IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシーの特許一覧

特許7058283蒸気発生器細管の渦電流探傷検査のための位置ベースサンプリング
<>
  • 特許-蒸気発生器細管の渦電流探傷検査のための位置ベースサンプリング 図1
  • 特許-蒸気発生器細管の渦電流探傷検査のための位置ベースサンプリング 図2
  • 特許-蒸気発生器細管の渦電流探傷検査のための位置ベースサンプリング 図3
  • 特許-蒸気発生器細管の渦電流探傷検査のための位置ベースサンプリング 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】蒸気発生器細管の渦電流探傷検査のための位置ベースサンプリング
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/90 20210101AFI20220414BHJP
【FI】
G01N27/90
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019553107
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 US2018021525
(87)【国際公開番号】W WO2018182942
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】62/478,226
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/810,333
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】リチャウアー、ジョン、シー
(72)【発明者】
【氏名】ウッド、ダニエル、シー
(72)【発明者】
【氏名】ネノ、トーマス、ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ル、キ、ヴィ
(72)【発明者】
【氏名】フラニガン、カイル、エム
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07733084(US,B1)
【文献】特開2013-108893(JP,A)
【文献】特表2012-526993(JP,A)
【文献】特開2001-165917(JP,A)
【文献】実開昭62-174268(JP,U)
【文献】実開昭61-143055(JP,U)
【文献】特開昭63-243865(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0039343(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01N 27/72 ー G01N 27/9093
G01N 29/00 - G01N 29/52
G21C 17/00 - G21C 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦電流センサ(42)を用いて原子力施設(10)の蒸気発生器(6)の複数の細管のうちの1本の細管(12)を検査する方法であって、当該渦電流センサは渦電流信号を出力するように構成されており、当該細管は第1の直線部(54)、第2の直線部(60)、および当該第1の直線部と当該第2の直線部の間に位置する屈曲部(58)を有し、当該方法は、
当該渦電流センサを加速して、当該第1の直線部の中を第1の速度で当該屈曲部の方向へ移動させるステップと、
当該渦電流センサを減速して、当該第1の直線部の中を当該第1の速度より小さい第2の速度で当該屈曲部の方向へ移動させ、当該屈曲部に到達させるステップと
から成ることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記渦電流センサを、前記屈曲部の少なくとも一部の中を前記第2の速度で移動させるステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記渦電流センサを加速して、前記第2の直線部の中を前記第2の速度より大きい第3の速度で前記屈曲部から離れる方向へ移動させるステップをさらに含む、請求項2の方法。
【請求項4】
前記渦電流センサが前記細管に沿って移動するに当たり等間隔に離隔した複数の位置に順次到達するたびに、前記渦電流センサからの前記渦電流信号の少なくとも一部を記録するステップをさらに含む、請求項3の方法。
【請求項5】
前記渦電流センサが前記細管に沿って移動するに当たり等間隔に離隔した複数の位置に順次到達するたびに、前記渦電流センサからの前記渦電流信号の少なくとも一部を記録するステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項6】
請求項1の方法であって
駆動機構(22)を用いて、前記渦電流センサを、前記第1の直線部、前記屈曲部および前記第2の直線部のそれぞれの少なくとも一部の中を移動させるステップと、
前記渦電流センサが前記細管に沿って所定の距離だけ移動したことを表す一連の出力を当該駆動機構から受け取るステップと、
当該一連の出力の少なくとも一部に応答して記録を実行するステップと
をさらに含む方法。
【請求項7】
前記屈曲部は半径(64)を有し、前記渦電流センサを、前記屈曲部に沿って前記第1の直線部に隣接する前記屈曲部の始点から前記第2の直線部に隣接する前記屈曲部の終点まで、前記第2の速度を含み、前記屈曲部の当該始点から前記屈曲部の当該終点までのその移動に所定の時間がかかるような速度プロファイルに従って移動させるステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項8】
前記複数の細管のうち、別の第1の直線部と、別の第2の直線部と、当該別の第1の直線部と当該別の第2の直線部の間に位置し前記半径とは別の半径を有する別の屈曲部とより成る別の細管を検査し、前記渦電流センサを、別の前記屈曲部に沿って前記別の第1の直線部に隣接する前記別の屈曲部の始点から前記別の第2の直線部に隣接する前記別の屈曲部の終点まで、前記別の屈曲部の当該始点から前記別の屈曲部の当該終点までのその移動に所定の時間がかかるように移動させるステップを含む、請求項7の方法。
