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特許7058288青色光を発光する有機エレクトロルミネセントデバイス
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  • 特許-青色光を発光する有機エレクトロルミネセントデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】青色光を発光する有機エレクトロルミネセントデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20220414BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20220414BHJP
   C07D 403/10 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
H05B33/14 B
C09K11/06 640
C07D403/10 CSP
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019561251
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2018061756
(87)【国際公開番号】W WO2018206520
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】17169900.2
(32)【優先日】2017-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517297359
【氏名又は名称】サイノラ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ハルディ
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルギオス・リアプトシス
(72)【発明者】
【氏名】ハーラルト・フリュッゲ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ピンゲル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ヘーフレ
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/157619(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0329514(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0056393(US,A1)
【文献】特開2013-197323(JP,A)
【文献】国際公開第2017/005699(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C09K 11/06
C07D 403/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機エレクトロルミネセントデバイスであって:
(i)最下の励起一重項状態のエネルギー準位S1Hおよび最下の励起三重項状態のエネルギー準位T1H、を有するホスト材料HBと;
(ii)最下の励起一重項状態のエネルギー準位S1Eおよび最下の励起三重項状態のエネルギー準位T1E、を有する第1の熱活性化遅延蛍光(TADF)材料EBと;
(iii)最下の励起一重項状態のエネルギー準位S1Sおよび最下の励起三重項状態のエネルギー準位T1S、を有する第2のTADF材料SB
を含む発光層Bを含み、
BはEBにエネルギーを伝達し、EBは420から500nmの間の発光最大で熱活性化遅延蛍光を発光し;かつ、以下の式(1)~(4):
S1H>S1E (1)
S1H>S1S (2)
S1E>S1S (3)
T1H>T1S (4)
によって表される関係が当てはまり、
ここで、
S1 E >S1 S ≧T1 E >T1 S および
S1 E -T1 S ≦0.4eVである、
前記有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項2】
有機発光ダイオード、発光電気化学セル、および発光トランジスタからなる群から選択されるデバイスである、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項3】
第1のTADF材料EBは有機TADFエミッタである、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項4】
第2のTADF材料SBは有機TADFエミッタである、請求項1~3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項5】
440~470nmの発光最大λmax(D)を示す、請求項1~4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項6】
発光層Bは:
(i)ホスト化合物HBを5~98重量%;
(ii)第1のTADF材料EBを1~50重量%;および
(iii)第2のTADF材料SBを1~50重量%;ならびに場合により
(iv)HBと異なる1種またはそれ以上のさらなるホスト化合物HB2を0~93重量%;ならびに場合により
(v)1種またはそれ以上の溶媒を0~93重量%、
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項7】
第2のTADF材料SBは、発光最大λmax PMMA(SB)を示し、第1のTADF材料EBは、発光最大λmax PMMA(EB)を示し、
500nm≧λmax PMMA(SB)>λmax PMMA(EB
ある、請求項1~6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項8】
第1のTADF材料EBは、450から470nmまでの範囲の発光最大λmax PMMA(EB)を示す、請求項1~7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項9】
第2のTADF材料SBは、発光最大λmax PMMA(SB)を示し、第1のTADF材料EBは、発光最大λmax PMMA(EB)を示し、デバイスは発光最大λmax(D)を示し、
λmax PMMA(SB)>λmax(D)≧λmax PMMA(EB
である、請求項1~8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項10】
第1のTADF材料EBおよび第2のTADF材料SBは、両方ともに、式I
【化1】
(式中、
nは、各存在で、他から独立して、1または2であり;
Xは、各存在で、CNまたはCF3から、他から独立して選択され;
Zは、各存在で、直接結合、CR34、C=CR34、C=O、C=NR3、NR3、O、SiR34、S、S(O)およびS(O)2からなる群から、他から独立して選択され;
ArEWGは、各存在で、他から独立して式IIa~IIi
【化2】
のうちの1つによる構造であり;
ここで、
#は、ArEWGを式Iの置換されているセンターのフェニル環と連結している単結合の結合部位を表し;
1は、各存在で、水素、重水素、
1つまたはそれ以上の水素原子が重水素によって場合により置換されているC1~C5-アルキル、および
1つまたはそれ以上の置換基R6で場合により置換されているC6~C18-アリール、
からなる群から、他から独立して選択され;
2は、各存在で、水素、重水素、
1つまたはそれ以上の水素原子が重水素によって場合により置換されているC1~C5-アルキル、および
1つまたはそれ以上の置換基R6で場合により置換されているC6~C18-アリール、
からなる群から、他から独立して選択され;
a、R3およびR4は、各存在で、水素、重水素、N(R52、OR5、SR5、Si(R53、CF3、CN、F、
1つまたはそれ以上の置換基R5で場合により置換されており、かつ非隣接の1つまたはそれ以上のCH2基がR5C=CR5、C≡C、Si(R52、Ge(R52、Sn(R52、C=O、C=S、C=Se、C=NR5、P(=O)(R5)、SO、SO2、NR5、O、SまたはCONR5によって、場合により置換されている、C1~C40-アルキル;
1つまたはそれ以上の置換基R5で場合により置換されており、かつ非隣接の1つまたはそれ以上のCH2基がR5C=CR5、C≡C、Si(R52、Ge(R52、Sn(R52、C=O、C=S、C=Se、C=NR5、P(=O)(R5)、SO、SO2、NR5、O、SまたはCONR5によって、場合により置換されている、C1~C40-チオアルコキシ;および
1つまたはそれ以上の置換基R5で場合により置換されている、C6~C60-アリール;1つまたはそれ以上の置換基R5で場合により置換されている、C3~C57-ヘテロアリール
からなる群から、他から独立して選択され;
5は、各存在で、水素、重水素、N(R62、OR6、SR6、Si(R63、CF3、CN、F、
1つまたはそれ以上の置換基R6で場合により置換されており、かつ非隣接の1つまたはそれ以上のCH2基がR6C=CR6、C≡C、Si(R62、Ge(R62、Sn(R62、C=O、C=S、C=Se、C=NR6、P(=O)(R6)、SO、SO2、NR6、O、SまたはCONR6によって、場合により置換されている、C1~C40-アルキル;
1つまたはそれ以上の置換基R6で場合により置換されている、C6~C60-アリール;および
1つまたはそれ以上の置換基R6で場合により置換されている、C3~C57-ヘテロアリール
からなる群から、他から独立して選択され;
6は、各存在で、水素、重水素、OPh、CF3、CN、F、
1つまたはそれ以上の水素原子が重水素、CN、CF3、またはFによって互いに独立して場合により置換されている、C1~C5-アルキル;
1つまたはそれ以上の水素原子が重水素、CN、CF3、またはFによって互いに独立して場合により置換されている、C1~C5-アルコキシ;
1つまたはそれ以上の水素原子が重水素、CN、CF3、またはFによって互いに独立して場合により置換されている、C1~C5-チオアルコキシ;
1つまたはそれ以上のC1~C5-アルキル置換基で場合により置換されている、C6~C18-アリール;
1つまたはそれ以上のC1~C5-アルキル置換基で場合により置換されている、C3~C17-ヘテロアリール;
N(C6~C18-アリール)2
N(C3~C17-ヘテロアリール)2、および
N(C3~C17-ヘテロアリール)(C6~C18-アリール)
からなる群から、他から独立して選択され;
dは、各存在で、水素、重水素、N(R52、OR5、SR5、Si(R53、CF3、CN、F、
1つまたはそれ以上の置換基R5で場合により置換されており、かつ非隣接の1つまたはそれ以上のCH2基がR5C=CR5、C≡C、Si(R52、Ge(R52、Sn(R52、C=O、C=S、C=Se、C=NR5、P(=O)(R5)、SO、SO2、NR5、O、SまたはCONR5によって、場合により置換されている、C1~C40-アルキル;
1つまたはそれ以上の置換基R5で場合により置換されており、かつ非隣接の1つまたはそれ以上のCH2基がR5C=CR5、C≡C、Si(R52、Ge(R52、Sn(R52、C=O、C=S、C=Se、C=NR5、P(=O)(R5)、SO、SO2、NR5、O、SまたはCONR5によって、場合により置換されている、C1~C40-チオアルコキシ;および
1つまたはそれ以上の置換基R5で場合により置換されている、C6~C60-アリール;1つまたはそれ以上の置換基R5で場合により置換されている、C3~C57-ヘテロアリール
