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特許7058286中空粒子及びその製造方法、並びに白インク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】中空粒子及びその製造方法、並びに白インク
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20220414BHJP
   C30B 29/16 20060101ALI20220414BHJP
   C30B 1/10 20060101ALI20220414BHJP
   B01J 13/02 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
C01G23/00 Z
C30B29/16
C30B1/10
B01J13/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019559621
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2018045279
(87)【国際公開番号】W WO2019117075
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2017236677
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原 幸広
(72)【発明者】
【氏名】野原 彰浩
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-131458(JP,A)
【文献】特開2013-75828(JP,A)
【文献】特開2013-43788(JP,A)
【文献】特開2017-114721(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104671282(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106882811(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103803643(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00
C30B 29/16
C30B 1/10
B01J 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶の酸化チタン及びシリカを含有する中空粒子であって、酸化チタンの含有率が86.0モル%~99.5モル%であり、シリカの含有率が0.5モル%~14.0モル%である中空粒子。
【請求項2】
1次粒子径が10nm~1000nmである、請求項1に記載の中空粒子。
【請求項3】
中空粒子の内径をA、中空粒子の1次粒子径をBとしたとき、A/Bの値が0.3~0.95である、請求項1又は2に記載の中空粒子。
【請求項4】
1次粒子径の変動係数が10%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の中空粒子。
【請求項5】
コアとなるテンプレート粒子の表面に、酸化チタン前駆体及びシリカ前駆体を含有するシェルを形成し、コア/シェル粒子を得る工程と、
前記コア/シェル粒子から前記テンプレート粒子を除去してシェル粒子を得る工程と、
前記シェル粒子を空気雰囲気下で焼成し、請求項1~4のいずれか1項に記載の中空粒子を得る工程と、
を含む中空粒子の製造方法。
【請求項6】
コアとなるテンプレート粒子の表面に、酸化チタン前駆体及びシリカ前駆体を含有するシェルを形成し、コア/シェル粒子を得る工程と、
前記コア/シェル粒子を空気雰囲気下で焼成して前記テンプレート粒子を除去し、請求項1~4のいずれか1項に記載の中空粒子を得る工程と、
を含む中空粒子の製造方法。
【請求項7】
前記テンプレート粒子がポリマー粒子である、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記テンプレート粒子が、構成モノマーとしてスチレンを含むポリマー粒子である、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記テンプレート粒子がスチレン-(メタ)アクリル酸ポリマー粒子である、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項10】
前記コア/シェル粒子を得る工程が、分散剤の存在下に行われる工程である、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1項に記載の中空粒子を着色剤として含有する白インク。
【請求項12】
水性インク、ラテックスインク、ソルベントインク、及び紫外線硬化型インクよりなる群から選択されるインクである、請求項11に記載の白インク。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の白インクのインクジェット記録における使用。
【請求項14】
請求項11又は12に記載の白インクの液滴を、インクジェットプリンタにより吐出させ、記録メディアに付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空粒子及びその製造方法、並びにその中空粒子を着色剤として含有する白インクに関する。
【背景技術】
【0002】
中空粒子は、内部に空孔を有する粒子である。従来、中空粒子は、空孔に種々の機能物質を内包させたマイクロカプセルとして広く利用されている。また、中空粒子は、空孔に起因する光散乱特性を有するため、紙、繊維、皮革、ガラス、金属等へのコーティング剤や、インク、塗料、化粧品などにおいて、光輝性、光沢性、不透明性、白色性等の性能を付与する光散乱剤又は光散乱助剤として有用である。さらに、中空粒子は、屈折率の調整剤、軽量化剤、遮音材、断熱材等としての利用も期待されている。
【0003】
中空粒子の中でも、シリカや、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物を含有する中空粒子は、構造安定性及び化学的安定性に優れることから工業的に有用であり、軽量化材、白色顔料としての応用が期待されている。特に、酸化チタンを含有する中空粒子は、高屈折率であること、触媒活性を有すること等の理由から、光散乱材料や触媒材料として有用とされている。中空酸化チタンの製造方法は、例えば、特許文献1及び2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-43788号公報
【文献】特開2010-120786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、シリカや金属酸化物を含有する中空粒子は、白色顔料等としての応用が期待されている。しかし、本発明者らが確認したところ、従来の中空粒子は、沈降安定性及び粒子強度に改善の余地があることが判明した。
【0006】
沈降安定性に劣る中空粒子を白色顔料として用いて白インクを調製した場合、分散状態が容易に壊れ、顔料が沈降した状態になりやすい。このため、白インクの使用前には、沈降した顔料を撹拌等の操作により均一な分散状態に戻す必要があり、操作性が悪い。
【0007】
また、中空粒子の粒子強度が低いと、分散液を調製するときに中空粒子が壊れて中空状態が維持できなくなる。このため、中空粒子であることに起因する良好な分散安定性を得ることが困難となる。また、分散液の調製時に中空粒子が壊れると、分散液中に様々な大きさの粒子が生じるため、粒度分布の小さい、均一な1次粒子径を有する分散液を調製することが困難となる。その結果、隠ぺい性が良好な白インクを得ることが困難となる。