【請求項9】
複数の細管(12)を具備する蒸気発生器(6)の検査に用いる検査システム(4)であって、当該検査システムは、
渦電流信号を出力するように構成された渦電流センサ(46)を具備する渦電流プローブ(42)と、
当該渦電流プローブと協働して、当該渦電流センサを当該複数の細管のうちの1本の細管(12)に対して移動可能な駆動機構(22)であって、各々が当該渦電流センサの当該細管に対する所定距離の移動を表す一連の出力を発生するように構成されたエンコーダ(36、40)を具備する駆動機構と、
当該一連の出力を検出し当該渦電流信号を記録するように構成されたコンピュータ(16)であって、プロセッサ(82)および当該プロセッサ上で実行されると当該検査システムを動作させる多数のルーチン(88)が格納された記憶装置(84)を有するプロセッサ装置(78)を具備するコンピュータとより成り、当該動作は、
当該駆動機構を作動させて当該渦電流センサを細管に対して移動させるステップと、
当該エンコーダから一連の出力を送出させるステップと、
当該コンピュータに当該一連の出力を検出させるステップと、
当該一連の出力のうち少なくとも一部の出力の各々に応答して、当該コンピュータに当該渦電流信号を保存させるステップと
から成り、
当該細管は第1の直線部(54)、第2の直線部(60)および当該第1の直線部と当該第2の直線部の間に位置する屈曲部(58)を有し、当該動作は、
当該渦電流センサを加速して、当該第1の直線部の中を第1の速度で当該屈曲部の方向へ移動させるステップと、
当該渦電流センサを減速して、当該第1の直線部の中を当該第1の速度より小さい第2の速度で当該屈曲部の方向へ移動させ、当該屈曲部に到達させるステップと
をさらに含むことを特徴とする検査システム。
【請求項10】
前記動作は、前記渦電流センサを、前記屈曲部の少なくとも一部の中を前記第2の速度で移動させるステップをさらに含む、請求項の検査システム。
【請求項11】
前記動作は、前記渦電流センサを加速して、前記第2の直線部の中を前記第2の速度より大きい第3の速度で前記屈曲部から離れる方向へ移動させるステップをさらに含む、請求項10の検査システム。
【請求項12】
前記動作は、前記渦電流センサが前記細管に沿って移動するに当たり等間隔に離隔した複数の位置に順次到達するたびに、前記渦電流センサからの渦電流信号の少なくとも一部を記録するステップをさらに含む、請求項11の検査システム。
【請求項13】
前記動作は、前記渦電流センサが前記細管に沿って移動するに当たり等間隔に離隔した複数の位置に順次到達するたびに、前記渦電流センサからの渦電流信号の少なくとも一部を記録するステップをさらに含む、請求項9の検査システム。
【請求項14】
請求項9の検査システムにおいて、前記コンピュータは、前記細管の寸法データおよび前記細管における複数の目印に関するデータをさらに含むデータベース(96)を格納し、前記動作は、
当該複数の目印のうちの一対の目印の間の距離を求めるステップと、
当該一対の目印の間における渦電流データの予想サンプル数を計算するステップと、
前記渦電流信号から当該一対の目印の間で検出されたデータのサンプル数を求めるステップと、
渦電流データの予想サンプル数と検出されたデータのサンプル数とが不等か否かを判定し、それに応じて、データのサンプル数には信頼性がないと判定するステップと
をさらに含むことを特徴とする、請求項9の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によって本願に組み込まれる2017年3月29日出願の米国仮特許出願第62/478,226号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本願で開示および特許請求する発明は概して蒸気発生器に関し、具体的には、蒸気発生器細管の検査システムおよび関連する検査方法に関する。
【背景技術】
【0003】
原子力発電所などの蒸気発生器の細管の渦電流による探傷検査が知られている。そのような検査の際は、渦電流センサを有するプローブが蒸気発生器の細管中を移動し、渦電流センサからの応答信号が一定の時間間隔でサンプリングされ記録される。プローブは一定速度になるまで加速されるが、この速度は例えば、1インチ当たり25個、または1インチ当たり40個ものサンプルが記録されるように設定される。しかし、以前に行われた蒸気発生器の渦電流探傷検査を参考にし、同じ蒸気発生器を再度検査する際には、通常、プローブ速度や測定値を逐次記録する時間間隔を以前の検査パラメータに合わせる設定を行うのが最も一般的である。そのようにするのは、細管の新しい渦電流データと、同じ細管の以前の渦電流データとを、有意義に比較できるようにするためである。そのような渦電流探傷検査は所期の目的達成に概して有効であるが、それなりの制約もある。
【0004】
関連の技術分野で一般に理解されているように、蒸気発生器の各細管は、管板に取り付けられた一対の直線部と、当該管板の反対側で当該一対の直線部の間にある屈曲部とより成る。細管の渦電流解析を行うには、通常、プローブを当該細管の第1の端部に挿入し、渦電流センサが当該細管の反対側の第2の端部から突き出るまで当該細管中を前進させる。その際に、当該プローブを当該細管の当該第2の開端部からさらに10~40インチ前進させて、当該渦電流センサおよび渦電流センサから延びる通信ケーブルの一部が当該細管の当該第2の端部から突き出るようにするのが一般的である。最初に当該プローブを当該細管の当該第1の端部から当該第2の端部へ前進させる際に、測定は行わない。しかし、そのあと当該プローブを当該細管の当該第2の端部から当該細管の当該第1の端部の方へ引き戻しながら測定を行うため、その行程を検出行程と見做すことができる。検出行程は一定の速度で実行され、所定の一定の時間間隔で渦電流信号が離散的に記録される。
【0005】
検出行程時に細管内の渦電流センサの速度を一定に保つには、通常、渦電流センサが細管の第2の端部に再び突入する時点までにその一定速度に到達するようプローブを静止状態から急加速する必要がある。そのような加速時に、渦電流センサは、検出行程に向けて細管に突入するところで、往々にして管板のところの細管の第2の端部に衝突し、損傷する可能性がある。また、渦電流センサは、細管の直線部から屈曲部を通って第1の端部に向かう間にその直線的な経路が屈曲部により変化するから、屈曲部を通過する際に損傷する可能性がある。
