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特許7058317患者への懸濁剤を変更および送達する側面開口部を有するカテーテル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】患者への懸濁剤を変更および送達する側面開口部を有するカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20220414BHJP
   A61B 17/12 20060101ALN20220414BHJP
【FI】
A61M25/00 534
A61M25/00 540
A61B17/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020201628
(22)【出願日】2020-12-04
(62)【分割の表示】P 2017546148の分割
【原出願日】2016-03-02
(65)【公開番号】P2021045595
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】62/127,036
(32)【優先日】2015-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517241628
【氏名又は名称】アキュレイト メディカル セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】タール,マイケル ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,エラン
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-276592(JP,A)
【文献】特表2011-529946(JP,A)
【文献】米国特許第05178611(US,A)
【文献】特表平11-513293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0245562(US,A1)
【文献】特開2011-178784(JP,A)
【文献】特表2008-509781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁剤の流動体内に懸濁した粒子を含有する懸濁剤と、前記懸濁剤を変更しかつ対象に前記懸濁剤を送達するための塞栓用マイクロカテーテル、を備えるセットであって、前記塞栓用マイクロカテーテルは、近位壁端部、遠位壁端部、および前記近位壁端部と前記遠位壁端部の間を延在する内腔を有するチューブ状壁を備え、
前記内腔は、前記遠位壁端部の遠位流出口と、前記遠位流出口の近位の前記チューブ状壁に形成される複数の側面開口部を備え、
前記内腔の前記遠位流出口は、前記懸濁剤の流動体と前記懸濁した粒子の両方を通すことのできる形状および/またはサイズを有し、
前記塞栓用マイクロカテーテルは前記複数の側面開口部が前記懸濁した粒子の最小の直径未満の、約1,000ミクロン以下の幅を有するように特徴付けられ、それによって、前記対象に前記懸濁剤を送達する、前記懸濁した粒子の通過を阻止しつつ、前記懸濁剤の流動体の通過を可能にし、それによって前記塞栓用マイクロカテーテルが前記懸濁剤の流動特性および/または濃度を変更するように構成される、
セット。
【請求項2】
前記複数の側面開口部は、前記チューブ状壁の区画の周囲および/または前記区画に沿って分布し、前記側面開口部は100ミクロン以下の最小断面寸法を有する、請求項1に記載のセット。
【請求項3】
前記懸濁した粒子は固体の塞栓物質および/または微粒子塞栓剤を含有する、請求項1または請求項2に記載のセット。
【請求項4】
前記塞栓用マイクロカテーテルの前記複数の側面開口部は、約500ミクロン以下の最小断面寸法を有し、前記複数の側面開口部は、前記懸濁した粒子の通過を阻止するように、前記懸濁した粒子の最小の直径未満の幅を有する少なくとも1つのスリットを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のセット。
【請求項5】
前記少なくとも1つのスリットは、前記塞栓用マイクロカテーテルの長手方向の軸に平行にその長さで伸びる長手方向のスリットである、請求項4に記載のセット。
【請求項6】
前記少なくとも1つのスリットは、前記塞栓用マイクロカテーテルの長手方向の軸に垂直にその長さで伸びる円周方向のスリットである、請求項4に記載のセット。
【請求項7】
前記塞栓用のマイクロカテーテルは、前記遠位流出口の近位の前記チューブ状壁に位置する近位流出口を備え、前記近位流出口の周囲の前記塞栓用マイクロカテーテルの伸長を抵抗および/または防ぐように、前記近位流出口を横断して前記塞栓用マイクロカテーテルの長手方向の軸に平行に延在したカテーテルの長さを限定するロッド状構成要素を備え、前記ロッド状構成要素は前記内腔の内側境界に一致して湾曲した、閉じたおよび/または開かれたリングの形態の側部延長部を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のセット。
【請求項8】
前記塞栓用マイクロカテーテルは前記遠位流出口の近位に位置した流れ抑制機構を備え、かつ前記カテーテルの長手方向の軸に沿って前記懸濁した微粒子の水平速度成分を減少させるように、前記懸濁剤の流れを変更するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のセット。
【請求項9】
前記流れ抑制機構が前記遠位流出口の近位に位置した螺旋部を備え、前記螺旋部が前記懸濁した粒子の横方向の速度成分を増加させかつ前記懸濁した粒子の長手方向の速度成分を減少させるような形状および寸法を有し、あるいは、前記流れ抑制機構が前記内腔の内側境界から始まる少なくとも1つの半径方向の内方向への突起を備え、懸濁剤の流れを抑制するように構成され、前記少なくとも1つの半径方向の内方向への突起は複数の長手方向に離間して開いたおよび/または閉じたリング構成要素を含む、請求項8に記載のセット。
【請求項10】
前記チューブ状壁の外径が4mm以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載のセット。
【請求項11】
前記複数の側面開口部を取り囲む壁部は、金属材料、硬質ポリマー材料、またはそれらの組合せによって作製され、あるいは前記壁部が放射線不透過性材料を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のセット。
【請求項12】
前記複数の側面開口部を取り囲む壁部が金属コイルで作製されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年3月02日出願の米国仮特許出願第62/127,036号、”Embolization Microcatheter And Uses Thereof”の米国特許法第119条(e)による優先権の受益を主張し、その内容は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態では,粒子の懸濁剤を変更するカテーテルおよび方法、および懸濁した粒子を例えば患者の心血管系内に位置する対象の身体の部分に送達するカテーテルおよび方法に関する。本発明のいくつかの実施形態は特に、塞栓用マイクロカテーテル、および例えば(i)塞栓物質の小血管内での対象の身体の部分への送達、および(ii)(もしかすると癌の)対象の身体の部分に供給する小血管内で局所的塞栓術を実行する、局所的な塞栓処置の実行におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
塞栓術の目的は、身体の領域への血流を妨げることであり、これは効果的に腫瘍を縮小または動脈瘤の閉塞が可能であり、一般的に血管内治療として実行される。問題となっている器官へのアクセスは、ガイドワイヤおよびカテーテルによって得られる。問題となっている病理をもたらす正確な動脈または静脈の位置は、デジタルサブトラクションアンギオグラフィ(DSA)により位置決め可能であり、画像を作成し、それから正確な血管へのアクセスマップとして使用される。人工の塞栓を、コイル、粒子、泡状物、栓、マイクロスフィアまたはビーズを用いて作ることが可能である。人工の塞栓が正常に導入されると、配置の成功を確認するため他のセットのDSA画像が撮られる。
【0004】
経動脈的塞栓療法、腫瘍塞栓術、または経カテーテル動脈塞栓術(TAE)は、カテーテルによる器官(例えば、肝臓)のような対象の身体の部分に通常関連する腫瘍への直接の塞栓物質の投与(化学療法または/および放射線療法を含みうる)を含む。これらの技術は腫瘍を対象とし、一方で健康な器官への塞栓物質の分散を避けるよう試みるマイクロカテーテルを用いて通常実行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
腫瘍の塞栓術は、さまざまな理由のためマイクロカテーテルを用いて通常実行される。第1に、主として腫瘍に影響し健康な組織には可能な限り影響を少なくする局所的な塞栓術の必要条件がある。塞栓術に関連する問題のうちの1つが、「非対象の塞栓」として一般的に知られ、これでは塞栓物質が対象の腫瘍または領域に直接供給するもの以外の小血管に移動する。これはこれらの領域の健康な組織を損傷する可能性があり、しばしば深刻な合併症をもたらす。可能性があるシナリオは肝臓塞栓と胃潰瘍を含み、ならびに塞栓物質がマイクロカテーテルと並行して逆流し胃壁に到達するケースは、虚血症および潰瘍形成を引き起こしうる。特に進行した段階の肝臓癌で多い付加的な現象は、動脈門脈短絡を通した非対象の塞栓である。
【0006】
マイクロカテーテルは通常、腹腔または肝臓の動脈のような血管の近位部分内におかれるより大きな内腔のカテーテルにより通され、それからマイクロカテーテルがそれを通って塞栓術に効果的な距離に到達するまで腫瘍へ前進される。いくつかのシナリオで、診断用カテーテルをマイクロカテーテルの送達媒体として使用することが、それを例えばより大きい直径のシースに交換せず、従って相当の時間を節約することにより有益である。診断用カテーテルの内腔は非常に小さく、通常0.035インチから0.038インチであるため、マイクロカテーテルは外径で約1mm以下でなければならない。
【0007】
塞栓処置でマイクロカテーテルが日常的に使用される他の理由は、血液を直接器官および腫瘍に運ぶ栄養血管のサイズである。腫瘍にできるだけ近づくため、塞栓用カテーテルはより小さくときどき曲がりくねった血管内へ前進される。より大きくしばしばより堅いカテーテルの使用が排除されなければ、これらの血管への近接性は困難である。また、操作されるとき身体の血管は攣縮になる傾向があり、効果的でない塞栓物質の送達を起こすので、柔軟なマイクロサイズのカテーテルがそのようなシナリオを避けるのに望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、粒子の懸濁剤の変更、および懸濁した粒子を対象の身体の部分、例えば患者の心血管系内に位置付けるカテーテルおよび方法に関する。いくつかの本発明の実施形態は特に、局所的塞栓術処置の実行における塞栓用マイクロカテーテルおよびその使用に関する。いくつかの本発明の実施形態は、送達中の懸濁剤内に懸濁した粒子の濃度を増加するのに適用可能である。いくつかの本発明の実施形態は、送達中の懸濁剤の流動特性(推進力)の変更に適用可能である。いくつかの本発明の実施形態は、(i)対象の身体の部分へ小血管内で送達すること、および(ii)(もしかすると癌の)対象の身体の部分に供給する小血管内で局所的塞栓術を実行し、それによって小血管内に塞栓を形成し、一方で非対象の塞栓を防ぐまたは最小化することに適用可能である。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、近位壁端部、遠位壁端部、および前記壁端部の間を伸びる内腔を備え、内腔は遠位壁端部で遠位流出口に、および遠位流出口の近位の近位流出口へ開かれ、内腔は懸濁剤が遠位流出口へそれを通るのを可能にするよう構成されたチューブ状壁を備え、遠位流出口は、懸濁剤の流動体および粒子の両方がそれを通るのを可能にする形状または/およびサイズであり、近位流出口は、懸濁剤を患者に送達する間、懸濁剤の流動体が粒子無しでそれを通り、粒子がそれを通るのを阻止するのを可能にするよう構成された、懸濁剤の流動体内に懸濁した粒子を含む懸濁剤を変更および患者に送達するカテーテルが提供される。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によると、近位流出口が、チューブ状壁の区画周辺または/および区画に沿って分散された複数の側面開口部を含み、それぞれの側面開口部は、懸濁剤の流動体が粒子無しでそれを通ることを可能にし、粒子がそれを通るのを阻止する形状または/およびサイズであり、側面開口部のうち少なくとも1つは、約30ミクロン以下の最小断面の大きさを持つ。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によると、懸濁した粒子が、固体の塞栓物質または/および微粒子塞栓剤を含む。本発明のいくつかの実施形態によると、懸濁した粒子が、固体のマイクロスフィア、塞栓性ビーズ、化学療法ビーズ、放射性ビーズ、放射線不透過ビーズ、および薬剤溶出ビーズのうち少なくとも1つを含む。本発明のいくつかの実施形態によると、懸濁剤が、コロイド、ヒドロゲル、油、リピオドール、接着剤、アクリル系粘着剤、シアノアクリレートベースの接着剤のうち少なくとも1つを含む。本発明のいくつかの実施形態によると、懸濁剤の流動体は、グルコース、コントラスト強調物質、および生理食塩水のうち少なくとも1つを含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によると、近位流出口が、通過の阻止を容易にするために、懸濁した粒子の最小の直径未満の幅を持つ間隙を有する少なくとも1つのスリットを備える。本発明のいくつかの実施形態によると、少なくとも1つのスリットが、カテーテルの長手方向の軸に平行にその長さで伸びる長手方向のスリットである。本発明のいくつかの実施形態によると、少なくとも1つのスリットが、カテーテルの長手方向の軸の垂直方向にその長さで伸びる円周方向のスリットである。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によると、カテーテルが、近位流出口の周囲のカテーテルの伸長に抵抗または/および妨げるように、近位流出口に交差するカテーテルの長手方向の軸に平行に伸びるカテーテル長限定ロッド状構成要素を備える。本発明のいくつかの実施形態によると、ロッド状構成要素が、内腔の内側境界に一致して湾曲した、閉じたまたは/および開かれたリングの形態の側部延長部を有する。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によると、カテーテルが、遠位流出口に近接して位置し、カテーテルの長手方向の軸に沿った懸濁した粒子の水平速度成分を減少させるように、懸濁剤の流れを変更するよう構成された流れ抑制機構を備える。本発明のいくつかの実施形態によると、流れ抑制機構が、遠位流出口に近接して位置し、懸濁した粒子の横方向速度成分を増加し、懸濁した粒子の縦方向速度成分を減少するような形状および大きさである螺旋部を備える。本発明のいくつかの実施形態によると、流れ抑制機構が、懸濁剤が突起に交差して流れるのに抵抗するよう構成された、内腔の内側境界から始まる少なくとも1つの半径方向の内方向への突起を備える。本発明のいくつかの実施形態によると、少なくとも1つの半径方向の内方向への突起が、複数の長手方向に離間された、開かれまたは/および閉じられたリング構成要素を含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によると、近位流出口が、懸濁した粒子の最小の直径未満の断面の直径を持ち、それによって前記通過の阻止を容易にする少なくとも1つの細孔を備える。