【0008】
従来の中空粒子、及びその中空粒子を着色剤として含有する白インクには、上記のような問題点が挙げられていた。
【0009】
そこで、本発明は、沈降安定性及び粒子強度に優れ、着色剤として含有させた場合に隠ぺい性が良好な白インクを得ることが可能な中空粒子及びその製造方法、並びにその中空粒子を着色剤として含有する白インクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の1)~14)に記載の本発明を完成させた。
【0011】
1)
単結晶の酸化チタン及びシリカを含有する中空粒子であって、酸化チタンの含有率が86.0モル%~99.5モル%であり、シリカの含有率が0.5モル%~14.0モル%である中空粒子。
2)
1次粒子径が10nm~1000nmである、1)に記載の中空粒子。
3)
中空粒子の内径をA、中空粒子の1次粒子径をBとしたとき、A/Bの値が0.3~0.95である、1)又は2)に記載の中空粒子。
4)
1次粒子径の変動係数が10%以下である、1)~3)のいずれか1項に記載の中空粒子。
5)
コアとなるテンプレート粒子の表面に、酸化チタン前駆体及びシリカ前駆体を含有するシェルを形成し、コア/シェル粒子を得る工程と、
前記コア/シェル粒子から前記テンプレート粒子を除去してシェル粒子を得る工程と、
前記シェル粒子を空気雰囲気下で焼成し、1)~4)のいずれか1項に記載の中空粒子を得る工程と、
を含む中空粒子の製造方法。
6)
コアとなるテンプレート粒子の表面に、酸化チタン前駆体及びシリカ前駆体を含有するシェルを形成し、コア/シェル粒子を得る工程と、
前記コア/シェル粒子を空気雰囲気下で焼成して前記テンプレート粒子を除去し、1)~4)のいずれか1項に記載の中空粒子を得る工程と、
を含む中空粒子の製造方法。
7)
前記テンプレート粒子がポリマー粒子である、5)又は6)に記載の製造方法。
8)
前記テンプレート粒子が、構成モノマーとしてスチレンを含むポリマー粒子である、5)又は6)に記載の製造方法。
9)
前記テンプレート粒子がスチレン-(メタ)アクリル酸ポリマー粒子である、5)又は6)に記載の製造方法。
10)
前記コア/シェル粒子を得る工程が、分散剤の存在下に行われる工程である、5)又は6)に記載の製造方法。
【0012】
11)
1)~4)のいずれか1項に記載の中空粒子を着色剤として含有する白インク。
12)
水性インク、ラテックスインク、ソルベントインク、及び紫外線硬化型インクよりなる群から選択されるインクである、11)に記載の白インク。
13)
11)又は12)に記載の白インクのインクジェット記録における使用。
14)
11)又は12)に記載の白インクの液滴を、インクジェットプリンタにより吐出させ、記録メディアに付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、沈降安定性及び粒子強度に優れ、着色剤として含有させた場合に隠ぺい性が良好な白インクを得ることが可能な中空粒子及びその製造方法、並びにその中空粒子を着色剤として含有する白インクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で得られた中空粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像、及び単粒子の電子回析像を示す図である。
図2】比較例2で得られた中空粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像、及び単粒子の電子回析像を示す図である。
図3】実施例7で得られた中空粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像、及び単粒子の電子回析像を示す図である。
図4】実施例8で得られた中空粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像、及び単粒子の電子回析像を示す図である。
図5】実施例1で得られた中空粒子の吸脱着等温線を示す図である。
図6】比較例2で得られた中空粒子の吸脱着等温線を示す図である。
図7】比較例4で得られた中空粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像、及び単粒子の電子回析像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<中空粒子>
本実施形態に係る中空粒子は、単結晶の酸化チタン及びシリカを含有する中空粒子であって、酸化チタンの含有率が86.0モル%~99.5モル%であり、シリカの含有率が0.5モル%~14.0モル%である。
【0016】
本実施形態に係る中空粒子は、上記の構成を有するため、沈降安定性及び粒子強度に優れる傾向にある。また、本実施形態に係る中空粒子は、上記の構成を有するため、1次粒子径が均一であり、且つ、1次粒子径の変動係数が小さな中空粒子を製造しやすい傾向にある。
【0017】
本実施形態に係る中空粒子を構成する酸化チタンが単結晶であることは、公知の方法で確認することができる。公知の方法としては、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、単粒子の電子回折像を測定する方法が挙げられる。本明細書において「単結晶」とは、単粒子の電子回折像がスポット像であることを意味する。
【0018】
酸化チタンの結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型、及びブルッカイト型が知られており、用途によって適宜選択することができる。また、これらの結晶が混合された混晶型とすることもできる。製造の容易性を考慮すると、酸化チタンの結晶型としてはルチル型が好ましい。ルチル型酸化チタンの単結晶とするとき、酸化チタン中のルチル型酸化チタンの割合は、通常80%~100%、好ましくは85%~100%、より好ましくは90%~100%である。
【0019】
本実施形態に係る中空粒子を構成するシリカは、結晶性であってもアモルファスであってもよいが、アモルファスであることが好ましい。シリカがアモルファスであることは、公知の方法で確認することができる。公知の方法としては、例えば、X線回折装置等を使用して、シリカ結晶(例えばα-SiO)に由来する回折ピークを測定する方法が挙げられる。本明細書において「アモルファス」とは、結晶に由来する明確な回折ピークが現れないことを意味する。
【0020】
本実施形態に係る中空粒子は、酸化チタンの含有率が90.0モル%~99.5モル%であることが好ましく、95.0モル%~99.5モル%であることがより好ましい。また、本実施形態に係る中空粒子は、シリカの含有率が0.5モル%~10.0モル%であることが好ましく、0.5モル%~5.0モル%であることがより好ましい。
【0021】
中空粒子が含有する酸化チタン及びシリカの含有率は、公知の方法で確認することができる。公知の方法としては、例えば、蛍光X線分析装置等の分析装置と標準試料とを用いた検量線法が挙げられる。本明細書においては、中空粒子が含有する酸化チタン及びシリカの含有率は、中空粒子を製造する際の酸化チタン前駆体及びシリカ前駆体が、100%の変換率で酸化チタン及びシリカに変換されたものとして算出する。これらの含有率を算出するときは、小数点以下2桁目を四捨五入して、小数点以下1桁目までを記載する。
【0022】
