJP
A47J 31/36 20060101ALI20220414BHJP
B65D 85/804 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
A47J31/06 323
A47J31/34
A47J31/36 120
B65D85/804 200
(21)【出願番号】P 2019547469
(86)(22)【出願日】2018-03-12
(86)【国際出願番号】 IB2018051625
(87)【国際公開番号】W WO2018167642
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】102017000029991
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】102017000077507
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514028558
【氏名又は名称】カフィタリー システム エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】CAFFITALY SYSTEM S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ アキュルシ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト フィーニ
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-539443(JP,A)
【文献】特表2015-510786(JP,A)
【文献】特表2015-530142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00-31/60
B65D 85/804
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を通過させることによって飲料を作成することができる粉末化食品物質(8)を収容している飲料作成用のカプセル(1)において、
第1端縁(23)と第2端縁(24)との間に延在す
る管状側壁(21)と
、前記第1端縁(23)に連結し、かつ前記管状側壁(21)の中心軸線(25)に交差する方向に延在する底部(22)とを備えたカップ状の格納本体(2)であって、前記底部(22)は分注孔(26)を有し、また前記格納本体(2)それ自体内に格納チャンバ(20)を画定する、該格納本体(2)と、
前記格納本体(2)の頂部を閉鎖するよう前記第2端縁(24)に固着された閉鎖素子(29)と、
前記格納チャンバ(20)内に備え付けられ、また前記粉末化食品物質(8)と前記底部(22)との間に位置決めされるフィルタ素子(3)と、
前記格納チャンバ(20)内に備え付けられ、また前記フィルタ素子(3)と前記底部(22)との間に位置決めされた分注素子(5)であって、使用にあたり前記分注孔(26)に向って流れる飲料のための曲折経路を生ずることを意図している、該分注素子(5)と、
を備え、
前記分注素子(5)は、前記フィルタ素子(3)に対面する側の第1面(51)と、前記格納本体(2)の前記底部(22)に対面する第2面(52)と、前記第1面(51)及び前記第2面(52)を互いに接合する周面(53)を有し、
前記分注素子(5)は、前記第1面(51)の中心領域における中心チャンバ又は窪み(551)と、環状領域における1つ又はそれ以上の環状チャンバ又は窪み(552)と、前記
中心チャンバ又は窪み(551)と前記環状チャンバ又は窪み(552)とを相互に、また前記周面(53)に連通させる複数個のチャンネル(553)とを有し、
前記分注素子(5)は、前記第2面(52)の環状領域における1つ又はそれ以上の環状チャンバ又は窪み(562)と、前記環状チャンバ及び窪み(562)を前記周面(53)及び前記分注孔(26)に連通させる複数個のチャンネル(563)とを有し、
飲料のための前記曲折経路は、前記分注素子(5)の前記第1面(51)、周面(53)及び前記第2面(52)に関与するものである、カプセル。
【請求項2】
請求項1記載のカプセル(1)において、前記分注素子(5)の前記第1面(51)の中心領域における中心チャンバ又は窪み(551)は、分注すべき飲料を受容することが意図されるピットである、カプセル。
【請求項3】
請求項1又は2記載のカプセル(1)において、前記分注素子(5)の前記第1面(51)の中心領域における中心チャンバ又は窪み(551)は、前記分注素子(5)の前記第1面(51)の環状領域における1つ又はそれ以上の環状チャンバ又は窪み(552)よりも深くかつ大きい容量を有する、カプセル。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか1項記載のカプセル(1)において、前記分注素子(5)の前記第1面(51)の環状領域における前記1つ又はそれ以上の環状チャンバ又は窪み(552)は、1つ又はそれ以上の同心状溝であり、前記同心状溝における第1溝は、前記第1面(51)の前記中心領域における中心チャンバ又は窪み(551)からの飲料を受容することを意図されており、他の同心状溝各々は、前記第1面(51)の前記中心領域により近接する対応の同心状溝からの飲料を受容することを意図されている、カプセル。
【請求項5】