本発明のいくつかの実施形態によると、近位流出口は、内腔の最小断面または/および遠位流出口の最小断面と同等またはそれより大きい全体開口断面を有する。本発明のいくつかの実施形態によると、近位流出口は、遠位流出口の少なくとも0.5mm近位に位置する。本発明のいくつかの実施形態によると、近位流出口は、遠位流出口の少なくとも2mm近位に位置する。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によると、チューブ状壁区画は、近位流出口を覆うよう、および流動体がそれを通るのを妨げるよう構成され、チューブ状壁区画が近位を流れる流動体に浸されるとき、近位流出口の覆いを外すよう構成されたカバーを備えるバルブ機構を含む。本発明のいくつかの実施形態によると、チューブ状壁の近位部分が、圧力源および懸濁剤を供給するよう構成された貯蔵部に接合可能である。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によると、カテーテルが塞栓用マイクロカテーテルとして構成される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によると、チューブ状壁の外径が、約4mm以下である。本発明のいくつかの実施形態によると、チューブ状壁の外径が、約1mm以下である。本発明のいくつかの実施形態によると、チューブ状壁は、腹腔または肝臓の動脈から始まる小血管内へ挿入するよう構成される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、近位ヘッド端部および遠位ヘッド端部を含むチューブ状ヘッド壁を備え、チューブ状ヘッド壁に沿って伸びるヘッド内腔を囲み、遠位ヘッド端部において遠位流出口へ開かれたカテーテルヘッドと、遠位流出口の近位のチューブ状ヘッド壁の区画周辺または/および区画に沿って分散された複数の側面開口部と、ヘッド内腔を、柔軟なチューブに沿って設けられたチューブ内腔とともに懸濁剤を送達するよう構成されたカテーテル内腔に一体化する、近位ヘッド端部に接合された柔軟なチューブとを備え、遠位流出口は、懸濁剤の流動体および粒子の両方がそれを通ることを可能にする形状または/およびサイズであり、それぞれの側面開口部は、患者へ懸濁剤を送達する間、懸濁剤の流動体が粒子無しでそれを通ることを可能にし、粒子がそれを通るのを阻止する形状または/およびサイズである、懸濁剤の流動体内に懸濁した粒子を含む懸濁剤を変更および患者に送達するカテーテルが提供される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によると、カテーテルが塞栓用マイクロカテーテルとして構成される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によると、少なくとも1つの側面開口部は、懸濁した粒子の最小直径未満の断面の大きさを持つ細孔を有する。本発明のいくつかの実施形態によると、それぞれの側面開口部は、100ミクロン以下の最小断面の大きさを有する。本発明のいくつかの実施形態によると、側面開口部は、レーザカット(ポリマーについてはフェムトレーザ)、レーザ穿孔、エッチング、スカイビング(ポリマーについて)、EDM、またはそれらの組み合わせを用いて形成される。本発明のいくつかの実施形態によると、チューブ状壁が、金属素材、ポリマー素材、またはそれらの組み合わせで作られ、チューブが柔軟なポリマー素材で作られる。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、カテーテルが、近位ヘッド端部および遠位ヘッド端部を含む剛体の環状ヘッド壁を備え、ヘッド壁に沿って伸びるヘッド内腔を囲み、ヘッド内腔が、遠位ヘッド端部において遠位流出口へ、また遠位流出口の近位のヘッド壁の区画周辺または/および区画に沿って分散された複数の側面開口部へ開かれ、カテーテルヘッドが、近位ヘッド端部において、ヘッド内腔をチューブ内腔とともに懸濁剤を送達するよう構成されたカテーテル内腔に一体化するため、柔軟なチューブを備えたカテーテル本体と接合でき、遠位流出口は、前記懸濁剤の流動体および粒子の両方がそれを通ることを可能にする形状または/およびサイズであり、それぞれの側面開口部は、患者へ前記懸濁剤を送達する間、前記懸濁剤の流動体が前記粒子無しでそれを通ることを可能にし、前記粒子がそれを通るのを阻止する形状または/およびサイズである、懸濁剤の流動体内に懸濁した粒子を含む懸濁剤を変更および患者に送達するカテーテルヘッドが提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によると、カテーテルヘッドを、カテーテル本体に接合されるとき、塞栓用マイクロカテーテルとして構成される。本発明のいくつかの実施形態によると、少なくとも1つの側面開口部は、懸濁した粒子の最小の直径未満の断面の大きさを持つ細孔を有する。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、近位壁端部、遠位壁端部、および近位壁端部において近位吸込口へ、遠位壁端部において遠位流出口へ開かれた内腔を備え、カテーテルが懸濁剤貯蔵部に接合されるとき、内腔が近位吸込口を介して予め作られた懸濁剤と流体連通するのを容易にするよう構成されたチューブ状壁と、近位吸込口と遠位流出口の間に位置し、予め作られた懸濁剤から懸濁した粒子無しに懸濁剤の流動体の過剰量を取り除き、それによって懸濁剤濃縮機構と遠位流出口の間に濃縮された懸濁剤の選択された残りの量を残すことにより、予め作られた懸濁剤内に懸濁した粒子の濃度を増加するよう構成された懸濁剤濃縮機構を備える、懸濁剤の流動体内に懸濁した予め作られた粒子の懸濁剤を包含する懸濁剤貯蔵部に接合可能なカテーテルが提供される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によると、カテーテルは、濃縮された懸濁剤を、遠位流出口を介して小血管内へ送達するよう構成された塞栓用マイクロカテーテルである。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によると、懸濁剤濃縮機構が、懸濁した粒子がそれを通るのを阻止し、懸濁剤の流動体が粒子無しでそれを通るのを可能にするよう構成された懸濁剤フィルタを含む。本発明のいくつかの実施形態によると、濃縮機構を持つカテーテルが、遠位流出口の近位の前記チューブ状壁に位置する近位流出口を通して、懸濁剤の流動体の取り除かれた過剰量を分散するよう構成される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によると、近位流出口は複数の側面開口部を含む。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によると、過剰量が懸濁剤の流動体の全容積の少なくとも約50%である。本発明のいくつかの実施形態によると、過剰量が懸濁剤の流動体の全容積の約80%である。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によると、カテーテルが、近位吸込口内へ流れる予め作られた懸濁剤の吸込流量の少なくとも半分である流出流量で濃縮された懸濁剤を送達するよう構成される。本発明のいくつかの実施形態によると、カテーテルが、遠位流出口を通して送達可能な残りの量に対する近位流出口を通して送達可能な過剰量の流量比が、少なくとも2、任意選択的に特に少なくとも4、任意選択的に特に少なくとも8であるよう構成される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、近位壁端部、遠位壁端部、および近位壁端部において近位吸込口へ、遠位壁端部において遠位流出口へ開かれた内腔を備え、カテーテルが懸濁剤貯蔵部に接合されるとき、内腔が近位吸込口を介して予め作られた懸濁剤と流体連通するのを容易にするよう構成されたチューブ状壁と、近位吸込口と遠位流出口の間に位置し、第1の推進力を持つ、入ってくる懸濁剤から過剰質量を取り除き、それによって流れ抑制機構と遠位流出口の間に実質的に第1の推進力より小さい選択された第2の推進力を持つ濃縮された懸濁剤の残りの質量を残すよう構成された流れ抑制機構とを備える、懸濁剤の流動体内に懸濁した予め作られた粒子の懸濁剤を包含する懸濁剤貯蔵部に接合可能なカテーテルが提供される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によると、カテーテルは、濃縮された懸濁剤を、遠位流出口を介して小血管内へ送達するよう構成された塞栓用マイクロカテーテルである。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によると、流れ保持機構が、懸濁した粒子がそれを通るのを阻止し、懸濁剤の流動体が粒子無しでそれを通るのを可能にする懸濁剤フィルタを含む。本発明のいくつかの実施形態によると、流れ保持機構を持つカテーテルが、遠位流出口の近位のチューブ状壁に位置する近位流出口を通して入ってくる懸濁剤の取り除かれた過剰質量を分散するよう構成される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によると、近位流出口は複数の側面開口部を含む。本発明のいくつかの実施形態によると、カテーテルが、過剰質量と残りの質量の間の質量比が、少なくとも2であるように構成される。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によると、カテーテルが、第1の推進力と第2の推進力の間の推進力比が、少なくとも3、任意選択的に特に少なくとも9、任意選択的に特に少なくとも20、任意選択的に特に少なくとも30であるように構成される。本発明のいくつかの実施形態によると、カテーテルが、濃縮された懸濁剤を、遠位流出口を介して、およそ50cm/秒以下、任意選択的に特におよそ20cm/秒以下、任意選択的に特におよそ5cm/秒以下である水平成分を有する送達速度で送達するように構成される。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、近位吸込口、遠位流出口、および近位吸込口と遠位流出口の間に位置する近位流出口を有するカテーテルを提供することと、遠位流出口を、血管内の対象の箇所に近接して位置決めることと、近位吸込口内へ、懸濁剤の流動体の全量内に懸濁した粒子の予め作られた懸濁剤を注入することと、懸濁した粒子を有する懸濁剤の流動体の過剰量を、近位流出口を介して分散するのを可能にすることと、懸濁した粒子を有する懸濁剤の流動体の残りの量を、遠位流出口を介して血管内へ送達することを含む、患者の血管内への、懸濁剤の流動体内に懸濁した粒子を含む懸濁剤を変更および送達する方法が提供される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によると、可能にすることは、予め作られた懸濁剤の濾過を含む。本発明のいくつかの実施形態によると、濾過は懸濁した粒子が近位開口部を通るのを阻止することを含む。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によると、方法は、近位吸込口と遠位流出口の間の懸濁剤の流動体の速度を半分以下に減少することをさらに含む。本発明のいくつかの実施形態によると、方法は、近位流出口と遠位流出口の間の懸濁剤の流動体の速度を半分以下に減少することをさらに含む。本発明のいくつかの実施形態によると、方法は、近位吸込口と遠位流出口の間の懸濁剤の流動体の推進力を9分の1以下に減少させることをさらに含む。本発明のいくつかの実施形態によると、方法は、近位流出口と遠位流出口の間の懸濁剤の流動体の推進力を8分の1以下に減少させることを含む。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によると、方法は、近位流出口と遠位流出口の間の懸濁剤の流動体の質量を半分以下に減少させることを含む。本発明のいくつかの実施形態によると、方法は、近位流出口と遠位流出口の間の懸濁剤の流動体の流量を4分の1以下に減少させることを含む。本発明のいくつかの実施形態によると、全量と残りの量の間の容積比は、少なくとも4である。本発明のいくつかの実施形態によると、懸濁剤の流動体の残りの量の送達は、20cm/秒以下の速度を有する。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、遠位流出口、近位吸込口、および近位吸込口と遠位流出口の間に位置する近位流出口を有する塞栓用マイクロカテーテルを提供することと、遠位流出口を小血管内の癌の対象の身体の部分の上流に位置決めることと、近位吸込口内へ懸濁剤の流動体内に懸濁した粒子の予め作られた懸濁剤を注入することと、懸濁した粒子を有する懸濁剤の流動体の過剰量を、近位流出口を介して分散し、粒子が近位流出口を通るのを阻止するのを可能にすることと、少なくとも遠位流出口と癌の対象の身体の部分の間の血流の阻止に効果的なサイズの塞栓の生成まで、懸濁した粒子を有する懸濁剤の流動体の残りの量を、遠位流出口を介して小血管内へ送達することを含む、患者の癌の対象の身体の部分に供給する小血管内で局所的塞栓術を実行する方法が提供される。本発明のいくつかの実施形態によると、懸濁剤の流動体はコントラスト強調剤を含む。
【0040】
他に定義される場合を除いて、本明細書で使用される全ての技術的または/および科学的な語は、本発明に関連する当業者が一般的に理解するものと同一の意味を持つ。本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および物質を本発明の実施形態の実践またはテストで使用可能であるが、例示的な方法または/および物質を後述する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先する。また、物質、方法、および例は実例のみであり、必ずしも限定を意図しない。
【0041】
添付の図および画像を参照して、例としてのみ、本発明のいくつかの実施形態を本明細書に記載する。詳細に図および画像に特定の参照をするが、示される詳細は、一例として、および本発明の実施形態の考察例の目的であることを強調する。この点で、図および画像とともに取り込まれる記載は、本発明の実施形態をどのように実施しうるかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1A図1Bは、本発明のいくつかの実施形態による、懸濁剤の変更および送達前(図1A)および後(図1B)のカテーテルの例示的な実施形態の概略垂直断面図である。
図2図2A図2Bは、本発明のいくつかの実施形態による、懸濁剤の変更および送達前(図1A)および後(図1B)の、側面開口部および流れ抑制機構を持つカテーテルの例示的な実施形態の概略垂直断面図である。
図3】本発明のいくつかの実施形態による、複数の凹形のオリフィスを含む流れ抑制機構を持つカテーテルの例示的な実施形態の概略垂直断面図である。
図4】本発明のいくつかの実施形態による、螺旋部を含む流れ抑制機構を持つカテーテルの例示的な実施形態の概略垂直断面図である。
図5図5A図5Bは、本発明のいくつかの実施形態による、逆行の流れの発生前(図2A)および後(図2B)の懸濁剤の送達中のマイクロカテーテルの例示的な実施形態の概略垂直断面図である。
図6】本発明のいくつかの実施形態による、スリットの形態の例示的な側面開口部を持つカテーテル遠位部分の例示的な実施形態の概略垂直面図である。
図7図7A図7Bは、本発明のいくつかの実施形態による、被覆機構の作動前(図4A)および後(図4B)の被覆機構を有する投与剤(例えば、懸濁した粒子)の流れ途絶区画の部分の例示的な実施形態の概略部分垂直断面図である。
図8】本発明のいくつかの実施形態による、先端部の近位端部に接合された柔軟なチューブを含むカテーテルの例示的な実施形態の概略垂直断面図である。