【0006】
渦電流センサは1台数千ドルすることがあるので、その損傷は有意なコスト要因となりうる。場合によっては、蒸気発生器一基の検査で十台ないし数十台の渦電流センサが壊れることがある。渦電流センサを交換するだけで実質的な費用がかかる。さらに、壊れた使用済の渦電流センサは放射能を帯びていると考えられるので、かかる渦電流センサの処分には放射性廃棄物向けの特別な手順を経る必要があり、さらに費用が増すことになる。
【0007】
また、渦電流センサは、最初に管板のところの細管に突入するときなどの或る特定の状況下では所望の一定速度で移動しないことがあるため、一定の時間間隔で記録される渦電流信号は誤った情報を与えることがある。渦電流センサの速度が所望の一定速度より低いと、一定の時間間隔で記録されたデータ点は、細管の他の部分で得られたデータ点に比べて、相対的に間隔が狭い細管位置データを表す可能性がある。現行の検査時に渦電流センサが想定される一定速度で移動しない状況で記録される渦電流センサ信号は、より正確に記録された過去の渦電流センサ信号と簡単に比較できない結果が生じる可能性がある。このため、所与の細管の再検査が必要になり、さらに費用がかさむ可能性がある。したがって、改善が望まれる。
【発明の概要】
【0008】
したがって、渦電流センサにより蒸気発生器の細管の渦電流探傷検査を行う改良された方法では、当該渦電流センサが検査過程で損傷する可能性が実質的に低減するように当該渦電流センサを所定の様式で加速および減速する。この損傷が起こる原因(プローブにかかる応力)を取り除くことによって、最終的に放射性廃棄物が減り、損傷したプローブの交換に携わる作業員の放射線被曝が減る。渦電流センサが細管に沿って移動するに当たり等間隔に離隔した複数の位置に順次到達するたびに渦電流センサからの渦電流信号が記録されるようにすると、記録されたデータの妥当性を損なわずに渦電流センサの速度を変えることができる。本願の検査システムは、蒸気発生器の細管に渦電流プローブを出し入れするためのローラに設置されたエンコーダを使用する。このエンコーダは、プローブの移動距離増分に応答して一連の信号を出力する。このエンコーダからの信号の少なくとも一部に応答して、渦電流センサの信号が記録される。
【0009】
本願で開示および特許請求する発明の一側面は、渦電流センサにより原子力施設の蒸気発生器の複数の細管のうちの1本を検査するための改良された方法を提供することであり、当該渦電流センサは渦電流信号を出力するように構成されており、当該細管は第1の直線部、第2の直線部および当該第1の直線部と当該第2の直線部との間に位置する屈曲部を有する。この方法は概して、当該渦電流センサを加速して、当該第1の直線部の中を第1の速度で当該屈曲部の方向へ移動させるステップと、当該渦電流センサを減速して、当該第1の直線部の中を当該第1の速度より小さい第2の速度で当該屈曲部の方向へ移動させ、当該屈曲部に到達させるステップとを含む。
【0010】
本願で開示および特許請求する発明の別の側面は、複数の細管を具備する蒸気発生器の検査に使用できる改良された検査システムを提供することである。この検査システムは概して、渦電流信号を出力するように構成された渦電流センサを含む渦電流プローブと、当該渦電流プローブと協働して当該渦電流センサを当該複数の細管のうちの1本に対して移動させる駆動機構と、当該一連の出力を検出して当該渦電流信号を記録するように構成されたコンピュータとを含み、当該駆動機構は概して、各々が当該細管に対する当該渦電流センサの所定の移動距離増分に応答する一連の出力を発生するように構成されたエンコーダを含み、当該コンピュータは概してプロセッサと、多数のルーチンを含む記憶装置とより成るプロセッサ装置を含み、当該多数のルーチンはプロセッサ上で実行されると当該検査システムを動作させ、当該動作には、当該駆動機構を作動して当該渦電流センサを当該細管に対して移動させるステップと、当該エンコーダから当該一連の出力を送出させるステップと、当該コンピュータに当該一連の出力を検出させるステップと、当該一連の出力のうち少なくとも一部の出力に応答して当該コンピュータに当該渦電流信号を保存させるステップとが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本願で開示および特許請求する発明の詳細を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0012】
図1】原子力施設の蒸気発生器で本願で開示および特許請求する発明の検査方法を実施するための、同じく本願で開示および特許請求する発明の改良型検査システムの概略図である。
【0013】
図2】請求項1の検査システムのプロセッサ装置および当該装置に接続されるデータベースの概略図である。
【0014】
図3】本願で開示および特許請求する発明の改良された方法の或る特定の局面を示す第1の流れ図である。
【0015】
図4】本願で開示および特許請求する発明の別の改良された方法の別の特定の局面を示す第2の流れ図である。
【0016】
本願で使用する同じ参照番号は、同様の部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願で開示および特許請求する発明の改良型検査システム4の概要を図1に示す。この検査システム4は、原子力施設10の蒸気発生器6の渦電流探傷検査に使用できる。蒸気発生器6は複数の細管12を含むが、そのうち2本を図1に参照符号12A、12Bで示す。本願では、これら複数の細管を、集合的にまたは個別に参照符号12で表すことがある。蒸気発生器6は、図1に明示するよりもはるかに多くの細管12を含むと考えられる。図1に示す一対の細管の高さ(図中では水平方向に相当)はほぼ等しいが、最も典型的には、屈曲部の半径が大きいほど高さが大きい、寸法の異なる他の細管12もあり、典型的には、屈曲部の半径が大きめの細管12が屈曲部の半径が小さめの細管12に覆いかぶさると考えられる。
【0018】
検査システム4は、協働可能なコンピュータ16と検出装置18とを含むと言える。検出装置18は無端ベルト24を含む駆動機構22を具備し、当該無端ベルトは一対のプーリ28A、28Bの周りに延びている。駆動機構22は、プーリ28Aに作動的に接続されたモータ30と、無端ベルト24に隣接して自由に回転するひと組のローラ34とをさらに含む。