からなる群から、他から独立して選択され;
ここで、置換基Ra、R3、R4またはR5が、互いに独立して場合により、1つもしくはそれ以上の置換基Ra、R3、R4またはR5と一緒に、単環のまたは多環の、脂肪族環系、芳香族環系および/またはベンゾ縮合環系を形成することができ、
ここで、1つまたはそれ以上の置換基Rdが、互いに独立して場合により、1つまたはそ
れ以上の置換基Rdと一緒に、単環のまたは多環の、脂肪族環系、芳香族環系および/またはベンゾ縮合環系を形成することができる)
の構造の分子から、他から独立して選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項11】
第1のTADF材料EBおよび第2のTADF材料SBの両方は、Ra、R1、R2およびXのうちの1つまたはそれ以上のみが構造的に異なる、式Iによる同じ構造を有する、請求項10に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項12】
Zは各存在で直接結合である、請求項10または11に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項13】
aは各存在で、
水素、重水素、Me、iPr、tBu、CN、CF3
Me、iPr、tBu、CN、CF3およびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているPh、
Me、iPr、tBu、CN、CF3およびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているピリジニル、
Me、iPr、tBu、CN、CF3およびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているピリミジニル、
Me、iPr、tBu、CN、CF3およびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているカルバゾリル、
Me、iPr、tBu、CN、CF3およびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているトリアジニル、
ならびにN(Ph)
からなる群から、他から独立して選択される、
請求項1012のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項14】
第2のTADF材料S B は、発光最大λ max PMMA (S B )を示し、第1のTADF材料E B は、発光最大λ max PMMA (E B )を示し、
480nm≧λ max PMMA (S B )>λ max PMMA (E B
である、請求項1~13のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスト材料Hと、第1の熱活性化遅延蛍光(TADF)材料Eと、第2のTADF材料Sとを含む発光層Bを含む有機エレクトロルミネセントデバイスであって、SはEにエネルギーを伝達し、Eは420から500nmの間の発光最大でTADFを発光する、有機エレクトロルミネセントデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル(LEC)および発光トランジスタなどの有機物をベースとする1つまたはそれ以上の発光層を含有する有機エレクトロルミネセントデバイスは、ますます重要性を増している。具体的には、OLEDは、例えばスクリーン、ディスプレイおよび照明デバイスなどの電子製品用の有望なデバイスである。無機物を本質的にベースとするほとんどのエレクトロルミネセントデバイスとは対照的に、有機物をベースとする有機エレクトロルミネセントデバイスはかなり柔軟であり、特に薄い層で製造可能であることが多い。今日すでに利用可能なOLEDベースのスクリーンやディスプレイは、特に効果的な鮮明な色、コントラストを有し、これらのエネルギー消費に関して比較的効率的である。
【0003】
光を発生するための有機エレクトロルミネセントデバイスの中心的要素は、アノードとカソードとの間に配置された発光層である。有機エレクトロルミネセントデバイスに電圧(および電流)を印加すると、アノードおよびカソードからそれぞれ正孔および電子が発光層に注入される。通常は、正孔輸送層は発光層とアノードとの間に位置し、電子輸送層は発光層とカソードとの間に位置している。異なる層が順次配列されている。次いで、正孔と電子との再結合によって高エネルギーの励起子が発生する。そのような励起状態(例えば、S1などの一重項状態および/またはT1などの三重項状態)の基底状態(S0)への崩壊は、望ましくは発光をもたらす。
【0004】
効率的なエネルギー輸送および放出を可能にするために、有機エレクトロルミネセントデバイスは、1種またはそれ以上のホスト化合物とドーパントとして1種またはそれ以上のエミッタ化合物とを含む。有機エレクトロルミネセントデバイスを作製する場合の課題は、したがって、デバイスの照明レベル(すなわち、電流当たりの明るさ)の改善であり、所望の光スペクトルを得ること、および適切な(長い)寿命を達成することである。
【0005】
可視光スペクトルの深青色領域で発光する効率的で安定なOLEDが依然として欠けており、これは、CIEy値が小さいことによって表されるであろう。したがって、特に深青色範囲において、長い寿命と高い量子収率を有する有機エレクトロルミネセントデバイスに関して満たされていない技術的ニーズが依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、2つの熱活性化遅延蛍光(TADF)材料と、ホスト材料とを含む有機エレクトロルミネセントデバイスの発光層によって、良好な寿命および量子収率を有し、深青色発光を示す、有機エレクトロルミネセントデバイスが用意される、ことが分かった。ここで、TADF材料のうちの一方は、特に、より低い一重項状態のエネルギー準位を有するものは、他方のTADF材料に、特により高い一重項状態のエネルギー準位を有するものにエネルギーを伝達し、これは、420から500nmの間の発光最大を有する。
【0007】
したがって、本発明の一態様は、有機エレクトロルミネセントデバイスであって:
(i)最下の励起一重項状態のエネルギー準位S1および最下の励起三重項状態のエネルギー準位T1、を有するホスト材料Hと;
(ii)最下の励起一重項状態のエネルギー準位S1および最下の励起三重項状態のエネルギー準位T1、を有する第1の熱活性化遅延蛍光(TADF)材料Eと;
(iii)最下の励起一重項状態のエネルギー準位S1および最下の励起三重項状態のエネルギー準位T1、を有する第2のTADF材料S
を含む発光層Bを含み、
はEにエネルギーを伝達し、Eは420から500nmの間の発光最大で熱活性化遅延蛍光を発光し;かつ、以下の式(1)~(4):
S1>S1 (1)
S1>S1 (2)
S1>S1 (3)
T1>T1 (4)
によって表される関係が当てはまる、
有機エレクトロルミネセントデバイスに関する。
【0008】
本発明によれば、ホスト材料Hの最下の励起一重項状態は、第1の熱活性化遅延蛍光(TADF)材料Eの最下の励起一重項状態よりもエネルギーが高い。ホスト材料Hの最下の励起一重項状態は、第2のTADF材料Eの最下の励起一重項状態よりもエネルギーが高い。第1のTADF材料Eの最下の励起一重項状態は、第2のTADF材料Sの最下の励起一重項状態よりもエネルギーが高い。ホスト材料Hの最下の励起三重項状態は、第2のTADF材料Sの最下の励起三重項状態よりもエネルギーが高い。
【0009】
本明細書で使用する場合、「TADF材料」および「TADFエミッタ」という用語は、同じ意味で理解してよい。「エミッタ」「エミッタ化合物」等という用語のうちの1つが使用される場合、これは、本発明のTADF材料は好ましくは、特にそれぞれEおよびSとして指定された一方またはこれらを意味する、というように理解してよい。
【0010】
好ましい実施形態では、ホスト材料Hの最下の励起三重項状態は、第1のTADF材料Eの最下の励起三重項状態よりもエネルギーが高い:T1>T1
【0011】
あるいは、ホスト材料Hの最下の励起三重項状態は、第1のTADF材料Eの最下の励起三重項状態よりもエネルギーが低くてもよい:T1<T1。次いで、システムについての当業者であれば予想するであろう、ホストの最下の励起三重項状態がエミッタの最下の励起三重項状態よりもエネルギーが低い、ホスト材料Hと第1のTADF材料Eとの間の三重項-三重項クエンチングは、第2のTADF材料Sを介する励起経路に起因して、通常には発生しない。
【0012】
好ましい実施形態では、第1のTADF材料Eの最下の励起三重項状態は、第2のTADF材料Sの最下の励起三重項状態よりもエネルギーが高い:T1>T1
【0013】
好ましい実施形態では、以下の関係、S1>S1≧T1>T1およびS1-T1≦0.4eVが当てはまる。換言すれば、第1のTADF材料Eの最下の励起一重項状態は、第2のTADF材料Sの最下の励起一重項状態よりもエネルギーが高く、第2のTADF材料Sの最下の励起一重項状態は、第1のTADF材料Eの最下の励起三重項状態にエネルギーが少なくとも等しいかもしくはこれよりも高いまたはこれとエネルギーが等しく、第1のTADF材料Eの最下の励起三重項状態は、第2のTADF材料Sの最下の励起三重項状態よりも、エネルギーが高い。好ましい実施形態では、4つの状態はすべて、0.4eV以下の範囲内(すなわち、エネルギーの差)、好ましくは0.3eV以下の範囲、特に0.2eV以下の範囲、にある。
【0014】
TADF材料EおよびSの最下の励起一重項状態と励起三重項状態との間の低エネルギー差に起因して、EおよびSの異なる状態間での励起子移動は、十分に可能となる。加えて、異なる多重度の状態間での移動も低エネルギー差に起因して、可能性がある。
【0015】
このことは、
(a) 一方のTADF材料の一重項状態から他方のTADF材料の一重項状態への、
(b) 一方のTADF材料の三重項状態から他方のTADF材料の三重項状態への、
(c) 一方のTADF材料の一重項状態から他方のTADF材料の三重項状態への、および/または
(d) 一方のTADF材料の三重項状態から他方のTADF材料の一重項状態への
エネルギー伝達を含むことが可能である。
【0016】
興味深いことに、本発明のEとSとのいろいろな組合せにおいて、エネルギー伝達はまた、代表的には:
(a) T1からS1へ、
(b) S1からT1へ、
(c) T1からS1へ、
(d) S1からT1へ、
(e) S1からS1へ、
(f) S1からS1へ、
(g) T1からT1へ、および/または
(h) T1からT1へ、
などの、より高いエネルギー準位にならびにより低いエネルギー準位に、起こることも可能である。
【0017】
驚くべきことに、本発明による光電子デバイスの発光帯に対する主たる寄与は、SからEへのエネルギーの十分な伝達を示すEの発光に起因するとし得ること、が見いだされた。
【0018】
したがって、本発明によるデバイスの発光は、同様のデバイスアーキテクチャおよびエミッタとしてTADF材料Sを含む発光層を有するデバイスと比較して、青方偏移して現れる。
【0019】
特に興味深いのは、本発明のEとSとの組合せに応じて、より低いエネルギー状態からのエネルギーは、他の化合物のより高いエネルギー状態へと伝達することができる、ということである。また、TADFエミッタで生じる逆系間交差(RISC)を考慮すると、本発明のEとSとの組合せは、より高いエネルギーのTADF材料Eの特に高い発光をもたらすことが可能である。これにより、所望の青方偏移をもたらすことが可能である。
【0020】