図9】本発明のいくつかの実施形態による、メッシュの側面開口部を持つカテーテルの部分の例示的な実施形態の概略等角図である。
図10】本発明のいくつかの実施形態による、サイレンサーモード構成を持つカテーテルヘッド部分の例示的な実施形態の概略等角図である。
図11】本発明のいくつかの実施形態による、収斂-拡散区分を包含するカテーテルヘッド部分の編組部分の例示的な実施形態の概略垂直面図である。
図12図12A図12Cは、本発明のいくつかの実施形態による、カテーテルヘッドの等角図(図12A)、カテーテルヘッドの断面等角図(図12B)、およびカテーテルヘッドの垂直断面図(図12C)を示す。
図13図13A図13Bは、本発明のいくつかの実施形態による、複数の長手方向のスリットおよび収斂非外傷性先端部を持つカテーテルの末端部分の例示的な実施形態の全体等角図および垂直断面図をそれぞれ示す。
図14図14A図14Bは、本発明のいくつかの実施形態による、円周方向のスリットの複数の互い違いの線、および複数の半径方向に内方向への突起を持つカテーテルヘッドの例示的な実施形態の全体等角図および断面等角図をそれぞれ示す。
図15】本発明のいくつかの実施形態による、円周方向のスリットおよび長手方向のスリットを持つマイクロカテーテルヘッド構成要素の例示的な実施形態の等角図である。
図16図16A図16Bは、本発明のいくつかの実施形態による、複数の互い違いの列の長手方向のスリットおよび螺旋部を持つ、カテーテルヘッドの例示的な実施形態の全体等角図および垂直断面図をそれぞれ示す。
図17図17A図17Bは、本発明のいくつかの実施形態による、複数の互い違いの列の長手方向のスリットおよび螺旋部を持つ、強化ポリマーで作られ、円周方向のスリットの複数の互い違いの線および複数の半径方向に内方向への突起を有する、カテーテル遠位部分の例示的な実施形態の全体等角図および垂直断面図をそれぞれ示す。
図18図18A図18Dは、本発明のいくつかの実施形態による、複数の接線の長手方向のスリットおよび複数の凸状のオリフィスを持つカテーテルヘッドの例示的な実施形態の等角図(図18A)、カテーテルヘッドの断面等角図(図18B)、カテーテルヘッドの横断面等角図(図18C)、およびカテーテルヘッドの垂直断面図(図12D)を示す。
図19図19A図19Bは、本発明のいくつかの実施形態による、円周方向のスリットの複数の互い違いの線、および斜めの螺旋部(図19A)を含むカテーテルヘッドの例示的な実施形態の等角図(図19A)、およびカテーテルヘッドの垂直断面図(図19B)を示す。
図20図20A図20Bは、本発明のいくつかの実施形態による、円周方向のスリットの第1の区画および細孔の第2の区画、および複数の半径方向に内方向への突起を含むカテーテルヘッドの例示的な実施形態の等角図(図20A)、およびカテーテルヘッドの垂直断面図(図20B)を示す。
図21図21A~21D。(本発明のいくつかの実施形態による)例示的な塞栓用マイクロカテーテルに対して例示的な市販されている塞栓用マイクロカテーテルを使用して得られた例示的な比較による臨床試験結果を比較する、例示的なビデオフレームの垂直面図フレームに基いたおよびそれを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、粒子の懸濁剤を変更するマイクロカテーテルおよび方法、および懸濁した粒子を例えば患者の心血管系内に位置する対象の身体の部分に送達するマイクロカテーテルおよび方法に関する。いくつかの実施形態は特に、塞栓用マイクロカテーテルおよび局所的な塞栓処置の実行におけるその使用に関する。いくつかの本発明の実施形態は、送達中に懸濁剤内の特定の懸濁濃度を増加するのに適用可能である。いくつかの本発明の実施形態は、送達中に懸濁剤の流動特性(推進力)を変更するのに適用可能である。いくつかの本発明の実施形態は、(i)塞栓物質の小血管内での対象の身体の部分への送達、および(ii)(もしかすると癌の)対象の身体の部分に供給する小血管内で局所的塞栓術を実行し、それによって小血管内に塞栓を形成し、一方で非対象の塞栓を防ぐまたは最小化するのに適用可能である。
【0044】
本発明は本明細書に記載された特定の方法論、手順および試薬などに限定されず、当業者が認識する限りこれらは変わりうることが理解される。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のみであって、本発明の範囲の限定を意図するものではないこともまた理解すべきである。後述の例示的な実施形態は、記載および理解を容易にするため例示的な塞栓処置の記載の内容で記載されるかもしれない。しかし、本発明は特に記載される装置および方法に限定されず、本発明の全体の範囲から逸脱することなく種々の臨床的応用に適応されうる。
【0045】
前述のおよび他の現在の塞栓技術に関連する制限の観点から、(例えば塞栓物質または/およびコントラスト強調物質を含む)粒子を対象の身体部分のごく近くに位置する小血管内へ送達し、一方で粒子の小血管からのバックフローまたは逆流を防ぐまたは減少する、向上されたまたは/および新しい技術(装置および方法)の開発および実施のニーズが存在する。
【0046】
本明細書で使用される「懸濁剤」の語は、流動体(通常は液体)に浮かぶまたは/および分散された固体の粒子の混合物をいう。本明細書で使用されおよび呼称される懸濁剤は、カテーテルの貯蔵部に供給または提供され、(人間または動物)患者の血管内へ(たとえば注入によって)投与されるのに適切である。本明細書で使用されおよび呼称される「懸濁剤」の語は、「投与懸濁剤」の語と置き替え可能である。
【0047】
本明細書で使用される「粒子」、「ビーズ」および「投与剤」は、懸濁剤(投与懸濁剤)を形成する懸濁剤(分散剤)の流動体内に懸濁(分散)可能な粒子状物質をいう。
【0048】
例示的な実施形態で、粒子は塞栓(塞栓性)物質または/および(コントラスト強調物質またはコントラスト強調剤のような)造影剤から構成され、またはそれらを含む。例示的な実施形態で、投与剤は塞栓(塞栓性)物質から構成され、またはそれを含み、塞栓物質は塞栓特性に加え放射線不透性または/およびX線写真特性を有する。例示的な実施形態で、投与剤はコントラスト強調物質から構成され、またはそれを含み、コントラスト強調物質は放射線不透性または/およびX線写真特性に加え塞栓特性もまた有する。例示的な実施形態で、粒子は患者の血管内の投与に適切なあらゆるタイプまたは種類の特性を有する、あらゆるタイプ、種類および量の他の物質から構成され、またはそれを含んでもよい。
【0049】
例示的な実施形態で、(投与)流動体内に懸濁した粒子を含む(投与)懸濁剤を、塞栓タイプの療法、例えば動脈内塞栓療法に適切に構成および処方してもよい。いくつかのそのような実施形態で、(投与)懸濁剤は無菌塞栓のため塞栓性ビーズの形態で懸濁した投与剤を含んでもよい。任意選択的に、代わりにまたは加えて、投与懸濁剤は、化学塞栓のため、化学療法剤および塞栓性ビーズまたは/および化学療法剤溶出ビーズ(例えばドキソルビシン含浸ポリビニールアルコールマイクロスフィア、ドキソルビシン含浸超吸収性ポリマーマイクロスフィア、シスプラチン含浸ゼラチンマイクロスフィア)と混合したリピオドールの形態の懸濁した投与剤を含んでもよい。任意選択的に、代わりにまたは加えて、投与懸濁剤は、放射線塞栓のため放射性ビーズの形態の懸濁した投与剤を含んでもよい。
【0050】
例示的な実施形態で、塞栓物質は、液体塞栓剤(例えばCovidienのOnyx(登録商標)、n-ブチル-2-シアノアクリレート、またはヨード化ケシ油エチルエステル)、硬化薬(例えば、エタノール、エタノールアミンオレイン酸、またはテトラデシル硫酸ナトリウム)、または微粒子塞栓剤(例えば、止血吸収ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリルゼラチンマイクロスフィア、またはガラス)のうち少なくとも1つを含んでもよい。塞栓物質は、放射線不透過ビーズまたは/および薬剤溶出ビーズを含んでもよい。
【0051】
例示的な実施形態で、懸濁剤の流動体は、例えば生理食塩水などで特定の程度に希釈されたコントラスト強調物質(剤)を含む。一部のケースで医師は、例えば50:50の容積比で、粘性のコントラスト強調物質(剤)を、生理食塩水および塞栓ビーズ(粒子)または/および化学療法ビーズ(粒子)を含む塞栓物質と混合してもよく、それによって選択された度合に希釈されたビーズおよびコントラスト強調物質(剤)の流動体の懸濁剤を生産する。例示的な実施形態で、懸濁剤は、薬剤溶出ビーズ(DEB)、化学療法物質(例えば、ドキソルビシン)およびコントラスト強調物質を含む。例示的な実施形態で、コントラスト強調物質(剤)は、種々のあらゆるタイプまたは種類の造影剤、例えば多数の他の適切なタイプおよび種類の造影剤の中でビジパーク(登録商標)(イオジキサノール)、またはオムニパーク(登録商標)(イオヘキソール)であってもよく、または含んでもよい。
【0052】
限定しない方法で、一般に粒子の、ビーズの、投与剤の、および特に(投与)懸濁剤の流動体の、多数の他の可能な(投与)懸濁剤の組成物および処方が、本発明の実施形態の実施に適用可能である。
【0053】
いくつかの本発明の実施形態の態様は、患者への懸濁剤を変更および送達するカテーテルである。
【0054】
そのような態様の例示的な実施形態で、カテーテルは、近位壁端部、遠位壁端部、および壁端部の間を伸びるチューブ状壁を含む。内腔は、遠位壁端部において遠位流出口へ、および遠位流出口の近位の近位流出口へ開かれ、懸濁剤が遠位流出口へそれを通るのを可能にするよう構成される。遠位流出口は、懸濁剤の流動体および粒子の両方がそれを通るのを可能にする形状または/およびサイズであり、近位流出口は懸濁剤の流動体が粒子無しでそれを通り、粒子がそれを通るのを阻止するのを可能にするよう構成される。
【0055】
そのような態様の別の例示的な実施形態で、カテーテルは、近位ヘッド端部および遠位ヘッド端部を含むチューブ状ヘッド壁を持つカテーテルヘッドを有する。カテーテルヘッドは、チューブ状ヘッド壁に沿って伸びて遠位ヘッド端部において遠位流出口へ開かれたヘッド内腔を、囲む。カテーテルはまた、遠位流出口の近位のチューブ状ヘッド壁区画周辺または/およびそれに沿って分散された複数の側面開口部、およびヘッド内腔を、柔軟なチューブに沿って設けられたチューブ内腔とともに懸濁剤を送達するよう構成されたカテーテル内腔に一体化する、近位ヘッド端部に接合された柔軟なチューブを有する。遠位流出口は、懸濁剤の流動体および粒子の両方がそれを通ることを可能にする形状または/およびサイズであり、それぞれの側面開口部は、患者への懸濁剤の送達の間、懸濁剤の流動体が粒子無しでそれを通ることを可能にし、粒子がそれを通るのを阻止する形状または/およびサイズである。
【0056】
いくつかの本発明の実施形態の態様は、患者に懸濁剤を送達するカテーテルヘッドである。そのような態様の例示的な実施形態で、カテーテルは、近位ヘッド端部および遠位ヘッド端部を持ち、ヘッド壁に沿って伸び、ヘッド内腔を囲む硬質なチューブ状ヘッド壁を有する。ヘッド内腔は、遠位ヘッド端部で遠位流出口へ、および遠位流出口に近位のヘッド壁区画周辺または/およびそれに沿って分散された複数の側面開口部へ開かれる。カテーテルヘッドは、近位ヘッド端部において、ヘッド内腔をチューブ内腔とともに懸濁剤を送達するよう構成されたカテーテル内腔へ一体化する、柔軟なチューブを持つカテーテル本体へ接合可能である。遠位流出口は、懸濁剤の流動体および粒子の両方がそれを通ることを可能にする形状または/およびサイズであり、それぞれの側面開口部は、患者への懸濁剤の送達の間、懸濁剤の流動体が粒子無しでそれを通ることを可能にし、粒子がそれを通るのを阻止する形状または/およびサイズである。
【0057】
いくつかの本発明の実施形態の態様は、懸濁剤の流動体内に懸濁された、予め作られた粒子の懸濁剤を包含する懸濁剤貯蔵部に接合可能なカテーテルである。
【0058】
そのような態様の例示的な実施形態で、カテーテルは、近位壁端部、遠位壁端部、および近位壁端部において近位吸込口へ、遠位壁端部において遠位流出口へ開かれた内腔を持つチューブ状壁を有する。チューブ状壁は、カテーテルが懸濁剤貯蔵部に接合されるとき、内腔が近位吸込口を介して予め作られた懸濁剤と流体連通するのを容易にするよう構成される。カテーテルはまた、近位吸込口と遠位流出口の間に位置し、予め作られた懸濁剤から懸濁した粒子無しに過剰量の懸濁剤の流動体を取り除き、それによって懸濁剤濃縮機構と遠位流出口の間に濃縮された懸濁剤の選択された残りの量を残すことにより、予め作られた懸濁剤内に懸濁された粒子の濃度を増加するよう構成された懸濁剤濃縮機構を有する。
【0059】
そのような態様の別の例示的な実施形態で、カテーテルは、近位壁端部、遠位壁端部、および近位壁端部において近位吸込口へ、遠位壁端部において遠位流出口へ開かれた内腔を持つチューブ状壁を有する。チューブ状壁は、カテーテルが懸濁剤貯蔵部に接合されるとき、内腔が近位吸込口を介して予め作られた懸濁剤と流体連通するのを容易にするよう構成される。カテーテルはまた、近位吸込口と遠位流出口の間に位置し、第1の推進力を持つ、入ってくる懸濁剤から過剰質量を取り除き、それによって流れ抑制機構と遠位流出口の間に、実質的に第1の推進力より小さい選択された第2の推進力を持つ濃縮された懸濁剤の残りの質量を残すよう構成された流れ抑制機構を有する。
【0060】
いくつかの本発明の実施形態の態様は、患者の血管内への懸濁剤を変更および送達する方法である。そのような態様の例示的な実施形態で方法は、近位吸込口、遠位流出口、および近位吸込口と遠位流出口の間に位置する近位流出口を有するカテーテルを提供すること、遠位流出口を血管内の対象の箇所に近接して位置決めること、近位吸込口内へ懸濁剤の流動体の全量内に懸濁した予め作られた粒子の懸濁剤を注入すること、懸濁した粒子を有する懸濁剤の流動体の過剰量を、近位流出口を介して分散するのを可能にすること、および懸濁した粒子を有する懸濁剤の流動体の残りの量を、遠位流出口を介して血管内へ送達することを含む。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態の態様は、患者の癌の対象の身体の部分に供給する小血管内で局所的塞栓術を実行する方法である。そのような態様の例示的な実施形態で、方法は、遠位流出口、近位吸込口、および近位吸込口と遠位流出口の間に位置する近位流出口を有する塞栓用カテーテルを提供すること、遠位流出口を小血管内の癌の対象の身体の部分の上流に位置決めること、近位吸込口内へ懸濁剤の流動体内に懸濁した予め作られた粒子の懸濁剤を注入すること、懸濁した粒子を有する懸濁剤の流動体の過剰量を、近位流出口を介して分散するのを可能にし、粒子が近位流出口を通るのを阻止すること、および懸濁した粒子を有する懸濁剤の流動体の残りの量を、少なくとも遠位流出口と癌の対象の身体の部分の間の血流を効果的に阻止するサイズの塞栓を生成するまで、小血管内へ送達することを含む。
【0062】
前述の本発明の例示的な実施形態の態様、およびその特性および機能は、後述の例の記載および添付の図を参照してよりよく理解される。後述の例の記載および添付の図を通して、同一の参照記号および語句(すなわち、数、文字、シンボル)は一貫して使用され、同一の構造、構成要素、成分、ステップまたは手順、または/および機能を指す。本発明は、カテーテル装置または機器構成要素に特定の構造の詳細、または/および配置への、または後述の例の記載で説明する方法ステップまたは手順のいずれの特定の一連の順序へのその適用に必ずしも限定されないことを理解すべきである。本発明は、他の実施形態で実施可能であり、または種々の方法で実践または実行可能である。
【0063】