【0019】
駆動機構22は、モータ30の近傍に設置され、当該モータ30のシャフト31の回転を検知するモータエンコーダ36をさらに含む。駆動機構22は、ローラ34のうちの1つの近傍に設置され、当該1つのローラ34の回転を検知するローラエンコーダ40をさらに含む。モータエンコーダ36およびローラエンコーダ40は、それぞれ、モータシャフト31および当該1つのローラ34の回転を検知すると、電子パルスの形態の一連の駆動信号を出力する。モータエンコーダ36から出力される一連の電子パルスはそれぞれ、モータシャフト31の回転軸周りの所定の一定の角距離を1単位とするモータシャフト31の回転増分を表す出力である。同様に、ローラエンコーダ40から出力される一連の電子パルスはそれぞれ、当該1つのローラ34の回転軸周りの所定の一定の角距離を1単位とする当該1つのローラ34の回転増分を表す出力である。
【0020】
モータエンコーダ36からの電子パルスを1個出力させるモータシャフト31の所定の一定の角距離は、ローラエンコーダ40からの電子パルスを1個出力させる当該1つのローラ34の所定の一定の角距離と必ずしも同一である必要はなく、むしろ、両者は同距離とならない可能性が高い。モータエンコーダ36およびローラエンコーダ40からの一連の電子パルスは、LANケーブル(Ethernet)を介してコンピュータ16に接続する渦電流探傷検査装置98が受信するが、当該装置は渦電流信号をコンピュータ16へ伝送し、コンピュータ16が渦電流信号を保存する。例示する実施態様において、渦電流探傷検査装置98は概してリール52の内部にあり、そのように図1に略示されている。渦電流信号の記録動作はこれらの一連の電子パルスのうちのいずれに応答させてもよいが、例示する実施態様の渦電流探傷検査装置98は、コンピュータ16による渦電流信号の記録動作をローラエンコーダ40からの駆動信号に応答させている。
【0021】
検出装置18は、渦電流センサ46と細長い可撓性の通信ケーブル48とを具備する渦電流プローブ42をさらに含み、当該渦電流センサ46は当該通信ケーブル48の端部に位置する。通信ケーブル48それ自体は、繰り出したり巻き取ったりできる可動リール52に収納されている。当該リールは、渦電流プローブ42を細管12から引き抜くときは通信ケーブル48を繰り込み、また、渦電流プローブ42を細管12のうちの1本に挿入するときは通信ケーブル48を繰り出す。渦電流センサ46から既知の様式で出力される渦電流信号は、通信ケーブル48を介して伝送され、渦電流探傷検査装置98によって受信される。
【0022】
前述したように、渦電流探傷検査装置98は、ローラエンコーダ40からの信号に応答して、コンピュータ16に渦電流センサ46からの渦電流信号を記録させる。すなわち、ローラエンコーダ40で発生した電子パルスは、渦電流探傷検査装置98によって電子的に受信される。エンコーダからのパルスは、通信ケーブル48を介して渦電流探傷検査装置98に伝送される。あるいは、渦電流探傷検査装置98はコンピュータ16に搭載されるカードでもよい。渦電流探傷検査装置98が電子パルスの少なくとも一部を受信すると、渦電流センサ46が、瞬時に発生し、通信ケーブル48および渦電流探傷検査装置98を介してコンピュータ16に伝送中の渦電流信号データがコンピュータ16へ記録される。
【0023】
図1からわかるように、通信ケーブル48は、ベルト24とローラ34の間に強く挟まれた状態にある。したがって、モータ30の作動によりシャフト31が回転すると、それに応じてベルト24がプーリ28A、28Bの周りを移動し、その結果、ローラ34が回転し、渦電流プローブ42が細管12に対して移動する。したがって、シャフト31が所定の一定の角距離だけ回転すると、それに応じて渦電流プローブ42が細管12に沿って所定の直線距離だけ移動することがわかる。よって、モータエンコーダ36が電子パルスを発生するたびに、細管12に対する渦電流プローブ42の移動距離が所定の直線距離だけ増加することがわかる。同様に、当該1つのローラ34がさらに所定の一定の角距離だけ回転すると、細管12に対する渦電流プローブ42の移動距離が所定の直線距離だけ増加することがわかる。同様に、ローラエンコーダ40が電子パルスを発生するたびに、細管12に対する渦電流プローブ42の移動距離がさらに所定の別の直線距離だけ増加することがわかる。モータエンコーダ36から電子パルスを1個出力させる所定の一定の角距離は、ローラエンコーダ40から電子パルスを1個出力させる所定の一定の角距離と必ずしも等しいわけではないことがわかる。したがって、モータエンコーダ36が出力する一連のパルスはパルスごとに渦電流プローブ42を一定距離だけ移動させるが、その一定の距離増分は、ローラエンコーダ40が出力する一連のパルスがパルスごとに渦電流プローブ42を移動させる一定の距離増分とは異なる。
【0024】
蒸気発生器6の細管12は、管板53に取り付けられている。図1に示すように、細管12Aは、第1の直線部54A、屈曲部58Aおよび第2の直線部60Aを含むと言える。第1の直線部54Aと第2の直線部60Aの間にあって両直線部に繋がる屈曲部58Aは、半径64Aを有する。同様に、細管12Bは、第1の直線部54B、屈曲部58Bおよび第2の直線部60Bを含み、第1の直線部54Bと第2の直線部60Bの間にあって両直線部に繋がる屈曲部58Bの半径は、64Bである。本願では、第1の直線部54A、54Bを、集合的にまたは個別に参照符号54で表すことがある。本願では、屈曲部58A、58Bを、集合的にまたは個別に参照符号58で表すことがある。本願では、第2の直線部60A、60Bを、集合的にまたは個別に参照符号60で表すことがある。
【0025】
例示する実施態様において、渦電流プローブ42は細管12Aの内部に位置するように示されている。具体的には、通信ケーブル48が細管12Aの全長を貫通し、管板53に隣接する第1の直線部54Aの開端部の外側に位置する渦電流センサ46が当該開端部から突き出た通信ケーブル48の一端から垂れ下がる。渦電流プローブ42を細管12Aから取り出す際、通信ケーブル48を細管12Aから引き抜いていくと、先ず渦電流センサ46が第1の直線部54Aの開端部へ引き込まれる。通信ケーブル48を引き続き細管12Aから引き抜いていくと、渦電流センサ46は第1の直線部54Aに沿って屈曲部58Aの方向へ進行し、やがて屈曲部58Aに達する。通信ケーブル48を細管12Aからさらに引き抜いていくと、渦電流センサ46は屈曲部58Aを通り抜けたあと、第2の直線部60Aを通って、管板53に隣接する第2の直線部60Aの開端部、すなわち渦電流センサ46が引き込まれた第1の直線部54Aとは反対側の細管12Aの端部に達する。