本実施形態に係る中空粒子の1次粒子径は、その用途によって適切な範囲があるため一概に決めることは困難である。製造の観点からは、通常10nm~1000nm、好ましくは50nm~750nm、より好ましくは100nm~700nm、さらに好ましくは150nm~500nm、特に好ましくは180nm~500nmである。このような範囲とすることにより、目的とする構造の中空粒子を安定して製造することができる傾向にある。また、下地に使用する白色顔料とするときは、隠ぺい性が良好となるように、通常200nm~450nm、好ましくは250nm~350nmである。
【0023】
中空粒子の内径をA、中空粒子の1次粒子径をBとしたとき、A/Bの値は、通常0.3~0.95、好ましくは0.3~0.9、より好ましくは0.4~0.8、さらに好ましくは0.5~0.8、特に好ましくは0.6~0.8である。このような範囲とすることにより、沈降安定性及び粒子強度に優れた中空粒子を製造しやすい傾向にある。なお、中空粒子の内径とは、中空粒子が有する内部の空孔の直径を意味する。
【0024】
本明細書において、中空粒子の内径A及び1次粒子径Bは、透過型電子顕微鏡(TEM)で無作為に撮影した中空粒子10個の内径、及び1次粒子径の算術平均値である。A/Bの有効数字が小数点以下1桁のときは、小数点以下2桁目を四捨五入して算出する。また、A/Bの有効数字が小数点以下2桁のときは、小数点以下3桁目を四捨五入して算出する。
【0025】
中空粒子の1次粒子径の変動係数は、以下の式から算出できる。
変動係数(%)=(1次粒子径の標準偏差(nm)/算術平均粒子径(nm))×100
変動係数は小さい方が、均一な大きさの粒子が得られていることを示すため好ましい。変動係数は、通常10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下である。下限は小さい方が好ましく、理想的には0%である。
【0026】
本実施形態に係る中空粒子としては、粒子の表面から内部の空孔へと通じる細孔を有さないものが好ましい。そのような細孔を有するか否かは、例えば、細孔分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製、BELSORP-mini II)を用いて、相対圧力に対する吸着量及び脱着量を測定することにより確認することができる。本明細書において「内部の空孔へと通じる細孔を有さない」とは、吸着量及び脱着量から作成される吸脱着等温線がIUPAC分類におけるIV型又はV型ではないことを意味する。IUPAC分類の中では、II型及びIII型が好ましく、II型がより好ましい。
【0027】
本実施形態に係る中空粒子の形状は特に制限されず、例えば、球状、凹凸状、異形状等が挙げられる。これらの中では球状粒子が好ましく、真球状粒子がより好ましい。中空粒子内部の空孔は、空孔を球と見なしたときに真円度が高いものが好ましい。
【0028】
本実施形態に係る中空粒子は、酸化チタン及びシリカ以外の元素をさらに含有していてもよい。そのような元素としては、例えば、Sn、Cd、Fe、Ni、Zn、Mn、Co、Cr、Cu、K、Na、Li、P、S等から選択される元素が挙げられる。これらの元素は、1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0029】
本実施形態に係る中空粒子が、酸化チタン及びシリカ以外の元素をさらに含有する場合、これらの元素の総含有率は、酸化チタン中のチタンのモル数に対して、通常0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~10モル%、より好ましくは0.1モル%~5モル%である。このような範囲とすることにより、着色が少ない(すなわち、白色度が高い)中空粒子を得やすい傾向がある。
【0030】
本実施形態に係る中空粒子は、必要に応じて、その表面に他の物質の層をさらに有していてもよい。他の物質としては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、ジルコニア、有機物等が挙げられる。
【0031】
本実施形態に係る中空粒子は、白インク用の白色顔料や、化粧品等における光散乱剤又は光散乱助剤等の、種々の用途に有用である。
【0032】
<中空粒子の製造方法>
本実施形態に係る中空粒子は、例えば、Xiong Wen(David)Lou,Lynden A.Archer and Zichao Yang,Adv.Mater.,2008,20,3987-4019等に記載されている公知の方法に準じて製造することができる。
【0033】
それらの中でも、コアとなるテンプレート粒子の表面に、酸化チタン前駆体及びシリカ前駆体を含有するシェルを形成し、コア/シェル粒子を得る工程(以下、「第1工程」ともいう。)と、コア/シェル粒子からテンプレート粒子を除去してシェル粒子を得る工程(以下、「第2工程」ともいう。)と、シェル粒子を空気雰囲気下で焼成して中空粒子を得る工程(以下、「第3工程」ともいう。)と、を含む製造方法が好ましい。
【0034】
以下に記載する各工程は、特に断りの無い限り、撹拌下に行うのが好ましい。
【0035】
[第1工程]
第1工程としては、テンプレート粒子と酸化チタン前駆体及びシリカ前駆体とを、有機溶媒中で塩基の存在下に反応させる工程が挙げられる。シリカ前駆体は、酸化チタン前駆体の添加後に添加してもよく、酸化チタン前駆体と同時に添加してもよい。第1工程により、コアとなるテンプレート粒子の表面に酸化チタン前駆体及びシリカ前駆体を含有するシェルが形成されたコア/シェル粒子を得ることができる。
【0036】
テンプレート粒子としては、ポリマー粒子及び無機粒子から選択される粒子が挙げられる。その具体例としては、例えば、(メタ)アクリレート系、ビニル系、スチレン系、ウレタン系から選択される少なくとも1種類のモノマーを重合することにより得られるポリマー粒子;炭酸カルシウム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ニッケル等の無機粒子;が挙げられる。これらの中ではポリマー粒子が好ましく、構成モノマーとしてスチレンを含むポリマー粒子がより好ましく、スチレン-(メタ)アクリル酸ポリマー粒子がさらに好ましく、スチレン-メタクリル酸ポリマー粒子が特に好ましい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味し、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。
【0037】
酸化チタン前駆体としては、化学的又は物理的な方法により酸化チタンに変換できる物質であれば特に制限されない。酸化チタン前駆体の中では、チタニウムアルコキシドが好ましい。チタニウムアルコキシドとしては、チタニウムテトラアルコキシドが好ましく、チタニウムテトラC1-C6アルコキシドがより好ましく、チタニウムテトラブトキシドがさらに好ましい。
【0038】
酸化チタン前駆体を添加する量を制御することにより、シェルの厚さを制御することができる。酸化チタン前駆体は、シェルを特定の厚さにする必要量を、一度に添加してもよく、数度に分けて添加してもよい。酸化チタン前駆体を数度に分けて添加することにより、シェルの厚さがより均一になる傾向にある。
【0039】
シリカ前駆体としては、化学的又は物理的な方法によりシリカに変換できる物質であれば特に制限されない。シリカ前駆体の中では、シランアルコキシドが好ましい。シランアルコキシドとしては、シランテトラアルコキシドが好ましく、シランテトラC1-C4アルコキシドがより好ましく、シランテトラエトキシドがさらに好ましい。
【0040】