図1A図1Bは、懸濁剤の流動体内の粒子の懸濁剤の変更および送達前(図1A)および後(図1B)のカテーテル100の概略垂直面図である。カテーテル100は、近位壁端部104、遠位壁端部105、および壁端部104および105の間を伸びる内腔106を持つチューブ状壁103を含む。内腔106は、遠位壁端部105において遠位流出口107へ、および遠位流出口107の近位に位置する近位流出口108へ開かれる。カテーテルは、懸濁剤を、内腔106を介して遠位流出口107へ送達するよう構成され、従って遠位流出口107は、懸濁剤の流動体および粒子がそれを通るのを可能にする形状または/およびサイズである。
【0064】
カテーテルの近位壁端部104は、圧力源109および懸濁剤を供給するよう構成された懸濁剤貯蔵部110に接合可能である。いくつかの実施形態では、カテーテル100は、単一の内腔、すなわち内腔106を有する。チューブ状壁103の外径は、任意選択的に約4mm以下である。カテーテルは、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルとして構成される。いくつかのそのような実施形態で、チューブ状壁103の外径は任意選択的に約1mm以下であり、または/および腹腔または肝臓の動脈から始まるもののような小血管(BV)内へ挿入するよう構成される。いくつかの実施形態では、カテーテル100は、2.1フレンチカテーテル、または2.7フレンチカテーテル、または2.9フレンチカテーテルのような市販されているマイクロカテーテルの直径と等しい外径を有する。
【0065】
粒子は固体の塞栓性物質または/および微粒子の塞栓剤を含んでもよく、または/および固体のマイクロスフィア、塞栓性ビーズ、化学療法ビーズ、放射性ビーズ、放射線不透過ビーズ、および薬剤溶出ビーズのうち少なくとも1つを含んでもよい。懸濁剤は、コロイド、ヒドロゲル、油、リピオドール、接着剤、アクリル系粘着剤、シアノアクリレートベースの接着剤のうち少なくとも1つを含んでもよく、一方で懸濁剤の流動体は、グルコース、コントラスト強調物質、または/および生理食塩水を含んでもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、例えば懸濁剤の患者への送達の間、近位流出口108は粒子無しで懸濁剤の流動体がそれを通り、粒子がそれを通るのを阻止するのを可能にするよう構成される。近位流出口108は任意選択的に複数の側面開口部を有し、それぞれは、例えば懸濁剤の患者への送達の間、粒子無しで懸濁剤の流動体がそれを通り、粒子がそれを通るのを阻止するのを可能にする形状または/およびサイズである。いくつかの実施形態では、側面開口部のうち少なくとも1つは、約30ミクロン以下の、任意選択的に約40ミクロン以下、任意選択的に約100ミクロン以下、任意選択的に約500ミクロン以下、またはより大きい、またはより小さい、または中間サイズの最小断面の大きさを有する。近位流出口108は、粒子の最小の直径未満の直径を有し、それによって粒子の阻止を容易にする少なくとも1つの細孔を有してもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、カテーテル100は、懸濁剤の流動体内の粒子の懸濁剤を血管(BV)内に送達するのに、特に適用可能である。カテーテル100の遠位流出口107を、血管(BV)内の対象の箇所に近接して最初に位置決めてもよい。それから、予め作られた粒子の懸濁剤111を近位吸込口113内へ注入可能である。懸濁剤の流動体の過剰な量102を、近位流出口108を介して分散することを可能にすることにより、カテーテル100を、遠位流出口107を介して懸濁剤の流動体の残りの量とともに粒子を送達するのに使用可能である。
【0068】
近位流出口108を、粒子の近位開口部108の通過の阻止を含めることにより、任意選択的に予め作られた懸濁剤111のフィルタ処理に特に構成可能であり、および使用可能である。
【0069】
任意選択的に、加えてまたは代わりに、近位流出口108を、近位吸込口113と遠位流出口107の間、任意選択的に近位流出口108と遠位流出口107の間の懸濁剤の流動体の速度を半分または半分未満に減少させるよう構成および使用することが可能である。
【0070】
任意選択的に、加えてまたは代わりに、近位流出口108を、近位吸込口113と遠位流出口107の間の懸濁剤の流動体の推進力を9分の1または9分の1未満に、任意選択的に近位流出口108と遠位流出口107の間の懸濁剤の流動体の推進力を8分の1または8分の1未満に減少させるよう構成および使用することが可能である。
【0071】
任意選択的に、加えてまたは代わりに、近位流出口108を、近位流出口108と遠位流出口107の間の懸濁剤の流動体の質量を半分または半分未満に減少させるよう構成および使用することが可能である。
【0072】
いくつかの実施形態では、近位流出口108と遠位流出口107の間の懸濁剤の流動体の流量を4分の1または4分の1未満に減少させるよう構成および使用することが可能である。いくつかの実施形態では、注入された予め作られた懸濁剤111の全容積と残りの容積の間の容積比は4以上である。いくつかの実施形態では、粒子と懸濁剤の流動体の残りの容積は、20cm/秒以下の速度で遠位流出口107を介して送達される。
【0073】
いくつかの実施形態では、カテーテル100は、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態およびサイズのとき、癌の対象の身体の部分に供給する小血管内で局所的塞栓術を実行するのに、特に適用可能である。カテーテルの遠位流出口107を、癌の対象の身体の部分の上流の小血管内にまず位置決めてもよい。それから、懸濁剤の流動体内の予め作られた粒子の懸濁剤111を近位吸込口113内へ注入可能である。懸濁剤の流動体の過剰量102が近位流出口108を介して分散するのを可能にすること、および粒子の近位流出口108の通過を阻止することにより、少なくとも遠位流出口と癌の対象の身体の部分の間の血流の阻止に効果的なサイズの塞栓を生成するまで、カテーテル100を、粒子と懸濁剤の流動体の残りの量の送達に使用可能である。いくつかのそのような実施形態で、懸濁剤の流動体はコントラスト強調剤であってもよく、または含んでもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、近位流出口108は内腔106の最小断面または/および遠位流出口107と同等またはそれより大きい全体開口断面を有する。任意選択的に、近位流出口108の全体開口断面は、内腔106または/および遠位流出口107の最小断面の少なくとも2倍、任意選択的に少なくとも5倍、任意選択的に少なくとも10倍である。いくつかの実施形態では、近位流出口108の全体開口断面は、少なくとも約0.5mm、任意選択的に少なくとも約1mm、任意選択的に少なくとも約1.5mm、任意選択的に少なくとも約2mmである。いくつかの実施形態では、内腔106または/および遠位流出口107の最小断面は、任意選択的に約0.5mm以下、または任意選択的に約0.25mm以下、または任意選択的に約0.15mm以下である。
【0075】
いくつかの実施形態では、近位流出口108は、遠位流出口107の少なくとも0.5mm近位に位置し、任意選択的にその最も遠位の側面開口部と少なくとも0.5mm近位に位置する。いくつかの実施形態では、近位流出口108は、遠位流出口107の少なくとも2mm近位に位置する。
【0076】
いくつかの実施形態では、懸濁剤貯蔵部110は、懸濁剤の流動体102内の予め作られた粒子の懸濁剤111を含む。チューブ状壁103は、カテーテルが懸濁剤貯蔵部に接合されるとき、内腔106が近位壁端部104に位置する近位吸込口113を介して予め作られた懸濁剤111と流体連通状態に整えるよう構成される。
【0077】
いくつかの実施形態では、近位流出口108を有するカテーテル100は、近位流出口108を介して予め作られた懸濁剤111から懸濁剤の流動体の過剰量102を取り除き、それによって懸濁剤濃縮機構(近位流出口108)と遠位流出口107の間に濃縮された懸濁剤112の選択された残りの量を残す懸濁剤濃縮機構として構成される。そのようなものとして、近位流出口108を、粒子がそれを通るのを阻止し、懸濁剤の流動体がそれを通るのを可能にする懸濁剤フィルタとしてさらに構成してもよい。いくつかの実施形態では、予め作られた懸濁剤111内の粒子の濃度Cは約25%以下、任意選択的に約10%である(例えば懸濁剤貯蔵部110が10ccの予め作られた懸濁剤111で満たされ、8ccの懸濁剤の流動体で混合された2ccのビーズを含む)。いくつかの実施形態では、濃縮された懸濁剤112内の粒子の濃度Cは約25%より高く、任意選択的に約30%以上、任意選択的に約50%以上である。任意選択的に、過剰量は、懸濁剤の流動体の全容積の少なくとも約30%、任意選択的に少なくとも約50%、任意選択的に約80%である。いくつかの実施形態では、全ての粒子が近位流出口108の通過を阻止されるので、そこでの粒子の濃度Cはゼロであるが、いくつかの他の実施形態で、いくぶんかの粒子が近位流出口108を通り、いくつかのそのような他の実施形態で粒子濃度は約10%以下、任意選択的に約5%以下である。
【0078】
いくつかの実施形態では、近位流出口108を有するカテーテル100は、第1の推進力m・vを持つ、入ってくる(予め作られた)懸濁剤111から速度vの過剰な質量mを取り除き、それによって流れ抑制機構(近位流出口108)と遠位流出口107の間に、第1の推進力m・vより実質的に小さい選択された第2の推進力m・vを有する濃縮された懸濁剤112の残りの質量mを残す流れ抑制機構として構成される。
【0079】
いくつかの実施形態では、カテーテル100は、近位吸込口113内へ流れる予め作られた懸濁剤111の吸込流量の少なくとも半分の流出流量で、濃縮された懸濁剤112を送達するよう構成される。遠位流出口107を通して送達可能な残りの量に対する近位流出口108を通して送達可能な過剰量102の流量比は、少なくとも2、任意選択的に特に、少なくとも4、任意選択的に特に、少なくとも8である。
【0080】
例示の目的で、図1Bは、近位流出口108の通過前および後の送達可能な粒子量の推進力および濃度の違いを示すため、近位流出口108の近位および近接したカテーテル100の第1の切り取り部分、および近位流出口108の遠位および近接した第2の切り取り部分を示す。
【0081】
いくつかの実施形態では、カテーテル100は、過剰質量mと残りの質量mの間の質量比が少なくとも2、任意選択的に少なくとも4であるよう構成される。いくつかの実施形態では、カテーテル100は、第1の推進力m・vと第2の推進力m・vの間の推進力比が少なくとも3、任意選択的に特に少なくとも9、任意選択的に特に少なくとも20、任意選択的に特に少なくとも30であるように構成される。
【0082】
(近位吸込口113内に流れる予め作られた懸濁剤111の)吸込流量は、1~10cc/分の範囲内、任意選択的に約2cc/分、または任意選択的に約5cc/分であってもよい。近位流出口108を介する懸濁剤の流動体の過剰量102の流量は、任意選択的に少なくとも0.5cc/分、任意選択的に少なくとも1.5cc/分、または任意選択的に3cc/分である。遠位流出口107を介する濃縮された懸濁剤112の流量は、任意選択的に約1cc/分以下、または任意選択的に約0.5cc/分以下である。いくつかの実施形態では、濃縮された懸濁剤112は、遠位流出口107を介して、およそ50cm/秒以下、任意選択的に特におよそ20cm/秒以下、任意選択的に特におよそ5cm/秒以下である水平成分を有する送達速度で送達される。
【0083】
いくつかのシナリオで、近位流出口(例えば、側面開口部)を通って分散する懸濁剤の流動体の流量または/および速度が、遠位流出口の出口における懸濁剤(粒子と残りの懸濁剤の流動体)の流量または/および速度より実質的に大きいように、本発明のカテーテル(例えば特にカテーテルヘッド)内の懸濁剤の流れに影響する必要条件がある。いくつかのそのようなシナリオは、粒子が対象の血管内の取り囲む血流に浸り、出た後は周囲の血流量に近いまたは実質的に同一の流量を有するように、遠位流出口において低流量または/および低速度を有することから利点を得るかもしれない。いくつかのそのようなまたは他のシナリオで、(血液または/および粒子のバックフロー/逆流の場合のような)遠位流出口から近位流出口への一般的な方向に交差する粒子の流れに抵抗する試みにおいて、局所的障害(例えば渦または/および乱流)を起こすため、周囲の血流量に比較して高い流量または/および速度で近位流出口を通して懸濁剤の流動体を分散するのが有益でありうる。
【0084】
いくつかの実施形態では、流れ抑制機構がカテーテルヘッドの内腔内で使用され、近位流出口および遠位流出口の間の内腔区画内の懸濁剤の流れに抵抗するよう構成される。任意選択的に、代わりにまたは加えて、出口における流れを減少/止めて、従って近位流出口の流出速度を増加するため(任意選択的に、ベンチュリー効果による)、カテーテルヘッドおよび近接した遠位流出口内部の圧力を増加するよう、流れ抑制機構は使用および構成される。図2A図2Bは、(懸濁剤の流動体内に懸濁した粒子を含む)懸濁剤125の変更および送達前(図1A)および後(図1B)の、側面開口部123の形態の(またはそれを含む)近位流出口126(領域)を持つ(柔軟なチューブ122に接合されたカテーテルヘッド121により形成された)カテーテル120、および流れ抑制機構124の例示的な実施形態の概略垂直断面図である。カテーテル120は、任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100と類似または同一でさえあり、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。
【0085】
カテーテル先端部において設けられる遠位流出口128は、懸濁剤の流動体および粒子の両方がそれを通ることを可能にする形状または/およびサイズであり、一方で側面開口部123は、懸濁剤125を患者へ送達する間、懸濁剤の流動体が粒子なしでそれを通ることを可能にし、粒子がそれを通ることを阻止するよう構成される。いくつかの実施形態では、側面開口部123のうち少なくとも1つは約1、000ミクロン以下、任意選択的に特に約500ミクロン以下、任意選択的に特に約100ミクロン以下、任意選択的に特に約50ミクロン以下、任意選択的に特に約30ミクロン以下の最小断面(例えば、幅、間隙または直径)の大きさを有する。
【0086】
流れ抑制機構124は、遠位流出口128に近接し、近位流出口126の遠位に位置し、カテーテル120の長手方向の軸Xに沿って懸濁した粒子126の水平速度成分Vを減少させるように、懸濁剤125の流れを変更するよう構成される。流れ抑制機構124は、カテーテルヘッド内腔131の内側境界から始まり、それに交差して流れる懸濁剤125に抵抗するよう構成された、複数の長手方向に離間された、開かれまたは/および閉じられたリング構成要素130として設けられた、少なくとも1つの半径方向の内方向への突起を含む。それぞれのリング構成要素130は、注入中カテーテルヘッド内腔131内で生じた圧力P図1の圧力源109のような圧力源の作動によるもので、手動注入器またはポンプの形態であってもよい)でそれを遠位方向に通過するよう圧力をかけられた懸濁剤部分に抵抗する(を塞ぐ)ことによって、オリフィスとして機能する。複数のリング構成要素130は、内腔の圧力Pが実質的に周囲の(血管)圧力Pより大きい(P>P)ように、内腔の圧力Pと周囲(血管)の圧力Pの間の圧力差に寄与する。結果として、およびまた側面開口部123の全体開口断面と遠位流出口128の(全体の)開口断面の間の特定の比率により、側面開口部123を通って分散された懸濁剤の流動体量の速度Vは、遠位流出口128の出口における長手方向の軸Xに沿った懸濁した粒子126(と残りの懸濁剤の流動体)の水平速度成分Vより実質的に大きい。
【0087】
側面開口部を通って分散された懸濁剤の流動体の全量は、懸濁剤の流動体の「過剰量」127R(例えば図1の過剰量102)に等しく、遠位流出口128を介して通過する(送達される)粒子と残りの懸濁剤の流動体の量は、任意選択的に「濃縮された懸濁剤」125C(例えば図1の濃縮された懸濁剤112)である。いくつかの実施形態では、側面開口部123経由の懸濁剤の流動体の過剰量の流量は、任意選択的に少なくとも0.5cc/分、任意選択的に少なくとも1.5cc/分、または任意選択的に3cc/分である。