本発明によれば、TADF材料が、これは最下の励起一重項状態(S1)と最下の励起三重項状態(T1)との間のエネルギー差に相応するが、0.4eV未満、好ましくは0.3eV未満、より好ましくは0.2eV未満、さらにより好ましくは0.1eV未満またはさらに0.05eV未満のΔEST値を示すことを特徴とする。
【0021】
本明細書で使用する場合、有機エレクトロルミネセントデバイスおよび光電子発光デバイスという用語は、ホスト材料Hと、第1のTADF材料Eと、第2のTADF材料Sとを含む発光層Bを含む任意のデバイスとして、最も広い意味で理解してよい。
【0022】
有機エレクトロルミネセントデバイスは、可視範囲または最も近い紫外線(UV)範囲において、すなわち、380から800nmまでの波長の範囲において、発光に適している有機材料をベースとする任意のデバイスとして、最も広い意味で理解してよい。より好ましくは、有機エレクトロルミネセントデバイスは可視範囲で、すなわち400から800nmまでの発光を可能とすることができる。
【0023】
好ましい実施形態では、有機エレクトロルミネセントデバイスは、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル(LEC)、および発光トランジスタからなる群から選択されるデバイスである。
【0024】
特に好ましくは、有機エレクトロルミネセントデバイスは、有機発光ダイオード(OLED)である。場合により、全体として有機エレクトロルミネセントデバイスは、不透明、半透明または(本質的に)透明とすることができる。
【0025】
本発明の文脈で使用する「層」という用語は、広く平面形状を有する本体であることが好ましい。
発光層Bは、1mm以下、より好ましくは0.1mm以下、さらにより好ましくは10μm以下、さらにより好ましくは1μm以下、特に0.1μm以下の厚さを有することが好ましい。
【0026】
好ましい実施形態では、第1の熱活性化遅延蛍光(TADF)材料Eは有機TADFエミッタである。本発明によれば、有機エミッタまたは有機材料とは、エミッタまたは材料が水素、炭素、窒素、ならびに場合によりフッ素および場合により酸素の各元素から(主として)なることを意味する。特に好ましくは、これは遷移金属をまったく含有しない。
【0027】
好ましい実施形態では、第1のTADF材料Eは有機TADFエミッタである。好ましい実施形態では、第2のTADF材料Sは有機TADFエミッタである。より好ましい実施形態では、第1のTADF材料Eおよび第2のTADF材料Sは両方とも有機TADFエミッタである。
【0028】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1種のTADF材料Eは青色TADFエミッタ、好ましくは深青色TADFエミッタである。
【0029】
当業者であれば、発光層Bが典型的には本発明の有機エレクトロルミネセントデバイスに組み込まれることに留意するであろう。好ましくは、このような有機エレクトロルミネセントデバイスは、少なくとも以下の層を含む:少なくとも1つの発光層B、少なくとも1つのアノード層Aおよび少なくとも1つのカソード層C。
【0030】
好ましくは、アノード層Aは、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、PbO、SnO、グラファイト、ドープしたシリコン、ドープしたゲルマニウム、ドープしたGaAs、ドープしたポリアニリン、ドープしたポリピロール、ドープしたポリチオフェン、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含有する。
【0031】
好ましくは、カソード層Cは、Al、Au、Ag、Pt、Cu、Zn、Ni、Fe、Pb、In、W、Pd、LiF、Ca、Ba、Mg、およびそれらの2つ以上の混合物または合金からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含有する。
【0032】
好ましくは、発光層Bは、アノード層Aとカソード層Cとの間に位置する。したがって、一般的な構成は、好ましくは、A-B-Cである。このことは、当然ながら、場合によるさらなる1つまたはそれ以上の層の存在を排除するものではない。これらは、Aの、Bのおよび/またはCの各面に存在することができる。
【0033】
好ましい実施形態では、有機エレクトロルミネセントデバイスは少なくとも以下の層:
A)酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、PbO、SnO、グラファイト、ドープしたシリコン、ドープしたゲルマニウム、ドープしたGaAs、ドープしたポリアニリン、ドープしたポリピロール、ドープしたポリチオフェン、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含有するアノード層A;
B)発光層B;ならびに
C)Al、Au、Ag、Pt、Cu、Zn、Ni、Fe、Pb、In、W、Pd、LiF、Ca、Ba、Mg、およびそれらの2つ以上の混合物または合金からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含有するカソード層C、
を含み、ここで、発光層Bは、アノード層Aとカソード層Cとの間に位置する。
【0034】
一実施形態では、有機エレクトロルミネセントデバイスがOLEDである場合、これは以下の層構造:
A)アノード層A、代表的に酸化インジウムスズ(ITO)を含む;
HTL)正孔輸送層HTL;
B)本明細書に記載の本発明による発光層B;
ETL)電子輸送層ETL;ならびに
C)カソード層、代表的にAl、Caおよび/またはMgを含む、
を場合により含むことができる。
【0035】
好ましくは、本明細書における層の順序は、A-HTL-B-ETL-Cである。
【0036】
さらに、有機エレクトロルミネセントデバイスは、代表的に湿気、蒸気および/またはガスを含む環境中の有害な種への破損をもたらす暴露からデバイスを保護する1つまたはそれ以上の保護層を場合により含むことができる。
【0037】
好ましくは、アノード層Aは基板の表面に位置する。基板は、任意の材料または材料の組成物によって形成することができる。最も頻繁には、ガラススライドが基板として使用される。あるいは、薄い金属層(例えば、銅、金、銀またはアルミニウムのフィルム)またはプラスチックのフィルムもしくはスライドを使用することができる。これによってより高度の柔軟性が可能となる。アノード層Aは、(本質的に)透明なフィルムを得ることを可能にする材料から主として構成される。両電極のうちの少なくとも1つは、OLEDからの発光を可能にするために(本質的に)透明であることが求められるので、アノード層Aまたはカソード層Cのいずれかが透明である。好ましくは、アノード層Aは、高含有量の透明導電性酸化物(TCO)を含むかまたはこれからなることさえある。
このようなアノード層Aは、代表的に、酸化インジウムスズ、アルミニウム亜鉛酸化物、フルオロスズ酸化物、酸化インジウム亜鉛、PbO、SnO、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ウルフラム、グラファイト、ドープしたSi、ドープしたGe、ドープしたGaAs、ドープしたポリアニリン、ドープしたポリピロールおよび/またはドープしたポリチオフェンを含むことができる。
【0038】
特に好ましくは、アノード層Aは、酸化インジウムスズ(ITO)(例えば、(InO0.9(SnO0.1)から(本質的に)なる。透明導電性酸化物(TCO)によって生じるアノード層Aの粗さは、正孔注入層(HIL)を使用することによって補償することができる。さらに、TCOから正孔輸送層(HTL)への準電荷キャリア(すなわち、正孔)の輸送が容易になるという点で、HILによって、準電荷キャリアの注入が容易となり得る。正孔注入層(HIL)は、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリスチレンスルホネート(PSS)、MoO、V、CuPCまたはCuI、特にPEDOTとPSSの混合物を含むことができる。正孔注入層(HIL)はまた、アノード層Aから正孔輸送層(HTL)への金属の拡散も防止することができる。HILは、PEDOT:PSS(ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート)、PEDOT(ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン)、mMTDATA(4,4’,4”-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン)、スピロ-TAD(2,2’,7,7’-テトラキス(n,n-ジフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン)、DNTPD(N1,N1’-(ビフェニル-4,4’-ジイル)ビス(N1-フェニル-N4,N4-ジ-m-トリルベンゼン-1,4-ジアミン)、NPB(N,N’-ニス-(1-ナフタレニル)-N,N’-ビス-フェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)、NPNPB(N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ-[4-(N,N-ジフェニル-アミノ)フェニル]ベンジジン)、MeO-TPD(N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)-ベンジジン)、HAT-CN(1,4,5,8,9,11-ヘキサアザトリフェニレン-ヘキサカルボニトリル)および/またはスピロ-NPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-(1-ナフチル)-9,9’-スピロビフルオレン-2,7-ジアミン)、を代表的に含むことができる。
【0039】
アノード層Aまたは正孔注入層(HIL)に隣接して、典型的には正孔輸送層(HTL)が位置している。ここで、任意の正孔輸送化合物を使用することができる。代表的に、トリアリールアミンおよび/またはカルバゾールなどの電子が豊富なヘテロ芳香族化合物を正孔輸送化合物として使用することができる。HTLは、アノード層Aと発光層B(放出層(EML)として機能する)との間のエネルギー障壁を減少させることができる。正孔輸送層(HTL)はまた、電子阻止層(EBL)とすることができる。好ましくは、正孔輸送化合物はその三重項状態T1の比較的高いエネルギーレベルを有する。代表的に、正孔輸送層(HTL)は、星形ヘテロ環を、例えばトリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン(TCTA)、ポリ-TPD(ポリ(4-ブチルフェニル-ジフェニル-アミン))、[アルファ]-NPD(ポリ(4-ブチルフェニル-ジフェニル-アミン))、TAPC(4,4’-シクロヘキシリデン-ビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン])、2-TNATA(4,4’,4”-トリス[2-ナフチル(フェニル)-アミノ]トリフェニルアミン)、スピロ-TAD、DNTPD、NPB、NPNPB、MeO-TPD、HAT-CNおよび/またはTrisPcz(9,9’-ジフェニル-6-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール)を、含むことができる。加えて、HTLは、pドープ層を含むことができ、これは有機正孔輸送マトリックス中の無機または有機ドーパントで構成することができる。酸化バナジウム、酸化モリブデン、または酸化タングステンなどの遷移金属酸化物を、無機ドーパントとして代表的に使用することができる。
【0040】
テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)、銅-ペンタフルオロベンゾエート(Cu(I)pFBz)または遷移金属錯体を有機ドーパントとして代表的に使用することができる。
【0041】
EBLは、mCP(1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン)、TCTA、2-TNATA、mCBP(3,3-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾール、Tris-Pcz、CzSi(9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ビス(トリフェニルシリル)-9H-カルバゾール)および/またはDCB(N,N’-ジカルバゾリル-1,4-ジメチルベンゼン)、を代表的に含むことができる。
【0042】
本発明によれば、発光層Bは、少なくとも1つのホスト材料Hと、第1のTADF材料Eと第2のTADF材料Sとを含む。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、発光層Bは:
(i)ホスト化合物H5~98重量%、より好ましくは50~92重量%、さらにより好ましくは70~85重量%;
(ii)第1のTADF材料E1~50重量%、より好ましくは5~35重量%、さらにより好ましくは10~20重量%;および
(iii)第2のTADF材料S1~50重量%、より好ましくは3~15重量%、さらにより好ましくは5~10重量%;ならびに場合により
(iv)Hと異なる1種またはそれ以上のさらなるホスト化合物HB20~93重量%;ならびに場合により
(v)1種またはそれ以上の溶媒0~93重量%、
を含む。
【0044】
代表的に、ホスト材料Hおよび/または場合により存在するさらなるホスト化合物HB2は、CBP(4,4’-ビス-(N-カルバゾリル)-ビフェニル)、mCP、mCBP、Sif87(ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イルトリフェニルシラン)、CzSi、Sif88(ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イル)ジフェニルシラン)、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾール、T2T(2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン)、T3T(2,4,6-トリス(トリフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン)および/またはTST(2,4,6-トリス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン)からなる群から選択することができる。本発明の一実施形態では、発光層Bは、少なくとも1種の正孔優勢(n型)ホストおよび1種の電子優勢(p型)ホストを持ついわゆる混合ホストシステムを含む。
【0045】
一実施形態では、発光層Bは、第1のTADF材料Eと第2のTADF材料Sと、CBP、mCP、mCBP、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾールおよび9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾール、からなる群から選択される正孔優勢ホストHとを含む。
【0046】
好ましい実施形態では、第1のTADF材料Eは、エネルギーEHOMO(E)を有する最高被占軌道HOMO(E)を有し、ホスト化合物Hは、エネルギーEHOMO(H)を有する最高被占軌道HOMO(H)を有し、EHOMO(E)-EHOMO(H)≦0.3eVおよびEHOMO(E)-EHOMO(H)≧-0.3eVである。換言すれば、ホストHのHOMO(H)は、第1のTADF材料EのHOMO(E)と比較してエネルギーが高くても低くてもよいが、その差は0.3eVを超えず、より好ましくは0.2eVを超えない。
【0047】
好ましい実施形態では、第2のTADF材料Sは、エネルギーEHOMO(S)を有する最高被占軌道HOMO(S)を有し、ホスト化合物Hは、エネルギーEHOMO(H)を有する最高被占軌道HOMO(H)を有し、EHOMO(S)-EHOMO(H)≦0.3eVおよびEHOMO(S)-EHOMO(H)≧-0.3eVである。換言すれば、ホストHのHOMO(H)は、第2のTADF材料SのHOMO(S)と比較してエネルギーが高くても低くてもよいが、その差は0.4eVを超えず、好ましくは0.3eVを、より好ましくは0.2eVを超えない。
【0048】
さらに好ましい実施形態では、第1のTADF材料Eは、エネルギーEHOMO(E)を有する最高被占軌道HOMO(E)を有し、第2のTADF材料Sは、エネルギーEHOMO(S)を有する最高被占軌道HOMO(S)を有し、ホスト化合物Hは、エネルギーEHOMO(H)を有する最高被占軌道HOMO(H)を有し、
HOMO(H)≧EHOMO(S)≧EHOMO(E)である。
【0049】
さらなる実施形態では、第1のTADF材料Eは、エネルギーEHOMO(E)を有する最高被占軌道HOMO(E)を有し、第2のTADF材料Sは、エネルギーEHOMO(S)を有する最高被占軌道HOMO(S)を有し、ホスト化合物Hは、エネルギーEHOMO(H)を有する最高被占軌道HOMO(H)を有し、EHOMO(H)>EHOMO(S)>EHOMO(E)である。この実施形態では、ホストは正孔輸送に著しく関与する。
【0050】
さらなる実施形態では、第1のTADF材料Eは、エネルギーEHOMO(E)を有する最高被占軌道HOMO(E)を有し、第2のTADF材料Sは、エネルギーEHOMO(S)を有する最高被占軌道HOMO(S)を有し、ホスト化合物Hは、エネルギーEHOMO(H)を有する最高被占軌道HOMO(H)を有し、
HOMO(H)≧EHOMO(E)≧EHOMO(S)である。
【0051】
さらなる実施形態では、第1のTADF材料Eは、エネルギーEHOMO(E)を有する最高被占軌道HOMO(E)を有し、第2のTADF材料Sは、エネルギーEHOMO(S)を有する最高被占軌道HOMO(S)を有し、ホスト化合物Hは、エネルギーEHOMO(H)を有する最高被占軌道HOMO(H)を有し、EHOMO(H)>EHOMO(E)>EHOMO(S)である。この実施形態では、ホストは正孔輸送に著しく関与する。
【0052】
別の実施形態では、第1のTADF材料Eは、エネルギーELUMO(E)を有する最低空軌道LUMO(E)を有し、ホスト化合物Hは、エネルギーELUMO(H)を有する最低空軌道LUMO(H)を有し、ELUMO(E)-ELUMO(H)≦0.3eVおよびELUMO(E)-ELUMO(H)≧-0.3eVである。換言すれば、ホストHのLUMO(H)は、第1のTADF材料EのLUMO(E)と比較してエネルギーが高くても低くてもよいが、その差は0.3eVを超えず、より好ましくは0.2eVを超えない。
【0053】
さらなる実施形態では、第2のTADF材料Sは、エネルギーELUMO(S)を有する最低空軌道LUMO(S)を有し、ホスト化合物Hは、エネルギーELUMO(H)を有する最低空軌道LUMO(H)を有し、ELUMO(S)-ELUMO(H)≦0.3eVおよびELUMO(S)-ELUMO(H)≧-0.3eVである。換言すれば、ホストHのLUMO(H)は、第2のTADF材料SのLUMO(S)と比較してエネルギーが高くても低くてもよいが、その差は0.3eVを越えず、より好ましくは0.2eVを超えない。
【0054】
さらなる実施形態では、第1のTADF材料Eは、エネルギーELUMO(E)を有する最低空軌道LUMO(E)を有し、第2のTADF材料Sは、エネルギーELUMO(S)を有する最低空軌道LUMO(S)を有し、ホスト化合物Hは、エネルギーELUMO(H)を有する最低空軌道LUMO(H)を有し、ELUMO(H)≦ELUMO(S)≦ELUMO(E)である。
【0055】
さらなる実施形態では、第1のTADF材料Eは、エネルギーELUMO(E)を有する最低空軌道LUMO(E)を有し、第2のTADF材料Sは、エネルギーELUMO(S)を有する最低空軌道LUMO(S)を有し、ホスト化合物Hは、エネルギーELUMO(H)を有する最低空軌道LUMO(H)を有し、ELUMO(H)<ELUMO(S)<ELUMO(E)である。この実施形態では、ホストは電子輸送に著しく関与する。
【0056】
さらなる実施形態では、第1のTADF材料Eは、エネルギーELUMO(E)を有する最低空軌道LUMO(E)を有し、第2のTADF材料Sは、エネルギーELUMO(S)を有する最低空軌道LUMO(S)を有し、ホスト化合物Hは、エネルギーELUMO(H)を有する最低空軌道LUMO(H)を有し、ELUMO(H)≦ELUMO(E)≦ELUMO(S)である。
【0057】
さらなる実施形態では、第1のTADF材料Eは、エネルギーELUMO(E)を有する最低空軌道LUMO(E)を有し、第2のTADF材料Sは、エネルギーELUMO(S)を有する最低空軌道LUMO(S)を有し、ホスト化合物Hは、エネルギーELUMO(H)を有する最低空軌道LUMO(H)を有し、ELUMO(H)<ELUMO(E)<ELUMO(S)である。この実施形態では、ホストは典型的には電子輸送に著しく関与する。
【0058】
さらなる実施形態では、発光層Bは、エネルギーEHOMO(E)を有する最高被占軌道HOMO(E)およびエネルギーELUMO(E)を有する最低空軌道LUMO(E)、を有する第1のTADF材料Eと、エネルギーEHOMO(S)を有する最高被占軌道HOMO(S)およびエネルギーELUMO(S)を有する最低空軌道LUMO(S)、を有する第2のTADF材料Sと、エネルギーEHOMO(H)を有する最高被占軌道HOMO(H)およびエネルギーELUMO(H)を有する最低空軌道LUMO(H)、を有するホスト化合物Hと、エネルギーEHOMO(HB2)を有する最高被占軌道HOMO(HB2)およびエネルギーELUMO(HB2)を有する最低空軌道LUMO(HB2)、を有するさらなるホスト化合物HB2とを含み;
HOMO(E)-EHOMO(H)≦0.3eVおよびEHOMO(E)-EHOMO(H)≧-0.3eV;ならびに
LUMO(E)-ELUMO(HB2)≦0.3eVおよびELUMO(E)-ELUMO(HB2)≧-0.3eV;ならびに場合により
HOMO(S)-EHOMO(H)≦0.3eVおよびEHOMO(S)-EHOMO(H)≧-0.3eV;ならびに場合により
LUMO(S)-ELUMO(HB2)≦0.3eVおよびELUMO(S)-ELUMO(HB2)≧-0.3eV
である。
【0059】
好ましい実施形態では、発光層Bは、第1のTADF材料Eと第2のTADF材料Sと、電子優勢ホストHB2としてT2Tを含み、かつ正孔優勢ホストとして、CBP、mCP、mCBP、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾールおよび9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾールからなる群から選択されるホストHを含む、混合ホストシステムとを含む。
【0060】
軌道および励起状態エネルギーは、当業者に公知の実験方法によって決定することができる。実験的には、最高被占分子軌道EHOMOのエネルギーは、0.1eVの精度でサイクリックボルタンメトリー測定から当業者であれば知っている方法によって決定される。最低空分子軌道ELUMOのエネルギーはEHOMO+Egapとして計算され、ここで、Egapは次のように決定される:ホスト化合物については、特に明記しない限り、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)中にホスト10重量%を有するフィルムの発光の開始をEgapとして使用する。エミッタ化合物については、PMMA中にエミッタ10重量%を有するフィルムの励起スペクトルおよび発光スペクトルが交差するエネルギーとしてEgapは決定される。