【0026】
また、細管12Aは、第1の直線部54Aと屈曲部58Bとが繋がる第1の接点66Aを有し、当該接点は屈曲部58Aの端部を成すと言える。細管12Aはさらに、第2の直線部60Aと屈曲部58Aとが繋がる第2の接点70Aを有し、当該接点は屈曲部58Aの別の端部を成すと言える。実施態様によるが、細管12Aはさらに、第1の直線部54Aおよび第2の直線部60Aにそれぞれ、第1の接点66Aおよび第2の接点70Aから、屈曲部58Aより離れる方向へ延びる第1の緩衝部72Aおよび第2の緩衝部76Aを有する。
【0027】
同様に、細管12Bは、第1の直線部54Bと屈曲部58Bの間、および第2の直線部60Bと屈曲部58Bの間にそれぞれ、第1の接点66Bおよび第2の接点70Bを有する。同様に、細管12Bは、それぞれ第1の接点66Bおよび第2の接点70Bから、屈曲部58Bより離れる方向へ延びる第1の緩衝部72Bおよび第2の緩衝部76Bを含むことができる。
【0028】
図1に示すように、渦電流プローブ42の通信ケーブル48はベルト24とローラ34の間に挟まれている。モータ30が付勢されるかまたは他の方法によって作動されると、プーリ28Aが回転してベルト24が動き、ベルト24とローラ34の間で両者に係合する通信ケーブル48が、モータ30が付勢または他の方法で作動される方向に応じて、管板53の方向またはその反対方向へ移動する。モータ30のシャフトが回転すると、本願の別の箇所で記述したように、モータエンコーダ36が一連の電子パルスより成る信号を出力する。そのような電子パルスは、モータ30のシャフトが所定の角距離回転するたびに1個発生するもので、回転増分を表す。別の実施態様では、プーリ28Bによりベルト24を動かすか、または他の駆動機構を用いることによって、渦電流プローブ42を蒸気発生器6に対して移動させることができる。
【0029】
同様に、プーリ28Aを回転させ、それに応じてベルト24をプーリ28A、28Bの周りで移動させ、ベルト24とローラ34に係合する通信ケーブル48を移動させて、渦電流プローブ42を蒸気発生器6に対して移動させると、当該1つのローラ34が他のローラ34とともに回転して、ローラエンコーダ40が別の一連の電子パルスより成る別の信号を出力する。この一連の電子パルスはそれぞれ、当該1つのローラ34が所定の角距離だけ回転したことを表す。例示する実施態様において、モータエンコーダ36およびローラエンコーダ40はそれぞれ、渦電流プローブ42が管板53の方向またはその反対方向へ1インチ移動するたびに約4,000~5,000回電子パルスを出力する。モータエンコーダ36およびローラエンコーダ40から出力される電子パルスは、相互に同期されておらず、モータ30のシャフトはローラ34と同じ角速度で回転するとは限らないので、一般的にパルスレートも等しくない。しかし、渦電流センサ46が細管12に沿って所与の速度で移動するときは、モータエンコーダ36とローラエンコーダ40からの電子パルスのパルスレートが同一でないとしても、両者のパルスレートはそれぞれ一定で、コンピュータ16にとって既知の値であると考えられる。
【0030】
コンピュータ16に接続されたプローブ移動コントローラ97(移動制御カード)は、駆動モータ30を制御し、モータエンコーダ36およびローラエンコーダ40の両方から電子パルスを受信する。ここで、パルスレートに予想外の差異があれば検出される。プローブ移動コントローラ97が、モータエンコーダ36からの電子パルスのパルスレートとローラエンコーダ40からの電子パルスのパルスレートの間に予想外の違いを検出した場合、どこかにすべりまたは他の不具合が存在する可能性がある。モータエンコーダ36およびローラエンコーダ40の一方または両方で予想外のパルスレートが検出された場合、検出されたデータに信頼性がないことを示す印が付けられ、細管12は再検査される。例えば、モータエンコーダ36およびローラエンコーダ40からの電子パルスのパルスレートの違いが予想通りのものであることを示すデータは、プローブ移動コントローラ97に保存される。例えば、プローブ移動コントローラ97は、モータエンコーダ36からの電子パルスの或る特定のパルスレートに基づいて、ローラエンコーダ40からの電子パルスのパルスレートがどのような値であるべきかを求めることができ、その逆に、ローラエンコーダ40からの電子パルスの或る特定のパルスレートに基づいて、モータエンコーダ36からの電子パルスのパルスレートがどのような値であるべきかを求めることができる。同様に、例えば、プローブ移動コントローラ97は駆動モータ30への入力に基づいて、モータエンコーダ36およびローラエンコーダ40からの電子パルスのパルスレートがどのような値であるべきかを求めることができる。プローブ移動コントローラ97が受け取る電子パルスのパルスレートのような入力に予想外のものがあれば、検査システム4の1つ以上の部分にエラーまたは問題があることを示すものと判定され、検出されたデータに信頼性がないことを示す「不合格」の印がつけられて、細管12は再検査される。入力が予想通りで、プローブ移動コントローラ97によって検出される、所与の細管12のデータに他の問題がない場合、当該細管12のデータには「合格」の印が付けられる。本願で例示する実施態様では、プローブ移動コントローラ97は駆動モータ30およびモータエンコーダ36と共に1つのハウジング内に置かれているので、プローブ移動コントローラ97はコンピュータ16に接続されているものとして図1に略示されている。
【0031】
合格/不合格に関する情報は、プローブ移動コントローラ97によってコンピュータ16に伝送される。プローブ移動コントローラ97は、駆動モータ30およびモータエンコーダ36をも収容するハウジング内にある。
【0032】