有機溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン等)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル等)、エーテル系溶媒(イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等)、グリコール系溶媒(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、オクチレングリコール等)、グリコールエーテル系溶媒(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、グリコールエステル系溶媒(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等)、グライム系溶媒(モノグライム、ジグライム等)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム等)、アミド系溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン)、ピリジン、スルホラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0041】
有機溶媒は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。2種類以上の有機溶媒を併用し、その比率、テンプレート粒子の濃度、塩基を加える方法等を制御することにより、反応液の分散状態を良好に維持しながら第1工程を行うことができる。
【0042】
塩基としては、無機塩基及び有機塩基が挙げられる。無機塩基としては、例えば、周期表の第1族元素又は第2族元素の水酸化物、好ましくはNa、K、Ca、Mg、Al、Fe等の水酸化物;アンモニア;などが挙げられる。有機塩基としては、例えば、ピリジン等の複素芳香環化合物;トリエチルアミン等のアルキルアミン(好ましくはトリアルキルアミン、より好ましくはトリC1-C4アルキルアミン);トリエタノールアミン等のヒドロキシアルキルアミン(好ましくはトリ(ヒドロキシアルキル)アミン、より好ましくはトリ(ヒドロキシC1-C4アルキルアミン));などが挙げられる。
【0043】
第1工程は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
第1工程の反応温度は、通常-30℃~80℃、好ましくは0℃~50℃である。
第1工程の反応時間は、反応温度、シェルの厚さ等によって変わるため、一概に決めることは困難である。その目安としては、通常0.1時間~10時間、好ましくは0.5時間~7時間程度である。
【0044】
なお、テンプレート粒子がポリマー粒子であり、その表面電位が酸化チタンと同じ符号であるときは、以下の方法によりコア/シェル粒子を形成することもできる。
すなわち、上記の表面電位と反対符号を有する有機ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン等)をテンプレート粒子の表面に吸着させる。次いで、酸化チタンの微粒子を有機ポリマーの表面に堆積又は吸着させ、必要に応じて酸化チタン前駆体を加えることにより、コア/シェル粒子を形成することができる。酸化チタンの微粒子として、例えばルチル型の酸化チタンを用いることにより、酸化チタン前駆体から生成する酸化チタンの結晶型をルチル型にすることができる。
【0045】
第1工程は、分散液の状態で反応が行われる。このため、その分散液の分散安定性を向上する目的で、第1工程は分散剤の存在下に行うのが好ましい。分散剤の種類は、シェルの形成を妨害しなければ特に制限されない。そのような分散剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリビニルピロリドン;共栄社化学株式会社製のフローレンシリーズ;ビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYKシリーズ;日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ;味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーシリーズ;楠本化成株式会社製のディスパロンシリーズ;などが挙げられる。
【0046】
[第2工程]
第2工程としては、テンプレート粒子を溶剤により溶解して除去する工程が挙げられる。そのような溶剤としては、シェル粒子を溶解又は破壊しない溶剤が好ましい。テンプレート粒子がポリマー粒子の場合、第2工程で使用する溶剤としては、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン、クロロホルム等の有機溶剤が挙げられる。また、テンプレート粒子が無機粒子の場合、第2工程で使用する溶剤としては、希塩酸、希硝酸、希硫酸等の酸の水溶液が挙げられる。
【0047】
[第3工程]
第3工程としては、第2工程で得られたシェル粒子を焼成することにより、中空粒子を得る工程が挙げられる。通常、焼成は、空気、窒素、アルゴン、水素、アンモニア等の1種類以上から選択されるガスの雰囲気下で行うことができるが、単結晶の酸化チタンを得るためには、空気雰囲気下で焼成するのが好ましい。なお、本明細書において「空気」とは、地球の大気圏の最下層を構成している気体であり、人類が生活する通常の環境で得られる気体を意味する。
【0048】
第3工程の焼成温度は、中空粒子の材質等によって変わるため、一概に決めることは困難である。その目安としては、通常600℃~1500℃以下、好ましくは650℃~1400℃、より好ましくは700℃~1300℃、さらに好ましくは750℃~1200℃程度である。
第3工程の焼成時間は、焼成温度等によって変わるため、一概に決めることは困難である。その目安としては、通常0.5時間~数十時間、好ましくは1時間~10時間程度である。
【0049】
なお、テンプレート粒子がポリマー粒子である場合、上記の第2工程が不要となる。すなわち、第1工程で得られるコア/シェル粒子を焼成する第3工程により、テンプレート粒子の除去とシェル粒子の焼成とが同時に行える。このため、第1工程及び第3工程の2工程のみで、中空粒子を製造することができる。
【0050】
第3工程で得られる中空粒子には、形状が不均一な副生成物の粒子が含まれることがある。副生成物の粒子の割合は、通常10%以下、好ましくは5%以下である。合成条件を精密に制御すること等により、副生成物の粒子の生成を抑制することができる。副生成物の含有率は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)で無作為に撮影した中空粒子100個のうちの、形状が不均一な粒子の個数により算出することができる。
【0051】
<白インク>
本実施形態に係る白インクは、上述した本実施形態に係る中空粒子を着色剤として含有する。本実施形態に係る白インクは、水性インク、ラテックスインク、ソルベントインク、及び紫外線硬化型インクよりなる群から選択されるインクとして使用できる。このような各種のインクは、着色剤としての中空粒子とともに、各インクに必要な成分を適宜加えることにより調製することができる。
【0052】
[水性インク]
本実施形態に係る白インクを水性インクとする場合、白インクは、水、分散剤、水溶性有機溶剤、及び界面活性剤を含有することが好ましい。
使用できる水に制限はないが、無機イオン等の不純物が少ないものが好ましい。そのような水としては、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。
【0053】