第1の励起三重項状態T1のエネルギーは、低温での、典型的には77Kでの発光の開始から決定される。ホスト化合物については、第1の励起一重項状態および最も低い三重項状態がエネルギー的に>0.4eVで隔てられている場合、2-ME-THF中の定常状態スペクトルにおいてリン光が通常目に見える。したがって、三重項のエネルギーはリン光スペクトルの開始として決定することができる。TADFエミッタ化合物については、第1の励起三重項状態T1のエネルギーは、特に明記しない限り、エミッタ10重量%を有するポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のフィルム中で測定して、77Kでの遅延発光スペクトルの開始から決定される。ホスト化合物およびエミッタ化合物の両方については、第1の励起一重項状態S1のエネルギーは、特に明記しない限り、それぞれのホスト化合物またはエミッタ化合物10重量%を有するポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のフィルム中で測定して、発光スペクトルの開始から決定される。典型的には、この組成物は、調査されるものを外れて、さらなるホスト化合物またはエミッタ化合物を含まない。
【0061】
電子輸送層(ETL)では、任意の電子輸送体を使用することができる。代表的に、電子の少ない化合物、例えばベンゾイミダゾール、ピリジン、トリアゾール、オキサジアゾール(例えば、1,3,4-オキサジアゾール)、ホスフィンオキシドおよびスルホンを、使用することができる。代表的に、電子輸送体ETMはまた、1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェニル(TPBi)などの星形ヘテロ環とすることができる。ETMは、代表的に、NBphen(2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Alq3(アルミニウム-トリス(8-ヒドロキシキノリン))、TSPO1(ジフェニル-4-トリフェニルシリルフェニル-ホスフィンオキシド)、BPyTP2(2,7-ジ(2,2’-ビピリジン-5-イル)トリフェニル)、Sif87(ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イルトリフェニルシラン)、Sif88(ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イル)ジフェニルシラン)、BmPyPhB(1,3-ビス[3,5-ジ(ピリジン-3-イル)フェニル]ベンゼン)および/またはBTB(4,4’-ビス-[2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジニル)]-1,1’-ビフェニル)とすることができる。場合により、電子輸送層は、Liq(8-ヒドロキシキノリノラトリチウム)などの材料でドープすることができる。場合により、第2の電子輸送層を電子輸送層とカソード層Cとの間に位置することができる。
【0062】
電子輸送層(ETL)に隣接して、カソード層Cを位置することができる。代表的に、カソード層Cは、金属(例えば、Al、Au、Ag、Pt、Cu、Zn、Ni、Fe、Pb、LiF、Ca、Ba、Mg、In、W、またはPd)または金属合金を含むことができるか、またはそれからなることができる。実用上の理由から、カソード層Cはまた、Mg、CaまたはAlなどの(本質的に)不透明な金属からなることもできる。代替的にまたは追加的に、カソード層Cはまた、グラファイトおよび/またはカーボンナノチューブ(CNT)も含むことができる。代替的に、カソード層Cはまた、ナノスケールの銀ワイヤからなることもできる。
【0063】
OLEDはさらに、場合により、電子輸送層(ETL)Dとカソード層C(電子注入層(EIL)と呼ばれる場合もある)との間に保護層を含むことができる。この層は、フッ化リチウム、フッ化セシウム、銀、Liq(8-ヒドロキシキノリノラトリチウム)、LiO、BaF、MgOおよび/またはNaFを含むことができる。
【0064】
本明細書で使用する場合、特定の文脈においてより具体的に定義されていないとき、放出光および/または吸収光の色の指定は以下の通りである:
紫色:>380~420nmの波長範囲;
深青色:>420~470nmの波長範囲;
空色:>470~500nmの波長範囲;
緑色:>500~560nmの波長範囲;
黄色:>560~580nmの波長範囲;
オレンジ色:>580~620nmの波長範囲;
赤色:>620~800nmの波長範囲。
【0065】
エミッタ化合物に関しては、このような色は、エミッタ10重量%を有するポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)フィルムの発光最大λmax PMMAを指す。したがって、代表的に、深青色のエミッタは420から470nmまでの範囲の発光最大λmax PMMAを有し、空色のエミッタは470から500nmまでの範囲の発光最大λmax PMMAを有し、緑色のエミッタは500から560nmまでの範囲の発光最大λmax PMMAを有し、赤色のエミッタは620から800nmまでの範囲の発光最大λmax PMMAを有する。
【0066】
深青色のエミッタは、475nm未満の、より好ましくは470nm未満の、さらにより好ましくは465nm未満のまたはさらに460nm未満の発光最大λmax PMMAを好ましくは有することができる。これは典型的には420nm超、好ましくは430nm超、より好ましくは440nm超であろう。
【0067】
したがって、本発明のさらなる実施形態は、OLEDであって、1000cd/mでの外部量子効率が、10%超、より好ましくは12%超、より好ましくは15%超、さらにより好ましくは17%超もしくはさらに20%超を示し、かつ/または420nmから500nmの間、好ましくは430nmから490nmの間、より好ましくは440nmから480nmの間、さらにより好ましくは450nmから470nmの間の発光最大を示し、かつ/または500cd/mでのLT80値が100時間超、好ましくは200時間超、より好ましくは400時間超、さらにより好ましくは750時間超もしくはさらに1000時間超を示す、OLEDに関する。
【0068】
本発明のさらなる実施形態は、異なる色点で発光するOLEDに関する。本発明によれば、OLEDは狭い発光帯(半値全幅(FWHM)が小さい)で発光する。好ましい実施形態では、本発明によるOLEDは、0.50eV未満の、より好ましくは0.46eV未満の、さらにより好ましくは0.43eV未満のまたはさらに0.41eV未満の主たる発光ピークのFWHMで発光する。
【0069】
本発明のさらなる態様は、OLEDであって、ITU-R勧告BT.2020(Rec.2020)で定義の、原色青色のCIEx(=0.131)およびCIEy(=0.046)色座標に近いCIExならびにCIEy色座標で発光し(CIEx=0.131およびCIEy=0.046)、したがって、超高精細度(UHD)ディスプレイ、例えばUHD-TVでの使用に適している、OLEDに関する。商業用途では、通常には上面発光(上面電極は透明)のデバイスが使用されるが、本出願を通して使用される試験デバイスは底面発光デバイスとなっている(底面電極および基板は透明である)。CIExはほとんど変化しないままであるが、青色デバイスのCIEy色座標は、底面発光デバイスから上面発光デバイスに変更する場合、2分の1まで減少させることができる(Okinakaら doi:10.1002/sdtp.10480)。したがって、本発明のさらなる態様はOLEDであって、その発光が0.02から0.30の間、好ましくは0.03から0.25の間、より好ましくは0.05から0.20の間、もしくはさらにより好ましくは0.08から0.18の間、もしくはさらに0.10から0.15の間のCIEx色座標を示し、かつ/または0.00から0.45の間、好ましくは0.01から0.30の間、より好ましくは0.02から0.20の間、もしくはさらにより好ましくは0.03から0.15の間、もしくはさらに0.04から0.10の間のCIEy色座標を示す、OLEDに関する。
【0070】
本発明の一実施形態では、第2のTADF材料Sは、発光最大λmax PMMA(S)を示し、第1のTADF材料Eは、発光最大λmax PMMA(E)を示し、500nm≧λmax PMMA(S)>λmax PMMA(E)である。
【0071】
より好ましい実施形態では、第2のTADF材料Sは、発光最大λmax PMMA(S)を示し、第1のTADF材料Eは、発光最大λmax PMMA(E)を示し、480nm≧λmax PMMA(S)>λmax PMMA(E)である。
【0072】
好ましい実施形態では、第1のTADF材料Eは、450から470nmまでの範囲の発光最大λmax PMMA(E)を示す(すなわち、470nm≧λmax PMMA(E)≧450nm)。
【0073】
好ましい実施形態では、第2のTADF材料Sは、発光最大λmax PMMA(S)を示し、第1のTADF材料Eは、発光最大λmax PMMA(E)を示し、デバイスは発光最大λmax(D)を示し、λmax PMMA(S)>λmax(D)≧λmax PMMA(E)である。
【0074】
層の設計により、デバイスの発光を青色へとよりさらに偏移させることができる。したがって、本発明のさらなる実施形態では、第2のTADF材料Sは、発光最大λmax PMMA(S)を示し、第1のTADF材料Eは、発光最大λmax PMMA(E)を示し、デバイスは発光最大λmax(D)を示し、λmax PMMA(S)>λmax PMMA(E)>λmax(D)である。
【0075】
好ましい実施形態では、第1のTADF材料Eおよび第2のTADF材料Sは、両方ともに、式I
【化1】
(式中、
nは、各存在で、他から独立して1または2であり;
Xは、各存在で、CNまたはCFから他から独立して選択され;
Zは、各存在で、直接結合、CR、C=CR、C=O、C=NR、NR、O、SiR、S、S(O)およびS(O)からなる群から他から独立して選択され;
ArEWGは、各存在で、他から独立して式IIa~IIi
【化2】
のうちの1つによる構造であり;
ここで、
#は、ArEWGを式Iの置換されているセンターのフェニル環と連結している単結合の結合部位を表し;
は、各存在で、水素、重水素、
1つまたはそれ以上の水素原子が重水素によって場合により置換されているC~C-アルキル、および
1つまたはそれ以上の置換基Rで場合により置換されているC~C18-アリール、
からなる群から他から独立して選択され;
は、各存在で、水素、重水素、
1つまたはそれ以上の水素原子が重水素によって場合により置換されているC~C-アルキル、および
1つまたはそれ以上の置換基Rで場合により置換されているC~C18-アリール、
からなる群から他から独立して選択され;
、RおよびRは、各存在で、水素、重水素、N(R、OR
SR、Si(R、CF、CN、F、
1つまたはそれ以上の置換基Rで場合により置換されており、かつ非隣接の1つまたはそれ以上のCH基がRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRによって、場合により置換されている、C~C40-アルキル;
1つまたはそれ以上の置換基Rで場合により置換されており、かつ非隣接の1つまたはそれ以上のCH基がRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRによって、場合により置換されている、C~C40-チオアルコキシ;および