請求項4記載のカプセル(1)において、前記第1面(51)の前記環状領域における1つ又はそれ以上の環状チャンバ又は窪み(552)は、環状分割壁(571)によって区切られ、前記第1面(51)のチャンネル(553)が前記環状分割壁(571)に作製され、かつ前記環状分割壁(571)の周囲に沿って分布されており、前記第1面(51)の前記チャンネル(553)は、連通されている前記
中心チャンバ又は窪み(551)及び前記環状チャンバ又は窪み(552)の深さよりも深くない、カプセル。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか1項記載のカプセル(1)において、前記分注素子(5)の前記第1面(51)における前記チャンネル(553)は、ほぼ半径方向チャンネルである、カプセル。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか1項記載のカプセル(1)において、前記分注素子(5)の前記第2面(52)における前記環状領域の前記1つ又はそれ以上の環状チャンバ又は窪み(562)は、1つ又はそれ以上の同心状溝であり、前記同心状溝における第1溝は、前記分注素子(5)の前記周面(53)からの飲料を受容することを意図されており、他の同心状溝各々は、前記周面(53)により近接する同心状溝からの飲料を受容することを意図されている、カプセル。
【請求項8】
請求項1~7のうちいずれか1項記載のカプセル(1)において、前記分注素子(5)は、前記周面(53)に、前記分注素子(5)における前記第1面(51)及び前記第2面(52)を互いに連通させるチャンネル(573)を有する、カプセル。
【請求項9】
請求項1~8のうちいずれか1項記載のカプセル(1)において、前記分注素子(5)は、前記第2面(52)に、前記分注孔(26)の中心位置に収容される案内突起(58)を有する、カプセル。
【請求項10】
請求項1~9のうちいずれか1項記載のカプセル(1)において、前記格納チャンバ(20)内に備え付け、また前
記フィルタ素子(3)と前記分注素子(5)との間に介在させた酸素不透過性バリア(6)を備え、前記酸素不透過性バリア(6)は酸素密に前記格納本体(2)に固着し、使用中に断裂して飲料が通過するのを可能にするよう意図されている可撓性材料シートであり、
前記酸素不透過性バリアの前記可撓性材料シート(6)は少なくとも1つの所期断裂ゾーン(60)を有し、該所期断裂ゾーン(60)において、前記可撓性材料シートが使用にあたり断裂することを意図されており、
前記分注素子
(5)の前記第1面(51)は前記酸素不透過性バリアの可撓性材料シート(6)に対面し、また前記分注素子(5)の前記第1面(51)の中心領域における中心チャンバ(551)は少なくとも1つの所期断裂ゾーン(60)を取り囲み、これにより前記分注素子(5)は、前記第1面(51)の中心領域における中心チャンバ又は窪み(551)で飲料フローを受容するよう意図されている、カプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を通過させることによって飲料を作成することができる粉末化食品物質8を収容している飲料作成カプセルに関する。その食品物質は、可溶性又はローストした若しくは挽いたコーヒー豆のような、浸出液によって抽出できるタイプとすることができる。
【背景技術】
【0002】
とくに、本発明は、特許文献1~4(欧州特許第1472156号、同第1500358号、同第1574452号、同第1808382号)に記載されたタイプのカプセルに関する。すなわち、適当な飲料作成マシンに使用するとき、下方のカップ内に直接飲料を分注できるカプセルである。そのカプセルは、底部に分注孔を設けたカップ状の格納本体を有する。格納本体は、頂部を閉鎖素子によって閉鎖され、粉末化食品物質と底部との間に位置決めされる少なくとも1つの下側フィルタ素子が存在する。このタイプのカプセルに関して、カプセルは、概して、カプセルを使用する前に酸素が粉末化食品物質に向う通過を阻止するように作製される。このことは、粉末化食品物質が劣化するのを防止する。さらに、カプセルを使用する瞬間に、飲料作成マシンは、水をカプセル内に注入するため上側閉鎖素子のみ穿刺する。多くの従来カプセルにおいて、飲料の流出フローは、カプセルがアルミニウムシートで作製した酸素バリアを備えており、カプセル内への水注入後に膨張して、この酸素バリアがカプセル内に存在する固定接触素子に接触して断裂するという事由によって達成される。とくに、下側フィルタ素子は、膨張すると即座にアルミニウムシートを断裂させることができる角錐状スパイクにより実際的に完全にカバーされている。
【0003】
さらに、上述したように、これら従来技術のカプセルにおいては、飲料はカプセルから直接的にカップ内に分注される、すなわち、マシンのいかなる部分にも接触することなく、カップ内に分注される。この目的のために、射出成形されるカプセル収納本体は、外方に突出しかつ分注孔を取り囲むリングを有し、このリングが流出する飲料を案内して下方のカップに向けて正確に指向させるのを保証する一種の短管を生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許第1472156号明細書
【文献】欧州特許第1500358号明細書
【文献】欧州特許第1574452号明細書
【文献】欧州特許第1808382号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カプセルに注入される水は、高圧であり、アルミニウムシートが断裂した後、しぶきとなって飲料の不規則なフローを生ずることに留意されたい。この問題は、カップ内に直接分注するカプセルに関してはより大きな問題となり、これはすなわち、カプセル外部に飲料フローを調節するのに適した分注器(ディスペンサー)が存在しないからである。