分散剤としては、スチレン及びその誘導体;ビニルナフタレン及びその誘導体;α,β-エチレン性不飽和性カルボン酸の脂肪族アルコールエステル;アクリル酸及びその誘導体;マイレン酸及びその誘導体;イタコン酸及びその誘導体;ファール酸及びその誘導体;酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びそれらの誘導体;などから選択される少なくとも2種類のモノマー(好ましくは、少なくとも1種類が親水性のモノマー)を重合して得られる共重合体が挙げられる。共重合体の種類としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、それらの塩等が挙げられる。
【0054】
分散剤は、合成することもでき、市販品として入手することもできる。市販品の具体例としては、例えば、ジョンクリル62、67、68、678、687等(BASF社製のスチレン-アクリル系樹脂);モビニールS-100A(ヘキスト合成社製の変性酢酸ビニル樹脂);ジュリマーAT-210(日本純薬株式会社製のポリアクリル酸エステル共重合体);ビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYKシリーズ(例えば、DISPERBYK-2010);などが挙げられる。分散剤を合成する場合、国際公開第2013/115071号に開示された分散剤が好ましく挙げられる。
【0055】
水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1-C6アルコール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルピロリジン-2-オン等のラクタム;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン、1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の環式尿素類;アセトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン、エチレンカーボネート等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量400、800、1540、又はそれ以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等のC2-C6ジオール、又はC2-C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール若しくはチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のポリオール(トリオール);ジメチルスルホキシド;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート等のグリコールエーテル類又はグリコールエーテルアセテート類;などが挙げられる。
【0056】
界面活性剤としては、例えば、アニオン、カチオン、ノニオン、両性、シリコーン系、フッ素系等の公知の界面活性剤が挙げられる。これらの中では、ノニオン界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が好ましく、シリコーン系界面活性剤がより好ましい。
【0057】
アニオン界面活性剤としては、アルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸又はその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型リン酸エステル、アルキル型リン酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0058】
カチオン界面活性剤としては、2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0059】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(アルコール)系、及びそれらのC2-C4アルキレンオキシ付加物;ポリグリコールエーテル系;などが挙げられる。
【0060】
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0061】
シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。その一例としては、エアープロダクツ社製のダイノール960、ダイノール980;日信化学株式会社製のシルフェイスSAG001、シルフェイスSAG002、シルフェイスSAG003、シルフェイスSAG005、シルフェイスSAG503A、シルフェイスSAG008、シルフェイスSAG009、シルフェイスSAG010;ビックケミー社製のBYK-345、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-3455;などが挙げられる。これらの中でも、ビックケミー社製のBYKシリーズ等で知られるポリエーテル変性シロキサンが好ましい。
【0062】
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、DuPont社、オムノバ社、DIC株式会社、ビックケミー社等から、様々な種類の製品を容易に購入することができる。
【0063】
[ラテックスインク]
本実施形態に係る白インクをラテックスインクとする場合、白インクは、水、水溶性有機溶剤、及び樹脂を含有することが好ましい。白インク中の樹脂は、乳濁又は懸濁した状態とすることもできる。
水及び水溶性有機溶剤としては、水性インクが含有するものと同じものが挙げられる。
【0064】
樹脂としては、水溶性ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等、これらの変性樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アクリル系樹脂、水溶性ポリウレタン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性アクリル系樹脂等が好ましい。
【0065】
[ソルベントインク]
本実施形態に係る白インクをソルベントインクとする場合、白インクは、分散剤及び非水系有機溶剤を含有することが好ましい。
【0066】
分散剤としては、日信化学工業株式会社製のソルバインシリーズ;共栄社化学株式会社製のフローレンシリーズ;ビックケミー・ジャパン株式会社製のANTI-TERRAシリーズ、DISPERBYKシリーズ;等が挙げられる。
【0067】
非水系有機溶剤としては、炭化水素系、エステル系、ケトン系等の各溶剤が挙げられる。炭化水素系溶媒としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。エステル系溶剤としては、ギ酸プロピル、ギ酸-n-ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸-n-アミル、酢酸イソアミル、酢酸メチルイソアミル、酢酸第二ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸-n-ブチル、酪酸ブチル、酪酸エチル、乳酸メチル、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、メシチルケトン等が挙げられる。
【0068】
[紫外線硬化型インク]