1つまたはそれ以上の置換基Rで場合により置換されている、C~C60-アリール;1つまたはそれ以上の置換基Rで場合により置換されている、C~C57-ヘテロアリール
からなる群から他から独立して選択され;
は、各存在で、水素、重水素、N(R、OR、SR、Si(R、CF、CN、F、
1つまたはそれ以上の置換基Rで場合により置換されており、かつ非隣接の1つまたはそれ以上のCH基がRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRによって、場合により置換されている、C~C40-アルキル;
1つまたはそれ以上の置換基Rで場合により置換されている、C~C60-アリール;および
1つまたはそれ以上の置換基Rで場合により置換されている、C~C57-ヘテロアリール
からなる群から他から独立して選択され;
は、各存在で、水素、重水素、OPh、CF、CN、F、
1つまたはそれ以上の水素原子が重水素、CN、CF、またはFによって互いに独立して場合により置換されている、C~C-アルキル;
1つまたはそれ以上の水素原子が重水素、CN、CF、またはFによって互いに独立して場合により置換されている、C~C-アルコキシ;
1つまたはそれ以上の水素原子が重水素、CN、CF、またはFによって互いに独立して場合により置換されている、C~C-チオアルコキシ;
1つまたはそれ以上のC~C-アルキル置換基で場合により置換されている、C~C18-アリール;
1つまたはそれ以上のC~C-アルキル置換基で場合により置換されている、C~C17-ヘテロアリール;
N(C~C18-アリール)
N(C~C17-ヘテロアリール)、および
N(C~C17-ヘテロアリール)(C~C18-アリール)
からなる群から他から独立して選択され;
は、各存在で、水素、重水素、N(R、OR
SR、Si(R、CF、CN、F、
1つまたはそれ以上の置換基Rで場合により置換されており、かつ非隣接の1つまたはそれ以上のCH基がRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRによって、場合により置換されている、C~C40-アルキル;
1つまたはそれ以上の置換基Rで場合により置換されており、かつ非隣接の1つまたはそれ以上のCH基がRC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRによって、場合により置換されている、C~C40-チオアルコキシ;および
1つまたはそれ以上の置換基Rで場合により置換されている、C~C60-アリール;1つまたはそれ以上の置換基Rで場合により置換されている、C~C57-ヘテロアリール
からなる群から他から独立して選択され;
ここで、置換基R、R、RまたはRが、互いに独立して場合により、1つもしくはそれ以上の置換基R、R、RまたはRと一緒に、単環のまたは多環の、脂肪族環系、芳香族環系および/またはベンゾ縮合環系を形成することができ、
ここで、1つまたはそれ以上の置換基Rが、互いに独立して場合により、1つまたはそれ以上の置換基Rと一緒に、単環のまたは多環の、脂肪族環系、芳香族環系および/またはベンゾ縮合環系を形成することができる)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0076】
本発明によれば、置換基R、R、RまたはRは、各存在で互いに独立して、1つもしくはそれ以上の置換基R、R、RまたはRと一緒に、単環のまたは多環の、脂肪族環系、芳香族環系および/またはベンゾ縮合環系を場合により形成することができる。
【0077】
本発明によれば、置換基Rは、各存在で互いに独立して、1つまたはそれ以上の他の置換基Rと一緒に、単環のまたは多環の、脂肪族環系、芳香族環系および/またはベンゾ縮合環系を場合により形成することができる。
【0078】
本発明の好ましい実施形態では、第1のTADF材料Eおよび第2のTADF材料Sの両方は、R、R、RおよびXのうちの1つまたはそれ以上のみが構造的に異なる、式Iによる同じ構造を有する。換言すれば、TADF材料SおよびEの両方は、式Iによる同じ構造を有し、R、R、RおよびXからなる群から選択される少なくとも1つの置換基が異なる。
【0079】
本発明の好ましい実施形態では、SおよびEは、式Iによる同じ構造を含むかまたはそれからなり、1つまたはそれ以上の置換基Rが異なる。以下の表:
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
(式中、ArEWGおよびXは上記の通りに定義される)
に、代表的に、この実施形態によるSとEのペア(各ラインは例示的ペアを表す)を列記する。
【0080】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、式IIa~式IIiによる同じ構造を有し、式Iの置換されているセンターのフェニル環の置換パターン(のみ)が異なる。したがって、好ましい実施形態では、SおよびEは、残基Xが別定義であるということ(のみ)が異なる。別の実施形態では、SおよびEは、残基nが別定義であるということ(のみ)が異なる。別の実施形態では、SおよびEは、残基nおよびXがそれぞれ別定義であるということ(のみ)が異なる。さらなる残基は、上記の通りに定義され、例示された任意の構造および/または実施形態にしたがって具体的に定義し得ることが理解されるであろう。
【0081】
本発明の特に好ましい実施形態では、Zは各存在で直接結合である。特に好ましくは、TADF材料SおよびEの両方において、Zは各存在で直接結合である。
【0082】
本発明の一実施形態では、Rは各存在で、
水素、重水素、Me、Pr、Bu、CN、CF
Me、Pr、Bu、CN、CFおよびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているPh;
Me、Pr、Bu、CN、CFおよびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているピリジニル;
Me、Pr、Bu、CN、CFおよびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているピリミジニル;
Me、Pr、Bu、CN、CFおよびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているカルバゾリル;
Me、Pr、Bu、CN、CFおよびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているトリアジニル;
ならびにN(Ph)
からなる群から他から独立して選択される。
【0083】
本発明の一実施形態では、Rは各存在で、
水素、重水素、Me、Pr、Bu、CN、CF
Me、Pr、Bu、CN、CFおよびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているPh;
Me、Pr、Bu、CN、CFおよびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているピリジニル;
Me、Pr、Bu、CN、CFおよびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているピリミジニル;
Me、Pr、Bu、CN、CFおよびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているカルバゾリル;
Me、Pr、Bu、CN、CFおよびPhからなる群から互いに独立して選択される1つまたはそれ以上の置換基で場合により置換されているトリアジニル;
ならびにN(Ph)
からなる群から他から独立して選択される。
【0084】
好ましい実施形態では、XはCNである。好ましくは、Xは、TADF材料SおよびEの両方において両存在で、CNとすることができる。
【0085】
本発明の一実施形態では、TADF材料SおよびEは、両方ともに、式III:
【化3】
(式中、R、XおよびRは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0086】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式IIIa:
【化4】
(式中、R、XおよびRは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0087】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式IIIb:
【化5】
(式中、RおよびRは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0088】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式IV:
【化6】
(式中、R、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0089】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式IVa:
【化7】
(式中、R、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0090】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式IVb:
【化8】
(式中、RおよびRは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0091】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式V:
【化9】
(式中、R、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0092】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式Va:
【化10】
(式中、R、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0093】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式Vb:
【化11】
(式中、RおよびRは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0094】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式VI:
【化12】
(式中、R、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0095】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式VIa:
【化13】
(式中、R、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0096】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式VIb:
【化14】
(式中、RおよびRは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0097】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式VII:
【化15】
(式中、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0098】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式VIIa:
【化16】
(式中、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0099】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式VIIb:
【化17】
(式中、Rは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0100】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式VIII:
【化18】
(式中、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0101】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式VIIIa:
【化19】
(式中、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0102】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式VIIIb:
【化20】
(式中、Rは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0103】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式IX:
【化21】
(式中、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0104】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式IXa:
【化22】
(式中、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0105】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式IXb:
【化23】
(式中、Rは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0106】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式X:
【化24】
(式中、RおよびXは上記の通りに定義される)
構造の分子から他から独立して選択される。
【0107】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式Xa:
【化25】
(式中、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0108】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式Xb:
【化26】
(式中、Rは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0109】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式XI:
【化27】
(式中、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0110】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式XIa:
【化28】
(式中、RおよびXは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0111】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式XIb:
【化29】
(式中、Rは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0112】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式XII:
【化30】
(式中、R、XおよびRは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0113】
本発明の一実施形態では、SおよびEは、両方ともに、式XIIa:
【化31】
(式中、R、XおよびRは上記の通りに定義される)
の構造の分子から他から独立して選択される。
【0114】
式Iの構造の分子の合成は、当業者であれば知っている標準的な反応および反応条件により行うことができる。典型的には、第1の工程で、カップリング反応、好ましくはパラジウム触媒カップリング反応が実行される。
【0115】
【化32】
【0116】
E1は、任意のボロン酸(R=H)または同等のボロン酸エステル(R=アルキルまたはアリール)とすることができ、特に、2つのRは環を形成して、例えば、フルオロ-(トリフルオロメチル)フェニル、ジフルオロ-(トリフルオロメチル)フェニル、フルオロ-(シアノ)フェニルまたはジフルオロ-(シアノ)フェニルのボロン酸ピナコールエステルを与える。第2の反応物E2として、好ましくはArEWG-Brが使用される。このようなパラジウム触媒カップリング反応の反応条件は、例えば、WO2017/005699A1から、当業者であれば知っており、反応収率を最適化するためにE1とE2との反応基を相互交換できることが知られている。
【0117】
【化33】
【0118】
第2の工程では、式Iによる分子は、窒素ヘテロ環を、芳香族求核置換でハロゲン化アリール、好ましくはフッ化アリール、または二ハロゲン化アリール、好ましくは二フッ化アリールと反応させることにより得られる、E3。典型的な条件には、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの、例えば、非プロトン性極性溶媒中に溶かした、三塩基性リン酸カリウムまたは水素化ナトリウムなどの塩基の使用が含まれる。
【0119】
【化34】
【0120】
具体的には、ドナー分子E6は、3,6-置換カルバゾール(例えば、3,6-ジメチルカルバゾール、3,6ジフェニルカルバゾール、3,6-ジ-tert-ブチルカルバゾール)、2,7-置換カルバゾール(例えば、2,7ジメチルカルバゾール、2,7-ジフェニルカルバゾール、2,7-ジ-tert-ブチルカルバゾール)、1,8-置換カルバゾール(例えば、1,8-ジメチルカルバゾール、1,8-ジフェニルカルバゾール、1,8-ジ-tert-ブチルカルバゾール)、1置換カルバゾール(例えば、1-メチルカルバゾール、1-フェニルカルバゾール、1-tert-ブチルカルバゾール)、2置換カルバゾール(例えば、2-メチルカルバゾール、2-フェニルカルバゾール、2-tert-ブチルカルバゾール)、または3置換カルバゾール(例えば、3-メチルカルバゾール、3-フェニルカルバゾール、3-tert-ブチルカルバゾール)、である。
【0121】
あるいは、ハロゲン置換カルバゾールを、特に3-ブロモカルバゾールをE6として使用することができる。
【0122】
続く反応において、ボロン酸エステル官能基またはボロン酸官能基を、E6を介して導入された1つまたはそれ以上のハロゲン置換基の位置で代表的に導入して、例えば、ビス(ピナコラト)ジボロン(CAS番号73183-34-3)との反応により、相応するカルバゾール-3-イルボロン酸エステルまたはカルバゾール-3-イルボロン酸を得ることができる。続いて、相応するハロゲン化反応物R-Hal、好ましくはR-ClおよびR-Brとのカップリング反応により、ボロン酸エステル基またはボロン酸基の代わりに1つまたはそれ以上の置換基Rを導入することができる。
【0123】
あるいは、1つまたはそれ以上の置換基Rを、置換基R[R-B(OH)]のボロン酸または相応するボロン酸エステルとの反応により、D-Hを介して導入された1つまたはそれ以上のハロゲン置換基の位置で導入することができる。
【0124】
代替の合成経路は、ハロゲン化アリールまたは擬ハロゲン化アリールへの、好ましくは臭化アリール、ヨウ化アリール、アリールトリフレートまたはアリールトシレートへの、銅触媒カップリングまたはパラジウム触媒カップリングによる窒素ヘテロ環の導入を含む。
【0125】
本出願を通して使用される、「アリール」および「芳香族」という用語は、単環の、2環のまたは多環の任意の芳香族部分として、最も広い意味で理解してよい。別段の指示がない限り、アリールはまた、本出願を通してさらに例示される1つまたはそれ以上の置換基によって場合により置換することができる。したがって、「アリーレン」という用語は、他の分子構造に対する2つの結合部位を有し、それによってリンカー構造として働く二価の残基を指す。本出願を通して使用される、「ヘテロアリール」および「ヘテロ芳香族」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子を含む、特に1から3個のヘテロ原子毎芳香族環を有する、単環の、2環のまたは多環の任意の芳香族部分として、最も広い意味で理解してよい。
【0126】
代表的に、ヘテロ芳香族化合物は、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジンおよびピリミジン等とすることができる。別段の指示がない限り、ヘテロアリールはまた、本出願を通してさらに例示される1つまたはそれ以上の置換基によって場合により置換することもできる。したがって、「ヘテロアリーレン」という用語は、他の分子構造に対する2つの結合部位を有し、それによってリンカー構造として働く二価の残基を指す。
【0127】
本出願を通して使用される、「アルキル」という用語は、直鎖状または分枝鎖状のアルキル残基の両方として、最も広い意味で理解してよい。好ましいアルキル残基は、1から15個の炭素原子を含有するものである。代表的に、アルキル残基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル等とすることができる。別段の指示がない限り、アルキルはまた、本出願を通してさらに例示される1つまたはそれ以上の置換基によって場合により置換することもできる。したがって、「アルキレン」という用語は、他の分子構造に対する2つの結合部位を有し、それによってリンカー構造として働く二価の残基を指す。
【0128】
別段の指示がない限り、本明細書で使用する場合、特にアリール、アリーレン、ヘテロアリール、アルキル等の文脈において、「置換される」という用語は最も広い意味で理解してよい。好ましくは、かかる置換は、C~C20-アルキル、C~C19-アルカリル、およびC~C18-アリールからなる群から選択される残基を意味する。したがって、好ましくは、荷電部分、より好ましくは官能基はそのような置換においてまったく存在しない。
【0129】
水素は、各存在で、重水素によって置き換えることが可能であることに気付くであろう。
【0130】
別段の指定がない限り、種々の実施形態の層のいずれも、適切な任意の方法によって蒸着することができる。発光層Bを含めて、本発明の文脈における層は、液体処理(「フィルム処理」、「流体処理」、「溶液処理」または「溶媒処理」とも呼ばれる)によって場合により製造することができる。これは、それぞれの層に含まれる成分が液体状態でデバイスの一部の表面に塗布されることを意味する。好ましくは、発光層Bを含めて、本発明の文脈における層は、スピンコーティングによって製造することができる。当業者に周知のこの方法によって、薄い(本質的に)均質な層を得ることができる。
【0131】
あるいは、発光層Bを含めて、本発明の文脈における層は、例えばキャスティング法(例えばドロップキャスティング)およびローリング法などの液体処理、ならびに印刷法(例えば、インクジェット印刷、グラビア印刷、ブレードコーティング)に基づく他の方法によって製造することができる。これは、場合により、不活性雰囲気中(例えば、窒素雰囲気中)で実施することができる。