【0006】
さらに、飲料分注の終了時に、カプセルから多量の雫落ちがあり、これはすなわち、飲料作成ステップ中に吸収した水を粉末化食品物質が放出するからである。カップを取り外した後この雫落ちが下方表面を汚し、またユーザーは雫が落ちるカプセルを処分しなければならないから面倒である。
【0007】
この背景において、本発明の基礎をなす主な技術的目的は、上述のカプセルを使用する同一タイプのマシンに使用できるが、従来カプセルに対して代替的なやり方で作製される飲料作成カプセルを得るにある。
【0008】
本発明の技術的目的は、さらに、飲料の流出フローが整然としており、またほぼ加圧しぶきのないカプセルを得るにある。
【0009】
本発明の第2の技術的目的は、分注終了時に雫落ちがほぼ無視できる又は存在しないカプセルを得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このように特定される技術的目的及び記載された目標は、特許請求の範囲に記載されるような飲料作成カプセルによってほぼ達成される。
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面に示す飲料作成カプセルの幾つかの好適な非限定的実施形態を参照する以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態により作製した飲料作成カプセルの側面図であり、カプセルの側壁の一部はカプセル内部を示すよう部分的に切除している側面図である。
【
図2】
図1のカプセルおけるII-II線上の断面図であり、内部構造をよりよく示すため粉末化食品物質のない状態にした断面図である。
【
図3】
図1のカプセルにおける上側フィルタ素子を頂部から見た斜視図である。
【
図4】
図3の上側フィルタ素子を底部から見た斜視図である。
【
図6】
図1のカプセルにおける下側フィルタ素子を頂部から見た斜視図である。
【
図7】
図6の下側フィルタ素子を底部から見た斜視図である。
【
図9】
図1のカプセルにおける分注素子を頂部から見た斜視図である。
【
図10】
図9の分注素子を底部から見た斜視図である。
【
図12】
図9の分注素子おけるXII-XII線上の断面図である。
【
図13】
図9の分注素子おけるXIII-XIII線上の断面図である。
【
図14】
図1のカプセルにおけるフロー絞り素子の平面図である。
【
図15】
図1のカプセルにおける酸素不透過性バリア素子の平面図である。
【
図16】
図15の酸素不透過性バリア素子におけるXVI-XVI線上の拡大断面図である。
【
図17】
図14のフロー絞り素子における一部及び
図16の酸素不透過性バリア素子における一部を互いに重ね合わせた状態の拡大断面図である。
【
図18】
図1のカプセルにおける底部の簡略化した平面図であり、14のフロー絞り素子及び
図14の酸素不透過性バリア素子を互いに重ね合わせた状態の平面図である。
【
図19】本発明の第2実施形態により作製した飲料作成カプセルの側面図であり、カプセルの側壁の一部はカプセル内部を示すよう部分的に切除している側面図である。
【
図20】
図19のカプセルおけるXX-XX線上の断面図であり、内部構造をよりよく示すため粉末化食品物質のない状態にした断面図である。
【
図21】
図19のカプセルにおける分注素子を頂部から見た斜視図である。
【
図24】
図21の分注素子におけるXXIV-XXIV線上の断面図である。
【
図25】
図21の分注素子におけるXXV-XXV線上の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述の図面について言及すると、参照符号1は本発明により作製したカプセル全体を示す。
【0013】
従来のカプセルと同様に、本発明によるカプセル1は、水(とくに、加圧熱水)を通過させることによって飲料を作成することができる粉末化食品物質8を収容している。粉末化食品物質8は可溶性タイプ、又は以下により詳細に説明するように多少加圧した浸出液によって抽出できるタイプとすることができる。いずれにせよ、若干の抽出圧力は常に必要である。
【0014】
とくに、粉末化食品物質8は、ロースト豆挽きコーヒーパウダーである。このようにして得られる飲料はエスプレッソコーヒーである。
【0015】
図面を簡潔にするため、粉末化食品物質8は
図1及び19にのみ示し、カプセル1の本体には内部を見せる窓スタイルの切除部を設けて示すとともに、粉末化食品物質8は他の添付図面には示さないことに留意されたい。粉末化食品物質8は、下側フィルタ素子(参照符号3)と上側フィルタ素子(参照符号4)との間、又は上側フィルタ素子が存在しない場合には、下側フィルタ素子3と閉鎖素子29との間に格納される。
【0016】
カプセル1は、先ず、カップ状であり、また管状側壁21及び底部22を識別できる格納本体2を備える。格納本体2は、格納チャンバ20を内部に画定する。管状側壁21は第1端縁23及び第2端縁24との間に延在する。底部22は、第1端縁23に連結し、また管状側壁21の中心軸線25に対して交差する方向(とくに、直交方向)に延在し、中心軸線25はカプセル1の中心軸線でもある。底部22は、さらに、とくに中心ゾーンに分注孔26を有する。酸素バリアとして作用できる多層材料のシートのような閉鎖素子29を、管状側壁21の第2端縁24に固着し、格納本体2並びに格納チャンバ20の頂部を閉鎖する。閉鎖素子29は、通常封止剤又は接着剤によって固着する。
【0017】