本実施形態に係る白インクを紫外線硬化型インクとする場合、白インクは、硬化型モノマー又は硬化型オリゴマー、及び光硬化開始剤を含有することが好ましい。また、白インクは、光硬化増感剤をさらに含有していてもよい。
【0069】
本明細書において「硬化型モノマー」とは、外部から刺激を与えることによって重合し、硬化物を形成するモノマーを意味する。また、「硬化型オリゴマー」とは、外部から刺激を与えることによって重合し、硬化した樹脂を形成するオリゴマーを意味する。
硬化型モノマーとしては、ラジカル重合タイプの低粘度アクリルモノマー;いずれもカチオン重合タイプのビニルエーテル類、オキセタン系モノマー、環状脂肪族エポキシモノマー;などが挙げられる。
硬化型オリゴマーとしては、カチオン重合タイプのアクリル系オリゴマーが挙げられる。
【0070】
低粘度アクリルモノマーとしては、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート、3-クロロー2-ヒドロキシプロピルメタアクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、ダイアセトンアクリルアマイド、ビニルホルムアミド、N-ビリルピロリドン、ネオペンチルグリコールジメタクリレート2POネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、グリセリンジメタクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、変性エポキシ化ポリエチレングリコールジアクリレート、アクリル酸-2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。
【0071】
ビニルエーテル類としては、ヒドロキシブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、プロピレンカーボネートのプロペニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、ノナジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、VEEAアクリル酸-2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、又はVEEMメタクリル酸-2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
【0072】
オキタセン系モノマーとしては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス[((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル]ベンゼン、3-エチル-3-[((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン等が挙げられる。
【0073】
環状脂肪族エポキシモノマーとしては、Celloxide 2000、Celloxide 3000(株式会社ダイセル製);CYRACURE UVR-6015、CYRACURE UVR-6028、CYRACURE UVR-6105、CYRACURE UVR-6128、CYRACURE ERL-4140、及びそれらの誘導体(ダウ・ケミカル社製);DCPD-EP及びその誘導体(丸善石油化学株式会社製);などが挙げられる。
【0074】
アクリル系オリゴマーとしては、ハイパーブランチ型ポリエステルアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0075】
光重合開始剤としては、特に限定されず、公知の光重合開始剤を目的に応じて使用できる。その具体例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキシド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184;BASF社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー(エサキュアONE;ランバルティ社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュアー2959;BASF社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(イルガキュアー127;BASF社製)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(イルガキュアー651;BASF社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(ダロキュア1173;BASF社製)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(イルガキュアー907;BASF社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0076】
これらの中でも、硬化性及び透明性の観点から、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが好ましい。
【0077】
また、光重合開始剤は、分子内水素引き抜き型光重合開始剤であってもよい。分子内水素引き抜き型光重合開始剤としては、オキシフェニルアセチックアシッドメチルエステル(イルガキュアーMBF;BASF社製)、オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)エチルエステルとの混合物(イルガキュアー754;BASF社製)等のオキシフェニル系光重合開始剤などが挙げられる。
【0078】
なお、アミン類等の光重合開始助剤を光重合開始剤と併用することもできる。アミン類等としては、安息香酸2-ジメチルアミノエチルエステル、ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等が挙げられる。
【0079】
[調製方法等]
本実施形態に係る白インクは、水、非水系溶剤等の目的とする液媒体に中空粒子を加え、公知の方法で分散することによって調製することができる。分散方法としては、例えば、着色剤と分散剤とを高速撹拌ホモジナイザー、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等に入れて、分散を行う方法が挙げられる。一例として、サンドミルを用いるときは、粒子径が0.01mm~1mm程度のビーズを使用し、ビーズの充填率を適宜設定して分散処理を行うことができる。
【0080】
このようにして得られた分散液に対して、濾過、遠心分離等の操作を行ってもよい。この操作により、分散液に含まれる粒子の粒子径の大きさを揃えることができる。
【0081】
上述した全ての成分は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、上述した全ての事項等について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ、より好ましいものとさらに好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
【0082】
<インクジェット記録方法>
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上述した本実施形態に係る白インクの液滴を、インクジェットプリンタにより吐出させ、記録メディアに付着させることにより記録を行うものである。インクジェットプリンタの方式としては、ピエゾ方式、サーマルインクジェット方式等が挙げられる。本実施形態に係る白インクは、いかなる方式のインクジェットインクとしても使用できる。