遠位流出口128経由の濃縮された懸濁剤125Cの流量は、任意選択的に約1cc/分以下、または任意選択的に約0.5cc/分以下である。いくつかの実施形態では、濃縮された懸濁剤125Cの送達水平速度Vは、およそ50cm/秒以下、任意選択的に特に、およそ20cm/秒以下、任意選択的に特に、およそ5cm/秒以下である。
【0088】
図3は、(柔軟なチューブ142に接合されたカテーテルヘッド141により形成された)側面開口部143の形態の(またはそれを含む)近位流出口146(領域)を持つカテーテル140、および流れ抑制機構144の例示的な実施形態の概略部分垂直面図である。カテーテル140は任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100と類似または同一でさえあり、任意選択的にカテーテル120に類似し、オリフィスの設計、または/および流れへの抵抗(係数)によってのみ区別され、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。
【0089】
カテーテル先端部において設けられる遠位流出口148は、予め作られた懸濁剤内の懸濁剤の流動体および粒子の両方がそれを通ることを可能にする形状または/およびサイズであり、一方で側面開口部143は、患者へ送達する間、懸濁剤の流動体がそれを通ることを可能にし、粒子がそれを通ることを阻止するよう構成される。いくつかの実施形態では、側面開口部143のうち少なくとも1つは約1、000ミクロン以下、任意選択的に特に約500ミクロン以下、任意選択的に特に約100ミクロン以下、任意選択的に特に約50ミクロン以下、任意選択的に特に約30ミクロン以下の最小断面(例えば、幅、間隙または直径)の大きさを有する。
【0090】
流れ抑制機構144は、遠位流出口148に近接し、近位流出口146の遠位に位置し、カテーテル140の長手方向の軸に沿って懸濁した粒子の水平速度成分を減少させるように、懸濁剤の流れを変更するよう構成される。流れ抑制機構144は、カテーテルヘッド内腔151の内側境界から始まり、実質的に半径方向に内方向へ突出し、それから近位流出口146の方へ実質的に近位方向に曲げられた、複数の長手方向に離間された凹形のオリフィス150として設けられた、少なくとも1つの半径方向の内方向への突起を含む。それぞれの凹形のオリフィス150は、注入中にカテーテルヘッド内腔151内で生じた圧力でそれを遠位方向に通過するよう圧力をかけられた懸濁剤の部分へ抵抗する(塞ぐ)ため、それに交差して流れる懸濁剤に抵抗するよう構成される。複数の凹形のオリフィス150は、内腔の圧力と周囲(血管)の圧力の間の正圧差に寄与する。結果として、およびまた側面開口部143の全体開口断面と遠位流出口148の(全体の)開口断面の間の特定の比率により、側面開口部143を通って分散された懸濁剤の流動体量の速度は、遠位流出口148の出口における長手方向の軸に沿った懸濁した粒子(と残りの懸濁剤の流動体)の水平速度成分より実質的に大きい。
【0091】
図4は、(柔軟なチューブ162に接合されたカテーテルヘッド161により形成された)側面開口部163の形態の(またはそれを含む)近位流出口166(領域)を持つカテーテル160、および流れ抑制機構164の例示的な実施形態の概略垂直断面図である。カテーテル160は任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100と類似または同一でさえあり、任意選択的にカテーテル120に類似し、オリフィスの設計、または/および流れへの抵抗(係数)によってのみ区別され、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。
【0092】
カテーテル先端部において設けられる遠位流出口168は、予め作られた懸濁剤内の懸濁剤の流動体および粒子の両方がそれを通ることを可能にする形状または/およびサイズであり、一方で側面開口部163は、患者へ送達する間、懸濁剤の流動体がそれを通ることを可能にし、粒子がそれを通ることを阻止するよう構成される。いくつかの実施形態では、側面開口部163のうち少なくとも1つは約1、000ミクロン以下、任意選択的に特に約500ミクロン以下、任意選択的に特に約100ミクロン以下、任意選択的に特に約50ミクロン以下、任意選択的に特に約30ミクロン以下の最小断面(例えば、幅、間隙または直径)の大きさを有する。
【0093】
流れ抑制機構164は、遠位流出口168に近接し、近位流出口166の遠位に位置し、カテーテル160の長手方向の軸に沿って懸濁した粒子の水平速度成分を減少させるように、懸濁剤の流れを変更するよう構成される。流れ抑制機構164は、カテーテルヘッド内腔171内で近位流出口166への近位から遠位流出口168に近接したところまで軸方向に伸びる螺旋部170を含む。螺旋部170は、遠位流出口168から出るとき懸濁した粒子の横方向速度成分を増加し、懸濁した粒子の縦方向速度成分を減少するような形状および大きさである。
【0094】
図5A図5Bは、流れの衰えの発生前(図5A)および後(図5B)の、投与剤31(ビーズまたは粒子の形状で)を有する懸濁剤の送達中の、カテーテル30の例示的な実施形態の概略垂直断面図である。カテーテル30は任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100と類似または同一でさえあり、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。
【0095】
カテーテル30は、任意選択的に投与剤31を小血管内で対象の身体の部分32の方へ送達するようなサイズであり、および構成される。カテーテル30は、外径を有し両方の端部で開かれたチューブ状壁34に囲まれた単一の内腔33を有する。いくつかの実施形態では、チューブ状壁34は、腹腔または肝臓の動脈のような小血管内への挿入を妨げられない大きさである。いくつかの実施形態では、カテーテル30の外径は、約2mm以下、または約1mm以下である。いくつかの実施形態では、カテーテル30は、2.1フレンチカテーテル、または2.7フレンチカテーテル、または2.9フレンチカテーテルのような市販されているマイクロカテーテルの直径に等しい外径を有する。
【0096】
チューブ状壁34の近位部分は、圧力源、および投与剤(例えば、塞栓物質または/およびコントラスト強調物質)31の投与懸濁剤を包含するよう構成された貯蔵部に接合可能である。投与剤31は、液体塞栓剤(例えばCovidienのOnyx(登録商標)、n-ブチル-2-シアノアクリレート、またはヨード化ケシ油エチルエステル)、硬化薬(例えば、エタノール、エタノールアミンオレイン酸、またはテトラデシル硫酸ナトリウム)、または微粒子塞栓剤(例えば、止血吸収ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリルゼラチンマイクロスフィア、またはガラス)のうち少なくとも1つを含んでもよい。例示的な実施形態で、投与剤31は、約25ミクロン(μm)から約1、500ミクロン(μm)の間の範囲の平均サイズ(長さまたは直径)を有する微粒子の形態(例えば非球形の粒子、またはマイクロスフィア)である。例示的な実施形態で、投与剤31は約10%から約40%の間の範囲の圧縮性を有する。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)タイプの投与剤は、約20%から約30%の間の範囲の圧縮性を有する。
【0097】
チューブ状壁の遠位部分は先端部35で終わり、遠位流出口36を取り囲む。チューブ状壁34の遠位部分は、投与剤31の貯蔵部から先端部35へ、および遠位流出口36を通って外への連続した送達の間、チューブ状壁34周辺の投与剤の入ってくる(通常の遠位方向に)逆行の流れの通過を妨げる流れ途絶区画として構成された近位流出口37を有する。図2Bに示されるように、それを通る投与(懸濁剤)流動体を分散することにより、例えば近位流出口37は投与剤31の入ってくる逆行の流れ38を減少または阻止し、それによってその周辺の局所的な圧力を増し、または/および局所的な乱流または渦を作るよう構成される。いくつかの実施形態では、乱流または渦は、例えばマイクロカテーテルから注入され、またはそうでなければ放出された投与流動体により生成され、投与剤31が部分的にまたは全体的に投与流動体から濾過される。
【0098】
近位流出口37は、その周辺または/およびそれに沿って分散された複数の開口部39を有し、それぞれの開口部は(粘性流動体のような)投与流動体40を通過させ、投与剤31がそれを通るのを阻止する形状または/およびサイズである。例示的な実施形態で、投与流動体40は、例えば生理食塩水などで特定の程度に希釈されたコントラスト強調物質(剤)を含む。一部のケースで医師は、(コントラスト強調物質またはコントラスト強調剤のような)粘性のコントラスト強調物質を、(例えば生理食塩水および塞栓ビーズを含む)塞栓物質と、例えば50:50の容積比で混合してもよく、それによって選択された度合に希釈された塞栓ビーズおよびコントラスト強調物質またはコントラスト強調剤の投与懸濁剤を生産する。例示的な実施形態で、投与懸濁剤は、薬剤溶出ビーズ(DEB)、化学療法物質(例えば、ドキソルビシン)およびコントラスト強調物質を含む。例示的な実施形態で、コントラスト強調物質(剤)は、あらゆるタイプまたは種類の造影剤、例えば多数の他の適切なタイプおよび種類の造影剤の中で、ビジパーク(登録商標)(イオジキサノール)、またはオムニパーク(登録商標)(イオヘキソール)であってもよく、または含んでもよい。
【0099】
1つまたは複数の開口部39は、投与剤、例えば、塞栓物質の最小の直径(例えばビーズの直径)未満の断面の大きさを持つ細孔を有する。そのような断面の大きさは、例えば約500ミクロン(μm)未満、または約100ミクロン(μm)以下、または約40ミクロン(μm)以下である。例示的な実施形態で、断面の大きさは、約20ミクロン(μm)から約30ミクロン(μm)の間の範囲、例えば、約28ミクロン(μm)である。例えば、示されるように、それぞれの細孔は、内腔33の長軸に対して、または/およびそれに近接した断面におけるその半径方向の軸に対して角度が付いた(角度は約0度から約90度の間の例示的な範囲である)通路の端部に位置する。例示的な実施形態で、第1の細孔の近接領域の投与懸濁剤の第1の流れが、第2の細孔の近接領域の投与懸濁剤の第2の流れと少なくとも部分的に交わるように、少なくとも2つの細孔が異なる方向に角度的に位置付けられる。開口部39または細孔は、例えば円形または長方形の断面といったあらゆる可能な形状、またはバーストスリット(すなわち選択された圧力または力でのみ開かれる)、または常に開かれたスリットであってもよい。そのような例示的な実施形態で、開口部39または細孔は、投与剤((例えばビーズの形態の)塞栓物質)の最小の直径未満の最小断面の大きさを持つ。
【0100】
いくつかの実施形態では、内腔33は、投与流動体40および例えばビーズの形態の投与剤31の懸濁剤を送達するよう構成される。いくつかの実施形態では、遠位流出口36は、投与流動体40および投与剤(ビーズ)31の投与懸濁剤にそれを通過させる形状または/およびサイズであり、少なくとも1つの側面開口部39は、投与流動体40にそれを通過させ、投与剤(ビーズ)31がそれを通るのを阻止する、例えばそれぞれの開口部の細孔の断面の大きさが投与剤(ビーズ)の最小の直径未満である形状または/およびサイズである。
【0101】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの側面開口部39は、投与懸濁剤が遠位流出口36を通って流れる間、投与流動体40にそれを通過させ、投与剤(ビーズ)31がそれを通るのを阻止する形状または/およびサイズである。いくつかの他の実施形態で、少なくとも1つの側面開口部39は、投与懸濁剤が遠位流出口36を通って流れるのを阻止または中断された状態の間、投与流動体40にそれを通過させ、投与剤(ビーズ)31がそれを通るのを阻止する形状または/およびサイズである。
【0102】
いくつかの実施形態では、全ての開口部39の全体開口断面は、内腔33および遠位流出口36の最小断面以上である。
【0103】
いくつかの実施形態では、正常体温での投与流動体40は、少なくとも約0.8mPa・s、または少なくとも約5mPa・s、または少なくとも約10mPa・s、または少なくとも約20mPa・sの平均粘度(ミリパスカル秒の語を[mP・s]で表す)を有する。例示的な実施形態で、投与流動体40は、内腔33内のチューブ状壁34の遠位部分に到達する前に約37°Cより高い温度に予め加熱される。例示的な実施形態で、投与流動体40は、例えばまた投与流動体40と共に予め加熱され、または別に予め加熱された他の投与可能な液体(例えばブドウ糖水)を含み、または混合される。
【0104】
いくつかの実施形態では、最も遠位の側面開口部39は、遠位流出口36の近位に約0mmから約20mmの範囲内、または約0mmから約10mmの範囲内、または約0mmから約5mmの範囲内に位置する。
【0105】
図6は、スリットの形状の側面開口部56を持つ近位流出口55を含むカテーテル50の例示的な実施形態の概略垂直面図である。カテーテル50は任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100と類似または同一でさえあり、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。カテーテル50は、例えば(例えば粒子またはビーズの形状の)塞栓物質を含む投与剤を小血管内で対象の身体の部分の方へ送達するようなサイズであり、および構成される。カテーテル50は、先端部53で終わる遠位部分を持ち、遠位流出口54を囲むチューブ状壁52を有する。チューブ状壁52の遠位部分は、例えば遠位流出口54を通した投与剤の連続した送達の間、投与剤の入ってくる逆行の流れの通過を妨げるよう構成された流れ途絶区画55を有する。それを通る投与(懸濁剤)流動体を分散することにより、近位流出口55は、投与剤の入ってくる逆行の流れを阻止し、または/およびその中に乱流を起こし、それによってその周辺の局所的な圧力を増すよう構成される。
【0106】
開口部56は任意選択的にその周囲に分散され、または/およびそれに沿い、それぞれの開口部は、投与剤の最小の直径未満の断面(例えば、幅)の大きさを持つ間隙を有するスリットを含む。例示的な実施形態で、この間隙の他の断面(例えば、長さ)の大きさは、実質的に投与剤の最小の直径より大きい。いくつかの実施形態では、それぞれの開口部は、投与流動体にそれを通過させ、投与剤がそれを通るのを阻止する形状または/およびサイズである。
【0107】
いくつかの実施形態では、近位流出口55を取り囲む壁の部分は、チューブ状壁52の遠位部分の他の区画の素材より硬い素材を含む。例示的な実施形態で、それは金属素材、硬質のポリマー素材、またはそれらの組み合わせで作られる。例示的な実施形態で、それは親水性コーティングのように放射線不透過物質で被覆される。例示的な実施形態で、それは例えば金属コイルで構造化され、固体構造で含浸され、または/および固体構造の層に取り付けられる。
【0108】