図示の実施形態において、格納本体2の管状側壁21及び底部22は、一体ピースとして作製し、とくに、成形プラスチック材料又は熱成形多層フィルムのような酸素バリアとして作用できる材料で作製する。
【0018】
図面に示す実施形態において、格納本体2の底部22は、分注孔26を包囲する内側環状ゾーン221、内側環状ゾーン221を包囲する中間環状ゾーン222、及び中間環状ゾーン222を包囲する外側環状ゾーン223を有する。3つのゾーンは段差を付けて配列し、内側環状ゾーン221は閉鎖素子29から中間環状ゾーン222よりも遠くに離れ、中間環状ゾーン222は閉鎖素子29から外側環状ゾーン223よりも遠くに離れて配列される。実際上、底部22はカプセル1の頂部から離れる方向に突出する突出部分を有する。カプセル1の内側で、内側環状ゾーン221、中間環状ゾーン222及び外側環状ゾーン223は、それぞれ中心軸線25に対して交差する方向に延在する休止表面を画定する。種々の休止表面は中心軸線25に対して同心状である。
【0019】
とくに、格納本体2は、酸素バリアにしてあるプラスチック材料を熱成形することによって作製し、分注孔26は打ち抜き加工することができる。しかし、概して、格納本体2は、任意な材料及び任意な方法、例えば、射出成形によって作製することができる。
【0020】
とくに、下側フィルタ素子であるフィルタ素子3は、格納チャンバ20に備え付け、また粉末化食品物質8と底部22との間に位置決めする。下側フィルタ素子3は、例えば、複数個の貫通孔31を設けた剛性又は半剛性のプラスチック素子とする。図面は、例示バージョンである下側フィルタ素子3を示し、半径方向補強リブ33及び粉末化食品物質8に向って突出する中心膨出部35の双方を有する。この実施例において、半径方向リブ33は、下側フィルタ素子3の底部22に対面する側の面及びそれとは反対側の粉末化食品物質8に対面する面の双方に設ける。
【0021】
下側フィルタ素子3は、外側環状ゾーン223の内面に休止し、また管状側壁21に作製された整形窪み27によって所定位置に保持される。下側フィルタ素子3は、例えば、スナップ動作でカプセル1内に挿入される。
【0022】
図示の特定の実施形態において、カプセル1は、さらに、閉鎖素子29と粉末化食品物質8との間に位置決めされる上側フィルタ素子4を備える。上側フィルタ素子4は、さらに、剛性又は半剛性のプラスチック素子とし、複数個の孔41及びリブ43を設けることができる。他の実施形態も可能である。
【0023】
本発明によるカプセル1は、下側フィルタ素子3と底部22との間に位置決めされる分注素子5を備える。とくに、分注素子5は中間環状ゾーン222及び内側環状ゾーン221の内面に休止する。基本的に、分注素子5は、飲料が直接分注孔26に達するのを防止することによって、使用にあたり分注孔26に向って流れる飲料の曲折経路を創出することを意図するフローダイバータ(転向器)である。分注素子5は、例えば、カプセル1の底部22に連結される成形プラスチック材料で作製される。
【0024】
分注素子5の第1実施形態を
図9~13に詳細に示すとともに、第2実施形態を
図21~25に示す。
分注素子5は、下側フィルタ素子3に対面する、すなわち、カプセル1の頂部に対面する第1面51(上面)と、格納本体2の底部22に対面する第2面52(下面)を有する。分注素子5は、さらに、第1面51及び第2面52を互いに結合する周面53又は環状面を有する。
【0025】
第1面51において、分注素子5は、中心領域(基本的にカプセル1の中心軸線25)におけるチャンバ又は窪み551と、環状領域における1つ又はそれ以上のチャンバ又は窪み552と、これらチャンバ又は窪み551、552を互いにまた周面53に連通させる複数個のチャンネル553とを有する。
【0026】
具体的には、使用中には、飲料は第1面51に受容され、この第1面51においてチャンネル553に沿って流動することによってチャンバ551、552のうち一方から他方に通過し、最終的に周面53に達し、この周面53から飲料は第2面52に通過する。
【0027】
とくに、中心チャンバ又は窪み551は分注すべき飲料を収集することを意図したピットであり、このピットから飲料は環状チャンバ又は窪み552に通過する。そのことは、飲料フローを緩慢にさせ、供出口でのしぶきを減少させるのに役立つ通路断面が変化する伸張した経路を創出するのに有用である。
【0028】
図示のように、中心チャンバ又は窪み551は、1つ又はそれ以上の環状チャンバ又は窪み552よりも深くかつ容量が多い。例えば、図は、中心チャンバ551が分注素子5のほぼ全高に達するほどの深さを有することを示す。そのことは、そうすることによって中心チャンバ551がその上方の下側フィルタ素子3から流れ落ちる流体の流速を不規則的に減速できる貯留チャンバとして作用できるため、有用である。
【0029】
図9~13の実施形態において2つ存在する環状チャンバ又は窪み552は、例えば同心状の溝である。内側の第1同心状溝552は、中心チャンバ551からの飲料を受容することを意図し、他の同心状溝552それぞれは、対応するそれより内側の、すなわち、第1面51の中心領域により近い同心状溝からの飲料を受容することを意図する。
【0030】
基本的に、使用中各環状チャンバ552は、中心チャンバ551からの、又は同心状環状チャンバ552の配列順序の位置に基づいて先行環状チャンバ552からの飲料を受容する。最も外側の環状チャンバ552に達した後、飲料は周面53に進行する。
【0031】
飲料は、とくに、ほぼ半径方向に延在する、すなわち、ほほ半径方向チャンネルであるチャンネル553に沿って移行することによって一方のチャンバ551、552から他方のチャンバに通過する。