渦電流探傷検査装置98は、ローラエンコーダ40から電子パルスを受け取るが、例示する実施態様では渦電流をサンプリングする。別の実施態様では、渦電流探傷検査装置98は、さまざまな時点で渦電流プローブ42の出力を記録するようコンピュータ16に指示するだけか、あるいは、ローラエンコーダ40からの電子パルスの検知に基づいて他の措置を講じることがある。渦電流探傷検査装置98は、リール52に取り付けられる。プローブ移動コントローラ97と渦電流探傷検査装置98はいずれも、LANケーブル(Ethernet)を介してコンピュータ16に接続する。プローブ移動コントローラ97と渦電流探傷検査装置98のいずれも、コンピュータ16の専用カードとして実装できるが、例示する実施態様ではコンピュータ16とは別個の構成機器である。
【0033】
図2に示すように、コンピュータ16は、相互に通信するプロセッサ82および記憶装置84を具備するプロセッサ装置78を含む。プロセッサ82は、非限定的な例としてマイクロプロセッサのような多種多様なプロセッサのうちの任意のものでよい。記憶装置84は、RAM、ROM、EPROM、FLASH、ソリッドステートドライブ(SSD)など多種多様な、揮発性または非揮発性のコンピュータ記憶装置のうちの任意のものでよい。記憶装置84は多数のルーチン88を格納しており、それをプロセッサ82上で実行することにより検査システム4にさまざまな動作を実行させることができる。本願に用いる表現「多数の」およびその変化形は、広義には、ゼロを除き1を含む任意の数量を指す。
【0034】
コンピュータ16は、プロセッサ82に入力信号を提供する入力装置90と、プロセッサ82からの出力信号を受け取る出力装置94とをさらに含む。出力装置94は、非限定的な例として視覚的出力や電子出力などの出力を提供できる。例えば、出力装置94の構成機器は、細管12に対して渦電流プローブ42を移動させるようにモータ30を制御するプローブ移動コントローラ97にインターフェイスする。別の例として、入力装置90の構成機器は、渦電流センサ46から出力された渦電流信号を、渦電流探傷検査装置98から受け取ることができる。入力装置90の構成機器も同様に、モータエンコーダ36およびローラエンコーダ40から出力される一連の電子パルスを受け取ることができる。その他の例も自明であろう。
【0035】
例示する実施態様では、コンピュータ16は、蒸気発生器6の各細管12の識別情報を含む、蒸気発生器6に固有のデータベース96にアクセスできるが、当該データベースはさらに、かかる細管12ごとに、第1の直線部の長さ、第2の直線部の長さ(典型的には第1の直線部の長さに等しい)、および当該第1の直線部と当該第2の直線部の間の屈曲部の半径を含む。各細管12のそのような寸法を用いて各細管12に対する渦電流センサ46の速度プロファイルを決定し、当該速度プロファイルに基づいて検出行程時の当該細管中の当該渦電流センサ46の移動を指図する。速度プロファイルは、渦電流センサ46が損傷する可能性を最小限に抑えるように決定する。
【0036】
具体的には、細管12Aのような細管12の渦電流探傷検査は、まず渦電流プローブ42を図1に略示するような態様に配置し、渦電流プローブ42を細管12Aに対して静止した状態で開始する。渦電流センサ46が管板53のところにある細管の第1の直線部54Aの開端部に進入するとき損傷しないように、渦電流センサ46を緩やかに加速させるべく(例えば25インチ/平方秒あるいは50インチ/平方秒)モータ30を付勢または他の方法で作動する。この点に関して、モータ30の回転速度は、プローブ移動コントローラ97が各細管(本例では細管12A)の速度プロファイルに従って制御するため、渦電流センサ46は当該速度プロファイルに従った速度および加速度で移動する。
【0037】
モータ30による渦電流センサのそのような加速は、第1の直線部54A中を屈曲部58Aに向かって進む渦電流センサ46の速度が所定の速度に達するまで続けられるが、渦電流センサ46はその速度に達すると、典型的には加速を中止し、第1の直線部54Aの少なくとも一部に沿って所定の速度で移動し続ける。第1の直線部54Aにおける渦電流センサ46の所定の速度は、例えば120インチ/秒であるが、それ以外の速度でもよい。
【0038】
渦電流センサ46は、屈曲部58Aに接近し始めると、例えば100インチ/平方秒で減速されるため、屈曲部58Aに進入してそこを通過するときの速度が適切な低い値に抑えられる。屈曲半径が最も小さい(例えば2.2インチ)細管12では、渦電流センサ46は例えば約18インチ/秒の速度で屈曲部を通過することができる。渦電流センサ46が屈曲部58Aを移動する速度を第1の直線部54Aを移動するときよりも比較的低くすることにより、屈曲部58Aにおいて渦電流センサ46と細管12Aの内壁とが受ける衝撃が減少し最小となるので、渦電流センサ46の損傷が最小限に抑えられる。渦電流センサ46は、屈曲部58Aを通り抜けると、例えば100インチ/平方秒で再び加速され、例えば120インチ/秒の速度に到達したあと、第2の直線部60Aを屈曲部58Aから離れる方向に進む。
【0039】
その後、必要に応じて、渦電流センサ46を、例えば100インチ/平方秒で減速することにより、管板53に隣接する第2の直線部60Aの開端部での速度がゼロになるようにすることができる。渦電流センサ46を細管12の端部から取り外すには、そうする必要がある。あるいは、渦電流センサ46を同じまたは異なる減速度で減速して、管板53のところの第2の直線部60Aから出るときの速度が非常に低くなるようにしてもよい。やはり同様に、渦電流センサ46が細管12Aから出るときに減速せず、第2の直線部60Aを通るときと同じ一定の速度のまま細管12Aから出るようにしてもよい。
【0040】
ローラエンコーダ40は、渦電流センサ46が細管12Aの中を移動する時はいつも一連の電子パルスを出力するが、その各々のパルスは、渦電流センサ46が細管12Aに沿って一定の距離だけ増分移動したことを示す。渦電流探傷検査装置98は、渦電流センサ46から渦電流信号を受け取り、コンピュータ16に伝送するが、このサンプルはローラエンコーダ40からの電子パルスに応答して記録される。
【0041】