【0132】
別の好ましい実施形態では、本発明の文脈における層は、それらに限定されないが、例えば熱(同時)蒸発、有機気相蒸着(OVPD)、および有機蒸気ジェット印刷(OVJP)による蒸着などの、当業者であればよく知っている真空処理法を含めて、当技術分野で知られている他の任意の方法によって製造できる。
【0133】
液体処理によって層を製造する場合、層の成分(すなわち、本発明の発光層Bに関連して、少なくとも1種のホスト化合物H、典型的には少なくとも1種の第1のTADF材料E、少なくとも1種の第2のTADF材料S、および場合により1種またはそれ以上の他のホスト化合物HB2)を含む溶液は、揮発性有機溶媒をさらに含むことができる。このような揮発性有機溶媒は、場合により、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロベンゼン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、ガンマ-ブチロラクトン、N-メチルピロリジノン、エトキシエタノール、キシレン、トルエン、アニソール、フェネトール、アセトニトリル、テトラヒドロチオフェン、ベンゾニトリル、ピリジン、トリヒドロフラン、トリアリールアミン、シクロヘキサノン、アセトン、プロピレンカーボネート、酢酸エチル、ベンゼンおよびPGMEA(プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート)からなる群から選択される1つとすることができる。また、2つ以上の溶媒の組合せも使用することができる。液体状態で適用した後、層は続いて当技術分野の任意の手段により、代表的に周囲条件で、温度を高めて(例えば、約50℃または約60℃)または減圧で、乾燥および/または硬化することができる。
【0134】
場合により、有機エレクトロルミネセントデバイス(例えば、OLED)は、代表的に、本質的に白色の有機エレクトロルミネセントデバイスまたは青色の有機エレクトロルミネセントデバイスとすることができる。代表的に、そのような白色の有機エレクトロルミネセントデバイスは、少なくとも1種の(深)青色エミッタ化合物(例えば、TADF材料E)と、緑色光および/または赤色光を発光する1種またはそれ以上のエミッタ化合物とを含むことができる。次いで、上記の2つ以上の化合物の間にエネルギー透過率が場合により存在してもよい。
【0135】
有機エレクトロルミネセントデバイス全体としてまた、厚さが5mm以下、2mm以下、1mm以下、0.5mm以下、0.25mm以下、100μm以下、または10μm以下の薄層を形成することもできる。
【0136】
有機エレクトロルミネセントデバイス(例えば、OLED)は、小型(例えば、5mm以下、もしくはさらに1mm以下の表面を有する)であっても、中型(例えば、0.5~20cmの範囲の表面を有する)であっても、または大型(例えば、20cmより大きい表面を有する)であってもよい。本発明による有機エレクトロルミネセントデバイス(例えばOLED)は、場合により、ルミネセント壁紙、ルミネセント窓枠またはガラス、ルミネセントラベル、ルミネセントポーザーまたはフレキシブルスクリーンもしくはディスプレイのような大面積照明デバイスとして、スクリーンを作製するのに使用することができる。一般的な用途の次に、有機エレクトロルミネセントデバイス(例えば、OLED)はまた、代表的に、ルミネセントフィルム、「スマート包装」ラベル、または革新的なデザイン要素としても使用することができる。さらにこれは細胞の検出および検査に(例えばバイオ標識として)使用できる。
【0137】
有機エレクトロルミネセントデバイスの主な目的の1つは、光の発生である。したがって、本発明はさらに、所望の波長範囲の光を発生するための方法であって、本発明のいずれかによる有機エレクトロルミネセントデバイスを用意する工程を含む、方法に関する。
【0138】
したがって、本発明のさらなる態様は、所望の波長範囲の光を発生させるための方法であって、
(i)本発明による有機エレクトロルミネセントデバイスを用意する工程;および
(ii)前記有機エレクトロルミネセントデバイスに電流を印加する工程
を含む、方法に関する。
【0139】
本発明のさらなる態様は、上記の要素を組み立てることによって有機エレクトロルミネセントデバイスを作製する方法に関する。本発明はまた、前記有機エレクトロルミネセントデバイスを使用することによる、青色、緑色、黄色、オレンジ色、赤色または白色の各光、特に青色光または白色光を発生するための方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0140】
図および実施例ならびに特許請求の範囲によって本発明をさらに例示する。
【図面の簡単な説明】
【0141】
図1】7VでのデバイスC2の発光スペクトルを示す図である。
【実施例
【0142】
サイクリックボルタンメトリー
ジクロロメタンまたは適切な溶媒および適切な支持電解質(例えば、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート0.1mol/l)中に有機分子10-3mol/lの濃度を有する溶液のサイクリックボルタモグラムを測定した。測定は、3電極アセンブリ(作用電極および対電極:Ptワイヤ、参照電極:Ptワイヤ)を用いて室温および窒素雰囲気下で行い、内部標準としてFeCp/FeCp を使用して較正した。SCEに対する内部標準としてフェロセンを使用してHOMOデータを補正した。
【0143】
密度汎関数理論計算
分子構造は、BP86汎関数およびレゾリューション-オブ-アイデンティティ(resolution of identity)アプローチ(RI)を用いて最適化した。励起エネルギーは、タイム-ディペンダント(Time-Dependent)DFT(TD-DFT)法を用いる(BP86)最適化構造を使用して計算した。軌道および励起状態のエネルギーはB3LYP汎関数で計算した。Def2-SVP基底関数系および数値積分用のm4-グリッドを使用した。Turbomoleプログラムパッケージをすべての計算に使用した。
【0144】
光物理学的測定
試料前処理:スピンコーティング
装置:Spin150、SPSeuro。
試料濃度は10mg/mlとし、適切な溶媒に溶かした。
プログラム:1)400U/分で3秒;1000Upm/秒で1000U/分で20秒。3)1000Upm/秒で4000U/分で10秒。コーティング後、フィルムを70℃で1分間試験した。
【0145】
フォトルミネッセンス分光およびTCSPC(時間相関単一光子計数)
150Wキセノンアークランプを備えたHoriba Scientific、Modell FluoroMax-4、励起および発光モノクロメーターならびにHamamatsu R928光電子増倍管および時間相関単光子計数オプションを使用して、定常状態発光分光法を記録した。発光スペクトルおよび励起スペクトルは、標準補正フィットを使用して補正した。
【0146】
励起状態寿命は、FM-2013機器およびHoriba Yvon TCSPCハブによるTCSPC法を使用する同じシステムを用いて決定した。
【0147】
励起源
NanoLED 370(波長:371nm、パルス幅:1,1ns)
NanoLED 290(波長:294nm、パルス幅:<1ns)
SpectraLED 310(波長:314nm)
SpectraLED 355(波長:355nm)。
【0148】
データ分析(指数関数的適合)を、ソフトウェアスイートDataStationおよびDAS6分析ソフトウェアを使用して、行った。フィットは、カイ2乗検定を使用して特定した。
【0149】
フォトルミネッセンス量子収率測定
フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)測定については、Absolute PL Quantum Yield Measurement C9920-03Gシステム(Hamamatsu Photonics)を使用した。量子収率およびCIE座標は、ソフトウェアU6039-05バージョン3.6.0を使用して決定した。
発光最大をnmで、量子収率Φを%で、CIE座標をx、y値として得た。
PLQYは以下のプロトコルを使用して決定した:
1)品質保証:エタノール中のアントラセン(既知濃度)をレファレンスとして使用する
2)励起波長:有機分子の吸収極大を決定し、分子をこの波長を使用して励起する
3)測定
量子収率を、窒素雰囲気下で溶液またはフィルムの試料について測定する。収率は式:
【数1】
(式中、n光子は光子カウントを示し、Int.は強度を示す)
を使用して計算する。
【0150】
有機エレクトロルミネッセントデバイスの製造および特性決定
真空蒸着法により、本発明による有機分子を含むOLEDデバイスを製造することができる。2つ以上の化合物を層が含有する場合、1種またはそれ以上の化合物の重量パーセントが%で与えられている。総重量パーセントの値は合計100%となり、したがって、値が与えられていない場合、この化合物の割合は所与の値と100%と間の差に等しい。
【0151】
最適化が完全ではないOLEDについては、標準的な方法を使用して、エレクトロルミネッセンススペクトル、フォトダイオードによって検出された光を使用して計算された強度に依存する外部量子効率(%)、および電流を測定して、特性決定した。OLEDデバイスの寿命は、一定の電流密度で作動中の輝度の変化から抽出した。LT50値は、測定輝度が初期輝度の50%に低下した時間に相応し、同様に、LT80は、測定輝度が初期輝度の80%に低下した時点に相応し、LT97は、測定輝度が初期輝度の97%に低下した時点に相応する。
【0152】
加速寿命の測定を行った(例えば、増大させた電流密度を印加する)。代表的に、500cd/mにおけるLT80値は、以下の式:
【数2】
(式中、Lは印加電流密度での初期輝度を示す)
を使用して決定する。
【0153】
値は数ピクセルの平均値(通常2~8)に相応し、これらのピクセル間の標準偏差が与えられる。図に、1つのOLEDピクセルのデータ系列を示す。
【0154】
例D1ならびに比較例C1およびC2
【化35】
【0155】
【表5】
【0156】
【表6】
【0157】
デバイスD1では、1000cd/mでの外部量子効率(EQE)12.7±0.2%が得られた。加速寿命の測定から、730cd/mでのLT97値は18時間と決定された。発光最大は5VでのFWHM60nmを有して469nmであった。相応するCIEx値は0.157であり、CIEyは0.227であった。
【0158】
比較デバイスC1は、発光層がエミッタTADF2のみを含有しかつTADF1がT2Tによって置き換えられていることを除いて、デバイスD1と同じ層配置を含む。1000cd/mでのEQEは8.7±0.1%に顕著に減少し、寿命は短くなった(730cd/mでのLT97=11時間)。発光最大は、5VでのFWHM64nmを有して472nmと赤方偏移していた。相応するCIEx値は0.162であり、CIEyは0.237であった。
【0159】
比較デバイスC2はエミッタとしてTADF1のみを含有する発光層を含む。1000cd/mでのEQEは12.3±0.2%と、D1に匹敵するが、寿命は著しく短くなった(730cd/mでのLT97=6時間)。発光最大は、ここでも、5VでのFWHM61nmを有して473nmと赤方偏移で現れた。相応するCIEx値は0.148であり、CIEyは0.207であった。CIEy座標の低下は、EML内であまり良好にバランスの取れていない電荷分布を示すNBPhenの発光に帰する、スペクトル中およそ410nmでのショルダーに起因するものとし得た(図1)。
図1