【0083】
記録メディアとしては、例えば、紙、フィルム、繊維又は布、皮革、セラミックス、ガラス、金属等が挙げられる。
【0084】
特に、本実施形態に係る白インクは、黒色等の明度の低い被印字面に印字することにより視認性の良い記録物が得られることから、明度の低い記録メディアへの記録に有用である。また、本実施形態に係る白インクを透明な記録メディアに付着させ、白下地を形成することにより、隠ぺい性を向上させることができる。
【実施例
【0085】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。
実施例において、1回の合成操作等で目的とする量の物質が得られなかったときは、目的とする量の物質が得られるまで、その合成操作等を繰り返し行った。
中空粒子の1次粒子径及び内径は、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM-2800)を用いて測定した。
実施例で得られた粒子が含有する酸化チタン中のルチル型酸化チタンの割合は、粉末X線回析装置(スペクトリス株式会社製、X’Pert PRO)を用い、下記式(1)に従って算出した。
【0086】
下記式(1)中の略号等は、以下の意味を有する。
:ルチル型酸化チタンの含有率(%)
(101):粉末X線回折装置で測定したアナターゼ型結晶の(101)面の強度
(110):粉末X線回折装置で測定したルチル型結晶の(110)面の強度
【0087】
【数1】
【0088】
中空粒子の沈降速度の測定には、以下のようにして調製した分散液を被検物質として用いた。すなわち、中空粒子を蒸留水中に1質量%となるように加えて液を得た。この液を、フィルミックス(プライミクス株式会社製、RM)を用いて10000rpm、10分間の条件で処理し、得られた分散液を被検物質とした。そして、遠心沈降式分散安定性分析装置(日本ルフト株式会社製、LUMiFuge 110)を用い、以下の条件で中空粒子の沈降速度を測定した。
-測定条件-
回転数:2000rpm
測定温度:25℃
測定時間:50分
【0089】
[合成例1:テンプレート粒子のエタノール分散液(分散液1)の調製]
蒸留水600gにスチレン21g、メタクリル酸2.4g、及び過硫酸カリウム0.05gを加え、80℃で乳化重合を行い、スチレン-メタクリル酸ポリマー粒子を含有する水分散液を得た。得られたテンプレート粒子の1次粒子径は237nmであった。テンプレート粒子の水分散液をエバポレータで濃縮しながらエタノールを加え、水をエタノールで置換することにより、分散液1を調製した。分散液1中のテンプレート粒子の含有率は9質量%であった。
【0090】
[実施例1]
(工程1:コア/シェル粒子を得る工程)
エタノール20g、アセトニトリル8g、ポリビニルピロリドン0.1g、及び分散液1(5g)を10℃に冷却して液を得た。この液に、チタニウムテトラブトキシド3g、オルトケイ酸テトラエチル0.1g、及び1%水酸化カリウム水溶液3gを3回に分けて0.5時間おきに加え、10℃で4時間反応させることにより、コア/シェル粒子を含有する液を得た。得られた液を15000rpm、25分間の条件で遠心分離して上澄み液を除去し、残渣を60℃に加熱した減圧乾燥機で乾燥させることにより、目的とするコア/シェル粒子2.0gを得た。
【0091】
(工程2:コア/シェル粒子を焼成し、テンプレート粒子を除去するとともに中空粒子を得る工程)
工程1で得たコア/シェル粒子2.0gをセラミックボードに載せて焼成炉にセットし、空気雰囲気下、1000℃で1時間焼成することにより、実施例1の中空粒子0.7gを得た。
【0092】
[実施例2]
実施例1の工程1で使用したオルトケイ酸テトラエチル0.1gを0.02gに変更し、1%水酸化カリウム水溶液を1%アンモニア水に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の中空粒子0.7gを得た。
【0093】
[実施例3]
実施例1の工程1で使用したオルトケイ酸テトラエチル0.1gを0.01gに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3の中空粒子0.7gを得た。
【0094】
[実施例4]
実施例1の工程1で使用したオルトケイ酸テトラエチル0.1gを0.04gに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4の中空粒子0.7gを得た。
【0095】
[実施例5]
実施例1の工程1で使用したチタニウムテトラブトキシド3gを5gに変更し、オルトケイ酸テトラエチル0.1gを0.04gに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例5の中空粒子1.2gを得た。
【0096】
[比較例1]
実施例1の工程1で使用したオルトケイ酸テトラエチル0.1gを0.002gに変更した以外は実施例1と同様にして中空粒子の製造を試みたが、中空粒子を製造することができず、中空構造を有さない粒子が得られた。
【0097】
[比較例2]
実施例1の工程1と同様にして調製したコア/シェル粒子2.0gをセラミックボードに載せて焼成炉にセットし、水素雰囲気下、800℃で1時間焼成し、続いて空気雰囲気下、800℃で1時間焼成することにより、比較例2の中空粒子0.7gを得た。
【0098】
[比較例3]
実施例5の工程1と同様にして調製したコア/シェル粒子2.0gをセラミックボードに載せて焼成炉にセットし、空気雰囲気下、500℃で1時間焼成することにより、比較例3の中空粒子1.2gを得た。
【0099】
上述した実施例1~5及び比較例1~3で得られた粒子の物性値等を下記表1に示す。また、実施例1及び比較例2で得られた中空粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像、及び単粒子の電子回析像をそれぞれ図1及び図2に示す。なお、実施例1~5及び比較例1~3で得られた粒子が含有するシリカは、X線回折測定により結晶性シリカに由来する回析ピークが現れず、いずれもアモルファスシリカであった。
【0100】
【表1】
【0101】
表1中の各項目は、以下の意味を有する。
Si:粒子が含有するシリカの含有率(SiO換算値、単位は[モル%])。なお、酸化チタンの含有率は、「100モル%-シリカの含有率(モル%)」で算出できる。
中空粒子:「Yes」は中空粒子であることを意味し、「No」は中空粒子ではないことを意味する。
粒子径:中空粒子の1次粒子径B(単位は[nm])
変動係数:中空粒子の1次粒子径Bの変動係数(単位は[%])
中空径:中空粒子の内径A(単位は[nm])
A/B:中空粒子の1次粒子径Bに対する内径Aの比
:粒子が含有する酸化チタン中のルチル型酸化チタンの割合(単位は[%])
単結晶:「Yes」は中空粒子の単粒子の電子回析像としてスポット像が得られたことを意味し、「No」はスポット像が得られなかったことを意味する。
沈降速度:中空粒子の沈降速度(単位は[μm/s])
【0102】
表1に示すとおり、中空粒子の粒子径が大きくなるほど沈降速度が大きくなる傾向が確認された。また、各実施例の中空粒子は、同程度の1次粒子径及び中空径を有する比較例の中空粒子よりも沈降速度が小さく、沈降安定性が良好であることが確認された。
【0103】
[合成例2:テンプレート粒子のエタノール分散液(分散液2)の調製]