【0032】
実際的には、第1面51における飲料フローは、中心から周縁に向って曲折転向しながら流れ、この曲折転向は環状チャンバ552及びチャンネル553における通路に起因する。
【0033】
とくに、環状チャンバ又は窪み552は、チャンバ又は窪みを互いに分割する環状分割壁571によって区切られる。各環状チャンバ又は窪み552は、より外側の環状分割壁571によって、及びより内側の環状分割壁571によって区切られる。基本的に、環状分割壁571は、互いに同心状であるリング状壁である。チャンネル553は、環状分割壁571に、とくに、環状分割壁571の頂面に作製され、環状分割壁571の周方向に分布される。さらに、チャンネル553は、そのチャンネル553に連通するチャンバ又は窪み551、552の深さよりも浅い深さである。小さくかつ多数のチャンネル553は、飲料フローの圧力低下を増大させ、またしぶきを発生させる圧力ピークを減衰させるのに有用である。
【0034】
第2面52において、分注素子5は、環状領域において1つ又はそれ以上のチャンバ又は窪み562と、これら1つ又はそれ以上のチャンバ又は窪み562を周面53及び分注孔26に連通させる複数個のチャンネル563とを有する。
【0035】
図9~13の実施形態では1つのみである環状チャンバ又は窪み562は、例えば、同心状溝である。
【0036】
最も外側である第1同心状溝562は、周面53からの飲料を受容することを意図する。任意な他の同心状溝562の各個は、より外側のすなわち、周面53及び第2面52の周縁に近い対応の同心状溝562からの飲料を受容することを意図する。
【0037】
基本的に、使用中、各環状チャンバ562は、同心状環状チャンバ562の配列順序の位置に基づいて先行の環状チャンバ562(あるとするならば)からの飲料を受容する。分注孔26が配置される第2面52の中心領域に達した後、飲料はカプセル1から流出する。
【0038】
飲料は、とくに、ほぼ半径方向に延在するチャンネル563に沿って移行することによって一方のチャンバから他方のチャンバに通過する。
実際的には、第2面52における飲料フローは、周縁から中心に向って曲折転向しながら流れ、この曲折転向は環状チャンバ562及びチャンネル563における通路に起因する。
【0039】
第1面51につき説明したのと同様に、第2面52に関しても、環状チャンバ又は窪み562は、チャンバ又は窪みを互いに分割する環状分割壁572によって区切られる。チャンネル563は、環状分割壁572に、とくに、環状分割壁572の底面に作製され、環状分割壁572の周方向に分布され、またそのチャンネル563によって連通するチャンバ又は窪みの深さよりも浅い深さである。第2面52に関しても、小さくかつ多数のチャンネル563は、飲料フローの圧力低下を増大させ、またしぶきを発生させる圧力ピークを減衰させるのに有用である。
【0040】
カプセル1の出口に向けて飲料フローを指向させるのをより容易にするため、分注素子5は、第2面52、とくに、その中心に案内突起58を有する。この案内突起58は分注孔26の中心位置に収容され、実際的には、第2面52から下方に突出して分注孔26に突入し、流出する飲料を転向かつ案内するペグ又はそれに類似するものである。
【0041】
とくに、分注素子5は、周面53において第1面51及び第2面52を互いに連通させるチャンネル573を有する。
【0042】
図に示すように、分注素子5は、格納本体2の底部22の突出部分に全体的に収容される。分注素子5の第1面51は、外側環状ゾーン223とほぼ同一レベルであるとともに、分注素子5の第2面52は中間環状ゾーン222及び内側環状ゾーン221上に休止する。
【0043】
分注孔26に達するためには、中心チャンバ又は窪み551にある飲料は、環状チャンバ552、562及びチャンネル553、563、573を通過する曲折経路に追従しなければならない。
【0044】
留意すべきは、上述したように、多くのチャネル553、563、573が存在し、これらチャンネル553、563、573は、チャンバ551、552、562を互いに分割する分割壁の全周に沿って分布され、小さい通路断面を有し、互いに連通するチャンバ551、552、562の深さに比べるとそれ程深くないことである。換言すれば、分注素子5におけるチャンバ551、552、562及びチャンネル553、563、573のシーケンスは、飲料が分注孔26に達し、またカプセル1から流出するために追従しなければならないある種迷路状の経路を形成する。
【0045】
その曲折経路に起因して、分注素子5は飲料フローの勢いを弱めまた緩慢にする。そのことは、分注孔26からしぶきを発生することなく規則的な分注を生ずるのに役立つ。
【0046】
飲料の曲折経路は、分注素子5の第1面51、周面53及び第2面52を含む。
【0047】
カプセル1は、さらに、格納チャンバ20内に備え付け、また下側フィルタ素子3と分注素子5との間に介在させた酸素不透過性バリアを備える。この酸素不透過性バリアは酸素密に格納本体2に固着し、使用中に断裂することを意図されている可撓性材料シート6である。カプセル1を使用する前に、粉末化食品物質8を格納する格納チャンバ20の一部を酸素密に封止する。カプセル1の使用中に、閉鎖素子29及び可撓性材料シート6を断裂させ、水を進入させ及び飲料を流出させることのそれぞれを可能にする。
【0048】
この目的のために、可撓性材料シート6は、使用にあたり断裂し得る少なくとも1つの所期断裂ゾーン60を有する。図示の特定実施形態においては、可撓性材料シート6は、とくに、シート6の中心領域における単一所期断裂ゾーン60を有する。実際的には、単一所期断裂ゾーン60はカプセル1の中心軸線25に配置される。