図7A図7Bは、近位流出口上方のバルブ機構62を有する、(例示的なカテーテル60内の)投与剤流れ途絶区画61の部分の例示的な実施形態の機構の作動前(図7A)および後(図7B)の概略垂直断面図である。カテーテル60は任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100と類似または同一でさえあり、投与剤(例えば、塞栓物質または/およびコントラスト強調物質)63を(例えば粒子の形態で)血管内で対象の身体の部分32の方へ送達するようなサイズであり、および構成される塞栓用マイクロカテーテルの形態である。カテーテル60は、外径を有し両方の端部で開かれた、チューブ状壁65に囲まれた単一の内腔64を有する。いくつかの実施形態では、チューブ状壁65は、腹腔または肝臓の動脈のような小血管内への挿入を妨げられない大きさである。いくつかの実施形態では、カテーテル60の外径は、約4mm以下、または約2mm以下である。いくつかの実施形態では、カテーテル60は、2.1フレンチカテーテル、または2.7フレンチカテーテル、または2.9フレンチカテーテルのような市販されているマイクロカテーテルの直径に等しい外径を有する。
【0109】
投与剤63は、液体の塞栓剤(例えばCovidienのOnyx(登録商標)、n-ブチル-2-シアノアクリレート、またはヨード化ケシ油エチルエステル)、硬化薬(例えば、エタノール、エタノールアミンオレイン酸、またはテトラデシル硫酸ナトリウム)、または微粒子塞栓剤(例えば、止血吸収ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリルゼラチンマイクロスフィア、またはガラス)のうち少なくとも1つを含んでもよい。例示的な実施形態で、投与剤63は、約25ミクロン(μm)から約1、500ミクロン(μ)の間の範囲の平均サイズ(長さまたは直径)を有する微粒子の形態(例えば非球形の粒子、またはマイクロスフィア)である。例示的な実施形態で、投与剤63は約10%から約40%の間の範囲の圧縮性を有する。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)タイプの投与剤は、約20%から約30%の間の範囲の圧縮性を有する。
【0110】
投与剤流れ途絶区画61は、マイクロカテーテル60の遠位流出口を通した投与剤63の連続した送達の間、それに近接するチューブ状壁65の遠位端部の外側周辺の投与剤の入ってくる逆行の流れ69の通過を妨げるよう構成される。流れ途絶区画61は、投与剤の入ってくる逆行の流れ69を減少または阻止し、または/およびその中に局所的な乱流または渦を起こし、任意選択的にその周辺の局所的な圧力を増すよう構成される。
【0111】
流れ途絶区画61内の近位流出口は、その周辺または/およびそれに沿って分散された複数の側面開口部66を有し、それぞれの開口部は投与流動体67の通過を可能にし、投与剤63がそれを通るのを阻止する形状または/およびサイズである。
【0112】
例示的な実施形態で、投与(懸濁剤)流動体67は、例えば生理食塩水などで特定の程度に希釈されたコントラスト強調剤を含む。一部のケースで医師は、(コントラスト強調物質またはコントラスト強調剤のような)粘性のコントラスト強調物質を、投与剤、例えば生理食塩水および塞栓ビーズを含む塞栓物質と例えば50:50の容積比で混合してもよく、それによって選択された度合に希釈された塞栓ビーズおよびコントラスト強調物質の粘性の流動体の投与懸濁剤を生産する。例示的な実施形態で、コントラスト強調物質(剤)は、あらゆるタイプまたは種類の造影剤、例えば多数の他の適切なタイプおよび種類の造影剤の中で、ビジパーク(登録商標)(イオジキサノール)、またはオムニパーク(登録商標)(イオヘキソール)であってもよく、または含んでもよい。
【0113】
1つまたは複数の開口部66は、投与剤、例えば、投与剤塞栓物質の最小の直径(例えばビーズの直径)未満の断面の大きさを持つ細孔を有する。そのような断面の大きさは、例えば約500ミクロン(μm)未満、または約100ミクロン(μm)以下、または約40ミクロン(μm)以下である。例示的な実施形態で、断面の大きさは、約20ミクロン(μm)から約30ミクロン(μm)の間の範囲、例えば、約28ミクロン(μm)である。例えば、示されるように、それぞれの細孔は、内腔64の長軸に対して、または/およびそれに近接した断面におけるその半径方向軸に対して角度が付いた通路の端部に位置する。例示的な実施形態で、第1の細孔の近接領域の投与懸濁剤の第1の流れが、第2の細孔の近接領域の投与懸濁剤の第2の流れと少なくとも部分的に交わるように、少なくとも2つの細孔が異なる方向に角度的に位置付けられる。
【0114】
いくつかの実施形態では、内腔64は、例えばビーズの形態の投与流動体67および(例えば粒子/ビーズの形態の)投与剤63の懸濁剤を送達するよう構成される。いくつかの実施形態では、カテーテル60の遠位流出口は、投与流動体67およびビーズ63の懸濁剤がそれを通るのを可能にする形状または/およびサイズであり、側面開口部66のそれぞれは、例えば細孔のそれぞれの開口部の少なくとも1つの断面の大きさ(例えば、長さ、幅、直径)がビーズの最小の直径未満である場合、投与流動体67がそれを通るのを可能にし、大部分または全てのビーズ63がそれを通るのを阻止する形状または/およびサイズである。
【0115】
いくつかの実施形態では、それぞれの側面開口部66は、投与懸濁剤が遠位流出口を通って流れる間、投与流動体67がそれを通るのを可能にし、ビーズ63がそれを通るのを阻止する形状または/およびサイズである。いくつかの他の実施形態で、それぞれの側面開口部66は、投与懸濁剤が遠位流出口を通って流れるのを阻止または中断された状態の間、投与流動体67がそれを通るのを可能にし、ビーズ63がそれを通るのを阻止する形状または/およびサイズである。
【0116】
いくつかの実施形態では、全ての側面開口部66の全開口断面は、内腔64および遠位流出口の最小断面以上である。
【0117】
いくつかの実施形態では、正常体温での投与流動体67は、少なくとも約0.8mPa・s、または少なくとも約5mPa・s、または少なくとも約10mPa・s、または少なくとも約20mPa・sの平均粘度を有する。例示的な実施形態で、投与流動体67は、例えば内腔64内のチューブ状壁65の遠位部分に到達する前に約37°Cより高い温度に予め加熱される。
【0118】
いくつかの実施形態では、最も遠位の側面開口部66は、遠位流出口の近位に約0mmから約20mmの範囲内、または約0mmから約10mmの範囲内、または約0mmから約5mmの範囲内に位置する。
【0119】
バルブ機構62が、チューブ状壁65の遠位部分の内部の圧力が予め定められた圧力未満であるとき、側面開口部66を覆い、チューブ状壁65の遠位部分の内部の圧力が予め定められた圧力より大きいとき、側面開口部66の覆いを外すよう構成される。内部の圧力を、(例えば図2Aおよび図2Bに示されるように)オリフィスまたは遠位流出口における狭小化を用いて増大してもよい。いくつかの実施形態では、バルブ機構62は、複数の側面開口部66を覆うよう、および流動体がそれを通るのを阻止するよう構成され、およびチューブ状壁65区画が近位を流れる流動体に浸されるとき、例えば逆行の流れが起こるときそれが小血管内でもたらされるときに、複数の側面開口部66の覆いを外すよう構成されたカバー68を有する。チューブ状壁区画65は、複数の側面開口部66とカバー68の間に空間を有してもよく、それはビーズ63がない予め定められた最大量の投与流動体67を蓄積する大きさである。そのような予め定められた最大量は、約0mlから約1mlの範囲内であってもよい。例示的な実施形態で、予め定められた最大量は、少なくとも約1ml、または少なくとも約5ml、または少なくとも約10mlである。
【0120】
カバー68を、金属、例えば超弾性金属合金(例えば、ニチノールまたはステンレス鋼)で、またはポリマー(例えば、PTFE、ePTFE、ポリエステル、FEP、ウレタン、ペバックスまたはペレタン(Pellethane))で、例えば硬質または半硬質で製造してもよい。いくつかの実施形態では、カバー68は、カバー68が閉鎖位置にあるときマイクロカテーテル全体の直径を約0.5mmから約1mmの間、例えば、約0.8mm増加してもよい。いくつかの実施形態では、カバー68は、カバー68が開かれた位置にあるときマイクロカテーテル全体の直径を約1mmから約10mmの間、例えば約5mm増加してもよい。例示的な実施形態で、カバー68は、約1mmから約5mmの範囲の長さを有する。例示的な実施形態で、カバー68は、約20ミクロンから約500ミクロンの範囲の厚さを有する。例示的な実施形態で、カバー68は、レーザカットヒンジ、接着、溶融、および外側層の熱収縮のうちの少なくとも1つにより装着される。
【0121】
図8を参照すると、これはカテーテル70の例示的な実施形態の概略垂直断面図である。カテーテル70は任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100と類似または同一でさえあり、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。カテーテル70は、先端部73の近位端部72に接合された柔軟なチューブ71を有する。先端部73は硬質のチューブ状壁74を有し、チューブ状壁74に沿って伸びる先端部内腔76へ開かれた遠位流出口75を囲む。カテーテル70は、チューブ状壁74の区画周辺およびそれに沿って分散された複数の側面開口部77として近位流出口を有する。
【0122】
柔軟なチューブ71は、柔軟なチューブ71に沿って設けられ、よってカテーテル内腔80を形成する内腔79とともに先端部内腔76が一体化するように、先端部73の近位端部72に接合される。カテーテル内腔80は、懸濁剤の流動体および微粒子塞栓物質の懸濁剤を送達するよう構成され、遠位流出口75は、懸濁剤の流動体および粒子がそれを通ることを可能にする形状または/およびサイズであり、それぞれの側面開口部77は、懸濁剤の流動体がそれを通ることを可能にし、粒子がそれを通るのを阻止する形状または/およびサイズである。いくつかの実施形態では、複数の側面開口部77の全開口断面は、マイクロカテーテル内腔80および遠位流出口75の最小断面以上である。
【0123】
少なくとも1つの側面開口部77は、ビーズの最小の直径未満の断面の大きさを持つ間隙があるスリットを有してもよい。任意選択的に、加えてまたは代わりに、および示されるように、少なくとも1つの側面開口部77は、ビーズの最小の直径未満の断面の大きさを持つ細孔を有する。任意選択的に、それぞれの細孔は、先端部内腔76の長軸に対して、または/およびそれに近接した断面におけるその半径方向の軸に対して、角度が付いた通路の端部に位置する。
【0124】
側面開口部の最小断面の大きさは、100ミクロン以下であってもよい。いくつかの実施形態では、側面開口部77は、レーザカット、レーザ穿孔、エッチング、EDM、またはそれらの組み合わせの手順を用いて、またはそれらを含んで構成される。チューブ状壁74を、金属素材、硬質のポリマー素材、またはそれらの組み合わせで作ってもよく、チューブ71を柔軟なポリマー素材で作ってもよい。
【0125】
図9は、メッシュの側面開口部202を包含する近位流出口201を有するカテーテルの部分200の例示的な実施形態の概略等角図である。カテーテルの部分200は、任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100または/およびカテーテル120と類似または同一でさえあるカテーテルの部分であり、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。この例示的な構成で、カテーテルの部分200は、チューブ状壁203、任意選択的にポリマー素材で作られ、繊維素材、任意選択的に製織または非製織で、任意選択的に織り込み繊維で作られたスリーブを覆いまたは組み込み、それによってメッシュ開口部を持つメッシュパターン204を生成する。これらのメッシュ開口部は、懸濁剤の流動体がそれを通るのを可能にするが、任意選択的に直径30ミクロン以上の粒子がそれを通るのを阻止する大きさである。チューブ状壁203内に作られたそれぞれの側面開口部202は、スリーブメッシュパターン領域を現す。
【0126】
図10は、懸濁剤の流動体内の粒子の懸濁剤を血管内で対象の箇所へ送達する、オリフィスの形態の遠位流出口211を含むカテーテルヘッド部分210の例示的な実施形態の概略等角図である。カテーテルヘッド部分210はまた、懸濁剤の流動体がそれを通るのを可能にするが、任意選択的に直径30ミクロン以上の粒子がそれを通るのを阻止するサイズのスリットの形態の近位流出口212を有する。遠位流出口211と近位流出口212の間の中間区画で、複数の大きな開口部213がカテーテルヘッド部分210の円周周辺に分散され、大きな開口部213のそれぞれは、粒子および懸濁剤の流動体の両方がカテーテル長手方向の軸に対して横方向にそれを通る大きさであり、それによって遠位流出口211を通して送達可能な粒子の長手方向の速度成分の減少を容易にする。カテーテルヘッド部分210は、任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100または/およびカテーテル120と類似または同一でさえあるカテーテルの部分であり、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。
【0127】
図11は、チューブ状壁部分221を含み、メッシュパターン222を形成し、収斂-拡散区分223を包含するカテーテルヘッド部分220の例示的な実施形態の概略垂直面図である。メッシュパターン222は、懸濁剤の流動体がそれを通るのを可能にするが、任意選択的に直径30ミクロン以上の粒子がそれを通るのを阻止するサイズのメッシュ開口部を有する。収斂-拡散区分223は、遠位流出口224において開かれ、懸濁剤の流動体がそれを通って流れるのを抑制し、それによって遠位流出口214を通して送達可能な粒子の長手方向の速度成分の減少を容易にするような形状であり、および構成される。カテーテルヘッド部分220は、任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100または/およびカテーテル120と類似または同一でさえあるカテーテルの部分であり、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。
【0128】
図12A図12Cを参照すると、これらはカテーテルヘッド301の等角図(図12A)、カテーテルヘッド301の断面等角図(図12B)、およびカテーテルヘッド301の垂直断面図(図12C)を示す。カテーテルヘッド301は任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100または/およびカテーテル120と類似または同一でさえあるカテーテルの部分であり、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。
【0129】
カテーテルヘッド301は、近位ヘッド端部303および遠位ヘッド端部304を含むチューブ状ヘッド壁302を有する。チューブ状ヘッド壁302は、ヘッド壁302に沿って伸び、遠位ヘッド端部304において遠位流出口306へ開かれ、遠位流出口306の近位で近位流出口307にも開かれたヘッド内腔305を囲む。カテーテルヘッド301は、(カテーテル100のような)カテーテル内へ一体化するため、接合延長部308を用いて近位ヘッド端部303で柔軟なチューブと接合可能である。接合は、任意選択的に、柔軟なチューブの遠位部分を溶融し、接合延長部308の上方の再硬化を可能にすることにより、または/および粘着剤を用いてなされる。
【0130】
遠位流出口306は、懸濁剤の流動体および粒子がそれを通るのを可能にする形状または/およびサイズであり、近位流出口307は、懸濁剤の流動体がそれを通るのを可能にし、粒子がそれを通るのを阻止するよう構成される。近位流出口307は、カテーテルの長手方向の軸Xに実質的に平行にその長さで伸びる複数の長手方向のスリット309を有し、スリット309は、カテーテルヘッド301の区画周辺のおよびそれに沿った互い違いの列として分散される。それぞれのスリットは、(例えば直径40ミクロン以上の)前述の粒子の最小の直径より小さい幅を有し、それによって粒子の阻止を容易にする間隙を有する。
【0131】