ルーチン88の指示に基づいて、コンピュータ16は、細管12の長さ沿いに等間隔に離隔した複数の位置の各々で記録された渦電流センサ46からの渦電流信号サンプルを、ローラエンコーダ40で発生した電子パルスの少なくとも一部に応答して、記憶装置84に記録し保存する。すなわち、前述のようにローラエンコーダ40は、例えば渦電流センサ46が細管12Aに沿って1インチ移動するたびに4,000個の電子パルスを出力する。蒸気発生器6の検査のために、コンピュータ16は、渦電流センサ46が細管12に沿って1インチ移動するたびに40個の渦電流測定値を記録することが考えられる。したがって、コンピュータ16は、例えばローラエンコーダ40が検出する電子パルス100個ごとに1個の渦電流サンプル測定値を記憶装置84に記録し保存することが考えられる。そのような状況下で、プローブ移動コントローラ97、渦電流探傷検査装置98、またはコンピュータ16のその他の構成機器は、例えば、ローラエンコーダ40(または他の実施態様において例えばモータエンコーダ36)が出力する各電子パルスを検出し計数することになる。電子パルスの計数値がゼロから99の間であるとき、コンピュータ16は渦電流探傷検査装置98からのデータを記録しない。しかし、電子パルスの計数値が100に達すると、渦電流探傷検査装置98はそれに応答して、コンピュータ16に渦電流探傷検査装置98から出力された渦電流データを記録させ、細管12沿いの距離や時間などその他の対応する情報、および/または記録された渦電流データに関するその他の情報も随意的に記録させる。その後、電子パルスの計数値はゼロにリセットされ、検出、計数および記録のプロセスが続けられる。
【0042】
ルーチン88は、データベース96内にある、蒸気発生器6の各細管12に関する寸法および他のデータから、各細管12について速度プロファイルを作成する。当該速度プロファイルは、検査速度を最大にしながら渦電流センサ46の損傷を最小限に抑えるために、当該細管12(または複数の同様の細管のそれぞれ)について第1の端部とその反対側の第2の端部の間における渦電流センサ46の加速度、減速度および速度のそれぞれについて期間および大きさを指定したものである。そのような速度プロファイルは、検査対象となる各細管12の第1の直線部54および第2の直線部60の長さと、両直線部の間に位置する屈曲部58の一定の半径とに基づく。屈曲部58の半径が小さい細管では、そのような屈曲部58を通る際の渦電流センサ46の速度は、半径が大きめの屈曲部58を通る際の速度より遅くなるのは当然である。
【0043】
検査速度を最大にしながら渦電流センサ46の損傷を最小限に抑えるには、渦電流センサ46が各屈曲部58の通過に要する時間を一定にするのが望ましいかもしれない。そうするには、半径が小さめの屈曲部58は低めの速度で、また、半径が大きめの屈曲部58は高めの速度で渦電流センサ46を移動させる。
【0044】
例えば、細管12Aに関して、屈曲部58Aの一定の半径が2.2インチであれば、屈曲部58A、第1の緩衝部72Aおよび第2の緩衝部76Aにおける一定の速度を18インチ/秒とすると、渦電流センサ46が、第1の緩衝部72Aの始点から、第1の緩衝部72A、屈曲部58Aおよび第2の緩衝部76Aを通って、第2の緩衝部76Aの終点に到達するまでに要する時間は約1.5秒である。このように、細管12Bの速度プロファイルを計算する際に、ルーチン88は、渦電流センサ46が、第1の緩衝部72Bの始点から、第1の緩衝部72B、屈曲部58Bおよび第2の緩衝部76Bを通って、第2の緩衝部76Bの終点まで移動する時間が1.5秒になるように速度を決めることができる。あるいは、細管12Bの速度プロファイルは、ルーチン88が、第1の接点66Bから第2の接点70Bまでに限った渦電流センサ46の移動時間が1.5秒になる速度を求めることによって計算できる。すなわち、第1の緩衝部72Bを、第1の直線部54Bにおける高めの直線速度から屈曲部58Bにおける低めの速度へ渦電流センサ46を減速させる区間とし、第2の緩衝部76Bを、屈曲部58Bにおける低めの速度から第2の直線部60Bにおける高めの直線速度へ渦電流センサ46を加速させる区間とすることが考えられる。第1の直線部54および第2の直線部60の一部として追加的に規定されるさまざまな第1の緩衝部72A、72Bおよび第2の緩衝部76A、76Bの長さは、さまざまな細管12の幾何学形状および寸法に応じて変えてもよい。
【0045】
しかし、屈曲部58における渦電流センサ46のそのような速度には限界がある可能性があるので、各屈曲部58内での渦電流センサ46の速度を、屈曲部58に隣接する第1の直線部54または第2の直線部60における渦電流センサ46の速度を超えないように制限するのが望ましい。したがって、非常に大きな半径の屈曲部58を有する或る特定の細管では、渦電流センサ46を細管12の屈曲部を通過する前に減速せず、むしろ、屈曲部58ならびにそれに隣接する第1の直線部54および第2の直線部60を一定の速度を保ちながら通過させることがある。一方、渦電流センサ46の損傷をさらに極力抑えるために、屈曲部58に入る前に、例えば第1の緩衝部72A、72Bやその他の区間で、渦電流センサ46を少なくとも控え目に減速するのが望ましい場合がある。その後、屈曲部58から出て第2の緩衝部76A、76Bまたはその他の区間を移動中に渦電流センサ46を加速することが多い。この方策はやはり、細管12の寸法に左右される。
【0046】
また、第1の緩衝部72Aおよび第2の緩衝部76Aを屈曲部58Aの一部とみなすのが望ましいことがあるが、その場合、渦電流センサ46は第1の直線部54A内で減速され、第1の緩衝部72A、屈曲部58Aおよび第2の緩衝部76Aのすべてを低めの速度で通過する。その後、第2の緩衝部76Aから出た渦電流センサは第2の直線部60Aにおいて加速され、第2の直線部60Aの残りの部分を高めの速度で通過する。そのような緩衝部の使用は、或る特定の細管12またはすべての細管12における渦電流センサ46の損傷リスクを最小限に抑えるうえで望ましいと考えられる。第1の緩衝部および第2の緩衝部の長さは、例えば10インチまたはシステムが渦電流センサ46の損傷リスクを最小限に抑えながら検査速度を最大にする必要性に応じて変わりうる他の適当な値である。
【0047】
前述のように、データベース96は蒸気発生器6の各細管12に関する情報を包有し、かかる情報には例えば、細管12の識別情報、第1の直線部54および第2の直線部60の長さ、屈曲部58の半径、ならびにその他の可能な情報が含まれる。任意特定の細管12に関するデータベース96内の情報は、その細管12に関する渦電流センサ46の速度プロファイルを決定するために使用される。任意所与の細管12の速度プロファイルもまた、将来使用するためにデータベース96に保管されることがある。その目的は、将来の検査で再利用するためや、「不合格」データの原因が速度プロファイルに何らかの欠陥があるためかどうかについて評価するためなどである。