【0049】
図示の形態において、分注素子5の第1面51は可撓性材料シート6に対面し、とくに、この可撓性材料シート6は分注素子5上に休止し、かつこの第1面51に接触する。したがって、分注素子5の中心チャンバ551は可撓性材料シート6に対面しかつ所期断裂ゾーン60を取り囲み、これにより分注素子5は、中心チャンバ又は窪み551で直接飲料フローを受容できるようになる。
【0050】
図示の実施形態において、可撓性材料シート6は、プラスチック材料、好適には、ポリエチレン又はポリエステルで作製されたフィルムからなる少なくとも1つの第1層61と、アルミニウムフィルムからなる第2層62とを有し、これら層は互いに結合する。第1層61は下側フィルタ素子3と第2層62との間に介在し、この第2層62は第1層61と分注素子5との間に介在する。
【0051】
所期断裂ゾーン60において、第1層61は、切れ込み615又は貫通開口を有し、また第2層62から局所的に分断されており、第1層61の下側フィルタ素子3に対面する側の側面における圧力が増加した後、第2層62が所期断裂ゾーン60で局所的に底部22に向って破裂するまで膨張できるようになる。
【0052】
換言すれば、カプセル1の使用中に、加圧された飲料は、プラスチック材料の第1層における切れ込み615に通過し、アルミニウムフィルムの第2層62における第1層61から分断されている領域に直接作用し、第2層62を膨張させ、最終的に第2層62は降伏かつ断裂し、これにより分注孔26に向かう飲料の通路を開口させる。
【0053】
とくに、所期断裂ゾーン60は分注素子5の中心チャンバ551の上方にあり、またしたがって、中心チャンバ551自体が第2層62を膨張させるための拡張空間を提供する。留意すべきは、可撓性材料シート6の破断は、2つの面間の圧力差に起因して第2層62の破断強度を超えることにある。シート6及び分注素子5の断裂穿刺によるものではない。実際、可撓性材料シート6の断裂は、中心チャンバ551よりも相当小さく、その中心チャンバ551自体内に全体が包囲される寸法の領域に作用する。
【0054】
図示の実施形態において、切れ込み615は十字形状であり、分断領域は円形形状である。他の形状も可能であることは勿論である。
【0055】
可撓性材料シート6は、さらに、第1層61と第2層との間に介在して互いに付着し合うことを確実にする接着剤層63を有することができる。接着剤層63は所期断裂ゾーン60での分断を生ずる。可撓性材料シート6は、さらに、第2層62の第1層61に対面する側とは反対側の面に塗布したラッカー層64と、また必要である場合、第2層62に関連して上述したラッカー層64と同一側に撚り合わせプラスチック繊維層65とを有し、第2層62が第1層61と撚り合わせプラスチック繊維層65との間に介在する状態となるようにする。とくに、撚り合わせプラスチック繊維層65は、織成又は不織のポリエステルからなるものとする。
【0056】
好適な実施形態において、種々の層の厚さは、以下の通り、すなわち、
・第1層61:10μm±4μm、
・接着剤層63:4μm±2μm、
・第2層62:7μm±3μm、
・ラッカー層64:4μm±2μm、
・織成又は不織ポリエステル層:11μm±3μm
とする。
【0057】
例えば、アルミニウム層(第2層62)の厚さは、可撓性材料シート6の2つの面間における少なくとも所期断裂ゾーン60で圧力差が少なくとも0.2MPa(2バール)に等しいとき、第2層62が自律的に断裂するよう選択する。特別な技術的要件に基づいて、アルミニウム層62は、勿論、0.2MPa(2バール)未満の圧力で断裂するような厚さを選択することができる。
【0058】
上述した種々の層の厚さは例示的なものであり、また特別な技術的要件に基づいて変更することができる。とくに、厚さは上述したよりも幅広い範囲にあり得る。例えば、アルミニウムの第2層62は6μm~30μmの間とすることができる。
【0059】
切れ込み615はレーザービームで作製することができ、またとくに、第1層61及び第2層62がすでに結合されているときに作製することができる。実際、適当な強度のレーザービームを用いて、ポリエチレンをカットするが、レーザービームを反射するアルミニウムはカットしないようにすることができる。例えば、切れ込み615はほぼ数ミリメートル、好適には、1~10mmとすることができるとともに、切れ込み615の幅は約0.5~1mm、必要であれば、約0.5~2mmとすることができる。
【0060】
可撓性材料シート6の代案的実施形態において、第1層61及び第2層62を所期断裂ゾーン60においても互いに接着し、すなわち、そのゾーンにおいて局所的に分断しない。さらに、切れ込み615はこの代案的実施形態においても存在し、可撓性材料シート6の局所的脆弱部を構成し、加圧飲料がアルミニウムフィルムの第2層62に直接作用してその切れ込み615を破断させることができるようにする。
【0061】
図示の特別な実施形態において、カプセル1は、さらに、下側フィルタ素子3と分注素子5との間に介在する位置で格納チャンバ20内に備え付けたフロー絞り素子7を備える。フロー絞り素子7は、管状側壁21の中心軸線25に交差する方向に延在し、格納チャンバ20内での飲料の通路断面を塞ぐ。実際上、フロー絞り素子7は、中心軸線25に直交するよう位置決めし、また格納チャンバ20の全体断面にわたり延在するディスクである。
【0062】