カテーテルヘッド301は、遠位流出口306に近接した螺旋部311を含む流れ抑制機構310(この例でヘッド内腔305内に接合された挿入部として設けられる)を有する。流れ抑制機構310は、カテーテル300の長手方向の軸Xに沿って粒子の水平速度成分を減少させるように、懸濁剤の流れを変更するよう構成される。螺旋部311は、懸濁剤の流れがそれを交差して移動するとき、粒子の横方向速度成分を増加し、粒子の縦方向速度成分を減少する形状および大きさである。
【0132】
いくつかの実施形態では、外径チューブ状ヘッド壁302は約4mm以下、任意選択的に約1mm以下であり、または/および腹腔または肝臓の動脈から始まる小血管内へ挿入するよう構成される。
【0133】
いくつかの実施形態では、ヘッド壁302は金属素材で作られる。いくつかのそのような実施形態で、スリット309は、レーザカット、レーザ穿孔、エッチング、EDMのうちの1つ、またはそれらのあらゆる組み合わせにより形成される。いくつかの他の実施形態で、ヘッド壁302はポリマー素材で作られ、いくつかのそのような実施形態で、スリット309はフェムトレーザおよびスカイビングのうち1つにより形成される。
【0134】
カテーテル壁301は、チューブ状壁302の遠位ヘッド端部304に接合され、遠位流出口306を延長する非外傷性端部312を有する。非外傷性端部312は、任意選択的に柔軟なポリマーで作られ、周囲の組織の傷害を減少または防ぐよう意図されている。
【0135】
図13A図13Bは、カテーテル320の遠位部分の例示的な実施形態の全体等角図および垂直断面図をそれぞれ示し、カテーテル320は任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100または/およびカテーテル120と類似または同一でさえあり、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。
【0136】
カテーテル320は、遠位壁端部324において遠位流出口323へ開かれ、遠位流出口323の近位に位置する近位流出口325へ開かれた内腔322を含むチューブ状壁321を有する。カテーテルは、懸濁剤を、内腔322を介して遠位流出口323へ送達するよう構成され、従って遠位流出口323は、懸濁剤の流動体および粒子がそれを通るのを可能にする形状または/およびサイズである。
【0137】
チューブ状壁321の外径は、任意選択的に約4mm以下である。カテーテルは、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルとして構成される。いくつかの実施形態では、チューブ状壁321の外径は任意選択的に約1mm以下であり、または/および腹腔または肝臓の動脈から始まるような小血管内へ挿入するよう構成される。いくつかの実施形態では、カテーテル320は、2.1フレンチ(0.7mm)カテーテル、または2.7(0.9mm)フレンチカテーテル、または2.9フレンチ(0.97mm)カテーテルのような市販されているマイクロカテーテルの直径に等しい外径を有する。
【0138】
いくつかの実施形態では、近位流出口325は、懸濁剤の流動体の通過を可能にし、粒子がそれを通るのを阻止するよう構成される。近位流出口325は、カテーテルの長手方向の軸に実質的に平行にその長さで伸びる複数の長手方向のスリット326を有し、スリット326は、カテーテル320の遠位部分の区画周辺およびそれに沿って均等に離間される。それぞれのスリットは、(例えば直径40ミクロン以上の)前述の粒子の最小の直径より小さい幅を有し、それによって粒子の阻止を容易にする間隙を有する。
【0139】
チューブ状壁321は、遠位壁端部324に接合され遠位流出口323を延長する非外傷性先端部327を有する。非外傷性先端部327は遠位方向に収斂するチューブ状の形状を持ち、任意選択的に、カテーテル320の長手方向の軸に沿って粒子の水平速度成分を減少させるように、懸濁剤の流れを変更する流れ抑制機構として構成される。非外傷性先端部327は、任意選択的に柔軟なポリマーで作られ、周囲の組織の傷害を減少または防ぐよう意図されている。
【0140】
図14A図14Bは、カテーテルヘッド330の例示的な実施形態の全体等角図および垂直断面図をそれぞれ示し、カテーテルヘッド330は、任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100または/およびカテーテル120と類似または同一でさえあるカテーテルの部分であり、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。
【0141】
カテーテルヘッド330は、近位ヘッド端部332および遠位ヘッド端部333を含むチューブ状ヘッド壁331を有する。チューブ状ヘッド壁331は、ヘッド壁331に沿って伸び、遠位ヘッド端部333において遠位流出口335へ開かれ、遠位流出口335の近位で近位流出口336へも開かれたヘッド内腔334を囲む。カテーテルヘッド330は、(カテーテル100のような)カテーテル内へ一体化するため、接合空洞部337を用いて近位ヘッド端部332で柔軟なチューブと接合可能である。接合は、任意選択的に、柔軟なチューブの遠位部分を溶融し、接合空洞部337の上方の再硬化を可能にすることにより、または/および粘着剤を用いてなされる。
【0142】
遠位流出口335は、懸濁剤の流動体および粒子がそれを通るのを可能にする形状または/およびサイズであり、近位流出口336は、懸濁剤の流動体がそれを通るのを可能にし、粒子がそれを通るのを阻止するよう構成される。近位流出口336は、カテーテルの長手方向の軸Xに実質的に垂直方向にその長さで伸びる円周方向のスリット338の複数の互い違いの線を有する。それぞれのスリットは、(例えば直径40ミクロン以上の)前述の粒子の最小の直径より小さい幅を有し、それによって粒子の阻止を容易にする間隙を有する。
【0143】
いくつかの実施形態では、外径チューブ状ヘッド壁331は約4mm以下、任意選択的に約1mm以下であり、または/および腹腔または肝臓の動脈から始まる小血管内へ挿入するよう構成される。
【0144】
いくつかの実施形態では、ヘッド壁331は金属素材で作られる。いくつかのそのような実施形態で、スリット338はレーザカット、レーザ穿孔、エッチング、EDMのうちの1つ、またはそれらのあらゆる組み合わせにより形成される。いくつかの他の実施形態で、ヘッド壁331はポリマー素材で作られ、いくつかのそのような実施形態で、スリット338はフェムトレーザおよびスカイビングのうち1つにより形成される。
【0145】
カテーテルヘッド330は、近位流出口336に交差する(全てのスリット338に交差する)長手方向の軸Xに実質的に平行に伸び、それによって近位流出口336の周囲のカテーテルの伸長に抵抗または/および妨げるカテーテル長限定ロッド状構成要素339を有する。
【0146】
カテーテルヘッド330は、半径方向の内方向への突起341として構成された流れ抑制機構340を有する。この例で、半径方向の突起341は、ヘッド内腔334の内側境界に一致して湾曲した閉じたリングの形態のロッド状構成要素339の延長である(この例でヘッド内腔334内に接合された挿入部として設けられる)。流れ抑制機構340は、運動エネルギーをなくし、それによってカテーテルヘッド330の長手方向の軸Xに沿って粒子の水平速度成分を減少させるよう構成される。
【0147】
図15は、遠位壁端部352および近位壁端部353を持つチューブ状ヘッド壁351を含むカテーテルヘッド構成要素350の例示的な実施形態の等角図である。遠位壁端部352および近位壁端部353のそれぞれは、(カテーテル100のような)カテーテルを形成する他の構成要素に接合可能ないくつかの螺旋状延長部354を有する。遠位壁端部352は、(図13の非外傷性先端部327のような)非外傷性先端部に接合可能であり、近位壁端部353は(図8の柔軟なチューブ71のような)柔軟なチューブに接合可能である。ヘッド壁351はその長さの大部分に沿って近位ポート355を有し、近位ポート355は連続したチューブ状の区分に分割され、2つの近接した区分のそれぞれは異なるパターンのスリットを有し、円周方向のスリット357を持つ第1の区分356、および長手方向のスリット359を持つ第2の区分358を含む。
【0148】
図16A図16Bは、カテーテルヘッド360の例示的な実施形態の全体等角図および垂直断面図をそれぞれ示し、カテーテルヘッド360は、任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100と類似または同一でさえあり、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。任意選択的に、カテーテルヘッド360は図12のカテーテルヘッド301の変形であり、それが非外傷性先端部362内に埋め込まれる/一体である螺旋部361を有することのみで区別される。カテーテルヘッド301の近位流出口307と同様に、カテーテルヘッド360は、カテーテルの長手方向の軸に実質的に平行にその長さで伸びる複数の長手方向のスリット363を有し、スリット363は、カテーテルヘッド301の区画周辺のおよびそれに沿った互い違いの列として分散される。それぞれのスリット363は、(例えば直径40ミクロン以上の)前述の粒子の最小の直径より小さい幅を有し、それによって粒子の阻止を容易にする間隙を有する。
【0149】
図17A図17Bは、カテーテル370の末端部分の例示的な実施形態の全体等角図および断面等角図をそれぞれ示し、カテーテル370は、任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100または/およびカテーテル120と類似または同一でさえあり、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。任意選択的に、カテーテルヘッド370は図14のカテーテルヘッド330の変形であり、チューブ状壁371が金属/スプリングコイル373で補強された高分子チューブ372で作られ、任意選択的に柔軟なチューブに接合可能なカテーテルヘッドではなく完全なカテーテルとしての製造に適用可能であることで、それと区別される。
【0150】
カテーテルヘッド330と同様に、カテーテル370は近位流出口374を有し、近位流出口374は、懸濁剤の流動体がそれを通るのを可能にし、粒子がそれを通るのを阻止するよう構成される。近位流出口374は、カテーテルの長手方向の軸に実質的に垂直方向にその長さで伸びる円周方向のスリット375の複数の互い違いの線を有する。それぞれのスリット375は、(例えば直径40ミクロン以上の)前述の粒子の最小の直径より小さい幅を有し、それによって粒子の阻止を容易にする間隙を有する。さらに、カテーテル370は、開かれたまたは/および閉じたリングの形態の、半径方向の内方向への突起377として構成された流れ抑制機構376を有する。流れ抑制機構376は、運動エネルギーをなくし、それによってカテーテルヘッド370の長手方向の軸に沿って粒子の水平速度成分を減少させるよう構成される。いくつかの実施形態では、コイル373を有する高分子チューブ372の注入は、コイル373が完全にまたは部分的に、スリットのいずれかまたは大部分を覆わないように、コイルの円形の間にスリット375を有するように設定される。
【0151】
図18A図18Dは、カテーテルヘッド401の等角図(図18A)、カテーテルヘッド401の断面等角図(図18B)、カテーテルヘッド401の横断面等角図(図18C)、およびカテーテルヘッド401の垂直断面図(図12D)を示す。カテーテルヘッド401は、任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100または/およびカテーテル120と類似または同一でさえあり、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。
【0152】
カテーテルヘッド401は、近位ヘッド端部403および遠位ヘッド端部404を含むチューブ状ヘッド壁402を有する。チューブ状ヘッド壁402は、ヘッド壁402に沿って伸び、遠位ヘッド端部404において遠位流出口406へ開かれ、遠位流出口406の近位で近位流出口407へも開かれたヘッド内腔405を囲む。カテーテルヘッド401は、(カテーテル100のような)カテーテル内へ一体化するため、接合空洞部408を用いて近位ヘッド端部403で柔軟なチューブと接合可能である。接合は、任意選択的に柔軟なチューブの遠位部分を溶融し、接合空洞部408の上方の再硬化を可能にすることにより、または/および粘着剤を用いてなされる。
【0153】
遠位流出口406は、懸濁剤の流動体および粒子がそれを通るのを可能にする形状または/およびサイズであり、近位流出口407は、懸濁剤の流動体がそれを通るのを可能にし、粒子がそれを通るのを阻止するよう構成される。近位流出口407は、カテーテルヘッド401の区画周辺およびそれに沿ってカテーテルの長手方向の軸Xに実質的に平行にその長さで伸びる、複数の接線の長手方向のスリット409を有する。それぞれのスリット409は、実質的に半径方向の内方向への(直線状)経路を通ってヘッド内腔405へ開かれず、むしろ実質的にヘッド壁402の外面に接した実質的に反時計方向(または代わりに、時計方向)に湾曲した非半径方向の経路を通して開かれる。それぞれのスリット409は、(例えば直径40ミクロン以上の)前述の粒子の最小の直径より小さい幅を有し、それによって粒子の阻止を容易にする間隙を有する。
【0154】
カテーテルヘッド401は、近位流出口407の遠位に、遠位流出口406に近接して位置する流れ抑制機構410を有し、カテーテルヘッド401の長手方向の軸に沿って懸濁した粒子の水平速度成分を減少させるように、懸濁剤の流れを変更するよう構成される。流れ抑制機構410は、カテーテルヘッド内腔405の内側境界から始まり、実質的に半径方向に内方向へ突出し、それから近位流出口407の方へ実質的に近位方向に曲げられた、複数の長手方向に離間された凹形のオリフィス411として設けられた、少なくとも1つの半径方向の内方向への突起を含む。
【0155】
それぞれの凹形のオリフィス411は、注入中にカテーテルヘッド内腔405内で生じた圧力でそれを遠位に通過するよう圧力をかけられた懸濁剤の部分に抵抗する(を塞ぐ)のため、それに交差して流れる懸濁剤に抵抗するよう構成される。複数の凹形のオリフィス411は、内腔の圧力と周囲(血管)の圧力の間の正圧差に寄与する。結果として、およびまた近位流出口407の全体開口断面と遠位流出口406の(全体の)開口断面の間の特定の比率により、近位流出口407を通って分散された懸濁剤の流動体量の速度は、遠位流出口406の出口において長手方向の軸に沿った懸濁した粒子(と残りの懸濁剤の流動体)の水平速度成分より実質的に大きい。
【0156】
この例示的な実施形態で、流れ抑制機構410は、ヘッド内腔405内に接合された挿入構体として形成され、内側チューブ状列のオリフィス413に同軸に接合された外側チューブ状列のオリフィス412を有し、(この例で)3対のリング状オリフィスを形成する。それぞれの対(”i”)で、内側リング413は対応する外側リング412に対して近位方向により長く伸び、それによって1つの凹形のオリフィスを形成する。
【0157】
いくつかの実施形態では、外径チューブ状ヘッド壁402は約4mm以下、任意選択的に約1mm以下であり、または/および腹腔または肝臓の動脈から始まる小血管内へ挿入するよう構成される。
【0158】
いくつかの実施形態では、ヘッド壁402は金属素材で作られる。いくつかのそのような実施形態で、スリット409はレーザカット、レーザ穿孔、エッチング、EDMのうちの1つ、またはそれらのあらゆる組み合わせにより形成される。いくつかの他の実施形態で、ヘッド壁402はポリマー素材で作られ、いくつかのそのような実施形態で、スリット409はフェムトレーザおよびスカイビングのうち1つにより形成される。
【0159】