蒸留水600gにスチレン126g、メタクリル酸2.8g、及び過硫酸カリウム0.12gを加え、80℃で乳化重合を行い、スチレン-メタクリル酸ポリマー粒子を含有する水分散液を得た。得られたテンプレート粒子の1次粒子径は436nmであった。テンプレート粒子の水分散液をエバポレータで濃縮しながらエタノールを加え、水をエタノールで置換することにより、分散液2を調製した。分散液2中のテンプレート粒子の含有率は9質量%であった。
【0104】
[実施例6]
(工程1:コア/シェル粒子を得る工程)
エタノール20g、アセトニトリル8g、ポリビニルピロリドン0.1g、及び分散液2(5g)を10℃に冷却して液を得た。この液に、チタニウムテトラブトキシド20g、オルトケイ酸テトラエチル0.2g、及び1%水酸化カリウム水溶液3gを8回に分けて0.5時間おきに加え、10℃で4時間反応させることにより、コア/シェル粒子を含有する液を得た。得られた液を15000rpm、25分間の条件で遠心分離して上澄み液を除去し、残渣を60℃に加熱した減圧乾燥機で乾燥させることにより、目的とするコア/シェル粒子3.1gを得た。
【0105】
(工程2:コア/シェル粒子を焼成し、テンプレート粒子を除去するとともに中空粒子を得る工程)
工程1で得たコア/シェル粒子3.1gをセラミックボードに載せて焼成炉にセットし、空気雰囲気下、1000℃で1時間焼成することにより、実施例6の中空粒子1.9gを得た。
【0106】
[実施例7]
実施例1の工程1で使用したオルトケイ酸テトラエチル0.1gを0.2gに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例7の中空粒子0.7gを得た。
【0107】
[実施例8]
実施例1の工程1で使用したオルトケイ酸テトラエチル0.1gを0.3gに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例8の中空粒子0.7gを得た。
【0108】
上述した実施例6~8で得られた中空粒子の物性値等を下記表2に示す。また、実施例7、8で得られた中空粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像、及び単粒子の電子回析像をそれぞれ図3及び図4に示す。なお、実施例6~8で得られた中空粒子が含有するシリカは、X線回折測定により結晶性シリカに由来する回析ピークが現れず、いずれもアモルファスシリカであった。
【0109】
【表2】
【0110】
[中空粒子の強度試験]
実施例1、5、及び比較例2、3で得られた中空粒子0.007gを蒸留水10mLに添加し、超音波浴(本多電子株式会社製、W-113MkII)で10分間、超音波処理を施して強度試験前の液を得た。得られた液と、0.03mm径のジルコニアビーズ6gとをフィルミックス(プライミクス株式会社製、RM)に加え、3000rpm、10分間の条件で処理することにより、強度試験後の液を得た。
【0111】
強度試験前後で得られた各液に蒸留水を加えて10倍に希釈し、希釈液の濁度を測定した。濁度の測定には、色彩・濁度同時測定器(日本電色工業株式会社製、COH400)を用いた。濁度はTURB値として表示し、TURB値はカオリン標準溶液についての濃度である。TURB値の変化率は下記式に従って算出し、小数点以下1桁目を四捨五入した。TURB値の変化率が大きいほど中空粒子の強度が高いことを示す。TURB値の変化率を下記表3に示す。
TURB値の変化率(%)=(強度試験後のTURB値(mg/L)/強度試験前のTURB値(mg/L))×100
【0112】
【表3】
【0113】
表3に示すとおり、実施例1、5の中空粒子は、比較例2、3の中空粒子よりもTURB値の変化率が大きく、粒子強度が高いことが確認された。なお、強度試験前後の中空粒子について電子顕微鏡の測定を行ったところ、実施例1、5においては強度試験後においても多数の中空粒子を確認できたが、比較例2、3においては中空粒子が明らかに減少していた。
【0114】
[細孔の有無の確認試験]
中空粒子の表面に、内部の空孔へと通じる細孔が存在するか否かを確認するため、実施例1、5、及び比較例2、3で得られた中空粒子に対し、細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、BELSORP-mini II)を用いて、相対圧力に対する吸着量及び脱着量を測定し、吸脱着等温線を作成した。吸脱着等温線のIUPAC分類(型)を下記表4に示す。また、実施例1及び比較例2で得られた中空粒子の吸脱着等温線をそれぞれ図5及び図6に示す。
【0115】
【表4】
【0116】
表4に示すとおり、実施例1、5の中空粒子は、吸脱着等温線のIUPAC分類がII型であり、粒子の表面に内部の空孔へと通じる細孔は存在しないことが確認された。一方、比較例2、3の中空粒子は、吸脱着等温線のIUPAC分類がIV型であり、粒子の表面に内部の空孔へと通じる細孔が存在していた。
【0117】
[実施例9]
実施例1で得られた中空粒子0.07g及び分散剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、DISPERBYK-2010)0.175gを蒸留水7mLに添加し、フィルミックス(プライミクス株式会社製、RM)に加え、10000rpm、10分間の条件で処理することにより分散液を得た。得られた分散液5g、1,2-ヘキサンジオール0.1g、樹脂(積水化学工業株式会社製、エスレックKW-1)0.75g、及び蒸留水1.5gを混合することにより、実施例9の白インクを調製した。
【0118】
[比較例4]
実施例1の工程1で使用したチタニウムテトラブトキシド3gを5gに変更し、オルトケイ酸テトラエチル0.1gを1.3gに変更した以外は実施例1と同様にして、中空粒子1.0gを得た。得られた中空粒子が含有するシリカの含有率は、SiO換算値で30.0モル%であった。また、得られた中空粒子は、X線回折測定により結晶性シリカに由来する回析ピークが現れず、アモルファスシリカであった。得られた中空粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像、及び単粒子の電子回析像を図7に示す。電子回折像からはスポット像が得られず、単結晶酸化チタンが含有されていないことが確認された。
【0119】
得られた中空粒子0.07gを用い、実施例9と同様にして、比較例4の白インクを調製した。
【0120】
[隠ぺい性試験]
実施例9及び比較例4で調製した白インクにシリコーン系界面活性剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、BYK-349)0.02gをさらに添加した。50mm×50mmのガラス基板上にスピンコーターで800rpm、10秒間の条件で各白インクを塗布した後、120℃で5分間乾燥させることにより、隠ぺい性試験用の試験片を作製した。得られた試験片の拡散反射率を分光光度計(株式会社島津製作所製、UV-3100)で測定し、380nm~780nmの平均反射率(%)を求めた。得られた数値が大きいほど隠ぺい性が良好であることを示す。隠ぺい性試験結果を下記表5に示す。
【0121】
[沈降安定性試験]
実施例9及び比較例4で調製した白インクにおける中空粒子の沈降速度(μm/s)を、遠心沈降式分散安定性分析装置(日本ルフト株式会社製、LUMiFuge 110)を用いて測定した。得られた数値が小さいほど沈降安定性が良好であることを示す。沈降安定性試験結果を下記表5に示す。
【0122】
【表5】
【0123】
表5に示すとおり、実施例9の白インクは、比較例4の白インクに比べて隠ぺい性及び沈降安定性に優れていた。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7