フロー絞り素子7は少なくとも1つの貫通開口71を有し、使用にあたりこの貫通開口71から飲料は分注素子5に向って流動する。換言すれば、フロー絞り素子7は、飲料フローを強制的に管状側壁21の通路断面よりも相当小さい通路断面を有する少なくとも1つの貫通開口71に通過させる。具体的には、フロー絞り素子7は例えば0.03mm~3mmの厚さを有する薄膜又は薄いプレートである。とくに、この薄膜又は薄いプレートは、単層材料(ポリエチレン、ポリシーン又は格納本体2の材料に封止できる他の材料のような)、多層材料(例えば、封止可能層、任意なプラスチック材料若しくはアルミニウムで作製した中間層、ポリエステル外側層を有する)又はポリエステル+ポリエステル+ポリプロピレン多層材料とすることができる。
【0063】
したがって、具体的には、フロー絞り素子7はプラスチック材料で作製した可撓性シートである。
【0064】
少なくとも1つの貫通開口71は、とくに、材料を除去することなく薄膜に孔を作製する穿孔ニードルを用いて、薄膜又は薄いプレートに作製した孔又は切り込みである。ダイカットのような他の孔作製方法も勿論あり得る。
【0065】
図示の実施形態において、貫通開口71は、0.5mm~3mmの間における直径、とくに、1.2mmの直径の孔である。特別な実施形態において必要である場合、孔71の直径は3mmより大きいものとすることができる。
【0066】
好適には、貫通開口71は不変的に開いたままの孔とする。すなわち、フロー絞り素子7の材料は、フロー絞り素子7に機械的応力が加わるとき孔71を閉鎖できる弾性返しを何ら持たないものとする。さらに、好適には、孔71は、分注する前(すなわち、カプセル未使用状態)及び分注後(すなわち、カプセル使用後)において同一寸法を有する。換言すれば、フロー絞り素子7の材料はカプセル1の使用中に塑性変形しない。
【0067】
具体的には、フロー絞り素子7は、とくに、フロー絞り素子7の中心領域にある単一貫通開口71を有する。実際上、この単一貫通開口71はカプセル1の中心軸線25上に配置される。
【0068】
代案的実施形態において、2つ又はそれ以上の貫通開口71を設けることができるが、その数は限定されない。例えば、最大で10個又は12個設けることができる。好適には、貫通開口71の総通路断面は、格納チャンバ20の対応する通路断面の0.5%以下とする。
【0069】
図示の実施形態において、フロー絞り素子7を形成する薄膜及び酸素不透過性バリアの可撓性材料シート6は一方を他方の上方に重ね合わせる。具体的には、フロー絞り素子7の少なくとも1つの貫通開口71は、可撓性材料シート6の少なくとも1つの所期断裂ゾーン60の位置にあるものとする。他のあり得る実施形態においては、貫通開口71及び所期断裂ゾーン60の位置は互いに対応しないものとする。
【0070】
可撓性材料シート6及びフロー絞り素子7は、それぞれ格納本体2に固着する対応の周縁領域68、78を有する。
図18に示すように、可撓性材料シート6及びフロー絞り素子7は、平面図で見て円形形状を有するが、異なる直径を有する。それぞれの周縁領域68、78は底部22(とくに、外側環状ゾーン223)に封止剤又は接着剤によって固着する。換言すれば、2つのシート6、7は互いにには固着しないが、その代わり、双方ともにカプセル1の底部に固着する。さらに、下側フィルタ素子3は外側環状ゾーン223の内面に休止するため、可撓性材料シート6及びフロー絞り素子7は、一方の側面における下側フィルタ素子3と他方の側面における分注素子5との間に包囲される。
【0071】
特別な実施形態において、フロー絞り素子7は下側フィルタ素子3と酸素不透過性バリア6との間に介在させ、この酸素不透過性バリア6はフロー絞り素子7と底部22との間に介在させる。換言すれば、フロー絞り素子7は粉末化食品物質8に対面し、また酸素不透過性バリア6は分注孔26に対面する。
【0072】
この形態は有用であり、これはすなわち、酸素不透過性バリア6が破断する前に、フロー絞り素子7が所期断裂ゾーン60の膨張に干渉できないようにするからである。
【0073】
逆の形態、すなわち、酸素不透過性バリア6を下側フィルタ素子3とフロー絞り素子7との間に介在させる形態も可能であるが、それほど有利ではない。単に1個の貫通開口71及び単一所期断裂ゾーン60が存在する上述の実施形態において、それらの位置は互いに対応し、またそれらが中心軸線25上並びに分注素子5の中心チャンバ551に存在する。
【0074】
図示の実施形態において、下側フィルタ素子3、フロー絞り素子7、酸素不透過性バリア6及び分注素子5は、それぞれ互いに別個の素子、すなわち、互いに個別のピースであり、必要であれば、またそれぞれの特定目的によりよく適した互いに異なる材料及び形状で作製することができる。
【0075】
しかし、代案的実施形態において、フロー絞り素子7及び酸素不透過性バリア6は一体ピースに組み込むことができる。換言すれば、多層素子は、少なくとも1つの貫通開口71を有する薄膜又は薄いプレート(例えば、フロー絞り素子7用に上述した材料で作製した可撓性シート)である第1層を有し、この第1層を酸素不透過性バリア用に上述したような可撓性材料シート6に結合したものとして、供給することができる。貫通開口71を有する薄膜又は薄いプレートと、互いに結合した可撓性材料シート6とによって、このように形成されて得られた多層素子を、カプセル1の格納本体2に、とくに、底部22の外側環状ゾーン223の内側に固着する。その多層素子において、貫通開口71は、好適には所期断裂ゾーン60に位置する。
【0076】
図19~25はカプセル1の第2実施形態に関するものであり、この第2実施形態は、上述した第1実施形態とは、主に分注素子5の点で、またひいては底部22におけるその着座部の点で異なる。とくに、