図19A図19Bは、カテーテルヘッド420の例示的な実施形態の全体等角図および垂直断面図をそれぞれ示し、カテーテルヘッド420は、任意選択的に設計または/および構成においてカテーテル100または/およびカテーテル120と類似または同一でさえあり、任意選択的に塞栓用マイクロカテーテルの形態である。任意選択的に、カテーテルヘッド420は図14のカテーテルヘッド330の変形であり、その流れ抑制機構421が、いくつかの近接したリング状構成要素422iを含む斜めの螺旋部422を包含し、リング状構成要素のそれぞれが、カテーテルヘッド420の長手方向の軸Xに対して近位に近接したリング状構成要素よりさらにわずかに中心を外れた穴を有することで異なる。流れ抑制機構421は、運動エネルギーをなくし、それによって長手方向の軸Xに沿って粒子の水平速度成分を減少させるよう構成される。
【0160】
カテーテルヘッド330と同様に、カテーテル420は近位流出口423を有し、近位流出口423は、懸濁剤の流動体がそれを通るのを可能にし、粒子がそれを通るのを阻止するよう構成される。近位流出口423は、カテーテルの長手方向の軸に実質的に垂直方向にその長さで伸びる円周方向のスリット424の複数の互い違いの線を有する。それぞれのスリット424は、(例えば直径40ミクロン以上の)前述の粒子の最小の直径より小さい幅を有し、それによって粒子の阻止を容易にする間隙を有する。
【0161】
カテーテル100または/およびカテーテル120、または前述したカテーテル/カテーテルヘッドのいずれかの他の変形が図20A図20Bに示され、図20A図20Bは、円周方向のスリット432の第1の(近位)区画431、および細孔434の第2の(中間)区画433を含む、カテーテルヘッド430の全体等角図および垂直断面図をそれぞれ示す。ともに流れ抑制機構として構成される複数の半径方向に内方向への突起435(リング状の形状)が、第1の区画431とカテーテルヘッドの遠位流出口436の間のカテーテルヘッドの長さに沿って分散される。
【0162】
本発明の例示的な実施形態を実施する、さらなる例示的な例の記載が以下である。
【0163】
本明細書で開示されたカテーテル(マイクロカテーテル)、およびその例示的な実施形態を、本明細書で開示された方法およびその例示的な実施形態のいずれかの実施および実行で使用してもよく、逆もしかりである。例えば非限定の方法で、本明細書で前述の実例として記載された例示的なカテーテル100、120、140、160、30、50、60、70、200、320、および370を、患者の血管内への懸濁剤を変更および送達する本明細書に開示された方法の実施および実行で使用してもよく、また、患者の癌の対象の身体の部分に供給する小血管内で局所的塞栓術を実行する本明細書に開示された方法の実施および実行で使用してもよい。
【0164】
例えば、図1A図1Bに関連して、患者の血管内への、懸濁剤の流動体内に懸濁した粒子の混合物である懸濁剤を変更および送達する方法は、後述の例示的なステップ(手順)を含む。近位吸込口113、遠位流出口107、および近位吸込口113と遠位流出口107の間に位置する近位流出口108を有するカテーテル100を提供する。遠位流出口107を、血管(BV)内の対象の箇所に近接して位置決める。近位吸込口113内へ、懸濁剤の流動体の全量内に懸濁した粒子の予め作られた懸濁剤111を注入する。懸濁した粒子を有する懸濁剤の流動体の過剰量102を、近位流出口108を介して分散するのを可能にする。懸濁した粒子を有する懸濁剤の流動体の残りの量112を、遠位流出口107を介して血管(BV)内へ送達する。
【0165】
例示的な実施形態で、可能にするステップ(手順)は予め作られた懸濁剤111の濾過を含む。例示的な実施形態で、そのような濾過は、懸濁した粒子が近位開口部108を通るのを阻止することを含む。例示的な実施形態で、方法は、近位吸込口113と遠位流出口107の間の懸濁剤の流動体の速度(v)を半分以下に減少することを含む。例示的な実施形態で、方法は、近位流出口108と遠位流出口107の間の懸濁剤の流動体の速度(v)を半分以下に減少することを含む。例示的な実施形態で、方法は、近位吸込口113と遠位流出口107の間の懸濁剤の流動体の推進力(m・v)を9分の1以下に減少することを含む。例示的な実施形態で、方法は、近位流出口108と遠位流出口107の間の懸濁剤の流動体の推進力(m・v)を8分の1以下に減少することを含む。例示的な実施形態で、方法は、近位流出口108と遠位流出口107の間の懸濁剤の流動体の質量(m)を半分以下に減少することを含む。例示的な実施形態で、方法は、近位流出口108と遠位流出口107の間の懸濁剤の流動体の流量を4分の1以下に減少することを含む。例示的な実施形態で、全量と残りの量112の間の容積比は、少なくとも4である。例示的な実施形態で、懸濁剤の流動体の残りの量112の送達のステップ(手順)は、20cm/秒以下の速度を有する。
【0166】
また例えば、図1A図1Bに関連して、患者の癌の対象の身体の部分に供給する小血管内で局所的塞栓術を実行する方法は、後述の例示的なステップ(手順)を含む。遠位流出口107、近位吸込口113、および近位吸込口113と遠位流出口107の間に位置する近位流出口108を有する塞栓用カテーテル100を提供する。遠位流出口107を小血管(BV)内の癌の対象の身体の部分の上流に位置決める。近位吸込口113内へ懸濁剤の流動体内に懸濁した粒子の予め作られた懸濁剤111を注入する。懸濁した粒子を有する懸濁剤の流動体の過剰量102を、近位流出口108を介して分散し、粒子が近位流出口108を通るのを阻止するのを可能にする。少なくとも遠位流出口107と癌の対象の身体の部分の間の血流の阻止に効果的なサイズの塞栓の生成まで、懸濁した粒子を有する懸濁剤の流動体の残りの量112を、遠位流出口107を介して小血管(BV)内へ送達する。例示的な実施形態で、懸濁剤の流動体はコントラスト強調剤を含む。

実験に基づいた実験結果:本明細書中に開示された例示的なカテーテルの性能と例示的な市販のカテーテルのそれとの比較
【0167】
図21A図21Dは、(I)(本発明のいくつかの実施形態による)例示的なカテーテル600の室内実験結果と、(II)臨床試験設定500を用いた(先行技術の開示による)市販のカテーテル700の室内実験結果を比較するビデオ記録の垂直面図の構成に基いた、およびそれを示す概略図である。臨床試験は、2016年1月24日に実行された。
【0168】
設定500は、分岐部501、対象の身体の部分に供給する対象の血管を再現するよう構成された第1の分岐502、および小血管へ分岐する(非対象の)血管を再現するよう構成された第2の分岐503を含んだ。設定500は、再現された心血管系内と同様の性質および流動特性をもつ分岐部501、第1の分岐502および第2の分岐503を通る模倣した血液を連続的に流すよう設定された。設定500の部品および模倣した血液は透明で、それぞれのカテーテルおよびその中に注入されたあらゆる着色された(蛍光)物質の直接可視化が可能であった。模倣した血液は、第1の分岐502および第2の分岐503がそれぞれ4ml/分の流量で受け入れるように、(ポンプを用いて)80~120mmHgの拍動性の圧力で注入された。
【0169】
懸濁剤の流動体506内のビーズ505の懸濁剤が準備された。ビーズ505の仕様は、約100ミクロンのサイズ、”Cospheric LLC”(米国カリフォルニア州Santa-Barbara)の着色蛍光マイクロスフィアであった。両方のケースで、Chemyx Inc.(米国テキサス州Stafford)のモデル”Fusion(登録商標)720”のシリンジポンプを用いて懸濁剤が注入された。
【0170】
例示的なカテーテル600は、遠位流出口601および近位流出口602へ開かれた1つの投与内腔を有した。遠位流出口601は懸濁剤の流動体506およびビーズ505を送達し、一方で近位流出口602は懸濁剤の流動体506を送達し、ビーズ505がそれを通るのを阻止するサイズのスリットの形態の複数の側面開口部を有した。それぞれのスリットの最小断面の大きさ(幅/間隙)は、約25ミクロンであった。近位流出口602は、図15の近位流出口355内と同一の、長手方向のスリットおよび円周方向のスリットの組み合わせを有した。流れ抑制機構は、3つの連続した、離間された、(リング状の)オリフィスを有し、それぞれが約0.4mmの穴を有した。
【0171】
使用された市販のカテーテル700は、2.7Fr(0.9mm)のサイズのTerumo Medical Corporation(米国ニュージャージー州Somerset)のモデル”Progreat”(登録商標)であり、遠位流出口701へ開かれた(しかし近位流出口のどれにも開かれなかった)、懸濁剤の流動体506およびビーズ505を送達するサイズの1つの投与内腔(内径0.065mm)を有した。
【0172】
図21Aでは、(I)および(II)が懸濁剤投与前の設定500に位置したカテーテル600および700をそれぞれ示す。図21Bでは、(I)および(II)が懸濁剤投与開始時、ビーズ逆流の出現前のカテーテル600および700をそれぞれ示す。図21Cでは、(I)および(II)がビーズ逆流の導入段階のカテーテル600および700をそれぞれ示す。図21Dでは、(I)および(II)がビーズ逆流の進行段階のカテーテル600および700をそれぞれ示す。
【0173】
図21Dで示されたように(I)は、例示的なカテーテル600の近位流出口(スリット)602を介した懸濁剤の流動体506の分散が、分岐部501へのビーズ505のあらゆる視認可能な逆流を阻止したことを示す。全く対照的に、図21Dにおいて異なり、(II)は、市販のカテーテル700が相当のビーズの逆流を可能にし、ビーズの逆流は分岐部501を通り第2の分岐503にまでも入った。
【0174】
本明細書で使用された、単数の文法の形態で書かれた「1つ」、「1つの」および「その」の語は、「少なくとも1つの」、または「1つまたは複数の」を意味する。本明細書内の「1つまたは複数の」の語句は、「1つ」、「1つの」および「その」のこの意図された意味を変更しない。従って、特に本明細書で定義または述べられた場合を除いて、または、文脈が明らかに他を述べていない限り、本明細書で使用される「1つ」、「1つの」および「その」の語はまた、複数の述べられた実体または物体を述べ、および包含する。例えば、本明細書で使用された「1つのユニット」、「1つの装置」、「1つの構体」、「1つの機構」、「1つの構成要素」、「1つの成分」、および「1つのステップまたは手順」の語句はまた、それぞれ、複数のユニット、複数の装置、複数の構体、複数の機構、複数の構成要素、複数の成分、複数のステップまたは手順を指し、および包含しうる。
【0175】
本明細書で使用される「含む」、「含んで」、「有する」、「持つ」、「備え」、「備える」の語のそれぞれ、およびそれらの言語学上/文法上の変形、派生、または/および活用は、「含むが、それらに限定されない」を意味し、述べられた構成要素(単数または複数)、機能(単数または複数)、特性(単数または複数)、パラメータ(単数または複数)、整数(単数または複数)またはステップ(単数または複数)を指定するものととらえるべきであり、1つまたは複数のさらなる構成要素(単数または複数)、機能(単数または複数)、特性(単数または複数)、パラメータ(単数または複数)、整数(単数または複数)またはステップ(単数または複数)、またはそれらのグループの追加を排除しない。これらの語のそれぞれは、「から実質的に構成される」の語句の意味と同じとみなされる。
【0176】
本明細書で使用される「から構成される」および「で構成される」の語句のそれぞれは、「を含み、およびそれらに限定される」を意味する。本明細書で使用される「から実質的に構成される」の語句は、開示された発明の例示的な実施形態の全体または一部である、または/および開示された発明の例示的な実施形態の実行に使用される、述べられた実体または項目(システム、システムユニット、システムサブユニット、装置、アセンブリ、サブアセンブリ、機構、構造、構成要素、成分、または周辺装置、ユーティリティ、アクセサリ、または素材、方法またはプロセス、ステップまたは手順、サブステップまたはサブ手順)が、システムユニット、システムサブユニット、装置、アセンブリ、サブアセンブリ、機構、構造、構成要素、成分、または周辺装置、ユーティリティ、アクセサリ、または素材、ステップまたは手順、サブステップまたはサブ手順である少なくとも1つの付加的な「機能または特性」を有してもよいが、それぞれのそのような付加的な「機能または特性」が、主張された実体または項目の基本の新規的および発明的な特性または特別な技術的特徴を実質的に変更しない場合のみである、ことを意味する。
【0177】
本明細書で使用される「方法」の語は、開示された発明の当該分野の熟練者に知られるか、または公知のステップ、手順、様式、手段、または/および技術から容易に開発されるかどちらかのそれらのステップ、手順、様式、手段、または/および技術を含むが、それらに限定されない、与えられたタスクを達成するステップ、手順、様式、手段、または/および技術を指す。
【0178】
この開示を通して、パラメータ、機能、特性、オブジェクト、または大きさの数値は、数字範囲フォーマットの観点から述べられまたは記載される。本明細書で使用されるそのような数字範囲フォーマットは、本発明のいくつかの例示的な実施形態の実施を示し、本発明の例示的な実施形態の範囲を柔軟性なく限定しない。従って、述べられまたは記載される数字の範囲はまた、述べられまたは記載された数字の範囲内の全ての可能な副範囲および個々の数値(数値が全体で表現される場合、整数または小数)を指し、および包含する。例えば、述べられまたは記載された数字の範囲「1から6」はまた、述べられまたは記載された数字の範囲「1から6」の内の「1から3」、「1から4」、「1から5」、「2から4」、「2から6」、「3から6」などのような全ての可能な副範囲、および”1”、”1.3”、”2”、”2.8”、”3”、”3.5”、”4”、”4.6”、”5”、”5.2”、および”6”のような個々の数値を指す。これは、述べられまたは記載された数字の範囲の数字の幅、範囲またはサイズにかかわらず適用する。また、数字の範囲を述べまたは記載することについての「約第1の数値と約第2の数値の間の範囲」の語句は、「約第1の数値から約第2の数値の範囲」と同等および同一の意味であり、よって2つの同等の意味の語句を互換的に使用しうる。本明細書で使用される「約」の語は、述べられた数値の±10%を指す。
【0179】
明確にするため、複数の分離した実施形態の内容または形式で実例として記載および示された本発明の特定の態様、特性および機能はまた、1つの実施形態の内容または形式内のあらゆる適切な組み合わせまたは副組み合わせで実例として記載および示しうることを、十分に理解すべきである。逆に、実例として1つの実施形態の内容または形式内の組み合わせまたは副組み合わせとして記載および示された本発明の種々の態様、特性、および機能もまた、複数の分離した実施形態の内容または形式で実例として記載および示しうる。
【0180】
本発明を特定の実施形態に関連して記載したが、多数の代替、改良および変形が当業者に明らかであることは明白である。従って、添付の請求項の趣旨および広義の範囲内に入る全てのそのような代替、改良および変形を包含することが意図される。
【0181】
本明細書で述べた全ての公開、特許および特許出願は、個々の公開、特許または特許出願が特に、および個別に参照により本明細書に組み込まれるのを示したのと同一の程度で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。また、本出願でのあらゆる参照文献の引用または特定は、そのような参照文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めると解釈されるべきではない。節の見出しが使用される範囲で、それらは必ずしも限定すると解釈されるべきではない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図21C
図21D