【0048】
本願の別の箇所で記述したように、所与の細管12の速度プロファイルは、典型的には、検査速度を最大にしながら渦電流センサ46が損傷する可能性を最小にするように調整される。しかし、渦電流センサ46のさまざまな加速度および減速度、ならびにその結果としての渦電流センサ46の速度は、細管1インチ当たり40個の測定頻度で渦電流信号を記録する必要性とは無関係に選択できる利点がある。なぜならば、渦電流信号の記録は、前述の様式で、ローラエンコーダ40から出力される電子パルスに応答して行われるからである。したがって、所与の細管12の渦電流信号サンプルは、ローラエンコーダ40から出力される電子パルスに基づいて、細管12の長さ沿いに等間隔に離隔した複数の位置の各々につき記憶装置84に記録される。
【0049】
渦電流プローブ42の移動により原子力施設10の蒸気発生器6の検査を行う改良された方法を、図3に示す流れ図で概説する。図3に明示しないが、この方法は概して、図1に示すように渦電流プローブ42を蒸気発生器6の細管12内に配置することから開始される。すなわち、渦電流プローブ42は、第2の直線部60、屈曲部58および第1の直線部54を通り抜け、管板53の表面で終端する第1の直線部54の開端部から渦電流センサ46が突き出た状態にある。本願の方法は、104に示すように、渦電流プローブ42がそのように配置された状態で、第1の直線部54を第1の速度で屈曲部58の方向へ移動するように渦電流センサ46を加速することで開始される。本願の方法は続いて、108で示すように、渦電流センサ46を減速することにより、第1の速度より小さい第2の速度で第1の直線部54を屈曲部58の方向へ移動させ、やがて屈曲部58に到達するようにする。104、108および本願の他の箇所に示す加速および減速は、モータ30および駆動機構22のその他の部分に作動的に接続されたプローブ移動コントローラ97が渦電流センサ46に行わせる。
【0050】
本願の方法は、その後、112に示すように、渦電流センサ46を屈曲部58の少なくとも一部の区間を第2の速度で移動させる。本願の別の箇所で記述したように、渦電流センサ46は典型的には、屈曲部58の全体を第2の速度で移動する。続いて、本願の方法は、116に示すように、渦電流センサ46を加速して、第2の直線部60を第2の速度より大きい第3の速度で屈曲部58から離れる方向へ移動させる。そのような加速は、典型的には第2の緩衝部76で起こる。第3の速度は第1の速度と等しくなる可能性が高いと考えられるが、必ずしも等しくする必要はない。本願の方法はまた、120に示すように、渦電流センサ46からの渦電流信号の少なくとも一部を、渦電流センサ46が細管12に沿って等間隔に離隔した複数の位置へ順次移動するたびにその各位置で記録する。
【0051】
本願の別の箇所で記述したように、そのような渦電流信号の記録は、ローラエンコーダ40から出力される電子パルスの少なくとも一部に応答して行われる。ただし、そのような記録動作を引き起こすために使用される電子パルスは、特定の実施態様による必要性に応じて、モータエンコーダ36から検出される場合もある。具体的には、本願の方法は、206に示すように、駆動機構22を作動して、渦電流センサ46を細管12に対して移動させる。本願の方法はまた、210に示すように、ローラエンコーダ40(および/または例えばモータエンコーダ36)から一連の出力(例示する実施態様では電子パルス)を送出させることを含む。本願の方法はまた、214に示すように、一連の出力の少なくとも一部を検出することを含む。例示する実施態様では、渦電流試験装置98が電子パルスを検出し、適宜、コンピュータ16を作動して渦電流データを記録させる。本願の方法また、218に示すように、一連の電子パルスのうち少なくとも一部である各電子パルスに応答してコンピュータ16を作動することにより、渦電流センサ46からの瞬時渦電流信号または当該瞬時渦電流信号の少なくとも一部を保存させることを含む。
【0052】
本発明は、第2のデータ信頼性の点検を行う。任意特定の細管12に関するデータベース96内の情報から、当該細管12内の目印間の距離を求める。目印には、非限定的な例として、第1の接点66A、66B、第2の接点70A、70B、細管の端部、および細管を支持する構造体などが含まれる。この既知の距離に基づいて、目印間の区間のサンプル数を計算する。取得した渦電流信号を用いて、ソフトウェアは目印を特定し、渦電流データで表される目印間のサンプル数を求める。この計算値とデータ内の実際のサンプル数との間に予想外の差異が検出された場合、検出されたデータに信頼性がないことを示す印が付けられ、細管12は再検査される。
【0053】
任意特定の細管12に関するデータベース96内の情報から、当該細管12内の目印の幅を求める。この既知の幅に基づいて、目印内のサンプル数を計算する。取得した渦電流信号を用いて、ソフトウェアは目印を特定し、渦電流データで表される目印内のサンプル数を求める。この計算値とデータ内の実際のサンプル数の間に予想外の差異が検出された場合、検出されたデータに信頼性がないことを示す印が付けられ、細管12は再検査される。
【0054】
したがって、改良された検査システム4および方法は、渦電流センサ46の損傷の可能性を低減できるため、渦電流センサ46の交換費用の節約、放射性の渦電流センサ46の処分料が不要となることによる費用の節減が可能となる利点を有する。それに加え、細管12からの渦電流信号の記録データは、経過時間に基づく測定値ではなく、また、渦電流センサが一定速度で移動するという単なる期待に依存するものではなく、細管の長さに沿って等間隔に離隔したさまざまな位置で得られるものであるため、再現性が高くより正確である。このことは、データの精度を高め、細管の再検査を減らす利点につながる。その他の利点も明らかとなるだろう。
【0055】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の配置構成は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。
図1
図2
図3
図4