図19のカプセルにおいて、分注素子5及びその着座部は、
図1に示すカプセルにおける対応部よりも大きい直径を有する。
【0077】
図21~25に示すように、分注素子5は、第1面51の同心状環状領域における4個のチャンバ又は窪み552と、第2面52の同心状環状領域における3個のチャンバ又は窪み562を有する。第1実施形態の分注素子5と比べると、流出する飲料のフロー経路の曲折を増加させることができる。
【0078】
本発明によるカプセル1の動作を以下に簡単に説明する。
【0079】
カプセル1を飲料作成マシン(例えば、コーヒーメーカー)に挿入するとき、飲料作成マシンに属する適当な穿刺素子が閉鎖素子29に穿刺し、閉鎖素子29自体経由で加圧熱水を格納チャンバ20内に注入する。供給される水を分配するのに供される上側フィルタ素子4(存在する場合)を通過した後、水は粉末化食品物質8に達してそれを潤し、これにより飲料作成プロセスを開始する、すなわち、粉末化食品物質8が可溶性である場合には粉末化食品物質8を溶解する、又は粉末化食品物質8が不溶性である場合には芳香物質8を抽出する。作成された飲料は下側フィルタ素子3に達し、また粉末化食品物質8が漏出するのを阻止するよう保持する機能を有するこの下側フィルタ素子3を通過して、フロー絞り素子7に達する。少なくとも1つの貫通開口71を通過して飲料は、無欠の可撓性材料シート6に達し、また飲料はこの可撓性材料シート6によって停止する。カプセル1内部の圧力増加に続いて、飲料は可撓性材料シート6の第1層61における少なくとも1つの切れ込み615に進行し、また少なくとも1つの所期断裂ゾーン60における第2層62に達する。
【0080】
可撓性材料シート6の粉末化食品物質8に対面する側の面とそれとは反対側の面との間で徐々に生ずる圧力差が、とくに、分注素子5の中心チャンバ551において局所的に第2層62を底部22に向って膨張させ、最終的に第2層62を所期断裂ゾーン60で破断させる。
【0081】
圧力差及び可撓性材料シートの固有機械的特性に基づいて、第2層62で生ずる実際の破断は、第1層61及び第2層62が所期断裂ゾーン60で互いに分断する領域の寸法より相当小さい寸法を有する。例えば、この破断は、切れ込み615の寸法に匹敵する又はそれより小さくもある寸法を有することができる。
【0082】
第1層61及び第2層62を構成する材料の異なる機械的特性は、第2層62が圧力上昇に続いて破断する一方で、第1層61はほぼ損傷を受けない状態に留まることができることを意味する点に留意されたい。
【0083】
そのポイントにおいて飲料はその流路を自由に流れ続け、分注素子5の中心チャンバ551に流入し、この中心チャンバ551から、第1面51における、周面53における、及び第2面52における曲折経路に追従して飲料は分注孔26に達する。
【0084】
可撓性材料シート6が破断した後、また飲料がカプセル1から流出するとき、少なくとも1つの開口71に限定されている通路断面に起因して、フロー絞り素子7は粉末化食品物質8が配置されているゾーンと分注素子5との間で飲料フローに対して抵抗を生ずる。実際上、フロー絞り素子7はこのフロー絞り素子7における圧力低下を課する。したがって、フロー絞り素子7は、分注素子5と連係動作してカプセル1における飲料フローを遅速化及び調節するフロー調節機能を有する。
【0085】
さらに、分注の終了時において、フロー絞り素子7は、粉末化食品物質からカプセル1の底部に向かって流下しようとする残留水の滴り落ちを阻止又は少なくとも遅速化するのを補助する。実際、大きな圧力差がない場合にはなおさらそうであるが、小さい孔71しか通過できない残留水の経路に相当大きな障害物である。
【0086】
しかし、本発明によるカプセルの他の実施形態において、フロー絞り素子7が存在しない場合もあり得る。その場合、飲料フローを遅速化及び調節する機能は、分注素子5にのみ依存することになる。
【0087】
さらに、分注素子5の第1面51における中心チャンバ551は、使用後に粉末化食品物質8から流下する滴り落ち(ドリップ)を収集及び少なくとも部分的に保持することができ、これは中心チャンバ551が深くかつ容量があることに起因する。したがって、分注素子5は、分注終了時にカプセル1からの残留水の滴り落ちを阻止又は少なくとも遅速化を補助することができる。
【0088】
本発明は重要な利点をもたらす。
本発明によれば、現状で上述した従来型カプセルを使用する同一マシンでも使用できる、従来型カプセルに対する代替カプセルを提供するだけでなく、上述したように、改善された結果をも得ることができた。
【0089】
さらに、上述したように、特別な可撓性材料シートを酸素不透過性バリアとして使用することによって、従来システムに対する代替案であるだけでなく、従来カプセルを開放するよりも大きい圧力を使用して開放すること、及びアルミニウム穿孔での飲料の望ましくない放出リスクを減少することの双方を可能にするカプセル開放システムを提供することができ、これはアルミニウムシートに相互作用する機械的穿孔素子が存在しないことに起因する。
【0090】
最後に、留意すべきは、製造が比較的容易であり、かつ本発明を実現することに関連するコストがそれほど高くないことさえもある点である。上述した本発明は、本発明概念の範囲から逸脱することなく変更及び幾つかのやり方を作用することができる。
【0091】
すべての詳細は他の技術的等価物及び使用材料に代替することができるとともに、種々のコンポーネントの形状及び寸法は必要条件に応じて変化することができる。